~~夜。見滝原郊外。自然公園
ラジオ『……およそ9000年に一度の周期で地球に接近する……ザザッ……彗星が肉眼でも観測できるのは今日から3日間となり……』
さやか「ほら、みんな急いで急いで!」
杏子「ったく、あいつは……あたしたちに荷物持たせといて」
仁美「仕方ありませんわ。こんな満点の星空なんですし」
マミ「ふふっ。はしゃぎたくなる気持ちも分かるわね。私だって何だか落ち着かないもの」
さやか「ほらー!みんな早くー!いい場所取られちゃいますよー?」
ラジオ『……各地で彗星を観察するイベントが催されており……ザッ……』
杏子「ったく。望遠鏡がこんなに重いものだとは……」
仁美「あの……杏子さん。やはり私も少し持ちますわ」
杏子「いーよ。じゃんけん負けたのはあたしなんだから」
マミ「山頂までもう少しよ。頑張って佐倉さん?」
杏子「……帰りは絶対お前に持たせてやるからな、マミ」
ラジオ『全国の天文ファンは……ザザッ……絶好の…ザザッ…日和で…ザザァー……ピー……ザザッ……ザザッザザザザッ……
仁美「あら。ラジオの調子がおかしいですわね……故障でしょうか?」
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~~山頂
ガヤガヤ
さやか「やっと着いた……って、めっちゃ人いるじゃん」
仁美「街からいちばん近い観測ポイントですから仕方ありませんわ」
マミ「賑やかなのもいいじゃない。お祭りみたいで」
杏子「これで屋台でも出てりゃあ言うことないんだけどな」
さやか「あんたは食べることばっかりね」
杏子「食い物の話してたら腹減ってきたなぁ……マミ、ちょっとそのランチボックス貸してくれないかい?」
さやか「あんたねぇ……あたしたちは天体観測に来たのよ!?お弁当食べに遠足来たわけじゃないんだからね!?」
杏子「へっ、彗星だか油性だか知らないけどさあ。そんなもん見ても腹の足しにはならないっての」
さやか「あんたには宇宙のロマンはわからないか……」
マミ「まあまあ。お夜食は後で頂きましょう。それにしても綺麗な星空……暁美さんにも見せてあげたいわ」
仁美「そうですわね。ほむらさんもいらっしゃればよかったのに……」
さやか「ほんとよねー。あいつのことだからてっきりまどかについて来ると思ったんだけどねー」
杏子「……ん?おい、そーいや……まどかは?」
さやか「えっ!?あれ?あんたたち一緒じゃなかったの!?」
仁美「途中までは確かに一緒でしたわ。ええと……ラジオが壊れる前くらいまでは私たちの後ろに」
マミ「大変……はぐれてしまったんだわ」
杏子「おいおいマジかよ。迷子だなんてガキじゃあるまいし」
さやか「いや、まどかならやりかねないよ……」
仁美「ええ、まどかさんなら仕方ありませんわ……私たちの不注意です」
杏子「あいつ、そんなに信用ねーのか……」
マミ「急いで探さないと……暗い山道じゃ危険だわ。きっと心細い思いをしているでしょうし……」
さやか「まあまあ落ちついて。こういう時のための文明の利器、携帯電話ちゃん…………が、圏外です」
杏子「使えねーな」
さやか「あたしのせいじゃないからね!?」
マミ「志筑さんはここに残っていて貰えるかしら。行き違いにならないように」
仁美「わ、わかりました」
マミ「ほら、あなたたち急いで!鹿目さんを見つけてあげないと!」
杏子「ったく仕方ないね。世話の焼ける奴だよ」
さやか「わ、わかりました!じゃ仁美、いってくるよ!」
仁美「ええ。お気をつけて……まどかさんをよろしくお願いします」
マミ「二人とも変身するわよ。その方が早いわ!」バシュゥゥ…キュピーン!
さやか「そうですね、わかりました!」バシュゥゥ…キュピーン!
杏子「今ごろオオカミにでも喰われちまってたり……」バシュゥゥ…キュピーン!
さやか「ちょっと杏子!縁起でもないこと言わないでよ!」
杏子「冗談だっつーの……っ!?オイ、マミ!」
マミ「……っ!?これは……魔女の気配が……すぐ近くだわ!」
さやか「まさかまどか……魔女の結界に迷い込んで……」
杏子「おいおい冗談じゃないっつーの……!」
マミ「こっちよ!急いで!」
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まどか「さ、さやかちゃーん……?仁美ちゃーん?杏子ちゃん……?マミさーん!」
まどか「うぅ……暗いし怖いし、元来た道も分からないし……木ばっかりだし……」グスッ
まどか「みんなー?どこ行っちゃったのー?」
シーン……
まどか「うぅ……お家に帰りたいよぉ……」
ギャギャギャ!!!
まどか「ふひぇっ!?な、何!?」ズテッ
ガァー、ガァー、バサバサ……
まどか「と、鳥?うぇぇ……怖いよ……もう嫌だよぅ……」
ガサガサ…
まどか「ひいっ!?今度は何……っ!??」
ガサガサガサ……
ニョロッ
まどか「!?」ビクッ
触手蟲「……」ニョロニョロ…
まどか「ひいっ!?なんかニョロニョロしてる!?」
触手蟲「……!」ワキャワキャ!
まどか「ふひぃっ!?お腹の辺りがワキャワキャしてるぅぅぅっ!?お、おっきな虫のお化け……っ!」
触手蟲「……。」ワキャ…
まどか「……え?あれ……急に元気が無くなっちゃった……?」
触手蟲「……」ニョロ…ニョロ…
まどか「……もしもーし……えーっと、あのー……?」
触手蟲「……」ニョロ…
まどか「おばけ……さん、ですか?」
触手蟲「……」
まどか「わたし鹿目まどかって言います。友達と天体観測に来た途中ではぐれちゃって……」
触手蟲「……」ニョロ…
まどか「あ、あの……元気ないみたいですけど、大丈夫ですか?」
触手蟲「……」ワキャ…
まどか「あ!脚に怪我してるの!?大変だ……!あの、ちょっと待ってて!えーっと確かママに貰ったハンカチが……」ゴソゴソ
触手蟲「……!」ワキャワキャ!
まどか「だ、大丈夫だから……大人しくしてて……っ」キュッ
触手蟲「……」ワキャ…
まどか「これでとりあえずは大丈夫だよ。傷口はキレイな布で保護しないと菌が入っちゃうからね……へへへっ、あたしもよく転んで擦りむくから応急手当ては得意なんだ」
触手蟲「……」ニョロニョロ…
まどか「……(成り行きで手当てしちゃったけど)」
触手蟲「……」ニョロニョロ
まどか「(この得体の知れない生き物は何なのだろう……)」
まどか「あ、あのー……あなたは誰……というか何なんですか?」
触手蟲「……?」ニョロニョロ
まどか「うぇ……えーっと、じゃあどこから来たんですか?」
触手蟲「……!」クイックイッ
まどか「え……木の上?」
触手蟲「……」ワキャワキャワキャワキャ!
まどか「も、もっと上って空の……もっと上?それってもしかして……あなた、宇宙から来たの?」
触手蟲「……」ニョロニョロ
まどか「じゃああなたって……宇宙人!?」
触手蟲「……」ニョロ!
まどか「どうしよう……なんだか魔法少女よりも大変なモノに遭遇してしまったような……」
ウフフフフ…キャハハハハ…
まどか「へ?あなた今、笑った?」
触手蟲「……?」ニョロ?
まどか「違うよね。じゃあいったい誰が……」
ズズズズズ……
まどか「え!?これって魔女の……!?景色が……変わってく!」
グニャァァ……
触手蟲「……!?」ワキャワキャ!
まどか「し、しっかり捕まってて!手を離しちゃダメだよ!」ガシッ
触手蟲「……!」ワキャ…
まどか「落ちついて……とりあえず逃げなきゃ……!」
触手蟲「……」ニョロニョロ…
ズズズズズ…
魔女「ゥオ……ォン……」ズル…ズル…
まどか「ま、魔女だ……まだこっちに気づいてないみたい」
触手蟲「……」ニョロ…
まどか「歩ける?今の内に……」ペキッ
まどか「あ」
魔女「ミツ……ケタ、ケタケタケタケタケタケタ!」グリンッ、ズルズル…
まどか「ひっ!?こっちに……」ガクガク
魔女「ワタシノオオオオオ!」ブォンッ!
まどか「いやぁあああああああっ!?」
バチィッ!
魔女「……ガ!?」グラッ
まどか「……え?」
触手蟲「……ウニュル」ヒュンッ、ヒュンッ…
触手蟲「ニュル!」ヒュバッ!
魔女「アギッ!?ガ!?」ビシッ、ドガッ
まどか「す、すごい……触手で魔女と戦ってる!?」
タタタタ…
さやか「まどか!よかった……間一髪って所だったわね」
杏子「無事か?怪我してないか?」
まどか「杏子ちゃん!さやかちゃん!よかったぁ……もうダメかと思ったよ……」
さやか「まったく心配かけさせるんだから……」
まどか「ごめんなさい、さやかちゃん……」
杏子「あのさー、せっかくの所悪いんだけどさぁ……アレはいったい何なんだい?」
まどか「え?アレって……」
触手蟲「ウニュル」ブオンッ、バシィッ!
魔女「キイイイ!」ガッ、ドガッ!
さやか「……怪獣大決戦?」
まどか「お願い!あの子を助けてあげて!怪我してるのに、私を魔女から守ってくれたの!」
杏子「念のため聞いとくけどさぁ……『あの子』ってのはどっちだい?」
まどか「あっち!触手から虫の脚が生えてニョロニョロしてる方!」
さやか「うげっ!?あっちが味方なの?めっちゃキモいんだけど……」
杏子「ありゃいったい……何だ?」
まどか「良い宇宙人なの!お願い!」
さやか「宇宙人というかどうみても宇宙生物だけど……」
杏子「わかったよ。さっさと終わらすぞ、さやか」ジャキッ
さやか「……オーケー。詳しい話は後で聞かせてもらうわ」シャキッ
杏子「おらっ!隙だらけだよっ!」ヒュンッ、ジャラララ…!
魔女「ウガッ!?」ガシャン、ギチギチ…
触手蟲「……!?」ニュル…
杏子「おい宇宙人!あんたは下がってな!後はあたしら魔法少女に任せてもらうよ……さやか!」
さやか「よっしゃー!これでトドメだぁーっ!!」カッ----ズバァッ!
魔女「アギャァァアアアアイイイッ!!?」ボシュゥゥ……
まどか「やった!さやかちゃん!かっこいい!」
さやか「へへっ、どんなもんだい!あたしにかかれば魔女の一匹や二匹、あっという間なんだから!」
杏子「ったく、すぐ調子に乗りやがって……お、結果が消えたな」シュゥゥゥ…
マミ「どうやら間に合ったみたいね。鹿目さん、無事でなによりだわ」
まどか「ウェヒヒ……ご心配おかけしました……」
さやか「魔女も無事に倒したわけだし、はやく仁美の所に戻ろうよ」
杏子「ん?あ、おいその前に……」
マミ「そうね。ようやくみんなで天体観測ができるわね。鹿目さんも……」
触手蟲「……」ウニョルニョルニョル!
マミ「ひぃっ!?なんなのソレっ!?」ジャキッ!
まどか「マミさん!?銃を下ろしてください!」
さやか「ま、マミさん?」
杏子「あちゃー……やっぱこうなっちまったか……」
マミ「どきなさい鹿目さん!さ、ささささもないと!」
杏子「マミ。そのでっかい虫みたいのはまどかの命の恩人だ」
マミ「え、ええ!?この……?」
まどか「そうなんです!見た目はちょっと変わってるけど……とっても良い子なんです!」
さやか「……らしいですけど」
マミ「わ……わかったわ。し、信じます」スッ
まどか「よかった。銃を下ろして……」
触手蟲「……キ、キキキキキキ」ワキャワキャワキャワキャ!
マミ「ひいいいっ!?無理!ごめんなさい無理よ!本能的に受け付けられないっ!!」ジャキッジャキッ!
まどか「マ、マミさーんっ!?」
杏子「マミ。お前は先に仁美の所にもどってろ」
マミ「そ、そうさせてもら……うぇっぷ」ヨロヨロ…
さやか「マミさん、肩貸しますよ」ガシッ
マミ「悪いわね美樹さん……私、どうしても脚の長い虫だけはダメで」フラフラ…
触手蟲「……」ワキャ…
まどか「ごめんね……あなたのせいじゃないから……気にしないで」
杏子「いや、つーかさ。まどか、お前そいつの言葉が分かるのか?」
まどか「あ、うん。なんとなくだけど。ねー?」
触手蟲「キ、キカ……カナ、メ……」ニュルニュル
杏子「おい、こいつ今……」
まどか「あなた、しゃべれるの?」
触手蟲「シャベ……マドカ……」ニョロニョロ
杏子「なんだよ。喋れるんじゃねーか」
触手蟲「イマ、オボエタ、カイワ、ガクシュウ」
杏子「ホントかよ……つーか口はドコだお前」
まどか「それじゃあ教えて。あなたは誰で、宇宙のどこから来たの?」
触手蟲「ワタシ、ハ、ワタシ」
杏子「まあ、そりゃそうだ。んで、生まれはドコだい?何しに地球へやって来た?」
触手蟲「ワタシ、ノ、コキョウ……アレ」クイッ
まどか「え?アレって……」
杏子「おー、他のよりデカいあの星か……ん?あんな星、あったっけ?」
まどか「杏子ちゃん!あの星って彗星だよ!私たちが今日、見に来たやつだよ!」
杏子「へー、そうだっけ?」
触手蟲「ワタシ、オチタ、マイゴ……」ニョロ…
まどか「迷子……?」
杏子「落ちたって……あの彗星からか?お前、そんな高さから落ちて大丈夫だったのか!?」
触手蟲「アシクビ、ヒネッタ、カナリ、イタイ……」ワキャ…
杏子「それで済むのかよ……」
まどか「あ、その脚って」
触手蟲「マドカ、テアテ、イタクナイ」ワキャワキャ!
杏子「へえ。まどか、なかなかやるじゃないか。偉いぞ」
まどか「うぇへへ……そうかな?」
触手蟲「マドカ、アリガガガガガ……」ワキャワキャ!
杏子「な、何だ?どうした?」
触手蟲「コトバ、マダ、ニガテ……」
杏子「あんた頭いいみたいだしすぐに覚えられるだろ。何日か経てば……」
触手蟲「ナンニチ、マテナイ、カエル、コキョウ」ワキャワキャ
杏子「じゃあ帰ればいいじゃないか」
触手蟲「カエル、デキナイ……ワタシ、トベナイ」
まどか「……自分の力じゃ帰れないの?」
触手蟲「……ウン」
まどか「パパやママは迎えに……来てくれないの?」
触手蟲「ムリ、ダレモ、トベナイ……」
まどか「え……それじゃあ……」
杏子「……一匹だけ置き去りってわけか。見知らぬ星に、たったひとりで……」
まどか「そんなっ……!ねえ杏子ちゃん、なんとかならないかな?」
杏子「あたしに聞かれてもな……分かんないよ。宇宙人を故郷に帰す方法なんてさ」
まどか「それは……でもそれじゃあこの子は」
触手蟲「……カエリ、タイ」
杏子「……わかったよ。とりあえずマミの奴に相談してみよう。一応だけど年長者だ。何かいい考えがあるかも知れない」
触手蟲「キョウコ、アリガガガガ!」ニョロニョロ!
まどか「あ、でもマミさんにこの子を見せるのは……」
杏子「大丈夫だって。そんな些細な問題は魔法でチョチョイと解決さ」パァァアア…
まどか「……へ?」
触手蟲「……ウ、ナンダ……コレハ?」モニュモニュ…
さやか「うわー!ちょっと見てよ仁美!ド迫力!あんなのが地球に落ちて来たら大変よねー……あ、ねえアレってUFOじゃない?」
仁美「マミさん、ご気分は……」
マミ「ええ大丈夫。かなり楽になったわ。ありがとう志筑さん」フゥ…
仁美「それにしても災難でしたわね。まどかさんを探してる最中に巨大なカマドウマを目撃してしまうなんて……」
マミ「しかも並のサイズじゃなかったわ。天然記念物級の特大よ。まあ、それのおかげて鹿目さんは無事に見つかったんだけど……」
仁美「私もあの手の虫は苦手ですわ。理由は分かりませんが強い嫌悪感を抱いてしまいますもの」
マミ「出来ればもう二度と視界に入れたくないわね……」
杏子「おーいマミ!待たせたな!」
マミ「ひっ!?まさか……っ?見ないわよ……私は絶対に見ないわ……っ」ギギ、ギ…
まどか「仁美ちゃん、心配かけてごめんね……」
仁美「いいえ、無事でなによりで……あら?そちらの女性はどなたですの?」
美少女「……?」
まどか「あ、うーんと……この子は……ねえ?杏子ちゃん?」
杏子「あー、あたしの魔法で外見を……じゃなくて!あたしの友達だ。さっきそこで偶然会ってさ」
美少女「キョウコ、トモダチ……」ニョルンッ
仁美「あら、いま何か……」
まどか「き、きのせいだよ仁美ちゃん!きっと通りすがりの虫か何かだよ!」
仁美「そうでしょうか?虫にしてはニュルっとしていたような……」
まどか「あ、あー!そうだ!さやかちゃん私も望遠鏡見せてー!」ダッ
さやか「おー、まどか。ちょっと聞いてよ。さっきUFO見たんだよ!」
まどか「ええーッ!?ホントにーッ!?」
仁美「あら、鹿目さんたらはしゃいじゃって」
杏子「なんとかごまかせたか……」
仁美「マミさん。こちら杏子さんのお友達だそうです」
美少女「キョウコ、ノ、トモダチ」
マミ「……え?あ、はい……え?……ちょっと佐倉さん、さっきのお化け虫はどこに行ったの?それにこの方は?」
杏子「虫はお前の視覚に写らないようにした。そいつは私の友達だ。さっきそこで偶然会った」
まどか「(すごいよ杏子ちゃん……嘘は言ってないよ!)」
マミ「そう……星の降る夜に古い友達と再会だなんてロマンチックね。私は巴マミ、よろしくね」スッ
美少女「マミ、ヨロシク」ギュッ…ヌルッ
マミ「あら?いま何か変な感触が……」
まどか「そ、そんなことよりみんな!彗星見ようよ!青く輝いててスゴくキレイだよ!」
杏子「ホントか!?よーし、あたし達にも見せろってんだ!ほら、お前も来い!」ガシッ
美少女「キョウコ、ヒッパルナ……ハミデル」ズルズル…ニョロッ
さやか「……ん?杏子。その子ってさっきの……」
杏子「しーっ!マミと仁美は気づかない方が幸せだよ」
まどか「ほら、望遠鏡を覗いてみて」
美少女「……コレカ?」
まどか「そうだよ。あなたの故郷が大きく見えるはずだけど……」
美少女「……ホントウダ。ヨク……ミエル」
美少女「……」ジィ…
さやか「ちょっと、いつまで見てんの?そろそろ他の子に変わっ……て……?」
美少女「……カエリタイ」ツー…ポロポロ
さやか「ちょっと?なんで泣いてんの?」
美少女「……コキョウ、カエリタイ」ポロポロ…
マミ「あらあら。どうしたの?」
まどか「この子、外国から来てて……本当はいますぐにでも帰りたいって思ってて……」
マミ「ホームシックなのね……可哀相に。こっちにいらっしゃい」ギュッ
美少女「……ウウ、ママ、パパ……」グスッ
マミ「大丈夫よ。あなたの故郷なんだから。必ず帰れるわ」ナデナデ
美少女「……ホントウ?」
マミ「本当よ。だから泣かないで」
美少女「……ウン」
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美少女「……ウニャ」zzz…
杏子「ったく安請け合いしちまったけど……どうしたもんかな?」ヨッコイショ…
マミ「佐倉さん、疲れたら交代するわよ?」
杏子「いや、お前は背負わない方がいい」
マミ「?」
杏子「詳しい話はまた明日するよ」
さやか「えー!?それマジ?」
まどか「しーっ!さやかちゃん声大きいよ!」
さやか「彗星から落っこちた宇宙人を元の場所に帰す……ねぇ。あたしたち魔法少女が関わるには、ちょっとジャンルが違うんじゃない?」
まどか「でも……家に帰してあげたい。このままひとりぼっちだなんて……寂しすぎるよ」
仁美「それでは皆さん。今日は楽しかったですわ」
さやか「少しドタバタしてたけどね」
まどか「ぅぇひひ……ごめん、私のせいで」
杏子「ホントだよ。でっかい落とし物拾いやがって」
美少女「……ウニャムニャ」zzz…
まどか「えへへ……」
さやか「そういや杏子。その子、どうすんのさ?」
マミ「佐倉さん。よかったら私の部屋を使ってくれても……」
杏子「それは止めといた方がいい。ま、なんとかするさ。じゃあな……つーかコイツ重いな」
美少女「トモダチ……ウニャ」zzz…
まどか「うん、バイバイ」
仁美「それでは私もこれで」
マミ「私も帰るわ。それじゃあね」
さやか「はいはーい、また明日ー」ヒラヒラ
まどか「……」
さやか「お、まどか。どしたの?元気ないじゃん」
まどか「ううん……あの子の事、考えてたの。どうしてあげればいいのかなって」
まどか「キュウベぇにお願いすれば、きっとあの子はママやパパの所へ帰れるん……だよね?」
さやか「うーん。まあ、そうだろうね。……でも、その必要は無いわよ、まどか」キリッ
まどか「あ、今のほむらちゃんのマネだ」
さやか「あんたがわざわざ契約しなくても、このさやかちゃんにはあの子を彗星に帰しちゃう秘策があるのだ!名付けて『月面旅行大作戦』っ!」
まどか「……イヤな予感しかしないんだけど」
さやか「明日集まって作戦会議だからね!あ、メールしとかなきゃ……」
まどか「ホントに大丈夫かなぁ……?」
一日目・終了
~~二日目、放課後、マミさん家。
テレビ『……つまり彗星というのはですねー、ほうき星とも呼ばれおりまして……』
さやか「はーい、みんな集まったねー?」
まどか「さやかちゃん。ほむらちゃん、やっぱり来れないって。今日は別の用事があるみたいで……」
さやか「またぁ?あいつのサボり癖はいつか更正させるとして……」
マミ「ところで誰かキュゥベえ見なかった?昨日から呼んでも出て来てくれないのよ……ねぇ」チラッ
テレビ『……えー、地球のすぐ側を通り抜ける時に太陽の影響で長い尾が出来るんですね。つまり……』
杏子「あんなネコウサギ野郎、永久に引っ込んでりゃいいさ。代わりにお前があたしたちのマスコットになってくれないか?」
触手蟲「マスコット?ナル!イッショ、ナカマ」ニョロニョロワキャワキャ…
マミ「……アレは美少女アレは美少女……」ブツブツ…
まどか「マミさん……」
マミ「ち、近づかなければ平気になったわ……正直まだちょっと苦手だけど」ジリッ
テレビ『……これだけ地球に接近する彗星は珍しく、肉眼でも目にすることが容易でして。えー、地球に最接近するのは明』--ブツンッ
触手蟲「っ!?サヤカ、テレビ、ワタシ、ミテタ!」ワキャワキャ!
さやか「はいはい、今から重要な作戦会議するんだから静かにしてってば」
杏子「会議って言ってもさぁ。何を話し合うってんだい?」
マミ「私もいろいろ考えてみたんだけど……難しいと思うわ。宇宙に行くだなんて魔法少女の力じゃ……」
まどか「スペースシャトルを借りればいいんじゃないでしょうか?NASAとかから……ダメ、かな?」
杏子「……誰が操縦できるんだ?」
まどか「そ、それは~……えっと?」
マミ「魔法で操縦するとしても自信が持てないし……そもそも他人の物を勝手に使うなんて良くないことだわ」
まどか「そう……だよね」シュン…
触手蟲「マドカ、カンガエ、キョウリョク、ウレシイ」ニョルンッ
まどか「えへへ……でもロケット以外で宇宙に行く方法なんて……」
さやか「あるっ!!」バンッ!
まどか「うひゃっ!?」ビクッ
触手蟲「サヤカ、ホント!?」ニョロッ!
杏子「……一応聞くだけ聞いてやる。期待してないけどな」
さやか「人類には無限の可能性があるのだ!我々魔法少女に不可能はなぁいッ!」ガッ
触手蟲「サヤカ、カッコイイ!」ニョロニョロ!
さやか「……その為にはマミさんの協力が必要なんです!」ガシッ
マミ「え?私?」
さやか「お願いできますか?」
マミ「え、ええ。私に出来ることなら構わないけど……」
~~外。夕方。山の頂上。
カァ…カァ…
杏子「……前からコイツは本気でバカなんじゃないかと思ってたけどさぁ」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「それじゃあお願いします、マミさん!」モゾモゾ…
マミ「美樹さん……本当にやるの?」ガチャ
さやか「ええ……ティロ・フィナーレの大砲であたしを空へ撃ち出してくれれば、大気圏突破なんて余裕ですよ!」
触手蟲「サヤカ……タブン、シヌ」ニョロ…
マミ「……本当にいいのかしら」クルッ
杏子「こっちに同意を求めないでくれ……」
まどか「……やってみてあげてください。それでさやかちゃんの気が済むなら」
さやか「大丈夫だって。魔法少女は不死身なんだから!ほら早く!」
マミ「それじゃあ発射するわよ?本当にいいのね?」
さやか「はーい!鉄砲弾のさやかちゃん、行きまーす!」
マミ「ティロ・フィナーレじゃ美樹さん終了みたいで縁起悪いから……えっと……!そうだわ」
マミ「ティロ・ボンボヤージュ!」ドンッ
さやか「うああああぁぁぁぁ------…………キラーン☆
……カァカァカァ
まどか「落ちて……来ない」
マミ「……え?まさか今ので本当に宇宙ま……で?」
……--------ぁぁぁぁあああああああうっ」ドチャゴキッ
杏子「……よう。おかえり」
さやか「ただい……ま」ガクッ
まどか「さやかちゃん!?さやかちゃぁーんっ!?」
さやか「いやー惜しかったよ。もうちょっとで宇宙行けたんだけどなー」ドチヤッ、ベチャッ、シュゥゥ…
触手蟲「サヤカ、カオノ、ムキ、ハンタイ」グリッ、ゴキャッ
さやか「おっ、サンキュ……あはは死ぬかと思ったよ」ゴキッ、ベキッ
まどか「さやかちゃん、もはやホラーだよ……」
さやか「杏子もやってみる?もう少し威力を上げれば……」シュゥゥ…
杏子「ぜったいやらねーからな!?あたしお前ほど生命力無いからな!?」
さやか「でもいい線いってたと思うけどなー?もう少しで人工衛星に触れそうだったし」ゴキッ、ゴキキッ
マミ「うーん。確かに威力はもっと上げられるけれど……それだとこの子の体が今の美樹さん以上に酷いことに……」
触手蟲「ワタシハ、ショウゲキニ、ツヨイ。ダイジョウブ」ニョロッ!
マミ「本当に?」
杏子「ああ。こいつは宇宙から落ちてきても軽い捻挫だけで済むくらい頑丈さ」
まどか「じゃあティロ・ボンボヤージュで送り返してあげられるんですか!?」
マミ「そうねぇ……とりあえず地球の重力を振り切って宇宙空間に出してあげることはできそうだけど……」
杏子「なんだ、意外と楽勝じゃねーか」
さやか「あたしも身体を張ったかいがあるってもんよ!」
触手蟲「タリナイ……ウチュウ、クウカン、スイシンリョク、ヒツヨウ」
まどか「スイシンリョクって……どういう事?」
マミ「宇宙空間に出た後、今度は彗星に近づく必要があるわ。ジェットエンジンのような推進力が必要よ」
杏子「泳いで行けないのか?宇宙遊泳って言うぐらいだし」
さやか「あのさー、学校のプールとは訳が違うんだから。宇宙よ宇宙。水も空気もないんだよ!?」
マミ「それに距離もあるでしょうし……やっぱりスペースシャトルを借りるしかないのかしら……?」
さやか「ティロ・ボンボヤージュの威力を10倍ぐらいにすればどう?彗星まで一気にひとっ飛びだよ!」
マミ「……美樹さんの肉体が大気との摩擦熱で蒸発すると思う」
さやか「またまたぁご冗談を!じゃあ試しに……」
まどか「やめてさやかちゃん!もうこれ以上身体を張らないで!」ガシッ
さやか「放してまどか!魔法少女は身体張ってナンボなんだからっ!」グググ
まどか「そんなリアクション芸人みたいなメンタリティ、魔法少女とは無関係だよ!お願いだからもうこれ以上バカなマネは止めて!」ギギギ
マミ「困ったわねぇ……」ハァ…
触手蟲「マミ……」ニョロニョロ…
マミ「……大丈夫よ任せて。絶対なんとかしてあげるから……心配しないでね?」ナデナデ
触手蟲「……ウン」ニョロニョロ…
杏子「あたしたちだけじゃ埒が開かないか……おいまどか、ちょっと来い」
まどか「ぅへ?私?」
さやか「威力をうまく調整すれば--……」
マミ「あの子の身体が耐えられるか--……」
まどか「ほむらちゃんに電話?私が?でも忙しいって……」
杏子「あいつは何故かお前に甘い。『おねがぁ~いホムラちゃぁ~んっ☆』とか言っときゃ飛んで来るさ」
まどか「あ、今の可愛い。もう一回やって?」
杏子「い、いーから!さっさと電話しろってんだっ!」
まどか「はぁーい……」プルル……プルルルルルッ、プルルルルルッ、プルッ--
ほむら『……もしもし?まどか?どうしたの?』
まどか「あ、ほむらちゃん?えっと、あのね?今みんなでさやかちゃんを打ち上げてるんだけど……一緒にどうかなー……なんて……」
ほむら『……とても魅力的なお誘いだけど私、今回の時間軸では狩りに勤しもうと決めてるの。ごめんなさい』ア、アケミホムラ…ドウシテコンナ……ギャァァ!?
まどか「狩りって……?ん?いまキュゥベえの声が聞こえたような……」
ほむら『気のせいよ』マドカタスケ…ギャァァ!?ドガガガガ!ニ、ニゲロー!?カリツクサレルー!!
触手蟲「……ホムラ?ダレ?」ニョロニョロ…
杏子「もうひとりの……えーと、仲間だよ。愛想は無いけど頼りになるヤツさ」
触手蟲「ナカマ……トモダチ?」
杏子「……まあな。向こうがどう思ってるかは知らないけどね」
触手蟲「ワタシ、キョウコ、ナカマ。キョウコ、ホムラ、ナカマ。ワタシ、ホムラ、ナカマ!」カサカサカサ…
杏子「あ、ちょっとオイ!電話の邪魔すんじゃ……」
ほむら『じゃあ切るわよ』
まどか「あ、待ってほむらちゃ……うぇ?」ヌリュッ
触手蟲「マドカ、ホムラ、ワタシ、ナカマ!」ウニェリウニェリ
まどか「きゃっ!?どうしたの?あっ!?そ、そんなところ触っちゃ……ダメっ……濡れて……んっ」
ほむら『ま、まどかっ!??』ガタッ!!
触手蟲「マドカ、ワタシモ、イッショニ……」ヌリュヌリュ…
まどか「こわれちゃうぅ……こわれちゃうよぉおおおっ!?」
ほむら『ちょ!?クッ、何が起こってるのっ!?』
まどか「この携帯古いから防水じゃないんだ。濡れた手で触ったらこわれちゃうよ」
触手蟲「ゴメン。ホムラ、イッショニ、オハナシ……」
まどか「じゃあ受話器は私が持っててあげる。ほら、これでほむらちゃんとお話しできるよ」
触手蟲「ウレシイ!ホムラ、ハジメ、マシ……テ?」
まどか「どうしたの?」
触手蟲「アレ……ダレ?」クイッ
まどか「え?ほむらちゃん???今さっきまで別の場所にいたんじゃ……?」
ほむら「はあっ……はあっ……時間停止して全力ダッシュして来たわ……!」ゼェゼエ…
杏子「おー、ほむら。ようやく来やがったな」
マミ「暁美さん、来てくれたのね!」
さやか「なんだ、来るなら最初から来なさいよね?」
ほむら「それよりまどかは!?無事なのッ!?」キョロキョロ!
まどか「ここだよ、ほむらちゃん」
ほむら「……こわれそうなまどかは?」
まどか「えっ!?なにそれ……」
ほむら「そう。私がいない間にそんなことが……」
触手蟲「ホムラ、ヨロシク!」ニョルッ
ほむら「ええ……よろしく」ニギッ
まどか「仲良くしてあげてね!」
ほむら「ええ……まどかを守ってくれてありがとう」
触手蟲「マドカ、ナカマ、アタリマエ!」ニョロニョロニョロニョロ!
杏子「さっそくで悪いんだけどさ、何か良い方法ないか?」
マミ「今の段階だと美樹さんの作戦が最有力で……ええと何だったかしら?」
さやか「『月面旅行大作戦』ですよ!大砲で月までドカンと一発……」
ほむら「……ヴェルヌの小説が元ネタのつもりなら『月世界旅行』よ、月面じゃなくて」
さやか「あれ小説?映画じゃなかったっけ?月におっさんの顔がついてるやつ」
ほむら「映画もあるらしいわね。私は見てないけど」
さやか「じゃあ今夜マミさん家で上映会ね。あたしDVD持ってくから……」
杏子「おいおい。どうでもいい話してんじゃねーよ」
まどか「そうだよ!早くこの子を帰してあげないと……彗星ってもうすぐ地球から離れちゃうんでしょ?そしたら……」
触手蟲「……」ニョロ…
ほむら「あまり時間が無いってわけね……」
ほむら「この子を彗星まで送ってあげる……ね」スッ
触手蟲「……コキョウ、カエル」スッ…ピタッ
杏子「無理か?」
ほむら「不可能ではないわ」
まどか「できるの!?」
ほむら「可能だけれど……そのためには皆の協力が不可欠だわ。お願い出来るかしら?」
杏子「……ん?まあ、べつにいいけどさ。どーせ暇だし」
さやか「協力するする!何でも言ってちょーだい!」
マミ「ええ、みんなで力を合わせて頑張りましょう!」
まどか「みんな……!」
触手蟲「……ワタシモ、テツダウ!」
まどか「私も……出来ることがあったら!」
ほむら「ええ。その時になったらお願いね」
さやか「でさー、具体的には何すんの?」
杏子「もう大砲でドーンは止めてくれよ?あんな冗談みたいなので本当に行けるわけねーっつーの」
さやか「あんたさー?人が一生懸命考えた作戦をあんなの呼ばわりしないでくれる?」
杏子「映画見て思いついたような案じゃねーか。そんなので本当に他の星まで行けるわけ……」
ほむら「行けるわよ。ちゃんと計算すれば大砲でも」
杏子「……嘘だろ?」
ほむら「物体を第二宇宙速度……時速四万キロメートルで射出できる大砲があれば……理論上は、おそらく」
マミ「ティロ・ボンボヤージュならそれが可能だわ」
杏子「……本当かよ」
さやか「よし!月面旅行大作戦は続行って事ね!」
ほむら「軌道計算は私がやる。巴マミ、あなたは私の言う通りの角度と威力でこの子を射出してくれればいい」
マミ「オーケー、わかったわ。なるべく高精度で射出できる大砲を準備すればいいわね」
杏子「んで、その軌道計算とやらはどのくらいで出来るものなんだい?」
ほむら「ざっと見積もって……30日くらいかしら」
まどか「……え?」
さやか「は?そんなにかかんの!?」
ほむら「当たり前でしょう。私ひとりで膨大な量の計算をこなすんだから。とても一日や二日じゃ無理よ」
まどか「そんな……それじゃあ間に合わない……んじゃ?」
さやか「確か彗星の最接近は明日の夕方で……そこから先はぐんぐん離れていくんだよね?そんなに時間かかってたら……」
触手蟲「サヤカ……カオ、コワイ……」ニョロニョロ…
さやか「ちょっとほむら!話が違うんじゃない?そんな悠長に算数やってる時間なんて無いんだからね!?」
触手蟲「サヤカ、ホムラ、ナカマ!オコラナイデ……」
さやか「う……でも!」
ほむら「……美樹さやか。あなた私の魔法が何なのか忘れていない?」
さやか「え?…………何の話かわかんないんだけど!?」
まどか「ほむらちゃんの魔法って…………あ」
さやか「え……何?」
~~夜。マミさん家
ほむら「それじゃあ『3日』ほど計算してくるわ」
マミ「魔力切れには十分注意してね」
まどか「頑張ってね、ほむらちゃん……」
ほむら「ええ。あなたたちから見れば一瞬だけど……」カシャン--ガシャコッ
ほむら「……ん」
まどか「ほむらちゃん?えっと……」
ほむら「三日ぶりね、まどか。マミ……概算が出来たわ。少し打ち合わせをしましょう」バサッ
マミ「ええ……それにしても凄い量のメモね」ピラッ
ほむら「停止時間内でも電子機器が使えればもっと楽だったんだけど……まあ仕方ないわ」
マミ「これは大砲のデザイン?こんなに砲身が長くなるの?」ペラッ
ほむら「長ければ長いほど安定するから。誤差が少なくなるわ。加速度も少しずつ上げていく方が安全でしょう」
マミ「そうなると……大砲というより電磁誘導砲<レールガン>の様な感じかしら?」
ほむら「そうね。射出角度も真上より水平に近い方が……--」ワイワイ
マミ「宇宙に出るまでは空気抵抗による減速が……--」ガヤガヤ
まどか「……と、とても同じ中学生の会話とは思えない」
ほむら「--……じゃあ今のミーティングを踏まえてまた『三日』ほど潜ってくるわ」
マミ「グリーフシードは足りる?私の備蓄はあまり無いけど少しなら……」
ほむら「まだしばらくは大丈夫。それじゃあ行って来ます」カシャ
まどか「あ、行ってらっしゃ……」
ガシャコッ
ほむら「ただいま。マミ、さっきの所なんだけど……」
まどか「……(さやかちゃんたちは上手くやってるかなぁ……)」
~~魔女の結界
触手蟲「キキキキ!ウニュルアッ!」シュババババ…ズバァ!!
魔女「オロロォ……ン……」ズブズブ……カラーン
杏子「おっし、さっそくグリーフシード、ゲットだぜ。幸先いいな」ヒョイッ、パシッ
さやか「……にしてもアンタ、強過ぎない?魔法もつかわずひとりで魔女を倒しちゃうなんて……」
触手蟲「パパ、ママ、モット、ツヨイ。ショクシュ、イチゲキ、インセキ、フンサイ」
さやか「……あたしは今、人類の弱さを痛感している」
杏子「元気だせよ。ほらバシバシ稼いでほむらに持って行ってやらねーと」
さやか「う、うん。じゃあ次行こうか次!」
触手蟲「ウン、ガンバル!」
杏子「おっし、この調子なら街中の魔女を一晩で狩り尽くせそうだ!」
さやか「怪我したらすぐに言いなよ!魔法で治してあげるから!」
触手蟲「ウン、ワカッタ。サヤカ、ヤサシイ!」
杏子「あんま油断すんなよ!力押しだけじゃどうにもならない魔女もいるんだからな!」
さやか「はっはっは!そんな奴は変な能力使ってくる前に粉砕すればいいのよ!」
触手蟲「サヤカ、カッコイイ!トツゲキ、フンサイ!」ニョロニョロ!
杏子「ハァ、この二人ついて行くだけで疲れそうだ……けどまあ」
杏子「……(ちょっと楽しい、かも)」
二日目、終了
~~三日目、早朝。通学路。
ドンッ!…ドォー……ン……
仁美「……花火の音でしょうか?どこかでお祭りでも……」
まどか「おはよー仁美ちゃん」
仁美「え?ああ、おはようございますわ」
さやか「ふわぁぁ……」
仁美「寝不足ですか?」
さやか「ん……まあね。昨日は遅くまで戦ってたからさぁー……あふぅ」
まどか「私も少し眠いんだ。昨日は物理学のお話を聞いてて……」
仁美「まあ。まどかさん、ついに勉学の道に目覚めたのですわね」
まどか「えへへ……全然わかんなかったけどね」
仁美「さやかさんも見習って欲しいですわ。夜遅くまでテレビゲームばかりしていないで……」
さやか「あのねぇ仁美。世界の平和はこの天才美少女さやかちゃんに託されて……ふわぁ」
仁美「そんな調子じゃゲーム脳になってしま--」
……ドーン……ドドォー…ン…
仁美「……今朝はやたらと花火の音が聞こえますわね。山の方からでしょうか……?」
まどか「え?そう?何かイベントでもやってるんじゃないかなー?あはは……」
さやか「そうねー。見滝原は今、空前の彗星ブームだし。陽も昇る前から天体観測してる物好きが集まっててもおかしくないって」
仁美「そうですかしら……あ、そういえばあの方が帰国されるのは今日でしたかしら。ほら、杏子さんのお友達の」
まどか「うん。今夜の最終便で帰るみたいだよ。上手くいけばだけど……」
仁美「そうなんですか。ちゃんとお別れも言えずに残念でしたわ。せっかくお会い出来ましたのに……」
まどか「……」ピクッ
さやか「ん?どしたのまどか」
まどか「はいっ!!提案がありますっ」ズバッ!
~~お昼。坑道の中。
ザクッ…ザック……カキィン!
ザクッ…ザクッ……
杏子「はぁ?お別れ会ィ?」カキィン!
触手蟲「ハイ、ムギチャ、ヒトヤスミ」スッ
杏子「お、サンキュ……」ンク…ンク…ンク……
触手蟲「マドカ、デンワ、テイアン。ミンナデ、アイサツ……サイゴニ」
杏子「ぷはぁー……まあ、あたしはいいけどさ。そんな悠長なことしてて大丈夫なのかい?」
触手蟲「マミ、ホムラ、オッケー。コレデミンナ、オッケー!」ニョロニョロ!
杏子「……なら早めに仕事を片付けちまわないとな……しょっと」
触手蟲「キョウコ、アナホリ、ワタシモ、テツダウ!」シャキーン!
杏子「あ、待て!お前がスコップ振り回したりしたら、せっかく掘ったトンネルが山ごと崩れちまうよ」
触手蟲「……チカラニ、ナリタイ」ニョロン…
杏子「掘り返した土砂を運び出してくれるだけで十分だよ。十分すぎるくらい力になってるさ」
触手蟲「……ウン」ショボン…
杏子「……あー、そうだな。それじゃあ何か食えるもの取って来てくれないか。さっきからハラが減って仕方がないんだ」
触手蟲「……!ワカッタ!ゴチソウ、トッテクル!マッテテ!」ニョロニョロ!カサカサカサ…
杏子「やれやれ。子供だな……さてもうひと仕事っと……」ザックザック…
杏子「それにしても……宇宙行くのにどうしてトンネル掘る必要があるんだ?」ザックザック…
杏子「……難しいことはよくわからん……」ザックザック……
~~山。
QB「わけがわからないよ……」
マミ「ごめんなさいキュゥベえ。何度も衛星軌道外に射出したりして」
ほむら「かなり安定してきたわね。これも貴重な実験データのおかげだわ」
マミ「試験型の大砲でこれだけの成功率なら問題ないんじゃないかしら?後は地下トンネル発射台の敷設と試射で……」
ほむら「……リミットは今夜24時。間に合うかしら……」
マミ「お別れ会には間に合わせたいわね」ニコッ
ほむら「……そうね。それじゃあ試験型の最終発射実験を行いましょう」
マミ「ええ。それじゃあキュゥベえ。頼んだわよ!」
QB「僕に拒否権はないのかい?」
ほむら「人類の大いなる進歩の為よ。我慢なさい。マミ、グリーフシードよ」ヒュンッ
マミ「ありがとう。ふふっ、これだけあれば遠慮せず思う存分に魔力を使えるわね」パシッ
ほむら「そうだけど……あの子たち、一晩で何体の魔女を狩ったのかしら。乱獲なんて酷いことをするわ」
QB「奇遇だね暁美ほむら。僕も同意見さ」
マミ「それじゃ行くわよ。魔力誘導機構に……エネルギー充填開始」ヒュィィィ…ン…
ほむら「砲弾保護シールド展開確認……姿勢制御演算術式も正常通り起動……いけるわ」
マミ「エネルギー充填100パーセント!こっちもオーケーよ!」
QB「僕は全くオーケーじゃないんだけど……」
ほむら「それじゃあインキュベーター、よい旅を……発射!」ポチッ
マミ「ティロ・ボンボヤージュ!」…ッドッ---ォォオンッ!
QB「わけがわからなあああぁぁぁぁ…………キラーン☆
杏子「ふぃー、暑苦しかった……調子はどうだい?」パタパタ
マミ「キュゥベえのおかげで順調よ。そっちはどう?」
杏子「おう。予定通りに500メートルの直線トンネル、きっちり掘ってやったよ」
マミ「お疲れ様。それじゃあ暁美さん、レールガンの建設に入っていいかしら?」
ほむら「……太陽風の影響が……月重力の干渉も……」ブツブツ…
マミ「……暁美さん?」
ほむら「え?ああごめんなさい。何かしら」
マミ「大丈夫?少し休んだ方が……」
ほむら「その必要は無いわ。マミ、あなたは予定通りトンネル内にレールを敷いて頂戴」
マミ「……ええ。わかったわ。でもくれぐれも無理はしないでね」
ほむら「……大丈夫よ。誰かさんたちのおかげで魔力切れの心配は無いし」
杏子「へへっ、存分に感謝していいんだぞ……っと。それはそうと、あいつ見なかったか?」
ほむら「あいつって、あの子の事?」
マミ「一緒じゃなかったの?」
杏子「いや、あいつが手伝いたがるもんでさ、何か食い物取ってきてくれって頼んだけど……」
ほむら「……まだ帰って来てないの?」
杏子「ああ。まったく、あいついったいどこまで……」
マミ「……ねえ待って、二人とも」
杏子「何だよマミ」
マミ「あの子って……何を食べるのかしら?」
杏子「はぁ?そりゃお前…………そういやあいつが何か食ってるの、まだ見てないな……」
ほむら「彗星に暮らす生物の食性なんて……想像もできないわ」
マミ「…………実は人間、とか?」ボソッ
杏子「ははは!まさか……なあ?」
ほむら「……」
杏子「……え?ない……よな?」
ガサガサ…
ガサッ!
触手蟲「キョウコ、オマタセ!」シュタッ
杏子「うわっ!?き、急に飛び出してくるんじゃねえ!びっくりしたじゃねえか!」
触手蟲「ゴメン!デモ、ゴチソウ、モッテキタ!」ズイッ
杏子「……何だこりゃ」
マミ「……どう見ても泥団子ね。砂場遊びで作るような……」
触手蟲「サンカケイソ、シュセイブン。スイブンデ、ケイセイ!」ズイズイッ
杏子「く、くれるのか?ありがとよ……」
ほむら「……なるほど。どうやらこの子たちの種族は鉱物を好んで食べるみたいね」
マミ「鉱物が好物……」
ほむら「ん?巴マミ、あなた今何か言わなかった?」
マミ「い、いいえ!?別に何も……」
杏子「マジか……へへっ、まあ可愛い食い物でよかったよ。おままごとみてーだな、泥団子なんて」
マミ「ゴメンなさい、変な疑いしたりして……」
杏子「まったくだよ。なー?」
触手蟲「キョウコ、クウフク。ハヤク、タベル!」ニョロニョロ!
杏子「ん?あー、そうだな。んじゃフリだけ付き合ってやるか……ぱくぱくむしゃむしゃ、あーおいしかった!ありがとな!」
触手蟲「……キョウコ、オナカ、スイテナイ?」ニョロ…
杏子「……え?」
マミ「あ……佐倉さん。この子、本気で佐倉さんに食べてもらいたいんじゃ……遊びとかじゃなくて」ヒソヒソ
杏子「……まじで?」
ほむら「どうもソレっぽいわね。あなたが泥団子を美味しそうに食べてくれることを期待している目よ、あれは……」
触手蟲「……タベナイ?」ニョロニョロ…
杏子「くっ……うおおおおおっ!!おいしそうッ!おいしそうだなぁーッ!おいしそう過ぎて食べるのがもったいなく感じちゃうっ!!でも……でも、せっかくお前が作ってくれたんだ…………あたしはその好意を…………」
マミ「佐倉さんまさかあなた……」
ほむら「止めなさい杏子!事情を説明すれば……」
杏子「無駄には出来ないよ」パクッ…モグモグ…ジャリジャリ……
ほむら・マミ「い、行ったぁぁぁっ!?」
杏子「…………」モグモグ…ジャリジャリ…
ほむら「……お味はいかが?」
杏子「……地球の味かしゅる……」シャリシャリ……
マミ「佐倉さん……」
触手蟲「……キョウコ、ドウ?……オイシイ?」
杏子「ああ、ごちそうさま。おいしかったよ」モグモグ…ゴックン
触手蟲「ヨカッタ……キョウコ、ウレシイ、ワタシ、ウレシイ!」ニョロニョロニョロニョロ!
杏子「ああ……ありがとな」フッ
マミ「(その時の佐倉さんの表情は慈愛に満ちていた……まるで聖母……あるいは大地の女神かのような……)」
マミ「(私は生涯忘れることはないだろう……彼女の瞳に宿った、あの優しい輝きを……)」
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カァ-…カァ-…
ほむら「……そろそろお別れ会の時間ね」
杏子「ああ……そうだな。もうこんな時間か……」
触手蟲「ホムラ、マミ、コナイ?」
ほむら「計算に足りない場所が見つかったから……私は行けないわ」
マミ「私たちのことは気にしなくていいから……ね?」
触手蟲「……」ニョロ…
杏子「まあ、あたしらに手伝えることはなさそうだし……そうさせてもらおうか?」
触手蟲「ホムラ、マミ、オミヤゲ、モッテクル!」
ほむら「……ええ。地球最後の夜よ。楽しんでらっしゃい」
マミ「出来れば食べる物以外でお願いするわね」
触手蟲「ワカッタ、イッテクル!」
杏子「じゃ、後は頼んだよ!」
マミ「ええ。いってらっしゃい」フリフリ
マミ「……お別れ会には間に合わなかったわね」
ほむら「……そうね。でも最終タイムリミットまでには……必ず」
マミ「……。ええ、そうね。頑張りましょう!」
~~小さな神社。夏祭り会場。
ワイワイガヤガヤ…
まどか「ごめーん、おまたせー」タタタ…
さやか「まどかも仁美も遅ーい!」
仁美「杏子さんたちはまだですの?」
杏子「よお。待たせたか?」
まどか「今来た所だよ」
さやか「あたしはだいぶ待ったけどね」
杏子「……にしてもこの時期によく祭りなんてやってたな」
仁美「毎年、ここの神社は早いんですの。地元の方だけで催される小さなお祭りですわ」
杏子「こっちは屋台さえ出てくれりゃあ文句はねーよ」
さやか「あんたホントそればっかね……その食い意地だけは尊敬するわ」
まどか「あれ?あの子は……?」
仁美「そう言えば姿が見えませんわね。今夜の主役ですのに……」
さやか「まさかまた迷子に……」
仁美「そんな。まどかさんじゃないんですから……」
まどか「ぅえひっ!?ひ、ひどいよ仁美ちゃん……」
杏子「あいつならそこの電信柱の陰に隠れてるよ、ほら」
美少女「……ウウ」
さやか「あ、人間形態なんだ……当たり前か」
まどか「どうして隠れてるの?」
仁美「もしかして体調が優れないとか……でしたら無理なさらずに……」
杏子「いや、そういうんじゃないんだよ。祭りだって言うから気を利かせてやったんだけど……」
美少女「……キョウコ、コレ……」モゾモゾ…
さやか「何してんのさ。時間押してんだから早く……こっち来なさいってば」グイッ
美少女「アッ、ワカッタカラ……ヒッパラナイデ!」タタッ
さやか「ん?」
仁美「あら!」
まどか「わぁ!」
杏子「へへっ」
美少女「ウウ……ヘンナ、カッコウ。ハズカシイ……」モゾッ
さやか「お、浴衣。似合ってんじゃん」
杏子「どうせ変身させるならって思ってさ。やっぱ祭といえば浴衣姿だろ?」
さやか「あたしたちは学校帰りそのまま来たから制服だけどね……」
仁美「よくお似合いですわ。ね、まどかさん」
まどか「……」
仁美「……まどかさん?」
まどか「……」スタスタスタ…
さやか「ま、まどか?ちょっと……」
美少女「ドウシタ、マド……ウニュルッ!??」ギュギュゥ~ッ
まどか「……うん。可愛い」ギュゥ~スリスリ…
仁美「まあ、お二人がそんな関係だったなんて……////」ポッ
美少女「マドカ、ダキツクノ、ツヨイ!ハミデル!?」グググ…
まどか「何がはみ出ちゃうの?お姉ちゃんに言ってごらん?」スリスリスリスリ…
さやか「あちゃー……祭りのテンションで変なスイッチ入っちゃったかー……」
杏子「バカなことやってないでさっさと行こうよ。あんま時間ないんだしさ。ほらっ」グイッ
まどか「ウェヒッ!?私ったら何を……」キョロキョロ…
仁美「皆さんこっちですわ。この先の縁日を抜けた所に……」
さやか「ほらー、早くしないと置いてくよー」
まどか「あー待ってみんなー!さ、私たちも行こう!」スッ
美少女「……ウン」ガシッ
まどか「しっかりつかまっててね。迷子になっちゃわないように」
美少女「……」
まどか「どうかしたの?」
美少女「……ソレハ、ワタシヨリ、マドカ、シンパイ」
まどか「ウェヒヒ……そう、だよね」ショボン…
美少女「ゲンキ、ダシテ。ミンナ、イッショ……アレ?」
まどか「どうしたの?」
美少女「ミンナ、ミアタラナイ……」
まどか「ウェヒーッ!??ま、また迷子に……き、杏子ちゃーん!さやかちゃーん!仁美ちゃーん!?」
ワイワイガヤガヤ…
美少女「……ヘンジガナイ。ミンナ、サキ、イッチャッタ?」
まどか「た、たぶん……急いで追いかけよう!」グィッ
美少女「ウ、ウン……」タッタッタ…
ワイワイドヨドヨ…
まどか「うぅ……けっこう人が多い……」
美少女「マドカ」
まどか「私ってホント、注意力が足りないっていうか……」
美少女「マドカ!」グイッ
まどか「え?あ、何?どうしたの?」
美少女「アレ、ナニ」クイックイッ
まどか「屋台が気になるの?」
美少女「ワケノワカラナイモノ、イッパイ……フシギ」ジーッ
まどか「……少し見てみる?」
美少女「ウン!イコウ!」タッタッタ…
まどか「あ、あんまり引っ張らないで……」タッタッタ…
美少女「ウワ……ナニコレ。ヘンナ、カオ」
まどか「それは『お面』って言うんだよ」
美少女「オメン?ヨウト、フメイ……」
まどか「これはね、こうやって顔に装着すると……」
美少女「マドカ、ベツジンニ、ナッタ!?スゴイ!」
まどか「なんか新鮮なリアクションだなぁ……」
美少女「ア、コレ、カワイイ」
まどか「どれどれ?あ、それって『魔法少女かまど★マギカ』のお面だよ。ヒロインのかまどちゃん」
美少女「カマド……?マドカニ、ニテル」
まどか「そうかな?あんまり似てないと思うけど……」
美少女「……マホウ、ショウジョ」ジィッ…
まどか「気に入ったんなら買ってあげようか?」
美少女「ホント!?イイノ?」
まどか「うん!いいよ!お姉ちゃんに任せなさいっ!」
美少女「マドカ、ウレシイ!タヨレル、ココロヅヨイ!」ダキッ
まどか「ウホフェヒヒッ!も、もっと頼っていいんだよ!?ウェヒッ……ウェヒヒヒヒッ!?」ナデナデナデナデ!
さやか「誰が『頼れる』『お姉ちゃん』ですって?」パコンッ!
まどか「うぇひっ!?いったぁ~ぃ……」
仁美「今度はすぐに見つかって良かったですわ」
美少女「サヤカ!ヒトミ!ヨカッタ、マタ、アエタ」
まどか「ご、ごめんね二人とも……あれ、杏子ちゃんは?」
さやか「……あっちだよ」
杏子「んほーっ!このイカ焼きうめえ!仁美ー!次はこのチョコバナナ買ってくれよ!」
仁美「はいはい。今行きますわ」クスッ
まどか「……あー」
美少女「キョウコ、タベルトキ、イツモ、ウレシソウ」
さやか「ほら行くよ。今度は離れないようにね」
美少女「リョウカイ」ビッ
まどか「はーい……あ、ちょっと待ってさやかちゃん。かまどちゃんのお面を……」
さやか「何?まどか、そんな子供っぽいのが好きなの?」
まどか「私じゃなくってこの子に……って、うぇぇ!?お面ってそんなにするんですか!?」
さやか「……無理しなくていいんじゃない?」
まどか「大丈夫だよさやかちゃ……え?いえ!買います!買います!」
美少女「マドカ……ナンカ、ゴメン」
まどか「き、気を使わせてしまってる……」チャリーン…ヘイ、マイドアリ-!
美少女「サヤカ、ミテ、ミテ!ワタシモ、マホウショウジョ!」シャキーン!
さやか「あはは!あんた魔法少女になってくれれば世界中の魔女を倒しちゃえるかもね」
美少女「セカイノ、ヘイワ、マモル!」シャキーンシャキーン!
まどか「うぅ……その無邪気な笑顔はお金に代えられないよ……」
杏子「お前ら何やってるんだ?」モグモグ…
美少女「キョウコ!ワタシモ、マホウショウジョ!ナカマ!」シャキーン!
杏子「……っ」
仁美「まあ、可愛らしい。街の平和を守ってくださるの?」
美少女「セカイノ、ヘイワ、マモル!」
仁美「世界を?それは頼もしいですわ」
まどか「仁美ちゃん!私も!私も頼もしいからねっ!?お姉ちゃんだし!!」
仁美「はあ……そうなんですの?」
美少女「……ソレハ、ビミョウナ、トコロ」
まどか「がーん!?」
仁美「まどかさん……」
さやか「……何よ怖い顔しちゃって」ツンッ
杏子「んあっ!?……な、なんでもないよ……ちょっと昔の事を思い出しちまってただけだ」
さやか「……ふーん、そっか」
杏子「……ちょっとさ、考えたんだ」
さやか「ん?何?」
杏子「もし……もしもあいつがこのまま地球に残ってさ、あたしたちと楽しくやってけばって……」
さやか「んあー……まあね。考えるよね」
杏子「あいつが仲間んなりゃ、どんだけ強力な魔女が相手でも負ける気がしない。グリーフシードの心配だって必要なくなる」
さやか「んまぁ……そうでしょうね」
杏子「でもダメだ。それは絶対にやっちゃいけないことだ……そうだろ?」
さやか「ん……んー、まあね」
杏子「帰る場所のある奴は家に帰るべきだ。親父とお袋がまだ生きてんなら……なおさらさ」
さやか「……。うんそっか……まあ、そうだね」
杏子「……そうさ。どんなに仲良くなったって、いつか別れなきゃいけない時が……」
さやか「あーん」ガブッ
杏子「あっ!?て、てめえ!!なにしやがる!」
さやか「んむんむ。チョコバナナうまい」モグモグ
杏子「返せコノヤロー!弁償しろっ!」ドタドタ
さやか「あはははァ!キャラにもなく感傷に浸ってるからだよ!油断するほうが悪いんだからねー!」ズズサァー
杏子「待ちやがれ!あたしのチョコバナナ返しやがれーっ!」バタバタ
さやか「あははは!捕まえてごらんなさーい!」スッタカタァー
仁美「あらあら。人混みで走り回ると危ないですわよー」
美少女「……フタリハ、ナカヨシ?」
まどか「どうかなぁ……?いつも喧嘩ばかりしてるけど」
仁美「喧嘩するほど仲良しなんですわ……ちょっと妬けてしまいます」
まどか「……うん。そうだね……」
美少女「……?マドカ、チョット、カナシソウ……?」
さやか「ほーら!あたし水風船二個目なんだけど?」バインバイン
杏子「ぐぬぬぬ……次はアレだ!金魚掬いで勝負だ!」
さやか「おやおや。縁日マスターのさやかちゃんに金魚掬いで挑もうなどとは……」
仁美「お二人とも。お買い物はそのぐらいにしておかないと……」
杏子「おらっ!へへっ、一気に二匹ゲットだぜ!」
さやか「あんた何かズルしたでしょ!?今のノーカン!もう一回!」
杏子「べつにいいよ。何回やってもあたしの勝ちは揺るがないけどな」
さやか「な、何をーっ!?」
仁美「……はぁ。仕方がありませんわね。まどかさん達は先に境内の方へ向かっててもらえますか?」
まどか「え?うん、いいけど……」
仁美「私もあのお二人を連れてすぐに追いかけますから」
美少女「マドカト、ワタシ、サキニ、イク?」
仁美「ええ。あの石段を上った所にあります。もう暗くなってきました……転ばないように注意してくださいね」
まどか「はーい」
美少女「ラジャー」ビッ
まどか「よっこい……しょっと」ハァ…
美少女「マドカ、ダイジョウブ?」
まどか「なんとか……それにしても結構長い階段だったね。ほら、さっきまでいた縁日があんなに小さく見える」
美少女「オォゥ……マルデ、ジュミョウヲ、オエツツアル、ホシボシノ、ヨウダ」
まどか「綺麗だね。でもこうやってお祭りの中心から少し離れた場所にいると、何だか不思議な気持ちになるよね……」
美少女「……サミシイ、キモチ?」
まどか「うん。遠くから微かに聴こえてくるお囃子の音……まるで私だけ世界中のみんなから忘れられちゃってるんじゃないかって気分になって……」
美少女「……マドカト、デアウマデ、ワタシ、ソンナキモチダッタ」
まどか「私と初めて会った時の事?」
美少女「アノトキ、ワタシ、ヒトリボッチ。ミシラヌ、ホシデ、トテモ、ココロボソカッタ……」
まどか「そうだったんだ……」
美少女「……ホントハ、サイショ、マドカ、コワカッタ」
まどか「え?私の事が……怖かったの?何で?」
美少女「ワタシト、マッタク、スガタカタチ、チガウ。ダカラ、バケモノカト、オモッタ」
まどか「あー……そっか。うん、あたしも最初あなたを見つけた時、お化けかと思っちゃったし……えへへ」
美少女「……サイショニ、アエタ、ニンゲン、マドカデ、ヨカッタ」
まどか「ぅぇへへ。わたしなんかでよかったのかな……?」
美少女「マドカニ、アエナカッタラ、キット、ワタシハ、イマゴロ……」
まどか「……?」
美少女「……ダカラ、ワタシ……っ」ガシッ
まどか「え?……ええ?どうしたの?」
美少女「マドカ!ダイジナ、ハナシ、アル!キイテホシイ!」
まどか「え?何……ですか?」
美少女「ワタシト……ワタシトイッショニ……!」
ドーン!ドドーン…!パラパラパラ……
杏子「おおー、綺麗だな」
さやか「あちゃー、始まっちゃったか」
仁美「もう!せっかく皆で揃って花火を見ようと思いましたのに!お二人が遊んでばかりいるから……」
杏子「まだ始まったばかりだろ?間に合うじゃねーか」
仁美「こういう思い出作りイベントはきっちりしたい派なんですの!私は!せっかくベストビューポイントを確保しておいたのに……」
杏子「悪い悪い。でもあいつはまどかと一緒に最初から見れてるんだろうし、いいじゃないか」
仁美「杏子さん!私、あなたなそーいうルーズな所が許せませんの!もしかしたらもう二度と会えないかも知れないお友達のお別れ会を……」
さやか「はいはい、そうこう言ってる内に到着~」
仁美「お待たせして申し訳ありません。この方達が…………え…………は、はあああっ!?」
さやか「どうしたの仁美?まさかあの子らまた迷子にでも……ってなーんだ二人とも居…………お、おぉゥ…………ぅ?!?」
杏子「なんだい素っ頓狂な声出して。ほらカキ氷、ちゃんと人数分あるから花火見ながら皆で食べよ…………お、おあああああああっ!?な、なななな何やってんだテメーら!?」
まどか「んっ……ぅ……ン」チュパッ
美少女「マド……ハァン……ゥ」チュッチュ
仁美「キ、キキキキキ、キキ……っ!??」
さやか「キスしちゃってますね。しかも若干、ディープ気味のヤツ」
仁美「キマシタワァぁぁぁぁああああッッッ!!!イエスッイエスイエスッ!!!」グッ(力強いガッツポーズ)
ドドーン!ドーン!ドドーン!
杏子「おいコラ!まどかに何してんだ!離れろっての!」グイッ
美少女「ナンデ?カゾク、アイジョウ、ヒョウゲン、ショクシュ、カラメアウ。ニンゲンノ、キス、ニテル、オナジイミ……チガッタ?」
まどか「……はぁぅ////」ポケー
杏子「家族のキスは頬っぺにチューだ!バカ!情熱的すぎんだろ!舌と舌は恋人のやるヤツだ!」
美少女「コイ、ビト!?アワワ……マドカ、ゴメン……」ニョロニョロ…
まどか「……ぁふぅ……ン////」トロォ…ン
さやか「まどかー?おーい、帰ってこーい?」ペシペシ
杏子「ったく、どうしてこんなことに……」
美少女「ソ、ソレハ……」
ドーン!パラパラ…
ドン!ドドーン!
杏子「まどかと一緒に暮らしたいィ~?」
美少女「ウン。ワタシノ、ホシ、マドカクルノ、ムリ。ダカラ、ワタシ、マドカノウチ、スム!……ッテ。イッタ」
杏子「……どうしてそんなこと言った?お前、故郷に帰りたいんじゃなかったのか?」
美少女「カエリタイ、ウソジャナイ……ケド、ココニイタイ、キモチ、モットツヨイ」
杏子「……お前は地球に残るべきじゃない。見知らぬ旅先なんかより故郷の方がずっと良いに決まってる」
美少女「……ワタシ、コキョウ、コオリト、ガンセキ。セマクテ、ツメタイ。ダカラ、トテモ、オチツク……」
杏子「……だろうな」
美少女「ホシ、チイサイ。ミンナ、テイキテキニ、トウミン。カツドウ、メッタニ、ナイ」
杏子「あたしにゃ想像も出来ない生活だね。さぞかし退屈なんだろうけど……それでもお前の家なんだろ?」
美少女「ウン。ナツカシイ、カエリタイ……デモ、カエッテ、トウミン……キオク、リセット」
杏子「リセット?忘れちまうのか……何もかも?」
美少女「……ワスレタ、キオク、ケッシテ、オモイダスコト、ナイ」
杏子「……難儀な体質だな」
美少女「コキョウ、カエリタイ……ケド、ミンナトノ、オモイデ、ワスレタク、ナイ」
杏子「忘れない方法はただひとつ……あたしらと一緒に居続けること、か」
美少女「……ウン。ソウ、マドカニ、イッタ」
杏子「あいつは何て?」
美少女「ノコル、ダメ。ゼッタイ、カエラナキャ……マドカ、オコッタ」
杏子「ははっ、あいつらしいな」
美少女「マドカ、ワタシノコト、カゾクノヨウニ、タイセツ、イッテクレタ。ハナレテモ、ワスレテモ、ニドトアエナクテモ……ズット、イッショダッテ……」
杏子「……ふん。それで?」
美少女「カンジョウ、タカブリ、ワタシ、アイジョウヒョウゲン。マドカ、カゾク……ト、オモッテ……」
杏子「その結果がアレか……」
まどか「あははは、見て仁美ちゃん。星々の間をエーテルの風が吹き抜けて行くよ?」キャッキャッ
仁美「まどかさん……可愛そうに。あまりのショックで精神が宇宙へ……」
美少女「ホント、ゴメンナサイ……」
さやか「まーまー。そんな細かいこと気にしてないでカキ氷食べなって。ほら」シャリシャリ
ドーン…バラパラ…
仁美「そろそろ花火も終わりそうですわ」
まどか「わー、綺麗だね。あ、イチゴ味おいしい」シャクシャク
さやか「まどか。気分はどう?ブルーハワイたべる?」
まどか「……だいぶ落ち着きました」イタダキマス…シャリッ
杏子「おい、なんであたしの後ろに隠れるんだよ」
美少女「ハズカシイ……マドカ、ゴメンナサイ」
まどか「大丈夫だよ。ちょっとビックリしただけだから」ニコッ
仁美「……何だかまどかさんが以前より大人びて見える気がしますわ」
美少女「ダイジョウブ、マドカ!ショクシュ、ニンゲンノ、テアシ、ミタイナモノ!ファーストキス、ノーカウント!」
仁美「それはそれでアブノーマルな行為になりそうな……」
さやか「そうそう気にしない方がいいよ。あたしも夜中目が覚めたら顔に大きな蜘蛛が張り付いてたことあったけど、それと一緒だって」
杏子「その例えはどうなんだ……」
美少女「ソウソウ!ムシニデモ、ササレタト、オモッテ……ワタシタチ、コウカクルイノ、ナカマ!エビヲ、タベタトオモッテ!ネ?」
まどか「あ、いや、そこまでフォローしてくれなくても……別にもう気にしてないよ」
さやか「本当は?」
まどか「……しばらく悶々としそうです」
美少女「アゥゥ……」ガクッ
杏子「まあ初めての異星間交流だ。今まで問題起こさなかった事の方がおかしいのさ。ほら、カキ氷食って元気出せ。トッピングは塩オンリーだぜ!」
美少女「……キョウコ、ワタシ、ホカニメイワク、カケテナイ?」
杏子「んえっ!?えーっと……無いんじゃないかなぁ、たぶん」
美少女「…………ウマイ」シャリシャリ…
仁美「あ……ほら、あれが最後の大玉ですわよ」
ボッ ヒュルルルルルル……
ドッパァーン!バチバチバチ!パラパラ……
さやか「おぉう……流石の迫力」
杏子「これでおしまいかい?なんか呆気ないねぇ……」
仁美「花火とはそういうものですわ」
美少女「……ミンナ、イママデ、アリガトウ。ワタシノ、タメニ、イロイロ、シテクレテ」
さやか「いまさら何言ってんのさ。そんなの気にしなくていいってば……ねー?」
仁美「そうですわ。短い間でしたけど楽しかったです。また遊びにいらして下さいね。いつでも歓迎しますわ」
美少女「……ウン。アリガ、トウ……サヤカ、ヒトミ」
杏子「んじゃ、あんたたちとはここでお別れだね。あたしはコイツを見送ってくる」
仁美「そうですか。どうか、お気をつけて……お風邪を召されませんように」
美少女「ウン。ジャア……」
さやか「……あれ?あたしもここで?」
杏子「お前が来てもやること無いだろ。むしろ邪魔だ」
さやか「……じゃあここでお別れかぁ。ま、達者でやんなよ」
美少女「……ウン。サヤカ……」
まどか「あ……あの杏子ちゃん!あたしもついてっちゃダメかな!?」
杏子「ダメだ」
まどか「な、なんで……?」
杏子「『見送り』は『危険』だ。後のことはあたしたちに任せて、お前は家に帰ってろ」
まどか「でも……!私……」
美少女「マドカ……アノ……!?」グラッ
杏子「おっと、大丈夫かい」ガシッ カタカタ、カタ…
美少女「チョット、アシモト、フラツイ……エ?」ゴゴゴゴ…
さやか「わわわ?な、なにこの揺れ……地震!?」グラグラガタガタ…
まどか「地震にしては何か変な……ような?」ガタガタ……ガタッ。
仁美「……おさまりましたわね。何だったんでしょうか?」
杏子「どうやら帰りの準備は完了したみたいだな」
仁美「帰りの準備?今の地震と何か関係が……?」
杏子「ほら、さっさと行くぞ!」グイッ
美少女「ア、ウ……ウン。ミンナ、バイバイ、サヨナラ!」
まどか「あ、さ、さよなら……!」
さやか「はいはーい。元気でねー」ヒラヒラ
仁美「さようならですわー……なんだかドタバタしている内に行ってしまわれましたわね」
まどか「あぅ……ちゃんとお別れ言えかったよ……」
~~山。トンネルの中。
ゴゴゴゴ…ゴ…
プシュー……。
マミ「……と、止まったわね」ハァハァ
ほむら「危なかった……もう少しでトンネルごと崩壊する所だったわ」フゥ…
マミ「やはり地中トンネル式は強度に問題があったのかしら……」
ほむら「回転加速式は発射体への負荷が大きすぎる。オープンレール式はバードストライク等の事故要素が取り除けない……仕方ないわ」
マミ「地中直線500メートルの魔導マスドライバー……せっかく造ったけど、撃てるのはあと一発……って所ね」
ほむら「どのみち一発勝負よ。失敗は許されないわ」
マミ「ええ。分かってる。あの子のためにも、あの子を待ってるご両親のためにも……」
ほむら「……ええ」
マミ「もちろん成功を期待してくれてるあの子たちのためにも。それから……何ヶ月分もの時間、たった一人で努力してくれた暁美さんのためにもね」
ほむら「……わ、私は別に」
マミ「成功させましょう。あなたのやってきた事、決して無駄にはさせないわ」
ほむら「……そうね。ええ……必ず」
杏子「おーす。帰って来たよ」
美少女「タダイマ、フタリトモ」
ほむら「あら。いつまでその格好なの?」
杏子「あ、悪い。いま解除してやるよ」バシュゥゥ…
触手蟲「ア……」ニョロ…
杏子「どうした?人間の格好のままじゃロケットに乗せられないだろ」
触手蟲「……ウン」
マミ「佐倉さん?これをロケットなんかと一緒にしないでくれる?マスドライバーは低コストで宇宙旅行を可能にする近未来的な乗り物なんだから」
ほむら「そうよ。そして私たちは人類初の宇宙射出実験成功者となるのよ。発表すればノーベル賞間違い無し。私たちの名は宇宙工学の権威として有名になるでしょうね」
杏子「なんだお前たち。ずいぶん入れ込んでるじゃないか」
ほむら「何ヶ月もの時間をこの瞬間のために費やして来たのよ。少しぐらいテンション高くなったっていいじゃない」
杏子「まあ何でもいいけどしっかり頼むよ?ミスりやがったらあたしがあんた達を宇宙に放り出してやるからな」ニヤッ
ほむら「その必要は無いわ。なぜならこの子はトンネル式魔導マスドライバーから発射され美しい放物線を描きながら彗星に接近し、誤差数百メートルの範囲内で見事に彗星表面にソフトタッチダウンすることになるのだから!」フンスッ!
杏子「言ってる事の半分もわからねーけど、並々ならぬ自信だけは伝わって来たよ。分かった。全面的にあんたたちを信用するさ」
ほむら「当然ね」ファサァ
触手蟲「……」ニョロ…
マミ「……」
マミ「お別れ会は楽しかった?」
触手蟲「ウン……コレ、マドカ、クレタ」
マミ「あら『かまどちゃん』のお面じゃない。いいな、うらやましいわ」
触手蟲「キョウコ、カキゴオリ、クレタ。ヒトミ、ハナビ、ミセテクレタ。サヤカ…………サヤカハ、アイカワラズダッタ」
マミ「そう……心残りは無い?」
触手蟲「……ナイ。タクサン、オモイデ、トテモ、キレイ。ウチュウ、メグル、ムゲンノ、ホシボシ、ヨリモ……」
マミ「……あなた」
触手蟲「ハナビノ、ヨウニ、イツカ、キエテシマウ。オモイデ、ハカナイ、ナガレボシ、ミタイ……」ツー…
マミ「泣いて……いるの?」
触手蟲「……ナイテナイ。コレハ、ネンエキ、ブンピツ、シタダケ……」ネチャァ…
マミ「強がらなくてもいいのよ……泣くのは恥ずかしい事じゃないわ」スッ…
触手蟲「マ……ミ。ワタシ、コワク、ナイ?サワルノ、キモチワルク、ナイノ?」
マミ「……ほら、いらっしゃい」グイッ
触手蟲「ア……」ダキッ
マミ「子供は我慢するものじゃないわ泣きたい時には泣けばいいのよ」ナデナデ…ネチョォ……
触手蟲「ウ……ウウ、ウウウウウッ…………ウチ、カエリタイヨゥ……デモ、ミンナト、トモダチ、ワスレテシマウ、カナシィ……」ドロドロドロォ…
マミ「……そう」ナデナデ ヌッチャヌッチャ…
触手蟲「マドカ、オボエテテ、クレル……デモ、ワタシ、ワスレテシマウ……ツギ、マタ、アッテモ、ワタシ、ミンナ、ワカラナイ……!」
マミ「大丈夫よ。もしあなたが忘れてしまっていても……また友達になりましょう?また仲良くなればいいのよ」
触手蟲「デキル……?」
マミ「出来るに決まってるでしょう?私たちは何?」
触手蟲「マホウ、ショウジョ……?」
マミ「そうよ。魔法少女に出来ない事なんてないんだから。そしてあなたも……はい、お面」スッ
触手蟲「ア……」スチャッ
マミ「これであなたも立派な魔法少女。どんな不可能も可能にしちゃえるわ」
触手蟲「ワタシモ……マホウショウジョ!ミンナノ、ナカマ!フカノウ、カノウ!」
マミ「……ええ」
ほむら「さあ!準備はいいかしら?ダメと言われても待たないけれどね!」バッ!
杏子「お前そんなキャラだっけ?」
ほむら「徹夜続きだったから一時的にテンションが荒ぶってるだけよ!さあ、お乗りなさい!はやく!」シュタタンタンタタ…クルックルッ♪
触手蟲「……キョウコ」
杏子「……なあマミ。本当に大丈夫なのか?」
マミ「信じましょう……魔法少女の可能性を」
杏子「信じましょう……って言われてもなぁ。かなり不安になってきた」
ほむら「ほら、さっさと発射台にライドンしなさい。私が星までキャリオンしてあげるわ」クイックイッ♪
触手蟲「ホムラ、コレ、オミヤゲ……アゲル」スッ
ほむら「いいの?仄かにまどかの香りが……ありがとう。家宝にする……とりあえず装着!」スチャッ!
マミ「どうして?そのお面は大切なものじゃ……」
触手蟲「ウチュウ、クウカン、ホウシャセン、ツヨイ。オメン、スグニ、ボロボロ……キエテシマウ。キエテシマウノ、イヤ、ダカラ……」
マミ「じゃあせめて何かお土産を……」
触手蟲「ダイジョウブ。オミヤゲ、モウ、サイショニ、デアッタトキ、モラッテル……」ワキャ…
マミ「……あ。それは……」
ほむら「まどか粒子を補充した私に誤差などという概念は適応されない。なぜなら彼女は私にとって特別な存在なのだから……!」ズンチャ!ズンチャチャ!
杏子「ほら、さっさと行きな。でないとほむらの奴がどんどん崩壊していっちまう……」
触手蟲「ウ……ウン。ワカッタ。マミ、ホムラ、シャシュツ、オネガイ!」
マミ「エネルギー充填率10パーセント……20パーセント……」ブォンブオン…
ほむら「航路クリア、レールの魔力系統にも問題なし」ピピピピピピ…!
触手蟲「ウウ……キンチョウ、スル」
杏子「な、なあ……あたしに何か出来ることって……」
ほむら「静かに見守っててくれるのが一番よ……射角オートバランサー、正常に作動を確認」カシュ、ウィーーガシャン!
杏子「……ああ神様。頼むよ……」ギュッ
マミ「……50、60、70……」ヒュインヒュイン……
触手蟲「アノ、ミンナ……」
ほむら「口閉じてなさい!舌噛むわよ!システム、オールクリア!あとはそっち待ちよ、マミ!」ピッピッピ…
触手蟲「キョウコ、マドカニ……!」
マミ「オーケー……80パーセント!……90パーセント……っ!」ヒュインヒュインヒュイン…!
杏子「……!分かった!必ず伝えるよ!」
ほむら「魔導マスドライバー、発射ァァァァァアアアアッ!!!」ポチッ
マミ「『ティロ・ベントルナータ・ア・カーサ』ッ!」カチッ
-----カッ!
~~まどか自宅
まどかパパ「まどか?まだ起きてるのかい?」
まどか「……うん。なんだか眠れなくって」ハァ…
まどかパパ「星空を見上げて溜息なんて……気になる男の子でも出来たのかな?」
まどか「そ、そんなんじゃないよ!……友達がちゃんとお家に帰れたかなって……」
まどかパパ「あはは。そんなに心配しなくても平気だよ。さあ、明日も学校があるんたから」
まどか「うん、わかった……」ハァ…
まどかパパ「……彗星が望遠鏡無しで見られるのは今日が最後だってね」
まどか「うん……ねえパパ。あの彗星がまた地球に帰ってくるのっていつ頃?」
まどかパパ「9000年後と言われてるね。大きな大きな楕円軌道を描いて太陽系の外の、広大な宇宙空間を旅するんだよ」
まどか「……また、会えるかな?」
まどかパパ「……ああ。会えるよ。いつかきっとね」
まどか「……うん」
まどかパパ「さあ。もうそろそろ……」
----カッ
まどか「……!パパ!見て!流れ星!」
まどかパパ「本当だ……不思議な流れ星だ。まるで彗星に向かって一直線に伸びてくみたいな……」
まどか「…………」ギュッ
まどかパパ「……流れ星にお願いしたの?」
まどか「……うん。『あの子が無事にパパやママの所へ帰れますように』って」
~~あれから数日後。夜。いつかの自然公園。山頂。
ラジオ『……世界のニューストピックスです。ここ数日、国籍不明の人工衛星が相次いで発見されており、NASA航空宇宙局では何者かが無許可で衛星軌道に乗せた疑いで捜査を進めています。人工衛星は全部で六基。いずれも大きな反射板のようなものを装備しているだけのシンプルなもので……』
ほむら「これで七基目ね……発射ァ!」バッ
マミ「『ティロ・ガブリエール』!」ッド!----バシュゥゥ……ン……キラーン☆
杏子「おー、派手に上がったな」
さやか「たーまやー!」
マミ「ちょっと美樹さん。花火じゃないんだからね」
さやか「あははすいません。ついテンション上がっちゃって」
ラジオ『……続いて気象情報です。週末の東日本では局地的な暴風に見舞われる恐れがあり……所により竜巻の発生が予想されますので、該当地区にお住まいの方は十分な警戒が必要です。急激な荒れ模様となるため外出は控え食料や水を備蓄しておくなど災害に備えて……』
まどか「……静かだね。彗星が近くに来てた時はあんなに大勢の人がいたのに……」
杏子「お祭りなんてそんなもんだ。いつまでも騒いじゃいられないさ」
まどか「……うん」
ラジオ『続いて群馬地方のニュースです。先日、見滝原市内で発生した崖崩れについてですが詳しい現場検証の結果、違法な採掘が行われていた疑いが強まり、群馬県警では土木建築法違反の容疑で犯人グループの捜索を行っています。なお現場に残された遺留品の中に人気アニメ「魔法少女かまど★マギカ」のお面が残されており、警察では犯人の手掛かりに繋がる重要な証拠として……』
まどか「あの子……まだ覚えててくれてるかな?もう私たちのこと忘れてちゃって……ないかな……?」
杏子「『ありがとう』……だとさ」
まどか「……え?」
杏子「あいつが最後に言ってたよ。お前に『ありがとう』だってさ」
まどか「……私、お礼を言ってもらえるようなことは何も……」
杏子「お前がどう思おうと関係ない。ただあいつはお前に『ありがとう』って気持ちを伝えたかった。それだけなんだからさ……素直に受け取ってやりなよ」
まどか「……うん、そうだね」
杏子「……なんだよ。まだふっ切れないのかい」
まどか「……はぁ、せめてちゃんとお別れが言えてたら……」
ほむら「出来るわよ、お話し」
まどか「……え?」
ほむら「インキュベーター、カモン」パチンッ
QB「なんだい急に呼び出したりし……うわぁっ!?」グイッ
まどか「なにするのほむらちゃん!?酷いことするは止めて!」
ほむら「大丈夫よまどか。排泄穴に携帯ラジオをコネクトするだけよ……ふんぬっ!」グサッ!
QB「んほおおおっ!?宇宙電波受信しちゃうのおおおおッ!?」ビクンビクン!
まどか「うわぁ……」
さやか「ん?なんかラジオがノイズ混じりに……」
ラジオ『ザッ……ザザザッ…………ア……マド…………カ……?ザザッ』
まどか「……え?いまの声って……!」
ラジオ『マド……カ?キコエ……ザザッ……ル?』
まどか「き、聞こえるよ!ウソ……彗星から?いったいどいやって……」
ほむら「試験型を発射した時に彗星まで無事にたどり着いたインキュベーターが一匹いたのよ。そいつと地球のコレの間にある通信機能を利用してホットラインを構築しただけよ」
ラジオ『さ……寒い……わけがわからない……凍えてしまいそうだ……誰か迎えに……マドカ!ホントウニ、アリガトウ!』
まどか「え?あ……ううん!こっちこそありがとう!たった三日間だったけど……すごく楽しかったよ!」
ラジオ『マタ、アソビニクルカラ!ツギハ……キュウセンネンゴニ、マタアオウ!』
まどか「……ッ……うん!楽しみに、してるよ!また一緒に、お祭り、行こうね!」
ラジオ『ゼッタイ、ヤクソク!マドカ、カナラズ!マタ……アイニ…………ザザッ……ザザザァー…………』
まどか「…………」
QB「太陽系の外へ出てしまったようだね。いくら僕たちの通信能力でもそこから先は……」
さやか「ちゃんとさよならって、言わなくてよかったの?」
まどか「……いいの。さよならは……いらない……から」
QB「彼ら種族の平均寿命はニ十億年だ。9000年程度、彼らにしてみれば……さほど長くもない時間なんだろうね。きっと彼らは思いもしなかっただろう。君たち人間が僅か100年も生きられない短命な種族だなん……ギャフんっ!?」ズボッ
ほむら「悪い宇宙人は黙ってなさい」ポタポタ…
QB「いきなりラジオを引き抜くなんて……びっくりするじゃないか」
杏子「さーて。もうやることもないし……私たちも帰ろうか」
マミ「そうね。帰りましょうか。私たちの家に……」
杏子「……へへっ、なぁマミ。今晩泊めてくれよ」
マミ「構わないけど……急にどうして?」
杏子「なんだか今日は誰かに『ただいま』って言いたい気分なのさ」
マミ「……奇遇ね。私も誰かを『おかえり』って迎えてあげたいと思ってた所よ」
杏子「利害の一致ってわけだ」
マミ「ふふっ……そういうことにしておきましょうか」
ほむら「……」
さやか「おーいまどか?いつまで星空見上げてるつもり?帰るよー?」
まどか「……ごめん、さやかちゃん、あたし、いま……ね」
さやか「……まどか?」
まどか「……ハンカチ……持ってない、から……」
さやか「……あー……ったく、泣きたいなら泣けばいいのにこの子は」
まどか「……ゴメン……っ」
さやか「止むまで待っててあげるよ。あたしは別に……何処にも行きゃしないからさ」
まどか「…………ウン……っ」
プルルルルッ、プルルルル…ガチャ
ほむら「あ、もしもし……ごめんなさい、こんな夜遅くに電話なんかして……ううん、そんなんじゃないの。ただちょっと声が聞きたくなっただけ……うん……うん平気。どこも悪い所は無いし、調子もいいから…………そんな心配しなくていいってば。うん、そう友達も……たくさん出来たし…………ホントだってば!もう……うん、うん……わかってる。無理しないようにするから……うん……じゃあそろそろ切るね。お父さんにも……うん、わかってるってば……じゃあ切るからね?…………おやすみ、お母さん」ピッ
~~一万年後、地球のどこか。荒れ果てた大地。
ヒュルルルル…スタッ
桃色髪の少女「よし。今度は着地成功……さてと」キョロキョロ…
桃色髪の少女「あれ……?おかしい……確か、この辺りのはず、だけど……誰もいない?場所間違えた……?」
ザッ
黒髪の少女「おかしな魔力反応がするから来て見れば……驚いたわ。まさかあなたが魔法少女になってるだなんて……私のこと覚えてる?」
桃色髪の少女「ほむら!久しぶり!……他のみんなは?」
ほむら「……ちょっと遠くに出かけているの。私ももうすぐ行かなきゃならないのだけれど……」
桃色髪の少女「そっか。入れ違い、残念……私、魔法少女になった!記憶、消えない!まどか、さやか、仁美、杏子、マミ、みんな覚えてる!忘れてない!」
ほむら「……もう会えないんじゃないかと思ってたわ」
桃色髪の少女「エヘヘ……ゴメン、ちょっと遅れた。私、魔法少女なってから宇宙各地で戦ってた。外宇宙からの侵略者、撃退した!惑星同士の衝突、食い止めた!エネルギー無駄遣いする悪い宇宙人の星、業務改善強制執行!えと、それから他にもブラックホールとかを……」
ほむら「……そう、頑張ってるのね。偉いわ」
桃色髪の少女「皆と同じ。私も魔法少女だから!皆、頑張ってた。私も頑張る、当たり前!」フンスッ
ほむら「……ふふっ、そうね」
桃色髪の少女「あ。そうだ。ゆっくりお話ししたいけど、すぐに行かなきゃいけない用事がある。ほむら!これまどかに返しておいて」ポスッ
ほむら「……ハンカチ。まどかの?」
桃色髪の少女「ちゃんと洗濯したから!それじゃあ……」
ほむら「待ちなさい。そんなボサボサの髪で行くつもり?魔法少女は身嗜みも大切なんだから」シュル
桃色髪の少女「これは……赤いリボン?確かこれってまどかが着けてた……」
ほむら「貴女にあげるわ……ほら出来た。うん、似合ってる」
桃色髪の少女「私には少し派手すぎる、のでは……////」カァ…
ほむら「そんなことないわ。さあ、行ってらっしゃい」ポンッ
桃色髪の少女「うん!ちょっと宇宙の果てまで行ってビッグクランチ食い止めてくるだけだから!終わったらすぐ帰ってくる!そしたら今度は皆で一緒に遊ぼう!それじゃまたね!」
ほむら「……ええ。またね。素敵な魔法少女さん」
おわり。
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