ほむら「6月の花嫁」 (125)

まどマギの百合物です
2回に分けて投下する予定です

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ほむら「……」

まどか「んー……」

ほむら「……はぁ」

まどか「ほむらちゃん…どうかしたの?」

ほむら「私のことではないんだけど……」

ほむら「……雨、止まないわね」

まどか「あー…ここ2、3日ずっと雨降ってるよね……」

ほむら「こうも雨ばかりだと気分が滅入ってくるわ……」

まどか「そうだねぇ。今日だってほむらちゃんと出かける予定だったのに」

ほむら「それが結局家でゴロゴロしてるだけなんて……」

まどか「確かに出かけられなかったのは残念だけど……」

まどか「わたしは、こうやってのんびり過ごすのも好きだよ?」

ほむら「そう言ってもらえるのは嬉しいけど…さすがに退屈になってきたわ」

まどか「だねー……。テレビ、何かやってないかな」ピッ

『昨日に引き続き、今日も激しい雨が……』

まどか「うわー…これ、どこだろう。すごい雨風」

ほむら「少なくとも市内ではないわね。この辺は…まぁ、普通の雨だし」

まどか「……隣の県みたいだね。この辺は大丈夫かな」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「……ごめんなさい。嵐が来るかもしれないと思うと…ちょっと……」

まどか「……ワルプルギスの夜のこと、思い出しちゃうの?」

ほむら「えぇ……。倒したとわかってるけど、どうしてもね」

まどか「心配することないよ。ワルプルギスの夜は、みんなと…ほむらちゃんが倒したんだから」

ほむら「そうね……。奴を倒したからこそ、まどかとこうして過ごしていられるのよね」

まどか「もう何度も言ったけど…ほむらちゃん、本当にありがとう」

ほむら「お礼なんていいの。私が望んでしたことだから」

まどか「そうだとしても、何かお礼がしたいな」

ほむら「……そうまで言うのなら、ひとつだけお願いがあるわ」

まどか「ほむらちゃんのお願いなら、何でも聞いちゃうよ」

ほむら「それじゃあ…この先もずっと、私と友達でいてくれる?」

まどか「もちろんだけど…それはお願いにならないよ」

まどか「だって、わたしはずっとほむらちゃんの友達でいるつもりだもん」

ほむら「まどか…ありがとう」

まどか「それで、ほかに何かないの?」

ほむら「えぇ…今は何も思い浮かばないわね」

まどか「そっか。何か思いついたら遠慮しないで言ってよ?」

ほむら「……望みらしい望みと言えば、今すぐにこの雨、止ませてほしいものね」

まどか「それはちょっとわたしには……」

ほむら「いつまで降るのかしらね……」

まどか「どうにもできない以上、仕方ないよ。家でできることをしようよ」

ほむら「そう言っても…私の家には何もないの、知ってるでしょ」

ほむら「テレビはさっきから大雨情報ばかりだし、あとはまどかの持って来た雑誌くらいしか……」

まどか「それならこの雑誌、一緒に見ない?」

ほむら「それは…この辺りの情報誌かしら」

まどか「うん。色々乗ってるんだよ、飲食店とかイベントとか」

ほむら「今度出かけるときの参考にはなるかしらね」

まどか「えーと…何か面白い記事は……」

まどか「……あ」

ほむら「何か見つけたの?」

まどか「イベントじゃないんだけど、雑誌の特集で。ほら」

ほむら「ジューンブライド特集ね……」

まどか「このドレス、すごく素敵だなぁ」

ほむら「……まどかはこういうものに憧れていたりするの?」

まどか「女の子だからね。やっぱり憧れちゃうよ」

ほむら「そう……」

まどか「ほむらちゃんはどう思うの?」

ほむら「……憧れが無いと言えば嘘になるわね」

ほむら「ただ、そんな先のことはちょっと想像できなくて……」

まどか「でもあと2年もしたらわたしたち、結婚できるんだよ?」

ほむら「それはそうなのかもしれないけど……」

まどか「わたし、結婚するならほむらちゃんがいいなぁ」

ほむら「……え?私?」

まどか「うん。ほむらちゃんなら、わたしのことを大事にしてくれると思うし」

まどか「……いっそのこと、わたしとほむらちゃんで結婚しちゃう?」

ほむら「何を言って……」

まどか「うぇひひ、ほむらちゃんはわたしのお嫁さんになるのだー」

ほむら「まどかもそんなこと言ったりするのね……」

まどか「いつもさやかちゃんに言われるばかりだから、たまには言ってみたくなって」

まどか「……あ、一応言っておくけど、冗談だからね?」

ほむら「……まぁ、まどかとなら冗談じゃなくても構わないけど」

まどか「ほ、ほむらちゃん…そう言われちゃうとどう返していいか……」

ほむら「あ…ご、ごめんなさい」

まどか「確かにほむらちゃんのことは大好きだけど、それとこれとは……」

ほむら「わ、わかってるわ」

まどか「はー…びっくりした。……そう言われて悪い気はしなかったけど」

まどか「……ううん、もうやめよっか、この話。変な空気になっちゃったし」

ほむら「そうね……。別のことを話しましょうか」

まどか「ずっと不思議に思ってたんだけど……」

まどか「何で天気の悪い6月に結婚すると幸せになるんだろう?」

ほむら「あぁ…確か6月は結婚を司る女神の月だからよ」

ほむら「それに、ヨーロッパは6月は雨が少なくて結婚するのに向いてる季節だからとか……」

まどか「へぇー…ほむらちゃん、詳しいんだね」

ほむら「昔、何かで見たことがあるだけよ」

まどか「でも、雨の日の結婚式っていうのも素敵だと思うな」

ほむら「……そうね。そうかもしれないわ」

まどか「雨の結婚式は素敵だけど…今はちょと嬉しくないなー。帰るの大変だし」

ほむら「でも、そろそろ帰る時間だけど……」

まどか「雨、弱くならないかなぁ……」

ほむら「そんなこと言ってるとどんどん遅くなっちゃうわよ」

まどか「うー…仕方ない、帰ろう」

ほむら「えぇ。まどか、気をつけて」

まどか「うん。ほむらちゃん、またねー」

バタン

ほむら「……送って行った方がよかったかしら」

ほむら「それにしても…雨、こんなにも降るのね。梅雨って」

ほむら「梅雨なんて久しぶりだから、忘れていたわ……」

ほむら「……さて、と。夕飯の支度でも……」

ほむら「あら、これ…まどかが持って来た雑誌……。持って帰るの、忘れたみたいね」

ほむら「……」

ほむら「……ゆ、夕飯にはまだ早いし、少しだけ」

ほむら「えーと……」

『今からでも間に合う!予約の取れる見滝原の結婚式場』

『新開発、防水ドレス!突然の雨でも安心!』

『来年の6月に向けて!おすすめデートスポット!』

ほむら「……確かにジューンブライド特集ね。結婚に関する情報ばかり」

ほむら「あとは…ドレスを着たモデルの写真……」

ほむら「今までこんなことを考える余裕、無かったけど……」

ほむら「こうして改めて見ると、どの衣装も本当に素敵……」

ほむら(いつか…こんな衣装を着る日が来るのかしら)

ほむら(私も…それに、まどかも……)

ほむら(どこか小さな教会で、本当に親しい人たちだけで……)

ほむら(汚れのない純白のドレスを着て…そして……)

ほむら(まどかと……)

Prrrrrrrr

ほむら「ひゃっ!?な、何!?」

ほむら「……電話?相手は…まどか?」ピッ

ほむら「……も、もしもし?」

まどか『あ、ほむらちゃん。わたし、ほむらちゃんの家に忘れ物しちゃったみたいで』

ほむら「え、えぇ…まどかが持ってきた雑誌のこと…よね?」

まどか『うん。ごめんね、明日取りに行くよ』

ほむら「い、いえ…明日、学校で返すわ。それで構わないかしら?」

まどか『……わかった。ありがとう、ほむらちゃん』

ほむら「そ、それじゃ私は夕飯の支度があるから……」

まどか「また明日ね、ほむらちゃん」プツッ

ほむら「はぁ…びっくりした。あのタイミングでまどかから電話がかかってくるなんて……」

ほむら「妙な想像してたせいか、何だかうまく話せなかった気がするし……」

ほむら「ジューンブライドの記事を読んだから…そういう想像をしてしまうのはいいとして……」

ほむら「どうしてその相手がまどかなのよ……。私もまどかも同性じゃない」

ほむら「まどかの嫁云々の話は冗談のはずだし……」

ほむら「それに、私は別にそんなつもりはない…はず、なのに……」

ほむら「……も、もう考えるのはやめましょう。深みにはまりそうだし」

ほむら「夕飯、適当に済ませて早めに休もうかしら……」

――翌日――

ほむら「……」

ほむら(少し早かったかしら。まどかもさやかもまだ来てないみたい……)

ほむら「ふぅ……」

ほむら(昨日は眠るのに苦労してしまったわね)

ほむら(目を閉じるとあの妄想が浮かんできてしまって……)

ほむら(なるべく考えまいとしたけど、そうすればするほど余計に意識してしまって……)

ほむら「……まぁ、2、3日もすれば忘れるでしょう。気にしすぎるのもよくないわね」

まどか「ほむらちゃん、おはよう」

さやか「おっはー」

ほむら「おはよう、2人とも」

まどか「頼んだの、持ってきてくれた?」

ほむら「えぇ。えっと…はい、これ」

まどか「ありがとう。次から忘れないように気をつけるね」

さやか「まどか、何それ?」

まどか「何って…ただの雑誌だよ。昨日ほむらちゃんの家に忘れちゃって」

さやか「へー。なになに…イベント情報にジューンブライド特集ねぇ……」

さやか「……毎度思うんだけどさ、雑誌特集ってどうしてこう面白おかしく書くんだろう」

ほむら「知らないわよ……」

さやか「まともなの、このドレスの写真だけじゃん。……あ、これいいなぁ」

まどか「さやかちゃん、そういうのが好きなんだ。わたしは…こっちかな」

さやか「まどかにはちょっと…背伸びしすじゃないかね」

まどか「そ、そんなことないよ」

ほむら「昨日、まどかにも聞いたけど…さやかもこういうものには……?」

さやか「そりゃあね。その…ほら、あたしも好きな奴がいるわけだし……」

さやか「もし…もし、結婚式をするなら、って想像してみたりさ」

ほむら「そう……」

さやか「それがどうかした?」

ほむら「いえ…何でも。聞いてみただけよ」

さやか「……もしかして、ほむらも好きな人ができたとか?」

ほむら「……そんなわけないでしょう」

さやか「なーんか怪しいなぁ。いつもはそんなこと、わざわざ聞いたりしないのに」

ほむら「それは……」

まどか「さ、さやかちゃん、やめようよ」

さやか「秘密にするから、教えてよ。ほむらの好きな人」

ほむら「違うと言ってるでしょう。ほら、そろそろ席に戻りなさい」

まどか「う、うん。さやかちゃん、席に戻ろう?」

さやか「ぬぅ、仕方ない……」

まどか「ほむらちゃん、またあとでね」

ほむら「えぇ。……はぁ」

ほむら(全く。こういうことには変に鋭いわね、さやかは)

ほむら(でも、好きな人…ね。今のところは特別好意を抱いてる人なんて……)

ほむら(……まぁ、まどかよね。そういう意味じゃないはずだけど)

ほむら(まどかも私のことは好きと思ってくれてるはずだけど…でも、それはあくまで……)

ほむら(……昨日もまどかとこんな話をしたような)

ほむら(それにしても…今までそういった話は縁遠かったせいかしら)

ほむら(必要以上に感化されてしまってる気がする……)

ほむら(……ドレス、か。晴れの日に着るべき、幸せが形になったような素敵な衣装)

ほむら(昨日ちらっと見たけど…まどかに1番似合いそうだったのは…薄いピンクのドレスよね)

ほむら(私は…シンプルな白いドレスかしら)

ほむら(自分で言うのもあれだけど、黒い長髪にはそれが1番似合うと思うし)

ほむら(私のはともかく…あのドレスを着たまどかは何よりも素敵なんでしょうね)

ほむら(薄いピンクのドレスに…髪を下ろしたまどか……)

ほむら「……いつか、見てみたいわね。そんなまどかを」

ほむら「さて、いつまでも妄想に耽ってないで授業の用意をしないと」

ほむら(……もっとも、その姿を見るとき…私は来賓席にいるのよね)

ほむら(叶うのなら…まどかの隣でその姿を……)

ほむら(……って、何を考えてるの、私は。もうやめましょう)

――放課後――

さやか「わっほーい!放課後ー!」

ほむら「やたらとテンション高いわね。どうしたの」

さやか「だって午後から急にいい天気になったんだもん。テンションも上がるってもんよ」

まどか「せっかくだし、どこか寄り道していく?」

さやか「そうだねー…と言いたいんだけど、残念ながら用事があって……」

まどか「そっか、残念」

さやか「また今度誘ってよ。……まぁ、次の晴れがいつになるかわからんけど」

まどか「うん。さやかちゃん、またねー」

さやか「2人とも、またー」

まどか「ほむらちゃんは今日このあと空いてる?」

ほむら「えぇ、特に予定は無いわ」

まどか「それなら、どこか寄り道しちゃう?」

ほむら「そうね…せっかくのまどかの誘いだし、どこか行きましょうか」

まどか「どこに行こうかな…行きたいところってある?」

ほむら「私はまどかの行きたいところで構わないわ」

まどか「うーん…そうだなぁ……」

まどか「……それじゃ、あそこに行ってみようかな」

ほむら「あそこって?」

まどか「今は秘密。着いてからのお楽しみってことで」

ほむら「そう…じゃあ、案内よろしくね」

まどか「うん。……よし、行こっか」

――――――

まどか「ほむらちゃん、着いたよ」

ほむら「……素敵なところね。花が咲いていて、眺めがよくて」

ほむら「近くにこんな丘があるなんて知らなかったわ」

まどか「わたしも実際に来るのは今日が初めてなんだ」

ほむら「あら、そうなの?」

まどか「ほら、あの雑誌に載ってたでしょ?それで、来てみたくなって」

ほむら「そう言われると…雑誌で見たわね、ここ」

まどか「でも、本当に素敵なところだなぁ……」

まどか「おすすめデートスポットに選ばれるのも納得だよ」

ほむら「ここ…デートスポットなの……?」

まどか「雑誌に書いてあったでしょ。ここ、1番人気のデートスポットだって」

まどか「まぁ…まだ時間も早いから、誰もいないみたいだけど」

ほむら「そ、そう……」

まどか「それにね、ここが人気なのは他にも理由があるの」

ほむら「他にも?何だったかしら」

まどか「……ここでプロポーズすると、一生幸せでいられる…って」

ほむら「え……?」

まどか「さやかちゃんにはちょっと悪いけど……」

まどか「ほむらちゃんと2人きりでデートができて…わたし、嬉しいな」

ほむら「ちょ、ちょっと、まどか?」

ほむら(腕に抱きつかれて…柔らかくて、ふわふわして……)

ほむら(まどかが…凄く近い……)

まどか「わたし…ほむらちゃんのことが、好き。ずっとほむらちゃんと一緒にいたい。だから……」

まどか「ほむらちゃん…わたしのお嫁さんになってほしいな」

ほむら「まどかの…お嫁、さん……?」

ほむら「……え!?ちょ、ちょっと待って!?え!?」

ほむら(こ、これってプロポーズ!?私をここに連れてきた理由はこれ!?)

ほむら(嬉しいけど…嬉しいけど、そんなこと急に言われても……!)

ほむら(と、とにかく落ち着かないと……)

まどか「わたし…ほむらちゃんのことが大好きだよ。だから……」

まどか「わたしの、お嫁さんになってください」

ほむら「ま、待って。そんなこと急に言われても、返事なんてできるわけないわ」

ほむら「それに、この前言ってたじゃない、ずっと私の友達でいてくれるって」

ほむら「でも、それを受けたら…その、友達じゃなくなってしまうじゃない」

ほむら「私もまどかも同性だし…いえ、それをどうこう言うつもりは……」

ほむら「私のことをそれほどまでに想ってくれていることは嬉しいけど……」

まどか「……あははっ、ほむらちゃん、動揺しすぎだよ」

まどか「ごめんね、全部冗談だから」

ほむら「冗談…そう、冗談だったの……」

ほむら「まどか…お願いだから心臓に悪い冗談はやめて……」

まどか「ほんとにごめんね。……でもほむらちゃん、何であんなに動揺してたの?」

まどか「もしかして…少し期待しちゃった?」

ほむら「あのね…デートスポットで同性の友人からプロポーズされたらあんな風にもなるわよ」

まどか「えー、それだけなの?」

ほむら「……えぇ。動揺してたことにそれ以上の意味は無いわ」

まどか「うーん…それはそれで何だか残念な気も……」

ほむら「それより、何で急にあんなことを?」

まどか「ほら、ここってデートスポットでしょ?だから、わたしたちもした方がいいかなって」

ほむら「それ、普通は男性と女性でするものだと思うけど」

まどか「でも、わたしはほむらちゃんに言いたいって思ったから言ったんだよ」

まどか「そう思わなければ、いくら冗談でも言ったりしないもん」

ほむら「……まぁ、冗談だとしてもまどかにプロポーズされたことは嬉しいわ」

まどか「プロポーズは冗談だけど、ほむらちゃんが大好きってのはほんとのことだからね」

ほむら「それは…どっちの意味かしら?」

まどか「もちろん友達としてだよ」

ほむら「そう…よね。ごめんなさい、一応確認したくて……」

ほむら(……どうしてかしら。嬉しいような、寂しいような)

まどか「それじゃ、そろそろ帰ろっか。……今日はどうだった?」

ほむら「まどかと2人で出かけるのは久しぶりだったから、とても楽しかったわ」

ほむら「あとは…色々な意味でドキドキさせられたわ」

まどか「楽しんでもらえたのなら嬉しいよ。……ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「何かしら?」

まどか「また、一緒に…2人だけで来ようね」

まどか「わたし、もっとほむらちゃんと…デートしたいから」

ほむら「え、えぇ。か、構わないわ」

まどか「えへ…ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら(まどかとは友達だから…このデートはただ2人出かけること……)

ほむら(……でもそれでいいのかしら)

まどか「ほむらちゃん?帰らないの?」

ほむら「あ…そ、そうね。帰りましょうか」

――――――

ほむら「本当に送って行かなくてもいいの?」

まどか「うん、大丈夫だよ」

ほむら「そう……。もうだいぶ暗いから、気をつけて」

まどか「わかってるよー。ほむらちゃん、またねー」

ほむら「まどか、また明日」

バタン

ほむら「……ふぅ」

ほむら「……ここ、私の家…よね。他に誰も…いないわよね」

ほむら「……はぁ」

ほむら(まどかには…何とか隠し通せたと思うけど……)

ほむら(私は…何でこんなにもドキドキしているのかしら……)

ほむら(あのプロポーズの言葉を聞いてから…ずっとドキドキして……)

ほむら(あれはまどかの冗談だったはずだし、それに……)

ほむら(何も私はまどかのことを…友達以上として好きになったわけではないはず……)

ほむら(だって、まどかは同性で…友達で……)

ほむら(だけど…顔が熱くて、もの凄くドキドキしていて……)

ほむら(まどかの大好きって言葉が、心に響いて……)

ほむら(私は…まどかが好きなの?それとも……)

ほむら(ここ最近の恋や結婚の話題に影響されているだけなの……?)

ほむら(自分のことのはずなのに…全然わからない……)

ほむら(誰かに…話を聞いてもらおうかしら……)

――――――

まどか「うー……」

まどか「やっぱりやめとけばよかった…あーもう、すごいドキドキしてる……」

まどか「多分、顔も真っ赤になってるんだろうなぁ……」

まどか「冗談とは言っておいたけど…変に思われてないといいけど……」

まどか「……うぅ、明日顔合わせるのが何だか気まずいよ」

まどか「でも…わたしは何であんなことを……」

まどか「ほむらちゃんにプロポーズなんてしたんだろう……」

まどか「自分で言ったはずだよね。たとえ冗談でも、言いたいと思ったから言った…って」

まどか「わたしは…ほむらちゃんにこの言葉を言いたかったのかな」

まどか「もし、それがわたしの本心なら…ほむらちゃんのことが好きってことに……」

まどか「……わたし、ほむらちゃんのことが…好きなのかな」

まどか「わたしは…ほむらちゃんと結婚することを望んでいるのかな……」

まどか「だから…プロポーズなんてしちゃったの……?」

まどか「……もう少し考えてみよう」

まどか(もし…考えた結果がそうだったとしたのなら……)

まどか(わたしは…どうしたらいいんだろう……)

今回はここまで
次回投下は30日夜を予定しています

日跨いじゃった。6月終わってるやん…

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――翌日 昼休み――

ほむら「……」

ほむら「……はぁ」

まどか「うー……」

さやか「……どうしたってのよ、あんたたち。今日はずっとそんな調子で」

ほむら「……はぁ」

まどか「うー……」

さやか「ちょっとー?聞いてるー?」

まどか「あ…さやかちゃん……」

さやか「どうしたのさ、ぼーっとして」

まどか「うん…ちょっと悩みというか、考え事というか……」

さやか「大丈夫なの?話だけでも聞くよ?」

まどか「ありがとう……。でも、これは自分で答えを見つけないとだから」

さやか「……わかったよ。その気になったらいつでも話してくれていいからね」

まどか「うん……」

さやか「さて、と。お昼…の前にあいつもこっちに連れ戻さないとだね」

ほむら「はぁ……」

さやか「ほーむーら。ほむらってば」

ほむら「……あ、何か用かしら」

さやか「いや、用はないけど…もう昼休みだよ?」

ほむら「昼休み…そう、そうだったの……」

さやか「何かあったの?あんたらしくもない」

ほむら「……いえ、大したことじゃないわ。それより、もう昼休みなのね」

さやか「時間なくなるし、早いとこお昼にしようよ」

ほむら「悪いけど、私は少し出てくるわ」

さやか「んじゃ、戻るまで待ってるよ」

ほむら「時間かかるかもしれないし、先に食べてて。それじゃ、またあとで」

さやか「ほーい。んじゃ、先にお昼にしようか」

まどか「そう…だね」

さやか「……あんたたち、昨日2人で出かけたんだっけ。そのときに何かあった?」

まどか「え…ど、どうして?」

さやか「だってさ、今日はほむらと何も話してないじゃん」

まどか「あったと言えばあったのかな……」

さやか「何?ケンカでもしたの?」

まどか「そうじゃないの。ただ…わたしが一方的に気まずいなって思っちゃってるだけで」

さやか「気まずいって…まどかとほむらに限って、何でそんなこと……」

まどか「それは…さっき言った悩みに繋がるから。ごめんね、さやかちゃん」

さやか「謝ることないよ、何も気にしちゃいないし。んじゃ、お昼にしよっか」

まどか「あ…うん、そうだね」

まどか(……ほむらちゃん、どこに行ったんだろう)

ほむら「……ごめんなさい、わざわざ呼び出して」

マミ「気にしないで、お昼も終わってたし。それで、私に用って?」

ほむら「……こんなことを頼めるのは…あなたしかいないと見込んで、お願いがあるの」

マミ「お願い?何かしら」

ほむら「少し相談というか…話を聞いてもらいたいの」

マミ「私でよければ力になるわ。それで、何の話なの?」

ほむら「……恋の話なの」

マミ「恋って…あの、恋愛の恋、よね。暁美さん、誰か好きな人が……?」

ほむら「それが…わからないの。この気持ちが恋なのか、そうでないのか……」

ほむら「最近、恋や結婚の話をする機会が多かったから…その話に影響されているだけの気がして……」

ほむら「今までそういった話は…縁遠かったせいか、必要以上にそう思ってしまうの」

マミ「そう言っても、その誰かに恋をしてると疑問に思うような何かがあったんでしょう?」

ほむら「……昨日、その人と2人だけで出かけたのよ」

マミ「昨日は午後からいい天気だったものね。その人とどこに行ったの?」

ほむら「雑誌に載ってた…人気のデートスポットに……」

マミ「あら、素敵じゃない」

ほむら「……そこで、私のことが好きだと…結婚してほしいと言われたの」

マミ「結婚って…あぁ、6月だからかしら。ジューンブライドの季節だし」

ほむら「えぇ、そうだと思う。プロポーズは勿論、冗談だということだったわ」

ほむら「でも、家に帰って思い返してみたら…顔が真っ赤になって、凄くドキドキして……」

ほむら「私はその人にプロポーズされたからドキドキしているのか、それとも……」

ほむら「ただ、プロポーズをされたということに対してドキドキしているのか。それがわからないの……」

マミ「でも、冗談だとしてもどうしてその人は結婚してほしいなんてことを言ったのかしら」

ほむら「……きっと、その人とジューンブライドのことを話していたからだと思う」

ほむら「出かけたデートスポットも雑誌のジューンブライド特集で紹介されていた場所だし……」

ほむら「だから、それを言われたときは驚いたわ。私にそれを伝える為に連れてきたのかと思ったから」

ほむら「だけど…あの子に好きだと…ずっと一緒にいたいと言ってもらえたことは、嬉しかった」

マミ「嬉しい?暁美さん、嬉しいと思ったの?」

ほむら「……えぇ。あのとき…うるさいくらいにドキドキしてたけど…確かに、嬉しいと思っていた」

ほむら「この気持ち…このドキドキは、恋なのかしら……」

マミ「恋というよりはもう、その人との結婚を望んでいるんじゃない?」

ほむら「結婚……」

マミ「当然、私たちはまだ結婚できるわけじゃないから…本当の結婚じゃないというか……」

マミ「結婚したいと思う程に好意を寄せている相手から、冗談でもプロポーズを受けて、嬉しいと思った」

マミ「きっと、こういうことなんだと思うわ」

ほむら「……何となくだけど、わかった。私のこの気持ちは、きっと好意」

ほむら「それも、結婚を望んでしまうような大きな好意……」

ほむら「こんなに大きな気持ちに気づかなかった、わからなかったのは…恋愛対象として見てなかったから」

ほむら「ずっと友達でいてほしいと…願ってしまったから」

マミ「そう……」

ほむら「私…あの子が好き。自分の気持ちがわからなかったけど、今ならわかる」

ほむら「私も、あの子と一緒になりたいと…そう思ってるから」

マミ「どうやら、答えが見つかったみたいね」

ほむら「えぇ。ありがとう、相談に乗ってくれて」

マミ「私はただ話を聞いただけよ。暁美さん、がんばって」

ほむら「……出来る限りのことはやってみるわ」

マミ(暁美さんの好きなあの子と言うのは…きっと鹿目さんのことよね)

マミ(好きな相手が仲の良い友人…それも、同じ女の子だったから、こんなに悩んでいたのかしらね)

ほむら「……相談も終わったし、そろそろ戻りましょうか」

マミ「え?えぇ、そうね」

ほむら「また何かあったら頼らせてもらうわ。それじゃ、また」

ほむら(……そうか。私はやっぱり、まどかのことが……)

ほむら(勝手な妄想に耽ってしまったのも、まどかが好きだから…なのね)

ほむら(自分の気持ちに答えは出たけど…そうなると、別の問題が……)

ほむら(……伝えた方がいいのかしら。でも、まどかは私をどう思っているの……?)

ほむら(まどか…私は……)

――放課後――

まどか「はぁ……」

まどか(結局、今日はほむらちゃんと1度も話せなかった……)

まどか(ほむらちゃん、ずっと何か考え事してたみたいだけど…どうしたんだろう……)

さやか「おーい、まどかー」

まどか「あ、さやかちゃん。何?」

さやか「帰りにちょっと寄り道してかない?」

まどか「え?」

さやか「さっき他の人が話してるの聞いたんだけどさ、ドレスの展示会やってるんだって」

まどか「ドレスって…あの雑誌に載ってたようなの?」

さやか「そうそう。せっかくだし、まどかもどうかなーって思って」

まどか「わたしはいいけど…あの、ほむらちゃんは?」

さやか「んー…いないね。もう帰っちゃったのかな」

まどか「そっか…それなら仕方ないね」

さやか「ドレスの試着とか記念撮影もあるらしいし、撮ってもらおうよ」

まどか「う、うん」

まどか(試着に記念撮影…どうせならほむらちゃんと一緒がよかったな)

まどか(ほむらちゃんのドレスを着た姿、見たかったし…それに、記念撮影だって……)

まどか(別にこれは…本当のことじゃないってわかってるけど、でも……)

まどか(……やっぱり、そうなのかな)

さやか「ほら、行こうよ」

まどか「あ、ご、ごめんね。今支度するから」

まどか(ほむらちゃん…わたしは……)

――――――

まどか「……はぁ」

まどか「展示会…行ってはみたけど……」

まどか「正直、なんだかいまいち……」

まどか「確かにどのドレスも素敵で、試着したときは少し嬉しかったけど……」

まどか「わたしは…ほむらちゃんと一緒に行きたかった……」

まどか「それで…わたしに1番似合うドレス…選んでほしかった……」

まどか「……いつか、わたしもほむらちゃんも…あんなドレスを着る日が来るんだよね」

まどか「誰かと…結婚しちゃうんだよね……」

まどか「それが普通のはずなのに…でも……」

まどか「わたし…嫌だよ。ほむらちゃんが誰かに取られちゃうなんて……」

まどか「ほむらちゃんの晴れ姿を来賓席から見ることになるなんて……」

まどか「そんなの…絶対に嫌だよ」

まどか「だって…だって、ほむらちゃんは…わたしの……」

まどか「わたしのお嫁さんになる人なんだから……」

まどか「……今、わかった。わたし、ほむらちゃんのことが好き…なんだね」

まどか「あのプロポーズの言葉は…わたしが本当に伝えたかったことだったんだ……」

まどか「そっか……。わたし、ほむらちゃんをのことを…そこまで……」

まどか「でも…わたしもほむらちゃんも女の子だし……」

まどか「あのプロポーズが冗談じゃなくて本当だったなんて言っても…困らせちゃうだけだよね」

まどか「ほむらちゃんだって…ずっと友達でいてほしいって言ってたし……」

まどか「……寝よう。眠って、起きたら…ほむらちゃんは友達……」

まどか「次はもう…冗談じゃすまなくなっちゃうから」

――数日後――

ほむら「……」

ほむら「……はぁ」

ほむら(本当の気持ちに気づいたせいか…まどかと今まで通り話したりできない……)

ほむら(特にまどかと2人きりになると、何を話したらわからなくなってしまって……)

ほむら(まどかの方もここ数日、私から距離を取っているみたいだし……)

ほむら(……この分だと、せっかく買ったアレを使うこともなさそうね)

ほむら(安物だし、別に構わないけど……)

さやか「おーい、ほむらー」

ほむら「……あぁ、さやか。私に何か?」

さやか「用という用はないんだけど、何かぼーっとしてたから」

さやか「最近多いよ?大丈夫なの?」

ほむら「……えぇ。問題無いわ」

さやか「ならいいんだけど。もうホームルーム終わってるし、帰らない?」

ほむら「……いえ、もう少しここにいるわ」

さやか「今日は大気の状態が不安定とか言ってたから、早く帰った方がいいと思うけど」

ほむら「……そう」

さやか「……帰らないの?」

ほむら「……」

さやか「ダメだこりゃ。ま、雨振る前に帰りなさいよー」

ほむら「……私は…どうしたら……」

さやか「まどか、お待たせ」

まどか「あ…ど、どうだった?」

さやか「まどかの思った通り、ありゃ何かあるね」

さやか「さすがにそれが何かまではわからなかったけど……」

まどか「そっか……」

さやか「やっぱあんたたち、ケンカでもした?微妙に距離がある気がするんだけど」

まどか「そ、そんなことない…はず」

さやか「まどかがそう言うなら信じるけど…もしケンカなら拗れる前に仲直りしなさいよ」

まどか「う、うん。ありがとう」

さやか「他に何もないなら、そろそろ行くよ。恭介の付き添いしないとだから」

まどか「さやかちゃん、またね」

さやか「またねー」

まどか(ほむらちゃん…どうしたのかな……。最近、何だか……)

まどか(……よし)

ほむら「……」

まどか「ほ、ほむら…ちゃん……」

ほむら「……あ…まど、か……」

まどか「……」

ほむら「……」

まどか「え、えっと…ほむらちゃんは帰らないの……?」

ほむら「もう少し…ここにいようかと思って」

まどか「そ、そっか……」

ほむら「えぇ……」

まどか「……」

ほむら「……」

まどか「……じ、じゃあ、わたし…先に帰るね」

ほむら「……えぇ。気をつけて」

まどか「ま、またね」

ほむら「……また」

ほむら「……はぁ」

ほむら(やっぱり…駄目。まどかの顔を見て話せない……)

ほむら(さやかなりマミなり、側に他の誰かがいないと途端に緊張して、恥ずかしくなって……)

ほむら(たった今のことでさえも…ドキドキしてしまってるし……)

ほむら(私は…まどかが好き。でも、まどかは私をどう思ってるの……?)

ほむら(……わからない。でも、きっと私の望む答えではないでしょうね)

ほむら(そう言えば、まどかも何だか様子が変だったみたいだけど……)

ほむら「……どうしたらいいのかわからない。私の心みたいな天気ね」

――――――

まどか「……」

まどか(最近、ほむらちゃんの様子がおかしい……)

まどか(ぼーっとしてることが多いし、ため息をついてばかりいるし……)

まどか(それに…ほむらちゃんとの会話が、全然続かない……)

まどか(何だかほむらちゃんが…遠く離れて行ったような気がする)

まどか(……わたしが少し距離を取っちゃってるせいもあるかもしれないよね)

まどか(ほむらちゃんのことは好き…だけど、同性で、友達で……)

まどか(どうしたら…いいのかな……)

まどか「……はぁ」

杏子「あれ、まどかじゃねーか」

まどか「え…あ、杏子ちゃん……」

杏子「よう。……って、何か暗いな。どうしたんだ?」

まどか「うん…ちょっとね……」

杏子「……悩み事は吐いちまえば楽になるもんさ。話はアタシが聞いてやる」

杏子「だから、話してみなよ」

まどか「……わからなくなっちゃったの」

杏子「わからなくなった?一体何がだ?」

まどか「……ほむらちゃんとどう接したらいいのか、って」

杏子「……は?」

まどか「好きって…何だろう。友達の好きと恋の好きって…どう違うんだろう……」

まどか「もし…同性に恋の好きを向けてしまったら…どうしたらいいんだろう……」

杏子「まどか…お前……」

まどか「わたしね…ほむらちゃんが好きなの。お嫁さんになってほしいって思うくらい……」

杏子「お、おう……」

まどか「でも、わたしもほむらちゃんも同じ女の子だから…どうしても言い出せないの……」

まどか「本当は伝えたい。でも、言うわけにはいかないから…少し距離を取っちゃって……」

まどか「そのせいかはわからないけど、ほむらちゃん、何かに悩んでるみたいで……」

まどか「ねぇ、杏子ちゃん……。わたし、どうしたらいいのかな……」

まどか「ほむらちゃんに…わたしの好きを伝えていいのかな……」

杏子「あー…アタシは誰かに恋なんてしたことないから詳しくもないし、偉そうなことも言えないけど」

杏子「アタシはその気持ちを伝えるべきじゃないかって思うよ」

まどか「さっきも言ったけど…わたしたち、女の子なんだよ?……変だと思われないかな」

杏子「そんなことないさ。誰かを好きだと思う気持ちに男も女も関係ない」

杏子「お前は暁美ほむらに惹かれて、恋をした。それで十分だろ」

まどか「杏子ちゃん……」

杏子「それに、ほむらを嫁にするんだろ?なら、なおさら伝えないとな」

杏子「グズグズしてたら、誰かにほむらを取られちまうぞ」

まどか「……うん、そうだよね。ちゃんと…言わないとだよね」

まどか「わたし…ほむらちゃんに伝えるよ。自分の、本当の気持ちを」

まどか「何もしないまま、誰かにほむらちゃんを取られちゃうなんて…嫌だから」

杏子「あぁ、その意気だ。他の奴に取られる前に、お前が物にしちまえばいい」

まどか「杏子ちゃん、ありがとう。話、聞いてくれて」

杏子「気にすんな。……んじゃ、アタシはそろそろ行くよ」

まどか「うん。またね、杏子ちゃん」

杏子「肝心なとこでヘマすんなよー」

まどか「……よし」

まどか(ほむらちゃん、ごめんね。わたし…きっと怖気づいてたんだと思う)

まどか(ずっと友達でいてほしいって言ってたから…友達から先の関係になるのが、怖かったんだ)

まどか(でも、もう迷わない。わたしの気持ち、ほむらちゃんに伝えるよ)

まどか「……ほむらちゃん、今どこにいるんだろう。まだ学校にいるのかな」

まどか「家の前で待ってれば帰って来るよね。えーと、ここからほむらちゃんの家には……」

まどか(何だか雨降ってきそうな空……。ちょっと急ごう)

まどか(一応、折り畳みの傘がカバンに入ってるはずだけど……)

――――――

ザァァァァァァァァ

ほむら「……」

ほむら(結局、さやかの忠告は無駄になってしまったわね)

ほむら(学校を出た直後にこんな土砂降りになるなんて……)

ほむら(傘は持ってたからよかったけど……)

ほむら(……それにしても、凄い雨ね。バケツをひっくり返したような)

ほむら(この雨と一緒に…私の迷いも流れていってしまえばいいのに……)

ほむら「……もう家はすぐそこだし、考え事は家に入ってからにしましょう」

ほむら「……?家の前に誰かいるわね。あれは……」

まどか「あ…ほむらちゃん……」

ほむら「まどか……?どうしたの、ずぶ濡れじゃない」

まどか「あはは…ほむらちゃんに用があって、直接家に来たんだけど……」

まどか「その途中で土砂降りになっちゃって…傘も忘れてたみたいで」

ほむら「そう……。とにかく、あがって。そのままじゃ風邪をひくわ」

ほむら「タオルと…着替えも必要よね」

まどか「うん…ありがとう……」

ほむら「……着替え、サイズは大丈夫だった?」

まどか「それは大丈夫だけど…これって……」

ほむら「私の私服だけど…駄目だったかしら……?」

まどか「う、ううん。そういうわけじゃないんだけど……」

ほむら「そ、そう…よかった……」

まどか「……」

ほむら「……」

まどか(ほむらちゃんの私服だから当然なんだけど…ほむらちゃんの匂いがする……)

まどか(何だか…クラクラする……。ほむらちゃんに…包まれてるような……)

まどか(……って、そんなこと考えてる場合じゃなかった)

ほむら(まどかって…髪を下ろすだけで印象が全然違う……)

ほむら(普段のまどかもいいけど…今のまどかも、とても素敵……)

まどか「あ、あの、ほむらちゃん」

ほむら「……え、な、何?」

まどか「えっと、その…タオルと着替え、ありがとう。助かったよ」

ほむら「あ、あぁ…気にしないで」

ほむら「それで…まどかの用というのは……?」

まどか「あ…あのね、わたし…ほむらちゃんに、伝えたいことがあって……」

ほむら「私に?何かしら」

まどか(ど、どうしよう……。伝えるとは言ったけど、どう言ったらいいのか……)

まどか(こんなこと言うの、初めてだし…あぁもう、全然思いつかない……)

まどか(……もう、いいや。あれこれ考えてたって仕方ない…よね)

ほむら「まどか……?」

まどか「……わたしね、ほむらちゃんのことが…好き、なの」

まどか「ほむらちゃんをお嫁さんにしたいって…思っちゃうくらい」

ほむら「……え?」

まどか「この前…冗談でプロポーズしたこと、あったよね。あのときは…ほんとに冗談だったの」

まどか「でも…今は違う。ほむらちゃんを…本当に好きになっちゃった」

まどか「冗談じゃ…すまなくなっちゃったの……」

ほむら「……」

まどか「あのプロポーズをしたあとから…何だかほむらちゃんのことばかり考えるようになって……」

まどか「何日か前に、さやかちゃんとドレスの展示会に行って…思ったの」

まどか「ほむらちゃんが…わたし以外の誰かに取られちゃう、って……」

ほむら「取られるって…私が誰かと結婚してしまうからってこと……?」

まどか「うん……。わたし、ほむらちゃんが誰かに取られちゃうなんて…嫌なの」

まどか「ほむらちゃんの晴れ姿を…来賓席からじゃなくて、隣で見てみたい……」

まどか「……ほむらちゃん、言ってたよね。ずっと友達でいてほしいって」

まどか「でもわたしは…友達よりも、先の関係になりたいんだ」

ほむら「友達よりも…先の……」

まどか「ほんとは…伝えるのが怖かった。女の子同士だから…言っちゃいけないって思ってた」

まどか「だけど、もう迷わない。背中を押してもらったから」

まどか「わたしは…ほむらちゃんと、友達から恋人になって…いつか、結婚したい」

まどか「……ほむらちゃん。わたし、ほむらちゃんのことが好き。大好き」

まどか「だから、わたしと恋人に…ううん。わたしの、お嫁さんに…なってください」

ほむら「……まどかの気持ちはわかったわ」

まどか「ほむらちゃんは…わたしのこと、どう思ってるの……?」

ほむら「……あなたにプロポーズされたとき…私、凄くドキドキしたの」

ほむら「最初はそれがあなたに対してなのか、プロポーズという行為に対してなのか…わからなかった」

ほむら「でも…今ならはっきりと言える。私は…まどか。あなたが、好き」

まどか「えっ……」

ほむら「少し前…初めてまどかとジューンブライドのことを話した日から…まどかのことを妄想してた」

ほむら「ドレスを着たあなたのことだとか、私とあなたの結婚のことだとか……」

ほむら「何であんなことを考えたのか、そのときはわからなかった。でも、今思い返すと……」

ほむら「きっと、あなたのことが好きだったから…だと思うの……」

まどか「ほむらちゃん、そんなことを……」

ほむら「あなたにプロポーズを受けて…自分の気持ちがわからなくなった」

ほむら「でも、マミに話を聞いてもらって…わかったの。私、まどかのことが好きだって」

まどか「最近、様子がちょっとおかしかったのって……」

ほむら「……自分の本当の気持ちに気づいてしまったからよ」

ほむら「私はまどかが好き。でもまどかとは女同士だし、私のことをどう思ってるか…わからなかったから」

ほむら「ぼーっとしてることが多かったのは…どうしたらいいかとか考えていたから」

ほむら「まどかとの会話が続かなかったのは…2人きりになると、何を話したらいいかわからなくなったから」

ほむら「その上、私が好きと伝える前に…まどかの方から先に言われてしまって……」

ほむら「いつまでも決心できずにいて…情けないわね、私は」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「でも、まどかは私に本当のことを言ってくれたんだもの。私も…本当の気持ち、伝えるわ」

ほむら「……まどか。これを受け取って…もらえないかしら」

まどか「これ…指輪……?」

ほむら「えぇ。雑貨屋で買った安物だけど……」

まどか「……え、ま、待って。指輪を贈ってくれたって…ことは……」

ほむら「私は…まどかを他の誰にも渡したくない。私のまどかになってもらいたいの」

ほむら「……まどか。私のお嫁に…いえ、せっかくだから、言い直すわ」

ほむら「私と…結婚してほしい」

まどか「……嘘」

ほむら「嘘や冗談なんかじゃないわ。これが…私の本当の気持ち」

まどか「ほんと…なの……?」

ほむら「ここまで言って…嘘だなんて言うわけないでしょう?」

まどか「……嬉しい。ほむらちゃんにそう言ってもらえて…すごく嬉しい」

まどか「わたし…その指輪、受け取るよ。受け取って…ほむらちゃんだけのわたしになる」

まどか「だから、ほむらちゃんも…わたしだけのほむらちゃんになってくれるよね……?」

ほむら「勿論、そのつもりよ。私は、まどかだけの私になるわ」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。結婚式…やっちゃおうか」

ほむら「え……?」

まどか「指輪、わたしの分しかないし、ジューンブライドに似つかわしくない土砂降りだけど」

まどか「せっかくのジューンブライド…6月の花嫁になったんだから……」

ほむら「……えぇ、そうね。結婚式と言っても、2人にとって大事なところだけでいいのよね」

ほむら「うん。……でも、やると言ったけど…わたし、その辺のことはよく知らなくて」

ほむら「私もあまり詳しくはないけど…そうね……」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「……私、暁美ほむらは、鹿目まどかと結婚し、幸せにすることを…誓います」

ほむら「こんな感じでいいんじゃないかしら。次はまどかの番よ」

まどか「えっと…わたし、鹿目まどかは、暁美ほむらと結婚し、幸せにすることを…誓います」

まどか「……これで大丈夫だよね」

ほむら「大丈夫よ。次は…指輪ね。まどか、手を……」

まどか「……うん」

ほむら「……これでいいわね。少し大きかったかしら」

まどか「ううん、大丈夫だよ」

ほむら「そう…よかった……」

まどか「指輪、つけてもらったし…あとは……」

ほむら「……確認しておくけど…最後までやるのよね?」

まどか「……もちろんだよ」

ほむら「キスを…するのよ……?愛情の…キスを……」

ほむら「……私で…私が相手で、本当にいいの……?」

まどか「ほむらちゃんは…わたしのお嫁さんになる人だよ。いいに…決まってるよ」

まどか「わたしは…ほむらちゃんにキスしてもらいたいから……」

ほむら「まどか……」

まどか「わたし…キスするの、はじめてだから…優しくしてね」

ほむら「私もこれがはじめてよ。……まどかとキスすることになるなんて、夢にも思わなかったわ」

まどか「ほむらちゃんもはじめてなんだね……。嬉しいな、わたしがはじめての相手になれて」

ほむら「……まどかのはじめてが私で…凄く嬉しい。まどか…目、閉じて」

まどか「うん……」

ほむら(……まどか。冗談だったとしても、プロポーズしてくれて…ありがとう)

ほむら(あなたがプロポーズしてくれなかったら…きっとこうならなかったと思うから)

ほむら(大好きよ、まどか……。私の、お嫁さん……)

まどか「ん、ぅ…っ……」

ほむら(まどか…まどかぁっ……)

まどか「……っはぁ」

ほむら「……これでまどかのお嫁さんになれたかしら」

まどか「うん…わたし、ほむらちゃんのお嫁さんになれたんだね」

ほむら「そう、ね。私たち、結婚できたのよ」

まどか「……よかった。ほむらちゃん、大好きだよ」

ほむら「私も…大好き。愛してるわ」

まどか「あ……」

ほむら「まどか?」

まどか「ほむらちゃん、見て。虹が出てる……」

ほむら「さっきまであんな土砂降りだったのに……」

まどか「何だか、わたしたちを祝福してくれてるみたい」

ほむら「そうだとしたら…とても素敵ね」

まどか「ねぇ、ほむらちゃん。雨、あがったし…またあの丘に行ってみない?」

ほむら「それは構わないけど…どうして?」

まどか「ほら、また2人だけでデートに来ようねって言ったでしょ」

ほむら「……そうだったわね。それなら、行ってみましょうか」

まどか「うん。あ、でも制服……」

ほむら「まだ乾いてないみたいね。今日のところはそれを着てるといいわ」

まどか「ありがとう。……よし、準備できたよ」

ほむら「じゃあ、行きましょうか」

ほむら(……今日のこの結婚式は、あくまで仮のもの…よね)

ほむら(まどかと恋人になったことを、6月の花嫁にかこつけてそう言ってるだけ……)

ほむら(まどかをそれだけ愛してるのは本当。きっと、まどかも同じ気持ちのはず)

ほむら(……いつか、そのときが来たら…本物の指輪を贈って、最高のドレスを着て……)

ほむら(本当の…結婚式をしましょう。まどかの…本当のお嫁さんになりたいから)

ほむら(だから…それまでもう少し待っててね、まどか)


Fin

これで完結です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました

読んで下さった方、感想頂けた方、本当にありがとうございました
6月中に全部投下できなくて悔やんでたら依頼と予告忘れてたでござる

・次回予告

ほむら「友情、愛情」(仮) 短編

ほむら「あなたを守りたい私と私を守りたいあなた」(仮) 長編

まどか「ひと夏の恋」 短編


以前の次回予告に書いたうちのいくつかを統合
ディスガイアクロスのウソ次回予告を思案中

またどこかで見かけたらよろしくお願いします

バトルメイドが無くなってる、だと……

>>122
予告から消えたから書かなくなったわけじゃないです
ただ展開に詰まったりして完結まで時間かかりそうなのは一時消えたりします

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月08日 (土) 06:43:50   ID: bLhMW5QA

この作者のは同じ様なのばかりだな

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