―ドンキーの家―
ドンキー「ディディー……はぁはぁ、ディディぃ……」シコシコシコ
ドンキー(ゔっ……!ディ、ディディー……イく!)どぷっ!どぷっ!
ドンキー「ふぅっ、出たあ……」
うっとりしているドンキーの脳裏にたちまち罪悪感が襲いかかる。
ドンキー「はぁっ……。まただ。またやっちまった。またあいつをオカズにしちまった。ダメだと頭では分かってるのにどうしてもやめられない……」
ドンキー「いつからだろう、あいつで抜くようになったのは。いや、そもそも相棒であるあいつを性的な目で見るようになったのは一体いつからだろう?
相棒という関係上、どんなに想いを寄せたって所詮叶いっこねぇのに……」
ドンキー「ディディー、お前を犯す妄想でシコシコする愚かなおれを許してくれ……」
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ドンキー「……許されるわけないよな。自分が相棒にオカズにされてるって知ったらあいつ、どんな顔するかな。
汚らしい物を見るような目つきをおれに向けるだろうな、きっと。
でもそうなったとしてもおれはこの先もディディーをオカズに……」
ドンキー(……あいつといる限りおれの頭の中からディディーは絶対に離れない。会ったその日の晩にあいつで抜いて、会えなかった日でも結局あいつで抜いて、それの繰り返しだ。
仮に我慢したとしても、禁欲が祟ったら会うなり押し倒してしまう気がする。
もしそうなったらおれたちはどうなる?)
ドンキー(……もう無理だ。もう限界だ。あいつとこれ以上相棒を続けられる自信がない。もう……あいつとは一緒にいられない……)
ドンキー(ディディー、もう終わりにしよう)
――次の日の夕方、ディディーはドンキーの元を訪れた。
ディディー「ドーンキぃ」
ドンキー「……きたか、ディディー」
ディディー「珍しいねぇ。日が暮れるころにオイラをわざわざ呼びつけるなんて」
ドンキー「ちょっと色々あってな。今日のデートは楽しかったか?」
ディディー「まあね。夕方ドンキーんちに行くって言っておいたから一応早めに帰ってもらったけど」
ドンキー「そ、そうか。なんか悪いことしちまったな……」
ディディー「いいよ、気にしなくて。ドンキーとの約束をやぶるわけにはいかないし。それで、大事な話ってなに?」
ドンキー「……」
ディディー「あれっ?ドンキー、なんか顔色悪いけど大丈夫?」
ドンキー「ああ、なんともないよ。あのさ、ディディー、お、おれたちさ……」
ディディー「うん」
ドンキー(そんなに見つめないでくれ。言うのがますますつらくなる……)
ディディー「焦らすなんてドンキーらしくないなあ。なんかあったの?」
ドンキー「ディディー、落ちついて聞いてくれよ」
ディディー「なんだよ、もうっ。オイラたち、ギスギスするような間柄じゃないでしょ?そんな暗い顔しないでよ」
ドンキー「そうだな。すまん……」
ディディー「で?なにを言いかけてたの?」
ドンキー(ディディーのためだ……ディディーの幸せのためだ……)
ドンキー「……しよう」
ディディー「えっ?」
ドンキー「……終わりにしよう」
ディディー「終わりってなにが?」
ドンキー「おれたち、もう終わりにしよう……」
ディディー「ドンキー、言ってることが抽象的すぎてわかんないよ。なにを終わるの?」
ドンキー「おれとお前の……」
ドンキー(ためらうな。言え、言わないと取り返しがつかなくなる)
ドンキーは声を震わせながら言った。
ドンキー「おれとお前の関係を……断ち切ろうってことだ……」
ディディー「えっ……?か、関係を断ち切る?ねぇドンキー、どういう…意味?」
ドンキー「……もうつらいんだ。もう苦しいんだ。お前と一緒にいるのが。
これ以上お前の相棒として関係を続けていくのがおれはとてもつらい。
だからもう……」
ディディー「ドンキー、なに言ってんのか全然わかんないよ。相棒やめたいってどういうこと?
『おれとお前はこれからもずっと一緒さ』ってこの前言ってたじゃんか!」
ドンキー「それは……」
ディディー「そのあと言ったあの言葉は?あれは全部うそだったの?」
ドンキー(そのあと言った言葉……確か……)
◆
ドンキー『ディディー、よく聞けよ。おれたちは2匹でいるからこそお互い輝くんだぜ。だからどっちかが欠けちまったらとたんに煌めきを失っちまう。
関係の成り立たない相棒なんてのはもはやただの1匹と1匹だ。そんなのになんの魅力もない。
だからどんな時でもおれたちは互いに互いを信頼していないといけないんだ。
2匹で1つに見えて周りから羨まれる存在になるべきなんだ。
相棒っつーのはそういうもんだぜ。分かったか?』
ディディー『うん、わかったよ。オイラ頑張るからこれからもよろしくね!』
ドンキー「おう。こちらこそよろしく頼むぜ」
ディディー「えへへっ、オイラ、ドンキーの相棒でよかったぁ」
◆
ディディー「ねぇ、あれはうそだったの?本心じゃなかったの?答えてよ!」
ドンキー「……」
ディディー「ドンキー、まさかオイラのことが嫌いになったの?ほぼ毎日遊びにくるオイラがうっとうしくなったの?」
ドンキー「ちがう、そうじゃない!むしろ……」
ディディー「むしろなんなのさ。はっきり言ってよ!」
ドンキー(愛してる。おれはお前と肉体的に1つになりたい。
……言えるわけがない)
ディディー「やっぱり嫌いなんだ……」
ドンキー「ちがう、ちがうんだ。誤解しないでくれ。好きだよ、お前のこと」
ディディー「じゃあなんでさっきから黙りこむの?どうして!?」
ドンキー「……」
ディディー「……それがドンキーの答えなんだね。いいよ、わかったよ。望みどおりにしてあげるよ」
ドンキー「……?」
ディディー「目の前から消えてあげるよ。それで満足なんでしょ?もう2度とここにはこないから」
ドンキー「なっ!?」
ディディー「安心して。誰にも言ったりしないから。さよなら、ドンキー」
ドンキー「ま、まて!まってくれディディー!」
ドンキーは慌ててあとを追ったがディディーの姿はどこにもなかった。
ドンキー(な、なんて速さだ……いや、なんてことだ……。ディディーがあんな冷たい目でおれを見るなんて……。
でも全ては優柔不断なおれが悪いんだ。自業自得だよな……。
おれはあいつと相棒という関係をやめたかった。ただそれだけだった、それだけだったのに……)
ドンキー「と、とにかくじっとしてる場合じゃない。探しに行かないと……」
――その後、ドンキーは普段ディディーが行きそうなところを片っ端から当たった。
しかし結局ディディーを見つけることはできなかった。
諦めて家に戻ったのは夜がすっかりふけてからのことだった。
ドンキー「こんなに暗くなったらもう探しにはいけないな。ディディー、どうか無事でいてくれ……」
ドンキー「……バナナを食って落ちつきたいが今はなにも食べる気になれない。今日はとりあえず寝よう」
ドンキー(あいつはただおれの前からいなくなっただけだ。明日になったらいつもみたいにひょっこり現れるにちがいない。
今さら謝ってすむ問題じゃないが、明日あいつに会ったらまずはちゃんと謝ろう。
仲直りして、一緒にバナナ食べよう)
ドンキー「ディディー……明日はなにがあってもお前を見つけるからそれまで無事でいてくれよ……」
悶悶としているうちに、ドンキーはいつしか眠りについたようだった。
―次の朝―
ディクシー「ドンキー!ドンキー!」ドンドンドンドン
ドンキー「ちっ、るっせーな。なんなんだよ朝っぱらから」ガチャリ
ディクシー「ドンキー!大変なの!ディディーが……」
ドンキー「ディディーがどうしたんだ!?」
ディクシー「ディディーが……ディディーが……死んでるの……」
ドンキー「死ん……でる?どういうことだ……?」
ディクシー「今朝わたしのところにきたらしくて。起きたらこんな書き置きが……」
ドンキーはおそるおそるディクシーから文字が書かれた紙を受け取った。
そこにはこう書かれていた。
『バナナ狩りに行ってくる。遺跡にいるからあとできて』
ドンキー「間違いない。ディディーの字だ……」
ディクシー「わざわざ書き置きなんてディディーらしくないなって思ったんだけど……まさか……あんなことに……」
ドンキー「っ!」
ドンキーは突如めまいに襲われ、失神しそうになった。
ディクシー「と、とにかく一緒にきて!」
ドンキー「あ、ああ。早く、早くあいつんとこに連れてってくれ!」ダッダッダッ
ディクシー「つ、着いたわ……」
ドンキー「ディディー、ディディーは……」
ディクシー「あ、あそこ……」
ドンキー「ディディー……?」
ドンキーはふらふらとディクシーの指差す方向へとむかった。
ドンキー「ディディー……?」
横たわっている物体をおもむろに抱き上げるドンキー。
冷たくなっている身体を指全体で感じながら、その肉体の持ち主である顔を見る。
その顔立ちは、紛れもなく相棒のディディーだった。
舌を噛みきったのか、口の周りから大量の血が流れていた。
ドンキー「ディディー?」
ドンキーはディディーの軽く頬をたたいた。
しかし返事はない。
ドンキー「うそだろ?」
ディクシー「ド、ドンキー……」
ドンキー「狸寝入りしてるだけだろ?早く起きろよ、早く……早く……」
目を閉じたままのディディーに何度も呼びかけるが、ディディーは全く微動だにしなかった。
心なしかドンキーはディディーの身体が先ほどより冷たくなっているように感じた。
ドンキー「おれがあんなことを言ったからか?おれがあんなことを言わなかったらよかったのか?
あんなひどいことを言ったおれがのうのうと生きてるのになんでお前が死ななきゃなんねぇんだ?
なんで……なんでだよ……なんでなんだよ!」
ディクシー「ドンキー、ディディーとなにかあったの?」
ドンキー「……」
ディクシー「ごめんなさい。こんな時に無神経だったわ……」
ドンキー「なんで……なんでこんな……」
ディクシー「……」
ドンキー「なんでお前が死ぬんだよ。こんなことになるならおれが死ねばよかったのに……」
ディクシー「昨日……」
ドンキー「……?」
ディクシー「ディディー、昨日の夜、わたしのところにきたの。考えてみればその時から様子が変だったわ……」
ドンキー「なんだって?」
ディクシー「具体的に言うのは難しいけど、なんていうか……目に生気がなかったっていうか、顔がこわいほど無表情だったの。
なにか用事があるのかなと思って率直にたずねたんだけど、無言で首をふるだけ。
なにも言わずに帰ろうとしたからわたし、思わずディディーを呼びとめたの。それでね……」
ドンキー「……」ゴクリ
ディクシー「ほっとけなかったから泊まっていくように言ったんだけど……どれだけ引きとめても結局断られてしまって……。
あの時彼を帰らせなかったらこんなことにならずにすんだのかもしれない。
ドンキー、ごめんなさい。わたしのせいだわ……」
ドンキー「ディクシーのせいじゃないよ。だいたいお前にはなんの関係もない」
ディクシー「でも……」
ドンキー「……おれだよ」
ディクシー「えっ?」
ドンキー「発端はおれの言葉さ。おれは自分のことばっかでこいつの気持ちを何一つ理解しようとしなかった。
明日になったら謝って許してもらおうなんてのんきに考えてた。
その結果が……これだ」
ディクシー「ドンキー……」
ドンキー「なあ、おれはどうすればいい?最愛の相棒を失ったおれはどうすればいい?
なにも残らなくなったおれに生きてる価値はあるのか?
なあ、頼む。教えてくれ、教えてくれよディディー」
ディクシー「ドンキー、なにがあったのかは知らないけどそんなに自分を責めないで……」
ドンキー「そう。お前はなにも知らない。そんなお前に今のおれの気持ちが分かるか?
ディディーはもういない。もう2度と会えないんだ。
胸が押しつぶされそうだ。悲しみを通り越して涙すら出てこない。
その気持ちがお前に分かるのか?」
ディクシー「それは……」
ドンキー「……すまない。おれ、どうかしてるみたいだ」
ディクシー「ううん、いいの……」
ドンキー「重ね重ね悪いが、しばらくディディーと2人っきりにさせてくれないか?」
ディクシー「……」
ディクシーはなにも言わずに遺跡を去っていった。
ドンキー「ごめん、ごめんよ……」
ドンキーはディディーの死体をぎゅっと抱きしめた。
彼の頭を撫でながら弱々しい声でつぶやく。
ドンキー「このシッポも……かわいいおへそも……もう……もう……」
ドンキー「ディディー…………ディディーーーーーっ!」
―その夜―
ディクシー「ほんとに……自分の家の前に作ってよかったの?」
ドンキー「ディディーの墓だぞ。遺跡に作るわけにもいかないだろ」
ディクシー「そうね、そうだね。彼、ドンキーのことが大好きだったから亡くなってからもドンキーのそばにずっといたいよね……」
ドンキー「……バナナを頼む」
ディクシー「ええ……」
ディクシーはディディーのお墓の前にそっとバナナを置いた。
ドンキー「今日は一日中ありがとな。ディディーに代わって礼を言うよ」
ディクシー「いいの、わたしにはこれぐらいしかできないから。じゃあ、そろそろ帰るね……」
ドンキー「そうか。気をつけてな」
ディクシー「ええ。ドンキー、大丈夫?こんな時に言うのもアレだけど……早く元気になってね」
ドンキー「ああ……」
ディクシー「それじゃ……」
ドンキーはディクシーを見送ったあと、ゆっくりした足どりで家の中に入った。
ドンキー「……」
座りこんだまま、なにもせずにいた。
家の中を虚しい沈黙が支配する。
ドンキー(こんな皮肉な形で相棒を断ち切ることになるなんてな、ははっ……)
ドンキー(断ち切ってなんているものか。おれとディディーは2匹で1つ。
以前そう誓ったじゃないか)
ドンキー(でも……これがおれの望んだ結果だったのか?
あいつとこれ以上一緒にいられない。苦しいだけ。そう思ってしまったから結果的にこういう悲劇を招いたのか?
ディディーは言ってた。『おれの目の前から消える。2度とここにはこない』と。
あれは……あれは……そういうニュアンスだったのか?
教えてくれ、ディディー……)
終
投下は以上です。ありがとうございました。
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