モバP「入院……ですか?」 (35)
医者「元気になったからといって無理をしすぎです。北条さんの身体は貴方の思っている以上に脆いんです」
P「……すみません」
医者「今はもう治療室を出て病室で寝ています。幸い大事には至りませんでした」
P「入院の期間はどれくらいでしょうか」
医者「北条さんの具合にもよります。少なくとも一週間とみてください」
P「わかりました。ありがとうございます」
医者「北条さんの病室は○○○号室です。行ってあげてください」
P「はい」
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P「加蓮?」
加蓮「……」
P「まだ寝てるって言ってたか」
P「前に入院したとき以来頑張り続けてきたから、これまでの溜まった疲れが爆発したのかな。気付けてやれなくてごめん」
加蓮「……ん」
P「加蓮!?」
加蓮「……え?」
P「おい、大丈夫か! 加蓮!」
加蓮「え? え? ぷ、プロデューサー?」
P「だ、大丈夫か?」
加蓮「ここ、病院?」
P「そうだ。倒れて運ばれたんだ」
加蓮「……ああ、そう……なんだ。また入院するの?」
P「うん、そう。でも、大丈夫だよ!」
加蓮「そうだね。大丈夫だよね」
加蓮「でも、皆に遅れをとっちゃうね」
P「……それは、そうだな」
加蓮「昔の私だったら、もー無理だーって言ってアイドル辞めてたと思うけど」
加蓮「今は悔しい気持ちでいっぱい」
P「CDデビューもあったしな」
加蓮「やっと奈緒達とCDデビューして選挙だっていい結果出せてさ。これからって時なのに……」
P「焦っちゃダメさ。まだまだ時間はあるんだ」
加蓮「でも、凛や奈緒の背中を追いかけるだけじゃもうダメ」
加蓮「今、こんなこと思うなら、プロデューサーに初めて会った時にもっと頑張らなかったんだろうって思うよ」
P「初めて会った日か。まだ加蓮はツンツンしてたな」
加蓮「プロデューサーに声掛けられてさ。あの時はプロデューサーのこと、アンタって呼んでたっけ。自分のこともアタシって言ってて」
P「下積みとか努力が嫌いって言ってたな」
加蓮「でも頑張ってお仕事することを楽しいって思って、アイドルになれたことを実感した。キラキラ輝いてるって自分でも分かった」
P「諦めなきゃ夢は叶うもんさ。加蓮が諦めなかったからここまでこれたんだよ」
加蓮「昔、入院してた頃に私を元気づけてくれたアイドル、今は私がなってるんだもんね」
P「ああ、この病院にも加蓮を見て頑張ろうって思ってる人もいるかもな」
加蓮「あの頃は必死だったなぁ。まだプロデューサーがいないと不安でさ」
P「一緒なら出来るっていつも言ってたな。よく覚えてる」
加蓮「それそれ。言ってくれないとホントに不安で怖かったんだから」
P「それでもはやく次のお仕事って言ってたじゃないか」
加蓮「それは、私ももっと輝きたいって思ったから
P「その頃か? 制服コレクション」
加蓮「そうだね」
P「もう健康だって言ってたな」
加蓮「私も浮かれたのかもね。アイドルを知って、アイドルになれて。現実が虹色になって」
P「……放課後デート」
加蓮「あっ」
P「懐かしいな」
加蓮「……うん。ほんとにしてくれるとは思ってなかった。プロデューサー、凄い忙しそうだったから。無理言っちゃったって思ってたら。来てくれるんだもん」
P「加蓮の憧れだったんだから行くに決まってるよ」
加蓮「……ありがと」
P「俺ともっともっと先の世界が見たいって加蓮は言ったけど、今、見えてるか?」
加蓮「もちろん見えてるよ。プロデューサーはプロデューサーが描いた未来に私を連れて行ってくれた」
加蓮「だから、言ったんだよ?」
P「え?」
加蓮「私に夢を見せてくれたプロデューサーに、今度は私が夢を見せてあげるって」
P「ああ、見せてもらった。いや、今も見てるよ」
加蓮「ちゃんと恩を返せてるかな」
P「返せてるなんてとんでもない。俺がもっと頑張らなきゃ」
加蓮「頑張りすぎて身体壊さないようにね」
P「加蓮と一緒に世界中に笑顔を届けなきゃいけないからな」
加蓮「あっ、もう……」
P「で、はしゃぎすぎて風邪引いたんだったな」
加蓮「あ、うん」
P「早く一緒にお仕事したいからって言葉だけで俺はもう安心してたよ」
加蓮「だ、だって。あんまり心配かけたくなかったし」
P「俺もあの時は元気づけようといろいろと持って行きすぎたな」
加蓮「結局食べきれなくて、プロデューサーも食べてたよね」
P「プリンを食べさせてもらったな」
加蓮「今だから言えるけど、あれとっても恥ずかしかったんだよ?」
P「パジャマ見られて恥ずかしいって言ってたくらいだもんなぁ」
加蓮「女の子はパジャマ見られたら恥ずかしいもんだよ」
加蓮「その後、凛と奈緒とライブしたんだよね。トライアドプリムスとして」
P「本当にいいライブだったよ」
加蓮「泣いてくれたもんね」
P「だって、あんなライブを見せられて、あなたは最高のプロデューサーだよって言われたんだぞ? 絶対泣くよ」
加蓮「私はプロデューサーに出会わなければ変わることは出来なかったよ。本当に感謝してるの」
P「自慢のプロデューサーとも言ってくれて、すげぇ嬉しかったよ」
加蓮「だって本当だもん」
P「その頃からファンレターもどんどん届いてて本当に大きなアイドルになったんだなぁって感じたよ」
加蓮「ファンレターも嬉しかったなぁ」
加蓮「あ! プロデューサー。あの日のこと覚えてる?」
P「あの日?」
加蓮「もう……覚えてないの?」
P「……夜に散歩に行った日か。話があるって言って」
加蓮「そ。アニバーサリーで私もプロデューサーとお話したくて、つい呼んじゃった」
P「俺は久々に加蓮と二人で話せて嬉しかったよ。日頃聞けないこともいろいろ聞けたし」
加蓮「キラキラ煌めいてる日々をプロデューサーや凛、奈緒達と歩いてることが奇跡なんだって思ったんだ」
P「トップアイドルになっても、どんなに忙しくなっても隣にいるって約束したから」
加蓮「ふふ、覚えててくれたんだ。嬉しい」
P「俺は加蓮の言葉を全部覚えてるよ」
加蓮「ちょっとそれ、捉え方次第では気持ち悪いよ?」
P「おい。加蓮も言ってたじゃないか」
加蓮「私は女の子だからいいの」
P「そういうものなのか」
加蓮「そういうものだよ」
P「アニバーサリーのライブも良かったなぁ。時間が過ぎるのがすごく速かった」
加蓮「うん、あのライブはあっという間に終わっちゃったよ。でも最高に輝いたステージだと思う」
P「最高が出せたか?」
加蓮「うん! ファンの皆とプロデューサーのおかげでね」
P「そうか、ありがとう」
加蓮「何でプロデューサーがお礼を言うの? お礼を言うのは私の方だよ。夢を叶えてくれたんだから」
P「夢を叶えてくれたのは俺も同じだ。加蓮は最高のアイドルだよ」
加蓮「それ、凛とか奈緒にも言ってない?」
P「……」
加蓮「もう! そういうのは嘘でも言ってないって言わなきゃダメだよ」
P「あ、ご、ごめん」
加蓮「ふふ、いいよ。だって最高のアイドルだもん」
P「加蓮には敵わないな」
加蓮「……」
P「ん? どうした?」
加蓮「あ、あの、自分から聞くの恥ずかしいんだけど」
P「うん」
加蓮「ウェディングドレスの私、どうだった?」
P「え!? そ、そうだなぁ。可愛かったぞって何でそんなこと聞くんだよ」
加蓮「だってあの時は全然話聞いてくれなかったじゃん」
P「そんなことないよ」
加蓮「ピンクがいいか、もっと落ち着いた色がいいかーって聞いたのに全然見てくれてなかったよ!」
P「あ、あれー?」
加蓮「着替えた時だってあんまり見てくれなかったよね?」
P「まじまじと見るのも恥ずかしいじゃないか」
加蓮「別に見てくれてもいいのに……」
P「そういうわけにはいかんだろう」
加蓮「こういうところで融通きかないんだから」
P「でも、撮った写真はまだ持ってるよ」
加蓮「あ、それ見てるんだね?」
P「まぁ見てるけど」
加蓮「やっぱり私のプロポーズが効いたのかなぁ?」
P「あ、あんなの! 他の人にはしちゃだめだぞ」
加蓮「照れてる照れてる」
P「照れてない!」
加蓮「でもね、人生でウェディングドレスを着られるなんて思ってなかったから。夢がどんどん叶っていって嬉しかったからさ」
P「もう過ぎたことだからいいよ。あと、どんな夢も願いも叶えてやるから」
加蓮「じゃあ、退院したらデートしようね」
P「……わかった」
加蓮「やった!」
加蓮「で、どこ行く?」
P「その話は退院してからな」
加蓮「しょうがないなぁ。じゃ話の続きね」
P「ウェディングの次って言ったらもうCDデビューじゃないか?」
加蓮「あれ、もうそんな時期だっけ?」
P「そうだよ。CM第六弾で奈緒、紗枝、輝子、裕子と同時デビューしただろ。で、どうだった?」
加蓮「最初はやっと凛に追いつけたって感じたかな」
P「そうか、凛は一弾のNo.1だもんな」
加蓮「うん、でもね、気づいたの」
P「何にだ?」
加蓮「凛は主人公ってこと」
P「そ、そんなことはない」
加蓮「あるんだよ。理由とかよくわからないけど凛は主人公で私はそのサポート役」
P「おいおい、あまり自分を卑下するんじゃないぞ」
加蓮「いいの、言わせて」
加蓮「主人公じゃなくていいって私は思うよ。だからファンやプロデューサーの目に映る私はヒロインでいたい。変……かな?」
P「全然変じゃない。むしろ普通だ。確かに凛は主人公かもしれない。でもな凛に勝てないってわけじゃない」
加蓮「何言ってるの? 主人公ってのは負けないんだよ?」
P「確かに漫画とかの主人公は最終的には勝つ存在だ。でも一つだけキャラクターに魅力がないと勝てないものがある」
加蓮「人気投票ってこと? でも凛は一番人気だと思うんだけど」
P「それはこれから頑張るんだろ。二人で。加蓮なら出来る。凛だって追い越せる!」
加蓮「ふふ、プロデューサーはいつだって私に勇気のカケラをくれるね」
P「頑張っていこう」
加蓮「うん、奈緒も凛も仲間でライバル。もっと上を目指さなきゃ」
P「そうそうその調子だ」
P「CDデビューの後は夜宴シリーズか。加蓮は白芙蓉だったな」
加蓮「凛は歌姫、奈緒はメイドだったね」
P「白芙蓉は昔、蓮の花のことを指したらしい。加蓮にぴったりじゃないか」
加蓮「名前に入ってるしね」
P「そういやあの川入った後は何もなかったか? 風邪とか」
加蓮「何もないよ。もっと体力つけなきゃって思っちゃった」
P「それはいいことだな、最初に比べたら体力はかなりついたけどまだちょっと不安だ」
加蓮「体力がついたらもっとお仕事をこなせるようになるかな。お仕事は大変だけど楽しいから好きなんだ」
P「俺も加蓮と仕事をするのは好きだよ。加蓮は可愛いからな」
加蓮「ちょ、ちょっともう。私はもっと綺麗に美しく成長したいから、その辺は頼むよ?」
P「可愛いじゃだめなのか。わかった」
加蓮「可愛いもいいけど先のことを考えたらさ。きれいーとか美しいーとかの方がいいでしょ」
P「そうか」
加蓮「でも、プロデューサーがプロデュースしてくれたら絶対成長できるから」
P「俺はずっと加蓮のプロデューサーだから安心してくれ」
加蓮「はーい」
P「っと、そろそろ俺は帰らなきゃ」
加蓮「えー、もう帰るの?」
P「しょうがないだろ。明日も来るからさ」
加蓮「明日はポテト持ってきてね」
P「そんなに元気なら心配はいらないみたいだな」
加蓮「よろしくね。ばいばーい」
P「静かにしてるんだぞ。ばいばい」
加蓮「あ」
P「何だ?」
加蓮「私、頑張るね。プロデューサーとトップになるまで」
P「え? あ、そうだな。頑張ろうな」
加蓮「じゃ、ばいばい」
P「ばいばい」
加蓮「プロデューサー、もっともっといろんなお仕事しようね」
加蓮「……何で泣いてるんだろ、私。もう帰ったはずなのにプロデューサーの声が聞こえる気がする。ずっと側にいたいよ」
加蓮「でも、頑張らなきゃだめだ」
加蓮「凛にも奈緒にも負けない。そんなトップアイドルになることをこれからの夢にしよう」
加蓮「プロデューサー、この夢を一緒に叶えようね」
おわり
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