海未「凛、山頂アタックです!」凛「え!?」 (70)

うみりんで登山行きます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405127724

海未「凛、○○日から4泊5日で登山に行きましょう」

凛「ど、どうして!?」

海未「最近、基礎体力のトレーニングが疎かになっている気がするのです」

凛「でもなんで登山?」

海未「夏休みに入って暑くなってきたでしょう。山は涼しいのでモチベーションも上がります」

凛「なるほどにゃ?まぁその日はとくに予定はないけど―――」


海未「凛っ!!」ウルウル

凛「ど、どうして泣いてるの!?」

海未「やっと、やっと予定の合う人がいました………!」

海未「穂乃果もことりも絵里も希も補修を取っているらしく……」

凛「穂乃果ちゃんも!?」

海未「ええ」

凛「し、信じられないにゃ。でも大丈夫だよー。きっとかよちんも真姫ちゃんもにこちゃんもこれるって!」

海未「それが…」

――――
――――――

prrrrrr

海未「花陽、○○日から△△日までなんですが、登山に行きませんか?」

花陽「ごめんっ!その日は三ツ星お米マイスターの人の講演会が入ってて、ずっとそれを楽しみにしてたから…」

海未「そ、それなら仕方ないですね」

――――


prrrrrr

海未「あ、もしもしにこですか。今お時間よろしいですk――」

にこ「ま、真姫ちゃんっ…今電話中だから…ひゃんっ」

海未「」

にこ「そ、それでなに?」

海未「えっと…○○日から△△日までなんですが、登山などいかがでしょうか」

にこ「ご、ごめんその日は、あっだめ!!…えっと、好きなアイドルのライブに真姫ちゃんといく約束があって」

海未「そうですか、失礼しました」

――――
――――――


海未「ということがあったんです」

凛「な、なるほどにゃ」

海未「だから、凛は予定がなくてよかったです!すごくうれしいです」

凛「う、うん(本当は乗り気じゃないなんて言えないにゃ…)」

海未「はい!」ギュッ

海未「詳しいことはまた明日お話しします。必要な荷物や道具は私で用意しますね」

海未「凛、登山靴はありますか?」

凛「うーん。ちょっとないかも」

海未「家にいくつかあるものを貸しましょう。持ってくるのでためし履きして慣れておいてください」

凛「はーい」

海未「ではまた明日」

凛「(結局行くことになってしまったにゃ)」


――――
――――――



海未「というわけで地図としおりを作ってきました!」


凛「なんかノリノリだにゃ~」


凛「ところでどこの山にいくの?」

海未「それは…」

凛「それは…!?」ゴクリッ





海未「穂高岳です」

凛「ほう?」





海未「穂高岳です」


凛「ど、どこ!?」

海未「長野と岐阜の県境にある山です」

海未「この地図を見てください」

http://i.imgur.com/fJngf7D.jpg


凛「地図だにゃ」

海未「1日目は移動だけで1日が終わります。なので2日目から登山開始です」

海未「2日目はこの上高地から出発して、こう山の周りをぐるっと回って、ここの涸沢小屋まで行きます」

海未「おそらく昼くらいには着くのでここでお昼を食べて、この日はここで泊まります」


凛「昼で歩くの終わるの!?」


海未「はい。1日で1番暑くなるのは14時ごろなのでその時間ぐらいにはその日の登山は終わります」

凛「知らなかったにゃー。てっきり毎日夕方まで登るのかと思ってたにゃ」


海未「3日目に涸沢小屋を発ってこの北穂高岳に登ります。そのままこの尾根を縦走してこの穂高岳山荘に泊まります」

海未「この地図では北穂高から穂高岳山荘まで1時間ほどらしいので昼過ぎには着くでしょう」

海未「4日目は穂高岳山荘からこの奥穂高岳に登って、この釣り尾根を縦走して前穂高、そして重太郎新道を通って下山します」

海未「今回この西穂高は通りません」



凛「あ!でも、この奥穂高岳って標高3190mもあるよ?大丈夫?」

海未「この涸沢小屋の時点ですでに標高が2100m近くあります。なので実際の山登りは1000mくらいですよ」ニコッ

凛「ふーん。よくわかんないけど、まぁ海未ちゃんの言うとおりにしてればきっと大丈夫だよね!」

海未「えぇ!」



凛「そういえばなんで穂高岳に登ろうと思ったの?」











海未「名前が穂乃果みたいだからです」







凛「………………え?」




海未「なにか、おかしいことでもいいましたか?」


凛「ちょっとほのキチすぎないかにゃ?」


海未「失礼ですね!」



――――
――――――

――― 1日目



海未「というわけで山のふもとの旅館に着きました。直前準備です」

凛「真姫ちゃんちの知り合いの経営してる旅館があってよかったにゃ」


凛「上高地までのタクシー代も出してくれるなんて…」


海未「真姫には感謝してもしきれませんね」



凛「よーしお風呂いくにゃ!」

海未「い、いきなりですね」

凛「でももう外も真っ暗になっちゃってるし、善は急げにゃ!」


海未「それ意味が違っ…しょうがないですね」

――――


凛「(わぁー…海未ちゃんやっぱりスラッとしてかっこいい身体してるにゃ)」


海未「ちょっと凛!なに人の体をじっと見つめてるんですか」

凛「エヘヘ…つい見惚れちゃって」

海未「もう」


凛「(海未ちゃんってば顔真っ赤にしてかわいい。ちょっとドキドキしちゃうにゃ)


――――
――――――



海未「で、これが食べ物です。ラーメンやお湯をいれてできる牛丼などですね」

凛「ふむふむ」

海未「そしてこれが携帯食です。クッキー、チョコ、ビスケットなどです。山では食べ物は生命線なので、小分けにして持っていきます」

凛「なるほどにゃ」

海未「そしてこれがカッパ。こっちがアイゼンでこっちがスパッツでこれがピッケル――――」



――――
――――――

――― 2日目早朝



海未「よーし!出発です!」

凛「おー!」


――――

凛「ふもとまではタクシーで行くんだね」

海未「上高地はマイカーの乗り入れが規制されていますからね。そもそも私たちは車を運転できないわけですが」

凛「それもそうだったにゃ。あ!綺麗な湖だよ!」

海未「大正池ですね」

タクシー運転手「こんなに霧が晴れてるのは珍しいんだよ」

海未「そうなんですか。幸先いいですね!」

凛「凛たちのかわいさで霧も恐れをなしたんだね」

――――


海未「上高地に着きました」

凛「まだこんな早朝なのにけっこう人がいるんだね」

海未「わりと有名な観光地ですからね」



凛「り、凛ちょっとトイレにいきたくなっちゃった」


海未「あっちにありますね。ついでにこの登山届をそこのポストにいれていってください」

凛「へぇーこんなのがあるんだね。ちょっとめんどくさそうにゃ」

海未「登山届は時には命を左右しますから、しっかり書かないとだめなんですよ?」

凛「へぇー」タッタッタッタ







凛「あれ?トイレするのに1回100円入れないとだめなのかにゃ?」

凛「ここの管理もけっこう大変なんだね」




――





凛「ねぇ見て見て!河童橋だって!」

凛「河童の伝説でもあるのかな?」

海未「せっかくの観光地です。記念撮影していきましょう!」


凛「あ!あれ、ソフトクリームだって!ほかにもお土産屋さんがいっぱい!」

海未「もう、凛。はしゃぎすぎです。最初からそんなに飛ばしてるとあとが持ちませんよ?」

凛「大丈夫だにゃー!登山って言っても、まだぜんっぜん平坦だし。それに昼までしか歩かないんでしょ?余裕にゃ」

海未「もう、凛は元気ですね」

凛「凛はいつも元気にゃー。ねぇねぇ、帰りもここ通るんだよね?」

海未「はい。お土産はそのときにしましょう」


凛「あー!見て見て!あんなに大きい岩の壁があるにゃ」

海未「あれは屏風岩というそうです。登山者の方の中にはあれをロッククライミングする人もいるそうですよ」

凛「あ…あれを!?落ちたら死んじゃうよ?」

海未「ええ。私のおじさんの先輩もそういったロッククライミングの途中で亡くなったそうです…」

凛「そう…なんだ…」

海未「まぁ、私たちが行くのはふつうの登山道です。三点支持さえ守っていれば大丈夫ですよ」

凛「三点支持?」

海未「ええ。両手両足の四点のうち常に三点はなにかにかけておくということです」

海未「左手を離して上をつかみ、その間他の三点で支えます。次に左足を…という具合です」

凛「なるほどにゃ。とりあえず三点は常に離したらだめってことだね」



―――


海未「ここからは少しづつ山道になります」

海未「約1時間ごとに休憩をはさみましょう」

凛「このクッキーおいしいにゃー」


――――



登山者A「あら、かわいいおじょうちゃんたちだね」

うみりん「こんにちはー」

海未「少し休憩して追い抜いてもらいましょう」

登山者B「ありがとうございます。お先失礼しますねー」



海未「凛、体力のほうは大丈夫ですか?」

凛「凛はまだ大丈夫だよ。思ったより登山って気楽にいけるんだね。もっと過酷なものかと思ってたよー」

海未「ふふっ山が好きになってもらえそうでなによりです」





ポツン…ポツン…




海未「おや?雨ですね。カッパを着ましょう」

凛「小雨だし大丈夫だよー」

海未「そういうわけにはいきません。熱を奪われてしまいますし、いつ強くなるかもわかりません」




――――
――――――


ザアアアアアアアアアアア



海未「それにしても…雨強くなりましたね。」


海未「あ!涸沢カールにでましたよ!!」

凛「おーーー地理の図表ででてきたやつにゃー」

凛「そ、それにしてもすごい雪積もってるんだね!もう夏なのに」

海未「たしかにかなり残ってますね。ラストスパートです。これを登り切ったら今日は休めますよ!」

凛「おおー。がんばるにゃー!!」ダダッ

海未「あっ凛!走ってはいけません!滑りますよ!」

凛「へっ?」ツルッデーーーン

海未「ああ、いわんこっちゃない。うまく止まれたからいいものを…」

海未「下手したら谷におっこちちゃいますよ?」

凛「え?うわあああ…下が、下があんなに下にあるにゃ…」

海未「けっこう登ってきた証拠です!さ、気を付けて登りましょう」

凛「うん…」

海未「思ったより雪が多かったので、凛はここらでアイゼンをつけてから登りましょう」

凛「アイゼン?」

海未「靴につける、ツメのようなものです。これで雪道や氷道でも滑らずに登れます」

凛「そ、そんな便利なものが!あれ?でも1つしかないよ?」

海未「夏だし本当は必要ないと思ってて1つしか持ってきてませんでした」

海未「まぁ、私は大丈夫です。鍛えてますし、所詮は夏です」

アイゼンツケツケ


海未「アイゼンをつけても滑りやすい道であることは変わらないので、気を付けていきましょう」スタスタ

凛「それにしても、この雪が赤くなってるのはなんで?」

凛「ま、まさか他の登山者さんの血!?」

海未「違いますよ。それは登山ルートを示してくれているんです」

凛「へー」

海未「私たちはこういった山小屋の人のサポートに支えられて、こうして安全に山登りができるのです。感謝の気持ちを忘れてはいけませんよ」


海未「あ!小屋がみえました!」


凛「おーーーーー」


凛「あそこで泊まるの!?」

海未「そうですよ」

凛「やったにゃー。これで今日の分の登山は終わりだね!」


―――


海未「大雨のせいでカッパが水を通してしまっています。乾燥室で服を乾かしましょう」

凛「それが終わったらお昼ご飯だよね!」


――――

―― 山小屋のストーブの周り



凛「あー。疲れた。でも思ったほどじゃなくてよかったよー」

海未「山登りは無理せず少しづつが基本ですからね。では今日はラーメンにしましょう」

凛「棒ラーメン食べるの久しぶり!やったにゃー」

凛「あ、山小屋の売店におはぎうってるよ!」

海未「せっかくだし買って食べましょうか」



――――
――――――


海未「おや、雨があがってますね」

凛「あ、ほんとだ」

海未「明日は、天気が悪くなければ北穂高経由で穂高岳山荘です。おそらくこの登山での山場でしょう。山だけに。がんばっていきましょう」

凛「それにしてもこの涸沢カールはすごいね。雪も残ってるしなにより大きいにゃ」

海未「そ、そうですね。もし天気が悪ければこの涸沢カールを登っていくことになります」

海未「北穂高経由よりは楽でしょうが、こちらもザイテングラードという岩場を通らないといけません」

海未「その場合は北穂高岳はあきらめざるを得ませんね…」

凛「まぁまぁ、きっといい天気だよ!」

海未「そうですね!絶対穂乃果…いえ穂高岳を制覇してみせます!」

凛「その調子だよ!」

http://i.imgur.com/jzsQNfZ.jpg

――――
――――――


凛「夜ご飯おいしかったにゃー」

海未「料理もおいしいし、他の登山者さんも良い人ばかりでしたね」

凛「それにしても、話を聞く限り北穂高に登る人は少ないんだね」

海未「この穂高岳のなかでは1番難しいって声もあるみたいです」

凛「凛たちいけるかなー?」

海未「きっといけます!穂乃果の言葉を借りるなら、やるったらやる!です」

凛「海未ちゃんがいうと現実感が出てくるにゃ?」


――――

凛「それにしても下山するまでお風呂ないんだよね」

海未「仕方ないですね…まぁでも、体をふくシートを持ってきました!」ジャジャーン

凛「ほ、他の登山者さんもいるんだよ?」



海未「……………失念していました……」



凛「あ!じゃあおんなじお布団の中に入ってその中で吹いたげるにゃ!」

海未「ええ!!??」


凛「覚悟するにゃー!」モゾモゾ

海未「ちょっ…凛待って!」

凛「ほらほらー静かに静かに」ヌガセヌガセ

海未「うぅ…」

凛「(きれいな背中だにゃ…)」フキフキ






海未「ほら、次は凛の番ですよ」ヌガセヌガセ

凛「り、りんはいいにゃぁ」

海未「やってもらった分はちゃんとお返しします!」フキフキ



凛「ちょっとドキドキするにゃ…」





――――
――――――

――― 3日目




海未「曇り…ですね」

凛「曇りだにゃ」


海未「まぁ、いけるんじゃないですか?」

凛「なんとかなるんじゃないかにゃ?」






海未「ふぅ…けっこう登ってきましたね」

凛「そうだねー…ってにゃあああ!」

海未「どうしました凛!」


凛「下が…涸沢小屋があんなに小さくなって下のほうにあるにゃ…」

海未「それだけ登ってきた証拠です」

海未「それに、右手の同じくらいの標高のところにでっぱりがあるでしょう?」

凛「うーん…わかりづらいけど、あれかにゃ?」

海未「おそらくこの地図の2659mと書いてるでっぱりでしょう」

海未「もう北穂高岳の半分近く登ったみたいですよ?」


凛「もう半分まで来たんだね!」

海未「ここからは岩場が続くのでクサリ場が増えてきますが落ち着いていきましょう」

(※クサリ場:文字通り、打たれているクサリを伝って岩を登っていく場所のこと)


凛「このクサリ、登り棒みたいにしていくの?」

海未「登り棒…?あ、いえこのようにして、よいっしょ」

海未「クサリをしっかり握って、岩壁に垂直に歩くようにして登ります」

凛「なるほどにゃ!」

凛「真姫ちゃんがいたらきっと垂直抗力がーとか張力がーとか話し出すにゃ」

海未「あなたにとっての真姫はいったいなんなんですか」



――――

―――――――


凛「もうほとんど木が生えてないね」

海未「そうですね。森林限界を超えたので『ハイマツ』くらいしか見ませんね」

海未「地面に対して這うように生えてる松なのでハイマツといいます」

凛「なるほどにゃ。あ!小さなお花が咲いてるよ!」

海未「あら、かわいらしいですね。麻雀の役の『嶺上開花』はこういった花からきてるんでしょうね」

凛「イカしたネーミングセンスだね」


ポツン

海未「おや、雨ですね」

凛「小雨だしぱぱっとカッパ着ていくにゃー」



―――――――

―――――




凛「あ!もしかしてあれが山頂!?」

海未「そうですね」


凛「でも…見事にガスで真っ白だね。景色ゼロにゃ」




海未「………………はい」


凛「まぁまだ奥穂?と前穂?が残ってるんでしょ?きっと晴れるにゃ」

海未「そうですね。じゃあ、記念撮影しましょう」


――――

――――――


凛「山小屋だにゃ!」

海未「ええ。少し休んでいきましょう」




海未「山で食べるおしるこは最高ですね」

凛「インスタントが出てくると思ったけど、けっこうしっかりしたのが出てきたね」

凛「…………って、にゃああああ」


海未「どうしました凛」

凛「ペットボトルの水が…300円とか400円するにゃ」

海未「輸送費のヘリ代がかかるんですよね。高度があがるほど飲み物は高くなります」

凛「そうなんだ…じゃあ仕方ないね。凛てっきり客の足もとを見てるのかと」

海未「まぁ山じゃ飲み物は死活問題ですからね。あながち間違ってないのかもしれませんが、悪意はないと思いますよ」



海未「北穂高での凛の山登りを見てたんですが」

凛「う、うん(変だったのかな…?)」

海未「けっこう足腰のバランスもしっかりしてますし、登山向いてると思いますよ!」

海未「これなら穂高岳山荘まで、尾根を縦走しても大丈夫そうですね」

凛「そ、そう?そこは難しいの?」

海未「ええ。この登山の中で一番の難所といっても過言ではないでしょう」

海未「正直ここがしっかり歩けるようなら、ほとんどの岩山でも大丈夫でしょう」


凛「えぇぇ…凛そんなところ行けるかなぁ…」

海未「大丈夫です!それに、私が守ってあげますよ?」

凛「うーん」


海未「凛がきつそうなら一度北穂高を下山して、こちらのザイテングラードを通っていくことになりますが」

海未「もう一度あの道を戻るのはけっこうしんどいでしょう?かなり急でしたし」


凛「がんばってみるにゃ!!!(一回登ったあの岩道を戻るのは嫌にゃ!)」








――――――

――――――――――









凛「もう……嫌だにゃ……」

海未「ま、まだ10分しか歩いてないですよ?三点支持さえ守っていれば滑落することはありません」

凛「でも、でもね。ガスのせいで岩は濡れてるし、それに風!!!!」

凛「時々ぐらっとくるレベルだにゃ!!!落ちるにゃ!!死ぬにゃあぁぁぁぁ」

海未「だ、大丈夫です!ほら、私が通ったあとの岩は揺れたりしませんから」







海未「そうです!いいことを思いつきました」

凛「なんだにゃぁぁぁ」


海未「このロープとクサリで凛と私をしっかり繋いでおきましょう。これで落ちたくても落ちれませんよ?」

凛「無理だにゃ…海未ちゃんじゃ凛を支えきれないよ…一緒に落ちちゃうにゃぁ」

海未「凛、私を信じてください。さっきも言ったでしょう?私があなたを守ると」

凛「うぇっぐすっ…わ、わかったよ…」


凛「うん…凛もちょっとわがままだったよ」







海未「これでよし。さぁ、出発しましょう」




――――――

――――――――


凛「(だいぶ気持ちは楽になったけど…ちょっと踏み外したらあの世行きにゃ…死ぬ…死んじゃうにゃぁ)」

海未「それにしてもガスが濃いですね。岩が濡れて滑りやすい上にとても冷たいです」

凛「(落ちたら死ぬ…死んじゃうよ…)」

海未「凛?」

凛「え!なになに」

海未「地図では北穂を出発してから1時間半ほどで着くことになっているので、もう少しです。頑張りましょう?」

凛「う、うん」










凛「あの…さ…………もう、2時間半経ってるんだけど…」












海未「………………………はい」


凛「いつ着くんだにゃぁぁぁぁぁ」



海未「あ、最低コルが見えました」

凛「予定の三倍だよ?」

凛「あの地図おかしいよ。最低コルまでを50分だなんて…」

海未「かなり慎重に来ていたのは認めますが、50分はきついですね。なにかの間違いでしょうか」

海未「まぁ、最低コルまできたということは、あと少しで涸沢岳。それを過ぎればもう穂高岳山荘です」

凛「もうちょっとってことだよね?」

海未「ええ。最後の山場です。張り切っていきましょう」





――――――

―――――――――



凛「は、はしご多すぎないかにゃ!!??」

海未「涸沢を取り巻く最後のクサリとハシゴラッシュです!」

凛「さ、最後にきっついにゃ…」










凛「うんっしょっと…」

海未「頑張りましたね。これで今日の山場は越えました」

海未「ちょこっと涸沢岳を登って山荘に向いましょう」

凛「荷物ここ置いていっていいよね?」

海未「そうですね。ぱぱっと登ってしまいましょう」








凛「ガスで真っ白だね」

海未「まぁ、仕方ないです。はいチーズ」パシャ



――――――

―――――――――

―――― 穂高岳山荘





登山者C「ええっお嬢ちゃんたち北穂から縦走してきたの!?」

凛「死ぬかと思ったにゃ。あるところなんてね、つかむところすらなくてね!?」

凛「風も強いし岩は濡れてるしで泣きそうだったよ…結局3時間半かかったんだにゃ」

海未「そちらはやはりザイテングラードで?」

登山者C「ですね」


凛「やっぱり凛たちもザイテングラードから行くべきだったんだよ」

海未「でもあのとき、もし『じゃあ北穂降りて涸沢小屋からザイテングラードいきましょう』って言ったら」

海未「凛は間違いなく反対してあのまま縦走してたと思いますけどね」

凛「まさかあんなにあの縦走がきついと思ってなかったよ」


海未「まぁ明日の登山道は今日に比べたら次元が違うレベルで簡単ですよ」

海未「今日の道が少し異常でした」


凛「うん…じゃあ、拭きあいっこ、しよ?」

海未「ちょっと早いですよ」

凛「えぇー」

海未「おや、別のパーティが到着しましたよ」




―――――――

―――――――――


凛「いろんな人に話を聞いたけど、あの道を縦走してきたのって凛たちともう一つのパーティしかいなかったね」

海未「まぁ、基本はザイテングラードですからね」




<ハレタ!ジャンダルムミエタヨーーー



海未「!!」

凛「?」


海未「凛!ちょっと写真撮りに行きましょう!」








――――――――

―――――――――――



登山者たち「わぁ………」


海未「おお…」

凛「?」


海未「あれがジャンダルム……」

凛「あのもこってしてるやつ?」

海未「はい。すごいですね…私たちが来てから少し時間が経って晴れたようです」

凛「あのジャンダルムってそんなにすごいの?」

海未「ええ。難易度でいったら今日の縦走なんかよりずっと難しいと思います」

凛「もしかして明日あそこいくの!?」

海未「い、いきませんよ!」

海未「私たちは素直に奥穂、前穂と行って下山します」

凛「……あのジャンダルム登ってみたいの?」

海未「さすがに私でも登ってみようとは思いませんね…」

海未「ジャンダルムや馬の背は冬のほうが登りやすいんですよ。雪で道幅が横に増えますから」

凛「そ、それちょっと怖くないかにゃ?」

海未「まぁ、私たちはこれからも登ることはないでしょうね」

海未「というか、登るといってもあれはもうロッククライムの域ですよ」

凛「にゃっ……!」




――――――

――――――――――



凛「というわけで拭きあいっこにゃ!!」

海未「さ、さっさっとやって寝ますよ!」カァァ



――――
――――――

――― 4日目


凛「相変わらずガスが濃いにゃ」

海未「そうですね。まぁでもこの様子なら途中で晴れるかもしれません」



凛「うーん。少し疲れが残ってるかも?」

海未「他の登山者さんたちがわりとゆっくり行ってるので、それに合わせてゆっくり行きましょう」


凛「けっこうごつい岩山だけど、昨日を経験しちゃったせいですごく簡単に思える自分が怖いにゃ」

海未「成長したということです」




凛「あ!小さい神社みたいなのがある!」

海未「社ですね。山頂です。写真撮っていきましょう」

海未「この山登りの中で一番高いところなのにガス濃いのは残念ですね…」



凛「はい、チーズ」パシャ


――――――――

―――――



凛「釣り尾根楽だにゃ!」

海未「若干下りなところがいいですね」




凛「あ!」













海未「晴れました」








凛「……………………すごい…にゃ」















海未「岳沢小屋が見えますね」

凛「あの先の平地から…登ってきたんだね」


海未「はい」














海未「行きましょうか」

凛「うん」

―――――――

―――――――――――




海未「紀美子平に着きました。地図でいうと前穂高に分かれ道がのびているところですね」

凛「ちょっと疲れたよー」

海未「少し休憩した後、ここに荷物をおいて前穂高に山頂アタックです!」

凛「わかったにゃー」





凛「このバナナのペーストみたいなやつ、ちょっと甘すぎだよ!!」

海未「水と一緒に飲むものらしいです」


海未「山で食べるクッキーはなにかおいしいですね」



海未「さて、前穂高です」

凛「涸沢岳のときも思ったけど、荷物おいて登るだけですごい身体が軽く感じるね」

海未「ザックは中身合わせて10kg近くありますからね」

海未「山頂です」

凛「最後の山頂だよね」

海未「ええ」

凛「この3日間がすっごく長く感じるよ」

海未「最後の最後で晴れましたね。といっても雲が多いので視界はそこまでよくありませんが」

凛「時々見える景色だけでも十分だよ」




凛「海未ちゃん」

海未「なんですか、凛。寄りかかって」




凛「山も、いいもんだにゃ」


海未「でしょう?」フフッ



凛「もうしばらく、こうして下界を見ててもいいかにゃ?」


海未「ええ」













海未「ちなみにどうでもいいんですが、下界の反対語は天上らしいですよ」

凛「ほんと、どうでもいいにゃ!」

http://i.imgur.com/Sb24mL8.jpg


――――――

―――――――――


海未「じゃあ下りますか」

凛「了解にゃー!」

海未「重太郎新道はガレ場といって、中ぐらいの岩がごろごろしてるようなところなので、気を付けてください」

海未「私たち二人とも足が笑っているので、足の踏ん張りが利かなくなってくるころです」


――――――

―――――――――


凛「ねー!!いつつくのー!!」

海未「まだずっと先です」

凛「下山つまんないにゃー!!」

凛「さっきからガレ場で石ばっかりだし!」

海未「でも晴れたおかげで景色いいでしょう!?」

凛「それとこれとは話が別にゃ!ずーっと同じ景色にゃ」

凛「それにどんどん高度が下がって、景色の価値が減ってきてるにゃ」

凛「うぅ~足が笑ってるにゃ~…」ウオット

海未「しょうがないです。踏ん張りがきかない分気を付けてくださいね」オット

海未「あ、ほら、上高地見えましたよ」

凛「うぅぅぅわあぁぁぁぁまだあんなに遠いにゃーーー!」

海未「ほら、手前に見える岳沢小屋でご飯食べましょう?」

凛「高度が下がって虫が出てきたにゃ!!もう嫌だにゃ!」


海未「もう、そんなわがままばっかり言ってるとお昼はラーメンにしませんよ!」






凛「あ、ほら、海未ちゃん、そこの段差危ないよ」

海未「あ、はい。ありがとうございます」




―――――――

――――――――――



海未「ラーメンおいしかったですね」

凛「凛は確信したよ」

海未「どうしましたか」

凛「山登りで一番しんどいのは下山だよ」

凛「北穂から穂高岳山荘までの縦走はたしかにきつかったよ?」

凛「でもあれは物理的にきついというより、『まじで死ぬ』恐怖と戦ってたからなんだよ」

凛「でも下山は違う。下界に下りて草木や虫が出てきたり、足が笑って、歩くたびに『あふんっあうあう』てなるし」



海未「あ、天然クーラーですって。少し涼んで行きましょう」

凛「って、聞いてないにゃー!!」



海未「そもそも山登りに下山はつきものです!物理的にしんどいのもわかりますが、仕方ありません」

凛「そ、そうだけど…」

海未「ほら、河童橋のところでお土産買うんでしょう?」

凛「もうどうでもいいよ!さっさと今日泊まる旅館にいこうよ!」

海未「ひっ……もう、そんなに言うならおんぶしていきましょうか?」

凛「え、いいの?」

海未「まぁ、私から誘ったわけでもありますから…」


凛「…………ごめん、やっぱりいいや!ただでさえお互い10kgも持ってるんだもんね」





凛「天然クーラー涼しいね!」

海未「あ、この風穴の奥のほう、氷が残ってますよ」

凛「え、どれどれ!?うわぁーすごいにゃ」

――――――

―――――――――


海未「なんとか河童橋まで下りてきましたね」

凛「ぱぱっと適当にお土産買って旅館いくにゃ」

海未「冷めましたね。最初ここ通った時はテンションあがるにゃー!って感じでしたのに」

凛「あ、ソフトクリームあるよ。食べよ!ほら!」

海未「あ、凛!………おいしそうなものがあると急に元気になりましたね」



――――――

―――――――――





凛「やっぱりお風呂っていいね」

海未「ええ。長旅の疲れが癒されます」

凛「本当は海未ちゃんのおっぱいをわしわししようと思ってたんだけど」


海未「え」


凛「疲れすぎたからやる元気ないにゃ」

海未「それいう必要あったんですかね」


凛「海未ちゃんの身体、スラっとしててかっこよくてドキドキしちゃうにゃー」

海未「い、いきなり何言い出すんですか!」

凛「照れちゃってーかわいいにゃー」

海未「そんなことありません…!」



凛「疲れたにゃ」

海未「ええ」






――――
――――――

―――



穂乃果「えぇー!!海未ちゃんと凛ちゃん、二人で登山行ってたの!?」

絵里「ハラショー」

希「どこの山に登りにいってたん?」

海未「穂高連峰ですね」

真姫「穂高って、日本三大岩場っていわれてる、北アルプスの?」

凛「そうだよ!」

にこ「日本三大岩場って…よく生き残ってこれたわね?」

花陽「無事でよかったよぉ」

ことり「海未ちゃん、無茶したりしなかった?」

凛「ほんっと死ぬかと思ったんだよ!」

海未「り、凛だって最初は北穂高から縦走するの賛成だったじゃないですか!」

凛「あんなにしんどいなんて知らなかったの!だまされたに近いにゃ」

海未「だ、だます!?だってしょうがないじゃないですか―――」


穂乃果「あの二人、姉妹みたいだね」

穂乃果「あの二人が姉妹なら…私の妹は花陽ちゃんだね!」

花陽「エ゙エ゙エ゙ェ゙ェ゙ェ゙」


凛「ねー海未ちゃん」

海未「なんです?」


凛「また山登りいこうね!」


海未「はい!」





――― おわり ――――

途中の絵って自分で書いたやつ?
うまいなぁ

>>47
そうですね

これは>>1が男同士で体拭くにゃーとかやった実体験なんです?

>>55
さすがにないw

乙レスありがとうございます。
ss初投稿だったので緊張しました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月12日 (土) 14:09:30   ID: RLnE5-tC

久々に山登りたくなったぜ…
大学以来登ってないからなあ

2 :  SS好きの774さん   2014年07月12日 (土) 18:46:31   ID: iOycu1Ww

やっぱり うみりん は最高だ!!

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