「…」男「…」女「店員さん、私は……」 (47)



男「おいおい嘘だろ……じゃあお前…」

「…なんだって?」

男「なんでだよ…俺じゃ悪いってかよ…っ!……い、いいや誰も悪くない。多分これじゃ俺が一人で消えないと都合が悪いんだろ?とんだ陰謀のセオリーだぜ」

「だから何の話だって……」

男「お前は知らなくていい。言った所でお前に分かるはずがないからな……こんなやり切れないのは」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407756091

半年前




カチカチッ

PC『私も貴方の事が大好きですっ!』

男「へへっ」

男(皆はギャルゲーをやった事があるだろうか?ピンと来ない人の為に砕けた言い方をすると恋愛ゲームと呼ばれるものだ。この手のゲームは大体は好きな女の子と結ばれるが俺はいつもあのルートを目指す)

PC『ちょっと、ちょっとちょっと!私も○○君が大好きなんだからっ』

PC『あらあら、私を忘れてもらっては困るわね…』

店員(そう、ハーレムルートだ。このルートを選ぶのは1人に絞れない優柔不断な奴だけだと言われるが俺は違うと思う、何故なら全員失恋しない終わり方だから。これこそが真のハッピーエンドじゃないだろうか…似たような事言ってた奴もいた気がする)

男「そろそろ寝るか…明日はバイトだしな……」



………
……

ファミレス

友「よっ!」

男「おっす」

友「なあ聞いたかよ男…最近MAXエクササイザーに新味が出たんだってな…!!」

男「マジかよ良かったな」

男(こいつは友、皿洗いが上手くて俺の数少ないマブダチだ。俺は狭く深くをモットーに友人関係を作っているので同僚に気が合う奴が居て幸運だ…ちなみにMAXエクササイザーとはプロテインの事らしい)

先輩「何をやってる?クソ垂れる口を開く暇があったら手を動かしたらどうだ」

友「おっといっけね」

男(これは先輩、現場指揮が上手い。ただ俺の一個下だのに先輩なので頭が上がらない…おまけに高圧的ときたもんだ、友によると美人なのが余計に鼻がつくとのこと)

ボブ「WAHU!マタ怒ラレテルッ」ドッ

男(隣で爆笑してるのがボブ、銃の扱いが上手い)




先輩「三番テーブルお願い」

男「了解」

トコトコ

女「……」

男(うっひょー!こいつは当たりだぜ!小柄な体、並の事じゃ揺るぎそうにない目、凛とした姿勢…どこを取ってもどストライクッ)

男「いらっしゃいませ、当店では皆様に最高のおもてなしをさせていただきます。どうぞごゆっくりメニューをお決めください」キリッ

女「もう決まってますが」

男「ご、ご注文をお伺いします…」

女「イカのパプリカソースで…」

男「イカのパプリカソースがお一つ」

女「……」

男「……?」

女「以上ですが…」

男「えっ……それだけ…?あっ、いやかしこまりました」

女「はいっ」

男「イカのパプリカソース一つー!」

友「えっ、注文それだけかよ!?」

男「あ?悪いか?それでお前死ぬのか?」

友「なんでそこでお前がキレるんだよ……」

ボブ「俺ハヨーク分カルゼ!」

友「えっ、なんで?」

ボブ「サッキノ子超可愛カッタンダヨ…男ハアノ子ニ『ホ』ノ字ダナ」

友「うはっ!」

男「なんでバラすんだよ…お前のそういう所マジで嫌いだぜ」

先輩「…おい」

男「アッハイスイマセン」

男(しかしあの子は何故一品だけ…しかもサイドメニューを頼んだんだ?誰かを待ってる様子でもない様だが……謎は広まるばかりだな、少し観察してみよう)


ボブ『イカノパプリカソースダ』

女『ありがとうございます』

ボブ『以上デ注文ハヨロシカッタナ?』

女『はい』




女『……ごちそうさまでした』

ガタッ

男(本当にそれだけ食っただけで帰った!?)



チリン



自宅

男「ただいまん…」

妹友「おかえり男!」

男(こいつは妹友、男だが娘のように気に入っている。妹といつ付き合ってもおかしくないがそこは暖かい目で見届けよう)

妹「おー帰ってきたか」

男「ご飯は炊けてるか?」

妹「うん」

男(妹、なんと素晴らしい響きであろうか。ちなみにこのマンションの一室では俺と妹と妹友しか住んでいない、最初は遠い高校に入ったので俺が一人暮らしをするはずだったが次の年に妹と妹友が同じ所へ入学してきたので仲良く共同生活という奇妙な状態になったのだ)

妹友「おかずは肉じゃがと冷蔵庫にトマトが入ってるよ」

男(まあ俺が2人を来るよう説得しただけなんだけどな)

一週間後

男「ご注文を……あっ」

女「えっ?」

男(また来た!今度は何を頼むつもりだ、お嬢さん)

男「ごほん…ご注文をお伺いします」

女「イカのパプリカソースで」

男「以上でよろしかったでしょうか?」

女「はい」

男(はいビンゴ)



男「イカのパプリカソース一つ!」

友「んだよ、また来たのか?」

男「どうやらそうらしいな……」

友「嬉しそうだな?」

男「たりめーよ!もしかしたらお近づきになれるかもしれないだろっ!?週に1回同じ時間に来るんだぜ?」

友「長い道のりだな…」

男「長いだけならいつかは辿り着くさ、俺の行けるルートは一種類だけでいい…他に攻略出来る人なんざ必要ないのさ!」

友「……」

男「ん…急に黙ってどうした?」

ゴゴゴゴ

男「……もしかして後ろに居るの…」

先輩「………」ポキポキ

男「先輩ですか……?」

ボブ「YES!YES!YES!……ohジーザス」

ドガッ

次の日

デパート

男「珍しいなお前らから遊びに誘うなんて」

妹友「まあね」

妹「今日は猫の缶詰セールだから人手が足りん」

男「パシリかよ!……ん?」

妹友「どうしたの?」



ゾロゾロ

「という訳なんだ」

「おーっほっほっほ!流石ですわ、勇敢でいざという時に頼りになりますの」

「待て、別に俺は自慢した訳じゃ…」

「まーまーそれもご愛嬌って事で!」

女「……」


男「ありゃこの間の女の子じゃねーか…」

男(しかし集団は何だ?女が何人も居るというのに男が1人、あらかた人気な男の取り合いって感じか?それにしちゃ全員仲が良さそうだが)

ツンツン

妹「どーした早く行くぞ」

男「おっ、おう…悪い」

男(まさかあの子まであの男が好きだなんて言うんじゃねーだろーな…)

数日後

男(マジであの事が頭から離れん…でも男と女の友情ってありえんのかよ……駄目だ、考えるのはよそう気分が自動的にダークになっちまう)

ボブ「ドシタ?暗イ顔ダゼ」

男「ボブか…実はさ……」

ボブ「WAHUー!男ハ中学生カヨ!?」

男「お前の言わんとしてる事は分かる…しかし俺はアメリカンな恋心は持ち合わせてないんだよ」

ボブ「……ヨシ任セナ、友ト相談シテ来ルゼ」

ダダッ

男「あっ、おい何処へ行く!?」

カランカラン

女「……」

男(うっ…来た……)

トコトコ

男「ご注文をお伺いします」

女「はい、ええとジンジャーエールと…」

???「ヘイ!」

ダダダッ

女・男「?」

男(そこにはアロハシャツを着た2人が居た)

友「ねえ君ぃ…僕とゆっくり筋肉談義でもしないかい?」

女「……?」

ボブ「フゥー!中々手ガ早イゼブラザー!マッドマックスノ愛車ヨリ速イナッ!」

友「褒めたって何も出ないぜ兄弟?さあさあ僕とレッツローマ」

女「レッツローマ?」

友「おっと言い間違えた、レッツパーリー!」

ボブ「ナルホド考エタナブラザー!『ローマ』ト『パリ』ヲ掛ケタ訳カ!」

友「おいおいみなまで言ったら駄目だろーが!」

ボブ「俺ガ解説シナカッタラ絶対分カッテナカッタゼ?」

友「それもそうだなっ」

友・ボブ「「HAHAHA!!」」

男「……」

女「あの…困ります、こういうのは別の所でやってきてください」

ボブ「ソンナ事言ウナッテ!マジデ俺ラトツルマナイ?」

友「…今だ男っ…」ボソッ

男(馬鹿かよこいつら)

男「ごほん!いやすいませんお客様、当店でその様な行為はご遠慮していただきたいのですが…」

友「んだてめー!おいジェシーやっちまえ!」

ボブ「アタ坊ヨ!」

男「ふんっ」ガシッ

ボブ「ウッ…グォォ……」

友「ど、どうした!?」

ボブ「コイツノ腕力ガ半端ネエ!一旦引クゾ!」

男「ふっ…他愛もない奴らよ」

男(ってなんで俺も乗ってんだよ!)

女「あの…ありがとうございました」

男「あっ、いやその今のは俺の…」

女「良かったら何かの縁ですし電話番号を交換しませんか?お礼もしたいです」

男「はっはっは。お礼なんてとんでもありませんよ、まあ電話番号は欲しい所ですな…また貴方が襲われた時に駆けつけられますから」キリッ

女「ふふっ、面白い人ですね」

男(今のはポイント高そうだな!しかしこの展開はあいつらに何か奢らねえとバチが当たるぜ)



男(結局その日はメアドと電話番号を交換して帰った)




男「あーかねー色のー雲ー♪」ニヤニヤ

妹「なんか馬鹿兄貴がきしょいな」

妹友「いやいやいや…何かあったの男?」

男「ん?ああちょっとな…」

妹友「?」

男部屋

PC『誰ですか貴方?』

男「えっとこれは…『1.さすらいの者です名前は名乗る物じゃありません。』だな」


ピロロン

男(誰だ…?)

スッ

男「あの子からか…『こんにちは、今日はありがとうございました。突然ですが暇な日はありますか?今日のお礼に言ったとおり食事にでも誘いたいのですが…』だと!」

男(来たこれ…絶対脈あるわ……俺の薔薇色人生は始まったわ…これは絶対に攻略しなきゃな…選択は間違えられねえ!イヤッホウ!!)

『書くのが遅れましたが私の名前は女です』

男「女か…良い名前だ!『俺の方は何時でもいいですよ、明後日なんかどうですか?』っと」

ピロロン

『分かりました、では明日の昼に○○で』

男「ふひっ」

男(いっけね喜び過ぎて変な声でた)

明後日

チリーン

店員「何名様でしょうか」

男(店にはカノンがかかっていた、昔やったゲームでもこんな店があったな)

男「あっ、人が待っているんですが」

店員「多分彼方のお客様でしょう」

男「ああ、その通りです」

男(店員の向いた方向を見ると女さんがいた、携帯をいじっている様子もなくますます上品な印象を覚えた)

男「どうも」

女「こんにちは、私が来て5分も経っていませんでしたよ」

男「まあ時間には厳しい方なんで」

女「ふふっ」

男(それから女さんとささやかな食事をとった、ここにはイカのパプリカソースが無いので余りこない事と自分の趣味やどこへ通っているかなども教えてくれた。どうやら年は同じらしい)

トコトコ

男「……ん?」

男(そんな楽しい時間を過ごしている所に後に俺の心を人生で1番揺さぶったであろう男が来た。いや性的な意味じゃなく)

「よう、奇遇だな女」

女「あっ、こんにちは」

男(誰だこいつは、なんで女さんにしたしげに話しかけてやがる?)

女「こんにちは~~さん」

男(そうかこいつはあの時出かけた時にいたモテ男か…もしかして女さんはこいつと……)

「お、この人は誰だ。まさか恋人だったりするのか?」

女「そっ、そういうのではありません…」

男(彼氏ではないと)

「じゃあお兄さんか?いたなんて聞いた事もないが」

女「そうでもないです」

男(家族でもないと。じゃあ何者だ?)



女「以前この人に助けてもらった事があるんです、えと名前は…」

男「あっ、俺の名前は…」

女「いえ、名前は聞きません。前の様に店員さんのままの方が安心出来ます」

男(ドユコトー!?)

「すいませんね、こいつたまにおかしなこだわりがあるもんで」

男(爽やかな笑い方だこと。っていうか俺とは距離を置いておきたいって事ですか…そうなんですかね)

女「ちなみに私は名乗りました」

「ま、そりゃいいが…じゃあよろしく店員さん」

男「ども…」

「今日は一人で食う予定だったがせっかくだし一緒に食べさせてもらおうかな?迷惑じゃなければ」

女「私は別によろしいのですが…」チラッ

男(迷惑だこの野郎、その髪の毛ぶち抜いてやろうか)

男「ええ、俺も構いませんよ」

カチャカチャ

男(かくして気まずい(と思ってるのは俺だけだろうが)食事会が始まったのである)

「そういえば男さんと女はどういった感じです知り合ったんだ?」

女「実は一人で例のレストランへ行った時のことです…」

男(女さんはあいつ等のヘタな芝居をさも本当に真に迫った状況だったかのように語った。それが功を奏してかこいつも信じたらしい)

「ほう…そりゃ災難だったな、ありがとう男さん」

男(まるで自分の物みたいな感謝の仕方するなよ…。しかし今は気になっていた事を聞くチャンスだな)

男「2人はどうやって知り合ったんです?」

「俺達か…うーん」

女「……」

男(どちらもどうした物かとお互いを見ている。カップルかこんにゃろう)

「すこし長話になるんだが……」

男「構いませんよ、どうせ暇ですし」

「じゃあ話させてもらおう。これは入学式の時…あっ、俺達は同じ高校なんだ」

男「…へえ」

男(その男の話は衝撃的な物だった、自演のカツアゲなんて目じゃない程の)

男(話を要約するとこうだった、入学式に出会った両者はお互いに読書が好きでそこから話も弾み文芸部に入ろうという訳で知り合ったそうな)

男(危ねえ危ねえ、そこからのろけ話でも聞かされるのかと思ったぜ)

男「この前デパートに居ました?」

「その通り、よく分かりましたね」

男「まあ偶然居たもので」

「それと堅苦しいし敬語は無しにしないか?」

男(タメ口で提案するな)

男「ああ、勿論だ」

女「そろそろ出ましょうか」

「そうだな、よっと……ああそうだ、一つ忘れていた」

男「?」

「俺の名前を名乗っていなかったな、俺は主人公っていうんだ」

男「よろしく主人公」

主人公「ああ、こいつが俺のメアドだ」

男「うっす、また後でかけるぜ」

ガチャ



男(主人公か…かっこいい名前だな。俺もありふれた名前じゃなくこう、イーストウッドみたいな名前が欲しかったぜ)

PC『~~!!』

男「……もうエンディングか」カチカチ

妹「ご飯出来たぞー!バカ兄貴!」

男「おう今行く」

男(それにしてもあの2人、出会い方が漫画みたいだったな。俺も出会い方だけならそれを上回るが)

ブルブルブル

カチャ

『今日は楽しかったです、また一緒に食べましょう』

男(今度は乱入されたくは無いけどな)

男(その後俺と主人公は次第にウマが合う事に気付き最初こそ対抗心MAXだったが今では良き友人となった。女さんとも仲良くなった、相変わらず店員さんと呼ばれるが)

男(しかしこの微笑ましい日常もこの日から崩れ去ってしまった。誰も悪意を持っていないというのに)



ボブ「WAHU!!ソッチ行ッタゼ!」

おさげ「うえぇ~!?ちょっ、ちょっと待って!」

パシッ

友「ふっ、俺の筋肉が無けりゃ死んでたな」

妹友「そんな大げさな……」

主人公「よしもう一本行くぞー!」

男(あれから何ヶ月かして次第に俺の周りの奴もあいつを中心に集まるかのように知り合いになった。ボブも奴の知り合いだったいつかのデパートであった女の子の集団と友達になれて喜んでいた)

先輩「おい何つっ立っている?さっさとしろ」

男「おっと悪い、今行くぜ!」

男(ちなみに今は野球をやっている。頭数のために先輩まで誘ったがまさか本当に来るとは思わなんだ。なんだか今の状況だと俺ギャルゲーの主人公みてえ)

書き溜め無くなった!今日はここまで

夕暮れ


男「じゃあそろそろ帰るか」

主人公「そうだな、よし!全員解散!」

妹「今日は外で食べたい」

男「いやそんな事言ったって…」

妹友「えっ、いいの!?」

男「うぐっ……許可する…」

女「では皆さんさようなら」

男「ええまた!」

主人公「うす」

友「また呼べよ~!」

主人公「おう、次は水鉄砲大会だ!」

男「じゃあそろそろ俺達も…」

主人公「あ、待ってくれ男」

男「なんだ?」

主人公「お前に是非とも相談したい事がある」

男(おおう…キリッとした目つきで言われちゃ乗るしかないな)

男「いいぜ…おい2人とも、ちょっとそこで遊んでろ」

妹友「うん?別にいいけど…」

妹「分かった」

タタタッ




男「で、なんだよ話ってのは」

主人公「ああ…実は俺凄え迷ってるんだ。かなり最低な事で」

男(最低な事だと?普段のこいつを見れば分かるがこの人間ほどゲスとか最低に無縁な奴はいないと断言出来る。それが自分で認める最低なことってなんだ…検討もつかん)

主人公「実はさ俺気になる人がいるんだ…」

男「おお、そりゃ相談するもんだな」

男(女さんだったならここで殺す)

主人公「それが…1人じゃないんだ」

男「1人じゃないだと?」

主人公「気になってるってのは勿論恋愛で合ってるが全員魅力的過ぎて俺には決められねえ!」

男「ほほう、なるほどな…俺もよく同じ悩みを抱えてたもんだぜ」

男(俺の場合ゲームで、だが)

主人公「お前もか…そりゃ頼もしい!それでお前の場合どうやってその悩みを解決したんだ!?」

男「ああ…そりゃ全員平等に愛したよ、皆それでいいって言ってたな」

主人公「パネェ…」

男「まあそれが終わったらすぐ次の子達に移るけどな」

主人公「鬼畜かよお前は!!」

男「はっはっは!冗談、ゲームの話だ」

主人公「なんだゲームかよ…そんな物やってるのもアレだが」

男「ま、まあその話は置いとこうぜ!それよりその人達ってのは誰だよ?」

主人公「実はお前に言おうか迷っている人物も含まれてるんだが…」

男「分かった分かった!早くいえよ」

主人公「おう…じゃあまず、おさげさんだろ?先輩、お嬢様、女友、妹、そして女だ」

男「な……!?」

男(絶句した…俺の妹が入ってるのも気になったが女さんも本当に入っているとは思わなかった)

主人公「あぁ…だから言うのを少し躊躇ったんだよ……流石に妹の事が気になってると言われて自然なリアクション出来る兄は居ねえ」

男(思い返せばそうだ、先ほど俺がまるでギャルゲーの主人公みたいだと感じたがそれはむしろあいつの方じゃないか?だって行動するのにも奴が最初だ、顔もそれなりに良いし性格は言わずもがな。主人公なら俺よりこいつだ)

男「……さ、参考までに聞くが文芸部の時にお嬢様とか女友達と知り合ったんだよな?その経緯を教えてくれ」

主人公「ああ、そりゃ…」

男(主人公は全てを包み隠さず俺に教えてくれた、実は文芸部は無くてそれを一から立ち上げるまでを、そしてその間に出来た仲間やその仲間の悩みや障害を主人公が手助けして乗り越えていった事を…)



男「おいおい嘘だろ……じゃあお前…」

男(お前がこの世界の主人公じゃねえか)

主人公「…なんだって?」

男「なんでだよ…俺じゃ悪いってかよ…っ!……い、いいや誰も悪くない。多分これじゃ俺が一人で消えないと都合が悪いんだろ?とんだ陰謀のセオリーだぜ」

男(もしそうなら考えてみろ、ヒロインと脇役がくっついた例があるか?俺の知る限り無いね)

主人公「だから何の話だって……」

男「お前は知らなくていい。言った所でお前に分かるはずがないからな……こんなやり切れないのは」

男(俺は多分女さんと結ばれない、大げさだが世界はそういう仕組みになってるんだろうな…『ここはゲームかよ?』と思っちまう。でも実際にいるんだな、こういうのが)

主人公「とっ、とりあえずさ!どうしたらいいと思う?俺は」

男「どうしたらだと?」

主人公「ああ……」

男「ンなもん決まってるだろうがっ!お前は星の数ほどいる人間から1人だけ選ぶんだよ…全員なんておこがましい事を言うな……ここはいつから一夫多妻が許可された国になった?男なら心に決めた女を真っ直ぐ好きになれ!!」

主人公「お前……いや、分かった。ありがとう、目が覚めた」

男(多分さっきと言ってることが違うっていいたいんだろうな、俺もそう思ったし)

主人公「俺は……女を選ぶ」

男「ああ…だろうな…」

男(なんとなくそんな気がしていた。誰か1人を選ぶなら女だろうと)

男「だって状況だけなら完全にメインヒロインだもんな」

主人公「へっ、なんだよそりゃ」

男「なんでもねえよ………じゃあな。……おーい!妹、妹友!ファミレス行くぞー!」

妹「ファミレスか…おーまぁいいが」

チリン

男「実は夜のファミレスって来たこと無いんだよなぁ……」

男(俺はあまりの敗北感にむしろ清々しさを感じていた。まだ告白すらしてないが失恋したも同じだから)

妹「じゃあこのナンデモセットにする」

妹友「いやいやいや…それお子様セットだから……」

男「じゃあ俺は適当にイカスミパスタでも…」

「イカのパプリカソースを下さい」

店員「イカのパプリカソースがお一つ」

「……」

店員「……?」

「…以上ですが?」

男「えっ?」クルッ

店員「か、かしこまりました…」

女「……ふむ…あっ、店員さん!それに妹ちゃんと妹友君も」

男「……っ」

男(出来ればあと一週間は会いたくなかった…いや絶対無理だろうけど)

男「あっ、奇遇…ですな」

女「もう何ですかその口調っ」ニコッ

妹「おお…こっちこい」

女「はいっ」

男「タメ口はすんなって言ってるだろうが…」

男(しかしあれだ…失恋してからの方がより綺麗に見えるな女さんは…。もういっそのこと主人公の野郎をサンディエゴに拉致って置き去りにしたいな)

女「……?」

男(しかしどちらもいい奴同士だし、暖かく見守るのが紳士ってもんだな。男ワゴンは恋愛戦線からクールに去るぜ)

女「どうかされましたか?私の顔に何か…」

男「あっ!いや何でも…少しぼぉーっとしてて……」

妹友「大丈夫?」

男「ああ、たったいま完全に病が吹っ切れたよ」

妹「バカ兄貴の言うことはいつも抽象的過ぎて分からん」

自宅

PC『~~……』

バタン

男「やめよう、今やると虚しすぎて二度とやる気を起こさなくなる……」

男(主人公はいつ女に告白すんのかな……)

ブルルル

カチャッ

『我、作戦明日決行スル予定ナリ』

男(明日か…ギャグ入れてるあたり茶化さないとやってらんねーんだろうな)

次の日

プルルル

女「はい、私ですが…えと…話ですか?はい。分かりました」



ファミレス

先輩「2番テーブル!」

男「イエッサー…」



先輩「皿洗いは任せた!」

男「イエッサー……」

友「おいどうした男?筋肉無くしたのか?」

男「筋肉は無くさねえよ……」

友「じゃあ何なんだよ…」

男「…バカだからお前ならいいか……」

男(俺は女さんと主人公と俺の三角関係を名前は伏せて友に言った。友以外の知り合いなら感づくだろうがこいつは何を分からないまま聞いてくれた)


公園

女「どうして呼んだんですか?急に改まって」

主人公「お、おう……」



友「ほへぇ~なんか虚しいな」

男「ああ…」

友「でもよぉ、それはソイツが悪いな」

男「何が?」

友「だからその失恋した方の奴だよ。そいつは負けた~とか思ってたらしいがそりゃ違うな。ソイツはフられる言い訳を探していたに過ぎないんだよ」

男「言い訳だと…?」

友「ああ、そうさ!多分その結ばれる方の男が居なくてもその男は告白しなかったな。絶対適当な言い訳をして諦めてた」

男「んな訳あるか!」

友「いやでもなぁ…『ハスラー』でもポール・ニューマンが言ってたぜ?『世の中には負ける言い訳を探してる奴が多い』って」

男「……」

男「確かに……そうかもしれないな」

男(まだ見ぬ次の恋じゃ気を付けるか……思わぬ所で教訓を学んだぜ)

先輩「ちなみにその告白は済んでいるのか?」

男「まだこれからだと思いますけど…ってギャァー!?」

先輩「今はそのリアクションも許してやろう、その告白が行われる場所は?」

男「えっ、なんでそんな事…」

グイッ

先輩「言え」

男「近くの公園ですハイ」

先輩「そうかそうか…ほれっ」

男「えっ、何スかこの鍵」

先輩「バイクの免許は持ってるよな?」

男「……というと俺に…」

先輩「そうだ、断ったらクビな。ここまで話を聞いておいて胸糞なラストで終わらせたくない…女の元へ行ってこい、しっかりお断りされろ」

男「……で、でももうこれから向かって間に合うか…」

先輩「確かボブは今日非番だったな?」

友「なるほど…その通りですぜ姉御!」

プルルルル

先輩「おいボブか?…ああ、そうだ私だ…例のアレを公園で…そうだ、構わん」

男(何するつもりだよ!)

先輩「という訳で多分イケるだろう。行け」

男「……」

友「ふっ、あの時ID腹筋2万回やったお前の情熱はどこいったんだよ!?」

男「そりゃ未遂で終わったけどよ……確かにクビは嫌だからな…」

先輩「……」コク

男「先輩、バイク借りるぜ!」

ダダダッ

公園

主人公「だからっ…俺はお前の事をずっと…」

ドンッチャドドンチャ♪♪

主人公「!?」

ボブ「YO!女ヲ勝チ取ルチャンスハ平等ニ与エナキャ俺ハソリャ、ゴ立腹!神モソウ、言ッテル!」

バンクス「チェケラ!ダカラ俺達ソレマデ時間稼ギ、誰ニモ文句ハ言ワセネー♪」

主人公「どっ、どうなってるんだボブ?この人達は……」

ボブ「ダツゴクーズ!ノ皆サンダ」

ミハエル「イェア!」

BOOOOM!!

主人公「とっ、とにかくこれじゃ告白なんてムードじゃ…」

ブロロロロロ

主人公「今度は何だ!?」

男「待たせたな…どうもおはこんばんにちは男ですっ」

主人公「男…どうしてここへ……」

ボブ「ウープス、『主役』ガ来タナ。撤収ダ!」

ゾロゾロ

主人公「今の…男が呼んだのか?」

男「いや先輩が……いやいや、そんな事はどーでもいいんだ。俺も成さねばならぬ事がある」

主人公「……」

男「……」

女「えと……」

主人公「なるほどな、なんとなくそんな気がしてたよ」

男「えっ、マジで?」

主人公「ああ、俺達は親友だからな。なんでもお見通しさ」

男(じゃあお互い様か)

女「あの…さっきから話が読めないんですが……」

主人公「ハハッ!張本人を忘れちゃ世話ねえな。男…同時に、だぞ?」

男(こんな事にこんな間抜けな掛け声も無いだろうと思ったが他に思いつかないから俺から言ってやった)

男「ああ…せーのっ」

男・主人公「「女さん!俺と付き合って下さいっ!!」」

女「えっ」


女「ええっ!?」

男(ここからは両者絶対に喋らない。自分の良い所を主張すればするほど見苦しいからだ)

女「えと………」

女「……お二人の気持ちは分かりました」

男(女さんも決意を固めた様だ)

今日はここまで

主人公「…」

男「…」

女「店員さん、私は……」




女「私は貴方を選びます」

男「……!」

主人公「……」

男(まさか…ここまでお膳立てされておいて何だが俺は当たって砕けろの精神でアクセル踏んでここまで着たというのに……女さんはハッキリと俺を選んだ)

男「なんで俺を……主人公の方が仲が良いじゃねーか!俺ならこいつを選ぶって……!」

男(自分でも何言ってるのか分からなくなってきた)

女「確かに仲はいいですがここまでこれたのはあくまで友情として考えてきたからです、恋愛と直結してしまうのは安易ですよ。それに私はあなたと何度かお話するだけでその魅力に気付くのには充分です」

男「……」チラッ

主人公「……女がそう言うならそれでいい、むしろあのまま無理を通して
女を後悔させずに済んでよかった」

男「お前……」

男(情けねえ、未だに主人公の方がお似合いだとしか思えない。俺は恋愛に対してあくまで私利私欲でしか行動してなかった、この諦めだって目の前でフられてモヤモヤした気持ちをしないためだったってのに…)

主人公「それじゃあ俺はそろそろ行く、末長くな!頼むから気まずい関係になったとか思うなよっ!?」

男「分かってる、お前をそう思った事はねえよ」

男(ちょっと前は敵意全開だったけど)

男「だいたいお前にもまだまだいい女はいるじゃねえか。例えばこの前上げた奴の中…妹以外で」

主人公「いや…今更女を選んでおいてそんなマネは出来ない。お前のやってる美…」

男「言うな」

女「?」

主人公「お前のやってるゲーム風に言うと俺はルートを決めちまったんだよ、決定したらもうフられたとしても相手を変えたくない。しばらくはそういうのとは無縁になる」

男(相変わらずよく分からん信念を持ってる奴だ)

男「そうか……じゃあな」

主人公「おう、またな」

女「はいっ」




終わり

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom