男「雪女がいる毎日」雪女「にーちゃん、膝枕ー」 (99)

雪女「にーちゃん膝枕ー」

男「してくれるのか?」

雪女「してー?」

男「ハイ却下、それより自分の部屋の片付けにでも行きなさい」

雪女「寒くてコタツから出られないー」

男「雪女なのに?」

雪女「まぁ寒さは実際平気なんだけど、気分的にね」ヌクヌク

男「雪の妖怪が聞いて呆れる」

雪女「いつまでも習性に縛られているようじゃ妖怪も生き残れないのぜー」

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関連SS
男「座敷童がいる毎日」座敷童「……」
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男「吸血鬼がいる毎日」吸血鬼「血より缶ビールのが美味い!」
男「吸血鬼がいる毎日」吸血鬼「血より缶ビールのが美味い!」 - SSまとめ速報
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男(雪女、その名のとおり雪の妖怪。氷柱が本体だったり人を凍死させたりすることで有名な妖怪だ)

男(俺の目の前にいるこの生意気な小娘がそんな娘っ子らしい)

雪女「そもそも今時雪女ってこと自体が別にどうとか言う時代でも無いしさー」

男「話題がすっかり逸れたな、片付けに行きなさい居候」

雪女「私の部屋だしー!ちゃんとお金払って住んでるじゃんかよー!あんまりうるさいと部屋に吹雪よぶぞー!」

男「やめなさい」

男(俺の目の前でお腹を空かしてコタツの中で不貞腐れているのが雪女だ)

男「雪女って言ったらまさしく吹雪の中で人間を待ち構えているようなイメージがあるけどさ」

男「そんなコタツとかに入って暖まってると溶けたりしないの?」

雪女「昔の雪女はそうだって聞いたけど、私は平気だよ」

雪女「突然変異なのかー時代の流れなのかー、神のみぞ知るー」

男(本人もあまり理解はしていない無いみたいだ)

雪女「そうだ、今日のご飯はー?」

男「ハンバーグ、今みんな買い物に行ってる最中だけど」

雪女「わーい!ハンバーグ!」

男「生意気言ってても子供だねぇ」

雪女「こんな些細なことで喜べるのは今のうちだけだからね……」フッ

男「何を悟っているんだ」

男(こんな小さい娘が一人)

男(どうやっていままで一人で生きてきたのか)

男(俺は知らなかったりする)

雪女「それじゃ、おねーちゃん達が買い物から帰ってくる前に!」

男「やっとやる気になったか」

雪女「コタツの中でゲームでもするかー」

男「オラとっとと出ろ」ドカッ

男(時を遡って1週間前)

――――――
―――



男(11月)

男(いよいよもって本格的に寒くなる時期)

座敷童「……」ジー

吸血鬼「ぬーん」ジー

男(家に居ついている妖怪達は早くもコタツで丸くなっている)

男「コタツ、出すの早すぎたな」

吸血鬼「そんなこと無いですよ先輩!こんな寒さ耐えられないですから!」

座敷童「……!!」ビシッビシッ

男「叩くな叩くな。だってお前ら自分の部屋があるのにわざわざ俺の憩いの場の居間に来てこんなにのんびりしてるから」

吸血鬼「お金無くて暖房なんて買えないんですよぉ」ブルブル

座敷童「……!」プンプン

男「何?アパートにする前は私は主にこの部屋を拠点にしていた?我慢しろよ言い出しっぺ」

男(俺の住むこの家は元々は無くなったおじいちゃんのものだった)

男(大学が近い事もあって、今は俺が住むことになっているが)

吸血鬼「アパートじゃなくてご好意で住まわせてくれればよかったのになぁ」

座敷童「……」プンスカ

男「アパート化の案出したのお前達だろ」

男(平屋だが無駄に広く、部屋も多いので主に妖怪向けに金貰って部屋を提供している)

男(実際、既にもう何人か住んでいるし)

男「それに子供は風の子!お前くらいの歳の子は外で遊ぶもんだ!」

男「俺も昔は雪が降った日なんかでも寒くても雪だるま作って遊んだもんだ……」シミジミ

座敷童「……」プンプン

男「え?私はそっちより年上だって……?そういやそうだったな」

吸血鬼「先輩、私ももうそんな歳じゃないですよ」

男「俺は時代に取り残された人間だとでも言うのか……」

ガラガラ

小鬼「ただいまー」

男「あ、はーい。お帰りなさーい」

小鬼「いやー参ったネぇ。この寒さは尋常じゃないヨ」スタスタ

吸血鬼「お帰りなさい店長。お客さん来なかったでしょ」

小鬼「寒さの影響もあるから誰も来ないネぇ。早めに切り上げてきたヨ」

男「いえ、それ以前の問題だと思います」

男(俺のバイト先の人の来ないコンビニの店長の小鬼。ウチの住居人だ)

男(背は小さいが、そのふくよかな体系で寒いとはいかほどか)

小鬼「失礼なこと考えてるでしょキミ」

吸血鬼「それにしても寒すぎですよ……去年はこんなに早く寒波は来なかったですし」

男「ホント、嫌になるよなぁ」

小鬼「キミ達は引っ越してきたの最近だっけ?ここら辺は他の地域とは違うからネ」

男「そうなの?」

座敷童「……」コクリ

小鬼「冬を象徴する妖怪が早めに寒波を呼ぶんだヨ。迷惑極まりないけどしかたないネ」

吸血鬼「仕方ないんですかそれ」

座敷童「……」チョイチョイ

男「ん?昔からの決まりだって?」

小鬼「そそ、一括りに妖怪といっても色んな種族がこの地域にいるわけで……」

小鬼「住める環境とかの違いから、それぞれが節度を守って過ごしやすいように協力し合うようにしているんダ」

小鬼「私だったら安定した職の供給」

吸血鬼「人の来ないコンビニが安定……?」

座敷童「……」フンス

男「お前は居住場所か……いや、ここの家俺のじいちゃんの物なんだけど」

小鬼「それはそれ、これはこれ」

男「ひでぇ」

小鬼「で、この早めの寒波を引き起こしているのが雪女の種族。そういえば今は近場の山に一人だけ住んでるって聞いたネ」

小鬼「寒さを餌に男を家に招いて婿探しだとサ。半ば誘拐サ」

男「誘拐なんてとんでもないですね……」

小鬼「人間からはいい迷惑な上に寒さに弱い妖怪からしてみればたまったものじゃない。ま、昔の取り決めだから仕方ないネ」

座敷童「……」ヌクヌク

吸血鬼「皆さん共存してるんですねぇ」

男「人間の俺からしてみればどうでもいいけどね」

小鬼「さて、私は部屋に戻るヨ」

小鬼「明日は休みだし、みんなとノンビリ麻雀でもしようかナ」

吸血鬼「コンビニが休みってどういうことですか」

男(彼が言うみんなというのはここのアパートに最近こぞって入ってきた住人達だ)

男(蜘蛛男、垢舐め、地獄鳥……言うまでもないがみんな妖怪だ)

吸血鬼「ご飯はどうしますか?」

小鬼「私……彼らもいいか。適当に済ませるヨ。それじゃ」スタスタ

男「それじゃあ俺達も有るもので済ませるか」

座敷童「……」ツンツン

男「どうした?」

座敷童「……」ショボーン

男「冷蔵庫になにもない……?昼のうちに言えよ!?もうすぐ店閉まるような時間だぞ!?」

座敷童「……」サムカッタ

男「しゃーない、急いで何か買ってくる」

吸血鬼「私が行きましょうか?先輩よりは素早く動けますよ?」ヌクヌク

男「コタツで暖まりながら何言ってるんだ、そこから出る気ないだろ」

吸血鬼「えへへー、言ってみただけです」ヌクヌク

座敷童「……」ヌクヌク

男「はぁ……行ってくるよ」

――――――
―――



「ありがとうございましたー」

男「店屋物だけど、まあいいよな」

男「俺はパスタであいつらは適当な弁当で……あ、店長達にはつまみでも買えばよかったな?」

男「ともかく、早く帰って俺もコタツに入るかな。この寒さは尋常じゃないぞ……」ウィーン



ビュオオォォォォォォォォォォォォォ



男「」

男(いやね?店に入る前から寒いとは思ってたよ?)

男(でもさ)

男「猛吹雪ってどういうことだよ!?さっきまでそんな素振りなかったぞ!?」

「たまにあるんですよ。雪女さん達がたまに調整間違えてやっちゃうみたいだけど」

男「お店のおばちゃん!?調整ってなによ調整って!?」

「はいコレ、傘と合羽。サービスしとくよ」ズイッ

男「あ、そりゃどうも……じゃなくて!」

「お気をつけてー」ウィーン

男「……この猛吹雪の中を帰らなければいけないのか」


ビュオオォォォォォォォォォォォォォ

男(寒い、なんてレベルじゃない)

男(元々この地方はこんな時期に雪なんて降りはしない)

男(この田舎に住む人たちや妖怪達からしてみれば"稀によくある"なんて変な言葉が当てはまるようだが)

男(地元民ではない俺には堪えるワケで……)

男「前が見えない……ダメだ……意識が……」

男「家まで大した距離じゃないの……に……」

ドサッ

――――――
―――



雪女「おーい、生きてるかー?」ペチペチ

男(人が雪に埋まってしまった場合、助けが来なければ体温を奪われ凍死するか窒息死するかの二択だと思う)

男(運がよくて生き残っても後遺症は残るだろう。そうなる前に誰かに助けてもらえればいいのだけれど)

雪女「おーい、おーいー!」ガスッガスッ

男「ありがとう、分かってる、生きてる、返事するから蹴らないでくれるかなお嬢ちゃん?」

雪女「よし、意識はハッキリしてるのな」

男「ここは?」

雪女「私の家だよー。にーちゃん人の家の敷地内で倒れてたから介抱してたー」

男(この猛吹雪の中、どうやらあらぬ場所へとたどり着いていたみたいだ)

雪女「外は酷い吹雪だからねー。ゆっくりしていくといいよー」

男(白い肌、青白い着物、薄茶色の髪の毛。そこに刺さる枝のような髪飾り)

男(これはまるで……)

男「ああ、ありがとう……えっと……」

雪女「私は雪女の粉雪っていうの。呼び捨てでいいよー」

男「雪女か……そっか」

雪女「ん?信じるんだ」

>>2
>関連SS
>男「座敷童がいる毎日」座敷童「……」
男「座敷童がいる毎日」座敷童「……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378739292/)
>男「吸血鬼がいる毎日」吸血鬼「血より缶ビールのが美味い!」
男「吸血鬼がいる毎日」吸血鬼「血より缶ビールのが美味い!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379606240/)

男「知り合いに妖怪が沢山いるからね」

雪女「そうかそうか。まぁ、別に隠すつもりもないけどねー」

雪女「……流石に覚えてはいないよね」ボソッ

男「覚えていない?どこかで会ったことあったっけ?」

雪女「なんでもよ、気にしない気にしない!」

男「んー?」

雪女「そうだ、何か暖かいものでも出すよ。こんな時間だしお腹減ってるでしょ」

男「そんないいよ、それに家で待ってる連中がいるから早く帰らなきゃいけないし……」

雪女「ふーん……彼女?」

男「違うよ、友達」

雪女「でもこの吹雪じゃ帰れそうにないよねー」

男「んー……困ったなぁ……。あ、電話家に置いてきちゃったな」

雪女「最悪泊まって行けばいいよ」

男「そこまでは悪いよ。それに、一人暮らしみたいだし、見ず知らずの男を泊めるなんて」

雪女「いいよ、にーちゃん人畜無害そうだし」

男「それは褒められているのか否か」

雪女「ともかくハイ、電話。連絡は入れるでしょ?」

男「ありがと、とりあえずは連絡しておくか……」

雪女「お泊りはちゃんと家にいる人たちに知らせさえすればいいっしょ」

雪女「外の天気は酷くなるばかりだし、こんな吹雪の中ににーちゃんを放り出すわけにもいかないしねー」

男「……わかった、それじゃあお言葉に甘えようかな?」

雪女「にひひ!そんじゃ食べ物もってくるねー!」タッタッタ

男「無邪気な子だなぁ」

男(とはいえ、知り合って間もない男にここまでしてくれるとは)

男(可愛いけど無防備というか世間知らずというか)

男(……やましい気持ちはこれっぽっちもないよ?一応)

男「一応安否確認で電話するとして」カチャ

とおぅるるるるる るるるん

男「なんじゃこの着信音」

ガチャ

座敷童『……』

男「あ、もしもし?」

座敷童『……』

男「……麗華?」

座敷童『……』コクコク

男「いや、こういうときは喋れよ。電話越しに頷かれても分からんから」

吸血鬼『何故普通に伝わってるんですか』パッ

吸血鬼『それよりどうしたんですか?帰りが遅いから心配しちゃいましたよ、あとお腹空きました』

男「それがだな……この猛吹雪の中で気絶してしまいまして」

吸血鬼『吹雪?先輩何言ってるんですか、いくら寒いって言ってもそこまでは……』

男「いやいや、かなり凄いぞ?外見てみ?それで救出されて雪女の家に厄介に……」

雪女「うわああー!やらかしたー!!そぉい!!」ドシャン!!

男「そぉい!?」

ブチッ
ツーッ ツーッ

男「あれ?切れた……」

雪女「うう……ミスって顔面床に叩き付けたぁ……」

男「大丈夫か?」

雪女「うん、なんとかー」

男「って、うわ……電話のコードが」

雪女「引っかかって千切れちゃったねー……ゴメン」

男「いいよそれは。一応連絡は取れたから。何かワザとらしかったけど」

雪女「電話の人、女の人だったねー」

男「それの何がいけない」

雪女「いけないとは言ってないよー。はい、作り置きだけどお鍋もって来たよー」

男「おお!ありがとう!実のところお腹が減ってヘトヘトだったんだよ」

雪女「ね?出て行かなくてよかったでしょ?」

男「まぁね。後さ、聞きたいことがあるんだけど」ハフハフ

雪女「なにー?」

男「この吹雪は雪女が調整に失敗して出ちゃう事があることって聞いたんだけどさ」モグモグ

男「ひょっとして粉雪がやったことなの?」

雪女「あー、うん。温度の調整間違えて吹雪を呼んじゃったんだー。あはは……」

男「地元の人がたまにあるって言うからそうじゃないかとは思ってたけど」

男「それじゃあ止ませることも出来るんじゃない?」

雪女「残念、それは出来ないんだなー」

雪女「寒くすることは出来ても暖かくすることは出来ない。だから自然に止むまで待つしかないのぜー」

男「ありゃりゃ」

雪女「ま、いつまでもウチにいてくれればいいからさ。とりあえずゆっくりしなよ」

男「いつまでもってのは俺も困るなぁ」

男(幸い、明日は大学は休みだ……講義ある日はちゃんと行ってるよ?)

雪女「それと、お風呂にもいつでも入れるよー」

雪女「私も入るからちょっとぬるいけど」

男「入ってもいいの?」

雪女「自分だけ入ってお客さん入れないのはどうかと思うよ」

男「客じゃあないんだけどね。お言葉に甘えようかな」

――――――
―――



カポーン

男「確かにちょっと温いな」

雪女「ビバノンノー」

男(何故ナチュラルに一緒に入っているのか)

雪女「最初に言ったじゃん、私も入るって」

男「そういう意味で捉えないでしょ普通」

雪女「なに?にーちゃんこんな凹凸のない身体に欲情できる人種?」

男「まさか、子供には手を出しませんよ」

雪女「じゃあ……私が大人の姿に変身できるとしたら?」

男「出来るの?」ガタッ

雪女「出来ねーよ落ち着け」

雪女「せっかくだしさ、髪洗ってよー」ザパァ

男(ああもう、女の子なんだから隠すところは隠しなさい)

雪女「早く早くー」

男「しょうがないな、目に入って泣き喚いても知らないぞ」

雪女「大丈夫だよー、そこまで子供っぽくはないからさ」

男(ウチの子はシャンプーが目に入ると暴れだします)

ワシャワシャ

男「お客様、痒いところはありませんか?」

雪女「ケツ」

男「やめなさい」

雪女「何か慣れた手つきだねぇ、こういう経験あるの?」

男「ちょっと前まで同居人に髪の毛をこうやって洗ってたからね」

男「今は一緒には風呂入らなくなったけど」

雪女「ふーん……私と同じくらいの子?」

男「粉雪よりは大きいかな、色々」

雪女「うわ」

男「ストップ、違う、冗談だ。そんな感情はない」

雪女「流石に今のは引くよ」

男「ホラ、流すよ」

雪女「んー……大変よく出来ました」ザパァ

男「そりゃどうも。さて、十分暖まったし出るか」

雪女「えー、もうちょっと入ろうよー」

男「温いって言ってものぼせちゃうよ。それに手がもう皺くちゃだ」

雪女「若い証拠ですぜー」

……

雪女「ヒャッハー!風呂上りはヒンヤリして気持ちいいのぜー!」

男「ちゃんと拭かないと風邪ひくぞ?」ガシガシ

雪女「わふっ!大丈夫だよー、雪女は寒さじゃ風邪ひかないから」

男「あー、湯冷めとか関係ないのね」

雪女「流石に全裸で外を走り回ったりしたらどうなるか分からないけど」

男「まず職質されます」

――――――
―――



男「ちょっとそこに座りなさい」

雪女「はい」

男「親しくもない男を泊めるのもアレだけど、布団一組は流石にないんじゃないかな?」

雪女「にーちゃんの生き死にが掛かっていたのでとりあえず泊めました」

雪女「あと、布団はそれしかないので諦めて私と寝てください」

男「その言い回しは危ないから!」

雪女「まぁまぁ、ロリコンさんじゃないって自分で言ってるから信用してるよ」

雪女「こんな短時間でもにーちゃんと親しくなれたと思うしー」

男「本当に危ないロリコンさんは自分のことをロリコンっていいません」

雪女「んじゃ、ちょっと早いけどもう寝ようか。にーちゃん疲れてるでしょ?」

男「納得はいかないけどそうさせてもらうよ……こう寒い上に遭難は洒落にならん……」モゾモゾ

男「スヤァ」

雪女「あら早い」

雪女「……」

雪女「えへへ」ギュッ



男(結局俺は彼女の家に厄介になることになった)

男(帰る手立てがない以上仕方がないことなのだが……)

男(それより、みんなお腹空かしてないかなぁ……)

――――――
―――


翌朝


吸血鬼「結局先輩帰ってこなかったですね……晩御飯抜いちゃいました」

小鬼「連絡は入れてきたんでしょ?」

吸血鬼「はい、吹雪で遭難して助けてもらったとかなんとか……」

小鬼「吹雪て……寒いっちゃ寒いけどサ」

地獄鳥「昨日の空は快晴なり!」

吸血鬼「うわ何か出てきた!?」

地獄鳥「我は地獄鳥なり!同じ住居に住んでいるにも関わらずその扱いはないであろう!」

吸血鬼「すみません、鶏が喋るのはどうも慣れなくて……」

地獄鳥「鶏ではない!!地獄鳥だ!!」コケーッ

小鬼「彼がいた場所で吹雪いてたって事かナ?だとしたらおかしいネ」

座敷童「……」

垢舐め「本当は女作ってペーロペロしんてんじゃねーの?」レロレロレロ

蜘蛛男「現地妻を作る男!許せん!!」バッ

吸血鬼「先輩に限ってそんなことはありませんよ。あと危ないからやめろ」

小鬼「電話が途中で切れたんだっけ?他に彼は何か言ってなかった?」

吸血鬼「雪女がどうとかって言ってましたけど……」

座敷童「……」

蜘蛛男「あの男が吹雪きに遭遇したのも雪女のせいかもしれん!許せん!」

小鬼「電話は掛けなおしてみたのかい?」

吸血鬼「はい、でもまったく繋がらなくて……」

小鬼「困ったネぇ」

座敷童「……」

吸血鬼「あと店長。さっきから麗華さんが正座したまま目を瞑ってジッとしているんですけど……」

小鬼「ああ、アレね……」

座敷童「……雪女、心当たりがある」

吸血鬼「喋った!?」

座敷童「……」スタスタスタ

吸血鬼「あ、ちょっと!どこ行くんですか!」



小鬼(麗華ちゃん怒ってるナぁ……あの子怒ると怖いんだよナぁ)

垢舐め「止めるかぁ?」

地獄鳥「必要なかろう、そこまで暴走する女子ではなし!」

蜘蛛男「男を思う純粋な少女!」

――――――
―――




雪女「おはようなのぜー!」ボフッ

男「おうふ!?痛烈な目覚め!」

雪女「にーちゃんよっぽど疲れていたのか揺すっても起きなかったからねー」

男「だからといって飛び込みは危ないよ」

雪女「大の大人がそんなことでへこたれてちゃあダメだぜー」

男「まったく、お転婆だねぇ」

雪女「しおらしい方がお好き?」

男「どっちでも行ける!」キリッ

雪女「見境がないねぇ」

男「それより何か飯作るよ。タダで泊めてもらってるし、何かしなくちゃ悪いしね」

雪女「あ、いいよ。もう作ってあるから」

男「なんと言う手際のよさ」

雪女「にーちゃんが起きるの遅かっただけだよー」スタスタ

雪女「はい、ご飯だよ」カチャカチャ

男「ん、ありがと……しかし」

雪女「吹雪、強いままだねー」

男「一日経てば収まると思ったけど、そうは行かないのか」

雪女「今日がダメならまた明日、明日もダメならまた明日……で、いいじゃん」

男「家に人を待たせてるからそうも行かないけどね」

雪女「そうこうしているうちに膝の上にドーン!」ボフッ

男「お行儀悪いからやめなさい」

雪女「にーちゃんさえ好ければいつまでだっていてもいいんだよー?」

男「俺にも生活があるからそんなことは出来ないの。今日は大学が休みだから良かったものを」

雪女「じゃあここに住み込みで通っちゃう?」

男「俺ん家はアパート化してて俺が管理人してるからそれもダメー」

雪女「いけずー!」

男(何故だろう、彼女はどこか積極的だ)

雪女「ご飯食べ終わったらさ、一緒にあそぼ?」

雪女「トランプにする?花札?バーチャルボーイ?」ズラッ

男「花札は分からないし、バーチャルボーイは目に悪いからトランプで」

雪女「あいよー」

男(テレビの下に最新機種のゲームが置いてあるのに何故これらをチョイスした)

……


雪女「何故勝てない!」バサバサ!

男「ババに手をかけた瞬間凄く嬉しそうな顔をするから分かりやすすぎるんだよ」

雪女「ポーカーフェイスは難しい」

男「それ以前の問題だよ」

雪女「やめやめー!私の勝てる遊びするー!」ジタバタ

男「そんな我侭を……例えば何なら勝てるの?」

雪女「野球拳」

男「やめなさい」

雪女「軽い冗談だよー。そもそも人と話すこと自体そんなに無いしさー」

男「友達とかはいないのか?」

雪女「ドぎつい事あっさり聞いてくるね……いないよ」

雪女「学校にも行ったことは無いし、どこかに遊びになんてもってのほか」

雪女「買出しに行くくらいかな?家を出るのは」

雪女「何年か前にこの妖怪が住む村に来てからは特に」

男「移住してきたんだ?」

雪女「うん……」

男「他の場所にも妖怪っているんだなぁ。今まで見たこと無かったから何とも言えないけど」

男「どこから来たんだ?やっぱり北の方?」

雪女「……やっぱり覚えてないよね……にーちゃんの実家の近場だよ」

男「ゲッ、昔会ったことあるのか……ゴメン、思い出せなくて」

雪女「いいよ、知らなくて当然だから」

男(親しみをこめて接してきてくれた彼女には申し訳ないことをしてしまった)

雪女「ま、その穴埋めとしてだけどさ」

雪女「こうやって目いっぱい甘えているワケで」グリグリ

男「ハッハッハ、好きなだけ甘えるといいさ!」

雪女「キャー!ヘンタイさんだー!」

雪女「……やっぱり、ずっと一緒にいたいな」

男「……」

男(気がついていた。こんな吹雪でも次の日を持ち越して続くわけが無いことくらい)

男「……あのさ、もしかしたらだけどさ、怒らないで聞いてくれる?」

雪女「何ー?」

男「こうやって吹雪を強めてるのってさ、粉雪だったりする?」

雪女「だから昨日も言ったじゃん、こうなっちゃったのは事故だって」

男「うん、そういうことじゃなく」

男「こうやって継続して吹雪かせてるの」

雪女「……」

雪女「どうしてそう思うの?」

男「他の妖怪から聞いたんだけど。婿探しってやつ?自惚れかも知れないけど」

雪女「あー、知ってたんだ」

男「えっと……当たりでいいのかな?」

雪女「うん、当たりだよ」

雪女「せっかく再会出来たのにさ、にーちゃん自分の家の人のことばっかり心配してるしさ」

雪女「私の色仕掛けも全然反応しないし」フリフリ

男「俺はロリコンさんじゃないからね」

雪女「それは残念」

雪女「雪が止んだら出て行っちゃうだろうし、いっそ閉じ込めて手篭めにしちゃうのもアリかなーと」

男(誰かと接する機会が少なかった子だ。こんな不器用なことしか出来ないのだろう)

雪女「既成事実を作られなかっただけありがたく思いなよ!そこは本人の意思を重んじるよー」

男「閉じ込めている時点で俺の意思も何もあったものじゃないと思うけど」

雪女「私にはにーちゃんしかいないと思うんだ、私が生まれてきてからずっと……そう思ってた」

男「重い重い、話が重いよ」

雪女「刷り込みってやつだよ、にーちゃんの事しか考えられないんだもん私」

男(……ん?)

雪女「思い出せないようだから教えておくね?私の事」

雪女「10年くらい前の話になるけど」

男(10年……俺がまだまだ青臭い子供の頃)

雪女「私は、小さな公園でその命を授かりましたー」



―――
――――――

父「ほらほらーお父さんこんな大きい雪だるま作っちゃったぞー!」ゴロゴロ

少年「いいよ、そんな大きくなくても」

父「大きい方が迫力あるぞー?」ゴロゴロ

少年「興味ないー」

父「張り合いないなぁ……」ドシャ

父「あっ!?崩れちゃった!?」

少年「バランス悪いからだよ」

父「しょうがない、こっちの完成済みの小さいのを出すか」ヒョイ

少年「なんで完成済みのものがあるんだよ!?先に出せよ!?」

父「ハッハッハ、ロマンというものがあってだな!」

母「いつまでやってんのー?もうご飯できてるよー」

父「はーい!よし!それじゃあ家まで競争だー!」ダダダ

少年「あ、おーい……行っちゃったよ」

少年「……ちっこい雪だるま」

「……」

少年「可愛いじゃん……これ付けとけよ」サクッ

父「置いて行っちゃうぞー?」

少年「今行くよー!……じゃーね」タッタッタ

「……」

――――――
―――



雪女「そのとき作られた雪だるまに魂が宿って出来た妖怪……それが私」

雪女「にーちゃんがくれたあの枝……ちっぽけな枝だったけど、今は形を変えて私の髪飾りになってる」

雪女「このプレゼント嬉しかった……誕生日のプレゼントだった」

男「ごめん、覚えてない」

雪女「……そうか、そうだろうね!あんたは両親を裏切り、家族の絆なんて断ち切って、オル○ァンから出て行った!」

男「乗ってくれてありがとう、でもそんなことで俺を?」

雪女「そんなことって言っても、私にとっては重要なことだよー」

雪女「ずっと一人で生きてきた私にとっての一番最初の思い出」

雪女「多少は美化されているのかもしれないけれど、私はその思い出に支えられて生きてきた」

雪女「だから、にーちゃんの事が大好き!今も昔も変わらずずっと!」

男「それを恋愛感情に結びつけるってのは違うと思うよ」

雪女「これから育んでいけばいいよ。養ってあげるから安心して?」

男「それ承諾したらダメ男だよ!?惚れ込んじゃダメだよ!?」

雪女「そんなこと言わず!先っちょだけ!先っちょだけだから!」

男「何の話!?」

雪女「……わかった、子供さえ出来たらもうにーちゃんの目の前には現れないようにするからさ……」ドヨーン

男「さらに重ッ!?それの方がもっとダメだろ!?」

雪女「私、本気だよ?ずっとにーちゃんのことだけ見てたんだもん……」

男「そういうことはお互いの気持ちが必要なの!一方通行じゃダメなの!」

雪女「にーちゃんは女の子に抱きつかれて嬉しくないの?」

男「嬉しいです!」キリッ

雪女「ってことは同意の下!!やったー!」ギュー

男「違う違う違う!!そういうことじゃない!!」

男「俺好きな人いるから!!」

雪女「ッ!」

男(嘘偽りは無い、俺の本当の気持ちだ)

男(だから彼女の問いには決して首を縦に振ることは出来ない)

男(それに、彼女はまだ子供だし、急いで答えを出す必要も無いだろう)

雪女「うぐゅ……」グスン

男「その……何ていうか……」

雪女「私の10年返せェーーッ!!」ビュオオオオオオオ

男「逆恨み!?」

ガタンッ

座敷童「……」ゴゴゴゴゴ

男「助け舟来たー!!」

吸血鬼「助け舟どころか修羅場ですよ!?どういう状況ですか!?」シュバッ

雪女「な、何で!?外は入ってこれるような状況じゃないのに!?」

座敷童「……超えてはならない一線を越えた」

男(うお!?喋った!?)

座敷童「婿探しは確かに許可されている、でも相手の同意も必要だし何より暴力を振るうことはしてはいけない」

雪女「住むところをくれたおねーちゃんには悪いけど!そっちには関係ないじゃん!」

座敷童「……落ち着いて、怒りに来たわけじゃない」ギュッ

雪女「ひぅッ!?あ……体、凄く冷たい……」

座敷童「先に、何でも私に相談してって言ったでしょ?」

座敷童「貴女はまだ小さい。急いで決める事なんて無い」ナデナデ

雪女「うぅー……」

座敷童「……だからお願い、私から彼を奪わないで……」

雪女「へ?」

男「んーーーー?」

雪女「あー……そういう」

座敷童「以上ッ!」バチンッ

雪女「痛い!?叩いた!?怒ってないんじゃないの!?」

座敷童「……」プンプン

男「なになに?怒ってはいないが殴らないとは言ってない……怒ってるじゃないか」

座敷童「……」プイッ

男「っておーい、どこ行くのー?ひょっとして俺に対して怒ってる?ご飯食べれなかったから?おーい」

座敷童「……」スタスタ

男「何で被害者の俺が怒られなきゃいけないんだよー!機嫌直してってばー!え、腹減ったって?それはゴメンって!」

座敷童「……」クスッ

雪女「にーちゃんが言った好きな人って……」

吸血鬼「彼女凄いですよ、吹雪いている山の中を何の対策もせずに突き進んで行ったんですから」

吸血鬼「私もその後を追う羽目になりましたけど……」

吸血鬼「はじめは先輩の事が心配で仕方が無かったんだと思ってたんですけど」

吸血鬼「貴女のことも……心配していたんですね」

雪女「……うん」

吸血鬼「さて!それじゃあ、お兄さんに言うことありますよね?」

雪女「そだね……」

雪女「……にーちゃん」

男「ん……まぁ、流石にやりすぎだな。もうちょっと酷かったら俺のゲンコツだったぞ?」

雪女「ごめんなさい……迷惑かけないって言ったのに、全部が迷惑だったよね」

雪女「もう、姿は見せないよ……」

男「いいよ……とは言えないけど」

男「でも、そういう重苦しい関係じゃなくて、近所の兄貴程度の関係だったらこれからも付き合っていけるかな?」

男「だからさ……また遊ぼうぜ?」

雪女「あ……!うん!」

……

座敷童「……」

小鬼「やぁ、一件落着だネ?」

座敷童「……」

小鬼「興奮した相手を抱きしめて宥める……キミのお姉さんの受け売りだネ」

座敷童「……姉さんほどは上手くは出来ない」

小鬼「んにゃ、もうキミも立派に出来ているヨ」

小鬼「住むところも無くこの村に流れ込んできたあの子の面倒を見てきたじゃないか」

座敷童「最低限の事しかしていない。貸したお金はちゃんと返してきたし、面倒を見たほどじゃない」

小鬼「十分だヨ……。またいつか、昔みたいにみんなで過ごしたいね、キミのお姉さんとも」

座敷童「……うん」

座敷童(瑪瑙姉さん……)

――――――
―――



男(俺にとっての冬の始まりの少し前)

男(妖怪が引き起こしたちょっとした事件は、妖怪の手で幕を下ろした)

男(一人の女の子の不器用な感情表現)

男(一途な想いがこんな事態を招いたのだが)

男(これがきっかけで彼女は少し大人になれたのだろうか)

男(きっとまた近いうちに会えるだろう、成長した彼女と……)

男「茶がうめぇ」ズズズ

座敷童「……」グデン

吸血鬼「先日結構な事があったのに動じないって言うのは凄い精神力してますね二人とも」

雪女「うん、素直に感心するよー」ズズズ

男「こういう非現実的なことってワクワクするからねぇ、いいんじゃない?」

座敷童「……」コクン

吸血鬼「先輩の精神が常人離れしてるように思えてきました」

男「ところでさ、粉雪」

雪女「んー?」

男「なんでお前ここに居るの?」

雪女「おっす!今日からここのアパートでお世話になりやす!一番いい部屋借りたんでよろしーくね!」

吸血鬼「家はどうしたんですか?」

雪女「人に貸したー」

男「そんな簡単にしていいものじゃないでしょうに」

男(案外早い再会だった)

雪女「ここに居た方がにーちゃんと一緒に居られるからね」

雪女「お金はもちろん払うよ?ちゃんと座敷童のおねーちゃんと契約したし」

座敷童「……」ドヤァ

男「そんな契約書見せながら客拾ってきてやったぜ!みたいな顔しなくていいから」

吸血鬼「お金なんてどうやって調達してきてるんですか?」

雪女「株」

男「生々しい答え出てきちゃった」

雪女「これで堂々とにーちゃんに甘えられるのぜー」ベッタリ

男「おっとと……ハッハッハ、こいつめぇ」ナデナデ

座敷童「……」

吸血鬼「嫉妬してます?」

座敷童「……」フイッ

吸血鬼「あんな子供に遅れはとらないって……あなたも見た目子供じゃないですか」

雪女「そうだにーちゃん、さっき鳥を捕まえてきたからそれを土産にもって来たよ。食おう!」

男「野鳥は雑菌だらけだから危ないぞー?大体そんな食える種類の鳥なんて……」

雪女「大丈夫だよー、だって」ゴソゴソ





雪女「鶏だから」

地獄鳥「」

男「ウチの住人だあーーーーーー!?」

垢舐め「ひゃっほう!今日は鳥鍋だ!」レロレロレロ

蜘蛛男「野生の鳥の亡骸に咽び泣く男!」ババッ

男「どこから沸いて出た!?いや友達食おうとするなよ!?」

雪女「アレ?仕留めちゃ不味かった?」

吸血鬼「誰も何も言いませんからいいんじゃないですか?」

地獄鳥「ヤメロ……ヤメテクレ……」

男「よかった生きてる!」

小鬼「ハハ、今日も賑やかだネ」ヒョコ

座敷童「……」ニコッ

男(こんな寂れた家に住む彼女たちと、俺が織りなす楽しい毎日)

男(いつまで続くか分からないけど、毎日楽しく過ごそうと思う)

男「……な?」

雪女「えへへ!」




男「雪女がいる毎日」雪女「にーちゃん、膝枕ー」

おわり

終わった
今回は出来が酷くて相当書き直した
妖怪話は多分次で最後

お付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

過去作
http://blog.livedoor.jp/innocentmuseum/

本当はズラっと並べたいけど、数も多くなってきたのでブログにぶち込みました

失礼

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