【ダンガンロンパ】日向「俺が見た希望ヶ峰の文化祭」【リレーSS】 (47)

このSSはリレーSSの企画によるSSです。

詳しい事はリンク先から見てください

企画スレ:https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406542758

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406643631

日向「ここが希望ヶ峰学園…の本科か」

日向「やっぱり、こうして見るとでかいな…俺たちの何倍だよ…」

俺の名前は日向創、希望ヶ峰学園…の予備学科に通う高校生だ。

普段、俺にとって恐れ多くて近づく事すらためらわれる本科に来たのには理由がある。

日向「やっぱり多いな…流石希望ヶ峰の文化祭だな」

そう、今日はあの希望ヶ峰の文化祭…という事で人が大量に来てる。

とはいえ、まだ始まっていない…なのにもう人だかりが出来るなんて流石希望ヶ峰だな

あの希望の学園の文化祭…一般人は普通は入れないが、今日はチケットを見せれば誰でも入れる…らしい。

勿論、そのチケットもタダじゃない。一度オークションに出展させられたのを見たが、数十万の値段で取引されていた。

当然だけど、予備学科ならタダ…って訳じゃない。同じ希望ヶ峰にもかかわらず、本科の文化祭に行くにも自腹を切って買わなくちゃならない。

普段ならその高額さに行きたい気持ちを抑えて、勉強なりなんなりしているはずだけど…

日向「本当…俺はツイてるよ」

そう、今の俺はチケットを持っている。つまり本科に入れるという事だ。

当然だけど自分が買ったんじゃない、かといって誰かのを奪ってもいない。

最近、とある人から譲って貰ったんだ。その人は______

日向「全く…松田さんに感謝しないとな」

~1週間前~

日向「失礼します」

松田「そこに座れ」

日向「えっと…今日もよろしくお願いします」

松田「毎日ご苦労だな、今日は脳波の測定か」

松田「…怖くないのか?お前は後少しで実験台にされるんだぞ?」

日向「はい、評議会の人達は安全と言ってましたし、何より絶対に成功して才能を手に入れたいですから」

松田「…そうか、ならそこに横になれ、今機材を______

江ノ島「しっつれいしまーーーす!!」

日向「おわッ!?」

江ノ島「えー何?いきなり人の顔みた第一声がそれ?マジありえないんですけどー」

江ノ島「ってゆーかー、こんな場所に人がいるなんて…まさか!?」

松田「…おい、警備か?不審者が研究所にいるんだが」

江ノ島「やっぱりかこの強盗め!」

松田「不審者の特徴?そうだな、やけに派手な服を着たドブスだな」

江ノ島「ファック!アタシの事かよ松田くん!」

日向「え?えーっと…何?」

江ノ島「びえーん!松田くんにいじめられたー!」

松田「今度無断で入ったら首に『ブスで生まれてすいません』ってプラカード下げてもらうからな」

江ノ島「え…何それ…超絶望的です…」

日向「…すいません、話についていけないんですが…」

江ノ島「よくぞ言った、予備学科生!松田くん話聞かないからねー」

日向「…え?なんで俺が予備学科って…」

江ノ島「簡単な事です、日向創くん」

日向「名前まで!?」

江ノ島「まずは服装です。その格好は予備学科の制服ですね?」

日向「確かにそうだけど…なんで名前がわかったんだよ?」

江ノ島「名前は…机のカルテにあったのを適当に言っただけです」

日向「て、適当!?」

江ノ島「だってここ誰も来ねぇからな!カルテのある奴なんかお前くらいだぜ!」

松田「おい、用事が無いならさっさと死んでもらうぞ」

江ノ島「帰るじゃなくて死ねと…いつになったらデレるのかなー?」

松田「ブスにデレるほど暇じゃないんだ」

日向「あ、あの…その人は一体…」

江ノ島「アタシ?アタシは江ノ島盾子。超高校級のギャルにして松田くんの______

松田「ゴミだ…本当に何も無いなら今すぐ消えろ」

江ノ島「酷いなーこれだよ、コ・レ!」

松田「チケット…?なんだそれは?」

江ノ島「えー知らないのー?今度の文化祭での一般入場チケット!」

江ノ島「今回、なんと私様の力で一枚貰ってきたのだ!」

江ノ島「いつも迷惑かけてる家族に…って松田くんに家族はいませんでした…」

江ノ島「だったらさーいつも一緒にいるあの人に!具体的には目の前にいる…」

松田「ああ、なるほど。日向、いるか?」

江ノ島「ポっと出の、しかも男に負けました…絶望的です…」

日向「え!?…俺なんかでいいんですか?」

松田「ああ、せいぜい楽しんで来い」

松田「後、もう今日は帰っていいぞ。面倒だ」

江ノ島「じゃまったねー!」

日向「あ…ありがとうございます!絶対に行かせてもらいます!」

江ノ島(…うぷぷぷぷぷ)

______そうして、今俺は目の前の門に立っている

日向「ああ…楽しみだな…!」

事前に貰ったパンフレットを見る

そこには、様々な超高校級の生徒達が自身の才能を活かした出し物がある

全部見て回りたいけど…絶対に時間が足りないよな

そこだけは残念だけど、でも…

日向「にしても…本科に入れる日がくるとはな…」

そうだ、自分では入れないと思っていた憧れの場所。

そこに文化祭とはいえ入れるだなんて…!

アナウンス『開演いたします。是非、世界の希望をご堪能ください…』

っともう時間か…出来るだけ楽しまないとな…!

どんな奴がいるんだろう?どんな物があるんだろう?

そんな希望で胸がつまりそうだ

日向「さて…行くか!」

そうして、俺は希望の学園に足を踏み入れた______

これで終了です。次の方お願いします。
リンク先これでいいかな…
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406542758

完璧に寝てた……。(3時まで)
夜更かしはダメだね!とりあえず無茶振りしとくね!



――文化祭の二週間ぐらい前――


苗木「え?ボクの文化祭の出し物?」

舞園「はい!どうやら希望ヶ峰学園では才能によって出し物を変えるみたいなんですよ。私は江ノ島さんと先輩の西園寺さんと澪田さんとステ ージを使ってそれぞれの出し物をするんです」

霧切「舞園さんはライブ、江ノ島さんはファッションショー、西園寺先輩は日本舞踊、澪田先輩もライブね」

苗木「あ、霧切さん。そういえば霧切さんはどんな出し物をするの?探偵って出し物に向いてない才能だと思うけど」

霧切「私は直接的には出し物は出さないの。神代先輩も同じね。裏世界から狙われやすい人の支えになったりとかするだけよ」

苗木「へ、へえ。すごいんだね…」

苗木(裏世界って…。さすが希望ヶ峰学園の文化祭、スケールが大きい)

モノクマ「…ピーッピーッ舞園さんやっと見つけた!」

舞園「えっ!もう時間ですか?」

モノクマ「そうだよ!はやく行かないと遅れちゃうよっ」

苗木「……ねえ霧切さん、あのクマなに?」ヒソヒソ

霧切「……学園のマスコットらしいわよ。…あの人もなに考えてんだか」ヒソヒソ

苗木「……あの人?」ヒソヒソ

霧切「……こっちの話よ」ヒソヒソ

モノクマ「なら、はやく!」

舞園「うう~。ごめんなさい苗木君。私、練習に行ってきますね。また放課後に会いましょう!」タタッ

苗木「あ、うん!また放課後で!」

霧切「…じゃあ私も行ってくるわね。先輩と情報共有しなきゃいけないの」

苗木「霧切さんもまたね!」

苗木「…………」

苗木「…………」

モノクマ「あれ?苗木クンもしかしてぼっち?」クスクス

苗木「…よし、帰ろう」

モノクマ「わー!わー!待って!からかったのは謝るから帰らないで!」

苗木「なんだよ、モノクマ。ボクに何の用?ていうかなんでボクの名前知ってるの?」

モノクマ「そりゃあ、ボクがこの学園のマスコットだからさ!生徒のことならなんでも知ってるよ?」

苗木「なんでも知ってるの?」

モノクマ「あ!それならみんなの出し物見る?全員分乗ってるよ!でも三年生はジャバウォック島に修学旅行に行ってるからデータはまだ無い
んだよね」

苗木「? どうして?プロフィールとかのデータぐらい持ってるんじゃないの?」

モノクマ「も~う、プロフィールぐらいは確かに持ってるよ?でも、ボクは人工知能なの!実際に会ってデータ収集しないといけないの!なのにまだ会ったことも無いんだよ!」

苗木「どうしてって……そういえばモノクマの存在を知ったのも今年からだったような気が…」

モノクマ「今年になってやっとプログラマーが入ってくれたからね。一つ上にもメカニックが居るんだけど、プログラム系はからっきしだったみたいで…」

モノクマ「ちなみにデザインはあのカリスマギャル!江ノ島盾子さんで~す!」

苗木「なんでそんなテンション高いの…」

モノクマ「いや、紹介するならド派手に!って言われたから」

苗木「そうなんだ」

苗木「てか随分長い時間談笑してたけど、目的が変わってたね。そろそろみんなの出し物を教えてくれないかな?」

モノクマ「ハイハイ。えっと…

ガサゴソガサゴソ

―――四次元ポケ○ト―――

      ガサゴソガサゴソ

あったよ!」

苗木「待ってよ!その前にそれダメでしょ!」

モノクマ「え?なんで?なにがダメなの?」

苗木「それだよ!その四次元ポケ○トだよ!」

モノクマ「え?でも同じ声のマスコット同士おんなじ道具持っててもいいんでしょ?」

苗木「ダメだよ!モノクマとドラ○もんは全然違うからダメだよ!!」

モノクマ「も~う。分かったよ。学園長は『これがキミに一番合う!』っていってたんだけど学園長に返してくるね」

苗木(なにがしたいんだ学園長)

苗木「あっ出し物表」

モノクマ「はいっ!こっちが78期生でこっちが77期生のだよ」

苗木「どうもっ。えっと舞園さんと霧切さんのは……あった。うん、内容はあってるな」

苗木「ん?そういえばボクはなにをやるか知らされてないけど載ってるかな?」

苗木「あ、あった。え?なにこれ!?」

わたしは無茶振りがしたかった……ただそれだけだ……
というわけで次の人、よろしくね☆(後処理)



苗木「いたいた、キミが日向クン?」

日向「え? そうだけど、お前は……?」

苗木「あ、ごめんねいきなり。ボクは苗木、苗木誠」

日向「ああ! お前があの、抽選で選ばれたっていう超高校級の幸運か! 羨ましいよなぁ」

苗木「あはは……もう一生分の運を使い果たしちゃった気がするけどね……」

苗木「あ、それでなんだけど、ボクの出し物は一般来場者の人に協力して貰う企画なんだ」

日向「なるほどな。わかった、俺でよければ協力するぞ。それで、どんな企画なんだ?」

苗木「えっと――」

――――――

苗木『「希望ヶ峰学園の都市伝説を追え」……?』

モノクマ『そうそう。苗木クンも知ってるでしょ? 今、学園を賑わせているあの噂……』


モノクマ『カムクライズル』


モノクマ『苗木クンには一般参加企画として、来場者と一緒に今回の学園祭に散りばめられたヒントから「カムクライズル」について調査してもらいまーす!』

苗木『え……でも「カムクライズル」ってただの噂でしょ? それとも……モノクマは何か知ってるの?』

モノクマ『当然です! ボクはこの学園の、マスコットなんだよ!』

苗木『(マスコットは関係ない気がするけど……)』

苗木『それに、なんでボクなの? 調査なんて、ボクなんかより探偵の霧切さんやスパイの先輩の方がいいと思うんだけど……』

モノクマ『あのねぇ苗木クン。一般参加企画なんだよ? そんな優秀な人達にさせたらつまんないじゃない。こういうのは普通なヤツが右往左往するから面白いんだよ、エンターテイメントをわかってないねぇ』

モノクマ『それに、あの二人の才能はあんまり人に知られない方がいいものだしね……』

モノクマ『これはキミの才能を買っての人選でもあるんだよ? 幸運(笑)も歩けば棒に当たるってさぁ。うぷぷぷぷ!』

――――――


苗木「――というわけなんだ」

日向「なッ……!」

日向「(『カムクライズル』……それは確か、俺が被験者となる予定のプロジェクトの名前でもあったはずだ……その極秘プロジェクトに関わることを、学園自らが調査なんてさせていいのか?)」

日向「……その企画の協力者に俺を選んだのは、誰なんだ?」

苗木「え? ボクだけど」

日向「そう、か(偶然、か……?)」

苗木「なんでも去年来た人は今年は参加不可って方針で、その為に一般来場者は厳正にリスト化されてたんだ。そのリストから抽選で選んだんだよ」

日向「(そんな中から俺を引き当てるなんて……さすがは超高校級に選ばれるだけはある、ということか……)」

日向「それで、どうすればいいんだ?」

苗木「えっと……一応モノクマにヒントは貰ったんだけど、ボクには全然わからなくて」

苗木「『ヒントはこれまでの会話の中にあるよ』なんて言ってたんだ」

日向「これまでの……悪いが苗木、その前に会話した内容をなるべく細かく教えてくれないか? 俺もそういうのはあんまり得意な方じゃないけどな」

苗木「うん、もちろんだよ」


日向「うーん……その会話の中でなにか引っ掛かるところがあるんだが、はっきりとはわからないな……」

苗木「そっか。じゃあ折角だから、まずは文化祭を色々見て回らない? それで何かわかるかもしれないし」

日向「おっ、そうだな。これは昨日は徹夜でパンフレットをチェックして作った、行きたい出し物のリストなんだが」

苗木「(ひ、日向クン本気だ……ッ!)」


日向「よし! まずはここ、超高校級の野球選手と超高校級の軍人による『ストラックサバゲー』だ!」

苗木「桑田クンと戦刃さん? なんだか珍しい組み合わせだね。どんな出し物なんだろう……」

桑田「ウーッス、苗木」

苗木「桑田クン、ここはどんなことをやってるの?」

桑田「えーっとな、ストラックアウトって知ってるだろ? あれを二つ用意して、参加者はそれぞれオレと戦刃の2チームに分かれて自分達の板を守ったり相手の板を攻撃したりするんだと」

桑田「ぶっちゃけ野球要素あんまなくね? ほとんどサバゲーだよなぁ」

戦刃「サバゲー……楽しいから……」

苗木「あ、戦刃さんおはよう」

日向「どうする苗木? 参加して行くか? 超高校級とチームを組めるなんて、俺には滅多にない機会なんだが」

桑田「ん? そっちは苗木の友達か? オメーらもやってくか?」

苗木「あ、うん。ボクこういうの得意じゃないから、きっと足を引っ張ると思うんだ……時間も掛かりそうだし調査にも関係なさそうだし、やめておこうかな」

日向「くっ……そう、だな。こういうのは諦めないといけないか……ま、まぁ調査が終わった後でまた来てもいいしな!」

日向「よし、そうと決まればさっさと片付けて文化祭を楽しむぞ!」

苗木「ご、ごめんね日向クン……」


桑田「別になー、これにはただ名前貸してやってるようなもんだしどっちでもいいけどよ。それより午後のライブに出るんで、そっち見にきてくれよな! なんならサイリウムとか持って盛り上げ頼むぜ」

苗木「へぇ、掛け持ちもアリなんだね」

日向「俺としては超高校級の才能と関係ない出し物には興味ないな」

桑田「オイオイオイそう言わずによー、いずれは超高校級のバンドマンって呼ばれるようになるぜオレは!」

苗木「あ、そういえば桑田クンに戦刃さん。『カムクライズル』って知ってる?」

戦刃「『カムクライズル』……? 聞いたこと、ない……」

桑田「マジかよ、あんだけ噂になってんのに? なんでも夜の屋上に出るって話だぜ」

桑田「ありとあらゆる才能を持ってて、人知れず悪と戦っているとか、逆にコイツが世界を暗黒に染めようとしてるとかって噂があるな」

苗木「桑田クン、詳しいね……」

桑田「オウ、噂はチェックしとかねーとモテねーぜ? で、このトンデモ話がどうしたんだ?」

苗木「ううん、ただ噂以上のことを知らないかなっと思って。実は『カムクライズル』について調査するのがボクの出し物なんだ」

桑田「ふーん……学校の七不思議の調査みたいなもんか? 高校生にもなって」

苗木「学園側で勝手に決められちゃっててね……」

桑田「わりーがこれ以上のことは知らねーなぁ、そういうのは頭いい組に聞いてみた方がいいんじゃね?」

日向「そうだな。そうすると、校舎の展示や発表の方になるか」

苗木「行ってみよう、日向クン!」


日向「これは……随分仰々しい機械だな」

??「これはね、空気清浄機だよぉ」

日向「こんなでかいのがか!?」

??「あはっ、なんて冗談だよぉ。いらっしゃい苗木君。それに、苗木君のお友達かなぁ?」

苗木「あ、不二咲クン。ここはキミの出し物だったんだね」

不二咲「うん、そうだよ。僕だけじゃなくて超高校級のメカニックと超高校級の神経学者、超高校級の生理学者、超高校級の脳科学者、超高校級の工学者の先輩との合作なんだぁ」

日向「すごいな! そんなドリームチームが実現するなんて!!」

不二咲「っていっても僕は先輩たちの作った機械用に、先輩たちの理論を元にソフトウェアを作っただけだけどねぇ」

苗木「それでも十分すごいよ不二咲クン! ボクなんかじゃ理解も出来ないようなことだらけなんだろうなぁ」

不二咲「そ、そうかな? えへへ……。 でも、先輩たちの研究って聞いてみるととっても面白いよぉ? 今ボクが開発しようとしてるプログラムの参考にもなるんだぁ」

不二咲「別の教室では先輩たちの他の研究もいろいろ発表されてるから、ぜひ見てみてね」

日向「ああ! 他の超高校級の話も聞いてみたいしな、そうさせてもらうよ」

日向「ところでこの馬鹿でっかい機械は結局なんなんだ?」

不二咲「あ、これはねぇ……人の記憶を消す装置だよぉ」

日向「――ッ!?」

日向「そ、そんなの……空気清浄機より全然すごいじゃないか! そんなものがもし悪用されたら……」

不二咲「それは大丈夫、消せるって言ってもせいぜい数分間の記憶だけだし、安全性も実証済みだよ」

不二咲「だからこそちょっとした不思議体験をしてもらう出し物になってるんだぁ」


日向「そ、そうか……やって、みるか? 苗木? おい、どうした苗木!?」

苗木「記……憶……? 消す…………?」

日向「おい! 大丈夫か苗木ッ!!」

苗木「ボクは……ボクは、二週間前に初めて白黒のクマを見たはずなのに……」

苗木「アイツと、話している内に……それがモノクマだって……アイツのことを前から知ってたんだ…………」

日向「苗木? どういうことだ! お前に指示を出したマスコットがどうしたんだ!!」

苗木「そう……モノクマを知ったのは今年に入ってすぐ……1月? おかしいぞ、ボクは今年度の新入生で……」

日向「そうだ。苗木、お前は今年度の、78期生だ! そして俺は77期生の予備学科生だ!」

苗木「違う!! 違う、違う……そうじゃない……文化祭は……家族も呼べたはずなんだ。だけど――」


――――――

こまる『ねぇねぇお兄ちゃん! 来月文化祭だよね? 私も行きたいなー!』

苗木『それがさ、今年は事前通達でこんな注意事項が配られて……』

こまる『え? えーと、どれどれ。ええー! 去年行った人はだめなの!? そんなぁ』

――――――


苗木「ボクの一年が……なくなっている……?」

苗木「いや! 周りとも違和感なんてなかった、それに日向クン! ボクは新入生なんだよね?」

日向「あ、ああ……」

苗木「ということはつまり……全員」



「みんなの一年が……なくなっている…………」


以上です。
いくつか伏線は回収したぞ!(無茶振り)

おおー…!つなぎ方が上手いですね!
苗木の出し物は『カムクライズルを追え!』だったのか…(いいもの思いつかなくて次の人に回した張本人)←
乙です!次の人は無茶振りをどうするのかな?

日向「……は?」

不二咲「みんな一年分記憶を消されてる?それは……スケールのおっきい話だねぇ」ウフフッ

苗木「不二咲さんは疑問に思ったりしないの?覚えてないはずの事を覚えてるような、そんな感覚は?!」

不二咲「苗木君は面白い事を考えるんだねぇ」ニコニコ

日向「それに、皆ってなんだよ。皆って!ほら、俺なんかは一般来場者だぞ?そんなやつの記憶にまでどうやって手を出すんだよ」けらけら

苗木「……たしかに、そうかもしれないけれど……でもそうとしか思えないんだ」

日向「証拠があれば俺もちょっとは信じたかもしれないけどな。そうだ!気になるならさ、携帯でも見たらどうだ?カレンダー機能とか大体のものにはあるだろ?」

苗木「あっ、そう、だね。それもそうか」ゴソゴソ



苗木「――――っ?! (西暦が、ボクの入学した時から進んでる……でも、でもなぜなんだ?今意識してみるまで、違和感なんて――――)」



苗木「……不二咲、さん?日向……クン?」おそるおそる

日向「クスッ  フ……はははっ」

苗木「!」

不二咲「クスクスッ ふふっ……うふふふふふっ」

苗木「なんっ……なんで、なんで笑うんだよ……?」

日向「いや、ようやく気付いたと思えば、ずいぶん驚いてくれるモンだからさ……ククッ……なあ?どんな気分なんだ?記憶がなくなってたって気づくのはさ?」ニィッ

苗木「!?……う、わっ  あああああっ??!!!」ダッ

日向「アハハハハハハハッ!!オイオイ、どこいくんだよ!待てよ苗木ぃ!俺を置いてくなって!あははははははっ!!」

不二咲「うふふふふっ  どうしたのぉ?なんでボクたちから逃げようなんて思うのさぁ?うふふっ  ふふふふふふふっ♪」

苗木(逃げなきゃ!!逃げなきゃっ!!)ダダダッ  がっ  ガンッ ガンッ!!(ドアがあかない?!)

不二咲「んー、このままテンパられたまんまだと、困っちゃうねぇ?ちょっと乱暴だけど、手伝ってもらっちゃおうか。斑井さぁん、おねがいしますねぇ」

苗木「――ッ?!(機械のかげから、人が……?!)う、わ」ガクガク

斑井「悪いな だがこれも仕事なんでな」がしっ

不二咲「機械の椅子に固定してねぇ?ずれないようにベルトがあるから、それで手と足を全部とめちゃって」

苗木「何を  何をするんだよ?!っていうかなんでこんなことに?!!」

 ドサッ  ガチャガチャ

日向「……なあ、苗木?気にならなかったのか?」

苗木「え……?」

日向「何故俺が、記憶のきえてるはずのお前に話を合わせられたかって事。きちんと考えたらおかしいだろ?
  単なる予備学科の、一般入場者が本科のやつが何期生か知ってるのも、それを当然のように話せるのもさ。……なあ?それってなんでだと思う?」ニヤニヤ

苗木「なんで って」

日向「俺もお前を引っ掛けてる仕掛け人の一人だからだよ。なあ、その理由……違和感に自力で気づいたお前ならもうわかるんじゃないのか?」

苗木(一般参加者が、ボクの記憶を消した?いや、ちがう そうなるともう、本当は一般参加者なんかじゃなくって、関係のある人????)

日向「カムクライズル」

苗木「!?」

日向「噂だと"とにかく凄いやつ"としかわかってないんだよな。本性や、目的なんかは一切わけわかんないままでさ……なあ、どう思った?」

苗木「まさ、か 君が?でも でもなんで……」

日向「      ……じゃ、やっちまおうか。不二咲」

不二咲「うんっ♪えへへ、この機械作動させるの結構面白いんだよねぇ♪ あ、大丈夫だよ苗木君。クラスメイト危害なんて加えないよぉ……ね?」

苗木「う、わ うわあああっ?!」

苗木がどんなに悲鳴を上げて逃げようとしても、斑井のやった固定のせいでしっかりと椅子にはり付けられている。
仰々しい音を立てて、苗木を固定した椅子が機械の中へと向かった。椅子ごと苗木が入ってしまってから、外の影響をうけないように自動でドアのようなものがしまっていく。
俺は締まりきる前の隙間から、ヘルメットのような装置が下りてきて、彼の固定された頭をすっぽりと覆ったのを見届けた。

 ・

 ・

 ・

不二咲「作業が終わったよぉ。苗木君を機械から出すねぇ」


不二咲の声を受けて、俺と斑井は機械のドアの前に立って苗木を待ち受ける。
苗木が機械に入ってからこの部屋にやってきたマスコット、モノクマが苗木に見せつけるように持ったものを大きく掲げている。
苗木を飲み込んだ時と同じ、唸るような音が鳴り出す。


ゴゥンゴゥンゴゥンゴゥン

苗木「……う……うう」

日向「おはよう」

苗木「!?                 ―――――――ハァ?!」


俺の声に、ぐったりと目をつぶっていた苗木は目を見開き、モノクマが掲げた……持ち手のある、派手な色の看板を見た。


モノクマ「ドッキリ~~~!!!」

日向&不二咲&斑井「「「  大!  成!  功!!! 」」」

苗木「えっ ちょっ   どういうこと?!」

不二咲「あ、機械で記憶もどってるよね?そこは大丈夫かなぁ?」

苗木「う、うん、朝同じ機械にお試しって言って入れられたとこまでばっちり思い出したけど……えっ?」

斑井「一連の流れはこの装置を利用したドッキリだったというわけだ」

苗木「だったというわけだとか言われても、全然流れが呑み込めないんだけど……えっ?えっ?」


キョトンとする苗木に、ネタばらしをしていく。

俺は希望ヶ峰学園の本科に足を踏み入れてすぐに入場チケットを確認してもらうため受付へ向かった。
そこで、特殊なイベント……ドッキリのための仕掛け人になってもらうことを告げられたんだ。
その時に、仕掛けられる側が本人が一年前の自分でいるように思い込まされてる事と、それを補強するための嘘も教えられた。
あとは、本人に遭遇してからここまで連れてきて、大きな陰謀に巻き込まれたんじゃないかと思い込ませるようにふるまっていたんだ。


苗木「えっと、つまり日向クンがカムクライズルとかいうことは」

日向「     っ ははっ!ないない! そんな超人じみた奴が人の才能見て楽しんだりはしないだろ?」

苗木「……もーーー!!びっくりしたーーー!!!」

不二咲「えへへ♪苗木君すごく驚いてくれたから、ボク達もついつい真剣になっちゃった」

苗木「びっくりしたぁ……え?じゃあ、ボクの出し物っていうのは」

斑井「学園側が用意したドッキリ用の偽企画だな」

日向「自然に反応するために、俺には苗木のやる予定だった内容は聞かされてなかったけどな。まあ、それを利用するのを途中で思いついたからちょっとはドッキリしてくれたよな?」

苗木「十分すぎるほど驚かされたよ……」

不二咲「ちなみに、出店とか出し物やってる人も数人はこの企画をは知っててねぇ、いずれこの展示の方に来てもらう手はずになってたんだぁ」

苗木「ってことは少なくとも誘導した桑田クンも仕掛け人の一人か……ここまで連れてきたのは日向クンだったけど桑田クンがきっかけだったし」

モノクマ「どうよ?綺麗にだまされた感想は?ンン?」

苗木「いや、うん、すごくびっくりしたけど……まだいろいろわかんないこととかもあるんだけど??」

モノクマ「およ?何が?あ、逃げようとして出られなかったのは外でぼくと7人ぐらいのスタッフで全力でドア固定してたからだけど」

苗木「ずいぶんたくさん人数割いたね?!」

斑井「みんなやる事無くて張り切ってしまってな」

モノクマ「裏方中の裏方だからね彼らは。うぷぷぷぷ」

苗木「いや、でもそっちじゃなくってね?この機械ってさ、数分ぶんの記憶を消すだけじゃなかったの?」

不二咲「うーんとね……実際には"特定の記憶"と"直近のすべての記憶"が消せちゃうんだよぉ。引っ掛けのために特定の記憶を消す方は内緒にしてたんだぁ」

苗木「そういう事か……えっと、ボクの消えた記憶って?」

不二咲「苗木君には"自分は希望ヶ峰学園の2年生だ"っていう部分を忘れた状態になってもらってたんだぁ。
  でも、影響があるのは特定の部分だけだからそれ以外の事なら思い出せちゃうんだよね。
  だからこそ、みんなの姿がほんの少し変わってたとしても違和感なんてなく過ごせちゃうっていう仕組みだったんだけどねぇ」

モノクマ「その他の記憶がどの程度まぜこぜになるかは運だったけどね!うまいこと会話の内容とかを自分に都合のいいように認識し直しててくれて助かったよ!うぷぷぷぷ」

苗木「まあ、確かにお前と話してる時に今の四年生の話した時にその人たちを三年生って言ってたような気がしてたけどさ。
  ……こんな大がかりなことにそんな賭けするよりも、それこそ本当に文化祭の前に丸一年記憶消したほうが早いんじゃないのかな」

モノクマ「神経学者や脳科学者の人達ならもっと細かいこともできるみたいだけど、それでもどう頑張っても"丸一日が限度"みたいだよ。つまり事前準備はムリムリ!何事にも限度があるの!
  それに、自然に回復するときも体調不良訴えたりするみたいだし、機械でけしたら機械で戻すが原則なんだよ!毎日ずっと頭痛くなって全部思い出す作業するのはきみだって嫌でしょ?」

苗木「そ、それはやだなぁ」

斑井「……そんなことより、そろそろほどいてやらないとな。すまないな、拘束しっぱなしで」

日向「あっ、俺も手伝う。ゴメンな苗木」


ちなみにこのどっきりの内容、録画されていたらしい。希望ヶ峰の資金源のためにステージや企画の映像集を出すらしいんだがその中に入れられるとか。
この部屋の監視カメラ多いなとか思っていたらそういうことだったのか。
あと、探偵とスパイが道中の様子を撮影していたと聞いて苗木が頭を抱えていた。


モノクマ「まあまあ、こんなことめったにない事だよ!貴重な機械の実験台に加えてドッキリだよ!さっすが幸運!」

苗木「どこがだよ?!」


苗木の抗議じみた声をゲラゲラと笑ってモノクマはこの場の解散を言い渡した。
俺も、それに合わせて展示の部屋を後にする。

さてと、俺もそろそろ本腰を入れて文化祭を楽しまないとな!
なんたって、時間もないんだから。
今日一日で見たい物をしっかり見てしまわないと。


苗木「そうだ、日向クン。もうボクの出し物……出し物って言っていいのかなコレ……まあいいや、終わったから一緒に回ってもいいかな?」

日向「いいのか?一応俺も仕掛け人だったんだけど」

苗木「いいよ。それに、他のクラスメイト全員出し物とかで一緒に回れないし」

日向「そういう事なら! じゃ、このリストの奴みていくことにするけどいいか?この中にないおすすめがあったらそれも聞きたいんだけどさ」

苗木「うん!……あ、舞園さんのステージの時間が近いから、そこから行かない?」

日向「よしきた!どっちに行ったらいいんだ?!」

苗木「体育館を利用するはずだから、この校舎を出てまっすぐだよ!」


そこから、日が沈むまでずっと、いろんな出し物や出店や展示を心行くまで見て回った。
この日の事を俺は忘れないと思う。そのぐらいに輝いて、楽しい一日だった。

たとえば、最初に向かった舞園さやかのステージ。


苗木「間に合ったね!」

日向「うわ、すっごい人の量?!流石国民的アイドルのステージだけあるな」


舞台袖から、舞園さやかが姿を現すと、体育館にいる殆どの人が歓喜の声を上げた。


舞園『みなさーん!こんにちはー!!』

「「「「「こーんにーちわーーーー!!!」」」」」

舞園『本日は、希望ヶ峰学園文化祭特別ステージにお越しいただき、ありがとうございます!お手元のプログラムの通り、先陣をきらせていただく舞園さやかです!』

日向「ん?こういうのって司会はいないのか?」

苗木「舞園さんが司会も兼任するんだって。前半の司会が舞園さんで、後半の司会が澪田さんみたいだよ」

日向「アイドルとかガールズバンドって言いながらも結構マルチな活躍ができるんだな」

苗木「場を保ったり盛り上げることもタレント業の面で必要だって言ってたから……あっ、ほら、舞園さん歌うよ!」

日向「おっ」


俺がステージに改めて目を向けると、そこに立っていたのは先ほどまでの身近な空気を感じさせるのとは違った空気の、まっすぐに前を見つめた舞園がいた。


日向(たった数秒で、ここまで雰囲気が変わるのか)

  ~~♪  ~~~~~~♪

日向(最初のステップから、振り向きざまにこっちに笑顔を向ける  これだけでも完成されてるように感じるなんて)


舞園のパフォーマンスに圧倒されたまま、彼女が歌い、踊るステージを2曲分ただひたすらに見つめていた。
隣りにいた苗木もおなじようで、俺達にできる事と言えば拍手を送ることぐらいだった。

2曲目を歌い終えた舞園は、トークとして自分の来歴を紹介していた。
父子家庭でテレビが友達だったこと、その中で輝くアイドルたちが人生の目標だったこと、
そして、プロダクションに入るためのオーディションで共に頑張った子達が、今のグループメンバーだということ。


舞園『私のアイドルとしての出発点は、チームの皆と揃ってのものでした。ですから、私は、本当はメンバーの皆と一緒に皆さんに見てもらいたかったんです。

  ……というわけですから、今日は皆を呼んじゃいました♪  みんなーー!!!』


舞園がそう言って大きく手を振ると、それに合わせて彼女のグループのメンバーが左右の舞台袖からかけよってきた。
ひときわ大きくなる歓声に飲まれず、全員が輝かんばかりの笑顔で手を振る。


舞園『このわがままを通してくださった運営スタッフのみなさん、ありがとうございました!それではみなさん、きいてください!』

  ワアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!





日向「すごかったな……とくにさ!最後の曲だよ!呼ばれたメンバーも皆嬉しそうだったし、前二つも良かったけど、一番生き生きしてたよな!」

苗木「うん!  ボクはね、ああやってメンバーの皆を大事にするのも、それにみんなが応えているのも、舞園さんが超高校級のアイドルだっていう理由の一つだと思うんだ」


苗木の言葉に、俺は大きく頷いた。


日向「ところでさ、何回か舞園お前の方見てウィンクしてなかったか?」

苗木「えっ?そ、そうかな?……確かにこっち側多かったけど、別にボクに向けてじゃないと思うよ」アハハ

日向(カメラも入ってたけど、そこからずれた位置を見てたっていうのには何か理由があると思うんだけどな)






たとえば、展示の中にあった写真展。


日向「笑顔の写真ばかりだな」

苗木「うん、でも、こんな幸せな瞬間ばかり切り取れるって凄いよね」

日向「芸術とか、そう言うのが得意なわけじゃないけどこういうのは好きだな……あっ、向こうの部屋の方は体験コーナーだってさ!」

苗木「前の人が終わったらボク達も行ってみよっか」


小泉「お疲れ様!興味が出たら、是非写真はじめてみてね!」

少年「ありがとうございました。いこっ」

女の子「うん!おねーちゃんありがとー」ブンブン

小泉「じゃあねー   ……あっ、苗木君じゃない。それと、友達かな?君達も写真体験?」

苗木「うん、お願いしてもいいかな?」

小泉「勿論よ。写真の撮り方の簡単なレクチャーと、私があなたたちをとるって感じのだけど」

日向「よ、よろしくおねがいします」ぺこり

小泉「はいはい、固くなんなくていいよ!お祭りなんだから、楽しんでいこう?ねっ。 記念の品と思い出を増やすだけなんだからさ」


超高校級の写真家の人は、にこにこと笑いかけながら写真の撮り方を教えてくれた。
試しに、苗木をモデルにして一枚取って見たり、用意されたオブジェをかっこよく見せるように撮ったりした。


小泉「じゃあ、最後は私が撮影するね。ホントに一人づつでいいの?」

日向「ああ、一緒に回ってもらってるけど今日会ったばかりだし、さすがにちょっと恥ずかしいかな」

小泉「うーん、それならそれでいいけど……じゃあ、そこに立ってみて   あ、顔ふせちゃダメよ!目が隠れちゃうし、暗くなっちゃうわよ!」

日向「お、おう」

小泉「うーん、やっぱり表情が硬いなあ……やっぱり苗木君と日向君一緒にうつらない?」

苗木「でも、ボクの分もう撮って貰っちゃってるし」

「すみませーん」

苗木「あっ、次の人きたみたいだよ」

小泉「しょうがないなあ……じゃ、撮るよー!」 パシャッ


ポラロイドカメラで撮られて、すぐに現像された写真を渡された。


苗木「行こう、日向クン」

日向「あ、ああ。  楽しかったよ!ありがとう!」

小泉「楽しかったんならそんな遺影っぽいのじゃなくって笑顔の写真撮らせてほしかったんだけど……うん、他の事が楽しかったんならよかったわ。
  でも、やっぱり納得いってないのよねぇ……今日は仕方ないけど、明日でもいいからまた来てよ。次は笑顔になれる人と一緒にね!」

日向「ええっと、それは……とりあえずもう行くよ!じゃあな!」




こんな、希望に満ちた物がそれこそ山のように存在していた。
心残りがなかったわけじゃない。たった一日だけじゃ、すべてを楽しみつくせるわけがなかった。
見たいものをリストアップしてたのに、実際に本科の中を歩き回っていたらリストなんてさほど役に立たなかった。

目にはいるもの全部が気になってしまうような、強烈な才能や希望が詰まった場所では、外部の人間の前もっての取捨選択は木端微塵に吹っ飛んでいったんだ。

日向「はぁー……いやー、遊んだなあ」

苗木「一日目の日程はもう殆ど終了だね。明日はまた違う人たちでのステージがあったり、出店も超高校級の料理人のが出たりするらしいよ」

日向「へぇ、それも是非行ってみた かっ……ううっ」ぐらっ


急に足元がふらついて、目の前がグルグルととけるように回る感覚と吐き気に襲われた。
頭に、傷みが走るたびに緩やかに何かを思い出していく。ひとまず、俺には時間がない。もう帰らないといけない。


苗木「?! だ、大丈夫?!」

日向「……あ、あぁ……わりぃ、ちょっとぐらっときた。  俺は帰るよ。今日は一日ありがとうな」

苗木「そう?  あ、もし明日とか明後日とか、体調良さそうだったら残りの日程の時にも来てよ。ね?チケットは初日認証したらそのあとの日も使えるはずだし」

日向「それは無理なんだ。実は俺さ、ちょっと病み上がりっていうか、そんな感じの状態できてて……今日一日だけって約束だったんだ」

苗木「えっ  そう、だったんだ」

日向「そうは見えなかっただろ?まあ、実際楽しみで自分でもそんな状態だっていうの忘れちゃってたぐらいだったからさ」

苗木「そう言う状態だったら、もう少し好きに見てもらったほうがよかったのかな」

日向「いや、一人でうろうろするよりも話し相手がいたほうが面白かったと思うし、そこはいいって。苗木が勧めてくれたから入ったコーナーとかもあるし」


苗木は申し訳なさそうにしているけれど、俺が言っていることは事実だった。
誘われなかったら、恋愛小説の原稿展示や、他の国の文化を再現したジオラマ展示には足を運んでいなかっただろうし、それに関連する人達にも会えなかったと思う。

今日一緒に文化祭を歩いてくれる奴がいてくれて本当によかった。運がよかったのは、苗木じゃなくて俺の方だったんだよな。


日向「改めて、今日はありがとうな。もう、なかなか会う機会なんてないだろうけど、楽しかったよ」

苗木「今生の別れか何かみたいな言葉だね……あ、そうだ!メールアドレスとか交換しておこうよ」

日向「途中ちょっと言ったけど、俺今日は携帯持ってきてないぞ?」

苗木「……ちょっとまってて」


苗木はそういうと、ポケットをごそごそと探ってメモ帳とペンをとりして走り書きをし、俺に渡してきた。


苗木「一日一緒に過ごしたんだから、もう友達で連絡先ぐらいは知ってていいと思うんだ。だから、受け取ってよ」

日向「ああ、サンキュ  俺のメアドは……ううっ」フラッ

苗木「ムリしないでいいから!?どうする?保健室で見てもらう?」

日向「……直に帰ったほうがよさそうだな。あ……でもその前に……別れる前にさ、謝っておきたいことがあるんだ。俺は今日お前に嘘をついたんだ。ごめん」

苗木「嘘?」

日向「隠し事があってそれを隠すために嘘ついたんだ。隠し事は隠し事だから内容は言えないんだけど……それでも、友達になったって言ってくれるか?」

苗木「勿論だよ。会った初日に、全部自分の事話せる人なんていないわけだし」

日向「ありがとう。  もし次に会えたらその時に、俺の事覚えてくれてたら嬉しいよ」

苗木「日向クンが連絡さえしてくれたら、忘れたりすることもないと思うよ」

日向「はははっ そうだな。じゃあ、帰るよ……うっ」ふらっ

苗木「ちょっ、本当に大丈夫?ただでさえ髪長くて視界悪いのに」

日向「……大丈夫。本当に大丈夫だからさ。それよりほら、今日の分の撤収手伝ってくれって言ってたやつがいただろ?そっち手伝いに行ってやれよ」

苗木「そうだね、約束破ったら大和田クンも石丸クンも恐そうだし……またね!」

日向「じゃあな」


模擬店の立ち並ぶ方に走って行った苗木を見送ると、多分これが最後だろうと思うような、突き刺すような頭痛に襲われた。
長い黒髪の頭を押さえて、校舎の壁にもたれてその波が過ぎるのをじっと待った。




文化祭とはいえ、解放されていない区画もあります。
僕は、そのような区画の一部に足を運び、奥の方にある研究施設の戸を叩きました。



松田「遅いぞ。どれだけ待たせる気だ」

カムクラ「すみません」

松田「その様子だと、自然に記憶が戻った後のようだな。往来でぶっ倒れたりしてないだけいいが、お前自身が機密だということを忘れるな」

カムクラ「僕ならともかく、日向創にそれを自覚することは無理ですよ。今日も丸一日はしゃいでいましたから。
  ……チケットを手に入れたあの日以来、日向創はこの日をとても楽しみにしていました。
  実験の時期が前倒しになった時も、才能を得られれば普通に本科に入るようになるからと自身を誤魔化していただけで納得なんかは全くしていませんでした」

松田「だろうな」

カムクラ「そのせいか、彼の心残りがそのまま僕の心残りにもなってしまったようなんです。おかしいですよね?本来なら脳に直接影響を及ぼして記憶も人格も残っていないはずなのに。
  これを解消して、僕があなた方の目指したものになるためには"日向創に文化祭を見せる必要がある"と、僕は分析したんです……この話は昨日装置を使わせてもらう前にもしましたね」

松田「ああ。だが許可したのはそれによるお前の挙動をデータとしてとるためだ。何か変わったことや気付いたことはあるか?」

カムクラ「はっきりしたことがあります……今日一日は、日向創が見た希望ヶ峰文化祭だから意味があったんです」

松田「?」

カムクラ「僕なら一人で、少なくとも出し物や個人才能の展示は難なく再現できます。自分でもできる事や他者のあらを見るだけの空間なんて」

松田「退屈だろうな」

カムクラ「そうですね。ツマラナイ、だけです」


同じ肉体の"俺"の見ていたはずの光景や、会話が"僕"にとってはどこまでも無意味でツマラナイ物でした。


たとえば、アイドルによるステージ。
最初のステップからの振り返りは、もう0.5秒遅らせたほうが見栄えが良いです。
それに、最後のグループメンバーとのステージは、ステージに上がった他の面々の完成度が舞園さやかに届いていないために場所の補正がなければクオリティが下がったと形容するしかありません。

たとえば、展示にあった写真。
良い場面を切り取る事を主眼に置いているせいで、構図に関しては最高ではなく良という評価にとどまる物が多く、自己満足な作品にとどまる物が殆どでした。
体験に関しても、僕が受ける必要は全くなかったでしょうね。写真に関する知識の薄い日向創だから楽しめたわけです。


カムクラ「でも……日向創の見た希望ヶ峰の文化祭は、楽しかったですよ」


輝いていたはずの日向創の視界と、当然のことだらけの僕の灰色の視界の落差をみつめていると、気づけば僕はそんな言葉をつぶやいていました。
手術跡を隠すための黒い長髪のかつらのあたまをかきむしって悲鳴をあげたくなるほどの絶望を、隠すように。


―――終―――

乙です!皆さん自分のパスと思ったらシュートだった的な出だしからよくここまで面白く仕上げてくださいました…!

そうですね、依頼だしてきましょうか?

改めてお疲れ様でした。
恐らく失望さんの予定していたのとは大幅に違う感じに記憶関連解釈してると思いますがこんなかんじにまとまりました。

>>41
依頼はどうするんだろうとおもっていたので、お願いします。

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