提督「そう言えば今日は陸軍から潜水艦娘が派遣される手筈となっていたな」
不知火「はい、間もなく6名が到着予定となっています」
提督「うちも潜水艦娘は不足気味だからな。ここで6人も来てくれれば資源確保や対深海棲艦がどれほど楽になるか」
不知火「そうですね」
コンコン
「陸軍より本日付で当鎮守府に着任しました、まるゆです」
提督「噂をすれば、か。入れ」
まるゆ「まるゆ、入室します」ガチャッ
まるゆ「「「「「「まるゆです。隊長、よろしくお願いします」」」」」」ズラッ
提督・不知火「」
ゆ1「ゆ1です。最年長のまるゆです」
ゆ2「ゆ2です。強くなれるように頑張ります」
ゆ3「ゆ3です。たとえ沈んでも虜囚の辱しめは受けません」
ゆ1001「ゆ1001です。急速潜航は任せてください」
ゆ2001「ゆ2001です。妖精さんの加護を得られるよう艤装を工夫しました」
ゆ3001「ゆ3001です。不審人物じゃありません」
提督「……お、おう」
的なSSってどっかにないかな
提督「な、何はともあれよく来てくれた。我が鎮守府は君達を歓迎する」
まるゆ「「「「「「はい、よろしく今後ともお願いします!」」」」」」
提督(ステレオみたいだな……)
提督「今後の事は追って指示を出す。今日は自室で移動の疲れを取るがいい」
まるゆ「「「「「「ありがとうございます! まるゆ、退出します!」」」」」」
バタン
提督「……」
不知火「……」
提督「六つ子……なのか? あれは。とにかくどの任務に就かせるか考えないとな」
提督「不知火、陸軍から何か言ってきてないか確認してくれ」
不知火「分かりました」
提督(……見たところ威力のある武装は持っていなかったようだが)
提督(果たして深海棲艦と戦えるのか?)
提督(そう言えば、まるゆの艤装で艦娘の装甲を強化すれば、その艦娘に幸運が舞い降りると聞いたことがある)
提督(6人もいるんだ、一度本人たちの希望を聞いてみて……)
ガチャ
不知火「司令、陸軍から通信が入っていました」
提督「来てたか。何と言ってきた?」
不知火「『貴官の評判を聞き、陸軍の誇る潜水艦娘たちを出向させた。深海棲艦撃退の一助として貰いたい』」
提督「ふむ」
不知火「『なお彼女らを一人でも欠いた場合には陸軍が貴官の身柄を貰い受けることは、海軍大臣も了承済であることも伝えておく』とのことです」
提督「」
※以後複数人のまるゆは まるゆ「」 と表記
~翌日、執務室~
提督「昨日は十分に休めたか」
まるゆ「はいっ!」
提督「それはよかった。早速君達には資源確保の任務に就いてもらう」
ゆ1「資源確保……」
提督「そうだ。練度の高い潜水艦は別の任務に割り当てることもあるが、自分はまだ君達の練度を知らない」
ゆ1001「確かにそうですね」
提督「資源確保には深海棲艦がほぼ出ないとされる航路を通る遠征任務と、深海棲艦が確認されている海域を通る出撃任務がある」
提督「勘を取り戻す為に鎮守府に残って訓練や演習を行うのもいいだろう」
提督「まずは希望を聞こうか」
~出撃組:ゆ2、ゆ3~
提督「それではゆ2とゆ3は出撃してもらうことにする。嚮導はゴーヤに一任し、イクはサポートに回ってもらう」
ゆ2・ゆ3「わかりました!」
伊58「ゴーヤでち。潜水艦の辛さを教えてあげるのでち」
ゆ2「ひっ!」
伊19「まったく、いきなり脅してどうするの。それじゃ早速、イクと一緒に行くの」
伊58「今から行く海域は対潜装備の深海棲艦が少ないから危険は少ないでち」
提督「こら、そんな慢心は捨てるんだ。常に初陣と思うくらいでちょうどいい」
伊58「わかったでち……」
ゆ2・ゆ3「それでは、まるゆ、潜りまーす!」
→ にーさんへ
~遠征組:ゆ1・ゆ1001~
提督「ゴーヤたちに任せておけば、ゆ2とゆ3は安心だな。何せ俺が直々に監督してやったからな」
不知火(監督というよりは、むしろ馬車馬のように働かせたという表現の方が相応しいのでは……)
提督「ゆ1とゆ1001は遠征任務だったな。聞けばまるゆの本分は物資輸送らしいじゃないか」
ゆ1「はい、隊長」
提督「ではまるゆの中で遠征任務以外を希望したのがいるのは何故なんだろうな」
ゆ1001「たぶん、まるゆが任務を果たすためにできることを、いろいろ経験したいんだと思います」
ゆ1001「海や深海棲艦を知ることや、まるゆ自身を鍛えることも、任務達成につながります」
提督「なるほどな。ならば、他の艦娘と区別するようなマネはできないな」
ゆ1・ゆ1001「はい! よろしくお願いします!」
~訓練組:ゆ2001・ゆ3001~
提督「遠征は天龍を旗艦に雷・電をつけているからこちらも問題ないだろう」
提督「残りは、ゆ2001とゆ3001の2人だな」
ゆ2001・ゆ3001「お願いします!」
提督「とは言っても今は非番じゃない潜水艦は皆出払っているしな」
提督「誰か雷撃戦が可能な手すきの艦娘は……」
不知火「司令」
提督「ん、どうした不知火?」
不知火「その役目、不知火に任せて貰えませんか」
提督「え」
不知火「不知火なら魚雷発車も可能ですし、適任ではないでしょうか」
提督「ま、まあ確かにそうだが……」
不知火「提督は不知火では力不足とお考えでしょうか?」
提督「いや、そんなことは」
不知火「よろしければこの場で不知火の日頃の研鑽の成果をお見せしましょうか」ギラッ
提督「い、いやそれには及ばん。分かった不知火に任せよう」
不知火「ありがとうございます」
ゆ1(隊長にぜんぜん引かないどころか……)
ゆ1001(不知火さんすごい迫力……艦娘さんってみんなこうなのかなぁ)
不知火「……コホン。それでは水雷訓練を行います」
ゆ1・ゆ1001「はいっ!」
不知火「弾頭を外した魚雷をいくつか用意しました。使い慣れている物に近いものを選ぶといいでしょう」
ゆ1001「あの……」
不知火「どうしました?」
ゆ1001「その、まるゆは魚雷を扱ったことがないんです」
不知火「……本当に?」
ゆ1「はい」
不知火「……あなた方は、潜水艦ですよね」
ゆ1「……鎮守府の書類上はそう分類されてると聞きました」
不知火「……」
ゆ1・1001「……」
不知火「……少し考えさせてください」
不知火「……というわけですが司令、指示を願います」
提督「この問題で不知火は何か考えを持っているか?」
不知火「……雷装を強化する近代化改修が確実な手段と考えています」
不知火「武装の強化を可能にする改造も選択肢に入れましたが、まるゆ達には艦娘としての経験が不足していると思われます」
提督「艦娘としての経験、か……」
不知火「いかが致しましょう」
提督「ゆ2001とゆ3001は待機だ。出撃組は速やかに戦闘海域を離脱するよう通信を入れろ」
不知火「了解しました。遠征組については」
提督「そっちは呼び戻すまでもないだろう。特に連絡の必要はない」
~にーさん出撃組~
もぐもぐもぐ……
伊58「いいでちか、潜水艦にとって危険なのは、対潜装備を持つ深海棲艦に見つかることでち」
ゆ2「はいっ」
伊58「だから、できれば駆逐艦や軽巡には見つからないようにするでち」
伊58「こっそり近づけたら魚雷をお見舞いしてやるでち」
ゆ3「あ、あのっ」
伊19「?」
ゆ3「魚雷、持ってないんです……」
伊19・伊58「……」
伊19・伊58「ええっ!?」
伊19「ど、どうするの!? イクたちだけの魚雷じゃ不安なの」ヒソヒソ
伊58「で、でも戦果も資源もなしで帰還したら提督に……」ヒソヒソ
伊19「んんっ、本部から通信なの。『オリョール海域出撃艦隊ハ安全ヲ最優先ニ速ヤカニ帰投スベシ』なのね」
伊58「何か知らないけど助かったでち」
伊58「まるゆたち! 提督からの指令でち! このまま潜航してオリョール海域から離脱するでち!」
ゆ2「は、はいっ!」
ゆ3「わ、わかりまし……あれっ?」プカー
伊19「ど、どうしたの!?」
ゆ3「あ、あれ? おかしいな、体が浮いちゃうよ……」プカー
ザパー
ゆ3「おかしいなぁ……って」
イ級「ヤア」
ゆ3「ひ、ひゃあ!?」
ドン! ドォン!
ゆ3「わあぁああぁぁぁあ!!」
伊58「! 海上で異変でち!」
ゆ2「ええっ!? 3ちゃんに何か!?」
伊58「イク、ゆ2を連れて潜行、早くここから離脱するでち!」
伊19「い、イクも上に行くのがいいと思うの!」
伊58「ゆ2を海上に連れて巻き添えにする気でちか? それともゆ2を一人置いていくつもりでちか!?」
伊19「!?」
伊58「ここはゴーヤに任せるでちよ」
ゆ2「ゴーヤさん……3ちゃん……」
伊58「ゆ3!」ザバァ
イ級たち「!」
ゆ3「あっ……ゴーヤさん……」プスプス
伊58「駆逐イ級ごときがゴーヤの艦隊に手を出すなんて!」ジャキン
イ級「!?」
伊58「100万光年早いでちー!」ドシュウ
ズドシャーン!
伊58「ゆ3、大丈夫でちか」
ゆ3「は、はい、ありがと……ござ……」ボロッ
伊58「無理ならしゃべらなくていいでち。早くイクたちと合流するでち」
もぐもぐもぐ……
~鎮守府近海遠征組~
天龍「新入り共、遠征は怖いか?」
ゆ1001「へ、平気だもん」グス
ゆ1「さっきの天龍さんの名乗りの方が怖かったです……」
天龍「っと、そいつは悪ィな」
雷「まったく、天龍さんは初対面の人にとりあえずで凄んじゃダメじゃない」
電「い、雷ちゃん……」
雷「こんな小さい子たちに『フフフ、怖いか?』って迫ったらそりゃビックリするんだから」
天龍「だー! もう、わーったっつーの! ったく、提督も俺を出撃に回さずに遠征なんかさせやがって……」
雷「仕方ないじゃない、警備出動に戦艦割くわけにはいかないもんね」
電「なのです!」
天龍「にしてもよ、まるゆだったか?」
まるゆ「はいっ」
天龍「あんまり言いたくないが、潜水艦ってのはもう少しちゃっちゃと動けねーもんなのか?」
ゆ1001「そ、それは……」
雷「天龍さん! またまるゆさんたちを困らせて……」
天龍「でもよ、今日はともかく速度出ねーと困る遠征任務もあるだろ?」
雷「うっ……」
天龍「まあ俺も潜水艦と艦隊組んだことねぇから正直特性をよく知らねぇんだがな」
電「大丈夫ですよ。司令官さんならきっとそれぞれに合ったお仕事を割り当ててくれるのです」
天龍「あっおい電! 前、前見て――」
ゴチーン
電「はわわわ……ごめんなさい、なのです」
ゆ1「きゅ~」
~執務室~
不知火「司令、潜水艦隊から通信です。艦隊は戦闘海域を離脱。ゆ3が中破、伊58が損傷軽微とのこと」
提督「何とか中破で済んだか……危機一髪と言ったところだな」
不知火「遠征部隊からも通信が入っております」
提督「ん? 何かあったのか?」
不知火「間もなく鎮守府に帰投予定、ゆ1は小破、電に損傷軽微と」
提督「!?」
提督「まさか、深海棲艦が活動範囲を拡げたというのか? これは綿密な聞き取りが必要だな……」
伊58「ゴーヤ艦隊、戻ったのでち」
伊19「ただいまなのね~」
ゆ2「ふぅ……」
提督「ご苦労。ゆ3は船渠直行か?」
伊19「なの」
伊58「提督、今回の帰投命令はなんか問題が起きたのでちか?」
提督「問題と言えば問題があったがそれは一段落した。おいおい説明する」
伊19「わかったのね」
提督「ゴーヤも損傷を受けたらしいな。しばらく出撃から外すから一応休んで診てもらえ」
伊58「!?」
提督「ん? どうした?」
伊58「……いつもは『そんなの被害のうちに入らないからさっさと再出撃しろ』って言ってくる提督が休め……?」
ゆ2「た、隊長さん……?」ブルブル
提督「俺そんなこと言ってたっけ!?」
提督「最大の懸念は片付いた。あとは天龍たちか……」
不知火「提督の考えでは深海棲艦の活動範囲が拡がっていると」
提督「俺自身にわかには信じがたいが……取り敢えず悪い方に考えておけば外しても害は少ないしな」
不知火「提督」
提督「ん?」
不知火「不知火は、提督のそのような所が「作戦終了! 艦隊帰投したぜ!!」バタン
提督「おお、戻ってきたか天龍」
不知火「……」
提督「警備出動艦隊は全員ここに来てるのか。電とゆ1が損傷を受けたと聞いたが」
電「こ、これくらい大したことないのです!」アセッ
ゆ1「大丈夫だもん!」
提督「そうか、元気に話もできるようだしこっちとしても助かった」
電「ありがとうございます! では退出してもいいですか?」アセアセッ
提督「待て」
電「!?」
提督「二人の損害発生状況について詳しく聞かせて貰おう」
電「え、えーと……」
提督「……よくわかった。取り敢えず二人とも船渠が空き次第休みに入れ」
ゆ1「はいっ」
提督「特に電は衝突とか気をつけろよ」
電「ごめんなさい……」
パタン
提督「ふぅ、やっと少し落ち着いた」
不知火「陸軍に司令の身柄を引き渡されずに済みそうですね」
提督「まったくだよ。だがこれには俺自身多いに反省すべき点があるな」
提督「まるゆたちについてはゆ1とゆ3が船渠から出られるようになるまでは海に出る訓練は停止だ」
提督「全員揃ったらまとめてここに来させてくれ」
不知火「わかりました」
~船渠~
ゆ1「ゆ3ちゃんは大丈夫なのかな……」
ゆ2001「あ、ゆ1ちゃん!」
ゆ3001「ゆ1ちゃんもケガしたって聞いたから心配だったよ」
ゆ1「うん、ゆ1は大丈夫。それよりゆ3ちゃんは……?」
ゆ2「それが……」
ゆ1「……?」
ゆ1「ゆ3ちゃん!」ガチャ
ゆ1001「ゆ1ちゃん……」
ゆ1「ゆ1001ちゃん! ゆ3ちゃんは?」
ゆ1001「今は寝てる。傷は深くないし、少しゆっくりしてれば大丈夫だって」
ゆ1「よかったぁ」
ゆ1001「でも、起きてるときはちょっと大変だったの」
ゆ1「?」
ゆ1001「帰投する前からも少しパニックになったりして、浮き沈みの制御が利かなくなることがあるんだって」
ゆ1「そんなぁ……」
ゆ2「ゆ2のせいだ……」
まるゆ「!?」
ゆ2「ゆ2が、ゆ3ちゃんが浮いちゃったのに着いていかなかったから……」
ゆ1「そ、そんなこと……」
ゆ2「だって、だって……」
ゆ1001「ゆ2ちゃん……」
「それは違います」
まるゆ「!?」
まるゆ「不知火さん!」
不知火「貴女方も、伊58たちも、皆最善と思う行動を取ったに過ぎません」
不知火「そして、最善の行動が常に最善の結果を生むとは限らないのが戦場であり、海です」
不知火「それを直接・間接的に学ぶことは、貴女方を艦娘として成長させるでしょう」
まるゆ「……」
不知火「もちろん、一人で心に抱えきれないくらいに悩みが大きくなったら、他の艦娘たちとも話をするのもいいでしょう」
不知火「共に戦う仲間に、陸軍も海軍もありませんから」
まるゆ「はいっ!」
不知火「話は以上……いえ、もう一つありました」
まるゆ「?」
不知火「どうしても誰かのせいにしたいのなら、自分ではなく司令のせいにしてしまいましょう」
まるゆ「えっ」
不知火「元はと言えば司令が貴女方のことをよく知らずに立てた作戦行動が原因です」
不知火「誰かみたいに司令に会うなり思いっきりクソ提督と言ってやればいいのです」
ゆ2「そ、それはちょっと……」
~~~
「はくしょん!」
「曙ちゃん、大丈夫?」
「平気よ潮。どうせどっかでクソ提督がクソな作戦に私を使おうとか考えてるのよきっと」
「さすがにそれは考え過ぎじゃないかな……」
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