霊夢「野球が幻想入り?」(17)
文「そうなんですよ霊夢さん」
霊夢「野球って何?」
文「えー、知らないんですか?」
文「簡単に言うと、バットとボールを使って相手を倒すスポーツですかね」
霊夢「金棒と弾丸を使って敵機を斃す弾幕ごっこ?」
霊夢「うちの連中が好みそうな遊びね」
文「近頃妖怪の山界隈で流行らせているいんですよ」
文「河童工房が野球用具の製造・販売を独占していましてね」
文「山の産業革命の一端を担っているとかいないとか」
霊夢「革命って……やたらオーバーな話ね」
文「このボールを見てみてくださいよ」
霊夢「……ん、何これ。何か真ん中辺に『守矢神社』ってサインがあるけど」
霊夢「……いや、よくよく見るとその下の方に二重線で消された文字が……なになに加藤」
文「あ、そこは無視しちゃってください」
文「人里の人間たちの間で野球を流行らせることで、当然ボールの需要は上がります」
文「必須の用具のひとつですから」
文「そこに『守矢神社』のロゴを入れることで、人間達の間で認知度を高めていくという戦略だそうで」
霊夢「フツーに信仰集めのための道具として使ってるだけじゃないの」
霊夢「第一、発想が貧困ね――こんなちまちました方法じゃなくてもっとパーっと信仰を集められれば」
文「ま、そんな簡単な方法はなかなか……。まずはじわじわと根付かせていくつもりのようです」
霊夢「そういえば昔サッカーっていう遊びが流行ったこともあったわね」
文「急な話題転換ですね」
文「とりあえず、そんな感じで良かったら霊夢さんも野球をやってみませんか?」
文「スペカでの弾幕ごっこもいいですが」
文「各自の能力の使用を一定程度認めつつ、ルールに従ってスポーツに勤しむことも」
文「駆け引きとして一興だと思いますね、私は」
霊夢「そう」
文「ということで、まずは」
文「私がヒーローインタビュー役をやりますから、霊夢さんは今日のヒーロー否ヒロインってことで」
文「えー放送席、放送席ー、今日のヒロインはー」
霊夢「え、さっきのボールを使うんじゃないの?」
霊夢「それよりもあんた、何となく1番でセンター守ってそうね」
文「! ですよねー、私もやっぱり1番にはこだわりが」
文「……って霊夢さん野球知ってるんじゃないですか」
霊夢「まあ、多少はね」
文「それじゃあ、いい機会なんでここにバットとボールを置いて行きますね」
文「今度妖怪退治をするときにでも使ってくださいな」
霊夢「何でそんなにゴリ押しするのよ」
文「それではまた」
霊夢「……」
霊夢「もう帰ったわね、文」
ブォン ブォン ブォン
妖夢「あっ、霊夢」
妖夢「境内で素振り?」
妖夢「それって、神主打法?」
霊夢「そういうあんたは二刀流ね」
妖夢「いやぁ、二刀流をそつなくこなすのはなかなか大変なのよ」
霊夢「とか何とか言って、どうせあんたはただのスイッチヒッターなんじゃない?」
妖夢「え、その……」
霊夢「その程度の二刀流をロクにこなせないなんて……未熟過ぎて話にならないわ」
妖夢「う……」
霊夢「仕方ないわね、私が指導してあげる」
霊夢「あんたを一人前の二刀流に育ててあげるわ」
妖夢「本当?」
霊夢「じゃ、まずはそっちに行って中腰で構えて」
妖夢「え、バッティング練習でしょ?」
霊夢「は?」
霊夢「何言ってんの、私がピッチャーやるからあんたキャッチャーよ」
妖夢「え、何でこの流れで私がキャッチャーなの」
霊夢「主人公はエースって相場が決まってるでしょ」
妖夢「私を一人前に育てるって話は?」
霊夢「打撃の前に守備が出来なきゃ話にならないじゃない」
妖夢「だからってどうして私がキャッチャー?」
霊夢「つべこべ言わない」
霊夢「夢想封印投げるわよ」
妖夢「やめてよ……ミットないし」
霊夢「体で止めなさいよ」
妖夢「ケガしちゃうよ」
霊夢「半霊がいるじゃない、それで受け止めなさい」
妖夢「嫌だって」
霊夢「じゃ、行くわよ」
バシーン コロコロコロコロ
霊夢「こらークラぁ!」
霊夢「何反らしてんのよー!」
妖夢「捕れるわけないでしょこんな大暴投!」
妖夢「それとクラって誰!?」
バシーン
霊夢「ようやくまともに捕れるようになってきたじゃない」
妖夢「私じゃなくて、霊夢の投球がようやく安定してきたのよ」
霊夢「それじゃあ、そろそろバッティング練習ね」
霊夢「トスバッティングよ」
霊夢「私が投げるからあんたが打つの」
霊夢「ボール拾いはそっちが兼任ね」
妖夢「ええー?」
霊夢「行くわよ」
妖夢「さあ来い!」
妖夢「打てぬ球など、あんまりない!」
スパーン
霊夢「何ボール斬ってんのよ?」
霊夢「バカじゃないの」
妖夢「つ、つい……」
霊夢「仕方ないわね、次から夢想封印投げるから」
妖夢「ちょっと待って!」
霊夢「行くわよ」
バシーンバシーンバシーンバシーンバシーンバシーンバシーンバシーンバシーン
霊夢「今度は何ぶつかってんのよ!」
霊夢「打てないからってわざとボールに当たりにいくなんて最低ね」
霊夢「ラロッカに謝りなさい!」
妖夢「だから誰!?」
妖夢「一度にこんなに投げられたら1球くらい当たるでしょ!」
霊夢「だったら避けなさいよ。あんた今自機だったらDL入り間違いなしね」
魔理沙「おーい霊夢、野球しようぜ」
霊夢「これで3人目か、そろそろチームが組めそうね」
妖夢「え、3人じゃできないわよ、チームは?」
魔理沙「とりあえず私は打つから」
霊夢「私は当然ピッチャーだから」
妖夢「……」
カキーン カキーン カキーン
霊夢「もう球切れよー」
魔理沙「妖夢、早く取ってきてくれよー」
妖夢「裏山まで飛ばさないで!」
霊夢「私思うんだけど、魔理沙って身長低いからキャッチャー向きだと思うのよね」
魔理沙「ん? そうかな」
魔理沙「それじゃあ、試しにやってみるか」
妖夢「!」
妖夢「だったら、今度こそ私が」
霊夢「そろそろピッチャーも飽きたし、次は私がバッターね」
妖夢「え……」
霊夢「何? あんた二刀流でしょ、はいボール」
妖夢「私そろそろバッターが……やりたい……」
魔理沙「いいか妖夢、甲子園じゃみんなエースで4番なんだぞ」
魔理沙「だけど、お前はまだ半人前だ」
魔理沙「だから、今は私に4番の仕事を任せてくれ。そしてお前はエースになるんだ」
魔理沙「私達の二人三脚で、幻想郷野球の頂点に立とう!」
妖夢「……魔理沙」
霊夢「でも、私はムダな練習なんかしないで勘で打つタイプだから」
霊夢「わざわざバッターやることもないか」
霊夢「やっぱり私がピッチャーやるわ、ボール返して!」
妖夢「霊夢ぅー!!」
魔理沙「その理屈だと別にピッチャーもやらなくていいんじゃないか?」
萃香「……ぷはー。そろそろ疲れないかい?」
萃香「一旦休憩しようじゃない。まあもうそろそろお開きにしても、いいかも知れないけれどねぇ」
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