兄者「アルバムを見つけた」 妹者「ほう」 (60)

兄者「かれこれ10年前のものだな」

妹者「なるほど」

兄者「妹者よ」

妹者「なんだ」

兄者「毅然としているようで、ものすごいウキウキな様子で我を見るのはやめてくれないか」

妹者「だ、誰がウキウキだ!そんなもの毛頭興味ない!!」

兄者「そうか。じゃあこれは閉まっておこう」

妹者「あ、あぅぅ…」

姉者「話は聞かせてもらった」ガラッ

兄者・妹者「げっ」

姉者「古き記憶とは良き記憶、一緒に閲覧しようではないか」

兄者「わ、わかっている…」

妹者(ふん、なによ、鼻の下伸ばしちゃって」

兄者「じゃあ…めくるぞ」ペラ

妹者・姉者「あっ…」

兄者「…そういえば、いたなぁ、こんなの」

姉者「そうか、すっかり忘れてたな」

妹者「ちょっと待て。私はこんなやつ知らないぞ」

兄者「そうだな、妹者はまだ幼かったからだな。では今こそ話そう、『弟者』についてな」

姉者「あれは、10年前のことであった」

妹者(なんでデスクリムゾン)

弟者は、我々の中では末っ子であるにも関わらず、生まれたときから危険な存在だった。
なにせ、出産した瞬間助産婦を眼光で殺したのだからな。
姉者ですら、握った母者の指を折る程度だったのにだ。
これはもう、生まれて数時間で弟者は危ないものだと感じ、人里離れた施設へ預けたのだ。

妹者「眼光で人を殺すだと…」

姉者「にわかには信じられない話だがな」

兄者「しかし…弟者は今頃どうしているのやら」

姉者「一つ言えることは…あれは『覚ましてはいけない獣』だ」

妹者(しょっぱならからこのテンションかよ)

弟者(俺がこの施設に来てから今日で10年目。未だ家族を見たことすらない)

幼女「弟者くーん、今日はみんなでお買い物だってー一緒にいこっ」

弟者(俺には三人の姉と兄がいるらしい。それだけは教えてもらった。そして、俺だけがこうして家族と離れ離れにされていることも)

幼女「えへへー、弟者君、何買うー?あたしほうれんそう太郎がいいなー」

弟者(不可解すぎる。なぜ俺はまだこんなに幼いのに、家族と一緒にいられないんだ!?誰も俺に教えてくれない!)

幼女「どしたの弟者君、顔色悪いよー?」

弟者「なんでもない。今日は風が寒いだけだ」

幼女「夏なのにー?」

保母「はーい、今日は電車で行きますよー、ここの線路をまっすぐ行くと、東京ってところに行けるけど、今日はひと駅だけ移動ですよー」

弟者(ここをまっすぐ行けば、あいつらがいる東京に行けるのか…)

保母「あと5分で来ますからねー。大人しく待っていてねー」

幼女「弟者君は何買う?あたしとお揃いにする?ねね」

弟者(こいつらは普段来ない駅に来てはしゃいでいる。あとは保母の視線を誤魔化せれば…む?)

弟者「保母さん、あの植木鉢は?」

保母「ああ、あれ?以前寄与してもらったものよ~」

弟者(使えるな、これは)

弟者(少しだけ…速くっ!)スッ

ガシャン!!

保母「…!!植木鉢が、急に割れて…!?」

弟者(よし、これで行ける!…長い間世話になったが、これでお別れだ、幼女達に保母よ)ダダダダダ



保母「あらぁ、弟者君どこ行ったのかしら」

幼女「弟者君と、お菓子買いたかったのになぁ…」グスン

保母「それにこの穴、何かしら…?誰かがいたずらで掘ったのかしら」

弟者(ここから東京まではどのくらいだ…)

弟者(わからんな、ただこの線路が東京まで通じているとしかわからない)

弟者(わからないなら、ひたすら走り続けるだけだ!)

プアアアアアアン

弟者「何っ、電車だと!?」

弟者「くっ…あの程度の電車、堰き止めるのは容易だが…!」

弟者「ここで厄介になったりしたら、東京へは行きづらくなる…どうする!」

車掌「んー?何か見えたような…?」

弟者(だったら…飛び越えるだけだ!!)ビュン



プアアアアアアアアアアアアアン




弟者「ふっ、造作もない。日本の電車とやらも、大したことはないな」スタッ

弟者「さて、今後同じようなことがあれば、また飛び越えれば大丈夫だな」

弟者「待ってろよ、あいつらめ」

弟者「俺を捨てたこと、後悔させてやるからな」

兄者「なんだか、物々しいことになってしまってすまないな」

妹者「ふん、まぁ弟がいるということがわかったから、よい」

兄者「なんだ、ツンデレか」

妹者「そういう、なんでもかんでもツンデレにしようとする風潮、糞食らえだな」

兄者「手厳しい妹だ」

妹者「コンビニに行ってくる。すぐ戻る」

兄者「うむ、行ってくるがいい」

妹者「まったく、なんで直近のコンビニがこんな遠いのやら…」ミーンミンミン

妹者「しかも暑い…木陰にいたいが、外にいれば更に暑い。さっさと帰ってシャワーでも浴びよう」

??「…ちょっとそこの女」

妹者「ん?なんだ?」

??「○○家はどこだ?手短に教えろ」

妹者「○○家は我が家だが…それがどうし…!!」

ブゥン

??「貴様が…そうか、貴様が!!」

妹者「な、何をする!?」

??「悪いが、貴様自体に恨みはないが、死んでもらおう」

妹者「通り魔か…?悪いが言われてはい死にます、というバカな女ではな」

ドンッ

妹者「くっ…!!? 触れていないのに…!」

??「ふん、この程度か。俺の姉と聞いて期待はしたがな」

妹者「お前…一体…何者なんだ…」

??「答える必要はない」



妹者「」

??「雑魚め。待っていろ…もう一人の姉、そして兄!」

兄者「妹者め。どこで油を売っている」

姉者「妹者はまだ戻らんのか」

兄者「そのようだ。メールもLINEも未読だ」

姉者「だったら、妹者抜きで気持ちいいことしないか?」ナデナデ

兄者「ナチュラルに股間を触るのはやめろ」

姉者「ふん、なんだつまらん。仕方ない、コンビニに行ったのだったな?私が迎えにいこう」

兄者「頼んだ」

姉者「……お前…まさか、生きていたか…」フラ

??「貴様らに恩返しするまでは死なないと決めていたのでね」

姉者「流石だな、姉弟の中でも最強の私を、腕一本でここまで追い詰めるとはな」

??「お前が最強であるなら、兄はそれ以下ということか。つまらんな」

姉者「さぁ、どうだろうな?兄者は強いぞ、私と妹者と違い、背負っているからな…グフッ!」

??「意味のわからんことを。戦ってみればわかることだ…」スタスタ



兄者「姉者、遅いな…」

ガララ

兄者「姉者、おそかっ…お前」

弟者「久しぶりだな兄者」

兄者「…そうだな。施設にいたのではないか?」

弟者「さっきまでな。言いたいことはたくさんあるが、とりあえず貴様に用はない。母者はいるか?」

兄者「……待て、姉者と妹者はどうした。会ってないのか?」

弟者「殺したよ」

兄者「……なに」

弟者「残念だったよ、妹者も姉者も雑魚すぎる。俺がお前らの弟だと思うと、情けなくてな」

兄者「そうか」

弟者「その上、貴様は姉者より弱いと聞いている。戦う気すら起きないが、さっさとあの雑魚に会わせてやろう」

兄者「そうか」

ツー

弟者「……ん?鼻血?」

兄者「遅ぇんだよ」

弟者「えっ…!」

弟者「ちょ、ちょっと待って!お前なんでそんな強い設定なの!聞いてねーし!」

兄者「だって言ってねーし。で、首折られて死ぬのと頭蓋骨割られて死ぬのどっちが好みだ?」

弟者「殺る気満々じゃねーか!待って待って」

兄者「お前姉者と妹者殺した言うてるやんけ」

弟者「殺してねーよ!戦意不能にしただけだよ!痛い痛い痛いいいいいい!」

兄者「……紛らわしいやつだな」


妹者「うー…油断した」

姉者「弟者のやつめ…手加減くらいしてほしいものだな」

母者「で」

母者「お前ら何してんの」

兄者「ひゃい(なんで俺まで殴られてんだ)」

妹者「わりゃわはひはいはれす(やられ役なのになんでお仕置きされてるんだ)」

姉者「ひゅいまへん(完全にとばっちりだ)」

父者「母者~。みんな反省してるんだし、許してあげようよ~」

母者「喋るなハゲ」

父者「あうっ」

弟者「……」

母者「あんたはまるでわかってない」

弟者「…何がさ」

母者「なんであんたを、施設に預けたかってね」

弟者「物心付く前にそうされれば、誰だって思うだろ!」

母者「あんたを野放しにしたら、沢山の人が死んだんだよ。だから、二十四時間365日監視させる環境が必要だった」

弟者「……」

母者「あんたがまともになって帰ってきたなら、まだいいよ」

母者「だけど、あたしらに復讐するために帰ってきたっていうなら、話にならん」

母者「今すぐ施設に帰」

兄者「待ってくれ」

母者「あんたに発言権はないんだけど」

兄者「我にいい考えがある」

妹者(悪い考えの間違いだろ)

姉者「して、それは?」

兄者「弟者が彼女を作ったら、弟者の好きにさせよう」

弟者「意味がわからん、死ね」

兄者「いや待て聞いてお願いだから殺さないで」

兄者「弟者は幼い頃から、家族愛を知らずに育った」

弟者「恥ずかしい言い方はやめろ」

妹者「やめろ」

兄者「最期まで聞いてね!……で、弟者はつまり愛とか友情を知らずに育った。だから、一人でもいいから、そういう人を見つけて袂を分かつべきだと思ったのだ」

姉者「ふーん」

母者「へー」

父者「素晴らしい!素晴らしいよ兄者!おとーさん賛成!!」

兄者(すげー悲しい)

兄者「で、弟者よ、そういう仲に発展しそうな人はいないのか?」

弟者「そんなやつ…」


幼女「弟者君、一緒に買い物行こう~」


弟者「い、いねぇ…よ」

兄者(いるわこれ)

妹者(いるってばればれだな)

姉者(可愛いな弟者)

母者(色気づきやがって、ガキの癖に)

母者「何もせんよりはマシだな。よし」ピッピッ

弟者「何をしてるおい」

母者「貴様に拒否権はない。あぁ…私だ。至急だ、すぐにだ。今からだ。…うむ」

姉者「どうしたのだ?」

母者「幼女ちゃんを、うちの隣に引っ越しさせる手配をした。これで問題はないな」

弟者「問題あるし突っ込みどころが多すぎるわい!!」

妹者(否定できんな)

幼女「弟者君、ここに住んでたんだ~」

弟者「あ、あぁ」

幼女「よろしくね~」

弟者「う、うむ」

兄者「かわいい」

妹者「かわええのう」

姉者「パシャパシャ」

弟者「ぶっ○すぞ貴様ら!!」

母者(賑やかになってきたな)

母者「ああそうそう、弟者と幼女ちゃんの編入手続きも終わってるからな。明日からさっさと通学しろ」

弟者「もうその手際の良さを突っ込むのは止めた」

母者「もう一つ、大事なことを忘れていた」

弟者「なんだ」

母者「一日一つ、ミッションを授ける。必ず達成させるのだ」

弟者「達成できなかったら、どうすんだ」

母者「幼女ちゃんに、良くないことが起きる」

弟者「なんでも来い!受けて立つぜ!!」

母者(男って単純だな)

ミッション1 幼女ちゃんと手を繋げ

弟者(いきなりレベル高いんだけど…)

兄者「ふぅむ、あの年頃なら、自然と出来そうなんだがな」

妹者「無理に決まってんだろ。男の浅はかな思考と女の敏感な感性を一緒にするな」

姉者「今の発言で、妹者の好感度はだだ下がりしたぞ」

兄者「理不尽すぎねえかおい」

幼女「うふふー、弟者君とがっこ、がっこ~」

弟者「……ぐぐっ」

兄者(果たして…今日中に達成できるんかあれで)

幼女「じゃ、弟者くーん、放課後にねー」

弟者「あ、あぁ」


母者「しまったな…同じクラス分けにしてなかった」

兄者「そういうのって、教師がするもんじゃないのか」

母者「それしきのこと、妾の力を持ってすれば造作もないこと。今回は単に忘れてただけだ、ほんとだぞ」

兄者「あ、そう…」

母者「ま、できなきゃできないで、幼女ちゃんに良くないことが起きるだけだがな」

兄者(悪女め)

妹者「結局放課後になってしまったぞ」

姉者「うぅむ…これはしょっぱなから失敗か?」


弟者「そうか…クラス委員になったのか」

幼女「うんっ、これ上の階まで運ぶんだー。よいしょっと」

弟者「お、俺も手伝おうか」

幼女「だいじょーぶだよ…きゃあ!」ツル

弟者「あ、あぶない!」ガシャーン

幼女「いたた…お、弟者君、ごめんね上に乗っかっちゃって」

弟者「ふん…これしきのこと…あっ」ニギ

幼女「うふふ、なんだかあたしが弟者君押し倒してるみたいだね」

弟者「いや…それはこの…」ニギニギ




母者「ミッション達成…か。まぁ、一応あれも手繋ぎってことで」

兄者(なんで残念そうなんだよ)

妹者(私が知るか)

姉者(青春だな…)

ミッション2 昼飯を一緒に食べろ

兄者「これは簡単じゃないか?」

妹者「バカか貴様は」

兄者「くっ…どういうことだ」

姉者「幼女ちゃんは忙しいクラス委員になった。その多忙さは、昼飯を基本的に一人で食べなければいけないほどだ」

兄者「ふむ」

妹者「ともすれば、一緒に昼飯を食うことは困難を極めよう」

兄者(弁当だからなぁ、この学校)

妹者「と、ところで兄者…今日は妾が昼飯を作ったんだが…」

兄者「我を殺したのか貴様」

弟者「よ、幼女。今日は昼飯でも…」

幼女「ごめんね弟者君、今日は委員の仕事で忙しいから…」

弟者「ん、…そうか…」

幼女(ほんとは一緒に食べたかったんだけどな…でも、弟者君に迷惑かけちゃいけないよね)

幼女「あ、あれ…?おべんとう…おべんとうは…」ゴソゴソ

幼女「あぅぅ…おべんとう忘れてきちゃったかもぉ…」


姉者「これは…ミッション達成は絶望的か?」

母者(どうする、弟者よ、あがいてみせろ)

弟者「今日は半ドンであるが…幼女は委員の仕事か…ああまで言ったんだ、俺は先に帰るべきだな」

弟者「……」

弟者「幼女……」

弟者「あ、そうだ、ケシカス捨てねえと」パカッ

弟者「ゴミ箱に何か入ってるな」ゴソゴソ

弟者「これは…幼女の弁当箱か…?」

弟者「中身までぶちまけられている…くっ、陰湿なことしやがる」

弟者「待てよ…ということは、幼女は昼飯なしか…」


弟者「幼女!」

幼女「お、弟者君…!?」

弟者(…あのことを言うべきか…言わないべきか…)

幼女「お、弟者くん……」

弟者(いや、やめておこう。今は一緒に飯を食うことに専念だ)

弟者「昼飯、食いきれないから一緒にどうだ?」

幼女「う、うん!」



母者「ふん、やるではないか」

ミッション3 デートしろ

弟者「無理だ」

母者「戦う前から諦めるのか」

弟者「俺にはできない」

母者「そうか、貴様なら可能だと思ってたんだがな」

弟者「もう少し簡単なものをだな」

母者「あぁ、私だ。幼女に至急…」

弟者「待て!やる!やるから!!!!やるから電話しまえ!!」

母者「そうこなくてはな」

母者「ちょうど今日は休みの前日だ。お膳立てとしては十分だろう?」

弟者「…ふん、とりあえず幼女と話くらいはしてくるか」

弟者「幼女…!あ…友達と一緒か、ならあとにしよう」

幼女(弟者君…!あ、あれ…こっちに来たと思ったのに…)

幼友「聞いてんのちょっとー?金だよ金!いつ支払ってくれんのぉ?」

幼女「お、お金なんて…」

幼友「あとでまた来いよな!絶対だぞ!」

幼女「……うん」

弟者(なかなか幼女が捕まらんな、どうしたものか)

弟者「あれは…幼女と幼友?様子でも見るか」


幼女「だ、だからぁ…お金とか無理だよぉ」

幼友「んだよ!しけてんなぁ!宿題見せてやったのにそういう態度取るわけ?」

幼女(見せてなんて頼んでないもん…無理やり見せたんじゃない)

幼友「だったらいいよ、明日俺とデートしろよ」

幼女「ええ!?」

弟者「何ィ…!?」

幼友「金払う代わりに一日俺と付き合えばいいよ、安いもんじゃん」

幼女「……」

弟者「幼女…」

幼女「わ、わかったよ…それで幼友の気が晴れるなら…」

弟者(く…やっぱり嫌だ!幼女の初デートの相手があんなやつなんて、俺は認めんぞおおお!)

弟者「悪いな、幼友」

幼友「な、なんだよおまえ!」

弟者「幼女とは俺がデートするんだ。先約があるんだよ」

幼女「え…先約?」

弟者(話合わせてくれ、それとも俺とじゃ…嫌か?)

幼女(ううん!そんなことないよ!あたしも弟者君とだったら…)

弟者(え、それって)

幼女(あ、えっと…その…えっと)


弟者「あれ、幼友どこいったんだ」

幼女「ほんとだね、どしたんだろ」


幼友「ぢくじょおおおおなんで俺がふられんだああああ」

兄者「騒がしいガキだな…」

弟者「とまぁ、デート自体はしてないが確約はした」

母者「半分は達成ということでいいだろう。よし、最後のミッションだ」

弟者「なんだ?」

母者「これだ」


ラストミッション 幼女に自分の気持ちを伝えろ


弟者「……愛の告白でもしろと?」

母者「なんだっていい。ただ、貴様の素直な気持ちを伝えればいいのだ」

弟者(最後というから何かと思ったが…ふん、大したことはなさそうだな)

弟者(と思ってたんだが)

幼女「弟者くーん、次はあれのろー」

弟者「わかった!わかったから手を引っ張るな!」

幼女「えへへー。ほら、弟者くんは後ろ後ろ」

弟者(メリーゴーランドで同じ乗り物に…ううむ、恥ずかしいな)


妹者「兄者よ、妾は納得がいかん」

兄者「何がだ」

妹者「なんで妾の初デートが弟者のつけもの扱いなのだ!!!!」

兄者「デートじゃねえし」

妹者「ふん!!」ズブ

兄者「目つぶしはやめルェエ!」

幼女「ほらー、コーヒーカップぐるぐるー」

弟者(気持ち悪い…なんで幼女はこれだけ回して平気なんだ)

幼女「あははー。たのしいー。ねね、ご飯食べよ」

弟者「あ、あぁ」

幼女「ごっはん~ごっはん~。はい、アーン」

弟者「そ、それは流石に恥ずかしいぞ!!」

幼女「う、うん、あたしもやって気づいたよ…」


姉者「なんだろうな…この敗北感は」

兄者「我もそれは感じてたところだ」

弟者(幼女がアグレッシブすぎて、気持ちを伝える暇がねえ…)

幼女「疲れちゃった?じゃあ、観覧車のろ!」

弟者「お、おう(観覧車なら、定番ではあるが行けそうだな)」

幼女「うふふー、高くなってきたー」

弟者(結構上がるもんだな…)

幼女「すごーい、のっぽさんになったみたい」

ガコンッ

弟者「な、なんだ?止まったぞ」

幼女「な、なんだろ」



兄者「お、おい、弟者たちが乗ってるところ」

妹者「火花が散ってるぞ!外れてしまうんじゃないか!?」

姉者「いかんな、あのままでは落ちるかもしれん…」

母者「手出しは無用だ」

兄者「は、母者!!」

母者「我々が手を差し伸べて助けてやることは簡単だ」

母者「だがな、それでは弟者の気持ちではない、我々のお節介である」

兄者「人命がかかっているのだぞ!」

母者「本当に危ないのなら、とっくに飛び出しておる」

姉者「じゃあ、そうしないのは…」

母者「弟者なら、打開できると信じておるからだ」

妹者「……弟者、幼女ちゃん」

ガクン

幼女「きゃあ!」

弟者「幼女!くそ…傾いている…」

弟者(どうする…このままで俺達のところが落ちるぞ。いつ復旧するかもわからない)

幼女「お、弟者くん……」

弟者(幼女だけは守り通さねえと…)バタン

幼女「弟者君!?」

弟者「ぐおおおおお!」グイ


兄者「持ち上げて落下するのは止めたか」

姉者「ようやるな」

妹者(ほんとなら手助けしたいが…母者が後ろにスタンバってるからなあ…)

幼女「お、弟者くん…」

弟者「俺が支えていれば…それまでなら落ちはしないから…」

幼女「で、でも…弟者くんが、弟者くんが大変だよお」

弟者「いいんだ、俺は大丈夫だから」

幼女「だ、大丈夫じゃないよー」

弟者「大丈夫!幼女だから…俺はできるんだ」

幼女「え…?」

弟者「俺…誰からも愛されてないと思ってた。だから、あそこを抜けだして、俺を捨てた家族に復讐しようとした」

弟者「だって俺は…俺だけだったら、無意識に誰かを殺してしまうかもしれなかったから」

弟者「だけど、わかったんだ。俺の力は誰かを傷つけるものじゃない」

弟者「今この力を使う理由…それは…」

幼女「お、弟者くん…」

弟者「幼女!お前を!守るためだああああああああ!!!!」ピカー


兄者「え、光った?」

姉者「なんでもありだな、我が弟は」

妹者「慣れよう。さっさと慣れよう…」

弟者「うおおおおおおお!!」ビューン

幼女「と、飛んだ…!」

弟者「うおあああああ」ヒューン



兄者「どこ行ってんだあいつ」

姉者「愛の逃避行ってやつか」

妹者「女なら憧れるシチュエーションだな」

兄者「いやちげーだろ、正気になれよお前ら」

弟者「はぁ…はぁ…大丈夫か…幼女」

幼女「お、弟者くん…」

弟者「ごめん…ちょい疲れちまった。少し寝させてくれ」ガクン

幼女「お、弟者くん……ほ、ほんとに寝てるだけみたい…」

幼女「弟者くん…ありがとう、ありがとね…」

幼女「好きだよ…」チュ

母者「で、また施設に戻ると」

弟者「ああ。俺はまだまだガキだ。ガキだからこそ、施設に入った理由とか、色々考え直したい」

母者「まぁ、お前がそう望むなら止めはせん。幼女ちゃんもいるしな」

弟者「よ、幼女は関係ないだろ…!」

母者「ほ~~~ぅ?本当に関係ないのか?ほんっとうううううにぃぃぃぃ??」

弟者(うぜえ……本気でうぜえ)

弟者「そういうわけで、またな」

母者「あぁ、そうだ。最後というか、帰ってくるまでに達成させるミッションを授けよう」

弟者「…なんだよそれ」


エクストラミッション 幼女ちゃんのハートを射止めろ!!


弟者「言い回しが古くせえんだよ!!!」

母者「ははは、頑張れよ、ま、お前らなら時間かからなさそうだがな」

弟者「言ってろ、じゃあな!」バタン ブロロロロロロ



母者「…まったく、子供というのは、知らぬ間に成長するもんだな」

父者「そうだね、親としてこれほど嬉しいことはない」

母者「さっさと帰るぞ。まだ五月蝿い三馬鹿が残ってるのだからな」

父者「りょうかい!」

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