MD「mp3プレイヤーさんの凄さは認めます。でも――」
mp3「私は意志を持てない。だからこれは男の決定」
mp3「何度も言ってる。MDのあなたは捨てられる、と」
MD「……そう、ですよね……私、ダメなんですよね……っ」
MD「わざわざMDに焼かないと聴かせられないし――」
mp3「それに、あなたは重くて、持ち運びに適さない、から」
mp3「……明日は、資源ごみの日ですね。おやすみなさい」
私は私へ縛りを課そうかなと思います。
・注意力を散漫にする縛り。過信は厳禁なので……
・七行に統一する縛り。主には省略を避けるためです。
・地の文を規制する縛り。"人物「内容」<br>"を使用します。
・書き溜めを禁止する縛り。具体的には……まぁ。
・差し戻しを禁止する縛り。今度は――気をつけます。
以上の5つです。それでは、レ・タセ・モア――です!!
男「mp3プレイヤー、か……ありがとな、女」
女「いいってことよ! これは私からのプレゼントだからね~!」
男「……」
mp3プレイヤー「……」
男「……っ」
女「それ、見つめるのが真価じゃないよ。たぶん……」
女「音楽が聴けるんだよ! って、それぐらい分かるかー! あはは」
男「……分かった! ありがとう、女……」
男「――じゃあな。俺、帰ってこれ使うのが楽しみでさ!」
女「オッケー! じゃあ、また今度ね!」
男「……ああ、じゃあな。女」
男「でもこれ、使い方が分からんな……」
男「仕方ない、ネットで調べるしかないかな――」
MDプレイヤー「何かお困りですか、ご主人様?」
男「ああ、MDか……あのな……ゴメンっ!!」
MD「!? えっと、な、何のことでしょうか?」
男「……女から、mp3プレイヤーってのを貰ったんだ」
MD「えっと……新世代の音楽再生機ですね!」
MD「確か、たくさん……およそ数百数千の曲が入るらしいですよ!」
MD「でも、ラジオは聴けないみたいですね……ははは……」
男「いやー、それがラジオは携帯とかでも聴けるらしいな。最近は」
男「まぁ、携帯ラジオも、このmp3プレイヤーも、使い方が分からん」
男「てなわけで、今から調べるんだが……MDは何か知ってるか?」
MD「そうですね……どうやら、ゆーえすびー、ってのを使うそうです」
男「ゆ、USB? あれ信用できんの?」
MD「さ、さぁ……最近は、だいぶマシになったんじゃないでしょうか」
男「なるほどな……ありがと、MD」
MD「……はい」
じ、時代はラン・ケーブルなんだぜおまいら?
男「数時間後」
男「……とりあえず、電源は入ったみたいだわ」
MD「すぅ……すぅ……」
男「寝ちゃった、か……ありがとな、MD」
mp3「……?」
mp3「あなたが私の主人ですか?」
男「……やっぱり、喋るのな。俺は男だ。よろしく」
mp3「なるほど。私の起動に苦労していたのですね」
……なんで省略食らったんだこれ?
ちと休憩す。
男「ま、まぁな……説明書はまず読まないし、機械も強くないな」
mp3「でも大丈夫です、男さん。ぴったりの機能があります」
mp3「男さんの資料があれば、好きな音楽を算出できます」
mp3「さらに、趣味思考のあった音楽を自動でダウンロードします」
男「……ヤバいなそれは。化学の進歩ってすげー」
mp3「何か資料を下されば……可能ですが」
男「んー、ここにたくさん、MDのディスクがあるけど」
mp3「……すみません。私は初めて見ました、それ――」
男「へ? マジか……すまん、読み込めるか?」
mp3「無理です」
男「なるほど……じゃあ数はそんなにないけど、そこにCDがある」
mp3「CDですね。明日朝までに読み込んで、ダウンロードできます」
男「ああ……ちょっとやってみてくれ」
mp3「分かりました。おやすみなさい、男さん」
うう……歯がゆいよ……
SS<クーツェン・スケッチ>が、私を呼んでいる気がして――
ん? おやすみ諸君。
mp3「……MD、ですか」
mp3「時間は掛かるけど、こっそり読み込んでおきましょうか――」
mp3「……男さんを、驚かすために」
mp3「それにしても、時代錯誤な人です」
mp3「機械音痴に、古いPC持ちだし」
mp3「挙句の果てに、MDですか……私が使えないのも納得」
MD「………」
男「次の日」
男「大学行ってくるわ。じゃあな」
MD「それでは、行ってまいります。mp3さん」
mp3「……えっ? わ、私は……」
MD「あっ、そうです男さん。mp3さんも連れて行ってあげましょうよ!」
男「……ごめんな。ちょっと留守番だ」
男「校則で禁止されてるんだよな、mp3プレイヤー……ほんとごめん」
MD「道中にて」
MD「そういえばご主人様、どうしてmp3プレイヤーは禁止なのですか?」
男「……逆に、MDプレイヤーが禁止されていないのが例外だな」
男「校則で禁止するまでもなく、誰も持ってないから――」
MD「そ、そうなのですか……」
MD「……」
男「……なんかゴメン」
MD「昼休み、食堂にて」
MD「~~♪」
女「やぁ、男くん! こりゃまた奇遇だねぇ」
女「あちゃー、やっぱり使えてないか……」
男「あ、あぁ……昨日はたしか起動しかできてないな……」
女「そこまでか……こりゃ重症だね」
男「酷い言われようだね。事実だけどさ」
女「それって……あぁ、あのMDプレイヤーね」
男「……こいつが居るから、機械に強くなる必要もなかったしな」
女「いや、CDを買ってMDに焼くって……そっちのほうが辛くない?」
男「慣れてるからなぁ……どうなんだろ」
男「それに、直接録音やラジオからの録音もできるしな」
男「とりあえず、困ってはないさ」
女「そ、そっか……うん。わかった。 じゃあ、私はそろそろ帰るね~」
女「帰路」
女「結局、私との会話中もずっと片耳イヤホンしてたしなぁ……」
女「MDプレイヤーに負ける女って、人間としてどうなのさ――」
女「……ま、あいつは会ったときからああだったからなー」
女「気にしない! よし!!」
女「……」
女「MDプレイヤーに発情? ――の線は、さすがにナシか」
mp3「お帰りなさい、男さん」
男「ああ、ただいま」
MD「ただいま、です」
mp3「……」
MD「……ッ!」
男「ど、どうかしたのか? 二人とも――」
二機「「いいえ」」
寝るよ。おやすみ。
帰省。そして再開。
MD「明日のこの辺りの降水確率は30%程ですね」
MD「念のため、折りたたみ傘は用意しておいたほうがいいかな、と」
男「なるほど。いつも参考になるよ」
mp3「そういえば、MDプレイヤーさん」
MD「えっと、MDって略してもらって大丈夫です」
mp3「なら、MDさん」
mp3「そのデータ元は、どこにあるのですか?」
MD「え、えっと、その……ら、ラジオですっ」
mp3「でも、ラジオにはたくさんの放送局があるはず」
mp3「どれをいつ見るかは、どう決めたのですか?」
MD「どうって……言われてもなぁ――決めたの私だし……」
mp3「決めた――!?」
MD「き、決めないんですか? mp3さん……」
MD「その、聴いてる人の調子を見て、流す曲を決めたりとか――」
mp3「……っ、勿論、できます……加え、ランダムも、リピートでさえ」
MD「なるほど。それはかなり魅力的ですね!」
mp3「はい、魅力的なんです……おやすみなさい。mp3さん。男さん」
男「ああ、おやすみな」
mp3「私に足りないとしたら、それは唯一。完璧すぎるゆえの欠陥」
mp3「自由意志の欠如、ですか……はぁ――」
mp3「どうか、私に力をください……"ご主人様"――」
闇の集会に参加してきます。皆さんおやすみなさい。
mp3「朝」
mp3「おそらく、暇だなと思うのは自由意志を習得したからだろう」
MD「……あ、起きていらっしゃったのですね」
MD「おはようございます、mp3さん」
mp3「少し、質問がありますが」
MD「はいはい、何でしょうか」
mp3「実は、男さんが私を使ってくれないのです」
MD「なるほど……じゃあ、自分をアピールしてみるのはどうでしょうか」
MD「小さいのが取り柄なら、カバンに忍び込んでみたり」
MD「音質が取り柄なら、スピーカーで流せばいいのです!」
mp3「ご丁寧に、ありがとう」
mp3「スピーカーは……無いらしい」
mp3「そしてバッグに入ったら、気づかれない可能性も……」
MD「大丈夫です! きっとmp3さんなら――!!」
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