メイド「お呼びでしょうか、親方様」(15)


親方「さよう、今日君に来てもらったのは他でもない。君に頼みたいことがあるのだ」

メイ「…光栄です。何なりとお申し付け下さい」


親方「…君とはもう十年来の付き合いになるか…」

メイ「…このメイド、あの日、親方様と奥様に拾われていなければ、シチリアの路地裏で息絶えておりました。忘れようはずもありません」

親方「…そうか、もうそんなに時が過ぎたか」

メイ「して、私のような若輩者をメイド養成学校から呼び戻したのは、一体どのような御用件でしょう?」


親方「君は私の息子を知っておるか?」

メイ「はい、確か日本で学生をしておられるとか…」

親方「…そう、今年で二十歳になる。私の自慢の息子だ」

メイ「? そのご子息が如何されましたか?」



メイ「」


親方「…恥ずかしい話だが、息子は、私達夫婦が六十になって出来た初めての子でな。目に入れても痛くない」

メイ「…………」

親方「…だが、今年で私達は八十を迎え、いつあの世からお迎えが来ても不思議ではなくなった…」

メイ「…………」

親方「だが、私達には願って止まぬ望みがある」


メイ「……親方様の望み?」

親方「孫だ。初孫とやらをこの手で抱いてから死にたい」

メイ「…………」

親方「今回、君には直接日本に行って貰い、息子の男女関連の調査をお願いしたい」

メイ「…そして、あわよくば子作りに励んで頂く、と…」

親方「……然り。我が野望の成就、君の双肩にお願いしたいのだが」


メイ「了解しました。…このメイド、全力でご子息のご子息を管理させて頂きます」

親方「…ああ、任せたよ」


メイ「……では向かわん!いざ、少子化進む日出る国へ!」

………………
……… 

(新宿 地下街)


ワイワイガヤガヤ……

メイ(…と、意気揚々日本に来たのはいいが、早速道に迷ってしまったな…)

メイ(…ふむ、どうしたものか?)

メイ(む、あそこにいるのはヤポネーゼ・オマワリサン)

メイド「あ、アノー、スミマセン」

警官「! …え?なに、外人さん!?」


メイド「チョト、michi、オキキ、シタイ」

警官「えあわわ、…お、おうけぇ。michi、ききたい、おうけぇ…」

メイド(? 何故この警官までカタコトなのだ?)

警官「そぅりー、おジョさん。michi、何処?」

メイド(…しかも何故謝るのだ?)


メイド「チョト、michi、オキキ、シタイ」

警官「えあわわ、…お、おうけぇ。michi、ききたい、おうけぇ…」

メイド(? 何故この警官までカタコトなのだ?)

警官「そぅりー、おジョさん。michi、何処?」

メイド(…しかも何故謝るのだ?)

…連投ソーリー


メイド「…ニシオギクバ」

警官「ニシオギクバ?…ええと、西荻窪?」

メイド「……」コクリ

警官「ち、ちゅーおぅらいなー、い、一番乗りば。…jr列車いず、オレンジカラー!いっつ!オレンジカラー!

メイド(ふむ、…よく分からないが、橙色の電車に乗れば良いらしいな…)

メイド「アリガトー、オマワリサン」


警官「は、はっば!ないす、ほりでぃ…!」

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