周防達哉「マヨナカテレビ?」 (147)
ペルソナ2とP4のクロスオーバー
P4U、P4G要素はありません
細かい不備は許してな
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405344027
――美津雄を追い詰め事件は解決した
春から続く、奇妙な事件があった
彼らしか知らない戦いがあった
この町に住む悪意に打ち勝ったと、彼らは高らかに喜んでいた
――夏
彼らはまだ事件が終わっていない事を知る
P4 エクストラシナリオ ――夏の太陽神――
―深夜零時。雨が降っている
悠「…………」カチリ
事件は終わった
テレビを付けたのは、事件の終わりの確認の為と、半ば習慣化していたからだ
テレビ「ザー……」
悠「よし」
何も映らないことに小さくガッツポーズをする
携帯を取り出し、花村陽介に電話をかけようとした
テレビ「ザー……イヤ……ザー……」
悠「――?」
テレビ「ザー……いやだ……ザー、ザ……」
悠「声だ……!」
携帯が陽介を呼び出す
2コールですぐに電話に出た陽介は、鳴上悠よりも狼狽していた
陽介『ど、ど、どういうことだ!? こえ、声が聞こえたぞ!』
悠「落ち着け。まだテレビから何か聞こえる」
テレビ「いやだ……ザー……忘れない……るものか……」
テレビ「……いかないでくれっ!!」
悠「うわぁッ!」
テレビ「ザー…………」
それきりテレビは沈黙した
ソファに倒れ込みながら、携帯を耳に当てる
悠「……見た?」
陽介『…………ああ…』
悠「マヨナカ……テレビ、かな?」
陽介『わかんねぇ……なんだあれ、ビビった……』
悠「どうする?」
陽介『どうするって……そりゃ集まるだろ。俺からみんなに声かけとくから』
悠「まかせた」
事件は解決したはずだ
虫の鳴き声も静まる夜。鳴上悠は呆然としていた
―翌日 ジュネスコードフート
千枝「昨日の……見た?」
雪子「……見た」
りせ「こわい……」
女子三人はどんよりとした表情で座っていた
目の下にクマが浮いている
完二「あ、あれなんだったんスか……?」
陽介「わからねーから集まってるんだよ」
千枝「あれってマヨナカテレビ……だよね? なんかいつもと違ったけど」
完二「そんな! 事件は俺達が解決したんじゃ……!」
悠「マヨナカテレビとは別の、なにかのオカルトかも」
陽介「そんなの聞いたことないぞ」
りせ「事件は……終わったんじゃないの…? じゃあ私達のしたことって……」
陽介「お、落ち着けってみんな」
悠「どちらにせよ、やることは変わらない。だろ?」
雪子「……怖いけど、特捜隊再結成だね」
周防達哉は悪夢に悩まされていた
覚えのない場所にいて、知らない人たちに囲まれる夢
その夢を見るときは決まって大汗をかき、飛び起きるのだ
達哉「…………」
――カン……カチン……
達哉「ここはどこだ?」
達哉「あの夢と同じだ……。寂しい神社、薄暗い夕方……」
――カン……カチン……
達哉「俺はこんな場所は知らない。知らないのに、どこか懐かしさを感じる……」
現実味のない光景だった。まるでまだ夢の中にいるような感覚
神社の周りは木ばかりで、濃い霧がかかっている
達哉(だが、このハッキリとした実在感。手触りも確かだ)
「よお。気分はどうだ? 相変わらず寂しいとこだよなぁ」
達哉「――!? 誰だ!」
「ヒャハ! 誰だとは随分だな。まあいいさ。おまえが望もうと望むまいと、いずれ……」
達哉「まて! どこへいく!」
――今日はただの顔合わせだけだ……また来るぜ……ヒャハハハハ……
達哉「消えた……」
達哉(あの男にも既視感があった。それも、今までよりも強く、胸がむかつくような……)
達哉「俺の知らない、俺の記憶……」
――カン……カチン……
――カン……カチン……
完二「俺、実はあの声、どーっかで聞いたことあるんスよ」
陽介「ほんとか? 何で早く言わないんだよ!」
完二「んなこたぁ言ったって……」
雪子「頑張って巽くん。今は巽くんだけが頼りなの」
完二「男巽完二! 頑張らせていただきやす!」
千枝「はは……」
クマ「カンジは単純クマ」
完二「んんんん~~! どこだったかなぁ。確かに聞いたことがあるんだが」
完二「バイク……そうだ、バイクのエンジン音……」
完二「すっげぇ煩くて、ぶっちめた…………あ」
陽介「あ?」
千枝「思い出した!?」
完二「ああぁぁ――――――ッ! 思い出したッ!」
クマ「でかしたクマー!」
完二「俺が前に族を潰した時、実は助っ人がいたんだ。3年の周防、周防達哉先輩! あの人だ」
クマ「伝説の裏側を知ってしまった……クマ」
悠「そこじゃない」
完二「さすがに数には勝てなくて、これはやべぇって時に、単車にまたがって助けに来てくれたんスよ」
千枝「へー、完二くんも今どきって感じはしなかったけど、先輩もなかなか古風だね」
雪子「私も一度あったことある。町に行って、ちょっと面倒そうな人に絡まれた時に助けてもらったの」
陽介「以外な接点だな。よし、調査を開始しよう」
――周防くん? 変わってるよね。カッコイイけど、誰かと一緒のところは見たこと無いっていうか
――アイツの事は話したくない。何されるかわからないからな
――ここだけの話、あいつ施設出らしいぜ
――モロキンにすっげー嫌われてたな……。当のモロキンは怖がって触れてなかったけどな。
ところできみ可愛いね。どう? おごるよ?
――あいつ謎が多いんだよ。付き合い悪いしさ
千枝「なんか、調べれば調べるほど謎が深まっていくね」
雪子「そうだね。露骨に嫌ってる人も少なくなかったし」
陽介「謎の最上級生か」
完二「田舎のここでなかなか珍しいな。よっぽど人付き合いが嫌いなんじゃないスか?」
もう夕方を過ぎて辺りは暗くなり始めていた
調査は一旦中止し、翌日再開することにして解散した
――夜
鳴上悠は砂嵐の映るテレビを見ていた
零時
砂嵐から別の場面に切り替わる
テレビ「周防達哉の懺悔室。この番組は、罪を告白し許しを請う番組だ――」
テレビに映ったのは意志の強そうな男だった。それは自分自身を周防達哉と名乗った。
顔の半分を戦隊物の仮面で隠している
悠(罪……?)
テレビ「罪には罰を与えなければならない……」
テレビ「俺の罪、俺の罰。世紀の大罪人の大懺悔。ご期待ください」
スッと華麗にお辞儀をし、テレビは始まった時と同じように、唐突に終わった
ririririririri!
ピッ!
陽介『見たか? 今までも奇妙な奴ばっかだったけど、今回は相当だな』
悠「罪とか罰とか言ってたな。どういうことだろう」
陽介『わからねぇ。イレギュラー続きだ、早く先輩追わないと』
通話が終わった
鳴上悠はテレビが言ったことを反芻していた
罪、罰……
マヨナカテレビが心の本質を映すものであるのなら、彼は一体なんの罪を犯し、何の罰を受けるのだろう
「よお。調子はどうだ?」
達哉「…………」
「睨むなよ。今日はお前に耳寄りな情報を伝えに来たんだ」
――カン……カチン……!
「お前、最近悪夢に怯えてるんだってな。それを解消する手助けをしてやるよ」
――カチン!
達哉「なに?」
「ヒャハハハ! いいぜその顔ォ! ……お前の後ろにある社。そこにお前が知りたいことが全てある」
男が指差す先に、あのオンボロ神社があった
得体のしれない雰囲気に、達哉はあえて触れないでいたものだ
達哉「この先に、答えがあるのか?」
「なにビビってんだよ。さっさと行きやがれ」
――カン……カチン……
達哉は僅かに逡巡した
本能が告げている。行くな、と
彼自身を悩ます覚えのない記憶
それは徐々に彼の精神を蝕んでいた
イライラとやり場のない怒りにとらわれ、知らない自分に怯える日々
達哉(この先に、答えが……)
意を決して社の中へ入った
――ヒャハハ! いいぞ、思いだせ! 自分の罪を……
――同時刻 マヨナカテレビ内 懺悔の緑林
完二「なんなんだこいつら! こんな木ばっかのとこなのにロボットって!! 普通クマとかそんなんだろッ!!」
陽介「口を! 動かす! 前に! 身体を動かせ!」
悠「槍に気をつけろ! ペルソナを封じられる!」
千枝「雪子がやられた! だれかフォローに入って!」
クマ「ユキちゃんはクマが守るクマー!」
りせ「気を付けて! 新手が来るよ!」
ロンギヌスⅣ「――――」
陽介「げえ! また増えた!! 二体でも面倒だってのに!」
悠「一機は任せろ!」
陽介「悠! 無茶だ!」
悠「おおおおおおおおお! ペルソナァァァッ!」
ロンギヌスⅣ「――――!」
――ガキィン!!
不意をついた一撃だったが、厚い装甲に阻まれてしまった
悠「くっ! 硬い。それなら!」
――ラクンダ!
ロボットの強靱無比な装甲に魔法が浸透し、硬さを失わせた
悠「これで!」
――ズガッ!!
悠のペルソナ、イザナギの放った渾身の刺突が、ロボットの右足の関節を貫いた
ロンギヌスⅣ「――!?!?」
破壊された足ではその重量を支えきれず、ガクンと倒れ伏した
崩れた体勢のままロボットは槍を繰り出す
それをイザナギの長槍で受け流した
そして――
悠「――――ッ!!!」
必殺の一撃だった
イザナギの刃はロボットを一刀両断し、機能を停止した
電光石火の連撃で敵を打ち倒した悠
仲間の状況を確認するため、周囲に目を向けた
悠「みんなは!?」
――
完二「おおおおおおおペルソナァ!」
極大の雷撃がロボットの一体を焼いた
どうやら耐性があるようで、あまり効いていない
だが、雷撃は内部まで到達し、機器を狂わせた
陽介「それならこうだッ! ――ガルダイン!」
ロンギヌスⅦ「―――!?」
ロボットを引き裂くように竜巻が発生した
弱った接合部をズタボロに破壊し、雷撃で崩れた足元が、烈風によって完全に崩され、ロボットの膝を折る
陽介「行くぞ完二!」
完二「おうよ! せーのッ!」
タケミカズチの豪腕とジライヤの手裏剣が、同時にロボットの胴体中枢を破壊した
――
千枝「アチョーッ!」
ロンギヌスⅩ「――!!」
千枝の縦横無尽な猛攻に、正確無比な槍さばきで応戦している
千枝(攻め続けなきゃ、やられる! 雪子~早く復活して~)
雪子はまだペルソナが封じられている
ただ見ているだけしか出来なかった
クマ「千枝ちゃん避けてクマーー!」
――マハブブダイン!
氷結魔法をロボットの足元に向けて撃った
直撃こそしなかったが、冷気が関節を凍りつかせ、鈍らせる
クマ「今クマ!!」
千枝「クマくんナイス!」
動きが鈍ったロボットは、次々に身体を凍らせられていく
千枝のペルソナ、トモエが神速の突きを食らわせた
しかし敵は、それと合わせるように背部に搭載されているグレネードが発射された
千枝(しま……っ!)
魔法で照準が甘くなったのか、紙一重で避ける
その瞬間が明暗を分けた
ロンギヌスⅩ「―――!!」シュバ!
避けた先に、待っていたと言わんばかりに槍が迫った
千枝(に、二段構え――!? わざと照準を甘くした!?)
千枝は格闘者として優秀だった。その才能はペルソナ能力の開花と共に、長足の進歩を遂げていた
だがそれは、人間相手のものだ
怪物や、異形のロボットを相手取るためのものではない
才能と経験は違うのだ
そして、一人と、仲間が居るのとではまた大きく違う
「千枝ェェェェェェ―――ッ!!」
――ゴウッ!
爆熱が凍った身体のロボットを瞬時に打ち砕いた
クマ「ユキちゃん……す、すごいクマ……」
雪子「千枝! 大丈夫!?」
千枝「ゆ、雪子……間一髪だったよ~」
雪子「ごめん……ありがとう、千枝……」
――おーい、そっちも無事かー
クマ「陽介クマ。あっちも終わったみたいクマね」
マジで?
それ、わいが書いたやつや……
まさか知ってる人が居たとは……
完走させます、今度こそ
――
『ああ、来たのか……。大人しく惰眠を貪っていれば幸せでいられたのに……』
達哉「誰だ……? あんた」
社の中は不思議なことに洞窟になっていた
ジメジメと湿気がひどい
奥には湖があり、そこにポツンと一人の男が立っていた
『誰だっていいじゃないか。知りにきたんだろう? 自分に何が起こっているのか』
後ろ姿だった男が振り返った
祭りに出ているようなお面、いや仮面をしていた
達哉「…………」
『わかりやすい奴は好きだよ』
『そこの湖だ。それは己の過去の姿を写す。覗きこめばお前が知りたいことがわかる』
仮面の男は湖を指差した
――カン……カチン……
『いいジッポだな。誰に「貰ったんだ」?』
達哉「…………」
達哉は答えなかった。答えたくなかったわけじゃない、答えられなかったのだ
常にもてあそんでいるこのジッポ。なにか大切なモノだったはずだが、今はただのジッポ以上に思えない
――そもそも何で俺はこのジッポを持っているんだ――?
達哉「――ッつ!」
ドクドクと心臓が脈打った
身体がわななき、膝が萎え崩れ落ちた
達哉(いったい、なんだっていうだ……!)
よろよろと壁伝いに立ち上がり、這うように湖へ向かう
――深淵を覗く時、深淵もまたお前を見ている。
周防達哉、お前はどこまでいっても罪人なんだよ……
仮面の男はその後姿を眺めて、嗤う
――
悠「神社……?」
りせ「この社の奥に反応があるよ」
陽介「なんか、今までのとこよりも随分と落ち着いた見た目だな」
千枝「今までが奇抜すぎただけじゃないの?」
雪子「でもなんだか凄く寂しい場所だね」
完二「扉、開けるぜ」
マヨナカテレビに発生するダンジョンというのは、概ね本人の潜在意識を反映したものになっている
雪子なら自分を縛るカゴからの脱却、完二なら周囲の目という苦悩、りせは偽る自分と本当の自分の迷い
胸の内に秘めた強く抑圧されたものが噴き出るのだ
では周防達哉が作り出したこのダンジョンは?
夕闇に暮れなずむ神社と森が、なんとも寂しく、もの悲しい
今までとは違う意味で「気分が滅入って」しまいそうだ
完二「なんだ、ここ。洞窟じゃねえか」
陽介「うわ、どうなってんだ?」
千枝「あ、あそこに立ってるのが周防先輩じゃない?」
「丁度いい所に来たな、ガキども。今から面白いものが見れるぜ」
陽介「だれだ!」
巨大な岩に腰掛けた、獅子の仮面をかぶっている男がそこにいた
「俺のことはなんだっていいじゃねえか。ほら、始まるぜ……」
周防達哉の前にある湖が淡く輝き、光が宙に舞う
雪子「わぁ……キレイ……」
悠「何が始まるんだ……」
「一つしかねえだろ。『罰』が始まるのさ……ヒャハハハハッ!」
光は強くなり、やがてその場に居る全員を包み込んだ
それは、全てを嗤うかのような出来事だった
――歪んだ愛のもとに記された奇書を元に進められる、破滅の予言の成就
――世界の破滅を救うと信じた、自分たちと同じ年代の青年たち
――複雑に絡まった過去の憧憬。それを嗤い、利用する這い寄る混沌
――戦って、闘って、傷つき、失い、そしてなにかを得る……
――やがて、心を弄ばれた者達は再び結束し、深淵の者に戦いを挑んだ
――だが、彼らは敗北する
悠「こ、これはいったい……」
陽介「こんな事件、俺達は知らないぞ!」
千枝「世界が、滅びるなんて……」
――彼らは、滅びを前にして、一つの決断を迫られた
――全ての出来事を忘れ、全ての始まりの時から『やり直す』という決断を
――そして彼らは決断した。思い出も、絆も、淡い恋心も全てを忘れ、戦いの代償を精算した
場面は切り替わった
一人の苦悩する男が映しだされる。周防達哉だ
――新生した世界で、達哉に記憶が戻る。それは犯してはならない大罪だった
――男は罪を償うため、孤独に闘った。友にも仲間にも頼ることの出来ない、たった一人の戦い
――心も身体もズタズタに引き裂かれる痛苦に耐え、闘い続けた
――破滅直前の世界。全ての元凶はお前にあると闇が告げる
――全ては予定調和。全てを嘲笑う者の手の平の上の出来事だった
――記憶を手放さないのも、記憶が戻ったことも、前の世界をなぞるように破滅が進行したことも……
――全て闇が計算した運命の通りに動いたのだ
完二「こんなこと……」
雪子「ひどい……」
――しかし、男は再び立ち上がった。彼を支える大人たちと共に、這い寄る混沌と対峙する
――長く、壮絶な死闘だったが、ついに戦いは決着した。彼らは勝ったのだ
達哉「……お、俺は……」
『まだ続きがある。見ろ、そして思いだせ』
――全てが終わった時、特異点でありイレギュラーの周防達哉は、この新生した世界から消える
――前の世界と言われる滅びた地球で、己の罪を償い続けるのだ
「そう、そのはずだよなぁ? なあ周防ぉ~~!」
達哉「――!」
『お前は自分の罪から逃げないことを誓った。そして、進化した人類とともに生きるはずだった。
しかし、お前はここにいる。これがどういう意味かわかるか?』
達哉「な、なにを……」
呼吸は早まり、心臓が早鐘を打った
冷や汗が止まらない
『お前は「また、逃げたんだ」。意識したことか、無意識なのか。周防達哉、お前は罪から逃げたんだ』
達哉「やめろ……!」
『お前は罪から逃げることは出来ない』
男は仮面に手をかけ、ゆっくりと外した
仮面の奥にあったのは……
シャドウ達哉「何人も、己自身から逃げることは不可能だからだ」
もう一人の達哉。邪悪に笑う周防達哉の顔が現れた
達哉「違う! あれは俺じゃない! 俺であるはずがない! 俺は、おれはッ!」
シャドウ達哉「ククク……お前はまだわからないのか」
達哉「どういう、意味だ」
シャドウ達哉「お前の両親は? 育った場所は? 子供の頃の記憶は? 友達は? 思い出は?
お前の好きな食べ物だっていい。お前はいったい自分のことを『いくつ語れる?』」
達哉「……ぐ……う……」
シャドウ達哉「そのジッポライター。誰から貰ったのかも分からないのか?」
達哉「や……やめろォォ――――ッ!! 俺は俺だ! あんなもの、俺であるはずがないッ!
俺の顔で語るんじゃない! 消えろォッ!」
シャドウ達哉「ク……クク……」
シャドウ達哉「ククク……ハハハハハ……!」
シャドウ達哉「自己の否定か。いいだろう。それでは望み通り、ここでお前を罪から開放してやるよ」
ここまで
感想、質問、要望、雑談
モチベーションが上がるのでおねしゃす
関係無いけど、いつか公式でペルソナ1、2の旧作組とP3、P4の新作組がコラボしてほしいと思う
P4Uには期待してたんだけど…
シャドウが右手を一振りすると、いつの間にかその手に刀が握られていた
その刀は唸りを上げて振り下ろされる
――キィィィィ…………ン……
シャドウ達哉「『WILD』か。大人しく見ていればいいものを……」
悠「その人は……やらせはしない!」
イザナギの槍で受け止め、そのまま「ジオンガ」を放ってシャドウを遠ざける
シャドウ達哉「どうやら……死にたいらしいな――」
黒い炎が足元から吹き上げる
シャドウの背後に黒くくすんだ色のペルソナが出現した
陽介「なんなんだ、あれは! シャドウがペルソナを出したぞ!」
りせ「みんな気を付けて! あいつ、すっごくヤバイよ!」
シャドウ達哉「挨拶代わりだ……」
シャドウのペルソナが両の手をゆっくりとかざした
黒い輝きの炎が灯る
りせ「―――!? みんな逃げてェェ―――!!」
完二「うおおおおおおおおお!!?」
悠「―――!!」
――『ダークノヴァサイザー』――
解き放たれた力は膨れ上がり、全てを破壊した
それは暴虐非道の力の行使だった。あらゆる生命を否定する、邪悪な力だ
洞窟は吹き飛ばされ、夕日が照らし出す
シャドウ達哉「…………終わりか?」
――ガシャンッ!
瓦礫をはねのけ何かが現れた
完二「ウオオオオォォォッ! ゴラァァ――ッ!」
シャドウ達哉「奇襲のつもりか?」
完二「知るかよッ!」
タケミカズチの鋼拳を真っ向からシャドウのペルソナが受ける
千枝「ヤァァァァッ!」
側面から千枝とトモエの同時攻撃が迫る
千枝の飛び蹴りが顔に、トモエのなぎ払いが足元にそれぞれ強襲する
シャドウ達哉「――!」
シャドウは完二を更なる豪腕でねじ伏せ、瞬時に迎撃体制をとった
剣でなぎ払いを受け、ペルソナで本体の千枝を撃ち落とす算段だ
陽介「おれも居ることを忘れんなよ! シャドウッ!」
ジライヤの手裏剣が音もなくシャドウの背に直撃する
それと同時に千枝の蹴りも胸部を捉え、地面へ叩きつけられた
シャドウ達哉「ガァ――ッハ……!」
雪子「とどめは……」
クマ「任せるクマ―――ッ!」
――ブフダイン―
――アギダイン―
二つの相反する魔法が、連続で襲いかかった
それに為す術もなく凍らされ、燃やされていく
打ち合わせなしの連携だった
互いを熟知し、信頼しなければ、ここまで息のあった連携はとれなかっただろう
陽介「りせちゃん! 悠と周防先輩は!?」
りせ「周防先輩は大丈夫……だけど、だけど……鳴上先輩が……」
りせ「あの魔法が発動する瞬間に、先輩がペルソナでみんなを守ったの……自分を、盾にして……!」
鳴上悠はメンバーの中で唯一のペルソナチェンジ能力を持っている
あらゆる状況、相手を選ばず臨機応変に対応できる
あの咄嗟の状況でアバドンを降魔させ、黒い炎を飲み込んで抑えようとしたのだ
陽介「く、クマ! 天城! あ、相棒を頼むッ!」
雪子「う、うん!」
クマ「任せるクマ!」
千枝「火傷が酷い……」
陽介「……」チラ
達哉「…………」
達哉を見ると、茫然自失で俯いている
外の出来事になどまるで関心などないようだった――
――――
――
―
『どうしたのかね?』
「わからない……」
『なにが、かね』
「俺自身のことが……」
『ふむ……?』
「俺の記憶は曖昧だ。全てがちぐはぐで、はっきりとしない
今までこの町で生きてきた。さっきまでなら胸を張って言えた。だが今は違う」
「あいつに言われて、分かった。俺が、俺自身のことを何も知らない。親も、育った家も、幼少期の思い出も……
あるのは『今』だけ。俺はどうやって学校に入学した……? 今までどうやって生活してきた……?
このジッポはなぜ持っている……?」
「なぜ今まで考えなかったのか……。何も考えず、なんにも疑問にも思わず……。なぜ俺はここにいる?
これではまるで、まるで……」
『与えられた役を演じるよう、だと?』
「…………そうだ」
『興味深い疑問だな。だがそれだけじゃないだろう?』
「……俺が知らない、俺の記憶があった。あれは、確かに俺だ。だが全く身に覚えがない」
「俺はここにいる。しかしこの俺も霞のように不確かな存在だった……
罪を負い、罰を受ける俺。誰かに与えられた役を演じる俺……」
「俺は、俺は誰だ……?」
『……私ならば、その全ての問いに回答することが出来る』
「…………」
『だが私は答えない。ただ一つの問いを発するのみ』
――君の名を聞かせてもらおうか
―
――
――――
「茶番は終わったか?」
陽介「――!?」
千枝「なんで!?」
完二「やろう……まだ倒れてなかったか!」
シャドウ達哉「なかなかの連携だった。人型であるのに、全くためらわずに必殺の攻撃をするとは……
楽しめそうで良かった……」
ドンッ! ドンドンドンッ!!
ロンギヌスⅩⅢ――キィィィン
ロンギヌスⅩⅡ――キィィィン
ロンギヌスⅩⅠ――キィィィン
ロンギヌスⅤ――キィィィン
シャドウ達哉「オリジナルには劣るが、よく出来た模造品だろ?」
完二(一体でも厄介だってのに、まだこんなにいるのかよ!)
陽介(悠……)
陽介「……治療はクマに任せる! 天城は後方援護とりせちゃんの護衛を!」
クマ「ガッテン! クマ」
陽介「俺が囮になる。里中と完二は前衛だ!」
完二「おう!」
千枝「わかった!」
陽介「死ぬなよ! いくぞ! みんな!」
花村陽介は先陣を切って飛び出した
前衛二機の攻撃が雨あられと降り注ぐ
陽介「へ! ジライヤ様の体捌きを舐めるなよッ! そっちにゃ絶対行かせねえからなァッ!」
二機は陽介に翻弄され、釘付けになった
その脇を抜けて、残りの二機が迫る
ロンギヌスⅤ「――――」
ロンギヌスⅩⅡ「――――」
千枝「完二くん! 右からだよ!」
完二「了解ッ! だらぁぁ―――ッ!」
ロボットは迫り来る二人に向かって、正確に槍を突き出した
それを上下に別れて避け、千枝は足元を、完二は頭部を、それぞれ攻撃した
――ドゴォォッ!!
全力全開の一撃。これら相手に生半可な攻撃では逆に長引いて危険だ、という経験からきた戦法だった
完二「見たか!!」
千枝「トモエ!」
千枝のペルソナ、トモエの槍がロボットの槍とかち合い、火花が散る
ロンギヌスⅩⅡ「―――!」バシュ―!
ロボットは斬り合う千枝に向かってグレネードを発射した
完二「させっかよぉ! 喰らえ! ジオダイン!」
グレネードは発射直前で雷撃に焼かれ、内部で暴発を起こし、そのまま沈黙した
千枝「きゃあッ! 完二くん、やるのはいいけどあっぶないじゃない!」
完二「す、すんません……」
千枝「花村は!?」
花村「ふっ……はっ……たっ……!」
ペルソナの力を借り、まるで軽業師のような動きで、二体の攻撃をかわし続けていた
槍が、雷撃が、弾丸が、四方八方から襲い来るが、そのどれもが紙一重で当たらない
千枝「よかった、間に合った……。花村、今行く……ハッ!」
シャドウ達哉「面白い。これならどうだ?」
千枝たちの眼前に、突如として増援が出現した
ロンギヌスⅨ――キィィィン
ロンギヌスⅥ――キィィィン
ロンギヌスⅧ――キィィィン
ロンギヌスⅢ――キィィィン
ロンギヌスⅠ――キィィィン
千枝「そんな……」
シャドウ達哉「ハハハハハハハ! さあ、どうする!」
圧倒的な力の差だった
彼らは徐々に傷つき追い詰められていく
だが、それでも彼らは一歩も引かなかった
無防備な悠を治療させねばならなかったし、戦えない達哉を守らなければならなかった
久慈川りせは、この時ほど自分の能力を恨んだことはなかった
戦いに参加できず、ただ守られる自分
目の前で戦う仲間たちを見ているだけしか出来なかった
だが、だからこそ、一番早く異変に気がつくことができた
――――
――
―
「俺の、名前……?」
『そうだ。それは、この場におけるルールのようなものでもある』
「…………」
『一つヒントを差し上げよう。君は以前、同じ問いをされたことがある』
「俺が……?」
『そうだ』
「…………」
――カン……カチン……
(―――? これは、いつの間に……)
(…………)
(……)
(…………そう、か……)
『答えは出たようだね』
「…………」
――カチン!
『では改めて問おう。君の名を――!』
「俺は――――」
―
――私は、全ての人間の意識と無意識の間に住まう者
――私は君で、君は私だ……いつまでも、君の中で君を見守ろう。さらばだ……
―
――
――――
ここまで
たっちゃんに違和感あるのは堪忍な
一応それ込みで話を作ってるので、すまん!
あと、鳴上悠の出番が少なくてすまん。P4ファンに申し訳ない
あいつらの実験に巻き込まれたようなもんだしな
P5はどんなゲームになるんだろうね
いきます
―
――
――――
りせ(ペルソナ反応……? 先輩の? ううん、誰のでもない……じゃあ一体……)
りせが感知した反応は徐々に大きくなっていった
りせは達哉に目を向ける
りせ(まさか……周防先輩の? でも、まだシャドウはあそこに……)
――胡蝶の夢も終わる
陽介「完二、後ろだ!」
完二「おおぉぉらぁッ!!」
千枝「雪子危ない!!」
雪子「千枝もよそ見しないで!」
既に全員入り乱れての乱戦となっていた
敵は数こそ多かったが、連携はそれほどとれていなかった
そこに付け入る隙をみた陽介たちは、互いが互いの目となることで、数の不利を凌いでいた
陽介(それでも……不利は不利だ。決定打を打てない今、このままだと……)
完二「ボケっとしてんな! そっちに行ったぞ!」
陽介「しま……!」
ロンギヌスⅠ「――――!!」
陽介「…………?」
だが、槍が陽介に到達することはなかった
陽介と槍の間に滑りこむようになにかが割って入っていた
それは赤い軌跡を描き、金属をぶちぬく轟音を立て、文字通り敵を粉砕した
――カン……
陽介「――――!?」
――カチン……
りせ「周防……先輩……?」
達哉「…………」
怯えた様子も、狼狽した様子も無かった。この数分で見た達哉と見違えるほどに
今の彼は誇り高く、気高い意思を持った戦士の姿をしていた
達哉「アポロ――!」
達哉のペルソナ、アポロが左手をかざした
――ゴバッ!
ロンギヌス「――――!!??」
ボン! ボボンッ!
ロンギヌス「ギギ……」
核熱の魔法『ヒートカイザー』が放出され次々と焼いていく
まとわりつくような炎が、半分以上のロボットを行動不能にした
シャドウ達哉「きたか……」
達哉「……来い!」
撃ち漏らした残りのロボットが達哉に集中攻撃を開始した
達哉を囲むように接近し、それぞれの槍と銃撃を繰り出す
しかし、行動は達哉のほうが早かった
達哉は一蹴りで囲みを脱出し、集まった敵に向かって最大最強の魔法を発動させた
達哉「まとめて消し飛ばしてやる……!」
――『ノヴァサイザー』――
完璧に制御され、達哉の思い通りに局所的な大爆発を引き起こした
それはマヨナカテレビを震撼させ、シャドウが見せたあの魔法に匹敵するほどの力だった
千枝「……太陽、みたい……」
完二「なんて威力だ……」
達哉「これでお前のくだらない玩具は無くなったぞ」
シャドウ達哉「いいんだ。古い、お気に入りの玩具が戻ってきたから」
達哉「…………」
シャドウ達哉「…………」
達哉とそのシャドウが対峙する
片方は硬い表情で睨みつけ、片方はニヤニヤとにやついている
悠「み、みんな……」
雪子「鳴上くん! もう大丈夫なの」
陽介「心配させやがって!」
悠「心配かけてごめん。それより、敵は……?」
陽介「そうだ。いま周防先輩があのシャドウと戦ってるんだ。加勢にいかないと!」
千枝「鳴上くんも復活したし、さっきまでのお礼をしないとね!」
「それはちょっと、困るんだわ」
完二「てめえか! ライオン仮面!!」
「キングレオ、だ。眉なし」
完二「んだとゴルァ!」
千枝「完二くん落ち着いて!」
陽介「六対一で、勝てると思ってんのか……?」
キングレオ「ヒャハハハハハハ! おいおいおい、『六対一』で勝てると思ってんのか?」
陽介「なにぃ!」
悠「……勝つ!」
キングレオ「病み上がりはすっこんでなァ!」
――――ペルソナァァァッ!!
――
――
シャドウ達哉「あの時と違って、今は一人だな……」
達哉「そうだ。あの時とは違う」
――ドゴォ!
『ギガンフィスト』――互いのペルソナの拳が衝突する
手の内はわかっていた。二人が得意とする炎の魔法は効果を発揮しない
つまり、純粋な殴り合いの戦いとなる
達哉(その上で俺は不利だ。だから剣を振らせはしない!)
達哉が選択したのは超接近戦だった
武器が意味をなさなくなる密着状態での戦いだ
剣をかわしつつ、懐に飛び込んでの打撃戦
ペルソナ能力のなせる技だ
打撃は嵐のようだった。防御をする暇すら与えない
むしろ、剣というアドバンテージを維持するために、剣を手放さないことが不利へと繋がっていた
シャドウ達哉「ぐ、ぐ……く! お前……!」
達哉「お前は影だ。ただの影だ。人のように、成長して前に進むことは……ないッ!」
達哉の渾身の正拳突きが、シャドウの水月を的確に打ち抜いた
しかし、相手は達哉自身の影――シャドウ――、映し身だ
衝撃が全身をつらぬき、倒れ伏す直前に、渾身の逆襲を行なった
シャドウ達哉「――ガアァァァッ!!」
――シュバ……ッ!
刃が風切り音を立てて、相手の硬直を突くように飛び出した
剣先は急所を指している
達哉(何――――ア、ガッ!)
――ズドッ!
咄嗟の防御に右腕を体の前に、刃の先に投げ出した
刃は伸びた右腕に突き立ち、骨と骨の間をつらぬき、止まった
そして……
達哉「返して……貰うぞ!」
腕の骨の間にある刀を、そのまま腕を一捻りしてからめとった
激痛に内心悲鳴を上げ、ほとばしる血のなかで刀を引き抜いた
シャドウ達哉「ご……ご、のぉ……!」
シャドウのペルソナに力が集中する……
『ダークノヴァサイザー』だ
それも、最初に撃った時とは違い、制御を行なっていない
制御をしなければ、己を飲み込むほどの暴虐の炎と化す
制御されなければそれはただの暴力だ。力ですら無い
だが、それだからこそ最も恐ろしい破壊を生み出す
達哉は迷わず飛び出した。魔法の発動を防ぐために
シャドウ達哉「周防……達哉ァァ――ッ!」
達哉「そうだッ! それが、俺の名だッ!」
そして、己を取り戻すために
――ガヅンッ……!
魔法はペルソナごと消失した
達哉は奪いとった刀を、魔法が発動する前にシャドウの頭蓋に突き立てたのだ
シャドウの、周防達哉と同じ顔をもつ影の顔が、嘲りの叫びの形のまま固まっている
やがてそれは、文字通りの黒い影となって霧散した
達哉(…………血を、出し過ぎたな……)
達哉(…………)
――カン……カチン……
ジッポが済んだ音色を立てた――――
―
―
キングレオ「ヒャハハハハハハ! ……」
キングレオ「…………ちっ! 終わりか…」
キングレオ「俺の仕事は終わりだ。あばよガキども!」
完二「でめえ! 逃げンのかッ!」
キングレオ「勘違いするなよクソガキ。俺が『逃してやる』んだ」
完二「こ……このっ!!」
陽介「やめろ完二!」
完二「……チッ! 冷めちまったぜ」
悠「先輩の方は?」
雪子「あっちの方が先に終わったみたい」
千枝「先輩! 大丈夫ですか!?」
達哉「……あんたたちは?」
りせ「先輩を助けに……きゃあ! 先輩! 腕から血が……!」
千枝「く、クマくん! はやくこっち来て!!」
達哉「そうか……」
視界が明滅する。ふらふらと足元がおぼつかなくなってきた
意識が遠のく
その前に、達哉は伝えるべきことを絞り出した
「す――まない―……感謝……する――」
――先輩、先輩! しっかりしてください!!
――先輩!!
――みん……く……こっち……
――……………
――……………
――
―
達哉の意識は暗転した
ここまで
ペルソナ音頭の季節ですね
もうちょっとだけ続くんじゃ
だけどまだ今後の展開を練り練り中です
そろそろ設定がガバガバになってきたかも
幕間劇、行きます
―
――
――――
『ようこそ、ベルベットルームへ……お久しゅうございますなぁ、周防達哉さま……』
達哉「……ここは。それにイゴール……」
「君は戦いの後、失血と疲労のため気を失い、現在は病院で処置を施されて眠っている」
達哉「フィレモン……」
イゴール「旧交を暖めたい所ですが、時間は限られております。今は要件だけを伝えるに留めることに致しましょう」
達哉「要件?」
フィレモン「現在君が置かれている状況にかかわることだ」
達哉「……」
イゴール「本来貴方様はここに居てはいけないお方。なのにここにいる矛盾……」
イゴール「記憶を取り戻した今、疑問に思っているのではありませんか?」
フィレモン「結論から言おう。君が普遍的無意識を通してあの世界へ戻る時、強い力の干渉を受けたのだ」
達哉「強い力? あの場にまで力を及ぼすものがいるのか?」
イゴール「特定の個人、あるいは意志が意図的に介入したわけではありません」
イゴール「この世界のさる年に、世界が滅びる前兆がありました」
フィレモン「それは、ニャルラトホテプや私とはまた違った、普遍的無意識の住人であり」
フィレモン「より人の意思に強く反応してしまう。それは人の終末的意識を汲み、その願いを成就させるために動いたのだ」
達哉(…………)
イゴール「勿論それを阻止する働きがありました。戦いが起こり、人々の希望の光を見せ勝利したのでございます」
イゴール「しかし、それでも止まらなかったのでございます……」
フィレモン「世界はいったんバランスを崩してしまうと、君も知っているように、容易く壊れてしまう」
フィレモン「そこで世界は一人の贄を必要としたのだ」
達哉「どういうことだ。それと今の俺とどんな関係がある」
フィレモン「それ程までに世界は崩れてしまっていたのだよ。贄を必要とするまでに」
イゴール「人の心にさざなみがうてば、合わせ鏡のように普遍的無意識も波打つのでございます」
イゴール「それが世界規模ともなれば……」
フィレモン「通常ならば起こりえないことだ。だが、その時は人の心の境界が不安定になり、そういう事態が引き起こされた」
イゴール「『普遍的』無意識を揺るがす程の波紋でございます。言うなれば、貴方様はその波にのまれた、ということでございます……」
達哉「その結果がここ、ということか」
フィレモン「もう一つ、君に知らせなければならない事がる」
フィレモン「右腕を見て欲しい」
達哉「まさか……」
達哉の右腕
そこには、黒くべっとりとした痣がついていた
それは、達哉を逃すまいと掴む手のようにもみえる
達哉「…………っ!」
フィレモン「君は早急に元の世界へ戻らなければならない。その意味は……」
達哉「わかっている。言わなくていい」
フィレモン「そうか。では本題に入ろう」
フィレモン「いま、この世界に再び危機が訪れている」
フィレモン「それは君を呼び込んだ力に匹敵するもの。必ず『ゆらぎ』を引き起こすだろう」
フィレモン「君はその『ゆらぎ』を利用して、この世界に固着している精神と肉体を振るい落とさなければならない」
イゴール「その後のことは私めと……」
フィレモン「私に任せるといい」
達哉「それはいつだ?」
フィレモン「それは我々にもわからない。だが、その時はそう遠くない」
フィレモン「君の新たな『仲間』と強力するといい。『WILD』が君を導くだろう……」
ベルベットルームは白く輝き、何も見えなくなる
声は反響して聞こえ、遠くのようでも近くのようでもある
イゴール「『絆』。それこそが事象の終着点を見出す鍵でございます。達哉様、お忘れなきよう……」
達哉「くっ……!」
――――
――
―
今日はここまで
短くてすまん
ツッコミもご自由におねしゃす……
ミス
? > フィレモン「君の新たな『仲間』と強力するといい。『WILD』が君を導くだろう……」
○ > フィレモン「君の新たな『仲間』と協力するといい。『WILD』が君を導くだろう……」
き、金メッキでたっちゃんいじめる役なら……(震え声)
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