神様「そう。能力をざっくり説明すれば>>3する程度の能力だ」
男「なんでまた」
神様「ちょっとしたテストだよ」
男「へぇ」
神様「そういうワケで、>>3だからな」
男「>>3か……」
※エロ・グロ安価は安価下
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望んだものを着ぐるみにする
男「望んだものを着ぐるみにする程度の能力……」
目が覚めた。
アレは夢なんかじゃない。
ピンポーン。聞きなれたチャイム。
そして「やぁ」なる、聞きなれた声。
幼馴染「遅刻するよ」
男「ああ。スマンスマン」
幼馴染「まったく、私という天才美少女が傍にいるのに、だらしないね」
男「……いやあ、面目ない……ねッ!!」
さあ、着ぐるみになれ、幼馴染ッ!!
念じると、ボワンと音を立てて、幼馴染が煙に包まれる。
念じると、ボワンと音を立てて、幼馴染が煙に包まれる。
ぐったりと力を失う幼馴染。
否。元幼馴染。
男「……着てみるか」
……着ぐるみは、体格の差をカバーするほど伸縮性がある。
そして、着ても苦しくない。
……手鏡。
幼馴染「……ワオ」
神様よ。
発想が天才のそれだな。
そして「着ぐるみ化」の力は、解除して元に戻すこともできる。
さっきパソコンの着ぐるみを作ったので分かる。
いきなり人間に試すほどアレなヤツじゃないのさ。
幼馴染(in男)「足細ッ……オレの足がこの中に詰まってるのか? 質量とか、どうなってるんだ?」
幼馴染(in男)「胸は……まあ、うん。胸を上から見下ろす視界が斬新だ」
幼馴染(in男)「……女の、体なんだよな……」
いや、女である前に幼馴染じゃないか。
流石に、これ以上弄ぶのは止めておこう。
幼馴染(in男)「まあ……」
戻しておくか。
可哀想だ。
幼馴染「……ン? どうしたの?」
着ぐるみにされている間の記憶はない。と。
幼馴染「ぼーっとしてないで、学校行こう?」
男「あ、あぁ。ところで、聞きたいんだが」
幼馴染「何でも聞いて」
男「……妙な夢を見たりしなかったか?」
幼馴染「…………見たよ」
男「見たのか」
幼馴染「神様みたいな人が現れて、『お前の能力は>>12じゃ』って言って来たの」
男「幼馴染の能力が……>>12だって?」
どんな人にも変身できる
幼馴染「どんな人にも変身できる。って……」
男「そりゃ便利だ」
幼馴染「驚かないの?」
男「だって、夢なんだろう」
幼馴染「それもそうね」
男「……試してみたのか?」
幼馴染「勿論! 男君に――」
男「ほう」
幼馴染「ちょちょちょ……君は何も聞いてない。いいね?」
男「アッハイ」
着ぐるみ化の力について……打ち明けるべきだろうか。
Yes or No
下1つ
男「実はオレもな、同じような夢を見て……」
幼馴染「えっ」
男「オレの場合、『望んだものを着ぐるみにする』能力だ」
鞄から、ポンデライオンのぬいぐるみを出して、そいつを着ぐるみにしてやる。
ポンデをゴムの様に伸ばし、自分の体に合わせていく。
しまいには自分がポンデライオンになってしまった。
身長177cm体重68kgが、手乗りサイズにまで小さくなる。
ちなみに、このポンデは自分の意思で動ける。
動力は不明だ。
幼馴染は「ヴェェッ!?」みたいな奇声あげながら驚いてた。
ポンデ(in男)「大丈夫か?」
幼馴染「……男君こそ、大丈夫?」
男「ハイ脱ぎ脱ぎーっと……オレは大丈夫だよ。君の能力も見たいな」
幼馴染「うん……」
男「誰に変身するんだ?」
男(幼馴染)「貴方だよ……驚いたかしら」
男「オカマ口調やめろ」
男(幼馴染)「オホホ」
幼馴染「はぁっ、はぁっ……」
男「おいおい。もう息上がったのか?」
幼馴染「煽ってるヒマあったら、お姫様抱っこでもしてくださいますか?」
男「そうだ!! 幼馴染さんよ、着ぐるみになるかい?」
幼馴染「はぁっ。ああ、肺が痛い、ふざけないで。はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
男「着ぐるみとはいえ、中身はオレだからな」
男「筋力はオレ基準だから、遅刻しないで済む速度で走れるぞ!」
幼馴染「イヤだ!! どうせ、私の体でオナニーしたりするんでしょ!!」
男「俺を信じろ!」
幼馴染「一緒に遅刻してくれるって、信じてるから!!」
幼馴染「はぁっ……はぁっ……。ん……?」
男「どうした?」
幼馴染「ほら、向かいの道路の路地……」
#
金髪「ねえ、いいでしょお姉ちゃん」
柄シャツ「遊んでいこうよ、楽しいよ」
女「こっ、困ります……」
#
男「おーおー朝っぱらからお盛んですな」
幼馴染「見て分からない!? 女の人困ってるじゃん」
男「そうだな。だが、オレたちも遅刻しかけだ」
幼馴染「助けに行く」
男「はぁ……お前さんのそういうところが好きなんだ」
幼馴染「ふふっ。照れるわね」
警官(幼馴染)「君、何をしてる」
金髪「……何もしてませんよ」
女「お巡りさん助けて!!」
柄シャツ「チッ。逃げるぞ!!」
#
警官(幼馴染)「大丈夫かい?」
女「ありがとうございます!」
警官(幼馴染)「それじゃ、本官は別の事件現場に急行しなければならないので、これで失礼するよ」
女「はいっ!」
男「終ったか?」
幼馴染「冷たい男ね」
男「ならお前は、お人よしバカだ」
幼馴染「バカしか優しくなれないなら、私はバカでいい」
男「ヒュー格好いい! だが遅刻が確定したぞ」
幼馴染「……ならさ、いっそのこと、今日サボっちゃおうよ」
男「えっ」
幼馴染「2人でデートしがてら、ああいう悪人を能力で制裁して回るんだ」
女「……はぁ……結局、変われないのかな……」
私は生まれつき不幸で、臆病だった。
常に人の顔色伺って、でも、伺いきれなくて……。
そして、先程のように「ねえ、いいでしょお姉ちゃん」といったふうに――。
私は、狙われてしまう。
女「……変わりたいなぁ……」
神様「変えてあげようか?」
女「えッ!? いや、貴方、いつの間に……」
神様「うーん……そうだなぁ……>>24って感じの能力でいいか」
女「>>24……いや……貴方は一体……?」
ふわっ。
女「消えた……。>>24の能力、か……」
他人の注意を操る
【ウルトラスターバックス4】
店員「ドッピオでトールなアイスコーヒー昇竜拳盛りですね?」
女「はい。それで」
店員「昇竜拳ですが、リュウとケンが御座いますが……」
女「ケンで」
#
女「ふぅ……」
女「『他人の注意を操る』って……どう使えばいいのよ……」
カランカラン。
店員「ご注文は」
金髪「フラペチーノのキャミィちゃんやで」
柄シャツ「さくらブラウニー」
げ。さっきのナンパやくざ!
柄シャツ「おいお前、さくらとかりん、どっちが可愛いか決着つけようや」
金髪「つくんスかね。それ……」
柄シャツ「どっちも可愛いのは重々承知じゃろう……が。それではアカン」
金髪「……旦那ァ……さっきの女、色目使って見てきてますよ」
柄シャツ「なんやとォ……?」
女「ヒッ……」
色目チガウ。怯えてた。
ちなみに、さくら、かりんはストリートファイターで検索!
私はかりん派かな……。
ついでに、リュウとかケンもストリートファイターのキャラだ。
なんて、意味のない現実逃避が湧いては意識から零れていく。
こうなったらどうしようもない。
エロ同人みたいになるしかないんだ……!
神様「使いなよ。『力』あるんでしょ?」
女「!? また……今度は幻覚?」
柄シャツ「なんや色目使っとったんか? そうなら素直になりなよ」
女「……ごめんなさい」
金髪「なんやと!! 舐めとんのか!?」
神様「舐めてるんじゃない。君たちは『痒くなる』んだ」
女「……! きっ、ききっ……君たち……痒くない……?」
金髪「かゆい?」
柄シャツ「か、か、かっ……く、くきき……」
金髪「旦那ァ?」
柄シャツ「『痒い!!』」
金髪「うっ……俺も……」
「かゆいかゆいかゆいかゆい!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」
神様「うんうん……そうだよ。注意を操るってことは、微細な神経に全ての注意を向けることもできる」
普段は意識していない「潜在的なかゆみ」が数百倍にも膨れ上がって、一度に襲ってくるんだ。
あのヤクザさんは、残念だけど廃人かな。
神様「男君も、幼馴染ちゃんも、いい感じに使いこなしてるみたいだし……」
能力者、もうちょっと増やしちゃおうかな♪
#
女「はぁっ……はぁっ……ビックリして、店から出ちゃった……」
女「『他人の注意を操る』……分かって来た……」
恐ろしい力……。
それを自分が……?
自分は、何でもできる……?
女「あ、アハハハハハッ……! すごい……こんな、夢みたいなことが……!」
第1話 完
今回はここまで。
第2話 「それぞれの日常」
シスター「はい。きっと亡くなったご主人も、そう願っておられます」
老婆「……老後は、田舎にでも帰るかねぇ……」
シスター「神の名において、安全と平和を祈ります」
老婆「ありがとう。シスターさん……」
老婆が去る。
……私はシスターだが、善人ではない。
この前ヤクザがやってきて、クスリの密売に関わることを打診してきた。
うちがメキシコの教会と繋がりがあるから、そこを経由で格安でクスリを仕入れたいらしい。
勿論断ったが……。
……正直言って、教会の経営は苦しい。
私にもっと力があれば、悩まずに済むのに……。
神様「力が欲しい?」
シスター「えっ?」
神様「『力』かぁ……これまた、カトリックらしいね」
シスター「どなた様ですか?」
神様「僕はねぇ。カミサマだよ」
シスター「……イタズラなら、帰ってください」
神様「本当なら?」
シスター「日頃から誓っているように、この身を捧げます」
神様「そう……まあ、体は大切にしなさい。気持ちだけ受け取っておくよ」
シスター「……それで……」
神様「そう、それでね。君に>>37の能力をプレゼントしよう」
シスター「>>37?」
目からビームが出せる
神様「目からビームが出せる能力」
シスター「はぁ!? 私の職業考えて下さいよ!!」
神様「えっ? 気に入らなかった?」
シスター「私はキリスト教徒です! 平和に生きるのです! 野蛮な力など不要です!」
神様「……十字軍遠征」
シスター「うぐっ……」
神様「奴隷貿易!! 魔女狩り! ユダヤ人迫害!!」
シスター「うぐぐっ……!!」
神様「カトリックは野蛮。目からビームは野蛮。よってシスターにはビームがお似合い」
シスター「そ……それこそ暴論です……清貧なキリスト教徒もいます!」
神様「じゃあ、要らない? 本当に要らない? 僕は押し付けるんじゃなくて、与えてるだけだから」
「君次第なんだよ? 君はビームが必要? それとも不要?」
シスター「………………」
どう使えって言うんだ
>>39
スマン…俺が安価したばかりに……
安価下
>>37
お前のせいで更新止まったじゃないか。もう少し考えて安価しろよ
>>39
>>40
>>41
連絡出さずに退席してすみませんでした。
ちょっとコンビニで早めの昼食を買って来たところです。
ちなみに、ビームとは名案でした。
>>1で書いたルールにさえ従っていればどんな安価でも歓迎します。
ビームとは、ざっくり言って一列に並んだ粒子のことである。
それはそうと――。
店員「ありがとうございましたまたお越し下さいませ!」
ファミマでスパゲッティとミルクティーを買って来た。
お腹が空いていたのもそうだが、それよりも試したいことがあったからだ。
教会の地下に、余っていた金属の板が数枚。
これを溶接して、1面だけ開いた直方体を作る。
中にスパゲッティを容器ごと入れ……。
シスター「ビーム!!」
1分後。
そこにはホカホカになったスパゲッティミートソースが!!
シスター「ビームはビームよ。電磁波――今回で言うマイクロ波もビームの一種……!!」
マイクロ波と箱で、疑似的に電子レンジを作った。
周知のとおりだが、電子レンジは、マイクロ波があれこれ働いて食品を加熱するのである。
目から出る際にはビームの性質を持っていても、箱に衝突した時点で、バラバラになってただのマイクロ派と化したことだろう。
シスター「けど、電子レンジの電気代を節約したところで、根本的な解決には……」
『ビーム』なら何でも作れるのかしら。
なら……中性子線を即死レベルで照射すれば、容疑者不明の死体が出来上がる。
そもそもマイクロ波で焼き殺してもいい。
シスター「いや……どうして物騒な考えになるのです!」
私はシスター……善人ではない。
シスター「……落ち着こう。せっかくの休日だし、カフェでも入って……」
#
【ウルトラスターバックス4】
柄シャツ「かゆいかゆいかゆいかゆい!!!」
金髪「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」
向かいの席の男が、女に詰め寄ったかと思うと悲鳴を上げて転げ回っている。
シスター「ッ!?」
咄嗟に思い付きを実行する。
目から発せられるレーザーを拡散し、ソナーのように、レントゲンのように使用した。
……目立った外傷はない。
シスター「店員さんッ、救急車呼んで!!」
店員「は、はいッ!!」
シスター「目立った外傷は有りません。薬品、毒物、持病の可能性が高いです。どなたか、経過を観察できる者はッ!?」
医者「なら私が見ていよう」
シスター「貴方、医者のようですが」
医者「メンタルだよ。専門外だが、頑張らせてもらう」
シスター「私は、現場から逃走した女を追いかけます!!」
女「あ、アハハハハハッ……! すごい……こんな、夢みたいなことが……!」
シスター「もし、ご婦人、話を伺いたいですが」
女「……私は忙しいのよ」
シスター「先程、カフェから逃げるように出ましたね! 男2人は悲鳴を上げて倒れていますよ!」
女「…………」
シスター「貴方、何か関係がありますね! 警察に引き渡して――」
女「――ねえ、人が痒くて転げ回っているの見ちゃうとさあ――やっぱりさあ――」
「自分も痒くなってこない?」
シスター「……戯言で攪乱する気ですか?」
女「あれっ。私の『能力』は、確かに……。あれっ。あれぇ……」
シスター「ああ。そうですか」
女「えっ」
シスター「貴方、怪しい人に『○○の能力をプレゼントするよ』とか言われなかったかしら」
女「なんでそれを」
シスター「…………そうね。あっちの公園のベンチに座って話しましょう」
現場の方は、あのメンタルの医者と、優秀な店員さんが何とか取り持ってくれるだろう。
今は彼女だ。
目を見れば分かる。
――普通の精神状態じゃないから。
シスター「へぇ……『他人の注意を操る能力』ですか……」
女「えぇ。けれど、貴方には通用しなかった」
シスター「つまり、私たちは『他人じゃない』ということですね」
女「えっ」
シスター「お互い、妙な力を授けられたのです。他人とは言えないでしょう」
女「そんな、言葉遊びみたいな……」
シスター「何度試しても、私は操れなかったみたいですからね」
女「バレてたか」
シスター「目に力入ってましたよ」
こつん。額と額を合わせ、目と目を合わせながら言う。
シスター「私たちは、ひとりではありません」
女「く……くだらないわね……隣人愛ってヤツ?」
シスター「お好きなように。ただ、温もりだけは本物です」
女は、俯きがちに嗚咽した。
女「シスターさん。お名前は?」
シスター「シスターはシスターですよ。これ、教会のパンフレットです」
女「……シスターじゃなくて、貴方そのものとお話したかったんだけど」
シスター「私には、名前がありません。住所もありませんが、教会で寝泊まりしています」
女「どういうこと……?」
シスター「さあ……? ご想像にお任せします……。それで、もう落ち着きましたね?」
女「……はい」
シスター「それでは、私は教会に帰ります。日曜礼拝、是非参加してくださいね」
女「……ありがとう。シスターさん」
彼女は、一度も礼拝には来なかった。
第一声通りに、忙しいのだろう。
#
シスター「目からビームかぁ……」
司祭「何を呟いているのですか」
シスター「あっ。司祭様。なんでもありませんよ」
司祭「漫画の読み過ぎは良くありませんよ」
シスター「いや、違うんですけどね……」
司祭「?」
シスター「ただ、人間って欲深いなぁ・・…って」
あの不安定な女性に、あそこまで強力な力を与えた存在……。
そして私に『目からビーム』を授けたのは、本当に神様だったのだろうか。
もしかしたら私は、悪魔と契約してしまったのかもしれない。
第2話 前編 完
後編は夕方から投稿します。
【後編】
ニート「よう、久しぶり」
元ニート「ああ」
ニート「向かいのベンチ見ろよ。シスターさんと女の子のレズカップルが額寄せ合ってやがる」
元ニート「見世物じゃないだろ」
ニート「それもそうか。まあ俺たち見世物ニートは――」
元ニート「いや、俺はニートじゃなくなった」
ニート「えっ」
元ニート「……宝くじで一山当ててな。その金でマンションを運営することにしたんだ」
ニート「一山でマンションって、一体何億……」
元ニート「そのことで話があるんだ……俺のマンションで、清掃員として働かないか?」
ニート「なんだよ、それ……裏切りじゃねえか」
元ニート「裏切り?」
ニート「帰る」
吐き気を催す。
彼だけはずっと俺と同じニートでいてくれると思っていた。
ニート「クソッ。クソッ。クソッ……腹が立つ……」
神様「やあ、そんなに腹を立てて、どこに行くつもりだい?」
ニート「……何だお前。お前を地獄に行かせてやろうか?」
神様「そりゃ無理だね」
カッとなって、気づいたら拳を振るっていた。
そいつは、一歩だけ後退して拳を回避しやがった。
神様「暴力を振るうってことは、暴力を振るわれる覚悟アリってことだね?」
ニート「何なんだよ、お前」
神様「僕なりに暴力をプレゼントしよう……>>54の能力だ」
ニート「……あぁ?」
神様「何度も言わせないでくれ。君に>>54の能力をプレゼントしよう」
責任感を重力に加算する
ニート「責任感を重力に加算する?」
神様「そうだよ。無責任な君らしいだろ。例えば、僕は責任感の塊だ。僕に向けて能力を使いたまえ」
ニート「どうやって」
神様「念じる」
念じた。
そいつは、加算された重力に耐えきれず弾け飛んだ。
同時に、自分も少し体が重くなった気がするが、ほとんど重くなっていない。
ニート「うっ……」
人が弾け飛んだんだぞ! 周囲の人は、何も気にしていなかった。
無関心な現代人が恐ろしい。
……と、同時に憎たらしく思う。
ニート「……手始めにコンビニ強盗でもしてやる」
俺をニートにしやがって。
俺は社会が憎い。
社会に復讐してやる!
シスター「そこの貴方……そんなに肩をいからせて、何か悩みでもあるのですか」
ニート「何だよ、次から次へと……その恰好、さっきのレズシスターか?」
シスター「レズッ……失礼な」
ニート「だってレズじゃねえか。さっきの地味な服のお姉さんは振ったのか?」
シスター「いいえ。それにカップルではありません」
ニート「はいはい」
シスター「それで、どちらに」
ニート「はぁ……面倒だな。……そうだな、聞いて驚くなよ。これからコンビニ強盗だ」
シスター「本気なら、考え直しなさい」
ニート「ヤだね」
店員「いらっしゃいませー」
ニート「……」
シスター「……」
女店員の接客の声をBGMにしながら――。
雑誌コーナーで待つこと数分間。
シスター「怖気づいたのですか?」
ニート「黙れ。タイミング次第だ」
強盗「金を出せ!!」
店員「えっ!!」
ニート「マジかよ……」
シスター「そこの貴方!! やめなさい!!」
強盗「うるせぇ!!」
シスター「きゃっ!!」
強盗はシスターを構わず殴り飛ばすと、シスターを羽交い絞めにしたまま飛び出した。
強盗はまだ金を盗んでいない。
ニートは反射的に店外へと飛び出した。
なぜ飛び出したのか、ニートには判断がつかなかった。
そして強盗に追いつき、強盗の腕を掴み……ほとんど本能だった。
本能で理解していた。
自分自身に『責任感を重力に加算する能力』を発動する。
体を壊すほどの責任感ではないし、全く責任感がないわけでもない。
体が重くなる分、パンチの威力も増す。
強盗をシスターから引き剥がすと、その顔を思いきり強打した。
強盗が昏倒し、拘束されていたシスターが解放される。
通行人A「おいっ! 確保しろ!!」
店員「私は警察を呼びます!」
シスター「けほっ……けほっ……あ、貴方。きっと正しい行いをすると信じていましたよ」
ニート「……うるせぇ」
シスター「貴方は命の恩人です。お礼をさせてください」
ニート「礼か……ならカネをくれ……パチンコですっちまった。働いてもいねえしよ」
シスター「ウチも厳しいのです。カネと操以外でお願いできますか?」
ニート「なんだよ……仕方ねえな」
操って言葉を女性に言わせるだけで興奮できる!
どうでもいいけどシスターは平常時は目を閉じてるんだろうか
>>60
出力を調整して限りなく無害にできるので、目は閉じていません
#
男「……暇なんだが」
幼馴染「悪人探しって張り切っても、そうそう悪人と巡り合わないからねぇ」
男「お前に振り回されっぱなしだよ」
幼馴染「ごめんね♪」
男「こいつ……」
幼馴染「あっ!! そういえば今日、リリー様の握手会の日だよ!」
男「リリー様って……例のアイドルか?」
幼馴染「そうそう。よく覚えてたね」
男「行くのか?」
幼馴染「他にすることもないし」
#
「君は特別なプロトタイプだ」
幼稚園児のころ出会った彼は、神様だと自称していた。
その神様に、特別だと言われた私は今――。
リリー「ブタさんたち! 私と握手できることを光栄に思いなさい!!」
ファン「ぶひぶひー!!」
女王様(アイドル)をやっている。
幼馴染「ぶひぶひー!」
男「なんだこれ……」
幼馴染「ほら、男君も、ぶひぶひーって言いなよ」
男「嫌なアイドルだなぁ……」
奥で話している2人組、目を合わせる。
私は、能力を2つ持っていた。
1つ目は、『見た相手が能力者かどうか分かる能力』で――。
もう1つが――――。
神様「君は特別なプロトタイプだ。特別に>>66の能力をプレゼントしよう」
幼リリー「>>66……?」
目があった者を自身の奴隷にする
『目があった者を自身の奴隷にする能力』!!
リリー「ふふふ……」
ふらっ。
2人のうち、男のほうがフラフラとした足取りで、握手の列に割り込んでやってくる。
男「あの……」
警備員「ちょっと、困りますからちゃんと列に並んで……」
リリー「いいのよ。ほら……手を出して」
男「はい……」
リリー「貴方もブタさんになりたかったのね? さあ……これで奴隷契約は成立よ」
男「光栄です……」
かたく握手する。
深夜。駅前の公園にて。
幼馴染「本当なんでしょうね。明日も学校で、早いんだから」
男「だから、本当にリリー様が約束してくださったんだ!」
幼馴染「深夜2時30分。この公園で待ち合わせ……」
男「ツレの女の子と一緒にと」
幼馴染「握手してから、君もリリー様に惚れ込んでくれたようで何よりだけど」
男「ああ……あの美貌は女神のものだ」
幼馴染「そうよねぇ……」
輝かんばかりに淡いブロンドは、胸の下あたりまである、ぴっしりしたストレートで。
ぱっつん前髪。性格のキツそうな、けれど気品を感じさせる顔立ち。
白いレースのドレスに、赤いリボンのアクセント。
思わず踏まれたくなるような白いブーツ。
男「ああ……リリー様のアルバムと写真集を買いあさるよ。Amazonとかにある?」
幼馴染「すぐ絶版になる上に、絶版のやつはプレミア付いてるから、全部で500万くらいを覚悟しなきゃいけないよ」
男「それがリリー様の愛なんだね」
幼馴染「どっ。どうした? 急にそんな惚れちゃって、やっぱりちょっと異常……」
高排気のエンジン音と、砂利を跳ね上げる音。
公園内に黒い車が乗りつける。
黒いスモークで、フロント以外なにも見えない。
まるでヤクザだ。
運転席の窓が開き、その中から、リリー様が手招きする。
リリー「車内で話しましょう」
リリー「貴方たち、能力者ですね?」
幼馴染「な、なぜそれを……ッ!」
リリー「私の能力は『見た相手が能力者かどうか分かる能力』ですの」
男「ファンとアイドルが両方能力者だなんて、これはまさに運命ですね!」
リリー「ふふふ……運命……確かにそうかもしれませんわね」
幼馴染「?」
リリー「貴方がた、あの奇妙な存在に『能力をプレゼント』とか言われて、能力を身に着けたのでしょう」
男「ええ」
リリー「彼が黒幕です」
幼馴染「黒幕? 何の黒幕ですか?」
リリー「これから戦争が始まります……!」
「能力者同士の、救いようのない戦争が……!!」
リリー「戦争は回避できません。せめてお互いに生き延びるため、本当の意味で私の奴隷になりなさい」
男「本当の意味で……」
リリー「開戦と同時に貴方がたの全人権を剥奪し、私の管理下におきます」
幼馴染「……」
リリー「私は前回の『異能戦争』を生き延びました。……もう、犠牲者が増えるのは嫌なんです」
男「……分かりました。貴方の奴隷になります」
幼馴染「ちょ、ちょっと!! 意味分かって言ってるの!?」
男「『開戦と同時に』だろ? それにリリー様。オレが服従するには1つ条件がある」
リリー「なんでしょう」
男「あくまで『生存に付随する行為のみ』だ……生存とは無関係な、危険行為、犯罪行為を命令して来た時点で、お前の首を掻き切る」
リリー「……反抗的なブタは、調教のし甲斐がありそうですね」クスクス
幼馴染「はぁ……呆れた。そんな気軽に人権差し出すなんて、相手はアイドルよ?」
男「雰囲気で分からないのか? リリー様は、いくつも修羅場を潜り抜けてる」
幼馴染「分からない」
リリー「……貴方はどうしますか?」
幼馴染「私ィ? 私は……」
奴隷になる。
or
奴隷にならない。
>>73
ならない
頭の中の「天使」と「悪魔」と「私自身」が、満場一致の答えをはじき出す。
「ならない」
「ならない」
「ならない」
幼馴染「お断りします」
リリー「あら。意外ね」
幼馴染「なるわけないじゃん。イカレてるよ」
男「そうか?」
幼馴染「お互い、初対面なのよ?」
リリー「貴方、握手会の常連さんよね」
幼馴染「おっ、覚えててくれたんですか/// じゃ、じゃなくて……」
リリー「……それもそうね。2人とも。先程のは、アイドルなりの愛情表現だと思ってください」
男「えー……俺は別に、奴隷でもいいんだけど……」
リリー「クスクス……まあ、そろそろ異能戦争が勃発しかねないのは事実です」
幼馴染「その……能力をばら撒いてるやつは、何がしたいんですか?」
リリー「暇つぶし。ねえ? ゲスな理由でしょ。私は、そういうのが許せない」
男「……同感ですね」
リリー「家まで送って行きますよ」
幼馴染「知ってるんですか?」
リリー「貴方、ファンレターを送ってくれたでしょ。それよ」
幼馴染「私ィ……」
リリー様のファンとしての充実感と、ヤバげな相手に個人情報を送ってしまった後悔。
ないまぜになって、眠れない夜だった。
リリー「……自身に手放しで賛同するだけの奴隷だと、増長して潰れる」
組織には自浄作用が必要だ。
奴隷になりたがらなかったあの女の子は、チームに不可欠な存在だ。
奴隷に進んでなった男の子も、最後の最後で抵抗して、条件をつけた。
こちらも、丁度いい存在。
戦争では、彼らと3人でチームを構築するのがいいだろう。
極限状態では、優秀な能力よりも、強靭な精神力が必要だ。
あの2人は、ああ見えて鋭く強い日本刀のような感性をしている。
リリー「……次は勝つわよ……ねえ、カミサマ?」
第2次異能戦争の開幕だ。
#
神様「あらら。必死に準備してるみたいだね」
神様「まあ、好きなように準備しなよ」
僕は概念そのもの。
決して死ぬことがない。
それに君の能力だって、僕が与えた道具だろう?
そんな頼りないオモチャで、僕を倒せると思わないことだ。
神様「今回の戦争は僕たち神様陣営の圧勝かなー……ねえ、つまらないね?」
神様「まあ……今回は特別だ」
「これより『プロジェクトエデン』を始動する」
第2話 「それぞれの日常」 完
第3話「エデン」
確か……昨晩は普通に布団に入って寝たはず……。
男「この部屋は?」
会議室のような一室で目が覚めた。
既にリリー様が部屋にいた。
リリー「お早う。可愛い私のブタさん」
男「り、リリー様。ここは?」
リリー「私にも見当がつかないの」
男「そうですか……」
窓からは東京の街が見える。
会議室の出入り口と窓は、固く糊付けされたように動かない。
窓を割ろうとしても無理だった。
リリー「無理よ。そして私の推測では……」
会議室のプロジェクターから、光線のようなものが発せられる。
その光線が幼馴染の姿を画面に映し出すと、絵から幼馴染が浮き上がってきた。
幼馴染「あれ……ここは……」
リリーは再び、見当がつかないと説明を繰り返した。
合計5回、誰かが転送されてきては、それぞれ驚いて……同じことが繰り返された。
医者「……寝たはずなのに……ついに私もメンタルの病気にかかってしまったのかな」
シスター「ここは……あっ、あの時の!」
女「あら……」
ギャル「あれッ。リリー様じゃね!?」
チャラ男「マジッ!? ギャースゲーッ! サインいっすか」
この5人だ。
リリー「お安い御用よ」
チャラ男「アザッす! オークション6ケタ落札間違いなしじゃん!!」
男「……ちょっと思ったんだが」
幼馴染「なに?」
男「この雰囲気……漫画の『GANTZ』に似てないか?」
幼馴染「GANTZ?」
男「前に連載してた漫画で……こうやって部屋に集められたメンバーで、化け物と戦わせられるんだ」
幼馴染「そんなゲームみたいな……」
神様「さあ!」
「ゲームを始めよう!!」
スクリーンに映し出されたそれは、部屋にいる男女に能力を与えた張本人だ。
神様「君たちには、この写真のバケモノと戦ってもらう!」
化け物の名前 +1
化け物の能力 +3
※なお、能力の項目で名前と思しきものが挙がった場合、安価下
神様「君たちはこれからこのテンペストと戦ってもらう!」
男「ただの泥じゃないか」
神様「ふふん……それは戦ってのお楽しみだよ」
リリー「早く終わらせましょう。夢の続きを見たいのだけれど」
神様「くっくっく……内心、一番焦ってるのはリリーちゃん。君じゃないかな?」
「あと1つだけ……得点を100点稼いだ人は、願い事をかなえることができるよ」
チャラ男「願い事?」
神様「それも、クリアしてのお楽しみ」
「さあ、戦場にご案内」
戦場 +1
女、シスターを除いたプレイヤーの能力 +6以内から>>1が選択
1時で締め切り。
能力について3件以下の場合、安価が出揃うまで待機。
安価を確認しました。
今から、戦わせるために能力を細かく規定していきます。
男『ウェア・シェア』(>>3)
【能力】
①:5m以内の任意の対象を着ぐるみにする。
・能力者相手には90%の確率で失敗する。
・能力者相手に使用した場合、1分のクールタイムが必要。
・着ぐるみの性能。
・高い柔軟性で、ゴムのような材質。何があろうと破壊されない。
・着ぐるみの着用者の肉体は、着ぐるみにフィットするように自動で小さく/大きくなる。
・着用者の身体能力は保たれる。
・着るのに時間がかかるが、脱ぐのは一瞬。
幼馴染『アサシン』(>>12)
【能力】
①:思い描いた人間に変身する。
・変身の姿は、一度でもこの目で見たことのある、実在の人物でなくてはならない。
・身体能力は、変身先に依存する。
女『ハルトマン』(>>24)
【能力】
①:対象の無意識を誘導する。対象は10m以内で、かつ非能力者である必要がある。
・無意識の内容は、対象が想定しうる範囲でなければならない。
こういうの好きかも
設定に関して質問あるけど聞いてもええのんかな?
シスター『ホーリーライトニング』(>>37)
【能力】
①:目からビームを発射する。
・定義上ビームであれば、どの波長でも、どの粒子でも発射できる。
・拡散度、出力は自由。ただしビームに対して自身の頭部以外は保護されない。
>>96
ありがとうございます。
質問は随時受け付けています。
ニート『グラヴィティ・デューティ』(>>54)
【能力】
①:10m以内の対象1体の重力を、その義務感に応じて加算する。
・重力の変動は、対象にのみ影響する。
リリー『サーチ&コンクエスト』(>>66)
【能力】
①:見た人間が「能力者かどうか」分かる。
②:目と目を合わせた存在を「奴隷」にする。
・「奴隷」とはあくまで「命令への服従」であり、命令に反しない範囲での反抗は自由。
奴隷自身の生命を損なう命令はできない。
命令は漠然ではなく、概ね確実に10分以内に実行可能なものである必要がある。
・そのため、常に奴隷に対して命令を発し続ける必要がある・
【備考】
・ファンが「ぶひぶひ」と従っているのは、能力ではなく彼女の人格の賜物である。
・リリーはこの能力に依存することを嫌っている。
話術だけで屈服できるならそうしたいと願う。
>>98
ありがとう、では改めて
>>94
着ぐるみの出現限度数は?(一個に限るのか、クールタイムを過ぎれば無限に産出可能なのか)
>>95
「この目で見た」のは映像等で見たものも含まれるのか、それとも直接見ていなければいけないのか
(極論、TVでみた事のある世界タイトル持ちのボクサー等になれるか否か)
>>96
「モンスター(テンペスト)」にも能力は通じないという認識でいいのか(モンスター≒能力者という認識でいいのか)
>>101さんの質問を元に、能力の基本ルールを作成しました。
次のレスで疑問に対して具体的に回答します。
『能力の基本ルール』
①能力の使用/維持/中止には精神力を消耗する。
・精神力を消耗できない場合(気絶/睡眠/死亡)能力は強制的に中止される。
②能力には出力の上限がある。上限に個人差はない。
・パワーが統一されているわけではなく、そもそも規定された上限に達しない省エネルギー能力も多い。
③『対象』とは、自身が存在と位置を認識している存在である。
>>101
ウェア・シェア『着ぐるみの出現限度数は?』
・能力説明に規定がないので、基本ルールに従います。
・着ぐるみの出現限度数は「数ではなくサイズ上限」として、最大が「10トン」です。
・10トンまでなら際限なく産出できます。
・ただし10トンまで出した場合、1秒足らずで気絶します。
・現実的なところで言えば、人間10体程度(500kg)を上限として運用するべきでしょう。
アサシン『「この目で見た」についての規定』
・映像を通すことによる制限はありません。
よって、想像の産物でなければ、どんなスターにも変身できます。
ハルトマン『モンスターにも通じないのか?』
・妖怪(モンスター)を対象にした場合の規定は存在しません。
・よって、モンスターが非能力者であれば自由に誘導できます。
・ただし、妖怪の99%は能力者です。
>>103
シェア・ウェア『着用者が能力者本人である必要/重ね着』
・着用者=本人の規定なし。そこに着ぐるみを作るだけの能力です。
・重ね着=自由。ただし、着ぐるみの重量が加算されていくので実用的ではありません。
今回はここまで。
次回以降、シリアスな戦闘パートと日常パートを往復するような流れになるかと。
乙、回答ありがとう
シェアウェアは確率的に言えば一回だけ能力者を着ぐるみにする余裕はあるのか
やる意味があるかはとりあえず置いといて
あとも重箱の隅つつく様で悪いがう一個質問
>>105
・サイズ上限(重量の上限?)は、対象が着ぐるみになる前の重量で換算するという認識で良いか?
・着ぐるみの重量はどれほどか?能力の対象になったものそのものの重量になるのか?
(例:仮に車の着ぐるみを作り車その物の重量が1000kgの場合、着ぐるみは1000kgになるのか?)
もしくは元の対象にかかわらずいちりつの重量となるのか?
個人的には>>6を見る限り着ぐるみ自体にそれほど重さはないと思ってるけど確認のため。回答よろしくオナシャス
>>1が質問に答えるスタンスなら仕方ないけど、テンポ悪くなるから投下中は本筋を優先して欲しい
なんかせっつき過ぎたみたいね
申し訳ない
男「ここは……学校?」
ここは学校、おそらく校庭の隅だ。
傍にある、奇怪なメタリック質の箱……。
この箱は……? 『アイテムボックス』と書かれている近くに赤いボタンがあり、ボタンに「PUSH」とある。
恐る恐る、押す。
プシュー……。密閉されていた気体が音をあげる。
同時に「これが君の活用すべき道具だよ」と神様の声が聞こえた。
男「>>114で、どうにかやり繰りする必要があるのか……」
箱の中から、>>114を取り出す。
>>114は道具あるいは武器で、男自身の体よりも小さいものだ。
ちなみに、これは生命体ではない。
※条件に不一致で安価下。
ハサミ
デストーイ・ベアをイメージした
男「クマの人形に、ハサミがザクザク刺さってやがる……」
とりあえずハサミだけ取り出し、懐へ。
残りのクマの人形は、着ぐるみ化してぺったんこにする。
これで軽量化できる上に、いざというときに攻撃を防御できる。
着ぐるみはかなりの強度を持つからだ。
男「幼馴染がいないと、かなり不安だな……。リリー様は経験者で頼りになるはずだ」
男「どちらかと会えればかなり攻略が楽になるぞ……」
というか、テンペストとかいう化け物を1人で退治できる気がしない。
着ぐるみ化は、どちらかというと攪乱向けだ。
……なんてことを考えながら、深夜の校内をぶらぶらとうろつく。
>>119「……」
男「あっ……」
月光に照らされたそれと、目が合う。
安価、以下のいずれか。
「幼馴染」「リリー」「医者」
「シスター」「女」「ギャル」「チャラ男」
医者
そこは学校の1階廊下だった。
医者「うっ……動かないでください」
男「オレは別に怪しいもんじゃ……」
医者がアサルトライフルを男の方に向けて構え、そして撃った。
閃光が弾け、背後から呻き声。
泥「ギャッ、ギャッ、ギャッ……」
泥B「クスクスクス……ヒホホホホ!!」
振り向く。医者がうごめく泥に向けてライフルを打ち続けている。
銃弾が泥の中に溶けていく。
泥「アッ! アッ!! アッダ~~~ムゥ!!」
泥B「泥ッ!! 泥ッ!! ヒホホホホ!!」
アサルトライフルの連射が、まるで通用しないのか……?
こいつら……。
視界が暗くなる。
泥が、腕のようなものを創り出して、自分に叩き付けてきたのだ。
泥が眼前に差し出される寸前――。
男「食らえッ!」
念じる。泥と、泥Bは、あえなく着ぐるみ化。
男「あっけねえ……」
医者「はぁっ……はぁっ……はぁっ……お、終わったんですかね……」
「泥ッ!! 泥ッ!」
「ヒホホホホ!!」
「ヒホホホホ!!」
「泥ッ! アッ!! アッ! アッ!! アッ!!」
校庭から湧いて出た大量の泥が、大挙して窓を叩き割ろうとしている。
奴ら、自身の姿かたちを自由に操作できるらしい。
ドロドロと不定形で、灰色で気味の悪い内蔵のようだった。
医者「ここは危険です! 屋上に上がりましょう!」
男「名案だ」
#
男「こんな状況だ。お互い情報交換しよう」
医者「……お互い、本名の交換はナシで行きましょう」
男「なんでだ?」
医者「能力を教えても、日常生活で悪影響がないように」
男「……わかった。本名を教えるのはナシ。じゃあ、お前さんからどうぞ」」
医者「はい。僕はメンタルクリニックで勤務する臨床心理士です」
男「オレは高校2年生、いたって健全な男子児童だ」
医者「児童って小学生に言うものですよ」
男「そうだったか?」
医者「それはそうと、あの泥……」
男「ああ。あれがテンペストなのか?」
医者「……断言はできません。ただ、このライフルが役に立たないのは事実なようですね」
男「……お前さん。能力は?」
医者「私の能力は……」
「泥ッ! 泥ッ!」
「ヒホホホホ!!」
男「クソッ、屋上まで壁伝いで這い上がってきやがったのか!?」
医者「丁度いい。私の能力で撃退しましょうか」
医者は立ち上がり、3mの距離まで泥を引きつけ、叫んだ。
医者「落ちろッ!!」
泥を中心とした床に半径2mほどの穴が開き、泥が屋上の下、4階の教室に消えていった。
医者は更に、落ちた泥を見て言う。
医者「凝固だ。コンクリートの海に溺れるがいい」
4階の教室は、男のいる場所からは確認できない。
だが雰囲気からして、泥を始末したのだろう。
「ヒホホホホ!!」
もう一体、背後から医者に急接近した泥が勝利を確信してわめいた。
だが勿論こちらも、凝固。
泥は、乾いた砂のようにポロポロと崩れながらも、医者を殺さんと拳を振り上げた。
だが、乾いている。ライフルの衝撃がよく伝わる。
そして砂城が落ちた。
医者『UNITY』
【能力】
①:3m以内の非生物/個体or液体の純度を変化させる(1~99%の範囲で)。
・高純度にすれば個体としてより強固になる。
・低純度にすれば液状化/揮発する。
・純度の変化分は、周辺の物質によって賄われる。
男「なるほど……強いな」
医者「貴方の能力は?」
男「……」
いざ彼と戦うことになったら、能力を知られるのは不利だ。
『着ぐるみ化』は奇襲性だけが取り柄だから。
さて。
彼に能力を教えるべきか? また、どこまで教える?
>>128
①正直に話す。
②ぼかして教える。
③教えない。
④その他(具体的なコメントを添えてください)
なんでもペラペラにする能力だ
・・・それが全てじゃないが、お前さんだって全容を教えたわけじゃないだろ?
男「なんでもペラペラにする能力だ」
医者「……具体的には?」
男「確かにそれが全てじゃないが、お前さんだって全容を教えたわけじゃないだろ?」
医者「まあ、それもそうですね」
男「……俺たちのコンビなら、奇襲されなきゃ簡単に泥くらい倒せるさ」
医者「では、奇襲に十分警戒して探索を進めましょう」
男「そうだな」
#
リリー「学校なんて大学ぶりね」
シスター「リリーさん、見たところ未成年に見えますが……」
リリー「大学は10歳で卒業した。7年前のニュースは見た?」
『MIT(マサチューセッツ工科大学)にてブロンドの天使が卒業』
シスター「あっ……貴方が例の?」
リリー「そうよ。本業は貴族。私がどんな力をもつか、知っている?」
シスター「……ええ。存じ上げております。……暇つぶしでマーシャルアーツを習っては賞を総なめしたとか」
リリーは、世界中どの分野にも足跡を残している。
スポーツで彼女にかなう者は存在しないが、ある事情によりオリンピックには出場していない。
機械工学や遺伝子工学、数学など……理系分野を専門とするが――。
――文系分野では17歳までに3本の革命的な哲学の論文を発表し、その片手間に小説を出してベストセラーになった。
狙撃銃で暗殺されかかったこともあるが、3発のライフル弾の弾道を予測して回避した記録すらある。
今年。
つまり19歳には、免許証こそないが、ヘリや戦車・戦闘機を含むあらゆる乗り物を運転することが出来る。
シスター「……貴方は神童というより、天の使いに近い存在でしょう」
リリー「おだてたって何も出ないわよ」
シスター「妬ましいですね……」
リリー「とにかく私の、能力者としてのキャリアを信じなさい」
シスター「どういうことですか?」
リリー「あの泥は……テンペストではない」
拳銃を持ち、脅す。
女「……それ以上近づかないで」
チャラ男「おっ! 会議室に居た可愛い子じゃん♪ そんな物騒なもん下ろしなよ」
女「15cm――接近したな……」
発砲。発砲。発砲。
うち2発が被弾したチャラ男。倒れず。傷1つ負わず。
チャラ男「ハッ……ハハハハハッ! 俺にそんなもん通用しねえんだよッ!」
チャラ男『ファイトマスター』
【能力】
①:自身が受ける打撃以外の攻撃を無効化する。
・攻撃を「射撃/斬撃/刺突/打撃/火炎/電撃/その他」に分類する。
チャラ男「いいぜ……お前が遊ぶ気なら……」
チャラ男「全力で遊んでやるッ!!」
女「トミカ」
チャラ男「……?」
女「トミカ。スバル・インプレッサの模型……ほら、遊びたくない?」
――10分後。
チャラ男「……ハッ……俺、一体何を……」
手元に転がるオモチャの模型……童心に返って、好きなだけ遊んでいたようだ。
あの女が俺に何かやったんだ……。
顔を真っ赤にする。
あの女……次会ったら「死んだ方がマシな屈辱」を与えてやる……。
#
ギャルの死体を引きずって、給食室裏の草むらに放り込む。
女「道具を2つもつけてくれるなんて、神様は慈悲深い」
女「まあ、1つは殺してでも奪い取ったヤツだけど……」
女のアイテム:トミカ(スバル・インプレッサ)消費済み。
ギャルのアイテム:グロック18C 残弾数10
女「わぁ! ギャルちゃん重ーい♪」
ギャル「……」
女「ちったぁ痩せろよブタぁ!!」
女「……いや、死んでるしブタ肉かな……?」
いかにしてこのギャルがブタ肉になったか――。
――この学校に転送されてきたタイミングから、回想しよう。
#
学校に転送されて早々、神様がこちらにいくつかの説明をしていった。
神様「君が今回の『ミッションボス』だ」
女「ミッションボス?」
神様「……君はセッションボスとして、いくつかの特権を得る」
セッションボスの特権
①他のプレイヤーを殺害するごとに、1人につきボスに50点。
②妖怪(ミッションの敵)を操ることができる。
・妖怪がプレイヤーを殺すごとに、1人につきボスに25点。
③3回だけ能力を強化できる。
神様「①と②の特権を生かして、頑張って100点溜めてね」
女「幾つか質問がある。……③で、どう能力が強化されるの?」
神様「うーん……君の能力は『ハルトマン(>>95)』だったね……」
『ハルトマン』のボス化
・ミッション中に3回まで、能力者の無意識を操ることができる。
神様「この学校には、能力者しかいないからね……」
女「質問はもう1つある。②の方法は?」
神様「本能に従えばいい……ちなみに、テンペストは中堅クラスの『形状変化能力』を持つゾ♪」
女「質問は以上よ。消えて頂戴」
神様「つれないねぇ……」
2階通路
リリー「はじめまして……貴方、会議室で見かけた子ね?」
女「そうですけど……」
リリー「わたくしの名前はリリアーヌ・リリエンタール。アイドルの世界ではリリーと呼ばれています」
リリー「以後、お見知りおきを」
そういってアイドルと学者と芸術家と小説家と格闘家とパイロットを兼業する、財閥の令嬢のリリーが微笑んだ。
その微笑みには人の警戒心を解く力があるように思われる。
……だが、私は彼女のような存在が嫌いだ。
彼女のような天才は、私に言いようのない劣等感をもたらした。
つとめて平静に、けれど皮肉っぽく挨拶する。
女「私の名前は『女』よ。『おい、そこの女』といった風に呼んで」
リリー「あら……何か気分を損ねたかしら」
女「貴方と比べたら、私なんて……」
リリー「自分を卑下するのは良くありませんよ」
女「……用がないなら、さようなら」
リリー「待って下さい。一緒に協力し合いませんか?」
女「一人でやれば? アンタほどの天才なら、ラクにクリアできるでしょ……」
リリーが「クリア」という表現にぴくりと反応した。
女は、それに気が付かず、そのまま去って行った。
#
ギャル「おいッ! お前ッ! ちょっ……マジ……助けろって!!」
2階の階段踊り場で、硬直した泥3体に囲まれたギャル。
泥3体はまるで時間が止まったように硬直している。
「囲まれた」といっても、実際の距離はギャルの豊満な腹部に拳が叩き付けられる寸前といった感じだ。
女「……それが貴方のカレシ? 夜は4Pなんて、盛んなサルみたいね」
ギャル「ふざけんなッ!! いいから黙って助けろって!!」
女「頼み方ってモンがあるでしょうが!!」
ギャル「あぁ!? ブス!! ブスブスブス!! 私のカレシに色目使ったでしょ!」
ギャル「助けたらそれ許してあげるって言ってんだよ!!!」
女「……貴方の能力は?」
ギャル「やっと助ける気になったのね!?」
ギャル「私の能力は『キープアウト』!! 触ったモノを固定できる! 今みたいに!」
ギャル「さあ、助けなさい!!」
女「……>>140」
>>140
①ええ。助けてあげる。
②ダメよ。死になさい。
③助けてあげるけど、条件があるわ。(具体的にコメントお願いします)
ギャル『キープアウト』
【能力】
①:触れた物を固定する。固定されたものは、全てのエネルギーが保留される。
・当然、能力の基本事項として、好きなタイミングで解除できる。
3
その尊大な口が直ったら
女「その尊大な口が直ったら、助けてあげる」
ギャル「本当?」
女「……疑うの? 貴方、セックスしたことある? これまで生きてて嬉しかったことは? ……幸も不幸も、死んだら二度と味わえないのよ」
女「『疑う』っていうのは、相手の『誇り』への侮辱なんじゃないかな?」
女「私が貴方の命を握っている。そして……もう一度質問するわね……」
「私を疑うの?」
ギャル「……ごめんなさい……助けて……」
女「ついでに、私のドレイになりなさい。命令には絶対服従」
ギャル「奴隷だろうが何だろうがなってやるわよ!! 助けてッ!」
女「ドレイにさせてくださいでしょ三元豚デブ!!」
ギャル「奴隷にさせてください!!」
流れが読めないな
女「……固定能力を解除しなさい」
「本当に?」「見捨てるわよ」「ごめんなさい助けて」
……飽きた問答の果てに、「触ったモノを固定する能力」が解除される。
泥たち「ヒホッ!?」
泥が奇声を発すると、ギャルからすごすごと離れていった。
女はミッションボスとして『テンペスト』を操ることができる。
ギャル「……何やったの?」
女「特権を行使したの」
ギャル「……はぁ?」
女「ほら、ブタ。忙しいわよ……ついて来なさい」
ギャル「もう助かった! これ以上従うわけないでしょバーカ!!」
ギャルが逃げようとしたので――。
泥をひっそりとギャルの背後から近寄らせて、小指を掴ませる。
小指の第一関節を粉砕する音が聞こえる。
泥はギャルの能力で固定されたが、遅い。
意識的に発動する能力の弱点は、奇襲に弱いことだ。
ギャル「ギャーッ!! えっ、指、指がああああ!!」
女「あら、可哀想」
ギャル「てめっ……てめええの仕業かぁああああああ!!」
女「……治してあげる。付いてきて」
ブタは小指を折った。
その痛みは能力を使うまでもなく、この異常事態で麻痺するだろう。
女「この教室……この教室中の机と椅子を、天井に貼り付けて」
ギャル「はぁ……何のために?」
女「罠よ……あんたも、とんでもない天才がドヤ顔してたら腹立つでしょ?」
女「天才だって死んじゃうんだって言うところを見せたいんだ」
ギャル「で、天井に机貼り付けて罠に? アンタが骨折させたから、時間かかるわよ」
女「5分でやりなさい。手伝ってあげるから」
「命令に違反した瞬間に、貴方を殺すわ」
「5分以内に完成しなくても殺す」
4分57秒。完成。
天井に32ほどの机が張り付いている光景は、圧巻だ。
リリー様とやらがこの教室に入ったが最後、机と泥に押しつぶされて死ぬことになる。
見てろよ自称天才。
ぶっ殺してやる。
自称『女と呼んでくださいよ』さんと別れてから10分。
シスターと出会ってから5分。
さっそく令嬢と尼僧は打ち明けていた。
シスター「あのドロがテンペストではない?」
リリー「ええ。泥は泥です……本体がいて、それが泥の形状を変化させているにすぎません」
シスター「本体……」
リリー「『テンペスト』……嵐のように決まった姿が無い。怨念生命体……」
リリー「私が前回戦った時は、他のプレイヤーの体を乗っ取っていました」
リリー「そして、そのプレイヤーを殺すことによりテンペストが消滅し、得点が発生する」
シスター「そんな……人間を殺さなくては『願い事』に辿り着けないなんて……」
リリー「貴方、何を願っているの?」
シスター「お金です」
リリー「……」
シスター「俗物と罵ってくれて構いません。ですが……教会を立て直す必要があるのです」
リリー「……貴方に協力しますわ。お互い、頑張りましょう」
シスター「ええ……」
シスター「そういえば、泥がテンペストでないならば、いくら泥を狩っても……」
リリー「ゼロ点よ」
シスター「では……本体を叩くしか、でも本体は……」
リリー「ミッションボスを叩いたら100点。1発でアガりですわ」
シスター「ミッションボス?」
ガタッ!
何者かによって、背後のゴミ箱が倒される。
リリーは白いドレスに隠した白塗りのスローイングナイフを華麗に投擲する。
背後の人影に命中した。
女「うっ……ぐっ……」
肩に命中、浅い。
リリー「ブタさん! ぶひぶひ言いながら、その場に立ち止まりなさい!」
女、ぶひぶひ言わず。
階段の音。
そのまま2階に逃げ込んだらしい。
シスター「追いますかッ!?」
リリー「いいえ。今のでハッキリしました。あの女がミッションボスです」
シスター「……ミッションボスって何ですか?」
マジでヒト喰イに近い
>>1はガンツのイメージなんだろうけど……
リリー「そうね……」
今は、事実だけを説明しましょう。
ミッションボスとは、「妖怪ではなく人間を殺すことで得点を得る存在」です。
神様によって、ミッションごとに選出されます。
また、ミッションボスは能力が強化された上に、妖怪を操ることもできます。
彼女は今頃、テンペストをこちらに仕向けるか悩んでいることでしょう。
このゲームで何人がルールを把握しているかは不明ですが――。
……このタイミングで泥が大挙すれば、疑いの目は『女さん』に向けられるからです。
目立つことを嫌う賢明なボスであればこそ、妖怪を操るかで悩むことになりますわね。
シスター「……なぜリリーさんは、彼女がミッションボスだと?」
リリー「私の『命令』が通じませんでした。ミッションボスに私の能力は通じませんから……」
シスターが、イスラームのように床に平伏して、目を見開く。
目から何か光線のようなものが発せられている。
シスター「ソナーの応用……彼女の現在位置は、2階の教室です」
「泥ッ! 泥ッ!」
「ヒホホホホ!!」「アダム!! アダム!!」
リリー「来たわね!! 予想通り、退路を塞がれた! 誘導に乗るしかない!」
シスター「教室まで案内します!」
リリー『サーチ&コンクエスト』(>>100)
【ミッション時の修正】
・ミッションボスは「奴隷」にできない。
#
男「そっちのロッカーは?」
医者「何もありませんね……」
男「やっぱり、もっと大雑把に探索しないと非効率だろ」
医者「……几帳面なもんで」
男「まあ、お前さんの方針は間違ってないと思うよ。適度に襲ってくる泥を狩るだけで点数が上がる」
医者「やはり、引っ掛かりますね……何か裏があるような……」
男「またそれか?」
「泥ッ! 泥ッ!」
「ヒホホホホ!!」「アダム!! アダム!!」
男「またかそれか……」
医者「いえ。何か様子がおかしい」
男「ん……?」
泥たちは男たちに目もくれず、廊下を一直線で抜けていく。
泥が向っているであろう場所は、3階、正面から見て右側(リリーたちが>>149で襲われた階と場所)だ。
男たちの現在地からすれば、丁度反対側にあたる。
男「……事件が校舎の『裏』で起こったようだな。やったじゃん裏あるぞ」
医者「軽口叩いてないで、急行しますよ! 誰が襲われたか分からない以上、生存者を増やすために行動すべきです」
男「それもそうだな」
#
2階教室
戸と窓から泥が迫ってくる。
窓も戸も、全て開け放たれていた。
リリー「……教室に机がない」
シスター「上です! 上に机が! そうだ、伏せて下さい!!」
ふわっ。
机が降ってくる一瞬、リリーの脳が凄まじい速度で回転する。
……時間の流れが遅くなる。
周囲だけ遅くなり、自分は普段の速度で思考し、移動できる。
リリーはシスターを見る。彼女は目から発せられるビーム……マイクロ波で泥を乾燥させる気だ。
机の配置はまばら……リリーは相手の無策に呆れると、超人的な脚力でもって、机の落下よりも早く跳んだ。
反転し、天井に張り付く。机の1つを掴むと、薙ぎ払ってやる。
天井に張り付いて机を振り払うまでの流れを、0.1秒でこなす。
これでシスターの半径3mに机は落ちない。
私もその範囲に、机と同じスピードで自由落下する。
――もちろん、受け身もパーフェクトだ。
シスター「マイクロ波で……」
机とシスターの目線が重なる。
このままでは、机の金属部を通じてマイクロ波が激しく反射し、こちらも被害を被る。
ゆえに……。
リリー「『奴隷』に命じる。攻撃は1秒待て!」
シスター「? 食らえッ! マイクロ波ビーム!!」
周囲の敵意が、グツグツと沸騰して揮発する。
泥は全て乾燥し、閑散とした砂場が出来上がった。
ギャル「ひッ! ひぃぃぃああああ!!」
教卓の影に隠れていたらしい太めの女性が教室の外に飛び出していく。
リリーは卓越した運動能力でギャルの退路を塞ぎ、首を掴んで問い詰める。
リリー「貴方がハメてくれたの?」
ギャル「ちっ違うんです! 私は利用されてただけ!」
リリー「……貴方を利用していたヤツは、どこかしら?」
ギャル「あ、あっ、アイツはッ、アッ、アッ、アッ……」
「アダァァァム!! ヒホホホホッ!」
叫びとともに変性したそれは、リリーを羽交い絞めにして骨を折ろうとしてくる。
シスター「『泥』ッ!!」
リリー「マイクロ波を!」
「ヒホホホホッ! ヒホホホホ……!! ヒホホ、ボヒン!!」
泥は奇怪な悲鳴と共に砂になった。
口の中も、ドレスの中も、ブーツの中も砂だらけだ。
――この不快感はミッションに悪影響ね……。
#
男「泥があの教室に集まってる?」
教室の向かい側にあるトイレから2つの人影が飛び出してきた。
2人の女性は、こちらに近づいてきて、そして通り過ぎようとしていた。
女「さあ、来なさい」
ギャル「分かったから引っ張らないでよ!」
男「……あっ……」
すれ違う。
2人は、泥から逃げるために急いでいるのだろうか。
会議室でも見た女性2人。うち1人のことを思い出した。
地味で細いほうの女は、昨日の午前、学校に遅刻しそうなときに見た覚えがある。(>>20)
医者「生存者がいたようで一安心ですね。急ぎますよ!」
男「あ、あぁ……」
男が教室に突入すると、全てが終わっていたらしい。
砂まみれのリリーが床に座り、上目遣いで微笑んだ。
リリー「遅刻よ、ブタさん」
男「ぶ、ぶひぶひーっ。すみませんリリー様」
リリー「特別に許してあげる。こちらのシスターさんは……」
シスター「シスターとお呼び下さい。リリー様のお友達ですか?」
リリー「奴隷よ」
シスター「あ、アハハ……ファンクラブの会員って意味ですかね」
医者「そんなことより、あの量の泥を2人で?」
リリー「ええ。でも、シスターさんが全部片付けてくれたから、彼女だけの手柄よ」
シスター「そんな……リリーさんの状況判断と援護のおかげです」
リリー「……で、『奴隷』さん。誰か、この場から離れていったりした?」
男「女性が2名。うち1人は痩せ型で、もう1人は太っていました」
リリー「……アタリね」
先程リリーを羽交い絞めにした泥は、最初から泥で、ギャルに擬態していた。
本物のギャルは、その首謀者と一緒に……。
リリー「……テンペストは本来知能が低いの。操って特定個人に擬態させるなんて……」
医者「それってすごいことなんですか?」
リリー「凄いなんてもんじゃないわ。ミッションボスに許された裁量を越えている」
医者「ミッションボス?」
リリー「詳しい話はあとよ。それで、2人は何処へ逃げていった?」
男「反対側だよ。詳しい目的地までは知らない」
……そうね……。2手に分かれて、
リリーとシスターは>>158
男と医者は>>159
を探しましょう。
※場所は
・校舎裏
・体育館
・職員室
・図書館
・倉庫
・プール
・その他(具体的に)
のいずれかから選出。被っていた場合、片方の選択肢を下にずらす。
プールの下は、校舎裏という扱い。
図書館
倉庫
#
中々広い学校だ。
図書室ではなく、5階建て図書館が併設されている。
半ば公民館のようになっていて、児童館や市民事務所も入っている。
図書館として使用できるのは3・4・5階のみだ。
パチン。パチンパチンパチン。
シスター「電気、付きましたよ。ブレーカーが落ちてただけみたいですね」
リリー「……気配で分かるわ。女はこの場所にいない」
シスター「よく分かりましたね」
リリー「一度嗅いだ乙女の匂いは忘れられないの」
シスター「えぇっ……」
リリー「……冗談よ。身構えないで」
――シスターさん、私とは性志向が合わないみたいね。残念。
シスター「出て、別の所を探しますか?」
リリー「いえ……私の予想が正しければ……」
児童館の部分つまり2階に、テンペストの弱点が存在する。
児童館。
シスター「うっ……」
子どもたちが元気よく遊んだであろう広いホールは、今は見る影もない。
床一面に赤黒い血痕と臓器が広がっていて、ひどいにおいだった。
子どもたちの頭蓋骨が規則正しく並べられている。
骨や臓物についても同じだ。
魔法陣のような血痕に沿って、それらの元子どもが邪教の供物に捧げられていた。
リリー「見なさい。この魔法陣は嵐の意味をもつ古典魔術文字よ。嵐とはつまり『テンペスト』……」
シスター「ここでテンペストが生まれたんですか?」
リリー「そうね。あの泥たち、やけに幼い雰囲気だったでしょ……?」
シスター「うぇっぷ……おぇぇぇぇっ……」
シスターの脳裏で――。
幼い泥と、沈黙を守る子どもたちが交互にフラッシュバックする。
――なんたる皮肉。
――私が敵だと思って攻撃していた存在は、庇護すべき弱者だった。
シスター「……私は、この子供たちの思念を攻撃していた……」
リリー「悪意ある儀式によって、歪められた思念体よ」
リリーは、魔方陣の中心に置かれていた頭蓋に歩み寄る。
頭蓋骨には「ADAM」と彫られていた。
これは古典魔術の特徴で、旧約聖書など、より大きい「幻想」の力を借りて、自身の魔力を増幅させるものだ。
自身の。
つまり、テンペストの魔力を――。
リリーはヒールで、魔方陣の中心にある頭蓋骨を潰す。
シスター「何てことをッ!!」
リリー「これで敵の『芯』が揺らぐッ! これで『テンペスト』の能力射程は10mになった!!」
シスター「……」
リリー「……ルールは1つ。殺さなきゃ救えない」
#
女「貴方、アイテムは何だった……?」
ギャル「あっ……なんでだろう。忘れてた……ポーチに入れてた拳銃――」
女「渡しなさい」
ギャル「いっ……嫌よ。何で渡さなきゃいけないの!?」
女「貴方が奴隷だからよ!!」
女「奴隷はただ理不尽に搾取されるだけ! 貴族は搾取する権利が――いや、義務がある!」
ギャル「貴族気取り……? 同じ参加者のリリー様は、ファンを奴隷みたいに言うけど……」
ギャル「リリー様は本当の貴族だ! 貴方と違って、奴隷を気遣っていた!!」
女「……もういいや」
ギャル「……?」
女「ねえ……貴方…………」
「自殺したくなったでしょ?」
――銃声しか聞こえない。今夜は静かで月が綺麗だ。
『女』はリリーとは違う。奴隷も殺す。
太い死体を引き摺り、校舎に入って更に死体を運ぶ、
途中、暗くてよく見えないが前方から足音が聞こえたので、慌てて死体を転がして給食室に入れる。
チャラ男「……」
こちらに気付いていない。
だが、給食室に通じるもう1つのドアに手を掛けたので、注意を逸らす目的で――。
拳銃を持ち、脅す。
女「……それ以上近づかないで」
チャラ男「おっ! 会議室に居た可愛い子じゃん♪ そんな物騒なもん下ろしなよ」
>>131
>>132
>>133
>>133
……回想を終え、給食室裏の草むらのギャルを引きずり出し、また運ぶ。
――倉庫だ。倉庫に『テンペスト』が隠れているのは知っている。
テンペストに体を捧げれば、妖怪を操る力は最大限となる。
その時は学校そのもの「泥」として、プレイヤーを一網打尽にできる!
倉庫に入る。
テンペストの霊体が乗り移り、虚ろな目をした裸体があった。
テンペストはマナの振動を肌で感じ取るので、服が邪魔だったのだ。
幼馴染「……」
女「貴方が『テンペスト』の依り代だったの……でも、私の方が相応しいのよ……」
この依り代を……。
>>166
①食べることでテンペストを取り出す。
②儀式にかけ、テンペストを取り出す。
③いや、私自身を銃で撃ち抜く。
3
女は、口にグロックを突っ込んで引き金を引いた。
――やはり銃声しか聞こえない。静かで、月が綺麗だ……。
幼馴染「う……ん……」
――砂を蹴りあげる音がうるさい。誰かが走り寄ってきている?
男「おいッ! 大丈夫か!?」
幼馴染「ふふふっ……なに? そのテディベア」
男「意識はあるみたいだな……隣の女性……自殺したのか……?」
幼馴染「えっ……きゃっ……きゃあああああ!!」
――うるさい。
医者「走るのが早いですよ……あれ……さっきの女性、なぜ倒れて……自殺……ッ!?」
男「原因は分からん。けど――」
幼馴染「えっ! 私ハダカ!? 何でっ!?」
男「ちょっ……落ち着け、引っ掻くな」
――うるさい。うるさいぞ……!
――ならば……。
――より激しい「嵐」で、かき消すまでだ……!
女「……」
男「おい、この女、立ち上がったぞ……」
医者「……あり得ない。銃弾が頭を貫通してるんだぞ……」
女「クククッ……」
「我が名はテンペスト!!」
「生を謳歌する全ての存在に、死の嵐を思い出させる者なり!!」
「若く断たれた命、声なき叫びを聞き届けるがいい!!」
#
リリー「……この魔法陣を破壊する方法は、今一つ確実性を欠いている」
シスター「不確実ということですか?」
リリー「そう。例えば、破壊する瞬間の0.5秒以内に、テンペスト本体の付近で死者が出たりしたら……」
「この魔法陣との契約が切れ、テンペストは本能のまま暴虐を尽くす!」
凪いでいた風が、途端、嵐となる。
ガラスがガタガタと鳴り、外に見える木々が折れんばかりにしなっていた。
嵐の中心は、男たちの向った倉庫だった。
シスター「この嵐は!?」
リリー「魔法陣を破壊する瞬間、偶然誰かが死んだ……」
「最悪の妖怪を呼び覚ましてしまったようね」
第3話 前編 完
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