メルエム「音ノ木坂学院?」 (111)

ピトー「はっ、この建物のことにございます。」

プフ「人間は学校という施設で知識を得ます。」

プフ「ここもその学校の一つのようでございます。」

ユピー「へえ…そうなのか…」

ピトー「にゃ!」

メルエム「どうかしたか?ピトー」

ピトー「この学校の中にレアモノが10匹もおります!」

メルエム「ほう…それは面白い…」

メルエム「決めたぞ!ここを制圧し、余の拠点とする」

護衛軍「はっ」

王と護衛軍は国立音ノ木坂学院を制圧するため
正門に一歩を踏み出す。
そして昇降口でいち早くピトーの禍々しいオーラに感づいた者が一人…

凛「このオーラは…マズいニャッ!!」

凛はピトーの放つオーラがかなり危険であること、
そして間違いなく自分たちの敵であることを確信した

凛「ここは凛が偵察しないと…」

凛「敵の正体を把握しないと…」

凛は下駄箱の影に隠れて敵の様子を伺う…
ゆっくりと王と護衛軍が近づいてくる…

凛(敵は全部で4人…)

凛(一人は全身真っ赤な大男)

凛(一人はでっかい蝶の翼の男…)

凛(一人は猫耳)

凛(そしてもう一人は…)

凛(とてつもないオーラ量を内包した小柄なヤツ!)

ピトー「あそこの陰に一人レアモノがおります」

凛(もうそろそろ逃げないと…)

凛「陸上競技(トラックダッシュ)!」ズダァッ

陸上競技(トラックダッシュ) 強化系

自身の足と体の前面にオーラを集中させて、移動速度を速める。

ピトー「なっ、」

プフ「…逃げられましたね」

ユピー「王、追いかけましょうか?」

メルエム「必要ない…他を探すぞ」

護衛軍「はっ」

凛は放送室に目掛けて猛ダッシュしていた
放送室の扉が見えると、ダッシュの勢いを殺さずに
その扉を思いっきり蹴破る

女子生徒「キャッ」

凛「ちょっと放送室を貸してほしいにゃ!」

凛は放送室のマイクに向かって大声で叫んだ

凛「みんなー聞いてほしいにゃ!」

凛「学校の正門からコスプレの不審者が侵入してきたにゃ!」

凛「なのでできる限り正門以外の場所から避難してほしいにゃ」

凛「それから…」

凛は思案した
μ'sの仲間と一度この敵に対抗するための対策会議をしたいと考えていた
しかし、集合場所をそのまま放送で流してしまえば
敵に襲ってくださいといっている様なものだ
ならばどう集合場所を伝えようか…
凛の導き出した答えはこれであった。

凛「μ'sミュージックスタート!!」

μ'sミュージックスタート…
この言葉が成す意味は…
μ'sメンバーは屋上に集合の意味である

屋上

穂乃果「お待たせー」

海未「お待たせじゃありません!一刻を争う事態なんですよ!」

穂乃果「ごめん…」

絵里「それで凛、敵の特徴は?」

凛「赤い大男と蝶男と猫耳とオーラ量のやばいチビだにゃ」

絵里「成程、とりあえず敵の能力が分からない以上は、相性のいい相手と
戦うなんてことはできないから…」

絵里「とりあえず真姫はアイドル研究部部室に
西木野総合病院(スタァホスピタル)を張っておいて」

真姫「わかったわ」

西木野総合病院(スタァホスピタル) 具現化系

部屋の一室を特殊な念空間に変える
この空間内には事前に登録しておいたオーラを持つ念能力者しか
入ることができないつまり、登録されていないオーラを持つ者と
練を使うことのできない一般人は空間内にはいれない
ただし、使用者である真姫が自分の手で空間内に対象を引っ張れば、
空間内に入ることが可能

絵里「残りは二人一組のツーマンセルでいきましょう」

ペア

希、凛ペア

ことり、にこペア

穂乃果、花陽ペア

絵里、海未ペア

絵里「これでいきましょう」

絵里「最後に海未、円で敵の現在位置を教えてくれるかしら」

海未「はあ、この中で円が使えるのが私だけとは…」

絵里「私も一応使えるのだけれど…」

海未「絵里の円は狭すぎます」

絵里「海未の円が広すぎるのよ、半径6kmはいくらなんでも広すぎよ」

そう、海未の円は半径6km…
ピトーの円の実に3倍の広さである!

海未「敵は四人かたまって二階の廊下をこちらに向かってきています」

絵里「わかったわ、では作戦開始!」

絵里の合図で9人は一斉に屋上を後にした

ピトー「にゃ」

メルエム「どうした?ピトー」

ピトー「屋上に集まっていたレアモノが一斉に動きだしました」

プフ「さっきも何者かの円を感じましたので、あちらも恐らく戦うつもり
なのでは?」

メルエム「面白い、正々堂々と受けてたってやろう」

希と凛は王と護衛軍のすぐそばまで来ていた

希(うちの攻撃をあの強そうな人にあてんと…)

メルエム「そこに隠れておる者!」

凛&希「」ビクッ

メルエム「攻撃のチャンスをくれてやろう…心してかかれ!」

護衛軍「王!!」

メルエム「手出しは無用だ…分かっておろうな…」

護衛軍「…はっ」

希(なんかしらんけどチャンスやん)

希(ならお言葉に甘えていかせてもらおか)

希は水晶玉をまるで野球の投手のように振りかぶると
王目掛けて水晶玉を投擲した。

希「水晶牢(クリスタルジェイル)!!」

王は希の手から放たれた水晶玉を造作もなく尾で弾き飛ばそうとした
…が、

メルエム「!?」

水晶玉は王の尾にぶつかると同時に眩い閃光を放ち、
王を水晶玉内部の念空間に幽閉した

水晶牢(クリスタルジェイル) 具現化系

水晶玉に触れた相手を水晶玉内部の念空間に幽閉する。
相手が強ければ強い程、封印できる時間が短くなる。

護衛軍「王!!」

そのまま落下していく水晶玉を凛は陸上競技(トラックダッシュ)で
落ちる前に回収すると、希を背負って一目散に駆け出した。
コンマ数秒遅れてまずプフが凛と希の追跡を始める。

プフ「おおおおおおおおおおうううううううううう!!!」

プフの追跡開始からさらにコンマ数秒遅れてピトーとユピーも
プフの後に続く。

だが、いくらがんばって追いつこうとしても、護衛軍が凛と希に追いつくことは
なかった。
ただでさえ陸上部志願で元から足の速い凛が念能力により足を強化したのだ。
蟻といえど凛に追いつくことは不可能であった。

凛「封印は何分持ちそう?」

希「多分一分も持たんと思う…」

凛「なら急がなきゃ」

凛たちの向かう場所は…
理事長室である。

理事長室の扉を凛は先ほどの放送室と同様に蹴破った

凛&希「理事長!!」

理事長「あら、乱暴なノックね、何か用かしら?」

希「理事長、これを…」

希は王の入った水晶玉を手渡す。

希「この中には侵入者の内の一人が入ってます…」

希「そいつの相手を理事長にしてもらっても?」

理事長「わかったわ」

理事長は水晶玉を受け取ると自身の念空間を展開した。

凛「さて、凛たちもいかなきゃ」

希「せやな」

凛と希は理事長室を後にした。

プフは狂った様に王の入った水晶玉を持った凛たちを追っていた
恐らく、それ以外のものなど今のプフには目に入らないだろう…
だがしかし、プフは王探索の足を止め、ある人物に見とれていた…
いや、実際には‘見とれさせられて‘いた…

プフ(クッ)

にこ(足止め成功♪)


人気爆発(アイドルオーラ) 操作系

対象の興味を強制的に術者に向けさせる

プフ「…何の用ですか…私は一刻も早く王を見つけ出さなければ
ならないのですが…」

にこ「いや~、にこじゃなくて~この娘があんたに用があるんだって~」

ことり「こんにちは♪」

プフ「…」

プフ(敵はたかが小娘ふたり…)

プフ(倒してから王を探す…それだけのこと…)

ことり「それじゃあいくよ~」

ことり「私だけの舞台(アイドルステージ)!!」

ことりが叫びながら口寄せの術のように手を地につけると、
ことりとプフの周囲がハリボテのライブステージに囲まれた。

私だけの舞台(アイドルステージ) 具現化系

ハリボテのライブステージを作り出す。
このステージは物理攻撃で壊せない。
また、中の音が外には聞こえない完全防音。

ことりが出てくるとすぐに、にこは物陰に隠れた。

そしてことりが叫んだのと時を同じくして、にこはことりと同じように
手を地に付けて囁いた。

にこ「私だけの舞台(アイドルステージ)!!」

そう、この私だけの舞台(アイドルステージ)はにこの能力だったのだ。
では、なぜわざわざことりは発動のマネをしたのか…
理由は簡単。ことりがこのライブステージの中で
プフに攻撃されないようにする為である。
ことりが発動のマネをすることで、プフはこのライブステージは
ことりが作りだしたものであると誤認する。
その中でもしプフがことりを殺してしまえばどうなるか…
死後の念によってライブステージはいつまでも残り続け、
プフは脱出できなくなる。
そうプフに思い込ませる為である。
結果、この作戦は見事に成功する。

プフ(閉じ込められましたか…)

ことり「わたしの名前は南ことりです。よろしくお願いします♪」

プフ「自己紹介…ですか」

プフ(鱗粉乃愛泉(スピリチュアルメッセージ))

プフ「王直属護衛軍のシャウアプフと申します」

ことり「よろしくお願いします!プフさん♪」

プフ(この娘のこの自信はいったいどこから…)

ことり「ところで…キレイな羽ですね~…でも…鱗粉とか吸ったらマズいかな?」

プフ(!!…この娘…私の鱗粉の危険性を見抜いた!!)

プフ(…仕方ありません…)

プフは突如自らの身をサナギに変える

ことり「!?」

プフ(さて…どう出るでしょう…)

ことり「サナギになっちゃった…」

ことり「完全に無防備なのかな?それとも攻撃したらカウンター攻撃が
ある…とか?」

ことり「どうなんですか~教えてくださいよ~」

プフ(…やや警戒のうずが強くなりましたが…)

プフ(それでもかなりの自信があることに変わりはありませんね…)

ことり「教えてくれないんですか~」

ことり「それともサナギだから喋れないんですか?」

ことり「どっちなんですか?」

プフ(…無駄口が多いですね…)

プフはこのハリボテのライブ会場からの脱出を図っていた。
蠅の王(ベルゼブブ)により、自身の体をナノサイズに分割しての
脱出を画策していた。しかし、この策はプフにとって苦肉の策であった。
この蠅の王(ベルゼブブ)は司令塔となる本体が
最小でもハチ程度の大きさを維持しなければならない。
つまり本体はこのライブ会場から出られないうえに、
分身の力は本体のそれより格段に劣るのだ。

一方…
ピトーとユピーは既に凛と希を追うことを諦めていた
追いつけもしない存在と鬼ごっこをするよりは
残りのレアモノを始末した方が良いと判断したのだ。

ピトー「それに今はプフが連中を追ってるし…」

ユピー「で?どうすんだ?手分けして探すか?」

ピトー「ボクの円があれば探すのに苦労はしないから一緒に行動した方がいい」

ユピー「なるほどな」

と、その時…
ピトーとユピーの前にプフが追っていたハズの凛と希があらわれた。

凛(なっ、マズいにゃ!!)

ピトー「にゃっ!!」

ユピー「王を攫った野郎だな!」

凛(陸上競技(トラックダッシュ)!!) ズダァ

ユピー「待ちやがれ!!」

凛と希とピトーとユピーは再び追いかけっこを始めた。
そのうち一行は学校の外へ出た。

ピトー「ユピー!空から奴らを!」

ユピー「わかった」

ユピーは背中から翼を生やすと凛と希を見つける為に空へ飛翔した。

ユピー「見つけた!」

凛と希を見つけたユピーはそのまま凛と希に対して
空からの突進攻撃を行った。
普通に突っ込んでも凛のスピードによって攻撃は
当たらなかっただろう。
しかしユピーは凛のスピードを見て、
どの場所に向かって攻撃すれば凛に攻撃が当たるのかを、
ほぼ感覚と本能で導きだしていた。

ズシャア!!

凛「ぐあああああああ!!」

希「凛ちゃん!!」

そしてユピーの攻撃は…
凛の脚にクリーンヒットした!!

凛「あああああ、脚がああああああ!!」

希「凛ちゃん…」

希「遊戯占札(スピリチュアルタロット)!!」

希「女帝(エンプレス)!!」


遊戯占札:女帝(スピリチュアルタロット:エンプレス) 具現化、特質系

傷の治癒をする。ただし、応急処置のようなもの。

ユピー「王をどこへやった…」

ユピー「言え」

希「教えるつもりはないで…」

希「遊戯占札(スピリチュアルタロット)」

希「正義(ジャスティス)」


遊戯占札:正義(スピリチュアルタロット:ジャスティス) 具現化系

タロットカードを中心に半径2mを防御結界で包む。
ただし、結界内からの攻撃は不可能。

希(よし、これでとりあえず凛ちゃんは安全や…)

希(うちがこいつを仕留める…)

希(遊戯占札:死神(スピリチュアルタロット:デス)で!!)

ユピー「おまえに教えるつもりがないなら後ろのやつから聞き出すまでだ…」

ユピー「死ね」

希(来る!)

希「遊戯占札(スピリチュアルタロット)!!」

希「力(ストレングス)!!」


遊戯占札:力(スピリチュアルタロット:ストレングス) 強化系

自身の肉体を強化する。

ユピー「オラァ!」

ズドーン

希「!!」

希は強化した肉体でユピーの攻撃を間一髪で避ける。

希「遊戯占札(スピリチュアルタロット)!!」

希「節制(テンパランス)!!」


遊戯占札:節制(スピリチュアルタロット:テンパランス) 放出系

相手のオーラ量を制限する。


希「こいつ…オーラ量がとてつもないやん!」

希(テンパランスはあんまり意味がなかったか…)

ユピー「オラァ!オラァ!」

希(くっ…)

希はユピーの猛攻を躱しながら手札を切っていく…

希「遊戯占札(スピリチュアルタロット)!!」

希「教皇(ハイエロファント)!!」


遊戯占札:教皇(スピリチュアルタロット:ハイエロファント) 操作系

敵の攻撃を一時的に逸らす


ユピー「クソがァ!!」

希「遊戯占札(スピリチュアルタロット)!!」

希「吊るされた男(ハングドマン)!!」


遊戯占札:吊るされた男(スピリチュアルタロット:ハングドマン) 操作系

相手の動作を制限する。

ユピー「チッ、体が動かねえ!!」

希(いまや!)

希(遊戯占札(スピリチュアルタロット))

希(隠者(ハーミット))


遊戯占札:隠者(スピリチュアルタロット:ハーミット) 特質系

10秒だけ相手に存在を認識されなくなる。
簡易型パーフェクトプラン。


希(遊戯占札(スピリチュアルタロット)…)

希(死神(デス)!!)

遊戯占札:死神(スピリチュアルタロット:デス) 具現化、特質系

大鎌を具現化する。この鎌で少しでも傷をつけられると、
傷つけられた者は即死する。ただし、即死という
とても強力な効果を持った技のため、
それなりの制約と誓約が存在する。
使用可能時間は3分で、能力使用から3分経つと、
使用者は24時間強制的に絶の状態になる。

希「これで…おしまいや!」

ユピー「調子に乗ってんじゃねえぞ!!」

ユピー「クソがァァァァァァァァァァ!!」

咆哮と共にユピーの体は膨張した。
ユピーの怒りのエネルギーが
限界に達したのだ。

希(あかん!!)

希はすぐに凛の為に張った正義の結界の中に入る。
せっかく隠者を使ったのにこれでは勿体無いと思うかもしれないが、
希のとった行動は正しかった。

直後…

ユピーの体は大爆発を起こした。

希「なんや…今の…」

ユピーの起こした大爆発の影響で、
校舎が破壊され、地面には大きなクレーターができていた。
希は正義の防御結界でかろうじで助かっていたが、
もしあのまま突っ込んでいたら、
命は無かっただろう。
希にかかっていた隠者ももう既に解除されていた。
希は戦慄と恐怖を覚えた。
一方のユピーはというと、
できたクレーターの中心で爆発の余韻に浸っていた。
希にとっては敵にできた大きな隙。
またとないチャンスである。

希「…」

希は大爆発によって命を危機に晒された恐怖に耐えて立ち上がり。
ユピーに向かっていく。

希(今が絶好のチャンス、今いかんともうチャンスは来ないかもしれへん)

だがしかし、そういつまでも隙をみせていてくれる程、
ユピーは優しくなかった。

ユピー(あぁん?)

ユピーは視界の端に希の姿を捉えると、

ユピー(チッ、少しくらい休ませろや…)

腕を鞭の様に変形させて希を薙ぎ払う。

希「グハッ!!」

薙ぎ払われた希はそのまま後ろの大木に激突する。

ユピー「おい…そろそろ仕舞いでいいか?」

もうそろそろで3分が経とうとしていた。
ユピーが希にゆっくり近づいてくるが、それでも
希とユピーとの距離はまだ鎌の間合いに入っていなかった。

希(もうすぐでうちは強制的に絶の状態にさせられる…)

希(死神の鎌も届きそうにないし、投げても多分当たらない…)

希(ならせめて、念が使えなくなる前に…)

希「遊戯占札(スピリチュアルタロット)…」

希「…運命の輪(ホイールオブフォーチューン)!」

遊戯占札:運命の輪(スピリチュアルタロット:ホイールオブフォーチューン) 具現化、放出系

相手の頭上に輪っかを具現化し、
相手の念能力のうちの一つを、
全く当たらないようにする。


希(これであの爆発がみんなに当たることはなくなった…)

死神使用から3分経過…
希は強制絶の状態になった。

ユピー「ふう…やっと終わったか…」

希「…」

ユピー「人間のくせに俺をここまで手こずらせるとは…」

ユピー「すげェな…お前ら」

怒りを爆発させて、頭がすっきりしたユピーが希に
対して抱いた感情は…
敗者への賞賛であった。

ユピー「せめて最期くらい楽に終わらしてやるから…」

ユピー「動くなよ?」

希が自身の死を覚悟したそのとき…

バァン

一発の銃声が響いた。

絵里「希!!」

希「えりち!!」

希の窮地に助け舟をだしたのは彼女の友人絢瀬絵里であった。
彼女の撃った弾丸はユピーの体の奥深くに食い込んだ。

ユピー「なんだ?今のは!」

絵里「希!今のうちに凛を連れて逃げて!」

希「わかった!」

希は凛を担いで真姫のいるアイドル研究部部室へと向かう

ユピー「待ちやがれ!」

当然ユピーは希の逃走を認めないが、

絵里「あなたの相手は私よ」カチッ

絵里はそう言うと六発装填のリボルバーの銃口を
自身のこめかみに向けて引き金を引いた。

絵里(回転遊戯(ロシアンルーレット)!!)

回転遊戯(ロシアンルーレット)  具現化、放出系

そのままロシアンルーレット。特殊な念弾を相手にヒット
させることで、能力が発動。
自身のこめかみにリボルバーの銃口を当てて引き金を引く。
銃弾が出てこなかった場合は、出てきた場合のダメージを
念弾が命中した被術者に与える。
弾が装填されていればされている程(危険である程)
威力があがる。
絵里は六発すべてを装填して、念によって弾丸が出ないようにしているので、
威力は常に最強。

ユピー「!?」ドパァン!!

ユピーに絵里の回転遊戯(ロシアンルーレット)の攻撃がヒットする。
上記の理由で常に最強の攻撃を食らったハズだが、ユピーは
ピンピンしていた。流石キメラ=アントといったところだ。

ユピー「次はてめえが相手か…いいぜ…」

ユピーは咆哮した。

ユピー「ぶっ壊死て殺る夜!!」

希とユピーの戦闘の少し前…

ピトーは何処かから来る謎の矢による攻撃を弾いていた。

ピトー「どこから攻撃してきてるか分からにゃいけど…」

ピトー「見えない場所からの攻撃でここまで正確だとは…」

ピトー(恐らく円でボクの位置を特定しながら撃ってきてるな…)

この攻撃は…予想がつくとは思うが、
海未による攻撃である。

愛と勇気と紅蓮の弓矢(ラブアローシュート) 操作、放出系

相手の位置を目視でも円で特定さえできれば
その相手に当たるまで追尾することができる矢を放つ。
海未の円は半径6kmなので、追尾の範囲は恐ろしく広い。

海未による矢の攻撃、
実はただ闇雲に撃っていたわけではない。
おびきだしていたのだ。
ピトーは矢の追尾できる距離を見極めるために
校舎からどんどん遠ざかっていき、
今はアルパカ小屋の近くにきていた。
その近くには穂乃果と花陽が待ち伏せしていた。

穂乃果「花陽ちゃん!」

花陽「はい!」

花陽「百姓の愛と努力の結晶(ライスシードマシンガン)!!」ズダダダダダダダ

ピトー「!?」

百姓の愛と努力の結晶(ライスシードマシンガン) 放出系

米粒のような弾丸を撃ちだす。
弾丸が相手に命中すると、相手のオーラを吸って成長し、稲になる。
稲の米を食べることで、相手のオーラを吸収できる。

矢の相手をしている最中に突然の後ろからの攻撃である。
さすがのピトーでも、最初の数発は躱すことができずに当たってしまう。
弾丸の当たった箇所から稲が生えたのを見て、ピトーは確信する。

ピトー(この攻撃は弾いてはダメだ!全部躱さなくては…)

花陽の攻撃に続けとばかりに穂乃果が攻撃を仕掛ける。

穂乃果「可能性を感じ取る皮膚(ホノカチャンフィーリング)!!」


可能性を感じ取る皮膚(ホノカチャンフィーリング) 強化系

自身の敏捷度と反応速度をあげる技
相手の素早い攻撃をいとも容易く躱したり
高速で攻撃できたりする。

ピトーは穂乃果の攻撃を腕をクロスさせてガードする。

ピトー(これはどうやら本気で戦わないとマズいかな…)

ピトー「黒子舞想(テレプシコーラ)!!」

ピトーの念によって、念人形が出現した。
この黒子舞想(テレプシコーラ)はピトーが全力で戦う時に発言させる
能力である。

ピトー(王の為にキミたちを始末する!!)

一方…

理事長室に展開された念空間の中で、
理事長と水晶玉から出てきた王とが対峙していた。

メルエム「その方が余の相手か…」

理事長「ええ、そうよ」

メルエム「なかなか強そうではないか…面白い…潰してやろう…」

理事長「望むところだわ」

理事長と王の戦いも始まろうとしていた…

校舎内の廊下

ことり「それで穂乃果ちゃんったらとんでもないことを言いだして…」

プフ(あらかた私の分身は抜け出せましたか…)

プフ(外にいる娘にも気づかれないようにしましたし…)

プフ(しかしこの娘…あれから延々と喋り続けていますが…)

プフ(いったいなにを…)

ズキン

プフ(!!)

異変が起きた
まず、プフは頭痛を感じたのだ。

プフ(頭痛…なぜ…)

頭痛はどうやら一時的なものではないらしい。
頭痛が収まることはなかった。
次に耳からなにかが滴る感じがした。
プフがその滴る何かを手で触って見えるところに持ってきたとき
プフは驚愕した。

プフ(これは!!)


プフの手についていたもの…
キメラ=アント独特の青い色をしていたが、
まぎれもなくそれはプフ自身の血であった。

プフ(わ、私の体にいったいなにが…)

プフ(!!!)

あれこれ考えているうちに頭痛が我慢の限界まで達してきた。
たまらずプフはサナギの状態を解除した。
中から出てきたのは、耳から血を流した小さなプフであった。

ことり「そろそろ効いてきましたか…って、」

ことり「かわいい~♪」

ことりはアルパカと戯れている時のように、
目をキラキラと輝かせている。

プフ「私の体に…いったい…なにをしたのですか…?」

ことり「あなたがここに囚われた時から既に勝負は始まっていたんです。」

プフ「なにを…」

ことり「ほら、わたしって今までずっと無駄話をしてたじゃないですか」

ことり「あれは私の声を長い時間あなたに聞かせる為だったんです♪」

ことり「それが私の能力…」

ことり「脳溶声(ブレインブレイク)…」

脳溶声(ブレインブレイク) 変化、放出系

オーラを声に変える。
発動中にことりの声を聞いた者は
脳みそが徐々に溶けていく


ことり「私の能力は敵味方関係なく周りの人の脳みそを溶かしてしまうんです。」

ことり「だからこうして私だけの舞台(アイドルステージ)に…って」

プフ「」

ことり「もう聞いてませんか…」

私だけの舞台(アイドルステージ)の外

コンコン

にこ「zzzzz~」

コンコンコン

にこ「むにゃ…」

ドンッ

にこ「ふぁ!」ビクッ

ドンドン

にこ「その調子だと終わったみたいね…」

にこ「解除!」

スウゥゥ

ことり「も~にこちゃんおそいよ、何してたの?」

にこ「ふぁ、寝てたわ」

ことり「も~にこちゃんバカじゃないの?」

にこ「バカじゃないわよ!いいから他の戦いの助っ人にいくわよ」

ことり「にこちゃんは足手まといの気も…」

にこ「うるさいっ!」

アイドル研究部部室

コンコン

希「真姫ちゃん、入るで」

真姫「希…と凛!!どうしたのよ!その脚!」

希「敵の攻撃を食らってしもうて…」

凛「脚がああああ…脚がああああああ…」

真姫「…待ってなさい、今治してあげるわ…」

真姫は部室の机に凛を寝かせると、
治療を始める。

真姫「真姫ちゃんの素晴らしい手術(スタァオペレーション)」

真姫ちゃんの素晴らしい手術(スタァオペレーション) 特質系

治療能力。
怪我や病気を治す
怪我の具合によって治療にかかる時間も変化する。

真姫「この様子じゃ30分もあれば完治するわ」

希「ほんと!?」

真姫「嘘なんかついてもしょうがないでしょ」

希「良かったー…あっ、それから…」

真姫「?」

希「うち、今強制絶の状態なんよ…だから…」

真姫「別に構わないわよ、ここの方が外より安全なんだし…」

希「ありがとう…真姫ちゃん…」

真姫「べっ、別に…///」

絢瀬絵里がユピーの元へ向かった理由はただ一つ。
希のオーラが消えたからである。
海未が既に円で発見したピトーと矢で交戦していた時、
突如希のオーラが消滅したのである。

海未「希のオーラが…消えた…?」

絵里「そんな!希!」ダッ

海未「あっ、絵里!待ってください!」

そんなこんなで今絵里はユピーと戦っている

絵里「くっ」カチッ

ユピー「クソが!」ドパァン

絵里による遠距離攻撃に腹を立てたユピーは
直接叩き潰すべく絵里との距離を縮める。
絵里との距離が2mくらいまで迫った時、
ユピーは凍えるような寒気に襲われた。

ユピー(なんだ!?こりゃあ…)

体内を巡る血液でさえ凍り付きそうな寒気
その寒気によって、ユピーの動きが一瞬鈍る。
その隙を絵里は見逃さなかった。
今度は逆に絵里がユピーとの距離を一気に縮めたのだ。
絵里はユピーの懐まで迫っていた。

絵里「局所的寒冷警報(ツンドラスマッシュ)!!」

ドゴォ!

ユピー「!?」

局所的寒冷警報(ツンドラスマッシュ) 強化、変化系

殴った箇所を凍結させる。
オーラを拳に集め、さらに
拳に集めたオーラを冷気に変化させる。

絵里はユピーに局所的寒冷警報(ツンドラスマッシュ)による
腹パン攻撃をしかけて見事に命中させる。
ユピーは一旦絵里と距離を取るため、
後ろへ後退した。
ユピーは殴られた箇所を目視で確認する。

ユピー(あのパンチは殴った箇所を凍らすのか…)

ユピー(パンチについてはよーく分かった。だが…)

ユピー(ヤツに近づいた途端に感じた異常な寒気はいったいなんだ?)

ユピーが疑問に思っている寒気の正体…
それもまた、言わずもがなで絵里の能力である。
絵里の円は円の最低条件の2mと非常に狭い。
だが絵里はそれで満足していた。
彼女の円は索敵や空間把握を目的とした物では無いからだ。

シベリアの冬(アブソリュート・ゼロ・ワールド) 変化系

円の応用技。
円を構成しているオーラを冷気に変化させる。
こうすることで、円の中に入ってきた者を凍死させる
自動防御結界を作りだす。

絵里(私のシベリアの冬(アブソリュート・ゼロ・ワールド)の中に入ってきても
凍死しないなんて…なかなかタフね…)

ユピー(とにかくあの寒気がある以上、近距離攻撃は得策じゃねぇな…)

ユピー(爆発で吹き飛ばしてやるか…)

ユピーは爆発のための膨張を始めた。

絵里「マズいっ!!」

今の絵里にはこの爆発を避ける術はない。
絶対絶命のピンチかと思いきや…

ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンン!!

爆発は絵里には当たらなかった。
その理由は、希が絶の状態になる前にユピーに施した
運命の輪のおかげであった。

ユピー「クソがァァァァァァ!いったいどうなってやがる!!」

爆発が通用しないと理解したユピーは別の攻撃方法を試みた。
腕に怒りエネルギーを溜めて、そこから
怒りエネルギーの砲撃をしたのだ。

絵里「!?」

この砲撃は爆発とは違い、効果範囲がさほど広いわけではなかった。
故に避けることはできたのだが…

ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンン!!

威力が凄まじいものだった。

絵里(当たったら…死ぬ!!)

絵里はユピーの攻撃を躱しながら回転遊戯(ロシアンルーレット)で攻撃を
していたが、絵里の攻撃は決定打に欠けていた。
拮抗した勝負が続く…
が、そこへ早々にプフを始末したことりとにこがかけつける。

にこ「絵里!」

ことり「絵里ちゃん!!」

ユピー「チッ、次から次へと湧いて出やがって…」

苛立ちを隠せないユピーは体から鞭状の腕を何本も生やして
一斉に三人を攻撃した。

にこ「人気爆発(アイドルオーラ)!!」

にこはユピーの攻撃を全て自分に集めた。
そして…

絵里「局所的寒冷警報(ツンドラスマッシュ)!!」

一か所に集まった攻撃を絵里が弾き飛ばす。
その隙にことりがユピーの懐に潜り込み攻撃をしかける。

ことり「ことりのおやつ(・8・)!!」


ことりのおやつ(・8・) 放出系

念弾を飛ばす。
距離が近ければ近いほど
威力がハネ上がる。

ユピー「クソがクソがクソがクソがァァァァァァァァァァ!!」

ユピーは咆哮と共に空へ飛び立った。

ユピー「てめえらはここから吹き飛ばしてやる!!」

ユピーは上空からの砲撃を開始しようとしたが、
その上空、というのがユピーの命とりになった。

海未「あれは…敵ですか!!」

海未が標的のピトーや穂乃果たちがよく見えるようにと
屋上に来ていたのだ。

海未「…私が仕留めましょう…」

海未はそう呟くと弓に矢を番えてユピーに向ける。

海未「病愛(ラブアローシュート改)!!」

病愛(ラブアローシュート改) 強化、放出系

愛と勇気と紅蓮の弓矢と異なり、普通の弓矢のような
軌道でとんでいく矢。
そのため射程も普通の矢と同等だが、
威力が凄まじい物となっている。

海未の放った矢は見事にユピーの心臓を撃ち抜いた。

ユピー「ガハッ!!」

撃ち落とされたユピーはそのまま地面に落下した。

ユピー「…ぐはっ、」

心臓を撃ち抜かれてなお、ユピーは生きていた。
キメラ=アントはとても丈夫な生物なのである。

ことり「わー落ちてきた…」

にこ「…どうする?とどめさすの?」

絵里「そうね、今のうちにちゃっちゃと刺しちゃいましょうか」

絵里はゆっくりとユピーに近づく。

絵里「今…楽にしてあげるから…」

絵里「動かないでね?」

絵里はユピーに局所的寒冷警報(ツンドラスマッシュ)を叩き込んだ。

ピトーは苦戦していた。
弾くべき矢の攻撃。
躱すべき米粒の弾丸。
そして防ぐことでしか対処しようのない素早い攻撃。
どの能力もそれぞれピトーとの1対1での戦いなら、
ピトーは易々と敵を殲滅できただろう。
しかし、今ピトーはこれらの能力と1対3で戦っているのだ。
攻撃するチャンスは全くと言っていいほど無く、
ピトーは防戦一方の戦いを強いられていた。

ピトー(くっ、どこかに攻撃のチャンスは無いのか…)

そう思っていた矢先、矢の攻撃が突如として止んだ。
海未がユピーを発見、迎撃の体勢をとったためである。
そのことにより、ピトーに攻撃の機会ができた。

ピトー(チャンス!!)

ピトーはここぞとばかりに穂乃果に攻撃を仕掛ける。
穂乃果はいくら能力により、反応速度と瞬発力を上げているとはいえ、
相手は王直属護衛軍。頬に傷を負う。

ピトー(チッ、今のはかすり傷だったけれど…)

ピトー(いける!このままいけばヤツを倒せる!)

そう思った束の間…
穂乃果は頬に滴る血を手で拭った。
拭われた頬には…ピトーのつけた傷は無かった。

ピトー(ニャッ!?)

穂乃果「…超速再生(ホノカチャンヒーリング)」


超速再生(ホノカチャンヒーリング) 強化系

自身の再生能力を高める。
ほんの切り傷程度なら一瞬で…
腕が切り飛ばされても1時間ほどでまた生えてくる。

穂乃果「どうしたの?せっかくつけた傷が簡単に治されて悔しい?」

ピトー(こいつ…)

穂乃果「えへへ…まあ、とにかく」

穂乃果「私、あなたを殺す!殺るったら殺る!!」

ピトー「ボクだって同じだ…」

ピトー「王の為にキミたちを始末する。」ダッ

ピトーは矢の攻撃が止んでいる今のうちに穂乃果を始末するべく攻撃を仕掛ける。
穂乃果もピトーの攻撃を躱しながら攻撃をするが、
ピトーの攻撃はどんどん精度を上げていく。
穂乃果もうまく躱してるつもりだが、
ピトーの攻撃によって負う怪我はどんどん深くなっていく。
穂乃果は傷を負うたびに超速再生(ホノカチャンヒーリング)で
傷を再生しているが、このまま攻防が続いていけば
いずれは再生しきれない程のダメージを負うのではないかということを痛感していた。

穂乃果(このまま長期戦になるのは私にとっては分が悪い…)

穂乃果(何か…何か決定打が欲しい…)

花陽(穂乃果ちゃんが押されてる…私が補助しなきゃ…)

花陽は穂乃果が押されてる事を察して行動に移る。

花陽(年貢の納め時(ペイドライス)!!)


年貢の納め時(ペイドライス) 操作系

百姓の愛と努力の結晶(ライスシードマシンガン)で生えてきた稲を
操作する。

ピトー(!?)

ピトーの体から生えていた稲はそのままピトーを拘束するべく
にょきにょきと蠢く

花陽(年貢の納め時(ペイドライス)を発動させるには
少し稲の量が少ない気もするけど…)

花陽(私ができるサポートはここまで…)

花陽(あとは穂乃果ちゃんに任せるしかない!)

穂乃果(この一撃で決める!)

ピトーと穂乃果、互いの攻撃が交差する。

ズシャア

穂乃果「…」ボトッ

ピトー「…」

ピトーの攻撃によって穂乃果の左腕は見事に切り取られた。
一方のピトーの方は無傷であった。

ピトー(あっちは片腕損傷に対してこっちは無傷…)

ピトー(このままいけば勝てる!)スッ

ピトーが二度目の攻撃を加えようとしたその瞬間…

ピトー「ゴハッ!!」

ピトーは吐血した。
ピトーはいったい何が起こっているのか分からなかった。

ピトー(ぼ…ボクの身にいったい何が…)

穂乃果「…」

穂乃果「この勝負、穂乃果の勝ちだね!」

ピトー「ボクに何を…した…」

穂乃果「自分の死因ぐらいは知りたいよね…」

穂乃果「いいよ、教えてあげる。」

穂乃果「ほら、あなたはこれで死ぬんだよ!!」

穂乃果が取りだした物は…
殺虫剤だった。

ピトー(!?)


穂乃果「実はあなた達のことを探しながら少し調べたんだ」

穂乃果「キメラ=アントっていう虫の仲間なんだよね?」

穂乃果「だから殺虫剤で死んだらなんか皮肉っぽいかなって」

ピトー「そんなバカな!殺虫剤くらいでボクはこんなことには…ゴホッゴホッ」ビチャ

穂乃果「ただの殺虫剤じゃないよ」

穂乃果「穂乃果のオーラは強化系だから、周の要領で毒性を強めたんだ」

ピトー「それでもそんな程度じゃボクは…」

穂乃果「そう、だからこの技は周だけじゃなくて硬の技術も応用してるんだ♪」

穂乃果「この技の名前は…えーと…」

穂乃果「穂むらの餡生地(オーラホールド)でいいかな?」

穂むらの餡生地(オーラホールド) 強化、放出系

周と硬の応用技。
道具に自身のオーラを集中させることで、
その道具の持つ効果を飛躍的に増大させる。

穂乃果は今の一瞬のうちに、飛躍した反射神経でピトーの攻撃を
ギリギリ死なないように躱した後、物凄い速さで自身のオーラを
殺虫剤に集約させたことになる。

ピトー(王…どうか…御無事で…)クハッ

ピトーは死ぬ間際まで王の安否を気にかけた。
護衛軍の鑑である。

ドサッ

穂乃果「…ふう、やっと終わったよー」

穂乃果は殺虫剤に回していたオーラを回収し、
切り飛ばされた左腕の傷口に集める。

穂乃果「これで15分くらいで生えてくるかな?」

花陽「あの…普通に真姫ちゃんにくっつけてもらった方が良いと思います…」

穂乃果「それもそっか、じゃあ真姫ちゃんのとこに行ってくるね」

花陽「気を付けてくださ~い!!」

海未は走っていた。
自分が感知した一大事をみんなに知らせる為である。
走っているうちに海未はことりと絵里とにこを見つける。

海未「ことり!絵里!にこ!」

にこ「海未ちゃんだ」

絵里「いったいどうしたの?」

海未「た、大変です!!」

海未「理事長の念空間が消えました!」

ことり「嘘…」

絵里「それは確かなの!?」

海未「今から確認にいきましょう!!」

理事長室

絵里「これは…」

にこ「本当にキレイサッパリ消えてるわね」

海未「オーラの残滓さえ残っていません…」

絵里「理事長が倒されたということかしら?」

海未「そうでしたら理事長を倒して念空間から出てきた敵の存在も感知できるハズです…」

にこ「いったいどうなってるニコ?」

ことり「嘘…そんな…お母さん…」

この場にいる四人の中で唯一ことりだけが理解していた。
母親の念空間が突如として消滅した理由を…

海未「ことり、何か知っているのですか?」

ことり「…」

ことり「恐らくお母さんは…敵と心中したんだと思う…」

ことり「虚無間(ゼロ・オブ・ゼロ)で…」

今からここに書くのは、念空間の中で行われた王と理事長の会話と行動である。

理事長「では、始めましょう…」

理事長が手をあわせると、周囲に無数の黒い球が下方からゆるりと出現した。
大きさは最大でバランスボール大の物から、
最小でパチンコ玉サイズの物まで様々であった。

理事長「暗黒物質(ダークマター)」


暗黒物質(ダークマター) 操作、具現化系

無数の様々なサイズの黒球を出現させる。
この球で攻撃と防御をこなす。


メルエム「ほう…面白い」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

王の周りにも膨大なオーラが渦を巻き始める。

メルエム「では…ゆくぞ!!」ダッ

王による超速の攻撃。
並みの念能力者では対応することもできないその攻撃を
理事長は暗黒物質(ダークマター)で弾いていく。
この球は攻守一体の物なのだ。
そして王は、弾かれる度に常に最短距離で
理事長の懐にとびかかり、攻撃を加えようとする。

メルエム(この球の動きというものも…所詮は型通りの動作しかできぬ物であろう)

メルエム(既に見た球の動きでは受けきれぬ角度より攻撃を加えれば)

メルエム(新な動きで防ぐしかない道理)

メルエム(その組み合わせを全て検証し、ヤツがさらに新たなる動きをせざるをえない
     角度からの攻撃を導き出す…)

メルエム(…とはいえ、ヤツの型は有限なれど、その組み合わせは甚大…)

メルエム(無限に等しい数に及ぼう…)

メルエム(だが、個には必ず特有の呼吸がある…)

メルエム(無意識のうちに好む型、嫌う型があり、自ずとその者独自の流れを形作る…)

メルエム(呼吸の流れを掴めさえすれば、幾多ある技の枝からヤツがどれを選択するかを
     探るは充分に可能!!)

メルエム(無数にそそり立つ針の穴から正解を導きだし)

メルエム(正確に糸の矢を貫き通しその先の的を射ぬくが如く)

メルエム(その作業は難事なれど…)

メルエム(やってみせよう!!余には叶う!!)

メルエム(音ノ木の兵よ、頼むからその前に、精魂果ててくれるなよ?)ニタァッ

理事長(笑うかよ…)

理事長(ま、私も楽しんでいるからお互い様だけどなー)

理事長(あらゆる角度からの攻撃にも、最短で体勢を立て直し反撃に転じてくるとは…)

理事長(動きの選択を誤れば、その速度は次なる暗黒物質を繰り出すまでの間をも
    奪うでしょう…)

理事長(気を抜けば、動く前に四肢をもがれ、勝負が決するということ…)

理事長(正確無比に最善手を打ち続けるしかない根気の勝負…)

理事長(それが尽きた時が貴様の潮時!!)

ニタァァァァ

理事長(…だと思っているのでしょう?蟻の王よ!!)

理事長(詰めるものなら詰んでみなさい…)

理事長(深淵(ブラックホール)をみせてやるわ!!)

数百数千と重ねた打撃が僅かではあるが王の内部に鈍い痛みを蓄えつつあった。
しかし…

ズシャアァァ

理事長「!?」

理事長の右脚はキレイサッパリ切り飛ばされていた。

メルエム「どうした?止血しなくてよいのか?」

メルエム「死ぬぞ?」

理事長「笑わせないで…」

理事長は傷口を塞ぎ、次の攻撃態勢にはいる。

メルエム「ほう…」

理事長「誰が死ぬって?」

理事長「ラッキーパンチで調子に乗んなよ、勝負はこれからよ」

メルエム「…全くもって感服する。気力が些かも衰えていないのは驚異だ」

メルエム「だが貴様が脚を失ったのは半ば必然…」

メルエム「悪手とは言えぬまでも正着ではない防御が招いた結果だ。」

メルエム「貴様が無意識に嫌う型…その存在が」

メルエム「本来無限であるはずの選択に標を示すのだ。」

メルエム「次は左腕を貰う」

理事長「…」

シュン


そこからの攻防は時間にして一分に満たなかったが…

生涯最後

その覚悟で放った理事長の暗黒物質(ダークマター)は
互いの力量、精神の高揚と相まって…

ズバァァァァン

千を超える拳の遣り取りとなって
両者の間に無数の火花を生んだ

そして

その瞬間は

訪れた

僅かに現れる技の偏り、癖や傾向…
型と呼ぶにはあまりに乏しい‘揺らぎ‘
身を盾に暗黒物質を受け続けることで
王はその先に見える幽かな光を探し出し、

そして…

辿り着いた

ズシャアァァァァァァァァァァァ

理事長「!?」

メルエム「これで…仕舞いだ…」

王は宣言通り理事長の左腕を切り飛ばす。

理事長「…蟻の王よ」

理事長「腕が無ければ戦えないとでも?」

戦いとは…心の所作
心が正しく形を成せば思いとなり
思いこそが実を結ぶのだ

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

メルエム「!?」

深淵(ブラックホール)は、敵背後から現れし大穴が
有無を言わさぬ暗黒の吸収をもって
対象を優しく中へ誘い
理事長の渾身のオーラを
目も眩む程の光線に変え解き放つ
無慈悲の超爆発(ビッグバン)である。

カッ

シュウウウウウウウ…

理事長「ハァ、ハァ、」

コツコツ

理事長「!?」

メルエム「…まさに個の極地。素晴らしい一撃であった。」

理事長(深淵(ブラックホール)でさえも…)

メルエム「余は蟻の王として生を受け、生命の頂点に立つことを許された。」

メルエム「それは種全体の本能に基づく悲願であり、種全体が余の為だけに進化する。」

メルエム「余への種全体の惜しみない奉仕の末、辿り着いた賜」

メルエム「お主は人間の一個であって王でなく…余は種の全てを託された王であること…」

メルエム「それが勝敗を分かつ境」

メルエム「長い進化の末端が全て余に集約されるように機能した…キメラの生態に」

メルエム「多用な個の在り様を許した人間が敵う道理など無いのだ」

メルエム「貴様の孤独な戦いももう終わったのだ。」

理事長「…」

理事長「ふふ…はははは…」

理事長「私は…独りじゃない…」

理事長「人間を舐めるなよ…メルエム」ゴゴゴゴゴゴ

メルエム「!?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

メルエム(なんだ…こいつは…)

理事長「蟻の王メルエム…お前さんは何もわかっちゃいねーよ」

理事長「人間の底すらない悪意(進化)を!!」

メルエム「!?」ざわっ

それは…王が初めて感じる恐怖だった。
全てを絞りつくし、死を待つだけの女の言葉が
決して虚栄の類ではないと思える根拠が
その顔に表れていた。

理事長「虚無間(ゼロ・オブ・ゼロ)」

理事長「地獄があるなら…また会いましょう」

メルエム「貴様は…!!」

そう…貴様は…

詰んでいたのだ

始めから


虚無間(ゼロ・オブ・ゼロ) 特質系

念空間を中身ごと完全消滅させる
この念空間は理事長が中にいないと存在できないため、
この技は敵との自決用の技である。

蟻襲来から数か月後

穂乃果「絶対ライブ成功させるよ!」

穂乃果「1!」

海未「2!」

ことり「3!」

真姫「4!」

凛「5!」

花陽「6!」

にこ「7!」

希「8!」

絵里「9!」

穂乃果「よーし!行こう!」

全員「μ'sミュージックスタート!」

ことり(お母さん…)

ことり(キメラ=アントの襲来以降も色々あったけど…)

ことり(あれからわたしたちの活動も認められてお母さんが命を賭けて守ってくれた学校は
    存続が決定したよ)

ことり(ありがとう…お母さん!)

おわり

理事長選挙編に続かない。

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