妹「黒くて渋くて苦いヤツ」 (70)

妹「そいつは今、私の目の前で湯気をもくもく容赦なく発生させている…間違いなく…熱い」

兄「…………」ゴクゴク

妹「そして…投入した砂糖とミルクはゼロ、黒い…すごく黒い…英語で言うとブラック…絶対に苦い」

兄「…………」フーッ…

妹「私は苦いのは好きじゃない…むしろ嫌い…かと言って甘いものが好きってワケじゃない…いい感じの…そう…可もなく不可もない…ちょうどいい感じのヤツ…英語で言うとヴァイシュヴァルツ」

兄「……………」

妹「どうすればいい…どうすればコイツの味のバロメータを極めて均等に分配することが可能なのか……いや…もういっそこのままでーーーーーーーー

ドバドバドバドバ…

妹「!!???山の様に注がれる砂糖ッ!…これは甘いッ!絶対ッ…胸焼け確定ッ!!!」

兄「さっさと飲めや」

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妹「ちょっとちょっと!これは入れすぎだよ!!」

兄「早く飲まないと冷めちゃうだろ」

妹「そうだけどね!そうだけど!」

兄「お前は優柔不断すぎるんだよ、慎重なのはいい事だけど…コーヒーごときでモヤモヤと」

妹「私は完璧主義なの!!」

兄「俺にはただのアホにしか見えないね」

妹「アホじゃない!」

兄「ほら、冷めちゃったぞお前のコーヒー…もったいないからちゃんと飲めよ」

妹「……うん」

妹「…」ゴク…シャリシャリシャリシャリ

兄「うまいか」

妹「まずい」

兄「だろうな」

兄「さてさて、食前のコーヒーも飲み終わった事だし…そろそろ飯にするか」

妹「ふつう食後じゃないの?」

兄「どっちでもいいんだよ、コーヒーはいつ飲んでもコーヒーだからな」

妹「………」

兄「さて…準備するぞ、手伝え」

妹「はいはい」

兄「ジャジャーン!今日はカレーだ」

妹「朝もお昼のお弁当もだったけどね…お弁当にカレーってどうなの?」

兄「カレーは何度食ってもうまいのだ」

妹「美味しいけど…もう明日はやだよ」

兄「……カレーは何度食ってもーー

妹「いやです!」

兄「…作り過ぎたんです…もうちょっとだけ協力してくたさい」

妹「………」パクパク

兄「まぁそれはいいとして…ほらコップよこせ」

妹「ああ、うん」サッ

兄「…………」キュッポン


コポコポコポコポ…


妹「今日もあいかわらず赤いぜ…」

兄「……まぁ、トマトジュースだしな、ほら」スッ

妹「いただきまーす」ムグッムグッ…

兄「………」

妹「ぷはぁ!いいコク!!この一杯のために生きてる!!」

兄「ようおっさん」

妹「いやぁ…あいかわらずウチのトマトジュースは格別だね!」

兄「そうか?」

妹「うん!なんだか生命のミャクドウを感じる!」

兄「大袈裟だなぁ…」

妹「どこで買ってるの?そろそろ教えてくれたっていいでしょ?」

兄「それは秘密だ」

妹「もう!いつもそればっかり!ケチ!」

兄「ケチで結構」


妹「ねぇね

妹「ごちそうさまでしたー」

兄「はい、お粗末さま…食器洗っとくから、風呂の準備たのむ」

妹「はいはーい」タタッ

兄「……………」

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ーーーーーーーーー
ーーーー





ガチャ…



兄「む、さっきので最後だったか…明日、買いに行かなきゃな」

次の日

先生「であるからして…えー…これがあーなって…こうなって……そうなるんだけど分かる?」

ワカリマセーン

先生「分かれや」




兄「…………」

友「…おい…おいって」ツンツン

兄「あ?」クルッ

友「ボケっとしてんじゃないよ…さっきから呼んでんだろ」

兄「…ああ、すまん…何だ?」

友「昨日のあの店、今日も行こうぜ!」

兄「ええ…?なんでだ」

友「いいから!うまかったろ?な!行こうぜ」

兄「……まぁ、いいけど」

友「よし!決まりだな!」

兄「…………」





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ーーーーーーー

チリンチリーン

店主「いらっしゃいませー…あら、昨日の」

友「あっ!はい!どどど、どうも!!今日も来ちゃいました!!へへへ!!」

兄「…………」

店主「歓迎するわ、どうぞ好きな席に座ってちょうだい」

友「は、はい!そうします!!どうしよう、あっ!!そうだ!カウンターに座ろうそうしよう!なっ!お前もそれがいいよな!!」

兄「お、おう」

友「だよな!!流石だぜ親友!!はは、ははははは」

兄「…………」

兄「…………」

店主「ご注文はお決まり?」

友「は、はい!決まってます!えと!昨日と同じヤツで!!男はブラック!!!ははは!!」

兄「俺もそれで」

店主「ふふ、かしこまりました」


カチャカチャ…


友「ぬふ、ぬふふふふふ…ふつくしい」

兄「…なるほどな」

友「!ど、どうした…」

兄「彼女が目当てなんだろ?お前」

友「ッ!なななんのことかな!!」

兄「とぼけなくってもバレバレだぞ…、さっきから緩み切った顔しやがって」

友「グウッ……!」

兄「まぁ…なんだ、お前の色恋沙汰にどうこう言うつもりはないが……俺は必要か?」

友「必要だよ!ひとりじゃとても恥ずかしくって来れないんだ!」

兄「…お前なぁ」

友「皆まで言うな!わかってるんだよ!」

友「でもアレなんだ…!どうしても難しくって!しょうがないんだよ!」

兄「 …そうかい…まぁ…頑張れよ」





店主「はい、お待たせ」カチャ…


友「全然待ってないです!!!」

兄「どうも」

店主「ふふ、熱いから気をつけてね」

友「気をつけます!!!アチッ!!」

店主「あらあら…大丈夫?」

友「ダ…ダイジョブッス!」

兄「………」ゴクゴク

友「ムグッ…美味い!ムグムグムグ…」ゴクゴク!

店主「喉乾いてたのね」

友「ムグッ!?…ッはい!、カラッカラでした!!いやぁこの頃ほんと暑いですよね!!」

店主「そうねぇ…今年は本当に暑いわよねぇ…湿気もヒドイし」

友「は、ははは!ホントホント!夜なんて寝苦しいのなんのって!!」

店主「ほんとねぇ…」

兄「…………」

友「そうだ!…なんだか妙な事件が起きたらしいじゃないですか、ここの近所で」

店主「…あぁ、そうね、今朝ニュースで観たわ…結構近所だったから印象に残ってる」

友「なんでも、殺された死体から血が一滴残らず抜かれてるとか!いやぁ、怖いですね!」

店主「ふふ…もしかして…吸血鬼の仕業だったり?」

友「まさか…きっと気が変な犯人なんですよ」

店主「ふふふ、そうね」

兄「…店主さん」

店主「?なにかしら」

兄「昨日、豆を頂いたじゃないですか…実はさっそく家で淹れて飲んでみたんですと」

店主「ええ」

兄「どうにも、あなたの出すコーヒーとは程遠い味と香りになってしまって…なにか…その…コツとかあります?」

友「バッカお前…そりゃプロと素人が張り合える訳ないだろ」

兄「まぁそうなんだけどな」

店主「んー…そうね、別に特別な事はしてないんだけど…」

兄「…………」

店主「ちょっとね…隠し味ってやつかしら」

兄「隠し味…それって?」

店主「あらら?…『隠し味』よ?…もちろんひ、み、つ」

兄「ふふ…そうですよね」

友「そうだぞ!なんたって隠し味だからなぁ!ははは!」

兄「なんでお前が偉そうなんだよ」

兄「…ごちそうさま、じゃあ…俺はそろそろ」ガタッ…

友「えっ!もう!?」

兄「まだ用事があってね、もう行かなきゃならん、…店主さんお勘定を」

店主「ふふ…いいわ、今日はサービスしてあげる、いい常連さんになってくれそうだし」

兄「そいつはどうも」

友「常連さん!?おい聞いたか!常連さんだってよ!!うはっ」

兄「…お前はもう少し居ればいい、じゃあ明日な」

店主「またのご来店を…」




キィ……バタン

カランカラーン



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ーーーーーー
ーーー


兄「…………」

ゴンゴンゴン!

ガサガサ…


「あいよ」

兄「…いつもの、そうだな…今回は3本だ」

「また安物ときた…アンタももう長いだろ…上モノの一本や二本、買ってくれてもバチは当たらんぜ」

兄「高いんだよ、まけろ」

「そりゃ無理だ…オレは商品を絶対まけないのが信条なんだ」

兄「はっ、商売人の鏡だね」

「ククク、褒めても何も出ないぜ」

兄「…………」

兄「…じゃあ、交渉不成立だ、いつもの寄越せ」

「ほらよ」

ガシャン!

ゴトゴトッ…

ガシャン!

兄「む?……気のせいか、前より量が少なく見えるな」

「なんだって?そりゃ驚いた…お前さんともあろう者が目を悪くするとはね…ククク」

兄「チッ…クソ野郎が、いつか吠え面欠かせてやるから覚えとけよ」

「楽しみにしとくぜ」

兄「……それと、ほら…妹からだ」

「おぉ!!待ってました!!早くくれ!!」

兄「ほらよ」スッ

ガシャン!!

バッ!

ガシャン!!!

「ククッ!いい匂いだ!ほぅ!今日はクッキーか!!最高だな!!」ガサガサ

兄「…………」

「…最近はこればっかりがオレの生きがいなんだ、妹さんに礼を言っといてくれ」

兄「わかったよ」

「じゃあ、しっかり味わって食うから邪魔だ…さっさと帰れ」

兄「言われなくても帰るさ」





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兄「ただいまー」

妹「おかえりなさい!」トタタ

兄「…いや、もう日は沈んでるってのに暑いな、汗かいちまった」

妹「大丈夫!!部屋に入ったらあら不思議!!一瞬で灼熱地獄から極寒冷獄へご招待!」

兄「設定温度上げなさい」

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ーーーーー
ーー

兄「ふぅ、涼しい」

妹「クーラー様さまだよねぇ」

兄「お前、飯はもう食ったか?」

妹「冷蔵庫のカレー食べたよ」

兄「…そうかい」

妹「まだいっぱいあるよ」

兄「今日中に全部片付けます、はい」

妹「もう私食べないよ」

兄「わかった、わかったから」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー

兄「ウェップ…やったぜ」ゲフッ

妹「全部食べたの?おつかれ!!」

兄「ああ、うん……うっ」オエッ

妹「…あ!…それよりさ!アレは?」

兄「アレ?」

妹「トマトジュースだよ!トマトジュース!もう無くなってたんだけど!」

兄「…ちゃんと買ってきたさ…ほら、さっき冷蔵庫入れといたぞ」

妹「我が世の春がきたッ!!!」ダッ!

兄「…………ウグッ!」

妹「ムグッムグッ!!……ぷはぁ!!ヤバイ!!沁みるッ!!このために生きてるっ!!!」

兄「よく飲むなぁ」

妹「何ていうの?カラダが欲してるて言うか…本能的に求めちゃってる?みたいな?」

兄「……まぁ、程々にな」

妹「はーい…ムグッムグッ!!」

兄「はぁ…飲みざかりってやつか」

妹「…プハッ…って言うかお兄ちゃん!知ってる?」

兄「ん?」

妹「なんだかすっごい近所で変な事件が起きたって!今日学校でも気をつけなさいって注意されたよ」

兄「ああ、知ってる…お前も気を付けろよ、暗くなる前に必ず家に帰って来るんだ」

妹「お兄ちゃんもだからね!今日も遅かったし!」

兄「俺は大丈夫だ、強いからな」

妹「もう!そーゆー事言って!」

兄「ははは」

数日後

先生「ここがこうで…そこがそうで…こうなる訳なんだけど…分かるやつ!!」

ワカリマセーン

先生「そうか!!田中!!廊下に立ってろ!!」

エッ!ナンデオレッ!?






兄「……………」

友「グフフフフフ…フヘへ」ニヤニヤ

兄「………おい」

友「グフッへ…へ?…どうした?」

兄「さっきから何ニヤニヤしてんだ、気待ち悪いからやめてくれ」

友「えっ?そうか?グヘヘへ」ニヤニヤ

兄「……………」イラッ

兄「当てやろうか…、彼女と何かあったな?」

友「おっ、分かっちゃう?やっぱり分かっちゃうかぁ~ヌフフ」

兄「……あの日からずっと通ってんのか」

友「おうとも!1日も欠かさずにな!…そのカイあって、スペシャルなイベントが俺を待っていたのさ!!」

兄「スペシャル…?」

友「ほら!彼女が言ってただろ!例の『隠し味』!、そいつを俺に教えてくれるんだと!!」

兄「ほう」

友「それってつまりアレだよな!彼女が「私の全てを教えてア、ゲ、ル」って言ってるって事と同じだよな!!つまり脈あり俺にゾッコンって訳さ!!」

兄「お前の脳みそは随分と都合がいいな」

友「まっ、そんなワケで今日も学校終わり次第直行するぜ…!明日になったら多分俺の隣にはあの人がいるこれ絶対…!」

兄「……心に防弾チョッキでも着せとくんだな」ボソッ

友「うぉぉおお!!!テンション上がってきたーー!!!!」

先生「うるせぇぞコラァ!佐藤!!廊下に立ってろ!!!」

オレ!?リフジンダー‼︎

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夜 某所




カツカツカツカツ…


女「ああ、バイト遅くなっちゃったなぁ…早く帰らないと」


カツカツカツカツ…


女「最近妙な事件が頻繁に起きてるし…昨日で…六人目だったかな…怖い」

カツカツカツカツ…
コツーン…


女「なんだっけ…確か…全身の血を抜かれてるんだっけ…もしかして…吸血鬼が?…なんてね…ありえないか」

カツカツカツカツ…
コツーンコツーン…

女「………?」クルッ




シーン…



女「…気のせいかな?」






「こんばんは」


女「ッ!!!!キャッ!!」ビクッ‼︎

兄「……………」

女「…だ、だれですか?」ガクガク…

兄「いやぁ、ただの通りすがりですよ…怖がらせてしまって申し訳ない」

女「…………」ガクガク…

兄「そんな事より…、こんな時間に女性が一人歩きしてるなんて…感心しませんね」

女「……え、えっと、その」

兄「最近この辺は物騒ですからね…危険ですよ」

女「ご、ご忠告…ありがとうございます」

兄「…………」

女「…あ、あの…わたしーーー

兄「少し聞きたい事があります」

女「えっ?」

兄「……ここまで、誰かにつけられてる気配を感じませんでしたか?」

女「…つ、つけられてる…気配?」

兄「ええ」

女「……あの…特には」

兄「…そうですか…わかりました…ありがとうございます…、気をつけてお帰り下さい」

女「は、はい…じゃあ…」タタタッ!




兄「…………」






ガサガサッ……!

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ーーーーーー

次の日


先生「…なんか、ダルいわ…きょう自習な」

ワッ!ショクムタイマンダー!!

先生「うるせぇ」








「……珍しいね…今日はアイツ休みか」

兄「……………」

「ねぇ…何か聞いてないの?」

兄「いや、なにも」

「そっか…心配だなぁ」

兄「……………」

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カランカラーン!


店主「いらっしゃいませ…あら、久々のお客さんね」

兄「どうも」

店主「どうぞ…座って、ご注文はーーー前と同じでいいかしら?」

兄「……ええ、お願いします」


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ーーーーー

店主「はい…どうぞ」コトッ…

兄「相変わらず…いい香りだ」

店主「ふふっ、褒めてもらえて嬉しいわ」

兄「………」ゴクゴク

店主「………」

兄「フゥ……」カチャ…



兄「………昨日、あいつが来ましたね?」

店主「え?…ああ、来てくれたわ…と言うかほぼ毎日来てくれてるけど」

兄「知ってます…あいつはあなたに惚れてますからね、もう気づいていたでしょう?」

店主「あら?そうだったの?ふふふ」

兄「……確かにあいつは毎日ここに来ていた…、あなたに会うために…だが、昨日はあいつにとってはかなり特別な日だった」

店主「…………」

兄「…『隠し味』…あいつに教える約束をしましたね?」

店主「…あらあら…あの子ったら、誰にも話さないでって言ったのに…、しょうがない子ね」

兄「…………」

兄「……あいつは今日、学校に来ませんでした、どうしたんでしょうね」

店主「あら?夏風邪でも罹ったのかしらね…心配だわ」

兄「ええ…心配です、本当に…普段…病気なんて滅多に患う奴じゃないですからね……、もしかしたら病気で休んだんじゃないのかもしれません」

店主「…サボりかしら」

兄「……どうでしょうね、ふふ」

兄「……『隠し味』」

店主「え?」

兄「当ててみせましょうか?」

店主「……!」ピクッ

兄「……ふふふ」

店主「面白わね…お手並み、拝見しましょうか…美食家さん?」

兄「………」ゴクッ…

店主「…………」

兄「……………これは…」












兄「……血だ」



店主「!!!!!」

兄「…どうですか?」




店主「………正解…よ」

兄「……………」


店主「だけど、なぜ…?なぜ、気づいたの?…ほんの僅か…人が知覚できない…本当に僅かしか加えていないのに…どうして?」

兄「…ああ、そうだな、普通の人間なら気づかないだろう…けど、俺は血の匂いには人一倍敏感でね」

店主「……………」

兄「実を言うと、初めてここに来た時から気づいていた」

店主「…なんですって?」

兄「だけどまぁ…俺が困る事は無かったんでな…関わらない様にしてたんだが」

店主「………………」

兄「少し、事情が変わってな」

店主「…あの子…ね?」

兄「…あいつはアホだが、一応友人なんだ…頬ってはおけない」

店主「あの子に目をつけたのは……失敗だったわね」

兄「そうだな…あんたは自分から地雷を踏み抜いたのさ」

店主「……………」

兄「聞きたい事がある」

店主「何…かしら」

兄「あんたには他人の血が必要には見えないんだが…どうしてこんな事を?」

店主「……料理中…包丁で指を切ったの…血が出たわ…赤い血が」

兄「……」

店主「それが…たまたま飲んでたコーヒーの中に入ってね…捨てようと思ったんだけど…飲んでみたの…試しに…そうしたら…少し鉄の味がしたけど、何故だか…とても満たされた気持ちになって…あぁ、私は…生きているんだって思えた」

兄「………」

店主「初めは自分の血を使ってた、だけど物足りなくなって…他人の血を使ったの
…そして、なんだか…独り占めするのはずるい気がして…だからお客さんにも」

兄「…………」

店主「あはは…私…よく考えたら…狂ってるわね」

兄「…あんたは血に取り憑かれたのさ」

店主「取り……憑かれた?」

兄「そうだ…、あんたは人の身でありながら…人の道を外れてしまった」

店主「…………」

兄「もう手遅れだ、今のあんたは…人間の肉の味を覚えた熊と一緒なんだよ」

兄「今さら自覚した所で、もうやめられない」

店主「…ふふふ、そうね…私は…私は…もう」

兄「……大人しく…ここで[ピーーー]」



グワッ



店主「…ああ、まさか…あなた…本物の…ふふふ…すごい…」






最後に…あの子に伝えて

ごめんなさいって




カブゥッ!!!!!


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ーーーーーーーー
ーーーーー

メール欄にsagaで変換されなくなる


兄「おい…起きろ…コラ!」バシバシ!

友「いだっ!!…なんだなんだ!!?何事だ!!」

兄「いつまで寝てんだ…帰るぞ」

友「あれっ!俺寝てた…?ってか何でお前い居んの?」

兄「店主さんに頼まれてな…迎えに来たんだよ」

友「あっ…そっすか…彼女は?」

兄「……さぁな…どこかに行ったよ、ほら帰るぞ」

友「…あ、あぁ」

兄「そうだ、…彼女から伝言を頼まれた…『ごめんなさい』…だとよ」

友「………!!」

兄「………意味はわからんが、確かに伝えたからな」カツカツ…










友「……フラれちったなぁ」

>>48
ごめんよ、うっかり付け忘れちゃったんだ…

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ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー

ゴンゴン!

兄「……おい、来たぞ」

「来たか貧乏人、ククク…安物でいいんだろ?オイ」

兄「いや、今日は上モノだ」

「!…なんだって…?どんな風の吹き回しだ…貧乏人の分際で」

兄「確かに俺は貧乏人だが…今回はびた一たりとも金はださないぜ」

「あぁ?…てめぇ何言ってんだ…?金も払わずに上モノを寄越せだと?安物の飲み過ぎで気でも狂ったかぁ?なぁ」

兄「…今、俺の手元に金は無いが…、ある物がある…なんだか分かるか?」

「……この匂い…まさか…!貴様!!そう言う魂胆か!!!」

兄「察しが早くて助かるね、つまりそう言う事さ」

「てめぇ!…この鬼が!!」

兄「ああ、鬼だが?」

「……何本だ…何本欲しい」

兄「…三十…と言いたい所だが…今日の所は三本で勘弁してやる」

「持ってけくそ野郎!!!」

ガラガラッ!!

ドンドンッ…!

ガラガラビシャっ!!

兄「まいど…今後ともご贔屓に」

「…ちくしょう!さっさと帰れ!バカ!」



兄「……はっはっは、餌付けしたかいがあったな…」

兄「はっはっはっ…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー


兄「今帰ったぞ!」

妹「おかえり!なんだか機嫌いいね!」

兄「そうだろうそうだろう!!今日はご馳走だぞ!メシの仕度だ!急げ!」

妹「ラジャー!」タタタッ

兄「はっはっはっ!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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ーーーーーーーー
ーーーー

兄「飲め!!ほら、最高級だぞ!最高級!!!」

妹「ひゃぁ!!!飲むぞ飲むぞ!!!」

ドプドプドプドプ…

兄「ほら乾杯だ!!グラス持てグラス!!」

妹「やっほーい!!!カンパーイ!!」

カチャン!


兄「ムグムグムグッ!!!!!」

妹「うめぇ!!!ムグムグムグッ!!!うめぇ!!うぉぉぉぉぉ!!濃厚なとろみ!!コクにお口の中が支配されてるッ!!!幸せッ!!!かと言ってしつこ過ぎない!!!飲みこんだ後ッ!爽やかに喉から鼻に好き抜ける清涼感!!!まさにッ!職人の味ッ!!!感動ッ!!!」

兄「妹ッ!!!オイ!!!!」ムグムグ

妹「ナンジャナンジャ!!お兄様!!!」
ムグムグムグッ!!

兄「こんな時に言うのもなんだけどなっ!!!!ヴァイスシュバルツってな!!!英語じゃねぇし!!!ドイツ語だし!!!!どうした完璧主義者!!!!はっはははははは!!!!」ムグムグムグッ!!

妹「あはははは!!!!何で今言ったの!!!!!なんで今言ったの!!!」
ムグムグムグッ





妹「いやマジでなんで今言ったの?」

兄「ごめんなさい」




おわり

いや、なんかもうごめんなさい
見てくれた人ありがとうございます
親指が限界を迎えてしまいました

腹筋するから許して

兄「とまぁ…なんだ。久し振りに興奮してはしゃぎ過ぎたな…」

妹「おえっ…もう飲めないよ…」

兄「…………」

妹「ん?何?…どうしたの?」

兄「……なぁ、もしもだ…お前…自分の知っている自分が、本当の自分では無かったら…どう思う」

妹「…?…どういう意味?」

兄「…いや、わからないならいいんだ…それで」

妹「…よくわからないけど…でも、たとえ私が何者でも…お兄ちゃんは、私のお兄ちゃんで居てくれるんでしょ?」

兄「!…それはもちろんだ」

妹「だったら、それでいいよ…私がどうとか…、お兄ちゃんがどうとか…そんな事はどうでもいい…、お兄ちゃんは…私のお兄ちゃんでいてさえくれれば」

兄「…………」

妹「…それで、私はシアワセだからね」

兄「……そうか…そうなのか……なぁ」

妹「ん~?」








兄「俺たちは、兄妹だ…ずっと、永遠に」

妹「……当たり前でしょ」




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