―――隠れ家


コーーンッ コーーンッ

ミカサ「ふう…だいぶ割れた。休憩にしよう、ヒストリア」

ヒストリア「うん」

ミカサ「…」

ヒストリア「…」

ミカサ「…ユミルの事をずっと考えてるの？」

ヒストリア「！」

ミカサ「ユミルは…自分の意志であっちに行ったのだと思う」

ヒストリア「うん……私も、そう思うけど…」

エレン「おい、ミカサ、ヒストリア！お疲れさん、水だ」

ヒストリア「ん」

ミカサ「ありがとうエレン。掃除は終わった？」

エレン「いや、まだだ、ジャンの部屋が汚くてな」

ユミル「全くだ、あいつの部屋は汚ないからな」

ベルトルト「だよね、リヴァイ兵長に叱られちゃうよ」

ライナー「そいつは大変だな、あははは」

エレン「ははははは………」


エレン「…は？」

ライナー「…」

ベルトルト「…」

ユミル「…」

ミカサ「どうしたのエレン？」

エレン「え、いや…そこにユミルやライ…」

ヒストリア「ユミルは向こうに行っちゃったの。冗談でもそんな事は言わないで」

エレン「え？あ、ああ…すまん…そうだよな。気のせいだよな」

ミカサ「エレン…色々あったから疲れてるのだろう」

ヒストリア「うん、ゆっくり休んでた方がいいよ」

ユミル「さすが私のヒストリア、お前の通りだぜ」ギュウウ

ヒストリア「ん…なんか暑い…」

エレン「って、やっぱいるいる！！後ろにいる！！」

アルミン「食料がどれも高騰してたね…これがなくなったら僕ら大変だよ」ザッザッ


エレン「お、アルミンの声だ。あいつら戻ったのか」

ライナー「俺が手伝いに行くぜ、なあ？行くだろ？ベルトルト」

ベルトルト「…もちろん、僕も行くよ」

エレン「………」


ミカサ「ふっ！」パコーーンッ

ユミル「ミカサと一緒に薪割りか…真面目だなぁヒストリアちゃんはよ」ギュウウ

ヒストリア「…何か暑くない？ミカサ」

ミカサ「そりゃ薪割りしてるから」

エレン「………」

エレン「…うん、きっと俺の幻覚だ。掃除に戻ろう」

ジャン「ほら、持てよサシャ。芋だ…お前の友達だろ？」

サシャ「な、何の事ですか？覚えてないです…」

ライナー「心配するなサシャ、あの事件を忘れられる奴は同期にはいないさ」

ベルトルト「あれは衝撃的だったからね、あははは」

アルミン「笑ってないで皆も手伝いなよ」

ライナー「ああ、そうだな…すまん」

ベルトルト「僕はこれを持つよ」

ジャン「おう、じゃあお前はこの箱を………」

ライナー「…」

ベルトルト「…」

ジャン「って、はあああああ！！？」


ライナー「おっと、ビックリした」

ベルトルト「急に何だいジャン」

ジャン「な、な、お前が何だよ！？なんでここにいるんだ…」

アニ「今のはなかなかいいリアクションだったよ、ジャン」

ジャン「ほわあああああああっ！！？」

エレン「おい、ジャン！！お前靴の汚れ落としてから入ったか…」

ジャン「うっせぇな、それどころじゃねぇの見たら分かるだろ！！！」

エレン「あのな、今朝だってお前の部屋の…」

アニ「ったくうるさいね、あんたはジャンの母ちゃんかい…」

エレン「………」

ライナー「よう、朝から親子喧嘩か？なんてな、あははは！」

エレン「…」

ベルトルト「ジャンの母ちゃんwwママン・イェーガーwww」

エレン「…」ｲﾗｯ

ジャン「…な？何でこいつらがここに」

エレン「何のことだ？俺にはわからん。それより部屋の掃除をだな」

ジャン「お前見てみぬフリしたな！？」

マルコ「おいおい、ジャン…何をギャーギャー騒いでるんだい」

ジャン「っせーな、もう何か頭がごちゃごちゃして…」

マルコ「それは大変だね」

ジャン「………」

ジャン「………」


ジャン「あ゛？」


マルコ「あ、しまった。死んだフリしなきゃ死んだフリ……よいしょっと」

ジャン「待てコラアアアアア！！！」

マルコ「ジャン、話かけないでくれ。いま僕は死んでる事になって…」

ジャン「なら、わざわざこんなとこで死んだフリなんかすんな！飯食うとこだぞそこはあっ！！！」

ライナー「そういう問題じゃないだろ、ジャン」

ベルトルト「うん、そもそもマルコがここにいるのがおかしいんだよ」

ジャン「お前らが言うな、お前らが！！！」

―――夕方

リヴァイ「…」

エレン「…」

ミカサ「…」

アルミン「…」

ジャン「…」

コニー「…」

サシャ「…」

ヒストリア「…」

ヒストリア「私は…レイス家の領地のある牧場で生まれました」

ユミル「ほう」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

ヒストリア「…なんか頭かゆい」ポリポリ

ベルトルト「ヒストリアが自分の過去を話し始めたようだ」

アニ「それにしてもヒストリア、すごく暗くなっちゃったね」

ライナー「ああ、ユミルが俺達についてきちまったからな…自分を失ってしまったんだろう。可哀想に…」

ユミル「…ヒストリアには悪い事しちまったな。いまあいつは元気にしてるだろうか…だが私はお前が自分の為に幸せに生きられる日が来るのを願ってる。そして生きていれば、いつの日かまた…」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

アニ「ったく、泣かせんじゃないよ」ｸﾞｽｯ

ライナー「俺は決めた。ヒストリアを必ず守ると………結婚しろ」

ヒストリア「……」

リヴァイ「おい、うるせえぞお前ら」

ベルトルト「あ、はい、すみません」

ヒストリア「………」

ユミル「ヒストリア、続きを話せ」ﾎﾟﾝｯ

ヒストリア「…」

ヒストリア「私、疲れてるのかな…」

エレン「ああもう、無視できねぇ！お前ら、なんでここにいるんだよ！？」

ライナー「なんでって…なあ？」

ベルトルト「僕らは仲間だからね」

アニ「皆が集まってるなら一緒にいたいよ」

エレン「…お前らふざけてんのか？」

ハンネス「まあ落ち着け」ﾎﾟﾝｯ

エレン「うええええ！？は、は、ハンネ…」

ペトラ「もう、何をそんなに騒いでるの」

オルオ「ちっ、うっせぇガキだな…」

エレン「な、なんで…」

エルド「なんでって…なあ？」

グンタ「そりゃリヴァイ班の先輩として様子見に」

エレン「いやいやいやいや！な、訳のわからない事を…」

カルラ「エレン」

エレン「ひょわああっ！？」

カルラ「そろそろ起きなさい」

エレン「………え？」

ユミル「まだ気付いてないのか…さっさと起きろよ」

エレン「え」

ユミル「皆が待ってるぜ」



―――――――

―――――


―

―――――

…うっ…

エレン「…あれ…」

アルミン「エレン！」

ミカサ「エレン！良かった！！」

エレン「ミカサ…アルミン…俺は…」

エレン「…ライナーやベルトルトやアニやユミルやマルコは…？」

ミカサ「え？」

アルミン「何を言ってるんだエレン」

エレン「…ああ…そうか…」

夢だったのか……

アルミン「君は、クーデターの最中に巨人化した後に暴走してしまい…なんとか巨人から引きずり出す事が出来たが、ずっと気絶していたんだ」

ミカサ「…でも、起きて良かった」

エレン「…」

アルミン「クーデターは成功した。後は僕ら子供じゃなくてピクシス司令やナイル団長や大人たちの仕事だ」

エレン「成功…か。良かった」


何であんな夢を見たんだろう………


…ああ、そうか…

―――――新生調査兵団 壁外遠征

ハンジ「みんな、準備はいいね。我々はこれよりマリアを目指す」

エレン「…」

ミカサ「…」

アルミン「…」

ジャン「…」

コニー「…」

サシャ「…」

ヒストリア「…」

アルミン「…ヒストリア、本当に良かったの？女王になっていれば危険な目に遭わなくて済むのに…わざわざ兵士を選ぶなんて」

ヒストリア「…ユミルと約束したから。自分の為に生きるって」

ヒストリア「だから私は自分のやりたいように生きる」

コニー「ヒストリアは自分で選んだんだ、他人がとやかく言う権利はねぇ」

アルミン「そうだね」

エレン「…」

ミカサ「エレン？」

エレン（あんな夢を見た理由がわかった……）


どれだけバラバラになっても…二度と会えなくても、敵同士になってしまっても、もう戻れない事はわかっていても。

やっぱり俺は…本心では
ずっと皆と平和に暮らしていたかったんだ

これ以上…何も失いたく無いよな


エレン「…」

エレン「死ぬなよ、ミカサ」

ミカサ「！」

アルミン「エレン…大丈夫かい？ずっと様子が…」

エレン「大丈夫だ、もう迷わない。みんな、約束してくれ」

アルミン「！」

エレン「必ず生きて帰ろう！」

ジャン「お前に言われなくてもそのつもりだよ、エレン」

サシャ「私も死ぬ気なんかありませんよ！」

コニー「村の皆の分も生きるんだ」

ヒストリア「私みたいな子を増やさない為に」

ミカサ「エレン…あなたこそ、ちゃんと生きて帰って」

エレン「ああ」