三船美優「アクメツ?」 (59)
題名通り、モバマス×アクメツのクロスオーバーで、アイドルマスターらしさとアクメツらしさの両方を兼ね備えた変わった作品となっております。
努力はしますが、亀更新です。
という事で書いていっても良いでしょうか?
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405007218
三船美優「アクメ?」に見えた。訴訟
三船美優「アクメ?」に見えててっきりエロかと
こういう奴に良くないって言ったらどうなるの
書く前から構ってちゃんは嫌われるよ
三船美優は町を歩いていると、男性に声をかけられた。
男性に声をかけられること自体は彼女にとって珍しいことではない。彼女は容姿が良かったため、キャバクラのスカウトやナンパされるからだ。
やんわりと断ると、向こうは大人しく去ってくれる。たまに、強引なナンパもあるがのだが、通行人が助けてくれたり警察に通報してくれたりで、助かっている。
だが、その男性はいつものキャバクラのスカウトやナンパと違った。そして、予想外の言葉をその男性は口にした。おかげで、警察も呼べないため、美優は対応に困った。
??「お姉さん、貴方の人生、俺に預けてみませんか!?」
なぜなら、真昼間の人通りの多い道のど真ん中で男性にプロポーズされたからだ。
男性はスーツ姿で、自分と年齢が近く、端正な顔立ちであった。そして、後ろに流した白髪を真ん中で分けるという特徴的な髪型をしていた。
こんな特徴的な髪型をしているのなら絶対に忘れないという自信があったが、自分の記憶を探ってみても、こんな男性に会った記憶が全くない。
それに、男性は自分を『お姉さん』と呼んだため、初対面であると予測できた。
だが、男性は真剣な眼差しで美優を見ている。一世一代の大舞台に立っているかのような真剣さが男性から伝わってくる。
初対面であるため普通ならプロポーズを断るべきなのだが、男性の真摯な態度や大胆さに心を打たれてしまった美優はドキドキしてしまい、断るべきなのか悩んでしまっている。
頭の中でパニックを起こしている美優は男性に何と返事をすれば良いのか必死に考える。
??「あ、まずは名刺を渡さないとナンパと間違えられるじゃん。アイドルプロダクションシンデレラガールズプロ(CGプロ)のプロデューサー最上生といいます。貴方をスカウトしたく声をかけさせていただきました。貴方ならトップアイドルになると一目見てわかりましたよ」
美優「え…えぇっと」
最上「どうかしましたか?」
美優「あの…周りの人が見ています」
美優の言葉で周りの状況を把握した最上生は苦笑いしてしまう。
最上「…あ……すみません。とりあえず、喫茶店でも行きませんか?奢りますよ」
美優「はい」
近くの喫茶店に入ると、最上生は美優に何故声をかけたのかを説明した。
彼は営業の帰りを利用して、スカウトをするためにあの場所に居たら、アイドルとしての資質を持っていた美優に声をかけたという。
芸能界に疎い美優でもCGプロというアイドルプロダクションは知っていた。
CGプロはニュージェネレーションやトライアドプリムス、にゃん・にゃん・にゃんといった有名なアイドルグループを排出している大手のアイドルプロダクションであったからだ。
最上生は自分がCGプロに所属している証拠としてアイドルと撮った写真や動画を美優に見せて信用を得ようとした。
写真だけなら合成かもしれないと疑っていた美優だったが、動画を見たことで大手のアイドルプロダクションの名前を借りた詐欺ではないということを知り、少し安心した。
美優「私ぐらいの年齢でも本当にアイドルになれることができるのでしょうか?」
美優は最近仕事を辞めてしまったため仕事を探していた。最近仕事を辞めた理由は仕事場での人付き合いが上手くいかなかったからだ。そこで、美優は人付き合いが苦手であることを治したいと思っていた。
人付き合いが良くなろうと思えば、結局誰かと接する必要がある。そのため、美優は人と接する事の多い職につくことができたら良いと考えていた。ゆえに、最上生のスカウトを受けてもいいと美優は考えていた。
だが、世間一般的に言われているアイドルの年齢は十代から二十ぐらいまでであり、自分は二十代の後半であるため、アイドルになれるとは思っていなかった。
>>5さん、
御忠告ありがとうございます。以後精進いたします。
最上「もちろんです。三船さんのぐらいの年齢のアイドルも十人近く在籍していますので、そこは安心してください」
最上はスマートフォンを操作し、美優と同世代ぐらいのアイドルの写った写真を見せる。
その写真はビール片手に大はしゃぎする姫川友紀と友紀に絡まれているスーツ姿の最上の映った写真だった。
美優「それに、私にはアイドルとしてやっていけるような魅力があるとは…」
最上「何を仰います、三船さん!立っているだけで絵になるその容姿、最初の私の言葉で動揺したときに見せた困惑の表情、物静かな大人のお姉さんを彷彿とさせるその優しい口調、お姉さんでありながら守ってあげたくなってしまうその雰囲気。
これが魅力と言わずして何というのか教えてほしい!」
最上は立ち上がり、右の拳に力を入れて大声で力説を始めた。
自分の魅力について力説された側の美優は羞恥のあまり顔を真っ赤にして、最上から視線を外し俯いてしまっている。
幸い二人の居る喫茶店にほかの客が居ないため、客が最上を見てくることはないが、店員が店の奥からジーッと二人を見ている。店員の視線に気づいた美優は最上の力説を慌てて止めた。
美優「もう、わかりましたから、座ってください」
最上「わかっていただけましたか?」
美優「…えぇ、少し自信になりました」
最上「そうですか。それは良かった。
っと、こんな時間か。すみませんが、用事があるので、俺はこれにて失礼します。
もし、アイドル業が気になるようでしたら、名刺に書いてある事務所の電話番号まで。会計はしておきますので、ゆっくりしていってください。それでは!」
最上生はそう言い残すと颯爽と店から出て行った。
美優「…アイドル」
ごめん俺もアクメに見えてエロだと((ry
翌日
美優「…失礼します」
??「どちら様ですか?」
美優「昨日電話した三船美優です」
ちひろ「三船さんでしたか、私事務員の千川ちひろと言います。どうぞ。プロデューサーは現在向こうでアイドルたちのレッスン相手をしていますが、数分で終わるのでそちらのソファーに掛けて少しお待ちください」
美優「はい」
ちひろは美優のコーヒーを淹れに給湯室に向かった。
一方のソファーに座った美優はアイドルプロダクションの事務所が物珍しいのか、周りを見ている。所属しているアイドルたちのポスターが貼ってあったり、グッズが所狭しと置かれていた。そんな事務所の光景を一通り見た美優は先ほどちひろが指した先にあるトレーニングルームを見ていた。
数分後、コーヒーの入ったカップが二つ乗ったトレーを持ったちひろはそんな美優に声を掛ける。
ちひろ「良かったらトレーニングルーム見ますか?」
美優「私が入って邪魔にならないでしょうか?」
ちひろ「大丈夫ですよ。ただ…」
美優「ただ?」
ちひろ「中には入らない方が良いと思いますよ」
美優「どうしてですか?」
ちひろ「見ていれば分かりますよ」
無理に全レスしなくてもいいよ
俺たち読者は投下されたものをひたすら読むだけさ
美優はちひろと共に扉の小窓からトレーニングルームを覗き込んでみた。
トレーニングルームにはジャージを着ていた十人の女性と彼女らを背にし、一人の十代の女の子と対峙している最上が居た。
最上の相手を見る目や口角から最上が泣きそうになっていることが分かる。まるで、信じていた者に裏切られたかのような最上の表情に美優は何が起こっているのか気になって仕方がなかった。
最上「俺は悲しいぜ。この事務所で俺の好きなものを好きなやつはお前だけだったからな。あぁ、俺はお前のこと好きだったぜ。だから、お前のことは無二の親友だと思っていた。
……でもな、今俺とお前は違うんだって気付かされたぜ」
少し悲しそうな表情を浮かべたまま最上はファイティングポーズを取る。最上と対峙していた女の子は最上の構えを見ると一歩後ずさりをした。最上相手に勝てないということを女の子は自覚していることが傍から見ていた美優でも分かった。
最上「好きでいることは何も悪くない。誰にも迷惑をかけたわけじゃないからな。でもな、欲望に負けて行動に出て誰かに迷惑をかけたのなら、その責任を取って罰を受ける必要があるよな?」
??「そ…そうだね。でもさ!皆抵抗しないんだから、それは嫌がっていないってことなんじゃないの?だったら、あたしは罰を受ける必要ないよね?」アセアセ
最上「ファイナルアンサー?」
>>15さん、
ありがとうございます。書けるだけ書いてみます。
??「ファ…ファイナルアンサー」
最上「じゃあ、俺がお前を縄で縛り上げて抵抗できないようにして、清良さんの所に連れて行っても問題ないじゃん」
??「そ…それとこれとは」
最上「同じじゃん。弱い者が強い相手に対して対抗する手段を持たないのなら、弱者は強者にやりたい放題やられても問題ないって愛海言ったもんな」
愛海「だったら、あたしはおっぱいソムリエとして、おっぱいの中で死んでやる!」
指をワキワキと動かしながら両手を広げるという独特のフォームを愛海は取り、最上の攻撃に備えた。
構えてから数秒間、両者に動きはなかったが、時計の時報が鳴った瞬間その静寂は終わった。突然、愛海は踵を返しトレーニングルームの扉に向かって走り出した。
愛海「前の巨乳を揉めないなら、振り返って後ろの美乳を揉むべし!」
最上「しまっ!ちひろさんと三船さんが!」
愛海は標的をトレーニングルームに居るアイドルたちからちひろと美優に変更した。
慌てて最上は必死に追いかけるが、何故か床に落ちていたバナナの皮を踏んでしまい、盛大にこけてしまう。さきほどまでトレーニングルームでバナナを食べていたナターリアを最上は恨んだが、今は彼女を責める時ではない。最上は起き上がり愛海を追いかけようとするが、二人の間の距離と扉までの距離とを考えれば最上がチーターでもない限り追い付くことはできない。
しかも、このトレーニングルームの扉はきらりんパワーを受けて損傷しており、何時外れてもおかしくない状態にあった。だから、たとえ鍵をしたところで、愛海が体当たりをすれば、簡単に開いてしまう。
このままでは美優が愛海に汚されてしまう。
自分が見つけたトップアイドルの原石である美優がおっぱい魔人愛海の毒牙にかかったことでCGプロに対してマイナスイメージを抱いてしまい、アイドルになることを諦めると言うことだけは阻止したかった。だが、どれだけ手を伸ばしても自分の手は誰にも届かない。絶望という谷底へと転がり続ける運命を止める術を最上は持っていなかった。
最上「やめろ!愛海!止めてくれええええええええ!!」
??「愛海ちゃん、おイタが過ぎたわね」
柳清良という突然の乱入者によって、おっぱい魔人棟方愛海は首筋に注射を打たれてしまう。
注射を打たれた瞬間愛海は白目になって糸の切れた操り人形のように脱力した。だが、その数秒後には涎を垂らして、痙攣しながら奇声を発し始めた。
愛海「んひいいいいいいいい!らへええええええええ!」
こんな光景を見せられた美優はアイドルとしてやっていけるのか不安で仕方がなかった。
最上「お待たせしました、三船さん。今から面接を始めますね」
おっぱい魔人棟方愛海が逮捕されてから数分後、鼻に詰め物をした最上が美優の対面のソファーに腰をかけ、美優の履歴書を読み始めた。
プロデューサーである最上のスカウト受けてはいたが、CGプロ側にとっても美優側にとっても美優の入社は大事な出来事であるため、簡易ではあったが面接をする必要があった。
最上「趣味はアロマテラピーですか。俺は寝る前にネロリを使っていますけど、三船さんオススメのとかありますか?」
美優「……ラベンダーでしょうか」
最上「王道ですね。うんうん」
美優「プロデューサーさんもアロマテラピーを?」
最上「アイドルプロダクションは女性が多い職場ですからね。コミュニケーションを図ろうと思うと女性の趣味趣向に関する知識一通り網羅していると便利なんですよ」
それから最上は美優の履歴書を見て様々な話題を振り、和やかな面接をした。
面接を終えると、最上は美優に二枚の書類を手渡した。一枚は入社に関する契約書で、もう一枚はアイドルとしてのプロフィールであった。契約書に書かれた会社の定款や契約を美優はじっくりと読んだ後サインし、プロフィールを書こうとしたところであることに気がついた。
美優「……スリーサイズ…これは正直に書いたほうが良いのでしょうか」
最上「まー、少しならサバを読んでも問題ないですよ。ファンの前でスリーサイズ計測しなくちゃいけないなんてことはないので。もし、本当のスリーサイズが知りたかったら、ちひろさんに測ってもらってください」
美優「では、お願いします」
最上「ちひろさーん、ちょっと良いっすか?」
ちひろ「はいはい。聞こえていますよ。スリーサイズですね。採寸用の巻尺はここにあるので今すぐにでも測れますよ。更衣室に行きましょうか」
最上「それでは三船さん。後はそのプロフィールを完成させてちひろさんに渡してください。それが終われば、今日は終わりです。
帰宅なさっても良いですし、レッスンを見学しても構いません。気が向けばレッスンを受けるのもありですよ。といっても、今日はトレーナーちゃんが来ないから俺がレッスン相手だけどな。
じゃ、俺は愛海に襲われそうになった子達のフォローしにトレーニングルームに行ってくるじゃん」
最上は立ち上がると、先ほどのトレーニングルームへと入っていった。
一方の美優はちひろに連れられて、近くの更衣室へと向かう。
途中廊下で正座させられて清良の説教を受けている愛海を見たが、いつものことだとちひろから聞かされた。なんでも、愛海は女の子でありながら、女性の胸を揉むのが趣味という少し変わった子らしい。
更衣室に入ると美優は服を脱ぎ、スリーサイズを測りだした。
ちひろ「むむむ・・・」
美優「どうかしましたか?」
ちひろ「三船さん、私より身長あるのにスリーサイズが私とあまり変わらないなんてずるいです」
美優「でも…身長があるといっても……数センチの差ですよ」
ちひろ「それでもです。その着やせする体系になるために何かしているんですか?」
美優「……いえ…何も」
ちひろ「何もしていなくてこの体系を維持しているなんて、ますます許し難いですね。
私なんてコスプレするために頑張って痩せて、今もダイエット器具を使ってこの体系を維持しているのに。羨ましいです。
と、それはさておき。三船さんは生さんに何て言われてスカウトされたんですか?」
美優「……言わないと駄目ですか?」
ちひろ「はい。貴方をスカウトした生さんはこれでもかって言うほど三船さんの魅力を力説していたので、一発目にどんなことを生さんが言ったのかすごく気になります」
美優の質問に対してちひろは満面の笑みで即答した。
ここで黙秘権を行使したとしても、後々追求されて最後は皆の前で言わされるかもしれないと推測した美優は今言ってしまった方が楽だろうと判断した。
美優「人生を……預けてみませんか……と」
ちひろ「何ですか、それ、プロポーズじゃないですか」
美優「私も最初はそう思ってしまいました」
ちひろ「でも、ここに居るということは嫌じゃなかったと?」
美優「えーえっと…その」
ちひろ「三船さんって初心ですね。なるほど。生さんが三船さんをスカウトした理由がなんとなくわかってきました。確かに、逸材です」
終始ニヤニヤしているちひろに対して美優は反論できず、ちひろの追及が終わることを願うしかなかった。
そんな困惑の表情を浮かべる美優を見たちひろはこれ以上やるのは不味いと判断した。何故なら、美優が少し泣きそうになっていることもあるが、今の美優の表情は加虐心を燻る何かを発しているため、このままだと歯止めが効かなくなってしまいそうになったからだ。
計測を終えたため、話を切り替えるにはちょうど良いと考えたちひろは別の話題を振ってみることにした。
ちひろ「さて、これでスリーサイズの計測は終わりです。お疲れ様でした。この後、どうします?」
美優「…同世代ぐらいの方は…事務所におられますか?」
ちひろ「確か…居ますよ。今の時間は休憩なので、話していきますか?」
美優「是非」
二人は更衣室から出ると事務所の一角に作られた休憩室へと向かった。
休憩室にはさきほどトレーニングルームでレッスンを受けていたアイドルたちがレッスンの合間の休憩を取っていた。
高校生ぐらいの女の子たちは学校の宿題をし、大人の女性たちは仲の良いグループを作り雑談をしている。
そんな休憩室に置かれたソファーに体育座りしてボーっとしている女性がいた。美優やちひろと同じぐらいの年齢で、髪はショートヘアー、白いジャージを着ていた。女性はジョージ姿であるにも関わらず、その物思いにふける姿はとても神秘的であったため、美優は声を掛けるのをためらってしまいそうになった。
??「今日の夕飯、何にしよう?」
ちひろ「楓さん、及川牧場からたくさん牛乳が届いたので、クリームシチューとかどうですか?」
楓「シチューがしょっちゅー……ちょっと違う」
ちひろ「そ…そうですね」
美優「千川さん、こちらの方は?」
ちひろ「高垣楓さん、CGプロ所属しているアイドルです。見ての通りおやじギャグが好きです。
楓さん、こちらは三船美優さん、今日からCGプロ所属のアイドル候補生です」
楓「よろしくお願いします」
美優「こちらこそ……」
楓「……」
美優「……」
会話が続かなかった。
その後、美優は楓との会話の話題を必死に考える。
その横で、楓は……
楓「シチュー…しちゅー…四チュー?…支柱」
シチューという単語を何度も言い、良いダジャレを考えていた。
今の楓から、さきほどの神秘的な雰囲気は微塵も感じられない。最初の見た目と中身と今の見た目のギャップが激しすぎたため、高垣楓という人物像を美優は理解できず困惑していた。
最上「夕食がシチューというシチュ」
楓「…さすが生プロデューサー、感服です」
最上「伊達にプロデューサーやってないじゃん」
ちひろ「ダジャレとプロデューサーは関係ないかと。って二人とも聞こえていないか」
まるで小学生が戦隊ヒーローを見るかのように楓は目を輝かせて最上を見ていた。一方の最上は満足気にドヤ顔を浮かべて腕を組んでいる。スカウトの時や先ほどの真剣そうな表情を浮かべていた最上からは想像できないお茶目さを見せられて美優はさらに困惑する。
美優「お二人ともこんな感じなのですか?」
ちひろ「楓さんはオンでもオフでも基本はこんな感じです。生さんの方は仕事の時はほとんど真剣ですが、休み時間やオフの時は基本おふざけモードです」
最上「そうだ。ちひろさんに三船さんに楓さん、近々歓迎会をしようと考えているんだけど、大丈夫な日と希望の料理を教えてくれますか?」
ちひろ「私はいつでも大丈夫ですよ。希望としては生さんが奢ってくれるのならどこでもいいですよ」
最上「いやいや、最近スタドリの買い過ぎで財布がピンチだから、驕りとか無理じゃん。三船さんは?」
美優「私もいつでも…希望は美味しくて…落ち着けるところなら」
最上「美味しいモノ…俺の手腕が問われる一番難しいオーダー。それでいて落ち着けて雰囲気があるお店。…ということは個室の方が好ましいな。それでいて、アイドル全員が入れるだけのキャパを持っていて、ユッキー用に飲み放題がある店となれば、あそこと…あそこと……5店舗ぐらいにまでは何とか絞りこめたじゃん。
それで、楓さんは…って、聞くまでも無かったな。じゃあ、あそこに決まり。今から日程調整して人数確認したら予約取りますね」
楓「待って下さい。私の希望分かるのですか?」
最上「そりゃー、楓さん単純だから」
楓「ムー、だったら、私の希望のお店を当ててみてください」
最上「そりゃー、日本酒のおいしい店に決まってるじゃん」
楓「ふぁいなるあんさー?」
最上「ファイナルアンサーじゃん」
楓「……残念」
最上「あらら。じゃあ、答えは?」
楓「それは、日本酒の“とても”おいしいお店です」
最上「くぁー、やられたじゃん!」
最上は両手を地面につき跪き項垂れる。その姿から1000万円を直前に間違えてしまった回答者のような悲壮感が感じられた。
一方の楓は体育座りのまま、先ほどの最上のようなドヤ顔で彼を見下ろしていた。
最上と楓のコントにちひろはいつものをやっているよとでも言いたいのか呆れた顔で二人を見ている。
美優は完全に取り残されていた。
楓「そういうことで、とてもおいしい日本酒を出すお店でセッティングお願いしますね」
最上「任されたじゃん」
手をヒラヒラと振りながら最上は笑顔で休憩室から出ていった。そんな最上を楓は同じように手を振って送り出す。そして、美優が楓をボーっと羨ましそうに見ていることにちひろは気づいた。ちひろは肘で美優を数度小突く。
ちひろ「生さんと楓さん仲よさそうでしたね」
美優「え?…えぇ」
ちひろ「二人はプロデューサーとアイドルですが、ダジャレを言い合う師匠と弟子のような関係です」
美優「……そうなんですか」
ちひろ「正直、羨ましいと思ったでしょ?」
美優「え?…どう…でしょう?」
美優は言葉を汚して誤魔化したつもりになっているが、林檎のように顔を赤面させているため、美優が楓を羨ましいと思い最上を一人の男性として見ているのは誰の目にも明らかだった。
CGプロの事務員としてアイドル候補生であり美優の恋を止めるべきなのだが、ちひろは奥手な美優の恋がどうなるのか気になって仕方がなかったため、美優を止めなかった。
むしろ、応援して美優の恋が実ってほしいといらぬお節介をちひろは焼きたくなってしまっていた。
見た目が儚げで守ってあげたくなってしまう。そして、話してみると二十代後半であるにも関わらず初心でありながら奥手であり言葉足らずなため守ってあげたくなってしまう。
最上が昨晩語っていた三船美優の魅力の一節をちひろは思い出し、納得した。
ちひろ「なるほど。これはかなり強烈ですね。三船さんがトップアイドルになる可能性を秘めているって生さんが言っていた理由が分かります。私が男だったら、絶対今三船さんに告白していますよ」
美優「…そうですか」
書き貯めが終わりましたので、今日はここまでです。
こんな調子で今後も頑張っていこうと思います。
宜しくお願いします。
仕事を終わらせ帰宅途中の最上生はとあるオフィス街の中にあった一つのビルに入った。
ビルは18階建てで何の変哲もない普通の鉄筋ビル。最上はビルの警備員に軽く挨拶をしながら、ビルの中央にあるエレベーターに向かった。右奥にあるエレベーターのボタンを押し、一階にエレベーターが来るのを待つ。一般的な企業の定時を過ぎていたため、最上と同じようにエレベーターに乗ろうとする人は居なかった。
ボタンを押してから一分も経たない内にエレベーターが来たため、最上は一人そのエレベーターに乗った。
最上「5…3…7…12…3…11と。それでは下へ参りまーす」
地下のフロアを持たないビルのエレベーターは一階から下へと高速で降りていく。
エレベーターが地下に入って数十秒後、目的の存在しないはずの地下のフロアに着くと、エレベーターの扉が開いた。エレベーターの外は一切の明かりはなく真っ暗だった。最上はバッグから懐中電灯を取り出すと、灯りをつける。懐中電灯で照らされたことで、床天井壁は無骨なコンクリートでできていることが分かる。
ここは大戦中に政府が本土決戦に備えて作られた地下要塞であり、現在は誰にも使われていないはずの場所である。最上はこの地下要塞に建設されたある場所へと向かって歩き出した。
>>34、
最初に
「その日の晩…」
という一行を入れ損ねたので、宜しくお願いします。
歩き出してから数分後、角を曲がった最上の目の前に自分と同じように懐中電灯を持った人が現れた。
最上は前に現れた男を懐中電灯で照らす。男は自分と同じぐらいの年齢で、白のタンクトップを着て地下足袋とダボダボの作業着を穿き、頭に手ぬぐいの鉢巻を巻いていた。どこからどう見てもどこにでも居る普通の土木作業従事者にしか見えない。
最上「久しぶりじゃん。河野」
河野「よっ、久しぶりじゃん。最上」
顔を見ることなく服装から相手が誰であるかを察した二人は簡単な挨拶をし、歩き出した。
最上「ここ最近どうだったよ?」
河野「東雷がやばいね」
最上「どうやばいの?」
河野「ま、それは後々のお楽しみという事で…着いたじゃん」
最上が壁に手を当てると壁の一部がスライドし、SF映画に出てきそうな近未来的な建物の廊下が現れた。二人は迷うことなくその廊下へと足を踏み入れる。
この建物こそが、二人の目的地だった。二人が廊下に入った直後、スライドした壁が元に戻り、閉じた。
二人は長い廊下を進み、階段を下り、再び長い廊下を歩く。二人が今歩いている廊下の壁は巨大な透明なアクリル板で出来ており、アクリル板の向こう側が見える。
アクリル板の向こう側は巨大な体育館ぐらいの部屋があった。その部屋は排水機能を持たせるための網目状の床で、天井や壁には無数の配線が張り巡らされていた。そして、その部屋の一番の特徴は人が一人入れるぐらいの小窓の付いた白いカプセルが千近く並んでいたことだ。初見ならば立ち止まって辺りを見渡しているだろうが、二人とも見慣れているため、全く立ち止まる気配はない。
そして、階段を下りて廊下を数分ほど歩いたところでミーティングルームという札がかけられた部屋が見えてきた。
二人はその部屋の前で立ち止まり、扉を開く。その部屋は学校の教室ぐらいの広さで、数十人がお菓子を食べながら雑談をしていた。まるで、校則違反上等の不良学校で起きる休み時間のような光景がそこにあった。
だが、傍から見ればそれはありえない光景であった。
なぜなら…部屋に居た男は全員最上と瓜二つの顔立ちをしていたからだ。そして、先ほど出会った河野も最上と全く同じ顔であった。
??「最上、毒茸伝説のCD買ったぜ」
最上の入室にいち早く反応し近づいてきたのは大江生だった。
大江生は白色の甚平を着て、頭に白い手ぬぐいを巻いている。大江は超が着くほどのアイドルオタクで、刀鍛冶の仕事最中に刀の制作の時にいつもアイドルの曲を流しながら彼は鉄を打っている。なんでもアイドルの曲を聴いていると集中できるらしい。
最上「買ってくれたか、大江。いやぁ、プロデューサーとして嬉しいね。で、どうだったよ?」
大江「漲ってくるじゃん。こう俺の中の何かが爆発して間欠泉のようにバーって湧きでてきてどうにかなりそうじゃん」
河野「何かって何だよ?」
大江「それは分からねえ。だが、今日からすごいペースで刀を量産できそうだから、今後の手助けになりそうじゃん」
河野「おぉ、それは楽しみ。期待しているぜ」
最上「おい、大友が来たぜ」
自分と同じ顔の人物が二人、ミーティングルームに入ってきた。
一人は白衣姿で、もう一人は悪魔の顔を彷彿とさせる特徴的な仮面を被り黒い羽とジェットエンジンを搭載した特徴的なスーツを着ていた。
白衣姿の男はこの構造物の管理人である大友生、もう一人の黒装束の男は上杉生だ。
大友生が教壇に立つと、それまで雑談をしていた者は一斉に静かになり、神妙な面持ちで教壇の方を見る。
大友「久しぶりだな、皆。本当に一年ぶりだな。この一年充実したものだったと思う。国内外で技術を身につけたやつ、情報収集に専念したやつ、装備を開発したやつ、色々大変だったと思う。だが、そんな下積みの時期は今日で終わりだ。これから計画の実行に移す」
大友「だから今ここで……」
大友「死んでくれ」
二日後…
最上「皆さん今週一週間お疲れさまでした。この一週間は写真撮影やレッスンや地方巡業と大変な一週間のように感じた人が多かったと思います。
ですが、今週はいつもの忙しい一週間と違う出来事がありました。それは三船美優さんと言う新人が入ったからです。私が思うに三船さんはトップアイドルになる器を持っていると思います。なぜなら…」
瑞樹「生くん、分かるわ。だから、さっさと乾杯しましょ」
最上「あ、すみません。皆さんグラスを持ちましたでしょうか!それでは、新たな仲間三船美優さんのCGプロの入社を祝して…乾杯!!」
皆「「「かんぱーい!!」」」
都内の某居酒屋に乾杯の音頭とグラスやジョッキの当たる音が響く。
大人組はビールを、未成年者組はノンアルコールカクテルやジュースを飲んでいる。
さきほどまで立って前置きを話していた最上は自分の席の座布団に座り、ビールを一杯飲む。ビールを飲み終えると取り分け用の箸で全員分の取り皿に料理を載せていく。
とりわけ作業をやっている最上に左隣の席のちひろが小声で話しかける。
ちひろ「生さん、随分高そうな店ですけど、大丈夫ですか?」
最上達が来た居酒屋は純和風の内装となっており、CGプロの宴会場となった個室は座敷になっており、床の間には生け花が飾られている。
内装だけ見れば、料亭かと思ってしまうほどだった。
そして、そんな内装に見合う料理が出された。
山菜の漬物や頭を残した状態の豆アジの南蛮漬けや銀杏や鯛の身が入ったにこごりが備前焼の皿に盛りつけられ前菜として出された。
このクラスの宴会場でこのクラスのコース料理を食べて飲み放題というオプションを付けたなら、普通都内なら一人前で一諭吉は軽く飛んでいく。
だが、徴収されたお金はたったの三千円であったため、ちひろは戸惑いを隠せなかった。
最上「ちょっと予算オーバーしていますが、超えた分はこの店で働いている流れ板の俺のダチが出しますので、気にしないで下さい」
ちひろ「そうなんですか。そのお友達に次会う時にお礼を言っていただけませんか?」
最上「了解じゃん」
ちひろ「生さん、グラスが空いていますね。次何飲みたいですか?」
最上「んー、まだビールが飲みたいな」
ちひろ「だそうですよ。美優さん、そこのビール瓶で注いであげたらどうですか?」ニヤニヤ
ちひろは自分の左隣に座っている美優に声をかける。
美優は最上を若干意識しているのだが、最上の隣に座るのが恥ずかしいため、距離を取っている。これでは、なかなか進展しないと考えたちひろは無理矢理二人を接触させるようにした。
美優「え?わ、私ですか?」アタフタ
ちひろ「だって、美優さんの前にボトルがありますからね」
最上「三船さん、自分で取って入れますから良いですよ」
ちひろ「駄目です!」
最上「どうして?」
ちひろ「手酌は出世しないんですよ」
最上「そうなの?」
ちひろ「そうなんです」
??「フフフ…でしたら、まゆがお酌して良いですか?」
最上「うぉ!…まゆか。いきなり出てきたからビックリしたじゃん」
最上の後ろからビール瓶を持って現れたのは元読モの佐久間まゆ。
まゆは千台(せんだい)で悪質なナンパをしてくる連中8人に囲まれて困っていたところに、最上が現れてナンパ野郎を華麗に撃退しスカウトされたことがきっかけとなり、読モを辞め上京しCGプロに所属しているアイドルである。
まゆは自分を助けてくれた最上を異性として意識している。そのため、“運命”や“赤い糸”などの言葉で、最上に意識してもらおうとアピールしている。最上は気づいていないが、他のCGプロの社員やアイドルたちはまゆの気持ちに気づいているため、陰でまゆを応援している事務所の人は多い。
まゆ「向こうで凛ちゃんがモバPさんにお酌しているから、まゆがお酌してもおかしくないですよね?」
最上「いや、先輩と凛の場合は特別じゃん」
まゆ「生さんはまゆのお酌、嫌ですか?」
上目使いですり寄るまゆに最上はドキッとしてしまい、どう対処したらいいのか困り果てる。
一方、まゆは無抵抗の生のグラスにビールを注ぎ始める。だが、最上の持つグラスが傾いていなかったため、予想していた以上に泡が出来てしまう。
零れそうになる泡を見た最上は慌ててグラスに口をつけ、泡を吸い始める。
最上「あぶね―あぶねー」
まゆ「ごめんなさい、生さん。まゆ、ビール注ぐの初めてで…」
涙目のまゆはこう言っているが、ビールが零れそうになるところまではまゆの計算通りだった。
だが、わざとビールを零し濡れてしまった最上の服をタオルでふくという本当の目的が果たされることはなかったため、まゆは残念そうな表情を浮かべる。
ちひろ「やるわね。まゆちゃん。美優さんも、ほら!」
美優「え?…あ!きゃ!」
ちひろに引っ張られた美優はバランスを崩し倒れてしまう。そして、転倒時に手が机の上の水の入ったグラスに当たってしまったため、倒れた美優の左上半身にグラスの中の水が掛かり濡れてしまった。
ちひろ「ごめんなさい。美優さん。大丈夫ですか?」
美優「はい」
最上「ちひろさん、そうやってぶっ!!」
起き上がる美優を見た最上はおもわず吹いてしまった。
なぜなら、水で濡れてしまった美優の白い薄手のシャツが透けてしまったため、水色の紫陽花の柄の下着が露わになってしまったからだ。
最上は上着を美優に渡し、視線を美優から外す。最上の対応から現状を把握した美優は慌てて腕で胸を隠す。ちひろは美優に最上の上着を着せる。
その場に居た四人の間になんとも気まずい空気が辺りに流れる。
最上「すみません。少し外の空気吸ってきます」
最上はそう言い残すとそそくさと宴会場から出て行く。
美優「…ちひろさん」
涙目の美優に睨まれたちひろは後ずさりする。
だが、何かが背中にぶつかったため、ちひろは止まってしまう。止まったちひろは背中に当たるモノから発せられるどす黒いオーラを感じ取り、ゆっくりと振り向いた。
すると、そこにはハイライトを失った佐久間まゆが狂気交じりの笑顔を浮かべて立っていた。
まゆ「…ちひろさん、少しまゆと三船さんとで楽しくお話しましょうか」
ちひろ「ひっ!」
店の外…
最上「ふー、危なかった。色々と」
??「何が?」
最上「お、海原の」
居酒屋の外に出て外の空気を吸い一息ついた最上は正面の道から見えない裏路地に居る海原生に声をかけられた。
海原生はこの居酒屋で働く料理人である。といっても、働き始めてまだ二日目である。だが、高い料理技術を店長に買われ、厨房の指揮を任されている。そのおかげで、CGプロの社員やアイドルは格安の値段で飲食ができた。
最上「今日はありがとうな。俺の所のプロダクションを受け入れてくれて。それより厨房から離れてて大丈夫なのか?」
海原「これから客足が増すから、それに備えて、今は休憩中じゃん」
最上「そうか。で、今日からだったよな?」
海原「あぁ、今日から計画始動じゃん」
最上「確か、第二世代からは真田が…第一世代からは早坂だったな」
海原「第一回目の最終日に岩崎の孫娘に殺されたのが無念だったらしい」
最上「らしいな」
海原「…それより良いのか?計画に参加して。俺ら第一世代に任せておいてもよかったんだぜ」
最上「いや、俺も計画に参加したい。俺だって、今の社会には不満たらたらなんだよ。不幸な目に遭ったのはお前ら第一世代だけじゃないんだぜ。指を咥えて対岸の火事のように眺めているだけっていうのは性に合わないじゃん」
海原「そうかよ。だったら、今さら俺は何も言わねえ。後悔だけはすんなよ」
最上「分かってるじゃん」
最上は携帯電話をポケットから取り出し、インターネットのニュースを確認する。
するとトップニュースには数分前に更新された最新のニュースが載っていた。そのニュースこそ、最上が今最も見たかったニュースであった。これを確認した最上は二ヤリと笑みを浮かべ、拳に力を入れる。
海原「で、何が危なかったんだ?」
最上「そ!それは言えねーじゃん!」
海原「いずれ統合してアップグレードするんだからばれるぞ」
最上「…そうだった」
20時間前、大逆(おおさか)。
??「お疲れ様です。日代主任」
大逆のとある大きな建物から一人の男が出てきた。男の名前は日代政三。
??「あいかわらず、良い手際ですね」
日代「後田君。私は昔から使われている手法を使っているだけだよ。犯罪のストーリーを作り、必要な物品を用意させ、筋書き通りになるように自白させる。それだけだ」
この日代政三という男は一昔前にあることでお茶の間を騒がせた。
事件現場の近くに居たという理由で無実の一般人を犯人に仕立て上げ、自分の出世に利用し、年収1200万円の地位を得た男である。要するに、核戦争後の世界の暗殺拳を使う黒い馬に乗った拳法家が率いるヒャッハーが口癖の図体のでかいモヒカン男並みの悪だ。
そんな日代政三は面倒を見ている部下と合流し、二人で近くの綺麗な女の子が接待をしてくれる高級飲食店(クラブ)へ向かおうと、後田の呼んでいたタクシーに乗った。
??「どちらまで?」
日代「○○まで頼む」
??「了解しました。本日は私、真田生が運転手を務めさせていただきます」
真田「あ、お客様、大変申し訳ありませんが、昨今警察の取り締まりが厳しいので、シートベルトの方お願いします。」
日代「そうなのかね。仕方がないな」
真田「御協力ありがとうございます。それでは出発します」
マスクをした白菜のような髪型の青年は後部座席に座った二人の方を見て軽く挨拶をすると、タクシーはゆっくりと発進した。
真田「お二人とも検事さんですか?」
日代「そう思うかね?」
真田「えぇ、何と言いますか。お二人とも風格がありますので、御立派な職業の方とお見受けしました。そして、お二人を乗せたところから考えると、答えは自然と導きだされます」
真田の“風格”という言葉の頭には“悪者の”という修飾語が来ているのだが、略されている。
日代「風格か。ははは、運転手さんは愉快な人だね」
真田「ありがとうございます」
その後、数分間三人は歓談していた。
日代「しかし、なんだか眠くなってきたな」
後田「そうですね。日代主任」
日代はウトウトとし始め、後田は目を擦る。
真田「催眠ガスの充満したタクシーの中ですからね。眠くなるのは仕方ありませんよ」
日代「催眠ガス!」
真田の回答に二人は驚きを隠せなかった。真田が眠くならないのはマスクに中和剤を塗ったコットンを入れていたからである。
後田「貴様!何のつもりだ!タクシーを止めろ!」
真田「了解いたしましたー」
真田は急ブレーキを踏んだ。睡魔により力の入らない二人は完成の法則により前に乗り出してしまい、シートベルトで首を絞められ蛙が潰れた時の上げる断末魔のような声を上げる。
日代「ぐえっ!」
後田「びえっ!」
そして、鞭打ちとなって後頭部をヘッドレストにぶつける。頭をぶつけたことによる鈍痛が二人を襲う。痛みと睡魔と闘いながら、二人はシートベルトをはずそうとする。だが、シートベルトの解除ボタンを押してもシートベルトが外れることはなかった。
日代「っく、シートベルトが外れん!」
真田「そりゃそうだ。シートベルトはロックさせてもらったじゃん」
日代「後田、電話で警察を呼べ」
後田「それが、携帯が圏外……に」ガクッ
日代「何だ…と……」ガクッ
真田は二人が完全に寝たことを確認すると、真田生はアクセルを踏みタクシーを発進させ、近くの高速道路の乗り口へと向かった。そして、高速に乗ると制限速度ぎりぎりまで加速し、窓を全開にし換気を行った。
真田「二名様、ごあんな~い」
皆さんは紅林 麻雄という男を知っているだろうか。
日本警察史上屈指の名刑事で、数々の難事件を解決し、数えきれないほどの表彰を受けた男である。
何故、この男が名刑事といわれているのか……それはどんな人間が相手でも麻雄が尋問すれば相手を自白させ、証拠を突きとめるという能力を持っていたからだ。
だが、この男は実は真っ黒な悪である。
なぜなら、この男は500以上の冤罪事件を生み出した捏造王であり、無実の一般人に嘘の自白強要した拷問王でもあった。
そして、近年問題になっている検事や警察が取り調べで容疑者を恫喝し、劣悪な環境の拘置所に入れて精神的に追い詰めていき自白強要させるという捜査方法…紅林式捜査の開祖でもあった。
そして、この男、無数の冤罪事件を引き起こしたにも関わらず、責任を取ることなく、警察を退職し、二ヶ月後他界した。
では、何故このような捜査方法まかり通っていたのか、それは警察、検察、裁判所にとって都合がいいデータが出てくるからだ。紅林式捜査方法によって齎された裁判官にとって好ましいデータは、当時犯罪発生率が非常に高かった日本の裁判をスムーズに行う手助けとなった。
そう、司法と警察は昔から真っ黒だったのだ!
翌日(最上が仕事終わりの最初のビールを飲む30分前)和歌川…
日代「うぅ…ここはどこだ?…う!動けん!」
目を覚ました日代は、自分と後田が太さ1メートルぐらいの一本の木に綱引きで使いそうなぐらいの太さの荒縄で胸と足を括りつけられていることを理解した。
何故、このような状況になっているのか分からなかったが、とりあえず現状を把握せねばと、辺りを見渡した。
日代は自分の現在地がどこか分からなかったが、周りには似たような大きさの木々が生い茂っており、水の流れる音が聞こえ、目の前に急勾配の坂が広がっていることから、自分と後田はどこかの山奥に拉致され絶体絶命のピンチを迎えていると理解できた。
日代「ひぃぃぃぃー!助けてくれええええ!!」
日代の叫び声で後田は目を覚ます。
日代「後田、これを何とかしろ!」
後田「無理ですって、こんな荒縄ちぎれるはずがないじゃないですか!」
日代「文句を言うな!なんとかしないとお前も死ぬぞ!」
そんなパニックになっていた二人は自分たちの視界の端に樵の後ろ姿を見つけた。身動きをとることが出来ない二人はその樵が天使に見えた。日代と後田は樵に大声で助けを求める。
後田「そこのアンタ、助けてくれ!」
パニックに陥り泣きじゃくっていた二人は視界がぼやけていたが、自分たちの声が聞こえたのか樵は振り返り日代と後田の方を向いて歩いてきたということが分かった。これで助かる。二人はそう信じていた。
??「え?なんで?」
だが、帰ってきた樵の返事は二人の予想外のものだった。
樵の返事に呆気を撮られた日代だったが、樵が自分たちを助けてくれないと言ったと理解できた日代は樵に怒鳴り散らす。
日代「なんでって、目の前で死にそうになっている人がいたら、助けるのが当り前だろう!貴様を拉致監禁と傷害と殺人未遂をつけて死刑にしてやることだってできる俺を誰だと思っている!」
??「日代主任検事、後田検事」
日代「そうだ。俺は大逆地検特捜部の日代政三だぞ!」
??「じゃあ、問題です。俺は誰でしょう?」
日代「知らんわ!」
??「えー、さすがに二人の年齢から考えれば、俺が誰だか解るよね?あ、そうか、涙で見えないか」
樵は首に巻いていたタオルを日代の顔に当てると床にこびりついた汚れを雑巾で拭きとるかのように、日代の涙を乱暴に拭く。数秒ほど荒っぽく顔を拭かれたことで、視界が良好になった日代は初めて自分の目の前に立つ二人の男の姿を認識することが出来た。
オールバックの白髪。鋭い鷹のような目。そして、悪魔を彷彿とさせる仮面。
その姿は二十年前に世間を騒がせたテロリストだった。その名は…
日代「あ…あああああ!ああ…アクメツ!」
アクメツ「ピンポンピンポン!だいせーかい!」
ついに再び表の舞台に立ったアクメツ!
冤罪事件を生み出す悪党検事を世界最悪の尋問方法で自白強要!!
悪を憎む憤怒を纏ったチェーンソーで悪党を一刀両断!?
次回「アクメツ急流滑りで渓流に沈む!!」
今日の投稿は以上です。
ところどころ誤字があり、大変申し訳ありません。この場で謝罪させていただきます。
アクメツ事件:
二十年前に村瀬総理の構造改革を反対した政府要人が大量虐殺された一連のテロ事件の総称。
今の若い世代が学校で受けた歴史の授業ではここまでしか教えてもらっていない。
なぜなら、文科省がこの事件の模倣犯が生まれることを恐れ詳細なことを発表するわけにはいかないと判断したからだ。
つまり、若者はこの事件を政治家を狙った普通のテロと認識している。
だが、アクメツ事件を知る世代は当時に何が行われたのか、アクメツの主義主張を知っていた。
そのため、若い世代とアクメツを知る世代とでアクメツに対して認識のギャップがある。
日代「どうして、アクメツが……二十年前に滅んだ…はず」
アクメツ「確かに、滅んだけどさ。地獄の底から復活させられたら、もうアクメツするしかないじゃん。そんな訳で日代主任検事と後田検事に人生最後の解答をしなきゃならない」
アクメツ「まさに……ファイナルアンサーってやつだなぁあ」
アクメツ「さあ、第一問だ。一回警察に出頭するだけで人は死ぬことがありますか?……チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ」
日代「は?へ?」
後田「死ぬわけないだろ!馬鹿が!」
アクメツ「ファイナルアンサー?」
後田「ファイナルアンサーだ!」
アクメツ「…残念!間違いじゃん」
後田は何故自分が誤った解答をしたのか考えるが、自分の解答以外の答えが出てこない。
“鈍器で殴られて死亡”“刃物で刺されて死亡”“急所を拳銃で撃たれて死亡”“複数の人間から暴力を受けて死亡”などなど…世の中の殺人事件には凶器があり暴力がある。ゆえに、後田は自分の解答が間違いだとは思えなかった。
後田「どうやって、警察に行っただけで人を殺せるんだ!言ってみろ!」
アクメツ「あー、それ聞いちゃう?…実はさ…俺の近所の野田さん、地下鉄で痴漢をしていないのに、痴漢呼ばわりされてさ。警察に助けを求めても、警察は野田さんを助けるどころか、痴漢の加害者として取り調べしたんだよね。それで、野田さんは追い込まれて地下鉄のフォームから飛び込み自殺したわけ」
アクメツ「そう、人は簡単に死ぬんだよ。たった一度警察に行っただけでな!!!」
獲物を狙う鷹のような鋭い殺気のこもった目でアクメツは日代と後田を睨みつける。過去に数百人の政府要人を殺したテロリストの本気の殺気に二人は完全に委縮してしまっていた。
アクメツ「では、第二問。偽証を行った検事の最も重い処分とは何でしょう?」
日代「懲戒免職と懲役一年半」
アクメツ「お、正解じゃん。そ、人の生死を左右する裁判で偽証を提出したとしても、君達検事の処分はこの程度ですむ。
冤罪で捕まった人は死刑されちゃったり何十年も無罪判決が確定するまで捕まったままなのに、君達はどれだけすごい偽証をしても一年半で社会に復帰できる。しかも場合によっちゃ不起訴処分で終わることなんてザラにある。
でも、それってフェアーじゃないよね?」
アクメツは数回屈伸をすると、チェーンソーを持って素振りを始めた。
チェーンソーのエンジンはかかっていなかったが、二人にとって、その素振りはギロチンの刃を砥石で研いでいるかのように見えた。
アクメツ「では、最終問題。“はい”か“いいえ”の簡単な質問だ。……お前らは何も悪いことをしていない?」
日代「そんなもん、悪行など一切行っていない!俺らがこんな仕打ちを受ける理由など一切ないわ!」
アクメツ「えー?取り調べの最中に無実の人脅したしたのに?」
日代「脅された程度で嘘を言う方が悪いに決まってる!俺たちは取り調べをしただけだ!」
アクメツ「ほー、なるほどね。じゃあさー」
左手でフロントレバーを持ったアクメツは右手でスロットルレバーを数度引く。すると、チェーンソーはけたたましい音を発し始めた。
エンジンのかかったチェーンソーを持ち上げたアクメツがスロットルレバーに右手の指を掛けると、チェーンソーの刃が回転し始めた。
日代「何をする!止めろ!止めりゃああああああああああ!」
アクメツは回転するチェーンソーの刃を日代の右足の脛に当て、一気に切断した。
足の切断面からは夥しい量の血が溢れ、日代の足元を真っ赤に染める。足を切られた日代は痛みのあまり痙攣し、白目を剥き、失禁している。
アクメツ「俺があんた等を脅しても俺は悪くないよね。なんたって、俺は取り調べをしているだけなんだからな!!って、失神しているから聞こえていないか」テヘペロ
嬉しそうな笑顔を浮かべたアクメツはチェーンソーのエンジンを切ると、日代の傷口を落ちていた小枝で抉る。
すると、気を失っていた日代が激痛で目を覚ました。
アクメツ「もう一回聞くぜ。……お前らは何も悪いことをしていない?〇か×か」
日代「ま…まるぅぅぅ」
アクメツ「後田さんは?」
後田「まる!まるだ!俺は悪いことしました!」
アクメツ「ファイナルアンサー?」
日代・後田「「…ふぁいなるあんさー」」
アクメツ「オッケー!無実の人を有罪にした悪人さんは罰が必要だな!というわけで、急流滑りの刑!」
アクメツは再びチェーンソーのエンジンを掛けると、二人の両足ごと木を伐採した。切られた木はゆっくりと地面に倒れ、枯葉で埋め尽くされていた摩擦ゼロの急こう配の坂をものすごいスピードで滑り落ちていく。当然、伐採された木に括りつけられていた二人も一緒に坂を滑走する。
日代「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」
後田「どおおおめえええでえええぐうううれえええええ!」
地面を滑っていく丸太を追いかけるために、アクメツは段ボールで出来た簡易のそりに乗ると坂を下って行った。
アクメツ「ひゃっほーーーー!!」
そして、数十秒坂を滑走した丸太と二人は坂の下の川の中にダイヴした。
いきなり水の中に落ちた二人は呼吸が出来ず、大量の水を飲んでしまう。さらに、坂を下っている最中に草や小枝で傷だらけとなったため、渓流の冷たい水がしみる。
だが、木の浮力のおかげで、水中から脱することができたため、何とか二人は呼吸することができた。
日代「こひゅーこひゅー!」
後田「た…助かった?」
??「んなわけないじゃん」
川の流れで流されそうになる丸太が急に止まった。
日代と後田は声のする方を見ると、そこにはアクメツがいた。
だが、さっきのアクメツと格好が違う。さっきのアクメツは樵の格好をしていたが、このアクメツはカウボーイの格好をしている。
アクメツ「もう一人の俺が現れるまで、そこで大人しく待ってるじゃん」
そういうアクメツの横に生えている木にはロープが結ばれており、そのロープが自分たちの括りつけられている丸太へと延びていた。
二人が括りつけられていた丸太が流れずに済んだのは、カウボーイの格好をしたアクメツが浮上してきた丸太を投げ縄で捉えたからだ。
そこへ、段ボールで坂を下ってきたアクメツが現れる。
アクメツ「お待たせ!」
アクメツ「段ボールどうだったよ?」
アクメツ「いやぁ、あの疾走感、たんまんないねぇー!」
アクメツ「楽しめたようで、なにより。……んじゃ」
アクメツ「そうだな」
アクメツ「「サクッとアクメツしますか!!」」
樵のアクメツはチェーンソーと長い竹の棒を、カウボーイのアクメツは撮影用のカメラを担いで川の中に入り、日代と後田が括りつけられた丸太に乗った。
二人の人間が乗っているにもかかわらず一本の長い丸太が回転しないのは、樵姿のアクメツが長い竹の棒でうまいことバランスを取っていたからだ。
アクメツ「それじゃ、いってくださーい」
アクメツ「了解じゃん!」
樵のアクメツはカウボーイのアクメツに竹の棒を渡すとチェーンソーのエンジンをかけ、丸太と木をつなぐロープを切った。
止める物を失った丸太は川の流れに乗りゆっくりと川下りを始める。
樵のアクメツは竹の棒を持ち、鼻歌を歌いながら丸太の上でダンスする。一方の丸谷括りつけられた二人は体を振るい悪あがきする。そして、そんな三人の様子をカウボーイ姿のアクメツが撮影していた。
川下りを始めて数十秒後、水の流れる音の中に別の音が混じり出した。
それは次第に大きくなり、水の流れる音をかき消すほどの大きな音となる。後田はこの音に聞き覚えがあった。
後田「…滝の音」
日代「何だと!止めろ!このままだとお前らも死ぬぞ!」
アクメツ「はー…忘れたの?アクメツは一人一殺!悪党と死ぬのは本望じゃん!」
アクメツ「それじゃ張り切って逝こうか!」
樵のアクメツはチェーンソーで二人を縛っていた荒縄を切った。
束縛を解除された日代と後田は泳いで逃げようとしたが、二人の足は切断されているため水の流れに抗うだけのスピードを出すことが出来なかった。
そして、日代と後田、二人のアクメツは滝へと到着した。
アクメツフォーーール!
そして、四人は数十メートルの高さの滝から落ち、滝壺へと消えて行った。
複雑な水流を持つ滝壺に落ちた日代と後田は浮上できず、溺死する。
そして、そんな二人の死にざまを見届けた二人のアクメツも同様に呼吸が出来ず、意識が薄れていく。
アクメツ(あぁ、これが死…か)
意識を失い、脳波が消えるその瞬間、アクメツの仮面は爆破した。
そして、この様子はインターネット上の動画投稿サイトのニロニロ動画で生中継されていた。
現在、アクメツはターゲットを探しております。
御近所で不要になりました汚職政治家、官僚、天下りはございませんか?
一人一殺でアクメツさせていただきます。
アクメツしてほしい人物の役職、罪状を書きこんでください。
よろしくお願いしま~す。
繰り返し、申し上げま~す……
現在、アクメツはターゲットを探しております。
御近所で不要になりました汚職政治家、官僚、天下りはございませんか?
一人一殺でアクメツさせていただきます。
アクメツしてほしい人物の役職、罪状を書きこんでください。
よろしくお願いしま~す。
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