エレン「ナイショの話」(64)
※進撃中卒業後の話――エレンたちは高1
※甘酸っぱいエレアニ ……になるといいなぁ(熱望)
※ほのぼの日常?
※ほぼ二人語り
楽しいときも、辛いときも、
お前がいつも傍にいて
初めての気持ちを見つけたんだ。
オレの隣にいて欲しい。微笑んでいてほしい。
抑えきれないこの想いを届けにいくよ……。
言葉足らずかもしれない。
それでも…どうか聞いて欲しい――
誰よりも輝くあなたがいて
私の中の新しい気持ちに気付いたよ。
夢を語るあなたの横顔をずっと見ていたい。
いつまでも。
だから…伝えるよ。
正直な私の声を――
Eren side
キーンコーン、カーンコーン――
部活動終了の鐘が鳴り響く。
ああ、今日も終わりか。
いつもながら疲れたな…。
おそらくは、小雨が降っていたであろう。
陽に照らされた銀色の水滴が張り付いている様子を見ながら
そう思った。
部員同士の挨拶もそぞろに、オレは汗を拭き、着替えを済ませ
一足早く部室を後にする。
廊下は走ってはいけない。
それは校則にも載っていることだ。しかし、今は放課後。
注意する人なんているわけがない。
廊下で女子生徒が声を掛けてくるが
生返事をしつつ、階段を一足飛びで駆け降りる。
くたくたな身体に鞭打って、駆けていく。走る。
やべぇ……。また、遅刻だ
あいつ、待ってっかな――
心の中で呟きつつ、オレはいつもの場所へ向かう速度を速めた。
“いつもの場所”――学校の裏門
特に綺麗な場所だとか、人気のスポットだとか、そういった理由は特にないけれど
オレと彼女だけのナイショの場所だ。
ナイショ――というのは
オレ達の関係を誰にも知られたくない。
という彼女たっての希望だ。
理由を聞いてみると
付き合っていることをみんなに囃し立てられる事が恥ずかしいらしい。
俯き加減にそう提案する彼女の様子を見て、オレは二つ返事で承諾することにした。
そんな、奥ゆかしいところが可愛いじゃないか。
などと思っているうちに、裏門に到着。
すぐさま目当ての人物を探すために周囲を見回す。
――いた。木陰になっている木に寄り掛かっている。
彼女もオレに気付き、顔をこっちに向けている。
一瞬、嬉しそうな表情を覗かせた。……気のせいかもしれないが
よかった。今日は機嫌が良いみたいだ。
そう思って、思い込みたくて何回も何十回も繰り返したであろう言葉を口にする。
エレン「ごめん!!遅れました!」
謝罪の言葉と共にオレはいつもの通り
頭を垂れる。
「遅い!!」
エレン「ごめんなさい!」
もう一度、謝る。
……。
地面に転がっている小石の数を数えるのも飽き始めていたそのとき
お許しが出たのか、顔を上げてという声が聞こえてきた。
「かばん持って」
彼女はかばんをオレに投げるように渡すと
整えられた太陽のような金色の髪を左右に振りながら
大股で先に行く……。
エレン「お、おい…」
エレン「ちょっと待てよ!アニ!!」
Annie side
――チャイムが鳴る5分前
冬が過ぎ去り、春が来て、私の胸の鼓動が歌を歌うように一ヶ月が過ぎた。
にもかかわらず
私とエレンの関係に大きな進展はない。
それでも、喜びを隠しきれない。
だって、ずっと待ち望んでいたから。
炎のように燃え上がるこの心が通じ合えたから。
春を称える唄が私の胸で鳴り響いている。それは聞こえないかもしれない。
だけど、耳を澄ませば確かに聞こえてくる。
強く、とても強く感じられる――あたり一面春だ。
それにしても遅いなあ。
時間にして、1分と少ししか経ってないはずなのに
彼と会う時間の前はいつもそう…。
たった1分が10分にも30分にも感じてしまう。
二人だけで会える時間、一緒にいられる瞬間。
私にとってかけがえのない大切なひととき―
私にはこの時間しか無いのに……。
でも、いいの。
毎日一緒に帰る。それだけの行為で私の心は満たされるから…。
だけど、だけど――
たまには下校時以外に一緒にいたい。
わがままが許されるなら、校内で堂々と会話したり、笑い合ったり
公認の付き合いをしてみたい。
でも…――そんなこと、叶わないことはわかっている……。
こぼれた花びらがくるくると舞いながら私の目の前に無造作に落ちる。
水気を含んだ花弁が所狭しに敷き詰められ、まるで桃色の絨毯のようだ。
ふと、何を思ったのか。
精一杯背伸びをして一番近い位置にある木の枝を折った。
アニ「…と――ア、ニ」
折った枝で相合傘を描いては恥ずかしさのあまり足で消す。
それでも、再度描いてみる。
そして、描いては消す。
また描いては消す。その繰り返し。
アニ「私、何やってんだろ…」
こんなところ誰かに見られたら、割腹ものだ。
ふと我に返りながら呟いた。
まあ、この場所は人の往来が幸いにして少ないので
私の羞恥に恥らう姿を見られずに済む。
なんてことを考えながら、校舎の裏口をちらちらと見ては大きな溜息一つ。
しかし、人っ子一人、巨人一体も来る気配さえない。
ならした地面に向かって溜息をまた一つ。
次第に苛立ちと悪戯心が芽生えてくる。
機嫌の悪いふりをしてみようか。
それとも――
体調が悪いふりをしてみようか。
彼はどんな反応を示してくれるのか。
想像していたら、楽しくなってきた。
キーンコーン、カーンコーン――
鐘が校舎から鳴り響き、完全下校時刻を告げる。
時間だ。
そして同時に…。
私を現実の世界に引き戻す合図でもある。
きっと、彼はいつものように急ぎ、駆けて来るだろう。
私はそれが嬉しくて、嬉しくてたまらない。
しかし、その反面もどかしくもある。
――なぜなら
彼はいつもの調子で、申し訳なさそうな顔で言う。
ごめんなさい……と。
ごめんなさい――。
違うの。
そんな言葉が聞きたいわけじゃない。
私はきっと…。
もっと…――
足音が聞こえた気がした。
たったった……と。
リズミカルに、それでいて力強い。
その数秒後
艶のある黒髪をくしゃくしゃにして、
額に汗を滲ませ、誰かを探すかのように辺りを見回す男が一人現れた。
――私のことを探すエレンが現れた。
あっ、来た。
おーい、こっちだよー。
声には出さず、心の中で叫んでみる。
すると……私の心が見透かされたかのように目が合った。
反射的に頬筋が緩み笑顔がこぼれる。
こぼれてしまった。
――と、あぶない、あぶない。
今日の私は機嫌が悪いんだから。
そう自分に言い聞かせ、エレンに気付かれないように下を向き
深呼吸をする。
うん、大丈夫。
気付かれていない。……はず。
エレン「ごめん!!遅れました!」
驚いて下を向いていた顔を起こす。
早くない!?
つい先ほどまで数十メートル先にいたのに
今はもう睫の数を数えられる距離まで接近している。
睫長っ!!
女の子みたい……。
いや、そうじゃなくて
予想通り…。
聞き慣れた台詞。
だけど、視点を変えてみると
また違った認識をすることができた。
私の中に身が震えるような感覚と少しの罪悪感が生まれた。
アニ「遅い!!」
思いとは裏腹な言葉を口に出す。
大丈夫だよ。私も今来たところだから。
言いかけた言葉を呑み込んで……。
エレン「ごめんなさい!」
更に頭を下げてきた。
今にも土下座しそうな格好で
深い前屈で礼儀正しく。
この男は本当に素直だ。
とても真っ直ぐで純真だ。
それでいて強い。肉体的にも精神的にも…。
私がいかに矮小な人間だということを思い知らされる。
だけど、あともう少し……。
もう少しだけわがままを許して…。
アニ「もう、いいよ」
許しの言葉を口にする。
あまり長々と情けない格好をさせて誰かに見られたら言い訳が出来ない。
それに…嫌われたくないからね。
アニ「かばん持って」
そう言って、カバンを投げる。
それをエレンは自分のかばんを小脇に抱え、器用にキャッチする。
今日は全教科授業があったから重いよ。
なんて心苦しく思いつつも少し充足感を感じた。
よし、完璧。
私は背を向けて密かに小さなガッツポーズをした。
あとは、速やかにこの場を立ち去り
エレンが追い掛けてくるのを待つだけ。
ずっと長い間、私が追い掛け続けてきたんだから
少しくらい私のことも追いかけてきてよね。
そんなヒロイン願望が強く表に出る。
1歩、2歩と先へ進んでいく。
――そのとき
エレン「ちょっと待てよ!アニ!!」
突如暖かい感触が伝わる。
一瞬、訳がわからなかったが…すぐにその正体に気付く。
エレンが私の手を握ってきたのだった。
彼の手と私の手が触れる。
触れる。
触れ合う――
私がここに存在している。
エレンがここに存在している。
二人で今、この時、この場に一緒にいるという証明。
そんな他愛ない行為ひとつで私の負の感情が全て洗い流されたのだった。
エレンの魔法の手によって…――
1ヶ月の間資格取得のため放置してたらスレを消去されました
反省はしているが後悔はしてないです
また書いていきたいので
ワンモアチャンスをください!!
もっさり続けていくんで……
そんな心持でテレビの前に座り、画面に集中する。
司会のお姉さんの快活な声が次々と読み上げていくがオレの頭には入ってこない。
まず、2位から6位まで――
ない。オレの星座には当てはまらない。
続いて7位から11位――
エレン「………」
残りは12位と1位を残すのみだ。
あれ、もしかして………。
期待と不安が入り混じり、首だけ画面に伸ばしテレビを食い付くように見る。
一言一句聞き漏らさないように今か今かと発表を待っている自分がいた。
ていうか、こんな性格だっけ…オレ。
こんな信憑性のないもの信じて何になる。
まあ、ね。その…あれだ。
卒業式だし……。と自分自身に弁解してみた。
他人が聞いたらどう思うだろうか。
何だそれ――と鼻で笑われるかもしれない。
しかし、それほどまでに今日は何かに頼りたい気分だった。
何はともあれ、まもなくである……。
1位
表示された数字が輝き、明るいファンファーレが鳴る。
これほどまでに1という数字を嬉しく思った日はなかった。
よし。良い日になりそうだな。
根拠のない自信が胸の奥底で湧き上がるのを感じた。
後ろで画面を見ていた母さんが良かったわねと言う。
なんか含みのある言い方だなあ…と思ったが深く追求はしなかった。
お姉さんが仕事運、金運と内容を述べていく。
そして――恋愛運
――異性に思いを伝えると吉。
気取ったりせずに素直な自分の言葉で接すると
良好な関係を築き、さらなるステップアップのチャンスです――
――つまり
好機は今。
運もオレを後押ししているようだ。
だけど…所詮占い。
されど占い。
うん…。
内容も的を得ていることだし
今日だけは占いの内容通りに行動してみるか。
もし、今日の計画が成功したら占いというやつを少しは信じよう。
そう心に決め朝食を済ませ、身支度を整えるため部屋に戻り
ラッキーカラーである赤のTシャツの上に制服を着る。
エレン「少し早いけど、そろそろ行くか」
学校は位置的には家からそう遠くないが歩いていくには時間がかかる。
ましてや、今日に限っては誰にも見つからずに任務を遂行しなければならない。
エレン「よし、行くか!」
3年間使ったかばんを肩に掛け、家のドアを開く。
――だが、ドアを最後まで開くことは出来なかった。
「もう行くの?」
後ろから母さんが不思議そうに尋ねたからだ。
ドアを開くという動作は途中で止まり、体を180度旋回させ
向き合って言う。
エレン「今日は早めに行かないといけない用事があるから……」
一般的な、ごくありふれた言い訳を口にする。
「ミカサも一緒?」
エレン「いや、ミカサには先に行くと伝えてある」
嘘だ。あいつに事前に伝えるとオレがいくら早く家を出ても
待ち伏せし、付いて来る。
まったく、いつまで経っても子ども扱いしやがって。
多分。いや、おそらく…
きっと嫌われてはいないはず…。
気持ちを伝えたら友達という関係が壊れてしまうかもしれない。
でも…。
友達以上恋人未満の微妙な関係じゃあ満足できない。
エレン「中途半端は嫌なんだよな…」
ミカサ「何のこと?」
エレン「いや、何でもない」
ミカサ「そう…」
ミカサ「それで話聞いてた?」
エレン「ん?わるい。ぼーっとしていた」
ミカサ「今朝のことだけど――」
エレン「あっ、ほら始まるぞ」
隣でミカサが後で話を聞くから
と声には出さないがそんな表情をした。
オレはわかったよと気怠い視線を返し、式の開始の合図を待った。
ああ、そのうち聞かせてやるよ。
オレの計画が全て成功したらな――
オレの計画――
――それは
エレン「おちんぽおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
全員「!?」
エレン「びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!」
卒業の良いムードを完全に破壊する。
全員が唖然とした表情でこっちを向く。
オレは逮捕された。
完
あ、コテが消えてました。ごめんなさい
それでは、ご愛読ありがとうございました!
このSSまとめへのコメント
毎回楽しみにしてます!
続き期待です!