絵里「穂乃果ハートなエリチカボディ」 (173)


穂乃果たちが入れ替わりしてぷわぷわーおスキスキ!するまえの最初の話ですプワプワ!

最初に書いた話 → ことり「穂乃果ハートな海未ボディ」
ことり「穂乃果ハートな海未ボディ」 - SSまとめ速報
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その次に書いた話→ 穂乃果「海未ハートなことりボディ」
穂乃果「海未ハートなことりボディ」 - SSまとめ速報
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――μ'sの日常


絵里「…………」ペラッ


ガチャッ!


穂乃果「――絵里ちゃぁん! 元気? 読書中?」


きゅっ


絵里「……なんで穂乃果はナチュラルに抱きついてくるのかしら?」

穂乃果「絵里ちゃんの肌ってひんやりとしてるからさ」ギュー

絵里「そうかしら……」

穂乃果「こうしてると落ち着くんだ」スリスリ

絵里「……私は落ち着かないんだけど」


穂乃果「絵里ちゃん大好き~」サワサワ

絵里「…………」ぺらっ

穂乃果「絵里ちゃんも穂乃果のこと好きだよね?」ベタベタ

絵里「…………」ぺらっ

穂乃果「もう、なんでもくもくと本を読んでるのさー」グリグリ

絵里「…………」もくもく


穂乃果「海未ちゃんとことりちゃんはまだかな?」ペタペタ

絵里「……ねぇ穂乃果。わたし気づいたんだけど、今は月曜日の放課後よね」チラッ

穂乃果「そうだよね!」スリスリ

絵里「……生徒会は?」

穂乃果「え? あっ、海未ちゃんとことりちゃんからメールきてる! あああああっ!」

絵里「行ってきなさい……」ハァ

穂乃果「ごめんなさい絵里ちゃん、また後でねっ!」ダダダッ!


バタンッ!


絵里(「ごめんなさい」? なんで私にあやまるのかしら……?)


ぺらっ


絵里(「また後でね」って、まるで私がおあずけくらってるみたいな言い方ね)

絵里(…………)


絵里「…………」ペラッ

絵里「…………」モクモク



――ガチャッ…


真姫「――ん、まだ絵里だけなの……」


絵里「…………」モクモク

真姫「……ねえ絵里、最近うちに来ないけれど」

絵里「あら、真姫……そうだったかしら?」チラ

真姫「先週中に定期健診を済ませる予定だったでしょ」

絵里「ごめんなさいね。最近少し……」モクモク

真姫「ねぇ、処方したサプリまだあったかしら」

絵里「どうだったかな……」ペラッ


真姫「……元気がないんじゃない? ちゃんとヘム鉄と葉酸とVB12、摂取してる?」

絵里「んー、そういえば頭がちょっと痛いかも……」モクモク

真姫「もう! 本当に自覚がないんだからっ! 絵里なんてまた倒れればいいんだわ! 知らないっ!」プンプン

絵里「んー……」ペラッ

絵里「…………」


ぺらっ


絵里「…………」モクモク



――ガチャッ


希「――なに、また図鑑眺めてるん?」

絵里「あら希。これは別に……」パタン



真姫(なによ! なんで希が来たら本を閉じるのよ!)ムカッ!



希「なんか元気ないなあ」

絵里「…………」


絵里「……ねえ、希」

希「なに? えりち」

絵里「……穂乃果ってなんで誰にでも大好きって言うのかしら」

希「さあなあ。誰にでもってことはないんじゃない? たくさんの人に、かもしれんけど」

絵里「子供よね……」ハァ


希「なんか悩んでるみたいやね」

絵里「そうかしら」

希「んー……。ほら、二足のわらじって言葉あるやん?」

絵里「……あるわね」

希「あれって人に足が二本あるから二足のわらじが履けるんだとうちは思うんよ」

絵里「希が何を言いたいのか、よくわからないのだけれど……」

希「同じように人の手のひらもふたつあるやん?」

絵里「……それで?」

希「だから手と手をとりあって、たくさんの人とひとつになれる……」



絵里「…………」


絵里「――でも」

希「ん?」



絵里「左手の薬指は、一本しかないわ」



希「…………?」

真姫(……それがなによ! 指は十本あるわよ!)ムカッ!



希「なあ、えりちはひとつしかないものが欲しいん?」

絵里「そうなのかもね……」フゥ

希「もしそれで元気がでるんやったら、うちが穂乃果ちゃんの薬指切り取って持ってこようか?」

絵里「……血が出るどころじゃ済まないじゃないの、それ」


希(『穂乃果の指なんてぜんぶ絵里ちゃんにあげるからね』くらいのこと本当に言いそうでこわいなあ)



――ガチャッ!



にこ「――世はまさにスクールアイドル戦国時代っ!」バタンッ!



にこ「A-RISE、イーストハート、Midnight cats、Mutant Girls……」

にこ「他のライバルと同じように歌い、同じように踊るだけじゃだめなのよ」

にこ「……並み居るライバルたちを相手に、私たちが生き残るために今すべきことは何か?」

希「いきなりなんやの?」

にこ「それはずばり! 愛されること! これがアイドルの生存競争の基本よっ!」ダン!


希「うん……それで? そこからやろ?」

にこ「よく見てなさいっ!」






にこ「――にっこにっこにー☆」


希「にこっち……」フゥ

絵里「結局それなのね……」ハァ


真姫(なんでタメ息つくのよ! かわいいじゃない!)ムッカー!!



にこ「まったく、花陽がいたら感動して絶賛してくれたのにね。まだ来てないのかしら」

真姫「……もうすぐ凛と一緒に来ると思うわ」クルクル



――ガチャ!

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――――――――――――――――

――――――――――――――――――――


――はじまりの日 部室


にこ「――はぁ!? 入れ替わったぁ?」モグモグ

穂乃果「……そうなのよ」ハァ

にこ「それであんたが絵里だって?」

穂乃果「ええ……」フゥ

にこ「病院行ったほうがいいんじゃない? もちろん脳外科よ」モグモグ

穂乃果「私だっておかしいことくらいわかってるわ……」

にこ「あっそ。はい、ピーマンあげるわ。あんたが絵里なら食べられるでしょ」グイッ


穂乃果「う……それはちょっと……」

にこ「ほら見なさい」モグモグ

穂乃果「希はすぐに信じてくれたんだけどな……『スピリチュアルやな』って」

にこ「ドッキリ企画はアイドルの定番だから分からなくもないけど、ピーマンくらい徹底しなさいよ」

穂乃果「それは多分、穂乃果の舌だから……」

にこ「なによそれ、まだ続けるつもり――」





絵里「――チョコおいしーっ!」バクバク

海未「こら穂乃果っ! いい加減にしなさい!」

絵里「海未ちゃんうるさい! 海未ちゃんの鬼嫁っ!」ガツガツ

海未「よっ……!?///」

絵里「すぐ怒るんだから!」バクバク

海未「穂乃果が怒らせるようなことをするからでしょう!」ガーッ!


にこ「…………」モグモグ

穂乃果「…………」



にこ「……穂乃果ね、あれ」モグモグ

穂乃果「わかってくれた?」ハァ…



穂乃果「――って穂乃果っ! 私の身体が太るでしょぉっ!?」バッ

にこ「あんたも大変ね、いつもそんな役回りばっかで」モグモグ



――――――――

――――――――――――


海未「――まったく、朝も大変でしたよ」

ことり「いつもどおりぐーすかぴーしてると思ったら中身は絵里ちゃんだったもんねぇ」

海未「信じられるまで時間がかかって学校に遅刻してしまいましたし」

ことり「いろいろ試したからねぇ」






穂乃果「……ねぇ穂乃果、あなたってもしかして2次方程式解けないの?」

絵里「やだなー絵里ちゃん、穂乃果は高2だよ? そんなわけないでしょ」


海未「……」イラッ!

ことり「……」ニコニコ


絵里「ねぇ希、授業は大丈夫だったの? 今日数学あったでしょう?」

希「あー、うーん……」


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――数学の時間(3年)


教師『――では、tan1°は無理数ですか? はい、絢瀬さん。少し難しいけどあなたならわかるわよね?』



絵里『へっ?』



クラスメイトG『(これってたしか難関大の有名な入試問題じゃ……)』

クラスメイトH『(難しすぎ……)』

クラスメイトI『(でも絢瀬さんならできるかも)』



希『(え? 難しくない? この先生えりちに厳しすぎやろ)』

希『(うちがフォローせんと……)』シャシャシャ… 



クラスメイトG『また東條さんが授業中にタロットカードを……』ザワッ

クラスメイトH『私、もう慣れた……』ボソッ



ザワザワ…


絵里『希ちゃん、無理数ってなに?』コソコソ

希『そこからか。有理数ではない実数、つまり綺麗な分数で表せない数のことだけど……』ペラッ

絵里『?』

希『――お、無理数やってさ。カードがうちにそう告げるんや』ビシッ!

絵里『あの、希ちゃん。さすがの穂乃果もそれはどうかなって思うよ』コソコソ



教師『なんで東條さんは授業中にカードで遊んでるのかしら……?』



希『まあ実数ってほとんど全て無理数やからな。直感的にというか、確率的にもそうやろな』コソコソ

絵里『ほとんど……無理……確率的に……?』ピクッ


教師『絢瀬さん、答えは』


絵里『――無理じゃないよっ!』バンッ!

教師『は……?』



ザワッ…!


絵里『やる前から諦めちゃだめっ! たとえどんな困難があろうと――』

教師『たしかに困難な問題ですが、えーと、この問題は……』


希『はい先生! うちが代わりに答えます! 無理数です!』ビシッ

教師『……解答は「無理数である」であってますが、えーと、証明は――』

希『それはその、感覚というかカードがですね、うちにですね……///』モジモジ

教師『確かにある程度以上の数覚がある人は直感的に「たぶん無理数だろう」と感じますが――』


絵里『だから無理じゃないって!』プンプン!

教師『……えーと、これは背理法を用いることで比較的楽に無理数であることの証明ができ――』

絵里『じゃあエリチカは無理じゃないって証明する!』プンプン!

希『あ、穂乃果ちん。えりちはそんなこと言わない』コソコソ

教師『あの……』オドオド



ザワザワ…



クラスメイトG『絢瀬さんもとうとうおかしくなっちゃった……』ザワザワ

クラスメイトH『あのふたりはアヤシイと思ってたの……』ザワザワ

クラスメイトI『(仲いいなあ……)』


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希「――まあ、うちがついてたからな! なんとかなったわ!」

穂乃果「やっぱり希は頼りになるわね!」

希「あたりまえやん!」



絵里「そういう絵里ちゃんはうまくやれてるの?」


穂乃果「うまくやったつもりだったんだけど……」



ことり「…………」ニコニコ

海未「……いいんです。絵里はうまくやったんです」ハァ

ことり「うまくやりすぎちゃったんだよね」

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――数学の時間(2年)


教師『――ではこの不等式が成り立つことを証明してみましょう。簡単ですよね』

教師『えーと、次は……あっ』



穂乃果『ん?』



クラスメイトD『あっ……』

クラスメイトE『あっ……』

クラスメイトF『あっ……』



教師『高坂さんっ! わからなかったら別にいいのよ? ほら人には向き不向きってあるし!』アセアセ

教師『じゃあ代わりに、はいっ! 園田さん!』


海未『……ねえことり。この先生、穂乃果に甘すぎませんか?』ボソボソ

ことり『あはは……』


穂乃果『――数学的帰納法を使えば楽だよね!』



ザワッ…!



教師『高坂さん!? 何か悪いものでも食べた!? 大丈夫なの!? 保健室行く?』


クラスメイトD『穂乃果が……』ザワッ

クラスメイトE『六文字熟語を……』ザワッ

クラスメイトF『しゃべった……?』ザワッ


教師『具合悪かったら早退してもいいのよ!? 私が担任に話しといてあげるから! ね?』オドオド




穂乃果『(……何かしら、この反応)』


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海未「――申し訳ありません、私がついていながら……」

ことり「クラスメイトにバレちゃったねぇ」

海未「みんな『なーんだ、安心した』ってすぐ納得してくれましたね」

穂乃果「疑うより先に納得されて、驚くより先に安心されたわ……」

海未「そうでしたね……」

穂乃果「なにかしら、あれ」


にこ「――そろそろ昼休み終わるわね。じゃあ放課後、いつもどおり練習よ!」

穂乃果「え? 入れ替わってるのにいつもどおり練習するのかしら?」

にこ「当たり前でしょ? あんたバカ? あんたがもしライブの当日に入れ替わったとしたら――」











にこ「遠くからあんたを見に来てくれたファンに『今日は入れ替わってるのでライブはできません』って言うの?」

にこ「絵里、そんなのアイドル失格よ」プイッ



――――――――

――――――――――――


――教室(3年)


絵里「あれ……?」キョロキョロ





希「どうしたん?」

絵里「なんか少し頭痛いから、甘いモノが食べたいのに……」ズキズキ

希「大丈夫?」

絵里「今の穂乃果は食後なのに、誰もデザートくれないなぁって……」

希「は?」


――教室(2年)


穂乃果「…………言い返せなかったわぁ」

穂乃果(にこはハートが強いわよね。ヘタレのくせに……)

穂乃果(考えてみればμ'sってヘタレばっかよね。少しは私を見習って欲しいわぁ)




クラスメイトD「――あれ? ほのか元気ないじゃん。はいお菓子」スッ

穂乃果「え? あの、私は穂乃果じゃ……」オドオド


クラスメイトE「ダメダメ、ちゃんとほのからしくしてないと。これ、ほのかの好きなやつだよ?」ドサッ

クラスメイトF「私も、お菓子」スッ


ドサドサッ!


穂乃果「えっ? えっ?」キョロキョロ



クラスメイトD「はい、あーん」

穂乃果「ちょっと、待っ……」オドオド

クラスメイトD「いいからいいから。ビクビクしないで、おくちあけて?」

穂乃果「穂乃果は餌付けでもされてるの? ……もう」アー…



――カプッ


クラスメイトD「……ほんとにほのかじゃないんだ」

穂乃果「ん?」モグモグ

クラスメイトD「いつもは指まで噛み付いてくるの」


穂乃果「ご主人様に噛みつく犬かしら」モグモグ


クラスメイトF「あまがみ。たまに痛いけど」

クラスメイトE「一回噛まれるとね、また次も持ってこなきゃって気持ちになるの」

クラスメイトD「わたし持ってこなかった日に噛みつかれたことあるんだけど……」

クラスメイトE「どっちがご主人様かわかんないよね」クスクス


穂乃果「噛みついてしもべを作るとか……」


クラスメイトE「吸血鬼みたいだね」フフッ

クラスメイトF「ほのかは吸血鬼じゃないけどね」クスクス

クラスメイトD「なんで映画のあれって噛まれると虜になっちゃうの?」

クラスメイトF「唾液に催淫効果があってキバで破った血管からそれが入っちゃうんだって」

クラスメイトE「ほのかが吸血鬼じゃなくてよかったね」クスクス

クラスメイトD「よしよし。犬でよかった」ナデナデ




穂乃果(なんか慣れないわね、この扱い……)モグモグ


――――――――

――――――――――――


――放課後 練習場


海未「――ワン、ツー、スリー、フォー!」パンパンパン!

絵里(あっ、身体が勝手に動く)タンタンタン!



海未「凛! 動きが早いです! ちゃんと合わせて!」パンパン!

凛(うっ……海未ちゃん相変わらず凛に厳しい)タンタタタン



絵里(楽しいっ! けどなんか……あれ?)タンタン…

絵里(頭が……くらくらする……)グラ…




フラッ――




真姫「――エリーっ!!」ガシッ!

海未「穂乃果っ!?」



――――――――


真姫「――まったく、準備運動しないからそうなるのよ」

絵里「ごめんね……でもちゃんといつもどおりしたよ?」

真姫「エリーはもっとちゃんとしてるの」



海未「それで、本当に病院に行かなくて大丈夫なのですか?」

真姫「もちろん後で行ったほうがいいけど、とりあえずはそこまでのことじゃないわ」

海未「ですがもし入れ替わりのせいだとしたら、やはり病院に――」

真姫「それこそ病院に来られてもどうすればいいのよ。CTスキャンしたあと精神科かしら?」

にこ「となると、頼れるのは……」チラッ





希「え? うち?」

真姫「希しかいないでしょ。エリーの身体を診てあげて。あとこれ、買い物のメモね」ビシッ



――――――――

――――――――――――


――希の家 台所


希「――豚肉炒めのパセリ添え、ひじきと大豆の煮物、ほうれん草……」トントン

希「……なんでうち、おさんどんやってるんやろ」トントントン


――――――――


絵里「――おいしいっ!」ガツガツ

希「作った喜びが湧いてくるような食べ方やね……」


希(料理にがっつくえりち……この光景を写真に撮りたい)ジッ…


絵里「チョコレート食べたら怒られたけど、いいのかな?」ガツガツ

希「いや、最近のえりちは少し細すぎなんじゃないかとうち心配しとったんよ」

絵里「えりちゃん最近食べる量減ったよね。いつも悩み事してるし」ガツガツ

希「えりちの胃袋になんでそんなに入るんかなと思っとったけど……そうか悩み事か……」

絵里「もうないの? おかわり!」




希(え? まだ食べるん?)

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――その頃 練習場


凛「――練習終わりのコーラはおいしいにゃー!」ガブガブ

海未「凛! 炭酸は駄目です! 骨が溶けます!」

凛「海未ちゃんお母さんみたい。うざったいにゃー」ガブガブ

海未(あれ? 私、凛に嫌われてませんか?)


真姫「それいつの迷信よ……リンがカルシウムに悪いだけで、少なくとも炭酸は関係ないわ」ゴクゴク



凛(えっ? 凛がカルシウムに悪いの?)ビクッ!

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――希の家 台所


希「――なんでうち、また料理しとるんやろ……」トントントン

希「えりちの一食分と思って作ったからなぁ」トントントン

希「でもえりちの顔であんな頼み方されたら断れないしなあ」トントントン

希「かわいかったなぁ……あれ反則やん……///」トントントン



絵里「…………」こそこそ

ソーッ…










絵里「――希ちゃぁん――ま・だ?」スリスリ

希「ひゃっ!///」ザクッ!


希「……ダメやん、包丁持ってるときに」コトッ…

絵里「ごっ、ごめんなさいっ!」

希「指切って血が出ちゃったけど、かすっただけやね」


ポタ…ポタ…


絵里「――――っ!?///」ドキッ


ドクン!


絵里「は……わ……!?///」ドクンドクン

絵里(血が……真っ赤な、真っ赤な綺麗な血が……っ!!)ドキドキ



希「え……眼の色変わってない?」

絵里「ほっ……ほっ……!///」ドキドキ

希「えーと、消毒液どこやったっけ――」




絵里「――ほのかが消毒すりゅうううううううううう!!!///」ガバッ!


カプッ!


希「――はっ!? ちょい待ちっ、何やって――!?///」ガシッ!


ググッ…


絵里「んむ……んちゅ……///」チュウチュウ

希(一体なんなん!? 血を見た途端に眼の色変えて――!)ググッ


絵里「んちゅう……おいひぃ……///」チュウチュウ

希(何この力、普通やない――!)グググッ…




――ドクン…! ドクン…!


希「は……!?///」カァァッ


希(舐められた傷口から毒が回ったみたいに……うち全身の血が熱い……!?///)ドクンドクンドクン


絵里「はあっ……んちゅ……///」ペロペロ

希(嘘やろ……邪の力を感じる――!)カッ!


――パシンッ!




絵里「……希ちゃん、ほっぺ痛いよ」ヒリヒリ

希「あ、ごめん……///」ドキドキ


絵里「穂乃果は唾液で消毒しようとしただけなのに――」ウルウル

希(マズい、なぜかえりちの顔をまともに見れない!///)ドキドキ

絵里「ねぇ希ちゃ――」






希「――うち急用思い出したあああああああああ!!!///」


絵里「え?」

希「まずいまずいわ超急用やったなんてこったやばいわマジやばいどうしよ!!!///」

絵里「えっ? えっ?」

希「すまん穂乃果ちん帰ってくれんかなうちが診たとこ身体もなんなんともないないし!!!///」

絵里「帰るってどっちに――」

希「どっどっちにせよ親御さんに話しとかないとマズいやろマズすぎやろそうやろ!!!///」

絵里「あ、うん、じゃあまたね――」ゴソゴソ





ガチャ…バタン


希「あ……あ…………///」ヘナヘナ

希「身体熱くて……力抜ける……///」ズルズル


――ガチャ


絵里「――忘れものー!」バタバタ

希(…………?)

希(なんかあったかな……///)クラクラ…









絵里「希ちゃん、ごはんありがと」ちゅっ

希「」


――バタン



希「」



――――――――

――――――――――――

-------------------------------------------------------

――穂乃果の家


絵里「――そういえば鍵がないや」ゴソゴソ


ピンポーン!


雪穂「――あっ、亜里沙のお姉ちゃん」ガチャ

絵里(……、……)


絵里「……このかしこいかわいい生徒会長が廃校は阻止したわぁ」キリチカッ!

雪穂「え? はい、そうですね?」

絵里「でもあなた、私のスピーチの練習のとき居眠りしたらしいわね」

雪穂「(らしい?)……すみません」

絵里「だからあなたの入学は……認められないわぁ」キリチカッ!

雪穂「は……?」

絵里「お邪魔するわぁ」ゴソゴソ


――穂乃果の部屋


絵里「たっだいま――!」ガチャ



海未「あっ……」モミモミ

ことり「あっ……」サワサワ


穂乃果「ひゃっ――!?///」ビクビク!








絵里「…………」


絵里「…………」

絵里「……穂乃果の部屋でなにしてるのかな?」



海未「何って……」汗タラタラ

ことり「ねぇ……?」汗ダラダラ

穂乃果「え? 練習後は疲労が残らないようにいつもマッサージしてるって……///」ハァハァ



絵里「ふぅん…………」

絵里「…………」チラッ





海未「……すみませんでした」ドゲザ

ことり「……もうしません」ドゲザ


――夕食時 穂乃果の家


絵里「――まったく、ふたりともひどいよね! 雪穂もそう思うでしょ?」ガツガツ

雪穂「……」モグモグ

絵里「しばらくあのふたり家にあげちゃだめだからね! あ、絵里ちゃんはいいよ?」ガツガツ

雪穂「あの……お姉ちゃん?」

絵里「なにかしら?」キリッ


雪穂「それやめて……///」

雪穂(亜里沙と同じ肌と目の色……綺麗だなぁ……///)ポーッ


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――希の部屋 ベッドの上


希「…………///」ギシッ



希「なにこの気持ち…………///」グルグル



希(えりちから邪の力を感じるって……うちもひどいな)

希(うちってこんなおかしくなるくらい……えりちのこと好きだったんか……///)ドキドキ

希「……邪なのはうちの心やん」ハァ…



希(全身の血が熱い……気持ちが爆発しそう……///)ハァハァ

希(うちの想い……えりちのハートにぶつけたい)キュンキュン

希(えりちへの想いがあふれだす……溜まりすぎて中毒起こしそう///)クラクラ



希(……いったいどこにぶつければいいんやろ///)ギシッ


――希の部屋


ガチャ


穂乃果「――希、鍵開いてたわよ?」



希「……えりち?」ギシッ

穂乃果「不用心ね、珍しいじゃない……ってどうしたの? 眠いの?」


希「えりちこそ、なんなの」ゴロッ

希(ほんとなんなの……タイミングがいいのか、わるいのか)ドキドキ



穂乃果「え? 私の家は穂乃果の家みたいに物分かり良くないから――」

穂乃果「――外泊してくるってことにしたんだけど」



希「外泊……?」クラクラ

穂乃果「それで自宅に寄って替えの下着とパジャマだけ持って希の家に来たのよ。泊まっていいかしら?」




希「好きにすれば……どうなっても知らんけどな……」ボソッ


――夜 希の部屋


希「――えりち、シャワーあいたよ……」ポタポタ

穂乃果「あ、希。今日の授業のノート借りたわよ」

希「それは勉強熱心なこって……」

穂乃果「数学の宿題、もっとスマートな解法見つけたから隣に書いといたわ」パラパラ

希「そりゃどうも……」

穂乃果「あと英語のノートにスペルミス見つけたわ赤で直しといたから」

希「……シャワーどうぞ」ポタポタ

穂乃果「髪くらい拭きなさいよ、みっともないわ。風邪引くわよ」


――――――――


穂乃果「――ちょっと希! シャワーが冷水だったわよ!?」

希「あー……ごめん……滝行の……つもりやった……」フラフラ


穂乃果「希、あなたやっぱり様子がおかしいわよ? 顔赤いし――」

希「そうか……えりちは……かしこい……なぁ――」フラッ

穂乃果「風邪かもしれないし、早く寝たほうが――」





希「――早く寝るのはえりちのほうよ?」ガシッ


グイッ!


穂乃果「へっ?」フラッ


バターン!


穂乃果(ベッドに押し倒され――――っ)サーッ…


希「スピリチュアルなうちが予言しよう……これから先、えりちは何度も押し倒される運命や」ググッ


穂乃果「希!? なに言って――」バタバタ


希「だから初めてはうちがもらう。だってうちはこんなに……」スッ


穂乃果「あなた眼の色がおかしいわよっ!?///」ジタバタ


希「…………」ペタッ


穂乃果「え? 私は熱なんかないわよ……熱測らなきゃいけないのはあなた――」


希「――――――」ボソボソッ


穂乃果(なにこれ……希の手のひらが……私のおでこが……すごく熱い……?)ぴく

穂乃果(私の心に直接なにかが流れ込んで――――)
















『えりちえりちえりち好きえりちえりちえりちえりちえりちえりち好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き――』



穂乃果「――――きゅう///」くらっ


――ボフッ



希「――――はっ! しまった!」ハッ!



穂乃果「うーん……うーん……///」zzz...zzz



希「えりちは伸びとるし、やってしもた……」ズーン

希「加減する余裕なくて直接ぶつけてしまったわ……後遺症が残らないといいけど」

希「大丈夫かな、ごめんな……」

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――その頃 雪穂の部屋


ガチャ…


絵里「――雪穂ぉ……なんでベッド来てくれないの? 一緒に寝ようよぉ」ゴソゴソ

雪穂「へっ? だって今夜は……///」


ギシッ…


絵里「朝あのふたりは来ないから、雪穂が起こしてね……」モゾモゾ

雪穂「ちょっとお姉ちゃん、近い……///」


ぎゅうっ!


絵里「……あ、なんかいいにおいする」スンスン

雪穂「」


――――――――

――――――――――――

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――朝(水曜日) 希の部屋


チュンチュン!


穂乃果「――頭がチカチカする……」パチッ



穂乃果「……寝る直前の記憶がないチカ」フラフラ

穂乃果「置き手紙チカ……」ゴソゴソ



『えりちごめんな。うち邪を祓うため滝に打たれてくるわ  希』



穂乃果「希がいないチカ……」じわっ…

穂乃果「グスッ……さびしいチカ……」じわわっ…



穂乃果「学校行くチカ……」グスグス

穂乃果「持ってきた下着はここに置いていくチカ」グスグス



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※関係なさそうでありそうでやっぱりあんまりない途中に書かれたもの


海未(21)「今夜20時から。打ち上げ会場は…この店ですか」 (血に執着チカ)
海未(21)「今夜20時から。打ち上げ会場は…この店ですか」 - SSまとめ速報
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エリチカ「初ライブ……ども……」(前世が吸血鬼だと勘違いするチカ)
エリチカ「初ライブ……ども……」 - SSまとめ速報
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――学校 授業中(2年)


教師「――2H3PO4 + 3Ca(OH)2 → Ca3(PO4)2 + □H2O……四角に入る数字はいくつでしょうか」

教師「……リン酸と水酸化カルシウムの中和反応の式ですね。Hの数に着目すれば簡単です」

教師「えーと、次は……あっ――」



穂乃果「?」



教師「――こっ、高坂さん、ど、どどどうぞ」

教師(どうしましょう……!)ジワッ

教師(昨日は数学の先生が穂乃果ちゃんの様子がおかしかったって泣いてたし)

教師(お願い、答えないで穂乃果ちゃん――!!)



穂乃果「……凛さん?」チカァ?


教師「――よかった…グスッ…本当によかったわ……」ポロポロ

教師「…グスッ…正解よ……高坂さん…ヒック…正解よ……」ポロポロ



穂乃果「じゃあ穂乃果は寝るチカ」zzz...zzz...





海未「……どこが正解なんですか?」

ことり「まぁまぁ、海未ちゃん……」ニコニコ

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
希『あっ、きのきー!! おはぴょん!!』ピョンコピョンコ!

真姫『あさぷわ! ぞーみんはウサミミ、好きよねー☆』クルクルリン

希『なんでかな!! でもウサミミかわいいやん!!』ピョンコピョンコ!

真姫『ほのぽっぽはー!?』クルクルリン☆

希『今くるよ!! ほら足音が!!』ピョンコピョンコ!


ピヨピヨピヨ…! ピヨピヨピヨ…!


穂乃果『きのきーあさぷわ!!! ぞーみんおはぴょん!!!』ピヨピヨ

真姫『あさぷわ! ほのぽっぽはピヨピヨサンダル、好きよねー☆』クルクルリン

穂乃果『うみみんがね!!! ほのかにこれはいてほしいって!!!』ピヨピヨ

希『おはぴょん!! うちのウサミミはちゅんきちにもらったんよー!!』ピョンコピョンコ!

穂乃果『こうかんしてみない!!!』ピヨピヨ

希『いいよー!!』スッ


穂乃果『わーい!!! ほのかうさぎさんだー!!!』ピョンコピョンコ!

海未『ピヨピヨサンダルは私のものです!!!!』

希『あれー? うみみんいたのー?』


プベァ…


海未『あー……』パコパコ

希『音……』

真姫『しなくなっちゃった……』


海未『これが……』パコパコ

希『限りある……』

真姫『いのち……』


海未『私たちも……』パコパコ

希『いつか……』

真姫『こうなる……』


海未『だから今……』パコパコ

希『限りある今こそ……』

真姫『限りない夢をみる……』


海未『…………』パコパコ

希『黙祷……』

真姫『黙祷……』



穂乃果『…………』ピョンコピョンコ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


――休み時間 教室(2年)


穂乃果「――むにゃ……んむ……」zzz...zzz...


クラスメイトD「ほのかよかったねー」ナデナデ

クラスメイトE「もしかしてもう戻った?」ナデナデ


穂乃果「ぷわぷわするチカ……」zzz...zzz...

クラスメイトD(かわいい……)ナデナデ



クラスメイトF(…………)ソワソワ

海未「どうしたんですか?」

クラスメイトF「ひっ!///」ビクッ

海未(ん?)

クラスメイトF(海未ファン)「あの……園田さん、よかったらこれ……どうぞ」モジモジ

海未「チョコレート……?」キョトン


海未「――あ、美味しいです」モグモグ

クラスメイトF「本当っ!? 全部あげる!」バッ

海未「え、こんなには……」

クラスメイトF「捨てちゃっていいからあああああっ!」ダダダッ

海未(……どこに走って行くんでしょうか?)モグモグ



海未「捨てていいと言われましても……」モグモグ

海未「でもおいしい……」モグモグ

海未「……ことり、チョコレートどうですか?」モグモグ

ことり「え? 捨てちゃうんだったらもらおうかな……」

ことり(……あ、けっこう洋酒の味が強いんだね)モグモグ



海未「……では私は穂乃果に昨日のことを謝ってきます」

ことり「いってらっしゃぁい」モグモグ


――――――――


――休み時間 空き教室


絵里「――海未ちゃん何かな? こんなところに穂乃果を連れ込んで」モグモグ

海未「あの……昨日はすみませんでした」

絵里「……」モグモグ

海未「お願いですから高坂家の戒厳令を解いて下さい……」

絵里「どうしよっかなぁ……」モグモグ

海未「くっ……」ギリッ

絵里「そんなに強く唇を噛みしめたら跡が残っちゃうよ? あともうこのチョコないの? 超うまい」モグモグ

海未「これくらい私の心の痛みに比べたらどうってことありません!」ギリリッ!


つーっ……



絵里「――――あっ///」ドクン!

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――その頃 教室(2年)


穂乃果「――ぷわぷわした夢をみたチカ……」ムクッ

ことり「えりちゃんおはよぉ」ニコニコ

穂乃果「……ことりの夢は何チカ?」プワプワ

ことり(え? 脈絡ないなあ……寝ぼけてるのかなぁ)



ことり「ことりの夢は――――」

ことり「――――好きな人と、ロマンチックなキスを交わすことかなぁ……///」テレテレ

ことり(海未ちゃんと……///)ポーッ






穂乃果「……ぐー」zzz...zzz...

ことり「聞いてないし……///」カァァッ

-------------------------------------------------------


――空き教室


絵里「あ……あ……///」ドクンドクンドクン

海未「どうしたんですか? 眼の色を変えて」つーっ…



絵里「――あああああああああああっ///」グイッ!

海未「へっ?」フラッ


バターン!


海未「いったい何事です――――」






絵里「――――んちゅ///」レロ


海未(~~~~っ!?!?///)


海未(はっ!?!?///)ビクッ!

絵里「んむ……れろ……///」チュウチュウ


海未(なんですかこれ!? なんで――///)ググッ…

絵里「あばれひゃらめ……んちゅう///」グググ!

海未(なんですかこの力っ!? それに私の身体が……焼けるように熱い!?///)ヘナヘナ



絵里(あ、チョコの味がする……)レロレロ

海未(し、舌が、入って――――///)ピクピク

絵里(おいし……もっと)グイグイ

海未(――――――――)


バタッ…


絵里「……あれ? 倒れちゃった。おーい」ペチペチ

海未「」ピクピク

絵里「まあいいや。チョコおいしかったから許してあげる!」

絵里「海未ちゃん授業遅れちゃだめだよー」スタスタ


ガラッ!

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――その頃 教室(2年)


穂乃果「――……くー、くー……」zzz...zzz...




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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ほのぽっぽ『黙祷……』

きのきー『黙祷……』

ぞーみん『黙祷……』

うみみん『黙祷……』

ちゅんきち『黙祷……』



凛『――なにやってるの?』


ぞーみん『くーにゃん……』

きのきー『せいくー……』

ちゅんきち『せいこちゃん……』



花陽『――なにやってるの?』


ぞーみん『せんちゃん……』

きのきー『いずみっち……』

ちゅんきち『ふらわークン……』



にこ『――なにやってるの?』


ぞーみん『にこすけ……』

きのきー『にこぽよ……』

ちゅんきち『沖縄・ザ・Y……』



絵里『――なにやってるのかしら?』


ぞーみん『絢瀬……』

きのきー『絢瀬さん……』

ちゅんきち『絢瀬ちゃん……』

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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――保健室


ガラッ…


海未「――もう、ダメ、です……///」フラッ


ボフッ…


海未「なんとかここまで辿りつけましたが……///」ハァハァ


海未「意識が遠のく――」


海未「ん……」ギシッ…



――――――――

――――――――――――



ことり「…………」




海未「んー……んー……///」zzz...zzz...

ことり(なんで海未ちゃんこんなに色っぽいのかな……?///)ドキドキ


ギシッ…

モゾモゾ


ことり「…………///」モゾモゾ


ことり(海未ちゃんのせなか……///)スリスリ

ことり(なぜか今日はいつもよりことりの頭がくらくらする……)ギュウッ…

ことり(海未ちゃん――――)スンスン



海未ちゃん。海未ちゃん。海未ちゃん――――


こうしてるとことりの肌がぴりぴりする。ことりの息が苦しくなる。

胸が切なくなる。

海未ちゃんは「ことりはいつもにこにこしていますね」ってよく言ってくれるけど

本当は素顔を見せたくないだけ……



ことり(海未ちゃんのことをこんなにも好きなこと、もしバレちゃったらどうなるのかなあ)スリスリ

ことり(絶交とか……海未ちゃんはそんなことしないだろうけど、きっとことりは――――)ジワッ…



ことり(でももうそろそろ、隠し通すのも限界……つらいなあ)スンスン



ことり(……ことりの恋が生き残れる可能性もゼロじゃない)

ことり(今はまだ勇気なんてとてもでないけど、初恋くらい限りない夢、見なきゃ……)ギュウッ…

ことり(いつか来る日を夢見て……)スリスリ


海未「んー……んー……///」zzz...zzz...



ことり(でもまさか、穂乃果ちゃんと競争しなきゃいけなくなるなんてなぁ……)

ことり(ここまで来てしまったら、もうことりは逃げられない。でも戦える武器もない)



ことり(……この状況を穂乃果ちゃんが知ったらなんて言うのかな。こわいなあ)ブルブル

ことり(カーテンの内側に閉じこもりたい気分だよ……)モゾモゾ



――――――――

――――――――――――


――昼休み 教室(2年)


穂乃果「――なんで私だけあだ名がないのよ!」ガバッ

ことり「え?」ビクッ

穂乃果「私、先に部室行って本読んでるから」キリッ

ことり「どうしたんだろ……?」






海未「なぜ私は保健室で寝ていたのでしょうか……記憶がありません」

ことり「海未ちゃん、様子見に行けなくてごめんね?」ニコニコ

海未「いえ、それは構いません。授業は大事ですから。ノート見せてもらえませんか?」

ことり「ことり途中でお花摘みに行ってたから……」


――昼休み 部室


穂乃果「…………」ペラッ

にこ「何読んでるのよ、ひとが食事してる横で……」モグモグ

穂乃果「…………」ペラッ

にこ「いつにも増して様子がおかしいわね」モグモグ



希(これうちのせいや……うちの……)サーッ…

穂乃果「どうしたのかしら、希。顔が真っ青よ」

希「……えりち、お昼食べないん?」

穂乃果「少し穂乃果の体重が気になったから、ダイエットすることにしたわ」

希「え……」



穂乃果「絶対パンなんかに負けたりしない!」キリチカッ!

希「そういうのはよくないとうちは思うんやけど……」


希(……何言っても聞かなそうやね)


にこ「――じゃあ今日も放課後、いつもどおり練習よ!」

真姫「ちょっと待って。最近練習詰め過ぎじゃないかしら?」

にこ「え……」

真姫「また倒れる人がでたりしたら本末転倒でしょ。今日はお休みにしましょう」

にこ「……真姫ちゃんがそう言うなら」




希(さすがのにこっちも真姫ちゃんには弱いんやね)

――――――――

――――

――放課後 弓道場


海未(――練習が休みなので久しぶりに弓を引きに来ましたが……)スクッ

海未(射法八節……一射絶命の境地……)キリキリ…

海未(一本の矢に命をかけるということ……弓の道には良い言葉がたくさんあります)



海未(……穂乃果は私を許してくれたのでしょうか)キリキリ…

海未(自分の情けなさに血が沸き立ちます……全身の血が、熱く……!)ドクンドクンドクン!

海未(――いけません。気持ちを一本の矢に込めて……!)ギリギリギリ…!


ビュン!


――ズガンッ!!!


弓道部3年「!?」ビクッ!

弓道部1年「えっ!?」


パラパラ…


弓道部3年「的が……!」

弓道部2年「こわっ!」ブルブル

弓道部1年「怖いです……」ブルブル



海未「……的が腐ってたんでしょうか?」


――放課後 空き教室


希「なんでこんなとこからえりちの気配を感じるんやろ……」


――ヒック、グスッ、ヒック


希(……なんかすすり泣きの声がきこえる)コソコソ

希(なにやってんのかな)チラッ


穂乃果『モグ……ヒック……ング……グスッ……』モグモグ ポロポロ




希(え……なにこれは)

希(えりちがガチ泣きしながら大量のパンを食べとる……)


穂乃果『ごめんね穂乃果…エグ…ごめんね…ヒック…』モグモグ


希「…………」





希(…………)



――教室(3年)


希「…………」ペラッ

クラスメイトH「またタロットやってるー。ねえ、今度はなにを占ってるの?」

希「…………」ペラッ




希「……意図がわからんから様子見しとったけど」ボソッ

クラスメイトH「なになにー?」

希「えりちをあんなふうに泣かした奴を、このまま生かしては……」ボソボソッ

クラスメイトH「えっ?」ゾクッ


ペラッ


クラスメイトH「死神のカード……」


希「――うち、用事できたわ。早退するから、先生によろしく頼むな」ニコ

クラスメイトH「……うん」




pi.pi.pi.


希「――もしもし理事長? ……え? そうか……うんわかった、じゃあドクターに頼むわ……遠くないし……」


――生徒会室


ガラッ…


海未「…………」

絵里「あれ? 海未ちゃん、弓道部は?」

海未「少し調子がおかしかったので……それに穂乃果に確かめたいこともありましたから」

絵里「なにかな?」

海未「その、穂乃果は私のこと、嫌いに――――」


ズキッ!


絵里「――いたっ……またなんか頭がいたいや」ズキズキ…

海未「大丈夫ですか?」

絵里「海未ちゃん、いつものあれやって」ズキズキ…

海未「ああ、あれですか。では失礼しますね」


すっ……


海未「…………」スリスリ

絵里「…………」


海未(――――――)ナデナデ

海未『いたいのいたいのとんでけー』


絵里「ん……」スゥッ…


海未「どうですか?」スリスリ

絵里「……海未ちゃんのそれさ、昔から本当に効くよね。ずっと不思議に思ってるんだ」

海未「小さい頃、母がよくやってくれました。コツがあるんですよ」

絵里「なんで効くのかな?」

海未「『よくなってほしい』と心から願うことなんですって。私、母にされるのが大好きでした」

絵里「海未ちゃんのお母さんって一見厳しそうな人だよね」

海未「そばにいると本当の優しさというものが伝わってきます。すごい人です」



絵里「お母さんのこと、本当に好きなんだね」

海未「ふふ、もちろんです。私のこの髪も、母に言われてずっとこの長さにしているんですよ」

絵里「ふうん、なんでだろ? その長さに意味があるのかな?」

海未「魔を退けるためだとか。なんにせよ、母のことは大好きです」


絵里「穂乃果も海未ちゃんにされるの大好きだよ。癖になるよね、海未ちゃんの指先」

海未「私もこれをするときは指先に願いをこめています」

絵里「独自の進化を遂げた海未ちゃんの指先」

海未「真姫に言わせれば医学的な根拠もあるらしいですよ。人肌がどうとか、プラセボがどうとか」

絵里「難しいことは穂乃果よく分かんないや。とにかく、ありがと」

海未「これくらいいつでも、いつまでも」



絵里「いつまでも大好きだよ、海未ちゃん。穂乃果はもう怒ってないよ?」

海未「……そうですか。私、すっきりしたので弓道部に戻ろうと思います。なぜか怖がられてますが……」


――ガラッ

――――――――

――――――――――――


――――――――――――

――――――――

――ガラッ


穂乃果「…………」

絵里「あれ? 絵里ちゃんどうしたの?」

穂乃果「なにか生徒会の仕事を手伝おうと思って……」

絵里「急にどうしたのかな?」

穂乃果「穂乃果のために私がなにか出来ることはないかなって……」

絵里「?」


穂乃果(……罪滅ぼしに)


――――――――


穂乃果「――…………」ペラッ ペラッ

絵里「さすが仕事はやいなあ、絵里ちゃん」

穂乃果「こっちは全部終わったわ」トントン

絵里「ちょっと休もっか」ノビノビ

穂乃果「そうね」

絵里「絵里ちゃんさ、最近ずっとなに読んでるの?」

穂乃果「この恐竜図鑑のことかしら?」パラパラ


絵里「あっ、穂乃果その恐竜さん知ってる!」

穂乃果「恐怖の象徴、ティラノサウルスよ」

絵里「うん。映画とかで見たことある」

穂乃果「ほらみて、怖い顔でしょ?」


絵里「怒った時の海未ちゃんに似てる」

穂乃果(この子ってたまに鋭いわよね……)

絵里「海未ちゃんってさ、怖いよね」

穂乃果「それは穂乃果が怒らせるようなことをするからじゃないかしら……」

絵里「海未ちゃんといるとすぐ雷が落ちるよ」

穂乃果「私、音速まくら投げをぶつけられたことあるんだけど……痛かったわ」



絵里「なんでそういうのいつも絵里ちゃんに当たるのかな? 廃校決定の年の生徒会長も今回の入れ替わりも……」

穂乃果「私、なんか悪いことしたのかな……」

絵里「前世でなにかしたんじゃない? 人を襲ったりとか」

穂乃果「するわけないでしょ……」

絵里「とにかく海未ちゃんのそばにいるのはおっかないってことだよね」

穂乃果「……海未は無自覚で弱点攻撃をくりだす才能があるかもしれないから気をつけてね」

絵里「そうかな?」



穂乃果(亜里沙も普通のファンのはずだったんだけど最近どうも変ね……無自覚って恐ろしいわ)


絵里「あっ、これは? ガードかたそう!」

穂乃果「ユーオプロケファルス。『武装した頭』っていう意味よ。完全防御よね」

絵里「トゲトゲしてて、おいしそうだよね」

穂乃果(そうかしら?)



穂乃果「……何かあると心を閉ざして、殻にこもっちゃう。いつもどこかで予防線を張って、理論武装して……」

絵里「なんのこと?」

穂乃果「そんな人、穂乃果の身近にいない?」

絵里「いないと思うなあ」

穂乃果「そう……」

絵里「だって恐竜さんは絶滅しちゃったんだよね。かわいそう」


穂乃果「……恐竜が絶滅した理由はよくわかってないの」

絵里「隕石じゃないの?」

穂乃果「それが有力な仮説とされているけど、はっきりしたことはわかってないわ」

絵里「へー、そうなんだ」


絵里「あっ、これは? ガードかたそう!」

穂乃果「ユーオプロケファルス。『武装した頭』っていう意味よ。完全防御よね」

絵里「トゲトゲしてて、おいしそうだよね」

穂乃果(そうかしら?)



穂乃果「……何かあると心を閉ざして、殻にこもっちゃう。いつもどこかで予防線を張って、理論武装して……」

絵里「なんのこと?」

穂乃果「そんな人、穂乃果の身近にいない?」

絵里「いないと思うなあ」

穂乃果「そう……」

絵里「だって恐竜さんは絶滅しちゃったんだよね。かわいそう」


穂乃果「……恐竜が絶滅した理由はよくわかってないの」

絵里「隕石じゃないの?」

穂乃果「それが有力な仮説とされているけど、はっきりしたことはわかってないわ」

絵里「へー、そうなんだ」


穂乃果「……でもわたしにはわかる」

絵里「え?」



穂乃果「恐竜はね、強すぎて、絶滅しちゃったのよ」

穂乃果「強すぎて、誰も近づけなくて、生き残るための戦いに勝っても、愛してくれるひとがそばに近寄れなくて」

穂乃果「それで種が途絶えちゃったの。どんなに強くても、戦いに勝って生き延びても――」

穂乃果「――愛されなくちゃ、生存競争には負けてしまうの。勝ったことにはならないのよ」


穂乃果「にこが言ってたわ。愛されることが生存競争の基本だって……」

穂乃果「……あなたにはそれができる。今回、あなたの姿で過ごしてみて、それがわかったの」

穂乃果「穂乃果は、みんなから愛される才能があるわ」

穂乃果「だからきっと生存競争にも勝ち残れるでしょう」



絵里「?」


絵里「ところで、なんで最近ずっと恐竜の勉強してるのかな?」

穂乃果「……敵を知れば百戦危うからず。ロシアのことわざよ」

絵里「絵里ちゃん、100戦もするんだ」

穂乃果「……それ、洒落にならないからやめてくれないかしら」

穂乃果(穂乃果のファンって100人はいるわよね……)



穂乃果「敵は100人以上いるけど、なにより二頭の恐竜を倒さないとね……」

絵里「恐竜は戦う相手じゃなくて愛でるものだって聞いたことあるよ。穂乃果もそう思う」

穂乃果「わたしの話聞いてた? 穂乃果は恐竜になっちゃだめよ」

絵里「うん、穂乃果は恐竜にはならないよ。図鑑みて思ったの」

穂乃果「ん?」

絵里「穂乃果は、恐竜が大好きになっちゃただけ」

穂乃果「…………」

絵里「だからもう絶滅なんてしてほしくない。愛しあおうよ」

穂乃果「……さ、仕事に戻りましょう」

絵里「そうだね!」


絵里「――じゃあ、あとはそこの掲示物を画鋲でとめてもらえるかな?」

穂乃果「わかったわ」スタスタ


ぶすり!


穂乃果「痛っ……!」

絵里「絵里ちゃんどうしたの?」

穂乃果「いたた……たまたま落ちてた画鋲を踏んでしまったみたいね」

絵里「消毒したほうがいいよ。一緒に保健室行こ?」


――保健室


絵里「絵里ちゃん、そこ座ってて」

穂乃果「血が出てる……ごめんなさい、あなたの身体なのに」

絵里「そのくらいいいって。穂乃果は画鋲なんて踏んだことないけど」

穂乃果「……気をつけるわ。あなたも薬指を切り取られないように気をつけてね」

絵里「ん? いま消毒液とか探すね」ゴソゴソ

穂乃果「足の裏って、自分では消毒しにくそうね……」ググッ

絵里「あった。じゃあ穂乃果がやるよ。あし出して?」

穂乃果「え……なんか悪いわね、この体勢」スッ



絵里「別に穂乃果はこれくらい全然……」チラッ


ドクン…ドクン…


絵里(ん……?)ドクンドクン

穂乃果「どうしたの? 固まっちゃって」

絵里「いや……穂乃果のあし、おいしそうだなって……///」ドクンドクン

穂乃果「は?」

絵里「あしっていうか、血かなぁ……赤くて、綺麗……///」ドクンドクン

穂乃果「えっ、ちょっ、あなた眼の色おかしいわよっ!?」

絵里「ねぇ、なめてもいいかな……?///」ドクンドクン

穂乃果「何言ってるの!? ダメに決まってるでしょぉ!///」ジタバタ

絵里「ちょっとだけ! ちょっとなめるだけだから!」グイッ!



バタン!



穂乃果(ベッドに押し倒され――――っ)サーッ

穂乃果(何かしらこの力……!?)ジタバタ


絵里「はぁ、はぁっ……ごめん、穂乃果、我慢できないかも……///」グググッ!

穂乃果(ダメっ!)



絵里「――んちゅ……れろ……///」チュッ、チュッ

穂乃果「足の裏なんて舐めないでぇっ!」ジタバタ

絵里「おいし……んちゅ、なにこれ……からだがすごく熱くなる///」チュウッ

穂乃果「くすぐったいわよっ! 傷口っ、吸わな……っ!」ウルウル

絵里「穂乃果……これもっと欲しいな」ガシッ


ぐいっ!


穂乃果「えっ!? ちょっと、なにを……」

絵里「んん……んちゅ///」チュッ、チュッ

穂乃果「やっ、そこはうなじ――」

絵里「ねぇ絵里ちゃん、ここ噛み付いてもいいかな……?///」レロレロ

穂乃果「はぁっ!?」ハァハァ

絵里「いいでしょ? ねっ? 穂乃果のからだ、なんだしさ……!///」ハァハァ

穂乃果「やめてっ……あなたこわいわ……」ウルウル









絵里「――もう我慢、できない……っ!///」ガバッ!

穂乃果「きゃああっ! 誰か助けてっ――――!!」

-------------------------------------------------------

――その頃 希 車の中


ブロロロロッ!


希「――くれぐれも安全運転で頼むな。特に市街地は」

西木野「わかったわ」

希「なにこの車……見たことない型だけど」ソワソワ

西木野「防弾仕様だから一般に出回ってないだけよ。気密性が高いけど、電波も入らないわ」

希(それで落ち着かないんかな……)ソワソワ



希「……コングロマリットかなんかしらんけど、そういや車も作ってたなあ、西木野は」

西木野「あらよく知ってるのね。西木野の名前は出てこないはずなんだけど」



希「ドクターは直接関係ないんだろうけど、いくらなんでも手を広げすぎやん?」

西木野「乗り心地悪そうね。こういう車は嫌い?」

希「まあうちが憧れるんはファミリーワゴンとか……9人乗れるやつかな」

西木野「あら、用意しましょうか」

希「いやいやいや、うち免許ないからな!?」


西木野「ごめんなさい、私もヘリの免許は持ってなくて」

希「理事長はなんで持っとるんやろなあ」

西木野「それは多分……」

希「……ちょい待ち。聞きたくない。言わんといて」

西木野「わかったわ」



希「ドクターは嘘つくの下手だからなあ」

西木野「私、正直が信条だもの」

希「サンタいるって娘に嘘ついとるやん……」

西木野「え? サンタはいるわよ? 知らないの?」

希「は……?」


希「あ、本物のサンタがフィンランドいるんやったっけ。毎年呼ぶん?」

西木野「それ、よくある勘違いでフィンランドじゃなくてグリーンランドよ。それも勘違いなのだけれども」

希「まあ本当にサンタがいないのかってなると、もう悪魔の証明だけどさあ……」

西木野「ヴァンパイアも本当はルーマニアじゃないしね。そっちで広まってるけど」

希「有名なんはルーマニアというか、ワラキアをモデルにした小説でしょ。1897年やったっけ」

西木野「そっちのドラキュラ伝説じゃなくて、大昔に実在したほうのヴァンパイアよ」

希「実在はサンタくらいに留めとき……」


西木野「それよりずっと、ずーっと昔にね。人間を激しく憎むヴァンパイアがロシアで暴れてたのよ」

希「ああそー。それは大変やー。どうしよー」

西木野「肌は雪のように白く、髪は怪しく光る金色で、それはそれは美しい女ヴァンパイアだったとか」

希「ありがちやなあ」

西木野「尖った銀の十字架だけが弱点みたいで、唯一対抗できる武器だった」

希「吸血鬼らしいな」

西木野「討伐隊と激突したときは、悪魔のように計算高くて、軍神のように強かったらしいわ。無敗ですって」


希「どうやって退治したんよ、それ」

西木野「人間にさわりたくなくて、血を吸えなくて死んだわ」

希「それのどこが計算高いのか……かしこくなさすぎやろ」

西木野「血は恋の味。きっと恋を知らない吸血鬼だったのね」

希「このひとほんとに医者かな?」

西木野「ところがほとんど同じ姿で何度か転生した記録があるわ。恐れた人々は襲われる前に串刺しに……」

希「生まれ変わりとかなんでもありやね……ってそうじゃなくて」


西木野「なにかしら?」

希「ええと、うちはドクターに園田の家のこと聞こうと思っとったんよ。占領時代に解体されたやん」

西木野「ああ、強すぎたからね……むしろ進んで受け入れたというか、反対しなかったらしいわ」

希「ん、もしかして西木野財閥の場合みたく南の家が絡んどるん?」

西木野「どうかしら……理事長、そういう話はしないから……西木野が南に恩があるって話も、私たちはしたことないし」

希(まあ普通するもんやないしな)


希「うち、園田の家が衰退したのは知っとるけど、それ以上のことは詳しくないんよ」

西木野「衰退というか、ひとつの戦略だったんじゃないかしら」

希「戦略?」

西木野「解体の名を借りた厄介払いだったのかもしれないけど」

希「あー、経営スリム化みたいな? 少数先鋭で血を濃くしていく道か、もしくはクリーンにするためか……」

西木野「巨大化させることだけが生き残りの能じゃないでしょ? 恐竜じゃないんだから」

希「あんたがそれを言うんか、あんたが」


西木野「私はあくまで病院の人間であって、べつに西木野本体とは……」

希「それで、スリム化だか厄介払いだかで、切り離されたほうの園田はどうなったん?」

西木野「今の名前までは知らないけど、もしクリーンにするためだったとしたらややこしいことになるわね」

希「まあ素直に解体されたってことにしとこか。あっ……」

西木野「なにかしら?」

希「うちのお札、用意してくれた?」

西木野「出雲の10年物が5枚ね」


希「5枚かぁ……」

希(うちなんか調子がおかしいし、不安やなあ……)

-------------------------------------------------------


――保健室


絵里「……いただきます///」アー…

穂乃果「誰か――――っ!///」プルプル



ガラッ!!



真姫「――エリーっ!!」バン!

穂乃果「真姫っ!?///」

真姫「なにやってるのよ! しっかりしなさい!」バッ!



パシン―ッ!


絵里「……ほっぺ痛いよ。なんで」ヒリヒリ

真姫「あんたの眼の色がおかしかったからでしょ」ハァハァ…



絵里「真姫ちゃん、ひどくないかな?」ヒリヒリ

真姫「エリー、じゃなくて穂乃果……ちょっとうちまできなさい」グイッ

絵里「え? ちょっと、真姫ちゃん引っ張らないで」グイグイ



穂乃果(なにかしらこれ……身体の血が熱い……?///)ドクンドクン

穂乃果「ねぇ真姫、さっきから一体何なのよ?」

真姫「……サンタクロースをバカにするような人には教えてあげない」プイッ

穂乃果「え?」


――――――――

――――――――――――


――西木野邸 ダイニング


真姫「――絵里の身体はね、貧血体質なのよ」

絵里「貧血体質?」

真姫「悪性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血……どれでもないのだけれどね」

絵里「あ、料理がきたっ!」


カチャ、カチャ


真姫「これはレバーとナッツの炒めもの。これは生ハムとイタリアンパセリのリゾット」

絵里「これすごく美味しいっ!」ガツガツ

真姫「それは鴨料理よ。鴨肉と血のソース。フランスの、400年以上続いてる伝統的な……」

絵里「る、る……きゃ、な……?」ガツガツ

真姫「ラ・トゥール・ダルジャンって言いたいのかしら、それ。まあ気分的なものよね」


絵里「真姫ちゃんは何食べてるの?」ガツガツ

真姫「キスの梅肉焼き、むかごのウニ焼き、それにカラスミかしら……相変わらずママのシェフは変な趣味」

絵里「ウニ焼き……おいしいの?」

真姫「テキトーよ、こんなもん。ウニが気になるのかしら?」ブスッ

絵里「フォークで食べるんだ……」

真姫「ほんとはね、私はもっと家庭的なやつのほうが好きなのよ」モグモグ





絵里「にこちゃんの手料理みたいな?」

真姫「」ブフーッ!

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――その頃 希


希「――ここか。なんか普通の建物やん。表札でてるし……」

希「『悪の組織 東の支部』……ってなにこれ」

希「インターホン押してみよ」ポチッ


ピンポーン……


希「…………」シーン


希「……出るわけないか」

希(じゃあなんでついとるんかな?)

希「扉は鍵かかってる……なんか常識的やな」ガチャガチャ


希(こんなとこでお札使いたくないけどしゃあないな。単純構造の物理的な壁やし)スッ

希(危ないから少し下がってと……)スッスッ…

希(さて、何枚消費してしまうんかな? 3枚かな……)



希(お札にうちの神経を通して――)すぅぅっ…



ピィィン!


希(投げつけるっ)シュッ――!



――ボカンッ!

パラパラ…



希「あれ? 案外脆い扉やったなあ……まあいいか、1枚で済んだし」

希「おじゃましまーす!」ペコリ

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――西木野邸 ダイニング


絵里「――あ、このお茶おいしいね。好きかも」ゴクゴク

真姫「ルイボスティーよ。ミネラルが豊富でタンニンが少ないの。非ヘム鉄にタンニンはよくないから」

絵里「穂乃果の家はよく緑茶がでるけど?」

真姫「……あなたはいいんじゃないかしら。それに和菓子屋さんなんでしょ」

絵里「今は控えればいいんだね。何を食べればいいの? おにく?」

真姫「しいて言えば牛肉や鶏肉より豚肉のほうがいいわ。ビタミンB群も大事よ」

絵里「わかった、豚肉ね。パンはだめ?」

真姫「べつにいいけど」

絵里「じゃあ穂乃果はカツサンド食べたい! コックさんにカツサンドを作ってもらおう!」



真姫(え? まだ食べるの?)


絵里「あとマイボスティーのおかわりちょうだい!」

真姫「穂乃果のボスって誰なのかしら。でもあなたって一流のゲストよね」

絵里「なんか真姫ちゃん機嫌いいね。めずらしー」

真姫「遠慮が美徳とは限らないって話よ。ねえ穂乃果、これからはいつでもうちに来なさい」



絵里「ん? いいよ、パン焼いて待っててね」

真姫「もちろん。歓迎するわ」

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――その頃 悪の組織 東の支部


ガルルルルルル……!(機関銃の音)


希(この銃声……MG4かな?)サッ

希(ここで隠れとこ……)コソコソ


ガルルルルルルッ!


希(うち相手に銃器向けるとか素人なんかなあ。ふつうに石投げられたほうが困るんだけど)ペタペタ

希(攻撃意思へのカウンターほど楽なものはないな……メカとか、構造が複雑なものもな)

希(スピリチュアル、こんくらいの距離届くやろ)スッ


すぅぅっ…

…ペタッ


希『想いを伝える――ひとを傷つけようとするもの、うちは大嫌い――』


バキッ!


「!?!?」


希「それは悪意がジャムっただけよー」

「!」バッ

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――保健室 ベッドの上


穂乃果「――う……///」ドクン…ドクン…

穂乃果(さっきから何かしら、この気持ち……)ドキドキ

穂乃果「おかしいわ……///」ギシッ…


ゴロン…


穂乃果(…………)モゾモゾ


穂乃果「…………///」モゾモゾ


穂乃果「……いやいやいや、なに考えてるのよ私ったら――!」バタバタ

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――その頃 東の支部の中核


希「――笑わせるやん、こんな素人集団でうちを迎え撃とうだなんて……」ジリジリ


「っ……」


希「さあ、おしおきの時間よー?」


すぅぅっ……



希「――――この世の邪はうちが祓う!!」



――カッ!!!



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――西木野邸 ダイニング


絵里「――カツサンドおいしー!」ガツガツ

真姫(ほんとだ、こんなおいしい料理知らなかったわ……また作ってもらおうかしら)モグモグ





絵里「――――っ!」ビクッ!




真姫「穂乃果、どうしたの?」モグモグ

絵里「戻ったわ……」フゥ…


真姫「……よかったわね」モグモグ

絵里「これ、なにかしら?」

真姫「カツサンドよ。エリーもどうかしら?」モグモグ

絵里「……遠慮しとくわ」

真姫「そう……明日、病院きなさいよね」モグモグ

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――希 帰りの車の中


ブロロロロッ…


西木野「――今回のお札はどうだったかしら」

希「なかなか上等やね。用意するの大変だったんじゃない?」

西木野「そうね、最近はなかなか数が……」

希「これだけのもんがあればしばらく補充はいいよ。あと4枚もあるし」

西木野「用意した甲斐があったわ」クスクス

希「今回は素人が相手やったけど、これなら次はエキスパートが4人いても楽勝やな」

西木野「安全運転で帰るわね」



ブロロロロ……



――――――――

――――――――――――

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――次の日


絵里「…………」ペラッ


ガチャッ!


穂乃果「――絵里ちゃぁん! 元気? 読書中?」


きゅっ


穂乃果「絵里ちゃん大好き~」サワサワ

絵里「…………」ぺらっ

穂乃果「絵里ちゃんも穂乃果のこと好きだよね?」ベタベタ

絵里「…………///」ぺらっ

穂乃果「もう、なんでもくもくと本を読んでるのさー」グリグリ

絵里「……ねぇ穂乃果。わたし気づいたんだけど、今は水曜日の放課後よね」キリッ

穂乃果「そうだよね!」スリスリ

絵里「……いいのかしら?」

穂乃果「え? あっ、海未ちゃんとことりちゃんからメールきてる! あああああっ!」

絵里「はやく行ってきなさい……///」

穂乃果「ごめんなさい絵里ちゃん、また後でねっ!」ダダダッ!


バタンッ!


絵里(元通り、か…………)


――バタンッ!


穂乃果「――言い忘れてた!」

絵里「どうしたの?」

穂乃果「ねぇ絵里ちゃん」

絵里「なにかしら?」

穂乃果「もし欲しいなら――」














穂乃果「穂乃果の血なんてぜんぶ絵里ちゃんにあげるからね」

絵里「え?」

穂乃果「絵里ちゃんに敵が100人いるなら、穂乃果が絵里ちゃんのこと100人分愛してあげる」



――穂乃果編 おわり――


――西木野病院


西木野「――はい、とても健康的です。急によくなりましたね」

絵里「あの……西木野先生」

西木野「なにかしら?」

絵里「結局私の身体って、一体なんなんでしょう」

西木野「貧血よ?」

絵里「悪性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血……そのどれでもないって」

西木野「だから、普通の鉄欠乏性貧血だわ。少なくとも医学的にはね。女の子にとっては珍しくないでしょ?」

絵里「え……」

西木野「あなたね、食べなさすぎるのよ。無理なダイエットはダメよ」

絵里「別にダイエットなんて……ただ悩んでるときは食欲がなくて……」

西木野「精神的なものに由来する食欲不振なんでしょうね、きっと。悩みで食欲のことを忘れているのよ」

絵里(最近嫌でも思い出させられたわ)

西木野「でも栄養状態がとてもよくなってるからしばらくは心配ないわ。なにかしたのかしら」

絵里(穂乃果に感謝しないといけないわね……)


西木野「ところで悩みって、なにかあるのかしら」

絵里「……血が吸いたくなる病気って、ありますか?」

西木野「いわゆる好血症とか、ヘマトフィリアとかヴァンパイアフィリアという言葉はあるけど……」

絵里「病気なんですか」

西木野「一般的な医学体系上にそういう診断は存在しないわ。あっ、厳密にはないこともないのかしら……」パラパラ

絵里「……西木野先生がそういう医学書みたいなのをめくってるの初めて見るんですが」

西木野「これは出来たばかりのDSM-5っていう……疾患の分類と診断の手引よ。最新の分類基準ね」パラパラ

絵里「どんな分類なんですか!?」

西木野「これによるとね、血が吸いたくなるのは――」









西木野「paraphilic disorder……わかりやすく言えば、性的倒錯ね」

西木野「……あなた、もしかして性的欲求不満?」


絵里「」


――絵里編 おわり――

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――それからの入れ替わり


2回目(7日後) 穂乃果ハートな海未ボディ  (1作目)
ことり「穂乃果ハートな海未ボディ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402573067/)

3回目(12日後) 亜里沙――雪穂 入れ替わり

4回目(17日後) 海未ハートなことりボディ (2作目)
穂乃果「海未ハートなことりボディ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403273291/)

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――ある日 部室


凛「…………」グテー









海未「……あの、どうしましたか?」

凛「凛はいまおなかいたいの。ほっといて……」グッタリ

海未「部室にイブプロフェンがありますが」

凛「凛は薬きらいなの……」グテー

海未「そうなんですか」

凛「あーあ、誰か凛の身体代わってくれないかな……」グテー

海未「そんなめったなことは起きませんよ」

凛「だってもう6人、5組くらい入れ替わってるでしょ?」

海未「亜里沙と雪穂のをいれたら6組ですね」

凛「だから凛も……」グッタリ



海未(凛にここまで元気がないと、なんかこう……そわそわします)ソワソワ


海未「……あの、私がさすりましょうか」

凛「もう、ほっといてってば……うっとおしいなあ」

海未「そういわずに、ほら」

凛「なんなのもう……」



海未「服の中に手をいれますね」ゴソゴソ

凛「ちょっ、なにやって……///」モゾモゾ



海未「…………」スリスリ

凛(なにこれ……手のひらがすごく熱い……///)


海未(――――)


海未「いたいのいたいのとんでけー」スリスリ

凛(ほんとお母さんみたい)クスッ


海未「……痛いの治りましたか?」

凛「もう、そんなことあるわけ…………」













凛「…………あれ?」パチクリ


海未「よしよし」ナデナデ

凛「なんで凛の頭をなでるんだにゃー!?///」


海未(……元気が出てよかったです)ナデナデ

海未(だって私は元気な凛が好きですから……)ナデナデ














凛「――えっ?///」

海未「あっ」


――凛編 おわり――


おつぷわ!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月15日 (火) 00:28:53   ID: _syAagt-

両想いがおらんやん…

2 :  凛ちゃん好きのう33さん   2014年07月15日 (火) 00:29:48   ID: LkWoTrYJ

えっ、うみりんはやらないの?

3 :  SS好きの774さん   2014年07月29日 (火) 08:44:25   ID: V-6RGYTY

話懲りすぎてわけわからん

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