咲「お姉ちゃんが好き。誰よりも他の何よりも大好き」 (4)

ある日、ある晩のことだった。最近までずっと仲違い(仲違いと言っても私が一方的に突き放していただけだが)していた妹の部屋に誘われ、その誘いに私は乗った。それが間違いだったことに後から気付くが、その時の私はただただ妹の望みは姉として出来るだけ叶えてやりたいと思い、それが、それだけが姉妹離れて暮らしていた期間を埋めることのできる唯一の方法だと思っていた。

だから私は「お姉ちゃんと二人っきりでお話がしたいなぁ・・・」という妹の何気ない一言を拾い、その望みに答える。

「咲、後で久しぶりに話そうか。二人で」

その答えを聞いた瞬間、咲の顔がぱぁーと明るくなる。まるで夜明けのような表情の変化に子供の頃の彼女を思い出し、「変わらないなぁ」としみじみ思う

その後、一緒に夕食の片付けをし、お互いにお風呂に入り、それで今に至る。

私の対面には咲が足を崩して座り、楽しそうに笑顔を浮かべながら身振り手振りで話していた。

そんな彼女に対して私は聞き手に徹している。私の知らない咲の一面を知るのも私の知ってる咲の表面の話を聞くのも私は楽しくて好きだった。咲が私に自分のことを伝えようとする様がとても愛らしくて、胸中が穏やかになっていくような気分に浸れる。

そして、その都度、その想いを抱く度に私は我に返り、過去の自分を悔いた。

(私は…何でこの子にあんなことを。あんな仕打ちを…、私は…)




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