昔話・童話 裏・奇 (17)

何番煎じか分かりませんが、昔話と童話を全力でリスペクトします

2つの話を投下したら、次に書くもの安価予定

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『ももたろう・裏』

 昔々、あるところに鬼が住んでいました。

 鬼は、少数ながら、村を築き、動物を狩り、木の実を採り、静かに暮らしていました。

 しかし、ある日、その鬼達の平穏はいとも簡単に崩れ去りました。

 奴隷商。

 とある大国お抱えの豪商人であり奴隷売買を生業とする者達が、鬼を次々と捕まえたのです。

 鬼は遠方の栄えた町に売り払われました。

 その町は、人間にとっては良い町でした。

 売られた鬼の末路は悲惨なものでした。

 武器屋に買い取られた鬼は、客の試し斬りの為に。

 採掘現場に買い取られた鬼は、爆薬の点火係に。

 木こりに買い取られた鬼は、毎日豆が潰れるほど斧を振るわされました。

 鬼が働けば働くだけ、町は栄えました。

 鬼は人間に比べて強靱であり、賢い生き物です。

 賢いが故に、自分達と人間の数の差を分かり、屈服し、隷従します。


 そんな辛く苦しい生活にも慣れた時分、一匹の鬼が武器屋の前に立っています。

 強靱な肉体には薄い深いに関わらず無数の傷が走っています。

 充分な手当はされていません。重傷部位のみ、申し訳程度の布で縛られていました。

 試し斬りです。

 武器屋に、お得意様である一人の侍が入ります。連れの者も何人か、いずれも帯刀しています。

 店主と二、三言交え、上機嫌に一本の刀を手に鬼の前へ立ちます。

 侍は、鬼の膝辺りを蹴ります。それだけで、鬼は倒れます。

 痛みで倒れている訳ではありません。そうしないと、いけないからです。

 倒れた鬼は頭を踏みつけられ、何度か蹴られます。

 そして、何回か斬られておしまい。


 今日もそのはずでした。

 今日は、違います。

 侍は蹴る度に呻く鬼へ、しゃがみ込み、耳打ちしました。

「なぁ。子供の鬼も、堅いのか?」

 鬼は耳を疑い、痛みに苦しむフリを忘れて勢い良く顔をあげました。

 そこには、一人の子鬼がいました。

 従者の二人に両枠から拘束され、恐怖に震える子鬼がいました。

 それを見た瞬間、鬼は立ち上がり、子鬼の元へ駆けます。

 ですが、二歩踏み出した所で足を掛けられ、何人もの人間に押さえつけられてしまいました。

 鬼は、子鬼に逃げるように泣き叫びました。

 子鬼は、逃げようとしません。良く見ると、両足の腱が既に切られていて、自立出来ていないではないですか。

 鬼は、侍へ辞めるように泣き喚きました。

 それを聞いて、侍は悦に笑いました。

 笑って、歩いて、刀を振り上げます。

 鬼は、子鬼を最期まで泣き叫びながら見ていました。

?十年後?


 とある山の麓の一軒家にて、一つの奇跡が起きていました。

 なんと、大きな大きな桃から産まれた子供が生まれたのです。

 その子供も今日で一〇歳。

 誕生日のその日に、近頃風の噂に聞く鬼を退治しようという決意を子供は語りました。

 お爺さんは、その子供に言います。

「鬼達は、とある町を女子供関係なく、皆殺しにしたらしい」

 お婆さんは、その子供に言います。

「お金と食べ物を根こそぎ奪って、鬼ヶ島というところに暮らしているらしいよ」

 話を聞き、桃から産まれた子供、桃太郎は力強く言いました。

「悪い鬼達め! 僕が成敗してやる!」

 桃太郎は、鞘に納まった刀を腰に下げ、鬼ヶ島へ向かいました。

? Fin ?


『赤ずきん・奇』

 昔々、あるところに一人の少女が居ました。

 その少女は、いつもお気に入りの赤い頭巾を頭に被っているので、みんなからは「赤ずきん」と呼ばれていました。

 赤ずきんはある日、お母さんにお使いをお願いされました。

「風邪を引いちゃったお婆ちゃんに、この蜂蜜を届けてあげてくれるかしら」

 赤ずきんは頷き、蜂蜜が詰まっているらしい瓶が何個か入ったカゴを受け取ります。

 カゴは上から布を被されていて、隙間からチラリと瓶の蓋が見えます。

「寄り道しちゃ駄目よ。怖い狼に食べられちゃうから」

 赤ずきんは首を縦に振り、家を出て行きました。

 赤ずきんの家は町の外れにありますが、お婆ちゃんの家は森の奥深くにあります。

 赤ずきんは言いつけ通り、人の足や馬車の車輪で踏み固められた道を、真っ直ぐ歩いていきます。

 途中の湖を過ぎ、鳥の歌を聴き流し、真っ直ぐに歩いていきます。

 お婆ちゃんの家まで後少し、そんな場所に、それはありました。

 小さなお花畑です。白い綺麗な花が狭いなかにたくさん咲いていました。


 赤ずきんは、通り過ぎました。

 しかし、やっぱり女の子。お花畑が気になり、戻ります。

 白いお花を近くで眺め、何本か見繕って摘んでいきます。

 赤ずきんはそれをカゴの布の上に乗せて、お婆ちゃんの家を目指します。

 日が少し西に傾いたころ、森の中の一軒の家にたどり着きました。

 お婆ちゃんの家です。

 赤ずきんは扉をノックします。すると少し間をおいて、中から声が返ってきました。

「空いているよ」

 しゃがれた、低い声です。

 赤ずきんはノブを回し、家に入りました。

 家の間取りは一部屋しかなく、扉の前からもベッドが見えます。

 赤ずきんは扉をしめて、ベッドの横に立ちます。

 そして、不思議そうにお婆ちゃんに聞きました。


 どうしてそんなに声が低いのか、と。

「風邪のせいで喉をやられちゃってねぇ‥‥‥ごほごほ」

 どうしてそんなに目が大きいの、と。

「あなたの可愛いお顔をよく見るためさ」

 どうしてそんなに耳が大きいの、と。

「あなたの可愛い声をよく聞くためさ」

 ネグリジェ姿に、深くショールを被り、上半身まで深くシーツにくるまっているお婆ちゃん。

 赤ずきんは納得と頷き、最後の質問を投げ掛けます。

 お婆ちゃんは、上半身からシーツを払い、起き上がります。

 どうしてお婆ちゃんは。

 お婆ちゃんは少し不気味に笑いながら、赤ずきんに手を伸ばしました。

「ここにいないの?」

 赤ずきんは、暗い声でそう問いました。

 え‥‥‥?

 その大きな口に、固い鉄のようなものを突きつけられました。


「ねぇ、狼さん。なんで?」

「どうして?」

「狼さん、知ってるよね?」

「あ、そうだ。狼さん、このお花、知ってる?」

 赤ずきんは白い花を狼に見せます。

 狼は何度も頷き、それよりも助けてほしいと願いました。

「ほしい?」

 頷きました。

「うそつき」

 赤ずきんはそう言い、狼の頭を銃で撃ち抜きました。

 赤ずきんは溜め息を吐いて、狼の亡骸の上に白い花をのせました。

 赤ずきんはカゴに入っていた大きな空瓶数個と、ナイフを取り出しました。

 少女は、頭に被っていた所々濁ってしまった赤い頭巾をカゴにしまいました。

? fin ?

 

>>12 次の昔話or童話

>>13 裏or奇

>>14 長いor短い

桃頭巾は短いです。

余りにもマイナーな昔話or童話だと分からずに安価下してしまうかも。

青髭

長い

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