[磯野家]
ワカメ「お兄ちゃん、何そのカードゲーム?」
カツオ「これかい? これはWIXOSS(ウィクロス)っていう今流行りのカードゲームさ」
タラオ「カツオお兄ちゃんトドメですぅ」サッ
カツオ「うへー。タラちゃんやるじゃないか。僕が学校行ってない間にウィクロスばっかりやってるんじゃないか?」
タラオ「イクラちゃんと毎日ですぅ」
ワカメ「面白そう……。私もやってみようかな」
カツオ「後で余ったデッキをあげるよ。せっかくだし、3人でバトルしようよ」
タラオ「みんなでバトルですぅー」トテトテ
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――その後……
カツオ「それじゃワカメ、このスターターデッキを開けてみるんだ」
ワカメ「うん」カパッ
カツオ「その白いカードが、ワカメの“ルリグ”だよ。ルリグは、いわばプレイヤーの分身みたいなものなんだ」
ワカメ「へえー、かわいい……」
???『…………ふ、ふわあぁ……』
ワカメ「お……お兄ちゃん! カードが喋ったよ!?」
カツオ「えぇっ? 何言ってるんだよワカメ。カードが喋るわけないだろ?」
ワカメ「う、嘘じゃないもん! ほら!」ピラッ
???『ふんにゃあぁ……』
カツオ「うえぇっ!? ホントだ! タラちゃんも聞こえる?」
タラオ「何にも聞こえないですぅ。カツオお兄ちゃんとワカメお姉ちゃん、お耳がおかしいんじゃないですかぁ?」
カツオ「バカにしないで欲しいなタラちゃん」
ワカメ「どっ、どうなってるのよコレぇ。これ元々、お兄ちゃんのカードでしょ?」
カツオ「僕に聞かないでよ。近所のデパートのくじ引きで当たったんだ。何か特別な仕掛けでもあるんじゃないか?」
「ただいまー、母さん」ガラッ
「あら、お帰りなさい」
「カツオ、ワカメ! お夕飯の仕度手伝いなさーい!」
カツオ「……このこと、母さんや姉さん、父さんとマスオさんにも内緒だよ。いいね?」
ワカメ「わ……わかった」
タラオ「内緒にしとくですぅ」トテトテ
――就寝前
???『にゃー! にゃー!』ジタバタ
カツオ「うるさいなぁ。もう寝る時間だってのに」
タラオ「…………」スー スー
ワカメ「でも、タラちゃん寝てるし、私とお兄ちゃんにしか聞こえてないみたい。それに、これだけ騒がれると、さすがにお父さん達も目が覚めてやって来るはずじゃない?」
カツオ「確かにそうだよな……。僕とワカメにしか聞こえないってワケか」
???『バトル! バトル!!』ブンブン
カツオ「……とにかくそいつ、僕らの眠りを邪魔しない所に置いといたら? うるさくてしょうがないよ」
ワカメ「うん。カードスリーブに入れて、とりあえず一番下の段の引き出しの中に入れておくわ」ゴソゴソ
???『うにゃあー! ふんにゃー!!』ジタバタ
カツオ「……もう寝ようワカメ。明日寝坊したら、また姉さんに叱られるよ」フワァ
ワカメ「……そうだね。お休みお兄ちゃん」パチン
――翌日、昼休み
[学校/食堂]
カツオ「みんな、お昼ご飯食べたらウィクロスか。すっかり流行になってるなぁ」
ワカメ「うん……」ピラッ
???『バトル!』ズイッ
カツオ「さっき僕とワカメでバトルしたじゃないか。しかも僕の全勝。まだやりたいのかい?」
???『バトル! 勝ちたい!』ブンブン
ワカメ「お兄ちゃん相手じゃまだ厳しいよ。困ったなぁ……他に相手がいればいいんだけど……」
カツオ「いっそ、中島あたりにお願いしてみるか?」
「あーーっ!! 見つけた!」バアァン
カツオ「うわわっ、誰だい君は?」
遊月「ねぇあんた、“セレクター”でしょ!?」
ワカメ「せ、セレクター……?」キョトン
???『にゃあー!』
遊月「その喋るルリグ、間違いないね!」
カツオ「ええっ? ちょっと待ってくれ、君にもこいつの声が聞こえるのかい?」
遊月「もちろん! あたしも持ってるんだ、ルリグ!」ゴソゴソ
ワカメ「えぇ?」
遊月「花代さんだ!!」バッ
花代『おら来たー!!』
ワカメ「え……えぇー……」
カツオ「うわぁ……これは一体、何が起きてるんだ?」
[学校/屋上]
遊月「おっしゃあ! ちょうど誰もいない!」
ワカメ「あのカード……花代さんって、この子と全然違うね? ちゃんと言葉喋れてるし……」
カツオ「それよりも僕は、こいつ以外にも喋るルリグがいるなんて思わなかったよ」
香月「カツオ君とワカメさん……だっけ? 君たちにも、花代さんの声が聞こえるんだよね」
カツオ「君には聞こえないのかい?」
香月「僕はセレクターじゃないからね。遊月から、花代さんの言葉を代弁してもらってるけど……まさか、男のカツオ君がルリグの声を聞けるとはね」
カツオ「ええっ? ということは、この喋るルリグの声は、女の子にしか聞こえないってこと?」
ワカメ「セレクターって……」
遊月「説明してあげよう! セレクターってのは、“夢限少女”を目指して戦うウィクロスプレイヤーのことさ」
ワカメ「夢限、少女……?」
遊月「バトルに勝てば、セレクターは理想の自分になれる。その姿こそが夢限少女!」
カツオ「要するに、願いが叶うってことじゃないのか?」
花代『厳密に言えばちょいと違うね。無茶な願いや夢も可能にする自分になれるってことさ』
ワカメ「願いを可能にする自分……」
花代『どんな夢でも願いが叶うなんて、そりゃただの幻想さ。でも、このカードはそいつを可能にする。その為には、バトルに勝ち続けなくちゃならないけど、この意思あるルリグの入ったデッキは誰もが持ってるものじゃないんだ。選ばれた少女、つまりセレクターだけが手にすることができるカードなのさ』
カツオ「ちょっと待ってくれよ。今の話を聞く限りじゃ、女の子にしかルリグの声は聞こえないみたいだけど、僕はどうなんだ? 僕も、そのセレクターってやつの資格があるのかい?」
香月「僕には聞こえないけど、カツオ君は聞こえるらしいんだ。花代さんの声も、ワカメさんのルリグの声も」
遊月「えぇー……そんなことってあるのか。花代さん、どうなんだ?」
花代『……あたしも流石にわからないね。そもそも夢限少女ってのは、その名の通り女がなれるモンだから、必然的にセレクターも女からしか選ばれないはずなんだけど……。でも、あたしらルリグの声が聞こえるんなら、セレクターの資格があるのかもしれないわね』
ワカメ「そうなんだ……」
花代『あとそれと、これだけは忘れないで。バトルに3回負ければ、セレクターとしての資格を失うんだ。3回負けた時点であたしらは消える。セレクターの願いは叶えられることなく、夢限少女の座をかけたウィクロスの戦いは幕を閉じる』
カツオ「3回って……僕もワカメも、もう既に3回以上負けたことはあるけどなぁ」
花代『安心して。あくまでもセレクター同士のバトルでの話よ。セレクターが普通のプレイヤーに何回負けても、セレクターの資格は消えないわ』
遊月「花代さん、ありがと! それじゃワカメ、早速あたしとバトルだ!」グイッ
ワカメ「えぇっ!? 私、願い事とかそういうの特に無いんだけど……」
遊月「いいのいいの! そっちに願いが無くても、バトルできれば!」
???『バトル、バトルー!!』ブンブン
遊月「ほら、あんたのルリグだって、そんなにやりたがってるんだからさ。一戦くらい良いでしょ?」
ワカメ「……で、でも私、ウィクロス始めたばっかりだし……。お兄ちゃんとやって、まともに勝てたことも無いのに……」
香月「だってよ遊月。初心者狩りなんて、いくらなんでも横暴じゃないか」
遊月「情けは無用! それに、ルールを知らないわけじゃないでしょ? オープン!!」バッ
グニャアァ……
カツオ「うひえぇっ! 何だいこれは?」
ワカメ「景色が歪んでくよ!」
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