【ジョジョ×とある】 とある奇妙な忘失世界 ~Lost THE WORLD~ (1000)

~~~CAUTION!! CAUTION!! CAUTION!!~~~
・はじめに、筆者はとあるにわかであることを暴露しておきます。至らない知識等々、不備がひどい際は遠慮なくご指摘ください。

・本作が処女作であり、初カキコであり、初SSです。改善できる執筆方法等ありましたら、是非ともアドバイスを。

・独自解釈、設定、筆者の妄想、キャラの崩壊等が含まれております。世界観もかなりごちゃまぜです。

・投稿スペースは無計画で、時間が取れて気分が乗ったときに更新すると思います。気の短い方は、どうかご容赦を。

・星の数ほどある両作品の、しがない陳腐な一つのSSを目指す予定です。完結まで、精一杯歩んでいこうと思います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1404920787

『もうおそい!脱出不可能よッ!』








『「スタープラチナ」はついに我が……のもとにやぶれ去ったッ!』








『動けんッ!ば…ばかな』








『こ…こ…こけにしやがって』








『過程や……!方法なぞ……!』








『どうでもよいのだァーーーーーーーッ!』








『どうだ!この血の目つぶしはッ!勝ったッ!死ねいッ!』








『ば…ばかなッ!………こ…このDIOが………』







『こ の D I O が ァァァァァァァァ~~~~~~~~~~ッ!』








~学園都市 第七学区~
当麻「…………」

卵「」ルチャアァ

当麻「なんでこんな所に空き缶が転がってるんだよ!おかげさまで俺の、俺の二時間にも渡る死闘の結晶が……!!」

当麻「不幸だ……。まあ、ビリビリは撒けたからよしとするか。いや、やっぱりよしにはできない……」

当麻「しっかし、逃げに逃げ回っているうちに、わけのわからない場所に来ちまったな。どこかの裏路地か、ここ」

当麻「時間は……午後六時過ぎぐらいか。もう夕日も沈むし、早く帰ろう」

当麻「さーて、まずは人通りの多そうなところ目指してーーーー」

カラン

当麻「ん?」

コロコロロォーーー

当麻「これは、空き缶……。うわ、こんな所にゴミの山!?」

当麻「さっき踏んづけた、憎きあんちくしょうもここ出身か」

当麻「だけど色々捨ててあるぞ…読み古した雑誌に弁当の容器、なんか臭うごみ袋。うわ、車のタイヤまであるぞ!?」

当麻「ひどい奴等がいたもんだ……不法投棄って奴か」

当麻「仕方ない。俺みたいに空き缶踏んで、怪我する奴がでるかもしれねぇ。片付けられる分だけ、外のゴミ箱に持ってくとするか」

ガサ…

当麻「ん?今、物音がしたような……」

チュー

当麻「なんだ鼠か。ちょっと身構えて損したぜ。それじゃあ早速ーーーー」

ガサガサガサ

当麻「!!」

当麻「いる……。そのゴミ袋の下に、なにかがいる!」

当麻「鼠、にしちゃあ音がデカすぎだ。猫? いや、もっとある……」

ガサガサガサ

当麻「……ーーーーくぅ! ええい、ままよ!」バッ











「ガフ……ハァ…ハァ……」



当麻「っ!?」

「ヌ……グオオォォ…………」

当麻「はっ!? だ、大丈夫ですか!?」

「WOOO……」

当麻(ひでぇ……全身から大量に出血してる。血塗れで顔もよく見えない。それに、全身についてるこの凹み……まるで拳で殴られたあとみたいに見えるぞ)

「グ……ガ……」

当麻「そうだ、こんなこと考えてる場合じゃねぇ! 急いで病院に連れて行かないと!」

当麻「ケータイケータイ……ウソだろ、充電切れ!?」

当麻「……こうなったら、俺が担いでこの路地から出るしかない。このままこの場所に放っておいたら、傷口からばい菌が入っちまう! 近くに公衆電話に一つくらい置いてるだろ」

当麻「聞こえるか! ここはその体にやばいから、あんたを担いで近くの公衆電話まで連れていく!」

「…………」

当麻「気絶しちまったか……? 陽も沈みかけてきた、暗くならないうちに……ってデカッ!?」

当麻「お、重い……この人、ガタイ良すぎだろ! くそ、文句言ってらんねぇ。このまま公衆電話を探そう」ズルズル







(……視界が、白い)

モシモシ!○○ビョウインデスカ!?

(心の中から……何かが湧き上がっては、パチンと弾けて消えていく)

(なぜだか、そんな気がした)

ハイ!…バショ!?エート、チカクニ…

(待てよ)

キュウカンナンデス!カラダジュウチダラケデ…

(おい待て…待てと言ってる)

ハイ!ハイ、ワカリマシタ!

(お前が弾けてしまったら……)















DIO「----はっ!?」

DIO「……どこだ、ここは」

DIO「……なんだ、この腕に刺さっている管は」

DIO「……この鼻を突くような薬品の匂いは!」

DIO「なんだここはッ!」

「ここは病院だよ」

DIO「!」

「その管は、血液を失った君に血を送るためのチューブ。薬品の匂いは、たぶん君にかけた全身麻酔の残り香かな」

DIO「……何?」

「犬みたいに鼻がいいんだね、君は。それと病院内ではお静かに願うよ」

DIO「お前は、医者か」

カエル医者「そう、医者だ。呼び方は好きに呼んでくれ」

DIO「……私は、大怪我をしているのか」

カエル医者「そうだよ、大怪我も大怪我だ。特に失血がひどかったよ。もう少し遅かったら、血抜きのミイラになるところだった」

DIO「……あの、少年は」

カエル医者「彼なら、ひとまず家に帰ったよ。君、二日間も眠りっぱなしだったんだからね」

DIO「二日、か」

カエル医者「ほかに質問は?」

DIO「…………私は……」

カエル医者「おっと、その質問は先に答えを教えておくよ」ピラ

DIO「それは」

カエル医者「カルテだよ。君の診断結果がまとまった紙、で分かるかな?」

DIO「……ああ、伝わる」

カエル医者「………君の症状は失血によるショックの気絶と、左脛骨複雑骨折、両手の粉砕骨折に、逆向性健忘、それも全健忘」



カエル医者「わかりやすくまとめると、君は記憶喪失だ」

DIO「……」

カエル医者「驚かないんだね」

DIO「……目が覚めた時から、あの少年に見つけられる前の記憶が出てこない。嫌でも脳裏によぎるフレーズだ」

カエル医者「つまり、記憶を失う原因はその前だね。ああ、他の怪我は完治したよ。君、とんでもなく治りが早くてね。こっちがびっくりしたくらいだ」

DIO「……ここは、どこだ。病院とかではなく、国名や地名だ」

カエル医者「ここは日本。そして、今君がいるこの地は、学園都市というところだ」

DIO「日本は、知識では知っている……いや、覚えている。しかしそのガクエントシ、というのは知らんな」

カエル医者「学園都市を知らないか……。少なくとも、君が元々ここに住んでた人間という線は薄そうだね。IDカードも持っていなかったようだし」

DIO「ID?」

カエル医者「あ、そこら辺は気にしなくても大丈夫だ。そうだね……今、自分が覚えているは全部言えるかい?」

DIO「……少年の顔、記憶喪失、学園都市にいる、輸血されている。ムム……」

カエル医者「ああ、深く考え込まなくても大丈夫だよ。なるほどね……」

カエル医者「さて、ひとまず君は起きたばかりだ。寝起き早々、質問攻めにして悪かったね。またしばらく、ゆっくり休むといい。気持ちの整理もつかないだろう」

DIO「……いらん世話だ」

カエル医者「よく言われるよ。それじゃあ、また来るよ」

>>8誤字訂正
×今自分が覚えているは
○今自分が覚えていることは

皆様ご感想やご意見などありがとうございます。私はド素人なため、つまらないものが出来上がる確率も極高です…
上条ディアボロ?面白そうちょっと探してくる

~翌日~
当麻「おーっす! 大丈夫か、あんた」

DIO「……ノックぐらいしてから入ってきてもらいたいな」

当麻「いやー、あんたが意識取り戻したって電話で連絡もらってさ。あんなにひどい有様だったから、いてもたってもいられず飛んできたのさ。今度から気を付けるよ」

DIO「そこまでひどかったのか。あの老いぼれカエルからは、失血と複数個所の骨折だと聞いたが」

当麻「ひどいも何も、あんた全身から汗かくみたいに血流してたんだぞ? 顔色も真っ青どころか血塗れで分からないくらいだったし。意識も昏倒してたみたいで、しきりに唸って苦しそうだった」

DIO「…………」

当麻「ん、どうした? 体調悪くなってきたのか?」

DIO「いや、気にしないでくれ。少し考え事をしていただけだ」

DIO(それほどの重傷……生死の境を彷徨うとはいえ、これらの傷が僅か「二日」で回復するものなのか?)

DIO(単に、あの医者の腕と技術が規格外なのか。それとも……)

当麻「まあ、あまり無理はするんじゃないぞ。正直、こうして会話できるくらい回復して、ホッと安心してる」

DIO「ああ、せっかく掴んだ命の糸だ。大事にとっておくとする。ところで、少年」

当麻「なんだ?」

DIO「君の名を聞かせてもらってないな。君は命の恩人だ、いつまでも名無しじゃあ恰好がつかない」

当麻「あー、そういえばそうだった。俺の名前は上条当麻だ」

DIO「カミジョー・トウマ……。では当麻、礼を言わせてもらおう。助かった、恩に着る」

当麻「いいっていいって! 困ってたり苦しんでたりする人を助けるぐらい、当たり前だぜ」

DIO「その当たり前に、私は感謝の言葉を述べたのだ」

当麻「へへ、なんだか照れくさいな……。そういや、あんたの名前は?」

DIO「…………」

当麻「……あれ?」

DIO「実はな、当麻。私はいわゆる、記憶喪失というものにかかっている」

DIO「名前はおろか、出身、好きなバンド、好物だったもの、嫌いな人間すら思い出せない」

DIO「私の記憶の始まりは、君の言う虚ろな状態の時がスタートだ。それ以降は、ない。今まで書き溜めていた日記帳が、全部燃えてしまったようにな」

当麻「……そっか。なら、仕方ないよな」

DIO「さて、用件は済んだろう。そろそろ帰っていいぞ」

当麻「お、おい。急に冷たくないか?」

DIO「君は私の安否をその目で確認し、私は君に謝礼をのべた。どこもおかしくはない」ピラ

当麻「いや、そうじゃなくてさ! って、無視すんなよ! 俺より本に興味があるのか!」

DIO「喧しい奴だ……黙るか帰るかしたらどうだ」

当麻「くっそ、こっちが本性か? それに、カーテンを閉めたまま本読むなよ。暗い所で読むと目が悪くなるぞ」ツカツカ

DIO「やめろッ!」

当麻「へ?」

DIO「……いや、今日はやっぱり体調が優れなくてね。なんというか、陽の光も浴びたくないんだ。だから、そのカーテンはいじらないでくれると助かる」

当麻「……そうか。でも、本読むのはやめとけよ」

DIO「わかったよ。だから早く帰ってくれ」

当麻「へいへい、おせっかい焼きの上条さんはとっとと去らせていただくよ。じゃ、お大事にー」ガラガラピシャン

DIO「……改めて話すと、騒々しい餓鬼だな」

DIO(……確かに、私は気分が悪い。上条当麻と会話していたからとかではなく、ただ単に体調的な問題だ)

DIO(しかし、別に日光を浴びてもそれが変わるとは思えない。けれど、なぜだか嫌な予感がした。高圧電流の流れる電流コードを素手で掴ませられるような……脳の中の危険信号が、激しく警鐘を鳴らしたのだ)

DIO「……分からん。この街のことも、自分の事も」

ポトッ

DIO「……ポケットから何か落ちたな」ヒョイ

DIO「イヤリング、のようだな。なぜか片方しかないが……私のだろうか」

DIO「……裏に何か彫られている。D・I・O……ディオ?」



ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド



DIO「私の……名前、か?」

~数日後、病院出入り口前~

カエル医者「と、いうわけだ」

DIO「…………」

当麻「俺がこの人の面倒をみる!?」

カエル医者「君の所の寮、男子寮だろう?彼は男だ、問題はないんじゃないかな」

当麻「ありありです大アリ!! 日が沈んだころに呼び出されたと思ったらこういうことか……! そもそも学生でもないのに寮に誰か泊めるなん……あ」

DIO「…………」

当麻「いや、あいつは今イギリスだからノーカン、セーフ。先生の知り合いとかに住みどころを提供してくれる人とかいないんですか?」

カエル医者「いるとは思うけど……本人から聞いてるようだけど、彼は記憶喪失だろう? 今の彼の中では、君が全てのスタートなんだ。見ず知らずの老いぼれの家に泊めるより、いろいろと効果的だと思ったんだけどね」

当麻「あー、うー、うごー……」

DIO「……そこまで拒否される者の家に、私は暮らせるとは思えないが」

当麻「わかったよ、わかりました! いいでしょう、この人の面倒ばっちり見てやりますよ! 記憶がばっちり戻るまで!」

カエル医者「流石上条君だ。お礼に、この病院に勤める選りすぐりの美人ナース達の写真を……」ヒソヒソ

当麻「い、いらないですから! ほら行こうぜ!」

DIO「おい、引っ張るな」

当麻「ていうかあんた、なんで上半身裸!?」

DIO「さっき背伸びをしたら、病院服が破れてしまってな。脆いものだ」

当麻「あんたの身体がデカすぎるだけだ!」

カエル医者「寮の管理人には既に電話で話を通してあるから、安心するといいよーー」

当麻「既に引き受けること前提で進んでたのかよ! 不幸だーー!」

DIO「失礼な奴だな」


当麻「本当に管理人さんに話通ってたよ……いいのか、それで?」

DIO「天井が低いな。どうにかならんか」

当麻「広げろってか? そんなことできたらとっくにやってるつうの。だいたいあんたがデカすぎーー」

DIO「ディオだ」

当麻「でぃ?」

DIO「D・I・O……そう書いて、DIOと読む。おそらく、私の名だ」

当麻「思い出したのか!?」

DIO「……このイヤリングにその文字が彫られていただけだ。名前と決まったわけでもない」

当麻「そうか。でも、これで一歩前進だな」

DIO「何の道の、だ?」

当麻「記憶の旅路の、だよ。えーと、DIO?まず、何も残されていないあんたに、形だけとはいえ名前がついた。それだけで、十分大きな踏み出しじゃないか」

DIO「……フン」

DIO「ところで当麻、一つ気がかりになっていたものがある」

当麻「なんだ?」

DIO「お前、私のほかにもこの部屋に居候させている人物がいるんじゃあないのか?」

当麻「えっと……」

DIO「病院の入り口でイギリス、とか口走ってたな。その居候、今は諸事情でそこに飛んでいるのではないか?そこに加えてこの私だ。そりゃあ、不幸だと本人の前で叫びたくなるよなァ?」

当麻「うげ、そこから拾うかよ……。わかった、話すよ。でも管理人さんとか含めて誰にも言うなよ?」

当麻(やっぱりこの人、ちょっと性格悪いかも)

DIO「インデックス……禁書目録。ふざけた名前だな」

当麻「D・I・Oって文字だって、あんまり聞かないけどな」

DIO「私の一歩にケチをつけるつもりか?」

当麻「うっ。自分で言いだした手前、何も言い返せない……」

DIO「それで、そのインデックスという少女が、諸事情でイギリスに一時帰国した。そういう解釈でいいんだな」

当麻「ああ、そうだ」

当麻(魔法とかそういう類は伏せつつ、なんとか説明できたな。しかしインデックスの奴、いきなりイギリス清教に呼ばれたとか言ってたが、何かあったのか?)

DIO「……しかし、明日はどう過ごすか」

当麻「ああ、そういえばDIOは日光が苦手なんだっけ?」

DIO「今まで一度も浴びていないから、実際のところは分からんが……良い気分はしないということは確かだ」

当麻「でも、もしかしたらしばらくは大丈夫かもしれないぞ」

DIO「どういう意味だ?」

当麻「実は一週間前から、天候を科学調査してる機関が学園都市全体にある実験をしててさ」

DIO「天候科学? 実験?」

当麻「その実験の内容が、太陽から降り注ぐ紫外線を防ぐドーム状のバリアの性能テストなんだとさ。他にも色々カットできるみたいだけど、興味ないからあんまり覚えてないんだ」

DIO「つまり、今この街全体をバリアのようなものが囲んでいて、太陽光はそのフィルターを通過するから私でも大丈夫かもしれない、ということか?」

当麻「保証はないけどさ。一応、頭の片隅に入れといてもいいんじゃないか?」

DIO「……そう都合よくいくといいが」

当麻「ダメだったら、別の手を考えるさ。日傘をさすとか」

DIO「端から見たら奇妙極まりない光景だがな。大柄な男が日傘をさして歩き回っている姿は」

当麻「た、確かに」

DIO「ところで当麻。お前、明日補講があると言っていたが」

当麻「いっけね!明日に備えてそろそろ寝とくか。DIOはそこのベッドを使ってくれ」

DIO「私は床で構わん」

当麻「いや、一応病人を差し置いて俺がベッドを使うわけには……」

DIO「ここではお前が主だ、気にするな。もっと堂々と振る舞え」

当麻「大げさだな……それじゃあ、今日はその好意に甘えてベッドで寝させていただくぜ」

DIO「好意ではない。上の立場に立つのなら、それくらい弁えておかねば足を掬われるぞ」

当麻「俺は王様かってぇーの。それじゃ、おやすみな。電気消すぞ」

DIO「ああ」パチン









ピラ ピラ ピラ



DIO(学園都市……科学の最先端を突き進むと同時に、科学で人の眠れる力を呼び起こす)

DIO(上条当麻が通っているであろう高校の教科書を見て思ったが、やはりオレはそんな都市は知らん)

DIO(オレの知る科学とは……なぜだかひどく食い違って見える。科学は、そこまで発展していたか?)

DIO(それに、これだ。能力者)


パラ


DIO(人間の脳を科学的根拠に基づいた様々な方法で開発し、念動力をはじめとしたいわゆる「超能力」を会得できる)

DIO(種類や強さは個人によって異なり、能力の強さはレベル0~5のランクで決められる)

DIO(中でもレベル5は……この辺は興味ない)パララァー

DIO(あのカエルはオレを学園都市外部から来た人間、と言っていた。確証はないが)

DIO(ということは、オレにはそういう何か能力というものはないと仮定して行動した方がいいか。ないものを頼りに行動するなど、宗教に憑りつかれた狂信者と同じこと)

DIO(とにかくだ)パタン

DIO「明日は街に出よう考えていたが……厄介ごとだけは避けなければな」

DIO「……その前に服か」

~★~


チュンチュンチュン


当麻「ん~~……。朝か」

当麻「あれ、なんで俺はベッドで寝てるんだっけ……そうだ、DIOが居候してるんだった」

当麻「DIOは……いない。まさか、もうでかけたのか?」ノソノソ

当麻「……あれ、今何時だ?」チラッ

AM:8:12

当麻「…………」サー

当麻「しょええええええ! 大寝坊だぁーーーーーーッ!!」

当麻「朝飯朝飯! ええい、パン一枚でいい! あれ、パンどこだ?」

当麻「うわ、なんか教科書乗っけられてパンが潰れてる!? こんなところに教科書置いたっけか!?」

当麻「早く準備しねぇとーー!」フミ


ズルッ


当麻「あ」










不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁ


DIO「……気のせいか」

DIO(しかし、なんだ。こういうのを取りこし苦労というのだろう)

DIO(結論から言えば、オレは陽の光を浴びても異常はなかった。少し立ちくらみはするが、それだけだ)

DIO(オレの杞憂にすぎなかったのか、もしくは本当は上条当麻の話したナントカの実験の賜物か……)

DIO(どちらにせよ、これでオレの活動時間は広げられる)

DIO「さて、この学園都市。まずはどこから見物するか……」

DIO「昨日の教科書によれば、ここは学生が集う第七学区に位置するようだ。しかし、子供なんぞ見回っても何も……」

DIO「……いや、あるな。能力だ」

DIO「子供というのは、何かと自分の力をひけちらかす。おまけにそういう輩は、大抵喧嘩っ早く、キレやすい。そして何より、自分が一番だと信じて疑わない」

DIO「そういう餓鬼が能力などという至高の玩具を持ってたら、これを使わないはずがない」

DIO「どこかにいるだろう。そういう、アホ丸出しの面をした輩共が」


ガッシャァーーz____ン


DIO「やはり、な」

トリップの付け方間違ってるよ
#←の後に好きな文字だよ
あとトリップはかえた方がいいかもね

>>24
ご指摘ありがとうございます!#のあとだったか…
適当な文字って書いてましたけど、他とかぶらないようなほうがいいんですかね

>>25
あんまりないけどなりすましとかあるから、前のは使わないほうがいいと思うよ

>>26
貴重なアドバイスありがとうございます!

ジョジョ×とあるは未完率が高いからな

完結してほしい

DIOが学園都市で誰に会うのか期待。
案外打ち止めとかフレメアとか幼女に懐かれそうな気がする。

>>28 >>29
ある程度ストーリーは考えてるので、途中で投げ出すことはしたくないのです
あと、今作はそんなにとあるキャラは出てくるわけではありません。ストーリーに絡まないチョイ役ぐらいならいけそうな気がしますが…何分筆者が大量にキャラを動かせる技量がないもので。申し訳ない


ニット帽をかぶった男「てめぇが先にぶつかってきたんだろ! 早く謝れよ!」

耳にピアスを開けた男「寝言は寝ていいな! 素知らぬ顔してぶつかったのはてめぇじゃねえか!」

通行人「なんだ、喧嘩か?」

女子高生「ミカ、あっちいこ」

おさげの少女「う、うん」

DIO「……猿も鼻で笑うほど、下劣で醜い言い争いだ」

ザワザワ

DIO「どけ」

通行人「いて! ちょ、ちょっと君! 危ないじゃないか!」

DIO「私は能力者をこの目で見て、確かめなければならない。お前の薄らさびた頭は邪魔だ」

通行人「う、うすら……」

DIO「さあ、括目させてもらうぞ……超能力ッ!」



ニット帽「はん。てめぇ、この俺が巷でなんて呼ばれてるのか知らねぇな?」

耳ピアス「なんだ? 実はその帽子は禿げてるのを隠すための『隠蔽帽子(インビジブルハット)』とか?」

ニット帽「てめぇ……知らねぇぞ、どうなっても!」ボブシュウウウウ

DIO「!! 奴の手から炎が!」

ニット帽「俺は能力は、レベル2の『発火能力』!この炎でムカつく奴に全員、文字通り焼きいれて回るのが俺の生きがいよ!」


ゴオオォォォォ


ニット帽「つうわけで、今日の焼き入れ一号はてめぇだ!」

鼻ピアス「けっ、なんてことねーじゃねえか。餓鬼が火遊び覚えたくらいでくらいで粋がってんじゃねえぞ? んーー?」

ニット帽「かっ……死ね!」グオオオン

DIO(炎を球状に変えて撃ち出したのか……!)

鼻ピアス「生ぬるいんだよ!」ガシィ

ニット帽「なっ!? 俺のファイアボールを素手でつかみやがった!」

鼻ピアス「俺の力は『部分硬化』!手を石みたいに固くして、鼻につく奴の鼻っ柱をこれ一撃で粉砕してきたんだぜ!」

鼻ピアス「そんな拳の前じゃ、てめぇの火吹きもマッチみたいなもんなんだよ」

ニット帽「こ、このクソッタレが……!」

DIO「……何もない、無空間から炎を生み出し、はたまた自身の肉体の一部を硬化させる」

DIO「……面白い! 実に興味深いぞ、超能力!! あの帽子男はレベル2だと言っていたが……この際レベルは捨て置こう」

DIO「む、待て。もしや、記憶を抜き取ったり、逆に復元させる能力者もいるか? いや、仮定で物事を進めてはならんな」

DIO「今はひとまず、目の前のなまじ力の付けた猿どもの争いを見物するとするか……」

「殿方たち、そこまでですのよ」

DIO「……今度は何だ」

「ここで暴れていると通報を受けてきましたの。よくもまあ、白昼堂々とみっともない喧嘩ができるものですのね」

ニット帽「あん? 餓鬼は帰って宿題でもやってろ!」

鼻ピアス「失せろ! 邪魔だ!」

「生憎、宿題なんてものはありませんの。そして貴方方、この腕章が目に入っても同じことが言えて?」クイッ

ニット帽「……げっ、その腕章は」

「そう。風紀委員(ジャッジメント)ですの!」

DIO「……また、へんてこな奴が出てきたな。あの少女も能力者か?」

鼻ピアス「ああ? 風紀委員っつったって、まだドチビじゃねえか! 正義の味方きどってんじゃ……」


ドサ


鼻ピアス「……あ?」

「正義の味方を気取るだけの実力があるから、気取ってるのですのよ? ふん!」

鼻ピアス「おごッ!? み、みぞおちに踵落としは……がふ」ガクッ

ニット帽「いッ!? 今、あの鼻ピアスが一瞬で地面に倒れたぞ! まさかてめぇの能力は「ご名答。『瞬間移動』ですわ」……なっ!?」

ドズゥ

ニット帽「うがっ!? あ、頭から垂直に地面に落下させるなんて……そんな」ガクッ

DIO「…………強いな」

DIO「能力もそうだが、何より慣れている。相手の不意を突き、一瞬の間も与えず昏倒させる。実に実践的なやり方だ……」

DIO「相手にするのは、なかなか手ごわそうだ」


「ふう。ざっとこんなところですわね。初春、片付けましたわ。回収班への連絡を……」

DIO(推測するに、あれがこの都市での警察的役割を担う職なのだろう。能力の強弱故に、子供でもそんな職に就ける……ばかげたものだ)

DIO「風紀委員……。まあ、問題さえ起こさなければ危険視する相手でもなかろう。私の目的は、あんなマヌケな捕まり方をすることではないからな」

「うひょー。流石は白井さん。大の男二人をあっという間にやっつけちゃった」

DIO「…………」チラッ

佐天「ま、私の通報のおかげでもあるかな? うんうん。これを口実にして、あとで初春にクレープ奢ってもらおっと」

DIO(シライ……さっきの少女のことか。それにウイハルという名前は、あの少女も口にしていたな)

DIO「……知り合いか?」

佐天「え?(うわ、でかっ!? 2Mぐらいある!?)」

DIO「……人が話しかけたのだ。それに対する応答は、呆然とした顔を見せることではないだろう」

佐天「え? え、あ、はい。あの人、白井さんは私の友達です。それが、なにか?」

DIO「いや、深い意味はない。ただ、能力というものは、私が想像していたものよりも遥かに強烈だった」

DIO「そんな超能力の使い手に知った風な口を聞くから、君も能力者なのかと思ってね」

佐天「あー……恥ずかしい話、私は無能力者なんです。レベル0、六段階ある能力のランクの一番下なんです」

DIO「……無礼なことを尋ねた。すまない」

佐天「いやいや、大丈夫ですよ! ところで貴方は、もしかして最近学園都市に来たばかりですか?」

DIO「そんなところだ。能力を見るのも、これが初めてだ」

佐天「じゃあ、美味しい食べ物屋さんとか色々紹介しましょうか? ちょうど、今から友達の所に行って適当にぶらぶらしようと思ってたんですよ!」

DIO「私は構わないが、その友達はどうだろうか。君が見ず知らずの男を連れて来たら、ややこしいことになりそうだが」

佐天「大丈夫ですって。あの娘ならわかってくれますから!」

DIO(気まぐれで話しかけたら、まさかこう転がるとは……。面倒くさいが、断るメリットも少ない。ふむ……)

~★~

コンコン

佐天「失礼しまーす」

固法「まだ『どうぞ』って言ってないけど?」

佐天「いいじゃないですかー。初春います?」

固法「全く……奥のデスクにいるわよ」

佐天「ありがとうございまーす!」

DIO「邪魔するぞ」ノソリ

固法「だからどうぞって言って……うわっ!?」



初春「んー。先の事件での器物損壊の額、これで大丈夫かなー」

佐天「うーーいーーはーー……」

初春「え?」

佐天「るーー!」ブワッ

初春「」

佐天「ほうほう。今日は青と白の縞々か」

初春「佐天さん!? いい加減人のスカートをめくるのをやめてくだ……」

DIO「…………」

初春「…………」

佐天「どうした初春? 顔紅くしたまま固まって……あっ」

DIO「…………」

DIO「……心配せずとも、子供にそんな劣情は抱かんぞ」

初春「きゃあああああああああああ!!」ボゴッ

佐天「へぶぅ!」


初春「全くもう!」プンスカプン

佐天「ごめんってば初春~!いつもの癖でやっちゃうから、今日もつい体が勝手にさぁ」

初春「佐天さんは、まずその癖を直すところから始めるべきです」

佐天「それはできないな~。だってこれがなくなったら、私達はどう友情を確かめ合うのさ?」

初春「佐天さんが! 一方的に! やってるんでしょ!?」

DIO「……狭いのに騒ぐな」

初春「……すみません、初対面なのに取り乱しちゃって。そうだ佐天さん、この方は誰ですか?」

佐天「そうだったそうだった。実はこの人、つい最近学園都市から来たばかりなんだって! それで、せっかくだし私達で案内してあげるっていうのはどうかな?」

初春「案内も何も、それも風紀委員としては仕事の一環みたいなものですよ? 道に迷ってる人に道を尋ねられたり、目的地まで一緒についていってあげたり……」

佐天「そういうのは抜き! 風紀委員じゃなくて、初春として付き合ってほしいのよ。最近セブンスミスト近くにオープンした、クレープ屋さんとかにも行きたいしさ」

初春「あ、聞きましたよ! 確かM県からのチェーン店ですよね。カフェ・ドゥ・……なんとか」

DIO「結局、私は何なんだ。帰ってもいいのか」

佐天「あーダメですって。色々最先端の科学とか見れますよ?」

DIO「科学、か。確かに、ここの発展ぶりは凄まじいだろう。私の知っている科学の範疇の遥か上だ」

佐天「でしょでしょ? もっと腰抜かすものとか、たくさんありますよー。ところで白井さんは? 一緒に誘おうと思ってたんだけど」

初春「例によって、あの人のところです」

DIO(あの人? まだ誰かいるのか)

初春「固法さん。先の器物破損の書類もまとめてあるので、行ってきてもいいですか?」

固法「ん? それならもちろん行ってもいいよ。でも、急な連絡にはすぐ出られるようにしときなさいね。あと腕章を落とさないこと」

初春「は、はーい」

佐天「それじゃあ行きましょ、初春! それと、えーと……」

DIO「……DIO、だ」

~★~

佐天「ところでDIOさん。その服ってあれですよね? 今、ワイルド系男子の中で流行ってるっていう……」

DIO「そうなのか。この服は、『善意』ある心の広い人間が、『無償』で私に譲ってくれてね」



『な、なんだぁお前!? こんな夜中に上半身裸で……この俺様をナメてんのか!?』

『見ての通り、私は上の服がなくてな……。ところで君の背丈、背格好。どうも私に似ていないかな……おまけに服の大きさも』



DIO「……そう、『善意』だ」

初春「へぇ~、そんな優しい人がいるんですね。それ、結構値を張るんですよ。大事にした方いいですよ?」

DIO「ああ、そうさせてもらう」

佐天「ついた~! あ、DIOさん。ここがさっき話してたセブンスミストっていう服屋ですよ。たぶんその服も、ここの店で売ってる奴です」

DIO「洋服屋か。その割には、かなりの規模だ。デパートという建物に匹敵するんじゃあないか?」

佐天「なんたって、学園都市には大勢の人がいますからね」

初春「あ、佐天さんあれじゃないですか? 最近オープンした店って」

佐天「お、どれどれ? カフェ・ドゥ・マゴ……うん、あれだ」

DIO「ドゥ・マゴ。確かフランス語で、『二体の中国人形』という意味だったか。名前通りの店とは思えないが」

佐天「名前なんて飾りですよ。さぁ、早速入ろう! よーいドン!」

初春「え、ちょっと佐天さん!?」

佐天「私が先についたら、あそこのクレープ奢ってねーー!」

初春「さ、先に走っておいてそれはズルいですよーーッ!!」

DIO「……本当に、こいつらについてきて正解だったか?」

ちなみに、現在のDIOの服のイメージはOVER HEAVENの服装の羽根なしみたいな感じです




佐天「いやー、今日も楽しかった!」

初春「途中から案内じゃなくて、ただ行きたいところに寄っていっただけじゃないですか?」

佐天「いいのいいの! そういうところを案内したって考えるの。逆転の発想って奴よ」

初春「はぁ……すみませんDIOさん。佐天さん、いつもこんな感じで……いや、今日はいつもよりも余計にオーバーな気もします」

DIO「いや、いい。下手に緊張されるよりも、そうやってフランクで接してくる方が対応はしやすい」

DIO「流石に、女物のめかし道具を見せられた時はどうするか悩んだがな」

初春「本当にすみません……」

佐天「ん? どうしたの?」

DIO「何でもない。それより、後はどうする。そろそろ子供は帰る時間だろう」

佐天「うーん、そうだね。それじゃあ、今日の所はこれでお開きにしますか」

初春「私も一度、支部の方に寄るのでここで」

DIO「ああ。今日は案内してくれたことに感謝する。そういえば、まだ君たちの名前を聞いていなかったな」

佐天「あー、うっかりしてた! 私は佐天涙子って言います」

初春「初春飾利です。それでは、私たちはこの辺で」

佐天「あれ? 初春、家こっちだっけ?」

初春「だから、支部によるって言ったじゃないですか」

DIO「ではな。佐天、初春」

「「さようならー!!」」

DIO「……」

DIO「今日は、あまり収穫がなかった。だが、風紀委員に人脈を作れただけよしとしよう」

DIO「……ところで、ここはどこだ」


初春「佐天さん。なんだか今日、やけにテンション高くなかったですか?」

佐天「いんやー? 別にそんなことないんじゃない?」

初春「いいえ、絶対にいつもと違いました。なんだかこう、何かをひた隠してる裏返しみたいな……」

佐天「そ、そんなことないって!」

初春「……もしかして、DIOさん?」

佐天「な、なんのことかなー。アハハ」

初春「……佐天さんにも、春が来たんですねー」

佐天「は、春なんて来てないぞ! 頭に春がきてるのは初春の方でしょ!」

初春「花のことですか!? 今、絶対花をみて言いましたよね!」

初春「まあ、確かにDIOさんって美形の部類に入りますよね。肌も透き通るように白いし、髪もきれいな金色だし」

初春「なんというか、普通の男の人は出せないような『色気』みたいなのを感じました」

佐天「そうだけど、さ。まだ好きって気持ちになったわけでは……」

初春「一目惚れですか? それとも案内してるうちに気になってきたんですか? それともそれとも?」

佐天「うー……。初春が輝いてる……」



DIO「……少し、鼻がむず痒いな」

DIO「それはいい。問題は、本当にこの道が上条当麻の居つく寮に続いているか、だ」

DIO「学園都市の案内掲示板を見つけられたのは幸運だった。そして、そこにあの高校の寮が載っていたのも幸運だった」

DIO「だが、そこに到達するまでの道のりに理解できないものが多すぎる。デンシャ、モノレール、他にもあったな……」

DIO「オレが知識として記憶してる乗り物は、せいぜい車かバスくらいか。あと、なんだ黄色くて巨大な……なんて言ったか」

DIO「……学園都市の科学についても、学ばなければならんか。能力だけに囚われていては、複数の視野で物事を判断できなくなる」

DIO「……まあ、さらに遠くに離れたということはないだろう。後は徒歩で十分か」

DIO「……あの巨大な赤い箱、中に何か飾られているな」ツカツカ

DIO「これは飲み物か? 黒豆サイダー、熊のスープカレー、ヤシの実サイダー……」

DIO「……これも科学技術の賜物、と考えていいのか?」


「はぁ、はぁ、はぁ」

DIO「……誰か来るな。走ってきているぞ」

当麻「あ、DIO!? あんた、こんなところにいたのか!」

DIO「そういうお前は、上条当麻。補講とやらはどうした? 逃げてきたのか?」

当麻「ちゃんと言ったっての! 俺が今逃げてるのは……」


バヂヂィ!!


当麻「おわっ!?」

DIO「ヌ!?」





御坂「待ちなさーーい!! 今日こそ決着つけてやるんだから!」

当麻「げっ、来た!」

DIO「女……いや、能力者だな。今の青白い閃光、まさか電撃か?」

当麻「そうだよ! DIO、あんたは離れてろよ! じゃないと巻き添え食らうぞ」

御坂「そこの金髪! そこにいると邪魔! 早くどきなさい!」

DIO「……ちっ。女の癖に下に見おってェ」

DIO(だが、怒りに身を任せても果たして勝機はあるか。オレはいわばレベル0、対して向こうは雷を操る)

DIO(先の風紀委員とやらに目をつけられるのも避けたい。ここは素直に引き下がるか……。しかしッ!)

DIO「……」スッ

当麻「DIO、あんたは先に帰っててくれ。管理人さんに言えば鍵をあけてくれるはず。じゃ!」ピュー

御坂「え、あんたあいつと一緒に住んでるの!? まさかあのバカ、そういうケじゃあ……あ、逃げるなコルァ!」

DIO「…………」

DIO(……この小石を、あの女の進行方向を予測して、その足元に)

DIO(ーー弾き飛ばすッ!)


ピシュッ


御坂「うわっ!?」ズデン

御坂「あたた……今、何か踏んづけた? あ、だから逃げるっつってんでしょうがァーー!!」

DIO(我ながら、なんと狡いやり口だ。だが、それ以上に人に見下されるのは我慢ならん。正直、あの女がスッ転ぶのを見てスカッとした)

DIO(これは記憶喪失ゆえのストレスからくるものか、それとも生来の性格か。後者だとしたら、オレはとんだ小物だな)

DIO「……くだらんことをした。とっとと寮を探そう」

~★~

当麻「た、ただいま……」

DIO「愉快な鬼ごっこは終わったか?」

当麻「お、ちゃんと帰れてたか。今日はいつになく長くてよ。上条さんはもうヘトヘトです」

DIO「よくもまあ、あのビリビリ女から無傷で逃げおおせたものだ。一瞬しか見ていないが、人を黒こげにするほどの電力はあっただろう」

当麻「あー、そういやまだDIOには言ってなかったっけか」

DIO「何の話だ?」

当麻「俺の右腕はさ、昔から異能を打ち消す力が宿ってるんだよ。能力による炎とか雷とかなら、この腕で等しく無効化できるんだ」

DIO「……にわかには信じがたいものだ。そもそもお前、自分はレベル0だと言っていなかったか」

当麻「そうなんだよ。能力開発実験とかだと、結果はいつも0なのに。俺もよく分からないんだ」

当麻「でも、この右腕の存在を恨んだことは一度もない。ちっぽけな一本の腕かもしれねえが、これのおかげで何度も道を切り開いてこれたんだ。色んな人にも出会えたし、そしてその背中を一歩押すこともできた。もしかしたらDIO、あんたとの出会いもこの右腕のおかげかもな」

DIO「……人の出会いというのは、図らずも運命によって定められていると私は思っている。その右腕の存在が、お前と私とを結びつける『引力』ということも、否定はできまい」

DIO「お前と私の出会い。それははたして吉なのか、凶なのか。お前にとってはどちらか? 私にとってはどちらか……不幸な出会いでないことを願うよ、当麻」

当麻「なんだか難しいことを言うんだな……。でも、出会いってのは不幸だけを呼ぶもんじゃないさ。最初にくるのが不幸でも、いつかは絶対幸運がくるんだよ」

DIO「……お前のその楽観的な考え、後々命とりにならなければいいが」

山々の彼方から「声」がした……風に乗って来たのだろうか?
それともただの気のせいか…?

だが彼の望んだ「声」だった…
彼が聞こえたいと願った「声」だった

当麻「それよりさ、DIO。お腹減っただろ? もうそろそろ夕飯の時間だしさ」

DIO「お前、料理ができるのか」

当麻「伊達に一人暮らししてないぜ? 数少ない自慢の一つが、この磨かれた家事スキルよ!」

DIO「ほう」

当麻「そういやDIO。あんたは、料理とかは作れるのか?」

DIO「さあな。だが、やろうと思えばそれなりのものは作れるだろう」

当麻「へぇ~、ごついけど家庭的なところもあるんだな。『殴る蹴るが俺の手足の存在意義よ!』とか言い出しそうだけど、意外だなぁ」

DIO「…………」

当麻「あ、料理の希望とかはあるか?」

DIO「なんでもいい。早く作れ」

当麻「そ、そう怒るなって! 悪かったよ!」


~★~


DIO「……オムライス」

当麻「どうよ! 子供っぽいとか思うなよ? いつもはただのオムライスだが、今日は初めてDIOと一緒に食うからな。だから豪勢に、チキンオムライスにグレードアップしてるんだぜ!」

DIO「…気持ちだけ、もらっておこう」

当麻「おい、それはいらないって意味か!? 上条さん渾身のチキンオムライスを、一口も食わずに!」

当麻「これなんか見ろよ! お前の『ディオ』って名前、ケチャップで書いてやったんだぜ?」

DIO「……『デオ』」

当麻「へ?」

DIO「ここに書いてあるアルファベット。D・I・Oではなく、D・E・Oになっている。これの読み方は『ディオ』ではなく『デオ』だ。理解したか」

当麻「で、デオ…………」

当麻「…………ぶふっ」

DIO「……思ったんだがね、当麻。やはり私の手足は、気に食わない人間をブチのめすことに使う方が似合うとは思わんか?」

当麻「ちょ、ちょっと待てって!? DIOの体格だと死んじゃうから! 俺の人生ここでゴールインしちゃうからね!?」

DIO「安心しろ。今度は私がお前の名を書いてやる……お前の血でな」

当麻「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!!」

DIO居候のクセにくそ態度悪くてワロタ


当麻「なんだか今日は疲れたな……」

DIO「全て無駄な疲労だと思うが。余計なことをペラペラしゃべるからだ」

当麻「悪かったって。それじゃ、そろそろ寝ようぜ」

DIO「いや、私は少し夜風にあたってくる」

当麻「今からか? なんか用事でもあるのか?」

DIO「眠れないだけだ。気にするな」

当麻「そっか。んじゃ、あまり遅くならないように気をつけろよ」

DIO「ああ。では、行ってくる」ガチャン

当麻「……夜型なのか?」



DIO「…………」ツカツカツカ

DIO「やはり、夜の方が体が軽い。日中はあの日光のせいか、常にけだるさと眩みが付き纏っていたが……」

DIO「そういう体質だったのだろうか。メラニンが欠乏する症状を発症した個体、またの名をアルビノは、そのメラニン欠乏……つまり色素が薄いため、日光などを浴びると皮膚が炎症を起こすらしいが……」

DIO「そういった異常は見受けられない。そもそもアルビノ個体は短時間でもその炎症、サンバーンを起こすはずだ。私は長時間陽の光に晒され続けていたが、そういう異常は皆無」

DIO「根源的にいえば、多少肌は青白く、瞳も紅く見えたりするものの……オレには色素が存在する。アルビノの条件その①すら満たしていない」

DIO「となれば、要因はもっと別の何か。元々が日光に耐性の低い体と推測するのが妥当だが……それでも、あの時襲った恐怖感の説明は付け難い」

DIO「……しかし、夜は良い。民衆共の雑多雑音はなく、デカいだけで見向きもされない広告も消えている。排気ガス臭い車やバスも少ない……考え事が捗るというものだ」

DIO「とはいえ、やはりここはまだうるさいな。もう少し、静かな場所に足でも運んでみるとしよう」

~★~

DIO「……静かな場所を求めて歩いたつもりだったのだが」

リーゼントの男「……」ギロッ

刺青の男「……」

片目に傷のある男「……」ギョロン

DIO「……そういうところに入り込んでしまったようだ」チラッ

『第十学区:Aブロック』

DIO「……第十学区。私が居座っていたのは、確か第七学区だったか」

DIO「……戻るか? いや、こいつらも危害さえ加えなければ襲ってはこないだろう」





「やっと見つけたぞ、あーん?」

DIO「……」チラッ

顔に青あざのある男「てんめぇ、昨夜はよくもやってくれたなァ」

DIO「……はて、私は君に危害を加えたことはあったかな」

青あざ「とぼけてんじゃねェ! 突然殴りかかってきた後、俺の服を追い剥ぎみてェに意地汚く盗んで、今もぬけしゃあしゃあとした顔でそいつを着やがって!! いくらしたかわかってんのかァ!?」

DIO(ああ……昨日の)

DIO「すまない。なんというか、君みたいな人種の顔の見分け方、私はまだ知らなくてね。皆、カバとゴリラを足して割ったような顔をしているから、誰が誰だかわかりづらいんだ……」

青あざ「カ、カカカバにゴリラだぁ!? てめェ、俺がこのAブロックでどんな奴か知ってて言ってんのか!」

DIO「そう唾を飛ばしてまくしたてるんじゃあない……お前の吐く息で空気が汚れる」

DIO「昨夜のことで怒っているのだろう。とてもすまないことした、以後気を付けるよ。では、私はこれで」

青あざ「…………てめェ、あんまナメた口ばっかきいてっと」



ゾロゾロゾロゾロ



DIO「……ヌ。多い……十人は下らん」

青あざ「マジに、殺すぞ? いーや、もう処刑は確定だ。こっからはその方法を考えなくっちゃあなァ。ケケケケケ」

青あざ「巷で噂のスキルアウト『絶対突進(ドントストッパー)』とは、まさにこの俺たちのこと。そして俺はそのドンだ。てめぇは、喧嘩を売る相手を間違えちまったんだよ」

DIO「スキルアウト……?」

青あざ「どうするよ? 今、媚びへつらって俺の靴底を舐めながら命乞いをするってんなら、考える余地を与えてやってもいいが……?」

DIO(スキルアウトという名称……ということはつまり、無能力者の集団か。ただの人間同士ならなんてことはない……タイマンでならだが)

DIO(向こうはざっと目で見て11、12人はいるな。対してオレは一人……。おまけに何人かは胸元に手を突っ込んでいる。銃か……分が悪いというレベルではないな)

DIO(気は進まんが、こんなチンケなところでくたばる理由もない。隙を見つけて……)

青あざ「どうしたよ、だんまり決め込んじまいやがって? 早く答えが聞きたいなァーー」

DIO「……すまない、待たせたな。ようやく、君と他の奴らを見分ける方法を見つけたんだ」

青あざ「あん?」

DIO「君は他の者たちと違ってーーーーーーーーひどく無様な顔をしているな。一目瞭然だ」

青あざ「」ピクピクッ




青あざ「殺せェェーーーーーー!!」

DIO「ッ!」ダンッ!

手下A「なっ!? あいつ、かなり速いぞ!」

手下B「まるで豹みてェなスピードだ! 捕まえられねェ!」

手下C「くそ、こうなったら銃弾を……」

DIO(速いッ! なんだこの脚力、想定以上のスピードだ! オンボロ車のアクセルを踏んだら、トラック並の馬力で走りだしたみたいだ!!)

DIO(が、これはうれしい誤算。このまま当初の目的通りーーーー)

青あざ「----へっ?」

DIO(油断しきって、便所ハエよりも醜い笑みを張り付けているあのクソに不意打ちのタックルを……)

DIO「食らわせるッ!!」

青あざ「うげェェーーーーッ!?」

手下たち「「ボスゥ!?」」

DIO「貴様のアホ丸出しみたいな性格から、はじめは部下に撃たせて私を動けなくしてから、じわじわとなぶり殺してやろうという魂胆が丸わかりだったッ! つまり、自分目がけてすぐさま私が猛然と突進してくることなど予測すらしていなかったに違いない(この速さは私も想定外だったが)」

DIO「『絶対突進(ドントストッパー)』という称号、私がいただいてもいいんじゃあないか? フフフ」タッタッタッ

青あざ「ブヘッ、なんてタックルだ……ラガーマンかよあの野郎は! てめェら、逃がすんじゃねえぞ!! ここの地理は俺たちの方が詳しいんだ、見つけ出してぶっ殺せ!!」

手下たち「「うっす!!」」タタタタッ


DIO「……驚いたな。あれだけ走っても息が上がらないとは」

DIO「先の足の速さといい、この肺活量といい……私の身体はかなり運動神経に恵まれているようだ」

ニガスナー!コッチニイッタゾー!

DIO「……フン。5、6人で固まって動いているか……戦うのは得策ではないな。一人、二人の時を狙うのがベストだろう」

DIO「もう少し奥に行くか……」




手下たち「」キョロキョロ

DIO「チィ……奴らめ、ここの地理に詳しいようだ。人が隠れ通りそうなところにはだいたい待ち伏せている」

DIO「向こうにもいたな……となると、次はあちらか」

DIO「……こっちにはいないな。さっさと通り抜けよう」

DIO「……この身体能力、なにか他に秀でた才能はないものか」

DIO「試しに一度、力の限り跳んでみることにしよう。あの建物から突き出た鉄骨を掴めるか……距離からして、70cm飛べればいけるが」

コッチニキタカ?ダトシタラモウスグ…

DIO「ちっ、もう来たか。時間がない、いくぞ……」

DIO「WOOORYAAAAAAA!!」ブワオッ

DIO「……よし、跳躍力も高いぞ! このままいけば、あの鉄骨も余裕で掴め……」スカッ

DIO「ヌ? おかしいぞ、鉄骨がどんどん下がっていく。これでは掴めないではないか」

DIO「いや、この建物自体がどんどん下がっている……どういうことだ?」

DIO「……違うッ! 鉄骨も、建物もはじめから下がっていない!」

DIO「私が……跳び過ぎているのか、これはッ!?」



【跳躍力 現在4m22】

ケータイから失礼します、スレ主です。あれ、スレ主って呼称でいいんですよね?
それで物語の更新についてなのですが、これからは「今から更新します」とか「今日はこの辺まで」という報告などを入れた方がええでしょうか?噂の上条ディアボロを拝見致しましたが、あの方はよくその報告などをなさっていたので気になりました。

DIO「……」スタッ

DIO「あれだけの高度から着地したにも関わらず、足に負担がかかった感覚もない。呼吸の乱れも、ない」

DIO「運動神経の一言で片づけられるものではないぞ。どうなっているんだ、私の身体は……?」

DIO「以前の『DIO』は、自分の体にどんな細工を施したというのだ……まさか、能力か?」

タタタタタ……

DIO「……おちおち考え込んでいる暇はないな。デメリットではないのだ、有効に使えば難なく脱出できるかもしれん」

DIO「あっちには奴らがいる……こっちには逆に誰もいない。こっちに避難しよう」



DIO「……力は、どれくらいなのだろうか」

DIO「脚力は既に体験済みだ。誰かが叫んでいたが、全力ならば豹と見紛えるほどの速度で走ることはできるようだ」

DIO「では腕力は? 握力は? 瞬発力はどうだ? これらは並の人間と変わらないかもしれないし、もしくは圧倒的に違っているのかもしれない。強くとも、弱くとも」

DIO「試したい。が、跳躍力と違ってこれらを試すには、何かを壊さなければならない。追われている身でやるほど、重要でもない」

DIO「……もう一度、あの病院を尋ねてみるか。ヌゥ、向こうにいるな……だがこっちがスカスカだ。マヌケ共め、一つの所ばかり見張るから穴ができるのだ」



DIO「……上条当麻。あの男の右腕は、あらゆる異能の力を打ち消す。自称だが、な」

DIO「そのくせ、本人はレベル0だと言い張るもんだ。これほど分かりやすい矛盾、笑えと言われているようなものだ」

DIO「だが、仮にだ。もし奴の右腕にそれがあるとしよう。そして私の記憶喪失……もしこれが、記憶操作の可能な能力者に改ざんされたものだったならばッ! あの右腕は、その改ざんしたという結果すら打ち消すことができるのだろうか」

DIO「……仮定に仮定を乗せた、机上の空論に過ぎないな。私の記憶喪失の原因がそれと決まったわけでもない。結論を急ぎ過ぎたな」

DIO「……そういえば、妙だ。さっきから奴らの声や足音が、突如として止んでいる」

DIO「諦めたか? だとしたら好都合だが……ヌ」

DIO「……行き止まり、か。あのジャンプでも跳び越えられそうにないな」

DIO「仕方がない。引き返して、寮へ戻る道を……」


ドン!


DIO「……何ッ!? 右膝を、いきなり銃弾が貫通して……!?」ブシュアアァァァ

青あざ「へっへへ……会いたかったぜ、キザすかし野郎よォ」

DIO「き、貴様は……!! ぐっ、立つ態勢が維持できん……!!」ドサッ


青あざ「お、その驚愕の表情。どうして自分の居場所が分かったのか? 足音や声は聞こえなくなっていたはずでは? そう考えてたろ?」

DIO「チィ……」

青あざ「言っただろうが!! 俺たち『絶対突進』はここの地理に詳しい! てめぇが逃げ隠れそうなルートくらい、大体把握してるんだぜ!」

青あざ「あちこちに俺の部下がいただろう? あれはな、てめぇを探すためなんかじゃあない」

青あざ「てめぇの移動先を一つに縛って、最終的にこの行き止まりに到達させるためさ! つまりてめぇは、まんまと俺様の掌で踊らされていたわけなんだよ」

DIO「グヌヌ……」

DIO(興奮してアドレナリンが出ているせいか、血が噴き出る割に不思議と右膝の痛みは薄い。だが、それよりも力が入らないことが問題だ!)

DIO(立つことすらままならないこの状況……。これではあの脚力も跳躍力も使えない。クソが!)



ゾロゾロゾロ



青あざ「こいつらが、ここまでてめぇを導いてくれた案内人だ。感謝しな」

DIO「……見た目の割に、随分と頭が回るんだな。意外だったよ」

青あざ「はっ! 今更そんな煽りいれられたって、ちっともムカつかないぜ」

青あざ「これからてめぇをなぶり殺しにできると思うと、そんなイライラちっさすぎて話にならねぇ」

DIO「…………フン」

青あざ「そうだ。その服、てめぇにやるよ。てめぇの血の付いた服なんざ、肌に纏いたくもねぇんでな」

ギャハハハハハハハハハハハ!!

DIO「…………」グッ


ドン!!


DIO「うぐっ!」バシュウゥ

青あざ「不審な行動をとりやがったら、すぐにもう片方の足を撃ちぬけと命令しておいた。残った足で暴れられても困るんでな」

青あざ「これで、てめぇはろくすっぽ動くともできなくなっちまったわけだな。あーあー、可哀想に」

DIO「おのれぇ……この、下水道にへばりつくクソ共めが! 内臓引きずり出して並べてやる……一人残らずだッ! ……グウゥ」

青あざ「はん! 足腰の抜けた老人みてぇに足プルプルさせて、なに寝言ほざいてやがんだ? ギャハハァ! それじゃあお望み通り、俺たちの拳で寝かしつけてやるからよ! どーれ、まずはその綺麗な顔の皮剥がして……」






「おい。てめェらが『絶対突進』で、合ってるンだな?」

すいません、書き溜めというのをやっていました。どこまで書けばいいのかわからず悩みながら書いてますが…とりあえずもうちょい色々書いてみます

なるほどなるほど、てっきりラスト近くまで書かなきゃいけないのかと思ってた……よかったよかった

それでは、一方通行とオリスキルアウトの決着つくまで仕上げちゃいます

青あざ「……あぁ?」

DIO(グッ……まだ仲間がいたのか?)

「聞こえてンのかァ? だから、てめェらは『絶対突進』か、って尋ねてンだっつゥの」

手下A「あ? あぁ-? こんな所に何の用だ、ガキ」

手下B「悪ぶってるつもりか? 俺たちとお前じゃ悪の『格』が違うんだよ」

手下C「そんな容易く骨が折れそうな体で、何粋がってるんだ? ギャハハハハハ!!」

DIO(……仲間、ではないようだ。通りすがりか? 上手くいけば、奴を囮にして逃げられるか? いや、この足じゃあまず立ち上がるのが難しい。痛みを感じないだけに、もどかしくて仕方がない!)

青あざ「で、俺たちが何者かって? ご名答! 俺たちがかの有名な『絶対突進』だ。よく分かってるじゃないか、えらいぞ」

青あざ「だが、今お前は見ちゃいけないもの見ちまったな。ここは大人の世界だ。ガキが興味本位でエロ本覗くのとはワケが違ぇ。というわけで、お前もこいつと同じ目にあってもらわなくっちゃな」

「……あァー。やァっと帰れる。何が好き好ンで、こンな腰抜け共を俺が探し回らなくっちゃならねェンだ? まったくよォ」

青あざ「……は? てめぇ、今なんて言った?」

DIO(挑発……ではない。あのガキ、本心で言っている。人間が飛び回る羽虫を叩き落とそうと、無駄な労力を割かれて面倒だと呟くように、あのガキは心の底から奴らを『羽虫』としか認識していないッ! あの濁った眼は、そういう目だ)

手下A「てんめぇ! ガキだからって手加減してもらえると、思うなよなぁ!!」ブオォオ

DIO(鉄パイプ!)


「あァ? なァに戯言ほざいてンだァ?」カチッ キュイーン


バギャッ


手下A「うぎゃあああああああ!?」


カララララン


青あざ「なな、なにぃ!?」

手下B「おい! 大丈夫か!?」

手下A「いでぇーッ!! 俺の両腕がグシャグシャになっちまってるーー!!」

手下C「てめぇ、能力者だな!?」

「ごちゃごちゃゴチャゴチャうるせェンだよ、ガキかてめェらは?」

手下C「ふざけやがってッ!」チャキッ

DIO(あれは、銃か! オレの膝を撃ち抜いたのもあれか……!)

手下C「死ね!!」ドン!

「ッ!!」


ドシャア


手下C「うわああぁぁぁぁぁ!! 俺の、俺の右手を銃弾があああぁぁぁぁ!!」

青あざ「なっ……!?」


DIO(どういうことだ!? あのガキはその場から一歩も動いていない。ポケットに手を突っ込んだまま、微動だにしていない)

DIO(それなのに、奴を鉄パイプで殴りつけた男の方が両腕を砕かれ、奴に向けて発砲した男の方が被弾した。あれも能力だというのかッ!?)

青あざ「な、何なんだよてめぇ! 野郎ども、やっちまえ!!」

手下B「でもボス! あいつの能力がわからねぇよ! 下手したら俺達まで返り討ちになっちまう!」

青あざ「うるせえよ! 早くぶったおせ!」

「何だ何だよ何ですかァ? あれだけ大口叩いておィて、その無様な姿はよォ!? やっぱしガキはてめェらの方じゃねェのかァ!? ギヒャヒャヒャヒャ!」

「俺が何だか知りてェか? 俺の能力が知りてェかァ!? いィぜ、たァーーっぷりと見せてやるよォ」

DIO(こ、こいつ……狂ってやがる)





一方通行「この俺、『一方通行(アクセラレータ)』の力をよォ、その四肢、五感、五臓六腑満遍なくフル活用してじィィィィィィィィィっくり味わいなァ! 『格下』の『ガキ』共ォ!!」

手下B「ア、アクセラレータ!? あの学園都市最強の『第一位』の『一方通行』だって!?」

青あざ「なんだってそいつが俺たちのところに!? に、逃げるぞ……はっ、そうだ! ここは行き止まりだ!?」

一方通行「アヒャ!」ガン


ズドドドドドドドド!!


手下たち「「ぎゃああああああ!?」」

青あざ「ひっ!?」

DIO(なんだ、今のは。あのガキ……一方通行とかいう奴が壁を殴ったら、あの男共の近くの壁が爆発し、その瓦礫が砲弾のショットガンのように男たちを吹き飛ばした!)

DIO(てっきりバリアーだとか、そういうチャチな能力だと思っていたが……まるで違う! 読めない! このガキの力がッ!)


手下B「こ、この野郎――――ッ!」

一方通行「はい、ざァンねン!!」ズン!


ドガガガガガガ!!


手下B「ぐあああああああ!!」

DIO(奴がその場で一回足踏みしただけで、その周辺のコンクリートが大量に宙に舞いあがった! ただの怪力では、あれほどの芸当はできるはずがない。だが、どんな能力ならあれほど多彩な攻撃が繰り出せる?)

DIO(炎でも、硬化でも、雷でもない。あのひ弱な体格の白髪のガキは、何の能力者なんだ……)

青あざ「ひ、ひぃぃぃぃ!?」

一方通行「ァンだよ、もう終いかァ? つまンねェ、最高につまンねェぞ!?」

青あざ「こ、この化け物がぁぁ! ゴミみてぇに俺たちをあしらいやがって、そんなに楽しいか!? 所詮無能力者は、てめぇらみてぇなキチガイサイコ野郎に蹂躙されるのがお似合いって言いてぇのか!!」

一方通行「……あァ?」

青あざ「うっ……!」

DIO「……」

一方通行「てめェ、自分らを『全うな人間』か何かと勘違ィしてねェか?」

一方通行「こンな狭くてクッせェてところで、無能力者だっつゥのを言ィ訳に好き放題やってる肥溜めの負け犬共が、今更何を『頑張ってきました』アピールしてるンだ?」

一方通行「虫が良すぎンだよォ! 憧れ捨てて、寄り道でクソ食ってるてめェらには、そういう綺麗ごと通じねェっての!! 社会のクズの最期は、それ以上のクズの化け物にすり潰される終わりがお似合いなんだよ!! ヒヒャヒャヒャヒャアァーッ!!」

青あざ「う、うわあああああああ!!」ダダダダ


ガシィ


一方通行「あばよ。キヒッ」



DIO「……」

一方通行「おィ、終わったぞ」

『了解。あとは結標が後始末してくれるぜよ。お前はBブロックで海原と合流してくれ。その時に追って連絡する』

一方通行「あァ」

『誰かに、見られたか?』

一方通行「……」チラッ

DIO「…………」

DIO「……なぜ、私には手を出さない」

『おい、一方通行? 応答してくーー』ピッ

一方通行「うっせェ」

DIO「…………」

一方通行「で、何だ? 実は自殺志願者だったか?」

DIO「……お前は、何者だ」

一方通行「おィおィ、さっきの聞ィてなかったのか? 耳クソ詰まってンじゃねェの?」

DIO「一方通行と名乗っていた。そんなことは知っている。お前は『何者』か、と問うているのだ」

一方通行「……お前、スキルアウトじゃねェだろ。とっとと家帰って寝ろ。そして今日見たことは忘れろ」

DIO(あくまで答えぬか……粘りすぎて奴のスイッチが入ってしまえば、勢いで殺されかねん。引くしかないか)

DIO「動きたいのは山々だが、見ての通りだ。この足に出血じゃあ、立つこともできなくてね」



一方通行「……何言ってンだ、お前。血なンて『どこから』も出てねェぞ」

DIO「……なに?」


カランコロン


DIO「……私の体から何か、落ちたぞ。なんだこれは」ヒョイ

DIO「……銃弾? 先端がわずかにひしゃげているが、これは間違いなく銃弾だ。しかしどこから落ちた? 左足の裾から落ちたように見えたが……」

DIO「……『左足』だと?」

DIO(左足は、銃撃された弾が貫通していない。つまり、銃弾は体内に食い込んでいるはずだ。この……この銃弾がそうだというのかッ!? だとしたらなぜ、どうやって体内からこれが転がり出てきたのだ!?)

DIO(思えば、両足を銃撃されたというのに、痛みがあれほど薄いのは異常なことだ! いくらアドレナリンが分泌されていたとしても、肉体を貫通したほどの銃撃。のた打ち回るほどの激痛が来てもおかしくはない……というより、来なくてはならない)

DIO(両足の怪我は、今も全く痛くない。銃撃を受けたのにもかかわらず、だ。おかしい、奇妙だ。今、オレの足に何が起こっている?)

DIO「……血が、止まっている。いつからだ? あれほど噴水のように流血していたのに、服にはもう濡れた感触はない」


ドドドドドドドドドドドドドド


DIO「なにが……起こっているというのだッ!」ガバッ





DIO「……銃撃された傷跡が……なくなっている……!?」

DIO「そんなバカな! 私は確かにこの足に被弾した、大量に血も流した! だのに、なぜこの左足には、乾いて皮膚に張り付く血しか残されていないのだ!?」

DIO「……うっ!?」







『おれはこんなにッ! こんなにすばらしい力を手に入れたぞ!』



『死なねえ! 頭を撃たれたのに…………』



『ディオ! 君を! 君のその力を! 世の中に放つわけにはいかない!!』







DIO「なっ……なんだ今の映像は? 私の網膜というフィルターに、勝手に流れた今の姿と声は誰だ!?」

一方通行「おィ、なンだか一人で楽しそうだな。頭でも打ってキマッちまったか?」

DIO「何が起こっている……私の身体はどうなっている!? もはや常人を逸脱した身体能力だ。運動神経以前の問題だ!」

DIO「まさか、これが私の能力だとでもいうのか……うっ」フラァ

一方通行「さっきから喧しィ。そンなに自分の身体大好きなら、病院にでも行ってこィ」


DIO「ハァー、ハァー、ハァー」

DIO「……す、すまない。気が動転していただけだ。気にしないでくれ」

DIO「そして、差し出がましいことを頼むが、私を第七学区の病院に運んでもらえやしないだろうか?」

一方通行「……はァ、何言ってンだ? 俺は運び屋じゃねェし、慈善事業でやってるワケでもねェ。自分で行け」

DIO「だから、立つことができないと言っただろう……確かに血や傷は治っているが、まだ上手く力が入らないんだ。理由はわからんが、君は私を助けてくれた。どうかその拾った命を、君の手でもう少し延命させてはくれないだろうか?」

一方通行「……ワケわかンねェこと言ってンな。そンなの俺の知ったこっちゃァ……」

一方通行「……チッ。おィ、カードよこせ」

DIO「カード?」

一方通行「IDカードだ。早くよこせっつってンだろォが」

DIO「……そんなもの、持ち合わせてはいないが」

一方通行「はァ!? 持ち歩くのは常識だろォがよ! マジに頭イってンのか!?」

DIO「……?」

一方通行「……まさかお前、『ワケアリ』か?」

DIO「何のことだ?」

一方通行「……また、あの科学者たちが何か企ンでるンのか? お前はその『試作品』ってところか何かか……」

DIO「何の話か、さっぱりだ」

一方通行「チッ、性懲りもなくまたキナくせェことおっぱじめるつもりか……」ピピピッ

『おい一方通行!! 勝手に通信切るとはどういうことだ!? 敵襲か!?』

一方通行「ちげェよ、もっと面白ェ拾いもンだ。今から一般人連れてBブロックに向かう、じゃァ切るぞ」

『一般人!? お前、もうちょい話をーー』ピッ

DIO「……言っておくが、私は何の実験にも関わっていないはずだ」

一方通行「うるせェだまってろ。つゥかお前デカすぎだし重すぎだ」

DIO「だからって、襟つかんで引きずって行くのはどうかと思うが……っ!」フラァ

DIO(ぐっ……今までの疲労が一気に来たのか、意識が保て……い……)ガクッ

一方通行「ホント重ェよ。こいつ何キロあンだ?」

とりあえずこれが今日書き溜めたものでっす。今夜の投下はここまでとなります。たぶん
やっぱり執筆というのは難しいですね……これからも精進していきます

皆様お褒めいただき、本当にありがとうございます!面白いと言ってくださるだけで、やる気と勇気がムンムン湧いてきますよ。それと一方通行のご指摘もありがとうございます。次回から意識していきます

それと本日の更新なのですが、時間がとれるか怪しいので、きりが良くて一回できるか否かとなります……申し訳ない。書き溜めもできていない状況なので、今しばらくお待ちいただければ幸いです。時よ止まれェ!(願望)

筆者「とあるならではのストーリーとかもやりたいんですどね。超電磁砲組とおでかけとか、そういう感じの。
   じゃないとせっかくのクロスが活かせないような気がしまして。
   キャラと舞台借りるだけじゃ、せっかく見栄張ってクロスさせた意味がない!と思いますの」

↑みたいな区切りでいいですかい?

★とある病院★~





『いくぞ! ………………ようこそ! ……肉体よ!』





『猿が人間に…………ッ! お前はこのディオにとっての……!』





『このおれのために…………のが似合っているぞッ!』





『おれは………………』








人 間 を や め る ぞ ォ ォ ォ ォ ォ ォ 





DIO「……はっ!?」

DIO「ハァー……ハァー……ゆ、夢か?」

DIO(今の夢……駄目だ、もう思い出せぬ。しかし、なぜだかとても不気味なような気がした)

DIO「……ここは、どこだ?」

「お前さんの希望通りの、第七学区の病院だ」

DIO「ッ!」

「おっと、怪しいやつじゃないぜ? 一方通行の仲間みたいなもんだ、と言ったら信じてもらえるか?」

DIO「一方……あの白髪か。ということは、お前も能力者か」

「うーん、半分正解。もう半分はプライベートルームってことで」

DIO「……何者だ」



「土御門元春。しがない学生だにゃー」

DIO「ツチミカド……?」


DIO「……」

土御門「あんた、今当麻のところに居候してるんだよな」

DIO「ッ! なぜそれを……!」

土御門「俺、上条当麻の隣の部屋に住んでいるのさ。今日、たまたまあんたがカミやんの部屋から出ていくのを見てびっくりしたぜい。
    そして、そのあんたとこうやって顔合わせることになるのにも、びっくりだにゃー」

DIO「……あの白髪、一方通行はどこだ」

土御門「あいつならここにはいないぜ。今は自宅っつうか、住んでるところに戻ってのんびりしてるんじゃないか?」

DIO「……そうか。今度会うとき、礼を伝えてくれると助かる。
   少し……いや、かなりブッ飛んだ性格のようだが、結果的に奴に救われているしな」

土御門「へいへい了解」

DIO(このツチミカドという少年……果たして信用するに値する人間か? どうもこいつからは狐の匂いがする。
   騙しに騙しを重ねているような、心から信頼しにくい雰囲気だ)

DIO(こいつの口ぶりと自らをガクセーと呼んだことから、上条当麻の知り合い、それも顔見知りとかではなく友人の部類にいる男か。
   しかし部屋が隣とは……迂闊な行為は控えなければ。このガキ、立ち振る舞いでごまかしてはいるが……できる)

DIO(扱いに困る奴だ。下手に手も出せん、口も上手い、読みづらい。おまけにこいつらは、いわゆる都市の『暗部』だろう。歩く爆弾すぎる。
   だが、こいつらには『恩』もある……それを無下にしてしまえば、こいつはそこからさらに面倒な話題を持ってくるだろう。
   信頼はできんが……少しの信用はしておかなければ)

DIO(……とりあえず、さっさとこいつの用件を済ませてしまおう)

土御門「おーい、いきなりだんまりされると反応にこまるぜい」

DIO「……いや、すまない。色々、思うところがあってね。少し考えをまとめていただけだ」

DIO「……さて、ツチミカド。私の質問はだいたい終わった」



DIO「今度は、お前が私に質問する番だろう?」

今日はこれだけです。やはり時間はとれませんでした……駆け足気味になっちゃったかなぁ
書き溜めもまだ全然なので、次回もあまり多くは進められそうにはないかもです

ケータイから訂正
>>103
今日× この前○

DIOは太陽は克服してないです。できたらいいんですけどね。現在は天候班が試運転している紫外線反射装置のおかげで、
学園都市内なら日中でも活動できる状態です(本人曰く、立ちくらみと眩暈がひどくて体が重いようですが)

DIOの生来の気質である「悪」も基本的に変わらないです。上条さんと同じ、という良い例を出してくれている方のだいたいその通り。
ただし、今回のDIOの目的は記憶を取り戻すということで全然悪い目的ではなく、過去の様々な記憶が抜けていることも相まって、
表面上は紳士的でマイルドな性格に落ち着いてます。ゲスですがね


土御門「……話が分かる相手で助かったぜい。ここの冥土返しから、既に事情は聞いてある。無論、あんたが記憶喪失者だということも。
聞いてあるうえで、いくつか質問していく」

DIO「構わない。答えられる範囲なら、答えよう」



土御門「……お前は、何者だ?」

DIO「DIO。D・I・Oと書いて、ディオと読む。それしか知らない」

土御門「記憶があるのは、いつからだ?」

DIO「上条当麻に発見されるほんの少し前。つまり、今日より五日前か」

土御門「おっと、そこは訂正だ。お前さん、丸二日意識を失ってたんだぜ。だからそこは、六日前になる」

DIO「また二日か……こういう時は貧弱なものだな、私の身体は」

土御門「さて、続きだ。IDカードを所持していないのは?」

DIO「はじめから持っていなかった、そんなもの」

土御門「能力者か?」

DIO「……さあ、な。それを知りたいのは、この私自身だ」

土御門「あの時間、あの現場にいた理由は?」

DIO「夜の方が、気分が良くてな。静かな場所を求めて彷徨っていたら、このありさまだ」



土御門「……最後だ。お前さん、魔法や魔術ってのは信じるか?」

DIO「魔術? ここは科学技術の結晶、学園都市なのだろう。それが関係あるのか?」

土御門「いいから答えてくれ。返答によっちゃあDIO、お前の素性に少し近づけるかもしれない」

DIO「どういうことだ」

土御門「今は、こっちの番なんだろう?」


DIO「…………否定は、しない。いまいちピンとは来ないが、心のどこかでそういう神秘的なものを認めていたような気がする。
  運命だとか、神だとか、逃れられぬ存在もまた然りだ」

土御門「……そうか。俺の聞きたいことも、大方知ることができたな」

DIO「おい、さっきの素性に近づけるというのは……」

土御門「簡単なことだ。『色々知ってた方』が、調べやすいだろ?」

DIO「ならば、それこそなぜ魔術だ? 私と魔術に何の関係が……」

土御門「おっとぉ! そろそろ面会時間が終了しちまうにゃー! 名残惜しいけど、そろそろ帰らせてもらうぜーー」

DIO「おい、待て」

土御門「あ、カミやんにはちゃんと連絡しておいたぜい? もちろん、色々ぼかしてだから安心してにゃー」

DIO「おい! ふざけるんじゃあないぞッ! オレの記憶がないのをいいことに、貴様は何を企んでいる!」

土御門「…………」



土御門「……他意はないぜ。本当に、重要なんだ。あんたが魔術を信じるか否か、魔術の存在を『認める』か『否定する』か。
それだけで、あんたが『どっち』側の人間か、目星が付くかもしれないからな」


ガラガラガラガラ、ピシャン


DIO「……くそったれ。この狐め」


コンコン

ガラガラガラ


カエル医者「やぁ、気分はどうかね?」

DIO「最悪だ」

カエル医者「そうか。私は気分がいいよ? なぜなら、ようやく君のカルテに名前を書き込めたからね?」

DIO「……」

カエル医者「それ以外、何も思いだせないかい?」

DIO「……DIOという名前自体、たまたま見つけたイヤリングに刻まれていただけだ。他に至っては、さっぱりだ」

カエル医者「それは残念だね。でも、記憶喪失は永久ではないからね。いずれ、取り戻せるよ?脳細胞でも破壊されない限りは……」



カエル医者「しかし君もあれだね? 退院したと思ったらすぐに戻ってきて。上条君と同じだ」

DIO「……フン」

カエル医者「もしかして君、ナース属性かね?」

DIO「……何の話だ」

カエル医者「君も違うみたいだね……。さて、そろそろ本題に移らせてもらうよ」

DIO「本題?」



カエル医者「……寝ている間に、君の身体を調べさせてもらったよ」

DIO「!!」


カエル医者「君がここに運び込まれて来たとき、私は不思議に思ったよ? 確かに君のズボンにはおびただしい量の血がしみ込んでいた。
      けど、その肝心の血の『出どころ』がどこにも見当たらない……傷口がなかった」

DIO「…………」

カエル医者「最初に君が上条君に運び込まれてきたときも、それは目に見えてひどい怪我だったよ?
      だけど、まず失った血を補給するために君に輸血したら、なぜかその日の夜には見違えるように体が回復していたんだ」

DIO(同じだ。あの日の夜の、私の左足の時と……)



カエル医者「私は、まず君の能力によるものかと考えたよ。
      そしてAIM拡散力場計測装置を使い、君のAIM拡散力場を調べた」

DIO「AIM拡散力場? すまないが、ここの専門用語はまだ把握していなくてね。説明してくれると助かるのだが」

カエル医者「おや、知らないかい? 簡単に言うと、能力者が無自覚に放つごく微弱な波長のようなものだね。
      たとえば電撃使いなら、その体から常に微弱な電波が放出され続けている。意識して消すことは難しいね」

DIO「……なるほど、理解した。それで、それが私にもあるのか調べたということか」

カエル医者「無断で調べたりして、すまなかったね。それで結果だが……」

DIO「…………」



カエル医者「……君からは、AIM拡散力場は計測されなかった。君は紛れもなく無能力者、それも開発もされていない純粋な、だね」

DIO(馬鹿な……。では、あの夜のアレは何だったのだ……?)



カエル医者「だけど、それ以外にも『二つ』分かったことがあるんだね」

DIO「……何が分かった」


カエル医者「まず一つだ。これを見てくれるかね?」ピララ

DIO「……何だ、これは。脳の、写真?」

カエル医者「君の頭をCTスキャンにかけて、全方位から写真にしたものだね」

DIO「……そのCTというのは分からぬが、まさか己の脳を見ることにはなるとはな。笑えぬ話だ」

カエル医者「実際、気持ちいいものではないからね。ではDIO君、右の写真を見てくれるかい?」

DIO「これが私の脳か」

カエル医者「いや、これは一般的な人間の脳だね? 君じゃないよ?」

DIO「……なぜ、そんなものを見せる。他人の脳など、それこそ見せられてもいい気分などしないものだが」

カエル医者「……で、これが君の脳だよ」

DIO「…………だから、どうした」

カエル医者「一見すると、どこも変わりないように見えるね? でも、医学に精通する僕から、あえて言わせてもらうよ?」



カエル医者「君の脳は、異常だ」



DIO「……何を言っている。記憶を失っていることと、関係があるのか?」

カエル医者「ここと、ここ。ここに、ここ。それと、ここも。こっちもだね。あと、ここ二つ。そして、これとこれ」

DIO「医者。お前、何に丸をつけている?」

カエル医者「よく見てくれ。僕が丸を付けた個所、こっちの一般的な脳と比べて、何か差異はないかい?」

DIO「……これは。丸のついた部分が、へこんでいる?」

カエル医者「そうだね。でも、これはそういう生易しいものじゃない」





カエル医者「おそらくだけどね、DIO君。君の脳は、一度何かに貫かれている」


DIO「何? おかしいな。今、お前はなんといった?」

カエル医者「僕は、患者に嘘を吹き込むことはしたくない。だから、より懇切丁寧に言い直そう」

カエル医者「君の脳は、何か針のようなもので外部から強く押され、刺されている。それも10ヶ所。主に前頭葉に集中しているね」


DIO「馬鹿なこと言うな。筋肉や頭蓋骨ならまだ通じそうな冗談だが、これは脳だぞ? 古来の中国医学では、鍼で経穴を刺激して経絡を開き、
  体を循環する気の流れ正常にする鍼治療という治療法があるとは知っている。本当に気などあるのか、疑わしいものだが。
  だが、それは『表皮』を刺激するものだ。間違っても脳ではない」

DIO「第一、これほど脳をへこませる一撃を受けているのなら、私は今頃カビ臭い墓の中だ」

カエル医者「僕もそう考えたよ。でも君の言うとおり、君はこうして呼吸をして僕の目の前にいる。常識的に考えても、これだけの傷を脳に負え      ば最悪、即死……いや、良くて即死だ」

DIO「…………」

カエル医者「そして、この凹みは必ず脳のある部分を捉えている。例えばここは運動野と言って、人間の運動と特異的に関係するんだね」

カエル医者「ここは視覚野、この部分は聴覚野。それにここは……」



DIO「医者。結論を言え。私は、どうなっている」

カエル医者「…………」

DIO「私の身体は……」




『……銃撃された傷跡が……なくなっている……!?』




DIO「……ッ! 私は、普通の人間ではないということなのか!!」

カエル医者「……そう、なるね」

DIO「!!」

カエル医者「これらの凹みが原因かはわからない。けれど今の君は新陳代謝が異常に高い。それこそ、少し血液を補給しただけで体組織が一晩過      ぎで完治してしまうほどにね。もはやこれは回復ではなく、『再生』と言い換えてもいいかもしれないね」

DIO「再生……」



カエル医者「これは、現代の医学技術では説明できないことだ。世界で最も脳医学の発達しているこの学園都市をもってしても、
      この僕をもってしても。この凹み、原因、理由……そして今君が生きているということ自体、悔しいことだけど、
      まさに非科学的(オカルト)になってしまうんだよ」

DIO「…………フッ、非科学的(オカルト)か。さしずめ私は、生きた悪霊といったところか」

カエル医者「……もう一つの方は、聞く勇気はあるかい?」

DIO「…………」

カエル医者「今、君は戸惑っているだろう。無理もない、僕自身こんなカルテは初めてだ。当人の君はもっと困惑しているだろう。
      だから僕は忠告しておくよ。今の精神状態の君は、『もう一つ』は知らない方が良い」

DIO「…………」

DIO(私は…………)





DIO(まだ、人間のままだろうか)

ひとまず今回はこの辺まで。べ、別に書き溜めが切れたわけじゃないんだからね!?アセアセ
とりあえず、DIOは自身がまだ種族:人間だと信じているということを補足しておきます。
ちなみに、今回は要所要所の行のスキマを多くしてみました。
この方が圧迫感がなくてスッキリ、だと思ったのですが、どうでしょうか?ついでに行数稼オホンオホン

それでは、質問やご指摘、文章の改善点などありましたら遠慮なくご意見ください

気がつけば100レス行ってることに驚きました。意外と速いものですねぇ……これも皆様のおかげです
これからもビシバシ書き込んでくれるとうれしい限りです、内容はもちろん何でも、です。

様々なご意見ありがとうございます!
姫神はまさにDIOの天敵になってしまうので、あまり接触する機会は多くはしないつもりです。
DIOととある世界の吸血鬼は別の存在だからOK、って案もあるにはあるのですが

また、DIOの脳と都市の脳開発の違いですが、簡単に言うと『DIOの脳は最新鋭の科学的手法では再現できない=普通なら死んでる改造方法』
と私は解釈しております。能力者は科学的手法によって人間を「SYSTEM」へ到達させるための理論に基づいていますが、DIOの場合はそれらとは
全く違う技法で脳が開発?されています。そのため、科学サイドからしたらDIOの脳の状態は『説明できない未知そのもの』であるわけです。
つまり未知=非科学的、ということになり、神秘等の類を一切否定する学園都市にそれらの資料などあるはずもなく……ということです。

まとめると、DIOの脳異常と学園都市の脳開発は全くの別物だから多少強引でも許してちょ! ……いや、ほんとすんません

~★同日、夜★~

DIO「…………」



カエル医者『すまないね。いきなりこんな残酷なこと、記憶のない君につきつけたくなかったんだけどね……』

カエル医者『でも、『こっち』だけは君は知っておかなければならないような気がしたんだね。
      『もう一つ』は、君が落ち着いたときに改めて話すよ。もう一つはまだ、調べ足りないこともあるからね?』

DIO『……脳に関する本はあるか。それと、能力者に関する本も貸してもらいたい』

カエル医者『構わないが……何のためにだい?』

DIO『自分の脳だ。ある程度、新たな知識は蓄えて理解度は含めてもいいだろう。
   能力者については、ここで暮らすために必要な知識だと判断したからだ』



DIO「……フン」ピラ

DIO「能力者というのも、結局は私のように脳を無理やり弄繰り回されて生み出しているではないか。
   錠剤や粉末剤等の薬物投与、科学的根拠に基づいた催眠術による暗示、電極を耳に突っ込んで直接的な電気刺激……。
   能力開発とは名ばかりの、ただの人体実験はなはだしいことだ」

DIO「そして能力者は開発によって得た演算能力と『自分だけの現実』により、物理的法則を捻じ曲げて超常現象を引き起こす……か。
   ようは、ここに住む学生……230万人だったか? いや、これは総人口か。その八割というと……約180万人か」

DIO「とにかくそいつら全員がこの学園都市の被験者、というわけか。都市とは名ばかりの、陰謀と欲望がひしめく箱庭だな」

DIO「裏が見えてきたか、学園都市。いや、こういう情報を大っぴらに公開しているあたり、これはまだ表かもしれぬ」



DIO「…………」パタン



DIO「何が違う。この180万人の学生共と、私は」







『私が……跳び過ぎているのか、これはッ!?』







DIO「私と、能力者(おまえら)は……」







『……君からは、AIM拡散力場は計測されなかった』







DIO「オレと、一般人(おまえら)は……!」







DIO「このDIOは、人間(お前ら)とは何が違うというのだッ!!」


DIO「……チッ。柄にもないことをしてしまった」

DIO(……一つ、疑問に思っていたことがある。私の首には、まるで首輪のように一周した傷がついている。)

DIO(認めたくはないが……ええい、この際認めよう! 私に異常な再生力があるにも関わらず、だ。
   左足は完治した、全身の大怪我も一晩で回復したらしい。だが、なぜこの首の傷は一向に治らない?
   何が違う? 怪我の質か? それとも、もっと別の理由があるのか?)

DIO「…………まあ、どうせ大したことではないだろう」



DIO「……ム?」

DIO「……こんなところに、傘などあったか? それも日傘だ。センスからして女性ものだが……それが余計に奇妙だ」

DIO「……! こっちにもいつの間にか何かあるぞ! これは、缶ビールか? まだ封も切られておらず、よく冷えている。
  その隣にあるのは、ラジオ……そして懐中時計だ。こんなもの、ついさっきまでは確かにこの病室にはなかった」



DIO「……何が起こっている? なぜ物が現れた? それもどこからともなく、全くの人影もなしにだ。
  透明なデリバリーサービスとか、そんなくだらんものではない。
  何か、とても気がかりな現象だ……。幽霊でもこの部屋に憑りついている、なんて馬鹿な話じゃないだろうな?」



DIO「……しかし、私に直接的な害はないと見た。薄気味悪いことに変わりはないが、既に自分自身に不気味さを感じている。
  手一杯だ、今日はもう」

DIO「誰だか知らんが、こんなことで私にちょっかいかけるつもりなら止めておけ。
  ……もっとも、今声が聞こえているのかすら怪しいものだが」









カエル医者「…………」

カエル医者「彼が、前に運び込まれたときに検査した脳波。あれが異常を示していたのは、記憶喪失ではなくこの凹みが原因かもしれないね」

カエル医者「…………」

カエル医者「それよりも、もっと奇妙なのはこっちか」ピラ

カエル医者「彼のIDを照合するために、頭髪と指先の皮膚からDNAを採取した。ここまではよかったね。恐ろしいのは、その結果だった」

カエル医者「どちらも、学園都市のバンクには存在してはいなかった。つまり彼は、学園都市の外から来た人間ということは確定となる。
      ……だが、重要なのはそこではない」






カエル医者「頭髪から検出されたDNAと、皮膚から検出されたDNA……この二つが、どう照らし合わせても全く一致しなかった。
      なぜ? DIOという一人の人間から、なぜ『二人分のDNA』が検出されるのか?」

カエル医者「…………考えたくはないが、彼の首の傷は……」

カエル医者「……いや、よそう。彼が何者なのか、この際関係ない。彼は僕の患者で、僕は彼の医者だ。それ以外の何者でもないじゃないか」

カエル医者「それに、彼は人間だ。ああして息をして、会話ができて、ショックも受ける。
      紛れもない人間だ。洒落にもならないことを口走ろうとするんじゃない」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


カエル医者「……DIO君。君には、この学園都市はどう見えているんだい?」

~★~

DIO「……目覚めてから一日で退院か。つくづく化け物だな、この再生力は」

DIO(結局、昨夜のあの怪奇は何だったのか。原因は分からんままだが、あの部屋から離れればもう起こりはしないだろう。
 ちなみに物品はすべて窓から捨てた)


DIO「……しかし帰り際にあのジジイから聞いた、IDカードの正体。
  簡単に言えば、それがなければこの学園都市で過ごすのはかなり厳しいようだ」

DIO「……そういえばツチミカド、だったか。奴が色々尋ねてきたのも、そのIDカードで私の情報を調べられなかったからか?」

DIO「まあ、どうでもいい。今は午前の10時24分。当麻は……どうせ補講だろう。学問の街で学問不足とは、本末転倒だな」

DIO「……今、寮に戻る理由はないな。このまま都市の見物にでも洒落込むのも、悪くはないか?」

DIO「……第十学区に寄らないように、だが」



DIO「…………」

佐天「ふんふふんふーん。って、あれ? あのでっかいシルエットはもしかして……DIOさん?」

佐天「お―い! DIOさーん!」

DIO「……?」

DIO(誰だ……ああ、あの時の。花じゃない方だから、名前は確か……)

DIO「……サテン、ルー?」

佐天「であっ。涙子です! 佐天涙子、覚えててくださいよー」

DIO「人の名前を覚えるのは苦手でね」

佐天「絶対嘘です……まあいっか。しかし、こんなところで何を?」

DIO「……なあ、佐天。この建物なのだが……」



佐天「これ……コンビニですが、どうかしましたか?」

DIO「コンビニ、初めて耳にする名だ。して、このコンビニというのは何が目的の建物だ?」

佐天(コンビニを知らないって……昔のギャグ漫画の田舎者じゃあるまいし。
   あ、でもDIOさんって外人っぽいし、外国だとコンビニって文化がないのかな?)

佐天「えーと、簡単に言うとですね。雑貨店みたいな感じですよ。食べ物やら本やら、色んなものが置いてあるんです」

DIO「なるほど……やはり知らないな」

DIO「……佐天涙子」

佐天「何でしょうか?」

DIO「君は、今日は時間があるだろうか。よければ、この学園都市を私に案内してもらいたいのだが……」

佐天「え? 案内?」

DIO「この前の続き、と解釈してくれて構わない。ただし、この前とはもっと別のことが知りたくてね。例えば、こういうコンビニだとか」

佐天「いいですよ! 実は今日、初春……あ、この前の私の友達です。その子が風紀委員の会議だとかで遊べなかったんですよね」

DIO「風紀委員、か。彼女らも、日頃の安全のために大変なのだな」

佐天「よし! それじゃあ行きますか! どこから回ります?」

DIO「君に任せるよ、佐天」

佐天「わっかりましたー」


佐天(……あれ? DIOさんと二人であちこち回るって……これじゃあまるでデートみたいだ)

佐天(ッ! やだ、何考えてるのよ私! 違う違う、そういうんじゃない! もぉー、なんだかこの人の前だと調子狂うなー)

DIO(……いきなりクネクネと体をもたつかせているが、これも学園都市特有の何かなのだろうか)


佐天「ほいじゃ、まずはここです」

DIO「……ずいぶんと豪勢な学校のようだが」

佐天「ふっふっふ。DIOさん聞いて驚くなかれ。この建物こそが! この学園都市の中でも五本に入る名門校かつ、世界でも有数のお嬢様校!
   聞いて驚くなかれ、これこそが『常盤台中学』なのです!!」


DIO「……ほお」

佐天「ありゃ、なんだか反応が薄い……。すごいんですよー、ここ。最低でもレベル3以上が入学条件で、知能、能力、権威、富。
   まさに勝ち組のみが門をくぐることを許される神聖なところなんですから(って初春が言ってたのを丸々パクって言っただけ)」

DIO「……勝ち組、か。さぞかしこの中には、自身の力にかまけてふんぞり返る傲慢チキがわんさかいるのだろうな」

佐天「そんなことありませんよ! 良識ある人たちだってたくさんいますから!
   私の友達にも常盤台の人がいますけど、すんごく頼れて優しい人なんですよ」

DIO「どうかな。君と自身の差が絶対的に開いているから、君を警戒する競争相手ではないと判断して気楽になっているだけかもしれないぞ」

佐天「DIOさん! あまり私の友達の悪口言うの、やめてください! 嘘だと思うのなら、今度会わせてあげますよ!」

DIO「……好きにするといい。だがやはり、金持ちは好かん……佐天、次を見てみたい」

佐天「DIOさん、昔は貧乏だったのかな……あ、じゃあ次はあそこに行きましょう」



DIO「……ここは、セブンスミストだったか」

佐天「はい。でも、前は外観だけで中はちゃんと案内できなかったですよね。だから、今日は中に突入しちゃいましょうということです!」

DIO「……私は構わない」

佐天「よし! それじゃあ早速……」


ドン


佐天「うわっ!?」

「あ! 超ごめんなさい、でも今急いでるんで! あー、早くしないと映画の上映時間に超間に合わないーー!!」ピュー

佐天「いたた……急にぶつかってくるなんて危ないなー。身長からして小学生ぐらいかしら?」

DIO「大丈夫か?」

佐天「ええ、なんとか。うまい具合に壁があったので、倒れこまずに済みましたよ」

DIO「……わざわざ倒れるのを抑えてやったというのに、壁と呼ぶのはいささかいただけないな、佐天」

佐天「え?」クルッ


佐天「これ……DIOさんの、体?」

佐天「……わ、わ! あ、あの、すすっすっすみません!! DIOさんとは分からずに寄っかかっちゃって……」

DIO「そこまで飛び退くように離れなくても、これぐらいで癇癪を起すほど私は小さくはないさ。
  それよりも、早く中を案内してくれると嬉しいのだが」

佐天「は、はい!」

佐天(もぉー……なんか緊張というか、ドキドキして上手くコミュニケーションが取りづらいよ)



佐天(……DIOさんの身体、すごく逞しかったな)

今日はここまでになります。スレを更新するのに力などいらないのだよ!
しばらくはのんびり回になるでしょう。刺激的なものが見たいんじゃ!という方は今しばらくお待ちください……

皆様ご感想などありがとうございます!
ひたすらDIO様とかが無双していく方が多分人気とか受けはするんでしょうけども、この作品は私の自己満足なもんで。
なので、自由にやらせていただくぜ!
それと今回の絹旗みたいに、ストーリーにはあんま関係ないけど挟むような感じでキャラとかは出した方ええですかね?

おっしゃる通り、ところどころ八部を意識してます。陳腐な表現力ですが、なんとかあのミステリー感とドキドキ感を出したいものです!
紳士な性格は、いわゆる『外面』の顔です。その冷静さやダンディな態度などは単なる仮面にすぎねぇ!by石油王

それとにわかを脱するために、ひとまず原作を最初から新約10巻までそろえてきました。ssも二つ
これ読んでたりして、書き溜めとか更新おろそかになったら申し訳ないです。


DIO「ほう……さすがにこの規模というだけあって、かなりの衣服が収められているな。私も、これほどの衣服を目にするのは初めてだ」

佐天「何度も来てる私だって、いつも圧巻されますよ。男物、女物、幼児向け、アニメ柄、コスプレ用衣装、
   ちょっと独創的やらマニアックなものとか。服を買うなら悩む前にセブンスミストに行けばいい、って私の友達が言ってました」

DIO「しかし、私はひとまずこの格好で満足はしている。新たに何かを選ぶつもりはないし、そもそも私は今現金がない」

佐天「え!? 今までどうやってこの都市内で生活してきたんですか!? それとも、まだ外の通貨を両替していないだけとか」

DIO「……まあ、色々あってな」

佐天「色々、ですか……。でも、服は見て回るだけでも十分楽しめますよ! DIOさん、少しあちこちを見てみましょうよ!」

DIO「おい、引っ張るな」

佐天「ほら見てくださいよ、DIOさん! あそこにある服とか、奇抜なデザインで面白いと思いませんか?」

DIO「……どれだ? どれもこれも目に悪い配色ばかりで、目の奥が痛くなる」

佐天「あの黄色い奴とかですよ。あれ、すごいですね。ハートのデザインのベルトとか、なんか……アレが開きっぱなしのズボンとか。
   ああいう服、買う人はおろか着ようとする人なんていませんよねぇ。ね、DIOさん」



DIO「………………」

佐天「……DIOさん?」

DIO「……ん? ん、あ、あぁあれか。まあ、確かに異色なデザインで他とは一線を出しているが、
  あれは似合う者にこそ似合う、選ばれた服なのだよ。……たぶん、きっとな」

佐天「はぁ……(まさかDIOさん……? いや、そんなわけないか。だって、今着てる服のファッションセンスとは違いすぎるし)」

佐天「じゃあ次、二階行きましょう! 二階にはこれまたすごいコーナーがあってですね……」


DIO「…………私のセンスは、おかしいのか?」





佐天「どうでした、セブンスミスト! とくに三階の夏物ワンピースコーナーとか、
   今年も秀逸なモノが揃っていて、どれを買うか悩みましたよ!」

DIO「……楽しそうで、何よりだ」

佐天「あ、そろそろお昼の時間ですね。DIOさん、お腹とかすきました?」

DIO「……食べる分には構わない。が、私には通貨がない。通貨がなければ、食うものも食えんだろう。だから私は気にするな」

佐天「あー……そうでした。まいったなー。今月の残額だと、おごってあげられるだけのお金は残ってないし……」


ソーノーチーノーサーダーメー!! ジェーーーーージェッ!!


DIO「……何だ、この音は」

佐天「あ、私のケータイだ。誰からだろう……って白井さんだ。もしもし?」

DIO(ケータイ……手のひらに収まり程度の箱に見えるが、あれで電話だというのか? これも学園都市による最新鋭の技術力か。たまげたものだ)


佐天「……分かりました、了解、イエッサー! え? 言ってみたかっただけですよ。それじゃ、今からそっちに向かいますねー!」ピッ


DIO「驚いた。そのケータイというもの、それほどのコンパクトさでありながら電話と同じ機能を備えているとは。
   つくづく便利になったものだな」

佐天「えー? このご時世、このガラパゴスケータイなんて学園都市の外でさえ遅れ気味ですよ。皮肉はやめてくださいよー、DIOさん」

DIO「!? ば、バカな……!?」

佐天「そんなことより、朗報です! なんと、さっき案内した常盤台の友達がご飯を奢ってくれるそうですよ! もちろんDIOさんの分まで」

DIO「! 常盤台か……」

佐天「あ、不満そうな顔してますね。いいから会ってみてくださいよ! 絶対DIOさんのイメージが払拭されますから! 色んな意味で」ボソッ

DIO「……わかったよ。それで、場所は?」

佐天「ファミリーレストラン、ジョナ……じゃなかった。ジョセフってところです。さ、行きましょ行きましょ!」

DIO「ジョセフ……か。なんだかムカっ腹の立つ名前だな」





佐天「白井さーん! 初春――!」

初春「佐天さん! 朝はすみません。急な会議で私も慌てていて……」

佐天「仕方ないよ、風紀委員なんだしね。あ、白井さん。この人がさっき電話で伝えたDIOさん!」

DIO「初春、だったね。あの時は世話になった」

初春「いえいえ。佐天さん、迷惑かけたりしませんでしたか?」

DIO「心配することはない。逆に、彼女には色々面倒をもてもらっていた方だ。そして……」



黒子「あなたが、佐天さんと初春さんがおっしゃっていたDIOさんですわね?」

DIO「……そうだ」

DIO(こいつが常盤台中学の、お嬢様とかいうブランドもののガキか。なるほど、確かに作法や口調は叩き込まれているように見える。
   そのお飾り具合が、余計に浮いてるものだが。しかし、はて。このガキどこかで見たな……)

黒子「……一言おっしゃるなりわたくしの顔をじっと見つめていますが、わたくしの顔に何かついてますの?」

DIO「……いや、君をどこかで見たような気がしてね」

佐天「あ、もしかしてあの時じゃないですか? ほら、七日前に発火能力と部分硬化の能力者が問題起こした時の……」

DIO「…………なに?」



『ここで暴れていると通報を受けてきましたの。よくもまあ、白昼堂々とみっともない喧嘩ができるものですのね』



DIO「……そうか。あの時の瞬間移動の使い手か」

黒子「あら、貴方もあの時いらしていたのですか? もう一週間も前になりますけど、よく覚えていてくださりましたわ。
   申し遅れましたわ、わたくし、白井黒子と申します。以後お見知りおきを。
   ちなみに、細かいこと言うようですが、わたくしの能力は瞬間移動ではなく『空間移動』。まあヒラメとカレイぐらいの違いですが」

DIO「『空間移動(テレポート)』、か。訂正感謝願いたいが、超能力というのに私は疎くてね。
   私からしたら、どっちが右向きでどっちが左向きかも分からない」

黒子「あら、そうでしたわね。まあ深く考えなくても問題ないですわよ?」

DIO「……そうさせてもらう」


佐天「それじゃあ早速ご飯食べましょう! ほら、DIOさんも席について」

DIO「う、うむ」

初春「佐天さん、青春ですねー」ポワポワ

黒子「…………」

黒子(わたくしと一言言葉を交えたその一瞬あと、彼……DIOさんの瞳が一瞬切り替わったように見えましたわ。
   あの時の目は、そう、まるでスキルアウトのように落ちぶれ、しかもより一層ドス黒い悪のような。
   でも、今この方からはそんな感じはしないし……)



初春「白井さん? どうかしましたか? なんだか顔が般若みたいになってますよ?」

黒子「へ? って誰が般若ですの!」バチコン

初春「痛っ! そんなメニューの角で殴らなくったってぇ」

黒子「考え事ですわ。ちょっとした考え事」


DIO「……シライ、クロコ」

黒子「(ドキッ!)な、なんでございましょうか?」

DIO「…………」

黒子「…………」ドキドキ







DIO「そのメニューを返してくれなければ、私は食べたいものを選ぶことはできないのだが」

黒子「……あ。し、失礼いたしましたわ!」サッ

佐天「私これにします! DIOさんは?」

DIO「……少し黙っていてくれないか。耳元で騒がれると頭に響く」

黒子「……はぁ。やっぱり、考えすぎでしょうか」


佐天「ハム……ん~、おいしい! この新商品の納豆風味ハンバーグ、意外といけるものね」

黒子「よくもまぁ、名前からして初心者お断りみたいな品に躊躇なく手を出せますわね。DIOさん、そちらのお味は?」

DIO「……お味も何も、ただのフライドポテトだ。腹の足しになる、というくらいか」

DIO「このケチャップは気に入ったがね」ブチュルブチュル

黒子「お、お気に入りになったとはいえ、それはかけすぎでは……」


佐天「そうだ初春、白井さん。今朝は会議とか言ってましたけど、また何か事件でもあったんですか?」

初春「あ、はい。といっても、そこまで大事ではないんですけどね」

黒子「昨夜、複数人の方から一斉にある電話が届いたのですわ。その内容は『知らない間に何者かに物品を盗られた』、というものです」

佐天「それ、ただのスリとかじゃないんですか?」

黒子「ところがそうは行きませんでしたのよ。被害者の方々が言う物が消えた時刻、おおよその犯行時刻がほぼ同時なのですわ」

佐天「それって、つまり……」

初春「ほぼ同じ時間に、複数の人の物が一斉に盗まれたということです。
   共通しているのは、その人たちが深夜ある病院の近くを通ったということだけ」

黒子「能力者、それも完全に姿を眩ますことのできる光学操作系47人の誰かによる犯行と思ってバンクで検索してみましたの。
   けれど、47人全員がその時間にはアリバイがありましたわ」

初春「やっていることは小規模ですけど、その足取りがつかめなくて……大きな犯行に出られる前に特定をしなくてはなりません」

佐天「うーん。その犯人、すごいんだかセコいんだか読めないやつだなぁ。DIOさんはどう思います?」



DIO「…………私に振られてもな。言っただろう。私は外から来た人間、ここの考え方にはまだ染まっていない」

佐天「あ、そうでしたね。早くしっぽ見せるといいですねー、その犯人」

DIO「…………」

DIO(昨夜のアレ……いや、まさかな。第一、なぜ盗品を私のもとにおいていく必要がある? 
   私に罪をなすりつけるためか? それじゃあ、そもそもなぜ物を盗む?)

DIO「…………まあ、私には関係ないだろうが」


とりあえず今回はここまで。うーむ、自分でもなかなか話が進まないと難儀しております。まあ私の書く時間がないだけなんですけども。
では、ちょくちょく出すつもりのなかったキャラを挟んでいこうと思います。場合によってはその人主体のアドリブ回もつくるかもです。

様々なご感想などありがとうございます!

スタンドは精神力の強さ、闘いの本能で行動させますよね。
おっとりはしていませんが今のDIOは記憶がないために、彼の分身を操れるほどの圧倒的な精神力……パワーがない!ゆえに、彼の悪霊はDIOのコントロールを離れ一種の暴走状態になっています。
そして暴走状態になったスタンドは本体にどう影響していたか……ここは追々、たどっていきましょう。もっとも、それだけが理由とは限りませんが……


初春「そういえば、今日御坂さんは?」

佐天「あ、それ私も気になってました」

黒子「あ、お姉様ですか?」

DIO(まだいるのか? 子供三人相手ですら面倒だというのに。おまけにお姉様ときたか。
   さらに気取った小娘がいると思うと、頭が痛くなってくる)

黒子「何でも、ちょっと用事があるとか。お姉様をお誘いできなかったのは残念でしたけど、お姉様の用を妨げるわけにもいきませんしね」

初春「用事ですか。何なんでしょうね?」

佐天「ま、御坂さんなら何があっても心配ないですよ。なんたって御坂さんなんですからね」

DIO「……随分、その御坂という友人を信頼しているのだな。そんなに腕が立つのか?」

黒子「当っ然ですわ! お姉様こと常盤台の超電磁砲(レールガン)、レベル5の序列第三位の御坂美琴お姉様が、
   何でもない用事くらい小指一本でこなしてみせますの!」

佐天「流石に小指一本じゃ御坂さんも……できる奴はできるか。うへぇ、改めてすごいと思った」

DIO「……何だかよく分からんが、とりあえずいらぬ心配だということは伝わったよ」

初春「あ、DIOさんは外から来た方でしたね。だったら第三位という意味もよく分からないですし、教えてあげましょうか?」

DIO「それは心嬉しい。是非とも頼むよ」


初春「まず、能力者には六つの段階があるのはご存じですか?」

DIO「うむ。ほぼ微々たる干渉しかできぬレベル0から、一人で一軍隊をも壊滅できるほどの力を有するレベル5の六段階だろう?」

佐天「あはは、耳が痛い……」

黒子「ちなみにわたくしはレベル4、初春さんはレベル1ですわ」

DIO「レベル4……すごいじゃあないか。もう少し気張れば、レベル5になるんじゃあないか?」

黒子「そう簡単にあげられるものなら、今頃大能力者がごろごろいますわよ?」

DIO「……それもそうか」


初春「それで、そのレベル5というのはこの学園都市内でたったの七人しかいないのです。御坂さんはその七人の中でも三番目、第三位の位についているんです」

DIO「その位の基準は、単純な能力の強力さで測るのか? それとも応用性や人間性も含めてか?」

初春「そこのところは、まだはっきりとは……。でも、いずれにせよ七人各個に順位なんてあまり関係ないような気もします。
私たちからしたら、適う敵わない以前のレベルではないですから。アリが恐竜に挑むみたいなものです」

DIO「レベル5。七人の超能力者たちか。あまり出くわしたくないものだ」

佐天「あ、白井さん。さっきの物品窃盗の話、ネットにも上がってましたよ。被害者が増えたわけじゃなさそうですけど、
   幽霊の仕業だとかで盛り上がっていて『幽霊泥棒(ゴーストハンター)』事件って名づけられてますよ。毎回誰が名前つけてるんだろ?」

黒子「幽霊だなんて、馬鹿馬鹿しいことこの上ないですわ。れっきとした生身の人間が行った犯行に違いありませんの」

佐天「科学の街に幽霊……なんだか浪漫を感じる!」

DIO「……まあ、頑張れよ。風紀委員」

~★~

佐天「ごちそうさまでしたっ! いやー、白井さん太っ腹! 日本一! 白井お姉様!」

黒子「わたくしがお姉様だなんてとんでもないですわ! お姉様に言いなさい、お姉様に!」

DIO「いつもこうなのか?」

初春「はい。いつもこうなのですよ」

DIO(…………常に大声を出していないと死ぬのか?)


初春「それより、これからどうします? DIOさんは佐天さんに色々案内してもらっていたそうですが……」

DIO「……ん、あぁ。私は大丈夫だ。君たちの好きなようにしてくれ」

黒子「そうですわね……」


ハナテ ココローニキザンダユメヲー ミライサエオーキーザーリーニーシt ピッ


黒子「はいもしもし、白井ですの。……はい、分かりました。すぐ向かいますわ」ピッ

初春「白井さん、事件ですか」

黒子「ええ。花崎駅前でチンピラが暴れているそうですわ。というわけで佐天さん、DIOさん。急用ができたので、わたくしたちはこれで失礼します!」

佐天「がんばってくださいねー」

黒子「すぐに片付けますわ。では」ピシュン

DIO「……ほう。間近で見てもすごいものだな、空間移動というのは」

初春「白井さんずるいですよー!」タッタッタ

DIO「……一人しか行けないのが難点か?」


佐天「……で、どうでしたDIOさん」

DIO「……何がだ」

佐天「白井さんですよ。DIOさんがあれほど毛嫌いしてた常盤台の生徒、勝ち組でお嬢様。
   そんなステータスはありますけど、彼女のことは嫌いですか?」

DIO「……わかった。わかったよ、私の負けだ。確かに、彼女はそれほど抵抗感なくなじむことができた。
   君に言われるまで、彼女がその常盤台のお嬢だということを忘れていたほどにな」

佐天「でっしょう! だから、DIOさんもあらぬ偏見思考はよくないですよ。物事はいろんな視点から、色んな可能性を考えて見なくちゃいけませんからね!」

DIO「……是非とも、見習わせてもらうよ」


DIO(……確かに、予想よりもかなり砕けた態度だったのは少々意外だな。だが、勘の鋭さも高そうだ。
   一度、私を見定めるように目を細めていた。私の本質を探るような、疑惑の瞳だ)
 
DIO(なるべくなら、白井には近づかない方が得策か。『幽霊泥棒』の参考人とか何とかでしょっぴかれて、
   そこで色々発覚というもめ事は避けなければならんしな)


佐天「それじゃ、DIOさん。私たちはどうします?」

DIO「うむ。もっと見て回りたいところだが、今日はこのくらいで大丈夫だ。ありがとう、佐天」

佐天「い、いえいえ! お役にたてて光栄ですよ。こんなことでいいのなら、また頼ってくださいな」

DIO「それは頼もしいな。ではな、佐天。今日は非常に楽しかった。例の事件、巻き込まれぬようにな」

佐天「はーい、あまり首突っ込まないようにしまーす。それではお気をつけてー!」



DIO「……『幽霊泥棒』か」


今日はほとんど時間取れなかったためこれだけです。申し訳ない……更新しないか悩んだのですが、とりあえずはできる分だけやっとこうと思い。

原作を読む時間やレポートなどの時間も作ってるので、しばらくは更新できる日が少ないかできても短いばかりになるような気がします。それまで、アイデアなど練り直しながら隙を見つけて書いていこうと思います。

皆様様々なご意見ありがとうございます!姫神、もちろん出ますよ。まあ機会は少ないですけどね

この作品のDIOは、普段の表面上の紳士的な態度は六部と三部序盤の影DIO、戦闘時は三部後半のテンション。
そんでもって本性は、一部のあの未完成感のすごいディオの三つで構成されております。どれだけ取り繕っても、三つ子の魂百までって奴です

佐天さんチームになった理由はまあ色々あるんですが、一番大きいのは「私がにわかだから」です。今原作読んでますけどね?
下手に麦野組やネセサリウス側などの把握してない組と組ませるよりも、断然ヴィジョンが思いつきやすいというか。癖がないんですよね

~★病院前★~

DIO「……戻ってきたところで、何かあるわけでもないが。やはり少々気になるものだ、勝手に巻き込まれた身としてはな」

DIO「マヌケにも証拠は残してはいないだろうか? 見つけたところで、別にどうというわけでもないのだが……」


「こんなところで何をゴソゴソしてるのですか、とミサカは若干怪しげにあなたに問いかけます」

DIO「……すまないが、もう一度言ってくれないか?」

「お望み通り。こんなところで何をゴソゴソしてるのですか、とミサカは再度あなたに質問します」

DIO「…………」

DIO(いや、流石に……)


DIO「馬鹿にしているのか?」

10032号「尋ねただけでなぜ反感を買うのでしょうか、とミサカは理解不能に陥ります」

DIO「お前、頭脳がマヌケなのか? お前のその、無駄に喋り辛そうな無理やりな口調は何なんだ?」

10032号「別に何の問題もないと思います、とミサカは細かいところ気にするあなたを少し神経質だと感じます」

DIO「…………もういい。何でもない、忘れろ。それで、私が何をしていたかって? まあ、落し物だ」

10032号「私も手伝いましょうか、とミサカは心優しい善意で話しかけます」

DIO「いや、いい。気にするな。見つかるかすら怪しいものだ、見ず知らずの君が関わるものではない。
   その立派なゴーグルでも意味ないかもしれんな」

10032号「一人よりも二人の方が楽に決まっています、とミサカは突っぱねるあなたに作業効率の違いを伝えます」

DIO「だから人の話を……ヌ?」

10032号「突然私の顔を見て止まるとは、もしかして一目ぼれですか、とミサカはあなたをからかいます」

DIO「論外だ、十年後に出直してこい。それよりもお前、当麻を追い回していたビリビリ女か?」


10032号「ビリビリ女とは御坂美琴お姉様のことでしょうか、とミサカはコトンと首を傾げます」

DIO「御坂……美琴?」

10032号「あなたの言うビリビリ女が私と瓜二つの容姿で気の強い性格だったのなら、その方は紛れもなく御坂美琴お姉様で間違いないでしょう、とミサカは自信満々に胸を張ります」


DIO「御坂美琴……常盤台中学の生徒で、レベル5で、第三位だったか。ん、待て。その口ぶりからすると、君は御坂美琴ではないのか?」

10032号「はい。私は美琴お姉様のDNAマップから製造された、検体番号ミサカ10032号です、とミサカは懇切丁寧に説明します」

DIO「クローン……この都市ではそんなこともできるのか。つくづく恐ろしい技術力だ。それで、そのクローンはここで何をしているのだ?」

10032号「リハビリがてらに散歩をしていたら、病院前で不自然な挙動をしていたあなたがいたので近寄ってきました、
     とミサカはあなたが怪しいと思っていたことを告白します」

DIO「別に私のことはどう思ってくれても構わないが。もういいだろう、早く散歩に戻ったらどうだ」


10032号「……あなた、今日まで病院にいた人では? とミサカは記憶の中からあなたの姿を思い出します」

DIO「それがなんだ。病院の一回や二回、世話になるくらい当然だろう」

10032「……失礼ですがお名前をお伺いしても、とミサカは自ら名乗った返しをあなたに求めます」

DIO「……やはりその口調、どうにかならないのかね」

10032号「他人にとやかく言われる筋合いはないです、とミサカはしつこいあなたをじっと睨みます」

DIO「……私の名はDIOだ。これでいいだろう」

10032号「DIO……」



『失礼いたします。本日のリハビリのカリキュラムをうかがいに参りました、とミサカはドアをノックして部屋に入ります』

『ああ。君か。今片づけるから、ちょっと待っててね?』

『ずいぶん広げていますね、とミサカは興味津々でそのカルテを覗き込みます』

『こら、人の診断内容を覗くもんじゃないよ?』

『…………これは……』

『今、少々特殊な患者さんがいてね? でも、君には関係のないことだから、好奇心で話しかけたりしては駄目だよ? 彼は今、繊細だからね?』

『……了解しました、とミサカは肯定の意を伝えます』

『……DIO、ですか』



10032号「そうですか、あなたが……」


DIO「……どこかで会ったかな?」

10032号「いえ、一方的に知っているだけです。それに顔を合わせるのはこれが初めてです、とミサカは手を横に振ります」

DIO「一方的に、か。私の病室でも覗いていたのか?」

10032号「似たようなニュアンスです、とミサカはそのような行為はしないと断言します」

DIO「ああ、そうか。では、私はもう行くよ。探し物も見つからなかったし、ここに長居する必要もなくなったからね」

10032号「待ってください、とミサカは背中を向けるあなたに声を投げかけます」

DIO「……まだ何か?」

10032号「いえ、何かもなにも……」



10032号「――――私のゴーグルを返してください、ミサカはジト目で睨みます」



DIO「……何を言っている?」

10032号「とぼけるよりも自分の右手をご覧になっては、とミサカはその視線を右手に下ろします」

DIO「……っ! なにッ!?」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


DIO「ゴ、ゴーグルが……私の掌の中に……!?」


DIO「この無駄にいかついもの、間違いなくさっきまで目の前の彼女がつけていたもの……なぜッ!?」

10032号「私としたことが、いつ盗まれたのか察することができませんでした、とミサカは自身の反射神経の衰えに嘆きを覚えます」


DIO(察すれないのはこっちの方だ! 私はいつ彼女のゴーグルに手をかけた!? そもそも彼女のゴーグルを盗む意味があったか?)

DIO(否ッ! だとすると、なんだ? 私は無意識のうちに彼女のゴーグルを、両者の目にも止まらぬ手際でかすめとったとでもいうのか?
   それこそ有り得ん。まるで女教師のスカートを鼻水たらしてめくるクソガキのような発想だぞ!?)

DIO(もっといえば、私と彼女……ミサカとの距離感は目測で3~4メートル。
   当然、それほど遠くの距離にいる人間の頭上にあるものを前述の方法で奪うなど、いくら私が異常人とはいえできるわけがないッ!
   するはずもないッ! )

DIO(くそっ、何だというのだ。姿の見えない、まるで幽霊にでもからかわれたかのようなーーーー)





DIO「…………幽霊?」

本日の更新はここまでです。さっそくアドリブ回になってしもうた……本当は妹達は出すつもりはなかったんですがね
それと、なんだかんだ続けてきた毎日更新も今日でたぶん終わりです。そろそろ本格的に時間がないもんで……二日三日に一回のペースになりそうです


10032号「幽霊?」

DIO「いや、まさか……しかし、なぜ再び私に構う? 何かどこかで縁のあったものなのか? もしくは、悪質粘着野郎がどうしても私の仕業に仕立て上げたいのか?」

10032号「……何の話でしょうか、とミサカはさりげなくゴーグルを催促しつつ質問します」

DIO「……さりげないというのは、グイグイと物品を引っ張りながら言う単語だったかな。とりあえず帰そう、ほら」パッ

10032号「あ、ちょっといきなり離さないで、とミサカは崩れるバランスを整えきれずーーきゃん!」



DIO「ああ、すまない。そこまで強く引っ張っていたとは思わなかったよ」

10032号「……その言葉はどうも嘘くさく聞こえる、とミサカは疑いの目を向けます」

DIO「わざとかそうでないか、気にするところじゃないだろう。それよりも、だ。ミサカだったかな?」

10032号「正確には、検体番号10032……」

DIO「あー、そこは別にいいだろう。それで、ミサカ。君は、この病院で何か非科学的(オカルト)な噂話などを耳にしたことはあるか? たとえば、幽霊が出没するとかだ」

10032号「非科学的(オカルト)……この学園都市でそれを求めるのはお門違いだと思いますが、とミサカはあなたの頭の状態を心配します」

DIO「……聞いたことがあるのか、ないのか。私が知りたいのは、この質問に対する君の『YES!』か『NO!』の二つの言葉だ。さあ、どっちかね」



10032号「……答えは『NO』、とミサカは首を横に振ります」

DIO「……そうか。助かった、どうやら私の落し物は、君のおかげで見つかる道が切り開けそうだ。思いもよらないものだ、君との偶然の出会いでこうも転がるとは」

10032号「私が何かしましたか? とミサカはあなたの意味深な言動が理解できません」

DIO「分からなくてもいいことだ。それでは、私は行くよ。もうここに長居も無用だ」

10032号「そうですか」

DIO「君のゴーグル。また盗られないように気を付けたまえ。案外、幽霊がそれを狙ってくるかもしれないからな。ではな、ミサカミコト」

10032「……それは私の名前ではないのです、とミサカは口を尖らせて愚痴ります」


10032(……DIO。やはり普通の人間にしか見えませんが……なんでしょうか。完成させてはいけないパズルのような……欠けてようやく正常?
彼は、完成してはいけないような気がします。根拠も何もない、私『個人』の感想ですが……『私』としての意見はどうでしょうか)


DIO「…………」カツカツカツ

DIO(一つ、はっきりとしたことがある。例の『幽霊泥棒』は、あの病院自体には何ら被害は出していないということ。噂にもなっていないのだからな。だが同時に、オレが二回ともその現象を目撃したのも、病院内の一室とその近辺だった)

DIO(一見矛盾しているこの二点だが、ある仮説を立てると多少つじつまが合う。それは、幽霊泥棒は何らかの理由により私につきまとっている、というものだ)

DIO(根拠、証拠、その他証明できるものは一切ない! だが、そう無理やりにでも結論付けなければ今までの行動の意図が全く解明できない。私の能力――ではない。
能力者のみが放つAIM拡散力場が検出されない時点で、私はレベル0以下が確定している)



DIO「……まあ、放っておいても風紀委員が解決してくれるだろう。私はせいぜい、犯人だと間違われぬように振る舞わないといけんな」

DIO「……と。この赤い箱、この前も見たものと一緒だ。中身も変わっていない。この公園、前にも訪れたことがあったな。ということは、寮は近いか」

「お、お前……DIOか!?」




DIO「……上条当麻か。何だか久しいな。元気か?」

当麻「久しいな、じゃねえよ! お前こそ怪我は大丈夫なのか!? それに今までどこいたんだよ! 病院行っても退院したって聞いて、あちこち探し回ったんだからな!」

DIO「それはいらぬ迷惑をかけたな。だが心配は無用、この通り傷跡一つ残っていない」

当麻「お前は……はぁ、もういいや。色々叱ってやろうかと思ってたけど、こうやって何も変わってないDIOを目の前にすると、安堵で怒る気にもなれねえや」

DIO「…………甘いのだな」

当麻「甘々だぜ、上条さんは。じゃなかったら、見ず知らずのアンタを自分の部屋に泊めたりするかっての。それを見越されてあの医者には頼まれちまったけどなぁ」




DIO「……相手を甘やかして、足元をすくわれんようにな。それと、迷惑をかけたことを謝罪する」

当麻「以後、気を付けるように」

DIO「考えておこう」

当麻「考えるなよ! 肯定しなさい!」


当麻「『幽霊泥棒』事件? それなら、今日青ピの奴が言ってたな」

DIO「青ピ?」

当麻「まあ友達だよ、友達。『なんでも、姿の見えない何者かが同時刻に複数人の所持品を盗んだという事件やで。姿を隠すということは、犯人は間違いなく内気で恥ずかしがり屋のべっぴん幽霊さんに違いあらへんわーー!』
とか言ってた」


DIO「……参考にならんことと、そいつに近づきたくないというのは重々分かった」

当麻「根は良い奴なんだよ……幹が腐っちまってるだけなんだ」

DIO「どうせ枝葉も実も腐っている。早急に切り倒しても文句は言われまい」

当麻「お前ひでぇな。だけど、なんでそんなこと聞くんだ? まさか、何か盗まれたのか?」

DIO「生憎、失くしたものは記憶だけだ。それ以外は失うものなどないし、そもそも持ってないしな。何が、とは言わないが」

当麻「……なんか、ごめん。色々と。でもウチも経済的に厳しいんだぜ……あれ、そういうDIOはどうやって昼食を凌いだんだ? あのお医者からなにかもらったのか?」

DIO「友人がいてな。たまたま彼女たちに会うことができて、幸運にもランチを恵んでもらった。……男としては羞恥ものだが」

当麻「へー、友達か! もしかして、記憶喪失前からの友達かな。あ、DIOは元々ここの住人じゃなかったんだった……でも、友達つくるのはやいな」

DIO「百人目指すか? 部下もつくれる気がするぞ」

当麻「アンタならホントにできそうで怖いな」



DIO「それで、当麻。君はこの『幽霊泥棒』、どう見る? 本当に幽霊の仕業だと思うか?」

当麻「たぶん違うだろ。おおかた、姿を隠せる光学系の高位能力者が出来心でやったことじゃないのか?」

DIO「……風紀委員の調べでは、そういう能力者たちには全員アリバイがあったそうだが」

当麻「え、マジかよ。んー、それじゃあどうやって姿を消してるんだ? 能力者じゃないとすると……まさか、まじゅt」



「見つけたわよッ!」



当麻「……げっ」


DIO「……ヌゥ。ミサカ、ミコトか」



御坂「今日こそは私と――あれ、アンタはいつぞやのデカい人」

DIO(……本当に瓜二つだな。外見だけではどっちがどっちだかまるで判別ができない)

DIO「……君は、御坂美琴でいいのかな?」

御坂「そうよ。なんか文句でも? 喧嘩ならいつでもかかってきなさーい」

DIO「いや、特にはない。ただ、君はレベル5で第三位なのだろう? そんな強者の君が、こんな弱者を追い回して何の得があるのか気になってね」

当麻「じゃ、弱者って……でもDIOの言うとおりだぞ! 俺なんか追っかけまわして何が楽しいんだ! 鬼ごっこしたいのか?」

御坂「アンタが勝手に逃げ出すから追いかけるんでしょうが! なんでいつも脱兎のごとく逃げ出すの、よっ!」バリリィ!!

当麻「うおわッ!?」ギュイーン!


DIO「ッ!」


DIO(何だ今のはッ!? 御坂美琴が放った電撃が、当麻が突き出した右腕に直撃する瞬間に消滅したッ!)

DIO(弾き飛ばしたわけでも、受け止めたわけでない。消滅……文字通り、電撃そのものがはじめからなかったかのようにかっ消えた!)

当麻「危ねえじゃねえか! もしDIOに当たったらどうするんだよ!」

御坂「心配ないわ、そんなかっこ悪いマネはしないから。そこのデカい人を避けてアンタだけに電撃を向かわせることも、できるのよね? ほぉら」バヂヂャァ

当麻「うわわっ!」ギュイーン!


DIO(また、消えた! 上条当麻がかざした右手には、焦げひとつ残っていない。いったいどういう……待て、右手?)



『俺の右腕はさ、昔から異能を打ち消す力が宿ってるんだよ。能力による炎とか雷とかなら、この腕で等しく無効化できるんだ』



DIO(まさか……これがそうなのか? 上条当麻の右腕には、本当にそのような力が存在していたのか?)

今回はここまででーす。なんだか少し美琴のキャラがブレ気味な気がしてならない……見直しじゃ見直し
説明がくどく感じますかね?地の文がないもんで補おうとはしてるんですが、くどいようならこっちも見直してみます

>>200
そもそも、上条が敬語で話をする相手なんて小萌先生や黄泉川先生くらいだしな。
むしろ上条さんが敬語を使ってると違和感があると思う。

アックアと戦った経験のある上条さんならDIO相手にタメ口なんて余裕だろ。

様々なご意見ありがとうございます!ていうかかまちーの話やないかい!でもかなり大忙しなんですなぁ……体壊さなきゃいいけども

とりあえず口調は変更しないでいかせてもらいますね。御坂は……もう少しキャラ理解深めとかんとダメですなぁ。有名キャラほどイメージが凝り固まっていかん

DIOに敬語じゃないのは、>>212さんみたいな感じです。敵から味方の大人にも敬語を使う回数が少ないくらいですからねぇ


当麻「だからやめろっての! 人の話聞けぇやビリビリ!」

御坂「そっくりそのままお返しするわ! ていうかなんで逃げるのよ!」

当麻「いきなり雷を撃たれて逃げださない人間がいるか!? いたらそいつは人間じゃねェ!」

御坂「なっ……! うるさいわね、あんたが逃げ出すのがいけないのよ!」


ガミガミ ヤイノヤイノ ワーワー


DIO(……問い詰めたい。当麻、その右腕についてもっと詳しく聞かせてくれよ。それにほかにも隠していることがあるんじゃあないのか?
そうやって抑していけば、まだ知らぬ情報をこいつから叩き出せるチャンスかもしれないッ!)

DIO(だが、そのためにはこの御坂美琴が非常に邪魔だ。日頃いちゃつくのは勝手で構わないが、今は話が違う!)

DIO(だが、彼女はレベル5だ。脳に異常があるだけのオレがどうこうして敵う相手ではない。とっとと追い返したいが、だからといってこんな小娘にへりくだってやる道理もない)

DIO(……ここは一つ、こいつが当麻から興味が離れそうな話題を持ち出すか。それにここで当麻に恩を売っておけば、情報開示の時に良いカードになる)


DIO「……取込み中失礼するが」

「「なんだ(なに)よっ!?」」

DIO(こいつらァ……)ピクピク

DIO「いや、話の流れを遮って非常に申し訳ないとは思う。が、私は最近気になるものがあってね。それについて、君に尋ねてみたいことがある」

御坂「わ、私に?」

当麻「気になるもの? もしかしてさっき言ってた『幽霊泥棒』のことか?」

御坂「『幽霊泥棒』? 何よそれ、初めて聞いたわ」

当麻「なんでも、ほぼ同じタイミングで複数の人の物が盗まれるんだと。まるで幽霊が盗んだみたいだから、幽霊泥棒ってこと」

DIO「その通りだ。それで、御坂美琴。君はこの学園都市でも指折りの実力者のようだが、これに似た事件などに関わったことはあるか?」

御坂「御坂でいいわ。簡潔に言うと、ないわね。姿消す奴は見たことあるけど、高位能力者たちがそういうセコいマネするとは思えないし」

DIO「そんなものなのか? その高位能力者たちというのは」

御坂「そんなものよ、所詮人間だもの」


御坂「例えばあなたが、どこにでも瞬間移動できる力を持ってるとするじゃない。そんな力を、わざわざ家の二階から一階に降りるためだけに使う? どこにでもいけるのに」

DIO「……まあ、使わないだろうな。勿体無さすぎる」

御坂「それよ、それ。せっかく発現した強力な力を、そんなみみっちいことに使ってられないって話なんです。まあ私は関係ないけどね」

DIO「つまり、高位能力者が起こした犯行の線は薄い、と。君もそう思っているのだな」

御坂「私、も? 他に誰かから意見でもうかがってたの?」

DIO「……」クイッ


当麻「どもども」

御坂「……アンタか」


御坂「しっかし『幽霊泥棒』ねぇ。毎度思うけど、どうしてそんなに小さな事件とかも騒ぎ立てようとする輩がいるのか。野次馬根性?」

当麻「知らねぇよ。それよりも、その犯人まだ捕まってないんだろ? 御坂も帰りとか気をつけろよ? 一応お嬢様だから、狙われるかもしれないし」

御坂「悪かったわね、一応にしか見えなくて。それに、私の心配よりも幽霊泥棒さんの心配でもしてあげた方がいいんじゃない?」

当麻「本人が気づかない間に持ってくんだぞ? それにお前、見えない相手とかに電撃当てれるのか?」

御坂「弱い電磁波とか流してその跳ね返りとかでイケるイケる。できなくても何とかなるっしょ」

DIO「……今、午後の5時45分を回ったところだ。そろそろ完全下校時刻とやらになるんじゃあないか?」

当麻「おっといけね。帰りにスーパー寄んないと。じゃ、気を付けて帰れよ」

御坂「いらぬ心配と何度言わせんのよ。そっちこそ気をつけなさいよー」






御坂「って違うでしょうがぁぁぁぁ!! そのまま自然に帰ろうとしてんじゃないわよ!!」



当麻「うげっ、ばれてーら」

DIO「そのまま帰ってればいいものを……当麻、走るぞ」ガシッ

当麻「……なんで俺の左腕をしっかり掴んでるんでせうか」

DIO「お前を引っ張って、逃げる。その方が速く済む」

当麻「何が悲しくて男同士の逃避行を演じねばならんのだ……これが可愛い女の子だったるぁばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


ギャン!!


御坂「なっ、速っ!? あのガタイのどこから出してるのよ!」


DIO(我が脚力の速度、走行時のベストな歩幅は先の事件の時にて学習済み。当麻一人引きずっても圧倒的なスピードを叩きだすこともできる)

DIO(そして今、御坂美琴の意表を完全についた! これにより、彼女が認識から判断、行動に移るまでのタイムラグが大幅に伸び、その間に奴を煙をまける!)

当麻「どわ、おお、はや、は、はやぃ、速い速い速い速い!! 内臓がゆさゆさ揺れて……うっぷ……DIO、STOP! も、もっとゆっくり行こうぜ?」

DIO「ダメだ。追いつかれたり、電撃を放ってきたら困る」ドドドドォー

当麻「ちょっと待って本気でそろそろ上条さんの上条さんがこんにちはしちゃぁぁぁぁぁぁ!!」




御坂「……なんだか、やる気がそがれちゃった。それもこれも、全部あのデカい奴のせい」

御坂「おまけに異常に足速いし……ホント何者なのよ、あいつ。不気味な男だわ」

御坂「……佐天さんや黒子に気を付けるよう言っときましょうか。ガタイのデカい足速男がいるって。そういやそんな都市伝説、前に佐天さんから聞いたような……」

今日はひとまずこんなもんで。レス数も着実に減ってってるなぁ……がんばらないと


~★とある高校の寮:上条当麻の部屋★~

ガチャリ

当麻「うごええぇぇぇ」

DIO「情けないな。お前はただ私に運ばれていただけだというのに」

当麻「車に縄でくくりつけられて、そのまま町中走りまわされた気分だ……。おかげで上条さんの中身がシェイクになっちまってるよ」

DIO「冷やせば固まるか? ん?」

当麻「これ以上何かするのはやめてくれ、いやホント! 今日の補修の授業内容どっかで脳から落っことしたな……あぁー飯もつくんないとぉ」ブツブツ


DIO「……今日の料理、私が振るってやろうか?」

当麻「え? それは嬉しいけど、なんで?」

DIO「料理にお前のゲロをミックスされるのは勘弁願いたいのでな」

当麻「アンタのせいだろうが……。っつか、DIOってホントに料理できるのか? 記憶に残ってる?」

DIO「簡単なものだけだ、あとは微妙にうろ覚えだが。白身魚はあるか?」ガサゴソ

当麻「あるけど……何を作るんだ? 上条さん、正直2メートル近くの大男が料理をするという光景がすでに心配なんですが」

DIO「なに、それほど豪勢なものなどつくらん。手早く、質素なものだ」


DIO(……鮮明なヴィジョンが思い浮かぶわけでもないが、こうしてキッチンに立つと妙な胸糞悪さがこみあげてくる。料理が嫌いとか、そんなんじゃない。)

DIO(そう、これは嫌悪感。オレが料理した食い物を、その社会のクズに与えて養っていたような……自らそのゴミと共に生きていたような、屈辱と劣悪の感情。これも、前の『DIO』が味わった辛酸か?)

DIO(……違うだろ、DIO。今はそういう思考ではない。切り替えろ、今は上条当麻に料理を作ることだ。記憶にも残っていない嫌悪に対してではない)

DIO(……チッ)


当麻「…………」


ジャァーン


当麻「DIOサン。この、俺の視覚と嗅覚にダイレクトアタックを決めてくる美味そうな代物は何なんデスカ」

DIO「冷蔵庫に残っていたサケを使ったフィッシュアンドチップスだ。ジャガイモも数個あったからポテトにして盛り付けた。
   本当はレモンかビネガーをかけて食べると実に美味いのだが、なかったからケチャップで代用させてもらった」

当麻「……俺はどういうリアクションをとればいいのだろうか」

DIO「食ってからとればいい」

当麻「い、いただきます!」パクッ



当麻「――――ンまあーいっ!! なんだこれ、めっちゃカリカリしてて中のサケはアツアツだ!」

DIO「……」パクパク

当麻「お、こっちは玉ねぎか! ポテトも実に味がなじむっていうか、一緒に食べると旨味パワー倍増! みたいな」ガツガツ

DIO「……」グビッ

当麻「いやー、インデックスもこんな美味いもん食えないとは残念だなぁ。フィッシュアンド……なんだっけ?」

DIO「チップスだ。作り方はメモに書いてキッチンに置いておいた。好きな時に作ってみるといい」

当麻「DIO様マジぱねぇっす! あなたは神ですか!?」

DIO「ご飯粒を口元につけながら近寄るな。食べながら大口開けて喋るな。食事の作法ぐらい学ばなかったのか」

当麻「も、申し訳ありません」

~★~

当麻「ごっつぉうさまでしたぁ!」

当麻「いやー。同居人が大食いじゃなくて、しかもこんな美味い料理ができるってんだから、感動のあまりむせび泣きそうですよわたくしは」

DIO「皿はここに置いておくぞ」

当麻「全スルーですかそうですか。でも、ホントに美味いもん食わしてもらってありがとな。DIOが退院したのにその祝いを本人に準備させちまったのはアレだが……」

DIO「そんなこと気にしてない。だが、どうしてもその罪悪感を払拭したいのなら、いくつか私の質問に答えてもらいたいものだが」

当麻「質問? いいぜ。この学園都市でまだ分からないこととかあれば……」



DIO「そうじゃない」

当麻「へっ?」

DIO「そうじゃないんだ、当麻。私が聞きたいのは学園都市でもなく、他でもない。君だ。正確には、その右腕」

当麻「コイツのことか? 前にも言ったけど、この右腕には異能の力を……」

DIO「違う。それが聞きたいわけでもない」



DIO「当麻、私は前にその右腕のこと疑ってしまったな。事実、あの時私は君の言葉を、口から出まかせのようなものだと思っていた。今日の、あの光景をこの目で見るまでは」

DIO「ゆえに、まずはその右腕の力を疑り、そして心のどこかで君を嘲ていたことを詫びよう」

当麻「な、なんだよ。いきなりかしこまって」

DIO「そしてその右腕の力……認めよう。その右腕が触れたものが、あらゆる異能をかき消したことを認めよう」

DIO「だのに、だ。なぜ君はレベル0のままでいられる? この都市の上層部が、まさか君一人の存在を見逃しているわけはないはずだ」

DIO「いや、むしろここの連中ならば、君の力は垂唾もののはず……しかし、君は普通通りに学生生活を過ごしている」



DIO「上条当麻。お前は、何者だ?」

当麻「…………」



DIO「…………」


当麻「別に、DIOが思ってるほど大した男じゃねえよ」

当麻「確かに、俺のコレは身体検査にもひっかからない。それにDIOの言うとおり、上層部が俺のこの力を知らないはずもないしな」

当麻「でもさ、DIO。例え俺の右腕がすげえ力だろうと、上の奴等が俺をどう見ていようと、俺は俺なんだよ。今までお前が見てきた、上条当麻が俺なんだ。それ以外の何でもない」

当麻「俺は男だ。俺は学生だ。俺は頭が悪いし、喧嘩っぱやい。金もないし、特別運動が得意なわけでもない。権力も、地位もない。おまけに不幸体質だ」

当麻「でも、それが俺なんだ。俺にはほかの人とは違う右腕がある。けど、たったそれだけなんだ」



当麻「――――つっても、本当のところはよく分かんないんだけどさ」



DIO「……どういう意味だ?」

当麻「DIO。同じ『境遇者』として、アンタには話しておくよ。もっとも、話したところで何かが解決するってわけじゃないんだけどさ。ただ、やっぱり理解者はほしいかなーって。
   あ、これは他言無用で頼むぜ?」

DIO「『境遇者』? 当麻、お前はいったい何を言っている?」





当麻「――――俺も記憶喪失なんだよ、DIO」

今回はここまでとなりまーす。これ、病院退院してからまだ一日も立ってないんだぜ……まだまだやりたいことがあるんですがね

それと一方通行VS世界の議論ですが、能力のスペックやスタンドの概念はそれこそ果てしないものなってしまうでしょう。
ただ、それはあくまで『お互いが能力を熟知し合っていて尚且つ真っ向から対峙した』場合の話。戦う時期や場所、タイミング、その場にあるもので勝敗なんてあっさり変わっちまうもんですぜ?
ジョジョやとあるの戦い方だって、能力だけ見れば明らかに突破不可能な戦いなどはたくさんありましたからね


DIO「……なに? お前が、記憶喪失?」

当麻「ああ。詳しい経緯はあんま分からんけど、俺もある日を境にその前の記憶が一切残ってなくてさ。DIOみたいに、知識としての記憶とかは消えてないんだけど」

当麻「知ってるか、DIO? 人の記憶ってのは全てを一つに収めてるわけじゃないんだ」

DIO「……複数の事柄を別々に分別しているということか?」

当麻「すげえな、よく分かったな。人の記憶ってのは、言葉や知識を保管する『意味記憶』、慣れとかを覚える『手続記憶』、そして思い出を司る『エピソード記憶』の三種類に分けられて記憶してるんだってさ」

当麻「例えばDIO、パンがどういうものかは知っているだろ? パンという言葉の意味を記憶している、つまりDIOは『意味記憶』は失ってはいないってことになる。料理もこなしてたから『手続記憶』も無事だな」

DIO「……つまり、私が失ったものは『エピソード記憶』ということになるのか。お前、実は頭はいいんじゃないか?」

当麻「全部、あのカエル顔の先生に教えてもらった受け入りだ。ちなみに俺もDIOと同じ、エピソード記憶がない」

DIO「お前も、過去の記憶や両親の顔も覚えていないということか」

当麻「少しずつ埋めてきてはいるけどな。本人に会ったりして。でも、俺のソレはDIOとは決定的に違う所が、一つある」



当麻「俺の場合はさ、DIO。俺の記憶は、脳細胞ごと消滅しちまったって話だ」



DIO「……どういう、ことだ?」

当麻「簡単に言えば、パソコンのハードディスクを焼切られた状態だ。もっと簡単に言うと、俺の記憶は『永遠に』戻ることはないらしい」

当麻「忘れたんじゃなくて、消滅しちまったんだ。この世界そのものから、ある日より前の上条当麻は死んだんだよ」

当麻「だからさ、DIO。お前を助けておいてあれだが、俺も何者か分からないんだ。上条当麻だったもの、としか言いようがないのさ」


DIO「…………」

当麻「……わりぃな。なんだか湿っぽい空気にしちまってさ」

当麻「ただ、俺と似たような境遇にあったアンタを見てると、なんとなく分かるんだ」

当麻「記憶がないことの恐怖、焦燥、喪失感。まるで自分が自分じゃないみたいな、得体のしれない寒気みたいなもの。誰が知り合いで誰が他人で、結局自分は何者なのか」

DIO「……記憶が戻らない、根源ごと消滅したと言っていたな。それを初めて聞かされた時、お前は何を思った? 何を感じた?」

当麻「最初は、呆然とした。でもすぐに直感したさ。自分の頭には何も残ってない。楽しい思い出もつらい現実も、何もない。買ったばかりのおもちゃ箱みたいに空っぽだ、って」

当麻「でも、暗い気持ちにはならなかった。確かに頭には残ってないかもしれない。でも、人の思い出っつうのは、そんな容易く消えちまうもんじゃないって確信があったからさ」

DIO「根拠はなんだ?」

当麻「ねぇよ、んなもん。あえてあげるなら――――心が、そう感じた。そんなもんだ」

DIO「心、か……くだらんな」

当麻「くだらないかもしれねぇ。でも、そういうくだらないものこそが、いざってときに光ったりするもんなんだぜ?」

DIO「……フン」



当麻「……うん、そろそろ時間も時間だ。DIO、先にシャワー浴びてきたらどうだ?」

DIO「……ああ」



DIO(人の思いでは心にあり、か。馬鹿馬鹿しい……)

~★~

シャァァー

DIO「…………」

DIO「記憶喪失。私(ついでに当麻も)が失ったものは、過去の思い出を記憶する『エピソード記憶』。ゆえに私は親の顔も知らないし、友人や故郷の風景も浮かんでこない」

DIO「……だが、それにしては妙だ。私はあまりにもここの『モノ』を知らな過ぎる」

DIO「昼間出会った彼女たちからすれば、ここの技術力は外と二十から三十年も先の科学力と聞いた。世界一の科学力ゆえに、オレが見慣れぬものもあるだろう」

DIO「しかし、全てがそうではない。佐天が持っていたケータイという代物。あれは最早廃れつつある品のようだ。今は、もっと最先端の物があるらしい」



シャァァー



DIO「――――オレは、ケータイを知らなかった」



DIO「あの赤い箱、自動販売機だったか。あれも外でも一般的で、日本中ならどこにでも見かけるポピュラーな飲料水販売機のようだ」

DIO「ICチップ、医者の使う珍妙な機器の数々、ゲーセン、デパート、常盤台中学、風力発電……多少の差異はあれど、いずれも今の世の中どこでも知っている知識」



シャァァー



DIO「――――オレは、それらを知らなかった」



DIO「……知識を保管する『意味記憶』も失われているのか? いや、リンゴは知っている。自動車も、標識も、建物や道路や学校も知っている」

DIO「ならば、この記憶の偏りはいったい何だ? 知っているものと知らないものの違いは何だ?」


DIO「そもそも、だ。オレが記憶を失った要因は、何だ?」


シャアァァー

DIO(上条当麻の話によれば、オレは全身血だらけで路地裏で倒れているところを見つけ、病院に運んだそうだ)

DIO(その時、体中にまるで拳でメタメタにぶん殴られたようなおびただしい傷跡がくっきり残っていたという。とても人間業とは思えない、とも言っていた)

DIO(その傷は、誰が負わせた? オレは何と戦った?)

DIO(オレはここの人間ではない。それはIDカード持っていないことから明らかだ。だからこそ、オレがスキルアウトであった可能性は消える)

DIO(そして忘れてはならないのが、オレは普通の人間ではないということ。身体能力が異常に高く。再生ともいえる回復力を持つ)

DIO(その私に、死にかけの致命傷を与えた連撃。争った相手も理由も不明だが、能力者とみて間違いはあるまい)

DIO(この首の傷も、そいつにつけられたものやもしれんしな)



DIO「……不明なことが多すぎる。当麻は、私たちの違いは記憶が戻らないことと言っていたが、もう一つあることにアイツは気が付いていない」

DIO「あいつは、ここに住んでいた。だから街でも歩けば結構情報は集まるし、友人とかに出会った場合、濁しながら会話していけばこれまた情報が手に入る」

DIO「しかし、私はここに住んではいない。そのため情報がゼロなのだ。いや、最悪存在しない可能性もある。おまけに知識にも少々難ありときた」

DIO「……いっそ、ショック療法でも試してみるか? 再生力が高いから、ちょいと強めにやっても問題はあるまい」



DIO「もしくは前に棄却した、記憶操作系の能力者による改ざん案を試してみるか。当麻の右腕が本当に異能を打ち消したから、わずかに望みはあるかもしれん」

DIO「とはいっても、果たして異常な改造を受けた私の脳にそれが適用されるのか。色々と疑問は消えぬところだが」

DIO「まあ、頭でごちゃごちゃと空論ばかり並べていても何も進まん。とりあえずはあがると……」



DIO「――――いつからだ」

ポタ ポタ ポタ

DIO「いつから、シャワーは止まっていた?」

今日の更新はここまでにします


ポタ ポタ ポタ

DIO「……」

DIO「私は一度もノズルに触っていない。だが、現実にシャワーの水は止まっているし、そこから水滴がしたたり落ちている」

DIO「一定の量を出すと自動的に停止する仕掛けでもあるのか? いや、当麻はそんなことは言ってなどいなかった。何よりそんな仕掛け、つける意味がない」

DIO「……」ジロリ

DIO「……何かがいるはずもないか。このユニットバス(よく分からん単語だが、おそらく浴室だろう)の扉は一つ。開ける音を聞き逃すアホなことなどしない」クイッ

シャアァァー

DIO「仮に透明人間がいたとして、扉を開けることもせずに中に入ることは不可能。不可能だが……」

DIO(……とうとうオレはおかしくなってしまったか? オレはこの現象を、件の『幽霊泥棒』と結び付けようとしている)

DIO(だがそれこそ、不可能だ。先も言った通り扉は開かれた形跡はないし、足場は水浸しで足音を立てずに歩くなどできるはずもない。
仮にここまで付きまとうというのなら、最早ストーカーの域だ)


DIO「……興が冷めた。もう一度シャワーを浴びる気になるはずもない。それにあがろうと思っていたところだ、丁度いいではないか」

DIO「フン。当麻の奴、こんな不気味な風呂なぞ使わせおって。また一つ問い詰める事柄が増えたな。さっさと出ることにしよう」

DIO「ドアノブは、これか。今日は色々と疲れた。外には出ずに、本でも開いてくつろぐと……」



┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



DIO(……何か、いる!? オレの背後だ。オレのすぐ後ろに、何か気配を感じるッ!)

DIO(なぜだ!? 何度も言うが、ここの扉は一つしかない。そこを開けず、足音も立てずに侵入してくるなど不可能だ! だが実際に、圧倒的なスゴ味が私の背中に突き刺さるッ!)

DIO「ッ! 貴様、いつからそこに――――!」






DIO「……誰も、いない?」

~★~

DIO「…………」

当麻「おーう、随分長かったな。まあDIOって結構髪長い方だし、洗うときには手間とかかかるのか?」

DIO「……のか?」

当麻「ん?」

DIO「この部屋に、貴様は誰か招き入れたのか、と聞いている」

当麻「は、はぁ? 何言ってんだDIO?」

DIO「……チッ」

当麻「もしも-し? 会話の一方通行はよくないぞー。もしかして、俺の使ってるシャンプーとか気に食わなかったか?」

DIO「……いや、いい。何でもない。ちょっと疲労が溜まって気が立っていただけだ。忘れてくれ」

当麻「あ、あぁ」

DIO(……フザけるなよ。このオレが、姿も声も知らないどこぞの馬の骨に翻弄されているというのか?)

DIO(コケにしやがって……! だが、未ださっきの気配が急に現れたことの原因が解明できん。本当に突然だった。白井黒子の空間移動でも使ったかのように、私の背後にいきなり気配が出現した)

DIO(けれど違う。空間移動はあくまで例えのこと。あの出現の仕方は、それとは根本的に違うものを感じる。うまく言葉にはできんが、あれは言うなれば……)

DIO(……馬鹿な! このオレが、このDIOが! 今なにを想像した? よりにもよってアレを、『背後霊』みたいだと一瞬でも考えたというのか!?)

DIO(ええい、くだらん! くだらんくだらんくだらんッ! それは『幽霊泥棒』の件が混じっただけの妄想に過ぎん! 『背後霊』なぞに憑かれる道理などあるものかッ!)

当麻「……なんだか分からんが、今日はもう横になったらどうだ? ベッド貸すか?」

DIO「……ん。そうだ、な。今日は忙しい一日だった。本でも眺めてくつろぐとするよ。あとベッドは大丈夫だ。君もシャワーを浴びてくるといい」

当麻「そうさせてもらうぜ。あ、やっべ。あとで宿題片付けとかねぇと」

DIO(……その右腕があるとはいえ、お前にも何か異常現象が起こるか。それを確認してから、ゆっくりさせてもらう)


当麻「あー、さっぱりした。えーと、風呂上がりのムサシノ牛乳は……あれ?」

DIO(あの様子では当麻の身には何も異常は起こらなかったようだ。あの右腕が働いたという可能性もあるが、シャワーで両手は塞がれていたはずだ)

DIO(ということは……チィ、そんなはずなどない。『背後霊』など、いるはずない)

当麻「おーいDIO。お前、ここに置いてたムサシノ牛乳知らないか?」

DIO「……食事中に飲んだが」

当麻「えっ、マジかよ!? 全然気づかなかった……っていうか断りぐらい入れろよな! 上条宅では貴重な貴重なミルクなんだぞ!」

DIO「たかが牛の乳で騒ぎ立ておって。だいたい、なぜそんなに金欠に悩んでいる? ここの学生は、奨学金制度というもので生活に必要な額は支給されているのだろう?」

当麻「アンタはあの白い悪魔を知らない……! ホワイトドールのなかに潜む凶暴なブラックホールを!!」

DIO「知らなくてもよさそうだ。ああそうだ。これ、借りているぞ」ピラッ

当麻「すでに読み進めているのを借りているというのだろうか……。しかし、お前ってほんとうちの教科書読むのが好きだな。俺には到底理解できん趣味だ」

DIO「今は、少しでも知識が必要なのでな。それにこの本、なかなか興味深いことも書いてあるぞ」


DIO「例えばこれだ、『聖書を科学で追及する』。宗教に科学のメスをいれていくとは、学園都市はある意味科学に凝り固まった頭でっかちというべきか?
   その分面白い見解もあったりするが。『セフィロトの樹に原子をあてはめて世界は作れるのか』。ふむ、どれどれ」

当麻「うだー。話を聞いてるだけで知恵熱が出そうだ……。っつか、セフィロトの樹って確か神様とか人間の身分階級表ってやつじゃないのか?」

DIO「ほほう、小癪にも少しは知識を蓄えているようだな。確かにセフィロトの樹とは、神が示した魂の境界線である。てっきり神秘系は無知だと思っていたが、意外だな」

当麻「知り合いに腐った神父がいるもんでね。腐った神父が」

DIO「……君の交友関係は時々どうなっているのか問い詰めたくなるが、今は抑えよう。それでセフィロトの樹だが、それとは少々異なる解釈があってね」



DIO「私の思うセフィロトの樹とは『世界創造の設計図』であり、『神の叡智への道』と捉えている」

当麻「???」

DIO「かいつまんで言えば、この樹は世界を創造する手順を示したもので、それを逆にたどって行けばこれを創造した神に近づけるのではないかということだ」

当麻「……アンタも、記憶失くす前は神父とかそういう聖職者だったんじゃないのか?」

DIO「……かもしれぬな。自分でも少々驚くほど知識が湧いてくる。これが意味記憶というやつだな」

DIO(相変わらず偏りはあるようだが。スラスラとこんな系統の知識が出てくるあたり、ますます『DIO』という男が何者かはつかみにくくなるが……)

~★同日:夜★~

当麻「グゥー……」

DIO「…………」ピラッ

DIO「1888年、イギリスの小さな街ウィンドナイツ・ロッドで、総人口2420人のうち73名が一夜で蒸発するという事件『ウィンドナイツ・ロッドの怪奇』が起こった」

DIO「これの原因は未だ解き明かされておらず、有力な説は……。ふと、まさかとは思いコイツの歴史の教科書を読み返してみたが、やはりそうか」パタン


DIO「オレはこの『ウィンドナイツ・ロッドの怪奇』だなんて事件、全く聞いたことがない」

DIO「1861年にリンカーンは大統領に就任したのは知っている。アヘン戦争は1840年だし、ジョン・レノンが殺されたのは1980年だ」

DIO「だが、またしてもだ。またしても知識としてすら記憶されていないものがある。しかしこれは、どこかケータイとは違うような気がする。虫に食われてそこが欠けてしまったような……」


DIO「……今は捨て置こう。それよりも当面の目標は決まっている。『幽霊泥棒』の正体を突き止めることだ」

DIO「そいつをとっ捕まえれば、全てわかる。オレにつきまとう理由も、その方法もな」

DIO「それをどう調べるか、が一番の問題か。これはまた、明日動きながら考える。図書館にでもおいてあれば気が楽なのだが」

DIO「……今はひとまず、ほかに抜けている知識がないかを確認する続きをしよう。1889年アメリカ、ファニー・ヴァレンタインが第23代大統領に就任……はて、そうだったか」

今回はここまでになります!ちょっとずつ書きたいことが書けてきてノリノリ気味になってきました。気に食わなくて一回全部書き直したのは辛かったけど

~★~


ここは……


『散滅すべし、ディオ!』


何だ、この響き渡る声は


『「策」ではないッ! 「勇気」だ!』


この胸糞悪くなる声は誰だ


『君がッ! 泣くまで! 殴るのを止めないッ!』


この……胸糞悪い、気味の悪い感情を押し上げてくるものは誰だ


『君はディオ………ドー…だね?』


そういう貴様は……





DIO「…………」ムクリ

DIO「夢、か」


当麻「DIO、今日はお前どうするんだ? 俺は例にもれず補講だけど」

DIO「まだ何とも、だ。無論危険なマネは極力避けていくつもりだが」

当麻「何の予定もないのか? それじゃあちょっと頼みがあるんだけど、いいか」

DIO「頼み?」

当麻「おう。そしてこれは俺だけじゃない、お前の命にもかかわってくる重要な頼みだ……」

DIO「……ほう。して、それは何だ?」

当麻「いいか、耳の穴かっぽじってよーく覚えておけ……」



当麻「今日のAM10:30から○○スーパーで超激安タイムセールをやるんだ! だから、そこで食材を買ってきてくれェェェ!! お願いしますッ! これお金と買い足しリストな!」サッ

DIO「…………」





DIO「……確かに命、というより生活には関わってくるが。あいつ、鬼気迫る表情の使いどころを間違えているだろう。あきれるほど食材に全てをかけているな」

DIO「だからといって断る理由もないが。あの家にいても時間の無駄なうえ、いつまた『幽霊泥棒』に狙われるかしれたものではない」

DIO「そう。まずは、奴の正体を掴むところからだ。あれは本当にそういうものなのか、もしくは能力者が関係しているのか……。とにかく、今はまだぶつかる時ではない」

DIO「しかしどうやって調べる? 能力者関係の資料はそれこそ石ころのように転がっているだろうが、もう一つの可能性はそうもいかん」

DIO「なぜなら、ここが学園都市だからだ。科学の粋が結集し、能力(非現実)さえそれらで解を導き出し、全てを科学でまかなっているこの都市に、
果たして霊や魔法といったものがおいてあるだろうか? あったとして、それはほんのごく少数にしかすぎんと推測できる」

DIO「だが、同時にここは学園都市。その敷地面積は広大だ。この中にそのごく少数があってもおかしくはないはず。虱潰しにしていくしかない、か」

DIO「とにもかくにも、そのためにはひとます情報が集う所へ行かねばならんが……。まずはこのくだらん頼みを消化しておかなければ」

~★第七学区内:スーパー★~

DIO「……次は豚のひき肉二パックか。まったく、なぜ私がこんなことをしなくてはならんのだ……」

DIO「肉製品となると、ここではなく精肉コーナーに置いてあるか。さっさと済ませるとしよう。精肉コーナーはどこだ」

ドン!

「あいた」

DIO「ヌッ?」

バラバラバラー

DIO「おっとすまない。私がよそ見をしていたばかりに」

「いえ。気にしないで。私の不注意が原因だから」

DIO(この女……どことなく希薄というか、何かが薄いような印象がある。私個人の感想でしかないが)

DIO「しかしこんなに落としてしまった。私が拾ってやるから、君はそこで待っていてくれ」

「そういうわけにはいかない。私にも落ち度はあるから」


ピタッ


「あっ」

DIO「ッ!?」


シュバッ!!


DIO「ハァ、ハァ、ハァ……なっ」

「どうかした? 私の手を触っただけで。一気にひっこめて。それに。そんなに息を切らすなんて」



DIO(な、何だ今のヴィジョンは!? この女と手が触れあったとたん、脳内に明確に浮かんだ『死』のヴィジョン! この感覚はそう、最初の太陽に危機感をもっていたソレと同じだ)

DIO(どういうことだ? この女は当然太陽などではないはずだ。しかし脳が告げている、この女には不用意に近づくなとッ! 理由は知らんが、従って損はないはずだ!)

DIO(……何者だ、この女は)



姫神「……もしかして。そういう趣味?」


DIO「い、いや。すまないね。私はどうも、他人に肌を触れられるのはあまり好かないんだ。潔癖症というわけじゃあない、勘違いしないでくれよ?」

姫神「そう。変な体質。私が言えたクチじゃないけど」

DIO「そういうものだ。気にしないでくれると助かる。それでは、私はこれで……」

姫神「待って」

DIO「……何かな」

姫神「……これ。落とした」

DIO「これは、イヤリング? 確かに私のものだ。どうやらさっきのはずみで落としてしまっていたようだな。感謝するよ」

姫神「……。DIO」

DIO「ッ! お前、どうして私の名を……」

姫神「それに。彫られていた。」

DIO「……これか」

DIO(……そういえば私がその名を見つけたのも、このイヤリングだったか。手がかりとしてつけずにいたが、落とさぬために耳に通しておいた方がいいか?)


DIO「そうだ、私はDIOという。そしてここで出会ったのも何かの縁だ。失礼ながらお嬢さん(マドモアゼル)、君の名前をうかがってもいいかな?」

DIO(そして名を知られた以上、これからこいつを完全に赤の他人としてやりすごすのは難しくなってしまった。ならば、逆にこちらもこの女の名前を知っておいた方がいいだろう)

DIO(上手く乗せれば、この女の身辺を聞き出して接触する回数を減らせるかもしれん。能力とその効力まで引き出せれば上出来だが……)



姫神「マドモアゼルなんて。よくもまあ。そんな歯の浮くような台詞がいえる」

DIO「フフッ。だがそれは、無理して気取ろうとする自分の気品も知らん愚か者が言うからそう感じてしまう。しかし己の品位に対する自覚さえあれば、
それは紅茶にシュガーが混ざるように途端に溶け込んでしまうものなのだよ」

姫神「確かに。貴方からは。そういうキザったい感じはない」

DIO「それで、お嬢さん(マドモアゼル)。もう一度尋ねてみるが、君の名を聞かせてもらえないか?
何より、君だけが私の名を知っていても、私が君の名を知らなければ対等に会話することができないからね」

姫神「姫神秋沙。それが。私の名前」

DIO「ヒメガミ、アイサ。ンンー、良い響きだ。覚えておこう」

DIO(なるべく避けるべき、危険物の人間としてな)


姫神「あなた。学生? 身体は大きいけど。学生にも見えるし。大人にも見える」

DIO「学生、ではないな。色々あって学園都市に来ただけだ。そういう君は学生に見えるが」

姫神「とある高校に。通ってる。今日は。休みの日」

DIO「とある高校……上条当麻が通っている高校か」

姫神「! あなた。上条君を知ってるの?」

DIO「わけあって知り合ったものでな。彼には色々と世話になった。そんな彼に使いっぱしりをさせられてこんなところに来ているわけだが」

姫神「あなたも。使いっぱしりなのね」

DIO「あなたも? 君は自分の意志でここに来たのではないのか?」

姫神「私。居候してるの。そこの家主が。上条君の補講をやるから代わりにいってきてくれって。頼まれた」

DIO「……そいつはまあ、奇妙な偶然だ。おや、のんびりしていては時間が来てしまうな。まずは買い物を済ませてしまおう」

姫神「そうね。私もリスト多いから。売り切れる前に取っておかないと」





DIO「……なあ、姫神秋沙。差支えなければ、一つくだらない質問をしてもいいか」

姫神「どうかしたの。重要なこと?」

DIO「いや、これは好奇心から聞くのだが……。その大量の煙草と缶ビール、まさか君が楽しむために買い込んだのか?」

姫神「…………。」ズッシィィィ


姫神「あんな見た目なのに。ギャップ萌えとかそういう次元じゃない」ボソリ

DIO「?」

姫神「さっき話した家主のもの。私は未成年」

DIO「その家主は大層豪気な男だな……」

姫神(男どころか。子犬がシマウマの肉を食うみたいなイメージだけど)

DIO「だが待て、君は未成年といったか。ここでは未成年、つまり二十歳以下はそういったものは売買できない方があると聞いたことがあるが」

姫神「IDカードを。預かってる。本人の署名付きで」

DIO「IDカード、か。本当にそれさえあれば何でもいけるのだな」

DIO(うむむ。どうにかしてIDカードを入手できないものか。ろくに金銭も持ち合わせていないし、警察機関にでも取調べされたら厄介極まりないことになってしまう)


姫神「それじゃあ。私はこっちだから」

DIO「ああ。ではな、姫神」

姫神「あなたとは。いずれまた会いそうな気がする。じゃあ」コツコツ

DIO「…………、」

DIO(できれば二度と会いたくはないが……。対処法としては、彼女に触れないことが一番か。しまった、能力を聞き出すこともできなかったな)

DIO(だが彼女は、上条当麻の通う高校の生徒。おまけにどうやら知り合いのようだ。願わなくとも、彼女の言うとおり勝手に引き合わされそうだ。その時に聞き出してみるとする)

DIO「さて、この荷物を一度自宅に戻しておくとしよう。しかし当麻の奴、冷蔵室と冷凍室は別だから気をつけろなどと言っていたが……何のことだ?」



~★上条部屋:玄関前★~

DIO「道順もさすがに慣れたものだ。ここは広しといえど、己が住まう近辺の地理は叩き込んでおかねばならん。似たような風景ばかりで難儀するが」

DIO「さて、当麻の部屋番号はこのあたりだったはずだが」

「おやー? ここじゃ見ない顔だなー」


DIO「……誰だ」

「後ろだ後ろー」

DIO「……」クルーリ

舞夏「やーやーどうもどうも。見かけない顔だね、新人かい?」

DIO「新人?」

舞夏「あー気にしないでくれー。ただ言ってみたかった台詞と言ってスッキリしたかっただけだからー」

DIO「…………、」

DIO(給仕服を着たガキが謎のマシーンの上に跨って回転しているのだが、これはぶっ飛ばしてもいいネタか?)

舞夏「何だー? 私を見るその目つきがとても怖いぞー。はっ、まさか! 見習いメイドに一目ぼれしてしまったけど実は従妹同士という隠された関係で、
   自身はそれを知っているが故に苦悩し最後は私もろとも無理心中して永遠の愛を手に入れるとか、そんな展開か!」

DIO「よし、ぶっ飛ばしてもよさそうだ」

舞夏「待て待て待て、冗談だぞ冗談―。それよりも、噂の第二居候がこんな重戦車みたいな人だったとはなー。第一居候と何もかも違いすぎるぞー」

DIO「……私のこと知っているようだが。そういう君はいったい何なのか。突然訳のわからない登場したかと思えば意味不明な言語を口走って、私はさっさと失せてほしいと思っている」

舞夏「ひどい言い草だー。まあメイドらしく自己紹介ぐらいはしないとなー。私は土御門舞夏、繚乱家政女学校のスーパーエリート見習いメイドなりー」

DIO「……果たしてそれはスーパーエリートと誇っていいものか」

舞夏「ありゃりゃ? 繚乱家政女学校を聞いてもピンと来ないとは……外の人かー?」

DIO「そんなところだ。――――ん? 待て、お前さっき何と言った?」

舞夏「繚乱家政……」

DIO「そこじゃない。お前が自己紹介したときのだ」

舞夏「土御門舞夏、ウルトラウーマン見習いメイドだー」

DIO「――――ツチミカド!」


土御門『簡単なことだ。『色々知ってた方』が、調べやすいだろ?』


DIO(まさかこいつ、あのツチミカドとかいうクソガキの親族かッ!?)

今日の更新はここまでです!


DIO(再びに探りに来たのか、このオレを! いや待て、もしかしたら偶然出会わせただけなのかもしれん。こいつからはあの男のような『嘘』の匂いを感じない)

DIO(だがしかし、そう思わせるほどのやり手という可能性も捨てきれん。いずれにせよ、こいつともあまり関わらん方が身のためだろう)

舞夏「どしたー? だんまり決め込んでちゃ話が進まんぞお兄ちゃん」

DIO「……いや何、少々考え事していただけだ。それとそのお兄ちゃんと呼ぶのはやめてくれ、どうにも不快を覚える」

舞夏「そうかそうか、色々悩む時期なんだなー。頑張れ若者、負けるな若者。その青春を熱く燃やして当たって砕けろだ! 砕けた後の嫉妬にまみれたドロドロ展開でも可」

DIO「…………、」

舞夏「ところでお兄ちゃん。上条の部屋前で佇んでたけど、上条になんか用かー。上条ならただいま熱心に補講を受けてるところだがー」

DIO「頼まれていた買い物を済ませて、荷物を置きに来ただけだ。これがあっては色々と目を引くし、食材も悪くなってしまうからな。あとお兄ちゃんはやめろと言ったはずだ」

舞夏「ほうほう、上条に買い物を頼まれて食材を置きに戻る……。つまりお兄ちゃんは上条の新たな居候だなー! 間違いないだろう!」

DIO「……私から教えることは何もない。そしてお前、まさかわざと呼んでいるのではあるまいな?」

舞夏「解答者にきっちり正解を教えるのが出題者の役割だろー? なぁなぁ教えてくれよーお兄ちゃん」


DIO「エエイッ、しつこいぞ貴様! クルクルクルクルとバカみたいに回りながら絡んでくるんじゃあない! 土御門の名に変わらず、お前もあの金髪サングラス同様相手にしたくない奴だ!」

舞夏「それは聞き捨てならんぞー! 私はアニキほど胡散臭くはないはずだ!」

DIO「……じゃあもうそれでいい、それで。とにかく不必要に私に干渉するな、それとお兄ちゃんと呼ぶな。ではな」ガチャ

舞夏「つれない男だなー。そういう付き合いの悪い男はモテないぞー? まあ、私も届け物は済ませたし、今日は勘弁して今ここらで帰るとするよ」

DIO「届け物?」

舞夏「ちょっとしたデリバリーサービスって奴さ。次はあなたの色んなお話聞かせてくれよー」

DIO「二度は会いたくはないな。その回る土台と一緒にさっさと帰れ」

舞夏「む、ちょっとカチンときたぞ。絶対に次もあってやるからなー。メイドの行動実現力をなめるんじゃないぞー!」


DIO「……ったく、一息つく暇もない」

~★~

DIO「当麻からの押しつけも済ませた。あのクルクル回る給仕もいなくなった。これで枷になるものはなくなった。これでようやく、都市の散策と奴を調べるため動き回ることができる」

DIO「だが、ここからどうする? 一口に『幽霊泥棒』を調べるといったが、果たしてどこをどうやれば奴の正体に近づける有益な情報を手に入れられるか」


DIO「案は三つある。まずは一つ、学園都市にある図書館に行くことだ。その圧倒的な情報量は、私の望むものの一つや二つあってもおかしくはないはずだ。
   例えそれが、万が一だが……霊的なものだとしても」

DIO「しかしこれには致命的な理由がある。それは、私はこの学園都市のパス、つまりIDカードを所持していないことだ。
   聞けば、ここの施設はそれがなければ利用できぬものも多いようだ」

DIO「よってこれは信頼性が高いが、同時に一番手を付けにくい。二つ目は、『幽霊泥棒』の被害にあった者たちに聞いて回ること」

DIO「しかしいつ、誰が、どんな風に被害にあったかなどこのオレが知るはずもない。地道にそいつらを探し回るか? それこそナンセンス極まりない」

DIO「というわけで二つ目は最悪な時、ドン詰まりの時の一手だ。あまり有効かつ効率的なものではないからな」

DIO「そして、三つ目の案だが……チィッ。これは確実性、正確性共に高いが……」


DIO「……初春飾利、白井黒子。つまり、風紀委員ならば何か掴んでいるのかもしれない。彼女らが所属しているという風紀委員の部署。そこを尋ねれば、もしかすれば……」

DIO「しかし、あのガキ共にこれ以上貸しを作るのは勘弁だ。できれば避けて通りたいが……」

~★第七学区:市街★~

DIO「……、」カツカツカツ

DIO(だが、選り好みできるほどオレに選択肢は用意されてはいない。非常に癪だが、今の私にはこれぐらいしか確実な道は残されていない)

DIO「ふがいないことこの上ないが、な。さて、目的地までの案内板でもあればいいが……」


ラッシャイラッシャーイ!!


DIO「……」

ガタイの良い店主「おっ、そこのデッカイ兄ちゃん! おやあんた、顔色が悪くないかい?」

DIO「元からこういう顔色なのだ。気にしないでくれ」

店主「そうは言ってもお兄ちゃんよ、こちとらそんな今にも倒れそうな血色な人をはいそうですか、と見過ごすわけにもいかないなぁ。職業がてら、余計にね。
   ましてやこんな炎天下の中だ、実は結構キテたりしてるんじゃないか?」

DIO「……フン」

店主「そこでどうだい、この日傘! 見た目は落ち着いた黒とアクセントに赤い星マーク。でも見てほしいのは外見だけじゃない、中身がコイツの真骨頂さ。
   今、学園都市で紫外線とかが弾かれてるっていう実験やってるだろ? コイツはそれには劣るけど、それでもかなりの日光をシャットアウトしてくれる優れモンさ!」

DIO(コイツ、このナリで商売は傘専門店とは……)

DIO「随分と意気揚々に売り文句を並べているが、今それを私に売りつけるのか? 自分でも言っていたが、今は紫外線がほとんど入ってこない。
   なのにそのキャッチコピーでは、いささかこころもとないような気もするが」

店主「そこんところは問題なし。どうせそのバリアーも近いうちになくなるんだ。そこで、あんたみたいに既に持ってるお客さんがその日傘の素晴らしさを実感してもらって、
   あとは口コミで広がるのを待つっていう戦法よ! この傘があれば紫外線を浴びずに済む! ってね」

DIO「……この日傘、女子学生を対象にしたものか。そういう口コミの広まる速さと、普段気にも留めないくせに、いざ言われると思い出したかのように日光を気にしだす。
   女性の潜在的な意識をつき、心理的な動きを読んでの行動。策士だな」

店主「さーて、なんのことやら」

DIO「となると。ますますこれを私に押し付ける意味が浮かばないものだが」

店主「なに、ちょっと男性的な意見と反応も見てみたいだけだ。今ならお安くしとくぜ?」

DIO「……君の作戦に是非とも乗ってあげたいところだが、生憎今は持ち合わせがない。文字通りの素寒貧というところだ」

店主「ありゃま、そいつは残念だ。ま、でも口コミで広げてくれたりすれば俺は――――」



「話は聞かせてもらったーーーー!!」

今日の更新はここまでとなります!

それとしばらく旅行してくるので、一週間以上は更新はできなくなります。ご了承ください


DIO「……またこの流れか」

店主「へいらっしゃい! お客さん、随分気合の入った格好してるねぇ」

「おっ、分かるかおじちゃん。この俺の根性に満ちた漢気溢れる姿を!」

店主「おうよ。俺も若いころはそういう無茶なことをしでかしてきたもんだぜ……」

DIO(……生まれる時代を間違えたようなアホみたいな服装だな。番長、とかいう奴だったか。それにどうにも暑苦しい、格好も何かも)

「それで、だ。兄ちゃん、金がなくて困ってるんだろ? 根性が足りてねぇな。いつ、いかなる時も己の根性見せるため、お金の携帯は必然だぞ?」

店主「いや、その理論はおかしいんじゃないかい?」

DIO「金がない者を捕まえてわざわざ説教か? 私は君に構っている暇はあまりないのだ。店主、私は失礼するよ」

「待て待て、話の途中で逃げ出すだなんてそれこそ根性がなっちゃいないぜ。おじちゃん、この黒い赤星の傘くれよ」

店主「毎度あり! よかったこれを使った感想とか広めてくれると助かるなぁ。しかしお客さん、ワイルドな見た目なのに日光とか気にするのかい?」

「ん? 俺は使わねぇよ?」

店主「あい?」


「ほら、やるよ兄ちゃん」ポイッ


DIO「……、情けをかけたつもりか?」パシッ

「違ぇよ。俺は困ってるやつがいたら助けてやらずにはいられないだけだ! あれ、それって情けをかけるっつうのか? まあ、どっちでもいいや」

DIO「別に困っていたわけではないし、見ず知らずの君にこんなものを恵んでもらうほど私は落ちぶれてはいないのだが。
   君は他人を偽善で助け、自己満足と優越感に浸りたいだけだろ」

「あー、もう面倒くせぁなお前! お前が欲しそうにしてた日傘を俺が代わりに買ってあげた、これのどこが根性なしだっつうんだ!」

店主「そうは言ってないと思うけどなぁ」

DIO「…………このガキには付き合いきれんな」スタスタ

「あ、コラ待てコラ話聞けコラ根性足りてねぇぞコラァ! それに俺はガキじゃなくて、削板軍覇って漢らしい名前があるんだ!」

~★~

DIO「…………、」

削板「でよ、路地裏で一人の奴を数人でボコッてやがった根性なし共を、俺がこの拳でしっかり根性叩き直してやったわけよ。今じゃそいつらもリンチなんざやらねぇって約束したしな」

DIO「…………、おい」

削板「それからあいつ。第十学区に何たら突進ってグループがいたんだけど、あいつらのリーダーがとんでもねぇ弱虫野郎でさ。
   しっぽ巻いて逃げちまいやがった。全く、根性腐ってやがるぜ」

削板「そういやあいつらもぶっ飛ばしたなぁ。一昨日数人の不良共がいて――――」

DIO「おい」

削板「でも、そこを俺は根性で乗り切って――――」


DIO「おい!」

削板「ん? 何だよ、これからが根性パワー炸裂する怒涛の展開だってのに」

DIO「貴様、いつまでオレについて回るつもりだ! なぜ一時間も貴様のやかましい話を耳に入れねばならん!
   だいたいさっきから聞いていれば、それは根性ではなく能力によるものだろう!」

削板「ンだとぉ!? 能力なんざ二の次だ、大切なのは全てを跳ね返す無敵の根性魂だろうが!
   例え俺が学園都市の第七位(ナンバーセブン)だとしても、そこだけは揺るがねぇ絶対根性精神なんだぜ!」

DIO「第七位とは、随分と大きく虚勢を張ったものだ。要はただの念動力とかいうやつだろう」

削板「念動力とは、またちょいと違うんだが。まあそこはさして気にすることじゃないし」

DIO「それで。お前はいつまで私につきまとうつもりだ。まさか一日中とは言わないよな」

削板「あー? そんな時間ドブに捨てるようなことしねぇぞ?」

DIO(さらっと貶してくれたな……悪意がないだけに、余計にムカツク小僧だ。さっさとどっか行け)


削板「っつか、さんざ人のこと邪険に扱う割に、俺がやった日傘はもらうんだな」

DIO「何だ。お礼でもほしいのか。それともキャンディーの方が好きか?」

削板「いるか! しかし兄ちゃん、なんたって日傘なんか欲しがってたんだ? しかもそれ、女が使うような奴だぜ。日光が眩しくて嫌とか、そんな根性のない理由か?」

DIO「口を開けば根性根性と喧しい奴だな。お前には関係ないだろう」

削板「いーや、そいつは俺が買ってやった日傘なんだ。だから俺にも知る権利がある!」

DIO「……眩しいとか、肌に悪いとか、そんななよっちい理由ではない。しいて言えば、苦手だということだけだ。どうにも体が受け付けん」

削板「あー、なんか聞いたことあるぞ。日光過敏症だったか? 普通の人なら大丈夫な量の紫外線でも、肌が炎症を起こすっつう奴」

削板「あれ。でも、今って確か実験とかで紫外線その他はごく数量しか学園都市に入ってこないんじゃなかったか?」

DIO「それが永遠に続くというわけでもないだろう。保険と言う物は常に懸念しておくべきものなのだ。全て根性で解決できるほど、世の中優しくできてなどいない」

削板「へんっ、それは単にお前の根性がへなちょこだったっていうだけだ。だいたいだな――――」

DIO「おっと、もう根性トークは御免だ。というより、君には他人をストーキングすること以外に他にやることはないのかね? それこそ根性が足りないんじゃあないのか?」

削板「ほっほう、この俺に根性が足りないなんて口聞くとはなぁ。その根性は大したもんだぜ」

DIO「ありがとよ。その根性で是非とも私を観察しているといい」

削板「そういやあんた、何歳? なんか異様に身体とかでかいしよ。学生じゃないだろってのは一目でわかるんだけど」

DIO「……ヌウウッ。調子が狂う」

お久しぶりです。そして今日の更新はここまでです!搭乗予定のなかった人その二、根性丸くんです。やっぱりDIOと相性の悪い悪い

~★~

DIO「……おい、お前」

削板「お前じゃない。削板軍覇だ、兄ちゃん」

DIO「兄ちゃんではない、DIOだ」

削板「DIOねぇ。んで何だい、DIOさんよ」

DIO「お前、風紀委員の支部がどこにあるか知らないか?」

削板「風紀委員? 何だ、あんた悩み事でもあんのか? 俺でよければ相談で乗るぞ」

DIO「結末が見えているからやめておく。どうせ根性で乗り切れ、とかだろ」

削板「DIO……。さてはお前、読心系の能力者か!」

DIO「いいからさっさと答えてくれないか? 風紀委員の支部の場所は知っているのか?」

削板「風紀委員っつうと、ここから一番近いとこは確か第一七七支部か。柵川中学校ってとこの中にあったはずだぞ」


削板「でも、なんでまた直接行こうとしてるんだ? 困りごとなら電話とかですりゃいいのによ。もっと言えば、根性で解決するとか」

DIO「ちょいとした用事だ。しかし学校内か……私のような部外者でも風紀委員に用がある、といえば通してもらえるかどうか」

削板「知らね。んでもまぁ、とりあえず柵川中学校まで案内するか? 確かめもせずに諦めちゃあ根性なっちゃいないしな」

DIO「ああ、頼む」

~★柵川中学校:校門前★~

削板「よしついた。ここが柵川中学校だ」

DIO「うむ? この学校は確か……」

削板「ん? 前にも来たことあるのか?」

DIO「半ば強制的に連れられてこられたことがあったような気がした。しかし改めて全体を見てもこの学校、なるほど流石は学園都市の学校だ、といった感じはまるでしないものだが」

削板「そりゃ、学園都市の中じゃ結構普通の学校だぞ。すげぇの見たいんなら常盤台とかだが。でもDIO、あんたは風紀委員に用があってきたんだろ? あんま気にしなくても大丈夫だ」

DIO「そうではあるが……警察機関を抱えているというものだから、もう少し物々しい雰囲気の建物を想像していたものでな」

削板「確かに風紀委員は警備員と並ぶ警察組織だけど、こっちは基本学校内の治安を守るために生徒で構成されてるからな。だいたいの学校に支部があるし」

DIO「学校内の治安、か。ううむ……」

削板「そんじゃ、そろそろ俺はいくぜ。あんたの言動には腹立つけど、困ったことがあればこの削板軍覇に頼ってくれてもいいぜ!」

DIO「そういえばそんな名前だったな」

削板「ムキィー! やっぱムカツクなお前! あばよ、その日傘大事に使えよな! 根性鍛えとけよ!」タタタタタ



DIO「……ようやっと口うるさい熱血バカがいったか。だが、色々と世話になってしまったのも事実。形だけでも、次に顔を合わせた時は礼でも言っておくか」

DIO「…………しかしあいつ、削板が最後に言った言葉が正しいのなら、風紀委員はあてにならないということか? ともすれば、頼りの『幽霊泥棒』の情報も望めないかもしれない」

DIO「そうなればどうするか……。やはり被害者たちに直接話を聞きに行くしかないのか? それくらいなら風紀委員でも知っていそうだが……」


佐天「あれ、DIOさん!?」


DIO「……佐天か」

佐天「なんでDIOさんがここにいるんですか!?」

DIO「近くに風紀委員の基地はないかと尋ねたら、ここに連れてこられたのだ。何でも学校全体にあると聞いたが……。そういう君はなぜここに?」

佐天「なぜも何も、私はこの柵川中学校に通っているんですよ。今は授業終わった帰りです。あれ、言ってませんでしたっけ?」

DIO「ほう。またもやこうして顔を合わせることになるとは。君とは何かしら縁が結ばれているかもしれないな」

佐天「え、縁だなんて……そんなことないですよぉ、あははははー!」

DIO(……またしても妙なクネリとした動きを始めたな。音に反応してクネリだすフラワーロックというものがあったが、それに近い反応か?)


佐天「そういえば、前もここにDIOさんを連れてきたことありましたよね。確か学園都市を案内しようとして、初春を呼びに行くときだったかなー」

DIO「……そんなこともあったな。ん、ということは初春もここの生徒ということか」

佐天「そうですよー。ついでに白井さんも来てますよ」

DIO「白井か。……待て、奴は常盤台の生徒だろう? なぜ常盤台の者がこの柵川中学校の風紀委員の支部にいるのだ?」

佐天「それは……あれ、なんでだろ。まあ細かいことは気にしたら負けって奴ですよ。固法さんだって違う学校から来てるんだし」


佐天「それよりも、風紀委員に用って言ってましたけど、何か困りごとでも? もしかして、また学園都市の案内を頼みに来たとか」

DIO「いいや、今日はちょっとした別件で用があってきただけだ。案内はまた後日、時間が取れた時にお願いするよ。ところで佐天、この学校は無断で入っても構わんか」

佐天「え? いや、たぶん無断で進入っての流石に不味いような気も……って、ちょっとちょっとDIOさーん!? 話半分で早速正面から侵入しないでくださいよー!」

佐天(……あれ。私、その無断侵入を前にやらかさなかった?)

今日の更新はここまでです!相性が悪い奴等ほど書いてて楽しいときはないですな、まったく。機会があればまた登場させたいもんですわい


DIO「……、」スタスタ

佐天「はぁー、やっと追いついた……。また学校に戻ってきちゃったよー。でもこの人だけだとすごい不安だし……」


アケミ「あれ、涙子じゃん。まだ帰ってなかったの?」

佐天「あ、アケミ。うん、ちょっと野暮用があってね」

むーちゃん「ほうほう、その野暮用とは。その後ろの殿方とこれからムフフな展開にいそしむという用事ですかな?」

マコちん「えっ! そんな、涙子まだ中学一年生でしょ!? そんなムフフだなんて……」

佐天「だーっ、違うわい! この人は風紀委員に用があって、私はそこまでの道案内をかって出ただけです!」

むーちゃん「それで、実際のところは?」

佐天「帰れィ!」

むーちゃん「ヘイヘーイ。せいぜい楽しめよなー」

アケミ「それじゃ、先帰ってるからー」

マコちん「また明日ねー」


DIO「……友人か」

佐天「そうですね。三人とも良い奴ですよ。そろいもそろってレベル0ですが……お恥ずかしい」

DIO「何も恥じる必要などない。それに君たちには能力がないのではなく、認知できない程の微弱な能力しか起こせないというものだ。道が閉ざされたわけでもなかろう」

佐天「それでも、私たち(無能力者)という存在は色々あるんですよ、色々。あ、ここですねここ。前にも半ば強引に連れてきたことはありますが」

DIO「強引なのは自覚していたのか。あの時は道を覚える暇もなく連行されたものでな。改めてみても、他のルームと特に何ら変わらないように見えるが」

佐天「そりゃ、基本的に教室の一室を使ってるようなものですもの。だいたいの学校の風紀委員も、似たようなものだと思いますよ?」

DIO「ますます白井などがここに来る理由が分からんが……それはさして重要なことではない。今はとりあえず二人に会おう」


ガチャリ


佐天「こんにちわー!」

黒子「あら佐天さん。先ほど帰ったと思いましたが、何かご用事でも思い出しましたか?」

佐天「私自身にはないんだけどねー」

DIO「……やあ。昨日ぶりだな」ヌオッ

初春「あ、DIOさん。どうしてここに?」

佐天「何でも風紀委員に用事があるんだってさ。そういえば固法さんは?」

初春「固法先輩はまだ来てませんよ。授業の方がどうも長引いているみたいで」

黒子「それで、DIOさん。その風紀委員の用事とはいったい何なんですの? こちらも少々立て込んでおりまして、手身近に済ませていただけると非常にありがたいのですが」


DIO(警戒心丸出しだな……。別にこんな奴とへーこら仲良くしたいとも思わんが、無意味に警戒されると色々やりづらい所もある。なるべく触れずにいくか)


DIO「いや、何。最近『幽霊泥棒』という奴が巷で流れているだろう。つい昨日、私もそれに目をつけられてしまったのだ」

佐天「えっ、そうだったんですか!?」

黒子「ほほう」

初春「だ、大丈夫だったんですか? 盗られた物や、怪我などはしてないんですか?」

DIO「盗られたものはすぐ近くに捨ててあったから心配ない。怪我もしていないし、何も問題はない」


DIO(まずは糸口だ。奴らも警察機関の端くれ。私のような得体のしれない一般人に、そう簡単に『幽霊泥棒』の詳細を離すとは思えん)

DIO(そこで、私は『幽霊泥棒』に襲われたことにしておく。少々脚色しただけだ。これで私も一般人から被害者になり、ある程度は無理なく情報を引き出しやすくなるはずだ)


黒子「それは本当に『幽霊泥棒』と断言できますか? ただの念動力や、或いは別の光学系能力者の悪戯の可能性も捨てきれません」

DIO「知り合いのゴーグルもほぼ同じタイミングで移動していた。このやり口に聞き覚えはないか」


DIO(知り合いとは呼べんがな。せいぜい都合よく登場してくれた他人といったところだ)


黒子「ふむ……。実はわたくしたちは今、その『幽霊泥棒』を追っているのですわ。今のところ手がかりは何もつかめず。そうこうしているうちにまた貴方みたいな被害者が出てしまう」

初春「相変わらず光学系の能力者たちにはアリバイがあります。最早彼らはシロと見た方がいいかもしれませんね」

佐天「そうなると、あと他に透明になれるような能力とかあったかなぁ」

黒子「とにかく。DIOさん。よろしければ、その時の情報など詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。どんな些細なことでも構いませんわ」

DIO「……よかろう」


DIO(ミサカクローンの時のことをいじれば、それっぽい証言になるだろう)

黒子(なーんかこの方から怪しさを感じるのですが……人相のせいでしょうか。それともわたくしの思いすぎ?)

今日はここまでになります!いつまで幽霊泥棒引っ張ってんだ、と思うかもしれませんが、どうかそこのところはご容赦願いやす


DIO「――――というわけだ」

黒子「ふむ。自分のイヤリングを草陰に隠され、他人のゴーグルを自分の頭にかけられた、と。他に何か思い出せることはございますか?」

DIO「いいや。あとは些細にも満たないものばかりだ。これが一番関係のある事柄だと私は睨んでいるのだが、どうかね。専門家の意見を聞きたいな」

黒子「専門家は言い過ぎですが――確かに、今まで起こった事例との共通点が多く見受けられます。同一犯、『幽霊泥棒』が関係している可能性は大有りでしょう」

初春「その時間帯のDIOさんは、残念ながら丁度監視カメラから見切れてしまっていますね。お相手の知り合いの方も姿が見えませんでした」

佐天「ふーん。一昔前に流行ったジャズシリーズか。おっ、これとかいいかも。何々、日本ジャズミュージシャンのクウジョー……」

黒子「あのですね、佐天さん。人が真面目に仕事をしている傍らで呑気に音楽アプリいじるのはどうかと思いますが」

佐天「いやー、私何にも情報とかないしさぁ。蚊帳の外っていうか、役立てることもなさそうだし……」

黒子「お得意の都市伝説調べはどうしましたの。今こそ、その無駄な行動力を存分に発揮して『幽霊泥棒』の情報を集めるとか」

佐天「んー、分かりましたよ」ポチポチ

DIO「それで、何か有益な情報はあったのか」

黒子「そうですわねー。残念ながら、事件をグッと終わらせるような画期的な情報はございません」


黒子「ですが、どうも奇妙な点がございます」

DIO「奇妙な点?」

黒子「ええ。DIOさん、貴方は確か、知り合いのゴーグルを一瞬の間に自分にかけられた、とおっしゃっていましたよね」

DIO「そうだ。私もそいつも認識できないほどの一瞬で、私の頭にそいつのゴーグルが乗っかっていた。今でも不思議に思うよ」

黒子「それですの。今まで被害にあった方々は、多少の差異はあれど一度物を盗まれています。しかし今回のDIOさんの場合、盗むどころか貴方の頭にのっけるだけ。本人の目の前で、ですのよ?」

DIO「……なるほど。『幽霊泥棒』が泥棒をしていない、ということか」

黒子「ええ。『幽霊泥棒』が趣向を変えたのか、もしくは別の狙いがあるか、或いは巧妙な模倣犯か……。例をあげるのことは簡単だけども、結局謎が一つ増えただけですわ」

DIO「明確なパズルのピースにはならず、か」

DIO(……ここはハズレだったか)


DIO「一応確認してみるが、君たちは今回の事件でどれくらい詳細を掴んでいる? 犯人像はまだしも、一定の行動パターンや能力の予測などはできているんじゃあないかね」

初春「大変お恥ずかしいことですけど、『幽霊泥棒』の行動や能力は全くつかめていないんですの。いつ、どこで、誰から、なにを。この四つ全てがバラバラなんです」

黒子「無差別犯罪が濃厚だと私は睨んでおりますが、それにしては一件起こした後の次の一件へのリズムが毎度異なっておりますの。
通常、無差別犯罪をやらかすような輩は、事件を重ねるごとに調子に乗ってペースが上がっていくものなのですが……」

佐天「まさに神出鬼没ってことですか。使い道を変えれば色々人の役に立てそうな力なのに、どうしてそういう使い方をしちゃうのかな」

DIO「人間、新しいおもちゃというものは様々な観点で遊ぶのものだ。特にそのおもちゃが一生もので、さらに便利すぎるものは余計に遊ぶ。良い意味でも、悪い意味でもな」


DIO(それにしても、こいつらも手詰まっているとは……のっけから大こけしてしまった。となると、次はどうにかして図書館に入る方法を模索しなければ……)


ピロリロリーン


佐天「あ、メールだ」

黒子「それでDIOさん。念のため再三お聞きしますが、他に不審な情報などはございませんのね? 風紀委員としても、『幽霊泥棒』の情報はなるべく多く欲しいものでして」

DIO(言いたくないことぐらいある、察せ)

佐天「……おっほぉ!?」

黒子「……ちょっと、佐天さん。いつになくはしゃぐのならもう少しお静かにお願い申し上げますわ。私は今貴重な話をですね……」

佐天「い、いやぁ。ちょっと予想外の贈り物が届いちゃいまして」

黒子「ん? なんですのこれ?」



『おめでとうございます、佐天涙子様。このたび貴方が申し込みいただいた“第七学区○○テーマパーク、□月×日限定、五名様無料招待券”が当選したことをお知らせいたします』



黒子「……、」

佐天「……なんか、当たっちゃった」


黒子「佐天さん。あなた、こんなのに応募してらっしゃったんですか?」

佐天「確か、アケミたちと面白半分で勢いに任せて応募してたような……。まさか当たるとは、そしてそれが今届くとは」

DIO「その○○テーマパークというものは、名前から察するに遊園地といったところか?」

佐天「そうなんですよ。結構人気の場所で、お金に余裕がある学生とかはよく訪れてるみたいです。それなりの値段張るから高嶺の花だと思ってたけど、神は私を見捨てはしなかった……!」

初春「○○テーマパークといったらあれですよね! あそこ限定で、しかも一日20人しか販売されないという伝説のパフェがあるという!!
   そしてそれを食したものには甘味の神から祝福を得られるという!」

黒子「二人して神神と、ここぞとばかりに調子がいいことで。DIOさん、申し訳ありませんが二人が、特に見た目からして頭が花畑野郎がこの状態で集中できそうもないので、お話はまた後日に」

初春「女子に野郎ってのは使ってはダメなんでーす」

DIO「後日か。私は構わないが」

佐天「んー? そういや“五名様無料招待券”って書いてますね。私と初春と白井さんと……あ、御坂さんも。しかもこれ、使えるの今日から五日後のその日だけだし。セコいなぁ」

黒子「しれっとわたくしも同行することになってるのですね。まあお姉様が一緒なら……」


黒子(お姉様と遊園地。お化け屋敷でパニックのふりをしてお姉様に……その後は二人でコーヒーカップに乗って、ジェットコースターであーんなことして、とどめは観覧車で……ケヒヒヒ)

初春「二人きりなんかさせるわけないじゃろうに」

黒子「お黙り、わたくしとお姉様の愛を引き裂くサタンめが。わたくしはその日に予定などはありませんが、お二人の方は?」

佐天「んー、特にないですな」

初春「同じくでっす。御坂さんの方も確認して――――」

黒子「来ます」

初春「え、でも本人に直接確認してみないと……」

黒子「(お姉様と素敵な素敵な遊園地デートを過ごすのですからお姉様には何が何でもむしろ無理やりその場で押し倒すのも悪くな――)来ます」

初春(何でだろう。念話能力に目覚めていないはずなのに、欲望にまみれた前台詞が読み取れるのは)


初春「でも、それでも四人ですし。あと一枠空いてますね」

黒子(この場にお姉様がいなかったのは幸いですわ。もしお姉様がまかり間違って、あの腐れ類人猿を呼ぼうなどとおっしゃった暁には……。その度胸がないのも分かってはいますが)

佐天「んー、固法先輩は?」

初春「そうですね。固法先輩も働きつめですし、こういう時こそ息抜きさせてあげましょう!」



固法『え、五日後? ごめんなさい、その日は友人と出かける約束しちゃってるのよ。私一人だけそこに行くわけにもいかないし、ごめんなさいね』



初春「ダメでした」

佐天「ぐぬぬ、なんとタイミングの悪い……」

黒子「もう四人だけで行ってもいいのでは? 無理に五人誘うよりもスムーズに進むと思いますけど」

佐天「それが見てくださいよ、これ。ちゃっかり下に『五名未満の場合は無料券は使用できません』って書いてあるんですよ? どんだけコスイんじゃこの会社」

黒子「ええい面倒な。他の知り合いにもかけてみましょう」





初春「見事に全滅……」

黒子「なんですの!? 皆して五日後に何かパーティでも開くってのかいな! クキィー!!」

初春「というか夏バテしてダウンしてる人が多いという現状ですけども」

佐天「んー、どうするべきか……。あと知り合いで予定が空いてそうな人といえば……」

「「「……、」」」チラッ



DIO「……、」

本日の更新はここまでになります。DIOって遊園地とか言ったことあるのかね。19世紀にはそんなもんなかっただろうし


「「「……、」」」

DIO「……、」

佐天「ディオさ――」

DIO「断る」

佐天「まだ! 何も! 言ってないよ!」

DIO「帰る」

黒子「逃がしませんわよ! 貴方にはまだ『幽霊泥棒』について語っていただくことが山ほどありますの! その語る場所がここからちろっと楽しげな場所に移るだけですわ!」

DIO「……、」ガチャ

初春「せめて話だけでも! 話だけでも聞きましょう! ねっ! 悪くない話でしょ! ねっ! ねっ!」

DIO「……ハァー。話なら嫌というほど身近で聞いていた。それを踏まえて、断るといったのだ」

DIO「まず、私と君たちはそこまで親しい関係だったかね。言うなれば我々は、道案内をしたされた、の関係にしかすぎないと思うがね。遊園地に連れ添っていくような間柄ではないだろう」

佐天「そんなカチコチかしこまった関係じゃないと思いますけどねー。確かに、DIOさんと知り合いになったのは最近ですけど、それが別に障害とかになるわけでもないですし」

DIO「次に、私には調べることがある。『幽霊泥棒』のこともそうだが、それとは別の物をだ。無駄な時間など使っていられんのだよ」

黒子「『幽霊泥棒』よりも、ねぇ。個人の詮索をするようなことは致しませんけども」

DIO「そうしてくれ。とにかく、私は行かん。当たるなら残った交友関係捻りだして人材を探し出すのだな」

黒子「心に余裕のない男はモテませんわよー」

初春「うー。あと他に誰かいたかなぁ」


DIO(全くふざけた話だ。ただでさえあまり素性を知られたくないというのに、共に遊園地に行こうだと? くだらん、道楽に付き合ってやれるほど私は暇ではない)

DIO(まずは情報だ。ここが空回りだったのが何よりも痛い。『幽霊泥棒』についても学園都市についても、その他のことについてももっと情報が欲しい。しかしどこから回るか……)

佐天「あ。なんか、この時期は丁度色々なイベントとかやってるみたいですよ」

初春「イベントですか? 例えばどんな感じの?」

佐天「ヒーローショーとかスタンプラリーキャンペーンとか、ほんと色々ですよ。あ、こんなのもありますね。『幽霊は科学で作れるか!』。何だか講談会みたいですけど」

DIO「……、」ピク


黒子「はい? 何ですの、その怪しい宗教団体が売り文句として口に出しそうなキャッチコピーは」

初春「もしかして、徐々に広がっている『幽霊泥棒』の話題にのっかろうとしたどっかの学者の小さな企みかも」

黒子「うーむ……しかし、『幽霊泥棒』が騒ぎを起こしたのは二日前のことですわよ? いくら少しホットな話題だからといって、一日二日で講演会など開けるとは思えませんわ」

黒子「テーマパークの業者との事前の打ち合わせ、日程や金銭の絡み、その時に提供する講演の内容の構築等を考慮しても、とてもその短期間で準備できるはずがありませんの」

佐天「つまり完全な偶然ですか。でも、もしかしたらそこで何かヒントとか掴めたりするかもしれませんね!」

黒子「だといいのですけれどねー。その前に人数集めですの。あと一人の席を埋めなければ、そのメールもただの容量圧迫メールにしかなりませんわ」

佐天「おっとそうだった……。うーん、こうなりゃヤケで先生でも誘ってみるべきか」

初春「ヤケで誘われる先生が不憫すぎませんか、それ。そうだ、春上さんがまだ……」



DIO「……ん、なあ、お前たち」

初春「はい?」

DIO「その、何だ。そこまでして君たちは、その○○テーマパークと言うものに興味があるのか?」

佐天「そりゃあ、普段生活してるだけじゃなかなか拝めない場所ですよ! それが今回無料で、しかも五人も一緒に行ける。こりゃ天からのお告げですよ、『お前はこの遊園地にいくのです』というお告げ」

DIO「フム、そうか……」


黒子「……ははーん」

DIO「……その気色悪い目つきは何だ、白井」

黒子「べっつにー? 何でもありませんわ」


黒子「ただ、もしかしたら、本当に万が一ですけども? 少しはDIOさんも、その○○テーマパークに行きたいと思ってらっしゃるのかなー、なんて考えただけですわ」

DIO「…………、」


黒子「まあ、まさかDIOさんが。ここで急に考えが変わるとは思えませんしー。ついさっき、ああも頑なに否定しておりましたものねー」

DIO「……、」

佐天「もしもーし、白井さーん。なんか変なスイッチ入ってませんかー」

黒子「ああ、でも今。丁度招待券の枠が一つ空いているのでしたわ。この一枠が埋まれば、無料でそのテーマパークに行けることになりますわねー?」

DIO「……、」ピキッ

初春「し、白井さん? あんまり勢いに任せると……」

黒子「あ、でもDIOさんには時間がないのでしたわよねー。それこそ『幽霊泥棒』なんかよりもとぉーっても大事な何かが」

DIO「」ヒョイッ


黒子「まあ、どーしてもー? DIOさんが少しでも私たちと行きたいとおっしゃってくださるならばー? 少しは検討してあげてもよろしくってですわy――」スコンッ


ドサッ


佐天「ぎゃああああああ!! 白井さんの額からボールペンが生えたあああああ!! いや、思いっきし突き刺さったのか。結局やばいじゃん!?」

DIO「……乳臭い小娘が。ほんのちょいとでも、このDIOに煽りを向けたその愚かしさを悔いることだな」

佐天「そしてDIOさん結構大人げない!? ボールペンをダーツのように投げちゃダメですって! というか人に投げる時点でもうダメですよ!」

初春「白井さんも白井さんで、いったい何でこんなに煽りにかかったのか……。なんにせよ、今回も自業自得ですが」ズボッ

黒子「うあー……お姉様、そこはいけませんわぁ。いや、もっと触ってくださいまし……ぐへへへぁ」

初春「即座にトリップできる白井さんも白井さんだし。空間移動じゃなくて妄癖移動の夏間違いなんじゃ……」


佐天「それで、黒子さんのフリに乗っかるわけじゃないんですが……」

DIO「……フン。このDIO、先の言葉全ては嘘偽りのない真実だと告げておく。君たちと気軽に遊びに行くような関係とはまだ思えないし、調べたいことがあるのもまた事実だ」

佐天「……、」


DIO「――――が、しかし。たった今、その○○テーマパークに少し用事ができた。それは君たちと関係のないことだが、私は無一文でね。
   どこかに、都合よく無料券があればよいのだが」

佐天「――ッ!」ニパァ

DIO「おいおい。別に君たちと共に行動するというわけじゃあ……おいくっつくな。邪魔だ」

初春「ありがとうございます! これで念願の○○テーマパーク限定の伝説のパフェが食べれる!」

佐天「やった! これで一日中遊び放題だぜ!!」

DIO「……欲望剥き出しの感謝は、ある意味素直でいいと思うがね」


佐天「ところでDIOさん。その用事っていうのは、もしかしてさっき私が挙げたうちのどれかとか……」

DIO「それは君たちには関係のないことだ。君たちは君たちで勝手に満喫しているといい」

初春「むー。それじゃ、せっかく五人で行くのにつまらないと思いますが。ダメです、その日は基本DIOさんも行動を共にしてもらいます」

DIO「君たちに私を縛る権利などないと思うが……」

佐天「さーて、この中で無料券を当てて、そしてその権利を与えることができる女の子は誰でしょーか?」

DIO「……、」


DIO「……チッ。好きにしろ」

佐天「なんだか随分と柄が悪くなったような……気のせいかな。さて、とりあえず御坂さんともしっかり連絡取って話し合いをしとかないと!」


DIO(……これだけの屈辱を自ら被ってたのだ。肝心の『幽霊』の内容が陳腐なものだったら、このふざけた馬鹿力で学者に全力で石をぶつけてやる)

今日の更新はここまでとなります。ひとまずは遊園地フラグを成立させておかねばなるまい!
でもまだまだDIOの一日の受難は続くんじゃ


初春「それじゃあ、二日後にまたここへ来てくださいね。その時に改めて、遊園地での『計画などの打ち合わせをしておきましょう。道順は覚えてますか?」

DIO「心配無用。では、これにて失礼するよ。いきなり押しかけてきてすまなかったな」

佐天「いやいや、うちはいつでもウェルカムですぜ!」

初春「それって佐天さんが言うセリフじゃないですよね」

DIO「それでは、二日後にまた」ガチャン

佐天「早っ。相変わらずドライだなー、DIOさんは」


初春「それでー? 佐天さーん」

佐天「うっ。なんだい初春、いつもより甘ったるくてくどい声出して」

初春「何だも何も、これは絶好のチャンスなんじゃないんですかー? 私たちがいるとしても、あの堅苦しいDIOさんと遊園地に行けるなんて」

佐天「さ、さーてなんのことかなー? まったく初春はジョークが下手だなぁ!」

初春「それで、最初はどこに乗るんですか? 最後はもちろん観覧車として、やっぱり二人乗りのできるメリーゴーランドとか?」

佐天「おーっと、もうこんな時間だ!! それじゃ初春くん、お仕事ガンバッテくれたまえ!!」ピュー

初春「あっ、ちょっと佐天さん!」


初春「……まったく、佐天さんの方こそ、もう少し素直になればいいのに。いつも他の人とかでからかってる分、自分の時もそういう対応できればいいのにな」



佐天「全くもう、初春のやつめ。嬉々として私に絡んできおって」

佐天「……、」


佐天(私が、DIOさんのことが好き? まだ会って一週間も立ってないのに? そんなはずないない。そもそも、DIOさんの方だって私のことそんな意識してるはずがないんだし)

佐天(……何でだろ。そう考えると、何かチクッとくる。小さい木の枝の棘が指に刺さったときみたいな、僅かだけど不快な痛み。あの人が私に、関心を持っているわけないのに)

佐天「……あー、もう辛気臭い! こんな時はゲーセンでスカッとしよう。初春め、このムカムカとした気持ちはいつかデコレーションしてお返ししてやるから、覚悟しとけよ~」


アァー? ナンダオメェハヨォー

佐天「……声?」


ノウミソタリテンノカァ?


佐天「こっちから聞こえてくる。何だか複数人の話し声のようだけど……」


“だーかーらーよ、お兄ちゃん”


佐天「近いな。あそこの曲がり角の向こう?」

佐天「……、」チラッ


ツンツン金髪「俺たちはね、今とーっても困ってるのよ。もう遊ぶお金がなにもないわけ。言ってる意味分かる? ドゥー・ユー・アンダスタンンンンドゥッ?」

佐天(うげっ、見るからにスキルアウトっぽいの人たちが三人。あの人たちが通行人にたかってるわけね)

タンクトップ「それでよ、兄ちゃん。あんたのその服、最近流行のだろ? ってことはさ、それなりにいい暮らししてるわけじゃん?」

黒シャツのっぽ「だからよ、是非とも俺たち貧乏人はそのお金のお恵みをいただきに来たわけ。
        そんな高そうなモン着てんだから、可哀想な俺たちがお布施をせがんでも文句はないだろ?」

ツンツン金髪「善行を積んだら天国に行けますよー、なんつってな!」


ギャハハハハハハハハハハハハ!!


佐天(何だか分からないけどヤバそうな雰囲気ッ。ひとまず白井さんに電話して……あれ、白井さん意識戻ってるかな)


「……それで?」

ツンツン金髪「あん?」

「クソムシ共がよってたかって集まり、人間様にお布施をもらおうというのだ。どうした、敬意と誠意が足りないぞ?
 そこに転がってる犬のクソみたいな脳みそ働かせて、ちゃんとヒト語を話してくれよ」

「」ビキッ

佐天(……ん? んん? あの背格好、あの金髪、あの服装、そして今の声……まさか?)


DIO「おい、どうした。もしかして言葉が分からないのか? 生憎クソムシと対話する可能性など端から想定してなくてね。クソムシ語は習得していないので、日本語で構わないか?」


DIO「こ・と・ば・を・しゃ・べ・っ・て・く・れ。Do you understand?」

佐天(デ、デ、デデデ、ディオさああああああああん!!?)


佐天(なんでDIOさん!? さっき別れたばかりなのに、光の速さで厄介ごとに巻き込まれてるよ! というか白井さんの時とは比にならないすごい挑発してるし

佐天(いやいやそうじゃなくて!! DIOさんやめて怖いから、特にこっちが!)

「」プルプルプル

DIO「おいおいどうした。そんな生まれたての子ヤギみたいに震えていたら、きちんとした人間の会話にならないじゃあないか。質問には答えで返す、学校で習わなかったのか?」


佐天(あの人怖いよー! 臆するどころかガンガン煽ってくよ!! 肝が据わってるとかじゃなくて自殺行為だよ! いくらDIOさんのガタイが良くても、数で圧倒的に不利なんだし)

佐天(このままじゃやられちゃう。早く電話しないと……)ピピピ

金髪「……ほォ~~~。ほぉほぉ。ほうほうほう。なるほど、会話か。確かに、会話はしっかりしないといけないな。会話ができなきゃ、人間じゃないもんなぁ」


金髪「――――んじゃよぉ。てめぇの顔面二倍ぐらい腫れるまでボコって、しばらく人間(会話)やめさせてやるあぁ!!!」





佐天「――――そう、そうなんだよ! だから早めにお願いね初春! 白井も起こしといて。それじゃ!」ピッ

佐天「よし、連絡完了。あとは白井さんが来るまで、私が少しでも足止めを……」チラッ



黒シャツのっぽ「か……かふっ」

タンクトップ「つ、つえぇ……」


シィーン


佐天「……あれ?」

~★同時刻:路地裏★~

タッ タッ タッ タッ タッ

金髪「はぁ、はぁ、はぁ!!」

金髪(な、なんだよあいつ! 囲まれても能力を使わないから無能力者だと思ってたのによぉ!)


コツ コツ コツ


金髪「ひっ!?」

タタタタタタタタ!!!

金髪(俺が打ち込んだ拳を受け止めるのはまだ分かる。その隙に背後から殴りかかる仲間にどうにか対処しようとするのも、まだ分かる)

金髪(だがよ。その対処が、ぶれるほどの速度での後ろ蹴りって何なんだよ!? 武道の達人か何かかあの野郎は! 韓流アクション映画じゃあるまいし!)

金髪(それだけでもやべぇ動きなのに……。それくらった仲間が、壁にヒビ走らせてめり込むってのがもっと分かんねぇよ!! だから映画かっつうの!!)

金髪(いったいどんくらいの力こめたらあんなことになるんだ! 俺も思わず拳を引っ込めなかったら、同じように殴りかかった仲間のように片腕で地面に叩きつけられたかもしれねぇ)

金髪(あのスピード、破壊力。並の人間どころか、下手なレベル2なんかよりも遥かに上回ってるじゃねえか! なのにあいつ、学生って感じが全くしねぇ。
   ここの大人は脳開発なんか受けてねぇはずだぞ!? それじゃあ、あの野郎の異常な身体能力の原因は何だ!?)


コツ コツ コツ

ダンッ!


金髪「くそっ! なんだよ、なんだってんだよ! あれじゃまるであの野郎が……」



DIO「――――どこへ行くんだ?」

金髪「なっ…あ……上から…?」


金髪(まさか、この路地裏の壁を飛び越えて……? ふざけんな、この壁は4Mもあるんだぞ! 常人が飛び越えられるはずがねぇ! あるわけがないんだ!!)

金髪(肉体強化系の能力者……いやいや、あれはその範疇を超えてやがる。いったいどう強化すれば、人間は脚力だけで4M近く飛び上れるんだ!?)

金髪「ちぃっ!」ダッ!

DIO「おっと、捨て身で前方に跳んでかわされたか。見かけによらず機転が効くな」タンッ

金髪「て、てめぇ! どうやって一気に距離を縮めやがった!? いくら足が速いったって、目にも止まらないチーターっていうわけじゃねえだろ!」

DIO「答える義務はないな。これから私がすることは、君の質問に対する答えではない」

DIO「貴様が、いったい誰に手を出したのかという、答え合わせをすることだ。質問は既に受け付けていない」

金髪「ちっ! このクソ野郎がぁ!!」パチン

DIO「ほぉ。折り畳み式のポケットナイフか。ここで能力を使用しないということは、やはりお前たちはスキルアウトと見て間違いなさそうだ」

金髪「この野郎ぉ!!」ブン

DIO「……、」サッ

金髪「おおッ!?」

シュッ ブン バッ ブン バッ シュッ

金髪「あッ、当たらねえ!」

DIO「そのナイフ、あまり使っていないな。手入れを怠っていて錆が目立つ。大方振るう勇気もなく、とりあえず持っておこうという感覚だったのだろうがな」

DIO「そのナイフ同様、お前の喧嘩技術もなまくらだ。見た目通りのなまくら以下だ。蛾の方がもっと優雅に動くぞ。ククク」


DIO(もっとも、オレの動体視力が異常に鋭いのもあるのだがね。まさに、動きが止まって見える。それにしても、自分でも驚くほどフットワークが軽いな。ボクシングでもかじっていたのか?)

今日の更新はここまでです!路地裏とチンピラ、ルール無用の殴り合い。なんとまあDIOさんが生き生き輝ける舞台なんじゃろ!!


金髪「っるせんだよ金髪がぁ!!」ブオン

DIO「おいおい、鏡を見てから言ってくれよ。むしろお前と共通のくくりをなど持ちたくもないのだが、ねッ!」


ド ボ ォ !!


金髪「がはっ! こ、こいつ、カウンターを狙ってやが……」

DIO「そんな鉈を振るうような大振りばかりでは、腹を殴ってくださいと大声で懇願しているようなものだ。お望み通りのボディブローを味わうといい」

DIO「でもって、お前は散々逃げ回って余計な体力を浪費させたので……」


ベッキィィィィィィィン!!


金髪「へぎゃすっ!?」ドガズシャアア

DIO「ダメ押しにもう一発だ。目玉に親指でも突っ込んでやればよかったかな? そのガーゴイルみたいな顔面も、治療ついでに整形してもらえ」

金髪「」ピクピクッ

DIO「……フン。しかし、少々派手に動きすぎたか。なめられたままでいるのが癪で軽く捻るくらいにしておこうと思っていたのだが、どうにも加減が効かないな。肉体も精神も」

DIO「ちらりとだが、遠くで佐天の声が聞こえたような気がした。もしこの現場を彼女や白井にでも見られたりしたら面倒だ。急ぎ離れなければ」

金髪「う、うぅ……。ひでぇ、歯が数本折れちまってるよ~。鼻血も出てきたぁ~」タラァー

DIO「今更何をほざきおって。風紀委員にでも看護して……」


ザワ


DIO「……ッ」


DIO(何だ。今、オレの全身を何かが稲妻のように駆け巡った。数日間砂漠で枯らされた旅人が、僅かながらオアシスを発見したようなざわつきは?)

DIO(……違う、駆け巡ったのではない。これは、身体が思い出した?)


ドグン


DIO「……何かの記憶、ではない」

DIO「しかしこの、胸にへばりついて離れない焦燥の感情は何だ? ビタミンが足りていないから口内炎が発生するような、身体が何かを求めているこのサインは何だ?」

金髪「がふっ、げふっ……」ビチャァ

DIO「ッ!???」ゾゾゾゾゾゾゾ


DIO(い、今の衝動は!? 奴が口から血反吐を吐き出したのを見て、オレは今何を感じた!? 何に心を躍らせた!?)ドグン

DIO(歓喜、快楽、狂喜! テーブルの上に出来立ての上物ステーキを置かれて舌なめずりするような、野獣のように狂気じみた感動を覚えた。この、オレが!)

DIO(俺は人肉など食わん。これだけは間違いないはずだ! そんなもの、オレの残された知識の中には情報として残されていないからだ)

DIO(リンゴが甘いのを覚えているならば、人肉の味だって知識として記憶しているはず。だが、オレはそれを思い浮かべることはできない)

DIO(つまりオレにはそういうキチガイじみた悪食癖などない! 当たり前のことだ、いたって当たり前のことなのだ)


ドグン


DIO「――――では、この高鳴りは何だ?」


ドグン


DIO(そもそも、何故今なのだ? この金髪が関係していることか? ああそれよりも乾くな。乾いて乾いて……どうにも渇いてしょうがない。――が欲しい)


ドグン ドグン


DIO(おかしいな、水分は風紀委員支部で補給していたのだが――が欲しい。体が干上がった湖のように渇きを――ぃが欲しい。くそう、胸がどうにも張り裂け――で渇きを癒せ。)


ドグン ドグン ドグン




DIO「――――待て! この高鳴りの時、私が最初に見たものはッ……」


ド グ ン


“風紀委員ですの。大人しくして……ますわね?”

金髪(ジャ、風紀委員!? やべ、駆けつけるの早くねえか!? 声の方角からして仲間のところにいるだろうから……まだ遠いな。だが来んのも時間の問題か)

金髪(けどよ、俺が地面に転がってこいつがほぼ無傷で仁王立ちしているこの構図。この構図なら、この野郎も暴行罪容疑で連行されるだろ、ざまぁみろ!)

金髪「へっ、風紀委員様がいらっしゃったぜ。俺がお前にぼこられてる構図を見たら、いったいどっちが悪者かわかっ……て……」


DIO「…………、」コツ コツ


金髪「お、おい。急に黙り込んでんじゃねえよ。さてはビビッてやがんだろ! 自分が暴行罪で逮捕されるのが怖くて仕方ねえんだろ!?」


DIO「……………………、」コツ コツ


金髪「お、おら何か言いやがれよ! さっきまでペラペラ望んでもねえのにくっちゃべってたろうが! うつむきながらこっち歩いてくるんじゃねえ気色悪い!!」


DIO「…………」フシュルルゥゥ


金髪(な、何だよこいつ。途端に人が変わったみたいに黙りこくりやがって! 足元おぼつかねえし、ゾンビみたいに手伸ばしてくるし、なんか恐えよ!

金髪(なんつうか、関わっちゃいけねえ匂いがする! 早く逃げ……)フラァ

金髪「か、体がふらつきやがる!? 平衡感覚が狂っていて、まともに立ち上がれることもできない!」


金髪(あ、あの野郎の顔面への一撃で、軽い脳震盪が起こってやがるのか!? これじゃあ逃げるのもままならねぇじゃねえか!)


DIO「……UUURRRYYYYY」ニタァ

金髪「ッ!!? ち、ちくしょうがぁ!!」ブオン


スパッ


金髪「……あれ、当たっ――」


ガグシィィ


金髪「う、うげぇ。こいつ、なんて馬鹿力で首を……」

DIO「――をよこせ。渇きを……」ギリリリィ

金髪「ぐぷっ……っ…っ……!?」


金髪(こいつ、とんでもねぇ握力だ! まるで万力みたいに力強く、それでいて躊躇いのない絞め方……殺される……)

DIO「その温かい頸動脈にこの指を突っ込んで……一滴も残さず搾り取って……」ギリリリリリリ

金髪「かっ……」


金髪(やば、意識が……このまま死んじまうのかよ、俺……。こんな簡単に、こんなあっけなく……)

本日の更新はここまでです。関係ないけど女教皇回すごすぎぃ!!


“……し………もし……”


(何だ……声が聞こえるな……)


“もし……聞こえ………の……”


(もしかして……ここから異世界に行って俺の新しい冒険が……)





黒子「ええいさっさと起き上がれですの」ゴッキィィィン

金髪「*‘+>#%’」“‘%?!!!!?」


黒子「あら、ようやっとお目覚めですか。風紀委員ですの。とりあえず事情は自覚していらっしゃいますわね」

金髪「て、てめえええぇぇえ。男の代用不可能品を蹴り上げるとは何たる禁忌を……」

金髪「――――ハッ! お、俺生きてる?」ペタペタ

黒子「何ですの、そのリアクション。そこまで強く蹴りつぶしたつもりはないのですが」

金髪「つぶしたってどんな力の入れ方しやがったてめぇ! い、いやそうじゃねえ。どこも繋がってる、胸に穴とかもねえ……生きてるぅ~~」ヘナヘナ

黒子「……訳の分からない連中ですわね。向こうの奴もあいつは人間じゃないとかうわ言のように呟いてたし、こっちは俺は生きてるだとか。生命ドキュメンタリーの見過ぎでは?」

金髪「うっ、そして動けねえ。気絶したやつもとりあえず鉄杭で縛り付けるとか、するか普通?」

黒子「あなた方が普通じゃない行為に走ったからそれに対応したまで。他のお仲間さんたちにあなたの情報を吐いてもらったので、確信めいた行動でもありますがね」

金髪「あいつら……次会ったら不甲斐なさも含めて二発ぶん殴る」


金髪(……でも、あの時のあの男の瞳。ありゃ常人でも、俺たちみたいな不良もどきがするような目つきじゃなかったぞ。あのギラつき方は、まるで飢えた怪物そのものだ)

金髪(獣なんかじゃねえ、むしろ獣すら食っちまいそうなほどの冷酷さと残忍さが宿ってた。同じ人間とはとても思えねぇ……まさに格下を見るかのような目つき)

金髪(そんな怪物に息がかかるまで迫られてたのに、よくもまあ無事で……見逃してくれたのか?)

金髪(そして首を絞めた時の、あいつの両手。あの時は生きた心地すらしなくて意識も混濁してたが……)


金髪「……初めてだ。あんなに背筋が凍りつくほど、残酷で死の匂いのする冷たい手に触れたのは」

黒子「???」

~★~

DIO「ハァ、ハァ、ハァ……」フラフラ

DIO「ず、頭痛がする……吐き気もだ。眩暈も止まらなくて、まともに歩くこともできん」

DIO「ひとまず、その後の行動を佐天と駆けつけた風紀委員に目撃されなかったのが幸いか……。見られていたら、終わっていた」


『――が欲しい』


DIO「……違う! あれは、昂った激情を血の匂いでさらに刺激されて、極度の興奮状態に陥ってしまったためにとってしまった『奇行』だ。そう、『奇行』なのだ」

DIO「断じてッ……。断じて、あれが『正常』なのではないッ!」ガンッ

DIO「ハァー、ハァー、ハァー……、馬鹿馬鹿しい。度重なるストレスで私もついにキレてきたか? あんなものを欲するなど……」



DIO「――――他者の血を欲するなど、心の底から思うはずがないというのに」

DIO「ククク、ブラム・ストーカーが執筆した小説に出てくるドラキュラでもあるまいし。私の真の名はヴラド三世なのかね?
   馬鹿馬鹿しすぎて腹がよじれそうだ。へそで茶を沸かすとこのことか」

DIO「十字架やニンニクなどどうとも思っていないし、鏡にだって姿は映る。心臓に杭とかは、流石に確かめられないが。それに、このように太陽光を浴びても私の身体は灰にも――――」



『私は気分が悪い。別に日光を浴びてもそれが変わるとは思えない』

『けれど、なぜだか嫌な予感がした。高圧電流の流れる電流コードを素手で掴ませられるような……脳の中の危険信号が、激しく警鐘を鳴らしたのだ』



DIO「……くだらん。紫外線がシャットアウトされているとはいえ、その程度で吸血鬼は日光を克服し、無敵の存在になれるとでもいうのか」

DIO「ええい違う! そもそも私は吸血鬼などではない!! 日光に対する耐性が常人より弱いだけだ。そうに決まっている」

DIO「……ム、この左の手の甲の切り傷。さっきの金髪にやられたものか。完璧に挙動を読み切ったと思っていたが。もしや、気が狂ったときに最後っ屁でつけられたか」

DIO「まあいい、放っておけば数分で痕も残らんだろう。気にすることでは……」



『私が……跳び過ぎているのか、これはッ!?』

『……銃撃された傷跡が……なくなっている……!?』

『おそらくだけどね、DIO君。君の脳は、一度何かに貫かれている』



DIO「……なぜ、今こんなことを思い出す」

DIO「私の肉体が異常なのと、実は私の正体は吸血鬼だった、なんていうのは安直愚直の発想だ。イコールではないッ! 自分で自分を滑稽にするつもりか、DIO!」

DIO「チィ……。さらに散策を進めるつもりだったが、疲労感でやる気が削がれた。こんな状態でここの奴らと会話なぞしていたら反吐が出そうだ

DIO「寮に戻る、それしか考えないようにしよう。余計なことに囚われていては、余計に疲弊するだけだ……」


DIO「----くそッ、気分が悪い」

~★同時刻:夜★~

当麻「へぇ~、遊園地に行くことになったのか。アンタ、自分そういう子供っぽいのとは無縁なんで、って顔しているのに。意外だな」

DIO「否定はしないし、むしろ肯定しておく。だが、そのテ-マパーク内で開かれる講談会に興味があってな。仕方なく、そいつらと同行する羽目になってしまった」

当麻「○○テーマパークか。俺なんかは一生かかっても縁もなさそうな高額遊園地じゃねえかよちくしょうめぇ。無料券当てた人の運気がうらやましいです」

DIO「ふて腐れることもないだろう。遊園地の遊具は規模が違うだけで、滑り台とかが公園にも置いてあるじゃあないか。欲求を満たすならそこへ行けばいい」

当麻「何が悲しくて、小学校低学年やら幼稚園児達やらに混じってリアル高校生が遊ばなきゃならんのじゃ! 第一、その規模のデカさが遊園地の売りだっつうの!!」

DIO「ピーチクパーチク喚く奴だ。ならば私と変わるか?」

当麻「え、いいのか?」

DIO「ダメだ」

当麻「よし表でろコラァ!! だんだん粗雑で乱暴な正確になってきたぞお前! 上条パパがその捻くれた根性鍛え直しちゃるッ!!」

DIO「だから喧しいと言っている。読書の邪魔だぞ。それとも、その口を頭ごと地面に叩き伏せれば黙ってくれるというのかね」

当麻「へへっ、これでもこっちは喧嘩慣れしてる典型的な不良少年サマだぜ。一対多なら迷わず逃げるけど、タイマンならそれなりに場数こなしてきてるんだ。図体でかいだけで勝ち誇ってられないぜ?」

DIO「ほぉ……面白い、やってみろ。このDIOに対してッ!!」





DIO「……、」パンパン

当麻「」チーン

上条当麻…
『幻想殺し』
――――――完全敗北…死亡


当麻「ってぅおおい!? 勝手に殺すんじゃねえよ!!」

DIO「叩きのめしても黙らず、か。無意味な喧騒を起こしてしまったな」

当麻「そもそも腕のリーチが圧倒的に違いすぎだろ……2M近くの人間の腕は長すぎだ。綺麗かつ容赦のない鼻っ柱パンチに上条さん色んな理由で涙がこぼれそうです」

 

~★~

当麻「さぁ~て、あとは寝るだけか。そういやDIO、遊園地にはどんな面子で行くんだ? DIOの友達ってんだから、さぞかしむさくるしい……」

DIO「女だ」

当麻「……はい?」

DIO「中学生ぐらいの女四人ほどと出向くことになっている。その年頃になれば恥じらいや気品さを身に着けるものなのだが、ここの連中はどうもそれが欠けて品がない」

DIO「ったく、仮にもここは最大規模の教育機関だろう。なぜこうも気品のかけた連中がはびこっているんだ? 貧民街の腐った人種でもあるまいし……おい、当麻どうした」

当麻「は、犯罪だぞDIOさんよぉ!! そんな柔道部みたいな体格しておいて、かよわな中学生四人を連れまわすつもりか!?」

DIO「おい、何の話だ」

当麻「ダメだ、お前を土御門や青髪ピアスの領域に踏み込ませることなどできない! 目を覚ますんだ、ディオオオオオオオオオぶげりゃあ!?」バキャ

DIO「……寝ろ、阿呆が」

当麻「」チーン

DIO「いきなり立ち上がったと思えば意味の分からんことを喚き散らしおって……何だろりこんとは。リモコンの類似語か?」

DIO「ここであのクソガキ、土御門の名が出てくるのも不思議でしょうがない。あのガキ、次会ったときは知っていることを洗いざらい吐かせてやる」


DIO「……私のことを調べると言っていたあの男、土御門(下の名は知らんし興味ない)」

DIO「目的、手段、その他全て不明だが、ただ一つ言えること。奴は信用できない」

DIO「仮に、既に私の正体を掴んでいたとして。もしそうすれば、私の情報を握った奴がどう動くか……」

DIO「そういえば、奴の妹とかいう女が来ていたな。届け物、だったか?」

DIO「まさか、私の情報を無関係の妹に極秘裏に渡し、事情を知らない妹の手でそれを運んだ? いや、これは推測にすぎない」

DIO「そもそも、そこまでして私の情報を秘匿しておくほど価値のあるものかどうかすら怪しいところ。軽はずみな行動は控えねばならん」


DIO「…だが、もしそうだとすると……」

~★~

土御門「――で、今回俺はどんなデコイ(偽情報)を向こうに漏らせばいいんだ?」


「いいや、今回君をここに呼んだのは別件さ」


土御門「別件? なんだ、もしやドンパチする方か? それならグループを使えばいいが……」


「それも違う」


土御門「……もしや、あの大男に関してか」


「……、」


土御門「その無言は肯定と受け取るぞ。学園都市中に滞空回線を引っ張っているお前が、所属不明、身分不明、正体不明の輩の存在に気づいていないはずがない」


「……、」


土御門「俺も独自の網を使って片っ端から調べたさ。IDカードを保持していないっつうことは、まず学園都市の人間ではないことは確実」

土御門「しかし彼は非科学のものを否定はしていないが、未だ疑念を抱いてる節がある。この時点で、もう片方の線もあり得ない。実際、DIOという名の術者はどの組織にも存在しない」

土御門「流れの者、という懸念も残されている。が、これもかなり薄いだろう。流れだろうとなんだろうと、非科学を真に信じることができなければあれなど使えんしな」


「……、」


土御門「つまり、この俺が出した一つの結論はこういうことだ」

土御門「あの男、DIO。彼は、こちら(科学)側でもあちら(魔術)側でもない人間」

土御門「そうだろ? アレイスター」



アレイスター「……フフ」

今回の更新はここまでとなります!なんかきな臭い気がするけどこの後は遊園地なので結局シリアスなんかにはさせない

それと仕事の方が立て込んでいるので、一週間ほど更新はできないと思います。書き溜めもできるか危ういので、下手するともう少し遅くなるかも。でも波紋失踪は絶対にしない、魂を賭けてもいい

~★土御門の部屋★~

ガララ

DIO「上条当麻の隣部屋に住んでいる、と奴は前にこぼしていた。あの給仕服の女が土御門の奴からの届け物を運んだとなると、ここ以外には考えられない」

DIO「しかし、何だ。上条当麻と同質の部屋のようだが、内装は随分ごてごてしい。これらは肉体を鍛える器具か? こっちはダンベル。これは、逆さ吊りになって腹筋する物か」

DIO「どうやら、外見に寄らず己を鍛錬しているようだ。スポーツマンとしての鍛錬器具、にしては多種多様な道具が揃いすぎにも見えるが……」

DIO「おっと、くだらん詮索をしてる場合ではないな。いつ奴が帰宅してくるか分からん、さっさと届け物とやらを見つけなくては」





アレイスター「……君は、あの男をどう見る?」

土御門「アンノウン。何考えてるのか分からないから、安心して放っておくのは危険だな。どちらにも関係していないとはいったが、だからといって危険因子じゃないとは言い切れない」

アレイスター「フフ、間違っていないね。そう、君は間違っていない」


アレイスター「だからこそ、君は正解にはたどり着けないだろう」

土御門「何が言いたい、アレイスター?」

アレイスター「あの男は、『可能性』なのさ。この私でも創造できなかった、一つの『可能性』をあの男は持っている。それも、他ならぬ私の導きによって」

土御門「……お前、あの男を知っているのか?」

アレイスター「いや、知らないな。初めて見る顔だ」

アレイスター「だが、彼は間違った解釈をさらに捻じ曲げ、そしてそれを歪に昇華させたのを私は知っている。あの『可能性』ならば、プランの短縮にも一役買ってくれそうだ」

土御門「……つまりアレイスター、お前は俺にこう言いたいのか」

土御門「あの男、DIOを。これ以上詮索するな、と」


DIO「ええい、どこだ。夜目が効くため簡単に見つかるものだと思っていたが、机の上は書類だらけで探すのも一苦労だ」パラパラ

DIO「くっ、ここではないか。ならば他に怪しい所は……ムウ、向こうに段ボール箱があるぞ」

DIO「まさか、この箱が? 明らかに情報をまとめておくサイズではないが……そうなると、私のこととは無関係だったというのだろうか」

DIO「ご丁寧に張り紙まで貼ってあるな。どれどれ」


『絶対に開けちゃだめだぜい! 開けたら後悔することになるぞ!!』(血文字)


DIO「……開けてくれということだな」ビリビリビリィィィ

DIO「こ、これは――――!?」





土御門「どうなんだ、アレイスター。お前はあの男を利用して、何かえげつない策謀でも企てているんだろ? だから、あいつの素性を調べている俺が邪魔だったんだろう」

アレイスター「そうは言っていないさ。ただ、君はあの男を危険因子として見ることしかできていない。それは実に正しい観察眼だが、それ故にあの男の真の価値に気づけないでいる」

土御門「不発弾を警戒して何が悪いってんだ?」

アレイスター「その不発弾に、今まで見たこともないようなテクノロジーが使用されているとしたら、どうする? そのテクノロジーごとそれを爆破処理してしまうのも、一つの手ではあるがね」

土御門「……アレイスター。お前、やはりあの男を知っているだろ」

アレイスター「知らないさ、本当のことだ。なぜなら、私が知っているのは『彼』ではない」


アレイスター「彼が無意識にその身から放つ、世界の代わりとなり得る『器』。かつて私が追い求め、そしてついには一度諦めたそれのことを、私が知らないはずもないだろう?」




『貧乳が悩みの妹を助けるためにひたすら胸をもみしだく!!(72分)』

『突然美少女が「私、あなたの妹なんです!」と言ってきたら?(86分)』

『一男五女の妹ハーレム! より取り見取りの妹パラダイスにキュンキュン!?(120分)』


DIO「……、」プッツーン


土御門(はッ!? 今、俺の愛蔵コレクションにかつてない危機が迫っているのを感じた気がするにゃー!!)


土御門「ッ……。お前が一度追い求めたもの代物なんてのは、どれもこれもが超を何個付けても足りないような危険物ばかりだ。あの男もまた、そのリストの一人だったというわけか」

アレイスター「正確には『器』の方だがね。向こうのメカニズムはまだ完全に把握してないが、これはプランに余裕ができ次第進めていくつもりさ」

土御門(向こう? 科学が関係した物じゃないのか? だが、こいつは魔術にも精通しているはずだ。そんな人間が、未だに把握できていない法則などこの世にあるのか?) 

アレイスター「それと、君が各種に手を回して集めた彼の情報。よくぞあれほど集めたと褒めてあげたいところだ」

土御門「滞空回線で覗き見か……趣味が悪い。だったら知ってるだろ、あの男の異常性が」

アレイスター「……、」


土御門「少なすぎるんだよ、情報が。表の人間としても、裏の人間としても、あの男に関する情報がまるで集まらない」

土御門「本当の名前は? 生まれは? 過去に何をしていた? どうやってこの学園都市に入った? その目的は?」

土御門「そして、なぜ記憶を失ったのか?」

土御門「本当にこの世に生きている人間なのかと疑う、それこそ幽霊のようにあいつは希薄すぎる。科学にも、魔術にも、あいつが存在していた痕跡があまりにも薄すぎる」



DIO「……ガキのくだらん色沙汰のために、いったいオレはなにをやっていたんだ」グシャリ


土御門(!? また悪寒が!!)



アレイスター「それで、君はこれからどうする。私が目をつけているものに探りを入れているが、なぜかその情報は驚くほど集まらない。
       おっと、別に私は規制をかけていたりはしていないから、安心するといい」

アレイスター「もっとも、彼のことをさらに念入りに調べようとそうでなかろうと、私としてはどちらでも構わないのだがね」

土御門「……待ってろよ。とんでもない核心的なものを掴んで、その生命維持装置の中を埋め尽くすほどの一泡ふかしてやる」

アレイスター「それは楽しみだ。私もその日を心待ちにしているよ」


アレイスター「ただし、あれは少々いただけないが」

土御門「--ッ!」

アレイスター「今、君の仮住いにあるアレ。あれは現物として保管するには刺激が強すぎるものだ」

土御門「くっ……そこまで見通していやがったか。こっちも念入りに偽装工作してたつもりだったんだが。つくづく趣味の悪い奴だ」

アレイスター「褒め言葉として受け取っておくよ。あの書類には細工をして置いた。今頃それが発動している頃だ。心配ない、君の部屋を荒らすようなことはしないさ」

土御門「チッ……」


DIO「とんだ無駄足だったか……部屋に戻って続きを読むとしよう」


ボシュ!!


DIO「何だ? 何かが燃えるような音が聞こえたが……」

DIO「……これは、あのクソガキが段ボールに張っていた張り紙か? しかし、なぜ独りでに発火したのだろうか。薬品でも染み込ませておいたものを使用していたのか?」

DIO「幸い、火の粉が出るのではなく熱で炭と化す燃え方だから、火事や飛び火の心配はなさそうだが。証拠の隠滅まで計算しているとは、どうも抜かりのない男のようだが」



土御門(謎の男、DIO。有益な情報は軒並み集まらず、かといって闇に属しているような素振りや体の運びはしていない)

土御門(そんな正体不明すぎる男の、唯一にしてその根本に大きく近づけるような手がかり……)

土御門(昔、イギリスのある新聞会社が載せた、大学生同士のラグビー大会の見出しの一つ。それに載っていた、あの男と同じ顔、同じ名を持つ男……)


土御門(その名は、ディオ・ブランド―)


土御門(その男が通っていたという、ヒュー・ハドソン校。あの資料が消された今、この学校だけでも有力な手掛かりになるといいが……)

土御門(間違いなく関係しているはずだ。DIOと、ディオ・ブランドーの二人は、何か必ず繋がりがあるはずだ。例えそれが、『百年前以上』の人物の名だとしても)


チリチリチリチリ…


はいどうもお久しぶりです。ようやっと余裕ができてきたので執筆再開です。まあすぐにまた時間はなくなるんですが
次回からようやっと遊園地に入ることができますわ。やっと物語の三分の一ってところですわ……頑張らねば。

~★五日後★~

佐天「うわー! ここが○○テーマパークかぁ! 大きいですねぇ!!」

黒子「佐天さん、あんまりはしゃぎすぎると目立ちますわよ」

佐天「遊園地に来てはしゃぐなという方がおかしい話ですよ。今日一日は、お高くとまってたら損しますよ白井さん!」

初春「ほら、早く行きましょうよ! 待つ時間も惜しいです!」

黒子「初春まで……。全く、もう子供じゃないんですから」

御坂「アンタが言うか。いやー、しかし驚いたわね。この前突然電話がかかってきたと思ったら、まさか遊園地へのお誘いだなんて」

黒子「お姉様までこの日は用事がある、とはならずに済んでよかったですわ」

御坂「……そして、三日前に初春さんたちから聞いてはいたけど、本当に貴方もいるのね」

DIO「……不満かな?」

御坂「正直、ちょっとね。なんだかいけすかない野郎って印象があるし。まあ今日はせっかくの遊園地だし、そういうのは抜きにして気楽にいきましょ、互いにさ」


佐天「みんな何ぼさっとしてるんですかー! 早く入りましょうよ!!」

初春「限定パフェがなくなっちゃいます! 早く早く!」

御坂「ね?」

DIO「フン」


佐天「さーて、まずはあれ乗りましょうあれ! 遊園地の定番にして恐怖の象徴、ジェットコースター!!」

初春「いいや、その前に限定販売のパフェを食しに行くべきです! 私の今日一番の獲物なんですから!!」

御坂「はいはい、争わない争わない。何のために計画立ててきたのよ。そのための三日前の話し合いでしょう?」

黒子「まずは、その限定パフェとやらを買いにいきましょうか。この東ゲートから近いようですし」

初春「やった!」

佐天「そうでしたそうでした、うっかり忘れてたぜ」


佐天「あ、そうだDIOさん。三日前は何か用事でもあったんですか? 確か一八八支部に来てくださいって言ったと思ったんですけど……」

DIO「……そういえば言ってたかな」

佐天「要するに忘れてたんですね……」

黒子(故意に、かもしれませんけどね。あの方の嫌味ったらしい性格的に)


ウェイター「お待たせいたしました。こちらが当店一日数量限定、甘神降臨の祭壇パフェでございます」

初春「うはぁぁ!! まさかこのパフェを生で拝める日が来るなんて……!!」

DIO(おい、御坂)ヒソヒソ

御坂(何よ、貴方が小声だなんて珍しい。まあ、理由は明白だけども)ヒソヒソ

DIO(では再確認の意味も込めて問おう。あれは本当に『一人分』なんだな?)

御坂(……たぶん)

黒子(土台を三種のチョコレートで土や祭壇を再現、その周りは生クリームでコーティングして、祭壇チョコの周辺柔らかなホイップクリームを小さくいくつもつけて怪しげな蝋燭風に。
   あとは切り分けたバナナや血をイメージしたイチゴシロップ、そしてこの店特性の甘神様砂糖細工を祭壇の上に乗せて、仕上げに粉チョコを満遍なく振り分けて完成、と)

御坂(うわっ! 急に横から顔ださないでよ! びっくりするじゃない!)

黒子(おっとこれは失礼。お姉様がこの金髪キザ野郎と何やら怪しげな密会をしていらっしゃったもので、つい)フーフー

御坂(それじゃあそろそろ離れようか。鼻息荒いぞコラ)

DIO(……、)


DIO「太るぞ」

御坂「ちょっと! そこが一番小声で言うことでしょうが! 年頃の女の子に向かって失礼じゃないのさ!」

初春「甘いものは別腹なんです~♪ では、いただきます」パン

佐天「うわ、ものすごい真剣な表情と丁寧な動きでいただきます言ってる」

DIO「別腹ということは、その分いくつもの別の肉腹が増殖して――」

御坂「ストップ! あんたちょっと黙ってなさい!」

佐天「うへぇ~。すごいな初春。無言で黙々とあの量食い進んでるよ」

黒子「見てるだけでこっちがムカムカしてきますわね。食欲がなくなりそうですわ」

御坂「それで、初春さん。念願のパフェを食べたその感動のほどは?」



初春「……うーん、ちょっと期待しすぎたかなぁ」

「「「えっ?」」」

今日の更新はここまでです!書き溜めが進まないのも全部スマブラのせいだちくしょう


初春「確かに甘味はダントツでこだわってましたけど、いかんせん甘味同士のハーモニーにかけてましたね。あの店特性の砂糖細工の風味がチョコやバナナの匂いで消され気味なのも残念かなぁ」

佐天「あのね、初春。そんなさも当然のようにこちらに理解を求められても、こちらは結構対応に困るわけで」

初春「え~? あれは皆さんにも十分分かる範囲でしたよ? 粉チョコも結構偏りとか多かったし、土台のチョコはもう少しビターを加えればいい具合にクリームと合わせられる味だし」

御坂「ま、まあ気を取り直してさ。次行こ、次」

黒子「次は、コーヒーカップに乗るようですね。とりあえず向かいましょうか」

DIO「……本当に全部食べきるとはな。ところでそのコーヒーカップというのは?」

黒子「口で説明するより見た方が早いですわ。とりあえず行きましょう」





御坂「うわ、結構並んでるわねー。十五分待ちだって」

佐天「妙な人気があるんですよねー、コーヒーカップって。何でだろ?」

DIO「……何だこの巨大なカップは」

黒子「あれがコーヒーカップでございますわ」

DIO「いや、それは見れば一目瞭然だ。だが、なぜ人々はあの巨大なティーカップに乗り込み、そして無意味に回転を続けているのだ?
はっきり言って、何がしたいのか分からないのだが」

黒子「回転する椅子に座っている時、なぜだか無性に回りたくなる時がありますわよね? それと同じ原理が根本にあると思いますわ」

初春「あと、あの回転速度は手元にあるハンドルである程度自由に変えられるんです。思いっきりハンドルを回して、度胸とか疾走感を感じたいってのもあると思います」

DIO「分からんものだ。私はいいから、君たち四人で楽しんできたまえ」

佐天「ダメですよ! 言いましたよね、勝手な行動は控えてくださいって。せっかくこうやって大勢で来たんですから、ちゃんとDIOさんも参加してくださいよ」

DIO「……フン」

~★~

初春「ようやく順番が回ってきましたねー! 一つのカップに三人まで乗れるみたいですよ」

御坂「私たちは五人だから、三人と二人に別れて乗ることになるわね」

佐天「どう別れます? 私は誰でもいいですけど」

黒子「それでは、二人組の方はわたくしとお姉様ということで……」

御坂「却下。アンタと二人っきりは勘弁」

黒子「なぜですの!? 寮部屋の中では二人きりで、あんなに激しくした仲ではありませんか! 今更何も恥ずかしがることなど、あるはずがないですわ!!」

御坂「誤解されるような発言はやめんかい!!」

DIO「別に同性愛は恥などではない。スペインでは、同性愛同士の恋愛や結婚なども寛容的な姿勢を取っているし、かの有名なソクラテスやチャイコフスキーも同性愛者らしいしな」

御坂「そういう問題じゃないでしょうが! っつか、あんたかなり物知りなのね」

DIO「日本に焦点を当てると、有名なのが森蘭丸と織田信長公か。それと紫式部だったか? 彼女も同性愛者だと残されていたりもする」

御坂「でもそんなに詳しく知りたいわけでもないから!」

黒子「DIOさんの言うとおりですわ。何も怖がることはない。この黒子と共に、新たな道への扉を開きましょうお姉様ァァァーーーーッ!!!」


初春「それじゃあ、私と白井さんと御坂さんの組み合わせで」

黒子「――――えっ」

初春「それで、佐天さんとDIOさんは二人でカップに乗ってくださいね」

佐天「……え? え、ええっ!? 私とDIOさんの二人きり!?」

初春「さっき、誰とでもいいって言ってたじゃないですかー。佐天さんに二言はありませんよね」

佐天「なんで私限定で二言が許されていないの!?」

黒子「初春! あなたごときうすっぺらな藁の家が、深淵なる愛情のわたくしとお姉様の砦に踏み込んでくるんじゃありませんわ!!」

御坂「何が深淵なる目的だゴラァ!! もうそれで決定! これ以上騒ぐと他のお客さんにも迷惑かかるでしょうが!」

佐天「御坂さん。あなたもけっこう声張ってますよ」

DIO「……私の意見は」

「「「却下!!」」」

DIO「……分かったよ」


DIO(品性の欠片もないミソ猿共め。こんなしょうもないことで注目を集中させているんじゃあないぞ)

本日の更新はここまでです!うーむ、DIOの影が薄くなりがちになってしまう……だって終始無表情で貫きそうなんだもん

~★カップ内:御坂side★~

初春「あー、この何とも言えない楽しさがコーヒーカップの醍醐味ですよねぇ」グルグルグル

御坂「特別に何かがあるわけでもないのに、こうしてグルグル回ってるだけで面白いって不思議よねぇ」グルゥ~

御坂「それはそうと初春さん」

初春「何ですかー?」

御坂「さっきのあの時、グループ分けの時なんだけどさ。あれって、私たちが口論になって収拾つかなくなるのを止めるためにやったわけでしょ?」

黒子「おかげで黒子が念密に立てていたお姉様愛玩計画が台無しですの。どう責任とるおつもりですか」

御坂「じゃかあしい黙ってなさい」

初春「はい、そうですけど」

御坂「あれ、何か他意があったわけじゃないの?」

黒子「他意?」

初春「と、言いますと?」

御坂「こう言うのもあれなんだけどさ。初春さんにしては少し無理くり流れを持っていったっていうか」

黒子「この班の別れかたを望んでいた、と?」

御坂「何ていうか、ね。で、この別れ方の意味は私たちに用? それとも……向こうを二人きりにする意味は分からないけども」

黒子(……あー。なるほど、それでこの別れ方を)

初春「……全然、意味なんてないですよ? しいてあげるなら、早くコーヒーカップに乗りたかった。それだけです」

初春「(なーんて、嘘は流石に見抜かれるとは思いますけどね。でも、向こうを二人きりに出来ただけでも上出来上出来。あとはファイトだ、佐天さん! 私に感謝してくださいね!)」

御坂「……んー?」

~★カップ内:佐天side★~

DIO「……、」グルグル

佐天「……、」グルグルグル

DIO「……、」グルグル

佐天「……、」グルグルグル

DIO「……、」グルグル

佐天「き、今日は晴れてよかったですね!」

DIO「……ああ」グルグル


グルグルグルグルグルグル


佐天(超ォォーーー絶、気まずいッ!! 何でよりにもよってDIOさんと組ませたんだろ私。

佐天(会話続かないし、DIOさん顔全く変わらないし、楽しんでるどころか視察に来た偉い人みたいだし!)

佐天(じ、実はDIOさんも私と同じように会話が続かなくて困ってたり……はしてないねあの岩のような表情。まさに不動。恨むぞ初春ぅぅ!!)

アーデモナイコーデモナイ、ナニカキッカケヲ…


DIO「……佐天」

佐天「ひゃ、ひゃい!?」

DIO「お前は、この学園都市にいて楽しいか?」

佐天「楽しい、ですか?」

DIO「ああ。ここは能力の強さが全てなのだろう? その中で無能力者というのは、言ってしまえば落ちこぼれということだ」

佐天「うぐっ。直でグサリと来る言葉を……」

DIO「君の周囲には強力な能力者。例を挙げれば御坂美琴だ。彼女のような能力者に、劣等感や嫉妬を覚えないはずもあるまい」

DIO「何も感じなければ、そいつはただの豚だ。安堵と餌のために同類と集まり、抵抗もせずに醜く卑しく濁った声しかあげられぬ豚同然だ」

DIO「お前はどうなんだ、佐天涙子。お前もまた、牙を抜かれた猪もどきなのか?」


佐天「……そりゃあ、何も感じていないわけじゃありませんよ。私だって人間ですから、能力のある人を妬んだりしたことはあります」

DIO「ほう」


佐天「でも、ある時気づかされたんです。能力がないことが、イコール負け組なんかじゃあないってことに」

DIO「それはおかしいな。この学園都市は、能力の強さがそのまま成績となるのだろう? 自分は落第生でも構わない、と自暴自棄にでもなったのかね」

佐天「そんなんじゃないですよ。ただ、能力だけが人間の全てじゃない。能力が使えない人間だって、何もできないわけじゃないんだって、教えてもらっただけですから」

DIO「自分は能力が使えなくとも構わない、ということか。御坂美琴や白井黒子のような能力者とつるんでいながら。ん、そういえば初春はレベル0とは聞いていないが……」

佐天「能力は、そりゃ勿論開花させたいですよ。ただ、開花するまでの間、つまり今だって、楽しくないはずがない。そう思えるだけいいんですよ、私は」


DIO「……少し見直したぞ、佐天涙子。私はてっきり、お前は無能力者というレッテルに甘えて努力もせずに堕落した人間だと思っていた」

佐天「うわっ、心の中でなんてえぐい評価勝手に下してるんですか」

DIO「どうやら、お前の牙はまだもがれてはいないようだな。佐天、無能力者である君に私から一つ助言を与えよう」

佐天「助言?」


DIO「飢えろ、欲せ」

DIO「お前は何も『無い』のだから、それを埋めるべくただひたすらに欲し、喰らい、暴れろ。弱肉強食でさえ、飢えた弱者には関係のない節理だ」

佐天「は、はぁ……というか助言内容ずいぶんと物騒ですね」


佐天(……もしかして、DIOさんなりに私のことを気遣ってくれてるのかな。だとしてもかなりぶっきらぼうだけど……)

佐天(まあ、この人が笑顔で素直に大丈夫? なんて尋ねてくるのは逆に怖いしね。何であれ気にかけてくれてるのは、ちょっと嬉しいかな)

DIO「……何だその目は」

佐天「いえ、別に?」

DIO「……フン」

本日の更新はここまでです!遊園地、あとは何に乗せて遊ぼうか……どうせなら色々乗らせてみたいですしね、DIOインザ遊園地なんて見たことないし

~★~

御坂「いや~、やっぱりコーヒーカップは不思議な楽しさがあるわねぇ!」

黒子「そ、そうですわねお姉様……」

初春「……」ウップ

佐天「あ~、何があったか九割九分読み取れますが、オチ的にも聞いておきましょうか。大丈夫ですか?」

黒子「その無意味なご厚意に感謝して、こちらも答えて……うえっぷ」

御坂「だらしないわねぇ。そんな弱い三半規管で風紀委は員やっていけるのかしら?」

黒子「体内の電気系統をいじくって目が回らないようにしていたお姉様に言われたくありませんわ……」

御坂「げっ、何でバレたのかしら」

黒子「子供っぽいお姉様の考えなど、この黒子にはお見通ヤバイナンカウマレル」

初春「さっきのパフェが進化して帰ってきますよぉ」

佐天「ヤバい! うら若き乙女が出しちゃいけないようなダークマターを生み出そうとしてる!! お手洗い場はどこ!?」

DIO「……」

御坂「こんな時でも、アンタは知らん顔して仁王立ちなのね。つまらないの?」

DIO「いや、楽しいさ。知識では知っていたが、遊園地というのは初めて訪れた。知識だけでは体験しうることのないような経験をさせてもらった」

御坂「……ならいいけどさ。あまりみんなで来れないような遊園地に来たんだし、一人だけ唇への字にしてちゃ、アンタもみんなも楽しめないからね」

DIO「分かったよ。それよりも、可愛い後輩のあわれな辱めの方は放っておいてもいいのかね?」

御坂「え? うわ、ちょっと黒子ここはまずいって! 初春さんも頭の花が枯れ始めてるけど!?」

DIO「……馬鹿共め」


佐天「では、気を取り直して次のアトラクションに……二人とも大丈夫ですか?」

黒子「とりあえずは何とか……」

初春「私もどうにか収まりましたー。御坂さん、あまり荒っぽいことはやめてくださいよ!?」

御坂「あははー、ごめんごめん。友達と遊園地に行くだなんて初めてだから、ついはしゃいじゃって」

DIO「どうした。次の目的地とやらには行かんのか?」

佐天「おっとそうでした。次はですねー、これですね。『ヒーローナイト3D』! どうやら3Dコースターの類みたいです」

黒子「3Dというと、画面から飛び出してくるとかいうアレですよね。改めて考えると、学園都市にしては大人しめのアトラクションですわね」

佐天「むしろその飾らないタイトルからは想像もつかないほど、最新鋭の科学を駆使して開発されたアトラクションの可能性もありますよ?」

初春「まずは行ってみましょうよ。直接見てみないことには何も始まりませんし」



御坂「で、ここがそのアトラクションなわけね」

黒子「なんというか、結構SFチックなデザインの建物ですのね。わたくしはスーパーマンとそういう部類の方のヒーローを創造していたものですので」

佐天「早く並びましょうよ。ここも中々の込み具合みたいですし、面白いはずです!」

DIO「……、」

御坂「何よ、またもや不服そうな顔して。というかアンタほんと表情変わらないわね」

DIO「いや、何でもない。ただ何となく、ヒーローが嫌いなだけだ」

御坂「?」

DIO「……忘れろ。それよりも、ここを楽しめと言ったのはお前だろう。私もそれなりに楽しんでいる。だからお前もいちいち気にするな」

御坂「……ならいいけどさ」


御坂(だったらせめて、少しは楽しそうに笑ったりしなさいよね)


スタッフ「それでは、間もなく我らがヒーローが守る街、『ミッドナイトタウン』行きのバスが発車致します! 当街はかの有名なヒーローである『イーグルマン』が……」

佐天「おっ、モノローグから始まるとは結構本格的ですね。流石は○○テーマパーク、手の抜きどころがない」

初春「パフェはそんなに美味しくなかったですけどねぇ」

佐天「お黙り。アンタの目的はパフェしかないのか」

DIO「おい白井。この体の動きを阻害するバーはなんだ。」ミキミキミキ

黒子「何も彼も、それは安全バーですわよDIOさん。害はないので無意味に暴れても……ってちょっとDIOさん? 何だか鉄棒がミシミシきしみをあげているような……」

御坂「ねぇ初春さん。イーグルマンってもしかして、この前ここのCMで流れてたアレじゃない?」

初春「え? ……あ、もしかしてあの上半身が裸で、下半身が炎に包まれていた鳥頭のアレのことですか?」

御坂「そ、あの妙にムキムキでメラメラしてる鳥男。なんかすごい必殺技とか撃ってたわね。発火能力の高位能力者がモチーフなのかしら」

DIO「……炎を操る鳥頭、か。なぜだか好かんビジュアルだ」

黒子「そういえば初春、貴方今日はちゃんと腕章は持ってきているでしょうね」

初春「もちろんですよー。ちゃんとポケットに……あれ? あれ、あれれ?」

黒子「……ほんと、そのお花畑な頭は一度ぶっ飛ばさないと治らない気がしますわね」

スタッフ(何だろ、あそこの中学生と大男のグループ。物凄い不自然な組み合わせだ。そしてうるさい)

今日の更新はここまでです!最近目に見えて更新頻度落ちましたが、改善できるかは分からないですたい。時間があれば書いてあげる、は崩さないので、のんびりやってきます

~★~

『ヒャフハハハハハ!! 貴様ら全員、このインヴェードナイトの晩御飯の刺身にしてくれるわぁ!!』

『きゃああああ!! 怪人が出たわーー!!』


御坂「おお、ホントに飛び出してくるわね。あの銀色の甲冑騎士のレイピアの迫力もなかなか」

初春(御坂さん、もうちょいボリューム下げて喋りましょう。こういうアトラクションは世界観に入り込ませるのが目的ですし)

佐天「ほへぇ~……」

初春(あれくらい世界観に入り込めればたぶん完璧です)

御坂(早っ。ばっちしのめり込んでる…)


『待てい! 街の平和を乱す悪の手先よ!』

『こ、この声は!? 彼が来てくれたんだわ!!』

『何だぁ? 何者だ、姿を見せい!!』


御坂(お、来るか?)


『たぎる炎は正義の証! 鋭い眼光で悪を捉え! 平和を乱す者に爆熱する、熱き英雄の魂!!』

Eマン『荒ぶる炎の魔術師! イーグルマン、ここに見参ッ!!』ゴッバオン!!


(((だ、ださいッ!!)))

佐天(かっこいいな~)

DIO(……、)


『イーグルマンだ!! イーグルマンが来てくれたぞ!!』

『イーグルマーン!! 怪人をやっつけてー!!』

Eマン『怪人インヴェードナイトよ。貴様の悪行もここまでだ!!』

Iナイト『イーグルマンだと? 貴様なんぞ、明日の昼ご飯のささみにしてくれるわ!』


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


DIO「……、」

黒子(いかがしましたかDIOさん。三割増しでいけ好かない顔をしていらっしゃいますが)

DIO(……何度見ても、どうもイーグルマンのデザインが気に食わなくてな。とくに理由はないが、なぜだかいい気分にならない。敵怪人の騎士も同様だ)

黒子(子供向けとしてはややリアルな作りですものね。違和感ぐらいはあって当然かと思いますが)

DIO(そういうものとは、また違うような気もするのだが)


Iナイト『くらえイーグルマン!! 十年かけて磨き上げたこの俺様の剣さばきをォーーッ!!』ビュババババババ


御坂(うおっ!? 突然顔に風が!?)

初春(機械か何かで風を出して、より臨場感を醸し出しているんですよ。しかし3D効果も相まって、すごい迫力です)


Eマン『くっ! こいつ、強い!!』


佐天(イーグルマンが防戦一方だ!? あの騎士、かなり強い!!)

御坂(ホント、のめり込んでるのね。ある意味羨ましいというか)


Iナイト『まだまだァァァ!! 俺のスピードは剣さばきだけではない!』ズゥラララァ


佐天(なに! 残像を生み出すほど自ら高速で動き回ることで、敵の数が合計六体にも増えてしまった!)

黒子(佐天さん。あなた、解説役とか向いているかもしれませんわよ)


Iナイト『くらえぃ! このインヴェードナイトの必殺技----幻影瞬斬光(イリュージョンオミニダイレクトスラッシュ)!!』ズバババババ

Eマン『くっ!? 残像が残るほどのスピードで動きながら攻撃してくるとは、まさに荒れ狂う斬撃の竜巻!! このままでは手が出せずにやられてしまう!』


御坂(うお、さらに大迫力! まるで目の前に針山地獄が飛び出してきたような洗練かつ威圧ある技だわ)

黒子(肌をなでる風もより激しくなってきましたわ。さあ、ここからどう逆転するのか)


Iナイト『ハハハハハッ! ホラホラホラホラホラァーーーッ!!』

Eマン『ぐうぅ……! ム、あれはッ』


佐天(今イーグルマンが見たものは……なるほど、そういう作戦なわけね!)

DIO(……私には全て子供だましにしか見えないのだがね)


Eマン『クワァ!!』シュバッ

Iナイト『ふん! 逃がすと思っているのかマヌケがぁ~!』


初春(イーグルマンが後退しましたね。しかしその先は狭い路地裏……さらに不利になってしまいました)


Iナイト『フヒホハハハハ! 自ら動きの制限される場所に逃げ込むとは、血迷ったかイーグルマン!!

Iナイト『それとも、この狭苦しくて暗くジメリとした場所を、己の死に場所と選んだか? フフフフフフ』

Eマン『……』


黒子(――さて、あとはイーグルマンがどうやってあの敵を倒すかですわね)

初春(え? でも、イーグルマンは今ピンチなんじゃ……)

黒子(貴方は脳内パッパカパーなんですの? まあいいですわ、よーく見てごらんなさい)

初春(???)


Iナイト『さあ、そろそろスライスして焼き鳥の刺身にしてくれよう。とどめだ! 幻影瞬斬――――』

Eマン『――――フフフ、かかったな』


ズガバキィ!!


Iナイト『ぐああっ!? な、何だ! いつの間にか、壁に激突してしまっている!?』

Eマン『周りをよく見ろ! 確かにここは狭い通路。その状況でお前の分身連携攻撃を受けていたら、私は確実にやられていただろう』

Eマン『しかし、それはお前とて同じことが言える!』バァーン!!

Eマン『お前の必殺、幻影瞬斬光は高速で動き回って分身を生み出す技。それほどの速度で動き回れば、周囲を囲う壁に勢いよく衝突せざるを得ない!!』

Iナイト『な、なんだとォォーーッ!? 貴様、この俺を油断させるため、わざと逃げ場のない通路に誘ったのか!?』


初春(なるほど! この手がありましたか! すぐさま相手の技の性質を見切り、それを破るための適切な場所を発見しておびき寄せるとは、流石はイーグルマン!)

御坂(初春さん、前からイーグルマンのこと知ってたっけ?)

初春(いえ、知りませんよ?)


Eマン『焼かれるのはどちらのことか、これからはっきりさせてやろう!!』ゴオオオオオオオオ


佐天(おお! 周囲の気温が急激に上昇してきましたよ! 熱い! 燃える展開!)

御坂(CMでやってるアレをようやく放つわけね)

黒子(アレ? アレとはなんですの?)

御坂(口で説明するより出てくるわよ、ほら)


Eマン『悪の化身を燃やし尽くす!! エックスフレイムタイフーン!!』ボブシュウウウ

Iナイト『ぐわああああああああ!!』チュドーン

『やったー! イーグルマンが勝ったー!!』

『ばんざーい! ばんざーい!』


~こうして、ミッドナイトタウンの平和は今日も守られた。しかし、怪人たちは再び現れるだろう。がんばれ、イーグルマン。負けるな、イーグルマン!!~



DIO「……」ハァ

本日の更新はここまでになります。ノリで書いた、後悔はしていない


佐天「いやー、大迫力でしたね!! あの敵の連続突きのところとか、今にも顔をハチの巣にされそうなほどの臨場感!」

御坂「確かに予想よりは楽しめたわね。しかし、一発限りの敵役にしては妙にキャラ濃かったなー、あの騎士」

DIO「……すまないが、少し手洗い場へ向かうよ、待っていてくれ」

初春「分かりましたー。それで、次はどこに行くんでしたっけ?」

御坂「待ってね。えーと、次は……」



ジャー

DIO(この遊園地に入ってから、まだ時間はそれほど経っていない。時刻は昼前だし、この先もっといろいろなところを奴らは回っていくのだろう)

DIO(後半へ行くほど過激なものに乗っていきそうなものだが……正直に言おう。早速、もう限界だ)

DIO(この調子であと半日以上、彼女らと付き合えというのか? すぐに騒ぐし行動はまとまらないし、今は目立ちたくない私からしたら一番最悪な展開だぞ)

DIO(しかし、表面上の友好は深めておかなければ。風紀委員にレベル5、まだまだ利用価値のある相手だ。上手く付き合っていかねば)

DIO(……そういえば、幽霊泥棒は今何をしているのか。またもや私をターゲットにしているのか、もしくは別の誰かを狙っているか。いずれにせよ、この人ごみでは大それた行動はとれまい)

DIO(さて、次は確か、恐竜をモチーフにしたアトラクションだったか……。考古学の知識はある程度残っているし、違和感なく対応はできるだろう)

DIO(すべては、あの講演会の内容を聞くために。今は凌ぎ耐える時だ)

~★~

御坂「あー、午前中だってのにかなりのアトラクション堪能したー。そろそろお昼だし、どこかでご飯食べよっか」

佐天「どこで食べるかまでは決めてませんでしたよね。つまり行き当たりばったり!」

黒子「とはいえ、この時間帯は必然的に人も多くなりますわ。決めるならさっさと店に入らないと、あっという間に席が埋まってしまいますわよ」

初春「うーん、地図を見る限り一番近いのはレストランのようですね。そこに入りましょうか」



黒子「ふー。とりあえずはひと段落って感じですわね」

初春「太古の世界ダイナソーパークに、ほんとに浮かぶメリーゴーランド、そして映画とかで見たタイムトラベルマシーン。色々回りましたからねー」

佐天「しかし遊び足りなーーい!! 午後もたくさん遊びつくしてやりますからねー!!」

DIO「……講談会は何時からだったかな」

初春「15時20分からですね。場所はエレクトロン広場、ポケットティッシュも配ってるみたいですよ」

DIO「なるほど、了解した」

黒子「先程からそれのことばかり気にしておられますが、そーんなに気になる内容なのですか? 確かに幽霊と聞いて何も思わないわけではありませんが」

DIO「好奇心からだよ、他意はない」

黒子「ふーん」

御坂「黒子、あんまりDIOさんにばっか絡んでんじゃないわよ。何がそんなに気に食わないんだか」

黒子「いいんですのよ、むしろ構ってあげて差し上げているのですわ。はっ、お姉様まさか! わたくしが殿方と会話しているのを見て嫉妬して……!」

御坂「あーはいはい。お、注文してた品がきたみたいよ」

佐天「はいはーい。おろしハンバーグ定食は私ですよーっと」

初春「カボチャを煮込んだホクホク夏野菜シチューはまだですかー?」

佐天「まだ暑いってのに、よくシチューなんて頼む気になったね初春」

初春「冬、寒い部屋の中こたつに入りながらアイスをほおばる。止められないんですよねー」

佐天「分かるわそれ。あ、卵丼二つ来ましたね」

黒子「それはわたくしとお姉様の分ですわ。こっちにくださいな」

御坂「DIOさんの分がまだ来てないわね。何頼んだの?」

DIO「……フライドポテトだが」

佐天「またですか……というかフライドポテトってそんなに遅いっけ」


DIO「ところでだ、御坂」

御坂「何かしら」

DIO「君と上条当麻の二人は何かしら恋愛関係にあるのかね」

御坂「ぶっふぉおおおおぉぉぉぉッ!!?」

黒子「何事ですかお姉様いきなり吹き出して!?」

御坂「な、何でもない!」

黒子「何でもなくないですわよ! あーあー、端正なお顔に大根おろしがついて白く汚れてしまっていますわ。今すぐお拭き取りになって……」

御坂「自分で拭くから! ちょっと待ってなさい!」


御坂(ちょっとアンタ! いきなり何言ってるのよ、びっくりするじゃない!!)ヒソヒソ

DIO(どうした。なぜ声を低くして喋る?)

御坂(うっさいバカ! 今の言葉、他のみんなには……)


佐天「ところで初春、今日は何色の下着穿いてきたの?」

初春「ぶふっ!? い、いきなり何聞くんですか!?」


御坂(……ふいー、なんとか聞かれてないみたいね。幸いだわ)

DIO「おい、さっきから何を一人でブツブツと……」

御坂(声低くしなさいっての! いい、私とあいつはそんな間柄じゃないからね。これしっかり頭に覚えておきなさいよ!)

DIO(それにしては、随分と顔が赤いのはどう説明する?)

御坂(誰のよ)

DIO(君だよ、御坂美琴)

御坂(へ?)

御坂(……いーから! とにかく、次そんなつまんないこと尋ねたらぶっ飛ばすからね! このことは忘れなさいよ!)

DIO(覚えろと言ったり忘れろと言ったり、どっちをすればいいのか)

御坂(どっちも!)

DIO(……分かったよ)

今回の更新はここまでです。決して乱闘してたり狩りしてたりして遅くなっているわけではありません(戒め)
いや、楽しいんだもんさ……おじさんが楽しいのが悪いんですよ


佐天「よーし! 腹ごしらえも済んだし、行くぜ午後の部!」

DIO「講談会までは二時間弱ある。上手い具合に計画と時間を合わせてくれるとありがたい」

佐天「わーってますって。次は人気アトラクションの一つ、アクアダイブマウンテンです!!」

初春「今年の学園都市内遊園地、恋人と乗りたいアトラクションランキング三位。スリルと爽快感、清涼感を一度に満喫できて夏にピッタリ!! だそうです」

DIO「ようは、水たまりに長靴を履いたまま飛び込むようなものか」

初春「あ、あながち遠くもないですが……夢がない例えですよ」

黒子「こいび――」

御坂「言わせないからね」

黒子「早い! せめてきちんとツッコミが欲しいと思う黒子は既に変な習慣が身についてしまってますわ! お姉様はせっかち屋さんですわねー」

御坂「鞭すらも飴ととらえるか、恐ろしい娘」

佐天「結局、実際乗って体感した方が早いってことですよ。さ、行きましょ行きましょ!」

DIO「押さなくても自分で歩ける」



黒子「うへー。流石は人気アトラクション。かなりの長蛇の列ですわね」

初春「40分待ちみたいですよ。どうします?」

佐天「決まってるでしょう! もちろん乗ります! こんな面白いものを諦めて帰れるかってんだ!」

黒子「しかし、一時間弱もここで拘束されるのはしんどいですわねー」

御坂「私、何か飲み物でも買ってこようか。何飲む?」

初春「いいんですか? じゃあ、私はいちごおでんで!」

佐天「私は無難にきなこ練乳をお願いします」

黒子「お姉様と同じもので構いませんわ」

御坂「そ。じゃ、私と黒子はヤシの実サイダーってことで。DIOさんは何飲む?」


DIO「……一つ、聞いてもいいかな」

御坂「何かしら」

DIO「今の……あー、何だ。いちごおでん? だったか。きなこ練乳やらヤシの実サイダーやら、どうにも聞きなれない単語の応酬があってね。
すまないが、私の分かる言語で会話してくれないか?」

佐天「あー、DIOさん知らないんでしたっけ」

初春「学園都市っていうのは実験の都市ですから、新たな食品の実験とかも行ってたりするんですよ。その影響で、ここには試作段階で考案された食品が並んでたり」

御坂「意外においしければそれでいいし、予想通りまずけりゃそれでおしまい。種類もどんどん増えるし、味の探求としては飽きないんじゃないかしら」

DIO「……そういえば、前に佐天が奇妙なハンバーグを食べていたな。あれもその一種か」

御坂「そーゆーこと。ってなわけで、何飲む? 熊のスープカレーとか、ウィンナーソーセージ珈琲なんてのもあるし、チャレンジしてみる?」

DIO「学園都市街でも売ってる普通の飲み物をくれ」


スタッフ「それでは、ここからここまでの人は中へお進みくださーい」

初春「やった! ついに入れましたよ!」

御坂「予定よりちょっと遅かったわね。結局一時間ぐらい待ったかな」

スタッフ「それでは、次に乗る方はこちらで合羽を受け取ってください」

DIO「……カッパ?」

佐天「あれ、DIOさん『合羽』知らないんですか?」

DIO「いや、知らないわけではないのだが。しかし、『河童』を着るとはどういうことだ? それとも切るということか?」

佐天「--? そのまんまの意味ですよ。これから乗るアトラクションは水しぶきがすごいので、合羽を着て身体を濡らさないように、って向こう側のサービスです」

DIO「確かに、河童は水と深い関わりがある、と本で目を通したことはあるが……まさか、その皮を剥いでその皮膚を身にまとうとは。なるほど、切るとは水を切るということか」

佐天「んー? なんだか難しい解釈してるみたい様ですけど、たぶんそんな感じです。とりあえず合羽受け取りに行きましょうよ」

DIO「ああ。空想上とされる生き物をこの目で見られるとは、良い機会に巡り合えたものだ」

佐天「え?」

DIO「何だ」

佐天「いや……もしかしてDIOさん、河童と勘違――」


御坂「はい、これ。佐天さんとDIOさんの分もとってきてあげたから」

黒子「何だかサイズがちょっと大きいような。まあ借り物ですし、文句も言えたことではありませんけど」

初春「だけど、何で緑色なんでしょうね。普通は半透明とかですけど」

御坂「河童とかけてる、とかだったりして」

黒子「やめてくださいお姉様、親父ギャグなんて品がブチ壊れですわよ」

DIO「ほう、これが河童か。やはり緑色の皮膚をしているのか。ご丁寧に服として加工されているのが少し残念だが」


佐天「……なんか、このままでもいいよね」

結局書き溜めもできなくて、その場で書き上げたものを二つほど投下。とりあえず今回はここまでです
どうにかしてペースを戻していかねば……こんなのんびりペースですが、お付き合いお願いいたします

~★コースター乗車後★~

初春「うわー、すごいジャングルですね。あの鳥、本物ですよ」

黒子「ご丁寧に、気温や湿度まで本物そっくりに調節されてますわね……おかげで服の中が蒸れますわ」

御坂「ほんとよねー。少しやりすぎな気もする。あー暑い暑い」パタパタ

黒子「お姉様、スカートで扇ぐのはお止めになってくださいまし。公共の場ですし、何よりも淑女としてはしたないですわ!」

御坂「だって暑いじゃないさ。うえーい」

黒子「はぁ。常盤台のエースという自覚をもっとお持ちになられて欲しいですわ」

DIO「……、」

黒子「DIOさんも少し顔色が悪いですわね。暑いのは苦手ですか?」

DIO「好きではないな。まったく、上半身だけでも服を取っ払いたいものだ」

黒子「……意外とワイルドな冗談をおっしゃるのですね」

DIO「冗談? 今、私は何もジョークは言っていないのだが」

黒子「えっ」

DIO「いちいち奇妙な言動をとるのだな。変わっている、と周りから言われているだろう」

黒子「たぶん、一番変わっているのは貴方の方かと……露出狂?」ボソッ


初春「わわっ、何だか少しずつ流れが速くなってきてませんか?」グーン

黒子「出口が近づいてきている証拠ですわ。おうふ、揺れも大きくなってきましたわね。水しぶきが心地いい」

御坂「風も出てきたわね。あー、すごい気持ちいい……けど、ホントに速くなってきてない?」

佐天「まるで本物の水流の流れみたいですねー。緊迫感がスゴイ!」

御坂「楽しんでるわね、ほんと」


佐天「あっ、光が見えましたよ。あそこが多分出口です! 楽しみだなー!」ワクワク


ガックン


黒子「ぬおっ。さ、さらに速度が上がりましたわ」

御坂「ちょ、ちょっと。このペースでのあれはまずいんじゃないの!?」グググーン

初春「あわわわわ。すっごく怖くなってきました」

佐天「ようし、このまま全速力でレッツゴーだ!!」

初春「佐天さんほんとその度胸凄いですよね!?」


ユルッ…


黒子「……あら、今度は速度がゆっくりになっていって……」

DIO「お前たち。出口とやらに出るぞ」

黒子「えっ、もうそこまで――――」






キャアアアアアアアアアアアアアヒャッホオオオウイアアアアアア!!


ズアッバァン!!! パシャッ



スタッフ「皆様、お疲れ様です。あの蒸し暑い熱帯エリアを味わってからの流れ落ちる滝の爽快感と清涼感、お楽しみいただけたでしょうか」

御坂「なんというか……疲れた」

黒子「確かに清涼感や爽快感は凄まじかったですが……正直、やりすぎだと思いますわ」

佐天「あー楽しかったー」

黒子「佐天さんもブレませんわね……」


スタッフ「そしてですね。実は、皆様が落下する瞬間をカメラで撮影していたのです。向こうで受け取れますので、よろしければどうぞ」

御坂「でっ!? 落下直前って、どんな顔してたか覚えてないわよ! 恥ずかしいから止めときましょ、ね?」

佐天「すいませーん。その写真五枚ください!!」シュバッ

御坂「って、行くの早ッ!」

黒子「わたくしの情けない表情が撮られているのはいい気はしませんが……お姉様のあられもないお顔を眺めることができるのは魅力的ですし」

御坂「アンタの分は電撃で燃やしてやるから覚悟なさい」

黒子「お姉様ったら、そんなに照れてしまわれて~」

DIO「……」フキフキ

初春「DIOさん相変わらずの無表情だなぁ……」


初春(あ、そうだ。もしかしたら、あの写真にDIOさんのびっくりした顔が写ってるかも?)

初春「佐天さん、私も見たいですー」

佐天「おう! はい、これ初春の分」

初春「よーし、どれどれ~?」



佐天…にっこり満喫スマイル
御坂…ひきつりやや恐怖
黒子…どさくさに紛れて御坂に抱き着く
初春…びっくりパニック大恐怖!!



DIO…mバシャァア

初春「……って、なんでこんなピンポイントで水しぶきがかかってるんですか!? DIOさんの顔だけモザイクみたいに被さって見えない!」

DIO「どうした初春。突然声を荒げるとは」

初春「い、いえ。何でも……ある意味奇跡ショットだけどさ~」

DIO「……何のことやら」

本日、というより今週はここまでです。アトラクション編はここで一度区切り、そろそろ講談会が始まる時間
定番の観覧車は、たぶん後々登場かも

~★~

黒子「しっかしまあ、綺麗に顔だけ隠されてしまいしたわねDIOさん。何だか犯人の顔モザイクみたいになっていて、こちらとしては存分に笑いを提供していただいたのですが」

初春「つまらないなー」ボソリ

佐天「さて、お次は……?」


DIO「すまないが佐天。私はここで別行動をとらせてもらう」

佐天「えっ? あ、もしかして……」

DIO「今は午後三時。もうすぐ講談会が始まる」

佐天「うっそ、もうそんなに時間経ってました?」

御坂「さっきの奴が思いのほか並んでたから、予想以上に時間くっちゃったからね」

DIO「そういうことだ。だから、君たちは他のところを自由に回るといい。何かと行動を共にしたがっているが、本当のところはもっと色々な施設を回りたいだろう?」

初春「でも、せっかく五人で来たんですし、私たちもそこに向かいますよ? ホットワードの幽霊と聞いて、何も思っていないわけではありませんし」

DIO「話を聞くだけなら私一人でも十分だろう。子供というのは遊ぶのが仕事、風紀委員であろうとそれは根底であり変わらない」

黒子「……なんだか無理やりな気もしますけどね」

御坂「それじゃ、お言葉に甘えましょうよ」

黒子「お姉様?」

御坂「DIOさんもそういってくれてるし、私たちは私たちで楽しもうじゃない。はい、次行こ次―」

初春「ちょ、御坂さん押さないでくださいよー!」ズゾザザザザ

黒子「なぜわたくしは首根っこ掴まれて引きずられる形なのですかお姉様―、ぐえっ」ズルズル

佐天「と、とにかく後で来ますからねー!」


DIO「……、」



ズル ズル ズル ズル

黒子「あのー、お姉様? 先程の強引な別れ方はいったい……」

御坂「いいからいいから。私にだって色々考えがあるのよ」

黒子「考え、とは?」

御坂「全員が全員、あのバカみたいに会う人会う人に裏表のない親切を安売りしていくような人間ばかりじゃない、ってわけ」

黒子「そのバカが誰なのかは今度追及するとして。ということは、お姉様も少なからず彼を疑っている、ということで?」

御坂「……少し、ね。粗暴で口も悪い安いチンピラみたいなやつだけど、口調や仕草のどこかに含まれる紳士的、そして色気にも近い何か……。怪しいというより、異色なのよね」

黒子「この学園都市ではそれさえも埋もれてしまいがちですが……って、いつまでわたくしは冷たい地面を引きずりの刑なのですか?」

御坂「アンタがさっきのアトラクションで私の胸をもんだ罰が済むまで」

黒子「き、気づいていらっしゃいましたか~、アハハ……」


御坂(あんだけ私たちを鬱陶しがってたあいつだ。もしかしたら、私たちに見られたらマズい何かを隠しているのかもしれない)

御坂(確かにあの男は、少しぶっきらぼうだけどダンディな態度を崩さない紳士。裏があるとはあんまり思えない……。でも、なんとなく全幅の信頼をおいてはいけないような気がする)

御坂(私の疑いすぎ、で済めばいいんだけどね。あとで黒子に空間移動してもらって、こっそりDIOを覗き見してもらえば、一人で怪しい動きをしてるか分かるはず)


佐天「こうなったら、DIOさんの分もしっかり楽しまなきゃねー。御坂さん、次のアトラクション行きましょう!」

御坂「あっ、うん。分かった」

黒子「ああ、お姉様直々の導きによって誘われるのも、それはそれでいいですわ」ズルズル

御坂「抗体つくるのは早っ! なんでそう適応力高いのよアンタは」

今週の更新はここまでとなります。そろそろ時間がとれそうなので、上手くいけば今週ぐらいから少しはペースあげれるかもです!


DIO「……ようやっと引き離すことができたか。とんでもなく重い荷物だったが、しばらくは背負う必要もない」

DIO「さて、エレクトロン広場に向かうとしよう。遊園地のなかで講談会を開くのだ、席は空いているだろう」


DIO(御坂たちを強引に引き離しにかかったのには理由がある。鬱陶しかったから、というのも含まれるが、それとはまた別に一つある)

DIO(――――見られているのだ。背中に粘りついて離れぬスライムのような視線が、視界の外からでも感じるほどに)

DIO(あのアトラクションから下車した直後に感じていた。あの時私の周りにいたのは、例の騒音女どもと係員のみ。まさか係員が私を尾行するはずもない)

DIO(なれば、と彼女たちを一度私から遠ざけてみた。その結果、視線は変わらず私の背中に突き刺さったままだ)

DIO(最早確定だ。『幽霊泥棒』、奴に違いない。奴が、再び私に何らかの作意を試みようとしているのだ)


DIO「ちっ、だが……。ただでさえのこの人ごみの中、音も姿も気配も全く感じさせずに忍び寄る奴を探知することは厳しい」

DIO「今何も手を出してこないところを見ると、向こうも人だかりで動きつらいとみた」

DIO「いくらなんでも大量の目がある中で物が勝手に動けば、大声で居場所を叫んでいるようなもの。人数の少なくなる機会をうかがっているのだろう」

DIO「なぜ奴がこうまでして私を付け狙うのか……その理由は定かではない。が、いつまでもそれを放っておくほど私は楽観的ではない」


DIO「――――だからこその講談会だ。必ずあぶりだしてやろう、貴様の正体を」

~★エレクトロン広場★~


ざわ…ざわ…


DIO「……ふむ、思っていたよりもなかなかの人数が集まっているようだ。
   学園都市に住んでいながらのオカルト好きか、好奇心から来たものか、もしくは幽霊泥棒の被害者か―――私には関係のないことだが」

DIO「都合よく前の席が一つ空いているな。少し小さめだが……構わん」ドカッ


“間もなく講談会が開始いたします。参加される方は、席の方におかけになってお待ちください”


DIO「……始まるか」

DIO(背後からの視線は消えない。幽霊泥棒もこの講談を聞くつもりか? 幽霊が幽霊についての話を聞きたがるとは)

DIO(が、早々笑っていられぬ。もしここで幽霊泥棒に関する情報か何かが出回れば、本人がすぐさま騒ぎを起こすだろう……主に私に対してのな)

DIO(敵を知るために訪れた場所で、その敵を背後に従えているとは。奴らを引き離しておいて正解だったな……二つも相手にしてられん)

DIO「フン、女子供の面倒はしばらくは御免だな。学園の集合体であるここに居続ける限り、逃れられぬ定めだが」

「……、」

DIO(早速隣にいたか。悪びれる素振りなどしないがな。ここのガキも女も見事に面倒な奴等ばかりだ。女でガキはさらにくどい)

DIO(こいつもまさにそれだが、何かと騒ぎ出すような騒音マシーンではないようだな。淑やかとはまた別だが、標準としてこの程度の静けさぐらい持ち合わせられんのかね)

「…………、」

DIO「……?」

DIO(しかし、隣のピンク色のジャージの女、どこを見ている? 視線は下を向いて地面を凝視しているようにしか見えないが……)


「――――ぐぅ」


DIO(――――コイツ、目を開けながら眠っているッ!)

DIO「……そうと分かれば気にする必要もないか。いかんな、疑心暗鬼が過ぎてどうにもいかん」


「----おい、兄ちゃん」


DIO「……誰だ?」




浜面「そこ、あらかじめ俺がとってた席なんだけどさ……」

今回はここまでです。少し伸びてしまって申し訳ない!


浜面(あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 「おれは二人分の飲み物を買うために少し席を立ったら、いつのまにかそこに黄色いマッチョがいた」)

浜面(な… 何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何が起こったのかわからなかった)

浜面(頭がどうにかなりそうだった…。遠慮だとか謝罪だとか、そんなチャチもんは断じてねえ。もっと恐ろしい図々しさを味わったぜ……)


浜面「――――じゃなくてよ。聞こえなかったか? そこ、俺がとっておいた席なんだけど」

DIO「ああ、そうか。聞こえたぞ。向こうにも席があるからそっちを使うといい」

浜面「ふぅよかった。耳ツンポとかじゃあないみたいで。じゃ、そっち座るわ。サンキュー」


コツ コツ コツ


浜面「じゃねええええええ!! なんで俺が新たに席探す形になってんだよ! そこは俺の席なんだっての!」ドダダダダダダダ

DIO「なんだやかましい。だから理解したと言っているだろう」

浜面「じゃあどけよ! 腕組んで足組んで、もう組むとこありませんってとこまで組みまくって椅子に座ってるんじゃねえ!!」

DIO「お前が席を離れたのだろう。一度席を立てばそれはもうお前の椅子ではない」

浜面「俺のカバン置いといたよな!? ここは俺が座ってましたって証のマイカバンが椅子の上にあったはずなんだけど!」

DIO「……ああ、これか」グチャア

浜面「何で上からずっしり押しつぶして座ってんだよ! 普通どけてから座るだろうが! というか物があったら普通座らないし」

DIO「敷物かと思ったぞ。それにしてはボロくて固くていまいちだったがな」

浜面「やかましい。とにかく、他に席はあるだろ? 早くそこどいてくれよ」

DIO「なぜそこまでしてこの席にこだわる? それこそお前が他の席を探せばよかろう」

浜面「おま…いや、今はよそう。そこのピンクのジャージ着た女の子、俺の連れなんだよ。正確には俺が連れなんだが」

DIO「ピンク……」


「ぐー、ぐー」


DIO「この目を開けて眠る不気味な女の子のことか」

浜面「そうそいつだ。そいつ置いて離れるわけにもいかないし、じゃないと俺がひどい目にあうし。これでわかったろ?」

DIO「ならばそいつを連れて別の席へ座ればいいわけだな」

浜面「お前ホント嫌な奴だな!!」



「ぐー」


浜面「くそう、まさか近くのおばさんに席を譲ってもらうことになるとは……。優しさと申し訳なさが身に染みる」

DIO「……、」

浜面「知らん顔して座ってるけどな、お前が原因なんだぞ? ほんと器の小さい奴だぜ」

DIO「私は一度を決めたことは絶対に曲げん主義でね」

浜面「いい性格だな羨ましいぜっ。とにかく、隣だからってこっちにちょっかい出してくんじゃねえぞ」

DIO「最初から気に掛けてもいなかったがな」

浜面「こ、この野郎ぉ……」ワナワナ


“本日は皆様、お集まりいただき誠にありがとうございます”


DIO「ム、始まったか」

浜面「おい滝壺、始まるから起きろ―。お前が見てみたいって言い出したんだろ?」

「ぐー」

浜面「あ、だめだこりゃ」



「えー、皆様。本日はお集まりいただいて、本当にありがとうございます。それでは早速、本日お越しくださった方に出てきてもらいましょう。月詠小萌さんです!」

月詠「はいはーい! 今日は皆さんよろしくでーす!」トテトテ


ザワ…ザワ…

ダレダ……コドモ?……ムスメサン?……ハァハァ……


浜面「おいおい、子供が出てきたぞ。学者さんのお子さんか?」

DIO「齢十にも満たないガキが学者のフリとは、随分と自由な世の中になったものだな。くだらん、帰るか……」

小萌「ちょ、ちょっとみなさん!? なんでびしっと登場しただけでそこまでざわつくのですか!? 学者は私です! こう見えても大人なんですから!」

浜面「おーおー。ただの付き添いだと思ってひと眠りかけようと思ってたけど、こいつは少し面白くなりそうだな。って、おいアンタ。席立ってどうしたよ」

DIO「子供の戯言には付き合ってられんのでな。大方どこかのボンボンが、自分のガキの我がままを金で無理やり叶えさせたとかだろう」


小萌「むー。埒があきませんね。せっかく上条ちゃんの補習を切り上げてこちらに出向いたというのに。いいです、勝手にはじめちゃいますからねー!」

司会「ちょ、ちょっと月詠先生!? 最初は掴みのトークでお客さんの気を引き込むって手筈では……」

小萌「嫌な意味で気を引いたから十分です! 失礼しちゃうなー、全く。それと、あの人まだお見えにならないのですか?」ヒソヒソ

司会「それがまだ……連絡も来てません。どうか、到着まで先生一人で何とか持たせてください」ヒソヒソ

小萌「あっちの分野はあまり専門ではないのですが……仕方ありませんね。事前に打ち合わせしていたところをアレンジしてみます」


浜面「ほら、どうやら始まるみたいだぞ。そう言わずに耳を傾けてみたらどうだ?」

DIO「……フン」ドカッ

今回の更新分はここまでです。年末は面白いゲームがありすぎて困っちゃうね()


小萌「とりあえずは落ち着いたようですね。では改めて、月詠小萌です。普段はとある高校の教師をしていまして、専門は社会心理学や環境心理学など。まあ色々やってるわけです」

小萌「本来ならもう一人、学者の方が来られる予定なのですが、都合上遅れが出てしまっているそうです。なので、その方が到着するまで私が軽く説明でもしちゃいます」


浜面「とある高校の教師ねぇ。あそこは突出して何かがすごいわけでもない、普通の高校だと聞いてたけど、なんだってそこの教師がこんなことしてるんだか」

DIO「……、」

DIO(どうやら幽霊の専門家というわけでもなさそうだな。この鼻ピアスの言葉がそのままの意味ならば、優秀な教師と断定もできない。もう一人の学者とやらに期待するしかないか)

小萌「さてさて、あまり本題とは関係のない長話は意味がないので、とっとと本題に入っちゃいましょう。そう、幽霊は科学で作れるのか! という題名でしたよね、確か」

小萌「えー、無駄に引っ張っても盛り上がるわけでもないですし、ばっさり結論から述べちゃいましょか。ズバリ、可能です!」


オォー


DIO「まあ、与太話として聞いてやるのもいいだろう。どの道あいつらから逃げる口実の一つだったのだ、抜けたとして行く当てなどない」

浜面「なんだ、お前も誰かと来てたのか? 実は俺たちもそうなんだと、運よく無料券が五人分当たってさ」

DIO「……ほう?」

浜面「ほんとはこいつ、滝壺と二人で来たかったんだが、その無料券が五人揃っていないと意味がないっていう意味わかんねぇ仕様でよ。仕方なく残り三人も来たわけだが……」

DIO「それらとは、行動を共にしていないようだが」

浜面「あいつらは興味ないから来ねぇ、ってだけだ。第一、長時間相手してたらこっちの身が持たねえよ」

DIO「同情するよ、お前には」

浜面「はん、一人で寂しく遊園地来てるお前に言われても全然響かないわい」

DIO「……本当、同情だけはしてやろう」


小萌「そもそも、一口に幽霊と言っても、実は様々な分類に分かれているということを知っていますか? 宙を漂っている一般的なイメージの幽霊は、浮遊霊と呼ばれていますね」

滝壺「んー……。あれ、はまづら。何してるの」

浜面「やーっと起きたか滝壺。お前が見たいってんだから来たのに、早々眠りこけたからどうしようかと焦ったぞ」

DIO(こいつがその滝壺か。第一印象は、よくて『マヌケ』とか『ドンくさい』といったところだな。さて、これからどうするか)

滝壺「……隣の黄色いのは誰?」

浜面「あ? 知らない奴だよ、気にするな」

DIO(今のところは、期待値に吊り合わない情報しか手に入らないだろう。頃合いを見て席を立ちたいところだが、まずは遅れてくる学者とやらの正体を知りたい)

DIO(それに、今この場を離れると御坂たちと再び合流せざるをえなくなってしまう)

DIO(それだけは避けたい。こちらの動きを拘束されると厄介なうえに、あの御坂という女。奴め、どうにもオレを警戒している節がある)

DIO(白井も元からオレには排他的、加えて御坂をお姉様だとか呼び神格化しているくらいだ。奴らに組まれると面倒なことになるだろう。ボロを見せないためにも、接触は最低限に抑えたいところ)

DIO「おいお前。ここには一人用のアトラクションはあるか」

浜面「お前! たった今説明を他人で切り上げたのに話しかけてくるんじゃねえよ! あと俺はお前じゃなくて浜面だ!」

DIO「お前お前と喧しい奴だ。それに、名前まで名乗られたら他人ぶるこちらがきつくなってしまうのだが」

浜面「あっ」

DIO「名乗られた以上、返すのがマナーだな。私はDIO。それで、一人用アトラクションはあるかと聞いている」

浜面「なんでそういう所だけは礼儀正しいんだよ。一人用? メリーゴーランドにでも乗ってたらどうだ?」

DIO「それはもう見てきた。浮遊して回転する奴だな。他には」

浜面「(見てきた?)他にっつったてよぉ……」

滝壺「……はまづら。結局誰なの、その大きい黄色の人」

浜面「礼儀知らずだよ。滝壺は気にすることないさ、放っておけ」


DIO(一人用のアトラクションに乗り込んで姿を眩ますというのも、どうやら厳しいと見た方が良いか)

お久しぶりです、ただでさえ長い更新期間をさらに開けてしまって申し訳ない!別にスマブラやポケモンにつられたわけではありません、断じて

そろそろ年末。忙しい時期ですが、どうにかこうにか時間を見つけてゆっくり更新していきます。完結させるで


小萌「――であるからして、ざっと幽霊だけでもこれくらいのタイプに分かれるわけなのですよ」


オォー


DIO「子供の幽霊図鑑を聞きに来たわけではないのだが……。遅れている学者が到着するまでは暇で仕方がない」

浜面「お前、あの人のこと下に見過ぎじゃねえか? 専門じゃないって公言してたけど、少なくとも俺たちよりは色々知ってるだろうし」

DIO「私たちよりは、ではダメだ。それのさらに上、専門のトップを突き詰めるほどの情報が私には必要なのだ」

浜面「いったい、何でそこまで欲しがるのやら。あ、もしかしてお前、最近噂の幽霊泥棒に何か盗られたのか?」

DIO「似たようなものだ」

浜面「そいつはご愁傷様だな。でも、あんなもん放っておいても風紀委員か警備員がトっ捕まえてくれんじゃないのかね」

DIO「だといいがな」


小萌「それで、さきほど私は幽霊は科学で作ることができる! と言いましたよね」

小萌「実は、ちょっぴり嘘をついてました。作れるのは本当の幽霊、というわけではないのですよ」


ザワザワ……ウソ?……ドウイウコト……?


DIO「……本当の幽霊ではない?」ピクッ

浜面「まあ、死者の霊魂そのものを作り出すわけじゃねえだろうな。そんなのできたら、それは科学じゃなくて非科学だ」

DIO「……非科学、か」

小萌「それではいったい何が出来上がるんだコノヤロー! というとですね……」

司会「月読先生。ようやくあの人が到着しました!」コソコソ

小萌「おっ、ようやく来ましたね! これ以上は私から話してもいいものか迷ってたので、見方によってはベストタイミングです!」ヒソヒソ


DIO「……何か囁き合っているな。どうやら、ようやっと遅れていた専門家が到着したという話のようだが」

浜面「えっ、お前この距離で聞こえるのか? もしかしてお前、音波系の能力者?」

DIO「違うが。少し耳がいい程度だ」

浜面「いや少しったってお前……十メートル近く離れてる人間の内緒話聞けるぐらい耳が良いって、コウモリですかとしか言いようがないぞこっちは」

DIO「ならば勝手にそう言っておけ。そら、来るみたいだぞ」

浜面「お、おう……」


小萌「さて、私たちが作れるのは霊ではなく何なのか。それを説明するのは私より、もっとそっちに特化した人に教えてもらった方が、より理解が深まるというもの」

小萌「と、いうわけで。ここからは選手交代! ただいま到着したこの方に教えていただきましょーう」


司会“それでは登場していただきましょう! AIM拡散力場の専門家、人呼んで『AIM伝道者(メッセンジャー)』―――――――木山春生先生です!”



木山「あー、どうも。こんにちは皆さん、私が木山春生です」ノロノロ


滝壺「……AIM、専門家?」ピクッ

DIO「……打って変わって、あの子供とは生気が逆転したような奴が出てきたな」

浜面「木山、春生? 最近その名前どこかで聞いた気がしたんだがな……。何だっけかなぁ」


木山「えー、本日はこんな講談会なんぞにお集まりいただいてありがとうございます。私自身、こんなに人が集まると思ってなかったので」

木山「あっ、あと遅れた理由は研究のし過ぎで寝坊しただけです。気にしないでください」

小萌「だーっ! 木山先生、そんなこと言ったら威厳とかなくなっちゃうじゃないですか! これから皆さんに幽霊とAIM拡散力場の関連性を教えていくのに!」プリプリ

木山「威厳ですか。昔、先生をしていたことはありますが、そんなこと一時も考えたことなかったですね。流石は現役講師の言葉、ありがたく肝に銘じておきます」

小萌「……フン、どうせ私はなめられやすい体格ですよー。木山先生は、見た目の方は威厳抜群ですものねー、男子に対して」

木山「はぁ。私のような起伏に乏しい身体に、劣情を催す男性がいればいいのですが」

小萌「カッチーンと来ましたよ今ッ! 初対面なのにズケズケと無自覚に煽っていくそのスタイル、素晴らしく腹が立つ!」

司会“お、お二人とも! 話が逸れすぎちゃってますよ! このままじゃ二人の威厳がなくなってしまいますよ!?”


ワハハハハハハハ!!


DIO「……何のコントだ、これは。頼みの綱の専門家もこの有様だというのか」

滝壺「……AIM。……専門家」

浜面「何だっけな~、木山木山木山。フレンダ辺りから、そんな名前の話をちろっと聞いたような気がしたんだが……」

新年、明けましておめでとうございました。今年もゆるーい感じで進めていきます故、よろしくお願いいたします。

ところで木山先生って生徒たちにどんな感じの授業してたんでしょうね。あのローテンションペースで結構深いところまで話したりするのかな

木山「さて、本日お集まりいただいたみなさん。重ね重ねですが、わざわざこのような会にお越しいただいてありがとうございます」

木山「あまり前置きに力を入れるとみなさんも飽きるでしょうし、私も疲れるので嫌です。なので、手早く本題に入ってしまいましょう。月詠先生、どこまで話されましたっけ」

小萌「えーと、科学で幽霊は作れないけど、それに近しいものなら再現することができます、というところまでは説明しました」

木山「ふむ、それだと色々と手間が省けますね。助かります」

DIO「……、」


木山「みなさん。紹介していただいた通り、私はAIM拡散力場というものを研究させていただいております。知っての通りこれは……念のため聞いてみるか」

木山「そこの黄色い殿方。貴方ではなく大柄な方。そう、貴方の隣ですね」

DIO「……私のことか?」

浜面「びびったァ、一瞬俺のことかと思ったぞ。いきなりこっちに指差してくるんだからよ」

浜面「大丈夫、浜面は黄色くない。どっちかっていうとまだ青い方だから」

浜面「滝壺、俺はそれをどう解釈したらいいんだ? 青二才ってことか、ケツが青いって解釈したらいいのか?」

DIO「喧しいぞ青草男。隣で喚くな」

浜面「あおくさ……!?」

DIO「木山教授、とお呼びした方がよろしいかな? 実は私は、学園都市の人間ではなく外から来た者なのだ。
  用事を終えて、息抜きにたまたまここを訪れたものだから、貴方が求める最低限の知識に答えられるか不安なのだが……」


ヘェ……メズラシイネ……ドンナヨウジダロウ……


DIO(しかし、それは嘘だッ)

DIO(その程度の知識、当麻の教科書を何度も見返して既に頭に叩き込んである。ここにいる出来の悪いマヌケ共よりは知を深めたつもりだが、専門家相手ではこちらの中途半端な博識がバレるのは何かと面倒だ)

DIO(そうして、オレが答えられぬのなら、あの女は私のようなAIM拡散力場の知識に疎い者のために説明をする。一般の者にも分かりやすい解釈でな。オレはその『一般常識』を見極めねばらならない)

DIO(ここの情報を得ようと知識を深めた分、オレは並の学生より賢くなりすぎた。外の者であるだろうオレが、何かの拍子でそれがバレて、さらになぜそんなに詳しいのかと問い詰められると厄介沙汰になってしまう)

DIO(情報を集めねばならないのは変わらんが、私自身の口にある程度の蓋を閉じなくてはならない。この女に指名されたのは偶然だが、幸運だった。ついでに専門家目線の『一般常識』を、学べるだけ学ばせてもらおうか)


木山「それはそれは、ごくろうさまです。外から来た上にここへ来ていただけるとは、私としても嬉しいものです。それでは貴方を含めたAIM拡散力場をあまりわかってない方々のために、まずは復習しましょうか」

DIO(フン、読み通りッ)


木山「AIM拡散力場とは、能力者が無意識に発する磁場のようなものです。本人が能力を使ってもつかってなくても、AIM拡散力場というのは常にその身体から放たれています」

木山「これはとても微弱で、専用の機械がないと計測することはできません。そして、このAIM拡散力場を計測することによって、能力者の『自分だけの現実』を調査することができます」


月詠「つまりAIM拡散力場とは

   ① 能力者のみが発する微弱な力場
   ② それを計測することで能力者を調べられる
   ③ それは無自覚に発せられている
   
   ということです!」


DIO「……なるほど、これが一般レベルの理解度か」

浜面「へぇー、うっすらぼんやりとしか理解してなかったけど、改めて説明されると不思議なもんだな。ますます滝壺の能力の強さが分かるぜ」

滝壺「ありがとう、浜面」

DIO(……このガキ、そのAIM拡散力場に関する何かしらの能力を有しているのか? まあ、今は気にすることではないか)

木山「それで、話を戻しましょう。なぜ幽霊話のはずが、学校で習うような話になってしまったのだろうか、と思う方もそろそろいるでしょう」


木山「当然関係あります。なぜなら、先程月詠先生が仰られた幽霊に似た何かとは、ズバリこのAIM拡散力場のことなのです」

DIO「……何ッ?」


本日の更新はここまでです。
ついに始まりましたね、エジプト編。DIO様が亡くなられる辺りでこの物語を閉じることができれば、何か運命のようなものを引き寄せらるのではないかと思ってたり。嘘ですなるべく早く更新しますッ



ザワザワ……ドウイウコト……?


木山「例えば、念動力は物を動かすことができます。それは私たちが触れなくてもいい距離のものを動かしたり、押したりすることができます」グイィー

小萌「ちょ、き、木山先生。何で私は今押されてるのでしょうか」

木山「念動力を使う場合、こういう風に強く物を動かすこともできればッ」バチコーン

小萌「あだっ!?」

木山「……優しく触れるという芸当も可能です。すいません先生、丁度いい押しやすさだったので」

小萌「つ、次からは一声かけてからお願いします……」

木山「想像してみてください。貴方は今、このように背中をグイィーッと押されたとします。その場合、貴方は何に押されたと考えますか? そこの黒フードの女の子」

黒フード「……そりゃ、押したんだからそこには何かいるよな。人とか」

木山「そうですね。しかし、もしそれが念動力によって押されたとしたら? 当然、そこには誰もいません」

木山「確かに背中を押されたのに、振り返ってみたらそこには誰もいなかった。この時、一瞬貴方の脳裏にはこのような言葉がよぎるのではないのでしょうか?」


木山「――――幽霊にでも触られたか? と」


ザワ……ザワザワ……


木山「もちろん、その考えはすぐに否定されるでしょう。この学園都市にそんなオカルト、あるはずがないと。どうせどこかの誰かの悪戯だろうと考えますね」

木山「実際、そうでしょう。この学園都市で起こるオカルトじみた話などは、全てその根本に悪戯好きの学生やら理由づけられた科学があることが多い。早い話、必ず出どころがいます」

木山「しかし、誰が出どころなのか分からず、それでも先の説明した幽霊に近い現象を引き起こしてしまうケースも存在するのです。それが――――」

DIO「……AIM拡散力場、か」

浜面「え?」

DIO「あの女が説明したとおり、AIM拡散力場は能力者が無自覚に発している能力だ。自分でコントロールしているわけでも、何か意図があるわけでもない」

DIO「念動力の能力者が発するAIM拡散力場は、そのままごく微弱な念動力だ。しかし、その微弱な操縦不能の念動力というだけで、まるでそこに見えない何かがいるように思えないかね?」

浜面「……突然草陰が揺れるとか、か。でもよ、そのごく微弱な念動力じゃ、幽霊を勘違いするには力が足りなくないか?」

滝壺「力なら、あるよ。はまづら」

浜面「滝壺? どういうことだよ」

滝壺「念動力の能力者は、一人じゃない。いっぱいいる。そんな人数のAIM拡散力場が重なった念動力は、まるで幽霊みたいに強く何かを起こすこともできるはず」

浜面「そ、そうか……。ここの学生分たちのAIM拡散力場が重なったら、それこそ人一人分くらいの押す力は出そうだな……」


木山「――――ですが、これはあくまで机上の空論にすぎません」

DIO「……何だと?」


木山「そもそも、ただでさえ無意識に散らばっているAIM拡散力場を一か所にまとめあげることが難しいのです。AIM拡散力場はとても微弱かつ繊細で、複数のAIM拡散力場を合わせることがまず困難です」

木山「また、AIM拡散力場の発信源となっている能力者たちも、何らかの方法で同調させない限りAIM拡散力場の波長を合わせることは厳しいでしょう。
   自分の脳と他人の脳の波長を合わせる、と言い換えると難しさが伝わりますかね」

木山「念動力の能力者たちの脳をネットワークのように複数つないでいって、それで初めて先に説明した現象を起こすことができるかもしれません。実際に試したことはないのですが」


浜面「何だ、確証あっての話かと思ったぜ。でも理論上可能なら、近いうちにこの学園都市ならやり遂げそうだけどな」

滝壺「AIM拡散力場。分からないことが多すぎて、私もよく分かってない」

浜面「分かってないって……お前それでいいのか。いつもどういう風に見てるんだよ」

滝壺「……そこにいる、みたいな」

浜面「超感覚的ですね……」


木山「幽霊のように意識をもった見えない何か、を作り上げることは不可能です。ですが、運動エネルギーを持った不可視のもの、なら理論上作ることができます」

木山「最近世間を賑わせている『幽霊泥棒』。あれの正体は未だつかめていませんが、その正体は案外、その机上の空論が偶然成功してしまった産物、なのかもしれませんよ?」


木山「さて、私からは以上です。ここからは質問時間を設けていますので、何か分からないことがあれば遠慮なく質問してください。月詠先生にも質問していいと思います」

小萌「勝手に決めないでくださいよ! ま、まあ先生ですから質問にきっちり答えていくつもりですけどね。さあさあ、お姉さんに聞きたいことがあったらどんどん投げかけるですよー!」


ワイワイガヤガヤ


DIO「…………、」ガタッ

浜面「ん? 行っちまうのか。あんなに熱心に耳傾けてたのに、質問とかしに行かなくてもいいのか?」

DIO「必要ない。知りたいことは知ることができた。あとは、他をどうやって埋めるかだけだ」カツ カツ カツ


浜面「……行っちまった。なんだか不思議な奴だったな」

今回の更新はここまでです!ようやっと講談会終わった……長くなって申し訳ない。そろそろ常盤四人組も再登場させてあげたいところ



カツ カツ カツ


DIO「……、」


カツ カツ カツ ピタッ


DIO「……AIM拡散力場、か」


DIO(なるほど、幽霊ではなく、幽霊と思わせる現象ならこの学園都市にいくつも存在する。その中で最も幽霊に近しい認識ができるのが、そのAIM拡散力場の集合体ということか)

DIO(念動力で肌を触れば誰かに触られたように感じられ、発火能力でそばに謎の体温を感じ取らせることもでき、匂香能力で匂いのようなものも残せる)

DIO(確かに、これではまるで見えない『ヒト』そのものを誤認してしまうだろう。無意識下で気ままに現象を引き起こす、困った透明体をな)


DIO「――――だがッ!」

DIO(それに『意思』はあるか? それに『目的』はあるか? それを証明する『手段』は何か?
   AIM拡散力場の集合体、ということだけでは説明がつかない現象もまだ残されていることに変わりはない)

DIO(今回の講談会。素晴らしい内容だったこと、認めよう。AIM拡散力場の専門家が立てた仮説に有益な情報があったことも認めよう)

DIO(しかしッ! これですべてが分かったわけでもない上に、全く関係のない情報を掴んでしまったかもしれない。思考の幅が広がったことには感謝するが、それで脱線し全く違う結論に達しては意味がないのだ)

DIO(一つの小さな間違いを愚かしく信じ込んでしまえば、そこからたてられたものは全てまやかしの真実となる。そんなことは御免だな)


DIO「……さて。これからどうしたものか」





黒子「…………、」


黒子(お姉様に言われた通り、あの男を見張ってはいましたが……。特にこれといいた怪しい行動をとった動きは見られませんでしたわ。せいぜい一般の方に迷惑をかけた程度か)

黒子(風紀委員としては十分に見逃せない問題なのですけどね……それよりも!)

黒子(なんで木山春生がここに来たんですの!? 乱雑開放以降全く姿を見かけなかったのに……まさか、また何か企んでいるのでは?)

黒子(いえいえ、彼女の目的であった枝先ちゃんたち含め他の生徒は全員目覚めた。彼女が悪事に手を染めることは最早ない……。
   でも、一応お姉様には報告しておきますか)


DIO「」ブツブツ

黒子(相も変わらずあの男は独り言。ここからじゃあまり聞き取れませんが、これ以上接近してリスクを冒す真似はしたくありませんし)


DIO「」ブツブツ

黒子(……これ以上は時間の無駄、ですわね。ひとまず転移して、皆のところに戻り――――)



DIO「――――」ジロリッ



黒子(――――ッ!!)シュン





黒子「ハッ、ハッ、ハッ!」ドキン!!ドキン!!


黒子(み、見られた!? わたくしとしたことが、焦って思わず別の場所に飛んでしまいましたわ)

黒子(……気のせいですわ。わたくしがいた場所は、あの男から南30M離れた木の陰。いくら常盤台の制服が物珍しいとはいえこの人ごみ、正確にわたくしの姿を捉えることなどできていないはず)

黒子(たまたまこちらを見ただけ、見たものはわたくしではなく他の何かに決まってる。取り乱したわたくしの方が恥ずかしくて、顔から火が出そうですわ。早く戻りましょう)


黒子(……、)

黒子(あの男の視線。わたくしに向けられたものではないとはいえ、とてつもなく冷たく、残忍だった。全身の血をキンキンに冷やされた氷水に換えられたかのようにゾッとしましたわ)

黒子(目があった瞬間に脳内に浮かんだ、心臓を氷のような手で握りつぶされるイメージ。やはりあの男、普通の人間とは思えない)シュン



DIO「――――フン、乳臭いネズミめが」

今回はここまでとなります。そろそろずっこけ四人組が戻ってこれそうです。長かった~
どうでもいいことですが、土御門がチャカして出てきたときはちょっとニヤリとしました

~★二十分後★~

佐天「いやー、すごかったですね、イーグルマンパレード! 巨大イーグルマンオブジェの両手から吹きだす自在に動く炎の鞭とか、口から火の鳥の形をした炎を吐き出すとか!」

初春「何だか、今日だけですごく衝撃的なキャラでした。まさかイーグルマンにあんな結末がまっていたなんて……」

佐天「泣くな初春。イーグルマンは望んでああなったのだから……」

初春「はいッ! 私たちが、彼の気高き精神を受け継ぎましょう!」


黒子「……ちょっと目を離してたら、いったい何があったのでしょうか。イーグルマンが悪の親玉であるダークイレイズを追い詰めたところまでは一緒に見てましたが」

御坂「仕方がないのよ黒子。イーグルマンもあれを出されたら……」グスッ

黒子「だから、そのあれが何なんですの!? 佐天も初春もお姉様も感化されすぎでは!?」

御坂「佐天さんがビデオ録画してたから、黒子はあとでそれ見てみなさい。しかし黒子……」


御坂「戻ってきたってことは、何かあったから?」ヒソヒソ

黒子「逆、ですわね。あまりにも何もなさ過ぎて、手を引いてきました。講談会の途中から三十分ほど見張ってみましたが。とくにこれといった動きは……」ヒソヒソ

黒子(あの恐ろしい視線は、特に関係ないでしょうし)

御坂「そう。それじゃあ、やっぱり私の疑いすぎね。あとで謝っておかないと」

黒子「それよりもお姉様、聞いてください! その講談会に、あの木山春生が来ていたんですの! それも教鞭を振るう側で!」

御坂「き、木山春生!? 今までどこに行ったのかも分からなかったのに、なんであいつが!?」

初春「え、木山さんがどうかしたんですか?」

御坂「あ、いや……」

佐天「ところで、次はどこに向かってるんですか? この先の方角はさっき行きましたけど」

黒子「DIOさんですわ。講談会も終わってますし、合流してしまおうかと思いまして」

佐天「あー、なるほど。あっ、あそこのベンチに座ってる大柄の金髪の人がそうじゃないですか?」

初春「あ、本当だ。服装はちょっとおしゃれなだけなのに、遠目でもよく目立ちますね」

黒子「学園都市じゃ、あそこまで体格のいい人なんて多くはありませんからね」

佐天「……ん? 隣に誰か座ってるような」

黒子「隣?」





DIO「――――つまりだね。このDIOが思うに、AIM拡散力場に意思を持たせるのには、その基礎となる念話能力、念視能力、念聴能力を素体にした新たな能力の発生が必要不可欠なのだ」

DIO「それにより、能力自身が視て、聴かせ、能力そのものに『思考』の概念を持たせなければならない。能力は能力、という考えに捕らわれていては、次なるステップへ踏み出せないと思うのだ。
  そこのところ、教授はどう考える?」

木山「それは面白い発想だ。能力に『考える力』を与えるということは、私も考え付かなかった。機械に人の心を宿せるかという実験は数あれど、これは試したものはいないだろうな」

木山「そうなると必要になってくるのは、君があげた念視、念聴系能力者の他にも、シナプスの代わりになる電気系統の能力者も必要になってくるかもしれない。ところで、どうも今日は暑くないか?」


黒子「」アングリ


DIO「そこまで暑いかね? 日本の夏は世界的に見ても中間程度だとは思うが。私はそこまで暑いとは思わない。見ろ、汗一つ掻いていないぞ」

木山「そうか、君は暑さに強いのだな。生憎私はそこまで頑丈にできていなくてね、脱いでも構わないか」

DIO「別に止める理由もないが……ん?」


ドダダダダダダダダダダダダ


御坂「脱ぐなァーーーッ!!」ガシィ

木山「うお、何だ? 突然人の手を掴むとは、随分とフレンドリーな子だ。でも私は服を脱ぎたい、離してくれないか」

御坂「あんたの脱ぐは! 度が超えてるでしょうが!」ハァハァ

木山「……おや。君は、御坂美琴じゃないか。久しぶりだな、どうしてここに?」

御坂「こっちの台詞よ! あの後行方をくらましたと思ってたら、突然ここで変な会を開いてたりして!」ユサユサユサ

木山「いやー、相変わらず勇ましい限りだ。その分では、これから何があっても大丈夫そうだ」ガクガクガクガク

黒子「お、お姉様。流石にそれは揺すりすぎでは?」

御坂「あ、アンタねぇ~。ちっとは人の話を……」

初春「木山さん、お久しぶりですー!」

佐天「木山さんもここに来てたんですね」

木山「おやおや、君たちも一緒だったか。久しぶりだ。君たちも元気そうでよかった」


DIO「……白井、一つ質問させてもらおう。君たちは、その、なんだ。知り合いだったのか」

黒子「知り合いというか……。まあ、知り合いですわ」

DIO「そうか(顔が広いな……厄介な)」


御坂「……で。どういう経緯で、こんな珍妙な組み合わせができたわけ?」

DIO「私だ」

御坂「ディ、DIOさんが?」

DIO「ああ。なぜかは知らないが、君たちも木山教授がこの講談会を開いたことは知っているだろう。なぜかは知らないが、ね」

黒子(ドキッ)

DIO「それで、実際その内容は素晴らしいものだった。両手をあげて拍手をしたいほどにね。そして、私はもっとAIM拡散力場について詳しく知りたくなったのだ」

木山「質問時間なら講談会の時に設けてたというのにな。その時はなぜ来なかったのだ?」

DIO「大勢の中から飛び交う質問の一つに数えられたくなかったのでな。大味な解答では気が済まんタチだ」

DIO「して、この場所でどうやって調べようかと考えていたところ、講談会が終わってこのテーマパークをうろついていた彼女と偶然出くわしたのだ」

木山「彼の見解は独特でとても面白いものなんだ。さっき答えてもらった時は、自分は学園都市の外部から来た者、と言っていたのは覚えているが、それのせいか私でも思いつかない推論を立ててくれる」

DIO「こちらとしても、その道の専門家とこうも詳しく語れるとは思っていなかった。感謝するよ」

木山「一応教鞭を振るっていたこともあったからね。教えるのは嫌いじゃない」


佐天「めっちゃ打ち解けてる……」

初春「何というコミュ力。現代社会の暗雲を真っ向から薙ぎ払う圧倒的コミュ力です」

DIO「それで、君たちは木山教授とはどういう繋がりだ? 教師と教え子の立場が妥当だが」

御坂「あー、それは……」チラッ

木山「言っても構わないさ。彼はそんなことで私を罵るような性格ではないだろうし、それは私自身の罪。それに、こうまでAIM拡散力場に興味を持っていて、私の二の舞を踏ませたくはないしな」

DIO「……どうやら、少し穏やかではない話のようだな。無理をしなくてもいいのだぞ、木山教授」

木山「無理はしていないさ。貴方に私の辿った愚かな道を進ませたくない、それだけだよ」

御坂「あんたがそういうなら……」

黒子(初対面のはずの木山をここまで信頼させるとは。いったいどんな会話をしていたのでしょうか)

今回の更新はここまでになります。意外に木山先生の口調が掴みづらくて苦戦中
二刀流チャリオッツ戦が素晴らしかった。ああいうシーンはホント見てると嬉しくなる!

感想などありがとうございます!存在自体がオーパーツみたいなものなので、木原一族に捕まったらまあ二度と朝日は浴びずに済むでしょうなぁ

そういやどっちもすぐに脱ぎたがるのか

~★~

DIO「……幻想御手。聞いたことはないな。しかしそんな事件があったとは」

御坂「その子供たちも、今はみんな意識を取り戻して無事解決したわ。佐天さんたちを利用した木山も悪いけど、本当にゲスなのはその人道を踏みにじる科学者共よ」ギリリッ

初春「木山さんは、あの後枝先ちゃんたちとは会っているんですか?」

木山「いや、会っていない。私は未だに罪人でもあるし、それをしっかりと償ってからあの子たちに会いたいと思っている。あの子たちの笑顔を受け止められるくらい、償ってから」


黒子「ところで、二人は何のお話をしていたのでしょうか」

DIO「幽霊泥棒についてだ」

黒子「おや、それについてでしたか」

DIO「AIM拡散力場というものを束ねることができれば、疑似的に不可視の何かを構成することができる、というのが講談会の主な内容だった。
   しかしまさか、それが木山教授自身の画策を元にした話とはね」

木山「自らの悪事をひた隠しにするよりは、それを何かの糧にした方がここの学生たちのためさ。もちろん幾分マイルドにはしてあるがね」

初春「私はビターな珈琲にチャレンジしてみたいですね。あの大人の味を優雅に飲めるようになったら、少しは格好つくと思いません?」

黒子「話をそらすんじゃありませんわ」


DIO「……フム。木山教授、先の話はまた機会があるときにお願いしたい。この状況では、語るに語れないだろうからね」

木山「是非とも――――と言いたいところだが。残念ながらそれにはお答えできない」

DIO「それはどうしてだ?」

木山「私はまだ自由の身、とは呼べないからだ。この後も私は戻らなくてはいけない。いわゆる贖罪の時間というやつだ」

佐天「贖罪って、今日の講談会とはまた別なんですか?」

木山「もちろん、今日のそれも償いの一つではある。が、もう一つやるべきことがあってね。私自身の償いとしても、AIM拡散力場の専門家としても」

DIO「君をそこまで惹きつける、それとはいったい何なのだ?」

木山「……残念だが、これ以上は語れない。ただ、悪事に利用しようと企んでやっているわけではないことは言っておこう。それはただの、『解明』にすぎない」

御坂「『解明』?」

木山「おっと、そろそろ戻らなくては黒服の奴らに蹴飛ばされてしまう。強引に切り上げるようで悪いが、私はこれで失礼させてもらうよ」カツカツカツ



DIO「――――待て、木山春生」

木山「――――何かな、DIO」

DIO「その『解明』とやら――――





   まさか、今この学園都市を包む赤外線を遮断する実験、とやらに関係しているわけではあるまいな?」



┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



木山「…………、」


木山「…………、」ゴゴゴゴゴ

DIO「…………、」ゴゴゴゴゴ


木山「……ああ、関係ない」

DIO「本当にか」

木山「本当にだ」

DIO「神に誓って、同じセリフが言えるか」

木山「言えるさ。本当のことだからな」

DIO「……、」ズオオオオオオオ

木山「……、」


DIO「そうか。君のことを疑ってしまうとは、私もとんだ小心者だな。呼び止めてすまなかった、また会おう。木山教授」

木山「気にしていないさ。……ではな、DIO」カツ カツ カツ



初春「……DIOさん、DIOさん」

DIO「何かな、初春」

初春「さっきの質問の意味、よくわからなかったんですけど……」

DIO「何、君が気にする必要ではない。私の単なる好奇心、と思ってもらって構わないよ」

初春「そ、そうですか。でも確かに、DIOさんって何でもかんでも知りたがりですしね」

DIO「そういうことだ。さあ、君たちも時間が惜しいだろう。次のアトラクションへ行こうじゃあないか」

初春「あ、はい!」



DIO「…………、」ゴゴゴゴゴゴゴ

今回の更新はここまでです。遊園地編もようやっと終盤へと差し掛かってまいりました、残すアトラクションはあと二つッ!

~★~

佐天「木山さんとも別れ、再び五人もそろったので! 気を取り直してこのアトラクションに乗りましょう!」

初春「来てしまいましたね……」

御坂「近くで見るとすごい迫力。流石としか言いようがないわ」

黒子「轟く悲鳴、打ち付ける強風。一筋縄ではいきそうにありませんわ……」


DIO「……で、これは何なんだ」

黒子「『エンパイア・ステート・フォール』。あの有名なアメリカのエンパイア・ステート・ビルをモチーフにしたジェットコースターでございますわ。もう一度言いますわよ、“ジェットコースター”でございますわ!」

DIO「二度言わなくとも分かる。何を伝えたい」

黒子「分かりませんのッ!? 最高43Mから直角90度を一気に急降下して、そのままノンストップで五分以上爆走するんですのよアレ! どう考えても殺しにかかってきてますわ!」

DIO「本物は443Mだ。それの十分の一で済むと思えばいいじゃあないか。それに、君はいつも瞬間移動であちこち飛び回っているだろう。何を今更乙女ぶる必要があるのだね」

黒子「むしろ何が合ってるんですのその理論! それにいくら空間移動で高所に移動したりするとはいえ、ああいうのはジャンルが違いますわジャンルがッ!」

DIO「分からん奴だ。見ろ、佐天と御坂を。まるで初めて自転車を買ってもらった子供のように目をキラキラさせているじゃあないか」


御坂「やっぱり、スリルっていうんだったらこれくらいしてくれないとね。私の全力よりあまりに遅いとつまらないし」

佐天「分かってませんね御坂さん。こういうのはスピードではなく、手を挙げて大声出しながら爆走するのが楽しいんですよ。ただ走るだけでは味わえないものがありますよ?」

御坂「へぇ~、それが通の楽しみ方ってやつ? いいわ、じゃあどっちがより大きく手を伸ばして叫び続けられるか勝負しましょうよ」

佐天「望むところです! こと娯楽の満喫具合で私に張り合えるのは、私の弟ぐらいでしょう! 覚悟しなさいレベル5!!」

御坂「言ってくれるわね。容赦はしないわよ」バヂチィンッ

初春「多分違うと思うんだけど……聞こえてないや」


DIO「どうだ」

黒子「あのスリル慣れした方々と一緒にしてもらっても困りますわ……」

~★20分後★~

佐天「ここもかなり並びましたねー。あっという間に時間がとけていきます」

黒子「その間に何度絶叫を耳にしたか……。精神的にやさしくない作りですわ」

DIO「身長制限、というのがあるらしい。それぞれ大丈夫か」

佐天「どれどれ。んー、130cm以下は乗れません、だそうです。私たちは超えているので大丈夫ですね」

御坂「アンタは一番心配しなくてもいいものね、そんな制限」

DIO「日本の平均身長の基準が低いだけだ」


“それではお次の方。係員の指示に従って前の方にお進みくださーい”


初春「あ、私たちの番みたいですね」

DIO「ところで、これは私も乗る理由はあるのかね」

佐天「そりゃ、そこにアトラクションがあったら乗るに決まってますよ! さ、行きますよー!」

黒子「あー、気が滅入りますわ。せめてお姉様の隣に座れたらいいのですが」




黒子「……、」

DIO「……、」デンッ

黒子「よりにもよって貴方が隣だなんて……」

DIO「文句なら席順を決めた係りの者に言うことだ」

黒子「はぁ。願わくばお姉様が隣で、どさくさに紛れてお姉様のおみ足あたりでも拝借しようと思っていたのに」

DIO「不服かな?」

黒子「お姉様以外はたいてい不服ですわ。中でも貴方はトップ4で」

DIO「一番ではないのか」

黒子「ええ。貴方よりもいけ好かない奴は結構いるので」


佐天「御坂さん。さっきの勝負、忘れてはいませんよね?」

御坂「もちろん。勝てる勝負を逃すほどこの御坂さんは甘くありませんからねー」

佐天「言いましたねー! その自慢げな顔をぶくぶく泡吹かせてやりますから!」

初春「……ただ手を挙げて叫びあうだけなんじゃ(一人だけ別席)」


ガタン ガタン ガタタタン ガタン


黒子「あー、このどんどん頂上へ登って行くときの緊張感。処刑台を一歩一歩登って行く罪人の気持ちがよく分かりますわ」

DIO「あれほど喧しく喚いていたとは思えない臆病ぶりだな」

黒子「好きで喚いているわけじゃありませんわ。正直に申し上げますと、貴方に対してあたりが強いのも、貴方からは何か危険なにおいがしたからですの」

DIO「……ほお。危険なにおい、か。多少喧嘩に自信はあるつもりだが」

黒子「そういうちっこい話ではありませんわ。どちらかというと、危険な魅力と言った方が正しいと思います」

DIO「魅力?」

黒子「そうですの。決して手を触れてはいけない、でもとても美しくて甘美な宝石のような。或いは、猛毒だとわかっていながら口にしたくなってしまう極上の果実のような」

黒子「自覚がないようですが、貴方にはそれがあるのですわ。いい意味でも悪い意味でも、人を惹きつける魔力のようなものが。人はそれを『カリスマ』とも呼びます」

DIO「『カリスマ』か。君は、他人を観察するのが得意なのだな。私自身、一度もそんなこと考えたこともなかった」

黒子「フフン。これくらい、怪しい奴を見分ける優秀な風紀委員ならば当然ですの。後ろの花畑とは違うのですわ」


初春「へっくち」


DIO「……なあ白井。君は私をどう見る?」

黒子「はい? 貴方を、ですか? ですから、先程申し上げましたが……」


DIO「違う。そうではないのだ白井。私は何をしていそうだ? 私はどんな職業についていそうだ? 私は何を考えていそうだ?」

黒子「……質問の意味がよく分かりませんわ」

DIO「つまりは……いいや何でもない」

黒子「一応、お答えした方がよろしいのでしょうか」

DIO「いや、忘れてくれ。我ながら少々口が滑った。ただの独り言だと思ってくれ」

黒子「は、はあ」


黒子(どういうことですの? 私は貴方を警戒している、と伝えたそばから『私をどう見る』? さっぱり意味が分かりませんわ)

黒子(質問の意味をとっても理解不能。その質問の答えを一番理解しているのは当のDIOさんのはず。なぜわたくしにそれを問いかけてくるのでしょうか)

黒子(……ますます何を考えているのか読めませんわ。ですが、ここはやはり引き下がらず、もっと詳しく調べておいた方が良い気がしますの)


黒子「DIOさん。先程の質問なのですが……」


ガ ッ コ ン


黒子「あっ」

今回の更新はここまででございます!アトラクションよりもキャラ同士の絡みを優先させてるので、案外アトラクションは数レスで終わっちゃったりします。申し訳ない……

感想などありがとうございます!黒子は犠牲になったのだ、犠牲の犠牲にな……
マジですか小萌先生。流石は生ける都市伝説、やることなすこと規模が違う(違う意味で)

~★~



佐天「ひっひー。まさか途中で御坂さんが安全バーを掴むとは思いませんでしたよ~」ニヘラニヘラ

御坂「ち、違うわよ!? あれはね、たまたま両方の二の腕が攣ったから思わず引っ込めただけよ!」

佐天「でも、勝負は私の勝ちでしたもんね~。やりィ! へっへへー」

御坂「くそう、悔しい……」


黒子「……初春。わたくしの頭を叩いてもらいたいのですが」

初春「えっ? どうしました白井さん、ついに御坂さん以外の人にもぶたれる喜びを覚えちゃったんですか?」

黒子「違いますわ! 全く、人をMみたいに言うんじゃありませんわ」

初春(そう思わざるを得ない言動や行動ばかりなんですけど)

黒子「あれですの。誰かに何か聞きたいことがあったのですが、どうもそれが抜け落ちてしまいまして……」

初春「……怖さのあまり?」

黒子「ち、違いますわ! た、たまたま安全バーに頭を打ちつけてしまって記憶がとんでしまっただけですの! 決して、決して私が恐怖のあまり記憶がとんだとかではありません!」

初春「はいはいそうですか。それじゃあ遠慮なくいきますよー」

黒子「貴方は貧弱な力ですからね、強めにお願いしますわ」

初春「ていっ」


ゴシャアァァ!!


初春「……あれ、白井さん? 白井さーん」

初春「おかしいな~。白井さんなら色々入った携帯ポーチでも大丈夫だと思ったんだけど。やっぱりノートパソコンは重かったかなぁ」

黒子「ハラホロヒレハレ~~、グフッ」


DIO「……、」シラーー


黒子「う~~い~~は~~る~~」ピキピキッ

初春「わ、悪気はなかったんですよぉ。ただ、どうせならショックが強い方が忘れたことも思い出せるかなーと思っただけですよ」ボロロ-ン

黒子「乙女の頭にたんこぶを残すような一撃を与えてよく言いますわ。結局、何を言いたかったのかは思い出せませんでしたが」

DIO「……、」

黒子「……って、あらま。もうこんな時間ですわ。佐天さん、次のアトラクションが最後になりそうですわよ」

佐天「えーーー! まだまだ乗りたいアトラクションとかいっぱいあったんですよ。あとおかわりとかもしたかったんですがー」

黒子「時間を見なさい時間を。もう夕方の五時半ですのよ? 完全時刻時間になったらこのテーマパークも営業終了いたしますし、バスも止まりますわ。無人の遊園地に残りたいのなら話は別ですが」

佐天「そ、それは勘弁しておきます。無人の遊園地は怖いんですよ……昔ゲームでやってて、怖い思いしましたし」

初春「遊園地の最後といったら、もちろんアレですよね!」

御坂「アレ?」


初春「決まっているじゃないですか御坂さん。観覧車ですよ!」

本日の更新はここまでです。長かったテーマパーク編もいよいよ終盤。そして定番の観覧車!果たして何をしましょうかねー


“間もなく、当テーマパークは営業を終了いたします。本日は来園、ありがとうございました。This theme park finishes business……”


御坂「もうすぐ閉まるからかしら、人も減ってきたわね。ここの観覧車も並びは少ないし、すぐに乗れそうね」

黒子「一周およそ十二分ほどみたいですわね。これなら帰りのバスにもギリギリ間に合いそうですわ」

DIO「……近くで見ると、デカいな」

御坂「あら、観覧車に乗るのは初めて?」

DIO「ん、そうだな……。知ってはいたが、記憶上乗るのは初めてかもしれないな」

御坂「まあ、男子はこういうのよりはジェットコースターとかゴーカートとかに走り気味だものね。経験ないのも不思議じゃないか」


佐天「あ、見てくださいこの観覧車のゴンドラ。一つに二人乗りみたいですよ。普通なら四人乗りなのに、どうも狭いですねぇ」

黒子「あら、本当ですわね。わたくし達は五人ですから……誰かが一人になってしまいますわね」

DIO「……ならば私が――――」


初春「それじゃあ、ここは公平に裏表で決めましょう!」

黒子「裏表?」

初春「あれですよ、あれ。一斉に手の平か甲かを出して、同じ方を出した人とペアになるって奴ですよ」

御坂「あー、やってたわねーそれ。でも、それだと二、三で分かれない?」

初春「三人で分かれた方がもう一度やり合って、そこで二人と一人に分かれるしかありませんね」

黒子「それでは結局解決策になっていませんわ……。まあ時間もないですし、今回は仕方がないですけど」

DIO「おい、私は――――」


佐天「それじゃ、一人になった人は恨みっこなしってことでいいですね」

御坂「異論はないわ。一人だとちょっとつまんないし、勘弁願いたいところね」

黒子「何でもいいですから決めちゃいましょう。時間がないですわ」

初春「ほら早くDIOさんも!」

DIO「いや私は……分かったよやればいいんだろう、やれば」


初春「それじゃ、いきますよ! うらうらうらうらうらおもっ…………て!」

~★ゴンドラA★~

黒子「むっふふ~。まさか、最後の最後でお姉様と二人きりになれるとは思いませんでしたわ~」スリスリ

御坂「寄るな触るな鼻息荒らすなッ! ただでさえ小さいんだから暴れてゴンドラ揺らさないでちょうだい!」

黒子「まあ、お姉様ったら高い所は苦手ですか? 奇遇ですわ、わたくしも苦手なんですの。つまりこれは、二人が特別な関係で結ばれていることですわ~~!!」

御坂「でえい邪魔だコラァ!」ゲシッ

黒子「あうん! お姉様ったら恥ずかしがり屋ぁ」

御坂「全く、本当になんであんたはいつもこうなんだか……」

黒子「もちろん、お姉様を尊敬しているからですわ」

御坂「その表現方法が、この、なんか……もっと控えめにできないのかしら」

黒子「えっ? これでも控えめですわよ?」

御坂「えっ」

黒子「えっ?」


御坂「……あー、そのあれよ。あんた、結局のところどう思ってるの?」

黒子「何をですの?」

御坂「DIOさん、のこと」

黒子「……お姉様も結構あの方のこと気にかけていますわね。まさか好意を抱いているとか……」

御坂「違うわよバカ! 私、やっぱり目が離せないのよ。彼のこと」

黒子「お姉様、その発言はやはりあの男のことを……」

御坂「だーーーっ! もう何で全部そういう関連に結び付けるかな! 思春期か!」

黒子「思春期ですわね。時期的に」

御坂「あ、そうか。じゃなくてね~……。何というか、こう、ちょっとでも目を離してしまうのが怖いのよ」

黒子「と、言いますと?」

御坂「青信号なのか赤信号なのかを見ないで横断歩道を渡るような、そんな怖さがあるわ」

御坂「常に確認しておかないと、いざ事が起こった時には既に遅いというか。まあ、私なら余裕で間に合うんだけどさ」ビリリリ


黒子「……でも、今の彼はそんな事を起こすような素振りは全く見せていませんわ。雰囲気とか、そういうもので勝手にこちらで判断しているだけ」

御坂「そう、なのよね。だから彼が本当にダンディな紳士だったら、私たちったらとんでもない疑心暗鬼な人間よね」

御坂「でも実際彼は何もしてないから、やっぱり私たちの考えすぎかしら」

黒子「きっとそうですわ。あの方が放つ異様な雰囲気が慣れなかったから、疑り深くなってしまっていたのだと思いますの」

黒子「木山春生やテレスティーナとか、そういうのがよぎってしまうから、余計に」

御坂「そうね。……いい加減、信じてみましょうか」


御坂「ところで今日の初春さん、何かゴリ押し強くなかった?」

黒子「初春は結構そういうところ多いのですが……。言われてみれば、今日は度々強引に決めてくるときがありましたわね。そう、さっきみたいに組み分けの時とか……」

~★ゴンドラB★~

初春「ん~、やっぱり一人は寂しいですねぇ。こうやって口を開いても一人語りになっちゃいますし」

初春「まあ、組み分けの結果としては最高なんですけどね、フフ」

初春「佐天さんは自分のことに関して、もっと積極的になるべきだと思うんです。私のスカートなんかめくってないで……」

初春「人の恋路にはすごく敏感でからかうような性格してますけど、自分のことになると途端にしおらしくなっちゃうし。思春期か。あ、思春期か」


初春「しかし、まさか佐天さんが知り合って間もないDIOさんに恋するとは。本人は認めてませんけど、態度とかその他もろもろで丸わかりというか」

初春「友人として何かしら力になってあげたい! でも本人は認めてないし相手が相手だし。相当面倒な関係ですよね、ホント」


初春「だがしかし! 今回そんな佐天さんへの助力のために、私こと初春飾利は頑張りました!」

初春「各アトラクションで行われる組み分け。それらに私が介入し、強引に佐天さんとDIOさんを組ませる!」

初春「こうすることで、いやがおうにも二人の距離はある程度は縮まりますし、何かと会話もできているはずでしょう」

初春「まあ、何度か係員さんが席決めちゃうときもありましたけど」


DIO「今回の観覧車もかなり強引にいきましたが、最後は二人を信じ、あえて運勝負に出ました」

初春「するとどうでしょう。結果は御坂さん&白井さん、佐天さん&DIOさんという組み合わせ。これはまさに、運も味方に付けたということ!」

初春「さあ、ここまでお膳立てしたんです。今頃向こうのゴンドラでは、二人の関係がギュッとグーーンと縮まっているに違いありません!」


初春「ふう、今日はいいことをしましたぜー」

~★ゴンドラC★~



佐天「…………、」



DIO「…………、」



佐天「…………、」

DIO「…………、」

佐天「…………、」

DIO「…………、」

佐天「き、今日は楽しかったですね!」

DIO「…………ああ、そうだな」



佐天「…………、」

DIO「…………、」

佐天「ディ、DIOさんは何か楽しいアトラクションとかありました?」

DIO「…………特にないな」

佐天「そ、そうですか」

DIO「ああ」



佐天「…………、」



DIO「…………、」ゴゴゴゴゴゴゴゴ



佐天(だ、誰か助けてーっ! 私もうダメかもしれないーーーッ!!)

今日の更新はここまでです。ようやく最後のアトラクション、観覧車に到達!遊園地編も大詰めですので、もう少々お付き合いください。

あ、どっから湧いて出たDIO。書き直しますね

~★ゴンドラB★~

初春「ん~、やっぱり一人は寂しいですねぇ。こうやって口を開いても一人語りになっちゃいますし」

初春「まあ、組み分けの結果としては最高なんですけどね、フフ」

初春「佐天さんは自分のことに関して、もっと積極的になるべきだと思うんです。私のスカートなんかめくってないで……」

初春「人の恋路にはすごく敏感でからかうような性格してますけど、自分のことになると途端にしおらしくなっちゃうし。思春期か。あ、思春期か」


初春「しかし、まさか佐天さんが知り合って間もないDIOさんに恋するとは。本人は認めてませんけど、態度とかその他もろもろで丸わかりというか」

初春「友人として何かしら力になってあげたい! でも本人は認めてないし相手が相手だし。相当面倒な関係ですよね、ホント」


初春「だがしかし! 今回そんな佐天さんへの助力のために、私こと初春飾利は頑張りました!」

初春「各アトラクションで行われる組み分け。それらに私が介入し、強引に佐天さんとDIOさんを組ませる!」

初春「こうすることで、いやがおうにも二人の距離はある程度は縮まりますし、何かと会話もできているはずでしょう」

初春「まあ、何度か係員さんが席決めちゃうときもありましたけど」


初春「今回の観覧車もかなり強引にいきましたが、最後は二人を信じ、あえて運勝負に出ました」

初春「するとどうでしょう。結果は御坂さん&白井さん、佐天さん&DIOさんという組み合わせ。これはまさに、運も味方に付けたということ!」

初春「さあ、ここまでお膳立てしたんです。今頃向こうのゴンドラでは、二人の関係がギュッとグーーンと縮まっているに違いありません!」


初春「ふう、今日はいいことをしましたぜー」

>>563

感想などありがとうございます!逆に考えるんだ、日常のありふれたどこにでもある椅子でもラスボスオーラを出せると

一部ディオは良くも悪くも感情的で本能的な言動や行動が目立ってましたよね。人を超えた吸血鬼って感じは一部の方が強いですが、やはりカリスマとなると三部dio
に軍配が上がると思います


佐天「あ、あはは……」

DIO「…………、」

佐天(何だか今日はよくDIOさんとペアになるような。そのたびそのたび、この圧倒されるような雰囲気に押されて会話がしづらい……)

DIO「…………、」ズオオオオオオ


佐天(座ってるだけでとんでもない迫力だ。何か、教科書で習った昔の像みたいな威圧感に似たようなものを感じるな)

佐天(金剛力士像だっけ、あんな感じ。顔もしかめっ面で似てるし)

DIO「…………、」ジィーーー


佐天(そしてDIOさん、こういう時はいっつも視線が動かないんだよなぁ。常に真正面をガン見してる)

DIO(景色を見てるのかもしれないけど、それにしちゃああまりにもブレなさすぎでしょうよ)

DIO「…………なあ」


佐天(でも、こうやって観察してみるとDIOさんってマッシブなのにホント美形な顔立ちだなぁ。そこは流石外国人というか。色白金髪で切れ長の目、鼻も高いし背も高い)

DIO「……聞こえているのか」


佐天(最近は粗暴さも目立つけど基本的に紳士な態度は崩さないし、なんだかんだで付き合ってくれたりしてくれるし。結構モテそうだよなぁ、というかモテるよね)

佐天(…………私なんかじゃ、相手にすらしてくれなさそうだし。やっぱり……)



DIO「おい」ガシィ

佐天「いっ!?」

DIO「この私の呼びかけを再三無視するとは、お前はよほど私が嫌いなようだな。嫌うのは勝手だが、呼びかけた私の目の前で無視するのは気に食わないね」ムギギギギギ

佐天「ぎゃああああああ!! ウメボシはいけないって! いだいいだいだいいだだだだだだだああああああああっ!!」ミシミシミシミシミシミシミシミシミシ


DIO「……フン」パッ

佐天「はぁー、はぁー、助かった……。その剛腕でウメボシは拷問の域ですよ、反則です」

DIO「梅干し? 私は梅干しなどもっていないが」

佐天「あ、DIOさん外国人だった……」


『ウメボシとは、相手のこめかみを両腕の指の骨で押しながら挟み込むことである! それをうけた人の顔が、まるで梅干しを食べたかのように苦しい表情をしていたことからウメボシと名付けられたのだッ!』、


佐天「いたた……。それで、どうしたんですかDIOさん。そっちからいきなり話しかけてくるなんて」

DIO「いや、何。今日は君たちのおかげで貴重な体験をすることができたからな。感謝の言葉の一つくらい、伝えておこうと思ってね」

佐天「えっ?」

DIO「こういう所に来る機会は早々ないだろうし、そもそも私自身行こうとも思わん。あまり興味が湧かんからな」

DIO「が、君たちに強引に連れまわされたりはしたが、おかげで少しは遊園地というものを堪能することはできたと思う」

DIO「君たちほどではないが、十分楽しませてもらった。良い出会いもあったな」

佐天「……DIOさん」ホロリ


DIO「まあ、それはさておいてだ。佐天」

佐天(えー……)

DIO「どうした。何だか顔が膨れているが」

佐天「いや……何でもないです。続けてください」

DIO「そうか」


DIO「佐天、君は私がコーヒーカップ内で君にかけた言葉を覚えているかね」

佐天「えっ? えーと、確か何たら飢えろだったような」

DIO「覚えているようだな。そうだ、私はお前に『飢えろ』『欲せ』といった。その意味を、お前は理解しているか?」

佐天「……漠然とですが」

DIO「何故私が君にそんなことを言ったか。君は理解しているか?」


佐天「……私が弱いから?」

DIO「違う。それだけではない。確かに君は御坂たちと比べるとあまり貧弱だが、それだけではないのだよ」

DIO「君は、レベル0からレベル1以上になりたいのだろう? そのために、先に聞いた幻想御手のようなものにもすがった」

佐天「……ッ」

DIO「結果、それはまやかしで終わってしまった。君はそれで友人たちに迷惑をかけてしまい、不必要に能力に固執することはなくなった」

DIO「能力を求めるあまり、大切な友人たちまで巻き込んでしまったからな。その反応は当然ともいえるし、心優しい者ならそれは尚のこと……」


DIO「が、違うんじゃあないのか?」


DIO「学園都市に来てまで、君がやりたかったのはどこでもできる友情ごっこだったのか?  違うだろう」

DIO「電撃を操る少女や瞬間移動できる少女、その他さまざまな現象が非日常的に起こるからこのままでも十分? 違うだろう」


DIO「なぜ、君がそちら側に回ろうと努力しないのだ? 電撃を操る側に、瞬間移動する側に、非日常を起こす側に」

DIO「君の目は語っている。『私はこのままでは嫌なんだ』、と強く叫んでいるように見えるぞ」

DIO「友情と笑顔で隠しても、その奥の涙に濡れた本心までは隠しきれていないのだ」

佐天「…………、」


DIO「そのために私は言ったのだ、『飢えろ』『欲せ』! 自らを弱者の地位で甘んじていては精神が腐ってしまう」


DIO「己を磨け、他者をよく見ろ、満たされることなく欲しがり続けろ」


DIO「私が君と同じ立場だったのなら、佐天……」

DIO「私は迷わずにその道を選ぶッ! 友もつくるが、いずれ乗り越える! 弱者ならば、強者から奪う!」

DIO「そしてレベル0なら、その理由を徹底的に調べ尽くすッ!」


佐天「でも、私はもう皆に迷惑をかけたくないんです! だから……」

DIO「何故、君が努力することがイコール皆への迷惑に繋がるのだ?」

佐天「そ、それは……」


DIO「答えてあげよう。それは君が一度失敗してしまったからだ」

DIO「その失敗が自分だけにとどまらず、御坂たちにまで反動がきてしまったからだ。そうだろう?」

佐天「……はい」


DIO「しかし佐天、それは『たまたま』なんだよ。運命が気まぐれでもたらした悪戯心によって、君はそうなってしまったのだ。幻想御手という魅惑の品があったからだ」

DIO「しかし、そんな魅惑な品はそう簡単には作ることはできないし、出回ることはないだろう」

DIO「AIM拡散力場専門家である木山教授が執念をかけて、ようやくそういうものができるのだ」


DIO「君は結び付けてしまっている。幻想御手による後悔と、自分がレベル0だという立ち位置をつないでしまっているのだ」

DIO「だから君は飢えることもできないし、欲することもできていなかった」

DIO「だが、それは決して結びついてはいない。君自身がそう思い込んでしまっているから、そういう風に考えてしまうだけなのだよ、佐天。君が努力しても、彼女たちに迷惑を必ずかけるなんてことはない」

DIO「何も恐れることはない。この学園都市に来たとき、君の心で膨れ上がっていた能力への思い。それを今、再び膨らませるだけでいいんだ」

佐天「…………、」

今回の更新はここまででございます

感想などありがとうございます!確かにこう見るとDIO様すごい善い人にしか見えませんなぁ。しかしその本質はやはり…
DIO様はとにかく口が上手いので、語れるときはなるべく語ってもらう所存。そうやって部下も増やしていったんでしょうし
あと全然関係ないのですが、「ジョジョ とある」で検索してたら拙作が結構早いページで出てきてびっくりしました。ちびちび更新してるからですかねェ、分かりませんが


佐天「…………どうして」

DIO「ん?」

佐天「どうして、私にそんな熱心に語ってくれるんですか?」


佐天「確かにDIOさんの言うことは一理あるし、むしろ今までそうしてなかったのが不思議なくらいって気持ちもあります」

佐天「私がまた変なことしたら、みんなに迷惑かけちゃうかなー、とか」

DIO「…………、」


佐天「でも、疑問なんです。会ってまだ短い期間なのに、どうしてDIOさんは私にこんなにかまってくれているんだろうって

佐天「一番最初に知り合ったから、だからですか?」

佐天「アドバイスもくれるし、自分でも気づかなかった本心を教えてくれるし、誤った考えも指摘してくれてる」

佐天「でもDIOさんは外の人だし、この先ずっと一緒にいれるわけじゃない」

佐天「どうしてなんですか? どうして、私なんかを気にかけてくれるんですか?」

DIO「…………、」


佐天「……すいません。DIOさんの親切心を疑うようなこと言っちゃいましたね。やっぱり何でもないです、忘れてください」



DIO「……ムカついたからだ」

佐天「え、えっ?」


DIO「君を見てると思うのだ。『なぜそうしない』、『何をためらっているのだ』と、もどかしくて仕方がなかった」

DIO「どうも私は、君目線で物事を考えていることが多いような気がする。いわゆる弱者目線だな。
   私自身能力も何もないので、必然的に君と同じ気持ちになってしまっているのかもしれない」

佐天「私と、同じ目線……」


DIO「だが、君は能力を得られる可能性がある! そこが私ともっとも違う所だ」

DIO「私にも可能性があれば、もっとこうするだろうと考えていた」

DIO「なのに実際に持っている君は、それを忘れ気味でさして気にも留めていないではないか」

DIO「それが腹ただしくてしょうがない」

佐天「……DIOさん」


DIO「フン、少しは理解したかね。自分がどれだけ贅沢な悩みだったのかを。他のレベル0たちにも耳元で叫んでやりたいところだが、今日のところは君一人にそれを背負ってもらう」

佐天「はは、それは勘弁してほしいですね」


佐天(DIOさん。この人は、私の想像よりもけっこう子供っぽい人だった。自分ができないから代わりにやれだなんて、あの流れでふつう言わないもの)

DIO(でも、その子供っぽいのは単なる一面だけで、やっぱりその本質は紳士的で面倒見のいい大人な人だと思う。そこが、この人の魅力の一つなんだろうか)

佐天(……やっぱり、私はこの人を…………)



ギギギギギギ……


DIO「ム、風が出てきたか? 少し揺れたな」

佐天「そうでしたか? 私はあんまり感じませんでしたけど」

DIO「私が多少な敏感なだけだ。あまり気にしなくていいさ」

佐天「そうですか。あ、DIOさん見てくださいよ! 外がすごく綺麗ですよ!」

DIO「どれ。……ほう、上空から眺める学園都市というのも悪くないな」

DIO「灰色のビルやら建造物が目立つが、それも夕暮れ時の紅色の景色と絶妙にマッチしている」

佐天「うお、よくそこまでスラスラと感想出てきますね。コメンテーターみたい」

DIO「思ったことを口に出したまでだ。語彙力がないと思うのなら、活字を読むといい。出来の悪い男がいたが、活字を読み続けたら記憶力が上がって学者になったという話もある」


佐天「活字ですか。DIOさんは本が好きなんですか?」

DIO「本も好きだが、どちらかと言えばそれを読んでいる時間の方が好きだな。他者のことなど頭からドンドン抜け落ちて、自分とその作者が描いた本のみの時間になっていく」


DIO「時間が止まっていくような、自分だけの世界にのめり込んでいくその感覚が、一番心を落ち着けることができる」

佐天「ほえー、DIOさんってそんな体格なのに結構インテリ派なんですね」

DIO「つくものはつく。好きでこれほどつけた覚えはない」

佐天「是非とも今の日本のもやし若者に聞かしてあげたい言葉です……」



ギィィギギギギギギギ ギチギチギチギチギチ



DIO「……また揺れを感じたぞ。佐天、君は揺れを感じたかね」

佐天「あ、はい。少し揺れるな~とは思いましたけど」


DIO「……私の気のせいではなかったらしいな。ここの観覧車の整備士はちゃんと仕事をしているのか? さっきから耳障りな鉄錆びた音が響いてたまらん」

佐天「最近できたばかりのはずなんですけどね。高所に上がると雨風で錆びやすくなったりして、傷みも激しくなるんでしょうか」

DIO「さあな。そこのところもキッチリ計算して作ってほしいものだがね」




メシメシメシ ギギギギギギィィィィ



DIO「――――エイイッ、喧しくてかなわんッ! いったいどうなっているんだこのゴンドラは! あとで係りの奴に文句をつけてやらんと気が済まん!」

佐天「お、落ち着いてDIOさん。やっと頂上を過ぎたところなんですから」

DIO「時間がたつたびに音がどんどん大きくなってきているぞ。よほどざるな仕事をしているようだな。遊園地が聞いて呆れる」


ギッギッギッギッ


佐天「うおっとっと。なんだか揺れも強くなってきましたね。風が強くなってきたんでしょうか」

DIO「何から何まで乗り心地最悪なゴンドラだ。テーマパークの最後をこれで飾るとは、なんとも後味の悪いこ…………」

佐天「……どうしました、DIOさん」


DIO「――――揺れていない」

佐天「へっ?」

DIO「揺れていないのだ、他のゴンドラは。見て見ろ、向かいのゴンドラはピクリとも動いていない」



~★向かいのゴンドラ★~

女子学生「うわー、やっぱり高いわね! 学園都市っって上から見るとこういう景色なんだー」

男子学生(言うぞー、今日こそは言うぞーっ! 長年心にとめてきたこの想いを、ここで彼女にぶつけてやるーーーっ!!)

~★ゴンドラC★~


佐天「ホントだ! あっちのゴンドラは微動だにしてない! 私たちが載っているゴンドラって、そんなに風の煽り耐性が悪い奴だったんですかね?」


DIO「いいや、佐天。それも違う」

佐天「どういうことです?」


DIO「向こうの風力発電用のプロペラを見ろ。お前の目にはどう映る?」

佐天「えっ? そりゃあ、今日も欠伸が出そうなぐらいゆったりとした動きで……あれ?」

DIO「そうだ。あのプロペラの回転速度は、いつも通りとても遅い。いつもと変わらない風速という証拠だ」


DIO「本で得た知識だが、確かあのプロペラでこの都市の電気を賄っているのだろう? プロペラの回転には風速6m/s以上が必要だ。あの回転速度から見るに、やはり風速もそこまで高くない」

DIO「風速6m/sというのは、言ってしまえばただの風。そこまで強風じゃあない。高所になると少し風力が上がるくらいで、別段ゴンドラを激しく揺らせるものでもない」

DIO「だのにだ。このゴンドラだけは、そのただの風でこれほど大きく揺れている。他のゴンドラは何も変わったことはない……」


DIO「このゴンドラだけが異常なのだッ!」


ギギメキメキャア グラグラグラグラ


佐天「お、おおっとっと。で、でもどうしてこのゴンドラだけなんでしょう? これも『たまたま』なんでしょうか?」

DIO「わからん。だが、そうとしか考えようが――――」


カラァーン


DIO「――――ん? 足元に、何か転がっている」ヒョイッ

DIO「……これは、ボルト? かなりデカいぞ。だが、なぜボルトがここに転がっているのだ?」


カラカラカラカラァーーー


DIO「……またボルトが転がってきたぞ」


DIO「あっちからも、そっちからも。どんどんボルトが出てきているぞ!」


DIO「なんだ、どうなっている? いつの間にか、足元にボルトが散らばっているッ! 乗った時には確かに見当たらなかったというのに!」

今回の更新はここまでです!ちょいといつもより多めに
ブラッドサイン、近場の本屋で売ってなかったです、はい。白き女王がかなりデンジャーな奴ということは分かりましたが。
小さいチャリオッツかわいすぎるです



ギゴゴゴゴゴゴゴゴ ギギャアアアアッ!!


佐天「きゃっ!? DIOさん、なんだか揺れが大きくなってきていませんか!? 私、なんだか怖くなってきました!」

DIO「落ち着け。今はあまり動かないようにするのだ。何だかとてつもなく嫌な予感がする」


DIO(とはいえ、このゴンドラの揺れは確かに尋常なものではない。ゴンドラの仕組みにはそこまで詳しくはないが、普通の風程度でここまで揺れるようでは元も子もないはずだ)

DIO(何かあるはずだ。このゴンドラには間違いなく、何かが起こり始めている。これはいったい――――)


カラカラァーーン


DIO(またボルトが転がってきたぞ。こんな大きく、大量な数を今まで見逃していたとは思えない。いったいどこから……?)

DIO(――――まさかッ!? いや、だがしかしどうやって……)


佐天「あ、あのDIOさん。さっきから気になってたんですが、このボルトって何なんでしょう……」

DIO(しかしそれを行えるのは……。いや、待て! 正体が奴なら、その可能性もありえる)


DIO「……やはり、そうとしか考えられない」

佐天「えっ?」


DIO「ボルトだ! このボルトは、このゴンドラと吊り下げる鉄骨を結ぶために使われているものに違いない!」

DIO「そのゴンドラを支える骨組みのボルトが抜かれ、今まさにここに転がっているということだッ!」


佐天「ええっ!? それって非常にマズくないですか!?」

DIO「ああ、非常にマズい。他のゴンドラが揺れない風でも、このゴンドラだけが異常に揺れるのは、ボルトが抜かれたため支えが不安定になっているとしか思えんッ!」


ギャガガガガガガガギギギィィ


DIO「ヌウッ」ヨロ

佐天「どわわっ!?」ステン

佐天「いつつ……で、でもどうして? さっきまでは全く普通だったし、このボルトだって見当たりませんでしたなのに、急激にゴンドラが揺れだして、このボルトが突然現れたんですよ?」

佐天「おかしいですよ、不可能です。だって、稼働中の空中のゴンドラのボルトだけを抜いて、私たちに気づかれずに扉も開けないでゴンドラの中に入れるなんて、できるわけありませんッ!」


DIO「……いいや、できる」

佐天「えっ!?」

DIO「そう、奴ならそれをできる可能性は十分にある」

DIO「誰にも悟られず、物の場所も関係なく、自由に動かせる者がいる。そう、まるで幽霊のように神出鬼没なそいつは――――」


佐天「……まさか、『幽霊泥棒』!?」

DIO「奴ならやりかねない。それに姿が透明だということ以外、奴の詳細は全くつかめていないのだ」



DIO「もしもだ。奴の能力は透明になるのではなく、何かを透過し、すり抜けさせる能力だとしたら?」


DIO「そうすれば、奴は光を透過すれば誰にも見えない存在になる。ボルトを透過すれば、ゴンドラの壁など関係なく中にボルトを入れることができるッ!」

佐天「で、でもこの空中でそれをどうやるんですか!? それに、なんで突然私たちを狙ってこんな……ッ!」

DIO「そこまで分かっていれば苦労などしない! とにかく、このままではゴンドラの重さを支え切れなくなり、地面まで真っ逆さまだ! どうにかして手を打たねばッ」


佐天「そうだ! 白井さんに電話して、空間移動でここから脱出しましょう!」


ギギギ ミシミシミシシ ベキベキベキィィィィ


佐天「わっとっと!」

DIO「そんな悠長な時間は残されているとは思えん。この音は、支えの鉄骨がボルトを失ってきしむ音だったのだ。それが今、ゴンドラの重さに耐えきれずにちぎれようとしているッ」

DIO「それに、このゴンドラはわずかな風で大きく揺れるのだ。確か空間移動というのは、移動地点を正確に定めないと地面や壁に埋まってしまうこともあるのだろう」

DIO「ただでさえ狭いうえ、激しく揺れ動く不安定なこのゴンドラ内では、白井の腕や足がゴンドラの壁に引っかかってしまう可能性が非常に大きい。彼女を頼りには出来ない!」


ベキョオッ!!


佐天「うわっ!?」ガクンッ

DIO「まずいッ! とうとう鉄骨が壊れ始めた! 大きく傾くぞ、椅子に掴まれッ!」

佐天「は、はい!」


ギギギャガガガガガ ミキャ ベキベキベキィン!!


佐天「うわああああ!!」

DIO「くそッ、完全に傾いてしまった! 流石に係りの者もそろそろ異常に気付くだろうが、それではもう遅いッ!」

佐天「な、なんで御坂さんたちはこのゴンドラの異変に気付かないんですか!?」

DIO「このゴンドラは御坂たちが乗っているゴンドラのすぐ後のもの。向かいのゴンドラ以外のゴンドラを見ようにも天井や床が死角になっているため、御坂たちの視界には入ることもない!」

DIO「彼女たちからしたら、少し変な音が響いたとしか考えていないだろう」

佐天「そ、そんな……」



カラカラカラカラ カラカラ


DIO「!!」


DIO「また新たにボルトを入れられる音がした! もはや、このゴンドラは持たんッ!!」

佐天「DIOさん!? いったい何を……」

DIO「扉を蹴破って出口を確保する! この高さからでは助かる見込みは薄いが、密室よりはマシだ」

佐天「ちょ、DIOさん!?」


DIO「ウイリィアアッ!!」グオオオッ


ギギイィンッ!!


DIO「何ッ!? 凹む程度だとッ!?」

佐天「す、すごい音……。でも、そんなすごい蹴りなのにどうして開かないんでしょうか!?」

DIO「――――ムッ! このゴンドラの扉のフレーム、不自然に歪んでいるぞ」

佐天「歪んでいる?」

DIO「なるほど。この歪みが原因で、扉が開かなくなってしまったということか!」

DIO「ゴンドラ自体が異常なほど何度も激しく揺れたため、フレームがそれに耐えきれなかったのかッ! クソッ!」


ギチギチィィ グギギギギギィィィン


佐天「わわわわわわわわ!! なんですか、急に揺れが激しく!!」

DIO「しまったッ! あまりにも強く扉を蹴り飛ばしたので、その衝撃が鉄骨にまで伝わってしまったようだッ!!」

佐天「ええっ!? DIOさん、どれだけ強く蹴りつけたんですか!」

DIO「今までのきしむ音とは明らかに違う音がしたッ! 佐天、椅子にしがみつけッ!!」

佐天「ま、まさか……」

DIO「このゴンドラは――――」


メキョメキョメキョ ビキキキ!!


DIO「もう落ちる!!」


ベギャリイィィッ!!


今回の更新はここまででございます。密室こそサスペンス、とは本当によくいったものだと思います




ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ


佐天「ひゃああああああああああああ!!」

DIO「クッ! ついにブチ壊れてしまったか!」

佐天「うわーんもうダメですゥゥゥ!! このままゴンドラと一緒に二人とも、ハンバーグのタネみたいにペッチャンコになって終わりですよォ!」


DIO(クソがッ! 会って間もない女と共に、こんなところで死んでたまるかッ!)

DIO(落ち着け、考えろ! 何か脱出する手立ては残されてないか? 絶望は希望を運んでくる、まだチャンスはあるはずだ!!)


DIO「まずは、やはりこの扉をブチ破って脱出するのが手っ取り早いがッ!」


ギギギン!!


DIO「やはりフレームが邪魔をしてブチ壊れてくれない。おまけに落下の重力で身体が空中にあるため、思うように力を乗せることができないッ」

佐天「無駄ですよDIOさん! 落下まであと六秒もないんです、そんな短い時間の中で何かできるわけがありませんよ!」

DIO「……チィッ(これだから平和に浸かったウスラボケ共は!)」


DIO「ならば、この無数のボルトを弾丸のように指で弾き飛ばしてやる!」ルチャアッ

DIO「金属には金属、さらに弾は大量にある。これで扉を破壊できれば……!」バチコーン!


ザクゥ


DIO「刺さったッ! が、やはり落下重力の影響で思うように狙いが定まらんッ」

DIO「……だが、下手な鉄砲も数撃ちゃあ当たる。なりふり構っている暇はない」


DIO「強引に、ブチ壊すッ!!!」ズララララァーーー




DIO「ウリィィィィアアアアアアアアッ!!」


ズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバ!!




佐天(す、すごい! 大量のボルトを、消しカスを指で飛ばしているみたいにすごいスピードで撃ちだしてる! まるでボルトが弾みたいに乱射されているッ)

佐天(でも、もしこのままボルト弾がゴンドラの扉をボロボロに破壊できたら、もしかしたら……!!)



DIO「クウアアアアアアアッ!!!」


ズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバ!!



ビシビシ ビシビシビシィ


佐天「す、すごい! 扉にヒビが入ってきました!」

佐天「この調子なら、もうすぐで壊れそうです! お願い、頑張ってください!!」

DIO「貴様に言われなくともッ! オレはここで死ぬつもりはさらさらない!!」ズバズバズバズバズバ


DIO「オレは生きる! 何が何でも生きる!」


DIO「何が何でも生き延びて、オレは自分が何者かを知らなければならない!!」ズバズバズバズバズバ


佐天「えっ? DIOさん、いきなり何を……」

DIO「地面との激突まで余裕がない! 次のボルト弾を……」


スカッ


DIO「ムッ! まさか……」チラリ

佐天「DIOさん!? どうしたんですか!?」

DIO「弾切れだッ! あれだけあったはずのボルト弾を、気づかない間に全て撃ち尽くしてしまっていたッ!!」


ビキビキビキィィ


佐天「そ、そんな……ッ! あと一発で壊れそうなのに!」


DIO「――――!! いや、待て!! まだあるぞ!」

DIO「佐天! 一発だけ、君の近くにある!!」

佐天「え、ど、どこですか!?」

DIO「君がしがみついている座席の端に引っかかっている! その一発だ!!」

DIO「私では手を伸ばしても到底届かないが、君からの距離なら手を伸ばせばなんとか届くはずだッ!」

佐天「あっ、あれですか!? でもギリギリ届かないように見えるような……」

DIO「今、ここを生き延びる手段は私ではない。君にかかっている!」


DIO「生に『飢えろ』! 生を『欲せ』!」


DIO「君自身の手で、それを掴みとるのだッ!」


佐天「……私自身の、手で」┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


佐天「……分かりましたッ」

佐天「私に任せてください! あのボルトを取って見せますッ!」

DIO「悔しいことだが、今は君にしか頼ることができない。時間がない、すぐに取るのだッ!」


佐天「とは言っても……くぅ!」ピィーーン

佐天「やっぱり、ギリギリ指がかからない程度で止まってしまう! こんなにいっぱい腕を伸ばしてるのに!」

佐天「落下重力でボルトがこれ以上上に上がってしまったら、もう届かなくなってしまう! そうなったらおしまいだッ!」

佐天「その前に、どうにか……ッ! 届け、もう少しなのに……ッ!」グググゥ


カサ  カサ


佐天「!! 指が触れたッ!」

佐天「どうにかして、爪でひっかけるようにしてこっちに引き寄せれば……この! この!」


カサカサ カサカサ


佐天「うぐぐ……!」

DIO「急げ佐天! 間もなく地面と激突する! そうなってしまえば、君はもう二度と御坂たちとは会えなくなってしまう!」

DIO「そして何より、レベル0のまま死んでしまうぞッ! もう二度と、失敗者の烙印を覆すことができなくなってしまうのだぞ! それでいいのかッ!!」


佐天「くぅぅぅぅぅぅぅッ!!」グオオオ



佐天(DIOさんの言うとおり、幻想御手以来、私はレベル0から上がることを諦めていたのかもしれない)


佐天(いや、恐れていたのかもしれない)

佐天(幻想御手を使ってみんなを巻き込んだこと。初春を不安にさせたこと。アケミたちを引きずり込んでしまったこと。御坂さんや白井さんに迷惑をかけたこと)


佐天(でも、本当に恐れていたのは、自分が本当にレベル0から抜け出せてしまったら、ということだったと思う)

佐天(レベル0だったからこそ築けたこの関係が、もしレベルが上がった場合はどういうに変化してしまうのだろうか、と考えてしまう)

佐天(一人だけ能力を発現させた私は、アケミたちと上手くやっていけるだろうか? 能力を手に入れた私は、いったいそれをどう扱っていくのだろうか?)


佐天(そして、もしもレベル1から上がることはないと、ハッキリ宣告されてしまったら?)


佐天(なんだかんだで、私は今のこの生活を変えたくなかっただけ。レベル0なら可能性はあると安心してたり、他にもレベル0はいるから能力なんて二の次と言い聞かせたり、そうやって言い訳ばっかり作っていた)

佐天(そう、能力が欲しいだなんて言葉は実際口だけだったかもしれない。心から言っていたことは、あんまりなかった)

佐天(DIOさんがいう『弱者』に、私は完全になってしまっていたんだろう)

佐天(変えたくない、壊したくない、変わらなくていい、平穏でいたい、能力は見てるだけでも十分……そう思ってた)


佐天(――――でもッ!)


佐天(そんなんだったら、昔の自分にぶん殴られる! 純粋に能力に憧れていた、あの時の自分に!)

佐天(能力があれば、もっと御坂さんたちの助けにだってなれる! アケミたちだって、私のレベルが上がったからって卑下にするような奴らじゃないッ!)


佐天(そんな当たり前なことに、今更気づかされたッ! 他ならぬDIOさんによって!!)

佐天(今はまだ能力が出ないけど、これからも一生でないだなんてことはありえないッ!)


佐天(だから生きるッ! 今ここを生き延びて、私は自分の能力を知ってやるッ!)



佐天(そういうわけなんだ。私の腕)



佐天(もっと伸びろやコラァーーーーーーーーーッ!!!)



佐天「とぉぉぉどぉぉぉけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」


グイッ




佐天「――――」


DIO「どうした、佐天! なぜ急に止まるッ!」


佐天「――――した」


DIO「返事をしろ佐天! このままでは……」


佐天「――れました! と、とととと取れました!!」

佐天「やった! 私ナイスッ!」

DIO「喜ぶのはここを出てからにしろォーーッ!! いいから早くそれをよこせーーーッ!!」

佐天「あっ! は、はい!」ビクッ




DIO「ふぅー。一時はどうなることかと、ほんのちょっぴり冷や汗をかいたが……」パシッ


DIO「運命はッ! このDIOに味方したようだなッ! 今この手元にあるボルトが、何よりの証拠よ!」


DIO「幽霊泥棒。貴様が何を思ってこのゴンドラに細工を仕掛け私たちを攻撃してきたのかは知らないが、このボルトをゴンドラ内に入れたのがお前の敗因だったのだッ!」ググググゥーーー


DIO「これで、終わりだァーーーッ!!」


ズビシャアアア!!




グイイイイイイン


DIO(この弾速、この軌道ッ! この一撃で、ボロボロになった扉は完璧に破壊される!)

DIO(さあ脱出だッ! 幽霊泥棒め、必ず貴様の正体を解き明かし、見つけた証には再起不能にしてやろうッ!)


ポロリ……


DIO「ムゥッ!?」


佐天「あれは、DIOさんが一番最初に撃ちこんだボルト弾? いきなり扉から抜け落ちましたよ!?」


DIO「まずいッ! あの落下の軌道では……ッ!!」


ガギャーーz__ン!


DIO「な……ッ! バカなッ!」


佐天「撃ちだしたボルト弾が、落下したボルトとぶつかって……ッ!」

佐天「はじけ飛んでしまったアァーーーーッ!!」


佐天「でもなぜ!? さっきまであんなにぐっさりと扉に刺さっていたのにッ! どうして今になって!?」


DIO「扉だッ! 今、扉はボロボロになってひびが広がっている。つまり、扉には大量の隙間が生まれていたのだッ!」┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

DIO「隙間は空白、すなわち空気の通り道ッ! その空白がわずかな余裕を生み出して、ボルトの周囲に空白を開けてしまったのか!」┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


DIO「しかし、それがこのような事態を引き起こすとは……! 運命は、このオレに味方したのではなかったというのかッ!?」



ゴオオオオオオオオオオオオオオ



佐天「DIOさん! もうダメです、ぶつかりますッ!!」

DIO「クッ……ソォ、がぁッ」ヒクッヒクッ



ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



佐天(ごめん、みんな……!)


DIO「――――――――ッ」



ゴガッシャアアアアアアアアアアンッ!!!


本日の更新はここまでです。いつもよりちょいと遅くなってしまいましたが、そこはご容赦を。
ジョジョ世界は五秒間の間でも漫画数ページは話せる世界ですから、多少はね?

ダメ押し、かっこよかったですわ

感想などありがとうございます。ほら、プロボクサーはある瞬間パンチが遅く見えるって言いますよね。あれと同じですよ、たぶん



『いいだろう……宿命ともいうべき…か…。始末すべき宿命、抹消すべき因縁……』

             raSeんカいだn

『ディオ! 君を! 君のその力を! 世の中に放つわけにはいかない!!』


『根だやしにせねば…。――――の一族は…排除せねば』

                    カbうmuし
 

『だったらその金で酒を買ってこいってんだよォーーーーッ! マヌケがァ~~~~~~~~~~~ッ!!』
   

『おれの首から下は―――――スターという男の肉体でな…。―――――ョースターの祖父だった男よ』
            

『見ろ、この両指を………左の方が傷の治癒力が遅いだろう……? 体の左半身が弱いのだ……。まだ完全におれになじんでおらん証拠、不死身ではない…』

    はィKYoノまthi

『うおおお、このナイフはッ!! このナイフは君がとうさんに突きたてたナイフだァーッ!!』

   いちziKのTAルト 

『神がいるとして運命を操作しているとしたら! おれたちほどよく計算された関係はあるまいッ!』


『苦痛は与えん! それが我が好敵手への最後の礼儀!』
 

『DIO……様。あなたの期待は、満たされるでしょう……。必ずや仕留めて………ごらんに………いれます』


『おれはこんなにッ! こんなにすばらしい力を手に入れたぞ!』
                    ―――Butoムし   

『DIO様ッ! あなたは必ず――を支配できるッ!』


『空気を吸って吐くことのように! HBの鉛筆をベキッ!とへし折る事と同じようにッ。できて当然と思うことですじゃッ!』


『大切なのは「認識」することですじゃ! ――――を操るという事は、できて当然と思う精神力なんですぞッ!』

ド―――heのミthi


『DIO様!』

『DIO様!』

『DIO様! DIO様! DIO様! DIO様!』



DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様
DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様 DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様DIO様―――――――――――――――――――――――――――









『君は ディオ・ブランドーだね?』


『そういう君は―――――――――』




DIO「―――――――――ハッ」ガバァ


シィーン


DIO「…………、」

DIO「……うっぷ」フラフラ


DIO(な、何だ……。頭が割れるように痛い。あまりのひどさに吐きそうだ、視界がさだまらない)

DIO(なんだか、とてつもなくごちゃごちゃとした夢を見ていたような気がする……。そして、それはとても重要な夢のような予感がするが、気分が悪くてほとんど思い出せない……)


DIO「……これは、ベッドか? この場所は……」

DIO「…………、」

DIO「…………ッッ」ダラダラダラ


DIO(違う! そんなことはどうでもいい! オレはどうなった!? オレは確かに、あのゴンドラ内で佐天と共に押しつぶされてしまっていたはずだッ!)

DIO(何が起こった? まさか、絶体絶命のピンチの瞬間にスーパーマンが駆けつけて、見事オレと佐天を救い出してラッキー、だなんて馬鹿みたいな展開などあるはずがないッ!)

DIO(思い出そうにも強く頭を打ったのか、前後の記憶が混濁して曖昧になってしまっている……。この頭痛や吐き気もおそらくはそれだ)

DIO(ここは何だ? なぜ生きている? 佐天はどうした? 御坂たちは? オレはいったいどうなった?)


DIO「うぐ……ぐっ」フラフラ



「ぐおぉー……」


DIO「!!」バッ


DIO「……こいつはッ」



DIO「…………、」


当麻「すぴぃー……んぐんぐ」


DIO「……カミジョー、トウマ。に、間違いないな」

DIO「……待て、ますます意味が分からん。どうして上条当麻がここにいる。そもそも、オレはなぜベッドに寝かされていた?」



「それはここが病院だからだね」



DIO「! この声は……」


カエル医者「やぁ。相変わらず元気そうだね? DIOくん」

DIO「…………またお前か」


カエル医者「まる一日」

DIO「?」

カエル医者「君がここに運び込まれて、ベッドに眠っていた時間だよ。君の再生力には、毎回舌を巻かれるばかりだ」

カエル医者「上条君、君がここに運び込まれたと聞いて真っ先に飛んできたそうだ。ピクリとも動かない君の無事を願って、その場で眠りこけてしまうほどに心配していたよ?」


DIO「…………何の用だ」

カエル医者「……少しは上条君の献身的な態度を認めてあげてもいいと思うんだけどね?」

カエル医者「それに、医者が患者のところを尋ねる時は、決まってちゃんと用があるときだ。そう慌てなくてもいいじゃないか?」

カエル医者「ああ、一緒に運び込まれた女の子も無事だよ? 意識も君より早く回復していて、今は別室で安静にしてもらっている。傷も軽い」

カエル医者「まあ、重傷具合からいえば、君の場合は常人じゃ一生寝たきり生活でもおかしくないほどの大怪我だったんだけどね? それをまる一日とは、流石のぼくも驚くしかないよ?」


DIO「…………色々と聞き出してやりたいところだが、私は疲れた。悪いが、少し休ませてはくれないか。その用というのも、明日聞かせてほしい」

カエル医者「おや、そうだったかい。それじゃあ夜も遅いし、ゆっくりと休養をとるといいよ? ぼくはまた明日来るよ」

カエル医者「それでは、おやすみ」ガチャ バタム


DIO「…………、」ボーォ

DIO「オレは……助かった、のか? 奇跡的にゴンドラがつぶれずに、私たちはなんとか生き抜くことができたのか?」

DIO「分からない……。分からないが、ただ一つ言えることはある」


DIO「オレの感じた『死の予感』は間違いなく当たっていた。あのまま何か大きなイレギュラーが発生しない限り、私と佐天はゴンドラと仲良くスクラップと化していた」

DIO「それだけは、間違いない」

DIO「…………、」


DIO「考えても仕方がない。明日、佐天に直接尋ねてみよう。彼女ならば、何か目撃しているかもしれない……」

DIO「……しかし、何なのだ。このとてつもない疲労感は」

~★第七学区病院 AM6:35★~


DIO「…………、」パチリ

当麻「ふごぉー、ふがっ。……ぐー」

DIO「…………夢はとくに見なかった、か」

DIO「あの時みた夢。ほとんど内容は覚えていないが、なぜだか脳裏に焼き付いて忘れることができない」

DIO「忘れてはならない夢のような。しかし全く思い出せない」

DIO「……今は、そこまで気にすることではないか」


当麻「ずびぃー、ずばぁー……」

DIO「……いちいち声をかける必要はないか」


飛行船 『昨日、○○テーマパークの観覧車で起こった事故についてですが、依然その原因は不明のままです。警備員による警戒態勢がひかれているため、各区の方々はご協力お願いいたします。繰り返します。昨日、○○テー……』


DIO「……ゴンドラに乗っていたところまで全て夢だった、だなんて説はなくなったわけだ。もともと考えてもいなかったが。バカらしい」

DIO「となると、ますます私が生き残った理由が分からない。全身をぐしゃぐしゃに押しつぶされていてもおかしくはなかったのだ」

DIO「何者かがオレと佐天を助け出した? しかし、御坂や白井はありえない。それにあの時の状況から手を打てる策はどれほどある?」

DIO「ならばいったい……」


シュルシュルシュル…


DIO「――ん?」チラッ

DIO「…………今、左手に何か動くものが見えたような気がしたぞ。細く、うねっているように見えたが」

DIO「糸くずのようなものはついていないし、輸血パックのチューブが刺さっているのは右手の方だ。なので、左手に何かがついているとは思えないが……」


シィーン


DIO「……寝ぼけていたか。佐天のところに急ぎ向かいたいところだが、まずはあの医者が来るまでここで待っていよう」

~★~

カエル医者「やあ、おはようDIO君」ガチャリ

DIO「ああ」

当麻「ふごふご……」


カエル医者「彼、まだ寝てるんだね。一応安静にしてなきゃいけない君よりも、よっぽど大人しいよ?」

DIO「どうせ、大方の傷は治ってしまっているのだろう。例の謎の再生力によってな」

カエル医者「まあ、そうなんだよね。ちなみに、君がここに運び込まれてきたときは両腕の筋繊維断裂と左足の粉砕骨折、内臓破裂、そして砕けたゴンドラの一部が脇腹に刺さった状態で運び込まれてきたよ?」

DIO「……」ニギニギ

カエル医者「医者としてこういうのもアレなんだけどね。君、入院しなくてもいいんじゃないかなってぼく思っちゃうよ?」

DIO「……一応、完全に完治しているわけではないようだがね。確かに左足には力が入りづらいし、左腕も少し握力が入りづらい。脇腹に関しては知らないが、痛みはない」

DIO「それで、昨晩言っていた用についてだが」

カエル医者「そう、それだよ。ぼくもそれを伝えに来たんだ。もちろん君の容体確認もかねて、だけどね?」


カエル医者「DIOくん。君、ここに運び込まれてくる前の記憶はどこまで覚えているかな?」

DIO「……○○テーマパークへ行き、そこの観覧車のトラブルに巻き込まれたことまでは覚えている」

カエル医者「そのトラブルの詳細は?」

DIO「私ともう一人の女性が乗っていたゴンドラが、鉄骨から離れてしまい地面に激突した……ではないのか」

カエル医者「そうだね。それでばっちり解答100%だよ」


カエル医者「それじゃあ、そこから君はどうやって助かったかは?」

DIO「…………、」

カエル医者「そこからは先は知らない、か」


DIO「お前は知っているのか」

カエル医者「ん?」

DIO「私が命をつなぎとめた理由を、お前は知っているのかと聞いている。少なくともあの時現場にいなかったお前が、間近でそれを味わった私よりもそれを知っているのか?」


DIO「お前が話すより先に、私が先に言っておこう」


DIO「あの時、私が助かる見込みは限りなくゼロに近かった。いいや、最早ゼロと言える」


DIO「ゴンドラが地面に衝突するまさにその瞬間まで、私と佐天はその中に閉じ込められていたのだからな」

DIO「空間転移系の能力者でも、高速で落下し続ける物体の座標を組み込む時間などなかっただろう。しかも、ゴンドラはきちんと地面に激突していて、私の脇腹にプレゼントまで残してくれている」

DIO「ここにいる上条当麻だが、こいつの力などは毛頭及ばない(こいつが当麻の右腕のことを知っているのかは知らないが)」

DIO「もう一度言おう。私たちが助かる確率は、ゼロだった」


DIO「さて、知っているのならば聞かせてもらおうではないか。ええ、医者よ? 私と佐天を助け出した、期待のニューヒーローってやつを」

カエル医者「……それでは、話そうか? 彼女から聞いた話をね――――」

~★AM9:00★~

当麻「いいかDIO! まず、こうやって無事に意識を取り戻して会話できるまでに回復したことに関しては、俺は素直に喜び祝う」

DIO「……、」


当麻「だけど、お前行く先々で重大な事故ばかりに巻き込まれすぎじゃないか!? 最初の時もそうだし、スキルアウトに目につけられたり、今回のこれもそう!」

当麻「必ず死にかけの状態で運ばれてくるってどういうことだよ!? 毎回電話で伝えられるその爆弾情報に俺は心臓が飛び出しそうだ! なぜか来るときにはほぼ完治してるんだけどな」

DIO「……、」


当麻「この事件の巻き込まれ具合。そしてDIOの毎回負う負傷のレベル。どう考えても普通じゃない」

当麻「そこでこの上条当麻は考える。いったい何が、そこまでDIOに不幸を呼び込んでしまうのか。一週間に一回のペースで病院に運ばれるDIOには、何か秘密があるんじゃないかと」

当麻「数々の脳内上条会議の末、俺はある一つの結論に達したわけだ。それはだな……」

当麻「ズバリ、お前も俺と同じ不幸体質の人間だったのだ! この、元祖不幸引き寄せ男上条さんが言うのだから間違いない!」

DIO「……、」


当麻「辛いよなぁ、不幸体質っていうのは。目覚ましかけてたケータイは充電切れてたり、朝食のパンはふとしたはずみで宙を舞って綺麗に中身とセパレートしたり」

当麻「だけどな、DIO。そこでくじけちゃいけないんだよ。不幸ばかりで下向けたくなる顔を、無理やりにでも上にあげていかなくちゃならないんだ。下に顔を向けるってのは、不幸に屈した証だからな」

当麻「トラックに泥水はねられようが、間違って犬の尻尾踏んでひーひー追いかけっこしようが、途中でビリビリに出くわして半日追加コースになろうが、決して顔を下に向けちゃダメなんだぜ」

当麻「どんな不幸にもくじけす、めげず、上を向いて歩いていく。そうすれば、いつか幸せが訪れるもんなのさ……」パァー

DIO「……、」


DIO「終わったか?」

当麻「聞けや人の話! とりあえず無事でよかったなコンチクショウ!」


DIO「……ああ、そうだな」


当麻「……なんか、随分上の空だな」

DIO「ん。まあ、そういう気分なだけだ。お前にもあるだろう」

当麻「いや、そうだけどさ。なんか今のお前、すごく渋い顔をしてるように見えるから」

DIO「……そう見えるか?」

当麻「なんとなく、だけどさ。俺が寝てる間に、あの医者の人から何か聞いたのか?」

DIO「……そんなところだ」

当麻「そこまで重要な話だったのか?」

DIO「……いや、違うさ」


DIO「当麻。君は、私がどうやって助かったかは誰かから聞いたか?」

当麻「いんや。俺は、DIOの乗ったゴンドラが事故で落下して、お前ともう一人の乗客が病院に運ばれたってのを聞いただけだ」

DIO「そうか。そうだよな」


DIO「あの医者との話はなんてことのない。私がどうやってあの状況で命をつなぎとめたか、というものだ」

当麻「ホントすごいよな。確か、話だとゴンドラは原型が留まらないほど派手にブッ壊れてたんだろ? それだけ衝撃が強かったのに、よく生きていたよな。たまたま衝撃が弱い所にいたのか?」

DIO「……私自身、その時の記憶は少し曖昧になっていた。だから、あの医者はもう一人の乗客に色々話を聞いたらしい。そっちははっきりと意識があったようだからな」

当麻「ふーん。まあ、まさに不幸中の幸いってやつだよな。とにもかくにも、お前が生きていてくれてよかったぜ」

DIO「私はまだ死ねないのでね。当分はきっちり生きていくつもりだ」

当麻「そりゃ頼もしいこったな。ハハハ」

DIO「それもそうだな。フフ」


DIO「……、」



~★AM8:37★~



カエル医者「君のほかに乗っていた、佐天くんだったかな? 彼女は、あの瞬間に何が起こったのかをしっかり見ていたそうだ」

DIO「……佐天がか。それで、一体何が起こったのだ。私たちを助けたのはいったい何者なのだ」


カエル医者「……君だよ」

DIO「何?」


カエル医者「佐天くんが言うにはね。あの状況を脱出できたのは、“たぶんDIOさんが一瞬でゴンドラをぶっ壊したから”、と彼女は言っていたよ?」

今回の更新はここまでです。けっこう長くなってしまいましたが、そこはどうかご容赦をッ

感想などありがとうございます!長さはその時の気分次第で変わりますので、短いときも結構あります
一応、あの状態の時間間隔は1レス=1秒の計算ですから……たぶん
続きが気になると言われたら、ますます完結させねばなりませんね。ペースはゆっくりですが、どうかお付き合いをば

~★~


佐天『あの時、私とDIOさんは打つ手を全て打ちました。その結果、それらは全て通じずにゴンドラを壊すことはついにできませんでした』


佐天「DIOさん! もうダメです、ぶつかりますッ!!」

DIO「クッ……ソォ、がぁッ」


『最後の頼みだったボルト弾も、運命が仕組んだとしか思えない偶然が重なって、扉を壊すことにはいたりませんでした』


ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


佐天(ごめん、みんな……!)


『もうダメだ。ここまで足掻いたけど、結局打ち勝つことはできなかった。悔しさを心いっぱいに感じながら、私はとっさに目をつぶったんです』

『その時でした』


DIO「――――ッ」ボソリ


『目をつぶったからこそ、視覚を閉じたからこそ。聴覚が少し過敏に働いて、DIOさんが小さく何か呟いたことを聞き取れました』

『その直後……』


ガン!


佐天「!?」


『ゴンドラ内で鈍く反響する音が、突然起こりました。何かは全くわかりませんでした。私も目を閉じていましたし、最初はとうとうゴンドラが地面に激突した音だと思いました』

『でも、違いました』


ガン! ガン!


佐天「……!?」


『一回、もう一回。全く同じ音がゴンドラの中に響き渡ったんです。地面のぶつかったのなら音は一回だけだろうし、そもそももっとド派手な音を出してバラバラになるはず』

『この音は、そう。まるで鉄パイプか何かを握りしめ、渾身の力でゴンドラの壁を叩いた音をさらに数倍以上大きくしたような打撃音に聞こえました』

『そう感じた私は、恐る恐る目を開けました』

『そこは変わらずゴンドラの中。地面は目の前、激突寸前。絶望的な状況は何一つ変わってはいませんでした』

『……でも、そこでふとDIOさんに視界を映した時、私は見ました』


DIO「……」ボソリ


ガン! ガン! ベキョオ!


『DIOさんが微かに唇を動かしたと思ったら、またもやその音が鳴り響いてきたのです』


『この音は何なんだろうか? DIOさんは何を呟いているのだろうか? ただ、偶然に一致しただけなのだろうか?』

『恐怖のせいだったのか、私は頭が回らなくて混乱することさえできませんでした。ただただ、その時はなぜか、DIOさんのことをじっと凝視していることしかできませんでした』

『……違います! 別に好きってわけじゃあ……オホン』


DIO「……など」

佐天「えっ……?」


『DIOさんに意識を集中させたおかげか、それともDIOさんの声が徐々に大きくなっていったためか、ようやくDIOさんが“何を呟いてるのか”を少しずつ聞き取ることができるようになりました』

『DIO自身も半ば無意識に近かったように見えました。虚ろな、しかしとてつもなく恐ろしく冷たい瞳は、ゴンドラの壁を貫くように見据えているだけでした』


DIO「このDIOを……殺すことなど……」

DIO「……無駄だ」


ガン!


『やっぱり、DIOさんが何か一言漏らすたびに、その謎の打撃音がゴンドラ内を覆っていました』

『耳をつんざくようなその音は、しかもそのテンポを急激に速めていったんです』


DIO「我が道を塞ごうとする……この程度の壁など……」 ガン!

DIO「……無駄だッ」 ガン! ガン!

佐天「ディ、DIOさん……!?」


ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!


『鳥かごの中で激しく暴れまわって出ようとする鷲のように、その音のテンポはますます加速していきました。DIOさんの言葉も、それに比例するように次第に力を帯びていきました』

『……いや、もしかしたら逆だったのかもしれません』


『DIOさんが勢いづいてきたからこそ、打撃音が鳴り響く回数が増えてきたのかも……』


DIO「無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄」


ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!


ドゴォッ!!


佐天「きゃっ!? な、何!? よくみたら、ゴンドラの壁全体に……凹み!?」

佐天「ま、まさか今鳴り響くこの打撃音は……ゴンドラの壁が凹んだための音だったの!?」


『そうなんです。この打撃音の正体は、ゴンドラの壁が大きく凹んでいた音だったんです。DIOさんに気を取られていたので、音が激しくなるまで全く気づきませんでした』

『しかもその凹みかた、異常なんです。まるで人の拳で殴りつけたかのような跡が残されていて、それを中心に凹んでいるんです』

『鉄の壁を殴って凹ませるんですよ? 能力でもない限り人間業とは思えません』

『さらに、その間DIOさんは一切その場から動いていないんですよ。彼はその場で同じ言葉を繰り返しているだけ。それだけで、ゴンドラの中は鉄が大きく凹む嫌な音が鳴り響きます』


ゴガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


佐天「っ!? なんて音……!」

DIO「フハハハハハハハハ! 無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄ッ!」

佐天「DIOさん……。貴方、本当にDIOさんなんですか?」


『私にはその時、DIOさんがまるで別人のよう見えました』

『もちろん、見た目や声は一緒です。だけど、その中身。圧倒的暴力と残虐さで人々を縛り付け、支配する。ネロやドミティアヌスも裸足で逃げ出すような、絶対の帝王のような重圧』

『とても怖かったです。いつも紳士的でダンディな態度だった性格が、その時には非情さ、冷徹さしか感じしませんでした。人とは思えないほど、骨の髄まで氷漬けにされるたみたいな薄ら寒さ……』


DIO「無駄、無駄、無駄、無駄ッ!」


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!


DIO「無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄ッ!」


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


佐天「ディ、DIOさ……」


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!


佐天「っ……声も届かないの?」


『……その力が何なのか、今でもよくわかりません』

『DIOさんは、実は能力者? でも、それならゴンドラが落下する前にその能力を使えば、脱出なんて簡単にできたはず』

『なのに使わなかった。しかも当人はほとんど無意識で、意識的に能力を使ってるようには見えなかった。暴走しているとか、そんな感じ』


『それに、DIOさんは学園都市の外から来たと言っていた。見る限り学生にも見えないし、能力開発は学生にしか行わないからDIOさんが能力なんて使えるはずない』

『でも、だったらあれはいったい何?』


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!


『はっきりと、これだけは断言できます』


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!


『あの時のDIOさんは……普通じゃあない』


DIO「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄

   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」



ゴゴゴゴガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!


今回の更新はここまでです。ちょっと用事があるので今回は早めに更新させていただきました
区切るところ間違えてしまった


カエル医者「――――で、地面すれすれで木端微塵にゴンドラが砕けた衝撃が君と佐天君を突風となって押し上げ、僅かに落下速度を軽減させた」

カエル医者「もっとも、君はもろに地面に激突したが、佐天君は運よく君の上に被さるようにして落ちたから、傷の度合いは大きく変わったんだけどね?」


カエル医者「こんなところかな?」

DIO「…………、」フルフルフル

カエル医者「…………、」


DIO「……医者。私が聞きたいのは、あの状況を打開した人物と要因だ。誰が嘘丸出しのコケ脚本物語を語れと言った?」

カエル医者「……脚本はぼくじゃないよ?」

DIO「そんなことはどうでもいい! 早く言えよ。随分引っ張ってくれるじゃあないか、ええ? そんなに言いづらい展開があったのか?」

カエル医者「……ぼくは全部話したよ、彼女が教えてくれた通りに。何ならボイスレコーダーもとっておいた。あとで聞いてみるかい?」

DIO「ふざけるんじゃあないッ!!」ガッシャアアアン!!

カエル医者「…………、」


DIO「ならば、全部本当だから飲み込めと、このDIOに言うのかッ! 実はオレは能力者で、ピンチの時に無意識にそれを発動させることができる、素晴らしい力の持ち主だと!?」

DIO「私の意思など関係なく行われる謎の力で、あの絶望的な状況を切り抜けることができてよかったねと、そんな話を素直に飲み込めというのかッ! このDIOに!」

カエル医者「…………、」

DIO「佐天の奴め、あいつも頭を打って気が狂ったか! こんなつまらん話をしおって! 次に会った時はその脳みそごと全身をシェイクしてやる……」


カエル医者「……念動力」

DIO「何だ」

カエル医者「これは、あくまで仮定の話だよ? 佐天君の話を聞く限りだと、君たち二人を救ったのはおそらく念動力。或いはそれに近い能力」

カエル医者「おっと、念動力という能力の詳細は分かるかい?」

DIO「読んで字のごとく、念動力(テレキネシス)だろう。遠くのものを押せるとか、何かを持ち上げられるとか」

カエル医者「そうだね。流石、物覚えが早い」

DIO「医者。お前、何を言いたい」


カエル医者「前にも話した通り、君からはAIM拡散力場は確認されていない。つまり、君は学園都市のカリキュラムを受けた人間ではないということ」

カエル医者「だから、君はレベル0どころか能力者ですらない。念動力を扱う事なんて、アメリカ人が初めて手にした箸を上手く扱う事よりも不可能だ」

DIO「そうだ。その通りだ」


カエル医者「――――が、そうなると君の体質はどう説明しよう?」


DIO「……、」

カエル医者「これがギャグ漫画やそういう類のものなら笑って済ませられるレベルだけどね、残念ながらここは二次元の世界じゃない」

カエル医者「お世辞にも、君の身体は普通の人間とは呼べない代物になっている。身体も、脳も」

DIO「…………、」


カエル医者「それじゃあ、先の話に出てきた念動力に近い能力が、それらと同じような分類だったとしたら?」


カエル医者「君のその肉体のように、ぼくたちの科学(想像)を根底から覆すような概念のものだったとしたら?」


カエル医者「開発実験を受けていない君が持つ異常な肉体。そんなものが存在してしまっているのだから、『理屈が通っていないからとりあえずNO!』は通用しなくなってしまっているよ?」

DIO「…………、」


カエル医者「これまた仮の話で進めていくけどね、DIO君?」

DIO「……何だ」

カエル医者「君、本当にそれを扱っているという自覚はなかったのかい?」

DIO「…………何?」


カエル医者「念動力に近いもの……暫定的に幽念動(ニア・テレキネシス)としよう」

カエル医者「君は、その幽念動を無意識的に操っていることはなかったかい?」


カエル医者「例えば、“自分の周りでよく物が勝手に動いたり消えたりした”とか」


DIO「何を言っているのだ? そんなこと、あるはずが…………」





DIO『……こんなところに、傘などあったか? それも日傘だ。センスからして女性ものだが……それが余計に奇妙だ』


DIO『……! こっちにもいつの間にか何かあるぞ! これは、缶ビールか? まだ封も切られておらず、よく冷えている。
  その隣にあるのは、ラジオ……そして懐中時計だ。こんなもの、ついさっきまでは確かにこの病室にはなかった』



黒子『昨夜、複数人の方から一斉にある電話が届いたのですわ。その内容は『知らない間に何者かに物品を盗られた』、というものです』



10032号『私としたことが、いつ盗まれたのか察することができませんでした、とミサカは自身の反射神経の衰えに嘆きを覚えます』



DIO『いつから、シャワーは止まっていた?』


DIO『……何か、いる!? オレの背後だ。オレのすぐ後ろに、何か気配を感じるッ!』



木山『例えば、念動力は物を動かすことができます。それは私たちが触れなくてもいい距離のものを動かしたり、押したりすることができます』



DIO『なんだ、どうなっている? いつの間にか、足元にボルトが散らばっているッ! 乗った時には確かに見当たらなかったというのに!』



DIO「……………………ッ!」ブワアァー


カエル医者「……、」

当麻「すぴー……」

DIO「ハァー、ハァー、ハァー……うっ、うぐぐ……」ダラダラ

カエル医者「汗、すごいよ? 大丈夫かい?」

DIO「黙れッ! ば、バカな……そんなことなど……」


DIO「このDIOが、能力者? じゃあ、やはり異常な脳は“そういうこと”だというのか!?」

DIO「じゃあ、奴は……幽霊泥棒は……」

カエル医者「……、」

DIO「今まで、幽霊泥棒だと思っていたものは……」


ゴトン バサバサバサー


カエル医者「……一人でに、本が落ちたね」


DIO「あれ、これも、それも、どれもこれも全て……」


カチッ


『こちら現場の二田です。先日発生した、○○テーマパークの観覧車のゴンドラが落下したという事件ですが、復元された一部の壁からはまるで拳で殴りつけたような痕が――――』


カエル医者「……、」

DIO「あの時のゴンドラの時までもが……ッ!」


ガアン!!


カエル医者(……なるほど。これが佐天くんの言っていた“拳のような打撃音”か。病院ではお静かに、だけど)


DIO「ありえん。ありえん、ありえんありえんありえェーーーーーーンッ!!」


ガアン!


DIO「…………、」ハァ ハァ

当麻「ん……んん……」

カエル医者「……少し、落ち着いたかい?」

DIO「…………、」チラッ


ドッチャリ


DIO「…………ッ」


『新月が近くなってきているため、こちら第七学区商店街では月をモチーフにしたグッズが並んでいるそうです。あ、見てください! あちらにムーンパラソルというものが――――』


DIO「……、」


ベッコオォ


DIO「……、」

DIO「私が、やったんだな」

カエル医者「……君かどうかは分からないけど、ぼくと上条くんは能力者じゃないよ」

DIO「……そうか」

カエル医者「少し、整理が必要みたいだね。ぼくは一度席を外そうかい?」ガタッ

DIO「…………ああ」

カエル医者「先に言っておくけど、一応君は患者だからね。ここを飛び出して佐天くんの病室に行くんじゃないよ? 君もそうだし、あの子も患者で、お互い整理が必要みたいだからね」

DIO「……ああ」

カエル医者「それじゃあ、ゆっくり休むんだよ?」


バタン


DIO「…………、」

当麻「ふあー……なんかすごい音がしたような……」

当麻「あっ! DIO、お前気が付いたのか!?」

DIO「……当麻か」

当麻「よかったー……。じゃなくてだな! DIO、お前には言いたいことがけっこうある!」

DIO「手身近に頼むよ」

当麻「お前な~……」

今回の更新はここまででございます。とあるっぽい名前を付けるのって本当に難しいですわ

~★『そして、時間は今に戻る!』★~

DIO「……、」

当麻「それにしてもさ。なんだかんだいって、DIOを見つけてからもう二週間以上も経ったんだな。今日で十五日か?」

DIO「それほど経つのか。時の流れというのは早いものだ」

DIO「……いや、実際意識を失っていた時間も長いから、早く感じて当たり前か」

当麻「俺も結構入退院を繰り返してるんだけどな、アハハ……。現在記録更新中だってさ」

DIO「私は一番が好きだ。が、何も全ての一番を取りたいとは思ってはいない。その記録一位はお前に譲ろう」

当麻「そりゃどうも。で、いつ頃退院できるって?」

DIO「明日には出れるだろう。既に歩けるほど回復しているし、リハビリも必要ない」

当麻「流石は第七学科一の総合病院だな。おかげでまた上条さんの財布が軽くなるが……トホホ」

DIO「…………、」


DIO「なあ、上条当麻」

当麻「んー?」

DIO「お前は、幻想殺しという能力をその右腕に抱えている。その力はとても強力なもので、誰もが恐れ羨むものだろう」

DIO「そんな力を、記憶をなくしたお前が初めて知った時はどう思った?」


DIO「喜びか? 恐怖か? 狂気か? 絶望か? あらゆる能力者の羨望と恐怖である“能力無効”という力は、全てを失ったお前に何を与えた?」

当麻「……また、ややこっちい質問だな、そりゃあ」

DIO「……、」

当麻「でも、答えは簡単さ」

DIO「何?」


当麻「この右腕が、俺に何かを与えたものなんてない」

当麻「例えこの右腕があらゆる奇跡を無効化する能力でも、もしくは発火能力や風力能力だったとしても、それで俺自身が何か変わるわけじゃないんだ」

当麻「能力なんて、何がどうだかなんて関係ない。どんな能力だろうと、それはもう全部ひっくるめて『自分』なんだからよ」

当麻「『幻想殺し』は俺とは別の『何か』ってわけじゃない。『幻想殺し』もまた『上条当麻』であって、『上条当麻』もまた『幻想殺し』なんだ」

当麻「自分の目玉や耳を切り取って、これは俺ではなく別の何かなんだ、って言ってるようなもんさ。気づいた時からそこにあって、気づいた時には使ってる」

当麻「そんなもんだよ、能力なんて。自分の魂みたいなもの、とかが一番分かりやすいのかね」

DIO「フン。魂、か」

~★PM17:30★~

DIO「……、」ピラッ

DIO「当麻が完全下校時刻前のバスに乗るために出て行ってから、こうも静かになるものか」

DIO「つまり、それほどあいつ一人がうるさかったというわけだが」ピラッ

DIO「…………魂。オレが操っていると思われる幽念動も、オレ自身……」

DIO「くだらん。第一、私はまだ完全に幽念動を使っていると認めたわけではない……。動揺していたからとはいえ、上条当麻に質問などするものではないな」


――――ザザザ―――――ザザ――――raSeんカいだn―――――――ザザ―ザ――――――カbうmuし――ザザ―――――ザ―――ザ――


DIO「……グッ」ビキィ

DIO「まただ。またこの雑音が、頭の中に響く……ッ!」

DIO「今日、起きてからずっとだ。最初に流れたのは、奇妙な夢から覚めた直後のこと」

DIO「それから不定期に、何度もこのノイズが頭を叩く。あまりにもノイズがひどすぎて、いったい何の言葉かすら判別もできんが……」


DIO「……まさか、失われた記憶と何か関係があるわけではあるまいなッ」


―――――――はィKYo――――thi――――――ザザ―――――――いちziK――Aルト ――――ザ―――――――――――


DIO「グヌゥ、グウッ。とにかく、これを聞いていると気分が悪くなる……」

DIO「だが、もしこれが私の記憶に繋がる何かのキーワードだったとしたら……やすやすと聞き逃していていいものではない。決してッ」

DIO「ノイズが完全に消えてしまう前に、何か残しておかなくては……。何かないか」キョロキョロ

DIO「……! あそこにペンと本のようなものがあるぞ」ガタッ

DIO「……、」

DIO(待てよ、どうせならば……)


DIO「――――フン!」ズキュン!


シィィーーーーーン


DIO「…………我ながら、何ともバカなことをしたものだ」ガタタッ


サラサラサラ サラサラサラ サラララ

『raSeんカいだn カbうmuし はィKYoノまthi いちziKのTAルト』 ドォーーン


DIO「……ひとまず、聞き取れたものはこんなところか。あまりにもノイズがひどかったので、そこは少しごまかしているが」

DIO「もしも、これらがオレの記憶と何か関連している言葉だとしたならばッ。これらの単語は覚えておいて損はないハズだ」

DIO「これからは、奇妙な夢や現象が頭に起こったときは、その時の様子をなるべくこれに記しておくようにしよう。私自身を思い出すための、貴重な記憶への手がかりへとなるかもしれない」

DIO「日記、とでも思ってつけていくか。かなり不定期になりそうだが」

DIO「しかしこのペンと本……いや、これはノートか。いったい、なぜこんなところに?」クルリ


『一年七組 上条当麻』


DIO「…………忘れ物か」ハァ

DIO「さて、改めてこの四つの言葉を見てみるが……何も引っかからないな。ノイズが強すぎたため、聞き取れたフレーズが少なかったというのもある」

DIO「もしかしたら、いつか再びあの言葉を聞ける夢を見れるかもしれない。当麻には黙って借りるが、しばらくこのノートは私の日記帳として使わせてもらおう。少々大きいが」

DIO「見たところ、勉強に使っていたというわけではなさそうだしな。複数買ったはいいが、余ってしまって使いどころに困っていたノートの一冊、といったところだろう」パラパラパラ


DIO「……どうせなら、これまで起こったこともまとめておくのも良いか。覚えているかぎりのことだが、今までの私をまとめるというのも悪くない」パラララ



10032号「……、」ジイッ


10032号「……、」ジローッ


14024号「あれが例の男ですか、とミサカは扉の隙間から覗く10032号の肩から顔を覗かせます」ヒョコ

10032号「突然出てきてびっくりさせるんじゃありません、とミサカは14024号に叱責します」

19028号「しかし、こんなところをお姉様にや友人の方々に見つかっては何か勘違いされるのでは? とミサカは近くの友人の部屋にいるお姉様に恐怖を覚えます」ヒョコ

10033号「恐怖の感情シグナルはまだ私たちには正しく入力されていませんよ、とミサカは付け加えておきます」ヒョコ

10548号「そんなことより、あの男は今何をやっているのですか、とミサカは初めから覗き見していた変態10032号に問いかけます」ヒョコ

10032号「少しだけ聞こえた独り言によると、どうやら日記をつけ始めるようですね、とミサカは三日坊主になりそうだと思いながら答えます。あと10548号あとで屋上来い」

10548号「キレられちまったぜ……久々にな」

19028号「喧嘩するときはネットワーク遮断してからにしてください、じゃないと醜い罵り合いがダダ漏れして喧しい、とミサカは醜悪な女関係に呆れた溜息を吐きます」

14024号「質問しなくてもそのネットワーク介せば互いの考えとか分かるでしょう、とミサカは10548号の無駄な言葉に呆れて溜息を吐きます」

10032号「……しかし、とミサカは思います」


「「「「「怪しい……」」」」」


10033号「大の男がベッドでノートに日記つけているというだけで既になんだか怪しい匂いがしますが」

10548号「その大男が『上半身裸』のままいそいそとノートにペンを走らせている姿は何というか……」


「「「「「怪しい……」」」」」


19028号「……、」

10548号「お、まさかあの肉体美に惚れたか? とミサカは19028号の視線の食い気味っぷりに疑惑をなげかけます」

19028号「流石にねーよ」

10032号「何というか、色々ずれていることがあるというか……」

14024号「檻越しで木の棒を使って餌をとるゴリラを見ている気分です、とミサカは珍妙な光景を言い例えます」


「「「「ブフッ」」」」


アーダコーダソーダノミタイカッテニイケ


DIO「……騒がしいな」

~★翌日 AM10:00★~

カエル医者「それじゃ、気を付けてね。帰り際に車に轢かれてここに逆戻り、なんてオチはやめてほしいよ?」

DIO「フン。そんなヘマなどするものか。ではな」カツ カツ


カエル医者「あ、そうだ。DIOくんちょっと待ってくれるかい?」

DIO「……何だ」

カエル医者「いやいや、君に届け物があるのを忘れていたよ」ガサゴソ

DIO「届け物だと?」

カエル医者「えーと、あったこれだよ? ほら」スッ

DIO「……これは、カードか。どこかで見たような気がするが……」


カエル医者「君のIDカードだね?」


DIO「IDカードだと! これが、私のッ」

カエル医者「そう言われて、ぼくによこされたんだよ? ぼくのはこの胸についているし」メメチャァ

DIO「これが……しかし、これを渡した者は何者だ?」

カエル医者「匿名希望、と言われてね? 『人生と書いて妹と読む』さんだそうだ。その人からこれを預かったよ」

DIO「……ふざけているのか?」

カエル医者「ぼくに凄まれても困るんだが? あ、それともう一つ伝言も預かっているよ?」


カエル医者「『もっと広く、動き回れ』だってさ」

DIO「……、」

DIO「……もし、次にそいつに会う時があれば伝えておけ」


DIO「『いずれ後悔するがいい』とな」

カエル医者「……ぼくを伝言版代わりに扱うのはどうかと思うよ?」

DIO「知らんな。それでは、今度こそ本当にさらばだ」クルリ

カエル医者「病院が《ふりだし》にならないようにするんだよー?」



DIO「…………ニヤリ」コツ コツ


DIO「フフフフフ」


DIO「フフフフフフフフフ」クツクツ


DIO「フハーッハッハッハッハッハッ!!」


DIO「ついにッ! ついに手に入れることができた! この『IDカード』をッ!」

DIO「これで、もう何もこのDIOを縛るものはなくなった! 図書館に入れる、電車にも乗れるぞッ!」

DIO「どこの誰とも知らぬ輩だが、よくぞこのDIOのために動いた! フフフ」


DIO「おっと、あまり大声を出さない方がいいな。変に目立つことは避けたい」

DIO「しかし、ククク。思わぬところからの拾い物だった。まずは、このIDカードが本物かどうか確かめなければならんな」

DIO「どれ……あの店で確かめてみよう」


“困ったときはネットカフェへどうぞ! 30分250円から! *IDカードをご提示してください*”


DIO「ネットカ……よく分からないが、カフェとついているのだから喫茶店のようなものだろう」

『イラッシャイマセ。IDカードヲカザシテクダサイ』ウィーン

DIO「かざす? ……こうか」スッ

『反対デス。IDカードヲカザシテクダサイ』

DIO「……チッ。トランプのように向きがあるのか。こっちの、黒い線がいくつか並んでいる方か」スッ

『照合中……照合中……』

DIO「……、」


『認証完了シマシタ! コースヲオ選ビクダサイ!』

DIO「……フフフフフ」

DIO「学園都市製のマシーンにこのカードは通った。つまり、これはこのDIOのIDカードとして通用することがたった今証明されたッ!」

『コースヲオ選ビクダサイ!』

DIO「あとは金銭的な問題だな。上条当麻はあまりアテにはできん。御坂や白井はお嬢様学校と言われるところの学生らしいが、奴らにヘーコラした態度などとりたくもない」

DIO「さて、どうするか……」

『コースヲオ選ビ……』

DIO「やかましいッ」ガンッ

DIO「まずは動こう。謎の人物が残した伝言通り、もっとここを動き回って知識を得る必要がある。私の記憶に存在しない知識を」

今回の更新はここまでです。実際ネットカフェは行ったことないんで結構想像で書いてますが、まあ時間制料金だよね。たぶん


DIO「…………、」コツ コツ

DIO「ああ。御坂たちに何も言わずに退院してしまったな。佐天はまだ入院しているので、他の三人もしばらくは病院に足を運ぶだろうな」

DIO「もっとも、あいつらにわざわざそんなこというほど、甘ちゃんな性格ではないがね」


コツ コツ コツ


DIO(そういえば、ゴンドラをバラバラに砕いたの人の拳のようなものがついた凹み、と佐天が言っていたそうだな)

DIO(人の拳……当麻がオレを発見した時も、そのような痣が全身に残っていたらしいが。まさか、何か関係があるのか?)

DIO(いや待て。だとすると、オレは“無意識に発動するであろう謎の能力に自らぶん殴られている”ということになる。どういうことだ? 能力を扱いきれていないのか?)

DIO(……いいや違うッ! そもそもオレが能力者だという証拠はどこにもないのだッ。まだ仮説を立てるのも早いのだ)

DIO「チィ。IDカードが手に入ったというのに、不愉快な気分しか湧き起こらない……」カツカツカツ


ド ン


金髪ガール「きゃん」

DIO「ヌッ」

金髪ガール「あいたたた……何なのぉ?」

DIO「すまない、少々考え事をしながら歩いていた。思いのほか歩くスピードが上がっていたようだ」

金髪ガール「もぉ、注意力が散漫よぉ? 次は気をつけなさいよねぇ」コツ コツ


DIO「……フン。謝りもせんとはな。高飛車気取りが」


キラリッ


DIO「……何だ? あの女、何か落としていったぞ」スロォ

DIO「……銀色の安っぽい笛だ。何だこれは」



コツ コツ コツ


DIO「……、」ジィー

DIO「さっぱり分からん。ただの笛だとは思うが、さっきの奴にわざわざ届けに行く理由もない。あとでゴミ箱にでも捨てておくか」カサッ


DIO「さて、どこへ行こうか。IDカードを手に入れたので、行動範囲がグッと広がった。今まで以上に、この学園都市を見て回ることができるわけだ」

DIO「ふむ、そうだな。やはり、まずはこの都市の基本知識をより深めておきたい。日常生活で使われているものを知るために、商売業が発展しているところへと向かおう」

DIO「そうなると、どこが適任か……。当麻から押し付けられたこのパンフレットが役に立つか?」シパッ


DIO「……ここか、第十五学区」 バシィーン


DIO「他にも足を運んでみるべき学区は山ほどあるが、時間は既に昼近く。太陽も高い。まずは近場から埋めていくのがいいだろう」

DIO「持ち合わせは……無駄遣いはできないな。タクシーの運転手をビビらせて運転させるというのもアリだが、それで警備員の世話になっては恥辱もの」

DIO「そこまでたいした距離じゃあない。歩いていくか」


~★第十五学区 AM11:47★~


『商売! それは人々が生み出す熱狂的な流れ!』

『魅力的な商品が人々の心を動かし、そこに人の流れができる! 人の流れから生まれるお金は、そのまま経済的な成長をうながす大きなうねりへと変化していく!』

『物を売り、物を買う! それは人間が編み出した、史上もっとも優れた技術なのである!!』

『そして、学園都市の中でもっとも商売が賑わい、人々が絶えず流れを生み出す学区こそ、ここ第十五学区なのだ!』


ヨッテラッシャーイ!! コッチミテイカンカネ!!

オクサンコレイカガ? ソコノステキナオニイサーン!


DIO「……なるほど。流石は最大の繁華街があると記された学区、興奮と熱気で溢れかえっているな。あまりの賑やかさに、思わず踵を返したくなる」

DIO「しかし、同時にこれは期待以上の知識を得ることができそうだ。この学園都市では何が当たり前で、何が常識なのか。何が流行りで、何を多めに売っているのか」

DIO「商店街とは、まさにその街のステータスそのもの。売っている品物を眺めるだけで、その街がどのような発展を遂げ、人民は何を好んでいるのかを手に取るように理解できるものだ」

DIO「この前見かけた傘屋の販売対象を見る限り、やはり商業の流れの中心にあるのはここの学生共」

DIO「情報の入れ替わりに敏感な若い年頃だ。より早く、より正確に、様々な情報を収集することもできるかもしれないぞ?」


キャッキャ ギャハハハハハ イェーイ!


DIO「見ろ。早速、石の裏をひっくり返した時の虫のようにうじゃうじゃと湧いている。全員そろいもそろって品のない顔だがな」


DIO「それにしても、ここは随分と目と耳に悪い。ギラギラとした光があちこちでカラフルに点滅して、大音量の音楽や宣伝文句がところかまわず反響してくる」

DIO「普通の人間なら何という事もないのだろうが、私の場合は視力や聴力も並はずれて高い。正直、あまり長居をしたいところではないな……」

DIO「上ばかり見上げていても仕方がない。並んでいる商品を見て回るとしよう」


マッシブな旦那「へいらっしゃい!! 授業で使うメモリ不足に悩んでいるのなら、迷わずこの“思い出田代”にどうぞ!」

DIO「……、」ジィー


七三メガネ「今流行りの最新CDから、昔懐かしのなつメロミュージックまで。当店は圧倒的とも言える品揃えでご提供します」

DIO「……フム」


ホスト風味「イカした靴を履かなきゃ男じゃない! 人気メーカー“アディオス”、“ピーマン”、“アリキ”、その他多数のナイスなシューズはどうだい!」

DIO「……ほほう」


ゆるふわカール「可愛さポイントアップの秘訣! 貴女の可愛さをより引き立てる、小物入れや簪はいかがー?」

DIO「……うーむ」


「最新のゲーム機器がズラリとあるネ! 新作ソフトもここでゲットヨ!」

「電化製品ならこちらへどうぞー! お安く、高品質がうちの店の売りですわ!」

「ただいまセール中! 好みの服をお選びくださァーい!」

「憧れのヒーローベルトや変身端末は当玩具店へ! 君もかっこいいヒーローになりたくないか!」

『疲レタ身体ヲ癒シマス! 電磁波エステ、イカガデスカー』

DIO「…………、」



DIO「いやに多いな」ゲンナリ

DIO「てっきり食品や生活用品が並んでいると思ったのだが……どうにも少し違うらしい。嗜好品や、いわゆるブランド物といったファッションが目立つ」

DIO「それどころか、さっぱり理解できない品も多くあった。3Dグラフィックを利用したテレビだとか、パソコンなる物に使用するメモリ? だとか。英語を使っているが、意味もぐちゃぐちゃだ」

DIO「残された記憶にも存在しない『常識』。思いのほか。それを埋めるのには苦労しそうだ。科学技術というのも、ここまで進化するとまるでファンタジーの中の魔法だ。能力開発が最もたる例と言える」

DIO「……いかん、分からんことが多すぎて頭が痛くなってくる。どこか休める場所を探そう」

~★~


DIO「……、」ドカッ

店員「いらっしゃいませ。ご注文は?」

DIO「あー……紅茶を一つ頼む。シュガースティックは不要だ」

店員「かしこまりました。少々お待ちください」クイッ

DIO「……」フィー


DIO「繁華街から少し離れたところに、丁度良く喫茶店があってよかった。客も少なく寂れてはいるが、それが今は心地よい」

DIO「向こうから絢爛とした盛況ぶりが届くが、これほど離れていれば気にするほどでもない。脳を休めるにはうってつけの場所だ、あそこは与える情報量が私には多すぎる」

DIO「……、」


DIO「結局、知らないことがあまりにも多すぎた」

DIO「オレが日本の知識に乏しい、というのも理由の一つにはあるかもしれない。しかし、それにしてはオレの知る科学とは『あまりにかけ離れすぎている』」

DIO「車や電車、飛行機の存在自体は知っていた。実際にそういうものに乗った記憶はほとんどないだろうが、知識としてだけなら知っている。テレビやディスクなんかもそうだ」

DIO「だが、なんだここは。公衆電話はほとんどなく、代わりに売られているおおよそ受話器の形をしていないケータイ(佐天も持ってた)。小型の四角い箱からは、その場で蓄音機にでも直接繋げたかのように音が鳴る」

DIO「上を見上げれば、テレビというにはあまりに大きい液晶画面に映る様々な情景。どこからともなく耳を刺す広告、科学技術を用いて織られた衣服やシューズ。空中に浮かびあがるモジュール……etc」

DIO「挙げればきりがない。まさにここは異世界だ。例えるなら、剣と魔法で戦ってきたファンタジーの勇者が、突然生身と銃、グレネードや戦闘機で戦い合う油臭い戦場に駆り出されたといったところか」


DIO「本当に、知らないだけなのか? オレの知識が足りないだけ、で済んでしまうようなことなのか? 不自然すぎる。オレの知っている常識=世界とは、何もかもがアンバランスだ」


チンピラホスト「前、いいか」ガララ

DIO「ン? ああ、構わんが」

チンピラホスト「そうか。ここは俺のお気に入りの席だからよ。ムカついてどうしよもねーッてときは、ここで一杯ひっかけて落ち着くのが日課なんだ。邪魔はしねーさ」

DIO「……そうか」

今回の更新はここまでです。それと感想などありがとうございます
ネットカフェというよりは娯楽の多いカプセルホテルと解釈した方がよかったのかな。今度試しに訪ねてみます。
SSを欠きたいと思った時には既に行動は終わっているものですよッ!ただ、見切り発車ではなくある程度構想を固めてからの方が目標を見失わずに済むと思います

店員「お待たせいたしました。紅茶でございます」

DIO「ありがとう」

チンピラホスト「店員さんよ、いつもの頼む」

店員「はい、かしこまりました」

DIO「……、」


DIO(これからどうするか。もう一度繁華街を見て回ることに変わりはないが、次はきちんとルールを決めておかなくてはならない)

DIO(知らないことが多すぎるから、今日中に全てを回ることは不可能だ。時間的にも気分的にもな。そうなると、あらかじめ知るべきことだけを理解するため、行動ルートを決めておかなくてはならない)

DIO(そうなると、何を知るのかを決める必要がある。それをどうするべきか)


DIO「……一つ、尋ねていいか」

チンピラホスト「あぁ?」

DIO「向こうに繁華街があるだろう。その繁華街の中で、『学園都市を知るならここだ』という店を君は知っているか? 店の商品や種類は何でもいい」

チンピラホスト「意味分かんねーな。第一、なんでそれを俺に聞くんだ?」

DIO「君はここの学生なのだろう? 見たところ年も若い。君頃の年齢なら、ここの最新情報くらいは常にチェックしていそうだと思っただけだ。質問に深い意味はない。知っていたら教えてくれるだけでいい」

チンピラホスト「ふーん。あんた、もしかしてここの外から来た人間か?」

DIO「まあ、そうなるな」

チンピラホスト「そうかい。自分で言うのもなんだが、俺って結構チンピラっぽい見た目だから、あんまり話しかけてくる奴はいねーんだよな。頭がアレな奴以外」

DIO「ただのチンピラごとき、いちいち臆していては埒があかん」

チンピラホスト「ただのチンピラごとき、ねぇ……」


チンピラホスト「クックク……ただのチンピラかぁ。そりゃ俺も、余所から見たらそんなもんだよなぁ。ククククク」

DIO「……何がおかしい」

チンピラホスト「いや、気にしないでくれよ。個人的にツボっただけだ」

DIO「……、」

チンピラホスト「で、何だっけ? 『学園都市を知るならここだ』っつう店の場所だっけか」

DIO「そうだ。知っているのか」


チンピラホスト「知ってるもなにも、んなもんあるわけねーだろうが」

DIO「……どういう意味だ?」

チンピラホスト「言葉通りの意味だ。無理にここを理解する必要なんざねーってことだ。学園都市に対するイメージは、今のお前さんの理想像のままの学園都市にしておけってことだよ」

チンピラホスト「そうした方がいいんだよ。色々とな」

DIO「……そうか」

チンピラホスト「納得いきません、て顔してるな」

DIO「根拠もなしにそんなことを言われたのだからな、当たり前だ」


DIO「――ただ、君が言いたいことはなんとなく理解はできる」

チンピラホスト「お?」

DIO「このコイン……ヒャクエンダマと言ったかな。このヒャクエンダマには表と裏がある。どちらにひっくり返してもヒャクエンダマにはかわりはないし、この表と裏を切り離すことはできない」

DIO「つまりは、そういうことなのだろう。学園都市というものは」

チンピラホスト「ヒュー。ただのパンピーかと思ってたけど、それなりの頭してるじゃねえか。ご褒美にガムやるよ。さっき道端で綺麗な姉ちゃんからもらった奴だけど」ヒョイ

DIO「……、」パシッ

チンピラホスト「わーったよそんな睨むなっつうの。とにかく、お前みてーな何も知らねード素人野郎が、興味本位で学園都市を理解しようとするんじゃねえってことだ」


チンピラホスト「関わると、ろくな事じゃ済まねー目に合うからな。ここはそういうところなんだよ」



DIO「……君も、それにあってしまった口か?」

チンピラホスト「お前に話す必要はねーな」

DIO「それもそうだ。失礼な詮索であった、許してくれ」

チンピラホスト「分かったら、とっととここから出ていくんだな。これ以上ムカつくような質問なんかされたくもねー」

DIO「そうだな。なるべく早くそうしたいものだ。店員、会計を頼む」

店員B「かしこまりました。あちらへどうぞ」

DIO「そういえば、君はいったい……」

チンピラホスト「……、」フゥー

DIO「……いや、何でもない。もう会うこともないだろう。さらばだ」コツコツ

チンピラホスト「……、」



「やっぱり、ここにいたのね」

チンピラホスト「あぁ? ……なんだお前か」

「彼がアイテムにやられたって話は聞いた?」

チンピラホスト「聞いたからここに来てんだよ。あのくそアバズレ共にやられるなんてマヌケもいいところだ。ええと、なんて名前だったか……」

チンピラホスト「……馬鹿馬鹿しい。慣れ合う仲でもねえのに、いちいち名前なんざ覚える必要もねえか」

「さっきの彼、知り合い?」

チンピラホスト「ほざけよ。あんなムキムキ無知野郎、俺の知り合いリストに存在してたまるか。くっせえリストの方にもな」

「お優しいことね」

チンピラホスト「巻き込む意味がねえんだよ。邪魔さえしなけりゃ、別にああいう手合いを闇に引きずり込む必要もねえ」


チンピラホスト「それより、まさか手土産なしに面見せにきたわけじゃねえよな?」


「……はいはい。せっかちね、あなたも」

「目的の物がある場所は、いくつかに絞り込むことはできたわ。ここと、ここ。それとここ」ピラッ

「中でも一番有力だと思うのが、ここ。素粒子工学研究所よ」

チンピラホスト「ハハ、ようやく愉快になってきやがった」

店員「お待たせいたしましたお客様」

チンピラホスト「ああ、悪いな。急用ができた、そいつはもういらねえ。代金はここに置いとくから、勝手に処理しといてくれ」

店員「は、はぁ」


チンピラホスト「心理定規、あのゴーグル頭を呼べ。それと人材派遣から使えそうな奴を一人引っ張ってこい。準備にとりかかるぞ」ガタッ

心理定規「分かりましたわ、『スクール』のリーダー様」

チンピラホスト「……なめてんのか?」

心理定規「あら失礼。じゃあこう言い換えましょうか」


心理定規「学園都市のレベル5『第二位』、垣根帝督さん?」


垣根「……相変わらずムカつく女だな」

~★~

DIO「……、」コツコツ

DIO「さっきの男……まあいい。どの道再会することはないだろう。この広い都市中でたまたま出会った、ただのチンピラにすぎない」

DIO「だが、どうしたものか。結局回るルートをろくに決めていないまま出てきてしまった。もう一度あの喫茶店に戻るのも面倒だし、歩きながら決めるとしよう」

DIO「そうだな……まずは、最新の電気化学製品とやらを見物してみようか」



~★第十五学区 家電量販店★~

“いや、ぼくは子供だから入場料無料ですよねー? 係員さーん”

“お前みたいな青ちょびたヒゲ面の子供がおるか! もうええわ、ありがとうございましたー!”


DIO「……大きいなテレビだ。犬小屋以上の大きさか。それに薄い。まるでベニヤ板のような平ら具合だな」

DIO「それがこうも壁のように並んで売られているのは、何だか気味が悪いものだ。しかし、まるで本当にこの中に人が入っているかのような解像度だ。本当に入っているわけじゃああるまいな?」


DIO「……掃除機? 機械が床を磨くというのか? 水で床を濡らしてふき取るというわけではなさそうだが」カチッ


ブウオーーーー~~~~~~!


DIO「何ッ!? 何だこの強烈な吸引力は!?」

“吸引力がまるで衰えないただ一つの掃除機。タイゾン”


DIO「さっきは驚かされた……掃除機、侮れぬ」

DIO「これは何だ、パソコン? そういえばいたるところでその名を耳にするが……どう使うのだ、これは」

DIO「テレビのような画面がついていて、その下には同じ大きさの盤がくっついており、そこには奇妙な文字が不規則に配置されている……。まるでさっぱり分からない、そもそも用途が思いつかん」

DIO「テレビのようにチャンネルを切り替えるのか?」バンバンバン

店員「お、お客様! キーボードをそんなに強く叩かないでください! それはリモコンではありません!!」


DIO「使い方が違ったようだ。どうもあの盤の文字を使って、画面内に文字を打ち込んで使用するらしい。タイプライターのようなものらしいが……どうも本質は別にあるようだ」

DIO「……何だこのコードは。イヤホン? これは聞いたことはある」

DIO「耳に着けて使うものだったな。どれどれ……」


『募る想いこの空高く積み上げたなら~♪ 届くかな~きっと届く! To wish your happiness~♪』


DIO「ッ! うっぐおあァーーーッ!」ガッシャアアン

DIO「ぐあ! な、なんてボリュームだ……鼓膜がイカレそうだッ! 普通の人間ならさして異常はないのかもしれないが、聴力が異常に高いオレの耳ではまるでマンドラゴラの悲鳴……!」

DIO「き、気を付けなければ……なんと恐ろしいものよ」フラ フラ

~★~

DIO「……ふむ」コツコツ

DIO「何件か、見たことのない商品を扱っている店を回ってみたが……どれもこれも機械臭いものばかりだ。科学の都市なのだから当たり前とはいえ、どうも“効率化”を趣に置いているようではある」

DIO「サイズを“効率”のよい大きさまで抑え、使い心地を“効率”のよい幅まで拡張し、利便性を“効率”の良い範囲までカバーする。確かにとても便利だが、あまり好きにはなれん」

DIO「私個人の感想だがね。まさにぬるま湯のもと、といったところだ」


はっぴオヤジ「ヨッ! そこのイカした服のニーちゃん!」

DIO「……、」コツコツ

はっぴオヤジ「ちょ、ちょっとニーちゃん!? いくらなんでも無視はよくないぜ! おじさんのガラスのハートが傷ついちまうよ」

DIO「……私に言っていたのか?」

はっぴオヤジ「そうだよ、ニーちゃん! あんた、そのポケットからはみ出てるガム、あるだろ?」

DIO「これか。これがどうした」スッ

はっぴオヤジ「それ持ってるってことは、ニーちゃん。見つけたんだな! ニーちゃん、『第十五学区限定キャンペーン! 探せ! 美貌のガム』の参加者だろ!」

DIO「何? なんだって?」

はっぴオヤジ「だーかーら、ニーちゃん見つけたんだろ~? それぞまさしく美貌のガムだ!」

DIO「いや、これは……」

はっぴオヤジ「いや~、普段人通りの少ない所に綺麗な姉ちゃんスタンバイさせてたのに、よく見つけられたな~。おじさん感心しちゃうよ」

DIO「だからこれはだな……」

はっぴオヤジ「おめでとッ! ニーちゃんが一番乗りだ! さあ、このルーレットを回すんだ! あっ、IDカードはあるかい?」

DIO「……、」

はっぴオヤジ「さあ~さあ~、早く回した回した。ニーちゃんも一位の豪華ケーヒンが欲しくて参加したんだろう? 一番乗りなんだから、早めにやっておかないと! IDカードあったね、OK!」

DIO「それを回せば、もう私に絡まないな?」

はっぴオヤジ「当たり前だよ! ささ、LET CHALLENGE!」ズオッ


ルーレット『―――――――』ムオオオオオオオ


DIO「……ったく」ガシッ


グルルーー~~~~z___


カラリ~ン


~★第七学区 PM17:12★~

DIO「……、」コツコツ

DIO「これは、あとで当麻に押し付けておこう」ピラリ

DIO「……、」コツコツ


DIO(今日、あの繁華街を見回って、改めてはっきりとしたこと)

DIO(やはり、オレは単なる記憶喪失とは何かが違う。自分の素性や過去はともかくとして、その他知っていること、知らないことの差が大きすぎる)

DIO(テレビは知っていて、パソコンは知らなかった。電話は知ってるが、ケータイなんてものは初耳だ。ましてやインターネットとかいう電波の世界が存在するというではないか)

DIO(おかしい。何度も言うが不自然だ。前に当麻が話していた『意味記憶』にあたるものが、一部全く消滅している。もしくは本当に、はじめからそんなものを知らなかったのかもしれない)

DIO(しかし、それにしては知らなかったものが多すぎる。知っている物の方が少なかったが……)


DIO(――――だとすると、逆? 一部を知らないのではなく、オレは一部しか知らないのではないか?)

DIO(テレビ、電話、カメラ、飛行機、車、電車、道路、建物、電気。オレが理解できるこれらの共通点は何だ? オレの知らない物の共通点は何だ?)

DIO(何かがある。何か、とんでもないものを見逃している……)



「――――ようやく、見つけたわぁ」

DIO「……ム」



金髪ガール「さんざん、あちこち、歩き回って、あの時ぶつかった場所で待っていれば、必ずここを通ると途中で気が付いたから、ここで、待っていたのよぉ? ゼェ、ゼェ」ハァ ハァ ハァ

DIO「……、」

今回の更新はここまででございます。流石の特殊ED
チンピラホストだけで誰か分かられる辺り、やはり愛されてますね垣根。私もなんだかんだ好きです。でも帝凍庫AAは腹壊れるから勘弁な。
暗部の主務の対象のようなことをしてしまえば、おそらくDIOの情報なども暗部に知れ渡ることになるでしょう。


金髪ガール「ハァ、ハァ……。貴方は、私の顔を覚えてないかも、しれないけど……」

DIO「……、」

金髪ガール「私は、しっかり、記憶から引っ張り出したから、あなたの顔はバッチリ頭に残しておいたのよぉ? いつつ、あ、足が……」ピクピク

DIO「……、」

金髪ガール「だから、さっさとそれを……あーんもうダメ! これ以上立ってられないわぁ」ペタリン

DIO「……何だ、コイツ」


金髪ガール「貴方のせいよぉ! 半日も貴方を探し回ったせいで、筋肉力が限界になっちゃったわぁ! あー疲れた。どこに行ってたのよぉ全く」

DIO「……もう行ってもいいかな」

金髪ガール「これ以上、いたいけな私を歩かせるつもりぃ?」

DIO「知らん」ツカツカツカ

金髪ガール「待って待ってぇ! ちゃんと理由があって貴方を探してたのぉ!」

DIO「何なんだいったい。まず君は誰だ。私の知り合いには間違いなく加えたくないタイプなのは間違いないが」

金髪ガール「ここでぶつかったキュート力の高い女子中学生、覚えてる?」



金髪ガール『きゃん』

DIO『ヌッ』



DIO「……あぁ、あの時の高飛車気取りか」

金髪ガール「ひどくなぁいその覚え方!? やめてよそんな下品力たっぷりなあだ名。私には食蜂操祈っていう、素敵力満載な名前があるのよ」

DIO「しょくほう……日本人の名前は難しいな。まあ、覚えておく」


食蜂「あ、別に覚えておかなくてもいいわよぉ」ヒラヒラ

DIO「……?」


食蜂「それで、本題に入るけどぉ。ぶつかったその後、貴方何か拾わなかったかしらぁ? 銀色の小さな笛とか」

DIO「……拾ったな」

食蜂「見せてくれるかしら」

DIO「これかね」ガサゴソ

食蜂「そうそう、それよぉ。ま、ここまでくれば用件なんて言わずとも分かるわよねぇ?」

DIO「これを返してほしい、ということか」

食蜂「まあねぇ。別に貴方に必要力はないでしょぉ? だから、さっさと返してほしいの。門限も近いしぃ。あー、まだ足が痛いわぁ。寮に帰ったらシャワー浴びようかしら」

DIO「……、」


DIO(突然現れたと思えば、何だこの女は。癪に触る話し方に、こちらの意見もほとんど聞かない勝手ぶり。こんなガキになめられているのか? このオレが)

DIO(いや、この小娘は能力者なのだろう。だからこそ、こうやってオレの前でのんびり地べたに座り込んでいられる。オレが拒否したりした場合は、その能力を使うつもりだな)

DIO(気に食わん。黙ってこの笛を渡してやってもいいが、それではオレの気が済まない)

DIO(……そういやこいつの服装、どこかで見たことがあるな。はて、何だったか……)


DIO「……普通ならゴミ箱に投げておくようなものを、捨てずに大事に持っていたのだ。それなりの態度というのがあるんじゃあないかな?」

食蜂「普通力あるならゴミ箱に捨てないと思うけどねぇ。で、何がお望みなのかしらぁ?
   まさか、この私のセクシーダイナマイツなボディに見惚れちゃったのカナ☆」キュピーン☆

DIO「ガキに欲情するか」

食蜂「ガ…ッ!?」ゴーン

食蜂「……コホン。で、その態度っていうのは何? お礼の言葉でも述べればいいのかしらぁ? それとも謝礼金目当て?」

DIO「そうだな。確かにそれらも悪くはないが……もっとシンプルにいこう」


DIO「君の能力を見せてほしい」


食蜂「能力?」


DIO(さて、どう動く? 攻撃してくるのならば、このずば抜けた動体視力と運動性能をもってクロスカウンターでも決めてやるが)


DIO「ああ。見るからに巨漢な私の前でそこまで平然としていられるということは、君は何らかの能力者なのだろう?
   でなければ、君のような可憐な乙女がそうも余裕を保てるとは思えない」

食蜂「そりゃまあ、能力者だけど……というか貴方、この制服を見て気が付かなかったわけぇ?」

DIO「どこかで見覚えはあるのだが……それが何か」

食蜂「……何でもないわぁ」


食蜂「OK。お望み通り、見せてあげる。というか元々使うつもりだったしぃ」

DIO「何? 何か言ったか?」

食蜂「独り言よぉ」ガサガサガサ

DIO「……それは、確かリモコンといったか。何でそんなものを持ち歩いている」

食蜂「直に分かるわぁ。いや、分かったとしてもどうせ忘れちゃうけどねぇ」

DIO「そのリモコンをこちらに向けてどうするつもりだ? まさか、その先から火の玉でも発射されてこの私を焼こうというのかね?」

DIO「ならば、やめておいた方が良い。こう見えても私は動きが素早く、動体視力も高い。
   君がそんなものを撃ちだすより早く、私は君の華奢な腹に一撃入れることができるよ」

食蜂「そんな野蛮力の塊みたいなものじゃないわよぉ。それに、貴方がいくら素早くて、いくら力が強くても、そんなの私には関係ない」スッ

DIO「何……?」


食蜂「なんか相手するのも面倒になってきたしぃ。さっさと笛は返してもらうわ、お・バ・カ・さ・ん☆」

DIO「ッ!? 何かわからんがまずい! この小娘g――――」


Pi☆


DIO「…………、」ピタァー

食蜂「危ないわねぇ。本当に殴りかかってくるとは思わなかったわぁ。この私の麗しいボディを殴ろうだなんて、失礼しちゃう」

DIO「…………、」ピタァー

食蜂「でも、まあ、一応教えておいてあげるわぁ」

DIO「…………、」ピタァー


食蜂「これが『心理掌握』よ。もっとも、今の貴方には聞こえていないだろうし、聞こえていてもそれを認識することなんて不可能」

食蜂「なぜなら~……」Pi☆


DIO「―――こういうことだから、だゾ☆」キュピーン


食蜂「……うーん。流石にこの体格力でこれは無理あるわねぇ」

食蜂「けど、これで分かったでしょう? 体格差も、素早さも、怪力も、技術力も、それが人である限り私には等しく無意味」


DIO「この私、レベル5『第五位』、『心理掌握』の食蜂操祈サマにかかれば、どんな人間だろうと操れるってワケよぉ。
   はなから貴方のことは操るつもりだったし、約束も守ったから何の問題力もなしよねぇ」


DIO「……って、やっぱりこれはキモいわね。さっさと笛取り上げて、ついでに記憶もいじって帰りましょう」スッ

食蜂「……ふう、やっと戻ってきた。あの人との、大事な思い出の品」

食蜂「それを、こともあろうにこともあろうにゴミ箱に捨てようだなんて、冷静力で考えればコイツ許せないわねぇ。
   ムカつくから、このまま操ってコイツをゴミ置き場に突っ込んでやるわぁ」


ゾ ゾ ゾ ゾ ゾ


食蜂「……何かしら、今の。何だか一瞬変な感覚が……」


バヂヂヂヂ!!


食蜂「ッ! 何これ!? 私の『心理掌握』に、何かが割り込んでくる!?」



シュルルルルルルルルル バヂヂヂヂヂ!!!


食蜂「な、によこれ…! 割り込むどころか、こっちの精神に侵入してきやがったわ……! 『心理掌握』に割り込むどころか、この私の心にまで入り込むつもりぃ!?」

食蜂「こちとらレベル5よ……。精神操作という同じ土俵力で私に対抗できる奴なんて、いるはずがないわ! いったいどこから……」


DIO「――――ッ」シィーン

食蜂「――――まさか、この男!?」


シュオオオオオオオオオオ


食蜂「こ、これは!? こいつの精神世界に、茨のイメージヴィジョン……!?」


バ ッ ヂ ン !


食蜂「きゃッ!」

DIO「――ヌッ!?」ハッ


食蜂「はぁ、はぁ、はぁ……」

DIO「ヌ、ヌゥゥ……。何だ、頭がボーッとする」

食蜂「私の『心理掌握』を、強制解除した……?」

DIO「……ハッ。お前、いつの間にそんな遠くに移動した? いや、それよりも記憶がとても曖昧だ……どういうことだ?」


食蜂(あ、あの人と同じ能力者? いや、それとは根本的に違うわ。今のは、まるで精神世界に潜むプロテクターのようなもの。あの茨のようなヴィジョンがその役割を担っていた)

食蜂(その茨のヴィジョンが私の『心理掌握』に反応して、迎撃はおろかこっちの精神干渉を試みてきた。この、レベル5の『心理掌握』に、まともに対抗してきた……)


DIO(おかしい。オレはさっき、あの女が不敵な笑みを崩さないことに警戒し、かなりの速さで拳を振ったはずなのだが……気が付いたら、あの女がさらに遠のいてこちらを睨んでいた)

DIO(拳がかすってビビったか? いや、違う。だとしたらオレの意識が一瞬途切れたことの説明がつかない。この女は何だ? さっきのリモコンでいったいオレに何をしたのだ?)

ゴ    ゴ ゴ
  ゴ       ゴ  ゴ
DIO「貴様……」 ゴ

食蜂「貴方……」  ゴ

            ゴ
「「――――何者だ(かしら)」」ゴ 
           ゴ  ゴ
     ゴ

今回の更新はここまでです。そして感想ありがとうございます
垣根っちはチョイ役程度での出演の予定でしたが、ここまで反応されるとは思わなかったですわ。もしかしたら、再出演させるかも
可愛いってのはあるかもしれませんな。人間味のあるDIO、というのを今は描いているつもりですので

          ゴ
食蜂「……、」 ゴ
  ゴ    ゴ
ゴ    ゴ   ゴ
DIO「……、」 ゴ
 ゴ ゴ
  ゴ   ゴ



DIO「……ム! 銀色の笛がいつの間にかなくなっている……」

食蜂「それはとっくに返してもらったわぁ」

DIO「何だと? 貴様、いつ私からそれを……」


食蜂「……もういいわぁ」ハァー

DIO「何?」

食蜂「よーく考えれば、貴方の正体力なんて突き止める必要なんかないしぃ? こっちも目的のものは返してもらったから、貴方に対してはとっくに用済みなのよねぇ」

食蜂「その気になれば、貴方の事なんて私の収集力があればすぐに調べられるしねぇ」

DIO「何を言っているのかまるで分からないが……私はまだ君の能力を見せてもらっていないぞ」

食蜂「既に見せたわぁ。もう貴方に使いたいとはあまり思わないけどぉ」

DIO「既に見せただと? まさか、記憶が一時的に飛んでいるこの現象は貴様の……ッ」

食蜂「さーて、早く常盤台に帰りましょうっと。あの娘がまた心配になって騒がないうちにねぇ。タクシータクシーっと」

DIO「待て、おい。私はまだ何も……」


食蜂「もしそれがッ」クルリ

DIO「……、」ピタッ


食蜂「それが、無自覚で振るわれた力だとしたら……。心底腹が立つってもんじゃないわよねぇ」


DIO「……?」


食蜂「じゃあね、お兄さん。今度会う時は、もっと奥にそれ引っ込めておくんだゾ☆」トテテテ

DIO「待て貴様ッ!」


DIO「……今更追おうにも、機を逃したか」

DIO「無自覚……。まさか、また出たというのか?」

~~

DIO「……あの女」


食蜂『それが、無自覚で振るわれた力だとしたら……。心底腹が立つってもんじゃないわよねぇ』


DIO「おそらく、あの女は何か能力をオレにかけたのだ。そして、オレの中にある無自覚の力。それが、私の意識に関係なく奴の能力をキャンセルしたとみるのが妥当か」

DIO「……チィ。最早認めるしかないようだ」


DIO「私は、能力者だ」


DIO「その能力の詳細は未だ不明。分かっていることは、念動力に近い力だということ、拳の跡が残るということ。そして、何らかの能力に対し抵抗力を持っているということ」

DIO「その何らかの能力だが……。かけられた者の記憶が飛び、能力者本人はその場から移動もできる。おまけに私から笛を取るといった物理法則も働いたままだ」

DIO「時間を止める? まさかな。そんな能力など存在しないだろう。人の身に余る、神に近しい力になってしまう。だとしたら、いったい……」


DIO「――記憶欠如、本人は移動可能、傷はないためおそらく能力は物体を持たない何かしらの概念的なもの。ということは精神系? いや、だが記憶まで飛ぶのか? それにオレが拳を振りかぶったのを奴はどうかわした?」

DIO「……まさか、奴は人間そのものを操れる能力者なのか? リモコンを向けた人間の動きや精神、記憶までも自由に操れる能力者……?」


DIO「だとしたら、オレの記憶喪失にも奴が関わっている可能性があるッ!」

DIO「表面上は初対面を装っていたように見えるが、そんなものは演技でどうとでもなるぞ。もし、記憶も自由自在に操れるというのなら、オレの記憶を失わせることも、逆に引き出すこともできるはずッ!」

DIO「……いや、ダメだッ! もしそうだとしたら、オレの能力、幽念動が奴の能力をキャンセルしたことと矛盾が生じてしまう。オレは奴の能力に対抗できてしまう!」

DIO「すなわち、あの女は解決の糸口にはなり得ない、ということか。くそ、結局ふりだしに戻ってきただけではないか」


カァー カァー


DIO「……そうか、ようやく合点がいったよ」


DIO「あの女の服、御坂美琴や白井黒子と同じ服だったのだ。常盤台とかいう、お嬢様学校の生徒。だから気に食わなかったのだ」

DIO「……くそがッ」

~★第七学区 とある高校男子寮★~

DIO「……、」ガチャリ

当麻「おーう、おかえりDIO。退院に随分時間かかったな」

DIO「退院ついでに、色々と見て回ってきた。それで遅くなっただけだ」

当麻「なんだ、そういうことね。見て回るのもいいけど、気をつけろよ?
なんたってお前は、俺と同じ不幸の星のもとに生まれ落ちた不幸人間だからな!」

DIO「……不幸の星のもと、か」


DIO「当麻、質問がある」

当麻「はいはい、何かねDIOくん」

DIO「お前の『幻想殺し』、消せる能力は自分で選ぶことはできるのか?
意図せずして違う能力まで消してしまう、ということはあり得るのか?」

当麻「あー、それね。それで上条さんはどれだけ涙を流してきたか……いらぬ冤罪数知れず。
免罪符があるのならこの俺だけで半分以上は消えるぜ」ウルウル

DIO「……できてしまうのだな」

当麻「できてしまうんです。だから、回復系の魔……ウォッホン! 能力とかも俺には働かないらしいんだ。空間移動とか、そういうのもな」

DIO「己の意識は問わずに、ほぼ自動的にか」

当麻「そうなるねえ。なんでも、この右手が俺の周囲の幸運も消しちまうから、俺は不幸体質なんじゃねえかって説も出たくらいだし」

DIO「例え記憶を操作されたとしても、その右手が無意識に効果を打ち消してしまうということだな?」

当麻「あー、たぶんな。そういや、お前の記憶喪失って記憶操作の能力者にやられたのかもしれないな。
あのカエル顔の医者さんはそんなこと言ってなかったけど……試してみるか?」

DIO「いや、いい。それが無駄だということはもう理解した」

当麻「そ、そうか? 触るだけでいいんだけどなぁ」

DIO「二回も言わせるな。無駄なんだよ、当麻」

当麻「……分かったよ。そんな簡単な解決方法、DIOが試さないわけないもんな」


当麻「ごっつォうさまでしたー!」

DIO「……病院食よりは、もやし炒めの方が美味いな」

当麻「上条特製、スパイシーもやし炒めだ! 粗挽き胡椒をよーくきかせた刺激のある一品だぜ」

DIO「むしろ、それしか使っていない、ということを付け加えておこうか」

当麻「ギクゥ!」

DIO「……退院を祝う気持ちは十分伝わったよ。感謝する」

当麻「へ、へへへ~」ニヘラァ~

DIO「気味の悪い笑みを張りつけおって」

当麻「気味が悪いとは失礼な! これでも小萌先生から、『カマキリに好まれそうなスマイル』って好評だったんだぞ!」

DIO「……、」

当麻「……うん、言ってて恥ずかしい。だからそんな養豚場の豚を見るような目はやめて!
   これ以上憐みと無関心の視線を上条サンにぶつけないで!」

DIO「ああ、そういえば当麻」

当麻「本当に関心なかったんだな……」

DIO「これ、お前にくれてやる。私には必要のないものだからな」ピラッ

当麻「……何だこれ、チケット?」

DIO「帰り道に面倒なオヤジに無理やりやらされたルーレットの景品だ。お前にやるよ」

当麻「なんだそりゃ。どうせ変な化学反応を起こすポケットティッシュとか押し付けられてきたんじゃないのか? どれどれ……ん?」


当麻「……にゃ、にゃにィ~~~~~~ッ!? 『憧れのイギリス四泊六日の旅 ペアチケット』ォォーーーッ!?」


当麻「デ、デデデデデデデディオさん! なにこれいったいどうしたのよ! どこでこんなもん拾ってきたんですか!
   早く交番に届けてきなさい! メッ!」

DIO「だから、私が強引にやらせらたルーレットの景品だ。それは一等賞らしいぞ」

当麻「嘘だァーーーッ! 不幸の星出身の俺たちが、こんなスウィ~~~トフルなものに巡り合えるわけないんだぞ!?」

DIO「私の故郷を勝手にねつ造しないでもらいたい」

当麻「ハッ! そういえば、俺も一回だけイタリア五泊七日のチケットが当たったことが……。
   でも、あれだって結局旅先で不幸だーっていうオチだったじゃないか。いや、結果としてはよかったんだけど……」ブツブツ


DIO「どうする。いるのか、いらないのか? はっきり答えてほしいぞ当麻。いらんなら捨てる」パシッ

当麻「ダァーーーッ! ちょっと待てそれはちょっと待てDIO!!」バッシィ!

DIO「……早くしたまえ」

当麻「えーっと、えーっと……。これ、本当にDIOが当てたんだよな?」

DIO「そうだ」

当麻「それで、このイギリス旅行ペアチケットはいらないから俺にあげると」

DIO「そうだ」

当麻「つまり、俺はこのペアチケットであと一人誰かを誘わなくてはいけないということ?」

DIO「そうだ」

当麻「…………、」


当麻「ろくな知り合いがいねぇ…………」ズゥーン


DIO「なんだ、結局いらないのか」

当麻「いやそうとは言ってない! ただ、ペアチケットだろ?
   いつもはインデックスがいるから難なくクリアしてたし、外国だとしてもインデックスが翻訳してくれたりしたからよかったんだけど……」

DIO「私の前の居候だったな、そのインデックスという奴は。そいつは今どこにいる?」

当麻「確か……えーと……」


当麻「……い、イギリス」

DIO「……、」

今回の更新はここまでです。それと感想などありがとうございます。まず、レスをくださるというありがたい御人はメール欄には『sage』を入れていただけると助かるッ!
こちらとしても、見てくださっている方々がメンチビーム飛ばしかねない空気というのは悲しいものですので。何卒、ご協力を。
茨のスタンドは中々DIOのSSで見ないので、食蜂ファーストコンタクトに絡ませてみました。ハーミットじゃないよ、茨のスタンドだよ。
意外と驚かれる方が多いようですが、DIOの茨はポルナレフの怨敵を映し出すくらいには精神方面に長けていると思っています。まあかなりの独自解釈ですが
それと他にも色々と独自解釈とか含んでいますので、そこはご容赦をば。

注意してもらいたいのは、これはあくまで我がSS内での大胆な独自解釈であって、実際にDIOと食蜂が対峙したらどうなるのか、という仮説の結論ではないということです。そこだけを理解いただきたい。


DIO「当麻。お前、外国語は何カ国喋れる?」

当麻「……わたくし、純日本人なので」

DIO「……じゃあ、結局はいらない代物だったか」

当麻「タンマタンマ! でも解決策がないわけではない!」

DIO「ほう」


当麻「DIO! お前も――」

DIO「断る」

当麻「早~~いッ!!」ズデェエ~ン


当麻「――って、お前、明らかにあっち系の人種だろ!? もしかしたら向こうに手がかりがあるかもしれないんだぞ!?」ガバッ

DIO「見くびってもらっては困るな、当麻。その程度のこと、オレが気が付かないとでも思っているのか?」

当麻「じゃ、じゃあなおさら……」

DIO「このイギリス旅行というもの。飛行機を使うのだろう?」

当麻「そりゃあな、船で行くわけでもあるまいし。……ってまさかDIOさん」


DIO「……このDIOが、パスポートなぞ持っているとでも思ったのか?」

当麻「ですよね~~~ッ!」ガッグシ


当麻「今から発行してもDIOはここの学生じゃないから一か月はかかるし……。
というかそもそもお前身元不明じゃん。じゃあ作れないじゃんパスポート!」

DIO「そうだな。それに、私は太陽光が異常なほど危険だと直感している。
一応対抗策がないわけでもないが、この学園都市から出てしまったらどうなるのかは分からない」

当麻「マジかよお。どうすっかな~、ペアチケットだもんな~。これいつ出発だ? ……来週かぁ。
ビリビリはお嬢様学校だし外国語とか堪能そうだけど、六日間もあいつと二人っきりというのが恐ろしすぎる……」

DIO「その前に当麻。お前、学校はどうする」

当麻「それだァーッ! そうだよすっかり忘れてた、俺普通に学校だよ! あー結局そうなるのかー!
少しだけ外国という夢ちらつかせておいて、即座に現実に引き戻すお前が嫌い!」

DIO「……、」

当麻「いいさいいさ、こんな夢と希望しか詰まってないイギリス旅行券もダブル不幸人間の前では形無しだったのさ。捨ててしまおう、そうしよう」



「まだ諦める早いぜー、カミやん?」ガチャリ


当麻「! その声は……!」

DIO「き、貴様はッ!」


土御門「友のピンチにズバッと参上。何でもおまかせご覧あそばせ。人生とはズバリ妹!土御門元春、ここに見参!」カカーン!


当麻「――-って、どうやって扉開けたんだお前!?」

土御門「そんなのは、ここをこうやってちょちょいっとやって一思いにゴキーって」

当麻「待て待て待て待て今危ないオノマトペ入ったぞ。まさかゴキーってやってないだろうなァ!?」

DIO「引っ込んでろ当麻! 貴様ッ! 今のその言葉……!」

土御門「にゃ~にかっにゃ~? オイラ何も知らないぜ~?
    俺はただ、人生はまさに我が義妹にありっていう本質を語っただけだにゃ~」

DIO「まさか、貴様がこのIDカードを……ッ! 何が目的だ!」

土御門「おお~う? DIOちゃんもついにIDカードをもらえたのかにゃ。そいつはめでたいね~い。見せて見せて~」ヒョイ

DIO「こんのガキ……」ピクピク

当麻「待ってくれ色々混乱してきた! まず座れお前ら! 俺も座る!」



DIO「……、」ズオオオオオオ

土御門「~♪」

当麻「えー、つまり。土御門とDIOは前に会ったことがあって、DIOは土御門がただの学生で何者かということは知っていると。
   それで土御門もDIOの現状を知っている。そういうことでいいのか?」

DIO「……ああ」

土御門「そんな感じだにゃ~」


当麻(おい土御門。まさかDIOに魔術のことは……)

土御門(もちろん言ってませんぜ。記憶喪失前は魔術師って可能性も捨てきれないが、今のところそれは限りなく低い)

当麻(DIOが魔術師の可能性か……)


DIO「何を二人でコソコソと話し合っているのだね。よっぽど私に聞かれたくないのか?」

当麻「あー、いや、そのだな……」

土御門「まあまあ、DIOちゃんもそうカッカしなさんなって。カルシウムが足りてないぜよ?」

DIO「土御門。私は次に貴様に会った時、貴様の知っていること全てを洗いざらい吐いてもらおうと日々拳を磨いていたのだ。
   どうだ、味わっていかないか」ググウッ

土御門「俺っちが知ってる事なんてたかがしれてるにゃー」

DIO「シラを切るんじゃあないぞ、このクソ狐が! あの時の質問の意味、きっちり答えてもらおうじゃあないか。
   今のオレはすごぶるいいスナップのきいたパンチが打てるぞ?」

土御門「おー、おっかないねえい。答えてあげてもいいけど、今日ここに来たのはお宅らがめちゃくちゃ騒いでるのを聞いたからだぜ。
    もちろん内容も筒抜けだにゃ」

当麻「そんな大声で騒いでたのか俺たち……。でもよ、別にわざわざ来なくてもよかったんじゃないのか?
   それともまさかお前、行きたいの?」

土御門「ノンノンノン、俺がアプローチするのは別の方向からだぜい」


土御門「俺なら、DIOちゃんのパスポートぐらい五日で用意できるぜい?」


当麻「マジか土御門!? でもDIO、身元を証明するものが何も……」

土御門「いやいやカミやん、さっき聞きそびれてたかな? なんとDIOちゃん、この度晴れたIDカードを手に入れていたんだぜーい!
    いや~、ホントラッキーだなDIOちゃん!」

DIO「ふざけるんじゃあないッ! このIDカードも貴様が仕組んだものだろう! 言え、何を企んでいる!」


土御門「証拠はあるのかにゃ~?」


DIO「このぉ、ガキがァッ!!」プッツーン


当麻「落ち着け、落ち着くのだDIOOOOOOOO!! 頼むからそのガタイでこの狭い部屋の中で暴れないでくれぇ!
   俺じゃ抑えきれないんだよー!」ガバッ

DIO「死ねいッ! 目クソも残さずこの世から抹消させてやるッ!」バタバタ

土御門「鬼さんこちら~、手の鳴る方へ~」パンパンパパン HEY!HEY!

当麻「お前も煽るなアァーーーーッ!!」


当麻「はぁ、はぁ、はぁ……」グデェーン

DIO「――――ッ」イライライライライライライライラ

土御門「それで、話を戻そうぜカミやん」

当麻「お、おめェなー……」

土御門「まあ、DIOちゃんには都合よくIDカードっつう完璧な身分証明書があるわけだが」

DIO「貴様ッ!」ガタッ

当麻「座れ! 土下座するからもう座れお前!」

DIO「チッ」

土御門「俺のツテを当たれば、五日もあればDIOちゃんのパスポートぐらい余裕で発行できちゃうわけなんよ。
    その間、ちろっとIDカードを貸してくれるだけでいいぜい」

土御門「そうすれば、一週間後には二人で空港にたてるってわけだにゃー」

当麻「それはものすごくありがたいんだけどよ、土御門。なんでいきなりお前がここまでやってくれるんだ?
   別にイギリス清教が何かヤバいとかなんて聞いてないし」

DIO「イギリス、なんだって?」

土御門「こっちの話だぜい。困った友人を助けるのに、建前なんているのかい?」キラキラキラキラ

当麻「土御門、お前……」ウルル


土御門「っていうのはもちろん嘘で」

当麻「もちろん!?」


土御門「実は、イギリスの方に差し入れを出そうと思ったんだが、俺は別用でここを離れられないんだにゃ。
    どうしようか悩んでいる時に、丁度良く二人の話が壁越しに聞こえてきたってわけだぜい」

当麻「差し入れ? そんなの郵送でいいだろ」

土御門「大事な『差し入れ』だから、どうしても手で渡しておきたかったんだぜい。
    だからカミやんには、代わりにその『差し入れ』を渡してきてほしいんだにゃー」

当麻「ふーん、俺は別にいいけど。DIOはパスポート発行できたら、一緒にイギリスに来てくれるか?」

DIO「コイツの助けを借りて得たものというのが非常に気に食わないが……。
   だがしかし、行けるものなら訪れてみたいとは思っている。本当に、コイツの手を借りるという過程さえなければな」

土御門「決まりだにゃ! そんじゃ、よろしく頼むぜカミやん! 渡す相手とかの詳細は後日空港で差し入れと一緒に渡すぜい。
    DIOちゃん、カード貸してくれい」

DIO「フン」ズイッ


土御門「よし。じゃあ、俺はこの辺でお暇させてもらいますかな」

DIO「待てい! まだ貴様には吐いてもらうことが山ほどある!」

土御門「さっさとパスポート発行してくるからそれは次回までのお楽しみに! じゃあなカミやん、DIOちゃん!」シュバッ


DIO「このッ! チィ、逃げ足の速い奴だ……」

当麻「突然やってきては言いたいこと言ってさっさと帰っちまったな……。
   でも、おかげでこのイギリス行旅行券は無駄にならずにすんだじゃないか! DIOも行けるようになったしな!」

DIO「……とてつもなく癪だがな」

当麻「そうスネるなって。前に二人がどんな会話したのかは知らないけど、今日は土御門のおかげで丸く収まったんだしさ」

DIO「学校はどうするつもりだ」

当麻「あ、そうだった……。そこも土御門に頼み込むしかないか」


当麻「しかし一週間後かー。前の時は期限まで二日しかなかったからドタバタして準備したけど、今回はしっかりと準備していけるぞ。
   シャンプーとか持っていこっと」

当麻「また行く先々で不幸だー、にならないといいなー。いや違うか、どうせなるのは確定なんだ。軽めの不幸であることを願おう」

当麻「ハッ! そういえば向こうには今インデックスもいるじゃん……。
   まあイギリスはそこまで狭くないし、まさかばったり鉢合わせなんてことはないだろ。あれ、でも確かイギリス清教の本拠地って……」

DIO「イギリス……か」

当麻「ん? どうかしたかDIO」

DIO「いや、気にするな。どうにもざわつくだけだ。どうにも、な」

~★PM23:30★~

当麻「ぐがー……うへへ、イギリス土産何にしようかな~……」

DIO「……欲望剥き出しの台詞だな」パラララララ


DIO「イギリスか。まだ学園都市の中も十分に見回っていないというのに、果たして今この機で行ってもいいものなのだろうか」

DIO「オレが純粋な日本人ではないだろうということは察しがつく。
   日本語を読み書きできるのは、オレが国際的な交流を見越した多国籍の言語を学んでいたから、と考えるほかあるまい」

DIO「なので、ここ日本を立ってイギリスに赴くというのも決して悪い話ではないし、むしろそこに重大なヒントが残されている確率もゼロではない」

DIO「確かに、オレが目覚めたこの地には、まだオレが知らぬ何かが隠されているだろう。
   だが、同時にこの学園都市はオレの住処ではなかった。つまり、オレの痕跡はあまり多くはないと考えられる」

DIO「ならば、ここよりもわずかに痕跡が残っているかもしれない国へ立つというのも、やはり逃す手はない。
   今回はイギリスだが、そこになければアメリカ、カナダ、オーストラリア。どこにでも探しに行けばいい」


DIO「白人、金髪、母国語はおそらく英語。
   これらの条件を満たしている国を虱潰しに回っていくことができるのなら、私の正体へと近づくことができるはずだ」

DIO「そのためならば、オレは何でも利用してやろう。この男も、あのクソ狐も、この学園都市中にあるもの全ても!
   オレのために使ってやる。目立たない程度にだが」


DIO「そして――――無自覚に潜む、幽念動も、同じこと」パタム

DIO「この力を思いのまま扱えるようになったのならば!」バッ!!


シィーン


DIO「……そう、扱えるようになったなら。今はこのようにピクリともしなかったが、己の意志で行使できるようになれば!
   多少の強引さも押し通せるようになるというもの」

DIO「何より、能力者に対しての有効な撃退法としてこれ以上の手はあるまい。明日以降、とにかく訓練してみるとしよう」

DIO「さあ、行ってやろうではないか。運命はオレをどう運ばせたいのかは知らないが、それに従うというのも偶にはよい。
   気まぐれだが、貴様が示す道の通り今回は進ませてもらおう」


DIO「望みの地、イギリスへッ!」バァーーーン


DIO「ところで、太陽光を防ぐ手段だが……アレでしのげるだろうか。あと服も一着しかなかったな」

DIO「……明日にでも、当麻に服を買わせよう。それがいい」

今回の更新はここまででございます。そして感想の方ありがとうございます。
流れ的には、まさにその通りイギリスへッ!心配されている日光の方ですが、無論そこの方も少々力技ですが解消法はいくつか用意してあります。
私も馴染んで茨は使えなくなった説が一番自然と思ってますし、実際そうだと思ってます。
ただ、このSS内でのDIOは物語のピースとするためにアレンジを加える必要がありまして。それが俗にいう独自解釈となっております。ご理解のほどをば

~★一週間後 AM7:37 第二三学区ターミナル★~


ガララララララララ ガチャン


当麻「ふぅ~。出発は午前8時25分だし、この時間で大丈夫だよな」

当麻「えーと、改めて持ち物確認っと。一週間分の着替え、シャンプー、リンス、胃腸薬にケータイ、財布、電子辞書と目薬、あれ、それ、これ」

当麻「パスポートもよしっと。持ち物関係で不幸だー、という展開はなさそうだ」

DIO「たかが五日そこらの旅で、そこまで入念に準備しておくものなのかね。使える現地の物を使っていくだけでも生活はできそうなものだが」

当麻「そう甘く見て外国に行ったりすると、こっちと向こうの常識のズレで痛い目を見るぞ。
水道水が飲めない水の国だって多いし、用意されたシャンプーと合わなくて肌が炎症を起こすこともあるんだぜ」

当麻「それになァ! この一週間で最も準備の手間がかかったのはお前なんだぞ、DIO!」


DIO「仕方がないであろう。元より服などかっぱら……もらった一着しかなかったのだ。
入院した時に毎度洗われるので、選択の時間もはぶけていたしな」カチャ オシャレェエ~~


当麻「その事実が判明してから、大急ぎでお前の新しい服なりなんなり生活用品を買いまわったんだぞ……。
おまけにグラサンなんか買いやがって! 費用俺持ちだぞ全部!?」

DIO「今まで気にする必要もなかったのでな。それに、気が付かなかったということは、それだけお前の生活にも支障をきたしていなかったという事なのだ。
感謝こそすれど、罵倒を投げつけられる謂れはないぞ」

当麻「朝早くから街中を出歩いて、寝るときは俺よりも遅くて、ことごとく病院に搬送されて……。
俺との生活リズムが合致している時間少なすぎ!? 確かに何で気が付かなかったんだろ俺!?」

当麻「でも、これからは五日間別の土地で二人過ごすんだ。学園都市の中ならまだしも、他の国じゃ俺もお前も自由に行動はできない。
くれぐれも、俺の許可なく行動をとらないように」

DIO「……通訳がいなくなると厳しいからか?」

当麻「ギックゥ」

DIO「図星か」

当麻「う、うるせえやい! 日本純血統書付きの上条さんをなめるんじゃないぞ!」

DIO「分かった分かった」


当麻「ところでDIO。その傘、どうしたんだ? 折り畳み式の傘なら既にケースの中に入れてあるけど」

DIO「紆余曲折あって得た日傘だ。ここを出るという事は、学園都市が実験のため遮断していた紫外線と直に触れるということ。
私は太陽光に異常なほど危険を感じるので、こうして持参している。気やすめだがね」

当麻「日傘なんて持ってたのかお前。しかし、記憶がなくなっても覚えているってことは、よっぽど弱かったんだろうな。
でも機内に持ち込めたかなあ。凶器と疑われるかもしれないぞ?」

DIO「あのカエル顔の医者から、私が日の光に弱いということを証明する書類はもらっている。
文面的にはアルビノに近い扱いにされているようだ。あとはこれで説得するしかあるまい」

当麻「強引だなぁ、おい。それにしても土御門の奴まだか? 早くしないと、DIOが飛行機に乗れないぞ」

~★AM7:58★~

当麻「遅いな、土御門の奴。もうすぐゲートも開くぞ?」

DIO「……、」ジロジロ

当麻「DIOもここの空港が物珍しいのは分かるけど、あんまり遠くへ行くなよ? 旅立ち前にはぐれるなんてごめんですからね」

DIO「しかしまあ、空港というのは凄まじいものだ。それも学園都市の空港だからか、今まで目にしたことのないような品や装飾がズラリと並んでいて実に飽きない」

DIO「土産の品も珍妙なものばかりだな。このヤシの実サイダークッキー、なかなか嗜好の凝ったつくりで面白い。
クッキーの材料にCO2を含ませて、炭酸特有の清涼感を見事に演出している」ガリシャワァー

当麻「って勝手に買うなよ! しかも食うなよ!」


DIO「時に当麻」ゴリシュワワー

当麻「まだ食ってたのかそれ」

DIO「先程から気になっていたことが一つある。ここから見える、あの途中から半壊している巨大な塔。あれは何だ?」

当麻「あー、もしかしてエンデュミオンのことか」

DIO「エンデュミオン? 月の女神、セレーネーの寵愛を受けた人間の名だが」

当麻「それが、あの折れた塔の名前さ。元は宇宙エレベーターとして利用するため、本当に宇宙にまで届くくらい長いタワーだったんだ。
学園都市にしかできないってレベルの高速建築なんだとさ」

DIO「宇宙まで連ねた建造物だと? なんとまあ、学園都市は己が手でバベルの塔まで生み出すことができるというのか。
つくづく神への冒涜を恐れぬ心構えだ。敬服するよ」

当麻「同じこと言ってるな……」

DIO「何か言ったか?」

当麻「いや、何でもない」

DIO「それで、その宇宙まで届いたあれは何がどうなってあんな滑稽な姿になったのだね?
自重に耐えきれずに崩壊した、などというつまらぬ設計ミスでもあるまい」

当麻「あー……その、なんていうか。頂上付近の方である歌手のライブをやっている時、事故があって大爆発が起こったんだ。
それでエンデュミオンは実質活動不可能と判断されて、今はもう作動していない」

DIO「その歌手はどうなった。観客もいただろう。まあ、尋ねるまでもなく全員死亡か」

当麻「いや、観客は誰一人して死者は出なかった。
   宇宙空間という、逃げ場のない場所で行われたライブに起きた大事故にもかかわらず、全員が無事地上に戻ることができた」

当麻「人々は、誰一人死者の出なかったその神がかり的な事実を『エンデュミオンの奇蹟』と評した。
   半壊したあのエンデュミオンは、その記念建築物としてそのままの状態で保存されているんだ」


DIO「たった一人。歌手は忘れ去られての奇蹟、か。欠伸が出るようなおとぎ話だな。さぞ皆を恨んで死んでいったに違いない」

当麻「いや、アイツはそんな奴じゃないさ」

DIO「……知り合いか」


当麻「アイツは、アイツらは、もう何かを呪うことから、呪われることから解放されたんだ。
   奇蹟を、歌を、自分が愛していたものを抱きしめながら、俺たちを救ってくれた」

当麻「そして彼女が愛した歌は、忘れられることもなく今もここに流れ続ける。みんなの心の中で、彼女は歌っている。
   絶対に忘れるものか。俺の右手が消せないのなら、彼女は幻想なんかじゃなかったんだからな」


DIO「……いつからお前はロマンチストになったのか。いや、元からそんなくそアマちゃんな野郎だったなお前は」

~★AM8:03★~

土御門「いやー、遅れてごめんにゃー」タタタタ

当麻「遅いぞ土御門! もうゲートも開いちまってるから、早くパスポートとか色々渡してくれ! 8時25分発だから、もう機内に行っておかないと」

土御門「はいはい了解。そんじゃDIOちゃん、こいつがあんたのパスポートになりますぜよ。あとIDカードもな」スッ

DIO「……礼は言わんぞ」パシッ

土御門「野郎からの礼なんて嬉しくないにゃ。そんで、こっちがカミやんに頼む品物だにゃー。
    言っとくが、割れ物注意だぜい? あ、左手で持ってくれよい」

当麻「左手って、お前何入れたんだよこの中に。それに意外と小さいな、手のひらサイズとは。住所とか渡す相手は?」

土御門「大英博物館ってのは知ってるか?」

当麻「知ってるも何も、超有名な観光名所だろ。調べたイギリスの旅行雑誌にもほとんどばっちり載ってたぞ」


当麻(そこにイギリス清教が絡んでるってのもな。まさか、この中身も関係あるのか?)ヒソヒソ


土御門「ちょっと違うぜい。とりあえず、その大英博物館の役員にチャールズ=コンダーっておっちゃんがいるから、
    『レッド』を渡しに来たって言ってくれ。おっちゃんも分かってくれるはずだ」

当麻「『レッド』?」


DIO「フン。また、よからぬ謀りに走っているのか?」

当麻「こらDIO、そんな言い方はないだろう」


DIO「あえてハッキリ言ってやろう。私はお前を信用していない。貴様からは、嘘をつき続けてきたクサいクサいホラ狐の匂いがしてたまらない」


DIO「今回のコレも、貴様を信頼したのではなく利用したのだ。そこをはき違えるなよな、狐」

土御門「えらく嫌われたもんだな~俺っちも。その包みの中には、なにも世界を終わらせるスイッチとか人をダメにする粉とかなんて入ってないぜい?
    これホントよ、DIOちゃん」

DIO「どうだかな」

当麻「そこまでにしとけって、DIO。悪いな土御門、コイツはツンデレだからさ……」

土御門「ムキムキマッチョなツンデレとか誰得?」

当麻「確かに……」


土御門「あ、でもこれだけは守ってくれよカミやん、ついでにDIOちゃんも」


土御門「その中身は、間違っても『昼間』に開けるんじゃないぜ? とくに、お日様ルンルンみたいな時には、絶対に開けちゃだめだ」


土御門「――まあ、俺から言えることはただ一つ。存分にイギリスを楽しんでくるがいい! ということだけだにゃー。
    ほれ、時間も時間もだからとっとと行ってこい。小萌先生には適当に何か言っとくぜい」

当麻「ああ分かったよ。それじゃ、色々とありがとな土御門! これはちゃんと渡しておくから安心して言い訳してくれ!」タタタタ

DIO「次に貴様の顔を見たときは、まずは四肢を痛めつけて身動きを封じてから問答させてもらう。覚悟しておくことだ」コツコツコツ




土御門「――――行ったか」

土御門「上手くあの場所にたどり着くことを祈るぜ、DIO?」

今回の更新はここまででございます。感想の方も毎回ありがとうございます。トリ公の迫力がスゴかった
土御門とDIOはなんとなく仲良くはなれないような気がします。今回とは違う形で出会ったとしても、いがみ合う仲になりそうな。主にDIOが一方的に
DIOは沸点低いですからねえ。ましてカリスマや威厳を忘れてしまったDIOはただの小物、寛容な心など見せかけ程度にしか持ち合わせていないでしょうよ

~★~

必要なものは 『わたしの――ザ――ザザ――』である
我が―ザザ――ザザ―ザ――の先にあるものこそが 人間がさらに先に進むべき道なのである

                                     カブト虫

必要なものは 信頼できる友である
彼は欲望をコントロールできる人間でなくてはならない
権力欲や名誉欲 金欲・色欲のない人間で
彼は人の法よりも 神の法を尊ぶ人間でなくてはならない
いつかそのような者に このDIOが出会えるだろうか?

           ドrrSHへノみth

必要なものは 『極罪を犯した36名以上の魂』である
罪人の魂には 強い力(パワー)があるからである

カブト虫

必要なものは 『14の言葉』である
「らせん階段」 「カブト虫」 「廃墟の街」 「イチジクのタルト」 「カブト虫」
「――――――」 「――――――」 「――――――」 「――――――」 「――――――」 「――――――」 「――――――」 「――――――」 「――――――」
わたし自身を忘れないように
この言葉をわたしの―ザザ――ザザザ―――そのものに 傷として刻みつけておこう

             tKuい点

必要なものは 『勇気』である
わたしは―――ザザ――を一度捨て去る『勇気』を持たなければならない
朽ちていくわたしの――ザ―――ザ―は 36の罪人の魂を集めて吸収
そこから『新しいもの』を生み出すであろう
「生まれたもの」は目醒める
信頼できる友が発する 14の言葉に知性を示して…
『友』はわたしを信頼し わたしは『友』になる

                                                        Jおtット

最後に必要なものは 場所である
―――ザザ―――ザ―ザザ―――ザ―へ行き……
次の「新月」の時を待て……
それが『天国の時』であろう……


~★~

DIO「―――――――――ッ」パチウ


“皆様、当機は学園都市多目的国際流通空港を離陸いたしましてただ今水平飛行に入っております。ロンドンヒースロー空港到着時刻は、現地時間で……”


DIO「……、」バサッ

当麻「おっ、起きたかDIO。聖書なんか顔にかぶせて寝るなんて、お前らしいというかなんというか」

DIO「……どれくらい時間が経った?」

当麻「まだ三十分ってところ。ロンドンまでは結構かかるから、もちっとのんびりした旅になるかな」

DIO「そうか。しかし、やはり飛行機というものは慣れない。身体がガッチリ固定されて身動きがとりづらいぞ」

当麻「お前の体格が良すぎるんだ、仕方がないだろ。それに、もう少ししたらシートベルトとってもいいサインが出るから待ってろって」


ポーン


当麻「ほら来た。この音が鳴ったっていうことは、飛行機は安定して飛行できてるっていうサインなんだ。
揺れも少ないから、シートベルトを外してもいいってわけだ」カチャカチャ

DIO「面倒だな」ガチャン


DIO(今の夢……。これもまた、関係があると考えていいのか。オレの記憶と)

DIO(今までの、断片的な言葉の数々とはまた違った異質なものだった。しかもはっきりと覚えている。
ところどころはピースが抜け落ちたように掠れて分からなかったが)

DIO(だが、天国とはなんだ? 今の夢の真意はいったいなんだ? 何がどれと結びついている?
   分からない。核心に近づける予感は確かにあるというのに、繋がりを見つけられない)

DIO(寝付く前に聖書を読んでいたから、天国だの罪だのという夢を見たのか?
   枕の下に本を入れておくと、夢でその内容を見れるという迷信があったが。フン、馬鹿な話だ)

DIO(……だが、記しておこう。覚えている限りのことを、あのノートに残しておかねば。今後、何かのピースと繋がるかもしれぬ)

~★ロンドン ヒースロー空港 PM22:30★~

当麻「着いたアーーーッ! 上条当麻、イギリスに立つ!」

DIO「深夜十時半か。私としてはちょうどよい時間帯だ」

当麻「そして疲れたァ~。前のイタリアの時も思ったけど、やっぱり長時間のフライトってのは精神的疲労が大きいもんだな。
   テレビとかあったから、ずっと退屈ってわけではなかったけど」

DIO「当麻。疑問なのだが、他国へ渡るときはあそこまで質問攻めにあうものなのか? ここの職員から口やかましく質問されたのだが」

当麻「ヒースロー空港は、とりわけ入国審査が厳しい空港だってことで有名なんだぜ。俺たちなんか学園都市の人間だから余計にな。
   しかも片や未成年、片や急ごしらえの身分証持ちの白人だからなあ。ばれなくてよかった」

DIO「私のことに関してはあまり問われなかったが、お前のことについては散々と質問を受けたぞ。
   日本純血統種とやらのお前に代わって私がほとんど答えたから、お前は知らないようだがな」

当麻「ス、スンマセン。だからあんなに話し合ってたのか……。でも、やっぱりDIOって英語も堪能だよな。
   近くで聞いてたけど、本場の人たちと何ら変わりない流暢な発音だし」

DIO「日本語よりは話しやすい。お前の国の言語は、とくにルールが独特すぎるぞ純血統種」

当麻「なんか知的にディスられている気がするぞ……」


DIO「そのような戯言はよしとしてだ。これから我々は、ヒースロー・エクスプレスに乗ってパディントンの宿泊施設に向かわなくてはならないのだが」

当麻「おっとそうだった。えーと、駅はどこだ? パンフレットパンフレット……。ターミナル4か、ターミナル5の電車で行けるみたいだ。
   あっ、あれがそうか? えーと、T、E、R、M……」

DIO「Terminal4、だ。あれで間違いないのだろうな」

当麻「おう。それじゃ、手早くホテルまで行って、チェックインしたら休もうぜ。今日はもうヘトヘトだ。明日歩き回るし、早くくつろぎたいぜ~」

DIO「それはいいが、当麻。お前、何か忘れてはいないか」

当麻「何をだよ? 忘れ物チェックはこっちに来る前に一回、二回、三回、とどめに四回と行っているぞ」

DIO「そうではなくてだな。お前、失くすと怖いからと言ってスーツケースの中に財布を入れっぱなしだろう。
   まさか、駅前でそれを開いてゴソゴソと自分の荷物を見せびらかす腹でいたのか?」

当麻「……う、うっす。指摘どうもです」

DIO「……、」

~★パディントン 某ホテル PM23:30★~

当麻「ベッドだ! ふかふかにメイキングされたベッドがあるぞ~! やっふーいッ!」ボスゥ

DIO「ガキか貴様は。いや、ガキか」

当麻「ふわはあああ、このホテル独特の柔軟剤の香り、癒しの全てが詰まった温かみのある毛布!
   うちのソファーや風呂なんかとは段違いの心地よさです! 俺こんな家に住みたい」

DIO「学園都市にいる限り、レベルを上げねば叶わぬ願いだと知れ」

当麻「余所の人にその現実を突き付けられたッ!?」

DIO「とはいえ、小汚いお前の部屋よりは確かに居心地の良いものだ。腕を伸ばしてもまだ上に余裕があるぞ」グィィィ

当麻「小汚いのは余計だが、それもこの部屋の前では許されてしまう。おし、シャワー浴びてくる! シャンプーとボディソープはーっと……」


DIO「当麻よ」

当麻「なんだいDIO」フロアガリ~

DIO「お前、あのクソ狐から受け取った品はどうした?」

当麻「スーツケースの中に入れてるけど?」

DIO「そうか」ゴソゴソ ブン

当麻「って普通に漁るなよお前! あーあ、せっかく詰めてきた服とかブン投げんなってば!」

DIO「……これか」カサリ

当麻「そうだよ、それそれ。まったく、また詰め直しじゃないか。次お前シャワー浴びて来いよ、明日も早いんだし」


DIO「どれ、開けてみよう」ガシッ


当麻「おいーッ!? 人様の贈り物をしれっと開けようとするんじゃない!?」

DIO「あのクソ狐直々の一品だ、キナ臭さ以外ありえない。お前も気になっているのだろう」グィイー


DIO「……ム、なんだこの包装の紙は。まるでゴムのように伸びるだけで、全く破けないぞ? これも学園都市製のものなのか?」


当麻(……土御門の奴、まさかあれに魔術をかけたのか? でも、土御門が魔術を使うなんてよっぽど追い詰められないと使わないはずだ。
   身体への負担が尋常じゃない。けど、俺には左手で持てっつってたしなあ)

当麻(そんなあいつが、わざわざ魔術で保護して俺たちを向かわせるほどの『差し入れ』。DIOほどじゃないけど、確かにちょっと気になってくるな)


当麻(でも、まだ俺には関係ないことだろう。気にする必要もなく、これを渡せばいいだけだしな)


当麻「諦めとけってDIO。そんなことより、ちゃちゃっとシャワー浴びて明日に備えようぜ」

DIO「チッ」

今回の更新はここまでです。感想などもありがとうございます
はてさて、渡し物とはなんじゃろな。まあそれについては追々
それと、予定などがかさんできて時間がとりづらくなりつつあるので、更新頻度は落ちる可能性があります。どうかご理解のほどを

~★ロンドン AM9:35★~

『はるか19世紀! それは産業と貿易の発展が人びとの思想と生活を変えた時代だッ!』

『後世の教科書にも載った“産業革命”の爆心地! そして、今なお歴史と共に発展を続ける変わらないままの進化! 嵐のような渇きを満たすための進化!』

『ロンドン! 始まりを告げる時計塔の音! 今と過去を含んだ鐘はこれからも鳴り響くであろうッ!』


当麻「寒ッ! ロンドン寒ッ!」

DIO「……、」

当麻「コートを羽織ってもまだ冷えるなあ。日本と気温差がこうも違うとは。
北イタリアの時は生暖かい風に包まれてうだったけど、こっちはこっちで縮こまりそうな寒風だぜ……」ブルル

当麻「で、ロンドンが寒いってのはようく分かったことなんだが。DIOさん、その格好はやっぱりツッコミ待ちの不発弾と認識してもいいのかな?」


DIO「……、」
(分厚い黄色のコート、マフラー、サングラス、ハートがワンポイントの赤いニット帽。おまけに日傘もさしている。もちろん学園都市製! その紫外線カット率は折り紙付き!)


当麻「いや、寒いからとはいっても……」

DIO「勘違いするなよ当麻。私は寒冷に弱いからこのような無様な姿を晒しているのではない」

当麻「分かってるって、日光対策なんだろ。でも、いくらなんでもそれはやりすぎのような気も……やっぱ目立つぞ?」

DIO「どうも、日傘一本では不安でなのでな。あの傘売り親父をの言葉を信用していないというのもあるが、
『念を入る』と言うものは妥協をしてはならないものだ」

当麻「まあそうだけどさ。うーん、まあDIOがいいっていうんなら俺は気にしないけど。でも館内とかは自重してくれよ?」

DIO「……、」


DIO(意外なもので、学園都市で販売していた紫外線対策の衣服類を全身にまとえば、肌が焼けるような痛みはあるもののこの光の中で活動することはできるようだ。
だが、本当に衣服だけで防いでいるのか? 他に別の物も含まれているような気がするが)

DIO(だが、今はそのようなことはどうでもよい)

DIO(地下鉄から下車して、階段を昇った先で目に飛び込んできたこの光景。サングラス越しで濁った色とはいえ、オレはその広がった景色を見てこう思ってしまった)


DIO(――『懐かしい』と)


DIO(目で見るよりも、肌が見て感じた。耳で聞くよりも、骨が聞いて震えた。五感ではなく、もっと別の何かがオレをそう感じさせたッ!)

DIO(記憶の中には、もちろんロンドンの街中の風景は存在していない。しかし、視界のどこを見渡しても、なぜかその瞬間、
日で色が抜け落ちた写真のようにロンドン街が映り込む)

DIO(やはり、オレは――――)

当麻「ようし! それじゃあ早速観光に回ろうぜ!」バンバン

DIO「背中を叩くな」

当麻「まあまあ、今日くらいは許してくれよ。なんたってイギリス、しかもいつもより食費も少なく済みそうだしな!」

DIO「お調子者もほどほどにしておけよ。お前ひとりではろくに動くこともできないのだからな。
私の機嫌を損ねたら、果たしてまともに通訳してやるかどうか自信がない」

当麻「だァーッ!? そ、それは勘弁願います……」


金髪イケメン「ペラペラペラペ~ラ、ペラペララペラ」

金髪ポニテ「ペラペラペ~ラペラ、ペラペラペラ~」


当麻「さ、流石は英国。俺のような日本人では到底聞き取れないほどの英語パワー。こんな言語を覚えろってんだから、世界はひどいもんだぜ」

DIO「イギリスの英語はアメリカのそれとは違い、イギリスには特有の訛りがある。イントネーションの違いとか、細かな文法の置き方の違いとかだ。
アメリカ訛りがほとんどの英語を習う日本では、まず聞き分けは不可能だろう」

当麻「へー、英語にも関西弁とかずーずー弁みたいな違いがあるんだな。DIOは、自分が話しやすい英語の訛りとかあるのか?」

DIO「おそらくだが……私のそれはイギリス訛りに近いような気がする。日本のテレビで流れる米人風の英語よりは、ここの英語の方が親しみやすい」

当麻「ということは、やっぱりDIOはイギリス人って可能性も大きいわけだ。DIOは、ロンドンに来てなにか感じたことはないか?
   たとえば懐かしいとか、あの店知ってるとか」

DIO「……ある」

当麻「本当か!? じゃあ……」

DIO「だが待て、それは早計だ。確かに私は、ロンドンの街景色を初めて見た景色ではないという事を本能的に感じた。
   しかし、それにしては“妙”なのだ」

当麻「妙?」


DIO「ああ。なんというか、『イメージと違う』。アハ体験とかいう奴でよく出される、写真の一部が別のものにすり替わっていく、という奴があるだろう。
あれと似た感覚を、私は今感じている」

DIO「もしかしたら、私はこのイギリス出身かもしれない。しかし、私は前にイギリスに観光に来たことがあるというだけで、
   別にここ出身というわけではないということもあり得るのだ」

当麻「決定的な一歩ってことじゃないわけか。でも、少なくともDIOはイギリスを訪れたことはあるってことだから、
   やっぱり新しい発見もできたわけだし結果オーライだな」

DIO「フン。どこまでも楽観的な奴だな」


ジロッ


DIO「……ムッ」

当麻「どうしたDIO、いきなり向こうの方を向いて」

DIO「……いや、なんでもない。気のせいだ」


DIO(視線のようなものを感じたが……ふむ)

~★バッキンガム宮殿 AM10:26★~

当麻「DIO~、そろそろ正面広場に行こうぜ」

DIO「それはいいが、なぜだね。せっかく金を払ってチケットを買ったのだ、もう少しこの宮殿内部を見て回りたいのだが。
   ここの装飾は目を見張るものがある。是非とも部屋に欲しいものだ」

当麻「何言ってるんだよDIO、うちにそんな飾りしたら寮の管理人さんに怒鳴られるだろ?
   それに、早く場所取っておかないとアレが良い席で見られなくなっちまうんだよ!」

DIO「アレ、とはなんだね」


当麻「近衛兵の交代式さ! バッキンガム宮殿に来たんなら、是非とも見ておかなきゃ損ってもんだぜ。他の人たちもそれ目当ての人が多いのさ」


DIO「そんなものを見てどうするつもりだ」

当麻「分かっていないな~DIOちゃんは。あの整然と広場を練り歩く鼓笛隊や兵隊たち、荘厳な白馬や黒馬に跨って列をなす騎馬隊!
   そしてそれらを次の兵たちが引き継いで、観客を飲み込まんとばかりの圧倒的な迫力を残して去っていく……」

当麻「これをかっこいいと言わずして、何がかっこいいになるんだって話だよ! ザッツクールだ! ほらいくぞDIO、こっち来いって!」

DIO「行くならお前一人で行けばいいだろうがッ。私まで巻き添えにするんじゃあない」

当麻「だって、DIOいないと通訳さんがいなくなるんですよ!」

DIO「貴様なあ……」


ジロッ


DIO「……、」ピクッ

当麻「お、どうした? やっぱり行く気になってくれたのか?」

DIO「……ええい面倒だ。その代わり、お前のわがまま一回につき私は二度の単独行動をさせてもらおうか」

当麻「一回多いじゃねえかよそれ! せめて一回だ一回」

DIO「よし、ならば行くとしようか」

当麻「しまったッ! つい勢いで……」


DIO(……気のせい、かは怪しいな。姿こそ見えぬが、皮肉にもそれは最早慣れたことよ)

今回の更新はここまででございます。そして感想ありがとうございます
駆け足気味に入ったイギリス編ですが、筆者は実際にイギリスへ行ったことはありません。なので多少の差異はあると思うのであしからず
うちのSSでは便利屋という地位を築きつつある土御門先輩マジリスペクト


パッパラ パッパラ パッパラッパ~~

ザン ザン ザン ザン ザン


当麻「おお……すげえ」

DIO「実際この目で見てみると、なるほどお前の言うとおりだな。
凱旋の音と共に一糸乱れぬ動きで進行する軍隊の様は、不恰好に頭を捻った学芸会の舞台とは比べ物にならない洗練な動きだ」

当麻「だろお? 見たこともないものをそう頑なに拒まなくてもいいじゃないか。こうやって面白いものも見れるんだしさ」

DIO「私からしたら、こんな見世物よりも宮殿内の内装を見て回る方が好きだがね」

当麻「素直じゃねえなあ……」


DIO(視線は感じない。怪しげな気配もとくにない。これほど人ごみであるから、流石のオレの視力でも怪しげな奴を見分けるというのは難しい。
遠くに、観光客から何かをギろうとしてる男なら見えるが)

DIO(声も姿もなく、気配だけが一瞬だけ姿を見せる。これだけで、オレがまず最初に思い浮かべるものはただ一つ。『幽霊泥棒』だ)

DIO(なので、此度の気配もそうだ――――とは言い切れなくなってしまっている)


DIO(なぜならッ!)バッ


シュルルルウウ スシャア!


DIO(――このDIOは、とうとう幽念動を自らの意志で操れることが可能になった!
今、当麻に気づかれないようにコイツのポケットから財布をスリ取ってみせた。これはオレ自身の意志でやったことッ)

DIO(一週間ッ! このイギリスへ飛び立つまでの一週間、オレはあらゆる時間で幽念動のコントロールを試みた。
   学園都市内を歩き回る途中、寮の部屋の中、どこにいてもオレは遠くの物を動かそうとした)


DIO(変化は三日目の夜だった。当麻が寝静まった頃、オレは遠くの教科書へと強く念じた。
  『オレの元へ来い。来て当然だ、呼吸をするのと同じように当たり前としてここへ来い!』と)

DIO(その瞬間、突如オレの左腕が妖しく光り弾けたのだ。いきなりのフラッシュに目を指で覆った隙間から、オレは見た)


シュルルルルルルルル ガシィ


DIO(我が腕から伸びた数本の茨が、妖しげな光を帯びながら遠くの教科書を絡めとって腕へと引き寄せてきたのを、オレは見たのだ!)


DIO(直感で納得した。この茨のヴィジョンこそが、オレの『幽念動』のヴィジョンなのだと!
   オレ自身の意志で『幽念動』を発現させたということをッ!)


DIO(あれから今日まで、幽念動は我がコントロール下に完全に置かれている。
   つまり、『幽霊泥棒』という存在はこの世から完全に消えてなくなったということだ)

DIO(そのため、オレが感じるこの一瞬の気配。コイツは、確実に生身の人間が、オレか当麻をつけ狙っているという事になる)

DIO(もちろんこのアホは気づいてはいないようだがな。面倒なことを起こされる前に、こちらから先に叩いておきたいが……今は機を窺うとしよう)

~★セント・ジェームズ・パーク PM12:48★~

当麻「うお~腹減ったな~」

DIO「ここから大英博物館までは、市内バスか近くの路面電車を使えば時間もかからずいけるだろう」

当麻「いい加減、この『差し入れ』とかいうのを届けないとな。チャールズさんって人をあんまり待たせるのもいけないし」

当麻「でも、その前にご飯が食べたい~。インデックスほどではないにしろ、お腹が減って力が出ない~。DIO、この近くに何かないか?」

DIO「レストラン街はここをもう少し先にいったところにある。そこなら様々な国の料理店が並んでいるようだ。無論、かの有名なイギリス料理もあるぞ」

当麻「有名っつってもなあ、その方面が方面だし。けれどイギリス料理でもなんでもいいから、とにかくなんか腹に収めたいぜ……」

DIO「一応、この近くにも食べ物を売っている店はあるがね」

当麻「何屋さァ~ん?」

DIO「フィッシュ&チップスだ。前に、私がお前に振るったことがあるだろう」

当麻「あれか! あれ美味しかったよな~! よし、早く食べに行こうぜ!」タタタタ

DIO「本能に忠実な奴だ……。それに、私がいなければメニューもろくに読めんくせに」


当麻「いただきまーす!」ガブリ

当麻「……うん、美味い! やっぱりこれ美味しいな。イギリス料理はまずいって聞くけど、何も全ての料理がまずいわけじゃないんだな」

DIO「……、」ガリッ

当麻「んー、でもDIOってやっぱりイギリス人じゃないかな」

DIO「何を根拠にそう思う」

当麻「だってさ、DIO。お前、このフィッシュ&チップス作るときかなり手慣れた感じで調理してたじゃん。
   ってことは、体が覚えているくらいこれを作ってるってことだろ?」

DIO「別に、フィッシュ&チップスがイギリス固有のものというわけでもない。他の国でも料理として出されるところはある」

当麻「そうかもしれないけどさ。逆に言えば、DIOはイギリス人かもしれないっていうことも十分にあり得てくるわけだ。
   ヒントぐらいにはなるんじゃないかな」

DIO「さて、どうだかね。それで当麻。次は大英博物館だったな」

当麻「おう。大英博物館にいるチャールズさんに渡し物もあるし、どんな展示品があるのか純粋に気になるしな」

DIO「ならば、もうすぐ立つとしよう。既に日は昇りきっている。うかうかしていると日が暮れてしまう。私はそれでも構わんがね」

当麻「本当に嫌いなんだなあ、太陽の光。まるで吸血鬼みたいだな、DIOって」

DIO「フン」



コツ コツ コツ


当麻「それでさ、そのインデックスって奴が本当に自由奔放唯我独尊シスターなんだよ。
   気が付けば食い物に釣られてフィッシングされるし、猫を追いかけたと思ったら強面兄ちゃん引き連れて戻ってきたり」

DIO「……、」

当麻「どうしたんだDIO? さっきから黙りこくってるけど」


DIO「ついてこい」ガシィ


当麻「はい?」

DIO「こっちだ」グィィィィィイ

当麻「どわっとったー!? 痛たたたたた腕を引っ張るなって! 急にどうしたんだよ!」

DIO「いいから黙っていろ」ズドドドドドド

当麻「んなこといったって、さっきの道をまっすぐ行けば大英博物館についてたぞ!? こっちは全然違う方向じゃないか!
   っていうかお前のそのUVカットスタイルだと、なんかあらぬ誤解されそうだけど!?」

DIO「……、」メキメキメキ

当麻「ぎにゃあああああ! 分かったごめんって! だから強く腕を握らないでくださああい!!」


当麻「はぁ、はぁ、はぁ……」

DIO「……、」オオオオオオ

当麻「ったく、結局何がしたかったんだよDIO。こんな人通りの少ない、今にも怪しい奴が飛び出してきそうな路地裏なんかに引っ張ってきて」

当麻「ハッ! まさかお前、ここで俺に乱暴する気じゃ……嘘ですごめんなさい」


DIO「ほう。お前にしては勘が鋭いぞ当麻」


当麻「えっ? もしかして、本当に俺に乱暴するつもり……エロ同人みたいに!?」

DIO「スリおろされたいらしいな。そっちではなく、その前だ」

当麻「その前?」

DIO「――どうした? まだ自分たちの存在がバレていないとでも思っているのか?
   せっかく舞台を変えたんだ、それらしい登場ぐらいしてくれてもいいじゃあないか」


 ズア ゾロゾロ ゾゾゾ……


当麻「何だァ!? 屋根の上に突然大量の人影が……!」

DIO「それだけではない。路地の向こうからも、私たちが通った道からも、同じ仲間だろう奴らが近づいてきている。
   私たちは尾けられていたのだ。それも、最低でもバッキンガム宮殿からな」

当麻「俺たちが尾けられていた? それも、そんな前からずっと……」


「驚いた。我らが迷彩術式を勘だけで見破るとは、一般人のお前さん、中々いい勘してるよな」


当麻「そ、その声は……」


建宮「――――しばらくよな、上条当麻」

今回の更新はここまで。毎回感想などありがとうございます。博物館という名の盗品展覧館
傘屋のおやじはこのために登場させました。他にも色々とありますが、それはまあ追々。
原作風味のテンションのナレーションっていうのはどうにも難しい。荒木節はやはり極められない。鎌地節は拙作の形式上難しいのも


当麻「た、建宮!?」

DIO「知った顔か。あの鋏み角頭」

当麻「ちょっとな。だけど建宮、お前がここにいるってことは、この人たち全員……」

建宮「ご察しの通り。我らは天草十字凄教。イギリス清教傘下のしがない一集団よな」

当麻「しがない一集団は大勢で気配を消して尾行するなんてことはしねえよ。それで、何の用だよ建宮。っていうかお前ら、前は北イタリアにいただろうが」

建宮「元々、我らはここイギリスの日本人街を拠点にしている。この前の時は偶々オルソラ嬢の身支度手伝いのために北イタリアに赴いていただけで、
別段我らがここにいることはおかしくないのよな」


建宮「それに、我らはお前を護衛しに来たのだ。上条当麻」


当麻「護衛? 俺を? 何でさ」

建宮「お前さん、大英博物館へ行くのだろう? 懐に忍ばせた『レッド』を持って」

当麻「なっ!? 建宮、お前どうしてそれを……」

建宮「土御門から話は通っている。上条当麻。お前さん、自分が今結構危険な状態だという事に気づいていないだろう?」

当麻「えっ? 俺、危険?」

建宮「まあ、そういった事情は歩きながら話していきたいところだが……」パチン


牛深「ふん」ドスッ

DIO「なッ、グウッ!?」ドサッ


当麻「DIO!?」

牛深「案ずるな、峰打ちだ」

対馬「牛深、あんたそれ言いたかっただけでしょ」

牛深「うっ」

建宮「まあまあ対馬。偶にはいぶし銀牛深というのも悪くないだろう?」

香焼「ぶっちゃけた話、キャラに似合わなくて笑えるッス。っていうかその兄ちゃん、今から銀行強盗にでも行くんスか?
   ガタイに似合わない日傘もさしてるし」

当麻「お前ら! 俺の知り合いノしといて和やかに漫談繰り広げてんじゃねえ! こちとらまだ状況が何一つ呑み込めてねえんだぞ!?」

建宮「心配するな、本当に気絶してもらっただけだ。一般人の前で魔術の話をするのは流石にまずいよな」

当麻「魔術?」

建宮「そうだ。まずは歩くか、ここで立ち話というのも時間の無駄よな。おうお前ら、あとは俺と牛深、香焼、対馬で護衛する。
   他の者は散開して警備に当たれ」

「「応!」」シュダン


五和「……あの、建宮さん」

建宮「どうした五和。お前も持ち場に……」

建宮「……ははーん?」

五和「うっ。な、何ですかその笑顔は」

建宮「うんうん、若者ってのは見ていて応援したくなるものよな! よし五和ちゃん、お前は特等席で護衛させてやろう! 上条当麻の右隣につきなさい!」

五和「た、建宮さん!? いきなり隣なんて私には……!」

建宮「あ、牛深。お前はそのすごく怪しい格好の兄さん担いで行けよな」

牛深「あい」ドッコイショ

当麻「何だってんだよ……早速不幸の匂いがしてきがやった」


建宮「さて、まず何から話したものかな」

当麻「俺をきちんと納得させる順序で話せよな。DIOのことはまあ仕方ないとして、魔術が関係しているってのはどういう事だ?
   あ、DIOに日傘さしてやってくれ。そいつ日の光が当たるのはダメらしいんだ」

牛深「香焼。頼む」

香焼「了解。日の光がダメとか、アルビノか吸血鬼みたいな奴ッスね。だからこんな日傘なんかさしてたんスか」

建宮「世の中色々苦労している若者もおるということよな。ところで上条当麻。お前、土御門から預かり物があっただろう。『レッド』という品だが」

当麻「あるぞ。これを今から大英博物館のチャールズって人に渡しに行ってくれって、その土御門から頼まれたんだからな。
   お前らは、そのチャールズさんから頼まれて俺を護衛してくれてるのか?」

建宮「いや、その土御門元春からよな」

当麻「土御門が?」

対馬「『箱に保護結界を張ったからカミやんには触るなとは言ったが、カミやんのことだから万が一触っちまってるかもしれない。
   だから、その時の保険もかねてついていてほしいにゃあ』と野郎が言ってたのさ」

牛深「お前、モノマネ下手くそだな」

対馬「別にいいでしょうが! 今そこはどうでもいいとこ!」

当麻「信用されてねえな俺! 何度か危うく触りかけたところはあったけど」

当麻「それにそれだよ。あの土御門が、魔術を行使してまで届ける『レッド』ってのはいったい何なんだ? 魔術品か何かなのか?」

建宮「『レッド』が何か、という質問か。んー、そうよなあ。しいて言うとして、それを何かに例えるとするのならば……」

当麻「するのならば?」


建宮「――――爆弾よな」


当麻「ばっ、くだん!?」

五和「建宮さん。その例えは少々ぶっ飛びすぎでは?」

建宮「そうよな、それは最終的な結果としての例えかもしれぬ。
   どちらにせよ、『レッド』という代物はトンデモデンジャラスな一品だということは頭に叩き込んでおけよ上条当麻」

当麻「お、おう。それで、この包み紙の中にある『レッド』ってのはいったい何なんだ? 魔術と関係があるものなのか?」

建宮「大アリだ。『レッド』というのは土御門が言い換えた暗喩の意味であり、本当の名は別にある」


建宮「――――『エイジャの赤石』。それが、その包み紙に収まっている物の真の名前だ」


当麻「『エイジャの赤石』? この中にあったのは鉱石だったのか。
   確かに掌サイズの鉱石ってのはそれほど珍しいものではないし、土御門の奴も割れ物注意とか言っていたが」

当麻「それで、この『エイジャの赤石』ってのはどんな物なんだ? というか、もしかしてこれって『使徒十字』みたいな霊装なのか?」

建宮「いや、『エイジャの赤石』は霊装などではないのよな。それが、こいつの最大の特徴でもある」

当麻「霊装じゃないのか? じゃあ、これは魔術とどう関係あるってんだよ」

建宮「まあまあ、慌てなさんな。まずは順を追って説明しようではないか。お前さんがそう言っていたのよな」

当麻「そ、それもそうだった」


建宮「上条当麻。そもそも。霊装という代物がどういうものかは知っているのよな?」

当麻「ざっくばらんにしか知識はないけど、過去の伝承にのっとって魔術を使う時に媒体にする物のことだろう?
   それで厄介沙汰な目には何度もあってるしな」

建宮「その通り。それでは『エイジャの赤石』はそれらと何が違うのか? ほい五和、バトンタッチ」

五和「え、ちょっと、建宮さん?」

建宮「対馬―。さっきの土御門元春のモノマネもう一度リクエスト」

対馬「やるかバカ!」

五和「ちょ、ちょちょちょ建宮さん!? ここでいきなり丸投げって……!」


建宮(おしぼり作戦はネクストステップへと進んだのよな、五和よ! 次の作戦は、優しい女教師のごとく包み込むように柔らかな教鞭を振るう作戦!!)

五和(長いし色々と無理やりですそれ!)


当麻「あー、大丈夫か? 五和、だっけ」

五和「あ、えっと、その、は、はははい大丈夫です!」

当麻「建宮~、お前こんな娘に全部丸投げするんじゃねえぞコラ。テンパって可哀想だろうが」

五和「そそそんなことないです、だだ大丈夫ですから。私でも『エイジャの赤石』の説明ぐらいはできますよ」

当麻「そうか? うーむ、まあいいか。それじゃあ説明頼むぜ」


五和(フゥー、コォォォォ。五和、行きます!)クワッ


五和「そもそも魔術というのはどういう原理で起こっているのか、上条さんは把握はしていますか?」

当麻「正直微妙なところ。魔術師の知り合いはいれども俺は魔術師じゃないし、実際に魔術なんて使ったこともないからな。
   確か、自分の生命力を魔力に変化させて行使してるんだったっけ?」

五和「そうです。基本的には我々の中に流れる生命力を練り上げて、魔術のガソリンである魔力は出来上がります。
   まあ、地脈や龍脈といった例外も存在はします」


五和「『エイジャの赤石』は、その工程を全て自動的に行うことが可能だと伝えられています」


当麻「……どういうことだ?」

五和「上条さん。今私は、魔力は自分の生命力を源にして生まれると言いました。
   しかし『エイジャの赤石』は、生命力をのみならずあらゆるエネルギーから魔力を生み出すと言われています」

五和「例えば太陽の光にかざすと、それだけで『エイジャの赤石』内で何らかの反応が発生し、強力なエネルギーとして放出されるとされています。
   火を近づけるだけでも、その熱のエネルギーを何十倍、何百倍と増幅させて変換することもできるのです」

五和「つまり『エイジャの赤石』とは、自然のエネルギーから無限に魔力を生成し続けるレアメタル、とされています。
   自身の生命力を使わずに魔力を生み出し続ける代物など、魔術師からすればまさに垂唾ものです」

当麻「そりゃすげえ……。でもよ、五和。さっきから『されている』とか『言われている』とか、断定した言葉じゃないけどさ。
   それって、まだ誰も使ったことがないってことなのか? そんなにすごいものなのに?」

五和「その通りです。そして、この『エイジャの赤石』が霊装でないという理由も、それにあります」


五和「『エイジャの赤石』は、ミスリルやオリハルコンと同じように文献にしかその存在を記されていない、存在しないとされたはずの幻の結晶なのです」


当麻「存在しない結晶だって? この中にある鉱石が!?」

五和「はい」

当麻「でも、実際に土御門はそれをこうして俺に持たせているんだぞ? それにその文献には何が書かれてたんだ?」

五和「それは……」


建宮「そう五和を質問攻めにしてやるな、上条当麻」ヌオッ

当麻「何だよ、全部放り投げて後ろで騒いでただけの建宮サン」

建宮「バカめ、それも作戦よな」

香焼「気絶させた男の髪の毛をくるくるカールさせて遊ぶのが作戦ッスか」

DIO「……、」シィーン

建宮「……ウオッホン! それよりも上条当麻、文献とかそういう歴史の質問には、その手の専門家に聞くのが手っ取り早いというのが常よな?」

当麻「えっ?」


建宮「到着だ。ここが、大英博物館よな」



DIO「……、」ニヤァ

今回はここまで。いつも感想などありがとうございます。人形おっかねえ
そうですね、無理に真似しようとして文体をめちゃくちゃにするよりは書きやすい方で書いた方が執筆も進むかもしれません。なんとなく似せるような感じでやっていきます。
科学、魔術、そしてスタンド。この三つの関係はまた追々になります。でも、これらが物語の根幹を占めていることは間違いないと断言しましょう。

~★大英博物館前 PM14:00★~

当麻「これが大英博物館か!! すげえ迫力、遺跡のようなスケール!」

当麻「っとと、今はそういう場合じゃなかったな。早くチャールズさんって人に会わないと」

建宮「我らの護衛も完了ということよな。だが『エイジャの赤石』が無事に渡されるのを確認しておくため、俺だけはついていこう。
後の者は戻ってよし」

牛深「建宮さん。この人どうする?」

DIO「……、」シィーン

建宮「あー、そうだな。ホテルへ運ぶのもいいが、そうなるとちょいと面倒よな。んー」

建宮「……上条当麻。突然だがお前、我らの住処に来ないか?」

当麻「我らのって、天草十字凄教の拠点にってこと?」

建宮「もちろん本拠地ではないが、客人二人を数日泊める余裕ぐらいはある。
   ホテルなんかに泊まるよりも安上がりで済むと思うが、どうだ」

当麻「そりゃ安く済むのは俺としても嬉しいし、それが見知った顔の家っていうのなら尚更だけど、いいのか?
   それに、なんでまたいきなりそんなこと言うんだ?」

建宮「それこそ愚問よな。見知った顔の知人を我が家に泊めるのに、大層な理由づけなど必要か?」

当麻「というのはもちろん嘘で、ってオチじゃなくて?」

建宮「おう」

当麻「――――持つべきものは悪意のない知人だなァ!」シミジミ


香焼(建宮さん。仕掛けるんッスね?)

建宮(おう。上条×五和プロジェクト、ここで仕掛けずにいつ仕掛ける!)

対馬(流石は建宮さん、いらぬお節介と上条当麻への配慮はあんまり考えてないゆえの思いつき。断られたらどうするつもりだったのさ?)

建宮(そん時はあの金髪マッチョを拉致して俺が奴をおびき寄せる)

対馬(あくどいね~。流石は建宮さん)


五和「……何の話をしているのでしょうか」

牛深「知らなくてもいい会話だろうよ」


当麻「広いなあ、流石は有名な博物館。歴史好きは一度は訪れたいって噂だけど、そうじゃない人間、例えばこの上条当麻とかでもワクワクと心が躍るぜ!」

建宮「現在は午後の二時を回っている。おまけにチャールズ殿に『エイジャの赤石』を渡さなくてはならないよな。
   この博物館の広大さでは、お前さんが今日中にすべてを見て回ることは不可能だと言っておくぞ」

当麻「うへえ、そんなに広いのかよ。あれ、他の奴らはどこいった?」

建宮「先に拠点の方へと戻らせておいた。心配せずともマッチョな兄さんも一緒に連れて行ったし、
   ちゃんと香焼に日傘を差させておいたから安心しておけよな」

当麻「そうか。向こうで一悶着が起こらないといいけど……。とりあえず、係りの人にチャールズさんの場所を尋ねてみようぜ。
   こうも広いと、自力で探し出すのは難しいだろうし」


当麻「そういえば建宮」

建宮「どうした?」

当麻「『エイジャの赤石』は霊装ではないって言ってたよな。それ、結局どういう意味なんだ?」

建宮「あー、まだそこの説明を終わらせていなかったのか。五和め、至福の時間とはいえもったいぶって話しすぎよな」

当麻「何? 五和が何だって?」

建宮「何でもないよな。それに、霊装ではないという理由も、至極単純な理由は話だ」


建宮「『エイジャの赤石』という鉱石は、伝説や神話には全く登場しない鉱石だからだ」


当麻「伝説や神話に、登場しない? でもさっき文献にしか載っていないって……」

建宮「ケルト神話にも、ギリシア神話にも、北欧神話やローマ神話、ヘブライ神話にも。
   とにかく、どの伝説や神話においても『エイジャの赤石』という単語は何一つ存在していないのよな」

建宮「霊装というのは、伝説や神話で行われた奇蹟を『模倣』するために似たような記号を投影させた物のことをいう。
   槍にまつわる神話の魔術を使う場合も、その槍自身は競技用の投げ槍でも代用できるということよな。そこに、神話上で描かれた奇蹟を乗せるのだから」

建宮「しかし、『エイジャの赤石』にはそれがない。
   何を模倣したわけでもなく、何を記号に組み込まれたわけでもなく、ただそこに“存在している”だけ。伝説も、神話も、何も生み出していない」


当麻「じゃあ、『エイジャの赤石』には魔術的な仕組みは一切施されていないってことなのか?
   なのに、魔力を生み出す性質を既に兼ね備えているってことになる」

建宮「正確には、それが本当に魔力なのかは分からないのよな。何せ、今まで『エイジャの赤石』は存在しないとされていた鉱石だし、
   そのため実際に誰かが試したという結果も残されていないわけだ」

当麻「そんなものがこうやってホイッと現れた、ということか……。土御門の奴、何が危険じゃない代物だ。
   十分通り越して百分な危険物品を押しつけやがって!」

建宮「そんな危険物品を持った上条当麻がイギリスに来日した、とその土御門元春から聞いたのだ。我らも背筋が凍ったよ。
   放っておいたら、間違いなく何かに巻き込まれるというのを悟るのに一瞬もかからなかったさ」

当麻「だから護衛についてくれたわけなのか。でも、そのおかげなのかこうして俺もコレも無事に大英博物館へ到着できたんだ。ありがとよ、建宮」

建宮「礼を言うのならば俺ではなく、天草十字凄教として言ってもらおうか。俺一人がしたことなど、たかが知れているよな」

当麻「でも、それを率いて現れたのがお前だろ? だったら、まずは建宮から礼を言うってのも筋が通っていていいじゃないか」

建宮「まだ早い、と言いたいのだ。『エイジャの赤石』を無事に送り届けるところまでを見届けたあとで、その礼は受け取ろう」


建宮「……気になることもあるしな」

~★~

当麻「役員さんに尋ねてみたら、チャールズさんは一階の南北アメリカフロアにいるって聞いたので来てみたけど……」


ガヤガヤ ワイワイ ザワザワ


当麻「多種多様な肌の色が入り乱れて最早わけが分からない……」

当麻「誰がチャールズさんなんだ? あの人は違うし、あの人は明らかに観光客だし……。あーわかんねえ!
   土御門の奴、チャールズさんの特徴ぐらい教えやがれ!」

建宮「悩んでいるようだな、上条当麻」

当麻「悩んでいるも何も、こんな人ごみの中からチャールズさん一人を探し見つけるのは大変だろう。根気よく探していくしかないか」

建宮「俺としてはお前がどういう手法を取ろうが関係のないことではあるが、そんなめんどっちいことを選ぶのか?」

当麻「他に方法でもあるってのかよ」

建宮「どれ、ちょっと待つよな」ピタァー

当麻「……何してんだ?」

建宮「乱さないでほしい。ここにいる人間一人一人の動きを観察し、観光客かそうでないかを仕分けしているところよな」ジィー


建宮「ふむ……割かし早く片はつきそうよな」ギョロ

当麻「すげえな。天草式ってそんなこともできるのか?」

建宮「だから乱さないでくれよな。全員ができるというわけではないが、細部にも細心の注意を払って見破られないように術式を組んでいる我らからすれば、
   これほどのことなど造作もない」


建宮「――いたな。ここに二人、明らかに観光客ではない『慣れた』人間がいる。うち一人は女性のため、チャールズという名前とは矛盾が生じる。
   つまりもう片方が……」


当麻「チャールズさんってことか! サンキュー建宮、どこにいるんだ?」

建宮「あっちの古代遺跡の備品を展示しているところよな。ついてこい、上条当麻」


当麻「あのー……」


役員「待ってたよ。君が上条当麻くんだね?」


当麻「あ、はい! ということは、貴方が土御門の言っていた……」

役員「おっと、私としたことが名乗るのを忘れてしまっていた。紳士としてこれはいただけない恥ですな、失敬」

当麻「いえ、そこまで畏まられなくても大丈夫ですよ? 俺の方が年下ですし」

役員「君が私より重ねた齢は少ないとはいえ、それで君に対する礼儀をかけてもいいという事にはならないだろう?
   これは畏まっているのではなく、あくまで君と対等でありたいという私の勝手な考えだよ」

役員「おやおや、またもや話が脱線してしまう所でした。重ねて失礼」

チャールズ「既に耳にはさんでいるとは思うが、チャールズ=コンディーだ。呼び方はチャーリィーでもチャッキーでも何でも構わないよ。
      そして、ツンツン頭の日本人の君は上条当麻くんで間違いはないね?」

当麻「はい。俺が上条当麻です」

チャールズ「そうなると、後ろの彼は上条当麻くんではなく何者なのか。尋ねてもよろしいかね?」

建宮「俺のことかい? ただの付き人よな、格好は怪しいがそれ以外に変わったことはないから安心してくれよな」

当麻(恰好がおかしいってのは自覚あったんだな)


チャールズ「さて、では上条くん。こんなところで与太話もなんだ、ついてきたまえ」クルッ

当麻「あれ、でも俺は貴方に渡すものが……」

チャールズ「君は、今自分が懐に入れているそれがどういう代物なのかはっきりと理解はしていないのだろう?
      なに、ちょっとした無駄話を聞くと思ってくれればいいのさ」


当麻(おい建宮。この人、魔術師関係の人なのか?)

建宮(いや、この男は魔術とは全く無縁な存在の人間よな。要するに、本当にただの役員のおっさん)

当麻(マジで!? でも、大英博物館って押収された霊装とかが格納されてるって聞いたことあるけど)

建宮(だからこその一般人なのさ。大量の霊装を魔術師に管理でもさせてみろ。
   もしそいつが反旗を翻せば、今まで押収してきた霊装はそいつが行使してしまう可能性が事情に高いよな)

当麻(あっ……)

建宮(そんなことが起こらないように、あえて魔術には触れてすらいない一般の者に管理を任せている。
   霊装は単純に歴史品としても価値あるものが多いので、考古学に詳しい者に任せておけば尚安心よな)


チャールズ「どうしたのかね。君たちもついてきたまえ。せっかく日本からはるばる訪れてきてくれたのだ、紅茶の一つでも淹れてあげよう。
      茶菓子もあるぞ」

当麻「あ、はい! なんだか少し面食らったな、てっきり魔術関係の大物だと勘違いして身構えてたから」

建宮「ある意味大物ではあるがね、あの男は。ほれ、呼ばれているのだから歩かんか」

今回の更新はここまで。感想ありがとうございます、励みになる。
波紋も人体の生命力を活かしたような戦い方しますものね。もしかしたら両者はジャンル的には近いものなのかもしれませんね
主槍の材料にそんなの使われてたら色々とやばい。天草式はみんな個性が強くて埋まらないところが好きです

~★大英博物館 来客応接室★~

チャールズ「さあ、座るといい。館長がこだわりぬいて購入した椅子だ、座り心地は保証するよ。ああ、紅茶に砂糖は入れるかな?」

当麻「あ、お願いします」

建宮「俺の分はいらないぞ。俺はあくまで付き添いよな、そこまで丁重にもてなしてもらう必要もない」

チャールズ「そういうわけにもいかない。私が貴方を『客人』と認識した時点で、貴方は私にもてなされる必要がある。
      いや、もてなさせてほしいという私個人の勝手なワガママだけどね」

チャールズ「遠慮する必要もない。椅子はまだあるし、茶葉もストックはある。腰かけて待っていてくれたまえ」トポポ

当麻「……なんか、少し変な展開になってきたな」

建宮「うむ……。俺も予想外すぎて普通に椅子に座ってしまった」


チャールズ「それでは、上条くん。今、それは持っているかい?」

当麻「あ、はい。えーと……あったこれだ」カサリ

チャールズ「ほうほう、その中に『レッド』が入っているということなのか。
      そういえば、受け取るときは君の右手から受け取ってくれと言われたが、上条くん。心当たりはあるかい?」

当麻「右手?」


当麻(あ、そうか。このままだと保護結界が邪魔で、DIOが開けられなかったようにチャールズさんも開封できないのか。それで右手を……。
   ったく土御門の奴、人を魔術のニッパーみたいに扱いやがって)

当麻「それじゃあ、こっちで持ってっと」


バキィン!


当麻「これでいいんですね。はい」

チャールズ「ふむ、ありがとう上条くん。さ、紅茶を飲むといい」

チャールズ「ところで上条くん。君は、この包み紙の中に何が入っているのか、ということは差出人から説明はされたかい?」

当麻「詳しいことは何も……。ただその中にあるのが、存在しないと言われていた『エイジャの赤石』という鉱石だということだけは後々聞かされました。
   名前を聞いてもいまいちピンとはこなかったけど」

チャールズ「そうか。そこの君は?」

建宮「同じく、実物を見たことは一度もない。存在だけなら耳にはしていたが、まさか本当に実在するとは夢にも想像していなかったよな」

チャールズ「ふむ、そうか。いやなに、私も実物を見るのはこれが初めてだ。
      だから、この感動と衝撃を少しでも貴方たちと分かち合えたらと思ってね。お互い初見で何よりだ」

チャールズ「では、世紀の瞬間といこうかね?」ピリリ


ビリャリャリャ バン!


当麻「こ、これが……『エイジャの赤石』!?」


コロン


当麻「……ちっちゃっ!?」


建宮「いや、ホントちっさいな。俺はてっきり、ダイヤモンドみたいに整った形の紅石みたいなのを想像していたんだが……これは石というより、欠片よな」

当麻「『エイジャの赤石』じゃなくて『エイジャの欠片』だな。落としたら他の石ころと混じっちまいそうなくらいちっさいぞ。
   でも、赤石の名の通り色は赤いなあ」

チャールズ「何を言うのかね二人とも。この欠片こそが、実在しないとされていた『エイジャの赤石』そのものさ。
      確かに欠片ほどの大きさしかないが、そこにあるというだけでイギリスの全新聞社が同じ記事しか発行しなくなる」


チャールズ「もっとも、これが本物かどうかはこれから確かめるのだけれどね」スッ


当麻「どうしましたチャールズさん。いきなりマッチの箱なんか取り出したりして」

チャールズ「なに、本物確認を行うだけだよ。そこの日本の方、向こうにあるハンカチをとってきてくれるかい。
      ついでにテーブルの上に乗せてくれると助かる」

建宮「うむ、わかったが……もしやお前さん、あれをするつもりか?」

当麻「あれ?」

建宮「思い出してみろ。五和はお前に、『エイジャの赤石』はどういうものから何を生み出すものだと教わった?」

当麻「えーと……」


五和『例えば太陽の光にかざすと、それだけで『エイジャの赤石』内で何らかの反応が発生し、強力なエネルギーとして放出されるとされています。
   炎を近づけるだけでも、その熱のエネルギーを何十倍、何百倍と増幅させて変換することもできるのです』



当麻「……まさか」

チャールズ「上条くん。私は君に、速やかにそこから離れた方が良いと警告しておくよ。なにせ、未だ誰もその瞬間を見たものはいない。
      規模が分からないのだからね」

チャールズ「さあ、まずはマッチを点火だ」


シュッ ボボォ


チャールズ「そして! この火の付いたマッチをこの『エイジャの欠片』に近づける! すると……!」


コゴオオオオオオ シュゴオオオオオ


当麻「な、何だ! 欠片が薄く光だしたぞ! 近づけられたマッチの炎に反応するかのように、欠片の方も火のように光を放ち始めた!」

建宮「! 何か出るぞ! ちょいと離れておけ上条当麻!」


ビシュウウウウ!! ジュギュアッ


当麻「……レ、レーザービーム? 今、紅色の光線みたいなものが欠片から発射されて、机の上にあったハンカチの一部を焦がしたように見えたが……」

建宮「これが、『エイジャの赤石』……。なるほど、想像以上に面倒な代物よな」

チャールズ「でたか! 光線が! 壁画通りということは、やはりこの欠片は『エイジャの赤石』という事になる! これは忙しくなるぞ!!」


チャールズ「……コホン、先程は年甲斐にもなく取り乱してすまなかった。この歳になっても新たな発見ができるとは夢にも思っていなかったのだ」

当麻「い、いえ。それよりチャールズさん、聞きたいことが結構あるんですが……」

チャールズ「もちろん構わないよ。なんなら私が直々にこの大英博物館を案内しながら質問に応答してあげても大丈夫だが」

当麻「いえ、そこまでは……。聞きたいことというのは、その『エイジャの赤石』についてです」

チャールズ「そうだね、君も不思議に思っているだろう。この鉱石はいったい何で、どういう経緯で名前を知られることとなったのか」ガタッ

当麻「どうしたんですかチャールズさん。いきなり立ち上がって」

チャールズ「お見せしようというのだ。『エイジャの赤石』の名が歴史の表へと姿を見せた原因のところへ」



コツコツコツ


当麻「長い階段だなあ。地下に行くんですか?」

チャールズ「そうとも。とてもじゃないが、それを展示品としておくにはあまりにも不気味な予感を覚えてね。
      最大宗教様にご相談し、この博物館の地下で安置しておくことにしたのだよ」

チャールズ「ほら、見えてきたぞ。あれが、この世で唯一『エイジャの赤石』の存在を残したものだ」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


当麻「……これは、壁画?」

当麻「だが何だ。近づくだけで圧倒されるようなこの壁画はッ。普通の壁画にはない何かを、俺はこの壁画から感じ取っている!」

建宮「うむ、その直感は正しいものだ上条当麻。俺もコイツからは悪い気しか感じない」

当麻「チャールズさん! これは……」

チャールズ「上条君。君は『真実の口』というものを知っているかい?」

当麻「へっ? ま、まあそれくらいなら。嘘吐きがその口の中に手を入れると抜けなくなるっていう有名な彫刻ですよね。
   だけど、それよりも今はこの壁画の……」

チャールズ「『真実の口』と言うものは、もとはマンホールの蓋として使うために彫られたものだ」

当麻「……?」

チャールズ「ちょっと気味が悪い光景だが、古代ローマ帝国の道にはこんな顔をした彫刻が足元にいっぱいあったのだよ。
      当時のローマ人の彫刻家の間では、人の顔の彫刻が流行っていたからこんなデザインになったのだ」

チャールズ「特別なんの逸話もなく、ローマ帝国の崩壊と共にこれらの品も塵へと消えていくはずだった。
      しかし、何の因果か、一つだけくっきりと残された蓋が存在したのだよ」

チャールズ「それが、後に『真実の口』と呼ばれる彫刻の話だ。実際にその口が人の手をかみ切る事なんてない。
      だってマンホールの蓋だし、何より妄想が生んだ嘘設定だからね」


当麻「チャールズさん、いったい何を説明したいんですか?」

チャールズ「分からないかい? なぜ、『真実の口』と呼ばれる蓋のみが帝国崩壊後も形を残すことができたのか」


チャールズ「答えは簡単だ。それだけが特別製だったからだ」


チャールズ「なんでも、『真実の口』には何かしらの特別な細工が仕掛けられた後が残っていたみたいでね。
      ローマ帝国が魔術に精を出していたって噂もあるから、もしかしたら魔術だなんて線もあるかもしれない。フフ」

建宮「……、」

当麻「『真実の口』に特別な細工? それはどんな……」

チャールズ「残念ながら私は理解不能の領域だ。貴方はご存じで?」

建宮「……さあね。聞いたこともないよな」

チャールズ「さて、そんな細工をされていた『真実の口』だが、当然理由もなしにこんなことをするはずもない。
      なぜこれだけ特別なのか? はたしてこれは、本当にマンホールの蓋という役割を担っていたのか?」


チャールズ「答えはNO。あれはマンホールの蓋ではなく、もっと別の何かを塞いでいた蓋だったのだ」

当麻「別の、何か?」

チャールズ「――――あれが蓋をしていたものこそ、この壁画が存在していた場所だ」

今回の更新はここまででございます。感想励みになります
赤石に関しては。まだ多くは語れないのでご容赦を。ただ、魔術側はこれまで一度足りとも実物を見つけることはできませんでした、ということは分かっています。
それと、リアル側の都合が立て込んできたので少し更新は停止させていただきます。とはいっても二、三週間ほどでまた戻ってきますので。それではしばしお待ちください

当麻「『真実の口』が、蓋をしていた?」

チャールズ「そう。実は、真実の口にはある手順を行うことで裏に存在する隠し通路への道が開くのだ。
おっと、このことは他言無用で頼むよ、上条君。日本人の君も」

建宮「建宮だ。そう呼んでくれよな。日本人の君、なんて呼び名じゃ呼び辛いだろうしの」

当麻「あ、はい。分かりました。というかこんな話突拍子すぎて誰も信じないような……」

チャールズ「さて、この壁画を発見したのは今から二十年ほど前になる。
      『収集員』の一人が、偶然にも『真実の口』の隠された細工を解除し、隠し通路が開いたのだ」

チャールズ「内部を確認し次第、すぐさま我々の『収集員』が回収に向かった。私も一緒にね」


チャールズ「その空間に一歩足を踏み入れて、私は一瞬で理解したのだ。ここは、上の世界とは全く違う別の世界なのだ、と」

チャールズ「そこは陽の光が全く当たらない、暗闇に閉ざされた不気味な場所だったよ。
      まるで、意図的に日光を入れないような作りだった。機材の照明を運ぶのにも一苦労したものだ」

チャールズ「そして、いざ明かりを照らしてみるとどうだ。そこには何が広がっていたと思う?」

当麻「……壁画、じゃなくて?」


チャールズ「宝石だよ。ルビー、ダイヤ、エメラルド、タイガーアイ。数えるのも億劫なほどの、ライトを浴びて艶やかに輝く宝石の群れさ」


チャールズ「質屋にもっていけば当分は遊ぶのに困らないと断言できるほどのカラットの宝石が、惜しげもなく散りばめられた壁画がそこにあったのだ」

当麻「宝石!? まるでインディジョーンズみたいな展開になってきたぞ」

チャールズ「そうだ、その時誰しもが思うだろう。ここは宝の部屋、映画で言うゴール地点、ご褒美タイムだ、とね。
      私たちも一瞬、ほんの一瞬だけそう思ったかもしれない」

建宮「……何か、あったのか」

チャールズ「そう。その宝石箱をぶちまけたかのような壁画には――――大人ほどの大きさの窪みが三つ残されていた」

当麻「窪み……?」

チャールズ「一見すると、それは長い年月によって風化した壁が崩落してしまったのかと推測できる。だが、それにしてはその窪みはあまりに異様だった」


チャールズ「その窪みが、私たちには次第に見えてきてしまったのだ。ヒトの形に」


当麻「ヒトの形の窪み……。でも、そんなの気のせいでしょうよ。樹の幹の模様とかが人の顔に見えたりするようなものなんじゃ?
   ましてやそこは薄暗いんでしょ?」

チャールズ「そう、普通ならあり得ないの一言で切り捨てることができる。その形が人型に見えるということなんてね」

チャールズ「だけど、あの壁画に存在した窪みは全く違うのだよ、上条君
      あの窪みは、解き放ってはいけない何かが埋められていたかのような、そういうドス黒い邪気を放っていたのだ」

当麻「邪気?」

チャールズ「非科学的、と科学の国からきた君は否定するかもしれない。
      しかし、幽霊がいるとその場が寒気に包まれると言われるように、我々はあの窪みには異常な悪寒を感じてしまったのだ」

チャールズ「目を奪われるような宝石の数々の中央で、化け物ががっぽりと大口を開けたような窪み。ジグソーパズルでそこに三人分の大人をはめこめそうな窪み」

チャールズ「考えるよりも先に、私は口を動かしていた。『今すぐ最大宗教様にお繋ぎしろ』と」


チャールズ「少なくとも、あれは一般の我々が手出しをしてもいいものではなかった。
      その後、最大宗教様が御使いになられた使者の方々に、あの壁画を切り取ってお渡ししたのだ」

当麻「え、ちょっと待ってくださいよ。最大宗教様って人にその薄気味悪い壁画を渡したってんなら、ここにある壁画は何なんですか?」

チャールズ「後日、最大宗教様から壁画の一部を此処に保管させてほしいという御通達があってね。この壁画は、その時に贈られてきたものだ」

当麻「そ、それじゃあこの壁画は、その薄気味悪い壁画の一部ってことか……ッ。これだけでもデカいのに、それが一部って聞かされると全体が想像できないなあ」

建宮「その、窪みが残されていた方の壁画はどこに保管されているのか分かっているのか?」

チャールズ「それは私にも分からない。最大宗教様が『こちらで預かっておきましょう』と仰ったきりで、それ以降のことは……。
      それに、私はもう一度あの壁画の前に立てる勇気がない」

建宮「……、」


当麻(なあ建宮。やっぱりその壁画ってのも……)

建宮(まあ、魔術が絡んでいる確率は高いよな。一般人にも悪寒を与えるほどの濃密な魔術はそれほど多くはないが、
   それが隠された遺跡の壁画となると……。これだけでは詳細はつかめんよな)

当麻(……本当に、ただの魔術で済めばいいだけど)

建宮(どういう意味だ?)

当麻(なんとなく、そう思っただけさ。そう、なんとなく……)


当麻「ヒトの形の窪み……。でも、そんなの気のせいでしょうよ。樹の幹の模様とかが人の顔に見えたりするようなものなんじゃ?
   ましてやそこは薄暗いんでしょ?」

チャールズ「そう、普通ならあり得ないの一言で切り捨てることができる。その形が人型に見えるということなんてね」

チャールズ「だけど、あの壁画に存在した窪みは全く違うのだよ、上条君。
      あの窪みは、解き放ってはいけない何かが埋められていたかのような、そういうドス黒い邪気を放っていたのだ」

当麻「邪気?」

チャールズ「非科学的、と科学の国からきた君は否定するかもしれない。
      しかし、幽霊がいるとその場が寒気に包まれる言われるように、我々はあの窪みには異常な悪寒を感じてしまったのだ」

チャールズ「目を奪われるような宝石の数々の中央で、化け物ががっぽりと大口を開けたような窪み。ジグソーパズルでそこに三人分の大人をはめこめそうな窪み」

チャールズ「考えるよりも先に、私は口を動かしていた。『今すぐ最大宗教様にお繋ぎしろ』とね」


チャールズ「少なくとも、あれは一般の我々が手出しをしてもいいものではなかった。
      その後、最大宗教様が御使いになられた使者の方々に、あの壁画を切り取ってお渡ししたのだ」

当麻「え、ちょっと待ってくださいよ。最大宗教様って人にその薄気味悪い壁画を渡したってんなら、ここにある壁画は何なんですか?」

チャールズ「後日、最大宗教様から壁画の一部を此処に保管させてほしいという御通達があってね。この壁画は、その時に贈られてきたものだ」

当麻「そ、それじゃあこの壁画は、その薄気味悪い壁画の一部ってことか……ッ。これだけでもデカいのに、それが一部って聞かされると全体が想像できないなあ」

建宮「その、窪みが残されていた方の壁画はどこに保管されているのか分かっているのか?」

チャールズ「それは私にも分からない。最大宗教様が『こちらで預かっておきましょう』と仰ったきりで、それ以降のことは……。
      それに、私はもう一度あの壁画の前に立てる勇気がない」

建宮「……、」


当麻(なあ建宮。やっぱりその壁画ってのも……)

建宮(まあ、魔術が絡んでいる確率は高いよな。一般人にも悪寒を与えるほどの濃密な魔術はそれほど多くはないが、
   それが隠された遺跡の壁画となると……これだけでは詳細はつかめんよな)

当麻(……本当に、ただの魔術で済めばいいだけど)

建宮(どういう意味だ?)

当麻(なんとなく、そう思っただけさ。そう、なんとなく……)

お久しぶりです。早速ダブリやらかしながら一応投下させていただきました。
時間はまだ十分とれてはいないのですが、このままではスレが落ちそうな気もしたので投下。記念すべきDIO登場回でもありますからね
まだ定期的な更新はできそうにないですが、なるべく時間をみつけて書き溜めしていきますので、もう少々ご辛抱をば


チャールズ「……ウォッホン。いかんね、長話がすぎたかな。この壁画を保管することになったエピソードを話しておかないと、どうにもむずがゆくてね。本題に戻ろうか」

当麻「いえ、俺も意外な話とか聞けたので……。ってそうですよ! 肝心の、壁画の内容はどんなものなんですか? 『エイジャの赤石』は、どう記されているんですか?」

チャールズ「そうだね、これも順を追って説明していこう」


チャールズ「壁画に残された言語を解読していくと、その言語が何を語っていたのかがうすぼんやりと分かってきた。
どうやら、今からはるか昔にいた一人の男が、何らかの目的で自身の願いを文字に書き残しておいたもののようだった」

チャールズ「己の目的の確認のためなのか、後世にその野望を伝えるためなのか、他の仲間のために書き残しておいたのか。それはまだ分からない」

チャールズ「しかし重要なのは、その中身だ。壁画の損傷がひどいため、残念ながら全てを解読することはできなかった。
…が、数少ない解読できた文もいくつかある。この紙を見てくれ」ピラリ


『その他に類を見ない真紅の輝きを放つ結晶を、我等はエイジャの赤石と名づけた。自然界で稀有に発生するらしいそれは、まさに自然が生んだ奇跡の結晶ともいえる鉱石だった』

『その鉱石は、自然界に存在するあらゆるエネルギーを増幅させることができた』

『エイジャの赤石の比類なき力があれば、我等は神にもなれる。あの忌々しい太陽を取り込み、それを強大な力へと変換させるエイジャの赤石さえあれば、我等は神をも超克する』

『我等は求める、あの忌々しい輝きを』

『我等は求める、全てを凌駕する全能を』

『我等は求める、進化への鍵エイジャの赤石を』



チャールズ「……これが数少ない、翻訳することができた言語の内容だ。『エイジャの赤石』というワードは、ここで現代に産声をあげたといってもいい」

建宮「話だけでは聞いたことがある、という奴は少なくはないだろうよな。我等からすると、ある程度腕の立つ者となれば一度は耳にすることぐらいはあるだろう」

建宮「しかし、実際本物を見た者は今の今までただ一人もいなかった。賢者の石を作る方法ってのは贋作だけで五万とあるが、『エイジャの赤石』を作る方法はビタリと聞いたことなどない」

建宮「誰かが吐いた虚言、妄言の一種だろう。そう片付けられてきた存在だった」

建宮「その『エイジャの赤石』が、欠片としてだがこうして現れた。改めて、自分が運んできたものの正体が理解できたか? 上条当麻」

当麻「……ッ」ゴクリ

~★大英博物館 PM16:10★~

チャールズ「長く引き留めて悪かったね。アレを運んできてもらいに来ただけだというに、いつの間にか私のくだらない与太話にも付き合わせてしまった」

当麻「いえいえ。こちらこそチャールズさんの貴重な時間を割いてまでいい話を聞かせてもらいました」

チャールズ「これから君らはどうするのかな? 一応メインは観光、と伺っている。よければ、この大英博物館の見どころなども紹介して回ってあげたい。もちろん『表』の展示物に限るがね」

当麻「お気持ちは嬉しいんですが……ちょっと待たせてる人がいて。またの機会にお願いします。今度は友人と来るので」

チャールズ「そうかそうか。それでは、その時を楽しみに待っているとするよ」

建宮「失礼。二つほど尋ねたいことがあるのだが」

チャールズ「おや、どうしたのかね」

建宮「一つ。貴方は『エイジャの欠片』をこれからどう扱っていくおつもりで? 眉唾ものと語り広がった鉱石だ、気安く扱える代物ではないはずだが」

チャールズ「それに関しては安心してほしい。最大宗教様に取り合って、あの方と今後の算段をつけるつもりだ。口約束で申し訳ないが、厳重に扱うことは先に保証しよう」

建宮「なるほどよな。それではもう一つ」

建宮「貴方は、『エイジャの赤石』を運んでくるという上条当麻の情報の提供者について、どこまで知っている?」

当麻「建宮、どうしたんだよ。まさかチャールズさんに何か疑惑でも抱いているのか?」

建宮「後で説明する。氏よ、どうだろうか」

チャールズ「ふむ……。実はというと、私も詳細は全く知らない」

当麻「えっ!?」

チャールズ「とはいっても、それはさして珍しいことではないのだよ。ここに運び込まれてくる物品の中には『エイジャの欠片』のように表では見せられない物も少なくない。
      なかには匿名で送られてくる品もある」

チャールズ「重要なのは、その匿名者が最大宗教と繋がりがあるかどうかという証拠さえあればいいのだ。ここら辺は流石に教えてあげられないが、
      それさえ確認できれば匿名からの輸送品でも受け取ろう」

チャールズ「しかしまあ、言われてみれば今回の依頼者は風変りな物の届け方をしたものだ。一人は観光客の君たち日本人に、あんな遺産を運ばせるとは」

建宮「理解した。突然の質問にお答えいただき感謝する。ではいくぞ、上条当麻」グィ~ッ

当麻「どわっち! な、なんだよ建宮! いきなり襟元掴んで引っ張るなって! いでで~!」

チャールズ「イギリスの夜は冷える。腹を冷やしては観光に支障をきたすので気を付けてー」

~★~

当麻「おい建宮」

建宮「どうした上条当麻」

当麻「どうしたもこうしたも、さっきの態度は何だ? チャールズさんを疑うような質問ばかり投げかけて」

当麻「あの人が、『エイジャの欠片』を悪用する人に見えるか? 俺には見えない。それに、いくら迷信と言われてきた魔鉱石だとしても、魔術師でもないあの人に扱えるはずがないだろう」

建宮「その通り。『エイジャの欠片』はあらゆるエネルギーから強大な力を生み出し、増幅させることができる。
   しかし、魔術を知るものでなければあれの力のコントロールなどまず不可能よな」

当麻「そうだろ? だから余計な心配なんだってば」


建宮「上条当麻。お前はさっきから何を言っているんだ」

当麻「えっ?」

建宮「俺がいつ、チャールズ氏が怪しいと思ったから質問をしたといったのだ?」

当麻「……それじゃあ、あの質問には何の意図があるってんだよ」

建宮「ハァーッ。まだ理解してなかったのかこのトンチクリンが」

当麻「誰の頭がクリクリウニ頭だ!」

建宮「呪われた補聴器でも耳につけておるのかお前は。いいから黙って聞くよな」


建宮「まず一つ。お前さん、チャールズ氏がお前さんの情報を誰から聞いたか知っていたか否か。答えてみい」

当麻「そりゃ、否だ。俺こと『上条当麻』が『エイジャの赤石』を持ってくるということだけしか聞いていなかった。何かよく分からない暗号みたいなもので安全は確証されてたようだけど」

建宮「そうだ。では次だ。お前さん、『エイジャの赤石』……『エイジャの欠片』は誰から運んで来いと頼まれた?」

当麻「何って、建宮も知ってるだろ。土御門だよ土御門。旅行ついでに渡してきてほしいって渡されたんだ。あんだけおっかないものだと教えてくれずにな。アイツシメる」

建宮「奴への殺意はこらえて次にいこう。お前さんが運んできたもの『エイジャの欠片』は魔術側の代物か科学側の代物か、どっちだ?」

当麻「魔術なんだろ? 詳しいことは不明だけど、科学では解明できないような壁画に記された幻の鉱石なんだ。未知の力も持ち合わせているし」

建宮「これで最後だ。お前、その『エイジャの欠片』をどこから持ってきた?」

当麻「どこ? それはもちろん、俺がいた学園都市から……」


当麻「……学園都市、から?」

今回の更新はここまででございます。不定期で申し訳ない
乙や保守ありがとうございます。続きを待ってくれている方がいるだけでも励みになります。書き溜めがないのでじっくりやっていく予定ですが完結はさせますぜ

最大主教、じゃなかったっけ


当麻「あれ、おかしくないか? 『エイジャの欠片』は少なくともマジックアイテムに近い代物のはずだよな。何でそんな物が、学園都市内から出てきたんだ?」

建宮「そうだ。俺が気がかりなのはまさにそこなのよな上条当麻。土御門元春は現在学園都市内の人間だ。にも拘わらず、奴は『エイジャの欠片』を学園都市内でお前に渡し、ここへ運ばせた」

建宮「科学の叡智の総結集ともいえる都市に住む人間から、存在自体怪しまれてきた赤石の欠片が送られてくる。この事実、どう考えても普通だとは思えないのよな」

当麻「いや、待ってくれ。土御門には俺の知らないツテってのがいくつもある。もしかしたら、学園都市外部で発見したそれを学園都市内に輸入して、俺に渡したってことも……」

建宮「それは猶更不可解な行動になる。なぜ、わざわざ学園都市という魔術のマの字もない土地に身を置く己を経由する必要があるのだ?
最悪、検問に引っかかりでもしたら面倒なことになるのは明らかよな」

建宮「だったら、見つけた外部の者にそのまま大英博物館へ輸送すれば事足りることよな。
危険ともいえる学園都市にそれを持ち込み、あまつさえそれを上条当麻経由で大英博物館に渡す、だなんて二度手間、誰が得しようか?」

当麻「じゃ、じゃあ……」

建宮「ここまで潰せる仮説は潰したのだ。残る有力な仮説は一つ」


当麻「学園都市のどこかに、『エイジャの欠片』が保管されていた……」


建宮「あくまで仮説、だがな。だが、もしそうだとすればこれは大問題だ。科学側が魔術側のアイテムを不当に保持していた、ということになる。それもオーパーツ級のトンデモアイテムをよな」

建宮「土御門元春が何を意図してこれを送ってきたのか、真相は本人に吐かせる他分からない。だが、少々キナ臭くなってきたのは間違いないよな」

当麻「……、」

建宮「どうした、黙りこくって。まさか、ありえないとか心の中で反復しているわけではあるまいな?」

当麻「いや、その気持ちも持ちたいけど……それよりももっと恐ろしいことを考えていたんだ」

建宮「ほう」

当麻「仮に、学園都市が『エイジャの欠片』を保管していたとしたら……いったい、何の目的でそれを使うつもりだったんだろう」

当麻「学園都市の電気は魔力じゃ補えない。魔力だけじゃ自動ドアだって開かないし、時計の針だって動かない。エスカレーターだってただの階段に成り下がっちまう」

当麻「メリットが浮かばない。科学という念密に塗り重ねてきた莫大な方程式に、魔力なんて未知数の解なんてぶちこんだら、方程式がおじゃんどころの話じゃないのに……」

当麻「それに、土御門の奴もどんな考えの元にアレを俺に預けたのだろう。『エイジャの欠片』を、あいつはどこから手に入れてきたのだろう……」

建宮「……一つ忘れているな、上条当麻」

当麻「忘れて……?」

建宮「『エイジャの赤石』が生み出すのは、あくまで強大なエネルギーよな。それが魔力と確定したわけではない。
もしかすると科学側でも扱えるエネルギーかもしれないし、もしかするとどちらにも属さない新たな概念にだってなり得るものだ」

建宮「便宜上分類は魔術側とはなっているが……その真価を引き出したものがいない以上、あらゆる可能性を考慮しておいた方がいい」

建宮「まあ、だからといって科学側が所持してよい物というわけでもないのだが」

当麻「……、」

建宮「とにかく、この話はもう少し全貌が見えてこないとまとまりきれない。今はチャールズ氏たちに任せて、『エイジャの欠片』の詳細が分かるのを待つしかないよな」

当麻「……そうだな」

~★ロンドン 日本人街 PM16:45★~

建宮「おし、やっとついたぞ。ここが、我等天草式十字凄教の拠点の一つよな。ここに、お前さんの連れのでかいのを運んでおくように伝えておいた。五和たちもいるだろう」

当麻「日本人街っていうけどさ、やっぱりというか見た目はかなりイギリスチックな建物ばっかだよな。そこにデカデカと日本語で建物の名前とかかけてるから、ますます変な感じ」

建宮「逆に、ここら一帯が日本古来の武家屋敷とか並んでるの光景というのもどうかと思うぞ。そういうテーマパークにしか見えんよな」

当麻「それにしても建宮。拠点という割には、なんか普通だな。天草式からしたらこれが当たり前だってのは分かるんだけど」

建宮「お前にも分かっているとは思うが、一見変わり映えのないこの家には幾重にも陣を張り巡らせている。ところ構わず触ってくれるなよ?」

当麻「はいはい。それじゃお邪魔させてもらうよ。あ、そうだ荷物ホテルに置きっぱなしだよ。あとで取りに行かなきゃ」

建宮「ん、それは俺も失念していた。だが今は少し休んでいけ。こちらで何人か持ってこさせるよな」

当麻「お、サンキュー。ほんじゃ、遠慮なくくつろがせてもらうぜ。DIOが目覚めてるかも気になるし」

建宮「オイーッス、建宮さんが帰ったぞーー!!」ガチャリ


香焼「……、」

牛深「……、」

対馬「……、」

五和「……、」

DIO「……、」スッ


香焼「……ッ」ゴクリ

DIO「……、」ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


ズビシュッ!


DIO「……、」

香焼「……ッ!!」

DIO「……、」オ オ オ オ オ オ オ


DIO「クラブの8とダイヤの8。あがりだ」パサッ

香焼「クッソオオオオ!! マジで悔しィッス!!」バン!

対馬「あーあ、負けちったね香焼。つうわけで、今日の晩飯の買いだしはアンタに決定! どんまーい」

牛深「とびきりの肉買ってこいよ」

五和「あ、ついでにお皿も二枚買ってきてよ。この前牛深が割ったせいで足りないのよ」

牛深「うっ」

香焼「オイコラァ! ここぞとばかりに色々と雑用押し付けるんじゃねッスお前ら! くそ、なんで負けたんだァ? 抜き取る瞬間、シュバッとカードを入れ替えて見せたはずなのに……」

DIO「……フン」


建宮「……なんじゃこりゃ」

当麻「……いらぬ心配だったか、やっぱり」

今回の更新ここまででございます。ついにアニメでのDIOもエンジンがかかってきましたね、こっちはまずエンジン組み立てるところからですが。むしろ茨ですが
>>862
しまった、なぜか「う」を付け足してしまっていたようだ。ご指摘、感謝いたします


DIO「――で」

当麻「ハイ! な、何でしょうかDIOさん。いえ、DIO様」

DIO「例えばの話だがね、上条当麻」

DIO「友人と森へ訪れてみたら、得体のしれない獣にずっと後をつけられていた。ならば、とその獣を退治せんと攻勢に出てみれば、その獣はなんと友人ととても仲の良い素晴らしい獣だというではないか。
  と思わせた途端に、その獣は邪魔だと言わんばかりにこちらに突進し、気絶させて巣へと引きずり込こまれてしまった」

DIO「上条当麻。この話、君はどう思うかね」

当麻「えーっと、そのー……」

DIO「泣けるよなあ。友人がいち早くその獣のことを教えてくれていればよかったのに。その獣をもっと手なずけていれば暴走などしなかったのに。何も知らぬそいつだけが不幸を被るばかりだ」

当麻「そ、そうですね……。とてもひどい話ですね……」

DIO「それで、上条当麻。楽しかったかな、大英博物館は」

DIO「おっと、話さなくてくれても構わないよ。何せ答えは決まっているからだ、そう『楽しかった』とね。同じ日本人同士で語り合えたのだ、楽しくないはずがない」

DIO「そうだろう? 上条当麻くん」

当麻「うっす……うっす……」


建宮「……アイツ、あそこまで高圧的なキャラだったのか。言葉を交えたのは一瞬だから分からんかったが、また上条当麻も濃い奴を連れていることだ」

五和「……、」ズゴゴゴゴゴ

建宮「あー、五和。その内側から湧き上がる殺意をどうにか内側に引っ込めていてくれ。ただただ怖い」

五和「……はい」

対馬「ま、強く当たるのも無理もないけどね。説明もなしにのされて、拉致られるようにここへ連れてこられたんだから。おまけにその友人は博物館に行ってるし」

牛深「……うーん」

対馬「なんだ。どうしたのさ牛深。ウシガエルみたいな鳴き声あげて」

牛深「人の名前から勝手に連想するな。いや、あの男はのされて気絶してたっていうけど……。なんか、背負ってる時に不気味な気配を背中からずっと感じてたんだよなあ。
   背骨に氷を敷き詰められた気分っつうか」

対馬「はあ? 何言ってるのさ。だいたいあの男を気絶させたのはお前自身じゃないか。手ごたえもあったんだし。余計なこと考えすぎなんじゃないのかい?」

牛深「うーむ。そうだと思うんだがな」


牛深(あの男を背負っている間、なんというか、『覗かれている』ような気分をずっと味わっていた。確かに鳩尾に入った感覚はあったし、間違いなく気絶する一撃だと自負はしているが……)


DIO「……フフフ」

当麻「しかしDIO様。置いて行かれて腹正しい、という割には結構機嫌がよさそうに見えますが……」

DIO「ああ、機嫌が良い。これからお前にどんな罰を与えてやろうかと考えることがな」

当麻「こっちへの被害はむしろ倍増だった!?」

~★PM18:55★~

建宮「えー、それでは。客人二人の歓迎を祝して、乾杯!」


「「「乾杯!!」」」カラ~~ン


グツグツ グツ


対馬「ほら、そろそろ良い具合に煮立ってきたわ。冷える日には鍋ってのがお決まりなのよ。食べた食べた」

当麻「うっひょー美味そう! いただきます!」

DIO「鍋か。実際に見るのは初めてだ。これが西洋料理ならば、スープのだしを取っているのではと疑われても不思議ではないが。日本の食事情は本当に不思議なものだ」

香焼「兄ちゃん、外人なのに箸の使い方うまいッスね。でも、今のは発現聞く限りじゃあ日本通ってことはなさそうだけど……」

DIO「わけあって、あのガキの部屋で衣食住を共にしている。その時に覚えただけのことだ。ちょいと面倒な指の使い方で手間取ったがね」

香焼「へぇ~。あの兄ちゃん、そっちのケでもあんのかな」

DIO「……何の話だ?」

香焼「何でもねェ~ッスよ。ほら、兄ちゃんも食べな」


五和「……ッ」ドキドキ ドキドキ

建宮(いけ、五和! まずはあいさつ代わりのおしぼり渡しだ! このジャブが後に活きてくる! はずだッ!)

五和(は、はい!)


五和「か、キャミ上さん!!」

当麻「……ん? 俺か?」

五和「%$#★&□@*○~~~~!!!」ドピュー

当麻「……何だァ?」


五和「ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ……」

建宮「どうした五和! なぜ戻ってきた! 敵前逃亡とは、それでも天草の人間か!」

五和「だ、だって……盛大に名前噛んじゃって……恥ずかしすぎて……」

建宮「ぬぅ……ならば、五和! これを飲むのよな!」グイッ

五和「何ですかこれ。……って、お酒?」

建宮「いつもの奥手な五和ちゃんスタイルだから、こうして後手後手に回ってしまうのよな! そんなんでは厳しいヒロイン界隈を生き抜くことは不可能なり」

建宮「なので、酒の力に任せてスタイルチェンジ! 受け五和から攻め五和に変身して一気に距離を縮めるのがだーーッ!!」

香焼「受け五和と攻め五和ってなんかエロい響きッスね」

建宮「同感だッ!」

五和「……わかりました。私、変わります!」


DIO「……」モグ

五和「上条さ~ん! 私のアタックをくらえ~!!」

当麻「えっ、ちょ、いきなりなにブベシッ!?」

建宮「五和が暴れたーー!! 止めろーー!!」

香焼「五和! 積極的なアタックってそういう意味じゃないと思ウゲェ!!」ボガッ

五和「あははははははは! 今の私はもう奥手じゃないんです! ヒック、あははははは!」

建宮「こ、こんな形になるとは……。牛深、頼む!」

対馬「牛深だったらさっき初撃でノックダウンしてたよ。ほら、あそこに転がってる肉達磨がいるだろ?」

建宮「マジかよ!?」

五和「上条さ~ん!」ズダダダダダ

建宮「つ、対馬。行くのよな!」

対馬「却下! 騒動の原因はそっちなんだからそっちが止めなさい」

建宮「うっ……。うおおおおお!!」


ガッシャアアアアン!!


DIO「……、」モグ

建宮「うげえええッ!!」ガチャアアアアン!!

DIO「!!」

建宮「あっつ!? 熱ちちちちちち!! 鍋の煮汁かこれ!? あちィ!」

建宮「ハァ、ハァ、ハァ……。な…なんだあのパワーは…! 五和の奴、ちょっと強めの酒を飲むだけであそこまで怪力を発揮するとは……恐ろしい子!」

DIO「……、」

建宮「あ、金髪の! そのガタイを見込んで頼みがあるよな! あの暴走娘をどうにか沈めてほしい――」

グワシィ

建宮「ふぇ」

DIO「……、」ミシミシ

建宮「ひょ、ひょっときんひゃつの。なじぇ俺の顔をわしづきゃみにしゅるん……」

DIO「――――フンッ!!」ブォォォン!!


当麻「ス、ストップ! とまれ! 一時停止! なぜ執拗に俺を狙うんだよ!? なんか君にしたっけか!?」

五和「上条さ~ん、ヒック。私の気持ちを受け取ってくださ~い」ユラァ

当麻「うひっ!? ――――ん?」ゴオオオオオオ


ドグシャア!!


建宮「――――」

五和「うごッ!」


ズガラゴシャアアアン!!


香焼「……建宮が、人間魚雷みたいに飛んできた……?」

当麻「ポカーン……」

ゴ     ゴ
 ゴ ゴ ゴ     ゴ
DIO「……、」ゴ 
  ゴ  ゴゴ  ゴ
ゴゴ  ゴ  ゴ

DIO「――――他に、マナーも守れん愚か者はいるか」

~★PM20:30★~

DIO「……、」ペラ

当麻「そう気を損ねなくてもいいじゃねえかよ。DIO。そりゃまあ、飯時はお静かにってのは母ちゃんから教わるマナーその1みたいなもんだけどさ」

DIO「はっきり言おう。私は、部屋の隅にたまったホコリのような、品格も知らぬ馬鹿者共が嫌いだ」

当麻「そうまでハッキリ言わなくても……」

DIO「外へ出る。ついてくるなよな」バンッ

当麻「あ、おい!」

当麻「……窓から外に出ていくのは品格があるのかよ、DIOさん」


~★天草拠点 屋根の上★~


DIO「…………、」┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣

DIO「フン」

DIO「夜のロンドン街。見慣れた景色に思えるのだが、どこか違和感を覚えるこの夜景。昼の時と何ら変わりない。体に馴染むほど着込んだ柔道着が、ある日突然ブカブカになってしまった気分だ」

DIO「やはりオレの故郷はココなのか? しかしこの既視感と違和感が交互に混ざり合う感覚はいったい……」

DIO「――――ムッ」ジロリ


大男「――」カッ カッ カッ


DIO「あの神父……。このような闇が支配する時間にも関わらず、神父が路地裏を歩いてどこへ行くつもりだろうか。
   懺悔を聞き届けに行くようにも見えないが、迷いなく目指すべき場所のある歩き方だが」スッ


バリバリバリバリ


DIO「空気中の砂ほこりを集めて、簡易的にこの街の地図を作った。どうやら、これも我が能力の一端らしい」シュルルル

DIO「さっきはこす狡いマネをしようとした奴に一泡吹かせるため、オレ以外には誰にも見えないこの茨で瞬時に手札を変えさせてもらった。見た目の貧相さはともかく、存外応用の効く力だ」

DIO「さて、方角は……ロンドンの中心部からは離れていっているな。その先、向こうの方には目立った建造物などない」

DIO「地図では確か、あの向こうにはそれなりの草原やらが茂っている場所」

DIO「そこへ夜に動く神父一人。それも一切の迷いもなしに」

DIO「フム」

DIO「……、」シュン

今回の更新はここまででございます。
ジョジョのモブはやられ役でも引き立て役でも濃いのしかいませんよね。少年Aほどのモブもいるわけですし
プロの作家というのは本当に書くペースが速い。私も少しは見習わないと。どこかの誰かは一日二万文字書くなんてこともしてますし



ドシュルルルル


DIO「見た目の割に、オレ一人を吊り下げるほどの強靭さはあるようだ。都会のビル街上空でターザンのように動けるとは思わなかったぞ」ダン

DIO「これに、スプリンター並の瞬発力とキックボクサー並の破壊力を誇る脚力を合わせれば、この茨が届く範囲までなら立体的な動きをとることもできよう」ドシュルルル

DIO「コイツの射程はせいぜい10mといったところだが、その範囲内ならいくらでも伸ばせるようだ。出し入れ可能なロープとしても利便性はある。しかし、なぜ茨なのだろうか」シルシルシル

DIO「……それよりも、先程の大柄の神父はどこにいった。最後に見たのはこの路地裏に入っていく姿だったが」ダン

DIO「路地裏……ますます臭うな。近くに高い建造物がないから、今までやってきた移動方法は使えんか。ならば足で追うしかない」タッ

DIO「これでただの麻薬取引とかいうつまらぬものだったら、興ざめの腹いせに奴らにそれをタップリ吸わせてやるのも面白いなあ。フフフ」



猫「ブギャアッ!!」ダダッ

DIO「……猫が、子犬を加えて走って行った」

DIO「犬は嫌いだ。奴らの主に対するへーこらした態度を見るとき、あんなみみっちくて反吐が出るような人生は送りたくないと思うものだ。奴らには誇りという概念は存在しないのか?」

DIO「人間と言うものは、誇りを失ったものから全てを失っていく。選挙で大敗を味わった政治家は、そこで誇りを失い二度と上に立つ資格を得ることはない。そこで『負けの味』を覚えてしまうからだ」

DIO「『負けの味』と『勝ちの味』。この二つのどっちかを人間は常に味わって生きていく。そして『負けの味』というのは苦いようで、実はとんでもなく甘く堕落性に満ちている」

DIO「一度『負けの味』を知ってしまったものは、物事に対して諦めを覚えてしまう。『前回だって負けたこともあるから今回は負けてもいい』、そうした考えを持つようになってしまうためだ」

DIO「その諦めは精神的な安定剤となるが、その安定剤に頼りきりになった瞬間そいつの心には『負け犬』の烙印が押される」

DIO「それを乗り越え、常に『勝ちの味』を求め続ける者だけが残るのだ。ちょっぴりでも『負けの味』に恋い焦がれた時点で、そいつは犬だ。下僕と変わりない」


カサッ


DIO「――ムッ」パシ

DIO「風に流されて飛んできた紙を反射的にとってしまったが……これは、五芒星のマーク?」

DIO「子供の落書きかなにかか……。これに気をかけている暇はない」ポイ


ピタッ


DIO「……何か背中についたか? いや、そんなことよりだ。あの神父を探さねば」コツコツ


大男「……、」コツ コツ コツ

DIO「見つけたぞ。あいつに間違いない」

DIO「奴の向かう進路は……やはりロンドンから離れて行っている。このまま歩いてロンドンを出るつもりか?」バリバリバリ

DIO「深夜の時間は交通機関も止まっていることは多いが、それでも探そうと思えばタクシーなり何なりと足はある。そもそもこのような闇夜に出向くこと自体不思議なのだが」

DIO「あの神父。いったい何を目指して歩いているのだろうか」


~★ロンドン外れの街★~

大男「……、」コツ コツ コツ

DIO「……、」コッコッコッ

DIO「とうとうロンドンを離れたぞ。奴の足並みは止まることなく、規則正しい靴音を響かせてまっすぐにどこかへと向かっていっている」


大男「……、」ピタリ

DIO「ム、奴の動きが止まった。どうしたことだ?」

大男「……、」シュボッ

DIO「……煙草に火をつけている。神父が喫煙とはなんとも面白い話ではあるが、今目をつけるべきところはそこではない」

DIO「奴は自分の煙草に火をつけ、壁にもたれかかってその場でけむりを吹いている。休憩にしては悠長なその様子から、奴がこれ以上歩みを進めるようには思えない」

DIO「つまり、あそこは待ち合わせの場所! 奴は何者かが姿を現すところを待っている!」

DIO「まさか、本当にただのブローカーというオチか。しかし、それにしては随分と人気のない所まで来たものだ。麻薬をさばくことぐらい、奴らにとっては街中でも容易いものだが」


カツ カツ カツ


DIO「――! 足音!」

DIO「先の神父は動いていない。変わらず煙草をふかしている。それにこの足音は、大柄な神父の者よりも軽く、歩幅も小さい。つまり別の人間の足音!」

DIO「あの神父の、取引相手か? どれ、せっかくだ。顔ぐらい拝んでやろう」


カツ カツ カツ


金髪女「……、」ボザボザ

DIO「……これまた珍妙な格好だ。いや、ああいう場合はずぼらと言い換えた方が適切か? ライオンのように跳ねまくった金髪の褐色の女。おまけに、服装も白と黒の擦り切れた服と浮いている」

DIO「クスリの手の出しすぎで精神崩壊……したにしては、焦点の定まった威圧のある眼光だ。血肉を求めるゾンビのようにクスリに飢えている様子もない」

DIO「……ならば、奴ら二人の関係は何だ?」


大男「―――――」

金髪女「――――」

DIO「奴ら、何か話しを始めた。耳を澄ませば聞こえるか?」イィーン


大男『――――まり、未だあのしみったれた堀だし物の正体は掴めないと』

金髪女『――いうことになるわ。第一、てめえ一推しの禁書目録にさえ記されていない、未知の道具なんて存在自体意味わかんねえよ』


DIO「――――禁書目録(インデックス)?」


DIO「禁書目録…いんでっくす……」


当麻『それでさ、そのインデックスって奴が本当に自由奔放唯我独尊シスターなんだよ。
   気が付けば食い物に釣られてフィッシングされるし、猫を追いかけたと思ったら強面兄ちゃん引き連れて戻ってきたり』


DIO「……当麻がよく話題にあげていた人物か! 確か、オレが奴の家に居つくのと入れ違いでイギリスへ飛び立ったと聞いていたが……なぜあの二人からその名前が」


『――――いうか私は絵画とかに隠された暗号を解読するのが本職だっての。オーパーツを分析したことなんてないわ』

『――――に関したものである可能性も捨てきれない。あの子も魔導書をフル回転させている。僕らだって黙ってみていられないだろう』


DIO「奴らも何か相談し合っている……内容は掴めないが、表情やとぎれとぎれの言葉からすると、困っているという事に間違いはない」

DIO「足のばれないところで引き返すつもりであったが、インデックスという名を聞いて気が変わった。
   このままあの二人を尾けていけば、そのインデックスとかいう者に会えるかもしれない」

DIO「別に会ったところで奴をどうかしようとなどとは思わん。重要なのはインデックスではなく、そのインデックスが握る上条当麻の情報!」

DIO「奴はバカで直感的に動き、人をだましたりはしない典型的な『正義の味方』タイプ。
   しかし、だましたりはしないが、話さないということはあるはずだ。このDIOに隠している事が間違いなくある」

DIO「現にまたひとつ、奴はオレにあることを隠していた。そこは追々追及していくとして……そのほかに、上条当麻がオレに話していないことは必ずある」

DIO「ならばどうするか。答えは、奴の居候から聞き出せばいい話よ! 私より上条当麻歴が長いインデックスとやらにな!」

DIO「フフフフ、いいぞ。運命の歯車は徐々にこのDIOのために回りつつある。オレを取り囲むすべての謎を解き明かし、とっととこのくそったれな違和感にケリをつけてやる」

DIO「ここからではよく聴こえん。どれ、もう少し近づいて会話の内容を聞いておくとするか」ジリジリ


ジジジジジ…


DIO「……なんだ、焦げ臭いぞ。どこかでぼやでも起きているのか?」


ジジゾゾゾゾゾゾ


DIO「どうも背中が熱いな。もしや火元はオレの近くか。騒ぎが起きて奴らに気づかれたくない。ぼや程度だが消しておかねば……」


ゴオアッ!!


DIO「GYAAAAAAAAAA!! 熱い!! これは、オレの腕に火がついている!?」

DIO「ぐおお!! 背中が、背中の皮膚が焼き焦げていくのが伝わってくる!! この早すぎる飛び火、火力、普通ではない!」

DIO「ぼやでもなんでもない。燃えているのは――――オレの背中だ!!」


ボボボボボボボボボ


DIO「うぐおおおお!! 熱い! なぜオレの背中から火がァーーーッ!?」

DIO「バカな! 人間が独りでに発火することなぞあり得ないはず! なのになぜオレの背中を炎が覆っているのだ!」ゴゴゴオオオオオオ

DIO「――――ハッ! まさか……」


ピタッ

DIO『……何か背中についたか?』


DIO「まさかあの時の……!? あの時背中についた何かが発火剤だったというのか!?」

DIO「しかし、なぜそれが燃焼することができる! 今の今まで沈黙を保っていたというのに、スイッチが入った電球のように一気に燃え上がった!」

DIO「そんなことが可能だというのか……。いや、もしやこれこそが……!?」


ゴオアアア


DIO「まずい! 不自然なほどに炎の勢いが強すぎる! 全身が、焼かれる!!」ゴオオオオオオ

DIO「UUUUOOOOOOOO!!」ジュー ジュー ジュー



大男「……、」スゥー

金髪女「向こうが騒がしいね。てめえの仕業か?」

大男「足癖の悪い夜遊び人がいたみたいでね。何が目的は知らないけど、夜遊び人にふさわしい遊びをあげたまでだ。夜に火遊びはなんとやら」ハァー

金髪女「ふん。大方、尾行者にお得意の紙媒体ルーンを張りつけて、一定距離まで近づいたら自動的に発火するように仕組んでおいたのでしょう?
    術者ににて陰険なやり口だな、ステイルよお」


ステイル「陰険結構、炎を扱うものが皆熱血なんてのはコミックだけの世界だ。僕はそういうキャラじゃない」

ステイル「そういう君も、僕の探知魔術が発動しなかったらゴーレムにやらせるつもりだっただろうに。どうなんだいシェリー、僕だけそういう扱いというのは。うん?」

シェリー「……はん」

今回の更新はここまで。アニメ、お疲れ様でした。こちらはまだまだ中盤の佳境前と言ったところ。ゆるいペースでやっていきます
禁書神父の中でも有名なタバコ野郎が正体でございます。ついでに褐色ゴスロリもセットで。この二人の関係があんまり読めないので四苦八苦しておりました。

~★~

ステイル「ところで彼女は? 君と一緒に行動していたはずだが」

シェリー「そのはずなのよねえ。気が付きゃひょろっと消えやがって、自由気ままな猫じゃねえんだぞあいつ。自分がどんだけな存在なのかほんとにわかってやがんのか?」

ステイル「……、」ズオオオ

シェリー「あら、貴方の前では彼女を貶すのはご法度なのね。『ゾッコン』だなほんと」

ステイル「焼き具合を聞こうか。レア、ミディアム、ウェルダン。お好みを選べ」

シェリー「はいはい、私が悪うございました。んなことより、向こうのウェルダンはどうすんだ」

ステイル「そうだね。別にあれくらいなら騒ぎになっても問題はないけど、一応片付けておこうかな。さっきの術式だと、骨まで灰にできているか疑問であるしね、うん」



ボボボボボボボ


シェリー「あらら、燃えてる燃えてる。ここらでキャンプファイアーでもやるか?」

ステイル「冗談、誰が君となんかと」


ジュオー ジュオオ


ステイル「ふむ。一瞬で骨まで灰に、とまではいかないものの、数十秒で炭にまで散らせるぐらいの火力はあるか。文字列と陣の配置を見直しておこう」

シェリー「これじゃ、尾行者がどんな奴かまるで分からないけれどね。黒々としすぎて何が燃えてるんだか区別できねえ。炭を作る魔術かな?」

ステイル「ひとまず、塵も残さずにこれを焼却してしまおう。ここは人通りの少ない通り道だが、こんな夜に爛々と火が焚かれていては否応なしに目立ってしまうからね」シュボッ


メラメラメラ… チリチリ


ステイル「さよならだ、名も姿も知らぬハイエナくん。あの世で冷水にでも浸かってるといい」ゴオオ

ステイル「――――ッグ!?」

シェリー「どうしたのよ、珍妙な声出して。立ちくらみでもおきたか?」

ステイル「ッ……! ググ……」

シェリー「……おい、どうしたステイル。なんで言葉の一つもあげやがらねえんだ」



「――――まさか、こんなにも早くお目にかかれるとはな」


シェリー「……何者かしら。おどおど隠れてねえで姿見せやがれ」

「おどおど? なぜ私が貴様らごときにびくついてなければいけないのだ? つまらぬ冗談はよせよな、女」

シェリー「その声の位置……上かっ!」


DIO「――――フン」ド ォ ー ン


ステイル「この……ぐっ!」

シェリー「……、」チラ


ボボボボボボ ジュー


DIO「前触れもなく火が全身を駆け回ったときは肝を冷やしたぞ。体は燃やされていたのだが」

DIO「だが惜しい。あと一歩火力が強ければ、私はこうやってその男をひっ捕らえることができなくなっていたのにな。せっかくの服は燃えてしまったがね」

シェリー「体を焼かれる寸前、火がまわった上着だけを脱ぎ捨てたというわけね。中途半端に火力があるからまるっきり分からなかったぞステイル。てめえのせいだ」

ステイル「ぐ、ぐ……」

DIO「その男は声を出したくても出せないだろう。私が彼の首を窒息寸前にまで締め上げているからな。なるほど、あの炎はその煙草神父の仕業だったか」グイイ

ステイル「こ、こ…の…」

シェリー(締め上げている? どういう意味だ、何も見えねえぞ。だが、奴の右手が縄を手繰り寄せるような動作をするたびに、このバカは首を絞められた鶏みてえな声をあげやがる)

シェリー(夜にまぎれる漆黒のロープを使っている、ってわけじゃなさそうね。だとすると、この男は……)


シェリー「貴方……魔術師かしら」

DIO「魔術師……それはつまり、魔術という概念を行使する者たちの通称という認識で合っているのかね?」

シェリー「うだうだ言ってんじゃねえぞ。質問してんのはこっちだ、さっさと答えやがれクソゴリラが」

DIO「……品性のある言葉遣いの女かとおもえば、そこらの不良レベルの下品な言葉で罵ってくるとは。イギリス女性の格も落ちぶれたものだ」

DIO「とはいえ、レディの質問には答えなければな」シュッ タン


DIO「このDIO、魔術という言葉にはとんと知識がない。しかし、魔術という概念が存在することは知っていた」

DIO「それもこれも上条当麻のおかげだ。そのためには、まず禁書目録という奴を見つける必要がある」

ステイル「か、かみ……っ!?」

シェリー「上条、当麻だって?」

シェリー「上条……だと?」

DIO「あの天草十字凄教だとかも馬鹿な奴らだった。ちょいと気絶したフリをしてしまえば、ああも容易く秘匿事項をペラペラと口を開くとはなあ~」

~★~

建宮『――――『エイジャの赤石』。それが、その包み紙に収まっている物の真の名前だ』

当麻『『エイジャの赤石』? この中にあったのは鉱石だったのか。
   確かに掌サイズの鉱石ってのはそれほど珍しいものではないし、土御門の奴も割れ物注意とか言っていたが』

DIO「……、」


DIO(上条当麻を気絶させずにオレだけをのしたと思えば、魔術だと? コイツライカれた宗教団体だったか? 当麻の奴もこんな奴らによく付き合ってやれるものだ)


当麻『それで、この『エイジャの赤石』ってのはどんな物なんだ? というか、もしかしてこれって『使徒十字』みたいな霊装なのか?』

建宮『いや、『エイジャの赤石』は霊装などではないのよな。それが、こいつの最大の特徴でもある』


DIO(いや、違うな。コイツもバカだっただけか。大真面目に素っ頓狂なことばかり並べている。オレを笑わせて気絶のフリを暴くつもりか?)

DIO(……待てよ。そういえば、あの土御門と最初に出会った時、奴も何か尋ねてきていた。『魔術を信じるか』、と)

DIO(学園都市で四六時中科学に身を置くコイツらが、なぜ魔術とかいう科学の反対語みたいな概念をさもあるように語ることができるのだ?
   普通の学園都市の人間ならば、魔術と聞いただけで鼻で笑う程度の認識だというのに。そう、今のオレのように)

DIO(……あるというのか? この世界に、魔術というジャンルが。科学では解決、証明することのできない存在が)


当麻『霊装じゃないのか? じゃあ、これは魔術とどう関係あるってんだよ』


DIO(……今は情報だ。とにかくコイツラの話を一文字も聞き漏らさずに頭に叩き込む。情報が圧倒的に不足している。まずはコイツラだけで補わなければ……)

~★~

DIO「あの時、奴らと出会わなければ。私はこうして君達の前に姿を現さなかっただろう。炎に焼かれた上着を囮に君達から距離をとっていたに違いない」

DIO「しかし聞いてしまったのだ。確かに! 貴様が魔術という言葉を口に出したのを私は聞き逃さなかった!」

シェリー「あー……言ったなそういや。炭の魔術がどうだとか」

シェリー「んで、貴方は何が目的なの? 魔術師でもねえのに野暮なことに首つっこむたあよっぽど死に急ぎてえらしいが」

DIO「君らの魔術をとくと拝見したい、というのが一番の望みだが、君らが魔術師界隈でどれほどの腕前の持ち主なのかが分からない以上参考になるとは言いづらい」

シェリー「そうかもね~。くそよわっちいかもね~」


DIO「禁書目録の居場所を吐いてもらおう。でなければこの男の首をHBの鉛筆のようにベキッのへし折る」ギギギ


ステイル「――――ッ」ギリギリ

シェリー「だってよ。どうするステイル、あのシスターの場所は吐いたら楽になるってよ」

DIO「二対一だから勝てる、という甘い考えはやめておいた方が良い。私は君たちの想像もつかない力をもっている。大人しく従えばいいのだ。さあ、言ってほしいな」

ステイル「――――いは灰に ……は塵に……」

DIO「ムッ?」


ステイル「――吸血殺しの紅十字!!」シュボバアア


DIO「ヌウ!? こ、これは……直撃はまずい!」バッ

ステイル「ふはっ! ハァー、ハァー……」

DIO「しまった! 避けることに意識を割いてしまって、幽念動の射程距離である10mよりも離れてしまった!」

シェリー「やっぱり効くわねえ。どんな応援よりも、あの子のことが話題になると力が湧いてくる正義の味方ってか? いや、やっぱり陰険だな」

ステイル「フゥー……。君には聞きたいことが盛りだくさんフルコースとあるが、その前にその身体に焼印を押し付けるようにじっくり叩き込んでやろう」


ステイル「あの子を狙うということは、己の命の危機だということをだッ!」ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


DIO「----KUAAAA」ニタァ

今回の更新はここまででございます。ペースは落ち気味ですが週に一回、二回は投稿したい方針
DIOが炎と相対するのは原作的には描写されてないのでけっこう想像気味になるかと思います。ディオの頃を活かせばどうにかなるかも?

DIO「……」チリチリ

DIO「掠めただけで金色の髪が黒ずんで炭になってしまった。どうやら、さっきのように燃えた部分を切り捨てて難を逃れるというのは難しそうだ」

ステイル「素早く捨てれば助かるかも。もっとも、上半身裸である君が、これ以上何かを脱ぎ捨てられるものがあるならね。皮膚でも脱ぐのかい?」

シェリー「ステイル、私は手を出さないわよ。今回の騒動はてめえが勝手に暴走して片をつけちまいましたってことにするからね」

ステイル「もとより不要。こんなゴロツキあがりのような男、遅れをとるはずがない」

DIO「……この炎が魔術の炎。発火能力なんかとはまるっきり違う工程で生み出された、異質な炎。その原理は未だつかめてはいないが……」


ステイル「おい。君、さっき上条当麻がどうとかぬかしていたな」

DIO「それがなんだ」

ステイル「お前は学園都市の人間か? 上条当麻とどういう関係だ?」

DIO「答えてどうする。貴様は大人しく、このDIOのために必要なことだけを喋れさえすればよいのだ!」ダッ


DIO(まずは射程距離10mよりも二歩下がった位置をキープする! 魔術師という未知なる領域に住まう者を侮って、一気に距離をつぶすのは賢い者のすることではない)

ステイル「――――」ブツブツ

DIO(奴の主な攻撃は炎を放つものとみた。その威力は人肉を容易く炭素に帰すほど無双、オレでも直撃は避けねばなるまい。
茨で防げるか怪しい所だが、焦って攻撃の択を失うのは不味い)

DIO(そして、攻撃に移るには、俺には理解できない単語を羅列したあの呪文を唱える必要があるようだ。さしずめ詠唱といったところか)

ステイル「――フッ!」


ボブシュウウウウ!!


DIO「ノロいノロい!」ザンバッ

ステイル「はっ!」ドン ドン ドン

DIO「眠ってしまいそうな攻撃だな! 数うちゃ当たるというには圧倒的に弾数が足りんぞ!」ザッ シュッ ブン

DIO(オレの動体視力をもってすれば、あの弾速なら見てからでも十分避けれる。詠唱にかかる時間は、この小技に対してはおよそ三秒)

DIO(十分な時間だ。三秒もあれば、楽に奴に接近してこの幽念動を絡ませることができる!そのまま口を塞いでしまえば勝ったも同じ!)

ステイル「――――集え炎よ! 我が敵を焼き払え!」ボボボボボ

DIO「くどい! 貴様の炎なんぞ、既に見切っているわァーーーッ!!」ダンッ


ステイル「――――ニヤッ」


カチッ


DIO「なッ!? 足元に、あの紙切れが――――ッ」


ゴッバァァァーン!!


ステイル「……ふう。さっきの詠唱は餌(フェイク)だ。本当に発動する術式は、今の設置した紙ルーンの魔術。君が僕の詠唱の隙を付け狙おうとしているなんてのは、最初からわかっていた」


チリチリ……


ステイル「そして、どうやら逃れたようだ。逃げ足の速さは褒めてあげてもいいね」


~★~

DIO「グ、グググ……」ハアハア

DIO「まさか、あの五芒星の紙が魔術の媒体だとは……。合図なしにオレを火だるまにしたのも、あの紙がどこかにくっついていたからだったにちがいない」

DIO「それを地雷のように地面に滑らせておき、オレが踏み込んだ瞬間を狙って発火した……厄介な。上と下からの同時攻撃とはよく考えている」

DIO「その上、奴はこっちの見えない茨を警戒しているのだろう。距離をとられてしまっている。これでは攻め手に欠ける」


ボボボボボ!!


DIO「上から!? チッ!」ダダッ

ステイル「そんな物陰に隠れた程度では、本にはさめておいたしおりのようにまるわかりだ。フン!」ボボボボボ

DIO「くっ。これが弾丸やボウガンといった実体のあるものだったら、どうにか軌道を変えていなしてみせることもできるが、相手はそれすらも許されない業火の弾丸」

DIO「触れば即アウト。接触することも許されず、回避という行動しかとることができない。択が狭まるのは非常にまずい。それだけ、相手にもこちらの動きが伝わってしまう」

DIO「何か、奴の予想行動パターンを上回る返しをしなければ、こちらに手は回ってこない。何か、予想外な一手を……」

ステイル「永遠に火の輪をくぐり続けるライオンの気分はどうだい? そろそろ休ませてあげようか」ボウウウ

DIO「……そうだな。そうさせてもらうとしよう!」


ガゴォオ!


DIO「UUUOOOOOOOMM!!」ベキベキョオ

ステイル「んなっ!? アスファルトをちゃぶ台返しのようにひっくり返して飛ばしてきた!? 肉体強化系か!」

ステイル「これに炎は……かわすしかない」タン

DIO「フン!」バギィ

ステイル「なっ! アスファルトの塊の中から、コイツが……!」

DIO「違うなあ。投げたアスファルトに追いつき、それをブチ破っただけだ。それによって砕けたアスファルトは至近距離で爆裂した花火のように、ランダムで貴様に襲い掛かる!」


ドガガガガガガ


ステイル「くっ! だがね、アスファルトとはいえ破片になったものぐらいなら、すぐに燃やし尽くせるぞ!」ゴオオオオオ

DIO「バカめ! その一瞬の気の取られが命取りよ!」シュバン!

DIO「貴様がアスファルトに気を取られた一瞬! その一瞬で、このDIOは射程距離10mまで接近することが可能! 貴様はもう我が手の内よッ! 幽念動!!」バシュルルルル


グワシィン!


ステイル「……ッ!」

DIO「とったァァァーーーッ! この勝負、このDIOの勝ちだ!」

ステイル「……フフ」


DIO「……、」ジロ

ステイル「フフ……ッ」

DIO「貴様は今、見えない何かで首を縛られて満足に口も動かすことができない状況だ。なのになぜそのような笑みをこぼす? 脳みそがクソでもできているのか?」

ステイル「ググ……気…を……」

DIO「……?」

ステイル「気を……とられていた……のは……どっちかな…?」

DIO「……!!」

DIO「こ、これは……ッ」


ビッシイイイイィィィィィ


DIO「足元に、大量の魔法札だと!? 壁にまでびっしりと、あの五芒星の札がこの場を覆い尽くしている!」

ステイル「炎の弾を撃ちだすとき……いっしょに『飛ばしていた』のさ……。炎の、影に隠れるように……」

ステイル「おかげで……場はつくれたよ……。念のために整えていて、よかった……」

DIO「コ、コイツ……。オレへの攻撃は全て、今この瞬間を狙うための布石だったというのか!?」

DIO「だとしたらこの場は、とんでもなくまずい!!」


DIO(だが、待て。これが全てさっきのような起爆札だとしたら、オレとこの神父が密接しているこの距離で起爆を行うのはかなりのリスクがある)

DIO(……ブラフか。なるほど、一瞬でもオレがビビってたじろいだ隙に、また別の一手を仕掛ける腹だったのだろう。だが、その当ては外れた。おしまいだよ)


ステイル「君ごときにこれを使うつもりはなかったが……もしもの時に、ルーンで陣を形成しておいた」

ステイル「これに殺されることに……誇りをもって、死んでいけ」

DIO「……おかしい。この男の首を絞めているはずなのに、なぜこいつはこうも喋り続けることができる?」

DIO「なぜ、その言葉がどんどん流暢になっていくッ!」

DIO(幽念動の拘束が甘いのか!? しかし、なぜ今更……ッ)


ステイル「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ」


ステイル「それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり」

DIO「ヌッ!」


ステイル「それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり」


ステイル「その名は炎、その役は剣 顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ」


DIO「こいつ! 殴り飛ばしてくれる!」ブオオオ


ステイル「――――魔女狩りの王(イノケンティウス)!!」

今回の更新はここまでです。そろそろスレも埋まりそうなので、ステイル戦が終わった後に新しいスレを立てようかと考えています。
DIOの自身の認識はあくまで「超人的な身体能力の持ち主」。=吸血鬼にはまだたどりついておりません。
やはり炎相手となるとDIO側は防戦一方になりがちに。世界もないのでそれが余計に顕著ですね。もう少し派手に立ち回れるように精進します

~★~

シェリー「……、」ピラ

ステイル「……何を読んでいるんだい」コツコツ

シェリー「遅かったわね。ただのゴロツキあがりにしちゃ随分と揉んできたみてえだが?」

ステイル「原理はわからんが、身体能力を強化しての戦法をとってきた。あの見えないロープのようなものといい、学園都市と何らかの関係があるかもしれない」

ステイル「まさか、あれまで出すことになるとは思わなかったよ。あれは本来、ちゃんとした準備あってこその魔術なのに」

シェリー「あれって……まさか、あの魔術? はっ、結構追い詰められてやんの。情けねえ。こんな調子で大丈夫かねえ、うちの神父は」

ステイル「うるさいぞ。それに、そろそろ片がつくころだ。不覚をとった分、最上級の焼き加減になっているだろうね」



DIO「ぐおおっ!」ガラガシャアアアン

DIO「ゼェ、ハァ、ゼェ、ゼェ……。どうする、どう切り抜ける」

DIO「なんとか物陰に隠れたはいいが、奴はすぐそこだ。そうウカウカはしていられん」

DIO「だが、どうやって奴を突破する? 今までのものとはまるで桁が違う。追跡を振り切って陰に飛び込むのが精いっぱいだ。どうすれば……」

DIO「奴の仕掛けた起爆札もあちこちに設置されているので、余計の行動範囲が狭められてしまう。あいつめ、いつの間にこれほどの仕掛けを……」


シュボボボボボボ


DIO「何ィ!? 壁が融けていくッ。この場にとどまるのは、危険だ!」ダンッ


ゴバアアアアアアアアアアアア


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』


DIO「こいつには壁や障害物はおかまいなしか! 通り道に存在する物すべてを燃やして、まっすぐにオレだけを追いかけてくる!! それも正確に!」

DIO「地獄の業火で象られた巨大なヒトガタなど、学園都市では再現不可能!
   魔術の神秘性は確かに認めざるを得ないが、同時にその危険性も学園都市のそれに匹敵している!」

DIO「オレの肉体は超再生能力を誇るが、そのスピードを上回る速さで全身を燃やし続けられたら流石に限界がくるだろう。
   よって、いつものように接近戦を挑むことはできないわけだ」

DIO「となれば、頼みの綱はこの幽念動。しかし、ただの念動力ならともかくなぜかコイツは茨のヴィジョン。どうにも触れされたくはない……」

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』ボオオオオオ

DIO「――――しめた! 向こうに消火栓があるぞッ」

DIO「あのデカブツをそこまで誘導すれば、いけるかもしれない」

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』ズゴゴゴゴゴゴ

DIO「やかましい奴だ。赤子が母親の乳を求める時でさえ、もう少し利口に泣くものだぞ」

DIO「消火栓まで、もう少し……ッ」


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』


DIO「――――着いたッ!! 鎮火しろ、このウスラマヌケがァァァーーーーーーッ!!」ケリ!


ガゴン ブシャシャアア!


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”ォォォォォォォ』ジジジジジ

DIO「バカが。目の前の獲物を追うだけの能なしめが。あの神父の切り札も、やはり炎だけあって水の前ではあっけないものだな。ククク」



『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』グオオオオオオオオオオオ

DIO「――――な、なんだとォォォ!? こいつ、まるで全然効いてな……ッ!?」

ガ ボ ボ ボ ボ ボ ボ ボ


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』ギョロギョロ


DIO「――――ッッハァァ!!」ゴロゴロゴロ

DIO「と、とっさに、消火栓から噴き出していた水の勢いを利用して高く飛び越えていなければ……あのズル剥けた壁のようになっていたのはオレだった」

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』ギロリ

DIO「まだ追ってくる! 足を止めていてはだめだ! 走りながら奴への対抗策を練るのだ!」


DIO「くっ! ここにもあの札がある! 踏むのはまずい!」

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』ゴガガガガガガ

DIO「足元ばかりに気を取られるとすぐにこれだッ。その巨体にはそぐわぬ機動力でオレに追いつき、燃え盛る炎の腕で抱きしめようとしてくる。
   熱い抱擁という奴だな、全く」

DIO「しかし、奴をどうにか追い返そうとしようにも……。フン!」ブオオン

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』ボジュウウウ

DIO「円盤投げのようにメタクソにブン投げたマンホールの蓋でさえ、奴は体にパイがくっつくよりも気にすることもせず進軍してくる。
   レンガも、アスファルトも、等しく焼き尽くされてしまう」

DIO「だが落ち着け。これだけの大技、何かしらつけ込めるポイントは必ず存在する」

DIO「あれだけの高質量かつ、自動でオレを追いこむほどの精密さを併せ持たされた魔術だ。
   魔術にはとんと疎いオレでさえ、それは高度で膨大な準備がかかると見て取れる」

DIO「あの男も『念のため下準備しておいた』と言っていた。つまり、その準備をどうにか打ち崩すことができれば……」

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』ブオオン

DIO「シッ! 相変わらず駄々っ子のように振り回しおって!」

DIO「どこまで追ってくるつもりだ、コイツは!」


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』

DIO「思い出せ。奴は、『もしもの時にルーンで陣を形成しておいた』と言っていた」

DIO「つまるところそれは、元々ここにはあの巨人を生み出せる何かが足りなかったという事。それを奴が後から付け加えていた」


グシャアアアアン!!


DIO「チィッ! 奴のせいで余計に思考が散る!」ササッ

DIO「何かが抜けている。奴はどうやってそのルーンとやらを形成していた? おいた、ということは、それはこのDIOと邂逅した後に形を整えたことになる」


ゴボボボッボボ


DIO「ヌウ! 幽念動!」ガゴッ!


バシャアアアアアア

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』ジジジジ


DIO「この消火栓の噴水で、少しでも時間をッ」ダダン

DIO「いつそれを行っていた? あのどこの言語ともしれぬ詠唱だけでは実現不可能ということは、奴の準備という言葉から推測できる」

DIO「そして、それを発現させるキーワードであろうルーン……おそらく魔方陣のこと。それをこのDIOに気づかれず、どうやって描いたのだ」

DIO「こちらの常識で推し量るのもあれだが、手のひらサイズの魔方陣と詠唱があればあの怪物をポンと生み出せる、などという優しい世界の理でできているとは考えにくい」

DIO「しかし、奴はこのDIOと戦闘を行いながらやってのけた……なぜだ?」

DIO「……ムッ、ここにまで起爆札が。あの男、どこまでこれを仕掛けているのだ?」

DIO「――――待てよ」


『炎の弾を撃ちだすとき……いっしょに『飛ばしていた』のさ……。炎の、影に隠れるように……。おかげで……場はつくれたよ……』


DIO「あいつ、なぜそんなことをしていた? ただオレを追い詰めるために起爆札を撒くならば、他にいくらでもやりようはあったはず」

DIO「だのに、なぜそのようなまわりくどい、オレに悟られたくないようにこの札をばらまいた?
   なぜオレが足を延ばしていないところにまで、こうも入念に札が撒いてあるのか?」


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』


DIO「――――試してみる価値は、ありそうだなッ」

今回の更新はここまでです。所用により急きょ香港に行くことになり、連絡もせず長期放置してしまい申し訳ありませんでした。
このスレが立ってからもう一年。しかし物語はまだ折り返しちょっと前。これからも気長にゆっくりとやっていく予定ですので、どうかご容赦を。

~★~
ステイル「……、」

シェリー「どうしたんだい? ご機嫌斜めじゃねえか。そんなに私が気に食わないか?」

ステイル「否定はしない。しかしそうじゃない。あまりにも遅すぎる。未だに魔女狩りの王が消滅しない」

ステイル「あんな妙な男程度に手こずるほど、魔女狩りの王は生易しくはない。不可視の縄が使えるぐらいではどうにもなるはずがない」

ステイル「まさか、足元の札のルーンの真意に気づいたか? いや、それにしても事前にあちこちに仕掛けておいたのだ。
人が通れそうなところはだいたいマークしているから逃れられるとは思えないが……」

ステイル「……ここにいてくれ」ツカツカ

シェリー「はいはい。隣でぶつくさ言われ続けても喧しいだけだ、とっとと行ってこい」



ステイル「……あり得ない。魔女狩りの王はまだ健在だ。つまり、奴を消し炭に出来ていない証拠」ツカツカ


ブシャアシャアアアア


ステイル「……? 水が吹き上がっている?」

ステイル「何をしたかは知らんが……ただの水ごときで僕のルーンを流せると思ったのか?」

ステイル「ルーンを記したインクも防水加工済み。スプリンクラーだろうと水しぶきだろうとルーンが溶けてしまうという事はない。……あの男のおかげではないがね、断じて」

ステイル「ゆえに、水でルーンのインクを流そうとする手法があの水ならば、残念だったねと笑ってやりたいところだが。無論、魔女狩りの王にはあんな水、周りの湿度が上がるだけだ」

ステイル「……しかし…」カツカツ


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』

ステイル「魔女狩りの王は近い。あの角を曲がればそこにいる。それはつまり、あの妙な金髪の男もいるということだ」

ステイル「……何を焦っている。焦る必要などない。魔女狩りの王から逃れたものなど……いるにはいるが、ほぼすべてを屠ってきた」ツカツカ

ステイル「……、」ツカツカ

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』

ステイル「……ッ」

ステイル「魔女狩りの王! あの男は仕留めたのか!」ダッ



『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』

DIO「……、」

ステイル「……あの男」

ステイル(本来の使い方ではないとはいえ、魔女狩りの王相手にここまで耐えきったこと、素直に賞賛すべきだろう)

ステイル(だが、わざわざ足を運ぶまででもなかったな。まさに今、あの男はその身を業火に焼かれようとする瞬間だったか)

ステイル(両者の距離はおおよそ四メートル。その程度の距離を魔女狩りの王が逃すはずがない)


ステイル「よくもまあ、今の今まで生き残ってこれたね」

DIO「! 貴様は……」

ステイル「正直、こうやってまた会話できるとは感激だよ。もう会えないと思っていたし、感動の再会といったところか」

DIO「……フン」

ステイル「だがまあ、あってすぐお別れというのも失礼だが、そろそろ君には退場してもらわないとね。君にかける時間はもうこれ以上ない。僕たちも忙しいんだ、うん」

DIO「つまり、私の背後にいるこれで手を下すという事か。流石にこの火力で全身を焼かれてしまったら私でも致命傷だろう。止めたほうがいいぞ?」

ステイル「……この期に及んで命乞いかな?」

DIO「……、」

ステイル「どうあれ、君にかける時間も慈悲もない。己がはさんだ余計な口を恨みながら死んでゆけ。その魂が神へ召されるくらいは、神父として看取ってやろう」

ステイル「――――やれ、魔女狩りの王」


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』



ステイル「――――どうした、魔女狩りの王。なぜ動かない」

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』

ステイル「……ッ」

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』


ステイル「----魔女狩りの王!!」


DIO「……ククク」

ステイル「ハッ!」


DIO「クックックックック」


ステイル「まさか……お前、いったい何を……ッ」


ステイル「いや、あり得ない! 魔法の知識さえろくにないお前が、魔女狩りの王に細工を施すことは不可能だ!」

ステイル「僕の詠唱のどこかに欠陥があったか? いや、確かに魔女狩りの王はこうして発現している。ならばその後、外部の別の物から何かしら……」

DIO「いったい何をぶつくさと言っている?」

ステイル「……ッ」

DIO「ああ、そうか。君の切り札とも呼ぶべきこの炎の巨人、魔女狩りの王というのか?
   それがどうして私の背後で、檻に入れられたライオンのように唸っているだけなのか。それを知りたいという顔をしているな」

DIO「なに、難しく考える必要はないだろう。私よりも圧倒的にこれを熟知している君なら、すぐに気付くはずさ。
   それとも、このDIOを見くびりすぎていたために焦るほどの状況だったのかな?」ピラリ


ステイル「それは……魔女狩りの王のルーン。ということは、それが起爆用の札ではないという僕の誘導認識は看破したという事か」

DIO「見事に引っかかってしまっていたよ。お前の認識の誤りをついた心理戦では、このDIOの惜敗といったところか」

ステイル「それに関しては、素直に褒めてあげよう。あれだけ起爆する札を見せたのに、勇気をもって似ているその札を剥がしにかかるとはね。
     順当な推理からか、一か八かの賭けだったのかはさておき」


ステイル「しかし、だ。まさか、君が言いたいことはこうじゃあないだろうね? 『この札を全て剥がして魔女狩りの王の動ける範囲を奪った』と」

DIO「……、」


ステイル「だとしたらそれはできの悪い冗談、ブラフにもなってない。そんなことは不可能だからだ」

ステイル「あの魔女狩りの王から逃走しながら、どれほどの規模にどれくらいの札がどのようにして配置されているのか。それを知っているのはこの僕だけ」

ステイル「可及的に設置したため、確かに札自体は力を籠めれば剥がれやすい。
     だが、一枚一枚札を探してそれを剥がしていく作業なんてのは、砂漠で脱水症状で死にかけながら砂漠の砂を数えていくようなものだ」

ステイル「さあ答えてもらおうか。協力者はどこだ? 他に仲間をつれてきているのだろう」


DIO「フフフ……。そうか。そういえば、お前にはこいつのもう一つの能力を見せていなかったな」

ステイル「こいつ?」

DIO「ついでだ。見せてやるとしよう。お前には見えない、この茨のヴィジョンの真価を」ビシュルルルルル


ステイル「……?」

DIO「こうしてお前も切り札をきってきたのだ。その返しに、私も種明かしとさせていただこうではないか」

DIO「お前には見えないこの茨は、私が振るうことによってそれなりの威力を叩きだす見えない鞭のように扱える。このように!」ブオン


ゴガガガガリリリリ!!


DIO「アスファルトの表面に浅く傷跡を残すくらいの力が生まれるのだ。ただ、そんなに遠くまでは伸ばせないのが欠点なんだが」

ステイル「……それで地面や壁に貼り付けていた札を片っ端から引っぺがしていった、とでも言いたいのか?」

ステイル「だからふざけるなよと、僕は繰り返す。確かにその方法なら、普通に素手で剥がしていくよりも時間の短縮という面では成功している」

ステイル「だが、その札の全てを剥がすことは、僕しか知らない場所まで全てを剥がしきるという事だ。
     ルーンの場所を探知魔術ももっていない君が、どう探り当てられるというんだね?」

DIO「――話は最後まで聞くのが作法だぞ?」

ステイル「……何?」

DIO「幽念動!!」


ババリバリリリ!!


ステイル「何だ? 奴の左手に、空気中の塵やゴミが集まって何かを象っていく……」

ステイル「――――あれは、まさかここ周辺の地図のつもりなのか?」

DIO「つもりではない、そのものだ! このDIOが操る幽念動の能力が一つ! それによりここの地域周辺の通路や壁までも詳細に、尚且つ正確に映し出すことができる!」

DIO「この赤いゴミはお前、緑のゴミは私だ。そして私の背後にいる巨人の足元に散らばるゴミの数。さあ、思い出して見ろ? この巨人の足元には、何がなければならないかを」


ステイル「----!! ま、まさか貴様。その能力で僕が張りつけた札を全て把握したというのか」

DIO「ビィンゴだ! 把握してしまえばあとは羊を囲む猟犬よりも楽な作業よ」

DIO「こんな風に! レーダーが指し示すゴミを残さず全て薙ぎ払っていき! 次第次第にこいつの動き行動範囲を狭めていってェェーーーッ!」ブン ブン ブン

『オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”』


ズガガリガリリ!!


DIO「――――札を回収していけばいいのだからな」パシッ

『オ” オ” オ” オ” オ” オ” オ” オ”ォォォォォォォォ――――』

ブジュウウウウ


ステイル「魔女狩りの王が、消滅した……。ということは、この男の言葉に偽りはなく、本当にルーンを全て剥がされたのか」

DIO「かさばって仕方がないんで、多少は破って捨てたがね。どうだ、中々便利な能力だと思わないか?」

ステイル「……、」

DIO「さあ、これ以上は互いに争いも不毛。この距離では君の詠唱が整うよりも早く、アスファルトをかき氷のように削り取る茨の鞭が君の首を襲うことになる」

DIO「そこでだ。ここは君の降参ということで、お互い手を打たないかな? もちろん敗者である君には、いろいろと尋ねたいことがるのだが……」


ステイル「――――いいだろう」

DIO「……!」

ステイル「最初はただのゴロツキ程度、その次は妙な手品を使う男、そしてさっきまではちょっと動けるぐらいの学園都市の人間。君の認識はそう変わってきた」

ステイル「ここからさらにもう一ランクアップだ。癪に触る切れ者。ここまでコケにされるとは思わなかったよ、うん……」


ステイル「悪いが、君には本気で死んでもらう必要がある。とっさの起点とはいえ……否、とっさの起点であるからこそ!
     魔女狩りの王を退けたその実力の持ち主を、ここで野放しにしておくわけにもいかない」ボボボボ

DIO「----残念だ。実に惜しい。君はもっと物わかりのいい性格だと思っていたのだが」

DIO「ならばよかろう。やってみるがいい。貴様の湯冷めしそうな炎で、このDIOが焼け焦げることはないと知れ!!」


「――――ステイル?」


ステイル「ハッ!」

DIO「ヌッ」


禁書目録「何があったの、ステイル。大規模な魔術の気配を追ってきてみたら、そこにはステイルがいたんだよ。まさか、私を目的に追ってきた魔術師がきたの?」


ステイル「インデックス!! ここは危険だ! 早くシェリーの元へ!」

DIO「――――インデックス? あいつが、か?」

今回の更新はここまでです。三週間以上も開けてしまい申し訳ない!魔女狩りの王撃退の構図は頭にあったのですが、それを文章にしようとすると自分でも混乱してしまうほどスランプに陥ってました。
もう少ししたら次スレを立てるので、それまで区切りのいいところまで進めていきます。


インデックス「……ふむふむ、なるほど。二人の意見はよく分かったんだよ」

インデックス「まずステイル。ステイルは、その金髪の彼が自分の後を尾けているのを気づいた上に
禁書目録である私の所在を問うたことで排除すべき敵だと認識した。で合ってるよね」

ステイル「……そうだ」

インデックス「で、そっちの金髪の彼……」

DIO「DIOだ」

インデックス「大丈夫、覚えてるんだよ。貴方は、魔術という概念をより深く知りたいと思い、そのためにステイルと戦闘を行っていた。
尾けていたのはなんとなく怪しそうだったから……」

DIO「フン。怪しい奴を怪しいと思って何が悪いのか」

ステイル「君にだけは言われたくなかった台詞だ。君はこの世に生まれ出でてから鏡と言うものを見たことがないのか。うん?」

DIO「小僧、言わせておけば……」

ステイル「その小僧に火傷を負わされたのはどこの誰かな」

インデックス「……ステイル。話が進まないんだよ」

ステイル「ン、ンンッ。どうぞ続けて」

インデックス「ステイルはたまーに血が頭に上りやすいのが悪い所だよ。それで、DIO」

DIO「なにかな」

インデックス「貴方は、どこから魔術という概念を聞いたのか。それを信じ込めた原因はなんなのか。私はこの二つを貴方に聞いておきたいんだよ」

DIO「それが、君と私の間になんの関係性を生むというのだ? まさか親身になって魔術を一から教えてあげよう、
などと怪しいキャッチセールスでもやってるのか」

インデックス「違うんだよ! 魔術は訪問販売とかじゃないんだよ!」

インデックス「……オホン。本来、魔術というのはそう易々と出回っていい単語なんかじゃないんだよ。
今日のステイルの火力はちょっと例から外すとして」

ステイル「いいじゃないか。あれぐらい許容範囲内だろう。人払いの結界も張っていたし」

インデックス「だからといって……もう。で、そんな秘匿義務のある魔術をステイルとの接触前から知っていた貴方は、
こっち側としては不信の目でしか見られないんだよ」

インデックス「だから、私個人としても魔術側の人間としても、今ここで貴方に何も尋ねずにお別れするのは、
禍根を残す可能性も考えて厳しいんだよ。その情報の出所をしっかりと把握しておかないと」

DIO「……なるほど」

インデックス「……話して、くれるかな?」チラッ ウワメヅカイ

DIO「……、」

DIO「そんな顔しなくとも、素直に話すさ。魔術がそこまで秘匿主義にこだわるものなら、あの男もどこかで君達と繋がっている可能性もあるしな」

DIO(あの男、土御門。あいつがきっかけで、魔術という概念を近くすることができた。
しかし、このインデックスというガキの話が本当なら、狡猾なあいつにしては珍しく口を滑らせたか?)

DIO(……ともあれ、このまま黙秘を続けていても埒があかないのは間違いない。こちらとしても事はまだ穏便に運びたいからな)


DIO「――――と、いうわけだ。質問があるなら気が変わらないうちに頼むよ」

ステイル「つ、ち、み、か、どぉぉぉぉ……」

ステイル「……少し席を外させてくれ」

DIO「無論構わないさ」


ツカ ツカ ツカ   ドウイウツモリダアノオトコッ!!!ガン


DIO「……やはり、あれと君たちは知り合いであったか」

DIO(不本意だが、土御門がこいつらの顔見知りだったという事に関しては奴に感謝しておかねばな。
   怪しい他人から知人の知り合いかもしれない、にランクアップしただけマシと思える)

インデックス「うーん、何を考えてそんな言動を……。まあ、それに関しては後々本人に追及するとして」

インデックス「DIO。今、このイギリスにとうまが来てるって本当なの? しかもあなたと一緒に来たってことは、とうまとDIOは知り合いなの?」

DIO「そうだな。知り合いでもあるし、既によく知った仲だ。君の話はよく聞かされたよインデックス。
   まさか、こういう形で出会うとは思っていなかったがね」

DIO(魔術の人間であるコイツと科学の人間である上条当麻。
   理由はどうあれ、この二人が共に生活していたということは、間違いなく穏便で安心な生活は送っていないだろう。あくまで勘だが)

DIO(現に、上条当麻は天草という根の深そうな魔術の集団と深い関わりをもっている。
   コイツと当麻から情報を集めれば、より効率よく両者の情報を得られるかもしれない)


インデックス「まずいんだよ……。今、とうまに来られたら面倒なことになるんだよ」

DIO「なんだ、意外だな。君のその性格からすれば、久々に当麻に再会できるとか言って跳んで喜びそうなものだと思っていたのだが」

インデックス「そ、それは確かにそうなんだけど。今はちょっと事情があって……」

DIO「事情、か。一つ屋根の下で行動を共にしてきた、信頼できる友にも話せぬ事情ときたか」

インデックス「いや、むしろこれはとうまだからこそ関わるのは危険な事情というか……」

シェリー「あー、いたいた。なかなかステイルが戻ってこないもんだから様子を見に来てみたら、随分と面白い対面やってるじゃねえか」

インデックス「あ、シェリー!」

DIO「お前は……」

シェリー「それで、ステイルの奴どうしたの? 向こうで煙草咥えたままカリカリしてるけど。まさか、この金髪半裸マッチョに負けたのか?」


マケテナドイナイッ!!


シェリー「おー、おっかないねえ」

DIO「フン。勝ってもいないがな」

シェリー「そうですか。そんで、禁書目録。うろちょろと出歩いていたからには、コレに関する手がかりでも見つけたんじゃないのか?」チラッ

インデックス「そういうわけじゃあないんだけど……」

DIO「――――ッ!!」


―ザザ――ザ――――ザザザ―――ザ――ザザ――ザ―――ザ―――


DIO(何だ、今のイメージは? あの金髪女が懐にちらつかせたアレ。あれを垣間見ただけだというのに、鼓動が急に激しく……ッ)


シェリー「なんだ違うのね。だったら、目を離したすきに忽然と消えるのやめてくれよ。探知すんの面倒だしさ」

インデックス「いや、どこかで魔術が発動していたような気配を感じて現場に向かってみたんだけど……。今思うと気のせいだったのかも」

シェリー「ふうん。念のため注意しておきましょう。コイツみたいなのが他にもいるかも……ってどうしたよマッチョさん」


DIO「……なあ、シェリー嬢」

シェリー「シェリーでいいわよ。気持ち悪いから」

DIO「ではシェリー。今しがた懐から見せた物。それをよく見せてくれないか? 気になるのだ」

シェリー「あー、これね。へえ、良い目してるな。これに目つけるなんてな」

DIO「世辞はいい。早く見せてくれ」


シェリー「ダメだ」

DIO「なんだと?」

シェリー「これは非常に危険で未知の物。魔術のマの一画目も知らないてめえには、はいどうぞと気安く見せられるものじゃねえんだな」

DIO「その私よりも遥かに魔術に長ける君ですら、それを未知と呼ぶほどにか」

インデックス「そうだよ。だから、今目にしたものは忘れてほしいんだよ。とても危険で嫌な感じのする魔術具なんだよ」

DIO「とても危険で、嫌な感じか……」シュル


ズルルゥゥゥ


シェリー「――――なっ」

DIO「ならば、もっと丁重に保管しておくものだな。胸の隙間に隠しておくよりかは、もっと厳重に隠す方法もあるだろうに」シュルルルルル

シェリー「てめえ! 今、何をしやがった!」

インデックス「い、今のは……魔術じゃない!?」

DIO「幽念動だ。さて、もっと観察させてもらおうではな……」


DIO「――――――!!」


DIO「ガッ…………!!」ドシャアッ

シェリー「どうしたマッチョ! ちい、やっぱり何か発動しやがったか!?」

インデックス「いや、魔力は感知できないんだよ。だけど、一応手当と探知魔術で、DIOとこれに異常がないか調べてほしいんだよ!」

インデックス「……、」ヒョイ


インデックス(でも、なぜDIOはこれを……)


インデックス(――――この、奇怪で不気味な『石仮面』を見た瞬間、頭を抱えて倒れ込んでしまったの?)

今回の更新はここまで。とりあえず書き溜めたものを投下させていただきました。待たせてしまい申し訳ありません!
今後も緩やかな速度ではありますが、エタることなく更新させていく所存です

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月29日 (木) 10:05:33   ID: ORckAUbk

遅筆すぎだろ

2 :  SS好きの774さん   2015年03月13日 (金) 19:50:59   ID: jucGmyjF

これからも頑張ってください!毎回楽しみにしてます( ̄^ ̄)ゞ

3 :  SS好きの774さん   2015年06月03日 (水) 23:06:32   ID: tAieicMy

めっちゃ面白い!!!!

4 :  SS好きの774さん   2015年06月28日 (日) 02:19:09   ID: BVU6k_k_

約1年でたったこれだけか……

5 :  SS好きの774さん   2015年10月07日 (水) 07:14:30   ID: nENilxpe

エタらないだけましでしょ

6 :  SS好きの774さん   2016年02月05日 (金) 18:00:05   ID: sXl61RuB

久し振りに面白かったよ

7 :  SS好きの774さん   2016年05月09日 (月) 15:00:40   ID: xj4se-or

続き 待ってる

8 :  SS好きの774さん   2016年09月10日 (土) 20:46:58   ID: _BheiEBq

待ってます

9 :  SS好きの774さん   2016年12月17日 (土) 16:03:44   ID: urUOX2zR

続き待ってます

10 :  SS好きの774さん   2017年04月08日 (土) 20:04:53   ID: WHoynRpf

続きまだ??

11 :  SS好きの774さん   2017年08月15日 (火) 19:53:16   ID: SRbNHolf

続きはよ

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom