矢口美羽「私とPさんの夏休み」 (24)
美羽「……だから、Pさんがそこで的確なツッコミを入れることでですね!」
美羽「って聞いてるんですか! 大事な話ですよ!」
美羽「最近、ますますPさんからの扱いがひどくなりましたよね!」
美羽「私がこんなにもアイドル活動へ熱意を注いでいるのに、すぐに別のことに気をとられて……」
美羽「……あれを見ろ?」
美羽「わああっ、すっごく綺麗な景色じゃないですか!?」
美羽「なんですかここ! 一面がヒマワリですよ、ヒマワリ!」
美羽「ここが以前言ってた、夏休みのお仕事場ですか!?」
美羽「はあ~、すごい場所だなぁ……」
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美羽「とーちゃくっ、っと!」
美羽「いやあ、バスの中とはまた景色が違いますね~」
美羽「……」
美羽「ところで、ここどこなんでしょう?」
美羽「……」
美羽「あの、Pさん?」
美羽「もしかして降りる所を……間違えた、とか……」
美羽「そ、そんなことないですよねー!」
美羽「だってほら、バスの路線図の駅なんか、片手で数えられますもんね!」
美羽「……」
美羽「な、なんとか言ってくださいよー!?」
美羽「あ、あ、あ、暑い……」
美羽「うう。なんで一駅向こうがこんなに遠いんだろう……」
美羽「見渡す限りヒマワリしかないです……」
美羽「目的地までどのくらいですか?」
美羽「地図があるんですね。どれどれ……」
美羽「あーカスピ海越えていくんですねなるほど……」
美羽「ってこれ世界地図じゃないですかー!」
美羽「笑ってないで教えてくださいよ、もー!」
美羽「暑い……遠い……疲れました……」
美羽「バカンスに来たのに、このままじゃ干からびちゃう……」
美羽「……お?」
美羽「あれは何かのお店じゃないですか!?」
美羽「なんでもいいです、とにかく涼んでいきましょう!」
美羽「ほらほら、Pさん早く!」
美羽「えっ、急に元気が出た? 気のせい! ですよっ☆」
美羽「ふー、影があるだけで生き返りますー」
美羽「ここ、お菓子屋さんなんですねー。いっぱいお菓子が置いてあります!」
美羽「わ、なつかしー。昔よく食べてました、こういうの」
美羽「そうだ、何か飲み物……あ、ラムネ!」
美羽「すみませーん、これ一本くださーい!」
美羽「これもなつかしーですね。ビー玉落とすの、楽しいですよ」
美羽「んくんく……ぷはー☆」
美羽「えへへ、しゅわしゅわしてて、おいしーです!」
美羽「ほら、Pさんもどうぞ!」
美羽「遠慮しなくてもいいですってばぁ、暑いんだから飲んどかないと倒れちゃいます!」
美羽「ささ、一口どーぞ!」
美羽「ほら、ラムネ美味しいですよね?」
美羽「あら、もう飲まないんですか?」
美羽「別に残り飲んじゃってもいいのに……」
美羽「じゃあ残りは私が飲んじゃおっかなー☆」
美羽「……あれ、もしや?」
美羽「これって間接キスなんじゃ……」
美羽「って、そ、そそそんなわけないですよねー!」
美羽「べ、別に同じラムネ飲んだだけですし! チューしてませんし!」
美羽「むしろラムネの方が私たちにチューしてきたんですし!」
美羽「つまり恨むなら、ラムネをうラムネ、みたいなっ!?」
美羽「あははー……」
美羽「……」
美羽「あの、もう一本、飲みませんか……?」
美羽「さーて、喉も潤ったことですし! みんなの下へ急ぎましょう!」
美羽「私が居ないと、みんなが暑さでやられちゃいます!」
美羽「なぜか、って?」
美羽「そりゃあ、私という一輪の花がいるだけで……」
美羽「周りには、笑顔と清涼な風が……」
美羽「……え? 失笑と寒風?」
美羽「失礼な! ほ、ほっ……ほ……」
美羽「……何でしたっけ、物には限度があるっていう、あれ……」
美羽「えーと……あっ!」
美羽「ホットケーキのおかわりも3回までですよ!」
美羽「ふー、思い出せてすっきりしましたっ」
美羽「……え、違う?
美羽「それにしてもPさん、そんな姿で暑くないですか?」
美羽「こんなに暑いのに、よくスーツで平気ですね?」
美羽「わたしなんか、こんな薄着でも暑いのに……」
美羽「はぁ、あつーっ」
美羽「汗かいちゃう……」
美羽「あれ、今わたしのこと見てました?」
美羽「ふふ。そんなに服の中身が気になっちゃいますか」
美羽「Pさんなら特別に見てもいいですよー?」
美羽「だって……」
美羽「わたし……もう……」
美羽「……」
美羽「中に水着、着てますし☆」
比奈「あ、美羽ちゃん……Pさんも一緒っスね」
美羽「お待たせ! わたしが来たからには、もう大丈夫だよ!」
比奈「はい?」
美羽「この矢口、全力でバカンスを楽しみます!」
比奈「暑いのに美羽ちゃんえらくテンション高いっスね……」
美羽「まずは飛び込みから!」
比奈「え、そこ結構高いっスよ……?」
美羽「ノープロブレム! 準備運動はPさんと済ませてきましたから!」
比奈「いえ、そういう問題じゃ……あっ」
美羽「とりゃー!」
比奈「おお、絵になってるっス……あ、でもその体勢は……」
美羽「ぱぶっ!?」
比奈「あー……思いっきり打ち付けたっスよ……」
美羽「はひ……」
比奈「ああ、下流に流れていく……Pさん、追いかけるっスよ!」
裕美「どう? 捕まえられそう?」
莉嘉「もちろん! 魚いっぱいだよー☆」
裕美「うーん、速くて追いかけるのも大変かも……」
莉嘉「そーゆーときは、流れてくるのを待てばいいんだよ!」
裕美「あ、なるほど……」
莉嘉「えへへ……きたきた……えいっ!」
裕美「残念、逃げられちゃったね?」
莉嘉「よーし今度こそ!」
裕美「頑張って!」
莉嘉「うん……お、でっかい! とりゃー☆」
杏「わーやられたー」
莉嘉「見て見てー☆ 杏ちゃん捕まえたー☆」
裕美「うふふ、浮き輪に乗って流れてきたんだ?」
杏「うう、杏はどうなってしまうのか……」
莉嘉「七輪の上で転がるお仕事が待ってるよ☆」
杏「それなら楽そうだしいいよ」
裕美「食べられていいのー!?」
杏「あ、またでっかいのきた」
莉嘉「おお! 大物!」
裕美「美羽ちゃーん!?」
美羽「いやー、危うく海に帰るところでした!」
比奈「鮭っスか……」
裕美「もう、心配したんだから……」
莉嘉「リカも、まさか美羽ちゃんが流れてくるとは思わなかった!」
杏「全力で笑いを取りにいってるよね」
美羽「まあ、あの流れで? 鮭になるのはサケられなかった、みたいな?」
比奈「……」
莉嘉「……」
杏「……」
裕美「い、一旦あがろっか?」
比奈「そ、そうっスね」
莉嘉「きゅ、休憩ー☆」
杏「おー」
美羽「ああ! 待ってぇー! わたしが悪かったからー!」
美羽「ふー、みなさん相変わらず手厳しいですね……」
杏「杏もまさか、避暑地で吹雪に遭うとは思わなかったよ」
美羽「ひどいっ!?」
裕美「ま、まあまあ。せっかく美羽ちゃんとPさんに合流できたんだし……」
莉嘉「そーそー。過去のことは水に流して! 川だけに☆」
比奈「おお。莉嘉ちゃん、うまいっスねー」
莉嘉「にししー☆」
美羽「ま、負けた……」
裕美「とりあえず、美羽ちゃんも一緒に遊ぼう?」
美羽「は、はいっ!」
莉嘉「さんせー☆」
杏「よし。杏もたまには浮き輪から下りて二足歩行しよう」
比奈「そういえば、さっきまでずっと浮かんでたっスね……」
美羽(フフフ……皆は遊ぶのに夢中。アレを使うチャンス……)
莉嘉「いっくよー、それー☆」
裕美「きゃあっ! もう、莉嘉ちゃんたら!」
杏「うあー……日に当たりすぎて水が冷たい……!」
比奈「ふふ、かけ合いなら負けないっスよ」
裕美「あら、じゃあ勝負しちゃおうかな? えいっ!」
比奈「なんのなんのーっ」
杏「杏はひと休みっと……あれ、美羽は?」
莉嘉「あれ? さっきまで隣に……」
杏「また流されてるんじゃ……」
莉嘉「……あ、いた☆」
美羽(水際で戯れる美少女たちに危険な魔の手が……!)
美羽(でーでん……でーでん……)
比奈「……?」
裕美「……?」
美羽(でーでん……でーでん……)
杏(……GO!)
莉嘉(せーのっ☆)
美羽(でっでっでっでっでっでっでっでっ……)
莉嘉「どぉーん!!」
美羽「ほぎゃー!?」
美羽「もーっ! せっかく用意したんだからもっと驚いてよーっ!」
杏「海ならまだしも川だしさ……」
比奈「せめてカッパっスな」
美羽「いいもん、次はカッパでやるからー!」
裕美「あ、次やるんだ?」
莉嘉「にししっ。待ってるよー☆」
杏「まあ、驚くつもりはサラサラないけど……皿だけに」
比奈「……もしかして、意外とダジャレブームだったりするんスかね」
美羽「うわーん! 覚えててくださいよー!」
裕美「美羽ちゃん走ると危ないよー!」
美羽「ど、どうせスベり慣れてますしー!」
裕美「ああ! そういう意味じゃ!」
比奈「転ぶと危ないっス……あっ」
莉嘉「美羽ちゃんあぶなーい!?」
美羽「おっ……お、おお?」
美羽「岩って、こんな感触してましたっけ?」
美羽「っていうか岩がスーツ着てるわけ……Pさん?」
美羽「あはは、ありがとうございます……助かりましたー」
美羽「うええっ? も、もう滑りませんよー!」
美羽「そ、そりゃ、いつもスベってますけど……」
美羽「……支えてくれるんですか? Pさんが?」
美羽「……えへへ。じゃあ、お言葉に甘えてっ☆」
美羽「あ、あれっ? 手を引いてくれるんじゃ……」
美羽「って、わああっ!?」
莉嘉「わー……」
裕美「お姫様抱っこだ……」
比奈「ありゃ、羨ましいっスね」
杏「いいなー。杏もお姫様抱っこで運んでもらいたいー」
裕美「杏ちゃんはいつもしてもらってるような……?」
杏「いやいや。たまにだけ」
莉嘉「いいないいなー! 莉嘉もー☆」
比奈「莉嘉ちゃん落ち着くっス、走るったらダメっスよー!」
裕美「……はう。美羽ちゃんたち見てると、こっちまで熱くなっちゃうね?」
杏「……さーね。杏、あつくてわかんないや」
美羽「あ、あのー。Pさん……ちょっと恥ずかしいような、嬉しいような……」
美羽「みんな見てます……あう」
美羽「……」
美羽「Pさん、えっと……」
美羽「……」
美羽「ううん。やっぱりなんでもないです……」
美羽「あっ、まだ降ろしちゃダメですよ?」
美羽「また降りる駅、ひとつ早いですから!」
美羽「……わたしが降りるのはいつか、ですか?」
美羽「それはもちろん……」
トップアイドルになれたとき、ですよっ
おしまい
あずきは誕生日以外まだ書いてない
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