デーンデーンデーンデーンディンドン
デーンデーンデーンデーンディンドン
根暗亭シンジです 今日は馬鹿馬鹿しい話しにおつきあい願います
分らないものだらけの世の中ですがよくできているなあと思いませんか
カタカナのトの字に一の引き方で上になったり下になったり
トの上に一を持ってくると”下”という字になって上の棒がつっかえになって
上にいる人の事が見えないんみたいなんです
逆にトの字の下に一を書くと”上”と言う字になって同じように下の事がわからないんですって
その点”中”って字はすごいんですよ
口という字に棒が一本抜けているから上にも下にも口が利けるって事なんですって
今の偉い人はそんな事無いでしょうが昔のお殿様やお姫様くらいになると僕らみたいな
下々の事が何にもわからなかったんですよ
でもしょうがないですよね
生まれた時からそのまま大事に大事に育てられて殿様にされちゃうんですから
余計な事なんか知らなくて当然ですよね
あるお姫様がネギの入った味噌汁をすっごく気に入ったそうです
綾波姫「これ…何?」
家来マリ「ははーネギ入り味噌汁でございますー」
綾波「なんだか…ぽかぽかする…うちでも作れるの?」
マリ「へへーおーせのままにー」
早速家来の人はお城の隅を耕してネギを植えました
出来上がって味噌汁にしてお姫様に差し上げたんです
綾波「これ…何?」
マリ「お姫様の大好物のネギ入り味噌汁ですにゃ」
綾波「これが…?前のと何か違うと思う」
マリ「うーん、前のは城下町で買ってきた奴だったから、多分肥料に下ごいを使ってたと思いますけど今日お出ししたのはお城の隅っこで清らかーな水だけで作ったからちょっとおいしくないのかもしれませんにゃ」
綾波「そう…下ごいを掛けてないからぽかぽかしないのね」
マリ「うーん多分…」
綾波「なら少しこれに掛けてきて」
なーんて言うんですからすごいですよね
またあるお姫様は秋のさる日に家来を15,6騎お連れだってお城から少し遠くにお出かけになりました
今の中目黒辺りまでくると馬からばっと降りて大きく伸びをした後家来の人にお声を掛けたそうです
アスカ姫「ちょっと!バカ三太夫!」
シンジ三太夫「はい、なんでしょうか?」
アスカ「んっ!」
シンジ「へっ?」
アスカ「あんたバカぁ?こんな遠出して手え差し出してるっていったらお弁当しかないでしょう!ほらサッサと出す!」
シンジ「え~っと、ごめんなさい」
アスカ「はぁー?まさか持ってきてないっていうの?」
シンジ「仕方ないじゃないですか!姫が急に遠足に行きたいなんて言うからお弁当作る暇なかったんですよ」
アスカ「口答えすんな!バカ三太夫!おーなーかーすーいーたー」
なんて言っちゃって暴れだしちゃいました
人間って不思議な物でさぁどうぞってご馳走出されたらそんなに食べたくならないのに
食べられない時に限って余計に食べたくなっちゃうんですよね
しばらく暴れた後諦めたのか馬に乗って城に帰っていた時に姫が言いました
アスカ「ねぇ三太夫、なんかいい匂いがするんだけどコレって何の匂い?」
シンジ「多分サンマだと思いますよ、近所で誰かが焼いてるんじゃないですか?」
アスカ「サンマ?そのサンマって何よ?」
シンジ「海でよく取れる長い魚ですよ」
アスカ「ふーん、アタシそのサンマって奴食べた事ないわよ」
シンジ「そりゃそうですよ、サンマは雑魚ですから姫の口には合いませんよ」
アスカ「何言ってんのよ!あれが食べれてこれが食べれないなんて贅沢言ってんじゃないわよ!
食べられる時に食べないなんて、そのサンマにも失礼よ!サッサと持ってきなさい!」
一度言い出したら後には引きません
仕方ないから三太夫さんは匂いを頼りにあちこちの農家を探しました
シンジ「あの…ごめん下さい」
農民加持「やあ、お侍様がこんなしみったれた農家に何の用だい?」
シンジ「あの、サンマを焼いてたのってあなたですか?」
加持「あぁ失敬、もしも気に障ったのなら勘弁願いたい、今朝方スイカを売りに行った帰りに浜辺で売ってたんだが安くてな、フィアンセと
一緒に食おうと思ってね」
農民ミサト「お願~い見逃して~私お酒のつまみが無いと死んじゃうの」
シンジ「いえそんな咎めてるわけじゃないんです、実は僕の仕えてる姫様がサンマを食べたいといって聞かないものですから…その少し分けて頂けませんか?」
加持「欲しいってんなら別に分けてもいいけど、そっちはいいのかい?姫様にサンマなんてもの食わせたりして」
シンジ「いいんです、一度言い出すと聞かないから」
加持「了解、苦労してんだな君も」
それでこれからまたサンマを焼くわけなんですけど備長炭とかの上で焼いたり金串に差して形よく焼く訳じゃないんですよ
農家のことですから庭先でたき火をしてそこに”おき”っていうのができるんですけど
その中に丸ごとサンマをいれちゃうんですよ
ちょっと雑ですよね
で焼きあがると真っ黒になってジュージュー言ってあちこちから小さく火が出てるんですよ
尻尾のとこなんか炭がついてたりしましてね
粗塩をパっと掛けて大根おろしを横に添えてお姫様にお出しする
アスカ「これがサンマね、三太夫どうやって食べるの?」
シンジ「ちょっと待って下さいね」
というと手際よく骨を取ってあげる
それでお食べになったんですがそれがおいしいのおいしくないのって
それもそうですよね
焼きたての上に秋の脂のよーく乗ったサンマ
少し辛すぎるくらいのお塩にこれまた旬の大根おろし
朝からずっと馬に乗ってあちこち遊びまわったんですから
人間お腹が空いてると何を食べてもおいしいんですから
アスカ「おかわり!」
と言って皿を出すと三太夫さんが急いで骨を取る
アスカ「もう一匹持ってきなさい、早くして!」
なんて言っているうちにあっという間に農家の方の分までペロリと5,6匹平らげてしまいました
アスカ「ふうーまあまあだったわね」
シンジ「あのー姫…」
アスカ「ん?なーに三太夫?」
シンジ「今日サンマを食べた事秘密にしてもらえませんか?」
アスカ「なんでよ?」
シンジ「重役の方の耳に入ったら今日ついて行った全員が罰せられて最悪切腹しないといけなくなって…」
アスカ「ったく、しょうがないわね、黙っといてやるわよ」
こうしてお姫様は御一行を連れてご機嫌にお城に帰りました
でも姫様はサンマの事が頭から離れません
寝ても覚めてもサンマの事どころか
夢の中でまでサンマを見る始末です
もう一度サンマが食べたいと
それもそうなんです
お姫様や殿様の焼き魚といいますと殆どが尾頭付きの鯛だったそうです
ですが焼きたてなんて食べられません
毒見役って人が居てその人が端っこをちょこっと食べて2時間待つんです
2時間待って体に何もなかったらやっと姫は食べられるんです
その冷えた鯛が毎日ですから
アスカ「もう一度目黒に行ってサンマが食べたいなあ」
アスカ「ちょっとー、バカ三太夫」
シンジ「なんですか?姫」
アスカ「目黒っていい所だったわね」
シンジ「そうですね、紅葉が進んでてとてもきれいでしたね」
アスカ「紅葉なんてどうでもいいのよ、あの時食べたまあまあの魚よ」
シンジ「ちょ、姫様そのことは秘密に」
アスカ「あら、そうだったわね、それにしてもサンマまた食べたいなあ」
なんて時々言うもんですからみんな困っちゃいました
そのうちご親戚のお屋敷におよばれしましてね
昼ごろになると御料理番が出てきて
料理番冬月「本日のお食事は何なりとご注文を」
この時とばかりに姫様は
アスカ「アタシ、サンマでいいわ」
冬月「は?」
アスカ「サンマよ!サンマ!いいわね」
冬月「は、はあ…」
料理人ゲンドウ「姫君は何を所望された?」
冬月「サンマだ」
ゲンドウ「冬月先生、私をからかっているんですか?」
冬月「俺だって聞き間違いだと思ったけど確かにサンマって言ったんだ」
ゲンドウ「問題だな」
冬月「あぁ」
武家屋敷のお台所ですからサンマなんてあるわけありません
さっそく早馬を使いに出してサンマを取り寄せ
困ったのはこれからです
どうやって料理して出せばいいか料理番は色々考えました
まずは三枚におろしました
皮を毟りまして脂が強いのでこの脂がお体に障るかもしれないと一度蒸しました
脂をすっかりとしぼりました
小骨があるからといってピンセットで一本一本骨を取っていったんですが
形が崩れてなんだかぐずぐずになっちゃいました
このままではお出しできないというので餡かけにしちゃいました
お椀にいれましてね恐れながらと差し出しました
お姫様は待ちに待ったサンマです
あの黒くてジュージュー言ってる長い魚が出てくると思ったら
お椀が一つ出てきました
おかしいなっと思いましたが蓋を取って
匂いを嗅いでみるとかすかにサンマの匂いがしました
待ち焦がれていたサンマだと一箸つけると
これが本当にまずい 今まで食べた何よりもまずいったらありゃしない
それはそうでしょう一番おいしい脂をほとんど絞って捨てちゃったんですから
出し殻みたいなもので生臭いだけですもん
アスカ「………これ…何」
冬月「サンマでございます」
アスカ「嘘?これがサンマ?これどこから取り寄せたの?」
冬月「房州の魚市でございます」
アスカ「房州?あんたバカぁ!サンマは目黒って決まってんのよ」
おあとがよろしいようで
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