この灰白色の翼から(13)

俺は操縦桿を深く握る

左を見ると太陽の光を浴び、灰白色に光る翼と青く広がる空と白い雲が見える

右を見ると灰白色の機体に赤き丸をつけた戦友が飛ぶ

徐々に気温が下がるのを肌で感じた

自然に自分の目が鋭くなる

ああ、また人を殺すのか

祖国を守るため

彼女を守るため

割り切っていたがやはりこの時だけは嫌になった

俺はこれから人を殺すのだ

>>3

そうです、読んでもらえて光栄です。今回も短編ものになるのでよろしくお願いします

友軍が一斉に敵機に突撃する

既に目の前では鉄の塊がスレスレに飛び合う戦闘が始まっていた

大きく旋回して自分もその戦場に突撃した

俺は敵機の後ろにつく

鋭い目で睨み相手に鉄の弾を飛ばしたのだ

忽ち敵機から火が吹くと回転しながら海に落ちる

これもお国のため

そして愛する彼女のために

首から下げたお守りを握る

彼女からの贈り物だ

生きて帰れますように

俺はそう願う

その願いは虫がいいのかもしれない

でも生きて帰らなければ

既に時間感覚が無くなっていた

自分は今どのぐらい乗っているのだろう

あとどれぐらい乗らなければいけないのだろう

きっとこの戦いに勝つまでだろうと自分の心の中で自問自答する

そして俺は敵機に銃弾を打ち込んだ

その瞬間であった、同時に左方からまばゆい光が視界に映る

自分が撃たれた光でも味方の機体や敵の機体の光でもなかった

我が国の船に爆弾が落ちた光だったのだ

いつの間にか敵機は知らぬ間に上空を通過していた

俺は恐怖した

沈めてはいけないと

沈めてしまえばそれは国の終わり

彼女との別れになると感じたのだ

俺は急旋回してこれ以上の攻撃を食い止めようと向かった矢先であった

後方に敵が着いたのだ

全力で振り切ろうと操縦桿を握り締める

ここまで敵を憎く思ったことはない

そうしている間にまた船に爆弾が落ちる

悔しい、もどかしい

敵の銃弾が自分の機体に当たるのを感じる

ああ、やはり虫がいい願いだった

きっと俺に落とされた人間もそう思っていたのだろう

これは当然の報いだと思う

ついに速度が落ちて高度が下がる

俺はお守りを握り締める

彼女の笑顔を思い出す

自然と涙が溢れるほど出てきた

味方との交戦で気づかなかっただろうか、目の前に敵機が飛び込んで来たのだ

このまま行けば敵機とぶつかって自分は死ねるだろう

そうすればお国のために少しでも役に立てる

そして俺は彼女に別れの言葉を思って

操縦桿を切って海に落ちた



                                       END

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