妖怪「みーたーなー」男「お、おう」(10)


男ですが家の中に奇妙な黒っぽいもやもやがいます…。

最初は電気を付けてないからかなー、と思ったんですが僕の家は南向きで窓も多く、今日みたいないい天気の日、それもお昼頃は薄暗くなるはずが無いのです。

もやもやが濃くなってぼんやりと光る眼のような物が浮かび上がって……。

妖怪「みーたーなー」

男「お、おう」

と、冒頭部分になった訳です。


妖怪「ふふふ、みられたからには……」

この時点で僕の脳裏に最悪の結果がちらつきました、消される、殺されるみたいな『死』のイメージです。

あまりに現実味の無いもやもやに対して僕は腰を抜かしてしまい、その場にへたり込んでしまいました。

妖怪「やしなってもらうぞー」

男「は?」

妖怪「うん?おかしなことをいったか?」

ちょっと訳がわからないですね。


その後、僕は頑張って気を落ち着け、もやもやの話を聞きました。

もやもやは『妖怪』という存在であり、力を失っているので今はもやもやとした影のような姿である。

力を取り戻してまた肉体を手に入れる為に自分を見ることができる、気が弱いという条件を持つ人間を探していた。

ということを妖怪から聞いた。

もやもやの姿でも腰を抜かしてしまう僕はまさに天の恵みだそうです。


妖怪「それではちょっとしつれいするぞ」

そういうと妖怪は僕の鼻や口からするりと入ってしまいました。

ビックリしましたが体に特に異常はありません、もしかしたら体が変になっているのかもと思って全裸になって姿見に写してみましたがやっぱり変わったところはありませんでした。

すると頭の中にさっきよりハッキリとした声が聞こえてきました。

妖怪「何をさっきから阿呆なことをしているのだ?」

男「よ、妖怪さん?どこですかー?」

妖怪「何、お前の体の中にいるのだ
別にお前を乗っ取ってやろうだとか、内側から食い破ってやろうとかはせんから安心しろ」

その言葉を聞き、安心したような不安なような気分になりました。


少し疑問に思ったことがあったので妖怪さんに質問します。

男「妖怪さん、肉体が戻ったら僕の体はどうなるんでしょう?」

妖怪「ん?ああ、案ずるな、影の姿で出てやるから安心しろ
宿主を殺してしまう無粋はせん」

それを聞いて今度こそ安心しました。

そういえば僕は妖怪さんの力を取り戻すために何か特別なことをしたほうがいいんでしょうかね。

妖怪「それも心配いらん、普通に食って寝てしてくれればそれで構わん」

妖怪さん心を読めるんですね。

妖怪「取り憑いている間だけだ、我慢せい」

そうですか。


妖怪さんが僕に取り憑いて次の日の登校中、まさか早速イベントがあるとは思いもしませんでした。

少女「あなたは……取り憑かれていますね?」

この娘は少女ちゃん、霊感があるとかいう話だったけど本当にそうだったとは思いもしませんでした。

妖怪さん妖怪さん。

妖怪「うん?どうした……ああ、なるほどな
そこの小娘にどうこうされる存在ではない、まあ、ほどほどに相手をしてやれば良かろう?」

頭の中で眠っていたのかあくび混じりに妖怪さんは言いました。

男「取り憑かれてますか」

少女「ええ、取り憑かれてます
……疑ってない、みたいですね」

少し驚いたような少女ちゃんに僕は言いました。

男「霊とか、いてもおかしくないと思ってますし」

ここ最近で疑いようが無くなりましたし。


少女「……あなたに取り憑いているモノは」

男「僕に取り憑いているモノは?」

少女「悪い存在ではないようです」

男「そうなんですか……あ、時間……」

僕がそう言うと少女ちゃんはハッとした表情になり、

少女「ええと、それじゃあ、また」

男「う、うん」

それだけ言うと走って行きました。
僕も走らないと。

少女ちゃんも僕と同じ学校に通っているんですよ。

妖怪「ほー」


僕が教室に入ると後ろから「よーう」と呑気そうな声がしました。

友「朝から少女ちゃんと何を話していたんだよ?」

こいつは友、僕の友達で女の子が大好きなヤツです。
僕が女の子と話すのが珍しいからでしょうね、好奇心いっぱいの目です。

男「うーん、僕が取り憑かれてますって」

友「はあ?何だよそれは」

男「でも、取り憑いているのは悪い存在ではないってさ」

友「え、お前信じたのか?
少女ちゃん、霊感があるとか言ってる不思議ちゃんだろ?」

あー、普通はそうなるか。

男「悪霊が憑いてますって言われるよりはいいでしょ」

なんとなくとぼけた答えを返しました。

友「何にせよ色気のある話じゃなくて残念だぜ」

友は色恋沙汰も大好きで首をよくあちこちに突っ込んでいます。

妖怪「それで、馬に蹴られる、と」

そうなります。

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