P「アイドルマシュ……マシュター」 (50)

春香「言えてないです」

P「……」

真美「せっかく言い直したのにねー」

亜美「滑舌のトレーニングコーチがそんなんでどうすんのさー」

P「むぐぐ」

やよい「あ、あの。落ち着いてもう一度言えばいいかなーって」

貴音「そうですね。深呼吸してみてはいかがでしょう」

P「スー……ハー……アイドルマシュター」

美希「全然ダメなの」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406977448

真「でもさっきまでは問題なかったよね?」

雪歩「なんで突然言えなくなっちゃったんだろう」

あずさ「トレーニングで舌が疲れちゃったんじゃないかしら」

千早「確かに、今日のトレーニングは結構ハードでしたからね」

伊織「だからって威厳は保ってほしいわ。仮にも私たちのプロデューシャーなんだから」

響「うん?」

伊織「……」

P「なぁ、伊織」

伊織「な、何よ」

P「もっかい俺の事呼んでみて」

伊織「何でよ」

P「それを俺が言うのはなぁ」

伊織「……プリョデューシャー」

小鳥「……」

伊織「プリョデュ……プロリュ……ピュロ……」

律子「伊織……」

伊織「……言いたい事があるなら言いなさいよ」

P「なんというか……疲れたな」

伊織「……そうね」

P「……」ズーン

伊織「……」ズーン

美希「二人して落ち込んじゃったの」

やよい「あ、あの! そんな伊織ちゃんもかわいいかなーって!」

千早「ふふ。さすがね、たかちゅきさん。しっかり水瀬さんをフォローして」

やよい「う?」

春香「千早ちゃん……?」

千早「何か?」

亜美「今やよいっちの事……」

千早「たかちゅきさんがどうかしたの?」

真美「Oh」

千早「何か驚くような事があったかしら」

亜美「え、えーっとぉ」

千早「私には良く分からなかったのだけれど」

真美(千早おねーちゃん、全力でしらばっくれるつもりだ!)

律子(有無を言わせず無かった事にするつもりね)

真「うーん、みんな大分疲れてるみたいだなぁ」

雪歩「そうだね」

真「ゆきぽは大丈夫?」

雪歩「うん、だいじょう……真ちゃん?」

真「ん?」

雪歩「今のところ、もう一回」

真「え? えーと、ゆきぽは大丈夫?」

雪歩「……」

春香(真、もしかして気付いてない!?)

美希(あの様子……間違いないの)

真「どうかしたの、みんな?」

雪歩「……う、ううん。何でもないよ」

あずさ(雪歩ちゃんが折れたわ~)

律子(あれだけ悪意がないと……そりゃ攻められないわね)

貴音「あにゃた様、少しお話が……」

P「にゃ?」

響「貴音もか!?」

貴音「むっ……貴方しゃま……あたたさま……あにゃ……」

小鳥(あぁ、段々貴音ちゃんの顔が赤く……これは録画しておかないと!)

貴音「…………」

P「あー、何か話があるんだよな」

貴音「……いえ、もういいのです」トボトボ

P「あっ……行ってしまった」

貴音「……」ズーン

響(あぁ、あの貴音が思いっきり落ち込んでるぞ)

伊織「……」ズーン

亜美「あちゃー。いおりんまだ落ち込んでるね」

真美「んっふっふー。さすがにさっきのは堪えたみたいだねぇ」

伊織「……アンタたちだけには言われたくないんだけど」

亜美「ん?」

真美「それ、どーいう意味?」

伊織「『仕方ない』」

亜美「!?」

真美「……」

伊織「言ってみなさいよ」

亜美「……ちかたない」

伊織「ほらね。素直にこっち来なさい」

亜美「うぐぐぐ……」

伊織「真美は?」

真美「……」

亜美「真美?」

真美「しかたない」

亜美「!?」

伊織「!?」

真美「悪いけど、真美はやよいっちの側だから」

やよい「ふぇ?」

亜美「そ、そんな……真美?」

千早「ふふ。真美も私やたかちゅきさんと同じ側だったのね」

春香「千早ちゃん、そろそろ現実見ようかー」

雪歩「な、なんだか被害が広がってきておかしな感じに……」

小鳥「これはもしや、765プロ分裂の危機!?」

響「大げさだぞ。っていうか、そろそろ打ち止めじゃないか?」

美希「でも響も怪しいと思うな」

あずさ「ありゃありゃ、美希ちゃん、そんなこと言っちゃダメよ」

美希「!?」

あずさ「あ、ありゃ~?」

小鳥「まさかあずささんまで……私も気をつけないといけないれすね」

律子「れす?」

あずさ「……小鳥さん?」

小鳥「その目はなんでしょう。私は別に問題ないれすよ」

響「いや、普通にアウトだと思うぞ」

律子「……念のため確認しますが、小鳥さんは飲酒とかしてないですよね?」

小鳥「私だけ疑いがあらぬ方向に!? 神に誓って飲んでないれす!」

春香「いやぁ、その噛み方は疑われても仕方ないと思いますよ」

小鳥「事務員なのにトレーニング参加させられてこの扱い……ひどい」ズーン

伊織「……」ズーン

あずさ「……」ズーン

亜美「……」ズーン

貴音「……」ズーン

千早「……」

真「……?」

春香「うわわ、いつの間にか暗い雰囲気が渦巻いてる……!」

美希「あふぅ。みんなの落ち込みようが酷いの」

P「ば、馬鹿な……たった数分で我が765プロの精鋭が半壊しただと……!?」

雪歩「へ?」

P「俺たちは滑舌トレーニングを侮っていた……何ていう強力な敵だったんだ……」

真美「にーちゃんは滑舌トレーニングがバケモノにでも見えてるのかな」

P「まずトレーニングで心身ともに消耗させ、仲間割れを誘い……」

響「トレーニングやろうって言い出したのプロデューサーなんだけど」

P「隙を見せた者から一人ずつ確実に仕留めていく……とんでもない策士だ」

春香「プロデューサーさん、疲れ過ぎて幻覚でも見えてるんじゃ……」

P「俺がもっと早くヤツの策略に気付いていればこんな事には……」

美希「あふぅ。流石についていけないの」

P「くそぉ……くそぉ、滑舌めぇ……!!」

律子「みんな大げさ過ぎなのよ。プロデューサーまで、もう!」

やよい「……」

響「貴音ー、そろそろ戻ってこーい」

雪歩「真ちゃん……」

やよい「……わ、私決めました!」スクッ

伊織「やよい?」

やよい「私が伊織ちゃんやプロデューサーたちのカタキを取ります!」

P「な!?」

伊織「なんですって!?」

響「や、やよい……いきなり何を言ってるんだ!?」

やよい「だって、落ち込んでる伊織ちゃんたちをこれ以上見てられないから……」

千早「たかちゅきさん……」

やよい「それに、みんなを苦しめている滑舌が許せないから!」

P「やよい……」

やよい「私にできる事はこれしかないから……ッ!!」

真美「や、やよいっち……?」

やよい「だから伊織ちゃん、見てて! 私、滑舌なんかに負けないから!」

伊織「やよい……っ」

やよい「行きます! 生麦生米なみゃたみゃご! なみゃみゅ……」

P「……」

やよい「う……」

伊織「や、やよい……」

やよい「うぅ……」ポロポロ

P「やよい!?」

やよい「伊織ちゃん、プロデューサー、ごめんなさい……私じゃ勝てなかっ――」ガクッ

伊織「やよいいいぃぃぃぃっ!!!」ダキッ

千早「た、たかちゅきさあぁぁぁぁん!!」ガシッ

真美「そんな……やよいっちまで……」

律子「あーもう。何が何だか」

響「……律子はあれを見ても何も思わないのか?」

律子「え? 響?」

真美「ひ、ひびきん?」

春香「響の様子がおかしい……」

響「自分、恥ずかしいぞ。やよいが勇気を振り絞って戦ったのに、見てただけなんて」

律子「あの、ちょっ……」

響「自分だって765プロの一員だからな! 貴音やみんなの為に戦うぞ!」

貴音「響……」

雪歩「わ、私もやりますぅ!」

真「ゆきぽ!?」

雪歩「だから見てて真ちゃん! 私、真ちゃんの分まで頑張るから!」

真「ゆきぽ……」

響「よぉし、行くぞ雪歩! 滑舌なんかに負けるもんか!」

雪歩「はい! せーのっ!」

響「隣の客はよくかきゅきゅ――!?」ガリッ
雪歩「隣の客はよくきゃきゃきゅう……ぅぅ……」

貴音「ひ、響っ!!!」

真「ゆきぽ!」

響「~~~ッ!!!」ジタバタ

雪歩「……」ザックザック

真美「あぁ……ひびきん、思いっきり舌噛んじゃったんだ……」

亜美「ゆきぴょんは無言で穴掘り始めた……」

真「ゆきぽ! ここ屋内だから! 穴掘っちゃダメだよ!」

律子「ああぁ……なんだかどんどんおかしな方向に……」

美希「まったく、しょうがないの」

あずさ「美希ちゃん?」

律子「あっ、美希! 良かった、美希はまだまとも――」

美希「ハニーのカタキを取るのはミキしかいないって思うな」

律子「じゃなかった……」

P「美希……お前、さっきまで他人事みたいだったのに」

美希「響や雪歩の姿を見て何も感じないわけがないの」

真美「……」

美希「だからここはミキがバシッと決めるから、ハニーはちゃんと見ててね」

真美「待ってよ!」

亜美「真美?」

真美「真美も……ミキミキと一緒に戦う」

亜美「ま、真美!? 一体何を言ってるのさ!?」

真美「……亜美、さっきはごめん。バカにしたみたいな態度とって」

亜美「……」

真美「真美もひびきんたちの戦いを見て目が覚めたよ。二人の姿、カッコよかった」

響「う、うぅ……」

雪歩「……」

真美「真美が間違ってたんだ。だから、亜美のカタキを取るのは真美じゃないとダメなんだ」

亜美「それは違うよ……真美は噛まずに言えた。それはただの事実で、真美は悪くないよ!」

真美「だとしても、今戦わないと真美は自分を許せないから」

亜美「真美が危険な真似をする必要なんてこれっぽっちもないんだよ!」

真美「ううん。もう決めたから。亜美は見てて。真美の戦いを」

亜美「真美……」

美希「あふぅ。亜美はそこで黙って聞いていればいいの」

真美「そうだよ。真美もミキミキも絶対に負けないもん」

亜美「……」

美希「それじゃ、準備はいい?」

真美「オッケー! それじゃやるよ!」

美希「とーきょーとっきょきょきゃきょきゅきょきゅ――ッ」
真美「とーきょーとっきょきょきょきゃきゅ――」

美希「……」ドサッ

真美「……」グラッ

P「み、美希!?」

亜美「真美ぃぃ!!」

美希「は、ハニー……ミキ、頑張ったよ?」

P「あぁ……あぁ! ちゃんと見てた、見てたぞ!」

真美「亜美……ごめん。カタキは取れなかった……よ……」

亜美「そんなのいいよ! 亜美のために戦ってくれただけで十分だよぉっ!」

美希「あふぅ……ハニー……でもこれで……」ガクッ

真美「真美たちも……一緒だ……よね……」ガクッ

P「美希いいいぃぃぃぃ!!!」

亜美「真美いいいいぃぃぃぃぃ!!!」

律子「……もう好きにして」

小鳥「……」ジー

あずさ「……」ジー

律子「……あの、何ですかその視線は」

小鳥「別に……」ジー

あずさ「特に意味はないですよ」ジー

律子「……」

P「……」ジー

律子「……ああもう! 分かりましたよ! 私もやればいいんでしょ!」

P「律子、別に俺達のために無茶をする必要なんてないんだぞ?」

律子「どの口がそれを……いえ、もういいです。決めましたから」

あずさ「律子さん……」

律子「分かってます。本当は分かってたんです」

あずさ「え?」

律子「私は澄ました顔で眺めてればいい立ち位置なんだって、自分に言い聞かせてただけなんです」

小鳥「律子さん……」

律子「でも……やっぱり私も765プロの一員ですから」

P「律子……」

律子「すぅ……はぁ……それじゃ行きます!」

あずさ「律子さん……っ!」

小鳥「律子さん、頑張って!!」

律子「かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ! 合わせてぽこぽこみゅぴょきょきょ……」

P「……っ」

あずさ「……あ」

律子「……やっぱり、こうなるんですよね」

小鳥「律子さん」

律子「言いたい事があればどうぞ、言ってください」

P「あー、その……可愛かったぞ」

律子「!!?」プシュー

小鳥「ああっ! 最後の砦が!」

あずさ「真っ赤になって落ちちゃったわ~」

伊織「今とどめを刺したのって……いえ、なんでもないわ」

千早「でも、まさか律子まで……となると残っているのは……」

春香「とうとう私の出番が来ちゃったかぁー」

P「春香かぁ」

春香「え!? なんですか、そのとっくに諦めてるみたいな感じ!?」

伊織「誰もそんな事言ってないでしょ」

亜美「でも無理そうならやらなくてもいいと思うよ」

千早「えぇ。あと、別に無理して噛まなくてもいいから」

真「舌噛むのは痛そうだから、もつれさせる程度にした方がいいよ」

春香「ちょ、ちょっと待って。私、わざと噛もうとしてるとか思われてない?!」

貴音「……そんな事はありませんよ」

春香「今、微妙な間があったよ!」

あずさ「やるならサラッとやった方がいいと思うわ~」

小鳥「そうね。何気なく流した方がいいわね」

春香「あ、あの言っときますけど! 私、別にわざと噛みょ――ッ!?」ガリッ

P「あっ」

千早「!?」

春香「~~~~っ!?」ジタバタ

亜美「あちゃー」

真「今のは本気噛みだね」

貴音「えぇ。春香の様子を見れば一目瞭然です」

小鳥「まさか戦う前にやられちゃうなんて……」

千早「春香……っ!」ガシッ

春香「むぐぐ……ち、千早ちゃん……」

千早「春香、大丈夫?」

春香「心配……してくれるの?」

千早「当たり前でしょ」

春香「……あのね、正直に言うと、わざと噛もうかなってちょっとだけ考えたんだ」

千早「そう」

春香「だって私だけ仲間はずれなんて……」

千早「……」

春香「でもね……」

千早「分かってる。春香は本番でわざと噛んだりなんてしないわ」

春香「千早ちゃん?」

千早「私の知る天海春香は、大事な場面でふざけたりはしないもの」

春香「千早ちゃぁぁん」ウルウル

千早「さっきはごめんなさい。春香をおちょくるような事を言ってしまって」

真「……そうだよね。ボクたちも謝るよ」

伊織「悪かったわ。自分達の事を棚に上げて」

あずさ「ごめんなさい、春香ちゃん」

貴音「申し訳ありません」

小鳥「思わず調子に乗っちゃって……本当にごめんなさい」

春香「みんな……ううん、もういいの。だって私たち――」

全員「「仲間だもんね!」」

P「…………」

P(こうして、俺達765プロと滑舌との戦いは765プロの完敗という形で幕を閉じた)

P(765プロ史上最強の敵を前にして……しかし俺たちは絶望していなかった)

P(何故なら、俺達の胸には……より深く、熱く紡がれた絆が生まれていたのだから)

P(俺たちは仲間なんだ。ともにこれからも切磋琢磨して歩み続ける仲間なんだ)

P「そう。俺達のたたきゃいはこれからだ!!」


終わり

読んでくれた方、ありがとうございます。

久しぶりに熱血友情モノが書けたので満足です。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom