姉「ただいまー！」
男「おう、おかえり」
妹「ねえ、おかえりなさい！」
姉「ふふ、妹は今日もいい子ね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
男「姉貴、先にうがい手洗いな」
姉「あ、うん」
男「まあ偉そうに言ってるけど、おれにもよくわからないんだ。ははは！」
妹「ううん……なんとなくわかったよ」
姉「なになに、何の話？」
妹「んとね、にいに"あい"ってなあに？ってきいてたの」
姉「そっか。あんたはなんて答えたの？」
男「あーおれは、好きな気持ちが大きく深くなったのが愛かなって」

姉「なるほどね」
妹「ねえ……好きっ！」ﾀﾞｷｯ
姉「あたしも妹大好きよ！」ﾀﾞｷｯ
妹「えへへ」
男「良かったな！」
妹「うんっ！」
姉「んー……そうねぇ。愛にも色々あるけど……とりあえず、あたしや男が妹を好きな気持ちは家族愛よね」
妹「家族だから？」
姉「そうよ。もしそれが友達でその人の為に何かしてあげたいと思うなら、それは"友情"になるかな」

男「友情も愛のうちか？」
姉「そう思うってだけ。あたしだってわかんないわよ。あんたもでしょ？」
男「まあな」
妹「あいってむずかしいの？」
姉「んー……難しいって言うかね。沢山あって"こうだよ"って説明できないの」
男「あーつまり姉貴はこう言いたいわけだ……"人の数だけ愛がある"って」
姉「そうね。そんな感じ」
妹「あいって、たくさんあるんだ」
男「妹ももう少し大きくなったら、わかるようになるんじゃないかな」
姉「うん。あたし達よりずっとずっと好きな人ができた時に、ね」
妹「……うん」

男友「妹10歳だっけ？」
男「ああ」
男友「……そりゃ可愛いわな」
男「なんだよ今更」
男友「だってお前、ここ半年の自分の行動考えてみ？お前の口から妹の話出なかった日なんてないんだぜ？」
男「そうかぁ？」
男友「シスコンの極みがいよいよ近付いたかと思うと、あんちゃん情けなくて涙が出てくらぁ！」
男「あんちゃんってなんだよ。おれは別にシスコンじゃないと思うけどな」
男友「自覚ないからタチ悪いんじゃねぇか！」

男「んー……そう言われてもな」
男友「大体俺達ぐらいの歳の男はな！彼女が欲しくてクダ巻いてるような奴ばっかなんだよ！」
男「そんなもん焦らなくったって、いつかできるだろ？」
男友「おま……本っ当マイペースつーか、危機感がないっつーか……おっ！おーい女、ちょっと」
女「朝っぱらから何よ男友。あ、男くんおはよう」
男「おはよう、女さん」

男友「ほら、こいつを見てみろ男。このナイスバディーっぷり！胸はｄカップだし腰回りはスッキリ、ケツだって安産が……」ﾄﾞｹﾞｼ
女「人を呼びつけておいて、いきなり身体の批評とはいい度胸ね！」
男友「ま、待て女！これには深い訳があるんだ！」
女「くっだらない理由だったら窓から突き落とすわよ！」
男友「よく聞け？男を極シスコンから解放するっつー聖なる試みなんだ！」
女「……で？」
男友「その為にはお前みたいに顔は十人並みでも、セックスアピール度の高い女と触れ合わせて、少しでも一般人の嗜好に立ち返らせる必要があるんだよ！」

女「なるほど？わかったわ……でもとりあえず一発入れとく」ﾊﾞﾁﾝ
男友「おま……思いっきりやりやがって！まあいい。とにかく男！女の理解が得られたっ！どうだっ！何か感じないか！？」
男「……いや特には。それよりごめん、女さん。変なことに付き合わせて」
女「いいよ、別に。いつものことだしね」
男友「何でだよ！何かこう、クるものがあるだろ！？この揉み堪えのありそうな胸をわしわししたくならないか？なるだろ！普通の男ならっ！」
男「んー……確かに女さんはスタイル良いと思うけど……それだけだよ」
男友「そんなバカなことがあるか！触れ、今すぐこの場でっ！！」
女「……黙って聞いてれば……バカはアンタでしょっ！公衆の面前でなんてこと言うのよ！男くん行こ！もう授業始まるよ！」
男「そうだね。じゃまた後でな、男友」
男友「ちっくしょー男！俺は絶対お前をシスコンから解放してやるからなっ！」

男「……って事なんだけど、おれそんなにシスコンかな？」
姉「さあ、あたしは別にそこまで酷いとは思ってないけど、ただねぇ」
男「ただ？」
姉「いくら友達でも話のネタが毎回姉妹のことじゃ、ウンザリするかもね」
男「そっかぁ」
姉「うん。それにね、家族の話ばかりじゃコミュスキルのない残念な子だと思われるわよ」
男「んー……」

姉「他愛ない話を気軽にできることも社会生活の上では大事なことなんだからさ」
男「なるほど。でもおれ趣味らしいものないし、家族や家の事以外じゃ何もないんだよな……」
姉「なら何か新しく始めたら？」
男「始める？」
姉「うん。スポーツでも文化的なのでもいいし、将来に向けて資格の勉強するのも悪くないね。とにかく話のきっかけになるようなものをやってみたら良いんじゃない？」
男「きっかけかぁ」
姉「何でも良いのよ。あんたが自分で探すことが大事なんだから」
男「……わかった。ありがとな、姉貴」

妹「……にい」
男「ん？何だまだ起きてたのか」
妹「ねえと何のお話してたの？」
男「んー……お話っていうか、お説教かな」
妹「にい、何か悪いことしたの？」
男「悪いことしそうになってたけど、姉貴のお陰でしなくて済みそうなんだ」
妹「……そなの？」
男「うん。だかろ妹は何にも心配しなくていいよ」
妹「よかった……ねえ、えらいね」
男「ん。姉貴は偉いよ。妹、寝る前にねえのところ行って誉めてあげてくれるかな？」
妹「うんっ！」
男「よしよし……妹も偉いぞ！」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
妹「わあーい！わたしねえのところ行ってくるー！」
男「階段に気を付けろよ！」
妹「はーい！」

男「女さん、こっちこっち！」
女「ごめん男くん、待った？」
男「待ってないよ。それよりわざわざ来てくれてありがとう。友達と昼飯だったんだろ？」
女「いいのよ。いつもいつも同じメンツで集まってるんだから」
男「そっか。女さん昼飯は？」
女「あ、私お弁当あるから。それで話って？」
男「昨日考えたりしたことを、今朝男友に話したら変にやる気出されちゃってね」
女「あー！アイツ本っ当バカだからね」
男「それでまた昨日みたいに女さんに迷惑かけちゃ申し訳ないと思って、今度は事前に伝えておこうと思ったんだ」

女「なるほどね！ありがと。でもごめんね、男くん。気遣わせちゃって」
男「いや、おれの方こそ……」
女「アイツ昔っからああなんだよね。思い込んだら一辺倒って言うかさ……人様の迷惑も省みず突っ込んでっちゃうの」
男「あーもしかして女さんと男友って幼馴染み？」
女「都合13年くらいだけど……腐れ縁だよ、あんな奴」
男「そんな長い付き合いなんだ」
女「まあね。だからアイツ
の浅はかな考えなんてすぐにわかるよ。そんな訳で、男くんは私の心配より、自分に気を回してくれて大丈夫だからね」

男「ありがとう。話が早くて助かるよ」
女「ううん、気にしないで。困ったことにならないように、できるだけこっちで上手く塞き止めるから」
男「女さんが頑張ってくれる分、おれも攻め込まれないように早いとこ何か探さなきゃな」
女「それは男くんにしかできないことだし、頑張って欲しいな。……あ、そだ！男くん、良かったらアド交換しない？」
男「もちろん！あれ、赤外線どこだろ……？」
女「男くんドコモ？」
男「うん」
女「じゃあこっち押して……はい、ok」
男「ありがとう！じゃ改めてよろしく！」
女「こちらこそ。何かあったら連絡するから、男くんも気軽にメールしてね」
男「了解だよ」

妹『ねえのお胸おっきーね！わたしぜんぜんないのに……』
姉『妹だってあたしくらいの歳になったら、おっきくなるわよ』
妹『きゃー！ほんと？ほんと？』
姉『ほんとよ！だって同じ母さんから生まれたんだから』
妹『じゃー！にいもおっきくなるー？』
姉『にいはねぇ、別のところがお……』
男「姉貴！新しいバスタオル洗濯機の所に置いとくからなー！」

姉『はーい！ありがと、男！』
妹『別のところってどこー？』
男「妹によけーなこと教えんなよっ！」
姉『教えちゃダメだって』
妹『えーっ！』
男「ったく……おっとメールだ、誰だ？」
女（件名：女です　本文：ちゃんと送れてるかな？）
男「あぁ女さんか……（件名：こんばんは　本文：大丈夫だよ。昼間はありがとう！）送信っと」
男「今のうちに水分用意しとくかな……って早っ！」
女（件名：合コン　本文：アイツ中学のクラメに声掛けまくってるみたい。その気ないなら話来た時に断ってね）

男「合コンって……（件名：了解　本文：適当に理由つけて断っておくよ）……送信」
姉「こぉら！動いたら拭けないでしょー？」
妹「だってくすぐったいんだもん！」
男「ん、出てきたか。二人とも何飲むー？」
妹「コーヒー牛乳がいいな！」
姉「あたしはポカリね！」
男「はいよー！ってまたメールか。しかし早いな」
女（件名：問答無用で　本文：誘ってくる可能性あるから、出来るだけ突っ込まれても平気な理由考えてね！）
男「あー、確かに……（件名：わかったよ　本文：そろそろ風呂入るので、次のメールは遅くなりそう）……とりあえず断ったし大丈夫だろ」

姉「何かさっきからあんたの携帯ガンガン鳴ってるけど、珍しいわね」
男「ん、聞こえてたのか？クラメとちょっとね」
姉「なぁに、恋愛絡み？」
男「いや、昨日の話の延長戦みたいなもんだ」
姉「ああ、なるほど」
妹「にいもねえもいいな……わたしもケータイ持ちたいなぁ」
男「妹は中学入ってからだなー！……もうきた」
女（件名：了解！　本文：私もお風呂入るから返事はいらないよ）
姉「ケータイ持ったら何したい？」
妹「んとね……にいとねえと母ちゃまと父ちゃまにメールするー！」
男「おっ！妹からメール来たら真っ先に返事してやるからな！」
姉「あたしも！男には負けないわよ！」
妹「わあーい！」

───教室

男友「うっす、男！」
男「おう、おはよう！朝からニヤニヤしてどうした？」
男友「何とぼけてんだよ！そりゃニヤニヤするってもんよ」

男「意味わからん」
男友「お前もついに普通の恋愛に目覚めたかと思うと嬉しくてなぁ」
男「ますますわからんのだが」
男友「なんだよ！皆まで言って欲しいのか？女と付き合い始めたんだろー？喜ばしいこった！」

男「はぁぁ？」

男友「だーからトボケんなって！俺はこの目でしかと見たんだぜ？お前と女が肩まで寄せて見つめ合ってるところを」
男「それ違うぞ！あの時はなぁ……！」
男友「隠さなくてもいいって！あん時女呼んで正解だったっつーこったろー？
」

男「だから違うって！」

男友「俺お前のために合コン企画してたんだけど、もう意味ねぇかなぁ……」
男「そんなもんどうだっていいよ！あ、そうだ女さんは……！」
男友「あいつなら今日は法事だかで休みだぞ？それくらい事前に聞いとけよな」
男「おい！男友はおれの話を聞けよ！」ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝｺｰﾝ

男友「おっと、余鈴だ！俺今日当たるとこの宿題やってねぇから近くの誰かにノート借りるわ！じゃな」
男「おいっ！男友っ！！」

男（くっ……後で取っ捕まえて誤解だって言わないと……！）

男（……こんな時に限って日直やら委員会やら、わんさか用事があるのはなんでだ）

男（しかも結局あれから話する暇もなく放課後とか……）

男（奴の部活終わるまで待つか？……いやダメだ。三時間近く待つとかムダ過ぎる）

男「仕方ない、メールで説明するか……」

男「……（件名：ばっきゃーろー！　本文：あれは誤解だって！お前が見たのはなっ！アド交換するのに赤外線の場所分からなかったから、女さんに教えてもらってたところだったんたよ！だいたいお前は──！）……待てよ？」

男（もしこれで誤解が解けても、今度は合コン話がくるのか？）

女（問答無用で誘ってくる可能性──）

男（……突っ込まれても平気な理由作れないうちは無理か）

男「だーっ！もう面倒くせぇ！おとなしく女さんに相談すっか……（件名：暇できたら　本文：連絡下さい。今朝奴と話したら……）よし、送信」

男（ん？ずいぶん早いな。……あー、姉貴か）

姉（件名：妹のスイミング　本文：今日のサークル、サボるどころか捕まっちゃった。悪いけどスクール連れてってあげて）

男「ま、しょうがないか……（件名：re:妹のスイミング　本文：りょーかい！遅くなりそうなら今夜の飯は先に食うので連絡入れてな）」

男（スクール何時からだっけな……ん、もうきた！姉貴も早ぇな）

姉（件名：re:妹のスイミング　本文：わかったー！スクール16時半からだから、まだ学校にいるなら急いでね）

男「16時半!?やば……急がないと！」

支援ありがとう
おやすみなさい

男「じゃあ妹、頑張ってくるんだぞ」

妹「うんっ！にい、待っててくれる？」

男「おう！ラウンジにいるから、終わったら声掛けてな」

妹「はーい！」

男「さて、と……」

友②「お、そこにいるの男か？」

男「ん？おー！友②久しぶり！」

友②「こんなとこで会うなんて奇遇だなー！男も習い事か？」

男「いや、おれは妹の付き添いだよ。友②こそ何か始めたのか？」

友②「知り合いの奨めでマシントレーニングを少しな」

男「なるほどね」

友②「そういや聞いたぞ？女さんと良い雰囲気なんだって？」

男「……何で端のクラスの友②が知ってんだ」

友②「男友から連絡来たからな。合コンは保留で！とかなんとか」

男「あー、やっぱ合コンは友②経由の話だったのか。つか、おれと女さんは付き合ってないからな？」

友②「だろうな。どうせまた男友の勘違いなんだろ？」

男「ああ、思い込みが激しくて困るよ……」

友②「まぁ男友だからな」

男「ん。そうだ友②、ついでだから相談したいんだけど、男友の暴走止めるにはどうすりゃ良いと思う？」

友②「単に暴走だけ止めても、根本的な解決案がないと何したって無意味だろ？」

男「確かに……」

友②「でも方法がないわけじゃない。多少荒療治かも知れないけどな」

男「策があるなら伝授して欲しい」

友②「……わかった。でももう時間だし、とりあえず後日連絡するよ」

男「頼むよ。おれもそろそろ妹が来るから行くわ」

友②「ん。じゃまたな！」

───自宅

全「ごちそうさまでした！」

男「はい。お粗末さまです」

姉友「おいしかったー！男くん、料理の腕上げた？」

男「さあ、どうなんですかね」

姉「あんま変わってないんじゃない？」

姉友「姉はいつも男くんの作ったご飯食べてるんだから、分かんないでしょうよ」

妹「にいのご飯、いつもおいしいよ！」

男「そっか、ありがとな！妹は本当イイ子だなー！」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「えへへ」

姉友「あ、ずるーい！男くん私にはー？」

姉「あたしにはー？」

男「ばっ……姉！姉友さんも勘弁して下さいよ」

全「あはは！」

男「とりあえずおれ後片付けするんで、姉友さんは寛いでて下さい。姉貴は手伝えよ！」

姉「えーっ！」

男「えーじゃない！」

姉友「あ、なら私に手伝わせて？ご馳走になった上に泊めてもらうんだから」

男「いや、いいですよ。姉友さんはお客さんなんだから」

姉友「うーん、じゃ姉と一緒ならいいでしょ？姉も良いよね？」

姉「しょーがない、やってやるわ」

男「しょうがないじゃないだろ、まったく……」

姉「ほらほら、ブツブツ言わない！……あ、そうだ男」

男「なんだよ？」

姉「妹と二人で先にお風呂入っちゃって。あんた達が終わったらあたし達も入るから」

男「あー、わかった」

姉友「え!?ちょっと姉……！」ﾋｿﾋｿ

男「妹ー！フロ入るから支度しといてなー！」

姉「ん？なに？」ﾋｿﾋｿ

妹「はあーい！」

姉友「妹ちゃんと男くんって……いいの？」ﾋｿﾋｿ

男（なーんか台所から不穏な気配を感じるんだが……ま、いっか。今のうち携帯見とこう）ﾄﾝﾄﾝﾄﾝ

姉「いいって、何が？」

姉友「だって妹ちゃん10歳でしょ？男くんだってもう17なんだし、大丈夫なの？」

姉「あたしもたまーに男と入ったりするわよ？別にいかがわしい雰囲気になるわけじゃなし、問題ないわよ」

姉友「そういうものなの……？」

姉「他はどうか知らないけど、うちはずっとこうだからね」

妹「ねえ！おフロ入ってくるね！」

姉「はーい！男ー！頼んだわよ！」

男「おーう！」

姉友「ここんちって、妹ちゃんも男くんも邪心がないというか、屈託がないというか……」

姉「あの子達は純粋だからねー」

姉友（あなたもだけどね……）

───風呂

男（……まだ返事きてないとか……法事なら親戚も揃ってるだろうし忙しいか）

妹「……」

男（友②からもまだ連絡はないしな……）

妹「……にい」ﾕｻ

男（週末だからしょうがないか……）

妹「にーいっ！」ﾕｻﾕｻ

男「うぁっ!?あ、ああ……ごめんごめん。どした？」

妹「……髪洗ってほしいの」

男「なんだ。まだひとりで洗えないのか？」

妹「だって……シャンプーが目に入るんだもん」

男「しょうがないやつだなぁ……ほら、そっち向いて座って」

妹「わーい！」

男「身体冷えてきたら言うんだぞ」ｻﾞｰ

妹「うん」

男「……」ｶｼｭｶｼｭ

妹「……」

男「かゆいところはー？」ｺﾞｼｺﾞｼ

妹「ないでーす！」

男「ん」ｺﾞｼｺﾞｼ

妹「……あのね、にい」

男「うん？」

妹「今日ね、クラスの男の子にね？」

男「うん」ﾁｬﾊﾟﾁｬﾊﾟ

妹「……お胸ぺったんこって言われたの」

男「あ゛あ゛!?なんだそりゃ!?」