モバP「天才の夏」 (35)

モバマスSSです。

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――事務所


P「……」カタカタカタ……


P「……」カタカタ……


P「……」


P「暑いな……」



prrrr prrrr!


P「もしもし、Pです……はい、いつもお世話になっています」


P「はい……本当ですか!」


P「ええ、はい……日時は……はい、分かりました。ありがとうございます」


P「はい……では、失礼致します」



P「……さて、仕事か」



――事務所・研究室


コンコンコンッ


P「晶葉ー。入るぞー」



池袋晶葉「ふむ……これ以上は実験して確かめる必要があるな……」


晶葉「……おや、Pか。どうした?」


P「次の仕事の話だ……って、ここ涼しいな」


晶葉「ああ、事務所のサーバールームも兼ねているからな」


P「……ずるいな」


晶葉「節電とやらで事務室は使えないそうだな」ハハッ


晶葉「エアコンを切ったらサーバーも死んでしまうからな。そこはちひろも理解してくれている」


晶葉「代わりに管理は任されているが……まあ、安いものさ」


P「……まあいい。仕事の話だが、今大丈夫だな」


晶葉「ああ。次はなんだ?またトークというのなら、存分に……」


P「海だ」


晶葉「……海?」


P「ああ。ライブが入った」


晶葉「まさか」


P「まあ、色々あってな」


晶葉「よくわからないものだな……まあいい、これもいい機会だ!」


晶葉「夏と言えばロボ!ロボの夏を実証しようじゃないか!」


P「……ロボの夏?」


晶葉「ああ。君もそう思うだろう?」


P「そういうことにしておく」


――数日後


晶葉「……おいP、君の仕事は君の机でやりたまえ」


P「いいだろ、事務室暑いんだし」カタカタ


晶葉「ここが涼しいからって、居着かれると困る」


晶葉「皆がここに出入りするようになると落ち着いて研究も出来ないからな」


P「まあ、まあ。今日だけ」


晶葉「……それで、何か話でもあるのか?」


P「そうだった。イベントの詳細が決まったぞ」ピラッ


晶葉「ふむ……」


晶葉「……ん?どういうことだ、P」


P「どうした?」


晶葉「水着で……撮影!?」


P「ああ。前の打ち合わせで決まった」


晶葉「どうしてそれを早く言わない!?」


P「ダメか」


晶葉「い、いや……ダメではない、ダメではないが……」


P「?」


晶葉「……私だって女子だということを忘れていないだろうな?」


P「もちろん」


P「水着での撮影が恥ずかしいことも、まだ上手くは泳げないのも知ってる」


晶葉「なっ?!」


P「オフの日や空いた時間にこっそり練習してるらしいな」


晶葉「ど、どうしてそれを……!」


P「プロデューサーだからな。何年の付き合いだと思ってるんだ」


晶葉「うっ……。さ、流石は我が助手だな」


P「流石に泳いでるところを撮影……ってのはないだろうけど」


P「泳げたほうが困らないしなー」


晶葉「むぅ……確かに、そうだが」


P「スイミングレッスンでも入れるか?」


晶葉「い、いや、そこまでのことではない」


晶葉「しかしだな、その……」


P「どうした、晶葉?」


晶葉「……分かっているくせに、君ってやつは」


P「さあな」


晶葉「ふん……ああ、そうだ。どうでもいい話だが、この後Pは暇か?」


晶葉「暇なら私に付き合ってくれ。……少々、用事があってな」


P「はいはい。水着忘れるなよ」


――イベント当日


P「忘れ物ないな?」


晶葉「ああ。ロボも乗せた、衣装も積んだ、バッチリだ」


P「そうか。じゃ、出発するか」


晶葉「うむ。頼んだぞ」



晶葉「……ふふ、海か」


P「行った事なかったか?」


晶葉「見たことがある程度、だな。遊んだことはない」


P「そうか……それもそうだな」


晶葉「どうして納得するんだ」


P「ははは。気にしなくていいぞ」


――会場


晶葉「……」ムスー


P「ど、どうした晶葉……?」


晶葉「いや、私は感動しているんだ……雲ひとつ無い快晴のもと、海を楽しめることに対してはな」



一ノ瀬志希「んふふ~、久しぶりの再開なのにヒドいなぁ晶葉ちゃん♪志希ちゃん悲しいなー」グイグイ


晶葉「どうして志希がここにいるんだ……!」ゲシッ


P「あれ、知ってるのか」


志希「うんうんー、晶葉ちゃんとはいいお友達だよ~♪」


晶葉「ただの知り合いだ。それより、何故志希がいると言わなかった!」


P「あ……すまない、忘れてた。一ノ瀬さんが来るの、急遽決まったからな」


志希「ほーら、どうどうー♪志希ちゃん特製の落ち着くコロンでも~」


晶葉「やめろ!ろくな事にならないんだから!」


志希「って、あれ?どうして晶葉ちゃんがいるの?」


晶葉「どうしても何も、仕事だ。私がアイドルをやっていることくらい知っているだろう」


志希「ふーん……あたしと一緒かー」


晶葉「ああ……一緒?」


志希「そう!あたしもアイドルやってるんだよ~♪」


晶葉「……はは、冗談がきついな……なんの気まぐれだ?」



P「……一ノ瀬さんのプロデューサーさんですね」


P「初めまして、私は池袋晶葉のプロデューサーでPと申します」スッ


P「……そうですね、二人とも中が良さそうで微笑ましいです」



晶葉「おいP!これのどこが微笑ましいんだ……こら、やめろ!」


志希「にゃはは~……口ではそう言っても、匂いは正直だよ~?」クンクン


晶葉「あっ、あぁっ!やめろ志希!嗅ぐんじゃない!!」


晶葉「……まったく、酷い目に遭った」


P「なんかすごい人だな」


晶葉「まさか君は、一ノ瀬志希を知らないのか」


P「ああ」


晶葉「……海の向こうで大学を飛び級してきたような天才だ」


晶葉「分野は違えど、同じ理系だからな……嫌でも話は耳に入る。迷惑なものだ」


P「にしては凄く仲が良かったじゃないか」


晶葉「あれがそう見えたのか?」


P「……頑張れば見える」


晶葉「見えてないじゃないか」


晶葉「……志希はああいう性格だからな。自由すぎて私にはところどころ理解できん」


晶葉「あらゆる言葉を用いても言い表せないほどの変人だよ」


P「天才は総じて変わり者なんだな」


晶葉「……何か言ったか?」


P「さあね」


P「……もうそろそろ撮影の時間だな。行くぞ晶葉」


晶葉「……まあ、いいだろう」ハァ


晶葉「志希にも見せてやろうではないか、アイドルとしての私を!」



パシャッ


「晶葉ちゃん、こっち向いてー」


晶葉「こうか?」


パシャッ


「オッケー!次は……」



P「へぇ……結構上手くなったな。頑張ってるじゃないか」


P「前までは人前に出るのも苦手だったのに……って、今もそうか」


P「流石はアイドルだなぁ……」


パシャッパシャッ


晶葉「へへん♪私にかかればこのくらい!」




志希「……」ウズウズ


P「あれ、一ノ瀬さん」


志希「キミは……晶葉ちゃんのプロデューサーだっけ?」


志希「あと、あたしの事は志希でいいよー。キミより年下だし」


P「それじゃ、志希。行ってきていいぞ」


志希「おお~、流石は晶葉ちゃんのプロデューサーだねぇ。話がわかる!」キラキラ


志希「ってことで突撃ーっ♪」


P「やり過ぎるなよー。撮影なんだから」


志希「オッケーオッケー!あたしにおまかせ~」


パシャッ


「はい、じゃあ次は……」


志希「にゅふふふ……晶葉ちゃーんっ♪」ダキッ


晶葉「わっ、し、志希!?いつの間にっ、あ、待てっ!」


「おっ、いいねぇ志希ちゃん。そのまま続けて!」


パシャッパシャッ


晶葉「こ、こら!撮るな!」


志希「せっかくなんだから一緒に~♪ほらほら~」ムギュ


パシャッパシャッ



P「おお……」


P「……流石に俺が撮るのはまずいか。やめておこう」


晶葉「……P、君の差し金だな?」


P「なんのことやら」スッ


晶葉「知らないふりを通すなら、せめて目を合わせろ」


P「見つめ合うと素直におしゃべり出来ないんだ」


晶葉「馬鹿言え」


P「いい写真撮れたってカメラマンさんも言ってただろ」


晶葉「本当に危なかったんだぞ……!」ワナワナ


晶葉「私が何度抱きつかれて、匂いを嗅がれたと思ってる……!!」ブンッ


P「待て!待つんだ晶葉。ほら、ドライバー下ろせ、それ大事なものだろ、な?」


晶葉「うるさい、君の頭を今ここで直してやろうか!」


P「悪かった、悪かったから!」


晶葉「全く……調子を崩されてばかりだ」


晶葉「誰かのせいでな」ジロッ


P「あはは……ごめんな、晶葉」


晶葉「……せっかく、頑張ったのに」


晶葉「ちゃんと見ていて欲しかったのにな」


P「……俺は、見てたぞ」


晶葉「……」


P「いつも言動だけは恥ずかしげもなくあれこれ言えるのに」


P「人前だと緊張するのを堪えて、よく頑張ったな」


晶葉「……ふん、今更何を言っても……」


P「お疲れ様、晶葉」ナデナデ


晶葉「……ふん」プイッ


P「いつものことだろう」


晶葉「……それも、そうだな」


コソコソッ……


晶葉「……何をしているんだ、志希」


志希「あ、見つかっちゃった」


晶葉「……まるで反省していないな」


志希「にゃははは~。楽しかったからね♪」


晶葉「……まあ、いいだろう。言った所で聞くとも思えん」


晶葉「それで、敵情視察か?」


志希「そんなところだったけどー……お邪魔しちゃったみたいだから撤収~♪」


志希「お二人でごゆっくり~」


晶葉「……何だったんだ」


P「さあ……でも、面白い子だな」


晶葉「よせ、君にどうにか出来るような相手じゃないぞ」


P「分かってるって。天才は一人で十分だろう?」


晶葉「……ほう?」


P「アイドルとしては、晶葉が先輩だしな」


P「ひとつ見せてやりたいだろ」


晶葉「ふふ……そうだな。さっきの礼を返させてもらおうじゃないか!」



晶葉「……いや待て、騙されないぞ。志希を向かわせたのは君だろう」


P「さーて晶葉、そうと決まれば準備するぞー」


晶葉「おい、答えろP」


P「ははは。さあ、やってやろうじゃないかー」


――ステージ裏


晶葉「……P、ロボは大丈夫か」


P「ああ。ちゃんと動く」


晶葉「こっちも衣装はばっちりだ……少し、恥ずかしいがな」


P「そうか?似合ってるじゃないか」


晶葉「う、うむ……あまりこういうのは、慣れていなくてな」


晶葉「だって、露出が……」


P「……大丈夫だ、晶葉」


P「ちゃんと、見てるから」


晶葉「……そうだったな」


晶葉「……緊張しすぎて、すっかり忘れていたよ」


晶葉「君のその、表情だ」


P「表情?」


晶葉「ああ。こんな時だけ見せる、その真面目な表情」


晶葉「私には、それだけで十分だ」


P「晶葉……」


晶葉「人前に出るのは未だに苦手だし、ましてこんな格好だが……」


晶葉「ライブだって、こなしてみせよう。最高のお手本が、すぐ隣にいてくれるからな」


P「それって、まさか」


晶葉「……ふふん」



晶葉「P、行ってくる。今度はちゃんと見ていてくれよ?」


……キィン


晶葉「あー、あー……聞こえるか、諸君!」


晶葉「まだまだ暑い日々が続いているが……せっかくのライブだ!」


晶葉「今日の日差しにも負けない、熱い声援を期待しているぞ!」



ワァァァァァァー!!!



晶葉「さぁ、舞台装置……は、今回はないんだったな!」


晶葉「カモン!ウサちゃんロボ!」


晶葉「天才の夏、ロボの夏を是非楽しんでいってくれ!」




P「……さっきまでの不安はどこへ行ったんだか」


晶葉「……」チラッ


P「頑張れよ、晶葉」グッ


晶葉「……ふふん、いい調子だぞ!」


晶葉「そうだ、ひとつ今回のウサちゃんロボの新機能を……なに、時間が押してる?」


晶葉「……やむを得ん、次の曲だ!ミュージック、スタートっ!」




志希「……」ジーッ


P「ん、志希か」


志希「……!」ジーッ……


P「おーい……志希?」


P「すごい集中力だな。まだ衣装のままだし、全く気付いてない」


P「それだけ、衝撃的だったのか」


晶葉「……へへん、夏もいいものだな!楽しいライブだったぞ!」


晶葉「だが、まだまだライブは終わらない!バトンタッチだ!」


ワァァァァァァ……!!




P「……お疲れ様、晶葉。ほら、水分取っとけ」


晶葉「うむ、ありがとう……んっ、ぷはっ」ゴクゴク


晶葉「……ふぅ。いいライブだったんじゃないか?」


P「よく頑張ったな。暑かったろ」


晶葉「まあな……だがこれくらいは平気だ」


晶葉「皆が見ている前では、アイドルとしての私を見せなくてはいけないからな」


志希「あっ!晶葉ちゃんお疲れ様~っ♪」


晶葉「む……!」サッ


志希「そんなに避けなくてもいいでしょー?ひどいなー」


晶葉「来るのは予想できたからな」


P「そうだ。ライブはどうだった、志希?」


晶葉「なんだ、見てたのか」


志希「まあね~。久しぶりに熱くなっちゃった感じ?」


P「声を掛けても気付かれないくらいには、熱中してたな」


晶葉「……珍しいこともあるものだな」


志希「ふっふ~……晶葉ちゃん、スゴかったからね」


志希「……あたしのプロデューサーといい、キミといい……」


志希「プロデューサーって不思議だね。にゃははは」


P「そうか……?」


prrrr prrrr!


志希「あ、電話だ」ピッ


志希「もしもしー、この電話番号は現在使われて……えー?」


志希「今?舞台裏だよー♪」


志希「うんうん……オッケー!それで……どこだっけ?」


志希「大丈夫大丈夫、はーいっ♪」



ピッ


晶葉「どうしたんだ?」


志希「こっそり抜けだしてたのがバレちゃった♪」


志希「とゆーことでー……またねっ!」


晶葉「……嵐のように来ては、去っていったな」


P「いろいろ凄い子だったけど、いい子じゃないか」


晶葉「以前はもっと自由奔放だった気がしたんだがな……」


晶葉「……それでも十分、自由だったが」


P「アイドルを始めてから変わったんじゃないか?」


晶葉「……だとしたら、とんでもない化学変化だろうな」クスッ


P「ははは。あまり人のことを笑えないと思うぞ」


晶葉「む……そんなことは……」


晶葉「……いや、そうかもしれないな」ボソッ


P「?」


晶葉「なんでもない。P、この後は?」


P「帰るだけだな。少し時間も押してたし……」


晶葉「そうか」



晶葉「……なあ、P。今日の私はどうだった?」


P「今日か?全体的に良かったと思うぞ」


P「撮影は高評価だったし、ライブも盛り上がってた」


P「時々こっち見てるのは気になったけど」


晶葉「な、なんのことだ?」


P「……今日はごめんな。頑張ってたのに水を差して」


晶葉「いや、いいんだ。私もカッとなってしまった」


晶葉「……!」ピコーン


晶葉「だが……君の軽率な行動のおかげで思うように行かないところがあったな!」


P「そ、そうか?」


晶葉「ああ……さてP、言いたいことは分かるな?」


P「うっ……まあ、確かにそうだしな」


P「それで、何がお望みなんだ」


晶葉「せっかく海に来たのに、仕事でゆっくりする暇がなかったからな……」


晶葉「もったいないと思ったんだが、今日は時間がないんだろう?」


P「ああ……もしかして」


晶葉「さあ、明日からの予定を教えてくれ。特に夏休みの間がいいな」


P「……わかったよ。出来るだけ掛け合ってみる」


晶葉「へへん♪良い返事だな!」


晶葉「さあ、次こそはこの青い海を満喫するのだ!」


P「そうだな……俺ももっと、晶葉の水着見たいし」


晶葉「なっ……急に何を言い出すんだ!?」


晶葉「み、水着が見たいだなんて……君は馬鹿か!?」


P「何を今更」


晶葉「あっ……」カァァァ


晶葉「……こほん。ま、まあ良いだろう……ああいう水着を着る機会も、少ないしな」


晶葉「それに、君が望むなら……」


P「……望むなら?」


晶葉「いや、なんでもない。忘れてくれ」


P「望むなら何なんだ」


晶葉「忘れろ。今すぐに」


晶葉「そんなことを言っていたら着てやらないぞ」


P「分かった。すぐに休み貰ってくるから待ってろ」


晶葉「……君は本当に変な奴だな。私が言えたことでもないが……」






晶葉「まあ、とにかくだ!折角の夏休み、あと僅かだが楽しもうではないか!」



晶葉「――天才の夏は、まだまだこれからだぞっ!」




以上で終わりです。
ありがとうございましたー

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