ひなた「帰省するんだけどPも来るかい?」(38)

グリp「ゴールデンウィークは仕事で温泉ライブがあるからなー」

ひなた「でも連休は温泉街にベッタリってわけでもないっしょ?」

グリp「まあ、たしかに休日はあるけど」

ひなた「なにか予定があるんかい?」

グリp「……ないです」

ひなた「そうだべさ、プロデューサーは無趣味だし女っ気もないしねぇ。暇してると思ってね」

グリp「そ、そんなことないぞ。オレもちゃんとした趣味の一つぐらい……」

ひなた「でもプロデューサーに彼女はいないべさ。田舎者の私でも、なんとなく分かるよ」ニコッ

グリp「(あうあう、純真の笑顔でなんてこと言うの)」

ひなた「いずれにせよプロデューサーにはついてきて欲しいんだわ」

グリp「ん、どうして?」

ひなた「まだまだ電車があずって乗れないべさ、飛行機もね」

グリp「ああ、そうか……」

ひなた「それともpは私に帰省しちゃダメって言うべか?」

グリp「…………」

ひなた「ん?」

グリp「この可愛さは反則だわー」ナデナデ

ひなた「やっぱり東京はあっちゃもこっちゃも人がいっぱいだねぇ」

グリp「ばれねぇよな、ひなたの顔。……メガネやらで変装させるべきなのか」キョロキョロ

ひなた「私、もう有名人だべか?」

グリp「そうだな、学園ドラマにも出たし」

ひなた「でも北海道では見られないんっしょ?」

グリp「ちょっと放送局がな……。まあ、今回は手土産でdvd持ってきたし、これでひなたのおばあちゃんにも」

ひなた「dvd?なんだべそれ?」

グリp「…………しまった」

ひなた「あ、ちゃんとビデオテープ持ってきたかい?」

グリp「ぐぬぬぬ、札幌の電気屋でdvdプレーヤーを買おう。……コードも必要なのかな、まったく分からん」

グリp「せめてノートパソコンを持ってきていれば、dvd再生もできたのに……」ブツブツ

ひなた「ちょ、ちょっと、さきに行くでねぇわっ」

グリp「ああ、すまんすまん」

ひなた「ビル街で遭難したら北海道かいるどころじゃないっしょ。プロデューサー、手ぇつないでいいかい?」

グリp「どうぞどうぞ。人の目はあるけど、親子にしか見えないだろうし」

ひなた「そう、みったくない思いさせてごめんね」

グリp「え、なんで?」

ひなた「まだプロデューサーはあたしぐらいのこっこ持つ歳じゃないべさ」

グリp「(アイドルになって、ひなたも人の目を気にするようになったか……)」

ひなた「こうすれば恋仲に見えるべか?」ギュ

グリp「それはアカン」

ひなた「飛行機のなかもあずましくないべや」

グリp「そのうち慣れるよ」

ひなた「そうだべか、体が斜めに傾く感覚がダメだわぁ」

グリp「初めて東京に来たとき、飛行機の中で真っ青だったよな」

ひなた「うぅ、あのときよりは平気だと思うけどね」

離陸いたします。シートベルトをもう一度――

ひなた「うわっ、プロデューサー手ぇつないでいい?」ギュー

グリp「(と言いつつ、すでに握っている)」

ひなた「うー」

グリp「(試される大地に到着。見事なあぜ道だ、四方八方の視界は山に囲まれている)」

ひなた「なつかしい匂いだわ」

グリp「dvdプレーヤーも買ったし、あとはバスだけだな」

ひなた「やっとゆっくりできそうだべ」

グリp「こっちはまだ肌寒いかな」

ひなた「もう1回手ぇつなぐかい?」

グリp「いや、ジャケット持ってきてるから」

ひなた「上着じゃ手は覆えんべさ。あたしの手ぇぬくいからね、どうぞ」ギュ

グリp「うわー、ほんとにぬくい」

~北海道へおかえり『木下ひなたちゃん』~

グリp「ぶっ?!」

ひなた「プロデューサー、なしたの?」

グリp「畑の向こう側に、きょ、巨大な横断幕が?!」

ひなた「ああ、あれぐらいなんでもないわ」

グリp「そうなの?!」

ひなた「送別式のときはもっと盛大だったべさ」

グリp「へ、へえ……」

ひなた「町ぐるみで盛り上がって、あまりに興奮して救急車に運ばれた人もいたっしょ」

グリp「…………」

ひなた「プロデューサー、そろそろバスが到着するべ」

わーわーきゃーきゃー!
わーわーきゃーきゃー!

グリp「うわー、老人から子供まで、バス停に人がいっぱい集まっている…………」

ひなた「もう、お迎えはいらないって言ったっしょ。わやにならんべね!」

道民「なしても皆ひなたちゃんに会いたいって言うべさ」

道民「tvも来てるべ、挨拶して欲しいべさ」

カメラ「準備オーケーでーす!」

キャスター「あなたがひなたさんのプロデューサーですか?」

グリp「そ、そうです……」

ひなた「地方テレビまで?!ぷっ、プロデューサー!はんかくせぇことにプロデューサーを巻き込むでねぇさっ!」

キャスター「木下ひなたさんはトップアイドルになれますか?」

グリp「な、なってみせます」

キャスター「木下ひなたさんの最大の魅力は?」

グリp「ひなたは笑顔が誰よりも魅力的で、ファンの心を癒してくれて……」

ひなた「あひいいいいい!」

道民「あははは、照れてるでねぇさ、ひなたちゃん」

ひなた「なんであたしの話をプロデューサーがするべか、あたしに直接聞いてくれればいいっしょ?!」

キャスター「ここで一曲お願いしてもいいでしょうか」

ひなた「そ、それぐらいなら」

グリp「いえ。ひなたのお仕事なら事務所を通して下さい、ここには音響もありませんし、衣装も準備できてませんので。タダで歌わせるわけにもいきませんし」

ひなた「なしてプロデューサー、せっかくテレビに出られるチャンスなのに」

グリp「さすがに長旅で疲れてるだろ、せめて日を改めてもらおう」

道民「おお、さすがぷろぢぅさぁだべさ!」

道民「都会人なんてかちゃっぺない人ばっかりだと思ってたけど、この人なら大丈夫そうだべ」

道民「ああ、安心してひなたちゃんを任せられるべさ」

グリp「ど、道民の間でみるみるオレの株が上がっている……」

ひなた「ぷ、プロデューサー、早く家にかいるべ!」グイッ

グリp「おっとっと」

道民「待つべ、ひなたちゃん。ばあちゃんは家にいないよ」

ひなた「え、ええ?!」

道民「公民館だべさ、ひなたちゃんの親戚もみんな揃っとるっしょやー」

ひなた「公民館、……まさか送別会のときみたいに」

道民「今晩は会場を貸しきってひなたちゃんのおかえり会だべさぁ」

ひなた「や、やっぱり……」

ひなた「ごめんねプロデューサー、どもこもならん人たちでさぁ」

グリp「いやー、愛されてるなひなた」

ひなた「あったらこと、ただ騒ぎたいだけっしょ」

グリp「で、公民館はどっちだ?」

ひなた「公民館はさっと車でいくべさ、電車で飛行機でバスでこんどは車。目が回りそうだねぇ」

グリp「じゃあ結局、お迎えは必要だったんだな」

ひなた「まんまとウチの人に乗せられているべ」

グリp「ああ、いろんな乗り物に乗せられているな」

わーわーきゃーきゃー!
わーわーきゃーきゃー!


グリp「(親戚多っ、何世帯いるんだ?!)」

ひなた「ほらね、みんなもう飲んで食べてるっしょ。おかえり会なんて口実だべさ」

道民「ひなたちゃん、おかえりー!」

道民「おお、なまらビューひなたちゃんがなまらイイ男連れてかいってきたさぁ!」

道民「なにぃ?!大事件だわぁ!」

道民「じゃ家建てるべ、どこに建てるべさ」

道民「タバコ屋のババアが逝っちまったべさ、そこの家潰せば新しくせるっしょ」

グリp「さっきから縁起でもねぇ会話が……」

ひなた「プロデューサー、ごめんねぇ」

道民「あいかわらずちゃんこいけど、めんこくなったねひなたちゃん」

ひなた「おばさん、お久しぶりだわ~」

bba「からっぽやんで仕事してるかい?」

ひなた「ばあちゃん、ただいま~」ギュー

グリp「どうも、こんばんは」

bba「おばんです。なんもさないけど、ゆっくりしていってねぇ」

グリp「ええ」

道民「プロデューサーさん、こっちで一杯どうだべ」

グリp「そうですね、いただきます」

ひなた「じゃあ、あたしは子供の相手してくるわぁ」

グリp「あははは、なんだかんだ休まらないな」

ひなた「そうだねぇ」

ひなた「ここのステップはこうだべ」

子供「きゃっきゃっ」

グリp「(子供にダンスを教えるひなたは絵面がいいな。これなら教育番組の線もイケるかも)」

道民「ちゃんと酔ってるべか、プロデューサーさん」

グリp「お、おかげさまで」

道民「プロデューサーさんのコップがカラだべ、客人に楽させるでねぇわお前ら!」

道民「さーえっさー!」

グリp「お、お気遣いなく……」

bba「ちょっとひなた」

ひなた「なんだべ、ばあちゃん」

bba「あの男は歳なんぼや」

ひなた「24だわ」

bba「10歳差だべか……むりしゃり行けるかの」

ひなた「むりしゃりもなにも、わやにならんべさ」

bba「なんもだよ。したっけさ、そこら辺の女を使って落とすべや」

ひなた「ば、ばあちゃん……」

bba「あの男はがおった顔してるべ、ありゃ女に飢えとる顔だべさ」

ひなた「さ、さすがばあちゃん、鋭いわぁ……」

bba「ウチの息子の嫁のはとこの娘が最近成人したべ、そいつを送り込んで……」

ひなた「や、止めてばあちゃん。そしたらあたしトップアイドルの夢が壊れるっしょ」

bba「……冗談だべさ、ひなた」

ひなた「…………」

bba「…………」

ひなた「ほんとに冗談だべさ?」

bba「………………え、なんだって?」

ひなた「……ばあちゃん」

グリp「(っく、意識が朦朧としてきた)」

道民「おっ、プロデューサーさんがそろそろオネンネかい?」

グリp「(くそっ、なんでこいつら潰れないんだっ)」グラッ

ひなた「ちょっと!プロデューサーにムリさせるでねぇべ!」

グリp「あっ、ひなた」

ひなた「うわ、顔が赤っ」

グリp「すまんひなた。もう限界かも」

ひなた「誰か車出して、お先に退場しますわぁ」

道民「じゃあワシが」

道民「いやワシが」

道民「いやいやワシが」

道民「…………じゃあワシが」

道民「どうぞどうぞどうぞ」

ひなた「みんなしっかり飲んでるべ!だ、誰かシラフの人はいないべか?!」

道民「いや、いるわけねぇべ」

ひなた「あたしがおぶって帰るねっ、プロデューサー」

グリp「それは物理的にムリだろ、ひなた……」

bba「ひなた、下の階の有線電話を使って車を呼ぶべ」

グリp「も、申し訳ありません……」

bba「公民館でザコ寝もいいけど、布団の上で横になりたいっしょ?」

グリp「で、できれば……」

bba「ちょっと電話してくるねぇ」

ひなた「ばあちゃん、ありがとう」

bba「prrrrrrrrrr……」

ひなた「自分の家だと思ってゆっくりしてねぇ」

グリp「おじゃまします……」

ひなた「お風呂だけ用意してもらったけど、もう寝るべか?」

グリp「は、入っちゃっていいか?」クラクラ

ひなた「着替えは?」

グリp「ああ、カバンに」

ひなた「荷物開けていい?あとで脱衣場に置いておくべさ」

グリp「ありがとう、ひなた。じゃあお風呂借りるな」

ひなた「はい」ニコッ

ひなた「おじゃまします」

グリp「?!」

ひなた「フラフラだべ、あたしが背中だけ流すっしょ」

グリp「ひなたっ、バスタオル!」

ひなた「取るべか?」

グリp「止めろ!!」グラッ

ひなた「慌てすぎだべ、別にあたしの裸なんて大したことないっしょ」

グリp「非常にマズいっ、担当アイドルと風呂は……っ!」

ひなた「え、みんなやってるんでねぇべか?」

グリp「は?」

ひなた「朋花さんが、温泉ライブのあと担当pと貸切風呂で混浴したって言ってたべさ」

グリp「あンャヤロオオオオオオオオオオオオオオォォォ!」

ひなた「さ、叫ぶと倒れるべ」

グリp「ぐあっ」グラグラ

ひなた「あたしは平気だべさ、プロデューサーを信用してるわぁ」

グリp「そうか……」

ひなた「酩酊した人が一人で湯船に浸かるのも危ないべ、お向かいのじいちゃんはソレでポックリしたから」

グリp「い、いや。オレはまだ若いから……」

ひなた「プロデューサーが死なないように、しっかり見張っているべさ」

グリp「あ、ありがとう」

ひなた「加減はこんなもんだべか?」シャコシャコ

グリp「ありがとう、気持ちいいよ」

ひなた「プロデューサーの背中広いねぇ」

グリp「でも、ひなたの親戚に比べたらなー」

ひなた「あたしの一族はたしかにみんな大きいわぁ」

グリp「ひなたのウチは農家だしな」

ひなた「そういえばプロデューサー、飲み会で変なこと言わなかったべか?」

グリp「変なこと?」

ひなた「たとえば田舎をバカにするような発言」

グリp「するとどうなるんだ?」

ひなた「あたしとばあちゃんが村八分に遭うべ」

グリp「……………………」

グリp「大丈夫、大丈夫っ、大丈夫だよな!」

ひなた「まあプロデューサー場に打ち解けてたから、心配ないっしょ」

グリp「ひなた、そういうことは先に言って欲しかったな!」

ひなた「ごめんねぇ」シャコシャコ

グリp「よし。ありがとう、あとは自分で体洗えるから」

ひなた「うん」

グリp「湯船に入っとけ、寒いだろ」

ひなた「そうだねぇ」

グリp「あうあう?!」

ひなた「いい湯だねぇ~」

グリp「(湯でタオルがひなたの体に張りついて、胸や尻のラインが浮き彫りに……)」

ひなた「ふんふーん」

グリp「(熱に染められた頬と屈託のない素朴な笑顔、とても愛くるしくて、まるで心が洗われるような気分)」

ひなた「ふーんふーん」

グリp「(やっぱりひなたの笑顔っていいなあ)」

ひなた「プロデューサー、こっち見てるねぇ」

グリp「ああ、オレはこんなに可愛い子のプロデュースができて幸せだなって」

ひなた「ありがとうプロデューサー。ごめんね、てっきりエッチくさいこと考えているかと思ったべや」

グリp「びくびくぅ!」

ひなた「布団も敷いてあるべさ、プロデューサー」

グリp「ひ、一部屋に並べて……」

ひなた「プロデューサー、そっちの布団に入っていいかい?」

グリp「なんですって?!」

ひなた「なんかね、小さい頃を思い出して。昔はよくばあちゃんの布団に入ってたんだべさ」

グリp「…………」

ひなた「ニコッ」

グリp「(……オレはバカだっ。さっきから、こんな純粋な子に下心を抱いて)」

グリp「いいぞひなた、一緒に寝ようか」

ひなた「うん」

ひなた「こうしてばあちゃんの腕の中にね」ムニュ

グリp「(この光景、写真にされたら社会的に即死だな)」

ひなた「寂しいときはね、頭から爪先までぎゅーっとね」ギュー

グリp「(でも大丈夫だひなた、オレは悟りを開いたから)」

ひなた「こうして、ばあちゃんの手をあたしの頭に持っていってね」

グリp「(ひなたは年齢の割に身長も低いし、まだまだ幼児体型だし、ガキと一緒だし!)」

ひなた「ああ~。プロデューサーの手、気持ちいいねぇ」

グリp「(心頭滅却、無想無念!)」

ひなた「……ぐー、ぐー」

グリp「(フハハハハハ、勝ったぞ!我の勝利なり!)」

チュンチュン

ひなた「プロデューサー、起きるべさー」

グリp「う、うぅ……」

ひなた「ご飯できてるから、早くまかないなよー」

グリp「お、おうう?」

ひなた「おはよう、プロデューサー」

グリp「(あれ、直面にひなたの笑顔が)」

ひなた「プロデューサーのお腹、座り心地がいいねぇ」

グリp「(は、腹?)」チラッ

ひなた「プロデューサー、寝ぼけてるべさ」

グリp「(う、馬乗りされてる?)」

ひなた「着替えさせていいかい?ばんざーい」

グリp「……ッフ、いま完全にオレは目覚めた。自分で着替えるからそこをどいてくれ、ひなた」

ひなた「ついでに寝ぐせも直したほうがいいべさ」

グリp「しゃ、しゃこたん?」モグモグ

ひなた「積丹半島だべさ」モグモグ

グリp「観光地なのか?」

ひなた「んーん、なにもないよ」

グリp「え?」

ひなた「なにもないから、いいところなんだわぁ」

グリp「ふ、ふうん?」

ひなた「予想通りに晴れたし、お弁当も持って行こうね」

グリp「(……だ、大丈夫か?)」

ひなた「こっちの電車は東京と違って分かりやすいわぁ」

グリp「基本は一本道みたいだね、これなら方向さえ間違わなければ」

ひなた「1時間ちょっとくらいかなぁ、ちょっと遠いべさ」

グリp「ま、まあ。楽しみにしてるよ」

ひなた「うん、楽しみにしてねぇ」ダキッ

グリp「(……スキンシップが増えたなぁ)」

グリp「北海道の電車ってすわり心地がいいよな」ガタンゴトン

ひなた「ばあちゃんがね、毎月プロデューサーに芋焼酎と麦焼酎を送るって」

グリp「え、な、なんで?!」

ひなた「これからpには山ほど働いてもらうからって、投資みたいなもんだってさ」

グリp「へ、へえ。プロデューサーとして期待されているのかな」

ひなた「あー、う、うん」

グリp「(明らかに違う。おばあさん、オレに何をさせるつもりだ……)」

ひなた「それに、酒に弱いとやっていけないからって」

グリp「べ、別に飲めなくても仕事はやっていけるぞ」

ひなた「あー、そうだねぇ……」

グリp「(ひなたの歯切れが悪い……?)」

グリp「こ、これはすごい。ちょっとした万里の長城みたいだ」

ひなた「綺麗な場所っしょ?」

グリp「山の上に一人分の通路、辺りは海、どこもかしこも絶景だ……」

ひなた「東京とは反対で、あっちゃもこっちゃも人がいないべさ」

グリp「あ、ああ……」

ひなた「プロデューサーと二人っきりだねぇ」

グリp「そうだな」

ひなた「一通り歩いたら海辺でお昼にしねぇかい?」

グリp「うん、いいよ」

グリp「波のさざなみを聞いて、大自然に囲まれてお昼ご飯か」

ひなた「こういうのもいいよね?プロデューサー」

グリp「ああ、最高だ」

ひなた「プロデューサー、また来ようねぇ」

グリp「そうだな、きっと」

ひなた「うん」ギュー

グリp「(またくっついてきた……)」

グリp「実際のところ東京に来て寂しくないか?」

ひなた「それはね、寂しいよ」

グリp「だよな、寮生活で身内はどこにもいないし」

ひなた「じつはね、なんだか寮の友達も他人行儀でね。東京の人ってなんだか冷たい気がするわぁ」

グリp「よそよそしいのは、ひなたがアイドルっていうのもあるんだろうけれどな……」

ひなた「代わりに事務所の友達はいっぱいできたけどね」

グリp「うん」

ひなた「でも、やっぱり。ばあちゃんみたいに甘えられる人は東京にはいないべさ」

グリp「だよなぁー」

ひなた「あのね、プロデューサー」

グリp「ん?」

ひなた「東京でも、今みたいにくっついてていいかい?」

グリp「う……東京では、時と場合によるかな」

ひなた「イヤなのかい?」

グリp「嫌じゃないけど、どこにも人の目はある。ひなたはアイドルだし、そういうことは考えなくちゃ」

ひなた「あたしも分かっているべさ、だけどどうしても寂しいときがあるんだわぁ」

グリp「……そうだな、寂しいときは、まあいいか」

ひなた「いいの?」

グリp「うん、しょうがない」

グリp「ときどきはウチに遊びにくればいいし、あるいは今みたいに旅行するのもいいし」

ひなた「ありがとね、プロデューサー」

グリp「東京では、ばあちゃんの代わりになれるように頑張るよ」

ひなた「あたしもトップアイドルを目指して頑張るねぇ」

グリp「そうだな、北海道のテレビに映るぐらいは活躍しないと!」

ひなた「よかったべさ、プロデューサーを北海道に連れてきて」

グリp「オレもよかった。ひなたの話、聞くことができて」

ひなた「プロデューサー、これからもよろしく頼むね」

グリp「ああ」

~東京~

ひなた「ばあちゃん、さっそくドラマ見たって」ギュー

グリp「そ、そうか。よかった」

ひなた「映像が綺麗って、なまらびっくりしてたべさ」スリスリ

グリp「そりゃdvdだもんな……」

ひなた「それと、ばあちゃんがね、家を建てるって」ベタベタ

グリp「へ、へえ。すごいね」

ひなた「プロデューサーとあたしの家だっけ」ギュム

グリp「…………ん?」

ひなた「来年までに酒に強くなってこいってさ」

グリp「………………んん?」

ひなた「これからも末永くよろしくね、ってばあちゃんが」

グリp「そ、そう」

ひなた「それより次のお仕事は電車で移動っしょ」

グリp「そうだね、オレもついていくよ」

ひなた「いつもありがとね、手ぇつないでもいいかい?」

グリp「もちろん」

ひなた「あたしね、もしも街中で迷ったらビルの谷間で遭難して二度と帰れない気がするんさ」

グリp「……オレも、なんだか北海道の一族に遭難して二度と帰れなくなっている、そんな気がする」


おわりです、ありがとうございました!

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