理樹「寝て起きたら10年経ってた」 (153)
来ヶ谷「む?」
恭介「どうした」
来ヶ谷「足元を見てみろ、ベッドの横の机においた写真が落ちている」
葉留佳「あっ、本当だ!もしかしてポルターガイスト!?それとも理樹君を狙う暗殺者!?」
クド「わふー!おばけは苦手なのですーっ!!」
小毬「ほああぁ~!?あ、あんさつ!?」
真人「どうせ風でも吹いたんだろ」
謙吾「窓は俺たちが来る前からずっとしまっていたぞ?」
鈴「……」
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一週間ぐらい振りの久々のスレ立てなので多分ペースは遅い
恭介「そんで真人が頭からダイブしたんだぜ?傑作だろ」
真人「待てよ!俺は確かに尻から落ちたぞ!?」
西園「本当にどうでもいいです」
葉留佳「本当にどうでもいいですネ」
真人「う、うぁぁあーっ!俺が何したってんだよぉおーーっっ!!」
恭介「…ふっ……それじゃあ行くか、またな理樹」
葉留佳「ばいばーい理樹くーん!」
小毬「またお会いしましょーっ!」
来ヶ谷「うむ、さらばだ少年」
鈴「うぅ……」
バタン
恭介「さて、飯でも食いに行くか」
真人「おっ賛成だ!」
葉留佳「はい!私ステーキ!」
クド「私は海鮮丼がいいです!」
来ヶ谷「マルゲリータだな」
恭介「お前ら毎回バラバラ過ぎんだろっ!」
謙吾「ならいつものようにファミレスでどうだ?皆、仲良くだ」
小毬「私はなんでもいいよ~」
西園「私もそれで構いません」
恭介「鈴は?」
鈴「それでいい」
恭介「そうか、じゃあ決まった事だし名残惜しいがそろそろ出るとしよう」
ゾロゾロ
患者「あの人達、毎週来ますが凄い情熱ですよね」
患者2「それを言うなら…こっちも毎日病院にくるのがいる……」
患者「あははー!確かにっ……でもどういった病気の人なんでしょう」
患者2「……多分同じ…」
患者「?」
ファミレス
恭介「ちょっとトイレ」
謙吾「俺も行こう」
恭介「……」
ガチャ
恭介「……おい謙吾」
謙吾「うん?」
恭介「俺に何か話でもあるのか?」
謙吾「…ああ、その通りだ」
恭介「言ってみろよ」
謙吾「理樹の事だ」
恭介「まぁ、それしかねえよな」
謙吾「今…理樹がどんな状態なのか……俺は悔しい…!命を助けてもらった事もあるあいつを…ずっと味方だと言ったあいつを今はただ見てるだけしか出来ないなんて……こんな歯がゆい事があってたまるかっ!!」
恭介「何言ってんだよ、お前は今だって充分理樹の味方じゃねえか」
謙吾「……バスの事故のあと、俺たちは自分達だけの修学旅行に行ったよな」
恭介「ああ…」
謙吾「その年の冬だった、理樹が眠ったのは」
12月
教室
ユサユサ
鈴「んにゃ……」
理樹「鈴!起きてってばっ、もう放課後だよ?」
鈴「廊下は寒い、もうちょい寝かせろ」
謙吾「これから練習だろ?ピッチャーがそんなのでどうした」
真人「へっ、こいつは5年寝かせれば上手くなる」
理樹「鈴は漬物じゃないよっ!」
小毬「さぁー鈴ちゃんGO!」ガシッ
鈴「ごぉ~…」ヨロヨロ
謙吾「よぅし!じゃあ俺たちも行くぞ、体を温めるため廊下を全力ダッシュだっ!」
理樹「いやいやいや…それ普通に校則違反だよ……」
真人「ほほう、面白いこというな謙吾の旦那は」
謙吾「勝負、するか?」
真人「望むところだぜ!」
理樹「ああもうまた二木さんに……あ…れ?」
真人「ん?どうした理樹?」
理樹「……」ドサッ
謙吾「理樹!?」
謙吾「それからいくら部屋においても目覚めることがなかった、脈はあるが意識がないので病院に見せたら原因不明の昏睡状態だ」
謙吾「…アレはもう二度と起こるはずじゃなかったのか……」
恭介「あるいは別の病かもな。あの病と関連づけるのは短絡的だ」
謙吾「だが……!」
恭介「いくら考えても理樹は目覚めないんだ、とにかく今は奴らの所へ戻ろう…せっかくの料理が冷めちまうぜ」
謙吾「そんなのどうだって…」
恭介「お前が不安になると皆が不安なんだ、皆無理して明るい雰囲気を作ってるのは分かるだろ?お前はそんな全員のちっぽけな努力さえぶち壊す気か…」
謙吾「でも……おかしいだろ……」
恭介「分かってる、分かってるぜ謙吾。さあ戻ろう」
謙吾「……くそっ…」
恭介「悪い、先に食っててもよかったんだぜ?」
小毬「こういうのは全員揃わないとねぇ?」
鈴「全員揃ってない」
恭介「鈴……」
鈴「理樹がいないだろ……」
小毬「……っ」
鈴「あっ…こ、小毬ちゃん…」
小毬「ううん、確かに私がいけなかったよ。確かに理樹君がいないと全員じゃないもんね」
葉留佳「……理樹君はすぐ起きてきますヨきっと…多分、メイビー…いや絶対!」
来ヶ谷「そうだ、私達が帰ってくると信じなくて誰が少年を迎える」
鈴「……うん、そうだな。……よぉうし!」
真人「なんだそれ?」
鈴「小毬ちゃんに教えてもらったおまじないだ、やれ」
真人「俺がか?ふむ………よぉぉおし!」
店員「キャア!?ああっ、いや失礼しました…マ、マグロ丼でお待ちのお客様ー?」
クド「はいっ、私です!」
真人「うぉおおー!ヘタこいたぁああ!」
鈴「真人はうっさい」
真人「お前が言わせたんだろうが!」
病院の一室
理樹「………」ピク
今はここまで
12月
理樹(もういつ雪が降ってもおかしくないこの頃、教室は暖房が効いてるのであまり廊下を出歩く人は少ない。葉留佳さんは例外だとして)
鈴「……」
理樹(鈴はまるで猫の様に机にうずくまっていた)
ユサユサ
鈴「んにゃ……」
理樹「鈴!起きてってばっ、もう放課後だよ?」
鈴「廊下は寒い、もうちょい寝かせろ」
理樹(そういっていつもギリギリまで寝ようとする)
謙吾「これから練習だろ?ピッチャーがそんなのでどうした」
真人「へっ、こいつは5年寝かせれば上手くなる」
理樹「鈴は漬物じゃないよっ!」
小毬「さぁー鈴ちゃんGO!」ガシッ
鈴「ごぉ~…」ヨロヨロ
理樹(小毬さんに腕を引っ張られてようやく動き出した)
謙吾「よぅし!じゃあ俺たちも行くぞ、体を温めるため廊下を全力ダッシュだっ!」
理樹「いやいやいや…それ普通に校則違反だよ……」
真人「ほほう、面白いこというな謙吾の旦那は」
謙吾「勝負、するか?」
真人「望むところだぜ!」
理樹「ああもうまた二木さんに……あ…れ?」
理樹(視界が急に真っ暗になっていく…まさかそんな…確かに僕は克服したはずなのに……でもこの感覚はそれに似ていた、「ナルコレプシー」僕を世界から隔離する眠り病)
真人「ん?どうした理樹?」
理樹「……」ドサッ
謙吾「理樹!?」
ガシャン
理樹「………」
ピラッ
"リトルバスターズ集合写真!5/27"
ピクッ
理樹「……ううん…」
理樹「……なんだ…ここは…」
キョロキョロ
理樹「病院……かな?」
理樹(辺りを見渡すと今の所そうにしか見えない、でもなんで病院に……)
理樹「えと…確か僕は寝る前に……そうだ真人達とグラウンドに行こうとして寝てしまって……」
理樹(そうだ、なんで僕はもう一度寝てしまったんだろう…いやそれよりも今置かれてる状況がどういったものなのか把握しないと!)
理樹(とりあえずここは病院で僕だけの個室なのは分かる、周りは多分皆が置いて行ったんであろう時計とか縫いぐるみがあることから僕がかなりここに居たと考えられるな)
理樹「ってことは一週間や二週間ぐらい寝たきりだった!?どおりで疲れやすいと思った…」
理樹(本当にそれじゃあ迷惑をかけた所の話じゃない)
理樹「皆…心配してくれてたのかな……」
理樹(とにかく今は夜の様だ、多分今から看護師さんを呼ぶとまた面倒なことになりそうだから明日の朝報告しよう)
キュッキュッ
理樹(ゴムがワックスで摩擦する音がした、もしかして誰か来る!?)
ガララッ
恭介「理樹……お前…」
理樹「えっ?」
理樹(誰だろう、顔は少し三枝晶さんに似てる気もするけど恭介の親戚だと言われたら信じてしまいそうな…)
恭介「そうか…起きたか……そりゃ分かる訳ねぇよな、何年も経ってるんだから」
理樹「あの…」
恭介「俺の声を聞いてもまだ分からないか理樹?」
理樹「そんな呼び方する人は知ってる中でも5人しかいないよ…」
恭介「なら分かるよな」
理樹「まさか恭介!?」
恭介「あまり大きい声を出すな、隣の人が起きちまうぜ」
恭介「まったく…騒ぎ立てたいのはこっちだというのに」
理樹「なんか…ますます大人びたね……」
理樹(シワこそ出来てないものの少し貫禄があるというか持ち前の冷静さや不敵な眼差しが更に強化されたというか……)
恭介「当たり前だ、さっき言った通り何年も経ってる」
理樹「……あのさ、僕何年寝てたの?」
恭介「言いづらいが聞いてくれ」
理樹「う、うん……」
恭介「10年だ」
理樹「……馬鹿な…」
恭介「戸惑う気持ちも分かる、でもこういう時こそ気持ちをしっかり持て。何事も長考が大事だ、学校のテスト勉強を除いてな」
理樹「10年もここで寝てたの…?」
恭介「そうだ」
理樹「その間ずっとここへ?」
恭介「ああ!全員の予定が合えば……といっても皆スケジュールが空くようにこっちに合わせてるだろうが、とにかくほぼ週一で通い続けたさ」
理樹「僕のためだけに…?」
恭介「お前のためだけに」
理樹「そんな……」
理樹(僕は自分の10年間を不意にするどころか皆にまで気を使わせていたのか…そんな歳月を)
恭介「言っておくが皆お前と会いたいから来てるんだ、気を使わせてるだなんて思うなよ?あいつらはそんな器用なこと出来ねえよ」
理樹「……ごめん」
恭介「なんで謝る」
理樹「ずっと迷惑を…」
恭介「だから大丈夫だって。それよりもこのビッグニュースを聞かせないとな!あいつらにも早く会いたいだろ?」
理樹「……うん、もちろんだよ!」
恭介「なら今日は寝ておけ、明日は多分はしゃぎ過ぎて疲れるだろうからな」
理樹「うん…そうするよ」
恭介「じゃあ俺も出るぜ、次は20年後とかやめろよ?」
理樹(そういうと恭介はドアを優しく閉めた、本当はもっと喋りたいしあっちもそう思ってるだろうけど恭介も大人になったという事なのか30分ほどで帰ってしまった))
理樹「10年……」
理樹(それが本当ならその分人生を病に取られたという事なのかな…いいや、そんな事考えていても前向きになる気がしない。もうそこはあまり深く考えないようにしよう)
理樹(それにしても10年振りの目覚めから初めて出会ったのが恭介だったとは…やっぱり縁は切れないものなんだろう)
理樹「とにかく今日は寝よう……」
理樹(こうして長い長い夜は更けていく………)
お休み
よ、夜だし目に優しい時間帯だったから…!
ちょっと再開
チュンチュン
理樹「……」ムクッ
理樹「あれ?なんで病院に……」
理樹「そうだ、僕はずっと寝たきりだったんだ…。でもこういう時はどこに行けばいいんだろう」
理樹(とにかく歩こうと足を動かそうとしてみる)
グラッ
理樹「うわっ」
バタン
理樹(ち、力が入らない…足が思う様に動いてくれないせいで転けてしまった。そこでなんとか腕の力を使って隣にあるナースコールのボタンを押してみた)
理樹「腰から上は動くな…」
理樹(しばらくして驚いた表情の看護婦さんが来た、恭介はやはり知らせてなかったようだ)
看護師「く、車椅子を用意してきますっ!そ、その後精密検査を受けてもらいますが構いませんね?」
理樹「はい…」
コロコロ
理樹(朝だと言うのに廊下には患者さんが一人もいなかった)
青年「……!」トコトコ
理樹「?」
青年「……」ニヤリ
理樹(他の患者さんへお見舞いをしに来た人が僕を見て微笑んだ)
理樹「あの…さっきの人はなんで…」
看護師「ええ、ここら一帯は以前のあなたの様な意識が無い…いわゆる植物状態の方たちが居らっしゃる階なのです、ですから意識を取り戻したあなたを見て笑ったのでしょう」
理樹「なるほど…」
理樹(そして後ろを向くとさっきの人は「伊吹」のプレートが掛かっている部屋に入った、そして廊下に差し掛かろうとした所で賑やかな声が聞こえた)
ガヤガヤ
理樹「あの部屋は……」
看護婦「月宮さんの所ですね、あそこもあなたと同じでまだ意識は取り戻してませんがいつも賑やかですよ」
理樹「こんな朝からか……」
理樹(しかしこの人も患者のプライベートをよく喋れるよ……)
理樹(その後精密検査を受けてヨーグルトなど喉に優しい朝食を済ませると部屋に戻った)
理樹「皆いつ来るのかなぁ…うう、緊張する……」
理樹(それから一時間して騒々しい足音が聞こえた)
バンッ
理樹「うわっ!?」
「「「理樹(君)回復おめでとうー!!」」」
理樹「み、皆!」
真人「うおぉぉぉおっ!本当に生き返ってやがる!心配したんだぞこの野郎!!」
理樹「勝手に殺さないでよ……」
葉留佳「もー!ずっと気が気でなかったんですヨ!?なんど顔に落書きしたことか……」
理樹「聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど」
クド「わふー!ゆーかむばっく!なのですーっ!」ガバッ
理樹「くっ、クド!?……なんというかその…変わらないね」
クド「ガーン!?」
来ヶ谷「やれやれ、まさか理樹君に振り回されることになるとはな」
理樹「来ヶ谷さんっ、元気そうだね」
来ヶ谷「はっはっはっ。いやそうでもない、君のせいでロクに結婚も出来なかったぞ」
理樹「えっ」
来ヶ谷「冗談だ。していないのは本当だが」
西園「ご無沙汰しています直枝さん」
理樹「うん…」
西園「今はまるで浦島太郎の気分ですか?そう考えると少し羨ましい気もしますが」
理樹「そうなるね、西園さんも変わりなさそうだ」
西園「体がですか……?」
理樹「いやいやいや…」
謙吾「うぐっ……」
理樹「謙吾…」
謙吾「理樹…よく戻ってきた……これから色々大変だろうが出来る限り協力しよう…っ!」
理樹「うん…ありがとう」
小毬「理樹く~んっ!」ギュッ
理樹「こっ、小毬さん!?」
小毬「よかったぁ…本当によかったよぉ……もう二度と目を覚まさないのかと…」
理樹「あはは…ごめん、本当に何年も」
小毬「ううん、大丈夫!っだよ。理樹君だって同じ立場なら同じことするはずだもん」
理樹「そうかもしれない」
理樹(ざっと20歳を超えてて『だもん』を使っても許されるのは小毬くらいだろう、というか皆本当に僕から見てこの前と変わらないんだな…嬉しいけど心配でもある)
鈴「うりゅ……」
理樹「鈴…」
理樹(相変わらずのポニーテールだった。流石に10年も経てば人見知りはマシになってるだろうけど、どうも僕とはそういうのじゃないしに避けられてるらしい)
理樹「ごめんね、こんなに待たせちゃって」
鈴「うっ」プイ
来ヶ谷「どうした、小毬君とクドリャフカ君に嫉妬しているのか?」
理樹(そういえば2人に若干泣きながら抱きつかれてるからはたから見ればモテモテフィーバーだ)
鈴「そんなんじゃない」
真人「お前も抱きつきたいんだろ?」ボソボソ
鈴「違うわボケェーーッ!!」ドガガガガ
真人「おえっ」バタリ
理樹(攻撃力もパワーアップしていた…)
恭介「久しぶりだからどう接せれば良いのか分かんねえんだよな鈴?」
鈴「……」
理樹「恭介…」
理樹(じゃあ僕から鈴に話すとしてどうしようか)
1.鈴!好きだーっ!
2.綺麗になったね
3.筋肉いぇいいぇーい!筋肉いぇいいぇーい!
次のレス
今はここまで
今日も無理っぽい、不定期ですまなんだ
鈴「なぁぁーっ!?」
恭介「ふっ…若さ故の言動だな」
来ヶ谷「そうか、精神年齢はまだ高校生だものな」
理樹「本当に綺麗になったよ!言葉遣いと髪型は変わらないけど化粧もして立ち振る舞いも大人になったっていうかっ」
葉留佳「えー!私は!?」
理樹「もちろん葉留佳さん達も綺麗だよっ!」
葉留佳「ひゃっほーう!」
クド「やったーなのです!」
鈴「り…」
理樹「えっ?」
理樹「理樹なんか嫌いじゃアホーッ!」ダダッ
ガラッ
理樹(鈴が逃げた!?早く車椅子で追いかけなくちゃ……)
理樹「待ってよ鈴ー!」コロコロ
バタン
謙吾「…昔を思い出すな」
恭介「ああ、せめて理樹には卒業式をさせてやりたかった」
来ヶ谷「ふむ…。確かに卒業式は出来ないが………」
西園「なるほど、良い考えです」
葉留佳「えっ、なんて言ったんですか姉御は?」
………
…
ブロロロロ
理樹「これからどこへ行くのさ?」
恭介「着いてからのお楽しみだ」
理樹(恭介は旅行の時に乗った中古の車ではなくまた新しい物を買っていた、運転も既にお手並みのモノの様だ)
葉留佳「はいはーい!理樹君はしばらくこれを使ってもらいまーす!」ガッ
理樹「うわっ、何これ!?」
理樹(いきなり暗闇が襲う!)
小毬「アイマスクさんだよぉ~これで開けてみるまで分かりません」
理樹(用意周到だなぁ……なんて思っている間に着いてしまった)
恭介「さあ着いた!ここが目的地だ、もう外していいぞ」
理樹「うん…」
理樹(外した瞬間少し眩しかったが次第に目が慣れてきた)
理樹「……あっ!」
理樹(それは学校だった、途中で工事を行ったのか壁の色が代わっているが門のプレートから確かに昨日…じゃなくて10年前に行っていた学校だった)
恭介「お前はそれほど懐かしく感じはしないだろうが一応変わった所だけでも見て回れよ」
理樹「うん……そうする」
理樹(皆にはわがまま言って一人で行かせてもらった)
裏庭
理樹「うわぁ……」
理樹(何も変わってなかった、芝生もちゃんと整理されていてここだけ見ると10年後だなんて信じられない)
「おや、これは…」
理樹(後ろから声がしたので振り返って見るとかなり年を取ったお爺さんがいた)
理樹「えっと…もしかして用務員のおじさんですか?僕が在席してた時の」
用務員「君は確か倒れたままと聞いていたが……すると回復したのかい」
理樹「はい、10年も前なのによく覚えてますね」
用務員「うむ…私は基本君らの顔を覚えているが特に君は印象深かったからね。直枝君だろう?」
理樹「はい!」
理樹(あの世界では芋虫を取ったりしたけどここでそんなに印象付ける事なんかやったかな?)
公務員「さしずめここの変化が見たくなったのだろう、ゆっくりしていくといい」
理樹「ありがとうございます」
公務員「君がいた頃の先生方はもうほとんどいないが少し驚く事もあるだろうね」
理樹「はあ…」
グラウンド
理樹(ここで皆で野球をやってたんだよな…)
カキーン
「おーっほっほっほ!その調子ですわっ!」
理樹「ええっ!?」
笹瀬川「ほらそこ何をチンタラ走ってますの!?」
理樹「さっ、笹瀬川さん!?」
笹瀬川「ん?……あ、あなたは!」
笹瀬川「あなた達、そのまま続けてなさい!」
理樹(そういうと笹瀬川さんは僕に歩み寄ってきた)
理樹「こんな所で何やってるのさ?」
笹瀬川「それは私のセリフですわ!あなた病院で寝てらしたんじゃなくて?」
理樹「いや~どうも起きちゃったらしくてさ…」
笹瀬川「まったく覚める時は覚めると言ってほしいものですわね?…所で他のメンバーは…」
理樹「ああ、うん。ちょっと一人で回って見たくてさ…所で笹瀬川は?」
笹瀬川「私は…ここのOB兼監督をさせてもらっていますの」
理樹「へえ!」
OGじゃないって事はさせこは男の娘やったんか
道理で残念なおっぱいなわけだ
笹瀬川「ま、それも毎週日曜日かスケジュールが空いた時間だけですわ」
理樹「いつもは?」
笹瀬川「おーほっほっほ!そういえば貴方は知りませんでしたわね。なんとこの私、笹瀬川佐々美は大学にてプロにスカウトされましたのよ!」
理樹「ええー!凄いじゃないか!」
笹瀬川「ふっ、私の実力を持ってすれば当然のことですわ!」
理樹「これはサインを貰わなくちゃね」
笹瀬川「いえいえ、プロと言ってもそんな有名な所ではございませんわ。しかしゆくゆくは日本代表に選ばれて世界にその名を轟かせますの!」
理樹「本当に凄いや笹瀬川さんは…夢を本当に叶えるんだから」
笹瀬川「まあ好きでやっていたので。所で貴方これからはどうするおつもり?そんな状況なら今からでも大学に行った方がよくなくて?」
理樹「か、考えてなかった…」
笹瀬川「はあ…ほとほと呆れますわ、まあ住む所やお金に困ったのなら私の所へ来なさい、チンジャオロースぐらいなら振る舞えますわ」
理樹「うん、ありがとう」
理樹(そろそろ練習の邪魔になりそうなので退散した)
>>46
マジかよ…OBのBってボーイだったのか!
理樹(そうか、これからの事を考えてなかったな……病院でのリハビリもあるし、もうこの際修行してパン屋でも開こうかな?)
コロコロ
佳奈多「あらっ?」
理樹「あっ」
佳奈多「そのマヌケな顔は直枝かしら」
理樹「二木さん!」
佳奈多「ふふっ、冗談よ。さっき葉留佳から電話でこっちに来るって聞いてたからいつ会う物かと思ってたわ」
理樹「その格好…もしかして先生になったの!?」
佳奈多「ええそうよ、…何よ別に珍しい事じゃないでしょ母校の先生になる人は」
理樹「いやてっきりどこかの会社で幹部でもやってるのかと……」
佳奈多「それもいいかもしれないわね」
ダダッ
佳奈多「そこ走らない!貴方達あとで風紀……職員室に来る様に」
理樹「あははっ」
佳奈多「な、何よ…」
理樹「まだ風紀委員長の時の癖が抜けないんだね」
佳奈多「悪かったわね、ここにいると時折、高校生の気分になってしまうわ」
理樹(僕に至ってはまだ高校生のつもりなんだから分からなくもない)
理樹(そういえば気になる事があった)
理樹「二木さんはもう付き合ってる人はいるの?」
二木「なっ!?」
理樹(許婚の話はおじゃんにしてしまったけどもうそういう浮ついた話はないかな?)
二木「あ、ある訳ないでしょうがまったく!こんな人間を好きになる人がいたら是非会ってみたい物ね」
理樹「案外近くにいるんじゃない?」
二木「そうかしら…ま、私には今の所縁のない話よ。じゃあもうそろそろ戻るわ」
理樹「うん、また今度は自力で立てる時に」
二木「それは何年後の話かしら?」
コロコロ
理樹(校門の前に車が止めてある)
恭介「もう満足かい?」
理樹「うん、来ようと思ったらまた来れるしね」
真人「よし!じゃあ久しぶりに全員で飯だっ!」
鈴「うん、全員だ」
恭介「行き先はファミレスだな?」
理樹(その後また皆で笑いながら一日を過ごした)
コロコロ
理樹「それじゃあ皆またね」
恭介「おう、何かあったらすぐ呼んでくれ」
来ヶ谷「それとアレを言わなくていいのか?」
クド「わ、わふ~…」
理樹「……?」
理樹(どうしたんだ?急に皆よそよそしいく…)
真人「実は理樹に言ってねえ事がある…」
理樹「な、何さ…」
クド「実は私達付き合いましたー!」
理樹「あ……?」
恭介「お前が寝てる間にな、なんと真人と能美が付き合ったんだ!サプライズ報告だぜ!」
理樹「えっ…」
葉留佳「そして実は私ももう彼氏出来ちゃったんだ…なんて」
理樹「は、葉留佳さんも?」
来ヶ谷「はっはっはっ。実におめでたい話だ」
葉留佳「またまた~!姉御もいるんでしょ?好きな人が」
来ヶ谷「あっちが勝手に言い寄って来ているだけだ、まあアレが数年続いたら考えてやらん事もないがな」
恭介「俺もこいつらの彼氏は知らんがいつか探偵でも雇って正体を暴くしかねえな」
西園「恭介さん自身がもう探偵の様な物だと思いますが…」
恭介「ふっ…俺の灰色の脳細胞でお前らを追い詰めてやろう」
理樹「ちょっと待って…一変に凄いニュースを聞かされて何が何だか……」
鈴「理樹」
理樹「何さ?」
鈴「祝福しろ」
理樹「それってどういう……」
謙吾「実を言うとな……」
恭介「鈴にも好きな奴がいるんだ、2年前からな」
理樹「嘘!?」
来ヶ谷「嘘じゃないさ、聞き出すのには苦労したよ」
理樹(頭が痛い……皆からの報告を聞かされて急に胸も苦しくなった、何でだろう…もう今は1人になりたい)
謙吾「ではそろそろ行くか」
西園「はい」
クド「またなのでーす!」
理樹(謙吾と西園さんの手を握ってる姿が見えた、頭痛がしてきた)
恭介「じゃあな理樹、また今度」
理樹「あ、うん」
葉留佳「ばいばーい!」
理樹「うん…」
ウィーン
理樹「………寝よう」
病室
理樹「……当たり前さ」
理樹(普通こうなるのは当然のことだった、10年も経てばそりゃ誰かは誰かと付き合うのは自然の流れだ…)
理樹(でも…これじゃあまるで僕1人まだ蚊帳の外みたいだ)
理樹「お休みなさい」
理樹(こうして夜は老けていく)
…………
……
…
理樹部屋
理樹「ううん…」
真人「起きたか?」
理樹「あれ…真人どうしてここに?」
真人「何寝ぼけた事言ってんだよ、とにかくもう夜だぜ。飯食えるよな?」
理樹「うん…」
真人「よし!じゃあ食堂に行くぜっ!あいつらも多分まだ待ってるからよ」
理樹「僕のために何だか悪いね…」
食堂
恭介「おっ、間に合ったか」
葉留佳「もう理樹君の分もありますヨ!」
理樹「うん、皆ありがとう」
クド「それではいただきますっ!」
鈴「いただきます」
理樹「いただ………えっ?」
ここまで
いやまだ終わってねえよ!今日の夜に再開するつもり
ガタッ
真人「どうした?」
理樹「なんで皆若返ってるのさ……」
謙吾「若返るだと?」
葉留佳「我らのエースはまだ寝ぼけてるんですかネ」
クド「夜更かしは感心しません!」
理樹「いやそうじゃなくて皆高校なんかとっくに卒業して僕は車椅子に…乗ってない!?」
理樹(確かに自分の足で走っていた、そして皆顔が昨日に比べて若いしそういえば校舎の色も元通りだった)
理樹「夢を見てたのか…?」
葉留佳「だーかーらっ!そう言ったじゃないですカ!」
来ヶ谷「その話はあとにするとしてそろそろチャイムがなるんじゃないか?」
真人「げっ」
先生「メール欄にsagaは必ず入れるように。ここテストに出るぞ~……」
真人「んが…」
理樹「………」
理樹(その日は昨日の事が気になって授業が一切頭に入らなかった)
コツコツ
理樹(やっぱり昨日の話は夢だったのかな……だってやっぱり10年後なんて今考えたらとてもじゃないけど信じられないし)
トントン
理樹「誰?」
鈴「どうした」
理樹「ええっ?」
鈴「理樹の調子が悪い。どーかしたのか?」
理樹「いやいや何でもないよ、心配かけてごめん」
鈴「ん…ならいい、これをやる」
理樹(鈴が手をグーにしたまま何かを差し出すので手を受け皿の様に開いた)
ポトッ
理樹「あ、飴?」
鈴「それ食って寝ろ、あっという間に元気だ」
理樹「ありがとう…」
理樹(僕への好意は素直に嬉しい。でも…)
恭介『鈴にも好きな奴がいるんだ、二年前からな』
理樹(これを聞いたあとじゃ手放しじゃ喜べない…いや夢の中の話何だけどさ…)
夜
理樹部屋
理樹(早速鈴からもらった飴を舌で転がしながら思いに耽(ふけ)った、そしてさっさと忘れようと努力してみる)
理樹「寝よう…」
真人「ふっ…!ふっ…!あれ、理樹もう寝るのか?」
理樹「うん、ごめん今日は遊べそうにないや」
真人「オーケー…俺、悲しくなんかないからよ……」
理樹「ごめんってば…」
理樹(こうして今日も夜は更けていく……)
…………
……
…
チュンチュン
ムクリ
理樹(………)
理樹「嘘だろ……」
理樹(もう一度寝てみた)
ムクリ
理樹「……やっぱり本当か…」
理樹(起きたら病院に居た、そしてベッドの横には車椅子もしっかり置いてある。いよいよどっちがどっちか分からなくなってきたぞ…)
ガチャ
理樹「うわっ!?」
コロコロコロ
看護婦「直枝さん、朝ご飯の時間ですよ」
理樹「はぁ……困った」
看護婦「?」
理樹(はたしてどちらが夢でどちらが現実
なのか……こういう時は誰か賢そうな人に相談したい)
1.鈴
2.小毬
3.クドリャフカ
4.葉留佳
5.西園
6.来ヶ谷
7.二木
8.笹瀬川
9.恭介
10.謙吾
ガラッ
葉留佳「どっ、どーしたの理樹君!?いきなり大事な用だって……」
理樹「かなり凄く最優先でヤバい事なんだ。先に言っておくけどこれは冗談なんかじゃないよ?」
葉留佳「ごくり…」
葉留佳「へー」
理樹「信じてないでしょ!?」
葉留佳「や、や、信じてますヨ!?だって理樹君が言う事だしなんか話も妙にリアルだったもん」
理樹「『妙に』は余計だよっ!…それでどう思う?」
葉留佳「うーん…難しいけどもうどっちも本当の世界でいいんじゃない?」
理樹「はっ?」
葉留佳「そーだ!よく考えれば理樹君今凄く面白い状況じゃないですカ!今日は10年後、次の日は10年前…って一日ごとにタイムトラベルしてるんですヨ?」
理樹「タイムトラベルか…でもそれならパラレルワールドかな?僕が起きた世界と起きなかった世界と」
葉留佳「いやいや、分かりませんナ…例えば10年前に戻った時に理樹君が私に告白してたらその次の日私は誰かが好きだなんて話すら無くなってたりして……」
理樹「ええっー!?」
葉留佳「やはは…ホンのジョークジョーク!」
理樹「でもそれなら10年前は起きてるのになんで今の僕は病室にいるのさ?」
葉留佳「あっ」
理樹(何年立ってもどこか抜けている所は直ってないらしい、でもこういう人ほど思わぬ事を教えてくれる)
理樹「こうなったのをメリットとして考えるなんて思いもしなかったな……」
葉留佳「じゃーそろそろ私も、もう帰りますネ」
理樹「うん、わざわざごめんね」
葉留佳「はいはーい!じゃーねー!」
バタン
理樹(次は誰に聞こうか?)
1.鈴
2.小毬
3.クドリャフカ
5.西園
6.来ヶ谷
7.二木
8.笹瀬川
9.恭介
10.謙吾
お休み(∵)
胡蝶の夢だっけ?こういうの
>>80
そういう先に言うのマジでやめて
教科書に必ず出てくる一般常識なんだからそれくらいはゆるしてやれ
>>82
一応文系に行ってたはずなのにアホ校過ぎて習わなかったぜ!(白目)
今日の9時に再開
コロコロコロ
笹瀬川「あら」
理樹「やあ、また来て申し訳無いんだけどさ…」
笹瀬川「別に迷惑ではありませんわ、わざわざあなたのために我がソフトボール部の練習を中断させるだけで」
理樹「いやいやいや…言葉に棘が刺さってるレベルじゃないよ」
笹瀬川「で、何か私に用がありまして?」
理樹「まあ用というか相談なんだけどさ…」
理樹「
笹瀬川「相談?」
理樹「真面目に聞いてくれなくていいよ、この話は僕だって信じられないんだから」
笹瀬川「なかなか興味をそそる前振りですわね…いいでしょう。貴方たち!休憩ですわっ!」
理樹「事の始まりは数日前……」
笹瀬川「…なるほど、話はだいたい分かりました」
理樹「それで君の意見を聞いてみたいんだ」
笹瀬川「別に構いませんがどうしてあの棗先輩や来ヶ谷さんに相談しませんでしたの?」
理樹「いや~、何故か君の顔が二番目に思い浮かんでさ」
笹瀬川「『二番目』が気になりますがまあいいでしょう…。実は私同じような話を知っていますの」
理樹「えっ、それ本当!?」
笹瀬川「もちろんですわ、確かその話の名は…」
「胡蝶の夢でしたっけ?こういうの」
理樹「えっ!?」
理樹(後ろを向くとさっきまで休憩していた笹瀬川さんの教え子が立っていた)
理樹「ぬ、盗み聞き?」
教え子「嫌ですね~佐々美様と話をしようと思っていたら偶然聞いちゃっただけですよ!」
理樹「……佐々美様?」
理樹(まさか今でもあの取り巻きの様な部下に教え子を改造してるんじゃないだろうか)
笹瀬川「ちっ、違いますわ!この子が勝手にそう呼んでるだけですの!」
理樹「そう…。所でさっき言ってたナントカの夢って?」
教え子「えっ、ああ!すいません。てっきり学校で習ってるから知ってるかと」
理樹(ということは僕が寝てる間に学校で出たんだろう)
理樹「ごめん、ちょっと詳しく教えてくれないかな?」
教え子「えへん!では説明します、胡蝶の夢とは昔の中国辺りに居たお偉い方が考えた哲学みたいな物です」
教え子「夢の中で胡蝶…これは蝶の事ですね、その蝶としてひらひら~っと飛んでいた所、ハッ!っと目は覚めたんですがはたして自分は蝶になった夢をみていたのか…それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか…ってな話です」
理樹「……なるほど、確かに今の僕にぴったりな話だ。でも僕はここが現実だと思う」
教え子「理由を聞きましょう」
理樹「だって今僕はここにいる訳だし夢ならこうして考えることも無いはずだよ、ほらっ、なんて言ったか『我思う故に我あり』って言葉もあるじゃないか」
教え子「それは自我の証明についてですよ。意識がはっきりとしてるから本物の世界…なら昨日は朦朧としながら生活していた?あなたは昨日自分が何を考えていたか鮮明に覚えているのでは?」
理樹「そう…だけど」
教え子「ずばり誰もがこの世界が現実だと証明出来ないのですよ」
理樹「……っ」
教え子「なんて!すいません、少し言葉遊びが過ぎましたね!それではこの辺で」ペコリ
タッタッタ
笹瀬川「…まったく、あの子ったら私のセリフを全部取っていきましたわ」
理樹「はは…10歳下の子に何も反論出来なかったや……」
笹瀬川「はぁ……直枝理樹」
理樹「何さ?」
笹瀬川「あなたの置かれてる状況には同情しますわ。でもこんな考え方もありましてよ?『どちらの世界も本物』だと」
理樹「あっ…」
笹瀬川「どちらがどうとかそこまで思い詰める事でもないと思いますわ。ただ何も考えず二つの世界を生きるのも悪くは無いかと」
理樹「笹瀬川さん…!」
笹瀬川「所でリハビリはあとどのくらい?」
理樹「それが真人のトレーニングのおかげか医者にも驚かれるほどの回復振りでさ、あと一週間ぐらいで退院かな」
理樹「実はまだ考えてないんだ」
笹瀬川「なら、次の住む所が決まるまでウチに泊まっていきませんこと?」
理樹「えっ……ええっー!!」
笹瀬川「大声出さないで下さる…!?二度も言いませんわよ…!」
理樹「な、なんで」
笹瀬川「別に深い意味はありませんわ、今の話を聞いてしまっては『じゃあまた』なんて言って返せるとでも?」
理樹「悪いよ…」
笹瀬川「私に出来る事はこのぐらいだけ。さっきの話を私にしてくださった礼とでも言いましょうか」
理樹「でも笹瀬川さん彼氏とか居るんじゃないの?見つかったら大変じゃ…」
笹瀬川「貴方喧嘩売ってますの……っ!?」
理樹「ごっ、ごめん!」
理樹(何故かほっとした自分がいる)
理樹「じゃあ、やっかいになろうかな」
笹瀬川「ふん、一応連絡先を渡しておきますわ。それではごきげんよう」
理樹「じゃあね」
病室
理樹(どちらも本物でいい…か。なんだか考えさせるなぁ……)
理樹「でも皆がいない日がこんなに寂しくて退屈だとは思わなかった…失ってから気付く大切さをみじかに感じるね」
理樹(そして退屈を紛らわせるために早く床に就いた。そうして今日も夜は更けていく……)
…………
……
…
今日の分はここまで、また明日続きを書く、終わりじゃない
あっ、笹瀬川側のセリフ忘れてたから訂正
笹瀬川「そのあとは?」
理樹「えっ?」
笹瀬川「まさかホームレス生活をする訳でもなしこれから何処かのアパートを借りるとか考えてまして?」
理樹(そうだった……)
理樹「実はまだ考えてないんだ」
笹瀬川「なら、次の住む所が決まるまでウチに泊まっていきませんこと?」
理樹「えっ……ええっー!!」
笹瀬川「大声出さないで下さる…!?二度も言いませんわよ…!」
理樹「な、なんで」
笹瀬川「別に深い意味はありませんわ、今の話を聞いてしまっては『じゃあまた』なんて言って返せるとでも?」
理樹「悪いよ…」
笹瀬川「私に出来る事はこのぐらいだけ。さっきの話を私にしてくださった礼とでも言いましょうか」
理樹「でも笹瀬川さん彼氏とか居るんじゃないの?見つかったら大変じゃ…」
笹瀬川「貴方喧嘩売ってますの……っ!?」
理樹「ごっ、ごめん!」
理樹(何故かほっとした自分がいる)
ムクリ
理樹「………」
理樹(僕のベッドだ、やはり一日ごとに交代するらしい)
真人「なんだか冴えねえ顔だな、落ちてたカツでも食ったのかよ?」
理樹「うん…そんな所」
キーンコーン
理樹(今日は練習が休みだ、どこで暇を潰そう)
1.裏庭
2.食堂
3.自分の部屋
食堂
理樹(こういう時は腹一杯食べた方が頭が冴えるってものだね)
葉留佳「おや?理樹君じゃないですカ!」
理樹「やあ葉留佳さん」
葉留佳「こんな所で何してるの?」
理樹「食堂だから何か食べようかと思ってさ」
葉留佳「ふむふむ…じゃあご一緒してもよろしいかナ?」
理樹「もちろん」
理樹「でもこんな時間に食べちゃって大丈夫?」
葉留佳「これぐらい野球やってるから相殺ですヨ!」
理樹「そっか…。所で結局葉留佳さんの好きな人って誰さ」
葉留佳「なっ、なにーーっ!?」
理樹「葉留佳さんの好きな人なんだからきっと良い人に違いないよ」
葉留佳「いや…た、確かにいるっちゃいますが…その…」
理樹「応援するよ、ぜひ成功させてね」
葉留佳「……っ」
葉留佳「この……アホアホアホ!理樹君のアスペルガー!」
理樹「ええぇー…」
理樹(どうしたんだいったい…何か怒らせる事でも…あっ)
理樹「ご、ごめん!好きな人が居たのは10年後の君だったんだっ!」
ダダダッ
理樹「行ってしまった…」
次の日
恭介「どうだ、リハビリは進んでるか?」
理樹「もう少しだよ」
クド「今日は差し入れを持ってきましたー!」
小毬「私もお菓子持ってきたよぉ~っ!」
理樹「ありがとう皆」
葉留佳「さっさと治してさっさと遊びに行きましょう!」
理樹「うっ……」フイ
葉留佳「えっ、今目そらされた!?私嫌われてる!?」
理樹(違う葉留佳さんだと知ってても何故か顔を合わせずらい)
恭介「……」
恭介「理樹、ちょっといいか?」
理樹「別に構わないよ」
病院内屋上
理樹「何の話?」
恭介「…突然だが…三枝と何かあったのか?目覚めてそうそう喧嘩なんかしたんなら俺も心配だ」
理樹「き、恭介…」
理樹(どうしよう、これを説明するのは難しいな。いやもういっそのこと全部恭介に相談してみよう。必ず協力してくれるはずだ)
理樹「実はさ…」
理樹(最初は笑って冗談かと言われると思ったけど恭介は凄い真剣に僕の話を聞いてくれた)
恭介「そんな……まさかお前もか…」
理樹「えっ?」
恭介「実を言うとな…俺も以前、5年前にお前と同じ事が起きた」
理樹「まさか…」
恭介「これはお前が寝ている病院へいつもの様に見舞いに行こうとした時の事だ…」
恭介「俺はお前が心配すると思って言わなかったがな1人で病院へ行く先で事故にあったんだ」
理樹「車の事故!?他に誰か…」
恭介「いや、幸いにも車には誰も乗せてなかった。だが問題は事故が起きた後さ」
恭介「俺は事故からの眠りから覚めたあとお前と同じく10年昏睡状態になった世界にいた。そこではメンバーの何人かが結婚していてな、理樹もとっくに起きてその中に居た。相手は教えないが」
恭介「そこで戸惑いつつ状況に慣れようとした俺はその次の日もう一度びっくりした」
理樹「別の、直ぐに目覚めた世界に居たんだね」
恭介「ご明察。俺は訳が分からなかったさ」
理樹「となると今は?まだ二つの世界を行き来してるの!?」
恭介「最後まで言わせろ。そこで俺はとにかく誰かに話さずには居られなくなって親や親族に話したんだ…だがそれが間違いだった」
恭介「事故の昏睡状態から覚めた事もあり親はてっきり俺が狂ったのかと思ったらしく10年後の方の俺を精神病院へ送り込んだんだ」
理樹「嘘だ……」
恭介「そこからはもう本当に狂いそうだぜ、今日は上手い飯と良い仲間が居て明日は何が入ってるのか分からない薬と冷めた味噌汁にどこか頭が外れてる患者だ。こんな生活耐えられる訳がない」
理樹「それでどうしたの…?」
恭介「狂った日常をなんとか過ごしていたある日俺は10年後の方の精神病院で暴れた患者に襲われてまた重い気絶を食らった。そうしたら次の日違う方の世界で目が覚めてそれから二度と10年後の方へ行かなくなったんだ」
理樹「ほ、本当に!?」
恭介「嘘じゃこんな話とっさに考えられねーよ。そんで今いるここがその直ぐに目覚めた方の世界だ」
理樹「そうだったんだ…」
理樹(つまり…僕ももう一度気絶したり倒れたら一つの世界にずっととどまれるのか?)
恭介「お前もこんなことになってたからもしかして…とは思っていたがな」
理樹「ありがとう恭介。参考になった」
恭介「おう。とりあえずそろそろ戻るか」
理樹「うん!」
鈴「それじゃあまただ」
西園「お元気で」
理樹「うん」
葉留佳「えっと…ま、またね!」
理樹「そうだね、また今度っ」
葉留佳「……うんっ」
恭介「理樹!最後に聞くがお前はどっちの世界へとどまりたい?」
理樹「わ、分からないよ!」
恭介「そうか。じゃあまたな!」
理樹(まさか恭介も同じ目にあってたなんて…でもお陰でこの事態に終止符を打つ方法も確実ではないけど見つけた。あとはどちらの世界を選ぶか…だ)
理樹(そんな事を考えながらも今日も夜は更けていく……)
…………
……
…
続く
続くって言ってんだろ、良い加減にしろ!
カキーン
恭介「一塁ダッシュ!」
理樹(恭介の体験は非常に参考になる。だけど、だからと言って同じ様に気絶して元に戻るという訳ではないかもしれない。もしかすると選んだ世界の反対にずっと居続けかもしれない……それでも行動はしないとだけど)
鈴「理樹、次行くぞ?」
理樹「うん、こい!」
ビュッ
医師「直枝さんにはもう退院許可を出してもいいでしょう」
理樹「あっ、ありがとうございます!」
謙吾「やったな。これで自分の足で街を闊歩出来るじゃないか」
理樹「これも皆のおかげさ」
クド「わふー!流石リキですっ、僅かな時間で治しちゃいました!」
葉留佳「あっクド公ズルい!私も抱きつくーっ!」
理樹「や、やめて」パシッ
葉留佳「えっ…」
理樹「ああ、いやごめん!ただ恥ずかしかったんだ、この年じゃ流石にそういうのはさ…」
真人「んだよ理樹が三枝の事嫌いになっちまったのかと思ったぜ!なあクド」
クド「そーですねっ!凄くびっくりしてしまいました」
葉留佳「やはは…もー怖いなぁ理樹君は」
理樹(うっ……)
ガチャ
医師「む?なんだ君は!ここは患者とその関係者以外立ち入り禁止だぞ!?」
「その関係者ですわ!」
鈴「お前は…ささささささみ!」
笹瀬川「さ・さ・せ・が・わ・さ・さ・みですわっ!何度言ったら覚えられますの!?」
理樹(まさか10年間このやりとりを続けていたというのか……!!)
恭介「所で笹瀬川が何のようだい?練習が忙しいんじゃないのか」
笹瀬川「確かに忙しいですがその前にそこの病人を連れ帰りに来ましたの!」
恭介「ウッソだろ理樹」
理樹「いや本当なんだ、これから笹瀬川さんの御宅にやっかいになる事に…」
葉留佳「……」
謙吾「ほお!同棲という事はもしかしてもう2人は付き合ったのか?」
理樹「そっ、そんなんじゃないよ全然!」
理樹「笹瀬川さん、それじゃあもう少しだけ皆と喋ってるから良かったらこっちに来なよ」
笹瀬川「わ、私は別にそういうのは…」
小毬「さーちゃんも一緒にお祝いしよーよ!」
笹瀬川「かっ、神北さんまで…」
恭介「ふっ…じゃあ今日はこれから全員でファミレスだぁーっ!!二木も呼べよ三枝!」
葉留佳「あっ、うん。そうですネ…」
葉留佳「すみません恭介さーん!ちょっと理樹君とジュース買ってきますネ!」
恭介「許可する、出来るだけ早く帰って来いよ」
葉留佳「はーい!」
理樹「えっ、ちょっと僕喉なんか渇いて…!」グイッ
自動販売機前
理樹「急にどうしたのさ?」
葉留佳「うん…あのさ……」
葉留佳「私なにか理樹君に嫌われる事しちゃったかな…なんて」
理樹「な、何もそんな事ないよ!」
葉留佳「絶対嘘だよ、だって理樹君目覚めてから私にだけおかしいもん」
理樹「いやその…葉留佳さんのせいじゃ無いし……」
理樹(あちらの葉留佳さんとは何故かその後も擦れた関係なのにこっちでは何も無かったかの様に装うことなんて出来ない)
葉留佳「何かあるんなら言ってよ!私が悪いなら謝るからっ!」
理樹「もういいじゃないか!葉留佳さんだって他の皆と同じ様に好きな人と一緒にいればいいっ!」
理樹(自分の言葉にすぐ後悔してしまった…なんて事を言ってしまったんだろう僕は)
葉留佳「……好きな人の正体教えようか?」
理樹「えっ…?」
葉留佳「実は私が好きだったのは理樹君何だよ」
理樹「……っ!」
葉留佳「好きになったのはなんと高校の時の一番最初に会った日、昔好きだったベンチで遅刻について話した時だったんですヨ?」
理樹「そんな…」
葉留佳「でもそんな恋ももう終わり、だって笹瀬川さんのことが好きなんでしょ?理樹君は」
理樹「いや……」
ガコン
葉留佳「それじゃあ先…行ってるから!」
理樹「あっ…」
理樹(また先に走られた)
ウィーン
恭介「今日は楽しかったな理樹」
理樹「そうだね…」
鈴「今度は遊べる所がまた増えるな、ちなみに来週はモンペチの特売日だ」
西園「さっそく荷物持ちさせる気ですか?」
佳奈多「病人にはそれぐらいが丁度いいトレーニングになるのよ」
笹瀬川「それでは皆さん今日はどうもありがとうございました、また会いましょう」
葉留佳「ばいばい、理樹君」
理樹「あ…またね…」
恭介「どうしたもう眠いのか?」
理樹「う、うん」
恭介「それじゃあまた来週な、お前もいつかは決断しろよ。どちらを選ぶかを」
理樹「……そうだね」
ウィーン
ブロロロロ
理樹(10年後のこの世界に居るつもりなら多分笹瀬川さんとこのまま仲良くなるのかもしれない。でもあちらの世界で居るならもう葉留佳さんを友達以上に見てしまうだろう……)
笹瀬川「さあ、入りましょう」
理樹「あっ、そうだね」
ガチャ
理樹「うわ広い……」
理樹(笹瀬川さんの家はマンションだったが高級住宅街なので当たり前だがとにかく広くて豪華だった)
笹瀬川「もともと私1人では使いきれないスペースですから貴方のお気遣いは全く入りませんわ」
理樹「でもこうしているとなんだか昔の同棲生活を思い出すね」
笹瀬川「なっ!私それは絶対言わないでおこうと思いましたのに!!」
理樹「えっなんで?」
笹瀬川「あんな猫になるなんて不可思議な出来事は恥ずかしくて二度と思い出したくありませんの!」
理樹「でもクロは…」
笹瀬川「それとこれとは別ですわっお分かり!?」
理樹「わ、分かったよ…」
笹瀬川「とにかく、今日はもう寝なさい。お古ですがベッドもわざわざ用意させましたのよ?」
理樹「えっ悪いよ!」
笹瀬川「もう今から業者に引き払ってもらうのも面倒ですしどうだっていいですわ。それとも私と一緒に寝たいとかいう変態でしたかしら?」
理樹「いやいやいや……」
笹瀬川「では私シャワーを浴びるので貴方も後で入りなさいな」
理樹「ありがとう」
理樹(でも今日はある実験をやってみたいと思う。ずばり僕が一度も寝ずに朝を迎えたらどうなるかだ)
理樹(これまで何故思いつかなかったんだろう。一日くらいなら僕だって我慢出来るだろうしやってみる価値はあるはずだ)
笹瀬川「それではお休みなさい、貴方の部屋はあっちですわ」
理樹「うん…」
ガチャ
ドスン
理樹「………」
理樹(このままだとどうなるのか不安だ。でも恭介の様にずっとこのままだと僕の心が持つ自信がない……でも、もしもだ)
理樹(もしもどちらの世界か選べるとしたら僕は……)
1.10年後のこの世界にいたい
2.あちらの世界にいたい
理樹(あちらの世界にいたい。葉留佳さんを傷付けてしまったことを謝りたい、そしてこの世界の葉留佳さんから聞いた彼女の気持ちに答えたい)
理樹(わがままなんだろうけど僕は恭介と同じく何事も起きなかった世界に戻るのが正しいと信じる)
グラッ
理樹「あ……れ…?」
バタリ
"00:00"
ムクリ
理樹「……うう…」
理樹「ここは…『どっち』だ?」
真人「おはよう理樹」
理樹「ああ、うん」
理樹(どうやらまだ学生の様だ。変化があっても無くてもこれは変わらない)
カチャカチャ
ガタッ
葉留佳「……ごちそうさま」
理樹「待って葉留佳さん!」
葉留佳「な、なに?」ビクッ
理樹「もしもさ、明日僕がまだこの世界にいたら話したい事があるんだ」
葉留佳「えっ……?」
理樹「じゃあまた!」
葉留佳「どっ、どういうこと!?」
夜
理樹「さあどうなる……」
真人「何言ってんだ?」
理樹「真人、クドと仲良くね」
真人「はあ?」
理樹「お休み!」
真人「……変な奴だな…お休み」
チュンチュン
理樹「………」
理樹(……!!)
ガバッ
ガチャッ
ダダダッ
理樹「はぁ…はぁ……」
葉留佳「あれっ、こんな朝早くに理樹君じゃないですか…」
理樹「ぜぇ……葉留佳さん……!」
葉留佳「?」
理樹「『昨日』言ってたことを今話すよ」
葉留佳「そういえば言ってましたネ、お聞きしましょう」
理樹「実は僕さ……」
終わり
これを見ている全国のはるかな姉妹、笹瀬川、小毬ファン以外の皆…勝手に誰かと付き合わせて申し訳ない!本当に今日でここまでだ!
理樹(この世界にいたい。笹瀬川さんの恩義は忘れられないし10年間待ってくれた恭介達から別れるなんて出来ない)
理樹(わがままなんだろうけど僕は確かにあった事を現実として受け止め、それを信じる)
グラッ
理樹「な……!?」
バタリ
"00:00"
ムクリ
理樹「うぐっ…」
ジャー
理樹(あちらからフライパンで油が跳ねた音がする…)
ガチャ
笹瀬川「おーっほっほっほ!」
理樹「笹瀬川さんおはよう…」
笹瀬川「あら直枝、朝からチンジャオロースは食べられるかしら?」
理樹「僕の好物を覚えていてくれたんだね」
笹瀬川「いっ、いいえ!あくまで私が1番作りやすかっただけですわっ!」
理樹「……ありがとう」
理樹(どんな原理かは分からないがとにかく僕はこの世界を選べたらしい。謎だらけな出来事だったがこれだけは言える、今は確かに幸せだと)
笹瀬川ルート終わり
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