男「無人島。」(20)
――日本行き観光船甲板
男「うぅ、寒っ。」
友「そりゃあ、夜だし寒いだろ。部屋に戻れば良いじゃねぇか。」
男「いや、ほら、あんまりにも海が綺麗だから。」
友「そんなくさいこと俺に言われても困る。」
男「でもお前の方が……」
友「あほか。……寒っ。俺、先に戻ってるぞ。」
男「おう。」
男「もう少しで日本かぁ。」
男「流石に一週間も離れてると白米に味噌汁が恋しいな。」
男「……」
男「寒っ、って雨降ってきた。」
男「……」
男「寝るか。」
――船内310号室
男「ただいま。友、まだ起きてるー?」
友「……」スヤスヤ
男「……」
男「ていっ。」
友「痛っ!? ……いきなり、何すんの!?」
男「手刀。いや、ほら、なんか寝れないときってあるじゃん。」
男「具体的に言うと、遠足の前の日、とか?」
友「……」スヤスヤ
男「……」
男「まぁ、いいや。本でも読もう。」
男「えーっと、何処に入れたかな。」
男「!」
男「雷か。びっくりした。」
男「お、あったあった。」
男「……」ペラ
――大学講義室
友「男ってどうすんの。」
男「何をだよ。」
友「将来?」
男「就職。」
友「何系?」
男「決まってない。」
友「まぁ、そうだよな。」
男「友は?」
友「うーん、決まってない。」
男「そうだよなー」
男「まぁ、なるようになるだろ。」
講師「そこ、もう少し静かにしろー」
友「すいませーん。」
男「……」
友「男、起きろ!!」
――船内310号室
友「男!」
男「……ど、どうしたんだよ。」
友「船が沈んでるんだよ!!」
男「は?」
男「ちょ、ちょっと待てよ。そんな冗談……」
友「冗談じゃねーよ、床見てみろ!」
男「……! 水……」
――船内310号室
友「早くしろって!」
男「ちょ、ちょっと待ってくれ荷物の……」
友「荷物は良いから! 死んだらどうにもできねぇぞ!!」
男「あ、あぁ。そうだな悪い……」
――船内客室通路
友「後ろの方は沈んじまってる……」
男「……」
男「他の人達は……」
友「……良いから甲板に出るぞ!」
男「……」
友「……」
友「甲板は……こっちだ!」
男「……」
男「甲板に出てどうするんだ……?」
友「え? ……取り敢えず……救命ボートがあるだろうからそれに乗るんだよ。」
友「なかったら飛び込めば助かるかも知んねぇだろ。」
男「そ、そうだよな。助かるよな。」
友「暗い顔するなよ、ここにいても助からねーぞ。」
男「ありがとう……」
――日本行き観光船甲板
友「うぉっ!」
男「お、おい、大丈夫か!」
友「あぁ、ありがとう。って、すげぇ嵐酷いじゃねーか……」
男「でも天気予報では太平洋側は快晴って……」
友「え? 聞こえなかった悪い!」
男「天気予報は快晴って……!」
友「そんなこと言ったって実際雨だぞ。それよりも早く救命ボートを……」
友「くそっ、何処にあるんだよっ!」
男「ぉあ!」
友「大体、人がいな……」
船員「おーい! そこの君、こっちだ!!」
友「!」
友「おい、男! あっちで救命ボート降ろして……」
友「……男?」
――
「……次は…………ん……」
「しょ……らいのゆめ、一ねん一くみ――」
「ぼくのゆめは、お父さんのような人をすくうおいしゃさんになることです。」
「お父さんはまい日たいへんだと言ってい……すが、ぼくはなり……いです。」
「そ……て……およ……――」
「……」
――
――海岸
男「……んんっ。」
男「此処は……」
男「……海……取り敢えず……生きて……たんだな。」
男「暑い……喉が渇いた。」
男「海水は、確か……駄目なんだよな……」
男「何か持ち物……」
男「……」
男「……どうしろって言うんだよ!」
男「くそっ!」
男「……」グー…
男「取り敢えず、水と食べ物を……」
男「俺、死ぬのかな……」
男「……」グー…
男「……」
男「くそっ!」
男「……」グー…
男「!」
男「川……」
――川辺
男「川の水は、綺麗だったらちょっとは大丈夫なんだよな……」
男「それに汚れてても……動物がいるか人里があるか……」
男「……綺麗だな。」
男「……」ゴクゴク
男「ふぅ……」
男「……どうすれば。」
男「……」グー…
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