【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」 (1000)
・前スレの後日談とかをのんびりゆっくりと書くスレです
・更新は一日一回程度(出来ない日もあります)
・書く艦娘の指定や状況指定等は更新直後のレス採用、設定から逸脱するようならパラレル扱いにします(エロも一応解禁)
またお付き合い頂けましたら幸いです、前スレの最後まで書ききったらこちらに移行します
前スレ→【艦これ】大鳳「一度入ったら抜け出せない鎮守府?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399761014/-20)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401844632
前スレ埋めたんでこっちに書いていきますね
改めて150隻って数に戦々恐々としてます、まだ増えるんだよなー……
~白露型~
白露「一番白露、行っきまーす!」
時雨「次は僕だね、それっ!」
村雨「はいはーい、スタンバイオッケーよ。えいっ!」
夕立「夕立に任せる、っぽい!」
涼風「オーライオーライ、五月雨、行くよっ!」
五月雨「えっ、わっ、こっち? この辺で大丈夫かな……?――えいっ!」
白露「何でアタックでげふっ!」
時雨「白露!?」
村雨「おーナイスアタック」
夕立「クリーンヒットっぽい?」
涼風「アンダーでもオーバーでもなく何でアタックしちゃうのさ!」
五月雨「ごめんなさーい! 白露しっかりしてー!」
白露「い、一番、狙いやすかっ……」
五月雨「し……白露が死んじゃったー!」
涼風「気絶しただけだから落ち着きな五月雨! 揺らす度に頭打ち付けてるから!」
白露→毎日姉妹全員とあれやこれやと遊びまくっている。五月雨のドジが彼女に集中しているのは、一番狙いやすいからなのだろうか。
時雨→最近は儚げではない満面の笑みを浮かべるようになった。皆で遊ぶのにも乗り気で、夕立にイタズラをして追いかけられる一幕も見せたりしている。
村雨→時雨まではしゃぐようになり、一人で三人を相手にするようになった。いっそ涼風に全部フォローは任せて、自分もはしゃごうかと考えていたりするようだ。
夕立→ぽいぽい。ぽいぽいっぽい。ぽいぽいぽーいっぽい。そんな感じっぽい。
五月雨→戦いが終わってもドジッ娘は治らなかった。遊ぶ度に白露にぶつかったり、ボールをぶつけたりしているが、決して狙っているわけではない。秘書艦日に提督の勲章にコーヒーをぶちまけたのも、決してわざとではない。
涼風→五月雨のドジの第二の犠牲者。村雨までフォローをやめたら身が持たないと、必死に説得を続けている。五月雨に間違われないように、現在はショートヘアー。
~最上型~
最上「三隈ードリンクバーでウーロン茶入れてきて」
三隈「くまりんこっ」
鈴谷「熊野のはアタシが用意したげるねー」
熊野「お待ちなさい鈴谷! この前の全部混ぜなどというのはもう御免ですわよ!?」
最上「アレ……? そういえば三隈ってドリンクバー初めてじゃ――」
三隈「もがみん、ウーロン茶ですわ」
最上「あっありがとう……ちゃんと入れ方分かった?」
三隈「? 見れば分かるはずよ?」
最上「あーうん、そうだよね」
三隈「変なもがみん」
鈴谷「また厨房までお代わりを要求しに行かれたら恥ずかしいし、困るじゃん?」
熊野「あっ、アレはちょっと迷っただけですわ!」
鈴谷「ドリンクバーに行くのに迷うって、流石に言い訳として苦しくない?」
熊野「迷うものは迷いますの!」
最上→“衝突禁止”のポスターを作り、鎮守府や街に張って回っている。子供達にも交通安全教室を開き、飛び出すことの危険性を教えている。だが、三隈とは相変わらずぶつかるようだ。
三隈→最上と共に、交通安全教室で子供達に交通ルールを教えている。でもやっぱり最上に衝突するのはやめられない、とのこと。
鈴谷→熊野と二人で毎日街をブラブラしている。あまり遊び等に詳しくない熊野に、色々な事を嘘を混ぜつつ教えている模様。
熊野→鈴谷とカラオケに行ったり、ゲーセンに行ったりしている。遊んでいる最中もたまに謎の奇声を発しているようで、周囲からの視線を集めているらしい。
~初春型~
初春「暇じゃな」
子日「暇だねー」
初霜「暇ですね」
若葉「暇だな」
初春「鎮守府内でも散歩するかのぅ……」
子日「子日、ビスマルクさんのお店行きたーい」
初霜「私もまだ行ったことがないわ」
若葉「行くか」
初春「子日、先に行って席の確保をしてくるのじゃ」
子日「はーい」
初霜「私も行きます」
若葉「……初春」
初春「何じゃ若葉」
若葉「金がない」
初春「よいよい、妾が払う」
若葉「助かる」
初春→鎮守府内を散歩して回る日々。たまに気が向くと風景画を描いている。描いた絵は鎮守府の各所に飾られており、中々の評判のようだ。
子日→今でも子の日にはたまにワープして消える。一度ロシアにワープしてしまい、ヴェールヌイが迎えに行ったこともある。それでもめげずに今日は何の日と聞き続けるタフな艦娘。
初霜→戦いが終わって何かを護衛することも無くなり、最近は色々な事に興味を持ち始めた。ただ、秘書艦日は血が騒ぐのか、デート中についつい提督を護衛しながら動いているようだ。
若葉→フラりと何処かへ出掛けては、暫くすると帰ってくる。鈴谷がたまにゲーセンで見かけるらしい。“WKB”という名前でガンシューティングのランキング1位を総舐めしている謎のゲーマーと、何か関係があるのかもしれない。
~とねちく~
利根「筑摩、何故吾輩の身長は伸びぬのだ?」
筑摩「利根姉さんはそのままでも威厳と風格がありますから、伸びなくてもいいんです」
利根「そうか? 筑摩がそういうなら、そうなのだろうな」
筑摩(利根姉さんは今のままの方が可愛いんですから、大きくなどなってはいけません)
利根「まぁ身長はこのままでよいとしても、胸は筑摩と同じぐらい欲しいのじゃ」
筑摩「提督に揉んでもらえばよいのでは?」
利根「年に二日では効果の程もたかが知れておる。やはり、何かしらのバストアップ術とやらを試してみるか……」
筑摩「……龍驤」
利根「吾輩が間違っておった。何事も無理は禁物だな」
利根→下着を毎日履くようになった。鎮守府に訪れる者に自分が妹と見られ、よく訂正して回っている。何故か秘書艦日だけはやっぱり履いていない。
筑摩→利根と毎日まったりと過ごしている。戦いが終わった後、間宮からだし巻き玉子の作り方を教わった。それを毎日姉に作って食べてもらうのが、今の彼女の幸せである。
~夕張&明石、あきつ丸、間宮~
夕張「メカ夕張、お茶」
メカ夕張「はい、マスター」
明石「戦いが終わって開発もする必要無いし、修理も無いから、完全に私達暇人ですね」
夕張「そうですねー、たまに整備とかオモチャの開発ぐらいはするけど、後はこれといって特に無いし……」
明石「――いっそ、本気でオモチャ作っちゃいます?」
夕張「……やりましょうか」
メカ夕張「お手伝いします」
夕張&明石→メカ夕張を参考に、小型のメカ妖精さんを共同作製。一人作ってコツを掴んだのか、合計十八人作ったらしい。今はメカ妖精さんに色々な芸をさせようと、日夜研究中。
あきつ丸「今日はどこがいいでありましょうか……」
あきつ丸「やや? ちょうどイクのマッサージ店が目の前に」
あきつ丸「失礼、店舗経営に不正が無いかチェックするであります!」
あきつ丸「――ふぅ……良い気持ちでありますなぁ……」
あきつ丸→鎮守府内で何か不正な経営や、違法な事が行われていないかをチェックして回る日々。が、実際は全く問題が無いのは分かりきっているので、一日のんびりしているのと何ら変わりはない。
間宮「はい、カツ丼お待ち遠様!」
間宮「ざるそばと天丼お待たせしました!」
間宮「きつねうどんとおにぎりです!」
間宮「ありがとうございましたー!」
間宮→昼と夜の数時間だけ一般客向けにも食堂を営業しており、その時間帯は戦争状態。普通ならば不可能な量の客を、日替わり当番の艦娘と二人で捌ききっている。赤城相手に料理を作っていたからこそ、出来る芸当である。
全・艦・娘・後・日・談・終・了
ようやく何とか全員書ききれました
コレ以降は1日1レスが基本となりますのでご了承下さい
それでは記念すべき新スレ一発目の話は、直後のレスを採用します
大鳳、了解です
大体一日以内には書き上げるので、気長にお待ちください
ほのぼのまったりで書く予定
提督「――なぁ、大鳳」
大鳳「何ですか?」
提督「俺はもう既に毎日夜に寝て朝に起きるっていう、規則正しい生活リズムを取り戻してるんだが?」
大鳳「だから、何ですか?」
提督「何で執務室の椅子で膝枕されてんだ、俺は」
大鳳「どこかの正規空母が終戦まで守り抜いた位置を、一度でいいから奪ってみたかったんです」
提督「結局アイツ、秘書艦になってから一度も負けなかったもんな」
大鳳「正直、かなり羨ましかったんです。提督にずっと膝枕をしてあげられる権利」
提督「秘書艦業務忘れんなよ? 膝枕はオマケだオマケ」
大鳳「――今なら加賀の気持ちが分かります。こうして提督にずっと膝枕出来るなら、仕事なんて幾らでもこなせますし、誰かに秘書艦の座を譲りたくなんて絶対になりません」
提督「そんなもんか?」
大鳳「はい、そんなものです」
提督「……本当に、優しく笑うようになったな」
大鳳「月に三週間も寝っぱなしの提督と付き合っているうちに、気持ちにゆとりが出来ました」
提督「俺にそんな嫌味を言わなかった真面目な大鳳はどこへ行った」
大鳳「……嫌味を言う私は、嫌いですか?」
提督「そっと首に手を添えてそれを聞く辺り、ちょっと本当に毒され過ぎだぞ」
大鳳「加賀直伝ですから、絞めて三秒で楽になれます」
提督「なれんでいいわ!」
大鳳「――彼女には、まだ色々な面で勝てません。ですが、提督を好きだという気持ちで劣っているとは思いません。だから、少しでも彼女が独占していたものを、私も感じたい」
提督「大鳳……」
大鳳「提督、私に全てを与えてくれた貴方を、心の底から愛しています。不幸な運命から解放してくれた貴方の為なら、私は全てを捧げます」
提督「――俺も愛しているよ、大鳳」
大鳳「……はい」
提督「……ん」
大鳳「んぅ……ちゅ……んちゅ……」
提督「……うっ!?」
大鳳「ぷはっ! ど、どうしたんですか!?」
提督「せ……背中……つった……」
大鳳(一回絞め落としていいかしらこの人)
提督「ちょ、ちょっと待ってくれ……マジで痛い……」
大鳳「三秒以内にキスしてくれない場合、加賀にないことないこと吹き込みます」
提督「お前それは幾ら何でも酷くないか!?」
大鳳「3、2」
提督「無茶をい――んむっ!?」
大鳳「ん……三秒なんて、私が我慢出来ませんでした。――大好きですよ、提督」
加賀との出会い編、了解です
ご報告をば
ここの設定をそのまま使ったドタバタ鎮守府物語を、後でスレ立てて書き始めます
携帯からなんで超亀更新になりますし、一人艦娘が口調とか酷いことになってますが、気が向いたら読んでみて下さい
極稀にここの艦娘が出ます
こっちのスレも放置だけはしませんので、ご安心下さい
この提督最低一日一回は夜戦してるとしたら…種馬だこれ
>>26
一緒に寝てるだけの日とか、そもそもまだ手を出してない子も中には居るんで、多分大丈夫です(365日中、休めるのは100日程度かな?)
>>27
逆に朝昼とか一日中もいるのか
>>28
該当しそうなの四人ぐらい居ますね、お腹プニプニ姉妹とか、発情期艦娘とか、今日改二になる艦娘とか
――――鎮守府に加賀が着任した時の話。
提督「俺がここの提督だ。それでこっちが秘書艦の吹雪」
吹雪「初めまして、よろしくお願いします」
加賀「初めまして、吹雪。これから共に頑張りましょう」
吹雪「はい!……あの、司令官にもご挨拶をした方が……」
加賀「必要ありません」
吹雪「へっ?」
提督「――だ、そうだ。吹雪、加賀にこの鎮守府の細かい説明をしてやってくれ」
吹雪「あ、あの、司令官」
提督「何時までもここで突っ立ってても仕方無いだろ、ほれ、さっさと行け」
吹雪「は、はい! では加賀さん、鎮守府内をご案内します」
加賀「お願いします」
提督(一航戦加賀。前の鎮守府で命令を一切聞かず、最後には大将と口論になってうちへ島流し、か……。戦闘や事務作業に関する能力はずば抜けて高いが、それ故に俺達へ要求するモノも桁外れってことなんだろうな)
提督「はてさて、どうやって信頼を勝ち取ればいいのやら……まっ、やれるだけやってみるか」
――――鎮守府内、施設群。
加賀「……一体何なのですか、この施設の数々は」
吹雪「明石さんが妖精さんと作った、艦娘の為の施設です。誰でも使っていいので、加賀さんも暇な時は利用して下さいね」
加賀「暇、とは?」
吹雪「今週は出撃がありますけど、来週からは三週間程、出撃は一切しません。次の出撃までは基本的に遠征担当の私達駆逐艦と、警護で付いてきて下さる軽巡の方々以外は待機です」
加賀「――頭に来ました」
吹雪「えっ? どうしたんですか加賀さん、何か私が気に障るようなことをしちゃいましたか……?」
加賀「あの無能な方に、現運営システムの改定案を作成して提出してきます」
吹雪「あの、それは非常に問題があるのでやめた方が……」
加賀「貴女も艦娘の一人なら誇りを持って行動しなさい。こんなことでは深海棲艦達に勝利することなど不可能です。――分かりましたか?」
吹雪「ひゃ、ひゃいっ!」
吹雪(この人物凄く怖いよぉ……司令官助けてぇ……)
加賀(こんな鎮守府が存在していたとは驚きです。やはり、私がこの力を全て委ねるに値する提督などはどこにも……)
~続く~
提督「――却下だな、コレじゃ話にならん」
加賀「納得のいく説明を願います。月に一週間しか出撃しないなど、正気の沙汰とは思えません。あの数々の施設もはっきり言って無駄です」
提督「一週間しか出撃しないのは、俺が指揮を取れるのが一週間だけだからだ。あの施設についてはここの艦娘達が望んだものだから、お前がどう思おうが関係ない」
加賀「話になりませんね、これならば私が提督をした方がマシです」
提督「……そうか、その手があったか」
加賀「?」
提督「――加賀、明日1日お前が提督やってみろ」
――――翌日。
吹雪「司令官司令官、私、今日も秘書艦業務やらなきゃダメですか……?」
提督「ん、今日もしっかり頼んだぞ」
吹雪「ハ、ハイ……」
吹雪(加賀さんと1日一緒とかやだよぉぉぉぉっ! 怖いよぉぉぉぉっ!)
提督「じゃあ俺は横で見てるだけだから、吹雪に聞きながら提督業務よろしく」
加賀「……分かりました」
――――書類業務。
吹雪(て、提督より速いかも……)
提督「おー速いな」
加賀「当然です」
――――遠征スケジュール管理。
加賀「次は朧、曙、漣、潮、敷波――それから木曾に行ってもらいます」
吹雪「えっ!?」
加賀「吹雪、この編成に何か問題が?」
吹雪「いや、あの、その、司令官が……」
提督「まぁいいんじゃないか? 木曾もたまには遠征に出たいかもしれんし」
加賀(たまには……?)
――――演習見学。
提督「げっ、よりにもよってアイツ等かよ……」
吹雪「あはははは……」
加賀(演習? アレが……?)
北上「えいっ」
望月「そりゃっ」
提督「何で水鉄砲で演習やってんだよお前等」
北上「夕張が作ってくれた」
望月「模擬弾でも当たると痛いし、コレでもいいんじゃねーの?」
吹雪「後で私も混ぜて――」
加賀「吹雪」
吹雪「ひゃいっ!?」
提督(アレなら俺も一緒に遊べるかもな)
加賀(演習で遊んでいるようでは、艦隊全体の練度も期待は出来そうにありませんね……)
~続く~
――――出撃。
北上「演習して疲れたのに出撃とか、何かやる気出ないなー……」
望月「だっるー……」
加古「……ぐぅ」
如月「お肌の手入れの途中だったのに……」
島風「天津風とかけっこの約束してたのにー!」
提督「加賀、お前何でこの艦隊編成にしたんだ?」
加賀「やる気が微塵も感じられませんでしたので、練度の上昇と意識の向上を兼ねて選出しました。幾らこの子達の練度が低くても、私が共に出撃する以上、万に一つも敗北はありません」
提督「あー、そうだな、オリョール海なら何の心配もいらんから俺も安心だ」
加賀「旗艦、一航戦加賀、出撃します」
提督「お前等も続けよー」
出撃隊一同「はーい……」
――――オリョール海。
加賀「――敵です」
提督「指揮も任せていいのか?」
加賀「当然です。各自目標を定め、単縦陣で殲滅、討ち漏らしは全てこちらで処理します」
北上「はいはい、分かりましたよーだ……そういえば提督、急な出撃だったけど、MVPのご褒美って今回もあんの?」
提督「ん? 欲しけりゃやるぞ?」
北上「へー」
望月「そっか」
加古「目、覚めてきた」
如月「うふふ……」
島風「ご褒美ほっしーい!」
加賀(何、この子達……急に様子が……)
北上「イ級は貰うよー」
望月「リ級はダルいからあたしもイ級」
加古「戦艦が居ないならあたしだって!」
如月「司令官とデート、いいわねぇ」
島風「速いのは速度だけじゃないよ! 連装砲ちゃんいっけー!」
提督「現金な奴等だな全く……まぁ今回は急な出撃だったし、仕方無いか」
加賀「――コレは、一体どういうことですか? どう見てもあの子達の練度は、大将達が保有している艦娘達と同程度……いえ、それ以上です」
提督「……お前が選んだコイツ等はな、お前と一緒で何かしらの問題を起こしたり、トラウマを抱えてここへ来たんだよ。他の大半の艦娘もそうだ、来た時には戦うこと自体を拒否した艦娘も居た」
加賀「そんな子達がどうしてこれほどの練度を……一体、何をしたというの?」
提督「全部受け入れて、信じて、一緒に頑張ろうと誓った。ただ、それだけだ」
加賀「そして、あの子達はそれに応えた……そういうこと?」
提督「出撃中、艦娘から常に百の力を引き出すのが提督の役目だ。お互いを知り、信じ合わなければ、それは出来ない。――だから、お前も俺を信じてくれないか?」
文字数が足りんかった……後二話で加賀編終了です
敗因:まだカッコカリ前だから
~~~~
――――翌日。
提督「結局ダメだったか……」
吹雪「元気出して下さい、司令官」
提督「あぁ、ありがとな、吹雪」
提督(“まだ信じるに値するとは認められない”、か。まだってことは、これから次第って捉え方でいいのか?)
――――加賀、鎮守府内を移動中。
加賀(今までに出会った誰とも違う……ですが、私は例え信じ合えなくとも百の力を出せます)
武蔵「む? お前が新しく来た加賀か」
加賀「武蔵、ですね」
加賀(大和型まで保有しているなんて、ただ者でないのだけは確かなようね)
武蔵「どうだ、これから一戦交えてみないか? その実力、私も少々気になっていてな」
加賀「――いいでしょう、受けて立ちます」
――――演習場。
武蔵「はっはっは! やはり本気で戦えるというのはいいものだ!」
加賀(くっ、コレが大和型の力……!)
武蔵「――鞘を無くした刀のような顔をしているな」
加賀「……どういう意味ですか?」
武蔵「いやなに、納まる場所が無いというのは悲しいものだと思っただけだ」
加賀「刀など斬れれば問題はないでしょう」
武蔵「鞘無き刀は、振るう者すら傷付ける……なぁ加賀よ、我等は所詮船だ。その身を誰かに委ねてこそ、存在する意義を見出だせるとは思わんか?」
加賀「自分の力と意思で動ける艦娘となった今も、ですか?」
武蔵「少なくとも、私はあの提督と共に戦えることを誇りに思っている。この身も魂も常に共にあると思えば、どんな逆境すら打ち砕く力が全身を駆け巡るのだ」
加賀「それだけのことを貴女に言わしめる、あの人は一体何なのですか?」
武蔵「ふむ……一言で言うならば、世界一の戯け者だ」
加賀「戯け者……」
武蔵「そうだ、戦いで傷付いた私達を見て私達以上に傷付く等、戯けと言う他に表現のしようがあるまい?」
加賀「確かに、バカですね」
武蔵「あぁ、だからこそ信じるに値する。疑う余地が存在せん」
加賀「――少し、貴女を羨ましく思えるようになりました」
武蔵「羨ましいと思ったならば、お前も鞘を見付けてみろ。まぁ既に目には入っているだろうがな……加賀、次は私を倒してみろ! 何時でも待っているぞ!」
加賀(完敗、ですね)
加賀「私も信じられるのでしょうか、あの人を……」
~続く~
――――提督執務室。
加賀「……」
提督「……」
吹雪(何この無言の空間、逃げたい……)
提督「……なぁ加賀」
加賀「何か?」
提督「俺が嫌なら、違う鎮守府へ――」
加賀「お断りします」
提督「まだ言い切ってないんだが」
加賀「そうですか、では続けて下さい」
提督「違う鎮守府へ異動――」
加賀「お断りします」
提督「喧嘩売ってんのかお前は! 最後まで聞け!」
加賀「聞くまでもありません。私は今ここから、というより貴方の傍を離れる気はありません」
提督「……どういう意味だ?」
加賀「まだ貴方の事を信じてはいません。――ですが信じたいとは思えるようになりました。ですから、お断りします」
提督「……そうか、じゃあひとまずはこれからよろしく頼む、ってことでいいのか?」
加賀「はい、それなりに期待していますよ、“提督”」
吹雪(今、初めて提督って……)
提督「じゃあ早速で悪いんだが、俺そろそろヤバイから寝る。後の業務は吹雪と加賀で頼むわ」
加賀「――はい?」
吹雪「えっもうですか!?」
提督「無理、限界、お休み」
吹雪「ちゃんとベッドに――ってもう寝てるし……」
加賀「吹雪、コレは何かの冗談なの?」
吹雪「正真正銘寝てます。艦娘全員の体調やその日の調子、今誰と誰を組ませれば最高の連携が出来るか、自分の作戦に不備が少しでもないか、ずっと頭がそれでいっぱいらしくて、緊張の糸が切れる瞬間まで動いた後、泥のように眠っちゃうんです……。一週間起きたら三週間寝る、それが司令官の生活スタイルであり、出撃が一週間しか出来ない理由ですよ」
加賀「本当にバカなのね、この提督」
吹雪「でも、私達にとっては最高の司令官です」
加賀「……そう」
吹雪「じゃあ私はちょっと雑務を済ませてきますから、書類をお願い出来ますか?」
加賀「分かりました、やっておきます」
吹雪「よろしくお願いします。えーっと、確かあの案件は――」
加賀「……ふふっ、本当におかしな提督。ここまでバカだといっそ清々しいわ」
提督「……ぐぅ」
加賀(だから執務椅子がこんなに横に広いのね、すぐに寝てもいいように)
加賀「……書類を書くのに提督が邪魔だわ、先にベッドへ――いえ、時間の無駄ですね」
加賀(後ろから見守るでなく、強引に引っ張るでなく、共に歩もうとする提督……私の、鞘)
加賀「……良き夢を、提督」
提督と加賀の現行スレ状態まで至った経緯は、ここから更に誇りについての話や赤城編を経てって感じです
最初は邪魔だから膝に乗せてたのが、何となく落ち着くから習慣化しちゃっただけで、好きだから乗っけてたわけではありません
空母ではない何かと化したのは、赤城編の少し後、二航戦合流後です
若干無理矢理にまとめたかなぁ……
次レスで次は書きます、多摩の方も今日中にちょっと投下予定
……アレ?適当に書いていいのかな……?それとも更に続きを書けばいいのかな……?
適当に書いていいなら摩耶のやらかした事件か、加賀さん提督とのデートを邪魔されぶちギレるのどっちかを書こうかと思います
じゃあちょっと時間はかかると思いますが、全部いっちゃいましょうか
・誇りの話、埃じゃないです
・姉妹が大好きな摩耶様大暴走
・加賀さん(本気)vs一般人
こんな感じで
誇り編、投下開始します
今日は更新これだけになります
――――提督執務室。
加賀「提督」
提督「何だ?」
加賀「私の出撃回数を増やして下さい」
提督「理由を聞こう」
加賀「一航戦だからです」
提督「そうか、じゃあ却下する」
加賀「何故ですか?」
提督「義務で戦うな、自分の意思で戦え」
加賀「コレは自分の意思です」
提督「ふーん……やっぱり却下だ」
加賀「私の練度が足りないとでも?」
提督「いや、今のままでも練度だけならうちでもずば抜けて高い方だ。――だが、艦隊戦においてお前は今、うちの誰よりも劣ってる」
加賀「私が、劣っている……?」
提督「そうだ、そのことに気付かない限り、武蔵には勝てんぞ? 今この鎮守府で名実共に一番強いのはアイツだ」
加賀「……知っていたのですね、彼女に負けたことを」
提督「大和型二番艦は伊達じゃない、負けても何らおかしくはないさ」
加賀「完全な敗北というのを初めて味わいました」
提督「まぁ勝てるようになれと言いたい訳じゃないが、全く歯が立たなかった理由を知るのは必要だと思うぞ?」
加賀「負けた、理由……」
~続く~
――――鎮守府内、遊戯場。
加賀(ここに来ればその理由に気付くかもしれない、ですか。とてもそうは思えないのですが……)
文月「あー新しく来た加賀さんだーねぇねぇ文月と遊ぼー」
皐月「あっボクもボクも!」
弥生「遊びたい、です」
電「私も加賀さんと遊びたいのです!」
加賀「えっ? いえ、私は……」
天龍「遊んでやれよ、ここに来たってことは時間もあるんだろ?」
加賀「私はただ提督に言われて来ただけです。遊ぶ気など一切ありません」
文月「遊んでくれないのー……?」
皐月「そっか、残念だね……」
弥生「我慢、出来ます……」
電「嫌なら仕方無いのです……」
天龍「……おいアンタ、加賀とかいったな、一航戦だろうがなんだろうが、チビ共泣かせたらタダじゃおかねぇぞ。ここに来たならチビ共と遊ぶのが俺達のルールだ、黙って従いな」
加賀「……分かりました」
天龍「ほらチビ共、遊んでくれるってよ。今日1日好きに連れ回して遊んでいいぜ」
加賀「天龍、私は遊んでもいいとは言いましたが、1日付き合うとは一言も――」
文月「ホントー?」
皐月「じゃあ一緒にかくれんぼしようよ!」
弥生「当て鬼もやりたい、です」
電「お絵描きもしたいのです!」
加賀「あの、そんなに袖と袴を引っ張らないで、付き合いますから手を離して下さい」
天龍「そいつ等タフだから頑張れよな、1日本気で付き合わされるぜ」
加賀(小さい子と遊んだ経験など一切無いのですが、大丈夫なのでしょうか……)
文月「えいっ! お胸おっきいねー加賀さん」
皐月「袴ってカッコイイね!」
弥生「私もおんぶして欲しい、です」
電「こっち、こっちなのです!」
加賀(大丈夫じゃない気がしてきました)
~続く~
――――半日後。
加賀(ようやく疲れて全員寝てくれましたね……どんな訓練よりもキツイ1日でした)
天龍「お疲れ、チビ共の相手は楽しかったか?」
加賀「まだまだ鍛練不足だと実感しました」
天龍「そのうち嫌でも慣れるぜ、そっからは楽しいって感じるさ」
加賀「……貴女は、こうして遊んで過ごすことに疑問は無いのですか?」
天龍「前はあったぜ、第一線で戦うのが俺様の生き甲斐だったからな」
加賀「でも、今は違うのね」
天龍「戦いたいって気持ちは変わってねぇよ。でも、ここへ来て戦いってモノに対する考え方が変わったんだ」
加賀「どう、変わったの?」
天龍「第一線で強敵と戦うのも、近海警備で深海棲艦共を追い返すのも、遠征でチビ共を守るのも、全部俺様が求めてる戦いってことさ」
加賀「それがここで遊ぶことと、一体どういう関係が……」
天龍「……チビ共に囲まれて笑ってる時間が、敵を倒してる時よりも気分が良いって気付いちまったんだよ。だから、次も絶対に勝ちてぇって力がどんどん溢れてくるし、何があろうと一緒に帰りてぇって思えるんだ」
加賀(仲間を守りたい気持ちと、共に生き残るための勝利への活力……私の一航戦としての誇りはいつの間にか薄汚れて曇ってしまっていて、視界を狭くしていたのかもしれないわね)
天龍「今日はありがとよ、チビ共と遊んでやってくれて」
加賀「いえ、礼を言わなければならないのは私の方です。大切な事を思い出せましたから」
天龍「そっか……なぁ加賀、アンタもチビ共を守ってやってくれるんだよな?」
加賀「――無論です、一航戦の誇りにかけて」
~続く~
――――提督執務室。
加賀「提督」
提督「何だ?」
加賀「私の出撃回数を増やして下さい」
提督「またか……で、理由は?」
加賀「私が一航戦だからです」
提督「――嬉しい誤算だな。たった1日で別人みたいな顔してるぞ、お前」
加賀「……駆逐艦の子達に付き合わされて疲れたせいです、きっと」
提督「そりゃご苦労さん。アイツ等に一度捕まったら体力根刮ぎ持っていかれるからな」
加賀「それで、出撃の件は?」
提督「あぁ、これからはうちの鎮守府に居るたった一人の正規空母として、ガンガン出撃してもらう」
加賀「――はい、了解しました」
提督「お前の一航戦としての誇りは艦隊を率いる上で強い力になる、尊く気高いものだ。慢心や変な意地で、二度と曇らせるなよ?」
加賀「……提督」
提督「何だ?」
加賀「一航戦加賀、私は貴方を提督として認め、この力の全てをここに住む全ての仲間の為に捧げることを誓います。私は貴方を心の底から――」
――――信じます。
~誇り編・終~
この少し後の話が赤城編となります
摩耶様大暴走は明日中には投下します
風呂の間に大半書けたんで、摩耶様大暴走投下します
――――摩耶、着任時。
摩耶(ここに高雄姉ぇに愛宕姉ぇ、鳥海が居んのか……酷い扱い受けてなかったらいいんだが)
?「散々な目に合ったわねー……」
?「今回の撤退に至る経緯は納得がいきません……」
?「あんなの想定外です……」
摩耶「アレは――間違いない、おーい! 高雄姉ぇ! 愛宕姉ぇ! 鳥海!」
高雄「摩耶、貴女もここへ着任したのですね。姉妹四人揃うとは、喜ばしい限りです」
愛宕「久しぶりねー元気してたー?」
鳥海「また会えて嬉しいです、摩耶姉さん」
摩耶「アタシも会えて嬉しいよ――ところで、何で三人共大破してんだ?」
高雄「コレは……ちょっとしたアクシデントの結果です」
愛宕「本当にびっくりしちゃったわー」
鳥海「アレは計算に入れようがありません」
摩耶「……要は作戦に問題があって、三人はそんな風になったってことだな?」
高雄「作戦というか何というか――」
摩耶「チッ、やっぱりここにもクソ野郎が居やがんのかよ……挨拶ついでにシメてやる!」
愛宕「あっ、ちょっと、摩耶!?」
鳥海「何か早とちりしたみたいですね……」
高雄「えーっと、えーっと、どうしましょうか?」
愛宕「加賀さんも居るし、大丈夫なんじゃないかしらー?」
鳥海「私達は入渠しましょう、明石さんに高速修復材をお願いしてきます」
~続く~
――――提督執務室。
摩耶「おいこのクソ野郎!」
提督「ん? あぁ、今日から着任の摩耶か。入れ違いにならなくて良かった、俺がここの提督だ、よろしく頼む」
摩耶「よろしくだぁ!? アタシの姉と妹を無茶な作戦立ててこき使っといて、何言ってやがんだ!」
提督「一体何の話だ……?」
摩耶「とぼけんじゃねぇ! 三人共大破するなんざ、無茶な作戦のせいに決まってんだろうが!」
提督「作戦? いや、アレは確かに俺も予測できずに悪かったとは思っているが――」
摩耶「言い訳なんざ聞きたかねぇ! 二度とアタシ達にそんな指示出来なくしてやる!」
加賀「――出来るものならどうぞ、達磨になりたいなら止めはしません」
摩耶(っ!? いつの間に後ろに……)
加賀「流星改か彗星一二型甲、好きな方を選ばせてあげる」
摩耶「やれるもんならやってみやがれ! 先にこのクソ野郎の胴体に風穴開けてやる!」
提督「おいやめろ加賀、摩耶もその連装砲を下ろせ。高雄達を大破させてしまったことは、本当に悪かったと思ってる。まさか鳥海の電探が掠っただけで陸奥の第三砲塔が爆発するとは、俺にも予測出来なかったんだ」
摩耶「…………はぁ!?」
~続く~
――――高雄型、私室。
高雄「ちゃんとお詫びしましたか?」
摩耶「……あぁ」
愛宕「提督のことだから、笑って許してくれたでしょー陸奥さんも土下座しかねない勢いで謝ってたし」
摩耶「……あぁ」
鳥海「次からはちゃんと最後まで話を聞いてください、加賀さんに喧嘩売るのも自殺行為だからダメです」
摩耶「……あぁ」
摩耶(初日からやらかしちまったあぁぁぁぁぁぁ! 明日からどんな顔して提督と顔合わせりゃいいんだよぉぉぉぉっ!)
――――提督の話を全員から聞かされ、後悔と自責の念で頭を抱える摩耶なのだった。
提督「あっ摩耶、ちょっと話が――」
摩耶「なっ、なななな何か用か!?」
提督「ははは、この前の件なら気にしてないから、そんなガチガチに固くならなくてもいいぞ?」
摩耶「わ、分かった……」
摩耶(高雄姉ぇ達にくれぐれも失礼の無いようにって言われたのに、普通になんか出来るか!)
投下終了
口が悪くて手は早いけど反省はする摩耶様でした
続きは起きたら、カードじゃ買い食いの時に使えない事あるから現金必須
実際にこんな場面に遭遇したら絶対に逃げる
~~~~
――――銀行。
提督(加賀とデートするには財布の中が心許ないからと来てみれば、とんでもないことに巻き込まれたもんだ……)
強盗1「お前等全員動くなよ!」
強盗2「おら! さっさとここに金を入れれるだけ突っ込め!」
提督(平和になった途端にコレかよ……今は銀行強盗なんぞやってもハイリスクノーリターン、っていうか確実に捕まるだけなんだが)
提督「――それより何より、早く解放してくれなきゃ加賀待たせちまうな」
強盗1「あんっ!? 何か言ったかテメェ!」
提督「いやなに、これからデートの予定でね、相手のことが気になっただけだよ」
強盗1「悪いがデートはキャンセルだ兄ちゃん、諦めな」
提督「そうか、それはマズイな……」
強盗1「コレでフラれても恨むなよ?」
提督「恨まんさ。むしろ――これから起きるだろう惨事に同情する」
強盗1「はぁ? 一体何を――」
――――玄関シャッターから最初に聞こえてきたのは、ほんの微かな音。
強盗2「何だぁ? 玄関のシャッターの方から聞こえたぞ、サツか?」
強盗1「サツにしちゃ幾らなんでも早すぎるだろ」
提督「来たな……俺はもう知らん……」
――――シャッターが不自然に揺れ始める。
強盗2「おい、さっさと金を詰めろ!」
強盗1「ハンマーか何かでシャッターを破ろうとしてんのか……?」
提督(修繕費はコイツ等が払ってくれんのかなぁ……)
――――腕が一本、シャッターを突き破り生え出る。
強盗2「な、何だありゃ!?」
強盗1「人間の腕か!? どうやったらシャッターを素手でぶち抜けんだよ!?」
提督(ホラー映画みたいだな、この光景)
――――二本目の腕が更にシャッターから生え、開いた穴を広げていき、最後に足が一気に地面まで隙間を広げた。
加賀「――提督、女性を待たせるのは感心しません。早くデートに行きましょう」
――――私服の加賀が、何時もの調子でそこから姿を現した。
~続く~
まだ手を出してないからセーフ、かすり傷あればアウト
~~~~
強盗2「な、何なんだテメェは!」
加賀「デートを前に気分が高揚しているうら若き乙女です」
強盗1「乙女がシャッター素手でぶち破る訳ねぇだろ!」
提督(強盗に同意、口にしたら巻き添え喰らうから言わないが)
加賀「――ところで、私の提督が後ろ手に縛られてるのは何故ですか?」
強盗2「見て分からねぇのかよ、人質だよ人質」
強盗1「どんな手品か知らねぇが、大事な彼氏をケガさせたくなかったら大人しくしな!」
加賀「“大事な彼氏”、良い響きですね。更に気分が高揚します」
強盗1「ふざけてんのか!? コイツがどうなってもいいのかよ!」
提督「あっバカ、俺に拳銃なんか向けたら――」
加賀「ふふっ……頭に来ました」
提督(手遅れだったかー……)
強盗1「な、何笑ってんだよ!」
強盗2「そろそろマジでサツが来るぞ! 早く逃げねぇと!」
加賀「逃がしてあげますよ、一番安全な場所に」
強盗2「彼氏と交換に逃走用の車でも用意してくれるってのか?」
加賀「いえ、ただの――地獄への片道切符です」
~続く~
強盗1(っ!? 一瞬で目の前に!?)
強盗1「うぐっ!?」
加賀「顔を潰しましょうか? 艦爆で足を吹き飛ばしましょうか? それとも全身の骨を砕いて欲しいですか?」
強盗1(首が、絞まる、息が……)
強盗2「に、人間一人片手で持ち上げるとか化物かよ!?」
提督「頼むからそっちの奴は抵抗せずに大人しく投降しろ。加賀はやり過ぎだ、もうソイツ気絶して失禁してるから手を離してやれ」
加賀「はい、今日の為に用意した服が汚れるのは私も嫌です」
強盗2(い、今のうちに――)
加賀「あら、何処へ行く気なの?」
強盗2「ひっ!?」
加賀「提督からの優しい忠告を無視したのですから、“俺は別にお前なんて怖くない”という意思表示と捉えていいですね?」
提督(涙目で腰抜かしてる奴がそんな意思表示する訳無いんだがな)
加賀「一分一秒が惜しいです。表に放り出されるか、自分で表に出て警察を待つか、今ここで永久に捕まらない場所へ旅立つか、一秒で選んで下さい」
強盗2「た、立てねぇ……」
加賀「そうですか、では放り出します」
強盗2「おい、やめ、ぎゃあぁぁぁぁぁっ!? がっ!?」
提督「シャッターから首だけ向こうに出てるけど、生きてるよな、アレ」
加賀「私がそんな加減も出来ないとお思いですか?」
提督「もう一人を汚い物摘まむみたいに表へ投げ捨てながら言わなきゃ信じられた。顔面で着地してたけどマジで大丈夫か?」
加賀「死んでなければセーフです」
提督「まぁ……そうだな……さて、後は警察の事情聴取か」
加賀「――時間が惜しいので警察を爆撃してデートへ行きませんか?」
提督「頼むからやめろ、うちの鎮守府がテロリスト扱いされる」
加賀「では、帰ったら今日の不満を全て提督の身体で受け止めて貰います。後ろ手に縛られている提督をイジメてみるというのも良さそうですね」
提督(アイツ等恨む! マジで恨む!)
加賀「久しぶりの夜戦、流石に気分が高揚しまくります」
提督「頼むから明日に支障が出ない範囲にしてくれ……」
――――今日の教訓。この街で犯罪を起こすなら提督を巻き込んではいけない。
大鳳「提督、顔色が優れないですが大丈夫ですか?」
提督「アァ、ダイジョブ、ダイジョブ」
提督(一睡も出来んかった……)
加賀「次の秘書艦日は1日要求してみましょう。肌も心も潤います」
~終~
かすり傷→腕一本
撃たれてた→頭が消し飛ぶ
ほら、全身骨折とか前歯無くなってるとか全治二ヶ月とか提督が搾り取られたなんてセーフですよセーフ
次の話のネタ募集してる間に多摩書いてきます
青葉、了解です
前に書き込まれたのも思い付いたら拾いますね
・青葉、撮られちゃいました!
ネタは思い付きましたが書くのに難航しそうですので、明日になるかもしれません
そういえば青葉は最初に書き間違えたので、提督呼びで統一してます
続きは悩んでるので明日になりそうです
~~~~
――――青葉、デートで服試着中。
青葉「あのー提督?」
提督「ん? 着れたか、見せてみろ」
青葉「こういう格好は青葉には似合わないんじゃ……」
提督「人が選んだ服にケチ付ける気か? 選べって言ったの青葉だろ」
青葉「そ、それは提督が青葉が試着する服を全部イマイチとか言うから、つい売り言葉に買い言葉で言っちゃったんですよ!」
提督「なら、問題ないな。今日のデートはそれ着てろ、これは命令だ。後、このカメラはその服にゃ似合わんから没収」
青葉「そんなの横暴です! 青葉のカメラ返して下さいよ!」
提督「――その青のワンピース、良く似合ってて可愛いぞ」
青葉「へ? いや、あの、ども、恐縮、です……ってそんな言葉に騙されませんよ! カメラを返して下さいってば!」
提督「ほれ、一枚撮ってやるから笑え、怒った顔撮られたいか?」
青葉「青葉のカメラで勝手に青葉を撮らないで下さいよ!」
提督「撮られる側は慣れてないみたいだな、今日は1日撮られる側を味わってみるのもいいだろ」
青葉「提督のバカ! 変態! 変質者!」
提督「試着室前でそんなこと言ったら捕まるからやめろアホ! ほら、店員にタグ切って貰って会計するからさっさと行くぞ」
青葉「うぅー……青葉のカメラ……」
~続く~
――――街の大通り。
青葉(カメラは奪われるし、髪留めも強奪されるし、今日の提督はちょっと強引過ぎますよ……)
提督「――青葉、着いたぞ」
青葉「着いた? どこに着いたんですか?」
提督「入りゃ分かるさ」
青葉「え、あの、ちょっと!?」
提督「行くぞー」
青葉(もうっ! 一体全体今日は何なんですか!)
青葉「ここって……」
カメラマン「今日はよっろしくお願いしゃーす」
提督「こちらこそ、よろしくお願いします」
青葉「て、提督? 何か青葉にはここが撮影スタジオに見えちゃってるんですが……」
提督「さっき、たまには撮られてみろって言ったろ。今日は二人で写真撮ってもらうことにしたから」
青葉「本気で言ってます?」
提督「あぁ、だからここに来たんだ」
青葉「青葉、ちょっと用事を思い出しました」
提督「まぁ待て、逃げたらカメラは戻らんと思えよ?」
青葉「提督の卑怯者!」
提督「はいはい諦めて一緒に撮影されような」
青葉「青葉にだって心の準備とか色々あるんですよ! いきなり撮影とか言われても困っちゃいますってば!」
提督「大丈夫だ、今のお前は見惚れるぐらいに可愛いから問題ない」
青葉「……そういう事を真顔で言うのが卑怯なんです。余計に撮られたくなくなっちゃいましたよ……」
提督「安心しろ、恥ずかしがってるのも新鮮で可愛い」
青葉「分かった分かった分ーかーりーまーしーたー! もうこれ以上は精神衛生上非常によろしくないのでさっさと撮影でも何でもしちゃって下さい」
カメラマン「寄り添ってお願いしゃーす」
提督「ほら、引っ付いて顔上げろ」
青葉「はいっ、コレでいいですかっ!」
カメラマン「はい、いいっす。じゃあいきゃーす、はいチーズ」
――――この日から、青葉の部屋には一枚の写真立てが増えることとなる。そこには提督の腕に抱き着き、真っ赤な顔で笑みを浮かべる彼女の姿があった。
青葉(よく考えたら初ツーショット……青葉、恥ずかしかったけど嬉しいです!)
今から書いてみて、いけそうなら酉を変えてエロは投下します、いらんって方は飛ばして下さい
それと電のが書けそうなんで、多分次に拾います
とりあえず、この酉で試しにエロを投下してみますが、期待はしないで下さい
――――提督私室。
提督はベッドの上で、お預けとでもいうべき状態だった。背中越しに聞こえてくるのは、衣擦れの音。
(俺に脱がされるって選択肢は初めから無しかよ……)
今から服を脱ぐので、勝手に自分の方を向いたら無いこと無いこと記事にすると言い放った青葉。脱いだら脱いだで、毛布を引っ付かんで身体をグルリと覆い隠す。その状態で、こっち向いてもいいですよ、と恥ずかしげに許可を出されても、提督が興奮しようはずもない。
「なぁ、自分から誘っといてそれは無くないか?」
「だって、しょうがないじゃないですか。恥ずかしいものは恥ずかしいんですよ……」
今見えているのは青葉の紅潮した顔のみで、首から下は一切見えていない。というか、部屋の照明の関係で顔だけが認識しやすい為、悪く言えば生首だ。
「さっさと毛布から出てこい、でなきゃ剥ぐぞ」
「イヤです!」
「ここに何しに来たんだよお前……」
「――笑ったり、しないで下さいよ?」
溜め息を吐く提督を見て少し勇気を出したのか、青葉は一言断ってから毛布を脱ぎ捨て、その裸体をさらけ出す。
「やっぱり、加賀さんとかと比べると見劣りしちゃいひゃあっ!? いきなり触らないで下さいよ!」
「日頃から取材で走り回ってるだけあって良い足してるな」
「そ、そんな、撫で回すように触られると……ひぅっ!?」
足首から膝、そして太ももに指が触れた瞬間、青葉の身体が反応する。それを見て、提督もスイッチが入った。
「じゃあここは後でまた攻めるとして、青葉」
「は――んむっ!? んーっ!……んぅ……ちゅぱ……」
口を一瞬開いた所へ舌を捩じ込み、口内を激しく犯す。最初は抵抗して背中を叩く青葉だったが、次第にその手は背中をしっかりと抱き締めていった。
「――ふぅ、次は胸も触るぞ?」
「ふぁ?……青葉の何かで、良ければ……」
「そうか、じゃあ遠慮なく」
「んっ……提督、はっ……はぁっ……青葉の胸なんぅっ! なんかで……満足、なんですかっ?」
「綺麗な形だし、触り心地も良いぞ……はむっ」
「ひぁっ! 吸うのは、だめ、ふあぁっ!?」
胸の一番敏感な所を吸われ、青葉の上体が仰け反った。しかし、背中に回された腕がそれを支え、必然的に胸は提督が口で攻めやすい位置へと突き出される。
~続く~
「てい、とくっ! もう、我慢がっ――ひうっ!?」
「この辺り、弱いんだろ」
「ダ、ダメですっ……そこ、今は……青葉、何か来ちゃいますからぁ……」
「分かった、ここを重点的にだな」
「ぅあっ!? あぅっ……ひゃあっ!? んうぅっ!」
右の内腿から左の内腿へと、足の付け根の秘部を経由して指を這わせる。今度は上体だけでなく、下半身も一緒になって忙しなく跳ねるように動き始めた。
「今の青葉、写真に撮ってやろうか?」
「そ、そんなの、ダメで――むぐぅっ!? んぅっ! んむぅっ!?」
否定の意思を言い切る前に、青葉は再び口内を蹂躙される。ずっと秘部を掠めていくだけの指を知らず知らずの内に腰を動かし求めながら、その目は完全に蕩け始めていた。
「――撮らねぇよ、生で見るからいいんだ」
「青葉、なんかお腹の辺りが……切なく、なってきました……青葉の身体、隅々まで取材、して……下さい」
頬を上気させ、ねだるような声音を出しながら、青葉は身体をベッドへと投げ出す。何時も街を走り回る記者としての彼女はそこに居らず、ただ提督を求めて濡れた瞳を向ける女が居た。
「行くぞ?」
「はい……もっと青葉を……知ってください……くぅぁっ!?」
「我慢、しろよっ、くっ!」
「ん、んぅ、んうあァァァァっ!?……あっ……うぁ……」
貫かれた痛みと、愛する人と一緒になれた喜びが同時に身体を駆け巡り、視線は虚ろに天井へと向けられている。
「キツく、ないか?」
「青葉に、提督が、刻まれてる感じがします」
「そうか……じゃあ、もっと深く刻んでやる」
「うあっ!? 急にっ、激しくっ、されたらっ! 提督が、奥、奥にぃっ!」
普段の取材時に見せる強引さは成りを潜め、ただただ提督の成すがままに身体を貪られ、青葉は快楽へと堕ちていく。
「しっかりっ、青葉に、提督がぁ、刻み込まれて、ますっ……んあっ! はぅっ! そこ、イイッ! もっと、もっと青葉にっ、刻んでっ、深くぅっ!」
「そろそろっ、イクッ、中にっ、出すぞっ!?」
「あぅっ! 下さい、青葉、にぃっ……ぜんっ、ぶ、下さい!」
「うっ、出るっ!」
「ふあぁぁぁぁぁっ!?……んぅっ……お腹の、中、熱いのが、動いてますよ……?」
「……好きだぞ、青葉」
「はい……私もです……青葉は一生提督からしか、取材は受けません」
――――だから、また青葉を取材して下さいね?
やっぱり、エロって難しいですね……
寝ます、ちょっと更新速度が本格的に今日から落ちるのでご容赦下さい
見た目は二十歳
~~~~
――――提督執務室。
提督「なぁ」
電「はい、お茶です」
提督「ん」
電「お煎餅でも食べますか?」
提督「いる」
電「……えへへっ」
提督「んー?」
電「座った司令官を見下ろせる様になりました」
提督「その分、俺は老けたがな」
電「今でもカッコイイですよ?」
提督「三十過ぎのただのオッサンだ」
電「それ、陸奥さんの前で言ってみて下さい」
提督「まだ死にたくないから断る。歳の話したら目付きが変わる奴が年々増えていきやがって……」
電「皆、司令官の前では綺麗で居たくて必死なんです」
提督「電もか?」
電「……約束、覚えてますか?」
提督「髪を上げてたら今日はいいですよのサイ――待て、今お前の魚雷マッサージ受けたら動けなくなる」
電「ふざける司令官は嫌いなのです!」
提督「その語尾も懐かしいな、怒った時ぐらいしか言わなくなったし」
電「子供っぽいから使わないようにしてるの知ってるくせに……」
提督「……約束、か。今の電に隣に立って並ばれたら、俺が不釣り合いで笑えるよ」
電「司令官以外はお断りしますから、比較されないので大丈夫です」
提督「おい、不釣り合いに対するフォローはどうした」
電「“電は俺には勿体無いぐらい可愛くて綺麗になった”、でしたね」
提督「さっきからかったの引きずりすぎだろ。いい加減機嫌直せ」
電「――電は、司令官の理想の女性になれましたか?」
提督「俺には勿体無いって言ったはずだ。お前はもう、立派な一人の女性だよ」
電「頑張ったのは全部、司令官に見合う女性になりたかったからです。そう言って貰えて、本当に私は嬉しいのです」
提督「――コレ、やる」
電「? この箱って、ひょっとして……」
提督「給料三ヶ月、って訳でも無いんだがな。結婚は無理でも、これだけは渡したいと思ってたんだ」
電「あの、司令官の手で私の指に、填めてくれませんか……?」
提督「……あぁ」
――――これからも、ずっと俺の隣に居てくれるか?
――――はい、なのです!
書いたら来てた、北上様了解です
・たまには逆もいいんじゃない?
で、いきます
早くて明日です
ワァオ、大漁大漁(滝汗)
・服がキツくなってた
・地獄耳二人による鎮守府案内(地獄巡り)
・無頓着な武蔵
・慣れました
・扶桑と山城にイタズラしてみる
・茶室で一服
・手編みは重い?
ネタは出来てます書くのは待って下さい赤城さんに菓子折り持たせて回りますから!
赤城「行った先の提督の財布で豪遊していいと聞いて来ました。手始めに名物を箱詰めで50程頂けますか?――あぁ、持ち帰りも30程お願いしますね。……菓子折り? いえ、知らない単語ですね」
――――提督執務室。
北上「いいねー楽だねー」
提督「そりゃ良かったな」
北上「提督、アタシ重い?」
提督「重くはないが、軽くもない」
北上「えーそこは軽いって言うもんじゃないの?」
提督「お望み通りに膝枕してやってんだ、文句言うなら退け」
北上「ヤダよーだ」
提督「コラ、頭をグリグリするな」
北上「何? 変なとこに当たって興奮するとか?」
提督「魚雷発射管がガチャガチャ鳴ってうるさいんだよ!」
北上「ふーん、あっそ」
提督「もう少しだけ大人しくしてろ、この書類書いたら構ってやるから」
北上「ちょっと提督、頭撫でるのやめてよ。アタシ駆逐艦共みたいに喜ばないよ?」
提督「そういうことはにやけてる顔を引き締めてから言え」
北上「うっ……」
提督「――なぁ、北上」
北上「何さ」
提督「上から見るとお前もやっぱり平面ふぐぉっ!?」
北上「世の中には言っていい事と悪い事があるよねー。ねぇ、提督?」
提督「げほっごほっ! み、鳩尾にグーパンはやめろ。お前の顔にインクぶちまけるところだったぞ」
北上「寸胴で可愛いげ無いのなんて自分が一番良く知ってるってば、提督のアホ」
提督「寸胴かどうかはともかくとして、可愛いげはあるだろ。膝枕許可したら小さくガッツポーズしてたところとか」
北上「っ!? 提督あの時書類の方に視線向けてたじゃんか!」
提督「急に跳ね起きるなよ、頭ぶつけるぞ。反応が気になったから横目で見てただけだ」
北上「うわー忘れてよー……」
提督「で、可愛いげが何だって?」
北上「あーもう何さっ、嬉しかったら悪い?」
提督「いや、全然。お前が喜ぶんなら、俺も膝枕のし甲斐があるってもんだ」
北上「……提督はさ、アタシがここに来たときから何時だってアタシの全てを受け入れてくれたよね」
提督「それが俺の方針だったからな」
北上「面と向かって言うの照れ臭くってさ、今までずっと言えなかったけど――ありがとね、提督」
提督「俺の方こそ、お前の肩の力を抜いてくれる気楽な雰囲気に何度も救われたよ。ありがとな、北上」
北上「それ、褒めてんの?」
提督「こうしたら、伝わるか?」
北上「あっ……うん、伝わった」
――――何時までもこんな風に一緒に居ようね、提督。
――――飛鷹型私室。
飛鷹(そろそろ暑くなってきたし、衣替えしないと)
隼鷹「飛鷹ーあたしのもよろしくー」
飛鷹「酒飲む暇があるならちょっとは手伝ってよ」
隼鷹「だって暑いしさー飲んでなきゃやってらんないっての」
飛鷹「だから、今服を入れ換えてる訳なんだけど?」
飛鷹(とりあえず、わたしは先に夏服に着替えちゃおっかな)
隼鷹「そういえば春先ぐらいに買い物してる時から言おうと思ってたんだけどさー」
飛鷹「何?」
隼鷹「――去年の夏服、ちょっとキツいって言ってなかった?」
飛鷹「……え?」
――――百貨店、レディースファッションコーナー。
提督「おい飛鷹。秘書艦日だから買い物に付き合うのはいいんだが、この量はなんだ?」
飛鷹「……なくなってたの」
提督「ん?」
飛鷹「色々と事情があって、ほとんど服が着られなくなってたのよ……」
提督「あぁ、冬服はゆったりしたのが多かったから気付かなかったのか」
飛鷹「下着新調した時に気付くべきだったわ。ボタンが止まらないシャツとか、履いたら一歩も動けないデニムパンツなんてどうにもならないし……」
提督「それで今日はマキシワンピなんだな」
飛鷹「ピッチリしたのは全滅だもの。だから今日は荷物持ち兼財布係、よろしくね?」
提督「払うのは別にいいんだが、もう既に両手塞がりそうなこの状況でまだ追加する気か?」
飛鷹「ちゃんと後で良いもの見せてあげるから、つべこべ言わずについてきて」
提督「あーはいはい、付き合いますよお嬢様」
提督「良いものって、こういうことかよ……」
飛鷹「コレなんてどう? 似合う?」
提督「それも似合うが、さっきのヤツの方が俺は好きだ」
飛鷹「そう、じゃあ次は提督が自分で選んでいいわよ」
提督「お前は下着売り場で男が下着を漁ってたらどんな目で見られるか、分かってて言ってんだな?」
飛鷹「そんなの当たり前じゃない」
提督「店員さん、この中で一番ド派手で露出高いのどれですか?」
飛鷹「流石提督度胸が――ってそんなの持って来られても着ないからねっ!?」
提督「買い物に付き合った礼なんだろ? 観念しろや飛鷹」
飛鷹(あっ目が本気だ……)
――――結局、着せられた挙げ句に“似合わねぇな”と言われた飛鷹。勝負下着で夜戦を仕掛けて綺麗だと言わせることには成功し、女としての意地は守りきるのだった。
題から地獄耳は削除します
こんな奴等は居て欲しくない
続きは多分今日中に
~~~~
――――鎮守府、入口。
加賀「電」
電「あっ加賀さん、どうしたのですか?」
加賀「今日は鎮守府に見学に訪れている人数が多そうなので、見回りに来ました」
電「確かに今日は多いのです……」
加賀「危険区域は厳重に警備して立ち入り禁止にしてあるとしても、人混みは無用なトラブルを招きます。案内にも細心の注意を払って下さい」
電「はいなのです!」
客1「――ひょっとして、君達が噂の艦娘?」
加賀「そうですが、何か御用でしょうか?」
客2「評判通りに綺麗な人と可愛い娘ばっかりだね」
電「えと、お褒め頂きありがとうなのです」
客1「よかったらここ案内してくれませんか? 地図は見たけど広すぎてよく分かんなくって……」
加賀「私も仕事がありますのでそう長くは案内できませんが、それで良ければ」
客2「ホントに? じゃあちょっと案内の前にお願いがあるんだけど、写真を撮ってもいいかな?」
加賀「撮影禁止区域以外の建物や施設でしたら、御自由にどうぞ」
客1「いや、君達を撮りたいんだけど」
加賀「禁止されているのでお断りします」
客2「そういうサービスは無いの?」
電「私達艦娘に対する個人的な撮影は全面的に禁止となっているのです……」
加賀「無断で撮影してネットにアップした場合、厳罰に処されますので注意して下さい」
客1「何だ、艦娘が街を男と二人で歩いてるのが目撃されてるとか聞いたから、てっきりそういうサービスもあると思ってたのに……」
加賀「事実無根です」
客2「でも、上司である提督の命令なら何でもするって噂も聞いたよ? その人にお金払えば撮らせてくれたりしないの?」
加賀「……私達の提督は、そのような行為を許す方ではありませんので」
客1「こんな小さい子を働かせて、椅子でふんぞり返ってるような奴なら言い出しかねないと思うけどなぁ」
電「――加賀さん。電は今、初めて本気で怒っているかもしれないのです」
加賀「奇遇ですね電、私も少し頭に来ています」
客1「じゃあ写真は諦めるけど、案内をお願いするよ」
客2「オススメとかってある?」
加賀「――えぇ、ありますよ?」
電「ゆっくりと、堪能して行って欲しいのです」
~続く~
天使だからちゃんと身体の不調を気遣ってくれています、電は優しい子
~~~~
――――道場。
大和「――分かりました。やり過ぎなければいいんですね?」
加賀「えぇ、ついうっかり首の骨を折らない程度に」
武蔵「任せておけ」
電「お願いするのです」
客1(綺麗だ……)
客2(胸、すげぇ……)
大和「では、お手柔らかにお願いします」
武蔵「二人のどちらかから一本取れれば、お望み通り何か特別な奉仕をしてやろう。――取れれば、な」
客1「降参降参ギブギブ腕千切れるっ!」
客2「そこはそれ以上そっちには曲がらない痛い痛い痛い痛い痛いっ!」
――――マッサージ屋。
加賀「軽い運動の後は身体をほぐして休んでください」
客1(軽く死にかけた……)
客2「マッサージってどんなの?」
電「物凄く効く魚雷マッサージなのです。イクという艦娘が水着姿でやってくれるのです。今日は電もマッサージするのです」
客1「マッサージならさっきみたいにはならないか……」
客2「スク水……」
19「どうぞなのねー」
19(痛いだけのツボを押すって面白いのね)
客1「うぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」
電(ここをこの角度で――えいっ!)
客2「いっ!?」
電「骨が歪んでるので(強引に)戻しておくのです」
客2「ミシミシって、何か骨がミシミシっていってる!?」
加賀(あの子も提督の事になると容赦がありませんね……では、次は私も)
~続く~
非殺傷ゴム弾(痛くないとは言っていない)
~~~~
――――鎮守府内、陸上演習場。
加賀「ちょっとしたゲームをしましょう」
電「加賀さんと私がお二人を追いかけながら、ペイントボールをぶつけます。十分間で当たった回数が百回以下なら、司令官には内緒で私達がデートしてあげるのです」
客1「ど、どうする?」
客2「百回ならいけるんじゃないか?」
客1「デートしてくれるって言うし、ちょっと怖いけどやるか」
加賀(かかりました)
電(司令官以外とデートなんて絶対にしないのです)
客2「やるよ、始めて」
客1「約束は守ってよ?」
加賀「えぇ、守りますよ」
電「約束は大事なのです」
加賀「それでは始めます。――艦載機、全機発艦」
電「電の本気を見るのです!」
客1「艤装使うの!?」
客2「聞いてないよ!?」
加賀「あぁ、言い忘れていました。このゲームは“演習ごっこ”という名前です」
電「使用するのはペイントゴム弾なので安全なのです」
加賀「顔面はセーフですので、ご心配なく」
客1「は、反則だろそんなの!」
客2「とにかく逃げなきゃ!」
加賀「電、そちらは任せました」
電「はいなのです」
――――ゴム弾だって関節や脛、首に当たれば痛い。十分で合計六百三十七発。赤とピンクと黄色にまみれ、痣だらけになった二人がかろうじて動けるようになったのは、終了からおよそ三十分後のことだった。
~続く~
客1「いててて……こんな酷い扱いされるなんて聞いてないっての……」
客2「今日の事は全部ネット使って拡散するからな!」
加賀「――氏名〇〇〇〇、住所〇〇〇〇〇〇、職業〇〇〇」
客1「っ!?」
電「ちょっとマッサージの時に携帯から個人情報を抜き出して貰ったのです」
客2「は、犯罪だろそんなの!」
加賀「先に提督を侮辱したのは貴方達です」
電「電はこれで許してもいいのです。でも、他の皆さんがどう思うかは分からないのです」
客1「なぁ、何かヤバいぞ……」
客2「いつの間にか増えてる……」
――――北上・大井・木曾・ビスマルク・大鳳・金剛・榛名・利根・神通・霞・荒潮・夕立。笑顔と艤装をフル装備で待機中。
加賀「既に霧島がありとあらゆる個人情報を抑えています。ネットに流したければ、好きにして下さい。その後どうなっても知りませんが」
電「出来れば、こんな手荒な手段は取りたくなかったのです……。でも、私達の事を何時も考えてくれている司令官を、悪く言われるのだけは嫌なのです」
客1「……分かったよ、謝る」
客2「酷い事言ってごめんなさい」
加賀「――次来た時は、本当にオススメの場所を案内します」
電「お待ちしてるのです!」
――――事件終了後、提督執務室。
提督「アホかお前等は! 一般人相手に艤装持ち出すとか何考えてんだ! 挙げ句の果てには霧島にハッキングまでさせやがって……」
加賀「反省して貰えましたが?」
電「ご、ごめんなさいなのです……」
提督「……二人とも悪かったな、不快な思いさせて。その辺の対処もしっかり考えとく」
加賀「お気遣いは無用です」
電「嫌々やってる訳じゃないのです。良いことだって、たくさんあるのです」
提督「――そうか」
――――後日。
客1「俺と付き合って下さい!」
加賀「お断りします」
客2「電ちゃんにまた撃たれたいんだ!」
電「へ、変態さんなのです!?」
~終~
あきつ丸が憲兵のバイトで現在別鎮守府に出張中
武蔵編はまた日付変わるぐらいに投下予定です
――――鎮守府内、入口へ向かう道中。
提督「服を着ろ、胸を隠せ」
武蔵「断る、暑い、サラシは巻いている」
提督「お前に女としての恥じらいってもんは無いのか?」
武蔵「あるぞ、眼鏡と髪型には気を遣っている」
提督「他にもっと気を遣えよ……」
武蔵「何だ、私の身体は見られて恥ずかしい体型だとでも言いたいのか?」
提督「自慢して良いぐらいの体型だから言ってんだ」
武蔵「ふむ、ならば何の問題もないな」
提督「――俺以外には見せて欲しくないと言えば、着てくれるのか?」
武蔵「それが世に言う、妬く、というヤツか? 悪い気はせんな、やはり着ない事にしよう」
提督「あぁ、そうかよ……」
武蔵「そうふてくされるな提督よ。自慢出来ると思っているならば、存分に自慢すればよいではないか」
提督「別に誰かに自慢したくて、連れて歩く訳じゃない」
武蔵「そう恐い顔で睨むな。お前はこの武蔵が認めた男だ、そのぐらいの役得があっても罰は当たらんさ」
提督「そんな役得はいらん。認めてんなら言うこと聞いて服を着ろ」
武蔵「ふっ、百を越す艦娘達と恋仲にある男の台詞とは思えんな。サラシを取って街を闊歩しろ、ぐらいは言っても良さそうなものだぞ」
提督「お前は俺の事を何だと思ってやがる」
武蔵「深海棲艦との戦いに終止符を打った英雄の一人。“常勝無敗提督”、だったか?」
提督「勝手に元帥が嫌がらせでそう呼びやがっただけだ。英雄はお前達であって、俺じゃない」
武蔵「全く、どうにもお前は名誉や栄誉といったものを嫌う節がある。少しは誇ってくれた方が、私達も気分が良いのだがな」
提督「お前達の提督が俺である事だけは、一生の誇りだと思ってる。それじゃ不満か?」
武蔵「……ふっ、やはりお前は世界一の大戯け者だな」
提督「お誉めに預かり光栄だよ、大和型二番艦武蔵殿」
武蔵「背筋が寒くなった、抱き締めて暖めてくれ」
提督「じゃあ服を着ろ」
武蔵「断る」
提督「――手でも、繋ぐか?」
武蔵「むっ、手か、良いだろう」
提督「ちょっと照れてるだろ、武蔵」
武蔵「黙れ、握り潰すぞ」
提督「洒落にならんからやめてくれ」
――――……一生、この手は繋いでいたいものだ。
――――安心しろ、放してなんかやらねぇよ。
むっさんとイチャラブは難しい…
――――提督執務室。
巻雲「司令官様、お茶をどうぞー」
提督「あぁ、貰う」
巻雲「巻雲、今日は一日お役に立ちますよー」
提督「別に役に立つ必要は無いんだぞ?」
巻雲「秘書艦日は司令官様の為に、一日尽くすと決めてるんです。……ご迷惑ですか?」
提督「いや、迷惑なんかじゃない。そういうことなら無理しない程度に頼む」
巻雲「はい!」
提督「――ところで巻雲、その袖、秘書艦業務には不便じゃないのか?」
巻雲「もう慣れちゃいました。ほら、このリンゴでこんなことも出来ちゃいますよー?」
提督「それ、練習したのか?」
巻雲「司令官様が退屈したらお見せしようかと思って、私のジャグリング、どうでしょー?」
提督「その袖でやってるとは思えないぐらい上手いぞ。他にも何か出来たりするのか?」
巻雲「そうですねぇ、例えばこのリンゴを上に投げて――てやぁ!」
提督(投げナイフ……)
提督「袖にナイフ仕込んでるの、危なくないか?」
巻雲「大丈夫ですよー? 他にも傷薬にドライバー、カロリーメイト、電池、トランプにー……」
提督「おい待て巻雲、その袖どうなってる」
巻雲「ふぇ? 明石さんに余った袖を有効活用したいって言ったら、便利に改造してくれました」
提督(なるほど、原理は木曾のマントと一緒か)
巻雲「夕雲姉さんが居なくても、巻雲はもう一人前です」
提督「あぁ、きっと夕雲だってそう思ってるよ」
巻雲「司令官様、巻雲はずっと、ずーっと、お役に立ちますからね?」
提督「そうか……巻雲、ちょっとこっち来てみろ」
巻雲「何でしょー?」
提督「ほらよっと。ありがとな、俺の為に色々と考えてくれて」
巻雲「はわわわわぅ!? 急に抱っこなんてされたらびっくりしちゃいますよー!」
提督「ははは、一人前でも抱っこしちまえば普通の可愛い女の子だな」
巻雲「もうっ、子供扱いしないで下さいよぉ! 司令官様のバカー!」
提督「がっ!? 何で、広辞苑、が……」
巻雲「あれれ? 司令官様? 司令官様ー!? ふぇーん、起きて下さいよー」
――――巻雲、ずっと、ずーっと、司令官様だけを見つめてます。絶対お役に立ちますから、居なくなったりしちゃ、嫌ですよ?
某格闘ラブコメ漫画の暗器使い並に色々と出てくる袖
秋雲の描いてる漫画のタイトルにも参考にした元ネタがあります(某ゲームの3で看護ロボがオカマから借りて読んでる漫画)
次のイタズラっ娘時雨も、なるべく早めに書き上げられるよう頑張ります
――――早朝、扶桑&山城の私室。
時雨「お邪魔するよ」
扶桑「すぅ……すぅ……」
山城「うぅん……姉様……」
時雨(畳に布団か、二人は和風がいいって言ってたね)
時雨「さてと、始めようかな」
――――扶桑&山城、起床時間。時雨、押し入れで待機中。
?『起きな! 地獄へ招待してやるぜ!』
扶桑「っ!? 何、敵襲?」
時雨(目覚ましボイスレコーダーには霧島に頼んだデスメタル)
山城「姉様、とにかく艤装――きゃあぁぁぁっ!」
扶桑「山城、どうしたの?」
山城「じゅ、襦袢が血だらけに……」
時雨(ただの血糊だけど案外バレないな。慌てる山城可愛いね)
扶桑「お、落ち着いて山城、怪我は?」
山城「怪我は……無いみたいです。ひょっとしてコレ――血糊?」
時雨(あっバレた)
扶桑「きっと誰かのイタズラね」
山城「全く、朝からこういうのは心臓に悪いからやめて欲しいわ」
扶桑「とにかく、着替えて洗濯しましょうか」
山城「犯人見付けたらタダじゃ置かないんだから……」
時雨(ちょっとやり過ぎたかな?)
扶桑「――あら? 髪飾りが……」
山城「これも犯人の仕業ね、三色団子型の髪飾りって何よ。私と扶桑姉様と時雨でお揃いになってるのに……頭に来た、見付けたら絶対に許さないわ」
時雨(……)
扶桑「とにかく、髪飾りだけは早く返してもらいたいわね」
時雨「――二人とも、ごめんね」
~続く~
扶桑「っ!? 時雨、なの……?」
山城「何で押し入れなんかに居たの? それに鍵は?」
時雨「マスターキーをちょっと拝借したんだ。それと、髪飾りを返すよ」
扶桑「このイタズラは、時雨がやったの?」
時雨「うん、ちょっと最近こういう事するのが楽しくてね。でも、少しやり過ぎちゃったかな」
山城「――はぁ、時雨なら別に良いわ」
扶桑「えぇ、そうね。流石に襦袢にイタズラは洗うのが大変だから、出来ればやめて欲しかったけど」
時雨「……怒らないのかい?」
扶桑「私達にとっては、貴女も妹みたいなものだもの」
山城「昔の事を気にして、気を遣われるよりはよっぽどマシよ。髪飾りも時雨なら大切に扱ってくれるって分かってるし」
時雨「――えへへ。何か、嬉しいな」
扶桑「この際だから、三人で朝食にしましょうか。山城、洗濯お願いね」
山城「はい、姉様。ほら時雨、自分がやったんだから貴女も手伝って」
時雨「わっ、血糊まみれで抱き着くのはやめてよ!?」
山城「自分がやったんでしょ、それぐらいは我慢しなさい」
時雨「コレ、お気に入りの服だったのに……」
――――また、ピクニックでも行きましょうか。
――――姉様が行きたいなら、私は行きます。
――――僕も行きたいな。今回はこの三人だけで、ね?
この三人のがどうしても書きたかった……イチャラブをご所望だったとしたら許してつかぁさい……
――――茶室横、水屋。
瑞鶴(干菓子と落雁よし、服紗よし、棗よし、茶筅よし、茶杓よし。翔鶴姉待たせてるし、早くしないと)
――――茶室。
翔鶴(ここはいつ来ても静かね……)
瑞鶴「翔鶴姉、準備出来たから始めるねー」
翔鶴「えぇ、いつでもいいわよ」
瑞鶴「今日は気楽にやるから、翔鶴姉も楽にしてて」
翔鶴「ふふ、それで練習になるの?」
瑞鶴「大丈夫、手順の確認みたいなものだから――よっ、はっ」
翔鶴「障子って、そんなかけ声出して開けるものだったかしら」
瑞鶴「ちょっと開けて、それから開けきるから、かけ声あった方がやりやすいんだ。本当は絶対にダメだけどね」
翔鶴「もう、瑞鶴ったら」
瑞鶴「じゃあ一礼してっと、まずはお菓子出すね」
翔鶴(一応、歩き方はちゃんと練習してるから様になってるみたいね)
瑞鶴「畳と畳の間を踏んじゃダメとか、面倒な決まりがあるよね、茶道って」
翔鶴「でも、提督におしとやかなところを見せたいから始めたんでしょ? なら、しっかりしないと」
瑞鶴「べ、別に提督さんの為なんかじゃ――」
翔鶴「間、踏んでるわよ?」
瑞鶴「あっ……れ、練習だからいいの!」
翔鶴「ちょっと集中しなさい」
瑞鶴「……はい」
瑞鶴「どうぞ、翔鶴姉。点てるのは上手に出来てるはずよ」
翔鶴「最初、ミキサーみたいにかき混ぜてたのは誰だったかしら?」
瑞鶴「ちゃんと今は八の字で飛び散らないようにしてるってば……」
翔鶴「じゃあ、お点前頂戴致します。――――うん、ダマもないし、粉とお湯の分量もちゃんとしてるわね」
瑞鶴「やった! 翔鶴姉に褒められた!」
翔鶴「後は、提督の前で緊張しないかどうかが心配だわ……」
瑞鶴「だ、大丈夫だよ、きっと……多分」
――――後日、提督を交えた時。
提督「――アッチィィィィ!?」
瑞鶴「うわっ、ごめん提督さん!」
翔鶴(準備早すぎて茶釜が熱かった上に、つまずいて頭からかけるなんて……はぁ)
――――翔鶴姉、どうしよう!?
――――とにかく、水屋でタオル濡らして来て。
――――分かったっ、とっとっとっとおっ!?
――――……あの茶碗、八十万はするのに……。
名取は深夜に書けそうなら書きます
――――提督執務室。
名取「あ、あの……」
提督「ん? どうした?」
名取「手編みのマフラーとか、手編みの手袋って、重いって思いますか?」
提督「あぁ、そういう話は良く聞くな。手編みとか手作りってのは、気持ちが込められてるって感覚が強い」
名取「提督さんも、そう感じちゃいますか?」
提督「そうだな……貰う側と渡す側の意識の問題だし、俺は少なくともお前達から受け取れば嬉しいぞ?」
名取「……ホントに?」
提督「嘘なんて吐いてどうする。媚薬や筋弛緩剤を混ぜたチョコとかは勘弁願いたいがな」
名取「じゃあ、あの、その……コレ!」
提督(コレは――手編みのマフラーか)
名取「きょ、去年も渡そうと思ったんですが、どうしても渡せなくて……」
提督「もう結構長い付き合いになるのに、遠慮し過ぎなんだよ、お前は」
名取「重い女って思われたら嫌われちゃうんじゃないかって、怖かったんです」
提督「それで、今日は何で言えたんだ?」
名取「朝、提督さんが寒そうにしてるのを見かけて、風邪引いたらどうしようって考えたら居ても立ってもいられなくて、それで……」
提督「――今、巻いてみていいか?」
名取「え? あの、室内だし暖房点いてますよ?」
提督「暖房は消す。寒くなるからマフラー巻く。何の問題も無い」
名取「それじゃ本末転倒になっちゃいます……」
提督「ついでにお前が抱き着いてくれたら暖かくなるんだが、嫌か?」
名取「えっ!? あ、あの、嫌とかじゃなくて――抱き着いても、いいの?」
提督「早くしてくれ。マフラーで顔と首は暖かいが、身体は寒い」
名取「……うん」
提督「――ん、暖かくなった。名取にこういう事してやるの、初めてだよな?」
名取「傍で見てられれば、満足、だったから」
提督「少しはワガママ言ったり、して欲しい事を言ったりしていいんだぞ?」
名取「じゃあ……今日は1日、このまま抱き締めてて下さい」
提督「分かった、明日までずっとこうしててやる」
――――夜戦も、が、頑張ります!
――――無理はしなくていいからな?
――――して欲しい事、言っていいってあなたが言ったんですよ……?
――――お、お手柔らかに頼む。
ノットヤンデレ、名取は甘えたいだけです
じゃあまた書き込まれたので書いていきますね
寝て起きたら消化します
好意が本気だと示す為に多少行き過ぎた行為をしただけなので、朝潮型四番艦さんも病んではいません、悪しからず
――――提督執務室。
提督「比叡」
比叡「どうしました?」
提督「自分で食える」
比叡「金剛姉様があーんしたって言ってました。私もしたいです!」
提督「こら、押さえ付けんな」
比叡「気合い! 入れて! 行きます!」
提督「こんな事に気合いはいらん!」
比叡「抵抗したって無駄ですよ。司令が私より力が弱いの知ってるんだから」
提督「分かった、分かったから!」
比叡「じゃあ、あーんして下さい」
提督「……あーん」
比叡「はい、たくさん召し上がって下さい」
提督「――ん、美味い」
比叡「今日は夏バテ対策に、夏野菜をたっぷり入れてみました」
提督「カレーだけは本当にバリエーション豊富だな。玉子焼きは焼けないのに」
比叡「れ、練習はしてるんですよっ!? ただ、何故か焦げたり変色したり叫んだりするだけで……」
提督「最後がなけりゃ笑って済ませてやれるんだがな……」
比叡「と、とにかく今はカレー食べて下さい! はい、あーん」
提督「全部それで食わせる気か、人参も乗っけろ」
比叡「人参ですね、どうぞ!」
提督「スプーンを勢いよく突き出すな! 喉に刺さる!――金剛をお前から奪った俺で、良かったのか?」
比叡「……喉、渇きませんか?」
提督「渇いては来たが今は――んぅ!?」
比叡「んむ、ちゅぱ……ふぅ……喉、潤いましたか?」
提督「お、おまっ、いきなり口移しで飲ませる奴があるか!」
比叡「――私は、司令もお姉様も大好きです。だから、今のこの関係にむしろほっとしてます。榛名や霧島だって、きっと同じ様に思ってますよ」
提督「……そうか」
比叡「それで、あの、司令?」
提督「どうした?」
比叡「もう少し水、いりませんか?」
提督「それ、欲しいのお前じゃないのか?」
比叡「……欲しいって言ったら、飲ませてくれます?」
提督「カレー食いたい」
比叡「ヒェー!? そこは飲ませてくれるところじゃないんですかっ!?」
提督「冷める、勿体無い、後で好きなだけ飲ませてやるから我慢しろ」
比叡「っ!? そういうことならどうぞ! さぁ、さぁっ!」
提督「だからスプーンを突き出すなって言ってんだろっ!」
――――司令には、私も、金剛お姉様も、たくさん愛してもらいます!
――――分かったからもう普通に食べさせてくれっ!
――――大阪。
赤城「提督! アレ、アレをお願いします!」
提督「買ってやるから落ち着け! 引っ張られたら転ける!」
赤城「一航戦赤城、目標を目の前にしてジッとしてなどいられません!」
提督「たこ焼きを前にカッコイイ事言ってんじゃねぇ!」
――――京都。
赤城「この和菓子、お持ち帰りで三十箱お願いします」
提督「お前の場合は持ち帰りじゃなくて食べ帰りだろ」
赤城「それは別にもう三十箱お願いします」
提督「来月のカード請求額見たくなくなってきた……」
赤城「提督、ここで食べる生菓子も八十個お願いします」
提督「店員さん、生菓子ここに並んでるの全部で九十個あります?――はい、食べますからお願いします」
赤城「提督も召し上がるんですか?」
提督「こうなりゃヤケだ。後で加賀には赤城が食ったと言えば、俺は怒られずに済む」
赤城「しっかり撮ってありますので、ご心配には及びません」
提督「お前は俺に何か恨みでもあんのか……」
――――奈良。
提督「鹿煎餅食うなよ?」
赤城「あまり美味しくなかったのでいりません」
提督(既に味見済みか……)
赤城「それよりもみかさが食べたいです」
提督「ジャンボみかさってのがあるから、それ食っとけ」
赤城「ジャンボみかさ……? アレが普通サイズで、小さいのは子供用とかでは無かったのですか?」
提督「そんなわけあるか!」
――――神戸。
赤城「提督、お願いがあります」
提督「肉まんの追加は流石にやめろ。せめてごま団子とかにしとけ」
赤城「はりま焼が食べたいです」
提督「既に気持ちは次に行く場所に移ってたか……」
赤城「神戸牛はその後でお願いしますね?」
提督「もう好きにしろ、とことん付き合ってやるから」
――――やはり一人より二人で食べる方が美味しいですね。
――――……そうか。
とりあえず名産を赤城さんに食べさせてはみたけど、これで良かったのかな……?
・二人で買い物へ
・曙を一日愛でてみる
深夜か明日の昼前ぐらいになります
鳳翔さん投下します、今回から名前無しにしてみました
――――陶器店。
「すいません、わざわざこんな買い物に付き合って頂いて」
「俺を含めて全員世話になりっぱなしだからな、買い物に付き合うぐらい苦じゃないさ。それに、たまには二人で出掛けるのもいいもんだ」
「……はい、そうですね」
「それで、今日のお目当ては何なんだ?」
「実は先日、龍驤がやけ酒を飲んでいる時に徳利を二本壊してしまいまして、その補充を」
(理由が容易に想像できるな……)
「数を揃えておかないと、来る子達も多いので、洗うのが追い付かないんです」
「すまんな、畑の世話から個人の頼み事まで引き受けてもらっている上に、居酒屋で愚痴聞きまでさせて」
「いいんですよ、全部好きでやっていることですから。お店を開くのは前からの夢でしたし、許可して頂いたのは本当に感謝しています」
「それだけ懐が深いと、“お艦”と呼ばれても仕方ないかもしれんな」
「うふふ、なら旦那様が居ないといけませんね」
「加賀や赤城が娘とか背筋が寒いぞ……」
「毎日が楽しいですよ、きっと」
「あぁ、それは間違いない」
「――あら、この徳利、良いですね」
「船と波の絵か……うん、いいんじゃないか?」
「じゃあこれに決めます」
「会計は俺が払うよ」
「でも、これは私のお店の物ですから……」
「ん? “二人の店”じゃなかったか?」
「あら、覚えていらしたんですね。滅多にお店に顔を出して下さらないから、一人で店はやってくれと思っているものだとばかり……」
「うぐっ……そ、その日その日の秘書艦を蔑ろにする訳にはいかなくてだな、その、何だ、すまん」
「ふふっ、冗談です。あなたがそんな薄情な方だなんて思っていませんよ」
「鳳翔にそういうことを言われると、罪悪感が津波の様に押し寄せてくるからやめてくれ」
「でも、店に来て頂きたいのは本当ですよ?」
「飲める奴が秘書艦の日は、誘って乗り気なら連れていく」
「よろしくお願いしますね」
「――とりあえず、この徳利で今日は二人で飲むか」
「……はい、飲み過ぎても大丈夫なように、帰ったら布団を用意しておきます」
「そりゃ安心だ」
――――お帰りなさい、あなた。
――――ただいま、鳳翔。
――――……ちょっと、気恥ずかしいですね。
――――……俺もだ。
――――提督執務室。
「おはよ、クソ提督」
「おはよう曙、早速だが私服に着替えて来い」
「な、何でよ。仕事はどうすんのよクソ提督」
「昨日漣がお前の為にって物凄い勢いで終わらせたから、ほぼ無い」
(アイツ、余計な事を……)
「ここに居てもすること無いし、ケーキでも食べに行くか」
「……うん」
――――街、大通り。
「――えへへっ」
「最近はよく笑うようになったよな」
「何さ、笑ったら悪い?」
「いや、笑ってる方が可愛いし、俺も嬉しい」
「……ふーん」
「そういえば、その服って俺が買ったヤツだな。後、帽子と靴――っていうか全部そうか」
「た、たまたま合わせてたらこうなったのよ。ジロジロ見んなこのクソ提督!」
「手を繋ぐのをやめて逃げれば、俺に見られずに済むぞ?」
「うっ……うーーーー!」
「やめろ、叩くな、悪かった、痛い、痛いって」
「……手を放して欲しいなら、そう言えばいいでしょ」
「涙目で睨むなよ。ほら、俺が悪かったから機嫌直せ」
「あっ……あ、頭なんか撫でられたって、嬉しくなんか無いわよ」
「じゃあ、やめた方がいいか?」
「やめていいなんて一言も言ってないでしょ、このクソ提督!」
「抱き締めてやりたいところだが、外だから勘弁な」
「……帰ったら、いっぱいだからね?」
「嫌がっても離さないから覚悟しとけ」
「――約束、だからね」
(この顔を見れるのは俺だけ、か)
「……やっぱり、お前は笑ってる方がいいな」
「あっ、うっ、いきなり真顔でそういう事言わないでよ……」
「帽子で隠すな、見えん」
「こっち見んなこっち見んなこっち見んなー!」
「恥ずかしがるのも可愛いな」
「だから可愛いって言うのやめてってば!」
「キュートならいいのか? プリティーとかでもいいぞ」
「流石にからかってるの丸分かりよっ!」
「残念だったな、全部本音だ」
「ちょっと黙れクソ提督!」
「断る」
――――……可愛いって言ってくれて、ありがと。
――――うん、やっぱりここで抱き締めるか。
――――だ・か・ら、恥ずかしがってるの分かっててやってるでしょ、このクソ提督!
――――(手をギュッと握り締めながら言われても、全然迫力無いな)
もうちょっと糖分増し増しにしたかったが……今の私にはコレが限界だった……
寝ます、リクエストがあればゆっくりと拾っていきますので、書き込んでおいて下さい
ネタストックは
・赤城さん、一航戦モード
・荒潮、司令官に全力アピール
・文月、誘拐
などなど
――――提督執務室。
(司令官に膝枕司令官に膝枕司令官に膝枕!)
「吹雪、顔がにやけすぎて何か凄いことになってるぞ」
「はっ!? す、すいません司令官。こうして司令官に膝枕出来るのが凄く嬉しくて……」
「重くないか?」
「重くなんかないです。むしろ、一生このままでもいいぐらいです」
「それは俺が困る」
「で、ですよね、加賀さんじゃなくて私なんかの膝枕じゃ……」
「抱き締めたり出来ないし、俺が吹雪に膝枕も出来ないんだぞ?」
「そんなの嫌です! 今すぐ位置の交代を要求します! もしくはお姫様抱っこも可です!」
「“今日は私が1日膝枕しますからゆっくりしてて下さいね”、とか言ってなかったか?」
「あうっ……ダメ、ですか?」
「そんな捨てられた子犬みたいな目すんな。――ほれ、交代だ」
「よいしょっと……コレが司令官の膝枕……えへへ、えへへへへ」
「また顔が緩んでるぞ吹雪ー、後は撫ででもしたら満足か?」
「はい、撫でて下さい司令官」
「――髪、サラサラで気持ち良いな」
(このまま寝ちゃいそうなぐらい気持ち良くて幸せ……)
「寝ても良いが、イタズラするぞー?」
「い、イタズラ!?」
「よし、目が覚めたな。朝から何も食べてないのに膝で寝られたら堪らん」
「イタズラの内容について、詳しく教えて下さい司令官。内容によっては今から寝ます」
「寝てる間にイタズラするって言われたら、ちょっとは嫌そうにしろよ……。寝たらな」
「寝たら?」
「額にマジックでフユキって書いてやる」
「せめて書くなら吹雪って書いてくださいよ! 司令官のイジワル!」
「寝てる間にキス、して欲しいのか?」
「……出来れば、起きてる間がいいです」
「じゃあ、今するか」
「えっ、あの、急には――むぅ!?」
「んっ……ちゅ……」
「んー! んーー!……んぅ」
「――ふぅ。コレで、完全に目が覚めたか?」
「しれぃかぁん、もっとぉ……」
(あっヤバ、やり過ぎた……)
「キスはまた夜に、今はダメだ」
「むー……じゃあぎゅうってして下さい」
「こうか?」
「――ふへへ、司令官、大好きです」
「……俺もだよ、吹雪」
寝れなかったので吹雪、可愛いと思ってもらえたら嬉しいです
今度こそ、寝ます……
>>1乙です
リク通るなら、陸奥と提督との夏の縁側での会話お願いします
ん?……ん!?
とりあえず、題だけ
・映画とパフェとジュース
・九九艦爆乳 in プール
・こけし見学
・提督指定の〇〇
・大井から逃走中
・九九艦爆の足?いいえづほの足です
・日に日に巨大さを増していくだし巻き玉子
・全身マッサージ
・呼び方の統一を要求する
・寝て起きたら拘束されてた(夢)
・洋服でデート
・賭けに勝った
……ゴフッ(大破)
書けたら順次投下していくので、気長に待ってもらえると嬉しいデース……
>>189
上のに
・今度こそ浴衣で
を追加します
――――映画館。
「何が見たいんだ?」
「えっと、アレ、アレが見たい!」
(……どう考えても純愛ラブストーリーだよな、アレ)
「一人前のレディーならこういう映画が相応しいわよね」
「一人前のレディーなら、ここは男に見る映画を任せるのもありだと思わないか?」
「し、司令官がそう言うならそれでもいいわ」
「そうか、じゃあ夕張から勧められたあの映画を今日は見るとしよう」
(あっ、何時も夕張さんが見せてくれるアニメの映画版……)
「子供向けのアニメ映画なんて興味ないけど、司令官が見たいなら一人前のレディーとして付き合うわ」
「ありがとうございますお嬢さん。さて、じゃあチケット買いに行くか」
――――チケット売り場。
「この映画の券二枚」
「大人一枚、小学生一枚でよろしいですか?」
「いや、大人二枚で」
「――かしこまりました。では大人二枚で3600円になります」
「はい、どうも」
「司令官、あの、良かったの……?」
「ん? 何がだ?」
「料金、高くなっちゃったわ」
「一人前のレディーなんだろ? なら、大人料金じゃないとな」
「――うん、ありがと、司令官」
――――シアター内。
「席は……ここと、ここだな」
「先に司令官が座っていいわ」
「こういう時はレディーを先に座らせるものだろ?」
「暁は司令官が座ったら座るからいいの」「なら、先に座るぞ」
「――じゃあ、暁も座るわね」
「っと……なぁ、暁」
「何?」
「座り心地はどうだ?」
「一人前のレディーに相応しい、最高の座り心地だわ」
「そっか、ジュース溢さないように気を付けろよ?」
「もう子供じゃないんだから大丈夫よ!」
(膝に乗りながらだと説得力皆無だな。まぁ、溢しても拭けばいいか)
「司令官」
「何だ?」
「見てる間、ずっと抱き締めててもいいんだからね?」
「そりゃ嬉しいな、有り難くそうさせてもらう」
「――ふぅ……じゃ、じゃあ手が塞がってる司令官には、暁がポップコーンを食べさせてあげるわね。はい、あーん」
「ん、サンキュ」
「一人前のレディーならこれぐらい当然よ」
「あぁ、そうだな。そろそろ始まるみたいだから前向いといた方がいいぞ」
「わ、分かってるわよそのくらい」
(今一瞬、映画と俺の顔と悩んだな。さて、この周囲からの視線を一時間半堪えるとするか……)
――――カフェ。
「映画、面白かったか?」
「ま、まぁまぁだったわ」
「そうか」
(身を乗り出したり、腕を振り上げたりしてたのは触れないでおいてやろう)
「お待たせしました。カップル限定……あの、お連れ様は?」
「この膝の上の子ですが、何か問題が?」
「あっ、いえ、あの、失礼しました。こちらがカップル限定メニューのパフェとトロピカルジュースのセットでございます」
「どうもー、じゃあ食べるか」
「あーん」
「いきなり口開けてスタンバイかよ……ほら、アイス」
「はむ――んー、甘くて美味しいわ。次は司令官に食べさせてあげるわね?」
「はいはい、あーん」
(鈴谷さんが言ってたみたいに、このポッキーを口にくわえて……)
「んー」
「っ!? アホ! 流石に出来るか!」
「い、一人前のレディーならこのぐらい当然って聞いたわ!」
「……このカップル用のジュースを二人で飲む。それで勘弁してくれ」
「むぅ……ちょっと不満だけど、それで許してあげてもいいわ」
(地味にコレも周囲の視線が痛いがな)
「――暁がもっと大きくなったら、その時はしてくれる?」
「……あぁ」
――――じゃあ今はコレで我慢してあげるわね、ちゅっ。
――――(頬ならまだ――ってやっぱり視線が痛い!)
――――プール。
「水、冷たくて気持ち良い……」
「海とはまた違った良さがあるよな」
「ここなら溺れても、すぐに引き揚げてもらえます」
「縁起でもない事言うのはやめろ。それに、艦娘が足つって溺れたとか笑い話にもならん」
「ふふっ、それもそうね。――あっ提督、一緒にアレ滑りましょうよ」
「ウォータースライダーか、いいぞ」
「じゃあ早く行きましょ」
「あぁ」
――――ウォータースライダー。
「しっかり掴んでてね?」
「分かってるよ」
「二航戦蒼龍、行きます!」
――――ウォータースライダー、着水地点。
「きゃぁぁぁぁっ!」
「うわぷっ!?」
(抜け出すタイミングミスった! 蒼龍、早く水上にっ!)
(――水中で人からは見えないし、抱き着いてみよっかな)
(息が! 息がっ!?)
(あっ抱き締め返してくれた。嬉しいなぁ……)
(死ぬ! 死ぬーっ!)
(アレ? 何か顔色が……溺れかけてる!?)
「――ぶはっ!? はぁ、はぁ、あー死ぬかと思った」
「ごめんなさい! 苦しがってるんだと思わなくって……」
「まぁ、あんなに嬉しそうにしてくれると嬉し――蒼龍!」
「きゃっ!? あの、提督? 恥ずかしいので抱き締めるならまた水中とか、帰ってからベッドでたっぷり……」
「無いぞ」
「へ?」
「水着の上が、無い」
「――あっ、あぁっ……きゃあぁぁぁぁっ!?」
「落ち着け、動くな、見えるから」
「やだ! やだやだ! 見られたくないー!」
「だからって押し付けるなっ! 探すのに集中出来ん!」
「提督以外に見られるのやーだー!」
「子供じゃないんだから落ち着け、頼む、俺も男だから色々とキツい」
「……興奮、する?」
「する。するから押し付けるのは――何でさっきより力強めてるんだよ!?」
「弾力なら飛龍にも負けません」
「そんなこと言ってる場合か!……あっアレだ、拾うからそのままこっち来い」
――――……当たってる。
――――お互い様だからスルーしろ。
とりあえず二つ、後はまた夜中に
・暁、映画とパフェとジュース→済
・蒼龍、九九艦爆乳 in プール→済
・妙高、こけし見学
・58、提督指定の〇〇
・木曾、大井から逃走中
・瑞鳳、九九艦爆の足?いいえづほの足です
・とねちく、日に日に巨大さを増していくだし巻き玉子
・愛宕、全身マッサージ
・第六駆逐隊、呼び方の統一を要求する
・夕張&明石、寝て起きたら拘束されてた(夢)
・山城、洋服でデート
・利根、賭けに勝った
・陸奥、今度こそ浴衣で
こういうことかな?
本文に入れるのは改行カッツカツで何時も四苦八苦してるんで勘弁してくだちぃ……
それとも投下する時に名前とタイトルだけ先に投下した方がいいのかな……?
妙高・こけし見学、投下します
――――こけし屋。
(付き合うと言った手前、一緒に楽しむべきなんだろうが……こけし見て、俺はどうすればいいんだ?)
「こけし、お嫌いですか?」
「好きか嫌いかと言われたら、好きだ。ただ、眺める趣味は正直言ってない」
「そうですか。私は初風になんとなく似てると言われてから、こけしを見ていると落ち着くようになりました」
「似てるから、落ち着くのか?」
「はい、自分がたくさんいるような気がして」
「普通は嫌だと思うんだがな、自分がこんなにたくさん居るっていうのは」
「これだけ居れば、あの子達をずっと見守っていられます」
「もう戦うこともないし、そんなに心配する必要も無いんじゃないか?」
「――長女だからなのでしょうか、何時まで経ってもあの子達から目を離せないんです。でも、私は一人しか居ませんから」
「それで、自分の代わりにこのこけしをって訳か」
「えぇ」
(足柄は渡されたら嫌がりそうだ……)
「提督も一つ、お持ちになって下さいませんか?」
「こけしって携帯するものじゃないと思うんだが……まぁ、鞄にでも入れておく」
「では、五つ購入してきますね」
「あぁ」
(妙高だと思えば……うん、こうやって眺めてるのも悪くないかもしれんな)
――――翌日。鎮守府、妙高型私室。
「はい、初風」
「ありがとうございます、妙高姉さん」
「那智も、はい」
「い、良いこけし、だな」
「足柄もちゃんと持っててね?」
(本当に妙高姉さんに見られてるみたい……ちょっと怖いわ)
「最後は羽黒ね、はい」
「あの、ちゃんと大事にするね?」
「コレで、少し安心することが出来そうです」
――――同日深夜、妙高型私室。
「すぅ……すぅ……」
「こけし型深海棲艦だと……左舷、撃て……」
「うぅ……妙高姉さんが……妙高姉さんがいっぱい……お説教はやめてぇ……」
「くー……すー……」
58・提督指定の〇〇、投下します
――――提督執務室。
「てーとく! 今日はゴーヤが秘書艦でち!」
「あぁ、よろし――って何て格好してんだよお前!?」
「飛鷹さんからコレが“提督指定の下着”って聞いたでち。だから着てみたでち! どう、ゴーヤに似合う?」
(飛鷹め、しっかり夜に仕返ししていっただろうが……)
「そんな格好で仕事出来んから、何時もの水着か普通の服を着てこい」
「えー? 感想ぐらい言って欲しいよぉ……」
「ほぼ紐で大半が透けてる下着に感想なんか言えるか!」
「てーとくはノリが悪いでち……こうなったら強行突入でち!」
「おいコラ、何やって――バカ、そんなとこに頭を突っ込む奴があるか! 服が伸びるからやめろ!」
「んしょ、んしょ……ぷはぁ、服の中からこんにちはー!」
「こんにちはー、じゃねぇ! お前自分がどういう格好か分かっててやってんのか!?」
「てーとくがゴーヤに夢中になれるように密着しただけだよ? 格好とか気にしちゃダメでち」
「夢中以前に身動きが取れん」
「このままゴーヤと1日二人羽織りで過ごしてくだちぃ」
「コレじゃ二人羽織りにすらなってねぇよ……」
「二人羽織りが嫌なら、ゴーヤをこのまま食べてもいいよ?」
「チャンプルーにしてやろうか?」
「痛いのは嫌でち、優しくしてくだちぃ」
「とにかく服から出ろ、俺の服着せてやるから」
「てーとくの服!? 着たいでち! そのまま貰うでち!」
(やっと出てきたか……はぁ、もうこのインナーはダメだな)
「早く着せて欲しいでち。服はどこでちか?」
「コラ、下着姿でうろちょろするな! 窓際に行ったら誰かに見られるだろ!」
「てーとくのおっきな服、早くくだちぃ」
「分かった分かった。ほら、コレでも着とけ」
「分かった分かった。ほら、コレでも着とけ」
(やった! てーとくのシャツ、ゲットでち!)
「全く、朝からドッと疲れた……じゃあ仕事するぞ」
「はいでち!」
「――で、当然の様に抱き着いてるのは何でだ?」
「てーとくのやる気が出るようにしてるんだよ?」
「手伝えよ」
「ゴーヤを食べてくれたら手伝ってもいいでち」
「でち型でもなのね型でもいいからチャンプルー食わせろ」
「てーとくはつれないでち……ちょっと待っててくだちぃ、すぐ作ってくるから」
「あぁ……って待て、その格好で外に出んな!」
(ついでに皆に見せびらかしてくるでち!)
小休止、???を投下します
――――イムヤ、遠洋を旅行中。
(今日は何を撮ろうかしら……。あっあんなところに鯨が居る、ちょっと近付いてみよ)
「近くで見ると鯨ってやっぱり大きいわね……ん?」
「鯨さん、運んでくれてありがとうございます」
(上に艦娘が乗ってる!?)
――――鎮守府。
「何かどっかの海で目が覚めたらしいわ。でも、どこ行けばいいか分からなくってあちこちをさ迷ってたみたい。そしたら急に通りがかった鯨が背中に乗っけてくれて、私が居た場所まで運んでくれたらしいわ」
「すまん、意味が分からん」
「あっ、あの、お邪魔でしたら出ていきます」
「いや、居るのは構わない。歓迎もする。ただ、鯨と仲の良い艦娘とか聞いたことが無くてな……」
「わたしもびっくりしました。名前のお陰でしょうか?」
「まぁ、とにかくゆっくりしていってくれ。色々と分からない事があれば、そこのイムヤに聞くといい。頼んだぞ、イムヤ」
「えぇ、分かったわ」
「はい、よろしくお願いします」
――――新艦娘が選択可能になりました。
木曾・大井から逃走中、投下します
――――提督執務室。
「邪魔するぞ!」
「どうした木曾、そんなに慌てて。別に秘書艦日だからって急ぐ必要は無いんだぞ?」
「いいからお前も来い、逃げるぞ!」
「どういうことだ? それに、いつものマントと服は――」
「ちょっと跳ぶから、しっかり掴まってろよ?」
「待て、ここ三階だし男が女にお姫様抱っこされるってどおっ!?」
――――鎮守府、中庭。
「――よし、流石に姉貴もここまでは追って来ないだろ。悪かったな、急に手荒なマネして」
「か、構わんが降ろしてくれ。幾らなんでもこの状態は示しがつかん」
「情けない声出してたクセに、今更何言ってんだよ」
「いきなり抱き抱えられて三階から跳ばれたら、誰でもびっくりするぞ」
「こっちだって、こんなヒラヒラした服で跳びたくなんかなかったさ」
「そういえば、たまに着てるのを見かけてたから特に気にしてなかったんだが、何でゴスロリファッションなんだ?」
「大井姉に最近着せられてるんだよ。全く、こういうことさせるのは北上姉だけにしてくれると有り難いんだが……」
「可愛いし、たまにはいいんじゃないか?」
「――そうか、お前はこういうのも好きなんだな」
「あぁ、結構良いと思う。普段の凛々しさも残しつつ女の子らしいって感じが出てるし、今の格好なら女だけじゃなくて、男からも声かけられるはずだ」
「別に有象無象はどうでもいい」
「有象無象とは酷い言い草だな。男より女の方が良いとでも言う気か?」
「そんなわけ無いだろ。俺はお前に女として見てもらえてさえいれば、それでいいってだけだ」
「こんな時までカッコイイってのは、ちょっと損かもな」
「何と言われようが俺は俺だ。そうだろ?」
「あぁ、無理に変わる必要は無いって言った責任は取るさ――ん?」
――――見付けた! 待ちなさい木曾、撮影がまだ終わって無いわ!
「やれやれ、しつこいな姉貴は……」
「――さっき格好悪いところ見せたし、次は俺の番だな?」
「どういう意味だ?」
「こういうことだよっ!」
(俺を抱き抱えて走る気か……たまにはありだな、こういうのも)
――――しっかり俺を掴んで離すなよ?
――――言われなくてもそのつもりだ。
――――ついでに提督も撮ってあげるから止まりなさいっ!
大井っちはかなりお気に入りの艦娘です
ずほ今から書いてきます
>>219
違う、づほだ
づほ・九九艦爆の脚?いいえづほの足です、投下します
提督は足フェチ(※まな板の逆襲より)
――――瑞鳳、私室。
「――ね? この脚、可愛いでしょ?」
「アア、ソウダナ」
(何百回目だ、このやり取り……)
「ねぇ提督、また九九艦爆増やしちゃダメ?」
「これ以上は流石にダメだ。祥鳳と相部屋のはずのところを、九九艦爆置くために一人部屋にしてやってるんだからな? 増やしたりなんかしたら、加賀にまた説教されるぞ」
「九九艦爆の脚、可愛いのになぁ……加賀さんも空母なんだから理解してくれてもいいのに」
「大事にしてはいても、眺めたりは普通しないだろ」
「可愛い物って、ずっと眺めていたくなるじゃない」
「まぁ、それは否定しない」
「――提督? 格納庫まさぐろうとしてない?」
「いや、そんなことはないぞ?」
「そっか、それならひゃわっ!?」
「足、いいよな」
「んぅっ、別に格納庫以外ならいつでも触っていいって訳じゃ、ないんだからね?」
「仕事してるんじゃないし、何かの邪魔してるわけでも無いから許せ。可愛いモノは眺めていたくなるんだろ?」
「私の足、好き?」
「ほっそりしててスベスベで好きだぞ」
「……また、一緒に温泉行かない?」
「温泉か、いいな。流石にこの何でもありそうな鎮守府でも温泉は湧いて無いしな」
「じゃあ次の秘書艦日、しっかり予約頼むわね」
「よし、混浴探すか」
「混浴は嫌、家族風呂にして。それと提督、いつまで触ってるつもり?」
「足好きだし、出来ればずっと」
「別にいいけど……どうかした?」
「無限ループする話を三時間聞かされてみろ、結構疲れる」
「でも、ちゃんと聞いてくれるじゃない」
「楽しそうに話してるのに、水を差す気にはならん」
「提督のそういうところが、私好きだよ」
「度が過ぎてるとかは抜きにして、ずっと一つのモノを大事に出来るお前のことが、俺も好きだ」
「……うん。好きに触ってて、いいよ」
「じゃあ遠慮なく足を」
「足だけ?……胸も、それなりに大きくなってきたと思わない?」
「それは誘ってると捉えるぞ」
「提督が足をずっと触るから、その……そういう気分になっちゃったのよ!――責任、取ってね?」
――――じゃあまずは話を聞かされた三時間分、瑞鳳の足を眺めるか。
――――ごめん、それは嫌。
とねちく・日に日に巨大さを増していくだし巻き玉子、投下します
今更ですが全話関連して繋がってますので、何の話だコレ?ってなってる方が居たら、すいません
――――利根型私室。
「姉さん、だし巻き玉子焼けましたよ」
「うむ、やはりコレが無くてはな」
「たくさん食べて下さいね」
「――うむ、今日も美味いぞ。しかし、毎食焼くのは大変ではないか?」
「私は姉さんが喜んでくれるなら、このぐらい苦でも何でもありません」
「そうか、吾輩は本当に良き妹を持ったな」
「利根姉さんの妹で、私も幸せですよ」
――――翌日。
「はい、出来ました」
「うむ」
――――翌々日。
「焼けましたよ」
「ちと昨日より大きいな」
――――三日後。
「頑張ってみました」
(更に大きくなっておる……)
――――四日後。
「はみ出したので、器を変えました」
「う、うむ……」
――――五日後。
「専用の焼き機を買ってきました」
「そ、そうか、大きくて便利そうじゃな」
――――六日後の朝。
「――大鳳、祥鳳、一緒に朝食をとらぬか?」
「どうかしたの? 急に朝食へ誘うなんて」
「私は構いませんが……利根さん、顔色が少し悪いですよ?」
「来れば分かる。――お主達、だし巻き玉子が好きだったな?」
――――利根型私室、朝食中。
「はい、出来ましたよ利根姉さん。どうぞ、お二人も召し上がって下さい」
「うむ」
「……えぇ、頂くわ」
(だし巻き玉子って、こういう形で食卓に並ぶものだったかしら……?)
「……頂きます」
(大皿に塊が五つ、食べきれるんでしょうか……)
「量が足りなければまた焼いてきますので、仰って下さいね」
「じゅ、十分だからもう大丈夫だぞ、筑摩」
「えぇ、足りないということは恐らく無いわ」
「とりあえず、冷めないうちに食べましょう」
「――あっ、美味しいわね。間宮さんの作るだし巻き玉子の味だわ」
「間宮さんに作り方を教わったんです。姉さんの好物ですから」
「鳳翔さんのとはまた少し違っていて、とても美味しいです」
「喜んで頂けて何よりです。姉さんも、しっかり食べてくださいね?」
「分かっておる。残したりせぬから安心するのじゃ」
「ふふっ。毎日作っていますから、お二人もまた食べに来てください。たまにはこうして姉さん以外にも食べて貰えたら、少し嬉しいです」
(利根が呼んだ理由はコレね)
(幾ら好きな食べ物でも、この量を毎日は……)
「のぅ筑摩よ、無理はしなくていいんじゃぞ? 毎日同じ物では、お前も飽きてくるだろ」
「そうね、バランスも大事だと思うわ」
「偏りすぎると身体にも悪いですし……」
「――それなら、他にも姉さんの好物を間宮さんに教わってきますね? 姉さん、何がいいですか?」
「そうじゃな……筑前煮と粕汁、柳川が我輩は食べたいぞ」
「はい、では後で間宮さんのところに行ってきます」
(コレで利根も安心ね)
(料理自体はお上手ですし、利根さんにリクエストされて嬉しそうですから、もう心配無いですね)
――――更に1週間後。
(く……苦しい……)
「姉さんの好物、また教えて下さいね? 間宮さんに教わってきますから」
「その前に筑摩、出来れば一品一品の量を減らしてくれると有り難いのだが……」
「あら、作りすぎていましたか? でしたら、次から少し量を控えるようにしますね」
(さ、最初から素直に言っておけば良かったのか……)
「姉さんが喜んでくれたら、私にはそれが一番の幸せです」
「――うむ、吾輩も筑摩が笑顔だと嬉しいぞ」
――――今日は久しぶりに、二人で何処かへ出掛けませんか?
――――そうじゃな、何処へ行くとするか……。
愛宕・全身マッサージ、投下します
――――提督私室。
「んっ、ふぁ、あんっ、そこ、いい……」
「ただのマッサージで艶かしい声出すな」
「だって、んぅ、出ちゃうんだもの、あっ」
「我慢しろ、変な気分になるだろ」
「うふふ、指が滑って色々なところを事故で触っても、私は気にしないわよ」
「激痛が走るツボをイクに教えて貰ったから、そこを念入りにしてやろうか?」
「私が痛みで苦悶の表情を浮かべるのが見たいのかしらー?」
「そんな趣味は断じて無い」
「提督、手が止まっちゃってるわ」
「次は腰でいいのか?」
「えぇ、お尻をお願いねー」
「腰な、腰」
「んっ、はんっ、ちょっと、痛いけど、気持ち、良い」
(絶対にわざとだな)
「ツボがあるから、尻触るぞ」
「揉んでもい――痛っ!? ちょっと提督、やり過ぎじゃないかしらっ!?」
「足が疲れてるんだな、よっ!」
「あんっ! そこ、あまり強くされると、痛っ……」
(そういえばマッサージってやる順番あったよな……まぁいっか)
「次、足首から行くぞー」
「優しく、して……?」
(俺の理性に優しくしてくれ)
「昨日何してたんだよ、足パンパンだぞ」
「ちょっと四人でハイキングに行ってたの」
「摩耶と鳥海をダイエットに付き合わせるのも程々にしてやれ」
「二人とも良い子だし、怒ったりしないから大丈夫よ。置いていったら逆に怒られちゃうわ」
「それもそうか。太もも揉むぞ」
「んっ、ちゃんと、いつものボディーライン、あんっ、でしょ?」
「ずっと見てる訳じゃないからそんなものは分からん。ただ、俺の為にそういう努力をしてくれるのは嬉しく思ってる」
「うふふ、マッサージが終わったらいっぱいご奉仕してあげるわね?」
「多分マッサージ終わったら、全身ダルくてそれどころじゃないぞ」
「なら、提督がもっとご奉仕して下さる?」
「さっきまで人の理性にガンガン攻撃してきてたお礼をしていいってことだな」
「あらやだ、怖いわー」
「全然反省してないだろお前……」
――――提督、今日は私のボディーラインをしっかり覚えて下さいね?
――――そんな余裕があったらな。
リクエスト後五つはちょっと明日になりそうです、時間かかってすいません……
こんなにリクエストいただいてるのは嬉しいことなので、なるべく早めに書き上げます
第六駆逐隊・呼び方の統一を要求する、投下します
――――第六駆逐隊、私室。
「響、クッキー焼いたので一緒に食べるのです」
「うん、食べようか」
「ベルーこの前頼まれてたCD買ってきてあげたわよ」
「スパシーバ」
「ベリュ、ちょっと荷物を部屋に入れるの手伝ってくれない?」
「了解、少し待ってくれ」
「美味しいですか?」
「うん、上に乗ってるジャムが甘酸っぱい。コレはいいな」
「ベル、ジュースを入れてあげるわ」
「スパシーバ」
「ベリューまだー?」
「手を拭いたら行く」
「電も手伝うのです」
「はい、ジュース。暁、私も手伝うわね」
「い、一人前のレディーなら、部屋に観葉植物を一つは置くべき、よね……」
「お、重いのです……」
「ベル、そこ持って」
「了解、信頼の名は伊達じゃない」
――――風呂。
「皆、お願いがあるんだ」
「はい、シャンプーなのです」
「ありがとう電――ってそうじゃない」
「ベル、頭洗ってあげるわ」
「スパシーバ、シャンプーハットを着けてくれ」
「あっ雷ズルいわ。暁が一番お姉ちゃんなんだから、ベリュの身体は私が洗うわね」
「皆、気持ちは嬉しいんだが、まず一つお願いを聞いて欲しい」
「そんなに改まってどうしたのですか?」
「何か悩み事? ベルはいつも頑張ってるんだから、もーっと私に頼っていいのよ?」
「一人前のレディーとして、妹の悩みを聞くのは当然の義務よね」
「やっぱり呼び方を統一してくれないかな? 響でもベルでも、この際ベリュでもいいよ」
「電は響が一番しっくりくるのです」
「私はベルで慣れちゃったわ」
「私はちゃんとベリュニュイって呼べるけど、長いから短くしてるだけなんだから」
「すまない、響かベルにしてくれ」
「しょうがないわね、私も響って呼ぶわ」
「妹の意見に合わせてあげるのも、長女として当然のことよね」
「電はこれまで通りなのです」
「スパシーバ、これで少し気が楽になりそうだ。さぁ、身体を洗って早く出ようか」
「暁の出番ね。響、背中向けて」
「了解、あまり強く擦らないように頼む」
「じゃあ電は私が洗ってあげるわ」
「お願いするのです」
――――響、少し胸が大きくなってない?
――――そうかな? 自分では良く分からない。
――――電も私より大きくなってるわね。
――――はにゃあ!? つ、掴まないで欲しいのです……。
夕張&明石・寝て起きたら拘束されてた(夢)、投下します
何だか書いててコレでいいのかとなったけど、勢いでいきます
――――工廠、地下。
「――ん? ここは……?」
「提督、おはようございます」
「ご気分はどうですか?」
「おはよう二人とも。身体が拘束されてるってこと以外は至って良好だ」
「それは何よりです。体調が悪いと支障が出るかもしれませんしね」
「でも、その時は私が修理しますから大丈夫です」
「全く話が見えてこないが、俺がピンチなのは分かった。誰かー! 助けてくれー!」
「無駄ですよ提督、ここは完全防音にしましたから」
「メカ夕張も外を見張ってくれてますから、誰も来ません」
「お前等目が怖い」
「じゃあ提督の改造、さっさと始めちゃいましょう」
「そうですね、あまり長く提督が不在だと不審がられちゃいますし」
「改造? 今改造って言ったか?」
「メカ妖精さん、改造パターンA」
「痛かったら手を上げて下さいね? 手を握っててあげますから」
「見た目は妖精さんなのに、物凄く禍々しく見えるぞコイツ等!」
「気のせいです」
「はーい、麻酔打ちますねー」
「待て、やめろ、起きたら俺はどうなってるんだ!?」
「カッコ良くなってます」
「ネオ提督になってます」
「拒否する! 命令だ! はーなーせー!」
「はい、ちょっとチクッとしますよ」
「絶対お前等……後で……せっ、きょう……」
――――夜、提督私室。
「――はっ!?」
(アレは夢か? いや、感触はリアルだった……そうだ、鏡!)
「――何ともなって、ない、か……はぁ」
(あんな悪夢見るって、夕張と明石を心の底であんな奴等だと思ってんのかな……)
「とりあえず、水でも飲みに行くか」
――――ギュイィィィィン!
「・・・・・・は?」
『提督、目が覚めたみたいですね』
『今から改造内容について説明するので、動かないで下さい』
「おい、アレは夢じゃなかったのかよ。っていうか何で頭に声が響いてんだ」
『通信機を埋め込みました』
『安全ですから、大丈夫です。壊れたら私が直しますし』
「良く分かった。今すぐ元に戻せ」
『説明始めちゃいますね。足の裏はローラーになってますので、行きたい方向に重心を傾ければ自然に走れます』
『瞬間加速が凄いので、ぶつからないように注意して下さいね』
(話聞いてねぇし……)
『後、腕を握って猫手に――』
(こうか)
『しないで下さい。内蔵した機銃が発射されます』
「……もう遅い、壁が無くなった」
『威力実験は良好、と』
『壁はまた直しときます』
「俺の身体も元通りに治せ」
『続けますね? 目は意識すると八倍、十六倍、三十二倍まで拡大出来るように――』
(さらっと流しやがった……)
『……あっ』
「今度は何だ」
『あはは、通信ボタンと間違えて、起動スイッチ押しちゃったみたい……』
「何の起動スイッチだ? 自爆とか言うなよ?」
『百聞は一見に如かずです。窓の外、見てみて下さい』
「窓? 鎮守府全体に何か仕掛けて――」
――――シィレェエェェェ……。
「……雪、風?」
『対巨大決戦兵器、ユキカゼです。夢だったんですよ、こういうの作るの』
「何て物を作ってんだよ! ゴジラか何かか!」
――――シレエェェェェ?
(こっち向いた……?)
『その子、提督を認識すると飛び付くようにプログラムしましたから、注意して下さいね?』
「注意ってレベルの話じゃないし、今見付かったんだが」
『頑張って相手してあげて下さい、寂しがり屋ですから』
――――シレェェェェッ!
「あんなんに飛び付かれたら死ぬわ!」
『仕方ありません。首の後ろに突起があるので押して下さい』
「コレか。よし、押したぞ」
『自爆スイッチです。バラバラになっちゃいますけど、ちゃんと直しますから』
「事態が好転しないどころか最悪になったじゃねぇか!」
『3、2、1』
「ちょっと待――」
――――朝、提督私室。
「自爆は嫌だっ!?――アレ? 生きてる? それに何か上に……」
「しれぇ……大、好き……すぅ……」
(そうか、昨日雪風を抱き締めながら寝たんだっけか)
「はぁ、酷い夢だった……」
――――昼、提督執務室。
「こんにちは、提督」
「お邪魔しますね」
「っ!? ゆ、夕張は秘書艦日だが、明石まで何で来たんだ?」
「ちょっと改造に来たんです」
「か、改造……?」
「提督の――」
「俺の改造はしなくていい!」
「持ってる通信機……はい?」
「通信、機?」
「ちょっと感度が悪そうだったので、夕張が秘書艦日なのに便乗して二人で改造しようかと」
「普段工廠に居るから、提督に急な連絡を取りたいときに通信機の感度が悪いと不便ですし」
「あぁ、そうか、頼む」
「提督の改造ってさっき仰ってましたけど、人間の――ましてや提督を改造なんて、流石にしたくないですからね?」
「修理も冗談ですから、本気にされると困っちゃいます」
「悪い。嫌な夢を見たせいで、ちょっと気が動転してるみたいだ」
「きっと疲れてるんですよ。息抜きに、メカ妖精さんの演奏会でも聞きます?」
「疲れの取れる栄養剤もありますよ。辛いならコレ、飲んで下さい」
「いや、大丈夫だ、気持ちだけ受け取っとく。二人とも、ありがとな」
――――そういえばその夢、どんな夢だったんですか?
――――出来れば改造してる間に、話して下さい。
――――すまん、思い出すと二人から逃げ出したくなるから、勘弁してくれ。
山城・洋服でデート、投下します
――――街中。
「どっか行きたいとこあるか?」
「特に無いわね」
「そうか、じゃあ適当にブラブラして気になった店に入るとしよう」
「それでいいわ」
「なぁ、山城」
「何?」
「和服もいいが、洋服も似合ってるぞ」
「そ、ありがと」
(……朝から二時間も姉様と悩んだ甲斐はあったわね)
「お前と二人で出かけるとか、前は考えもしなかったな」
「何? 私じゃ不満? そりゃあ姉様に比べたら、私は見劣りするかもしれないけど……」
「そんなこと一言も言ってないだろ。扶桑もお前もそれぞれの魅力を持ってるし、どっちが、とかいう話じゃないさ」
「ホント、口だけは達者よね。あーあ、姉妹揃って変な男に捕まっちゃうなんて、やっぱり私達不幸だわ」
「全然不幸に聞こえないな」
「悪い?」
「いや、幸せそうで何よりだ」
「当然でしょ、不幸姉妹なんてもう二度と呼ばれたくないし」
「今じゃ美人姉妹って評判だしな」
「そう呼ばれるようになってから、姉様に近寄るゴミが増えて鬱陶しいわ」
「ゴミってなぁ……お前は嬉しくないのか?」
「今不幸なことがあるとしたらそれ、男に言い寄られたって嬉しくないし」
「一応俺も男なんだが」
「提督は別。むしろ近寄って来ないと姉様と二人で呪うわ」
「そりゃ怖いな、じゃあ距離をもっと縮めるために、腕組んで歩いてみないか?」
「組みたいなら、別にいいけど」
「組みたい」
「――はい、コレでいい?」
「あぁ、妬みの視線が集まってる気もするが、山城とこうして歩けるなら安いもんだ」
「腕組むぐらいで大袈裟過ぎよ」
「実際問題、俺の容姿じゃ不釣り合いとか聞こえてくると、ちょっと凹む時がある」
「……そう」
「自覚はしてるんだよ、そんなにカッコイイって訳じゃないしな」
「提督、ちょっとこっち向いて」
「なん――んっ!?」
「ちゅ……んむ、れろ……んぅ」
(見せ付けるようにキスとか、何考えてるんだ……?)
「はむ、んちゅ――ふぅ……どう、コレで少しは気にならなくなった?」
「どうって、いきなりキスしてきて何なんだよ」
「言ったでしょ、私は提督以外の男なんか興味ないって。下らない事気にしてる暇があったら、もっと私を幸せにする方法でも考えてよ」
「……そうする」
――――また気にしてたら、するから。
――――わざと気にしたくなるな。
利根・賭けに勝った、投下します
微妙に中途半端なところで切れたりしますが、ご容赦下さい
――――提督執務室。
「――お主、本気で言っておるのか?」
「賭けに負けたんだから、潔く従ってもらう」
「くっ、この外道め!」
「何とでも言え」
「何故だ、どうして吾輩がこのような目に合わねばならんのだ!」
「だから、負けたからだろ」
「あんなの反則ではないか!」
「カードを切るのも、配るのも、俺に任せたのはお前だ。確認してもう一度切らない方が悪い」
「提督としてのお主の誠実さを信用していたのだ。それだというのお主ときたら……」
「“提督”? “お主”? 利根、今日は何て俺を呼ぶ約束か忘れたか?」
「ぐぬぬ……ご、ご主人、様」
「よし、それでいい、今日はお主も提督も禁止だ。別にコスプレさせる趣味はないが、たまにはこういうのも良いもんだな。似合ってるぞ、その猫耳とメイド服」
「人をオモチャにして楽しむでない!」
「撫でてやるから怒るなよ」
「吾輩は愛玩動物ではないぞ」」
「よしよし」
「人をおちょくっとるのかおぬ――ご主人様は」
「可愛いぞ、利根」
「……頭を撫でるだけで、よいのか?」
「何が言いたいかさっぱり分からんな、ちゃんと口にしろ」
(此奴、とことん今日はこの姿勢を崩さぬつもりだな。付き合ってやるのはちと癪に障るが、背に腹は変えられぬか……)
「だ、抱き締めて、欲しいのじゃ」
「前からか? 後ろからか?」
「後ろからで頼む」
「ん、分かった。ほら、ここに座れ」
「うむ、邪魔するぞ――のぅ、提督」
「ご主人様な」
「もうそれはよいではないか、この格好だけで我慢するのじゃ」
「下に履かずに生活してた奴でも、それは恥ずかしいのか?」
「人を痴女扱いするでない、ちゃんと今は履いておる。――って何をスカート捲っとるのだこの馬鹿者っ!」
「コラ、暴れるな、ちゃんと履いてるか確認しただけだ」
「そのようなことは確認したければ夜伽で幾らでも――待て、今のは忘れろっ!」
「無理だな。前に晴嵐で追い掛けられた時の事も思い出してきたし、その腹いせもしてやる」
「提督、吾輩はちと急用を思い出した。今日の秘書艦業務はコレで終いにする」
「逃がすかよ」
「こ、こら、離すのじゃ。ひぅっ!? くっ、首筋に吸い付くでないっ!」
「じゃあ耳だな」
「やっ、やめ――」
「分かった」
「……何?」
「やめたぞ?」
「本当に、止めてしまうのか?」
「やめろって言われたからな」
「……つくづく今日のお主は意地が悪いぞ」
「さて、何の事やら」
「今日1日、吾輩はお主のモノだ。好きにしてくれて構わぬ」
「言ったからには責任持てよ?」
「……優しく、して欲しいのじゃ」
「意地が悪いらしいから保証は出来ないな」
「もうそのノリはいい加減やめんか。――愛しているぞ、提督」
「……あぁ、俺も愛してる」
――――脱がすなら着せた意味無かったな。
――――借り物を汚す訳にはいかんのじゃ。
陸奥・今度こそ浴衣で、投下します
――――夜、鎮守府内客用和室の縁側。
「花火、綺麗ね」
「鎮守府でやりたいって言った長門に礼言わないとな、消防の許可取るのに俺もかなり苦労させられたが……」
「駆逐艦の子達に間近で見せたいからって、張り切ってたもの」
「アイツの駆逐艦娘への愛情には恐れ入るよ」
「――ねぇ、提督」
「浴衣、似合ってるぞ」
「あら、ちょっとは女心を理解したのかしら?」
「もう誰かに気兼ねする必要もないしな、歯が浮くようなセリフだって言えるぞ」
「あなたにキザなセリフを言われたら、少し笑ってしまうかもしれないわ」
「お前なぁ……」
「うふふ、そんな怖い顔しないで、冗談、冗談よ」
「あの時、押し倒されてマジで焦ったんだからな」
「何時まで経っても煮え切らないあなたがいけなかったんじゃない。私が誘っても眉間に皺寄せて逃げるし、女としての自信無くしそうだったんだもの」
「だからって実力行使は無いだろ」
「……もうやめときましょうよ、この話は」
「……そうだな」
「私、あなたと出会えて本当に幸せよ。終戦まで生き残れたし、あの変な爆発も起きなくなった」
「俺はあの爆発、最後まで嫌いにはなれなったんだけどな」
「どうして? 私の素肌が露になるから?」
「お前等は俺を変態かなんかだと誤解してないか?――アレがなけりゃ、陸奥がここに来ることは無かったからだよ」
「……あの爆発も、悪いことばかりじゃなかったってことね」
「引き合わせたのが爆発ってのもどうかとは思うがな」
「うふふ。確かに、ロマンチックな巡り合わせとは程遠いわ」
「でも、俺とお前達の巡り合わせなんて、大体そんなもんだ」
「提督と艦娘、だものね」
「今、幸せか?」
「えぇ、とっても」
「風、気持ち良いな」
「風鈴も良い音だわ」
「――今日は火遊び、するか?」
「い・や・よ」
「何で……って聞くまでもないか」
「あら、察してくれて嬉しいわ」
――――火遊びじゃないなら、いいよな?
――――えぇ、いいわよ。これからはあなたの理性を爆発させてあげるわね。
かなりお待たせしましたが、13本全部消化しました
時間かかってもいいし、こんなのでもいいからまた読みたいなんていうMな方は、リクエストしていって下さると嬉しいです
用事済ませてきたら増えてた……
ここで締め切ります
飛鷹の続きってつまりエロを書けということかな?二本まとめてもいいのだろうか…
飛鷹のエロはとりあえず保留にして、話のタイトルを書いときます
・電『なかなか提督が起きないのです』
・暁『一人前のレディーになったわ』
・飛鷹『夜戦で仕返し』or『豪華客船でパーティー』
・夕雲『巻雲が甘えてくれなくなった』
・大和『口は災いの元』
・朝潮『おかゆが風邪を作って司令官で看病します!』
・大鯨『良く分からない人です』
・ぜかまし『たまにはゆっくりもいいよね!』
・響(ヴェールヌイ)『丹精込めて作ったよ』
・あきつ丸『報告書めんどくさいであります』
・白露『提督にとって何かで一番になってみたい』
の、合計11本でいきます
タイトル間違えてた……
電『なかなか司令官が起きないのです』
投下します
電が食われます
――――提督私室。
(司令官の寝顔をずっと見ていられるのは、幸せなのです……。でも、そろそろ時間ですね)
「司令官、朝ですよ。起きて欲しいのです」
「んー……んっ」
「うにゅっ!?」
(司令官の胸の中、暖かくて、気持ち……はっ!? 寝ちゃいけないのです!)
「司令官、そろそろ執務室でお仕事を始めなきゃいけない時間なのです」
「ん……もち」
「お餅が食べたいのですか? でしたら朝食にお餅を用意しますね」
「スベスベ……もちもち……」
「はわわっ! 服の中に手を入れちゃダメなのです!」
「んー?……あむ」
「電はお餅じゃないですよっ!?」
「――餅じゃなくて肉?……あぁ、なんだ夢か……」
「うぅ……かなり痛かったのです……。司令官、顔を洗って来て下さい。お腹が空いてるならすぐに用意するのです」
「あー……うん……おはよ、電」
「お餅でいいですか?」
「凄いな電。ちょうど餅を食べる夢をさっきまで見てたから、欲しかったんだ」
「……電はお餅じゃないのです」
「ん? その首筋どうしたんだ? 赤くなってるぞ」
「司令官のせいなのです!」
「俺のせいっ!? すまん、寝てる間に何かしたのか……?」
「教えないのです。でも、反省はして欲しいのです」
「何だか良く分からんが、気を付ける」
――――(……キスマークに、見えなくもないのです)
――――(最後に肉かじってる感触がしたが、ひょっとして電を……?)
「1が眠気で轟沈寸前でち、浜風掘り祝800連敗も堪えてるみたいでち、次の更新は明日の昼以降になっちゃうけど勘弁してくだちぃ」
風呂で寝て本当に沈みかけました、寝ます
おはようございます
今日の更新は今から投下する以下の二本のみで、次の更新は明日になりますのでご了承下さい
・暁『一人前のレディーになったわ』
・飛鷹『夜戦で仕返し』(※エロです)
エロは前回同様に酉変えますので、いらない方はNGにぶちこむなり飛ばすなりお願いします
――――提督執務室。
「どう? どう? どこからどう見ても、一人前のレディーになったと思わない?」
「身長は雷の勝ち」
「うっ」
「プロポーションは電の勝ち」
「あぅっ」
「大人の魅力という点では響の勝ち」
「うぅー……」
「ついからかってイジメたくなる可愛らしさでは、暁が一番だな」
「もうっ! 子供っぽいってはっきり言えばいいじゃない、司令官のバカ!」
「ははは、お前のそういうところが俺は堪らなく好きだぞ」
「子供っぽいのが好きって言われても、嬉しくないし」
「別に、ただ子供っぽいから好きな訳じゃないさ」
「――私はね、ずっと一人前のレディーになりたかったの。最初は、ただ背伸びがしたかっただけだった。でもね、司令官に私を大人の女性として見てもらいたいって気持ちが、いつ頃からかは分からないけど、私の全てになってたわ」
「俺はな、ずっと怖かったんだ。成長して大人になっていくお前達を見る度、自分はいつか不必要な存在になるんじゃないかって。そんな後ろ向きで暗い気持ちも、暁のあどけない笑顔を見てたら忘れられたんだ」
「子供っぽいのも、身長が低いのも、ちょっと胸が小さいのも、全部自分なんだって今は受け入れてるわ。一人前のレディーなら、当然よね」
「――そうやってたまに見せる大人の顔は、見惚れるぐらいに綺麗だ」
「ねぇ、子供っぽい私と、大人の私、司令官はどっちが好き?」
「どっちもだ」
「――うん。あのね司令官、恋心っていうのに一番気付くのが遅かったのは、ずっと背伸びしてた私だと思うの。だから、その背伸びしてムダにしてきた貴重な時間を、これからの時間の中で取り戻していきたい……ダメ、かな?」
「ダメなもんか、時間なんてまだまだたくさんある。これまで行った場所や一緒にしてきたこと、全部一から辿って行ったって、たかが知れてるさ」
「……ありがとう、司令官。大好きよ」
「俺もだよ、暁」
――――じゃあ、本当にこれからは一人前のレディーとして扱ってね?
――――いいぞ。その代わり、頭撫で撫で卒業な?
――――……もうしばらく子供扱いでもいいわ。
>>280
書き忘れ、前に書いた電の成長後の話と同時期です
エロ、いきます
――――提督私室。
完全な油断と、荷物持ちの疲れからくる判断ミス。ベッドに押さえ付けられながら、提督は自分の愚かさを呪っていた。
「飛鷹、今日は自分の部屋で寝るんじゃなかったのか?」
「寝るなんて一言も言ってないわ。“戻る”って言ったのよ」
悪戯をする子供の様な笑みを浮かべながら、飛鷹の手は艶かしく提督の身体をなぞっている。
「わざわざ仕返しに来るとは、とてもお上品なことで」
「えぇ、昼間は素敵な下着を選んで頂いて感謝しております。重ねてお礼申し上げますわ」
「言動と行動をっ……一致、させやがれ」
一番敏感なところを刺激され、提督の声が一瞬だけ詰まった。それを見て、飛鷹の表情が蠱惑的なモノへと変わっていく。
「光栄ね、私の下着姿を見てここを固くしたのかしら?」
「そんな格好で身体を撫でられたら、反応するに決まってるだろ」
上下黒の下着以外は何も身に纏っておらず、わざとらしく肩紐を片方外した色香漂う肢体。提督の肉欲を掻き立てるには、十分過ぎるものだった。
「ふふふ、今日はこのまま私が主導権を握らせてもらうわね」
「おーもーいー退ーけー」
「気持ち良く絞め落としてあげてもいいのよ?」
「……はぁ、分かったよ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
抵抗を諦め、提督は飛鷹の肢体を眺めることにした。よく見てみると、その身体が少し汗ばんでいるのが分かる。彼女もまた、興奮しているのだ。
――ちゅっ……れろ……はむ。
「くっ……うぁっ……」
身体を少し後ろへと退き、飛鷹は提督の身体へと覆い被さった。既に捲り上げられていた服は彼女の舌を阻む役割を果たせず、全身が徐々に蹂躙されていく。
「辛そうね」
「お前のせいでな」
「じゃあ、楽にしてあげるわ」
――はむっ。
「痛っ! 今、わざと歯立てたろ」
「仕返しってこと、忘れてない?」
快感が突き抜ける前に痛みが身体を突き抜け、提督は自分の砲塔を握ったままにやついている飛鷹を睨む。しかし、こう言い返されては黙る他なかった。
――はむっ……ちゅぱっ、じゅる、れろ……。
「うっ、くぅっ……」
今度こそ本当に快楽の波が、提督の下半身から身体中へと広がる。腰が自然と浮いていることが、それを飛鷹にも知らせるサインとなっていた。彼女の頭が上下に動く度に聴こえる淫隈な音も、更なる興奮を誘っていく。
「ひっ、よう……そろそろ、ヤバいっ……」
「今はまだイッちゃダメよ?」
「おっ、まえなぁ……」
手で扱きながら、彼女はまた悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。次の行為のためにショーツを脱ごうとしているのが、提督にもうっすらと見えたので、彼はそちらに意識を集中した。暗闇の中で目を凝らしてみれば、秘部から糸のようなモノが引いているのを確認出来、細やかな抵抗としてそれを指差す。
「自分だって、興奮、してんじゃねぇか」
「主導権は私が握ってるの、忘れないで――ねっ!」
「ぐっ!?」
根本を力強く握られ、提督の上半身が軽く跳ね上がる。文字通り主導権は彼女の手中にあり、細やかな抵抗も許されないようだ。
「私が満足するまで、イクのは許さないから」
「無茶、言うな……」
「無茶でも何でも我慢して――んぅっ!」
「うっ、くぅっ!」
飛鷹が腰を下ろすと同時、生暖かく、全てを搾り取るように蠢く肉壁が提督の砲塔を一気に包み込んだ。そんな快楽の坩堝(るつぼ)のに暴発寸前のモノが堪えきれるはずもなく、白濁した液はそこへと一気に吐き出された。
「んふぁっ!? なっ……中で熱いっ、のがぁ……出しちゃ、ダメって言った、はずよ?」
「が、まん、できるか……!」
「じゃあ、私がイクまで、何度でも、付きあんっ!?」
「突き上げて、欲しいって……?」
「良い、度胸ねっ……ふあっ、あっ、んぁっ!?」
(汗で髪が身体に張りついてて……エロいな)
――――翌朝。
(マジで搾り取られた……)
「次は提督が、私にいっぱいしてよね」
「次は寝る、絶対に寝る、お前と夜戦は一回きゅ――んぅ!?」
「ちゅ……んぅ……れろ……次休憩なら、今してよ」
(……今日の秘書艦って、ゆっくり寝かせてくれる奴だったかなぁ……)
本日は以上です
それではまた明日
・夕雲『巻雲が甘えてくれなくなった』、投下します
「先に言っておくであります。憲兵は働かないであります」
――――提督執務室。
「はぁ……」
「どうした、溜め息なんか吐いて」
「提督、ちょっと失礼しますね」
「むっ……?」
「このままで少し、話を聞いてくださらない?」
(横から頭を抱き抱えられると、書類が書けん……。まぁ、柔らかくてこうされると落ち着くし、暫く好きにさせてやろう)
「最近、巻雲が前みたいに甘えてくれなくなったの。それが少し寂しくて……」
(来た頃は“巻雲さん”ってさん付けして厳しめに接してたのに、今じゃすっかり別人だな)
「前はずっと私の後ろをカルガモの子供みたいについて回っていたのに、今は用事が無いと別行動も当たり前になってしまったわ」
(最初は張り切って失敗することもあったが、今ではアイツもすっかり一人前になったし、それも仕方無いか)
「頼もしくなった巻雲もそれはそれで見ていたくなるのだけど、やっぱり私としては寂しいの」
(そろそろ息が苦しいな、胸の感触から意識を遠ざけるのも限界だ……)
「――だ・か・ら、提督が今日は私に甘えてくださらない?」
(っ!? 引き寄せられて体勢が戻せないっ!?)
「提督、頷いてくださるなら解放してあげるわ」
「んー! んーんー!」
「あんっ、息がくすぐったい……頷いてくれたってことは、甘えてくださるのね?」
(何でもいいから早くしろ、酸欠になるっ!)
「快く了承してくださって嬉しいわ。はい、息をしっかりと整えてくださいね」
「っはぁ、はぁ、ふ――むぅっ!?」
――ちゅるっ、れろっ、はむ、ちゅうっ。
(コイツ、最初からディープキスが狙いか……)
「――うふふ、もっとして欲しいですか?」
「はぁ、はぁ……コレじゃ甘えてるのは、俺じゃなくてお前だろ」
「私の胸の中で落ち着いて、私の口と舌の感触にリラックスしていたでしょ?」
「うっ、それは、その、だな……」
「息が苦しくないように、次は優しく抱き締めてさしあげますね。それとも、キス?」
「――降参。ちょっと休憩するから抱き締めてくれ」
「はい、この夕雲にお任せくださいね」
――――(まさか駆逐艦娘に手玉に取られるとはな……)
――――(このまま押していけば、最後の一線を越えてくださるかしら?)
・大和『口は災いの元』、投下します
――――街。
「その桜色の着物、似合ってるな」
「お褒め頂き、ありがとうございます」
「どうする? 宛もなくずっと歩いてたし、何処かで少し休むか?」
「大和はあなたと一緒なら、どれだけ歩いても疲れません」
「じゃあ俺が疲れたから、喫茶店にでも入ろう」
「えぇ、何処へなりとお付き合い致します」
――――喫茶店。
「すいません、サンドイッチとアイスコーヒー、それとアイスティー1つ」
「かしこまりました、少々お待ちください」
「何か食べなくて良かったのか?」
「帯をキツメにしているので、食事は鎮守府に戻ってからにします」
「そうなのか、あまり無理はするなよ?」
「はい、お気遣いありがとうございます。大和はその言葉だけで満たされます」
「――道場、引き受けてくれてありがとな」
「お礼を言いたかったのは大和の方です。皆さんのお役に立てるのなら、喜ばしい限りですから」
「お前を元帥から託された時を思い出すよ。“どうせ運用して頂けないのでしたら解体して下さい。”、が第一声だったか?」
「それはもう忘れて下さい。思い出しただけで、恥ずかしくて顔から火が出そうです」
「……結局、途中からはうちでも待機させることに決めたのは、悪かったと思ってる」
「謝らないで下さい。どんな不利な状況をも覆す為の六人、その一人に選んで頂いた事は、今でも誇りに思っています」
「俺の作戦でアイツ等を危険な目に合わせてしまった時、お前達が居てくれたお陰で誰も失わずに済んだ。感謝してもしきれないぐらい、感謝してるよ」
「“大和”の名は伊達ではありません。……それに、あなたの悲しむ顔など、皆決して見たくはなかったですから」
「……あぁ、本当にありがとう」
「この話はこれぐらいにして、次は大和とあなたの将来についての話を――?」
――綺麗だな、あの姉ちゃん。
――あんな気の弱そうな男には勿体無いよな。
「お待たせ致しました。アイスコーヒーとアイスティー、サンドイッチでございます。ごゆっくりお召し上がり下さい」
「なぁ大和、少しぐらいは食べた方が――大和?」
「はい? あっ、いえ、大丈夫ですからお気になさらず召し上がって下さい」
「分かった。じゃあ早めに戻って夕食にするか、これだけじゃ俺も足りないし」
「……実は少し、お腹が空いてきていました……」
「帯を少し緩めたらどうだ?」
「この帯、緩めると一気に崩れてしまうので」
「それじゃ無理だな……急いで食うから、ちょっと待ってろ」
「あまり急いで食べると身体に悪いですし、ゆっくりでいいですから」
「もがっ?」
「もうっ、口に詰め込みすぎですよ?」
――普通、女に食べさせずに一人で貪るように食うか?
――金無いんじゃねぇの?
「……提督、ちょっと席を外しますね」
「ん」
――――お客様、大変申し上げにくいのですが……お連れ様が他のお客様の頭を掴んで、引き摺りながら出ていってしまわれて……。
――――っ!?
・朝潮『おかゆが風邪を作って司令官で看病します!』、投下します
大和は店の裏で二人と一緒に正座しながら、提督の良いところを延々語っていただけです
まぁ……ここの艦娘は提督の事になると大抵見境が無いので……
――――提督私室。
「おはようございます司令官、本日はよろしく――司令官!?」
――――加賀私室。
「さて、今日の仕事を――」
「失礼します! おかゆが風邪を作って司令官で看病します! それでは!」
「……言いたい事は分かりましたが、あの取り乱し方で看病させて大丈夫なのでしょうか……」
――――提督私室。
「悪い朝潮、秘書艦日だってのにこの様で……」
「そんなことはどうでもいいんです。司令官は今日1日ゆっくり休んでいて下さい」
「あぁ、お言葉に甘えて今日はゆっくり休むよ」
「食事や飲み物が欲しくなったらいつでも仰って下さい。私はずっとここに居ますから」
「ずっとは居なくていいんだぞ? 立って歩くぐらいの体力はあるし、お前も俺を見てるだけじゃ退屈だろ」
「司令官には一秒でも早く、元気になってもらいたいんです。……朝倒れてるのを見た時は、心臓が止まるかと思いました」
「そんな顔するなよ、風邪で死にやしないんだから」
「風邪も悪化すれば命に関わります。風邪は万病の元です。ですから、今日は絶対に司令官から目を離しません」
(これは何を言っても無駄そうだな……)
「今、間宮さんと明石さんに頼んで、食材と水と調理用具を持ってきて頂いてます」
「本当にこの部屋から一切出ないつもりか? 俺も退引きならない事情で、部屋から出なきゃいけないこともある」
「その場合はついて行きます」
「女の子にこんなこと聞きたくないんだが、逆の場合はどうする気だ」
「その時は司令官をベッドにロープで縛り付けてから行きます。御心配には及びません」
「いや、別の意味で心配なんだが……」
「私は安心です」
「朝潮、因みに聞くけど拒否権はあるのか?」
「ありません。司令官は私達が体調を崩した時、同じ様な命令を出されていました。今日はそれを司令官にも守って頂きます」
(ここまでは俺も命令した覚え無いんだがなぁ……)
――朝潮ちゃん、食材持ってきましたよ。
――調理用具もここに置いときますねー。
「お二人ともありがとうございます!」
「何で二人とも部屋に入って来ないんだ?」
「面会謝絶にしてありますから」
「面会謝絶!? ただの風邪だぞっ!?」
「……今日は私が、秘書艦なんです」
(……そういうことか)
「おかゆ、作ってくれ。今日はまだ何も食べれてないから腹減った」
「――はい! すぐに調理に取りかかりますので待っていて下さい」
(顔が生き生きし始めたな。一緒に出掛けたりは出来ない分、今日は朝潮の望むようにさせてやるか)
――――風邪にはネギが良いと聞きましたので、たくさん入れてみました。どうぞ、召し上がって下さい。
――――(上のネギでおかゆが見えない、だと……?)
米1に対して葱が5、好き嫌いのレベルを超越した盛られ方をした葱に絶句したのです……
※ご飯に到達するまでに約10分かかったものの、提督が全部美味しく頂きました(笑顔でお代わりどうぞ×3も美味しく頂きました)
・大鯨『良く分からない人です』、投下します
ふわふわ弱気健気系でいいのかなこの子は……
――――鎮守府内、中庭。
「なぁ大鯨、鎮守府近海に何故か鯨が居るんだが、アレはお前の知り合いか何かか?」
「多分、わたしを乗せてくれた子です」
「信じてなかった訳じゃないが、鯨に乗って来たってのは本当なんだな」
「とっても優しい子でした」
(何故かは分からんが大鯨を心配してついてきたんだろうし、たまに海に出して会わせてやるか)
「えっと、一つ聞いてもいいですか?」
「何だ?」
「今日がわたしの秘書艦日って言われたのですが、わたしも提督にキスとかした方がいいんでしょうか……?」
「その認識は非常に問題だから待ってくれ。イムヤから秘書艦日について、何て説明されたんだ?」
「“司令官にキスしたりされたり、エッチな事をしたりされたりする日”、って……」
(アイツ何て説明をしてやがんだ……)
「ひ、拾って下さった恩もありますし、あの、その、そういう形で恩を返せと言われるなら……」
「待て待て、俺がお前を迎え入れたのはそういう事をさせる為じゃないし、秘書艦日は俺と1日居ていいってだけだ。仕事さえ手伝ってもらえたら、後は別に好きにしていいんだよ」
「ほ、ホントに?」
「あぁ、だから安心してくれ。この際だし、何か困った事や聞きたい事があれば聞くぞ?」
「でしたら……何かを運ぶお仕事って、無いですか?」
「運ぶ仕事?」
「はい、元々は補給物資とかを運んでたので、そういう仕事があれば拾って下さった恩返しも出来るかなと思って……」
「運ぶ、運ぶか……そういうことなら、ぴったりの仕事があるぞ」
「ホ、ホントですかあ?」
「あぁ、今から連れてってやるから、手伝いたいって言えばすぐに仕事貰えるはずだ。それで大鯨の気が済むなら、皆も助かるし一石二鳥だ」
――――鳳翔宅。
「――そういうことなら、こちらからお願いしたいぐらいです」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあこの馬鈴薯と人参、玉葱を持って行ってもらえますか?」
「分かりましたあ」
「ついでに間宮の所でも聞いてみるといい。料理を運ぶ人手も足りてるとは言い難いからな」
「はい、行ったら聞いてみます。――あの、提督」
「ん? どうかしたか?」
「どうしてわたしを拾って下さったんですか? その、戦いも終わったと聞きましたし、わたしなんか居ても邪魔なだけじゃないですか?」
「単純に仲間が増えたら嬉しがる奴が居て、うちの鎮守府には受け入れる余裕があって、大鯨は俺達に見付かった。ただ、それだけの話だ」
「……変ですね、提督って」
「そうか?」
「あんなにいっぱいの艦娘とキスしたりしてて、もっと女ったらしで軽薄な人かと思ってましたあ」
「お前、それ俺以外に言わない方がいい。何時間か正座させられて、延々と俺がああでこうでって話聞かされるぞ……」
「何かちょっと聞いてみたいです」
「お前も変わってるな」
「そうですかあ?」
「鯨に乗って来た時点で、変わってるよ」
「それは否定出来ないです」
――――提督、もし話を聞いて私も好きになったら、デート連れてってくれますかあ?
――――もしもそうなったら、な。
・ぜかまし『たまにはゆっくりもいいよね!』、投下します
――――鎮守府内、中庭。
「提督、風が気持ち良いね」
「そうだな」
「あのね、私と一緒にいっぱいかけっこしてた子が、運動会のかけっこで一番になったんだって」
「そうか、速い奴と走ってると自然に速くなるらしいからな。きっとその子が一番になったのは、島風のお陰だ」
「ううん、違うよ。あの子が頑張ったから、一番になれたんだよ」
「……そっか、そうだな」
「うん!」
「なぁ、島風」
「なぁに?」
「今、楽しいか?」
「うん! 毎日楽しいよ!」
「寂しくないか?」
「ちっとも寂しくないよ!」
「……そうか」
「提督、どうかしたの?」
「……島風、もう俺が一緒に居なくても、寂しくないよな」
「――え?」
「天津風も居るし、友達もいっぱい出来たみたいだし、“ずっと誰かと一緒に居たい”ってお前の願いは叶ったんだ」
「う、うん……」
「俺じゃかけっこには付き合えないし、今日は仕事ももう無いから天津風達の所に行っていいんだぞ?」
「……一緒が、いい」
「ん?」
「私、提督と一緒がいいもん!」
「うわっ!? ど、どうしたんだよ急に」
「天津風も大好きだし、かけっこ一緒にしてくれる友達も好きだし、ずっと皆一緒だから今は寂しくないよ。――でも、それは全部提督が居てくれるからだもん。提督が居なきゃ、また寂しくなっちゃうよ……」
(……やっちまったな)
「ごめんな、島風。もうさっきみたいな事は二度と言わないから、泣き止んでくれ」
「……うん。提督と一緒に原っぱに座って、お話して、お昼寝して、ご飯食べて、夜は一緒に寝るの。提督と居る時が、私は一番幸せだよ」
「俺も島風にそんな風に思ってもらえてて、幸せな気分だ」
「ホント?」
「あぁ」
「ずっと一緒に居てくれる?」
「あぁ」
「居なくなったら、世界中走り回って探すからね?」
「どこにも行かないから、安心しろ」
「うん。――大好きだよ、提督」
「俺もだよ、島風」
――――アレ? 天津風がこっち見てるよ? どうしたのかな?
――――(泣かせたの見られてたのか……次のアイツの秘書艦日がこえぇ……)
・響(ヴェールヌイ)『丹精込めて作ったよ』、投下します
――――提督執務室。
「司令官、ボルシチとピロシキを作ってみたんだ」
「あぁ、もらう」
「ボルシチはシンプルにしてみたよ」
「――うん、美味いな」
「少し肌寒くなってきたからね。それを飲んで身体の芯から暖まってくれ」
「向こうはやっぱり寒かったのか?」
「寒いというか、痛い」
(そういえば前に子日がロシアにワープして帰って来た時、涙流して日本は暖かいって言ってたな……)
「ピロシキも食べてみてよ」
「二種類あるな、何か違うのか?」
「片方は日本風、もう片方はロシア風だよ」
「じゃあこっちの揚げてるヤツもらう」
「それは日本風だよ。揚げたてで熱いから食べる時は――」
「あっちぃぃぃぃっ!」
「遅かったみたいだね。ほら、コレを飲むといい」
「す、すまん――ぶほっ!? げほっごほっ!」
「汚いよ司令官。少し顔にかかったじゃないか」
「何で水じゃなくてウォッカなんだよ!」
「ロシア料理を出してるんだから、ウォッカがあっても不思議じゃないさ」
「昼間っから酒飲まそうとするんじゃない!」
「司令官は酒に弱いと聞いたから、酔った姿が見られるかと思ったんだ」
「絶対に飲まんから、それは仕舞っとけ。後、ウォッカかかった部分拭いてやるからこっち来い」
「舐めとってくれてもいいよ?」
「舐めるかっ!」
――ペロッ。
「お前なぁ……」
「舐めてくれないなら、舐めるまでだよ」
「……こっちのピロシキも食うぞ」
「顔が赤いよ? 酔ったのか?」
「焼いてるんだな、コレは」
「無視か、まぁいいさ。具は挽き肉とチーズ、ジャガイモ、茸を入れてみたよ」
「――うん、コレもなかなかイケるな」
「スパシーバ、そう言って貰えると嬉しいよ」
「ほら、ベリュニュイも一緒に食えよ。二人分だろ、コレ」
「暁のマネで仕返しって、意外と子供っぽいところもあるんだね」
「……すっげぇ言ってから後悔した」
「じゃあ失礼するよ。立ちながら食べるのは行儀が悪い」
「膝に座りたいって素直に言え」
「口移しで食べさせてくれ」
「お前は雛か」
「……ピヨ」
「……一回だけだぞ?」
「早くしてくれ、口を開けて待っているのは結構恥ずかしいんだ」
「――ん」
――れろ、ちゅう、くちゅ、ごくっ。
「……もう一口、くれないか?」
「断る!」
「業務連絡でち。次のリクエスト受付は、最後の白露を書いた直後の一時間に限定するでち。きっとコレでオリョクルしないで大丈夫でち」
・あきつ丸『報告書めんどくさいであります』、投下します
若干胸糞悪い展開ですが、こういうのを防ぐ役割もあるということで……
――――監査先鎮守府、入口。
(提督殿と鎮守府の維持費の為とはいえ、働くの面倒であります)
「この前みたいに楽しい鎮守府だといいでありますが……」
「コレはコレはようこそお越し下さいました」
「此度の監査役を仰せつかったあきつ丸であります。艦娘の人数と提督殿の素行を調査させて頂きたい」
「どうぞ、お好きなだけ確認していただいて結構です。やましいことは何もありませんので」
「……そうさせてもらうであります」
――――演習場。
(コレで、リストに載っているのは全員でありますな)
「皆に聞きたいであります。何か隠している事は無いでありますか?」
(――動揺はあれど、無言でありますか……。しかし、自分に嘘は吐けないであります)
「……本当に、ここに居るのはコレだけでありますか?」
――!?
「はぁ……もう分かったであります。何も言わなくともいいであります」
(やっぱり、面倒な仕事になったであります)
――――提督執務室。
「失礼するであります」
「おや、もう監査はよろしいので?」
「提督殿に話を伺えば終わりであります」
「そうですか。何なりとお聞きください」
「残りの艦娘、どこでありますか?」
「はて? 残りの、とは?」
「別に隠すならそれでいいであります。ただ、発見した場合は罪が重くなるであります」
「逆に言えば、証拠が無ければ罪には問えない。違いますかな?」
「――余計な仕事を増やして欲しくなかったであります」
「私を尋問でもなさるおつもりで?」
「ブタを躾る趣味は無いでありますよ」
「ブタ!?」
「証拠ならもう見付けているであります。地下に艦娘が五名、意識は弱々しく、凌辱と暴力の痕跡あり――虫酸が走るとはこのことでありますよ」
「ど、どうしてあの場所がそんな簡単に……」
「企業秘密であります。では、報告書の作成と艦娘の保護で忙しいので、これで失礼するであります」
「待て! 私は軍上層部にも顔が利く、こんなことをしてタダで済むと思っているのか!」
「――権力が無ければ何も出来ない者になど、私は臆しないでありますよ」
――――報告、ブタが五月蝿いから処分しておいて欲しいであります。
――――ご苦労あきつ丸。ところで今度うちに遊びに来んか? そして、うちの艦娘になってくれ。
――――元帥、セクハラとパワハラで訴えるでありますよ?
・白露『提督にとって何かで一番になってみたい』、投下します
――――提督執務室。
「提督、私が一番な事ってなーに?」
「白露が一番な事って、一番艦とかそういうのか?」
「ううん、そういうのじゃなくって、提督にとって私が一番な何かってある?」
「例えばどういうのだよ」
「一番抱き心地がいいとか、髪が綺麗とか、そういうのでないのー?」
「俺にお前等を順位付けしろってのか?」
「ダメ?」
「……どんなのでもいいんだな?」
「うんうん、教えて!」
「――腕のラインだ」
「腕の、ライン?」
「白露っていつも“いっちばーん”って言いながら腕を突き出してるだろ? その時の腕のラインが綺麗だと思った」
「提督って、変態だったの?」
「真剣に答えたのにその反応は結構傷付くぞ。俺が腕を綺麗だって思うのは、かなり珍しいんだからな?」
「だって、何かあんまり嬉しくないんだもん」
「完全に言い損じゃねぇか!」
「……色々頑張ったら、他にも私が提督にとって一番なことって増えたりする?」
「そりゃ増える可能性はあるだろうが、そこまで一番に拘らなくても俺は白露のこと好きだぞ?」
「私も提督大好き! だから、今よりもっと好きになってもらう為に色んな一番目指してはりきっちゃうよー!」
――――五年後。
「あーん」
「白露、たまには自分で――」
「あーん!」
「はいはい分かったよ、あーん」
「コレで提督にあーんした回数いっちばーん!」
「お前も本当に頑張るよな。俺をそれだけ好きでいてくれるって証拠だから、嬉しくはあるが」
「次はキスした回数一番目指しちゃうよー?」
「頼むから前の“1日ずっとキスしながら過ごす”みたいなキス系統のことは、もうやめにしないか?」
「アレ、今度もう一回やりたい!」
「人の話を聞いてくれ白露ー……」
「提督はいつだって私の一番なんだから、私も提督の一番になりたいの!」
「一番困った奴に認定してやろうか?」
「んもぉー! 提督のイジワル!」
――――夜戦回数も一番目指しちゃうよー!
――――それだけは絶対にやめろ。
では、先に書いた通り、リクエストがあれば八時までの間に書いておいて下さい
締め切ります
予想→朝だしsage進行だし誰も来なくて適当に一本
現実→オリョクル
「“この世はこんなはずじゃなかったことばっかりだ”って某執務官も言ってたでち」
・浦風『提督さんとデートじゃ』
・赤城『戦果は上々ね』
・大和『これからの話』
・榛名『一生分の感謝をあなたに』
・雪風『しれぇ! 雨です!』
・扶桑『提督と公園でランチタイム』
・大潮『大潮の月』
・ながもん『文月と街へ』
・古鷹『帰りたくないです』
・あきつ丸『提督殿、ミカンの皮剥いて欲しいであります』
・羽黒『ミ、ミニスカートでですか……?』
の、合計11本でお送りします
・浦風『提督さんとデートじゃ』、投下します
浦風居るところに彼女あり
――――街中、大通り。
「提督さん、このアイスぶち美味しいんじゃ」
「そうか、良かったな浦風」
「はい、一口食べてつかぁさい」
「いや、俺はいいよ」
「そんな遠慮せんで」
「浦風が全部食べ――っ!?」
(何で大鳳が路地裏にっ!?――た・べ・な・さ・い?)
「うちが口をつけたのは嫌なんか……?」
「そ、そんな訳無いだろ、一口貰うよ――うん、甘くて美味しいな」
「うん、二人で食べた方が美味しいけぇ」
(関節キスとか気にしてないんだろうな、この顔は……)
「――ふぅ、ごちそうさま。提督さん、次はドーナツが食べたいんじゃ」
「ドーナツか……。あっちに美味しいって評判の店があったはずだから、そこに行くか」
――――評判の店の前、行列最後尾。
「ドーナツ食べるのに並んでるのかこの行列……浦風、ちょっと時間かかるけどいいか?」
「うちは提督さんと二人なら退屈せんから平気じゃ」
「分かった、じゃあ気長に待つとするか」
――――十五分後。
「もうすぐだな」
「どんな味がするんか楽しみじゃ」
「浦風はどれが食べたいんだ?」
「フレンチクルーラー」
「そうか、じゃあ俺はオールドファッションにするかな」
「――提督さん、あそこ何か揉めとるようじゃ」
「揉めてる……?」
――割り込みすんなよ。
――さっきから並んでたよ、目悪いんじゃねぇの?
「割り込みか、店員が応対に追われて列が進まなくなっちまってるな……すまんな浦風、もうちょっとかかりそうだ」
「人気があるけぇ仕方無いことじゃ。うちは大丈夫じゃけぇ心配せんでえぇよ」
「そっか、入ったら好きなだけ食べていいからな」
「姉さんへのお土産もお願いしてえぇ?」
「勿論だ、アイツもきっと喜ぶよ」
――ちょっとそこの割り込みした男、こっちに来なさい。
――何だテメェは?
――いいからこっちに来なさい、あの二人の邪魔したら海に沈めるわよ。
――ちょっ、何なんだよ!? 離せ、離せって!
「……列動いたからすぐに食べれそうだな」
「今姉さんの声せんかった?」
「気のせいだ。――ほら、団体客が抜けたし入れそうだぞ」
――――このフレンチクルーラーぶち美味しいんじゃ。
――――ほら、こっちも食べていいからな。
――――(ドーナツ頬張る浦風可愛いわ……)
・赤城『戦果は上々ね』、投下します
※別鎮守府(多摩スレ)で赤城が猪を退治して持って帰ってきた話です
――――食堂。
「赤城さん」
「何ですか?」
「駆逐艦娘の一部の子達が怯えているので、あの猪は捨てて来て下さい」
「戦果ですので提督に差し上げようかと」
「いらんわ!」
「血も抜いて防腐もしましたよ?」
「そういう問題じゃねぇよ……」
「そもそも、何回無断で抜け出せば気が済むんですか? あ・か・ぎ・さん?」
「加賀、頭が痛いです。頭痛で牡丹鍋の味が分からなくなったら困ります」
(加賀のアイアンクローに動じない辺り、コイツも大概だよな……)
「皆さーん、牡丹鍋とすき焼き出来ましたよー」
(加賀のアイアンクローに動じない辺り、コイツも大概だよな……)
「皆さーん、牡丹鍋とすき焼き出来ましたよー」
「おっ出来たか。猪の肉は味に癖があるし、食べれない奴はすき焼きも用意したからそっち食え」
『はーい!』
「提督、加賀と一緒に私達は牡丹鍋を食べましょう。――はい、口を開けて下さい」
「珍しい事もあるものですね」
「……赤城、熱でもあるのか?」
「私だって、たまにはこういう行為をしたくなりますよ?」
「まぁ悪い気はしないし、貰う。――うん、やっぱり癖はあるがコレはコレでイケるな」
「それは何よりです。では私にも食べさせて下さい」
「お前本当に今日はどうした」
(頭強く握りすぎたかしら……)
「少し、若さに当てられたのかもしれませんね。提督、お腹が空いているので早くお願いします」
「あ、あぁ、ほら」
「――うん、上々ね」
「赤城さん、少し顔が赤いですよ?」
「……もぐもぐ」
「食べて誤魔化したな」
「少し赤城さんの可愛らしい一面が見られました」
「二人とも食べないのでしたら、全部食べてしまいますよ?」
「待て待て、俺達に食わせる為に持って帰ってきたんだろうが、全部一人で食う奴があるか」
「このスペースの肉は譲れません」
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
「本当にちょっと待てお前等! 俺の食う分ちゃんと残せよっ!?」
「ここは戦場です。戦わざる者食うべからずです」
「流石に手が止まりません」
「赤城、そこの肉寄越せ! 加賀は葱を全部食うんじゃねぇ!」
「はい、どうぞ」
「そんなに欲しければどうぞ」
「むごっ!? むぐむぐ……誰も口に無理矢理突っ込めとは――」
「はい」
「どうぞ」
「むがっ!?」
――――食べさせて差し上げた分、後で提督を頂きますね?
――――頼むから物理的に食わないでくれよ?
・大和『これからの話』、投下します
――――客用和室、縁側。
「たまにはこういう場所で飲むのもありだな。と言っても、俺はあまり飲めんが」
「大和もそこまで強くありませんし、お酒を飲む雰囲気を楽しみながら、ゆっくり飲みましょう」
「あぁ、そうするか」
「今宵は、満月ですね」
「中秋の名月ってヤツか」
「こうしてあなたと月を眺めているだけで、大和は幸せです」
「……そうか」
「――提督は、大和のどこを好いてくれていますか?」
「髪、足、綺麗なくびれ、少しいじけやすい、優しい、気遣いが出来る、面倒見がいい、胸に徹甲弾」
「徹甲弾、今から着けてきた方がいいのかしら……」
「流石に冗談だ、お前が中破した時にドキッとしたのは事実だが」
「戦いの最中でしたし気にも留めていませんでしたが、そんなところを見ていらしたんですね」
「被害確認の為に仕方無くだ、やましい気持ちは無かったよ」
「――今でも、邪(よこしま)な気持ちはありませんか?」
「……魅力的な女性にしなだれかかられて意識しない程、鋼の精神は持ち合わせてない」
「大和はあなたをお慕いしています。これまでも、そして、これからも」
「どう、応えればいいんだろうな。月と酒とお前に酔って、言葉が出てこない」
「言葉で無くとも、いいんですよ?」
「――止まらんぞ?」
「あなたの、望むままに」
「その上気した頬も、潤んだ瞳も、少し汗ばんだ肌も、全部俺が好きにしていいんだな?」
「大和の身も、心も、あなたのものです」
「じゃあ、顔をよく見せてくれ」
「はい、ご存分にどうぞ」
「……酔ってるな、真っ赤だ」
「お酒の力を借りないと、恥ずかしくて上手に気持ちを伝えられませんから」
「酒の力なんか借りなくたって、お前は十分魅力的だ」
「……でしたら、このまま今日は大和に酔って溺れて下さい」
「言われるまでもなく、もう酔って溺れそうだよ」
「あなたのことを、愛しています」
「俺もだ、大和」
「――熱く、なってきました」
「……あぁ、そうだな」
――――やっぱり触ると柔らかくて徹甲弾とは大違いだな。
――――もうっ、徹甲弾と比べないで下さい。
・榛名『一生分の感謝をあなたに』、投下します
――――提督執務室。
「榛名」
「はい、榛名に何か御用でしょうか?」
「いや、特に無い。無いんだがその格好は何だ」
「御奉仕するならこの格好が一番相応しいと、漣に聞いたものですから」
「またアイツか……」
「榛名は、提督に感謝の気持ちを示したいんです」
「一応言っとくが、メイド服は感謝の気持ちを示したい人間が着る為の服って訳じゃないからな」
「でしたら、すぐに一番相応しい服に着替えてきます。具体的にはどのような服がよろしいのでしょうか?」
「別に格好は気にしなくていい。それで、感謝って何に対しての感謝だよ。身に覚えが無いんだが」
「――榛名を、一人にしないでくれました。お姉様達と霧島との悲しいお別れを、二度も経験させないでいてくれました。その、感謝の気持ちです」
「それなら俺じゃなくて、全力で戦った仲間達に示すべきだろ。俺はお前達に戦うことを命じていた側であって、感謝される対象には相応しくない」
「そんなことはありません。貴方が居てくれたから、榛名達は絶対に生きて帰りたいと思えたんです」
「……感謝したいのは、こっちなんだがな」
「加賀さんには結局一度も勝てないままでしたし、比叡お姉様の料理に苦しめられたりもしました。でも、そんな事も含めて、榛名は毎日が楽しかったです。いつもの何気無い日常に、お姉様達も、霧島も、他の皆さんも笑っていました。それ等全ての事にも、榛名は感謝しています」
「感謝する事が多すぎて大変そうだな」
「はい、ですから提督には、ずっと榛名から感謝され続けて頂きます」
「一生感謝し続ける気か?」
「いけないでしょうか?」
「いけなくはないが、疲れないか?」
「榛名は大丈夫です」
「そうか……まぁ、お前がそれで幸せならそれでいいんだろうな」
「この思いが尽きることなどありませんし、この思いがある限り、榛名は幸せです」
「――なら、感謝されとくよ」
「はい、そうして下さい」
――――提督は足が好きと伺ったので、今日は水着でお仕事をしますね。
――――足に目がいって集中出来ないから服を普通に着てくれ……。
・雪風『しれぇ! 雨です!』、投下します
――――とある店の軒先。
「突然降ってきやがるとはな……雪風、大丈夫か?」
「はい、少し濡れちゃいましたけど、雪風は大丈夫です」
「それなら良か――んっ!?」
(雨で服が透けまくってて全然大丈夫じゃねぇ……)
「雪風、とりあえずここ入るぞ」
「ここは何のお店ですか?」
「入りゃ分かるさ」
――――店内。
「しれぇ、洗濯機がいっぱいです!」
「コインランドリーだからな、いっぱいあって当然だ。――さぁて雪風、ちょっとこっちに来い」
「ゆ、雪風に何かご用でしょうか?」
(勘が鋭いな……)
「冷えただろ、暖めてやる」
「……しれぇがそう言うなら」
(小動物の警戒解いてる気分だ)
「あの、早くギュッてして下さい」
「あぁ、してやる。――その前に、タオルで拭くから脱げ!」
「し、しれぇ!? ダメです! 雪風これしか着てないんです!」
「乾燥機で乾かすから大人しく脱げ、タオルがそこにあるからそれ巻いてろ」
「パンツだけじゃ落ち着きません!」
「普段から服とパンツ一枚で過ごしてる癖に今更恥ずかしがんな!」
「雪風は脱ぎません!」
「濡れた服着てたら冷えるんだよ!」
「でも、脱ぎませんから!」
「雪風、胸見えてるぞ」
「えっ!? あっ、捲っちゃダメです!」
「一気に脱がすぞー」
「ず、ズルいですしれぇ!」
「はいはいタオル巻いてっと、そのままちょっと大人しくしてろ。暖かい飲み物でも買ってやるから」
「うぅ……しれぇに胸見られちゃいました……」
「他の奴に見られなかっただけマシと思え」
「帰ったら皆に、しれぇに脱がされたって言っちゃいますから!」
「理由を説明したら大丈夫……大丈夫、だよな?」
「……ギュッてしてくれないしれぇなんて、酷い目に合っちゃえばいいんです」
(あー、そういえばそうやって呼んだんだったな……)
「――雪風、コレでいいか?」
「まだ、許しませんから」
「もう少し強くした方がいいのか?」
「……もっと、ギュッてして欲しいです」
「あぁ、乾くまでこうしててやるよ」
――――乾いたぞ、雪風。――雪風?
――――……すぅ、すぅ……しれぇー……。
――――(仕方無い、服着せて家まで背負って帰るか……)
・扶桑『公園でデート』、投下します
――――公園。
「何ていうかこう、静かだな」
「そうですね」
「空、青いな」
「はい、青いです」
「……」
「……」
(――間が持たんっ! 山城から扶桑の良いところは死ぬほど聞かされたが、会話に使えるようなネタが無い!)
「あの、提督?」
「――ん? どうした扶桑」
「そろそろ、お昼にしませんか?」
「あぁ、もうそんな時間か」
「お弁当を作って来たので、一緒に食べましょう」
「悪いな、手間だっただろ」
「いえ、提督に食べて頂けるなら喜ばしい限りですし、最近はよく作っていますから。どうぞ、ゆっくり召し上がって下さいね」
「――なるほど、確かに作ってるみたいだな。久し振りだよ、こういうの」
(タコさんウィンナーにイヌやネコの顔に型抜きしたお握り、か)
「あっごめんなさい。ついあの子達に作る時みたいにしてしまって……」
「いや、いいよ。コレを皆で食べてる微笑ましい光景が想像できて和むし」
「提督、お味はいかがですか?」
「――うん、美味い。山城から聞かされまくった通りの味だ」
「山城から?」
「“姉様の料理は繊細な味付けと魅力的な飾り付けがされていて、味も見た目も楽しめる”、だったか」
「山城ったら、そんな事を提督に言っていたんですね」
「もう何百回聞かされたか分からん。まぁ、最近は自分の事を話すようになってくれたが」
「うふふ、あの子も今はとても幸せそうですから」
「あの子“も”ってことは、扶桑も今、幸せなんだな」
「えぇ、提督と二人でこうして一緒に居るだけで、私は幸せです」
「……その笑顔を見たら、大抵の男は落ちるよな。告白する奴が後を絶たないのも分かる気がする」
「妬いて、くれますか?」
「いや、相手の男に同情するだけだ。扶桑には俺しか見えてないのは、重々承知してる」
「少し、残念です。浮気をしてみれば、もっと夢中になって妬いてくれるのかしら……」
「絶対にやめてくれ、山城が怖いし俺も気が気じゃなくなる」
「ふふふ、冗談ですよ。私には貴方しか居ませんから」
「……弁当、美味いな」
「食後のデザートにはリンゴも剥いてきましたから、しっかり召し上がって下さいね」
「ウサギか?」
「ウサギです」
――――次は山城や時雨達も一緒にどうだ?
――――はい、またお弁当作りますね。
あっタイトル間違えた……まぁ問題ないしいいか……
小さな身体に大きな魚雷ちゃんは夜か深夜に投下予定です
・大潮『大潮の月』、投下します
ちょっとケッコンカッコカリボイスとは違います
――――提督執務室。
「大潮」
「何ですか、司令官」
「上からだとな、その、見える」
「大潮は大丈夫です!」
「いや、大丈夫じゃないからな」
「ダメですか?」
「ダメだ」
「いいじゃないですか、服の下に魚雷仕込むぐらい」
「膝の上に乗っけてる俺がよくねぇよ! 何かやけに抱いた時に感触が固いと思ったんだ……」
「コレで司令官のハートをドーン!」
「ハートを射抜きたいならせめて爆発物以外にしろ」
「それはともかく、こうして抱きしめてもらってるとぽかぽかしますねー」
「そうだなー俺はドキドキしてるぞー」
「大潮にですか?」
「魚雷に決まってんだろ!」
「司令官は小さな身体より、大きな魚雷の方が好きなんですか?」
「どっちもイエスと言うと危ない目で見られる選択肢を出すなよ……。大潮の事は、好きだ」
「はうあぁー……」
「こら、あまり動くな」
「だって、何か身体の内側が物凄くぽかぽかしててじっとしてられないんです」
「じゃあとりあえず魚雷を服から出せ」
「……出したら、もっと抱き締めてぽかぽかさせてくれるんですか?」
「あぁ、してやるから今度から魚雷は無しだ」
「じゃあ、そこに置いときます」
(コレで安全……じゃないな)
「大潮、サイズの大きい服買うのはいいが、上からだと中が見えるって分かってるか?」
「司令官が見たいならどうぞ!」
「見ない。抱き締めたら見えないから、コレでちょうどいいだろ」
「さっきから胸の辺りがぽかぽかしっぱなしです」
「良い気分なら、何よりだ」
「――司令官は、大潮のお月様です」
「どういう意味だ?」
「どんなに遠く離れても、また引力で引き寄せられちゃうってことです。行ってこいって送り出してもらえて、帰って来た時にはお帰りって言ってもらえて、それが何より大潮は嬉しかったんです」
「……お帰りとかお疲れって言えることが、俺は何より嬉しかったよ」
「えへへ、大潮と一緒ですね」
「秘書艦日、お帰りって迎えてやろうか?」
「じゃあ、大潮はただいまって言いますね!」
「あぁ……とりあえず今日は、このまま過ごすか」
「はい!」
――――やっぱり落ち着かないので魚雷を服に入れてもいいですか?
――――入れたら離れるからな。
・ながもん『文月と街へ』、投下します
――――街中。
「わーい、たかいたかーい」
「文月、どこか行きたいところはないか? この長門が今日はどこへなりと連れて行ってやるぞ」
「えっとねー、あたし、いっぱいケーキ食べたい!」
「了解だ! このビッグセブンに任せるがいい!」
――――ケーキバイキング。
「どうだ、美味しいか?」
「うん、おいしー。長門さんも食べて食べてー、はい、あーん」
(こ、この戦艦長門があーんをされる日が来るとは……胸が熱いな!)
「ねぇねぇ、食べないのー?」
「勿論食べるぞ文月。いざ、参る!――あぁ、確かに甘くて美味い」
「でしょー? あっ、あっちのケーキも美味しそー」
「待っていろ! 皿ごと持ってきてやる!」
「文月、そんなに食べれないよー? アレ? 行っちゃった……」
――お客様、困ります!
――離せ! 文月が食べたいと言っているんだ!
――大皿から1つずつお願いします!
「わーあんなに大きな皿片手で持ってるー。長門さん、すごいすごーい」
――――ペットショップ。
「長門さん、このにゃんこかわいいねー」
「そうだな、猫というのは可愛らしい生き物だ」
(そして、文月はもっと可愛らしい)
「あたしもにゃんこ飼いたいけど、もーっと大きくなって一人でお世話が出来るようになるまで、がまんするの」
「そうなのか。その志は立派だぞ、文月」
「うん、ありがとー」
(よし、この長門が一肌脱ごうではないか!)
――――鎮守府、睦月型私室。
「う、うーちゃんアレはちょっと飼いたくないっぴょん……」
「弥生も、ちょっと……」
「にゃあ!」
「長門さん、猫のマネへたっぴだねー」
「くっ……このビッグセブンの力を持ってしても無理だったか!」
(三日月からどうにかして欲しいと聞いて来てみれば……猫耳と猫尻尾に肉球グローブって、何やってんだよ長門……)
・古鷹『帰りたくないです』、投下します
ちょっと指定と違ったかも……
――――夜、旅館。
(ここからだと、朝に始発で帰るとかも厳しそうだよなぁ……そもそも、始発時間に起きれるかも分からんし)
「――提督、戻りました。温泉気持ち良かったです」
「そうか」
「あの、コレどうですか?」
「似合ってるぞ、浴衣」
「提督にそう言ってもらえると、とても嬉しいです」
「なぁ、古鷹」
「何ですか?」
「――帰らなくて、本当に良かったのか?」
「……鎮守府に帰ってしまうと、提督は皆の提督になってしまいますから」
「共有品扱いだからな、俺は」
「今日だけ……今日という日だけは、ずっと私だけの提督で居てもらいたかったんです」
「珍しいよな、古鷹がわがまま言うなんて」
「ご迷惑なのは分かっています。でも、どうしても気持ちが抑えられなかったんです」
(……今日、か)
「お前が優しくて皆に気を遣える奴だってのは、よく知ってる。だから、こうしてわがままを言っても俺は責めないし、わがままとそもそも思わない。お前達の良いところをいっぱい教えてもらった礼と思えば、こういうのも悪くないさ」
「提督……」
「この間、加古に聞いたから知ってる。毎年同じ日にうなされてることも、その時は必ず手を伸ばして何かを掴もうとしてるのも」
「そう、ですか」
「お前以外にも激しい戦いの末に沈んだ奴は、大勢居る。だからといって、遠慮する必要は無い。辛いなら、辛いって言え」
「……抱き締めて、下さい」
「いいぞ」
「泣いて顔がぐちゃぐちゃになっちゃうから、顔を見ないで……」
「あぁ」
「何処にも、行かないで下さい」
「ずっとここに居る」
「キス、して」
「……ん」
――ちゅ……はむ……ん……ちゅぱ……。
「――コレだけじゃ、足りないです。辛い事全部、忘れさせて下さい」
「……良いところも、悪いところも、全部含めて好きだ、古鷹」
「……はい、私の全部見て下さい」
――――明日、一緒に謝ってくれるか?
――――提督のカッコイイところ、私に見せてください。
――――情けない姿になる未来しか見えん……。
・あきつ丸『提督殿、ミカンの皮剥いて欲しいであります』、投下します
あきつ丸さん@働かない
――――あきつ丸、私室。
「提督殿、早くして欲しいであります」
「お前なぁ……秘書艦日は俺にみかんの皮剥かせてだらけていい日って訳じゃないからな?」
「そう言いつつも剥いてくれる提督殿は、優しいでありますな」
「ほら、食え」
「食べさせて欲しいであります」
「炬燵から手を出せ、そして自分で食え」
「その命令は拒否させて頂く」
「あーきーつーまーるー?」
「ほほほひっはははひへほひひへはひはふ」(訳:頬を引っ張らないで欲しいであります)
「良く伸びるな」
「暴力を受けたであります。提督殿を憲兵に引き渡すであります」
「みかん、いらないのか?」
「賄賂には屈するしかないでありますな」
「屈するなよ」
「大丈夫であります。元帥殿からの引き抜きには屈しないであります」
(あのクソオヤジいつかシメる……)
「喉が乾いた、お茶が飲みたいであります」
「ちょっとは自分で動けよお前」
「部下を労うのも提督殿のれっきとした業務であります。軍司令部に職務怠慢だと報告するであります」
「秘書艦日にこうしてゆっくり出来なく――」
「報告書作成めんどくさいであります」
「お前本当に監査役真面目にやってるよな? 不安になってきたんだが……」
「大丈夫であります。元帥殿への報告書は大抵三行以内であります」
「それは報告書と呼べる代物じゃないな絶対に、厳重注意か下手すりゃ懲罰モノだぞ」
「元帥殿から毎度セクハラとパワハラ紛いの誘いがあるので、お互い様であります」
「あのクソオヤジもいつか捕まるんじゃないかと心配になってきた……」
「――提督殿」
「何だ?」
「炬燵にずっと入っていたので、身体が熱くなってきたであります」
「じゃあ出ろよ」
「脱ぐであります」
「いや、だから出ろよ」
「部下の自由を認めない提督殿の横暴には屈しないであります」
「そこは屈しろ」
「次の秘書艦日に自分と海へ旅行すると約束すれば、この場は丸く収まるでありますよ」
「あぁ、約束してやる」
「では水着を新調するのに胸囲を測って欲しいので、脱ぐであります」
「お前来た頃と別人にすり替わってたりしないよな?」
「――自分は、提督殿の色に染められただけでありますよ」
――――離れないとメジャーが背中に回せないんだが。
――――気合いでどうにかして欲しいであります。
~お知らせ~
今日中に羽黒は書く予定です
前回同様、羽黒の話を投下直後の三十分でリクエストを受け付けます
後、明日は申し訳無いですが更新できないので、先にお伝えしておきます
・羽黒『ミ、ミニスカートでですか……?』、投下します
足フェチ加速中
――――街中。
「あの、司令官さん」
「どうした?」
「もっと道の端を歩きませんか?」
「車道側を歩いてるんだが、それだけじゃ不満か?」
「い、いえ、そうじゃないんです。その、視線が気になって落ち着かなくて……」
「大丈夫だ、気にするな」
「あぅ……」
(流石にそろそろやめないと逃げ出しかねんか……)
「ありがとうな羽黒、本当にミニスカで来てくれて」
「し、司令官さんに見たいと言われたので、かなり頑張りました」
「ロングスカートも羽黒には似合ってるし可愛いんだが、たまにはミニスカ姿も見てみたいと思ってな」
「ご満足、頂けましたか……?」
「あぁ、大満足だ」
「――なら、頑張って着てみて良かったです」
「……手を繋ぎながらこの距離で会話が出来るなんて、来た頃は考えもしなかったな」
「あ、あの頃は本当にごめんなさい……」
「仕方無いさ。恥ずかしがり屋で男性恐怖症なんて、簡単にどうにかなるもんじゃなかったし」
「……今は、こんなことだって出来ますよ?」
(腕組みか、顔真っ赤だけど大丈夫なのか……?)
「司令官さんはとても優しい人だって知ってます。私の、大切な人です」
「近付いてお前が涙目になる度、妙高から震え上がりそうな冷たい目で見られた甲斐があったよ」
「妙高姉さんは少し過保護なところがありますけど、優しい人ですから」
「あぁ、羽黒が俺の事を怖がらなくなった時、深々と頭を下げられた。“妹をどうかよろしくお願い致します”って」
「――私のこと、これからも大事にしてくれますか?」
「嫌だって答えるわけないだろ。これまでは俺が守ってもらってたんだ、これからは俺が大事にしてやる番だ」
「……はい、お願いします」
「――さて、喫茶店にでも入って少し休憩するか」
「あそこ、喫茶店ですよ。前に足柄姉さんと二人で来ましたし、紅茶が美味しかったです」
「そうか、ならあそこにするか」
――――あの、司令官さん。あまり足ばかり見ないで下さい……。
――――無理だ。
では先にお伝えした通り、18時30分まででお願いします
締め切ります
内容は考えたので次でタイトル書きます
・鶴姉妹『お茶菓子と茶葉と着物が見たい』
・飛鷹『いつ何がどうなるかなんて分からない』
・北上『提督、ちょっとごっこ遊びに付き合ってよ』
・でち公『海の中を一緒に見たいでち』
・隼鷹『ほろ酔い気分で』
・大井『北上さんとしたなら、私ともして下さい』
・比叡『気合い! 入れて! 泳ぎます!』
・鳥海『眼鏡で合わせるか、コンタクトで合わせるか』
・初霜『かすり傷一つ負わさせません』
以上、9本でお送りします
出掛ける前に書きかけが完成しました、茶葉は長くなったので省きます
・鶴姉妹『茶菓子と着物が見たい』、投下します
――――百貨店、地下。
「翔鶴姉ぇ、あのお店閉店しちゃったみたい」
「あら、残念ね……かま風呂美味しかったのに」
「鶴屋吉信で寶ぶくろと紡ぎ詩、つばらつばら辺りでも買う?」
「そうね、そうしましょうか」
「お前達、選ぶのにほとんど迷いがないな……」
「だって通い慣れてるもん」
「あまり提督をお待たせする訳にもいきませんし、他にも回りたい場所がありますから」
「そうか、荷物持ちとしては助かる」
「提督さん、ひょっとして女の買い物は長いとか思ってる?」
「そんな風には思ってないぞ。ただ、翔鶴も瑞鶴もお互いの考えてることが分かっているみたいに店と商品を決めるから、感心しただけだ」
「何度も通っていると行き付けのお店というのはやはり決まってきますし、あそこは名前に惹かれるものがありますから」
「何てったって“鶴”って入ってるし」
「――鶴の和菓子は売ってないのか?」
「あるけど……何か嫌だから買っちゃダメ」
「そうね、わざわざ買わなくても鶴ならここに居るもの」
(あるなら食べてみたいだけだったんだが……)
――――着物呉服店。
「提督さん、選んで」
「提督、選んで下さいますか?」
「おい待て、入店直後に言うセリフか?」
「だって、それが目当てで来たんだもん。ね、翔鶴姉ぇ」
「えぇ」
(即断即決の嵐はそういう理由かよ……)
「真剣に選んでくれないと爆撃しちゃうから」
「私達姉妹に似合うと思うものをお願いします」
「難易度だけ跳ね上がっていくんだが、俺に着物を選ぶセンスなんか無いぞ?」
――――1時間後。
「翔鶴にはコレ、瑞鶴にはコレ、もう限界だからそれで我慢してくれ……」
「我慢だなんてそんな……こんなに真剣に選んで頂いて、本当にありがとうございます」
「――ねぇ、何で、コレ?」
「最近は翔鶴と一緒に居る時間が増えた分、どっかの一航戦が演習以外でお前が来ないって言ってたんでな。それ着て行ってたまには茶入れてやれ、喜ぶぞ」
「……提督さんがそこまで言うなら、着たげる」
「私のは縁起が良い柄ですね」
「名前と華やかさで選んだ。翔鶴なら柄の迫力に負けずに着こなせると思ったからな」
「あら、綺麗だと暗に仰って下さってるんですか?」
「言うまでもないだろ、そっちでむくれてる瑞鶴も可愛いぞ」
「む、むくれてなんかないってば! 変なこと言うと爆撃しちゃうんだからね!」
「ははは、まぁ気に入ってもらえて何よりだ。会計してくるから待ってろ」
「え? いいの?」
「そんな、選んで戴いた上にお会計までお任せする訳には……」
「俺が選んだなら俺が払うべきだろ。不満なら両手に華で歩けた俺からの礼だと思っとけ」
「……うん、ありがとね、提督さん」
「この感謝はまた何かの形でお返し致しますね?」
「それ着て見せてくれりゃいいさ。じゃあ行ってくる」
――――……着物で夜戦はダメだよね?
――――脱がすのを楽しんで頂くとかなら……。
――――(この会話に飛び込むと大変な目に遭いそうだな、もう少し待つか)
着物の柄は
翔鶴→鶴と梅の柄
瑞鶴→加賀友禅
でした
それではまた明日
乙デース
加賀は自分の名前のついている着物を瑞鶴が着ているのをどう思うんだろう?
>>400
――――茶室。
「着ることを許可した覚えはありませんが?」
「加賀さんに許可してもらう必要ないでしょ?」
「――まぁ、それなりに似合ってはいます」
「……ありがと。何か落ち着くんだよね、コレ着てると」
「落ち着かないの間違いではないの?」
「落ち着くよ。私、加賀さん好きだし」
「……そう」
こんな感じ
明日また更新します、今日は入渠ドックにドボーンして寝ます
・飛鷹『いつ何がどうなるかなんて分からない』、投下します
会話のみだとしんどかったので、最初みたいに地の文ありで書きました
読みづらかったらすいません
――――提督私室。
四角いガラスのテーブルを挟んで座り、二人は酒を酌み交わす。いつもならば笑い声や怒声などが廊下まで聞こえてくるのだが、この日に限っては静かなものだった。
「――で、酒を飲みながら少し話したいことって何だ?」
「アバウトであるけど、ここの今後についてってとこかな」
目の前のグラスの縁を指先でなぞりながら、飛鷹は一度目を伏せる。
普段は隼鷹共々騒がしくしている事も多く、彼女からはがさつな印象を受けやすい。しかし、たまに見せるこういった仕草や立ち居振舞いは、内に秘めた上品さを感じさせた。
「今後って、本当にアバウトだな」
「どこがどう、って話をしててもきりがないでしょ?」
今度は視線と視線を合わせ、飛鷹は軽く微笑む。真面目な話でもしていなければ、思わず目を奪われそうな魅力的な笑みだと、不真面目な事を提督は考えていた。
だが、返す言葉を考えていなかった訳ではない。
「……ずっと今のままの状態を維持することが難しいのは、分かってるさ」
「経営的に言ってる? それとも、私達のことについて言ってる?」
「後者しか無いだろ」
今度は迷わず、提督は即答する。逆に言えば、迷う余地の無い、即答出来る選択肢しか用意されていなかったということだ。
「そう……提督の考え、聞かせてもらっていい?」
「成長しているって事は、老衰もする。お前達が人間に近付けば近付く程、鎮守府としての体裁を保つのは難しくなる。……それと、唐突に世界に現れたお前達や妖精達が、ある時不意に世界から消えない保証も、無い」
「……」
訪れた沈黙。飛鷹が何も言葉を返さずにいるのは、同じ事を考えていた証拠だ。
――カラン、とグラスの中の氷が音をたてて静寂を破り、彼女もそれに続いて口を開く。
「私は貨客船になるはずだった。でも、こうして今は軽空母としてここに居る。運命なんて誰にも分からないし、この先私達がどうなるかなんて、考えるだけ無駄じゃない?」
「だが、一人でも誰かが欠けた時点で、この場所に意味は無くなる」
「――意味なら、ちゃんとあるわ」
提督は意味が無いと言い、飛鷹は意味ならあると言う。柔らかいその声音に、提督は続く言葉を待った。
「私達は意思を持つことが出来て、提督や仲間達と思い出をここでたくさん作った。それは例えここが無くなったり、私達が消えてしまったとしても、決して無かったことにはならないわ」
「……怖く、ないのか?」
「お酒が飲めて、毎日騒げて、好きな相手ともこうして一緒に居られる。一瞬一瞬を楽しんでいれば、怖さなんてどこかへ行っちゃうもの」
だから貴方も楽しんで、そう言外に伝え、飛鷹はグラスに口をつける。氷が溶けて冷えきったカクテルが体を巡り、自然と熱を帯びていた体も一度は冷えていく。
「――いっそ軍から買い取るか、ここ」
「……え?」
同じようにグラスに注がれていたカクテルを一気に飲み干し、提督はとんでもないことを口にする。今まで冷静に話をしていた飛鷹も、流石に呆気にとられてしまい、返す言葉を失った。
「俺はずっとこのままでないと嫌だ。ここに居たいし、ここでお前等とずっと過ごしたいし、お前等に消えて欲しくなんかない」
「まるで子供のわがままじゃない……」
「悪いか?」
酔っているのか真面目に言っているのか、飛鷹には判断がつかなかった。しかし、その子供の様に願いを口にする姿を見て、それを叶えてあげたいと思ってしまっている辺りが、惚れた弱味というやつなのかもしれない。
――――何だ、コレは……?
――――霧島とかに作ってもらった買い取りの計画書よ、読んでおいて。
北上『提督、ちょっとごっこ遊びに付き合ってよ』、投下します
気が向けばでいいので、以前までの会話のみ形式と、今回の様な地文ありの形式と、どちらが良いかお聞かせ下さい
特に無ければ、その時の気分で形式は決めようかと思います
後、省いた最終決戦を今書き溜めてるので、読みたい方居るか分かりませんが、書き終えたらまとめて投下します
――――???
“ごっこ遊びに付き合ってよ”、そう北上に言われ、提督は内容を聞かずに了承する。彼女がそんな子供らしい事を言うのは珍しく、付き合うのも吝かではないと思ったからだ。
――その結果、彼は現在、目隠しとロープと耳栓で自由を奪われ、とある場所へと連れて来られていた。
(俺、北上に何かしたか……?)
こんな扱いを受ける心当たりが、彼には無い。むしろ、愛情表現が最近は過多になりつつある彼女ならば、今の提督を見れば心が痛むとさえ思っていた。 だが現実問題、提督を縛ったのは北上だ。
(何か忘れてたとか、気付かないうちに怒らせたとか……ダメだ、分からん)
暗闇と無音に包まれながら冷静でいられるのは、こんな状況でもやはり北上が自分を好いてくれているという自信があるからだ。
しかし、何か原因はあるのだろうと北上に関連する日付や行動を一から順に頭の中で追っている最中、音が彼の元へと急に返される。
「提督、今からちょっと着替えて欲しいんだけどいいー?」
「ロープで体を巻かれてるから無理だな」
「今からほどくから大丈夫だよー。あっ、目隠しはそのままね」
「なぁ、ごっこ遊びの話はどこへいったんだよ」
「これからするんだよ、これはその準備。はい、コレ着てコレを上に羽織って、コレ履いてねー」
三つ衣類が手渡され、提督はその感触を確かめる。シャツとジャケットのようなもの、それとスラックスのようなモノだ。
「サラリーマンの格好でもさせる気か?」
「んー、まぁそんな感じー。着替えたらちょっと待ってて、後で大井っちが呼びに来るから」
「はぁ……付き合ってやるけど、後でちゃんと説明しろよ?」
「説明の必要はないから大丈夫だよ。じゃあまた後でねー」
声がドアの向こうへと消え去り、提督は着替えを開始する。
(この感じ、まさか……)
段々と袖を通していく内に、最初の予想が間違いであったとすぐに気付く。
少しこのままコレを着ていいのかという考えが頭を過るが手は止めず、暗闇の中での着替えは特に問題なく終わり、提督は黙って迎えを待つのだった。
――二十分後。
「あら、ちゃんと目隠ししたまま待ってるなんて律儀ね」
「北上が理由も無くこういう事をする奴じゃないって、お前が一番知ってるんじゃないか?」
「当然です。北上さんについてなら提督より詳しいですよ?」
「張り合う気は無いさ。良いところなら大体知ってるしな」
「――魚雷、撃っていいですか?」
「北上相手に妬くのはやめろ、流石に身が持たん」
「じゃあ冗談はこれぐらいにして、行きましょうか」
「あぁはいはい、何処へなりと連れていけ」
提督は大井に腕を引かれ、何処かも分からない場所をひたすら進んでいく。今から何のごっこ遊びをするか既に予想出来ていたが、本当にそうだった時にどうすればいいかを、必死に頭の中でシミュレートする。
「――着きましたよ」
大井の手が腕から離され、目の前で大きな扉が開く音がしたことに提督は気付く。これからどうすればいいのかを、まだ近くに居るであろう案内役に確認しようとした瞬間、背中に軽い衝撃を受けて、二三歩前へと彼の体が進む。
「提督、目隠し外して下さい。後はお二人でごゆっくりどうぞ」
背後で閉まっていくドアの向こう側に大井の声が消えていくのを感じながら、提督はようやく出された指示に従った。
暗闇から解放された直後の人間には少し眩し過ぎる光に目を細めながら、彼は前方に立つ待ち人を視界に収める。
「待たせた、馬子にも衣装、何でこんな手間のかかるマネをした。どれが一番最初に言って欲しい?」
「ちょっと提督、イジワルやめてよ」
「――綺麗だぞ、北上」
「……うん、ありがとね」
純白のウェディングドレスに身を包んだ北上。いつもとは全く違う可憐で清楚な彼女の姿に、提督は平静を装う為、最初はからかい混じりの言葉を口にした。
しかし、それを聞きそっぽを向いて頬を膨らます姿を見て、今度は素直な感想が彼の口から発せられる。
「提督も――うん、まぁ、そこそこ?」
「そこはお世辞でもカッコイイとか言えよ」
「えー? 正直微妙だし」
「着替える、帰る」
「わーていとくかっこいいなー」
「言えばいいってもんでもないからな?……まぁ、主役は俺じゃないしいいか」
結婚式場を使った、二人きりのごっこ遊び。神父も参列客も居ないその静かな空間で、二人は隣り合って立つ。
「指輪なんて用意してないぞ」
「コレ、填めてくれればいいよ」
「本当にコレでいいのか?」
「ごっこ遊びって言ったじゃんか」
手渡された指輪は、ケッコンカッコカリの時の物。既に“ごっこ遊び”と言い張るには苦しい状況で、本当にコレでいいのかと提督は悩む。
(――ん? そういえばコレ渡したの四年以上前だったよな……)
葛藤の最中、指輪が未だに渡した時の光を失っていないのに気付き、北上がそれを大事に扱っていた事を知る。
(普段は結構適当な癖に……)
相手役が指輪を見つめて固まってしまい手持ち無沙汰だったのか、ウェディングドレスを引っ張ったりヒラヒラさせながら待つ彼女へと、提督は視線を戻す。つい今しがた知った嬉しい事実も相俟って、彼はより目の前の人物をいとおしく感じた。
「指輪、填めるぞ」
「え? あぁ、うん、はい」
背中の方が気になっていたのか、提督から首を背けていた北上は、弾かれたように彼へと顔を向ける。そして、左手を突き出すように差し出した。
「誰も居ないと締まらないよな、このやり取り。そもそも指輪一つだし」
「いいのいいの。堅っ苦しい誓いの言葉とか、あたし言いたくないしね」
「恥ずかしいからか?」
「うるさいなーいいからさっさと填めてよ、ほら」
「はいはい、分かったよ」
プラプラさせている左手を掴み、指輪を薬指へと填めていく。ジッとその様子を見つめる北上の顔は、ほんのりと紅潮していた。
「――これからも、一緒に居てくれるか?」
「……うん、居る」
「俺の事、好きか?」
「好き、かな」
「誓いのキス、するか?」
「……遊びじゃなくて本気で誓ってくれるなら、したいよ」
「――ん」
返事は言葉ではなく、行動で示される。例え本当に結婚出来なくても、自分だけを見てくれるのが今だけであっても、彼女はこの瞬間を一生の大切な思い出として、胸に刻み込むのだった。
――――あっ、衣装と式場の使用料、よろしくー。
――――おい、請求額七桁あるんだが……。
・でち公『海の中を一緒に見たいでち』、投下します
――――海上。
「提督、準備はいい?」
「あぁ、いつでも大丈夫だ」
「じゃあ行くでち!」
海上から髪と同じ色のビキニを着たゴーヤが消えたのを確認し、提督もその後を追う。
PUKAPUKA丸が正常に航行できるかの確認という名目で海上に出た二人。その真の目的は、海上ではなく海中にある。
(――凄いな、コレは……)
深海棲艦が現れて以降、戦いが終わって今に至るまで、提督は海へと潜ったことがなかった。
ゴーヤに誘われて再び足を踏み入れた海の中。そこは、幻想的という言葉が相応しい世界だった。
『海の中はどう?』
『凄いって言葉しか出ないな』
『良かったでち。もっと提督にいっぱい見て欲しいでち』
筆談を交わしながら、ゴーヤは提督を先導して泳いでいく。
透き通った水、悠々と泳ぐ色とりどりの魚、様々な形をした岩、そして、時折振り返りながら笑顔を見せる彼女の姿。
(海の中が似合うな、やっぱり)
まるで、一枚の絵を見ているような感覚。海の中というだけで、提督にはゴーヤが人魚のように思えてきていた。
『どうしたの?』
『お前を見てた』
『ゴーヤはいつでも見れるよ?』
『今のお前を、この眼に焼き付けておきたいんだ』
二人の筆談は、唐突にそこで一度終了する。
水底へと沈んでいくゴーヤのボードを見送った後、提督は更に文章を書いて彼女へと見せる。
『海の中でも顔って赤くなるんだな、そういうところも可愛いぞ』
それを見た瞬間、流石潜水艦娘と言うべきなのか、ゴーヤは物凄い勢いで提督の元へと泳いで戻る。そして、ボードを強奪して筆を走らせた。
『そういう事は海の上で提督の口から聞きたいでち!』
顔を隠すように突き出されたボード。提督はそこへとまた返事を書いて裏返し、ゴーヤへと見せた。
『背中のを外しても助けてくれるなら、今すぐに口でこの気持ちを伝えてやるぞ』
――裏返してからおよそ十秒後、ボードの裏から顔を覗かせたゴーヤは、小さく頷いて返事をする。
(こういう姿も可愛いな、本当に)
息を大きく吸い込んだ後、提督は口につけていた物を外し、こっちへ来いと指で合図を送る。
次の瞬間には、身体に密着する柔らかい身体の感触と、髪を揺らめかせながら見上げるゴーヤの瞳に、彼は心を奪われていた。そして、徐々に訪れる息苦しさの事も忘れて、口で気持ちを伝えるのだった。
――――PUKAPUKA丸、甲板。
「マジで死ぬかと思った。やっぱ水中で外したら危ないな、うん」
「提督、キスは嬉しいけど、海の中で力抜ける程激しいのはしちゃダメだよぉ……」
「悪い、いつもと雰囲気が違うから気分が乗って止まらなくなった」
「今度からは気を付けてくだちぃ」
「――ゴーヤ、ここなら海の上だよな?」
「正確には船の上でち」
「甘いゴーヤが食べたい」
「……食べても、いいよ?」
――――しょっぱい。
――――そりゃそうでち。
タイトル変更
・隼鷹『あたしはアンタのモノ』、投下します
ここまでで今回は堪忍してつかぁさい……
――――???
隼鷹からの誘いを受け、提督は鎮守府内のとある場所へと来ていた。
(いいこと、ねぇ……)
案内された先は、少し前まで懲罰房として使われていた部屋。使われていたといっても、半ば冗談半分の反省部屋と化していたので、提督すらそんな部屋があったことを今の今まで忘れていた程だ。
そして、現在は――。
「なぁ隼鷹、元懲罰房が酒の保管庫になってるとか聞いてないんだが?」
「そりゃー言ってないからね。加賀は鳳翔さん経由で話を通したから黙認してくれてるし」
「はぁ……酒の事となると手回しが良くてほとほと感心させられるよ、お前には」
つくづく呆れたという表情を浮かべながら、提督は近場にある酒を順番に眺める。いまいちピンと来ない名前のモノから、有名なモノまで、数多くそこには並べられていた。
「それで、今日呼んだ目的は何だ。俺があまり酒飲めないのは知ってるだろ」
「ちゃんと最初にいいことしたげるって言ったじゃんか。まぁ座って座って」
促されるままに、提督は木の椅子に腰掛けた。すると、その椅子の前の机へと隼鷹は徐(おもむろ)に、液体の入ったコップを幾つか並べていく。
「おい、だから飲めないって言ってるだろ」
「まぁまぁ待ちなって」
コップを並べ終えると、今度はもう一つある椅子を提督の横に置き、そこへ隼鷹も腰掛ける。そして、怪訝そうに一連の行動を眺めていた彼に、彼女は飛鷹が以前見せたような笑みを見せながら、こう言った。
――――ゲームに勝てたら、あたしを今日1日好きにしていいよ。
ゲームの内容は至って単純。五分以内に目の前のコップに入っている全ての酒に口をつけられたら提督の勝ち、出来なければ隼鷹の勝ちというものだ。
賭けるのは互いを1日好きにしていい権利。制限を設けて然るべきだろうが、互いに一切制限はない。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「酒の種類なら飲むまで教えないからね、口に入れてからのお楽しみってやつさ」
「酒の種類なんか俺に言われても分からん。お前の言う“いいこと”は勝った時限定ってことなのか?」
「さぁ、どうだろうねぇ? まぁそれも後のお楽しみってことで」
別にいいことに執着しているわけではない。だが、提督は負けた場合の隼鷹からの要求が、女装をしろだとか着ぐるみを着ろといった系統であった場合の事を恐れ、是が非でも勝とうと決意する。コップは全部で八個、あまりにもアバウトなルールの穴とその対策を考えると、勝負は最初の一瞬にかかっていた。
「じゃあ準備はいいかい?」
「いいぞ」
「よーい――始め!」
開始と同時、提督は目の前のコップを一ヶ所に集める。そして、行儀や形振りに構わず、持ち上げないまま舌先で一つずつ舐めていくという作戦に出る。
(――っ!?)
「ごほっげほっ!」
「あはははは! 予想通りの行動と反応してくれたねぇ」
「おまっ……コレ……」
「おっ、気付いちゃった? それ、前に提督が一回飲んでのたうちまわったスピリタスだよ」
(こんな遊びで出すもんじゃねぇよ!)
声にならない怒りを隼鷹にぶつけながら、残りの七つのコップに視線をやる。提督が今危惧している通り、残りも全てスピリタスが入っている。
「後四分だね、どうする? 降参しちゃうかい?」
「お前、最初から勝たせる気無かっただろ……」
妨害してはいけないと言ってないにも関わらず、隼鷹はゲームが開始されてから少しも動こうとはしなかった。それは、提督ではコレを飲めない事がはっきりと分かっていたからだ。
逆に、無理して飲もうとすれば止めようという考えはあり、二つ目以降に口をつけ始めたら動こうとしていた。
「こんなもんに後七回も口をつけられるかってんだ……」
「へー意外にあっさりと諦めるんだね」
「明日に差し支えるようなのは勘弁なんだよ」
「ふーん、じゃあまだ時間には早いけど――」
提督が見ている前で、隼鷹はコップに一つずつ口をつけていく。そして、残りのコップ七つ全てに口をつけると、横に居る不機嫌な男の顔をがっちりと掴んだ。
「待て、お前何を――んぅ!?」
口付けと共に酒を流し込まれ、強烈な酔いが身体を駆け巡り、提督は動きを封じられる。そして、深く絡められた舌の感触もまた、自由を奪っていた。
「――よし、勝負はこれでアンタの勝ち、あたしを好きにしていいよ?」
「っ……最初からそのつもりなら、飲ませなくて、良かっただろ……」
フラつく思考と身体を何とか支えての、精一杯の虚勢。しかし、既に半分隼鷹に抱き着いているような体勢では、格好がつく筈もない。
「全くだらしないなぁ。あたしが好きにしていいって言ってるのに、押し倒す気力も無いわけ?」
「わざとか? 嫌がらせか?」
「――ん」
――ちゅ、れろ、はむ、ちゅっ。
「ほら、早くしないとこんな風に、負けたあたしの好きにしちゃうからね?」
「――どうしたんだ? いつもと少し違うぞ、お前」
「……何でそうやって気付くかなぁ、アンタは」
バツが悪そうに、胸に提督の頭を抱きながら、隼鷹はいつもの雰囲気とは違った声を出す。 徐々に抱く力も強くなっていき、その豊満な胸に顔が埋もれきる前に、提督は呼吸が出来るように顔を下向きにする力
「何かあったなら、話聞くぞ」
「――提督、私を解体せずにこうしてお側に置いてくださり、心よりお礼申し上げます」
「……ふっ」
「ちょっと、人が真面目に礼を言ったのに鼻で笑うって失礼じゃないのさ」
癪に触ったのか、隼鷹は提督の顔を掴み、目線が合うように持ち上げる。見えてきた顔は、酔いで真っ赤だ。
「昔の事に思いを馳せるのもいいが、お前はいつもみたいにバカ騒ぎしてろよ。でなきゃ落ち着かん」
「人がいつも騒いでるみたいな言い方は酷くない? まぁ、強ち間違っちゃないけどさ……」
「心配すんな、お前の綺麗な部分も可愛い部分もちゃんと知ってる」
「かなり酔ってるね、アンタ――ん?」
唇を押し付けるようなキス。隼鷹が支えなければ、そのまま床に倒れ込んでいる勢いだ。
「頭突きじゃないんだから、もっと優しくしてよ」
「……脱げ」
「いきなりだね」
「脱ーげー」
「はいはい……愛してるよ、世界でただ一人、アンタだけを」
「……誰かに渡す気は無い、お前は俺のだ」
「――あぁ、あたしはアンタのモノだ。これからも、この先も、ね」
――――さっさと脱ーげー。
――――(酔うと若干幼くなるね、コレはコレでいけるかも……)
続き(エロ)が見たいという方が居ましたら、書け次第投下します
大井っちは早くても夜以降になります
ちょっと時間かかっててすいません、1日一本はなんとか頑張ります
頑張らずに書きました
・大井『北上さんとしたなら、私ともして下さい』、投下します
――――提督執務室。
「提督、次は私の番ですよね?」
「待て待て待て待て、アイマスクと耳栓は分かるが、手錠と足枷って何だ」
「だって、逃げられたら嫌じゃない」
「逃げないからそれは置いてけ」
最初から使う気は無かったのか、持ってきた物を全て放り出し、大井は提督の腕を取って歩き出す。口調は相変わらずキツいものの、態度や行動は以前にも増して優しくなっていた。
「それで? またごっこ遊びに付き合わされるのか?」
「私とが嫌なら、このまま執務室に帰ってもいいんですよ?」
「そんな勿体無いマネはしたくないな」
「――ふふっ」
少し腕を掴む力を強めながら、大井は上機嫌で提督を引っ張るように歩き出す。こんな姿を見せられては、部屋に帰ろうなどと思うはずもない。
鎮守府の外でタクシーを拾って移動する最中も、その腕が離されることはなかった。
――――???
「……こう来たか」
以前はタキシードを着せられた挙げ句、北上に散々な事を言われた提督。今度も、その道は避けて通れそうになかった。
(タキシードもだが、紋付袴も一生着る機会は無いと思ってたんだがなぁ……)
こういった礼装を苦手とする彼からすれば、ほとんど日を置かずに和と洋両方のものを着させられるなど、拷問にも等しかった。
「提督、着替え終わったー?」
「あぁ、大井は?」
「大井っちの方はもうちょいかな、女の子の方が時間かかるからねー」
「そうか。そういえば北上、神主には何て言って来たんだ?」
「お金だけ払って、細かいの全部無しで自由にさせてって言っといた。凄い顔してたよー提督にも見せたかったなー」
(だろうな……)
金は払う。場所だけ貸せ。本当に結婚するわけじゃないし、雰囲気を味わって満足したら帰るから邪魔するな。
はっきり言って滅茶苦茶な要求だ。コレで許可してくれたのだから、ここの神主は心が相当広い。
「んー……そろそろいいかな。私は大井っちの花嫁姿見たら帰るし、後は二人でごゆっくりー」
「あぁ、またな」
提督の暇潰しに付き合っていた北上は、大井の元へと戻る。それを見送ってすぐ、彼もまた部屋から移動するのだった。
――――神社、境内。
「――提督」
声のした方向に提督は視線を向ける。そこには、日の光の中でさえ眩しく感じる程優しい笑みを浮かべた、花嫁が立っていた。
「……」
「黙ってないで、何か言ったらどうですか?」
「――ん? あぁ、うん、綺麗だ、もっと近くで見たい」
「はい」
歩み寄る大井。普段はキツめの口調や行き過ぎた行動などに隠れて目立たなかったが、ずっと彼女は彼を献身的に支えようという姿勢を見せていた。
だからこそ、この白無垢という衣装に身を包んだ大井に、提督は一瞬言葉を失うほど目を奪われていた。
「タキシードもだったけど、やっぱりいまいちね……」
「今ぐらいは毒吐くのやめないか?」
「だって事実だもの」
「相変わらず容赦無いよな、お前」
(まぁ、今はそのお蔭で助かってるんだがな……)
目の前まで歩み寄って来ての第一声が予想していた通りのもので、若干提督は平常心を取り戻す。辛辣な言葉を有り難いと感じるなど、滅多に無い経験だ。
「提督」
「何だ?」
「今、幸せですか?」
「……あぁ」
「じゃあこれからも幸せで居て下さい。でないと、私は貴方を恨みます」
「……あぁ、分かってる。今の日々に後悔は無いし、お前にまたケツを叩かれなきゃならない状態にはならないさ」
「――もう、私の支えはいりませんか?」
「急に不安になるからそういう事を言うのはやめてくれ」
「……ふふっ、しょうがない人ですね、提督は」
「チキンだからな」
「純情童貞は卒業しちゃいましたけどね」
「――初夜はごっこ遊びに含まれるのか?」
「魚雷、何本いっときます?」
「今は魚雷無いだろ」
「チッ……」
「――大井」
「はい?」
――――今までずっと支えてくれてありがとう、愛してる。
――――……ずっと、これからも愛してますよ、提督。
――――海水浴場。
「司令、この水着どうですか?」
「あぁ、似合ってるぞ」
「コレ、金剛お姉様に選んでもらったんです。そう言ってもらえると悩んだ甲斐がありました!」
常に元気で明るい印象の比叡。そのイメージをより際立たせる、健康的な白色のビキニ。
フリルで可愛らしさを出しつつ、その引き締まったボディラインで魅力的な女性らしい部分もしっかりと披露していた。
(サラシで普段は押さえ付けてるからだが、改めて見ると比叡も結構胸あるよな……うん、足もスラッとしてていい)
「あの、司令? あんまり見つめられると流石に私も恥ずかしいというか、なんというか……」
「減るもんじゃないから気にするな。――で、どうする?」
ここへ来たのは海で遊ぶ為であって、眼福な水着姿を見る為ではない。提督の言葉にグルリと辺りを見回し、比叡はある一点を指差した。
「あそこへ泳いで行きたいです!」
――――???
「……」
「司令? 砂浜に顔を埋めたら口に砂が入りますよ?」
「分かってるよそんなことは……」
うつ伏せから仰向けになり、顔に付いた砂を払い、提督は空を見上げる。雲一つ無い快晴に、身体には日の光がこれでもかというぐらい降り注いでいた。
「こんなにまだ日が高いのに体力使いきった挙げ句、死にかけるとは思わなかったぞ……」
「一キロ程度なら司令は楽勝だと思ってたんですが……」
「生憎体育会系じゃないんでな、帰りはずっとお前に背負って泳いで欲しいぐらいだ」
途中で足がつり溺れかけた提督を比叡が背負って泳ぐというアクシデントを乗り越え、二人は海水浴場から見える無人島へと来ていた。特に何かがあるわけでもないので、地元の人間も滅多に訪れない場所だ。
「林と砂浜以外、何もないな」
「はい、清々しいぐらい何にも無いですね」
「何でここに来たかったんだ?」
「……ふ、二人っきりになりたいなーなんて」
「ほーそうかそうか――比叡、ちょっとここに座れ」
寝転がったまま、提督は自分の傍へと座るよう比叡に指示する。膝枕でも要求されるのかと喜んで彼女はそこへと座るが、待っていたのは全く別の事態だった。
「ヒェー! 頭をグリグリしないで下さい!」
「二人になりたいならもっと他にも場所があっただろうが!」
「だってここが良さそうに見えたんですよー!」
「見えただけで選ぶんじゃねぇ!」
少し身体を起こし、こめかみ辺りに拳を当てて提督は比叡へお仕置きを開始する。確かに二人にはなれる場所だが、戻らないと食事も出来ず、疲れきってしまっていては遊ぶことすらままならないのだ。
「はぁ……まぁ止められなかった俺も悪いか。少し休みたいから膝貸せ」
「はい! どうぞ!」
今の今までお仕置きされていたとは思えない元気な返事に苦笑しながら、提督は比叡の太ももに頭を預ける。肌で温もりを感じながら間近で顔を見れるこの状況に、見下ろす彼女の顔はとても満足そうでにこやかだ。
「司令と無人島で二人っきり……いっそこのままここに住んじゃいたいです」
「金剛はどうするんだよ」
「お姉様も呼べば万事解決ですね!」
「金剛だけじゃなく、全員この島に来るだろうけどな」
「それだったら鎮守府の方が暮らしやすいですから、鎮守府でいいです」
「だろうな」
「……司令は、私と二人っきりは嫌ですか?」
「そんなしょげた顔は似合わんからやめろ。嫌ならこんなところまで付き合うかバーカ」
「何もバカって言わなくてもいいじゃないですか! 司令のっ――うーん……えっと……」
とっさに悪口が出てこず、眉を寄せて悩む比叡。その可愛らしい姿を見て、提督は顔を綻ばせる。
「比叡」
「うーん……司令の悪いところ……悪いところ……」
「ひーえーいー!」
「はいっ!? な、何ですかっ!?」
「お前と居ると退屈はしないし、可愛い部分がいっぱい見れて良いことだらけだ。ありがとな、比叡」
「――司令は、ズルいです。そんなこと言われたら、もっと好きになっちゃいますよ……」
「悪口言う奴にはこうだ」
「ん……」
甘い蜜の様なお仕置きを、比叡は目を閉じて受け入れる。そのまま、お仕置きは二分程続くのだった。
――――気合い! 入れて! 泳ぎます!
――――(本当に背負われて帰ることになるとは思わなかった……)
・比叡『気合い! 入れて! 泳ぎます!』、投下しました
先にタイトルを書くの忘れてました……
・鳥海『眼鏡で合わせるか、コンタクトで合わせるか』、投下します
――――服屋。
「鳥海って大人しい見た目の割に、服はちょっと派手なの持ってるよな」
「摩耶姉さんとお揃いで買ったりしていますので……」
(背中が丸見えなのとか持ってたのはそれが理由か……)
「今日は折角ですし、司令官さんに一着選んでもらいたいです」
「別にそれは構わないんだが、最近コンタクトをしてるんだよな?」
「はい、していますよ?」
「でも、今日は眼鏡なんだな」
「その日の服や気分によって変えています。どこか、おかしいですか?」
「いや、おかしくないし似合ってるぞ。ただ、選ぶなら眼鏡かコンタクト、どっちに合わせようかと思っただけだ」
「司令官さんは、どちらの方が好み――」
「眼鏡」
「そこは即答するんですね」
「百五十人近く居る中で、鳥海を含めて眼鏡かけてるの五人しか居ないからな、出来ればかけてて欲しい」
(司令官さんは眼鏡もお好きの様ですね、しっかりデータを収集しないと)
「正直、いつもの戦闘用の服がかなり似合ってて個人的には好きだ」
「司令官さんの好みを把握しておきたいので、好きに選んでもらっていいですよ」
「分かった、ちょっと待ってろ」
――十分後。
「上はコレとコレ、下はコレでどうだ?」
「ちょっと待ってて下さい、試着してみますね」
――試着中。
「――着れました」
「見ていいか?」
「はい、その為に着ましたので――どう、でしょうか?」
試着室のカーテンが開かれ、提督の選んだ服に身を包んだ鳥海が姿を見せる。少し自信が無いのか視線は横に向けられているものの、ちゃんと見てもらいたいという意思の表れが、後ろに回された両手から見て取れた。
上は身体のラインがはっきり分かるTシャツに短めのデニムジャケット、下は普段の服によく似たプリーツスカート。背伸びでもしようものなら、思わず見てしまいたくなるヘソと、触り心地の良さそうなむっちりとした太ももが顔を覗かせる組み合わせだ。
「うん、いいな。その格好で眼鏡の位置を直す仕草とかされたら、結構グッとくる」
「……こういうのですか?」
鳥海は片手を腰の後ろに回したまま、もう片方の手で眼鏡を軽く持ち上げる。今度は、視線をしっかり提督へと向けていた。
「――やっぱりいいな、眼鏡も」
(反応は上々、これからは少し意識してやってみましょうか)
彼女の提督に関して集めているデータが、また更新される。提督に関してのデータとはいっても、好かれる為のデータであって、脅せる様な秘密などを知っている訳ではない。
「今日はそれで一緒に出掛けないか?」
「はい、司令官さんがそうして欲しいのでしたら」
「あぁ、じゃあそうしてくれ」
「――でも、その前にまだやることが残っています」
「……早く会計を済ませよう鳥海、そっちは紳士物で今は関係無いから引っ張るのをやめろ、俺はこのままでいい!」
「私も選びたいので、付き合ってもらいます」
「カッターシャツにジーパンが一番楽だから、これでいいんだよ俺は」
「デニムって言ってください、まだ若いんですから」
「そういうのが面倒だから、自分の着る服はどうでも良くなったんだ」
「この際ですからしっかりコーディネートしてあげますね。後、伊達眼鏡も買いましょう」
「やーめーろー!」
――――お互い選んだ服で歩くって、少し気恥ずかしいですね。
――――(試着室に一時間も押し込まれたのは地獄だったが、照れてる鳥海を見られたからよしとするか……)
武蔵・望月・鳥海・巻雲・霧島・伊8
言え!誰を抜いた??
>>447
眼鏡っ娘艦隊が武蔵が居ないから作れない提督と話をしていた影響ですごめんなさい
六人全員使ってて間違えるとか本当にすいません……
・初霜『かすり傷一つ負わさせません』、投下します
――――街中。
「なぁ初霜」
「はい、何でしょうか?」
「お前なりに考えての行動っていうのは分かってるんだ。――でもな、曲がり角の度に壁に張り付いて、進行方向の安全を確認するのはやめろ」
「護衛術が身に染み付いているので、つい……」
肩がぶつかりかければ相手を投げ飛ばし、鳥の糞が頭上に落ちかければ袖に仕込んだ警棒で弾き飛ばし、光を反射する何かが視界に入れば射線を塞ぐように立ちはだかる。
それもひとえに提督を守りたいが故の行動であり、彼女に一切悪気はなかった。
「お前の気持ちは凄く有り難いが、これじゃ手も繋げないだろ? そうそう俺だって簡単に死にゃしないから大丈夫だ」
「手を、繋ぎたかったんですか?」
「嫌か?」
「いえ、そんなことはないわ」
(片手でも、護衛は出来るわね……)
手を繋ぎ、二人は再び歩き始める。しかし、やはり周囲が気になるのか、初霜の視線は背後や物陰へと注がれている。
その小さいながらも凛とした姿を見て、提督は頼もしさを感じると同時に、少し物悲しさも感じていた。
「――初霜、俺と一緒で楽しいか?」
「えぇ、楽しいわ」
「そう、なのか……?」
予想外の素早い返答に、提督は言葉を詰まらせる。それに対して初霜は、真っ直ぐに彼の目を見つめて柔らかな笑みを浮かべた。
「今こうして二人で街を歩いている。それだけで、私は満足なの」
「――“もしも戦いが終わったら、街を二人で歩いてみたい”、だったか」
「そう、ちゃんと提督は私との約束を守ってくれた。だから、貴方の護衛には尚更気が抜けない――のっ!」
提督の後頭部付近を飛んでいた蜂が、警棒により叩き落とされる。片手が塞がっていても、彼女の動きは全く鈍ってはいなかった。
「何か国のお偉いさんにでもなった気がしてくるな」
「提督は誰かに狙われる可能性が十分にあるわ。外を出歩く際は細心の注意を払ってね」
「大抵一人では出歩かないし、そんなに心配しなくても俺は誰かに狙われたりしないさ」
(狙撃されかけたのは一度や二度ではないのだけど……)
「――でも、いつも守ってくれるのには本当に感謝してる。ありがとな、初霜」
「あっ……」
頭を優しく撫でられ、初霜は少し嬉しそうに頬を染める。一緒に歩くだけで満足とはいっても、それ以外を全く望んでいないわけではないのだ。
「これからも、提督のことは絶対に私達が守るわ」
「守られっぱなしってのは歯痒く感じるが、無茶して余計に心配かけないよう気を付ける」
「無茶しようとしたら気絶させて運びます」
「肝に銘じとく」
「それならまず、物陰を歩くよう心掛けて。後、私から半径1メートル以上離れないで」
「離れたら?」
「気絶させるわ」
「じゃあ手をしっかりと繋いでおくか」
「うん、逃げる時にちょうどいいわ」
「逃げなきゃならんような目には遭いたくないな……」
――――今度から外出の際は防弾チョッキを着用してね。
――――そこまでしなくてもよくないか……?
九本終了
8時半まで艦娘指定受け付けますので、まだ書いて欲しいなんて方が居るならお願いします
・夕張『工廠から引っ張り出された』
・川内『あの忍者っていうの夜戦得意そうだよね!』
・大鳳『チョコレートがあったから食べてみた』
・夕立『最高に素敵なパーティーがしたいっぽい!』
・那珂『皆ー! 那珂ちゃんだよー!』
の、五本です
読みたい方居るのか分かりませんが、前スレで省いた部分の導入をば投下します
リクエストも随時書いてますのでご安心を
――その報は突然にもたらされ、全世界へと広まった。
“深海棲艦の発生源を突き止めました!”
――――提督執務室。
「――謎の結晶?」
「はい、恐らくは未知の物質かと」
手元の資料を捲りながら、加賀は淡々と説明を続けていく。
「現在到達可能な海域付近から、空母数百名の超大編成で更に先の海域を艦載機に偵察させたところ、一つの海域から大量に溢れ出る深海棲艦を発見。無数の艦からの対空放火によりほぼ全機撃墜されたものの、その中の一機が、海上に浮かぶ謎の結晶から深海棲艦が生まれるのを確認したそうです」
「発生源……」
提督も加賀の報告を聞きながら、手元の資料を捲っていく。最近確認されたレ級や、姫や鬼といった主力級も多数確認され、二度目の偵察部隊は近付く間すら与えられず迎撃されたと、そこには書かれていた。
(軍全体があれだけの戦果を挙げているにも関わらず、深海棲艦が減る気配が無いのは、時間が経てば復活するからだと思っていたが……)
何度海域を制圧したとしても、時間が経てばまた何処からともなく現れ、圧倒的な物量で一定のラインまで押し戻される。当然、大規模な作戦の度に少なからず犠牲は出てしまい、新しく艦娘を建造したとしても、練度の問題が出てきてしまう。
一方、大半の深海棲艦は意思を持たず、沈むことに何の抵抗も無く、艦娘を誰か一人道連れに出来れば上々という戦い方だ。更に、統率する意思を持った艦が居れば、高度な戦術を用いてくることもあり、余計に質が悪い。
それが無尽蔵に湧くというのだから、問題は更に深刻となる。
「例えこの情報が正しかったとしても、その結晶が破壊出来るかどうかは不明。世界に一つだけなのかも不明。また出現するかも不明。破壊すれば戦いが終結するかも不明。――それでもやるしかない、か」
「はい、この一縷の希望に、大本営は餌に群がる鯉のように食い付きました。主だった鎮守府には既に、全戦力を“結晶破壊作戦”へと投入するよう、命令が下されています」
「で、当然うちにも来てる、と」
執務机に広げられた一枚の書類。そこには作戦への参加命令と、大雑把な作戦内容が書かれていた。
(こんな馬鹿げた作戦に付き合わせたくはないが、先々の事を考えればそうも言ってられんな……)
日に日に敵の戦力は増すものの、艦娘の強化や補充には限度がある。いつかはじり貧になり、打つ手が一切無くなるのは目に見えているのだ。
「――提督」
「あぁ、分かってる」
「全艦へ通達! “結晶破壊作戦”に俺達も参加する! 傍迷惑な結晶を破壊しに行くぞ!」
――作戦決行日。
「待機は夕張と明石だけって……大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。工厰に籠って普段は出てこないけど、夕張だって強いもの」
「あの人の目が届かんからって、鎮守府を爆発させるようなことやらかさんか心配やけどな」
着任した時とは全く別の不安を漏らす大鳳。それを、瑞鳳と龍驤は明るく笑い飛ばす。
「……そうね。ありがとう、二人とも」
「今回もいつもみたいに戦って、いつもみたいにただいまーって帰るだけだよ」
「ちゃっちゃとぶっ倒して帰るで!」
――また勝って、ここへ帰る。
今回の作戦に参加する者全員の心の中には、この思いがどこかに必ず存在していた。例え今回の作戦について、“最後は各自の持てる力を尽くして帰って来い”という抽象的な指示以外、事前にされていなかったとしても……。
――提督執務室。
「俺もPUKAPUKA丸で、作戦海域の近くへ後から向かう。出来る限り状況を把握して、全艦に指示は出す。だが――」
「勝つと信じて戴けていれば結構です。あとは、私が何とかします」
「……そうだな、“信じる”のが俺の仕事だ」
「えぇ、いつものように、御自分の責務を全うして下さい」
普段の出撃と今回の作戦。そこには何の違いもないのだと、加賀は提督の焦りや不安を見越して口にする。その言葉の一つ一つが、彼の眉間に寄っていた皺を消していく。
絶対的自信、信頼、誇り、絆。それらの全てが、彼女の言葉に確かな安心感を持たせていた。
「では、私も準備がありますのでコレで失礼します」
「あぁ」
踵を返し、執務室のドアへと手をかける。そこで、彼女の動きは一度停止した。
「……提督」
「何だ?」
「全部終えたら、今度は私に膝枕をして下さい」
「……あぁ、お安い御用だ」
「――コレで気分が高揚しました。失礼します」
答えに満足し、今度こそ加賀は執務室から姿を消す。廊下には暫く規則正しい足音が響き、次第にそれも提督の耳には届かなくなった。
(全員無事で帰って来てくれさえすれば、何だってしてやるさ。――だから、帰って来い)
――第一出撃艦隊、待機場所。
第一艦隊の主な役割は、退路の確保と挟撃への警戒にある。駆逐と軽巡、重巡、航巡、軽空母、そして戦艦と揚陸艦一名で編成されており、総数はおよそ五十名程。敵の足止めと主力艦隊のバックアップを同時にこなさなければならず、いかに砲撃と雷撃と爆撃の雨を止ませる事無く持続できるかが肝となる。
第一艦隊所属艦は、吹雪型、綾波型、初霜を除く初春型、朝潮型、秋雲を含む夕雲型、長良と五十鈴を除く長良型、阿賀野型、天龍型、球磨と多摩、古鷹型、青葉型、最上型、飛鷹型、祥鳳型、あきつ丸、長門という大所帯。
これに更に他鎮守府の艦娘も多数加わるというのだから、そうそう簡単にこの布陣が崩れる恐れは無かった。
「皆、絶対に勝つよ!」
「天気もいいですし、頑張りましょー」
「妾達の力、余すこと無く見せてやるのじゃ!」
「この大勝負、司令官の為に受けて立ちます!」
「提督が気兼ね無く甘えてくれる日々の為に!」
「て、提督さんの為に、頑張ります」
「提督さんと毎日お昼寝する為に頑張る!」
「一番長く戦えるなんてツイてるじゃねぇか!」
「優秀な球磨と多摩に任せるクマー」
「性能だけじゃない重巡洋艦の良いところ、見せてあげる!」
「勝利インタビューって誰にすればいいんですかね? やっぱり司令官?」
「皆、衝突禁止だよ!」
「景気良く派手にやっちゃいましょ」
「小柄な私だって、やる時はやるんです!」
「これが終わったらゆっくりするであります」
「この長門がここに居る限り、何も臆することはない!」
第一艦隊は最も長く戦闘を継続しなければならず、その負担は計り知れない。しかし、誰一人としてその目に恐れや不安は見せる者はいなかった。
――第二艦隊、待機場所。
第二艦隊の役割は、敵を撹乱することにある。小回りの利く艦と潜水艦で敵の隊列を乱し、一部の主力艦でそこを突き、どこか一点へ敵が集中して進行することを防ぐのだ。
第二艦隊編成は、島風、天津風、雪風、睦月型、長良、潜水艦娘全員、翔鶴型、伊勢型。
第一艦隊に比べれば小規模ながら、連携と瞬間的な火力については申し分ない。彼女達の働き次第で第一艦隊と第三艦隊へかかる負担が相当減る為、なるべく長く被弾をせず回避し続けることが、彼女達の最重要事項となっていた。
「出撃おっそーい!」
「島風、先行しすぎちゃダメよ?」
「絶対、勝ちます!」
「睦月達だってやる時はやるんだから!」
「持久力なら私だって負けないわ!」
「運河じゃないけど攻め落としてやろうじゃない!」
「瑞鶴が隣に居てくれるなら、私に怖いものは無いわ!」
「日向じゃないけど、晴嵐飛ばして突撃すればいいだけよ!」
囮としての役割が強く、一人一人が引き受ける敵の量もかなりの数が予想される。しかし、積み重ねてきた経験と絶え間ない努力、そして自分達へ向けられた信頼が、彼女達に恐れぬ勇気を与えていた。
その心が折れぬ限り、彼女達を捉えるのは、容易ではない。
――第三艦隊、待機場所。
第三艦隊の役割は、所謂露払いというものだ。敵陣に風穴を開け、消耗させることなく第四艦隊を送り届けるのを目的に編成されており、層的には一番ここが厚くなっている。
第三艦隊編成は、暁型、白露型、残る陽炎型全員、北上、大井、川内型、妙高型、高雄型、鳳翔、龍驤、千歳型、二航戦、金剛型、扶桑型、陸奥、独艦娘三人。
敵陣を切り開いていく以上、姫や鬼、フラグシップ級も多数相手にせねばならず、かなりの激戦が繰り広げられることはまず間違いない。だが、それを十分に可能とするだけの戦力が投入されていることも確かだった。
「一人前のレディーとして頑張るんだから!」
「一番先に、敵陣突破します!」
「陽炎の戦い、見せてあげるわ!」
「大井っちー酸素魚雷撃って撃って撃ちまくろうねー」
「えぇ、北上さん。冷たくて素敵な魚雷で、冷たい海の底に還してあげないと」
「夜戦になったら私達の出番だね!」
「終わらせましょう、全てを」
「あの方が笑っていられる未来の為に!」
「畑の手入れもありますし、なるべく早く終わらせましょう」
「舐めとったら痛い目見せたるでぇ!」
「帰ったら鳳翔さんのお店で一杯飲みたいわね」
「多聞丸、見ててね……」
「飛龍と私のコンビネーションは凄いんだから!」
「パーフェクトな勝利をテートクにプレゼントするヨー!」
「私も、山城も、欠陥戦艦なんかじゃないっとことを証明して見せるわ」
「あらあら、コレは私も頑張らないといけないわね」
「私達ドイツ艦も負けていられないわ、やるわよ!」
勝利を疑う者はなく、気負う者もない。その統一されきった意思は、槍のように鋭い。
――第四艦隊、待機場所。
第四艦隊の役割は当然ながら、敵陣最奥部の結晶を破壊することにある。破壊後は第三艦隊と合流しながら残存勢力を蹴散らす仕事も担っている。
第四艦隊編成は、木曾、利根、筑摩、大鳳、加賀、赤城、大和、武蔵の八名。
島風を除く待機組と、利根と加賀との連携に適した二人、そして一航戦の二人をバックアップする大鳳という布陣だ。
「あんまり潜水艦の相手は得意じゃないが、居たら俺に任せろ」
「有象無象の雑魚共は吾輩と筑摩が引き受けよう」
「姉さんの後ろは、私が守ります」
「加賀と赤城の二人には、敵を一切近付けさせないわ」
「制空権は譲りません」
「間宮さんがご馳走を作って待っているそうですので、手早く片付けましょう」
「大和と武蔵は戦艦級のお掃除ですね」
「大和型二隻が揃って相手をしてやるのだ、多少は歯応えのある相手が居ることを期待しよう」
一騎当千の強さを持つ者達と、その力を更に引き出す者達。出鱈目の強さを誇り、然れど傲らず、もたらすのは常に勝利の二文字のみ。
溢れんばかりの闘志を内に秘め、いつもの気楽さを崩さず、来るべき時が来るまで、彼女達は力を蓄えるのだった。
――そして、時は来る。
――――“全艦抜錨、出撃せよ!”
ひとまず投下終了
乙
初霜と五十鈴がいない気がする
>>477
次にまとまって書こうとしてる部分でそれについては触れます、ミスではなくちゃんと二人には大事な出番があります
>>478
了解です
気になっちゃったからね
ゴメンね
>>479
いえいえ、ちゃんと読んでいただいてるということなので、気にしてもらえて嬉しいです
・夕張『工廠から引っ張り出された』、投下します
昼に蕎麦食べたのでちょうど良かった
――――工廠。
「夕張ー」
「提督? 今から執務室に行こうと思ってたんですけど、何か急ぎの用件ですか?」
「飯食いに行くから着替えろ」
「……はい?」
――――京都。
「夕張が蕎麦好きってのを思い出したら、急に蕎麦が食いたくなってな」
「蕎麦を食べに来たんですか?」
「あぁ、祖母に良く連れてこられた店があるんだ。お品書きに“みそぎ蕎麦”っていうのがあってな」
「みそぎ蕎麦?」
「ざるそばなんだが、ちょっと普通とは違う。――白い蕎麦だ」
「白い蕎麦、ですか?」
「一番粉を使っててな、元々は献上品だったものらしい」
「更科蕎麦とはまた違うのね」
「……次は更科蕎麦食いに行きたくなったな、今度は大阪行くか」
「とりあえず、今日はそのみそぎ蕎麦っていうのを早く食べてみたいです」
「それもそうだな。――着いたぞ」
――店内。
「良い雰囲気のお店ねー……」
「蕎麦を食べに来る店だからな、自然と客層も落ち着いててゆっくり出来る」
「提督もみそぎ蕎麦を?」
「いや、俺は今日は普通のざるそばと木の葉丼にしとく」
「それは、私に他のメニューも食べさせてくれるってことかしら?」
「食べ比べてみるのもいいだろ?」
「えぇ、せっかくだから色々なメニューを味わいたいわ」
「じゃあ注文するぞ」
――十五分後。
「コレがみそぎ蕎麦ね、いただきます」
「どうだ?」
「――美味しい。あっさりしてて、のど越しも軽いわね」
「そうか、気に入ってもらえたなら何よりだ」
「あの、そっちのも食べてみたいんだけど」
「ん? じゃあ、ほれ」
(意図せずあーん状態ですって!?)
「早く食え、俺も食いたいんだ」
「え、えぇ……あーん――うん、こっちは蕎麦の風味を感じられて美味しいわね」
「じゃあそっちのも食わせろ」
(デ、デートっぽい……)
「おい無視すんなコラ、海老天食うぞ」
「へっ!? あっ、はい、どうぞ!」
「蕎麦くれって言ってんのに、海老天を尻尾側から差し出されてどうしろってんだよ……」
「し、尻尾も試してみればいいんじゃないかしら!?」
「俺は尻尾は食わない派だ!」
――――木の葉丼って木の葉が入っているの?
――――そんなわけあるか。
・川内『あの忍者っていうの夜戦得意そうだよね!』、投下します
――――提督執務室。
「提督、こうするとカッコ良くない?」
「クナイみたいにそれ使ったら自爆すんぞ、お前。まぁマフラーとそのポーズは決まってるな」
「えへへ、この前見た漫画でこういう格好したくの一っていうのが夜戦してたから、私も真似してみたくなったの」
夜戦バカ、五月蝿い5500t級、夜行性艦娘等々、様々な呼ばれ方をしていた川内。しかし、夜戦が好きという部分以外に目を向けて見れば、妹思いの優しい艦娘という面が見えてくる。
主君と仲間を守る為、日のある内は身を潜め、夜を駆ける忍者。目の前で嬉しそうに話す川内を見ながら、彼女に忍者は似合うかもしれないと提督は考えていた。
「この格好で那珂のライブに“川内参上!”とか言って、乱入したら受けるかな?」
「あぁ、面白いと思うぞ」
「海での夜戦は出来なくなったけど、那珂のライブ見てると夜戦してる時みたいな不思議な高揚感があって、ちょっと参加してみたくなる時があるよ」
「――じゃあちょっと演出考えてやるから、本当に忍者みたいな事をやってみないか?」
最初は軽いノリと、夜戦が出来なくなったと話す彼女が少し寂しそうに見えたというだけの理由から、それは始まった。
――――鎮守府裏手の山。
(冗談のつもりだったんだがな……)
「コレで良かったの?」
「あぁ、バッチリだ。っていうかよく出来たな、凄いぞ川内」
二本の木の幹を交互に蹴りながら上へと登り、枝に飛び乗るという技。提督は冗談でやってみろと言っただけだったのだが、彼女は見事に十メートル上の枝まで到達して見せた。
「提督にそう言ってもらえるなら、もっと色々やってみたくなるね」
思ったことを隠さずに伝える傾向のある川内。枝の上に座り本当に嬉しそうにしているのを見て、自然と提督も笑みを浮かべる。
「魚雷の代わりにクナイっぽいのを用意させるから、それ投げる練習をしてみろ。後、枝から枝へ跳び移ったりするのと、マフラーが引っ掛からない動きもな」
「任せといて、すぐにマスターして提督に見せてあげるよ!」
「そりゃ楽しみだ。本当にこの感じならライブの演出として参加も出来そうだし、那珂と神通、後ステージ設営やってる明石にも話をしとかないとな」
「那珂、怒らないかな……?」
「お前と一緒ならむしろ喜ぶと思うぞ、何だかんだお前等仲良いし」
妹のライブの邪魔になるのではと、川内は少し躊躇いを見せる。しかし、普段の三人の和気藹々とした雰囲気を見る限り、それは無いと提督は優しく諭す。
「――うん、後で私も那珂にお願いしてみるよ。提督、ありがとう」
「俺もちょっと楽しみになってきたからな、協力は惜しまないさ」
「じゃあもっともっと頑張るね!」
枝の上で立ち上がり、川内はやる気をアピールする。
――その時、不意に風が吹き抜けた。
「あっ」
「……今、見た?」
「綺麗な白いのが――って危なっ!?」
「不発にしてあるから大丈夫」
「不発でもその高さから投げられたらヤバイわ!」
「見たの忘れてよ! 夜戦以外で見られるのは流石に恥ずかしいんだから!」
「だからって魚雷投げるのは止めろ! っていうかさらっと跳び移りながら追いかけて来てんじゃねえか!」
「はーやーくーわーすーれーてー!」
――――夜戦、いっぱいしてくれるなら許してあげるよ?
――――そういう時もストレートだよな、お前。
――――深夜、裏山。
「やっぱり、夜はいいよね」
「もう夜戦は出来ないけど、こうしてゆっくり夜を感じることが出来て、提督や妹達と楽しく過ごせるだけで、私は今幸せなの」
「――だから、邪魔しないでよ」
『加賀さん、裏山で五人倒れてるから、後処理お願いしてもいいかな?』
『分かりました。夜間警備、引き続きよろしくお願いします』
『こうしてると本当に忍者になったみたい』
『そうね、静かになった今なら忍者というのも似合うかもしれないわ』
『だって、騒いだら忍者っぽくないもの』
夜戦忍者川内が居る限り、鎮守府の夜の平和は安泰です。
大鳳のを書いてる途中なのですが、皆さんにご協力をお願いしたいです
安価下1~3で犠せ――じゃなくて、駆逐艦娘(浦風除く)をお選び下さい
誰を出すか迷ってしまったので……
ご協力に感謝致します
如月・天津風・弥生の三人を生け贄にして書いてきます
投下はもう暫くお待ち下さい
酷いのが出来上がった……没にしたやつの方がマシだったかも……
・大鳳『チョコレートがあったから食べてみた』、投下します
駆逐艦三人を生け贄に召喚されたのはただの酔っ払いです
――――食堂。
「あら? コレは……」
鎮守府の皆で仲良く食べるようにと設けられた、お菓子やティーパックなどの共有スペース。大鳳も良く持ち寄って補充しており、今日も幾つかのパーティーパックを補充しようとやって来たところだ。
そこに幾つかのギフト用らしきお菓子の箱が、封を切られた状態で置かれているのを彼女は見つける。“お土産です”と綺麗な字で書いた紙が、上には乗せてあった。
「また赤城が何処かへ行っていたのね……あの人、ほとんど鎮守府に居ないんじゃないかしら」
月に一度の監査日と、秘書艦日。この二つの時以外は大抵鎮守府を抜け出しており、帰って来る度に加賀からアイアンクローを受けているのを、大鳳も良く目にしている。
(ちょうど良かったわ。甘いものが欲しかったし、このチョコを一つ貰おうかしら)
――注意、この商品にはアルコールが含まれている為、お酒に弱い方はご遠慮下さい。
「――ヒック」
――――提督執務室。
「広島焼き美味いな」
「そう言ってもらえるとぶち嬉しいんじゃ」
「提督! 非常事態よ!」
この日の秘書艦は浦風、当然彼女か加賀以外は暗黙の了解で近付かない。しかし、それにも関わらず、飛鷹は執務室へと息を切らせて飛び込んだ。
「どうした、そんなに息を切らせて」
「飛鷹さん、非常事態って何がじゃ?」
「浦風も居るならちょうどいいわ、手伝って!」
「大鳳が酔っ払って手が付けられないの!」
――――鎮守府内、大広間。
「如月と弥生を返すっぴょん!」
「天津風は私と遊ぶんだから離してよー!」
「ふふっ、卯月と島風も後でいーっぱい可愛がってあげるわね」
声を荒げる二人。視線の先には如月・弥生・天津風を両腕で抱き締める大鳳の姿。その顔は、熟れたトマトのように真っ赤だ。
「髪が痛んじゃうからあまりキツく抱き締めないでよ、もうっ!」
「何か、今日の大鳳さん、怖い……」
「島風、離れなさい! 今日のこの人何か危ないわっ!」
抵抗する三人の力が弱いのか、今の大鳳の力が強いのか、拘束は一向に解けない。何時もならばこんな真似は決してしないが、今日の彼女は正気を完全に失ってしまっていた。
「姉さん!」
「大鳳!」
「あら、提督に浦風、ごきげんよう。こっちに来て一緒に楽しみましょ」
「な、何なんじゃ……?」
「飛鷹、どういうことか説明してくれ」
「彼女、物凄く酔っ払いやすくて、何ていうかこう、理性が完全にぶっ飛んじゃうのよ……」
以前に自分が受けた仕打ちを思い出し、飛鷹は顔を青ざめさせる。その一件以来大鳳を酒から遠ざけていたのだが、チョコレートまでは彼女もチェックしていなかった。
「で、あの状態か……」
「如月の髪の毛、艶々してて触り心地いいわねー。肌も手入れされてて気持ち良いわ」
「ちょ、ちょっとあんまり触らないで下さる?」
「弥生も可愛いわ」
「こしょばさ、ないでっ、下さい……」
「うふふふふっ」
「何時もの貴女は優しくて好きだけど、今の貴女は大っ嫌いよ」
「そういう事を言う子はお仕置きね」
「きゃっ!? お腹撫でないで!」
「如月も弥生も嫌がってるぴょん! 離さないとうーちゃん怒るぴょん!」
「天津風は私の友達なんだから返してよー!」
「あ……あんなん姉さんやない……」
頼りになる優しいお姉さんというイメージを強く持っていただけにショックが大きく、浦風は涙目で大鳳を見つめる。酒のせいとはいえ、今の彼女の行動は行き過ぎていた。
「全力の大鳳を抑えるとなるとかなりキツいな……そういえば、長門と天龍は来てないのか?」
「コテンパンにやられて、あそこで文月と暁達に慰められてるわよ」
「あの二人が駆逐艦娘守ろうとして負けるって大概だな……。加賀は今日赤城を追いかけるって外出してるし、大和と武蔵は?」
「二日酔いで部屋でぶっ倒れてるらしいぴょん」
「何やってんだよアイツ等……利根は?」
「今動いたら姉としての威厳が保てなくなるって断られたよ、酷いよね!」
(筑摩がまた張り切って作ったのか……)
「言っとくけど、木曾も大井に追い掛けられてて姿隠しちゃってるわよ。龍田も風邪で寝込んでるらしいし」
飛鷹が執務室に走ってきたのは、他に頼る相手が尽きたからだった。島風がまだ残っているが、暴走大鳳に餌を与えるようなモノで、救出には向いていない。
コレで万事休すかと思われたが、切り札がまだ彼等には残っていた。
「姉さん! 何やっとるんじゃ!」
「浦風、貴女もこっちに来て私と楽しみましょうよ」
「嫌じゃ! みんなに酷い事しよるようなそがぁな姉さん、大っ嫌いじゃ!」
「――うらかぜが、わたしを、キライ?」
大鳳の動きが止まる。一番自分になついており、姉さんとまで呼んでくれている浦風に嫌いと言われたことが、吹き飛んでいた理性を呼び起こす。
「そうじゃ! 嫌いじゃ!」「嫌われる? 浦風に?」
「嫌いじゃ嫌いじゃ大っ嫌いじゃ!」
「浦風、ストップ! ストーップ!」
提督に宥められ、浦風は気持ちを徐々に落ち着けていく。
その一方で、大鳳は余程ショックだったのか既に拘束を解いており、三人は卯月と島風と共に離脱していた。
「浦風に、嫌われた……ふふっ、うふふふふ……うわあぁぁぁぁぁん!」
「今度は子供みたいに泣き出しちまったか……」
床にペタンと座り込み、大鳳は大声で泣き始める。流石にその姿を見て責める者はおらず、提督も事態を収拾する為に浦風の背中を軽く叩いて前へと押し出す。
「浦風、慰めてやれ。さっきのは本心じゃないだろ?」
「……うん。――姉さん、うちはいつもの姉さんが大好きなんじゃ。だから、ほんに嫌っとるんやないし、泣かんでえぇんよ」
「……ホントに?」
「うちのこと見付けてくれよった時から、うちは姉さんが大好きじゃ」
「……うん、私も浦風大好きよ」
「完全に落ち着いたみたいだな」
「今度からあの子が酔ったら浦風にお願いするわ」
「浦風が危ない気もするがな……」
――――私、昨日何してたの……?
――――知らん方がえぇこともあるよ、姉さん。
没はひたすら浦風に抱き着いて胸部装甲を弄る話と手当たり次第に駆逐艦にキスしていく話でした
夕立は明日中には書きます
・夕立『最高に素敵なパーティーがしたいっぽい!』、投下します
駆逐艦は一応全員未成年扱いってことで
――――提督執務室。
「提督さん、夕立、お願いがあるっぽい」
「叶えられる範囲でならいいぞ、言ってみろ」
「私、皆と素敵なパーティーがしたいっぽい!」
「パーティー? 料理とかを大量に作ってか?」
「うん、たまにはみんなで集まって楽しいことしましょ」
「パーティー、か……」
(食事は鳳翔と間宮と料理得意な奴に頼めば量は揃えられる。飲み物も酒を含めて用意出来ん事もないし、事前に言っておけばスケジュールも何とかなるな……)
「――よし、いいぞ、最高のパーティーをしようじゃないか」
――最高に素敵なパーティーが始まるっぽい?
――――鎮守府内、大ホール。
普段は特に使われる事もなく、一時的に荷物を置くのに使われていた場所。だが、今はしっかりと本来の用途として使われていた。
きらびやかな装飾と、所狭しと並べられた料理の数々。それらを見つめる夕立の表情は、実に嬉しそうだ。
「提督さん、ホントにホントに素敵っぽい!」
(まさか、今日のうちに準備するとはな……)
夕立の話を聞いてすぐ、提督は内容を加賀へと伝えていた。準備や手間を考えると、なるべく早い方が良いと思ったからだ。
だが、まさかその日の昼のうちに全ての段取りを整え、夜にパーティーを開く程迅速に行動するとは、流石に彼も考えてはいなかった。
「夕立の提案に皆乗り気でしたので、手伝って頂きました。夕立、私も貴女の提案は凄く良いと思うわ」
「そう言ってもらえると、夕立とっても嬉しいっぽい!」
「全員の予定とかはどうしたんだ?」
「そんなものはどうとでもなります。ここの艦娘達は全員、楽しい事の為ならば協力を惜しみませんから」
手の空いていた者は全員、パーティー会場の準備と料理の用意。そして、すぐには手が空きそうに無い者の手伝いへと走り回って協力していた。
まだ出撃や遠征をしていた頃、一部採算度外視で普段交流の無さそうな艦娘同士を組ませ、提督は遠征へと送り出していた。それが、こんな場面で功を奏する。
「夕立、早く開始の音頭を取ってよ。皆、今か今かと待ち望んでいるよ」
「私は何もしてないっぽい?」
「言い出したのはお前だろ」
「んー、分かったっぽい!」
時雨と提督に促され、夕立はパーティー会場の前方に置いてあるマイクスタンドへと走っていく。全員の視線が彼女へと集まり、グラスを手にその瞬間を待つ。
『皆! 料理はちゃんとあるっぽい!?』
「あるので早くお願いします!」
「赤城さん、もうすぐですから我慢して下さい」
『飲み物は持ったっぽい!?』
「持ったぞ」
「持ってるわよ」
「那智さんも千歳お姉も徳利で乾杯はダメだって!」
『じゃあ、最ッッッ高に素敵なパーティーしましょ!』
開始と同時、料理と飲み物に一斉に手が付けられ、それぞれ好き勝手に盛り上がり始める。
料理を食べる者、互いの料理のレシピを交換する者、酒を酌み交わす者、ビンゴゲームで盛り上がる者、芸を披露する者、思い出話に花を咲かせる者。全員に共通しているのは、“楽しんでいる”ということだけだ。
「期待には沿えたか?……って言っても、俺は何もしてないんだがな」
「提督さんが居るから、皆今を目一杯楽しめるっぽい。夕立、提督さんのことだーい好きっ!」
「俺も、常に明るくて元気な夕立が大好きだぞ」
笑い声が響き合うパーティー会場を眺めながら、二人は飲み物を片手に手を繋ぎ合う。そして、どちらからともなく歩き出し、会場を回り始めた。
「夕立、私が作ったボルシチを食べてくれ」
「二人とも、自動蕎麦打ち機で蕎麦を作ってみたから、食べて後で感想聞かせてね?」
「やっぱりパーティーならカレーだよねー」
「ちょっと鈴谷! わたくしの用意した神戸牛カレーに使いましたの!?」
「ほら、夕立もじゃんじゃん飲め飲めー!」
「ちょっと隼鷹! 駆逐艦の子達にお酒はまだ早いわ!」
「そ、そんなにいっぱいは夕立食べれないっぽいー!」
「向こうで何人か動きがおかしい奴が……ひょっとして酒飲ませたのか!?」
「い、いちにんまえろれでーならワインぐらい飲めるんらから!」
「大潮! おっきな魚雷、撃っちまーす!」
「連装砲ちゃんがいっぱい見えるよ、天津風!」
「そうね、島風も三人居るわね」
「誰かそいつ等が酒飲むの止めろ!」
「ゆーうーだーち!」
「し、時雨? 何か顔が赤いっぽい?」
「このジュース美味しいから、夕立も飲みなよ」
「何か凄く甘い匂いがするっぽい」
「果物が入ってるみたいだね。甘くて美味しいから、さぁ、飲んで」
「ちょっと待て時雨、それ果実酒かなんかだろ! 夕立飲むな!」
「はいはーい、提督にはコ・レ」
「村雨まで酔ってんのか!? 一升瓶なんからっぱ飲み出来るかっ!」
「てやんでぇーい! あたいの酒が飲めねぇってのか!?」
「涼風も酔ってるっぽい?」
「だぁーっ! もう収拾がつかん!」
賑やかな宴は、日付が変わる間際まで続いた。
――――提督私室。
「すっごく楽しかったっぽい!」
「俺は死ぬほど疲れた……」
「えへへ、夕立も実はかなり眠いっぽい」
ベッドに仰向けで体を投げ出した提督の上に、夕立は覆い被さる。暖かな温もりが疲れた身体には心地好く、そのまま頭を撫でているうち、彼は意識を手放した。
「――寝ちゃったっぽい?」
撫でる手が止まり、寝たのを確認すると、夕立は提督の顔へと自分の顔を近付けていく。
「また皆で、素敵なパーティーしましょ。お休みなさい、提督さん」
――ちゅ。
唇が触れる程度のキス。それで満足し、ギュッと身体にしがみつきながら、夕立もまた深い眠りへと落ちていく。
彼女の最高に素敵な1日は、こうして終わりを迎えるのだった。
――――提督さん、また次もパーティーがしたいっぽい!
――――ま、毎回はちょっと無理だからな……?
どっちも平和だから仕方ないってことで
・那珂『皆ー! 那珂ちゃんだよー!』、投下します
――――ライブステージ。
「皆ー! 今日も那珂ちゃんのライブに来てくれてありがとー!」
――那珂ちゃーん! 今日も可愛いよー!
――頑張ってチケット取ったよー!
――に! よん! じゅういち!
「今那珂ちゃん解体した人はー主砲で撃っちゃうよー?」
――俺だよー! 撃ってー!
「じゃあ撃って欲しい人が居るみたいだからー……一曲目、『貴方の機関部を狙い撃ち』、いっくよー!」
爆破演出とサイリウムと照明の光の中、ライブが始まった。
那珂は歌いながらダンスやステップでステージ上を華麗に舞い、時折改造した主砲や副砲で観客席へと紙吹雪や水を発射する。
そのパフォーマンスの多彩さと、最後まで息切れもせず全力で動けるタフさが、彼女の持ち味だった。
「まだまだ声出るよねー!」
――おー!
「那珂ちゃんはー?」
――皆のアイドルー!
「海は那珂ちゃんのー?」
――ライブステージ!
「二曲目、『艦隊のアイドル』、いっくよー!」
――ライブ中盤。
「皆、疲れてきたー?」
――まだまだいけるよー!
「じゃあまだまだいっくよー!」
――おー!
「――ちょっと待った!」
会場に響き渡る、那珂ではない誰かの声。すぐに照明が、その声の主を照らし出す。
ステージを支える柱の上、夜風にマフラーをたなびかせ、彼女はそこに悠々と立っていた。
「夜戦忍者、参上!」
「現れたね夜戦忍者! 那珂ちゃんのライブは邪魔させないんだから!」
「やれるものならやってみなよ!」
――アレ、川内ちゃんか?
――あの子、可愛いしカッコイイ!
演出だと即座に理解し、観客席も大いに沸き立つ。こういった突発的なサプライズイベントがあるのも、彼女のライブが人気な理由の一つだ。
「ていっ! せやぁっ!」
「きゃあっ!?」
柱の上や機材の上を飛び回りながら、川内はクナイらしきものを放つ。それに合わせて、ステージの至るところに仕込んだ火薬により、爆発が起こっていく。
演出とは分かっていても、その臨場感はかなりのものだ。
「那珂ちゃんは、絶対に、ライブを成功させるんだからぁ!」
「コレで終わりだよ!」
ステージの骨組みを地面に見立てて蹴り、川内は中央に居る那珂の元へと突撃した。
全員が見守る中で二人の姿が交差し、再び巻き起こる大爆発。煙で観客席からステージが一度見えなくなり、観客はどうなってしまったのかと固唾を飲んで見守る。
――そして、煙が晴れていくと同時、再び曲が流れ始める。
「戦わなくても敵とだって分かり合える。だって那珂ちゃんには――この、笑顔があるから! 『無敵のスマイル』、いっちゃうよー!」
――おー!
再び姿を見せたステージ。そこには、衣装チェンジを済ませた那珂と、その背後にピッタリと張り付いて立つ川内の姿があった。
歌い始めると二人は鏡合わせの様に踊り出し、観客を魅了する。間奏ではそれぞれに独自のダンスも見せ、那珂だけでなく川内の名前も歓声に混じり始めていた。
――そして、楽しいライブにも終わりの時が近付く。
「次の曲が今日のラストだよー!」
――えー?
――もっと聞きたーい!
「ありがとー! でも、また必ず皆に歌声を届けるから、最後にこの曲を聞いてね!」
――――『静かな海で、貴方と共に』。
ライブを書くって凄く難しいと痛感した……
それでは16時15分までまたリクエストを受け付けます
・瑞鳳『卵焼き作ったよ』
・夕張『提督で実験』
・五十鈴+潜水艦s『本気で鬼ごっこ』
・羽黒改二『司令官さん、あの、私、改二になったみたいです』
・まるゆ『白いスク水が一番落ち着きますよ?』
の、五本でお送りします
・瑞鳳『卵焼き作ったよ』、投下します
――――鎮守府、中庭。
「提督、お弁当作ったから食べてね」
「――瑞鳳、コレ、二人分か?」
「ううん、そっちは提督用で、こっちが私用」
(瑞鳳のは普通の弁当箱で、俺はこの重箱を一人で食えと……?)
「ねぇ、早く開けて食べてくれない?」
「あ、あぁ……」
(まぁうまけりゃ何とか食べられ――)
「おい、瑞鳳」
「なぁに?」
「何だこの黄色一色の弁当は! 他の色はどうした!」
「重箱が黒と赤でしょ」
「側なんかどうでもいいわ! 中身の話だ中身の!」
「二段目と三段目も見てから、そういうことは言ってよね」
「じゃあ見てやる。二段目は――やっぱり黄色いじゃねぇか!」
「ちゃんと中にほうれん草入れたよ?」
「だから、そういう問題じゃ、ない!」
「三段目は大丈夫だから安心して」
「本当だろうな? じゃあその三段目はっと……そうだな、色は増えたな。――錦糸卵かけたご飯ってやっぱりほとんど黄色じゃねえか!」
「だってしょうがなかったのよ、賞味期限切れかけなの忘れてたんだもん……」
「はぁ……まぁお前の卵焼きは甘くて美味いから好きではあるが、流石にこりゃ作りすぎだろ」
「しっかり食べてね」
「分かったよ、食うよ、食えばいいんだろ……」
「じゃあ私も、頂きます」
「――ミートボールにハンバーグが見えるのは、俺の気のせいか?」
「き、気のせいよ? ほら、あーんしたげるから卵焼き食べて、ね?」
「……あーん――うん、美味い」
「でしょ? 卵焼きだけは自信あるんだから」
「何か格納庫に卵焼き詰め込みたくなってきた」
「何でよ!?」
「いや、なんとなく」
「たまに提督って変なこと言うよね」
「ひたすら卵焼きを食わされる俺の身にもなれ」
「はい、あーん」
「あーん――こうすりゃ俺が納得すると思ってないか?」
「美味しいでしょ?」
「美味い」
「はい、こっちのほうれん草入りも美味しいわよ」
「だからそれで納得すると――」
「あーん」
「あーん――ほうれん草入りもイケるな」
「ちょっと軽くほうれん草に味付けしてあるのよ」
「……納得してないからな?」
「はい、あーん」
「あーん」
――――次は肌色とピンク色のモノが食いたい。
――――タラコと明太子マヨネーズ?
――――ふざけてると噛むぞ。
ね、ネタはあるのに頭が働かない……メロンちゃんは明日まで待って下さい……
型録でしっかりとメロンちゃんの小振りなメロンが確認(妖精さんにより1は開発失敗箱に詰め込まれました)
湯船で頭が少しスッキリしました
・夕張『提督で実験』、投下します
――――工廠。
(不安だ……)
「提督、準備はいいかしら?」
「良くないけど、いいぞ」
「じゃあスイッチオン!」
夕張の手により、スイッチがオフからオンへと変えられた。モーターの駆動音のようなモノが提督の耳に届き、確かに起動していることを知らせる。
「夕張、本当に大丈夫なんだよな?」
「大丈夫。だって私が作ったんだもの」
「いや、お前普通に失敗もしてるだろうが」
「細かい事を気にすると老けちゃいますよ?」
「実験で寿命がグンと縮まりそうではあるな」
夕張の作ったパワードスーツなるものを身にまとい、現在進行形で身の危険をひしひしと感じている提督。ストレスで若干寿命ぐらい縮んでいるかもしれない。
「それでそれで? 着心地はどう? 違和感は無い? このリンゴ持てる? 握り潰せる? 二つに割れる?」
「がっつきすぎだ。着心地は悪くないし、違和感は多少あるが気になる程じゃない。リンゴは――持てる。コレ、握り潰せるのか?」
「出力的には十分可能――な、はず」
「断言しろよ開発者。とりあえずやってみるぞ。――よっ!」
「はうっ!?」
提督が手に力を入れた瞬間、リンゴは綺麗に手からすっぽ抜けた。そして、見事に夕張の顔面へと直撃する。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないし痛いに決まってるわ……」
涙目で訴える夕張の額は、少し赤くなっていた。かなりの勢いで直撃したのがよく分かる。
「滑りが良すぎやしないか、コレ」
「滑り止めのコーティングを後でしておきます」
「――で、早速危ない訳だが、続けるのか?」
「そうねー……ポチっと」
「おい待て夕張、今何を押した? 急に身体が動かなくなったんだが」
「起動実験と動作実験は済んだし……」
――――“操作実験”を試してみても、いいかしら?
“操作実験”、提督はそんな実験については一言も聞かされていなかった。確かな事は、今夕張の顔が物凄く笑顔ということだけだ。
「説明しろ、手短に」
「私の命令に絶対服従」
「よし、脱ぐ」
「優しく私を抱き締めて」
「脱ーがーせーろー!」
提督の意思とは関係無く、パワードスーツは命令に従い夕張を抱き締める。問題があるとすれば、“優しく”という部分が命令から完全に抜けているということ。
「くっ……苦し……でも、提督をしっかり感じられて……ちょっと良い気持ち……」
「危ない方向に目覚めるんじゃない! さっさと命令を取り消せ!」
「離、して」
命令に従い、パワードスーツは夕張を離す。――遠くへと。
「きゃっ!?」
「夕張っ!?」
工廠に山のように積まれた部品や工具の中へと、凄まじい落下音と破砕音を伴いながら、夕張は吸い込まれていった。いくら大丈夫だとは分かっていても、目の前で重たいものの下敷きになってしまうのを見て、心配しないはずもない。
「夕張、大丈夫かっ!?」
「ちょっと命令認識設定ミスったかなぁ……」
流石に練度の高さのお陰か、多少服や肌が汚れているものの、特に怪我もしていない夕張が荷物の下から這い出てくる。ずっとパワードスーツの問題点について考えているのか、頭の埃すら払う気配もない。
「夕張、おーい」
「もう少し音声認識の精度と感度を上げれば……」
「話聞けメロン」
「メロンって言わないで!」
「ようやく反応したか」
「私だってメロンとまではいかなくても綺麗な形してるって自分では思って……」
「そういうの今はいいから脱がせろ」
「――キス、してちょうだい」
「お前ちょっとは懲りるって事を覚えろよ! 絶対に頭突きの流れだろコレ!」
「……私とは、嫌?」
少し瞳を潤ませ、夕張は提督を見つめている。そして、この時になって初めてようやく気付く。
(……動けるようになってる?)
――――キスも実験するのか?
――――コレは失敗も成功も無く、きっといつでも良い気持ち……。
約180本程今までに書いてるみたいですね、追い付いたお二方はお疲れ様です
五十鈴は夕方過ぎぐらいの更新予定です
・五十鈴+潜水艦s『本気で鬼ごっこ』、投下します
五十鈴は優しいお姉さん、何も問題はない
――――海。
ツインテールの髪を海面に揺らめかせながら、彼女は海にその身を任せ、空を見上げていた。その口元は、微かに何かを唱えるように動き続けている。
「――99、100。さぁ、あの子達はどこへ行ったのかしら?」
百を数え終わり、彼女は身体を起こして索敵を開始する。その目は、獲物を狩る獣のそれと似ていた。
いつまでも負けたままではいられないと、申し込まれた本気の勝負。五十鈴対潜水艦娘で繰り広げられる、鬼ごっこ(狩り)が、今幕を開ける。
~鬼ごっこのルール説明~
・制限時間は五時間。
・艤装は使用禁止(イクのみ魚雷発射禁止という条件で魚雷所持)
・範囲制限は五十鈴の初期待機位置から三キロ(出たら自動的に負け)
・“捕縛”(触れるだけではダメ)されたらアウト、全員が捕縛されたら勝負終了
・負けた方が勝った方の願いを一つ叶える
――――海中。
(ここにずっと隠れてれば見付からないはずよね……)
イムヤは岩影に潜む選択肢を選ぶ。目立つ髪の色を隠す為、岩に擬態出来る布で身体を隠す念の入れようだ。
(いくら五十鈴さんでもここまですれば見落として――?)
急に布越しに影が差し込み、大きな魚でも通ったのかとイムヤは顔を上げる。
――そして、二つの視線が、バッチリと合わさった。
(……っ!?)
気付いた時には、全てが遅かった。既に身体に回されようとしていた二つの腕にしっかりと抱き締められ、一人目の犠牲者は静かに勝負から姿を消すのだった。
――――海中、海藻の中。
(ここなら簡単には見付からないでち)
ゴーヤは生い茂る海藻の中に身を潜め、やり過ごそうと試みる。やはり目立つ髪の色がネックになるが、ちょうど手近にあるモノを利用して、更なるカモフラージュを図った。
(ちょっと海藻がヌメッとして気持ち悪いよぉ……でも、五十鈴さんに勝ちたいでち)
不快感に堪え、制限時間いっぱい我慢することを、ゴーヤは決意する。
(んー、何かお腹の辺りがくすぐったいでち……)
腹部に触れている海藻を払い除けようと、ゴーヤは腕を振る。
――その腕は、海藻とは思えない肉感のある何かに触れ、振り切れずに腹部の辺りで止まった。
(――海藻巻きのゴーヤは、きっと美味しくないでち……)
後ろから引き寄せられる感覚に抗うことも出来ぬまま、二人目の犠牲者は身体に巻いた海藻と共に、何処かへと姿を消した。
――――海上。
「うーん、やっぱ泳ぐのって気持ち良いよねー」
シオイは潜水艦だ。確かに潜水艦だ。だが、彼女は普通にクロールで逃げていた。
今回は双方とも、艤装を装備しているわけではない。なので、純粋に泳いで逃げるというのも、有効な手段の一つとなっている。
「今回は五十鈴さんに勝ちたいなー。皆もまだ無事だといいんだけど」
「貴女で三人目よ?」
「――えっ?」
海中から海面へと腕が二本飛び出し、シオイの身体をガッチリと捕らえる。真下から奇襲を受けるという貴重な体験を手土産に、三人目の犠牲者もまた、あっさりと勝負から脱落した。
――――海中。
四方を見渡せる場所。周囲に障害物も無く、近付くには必ず姿を見せなければいけない位置で、イクは五十鈴を待ち構えていた。
(五十鈴さんの裏を掻くのは無理なの。それなら爆雷で攻撃されない今回は、正々堂々見晴らしの良い場所で待ち構えるのがベストなのね)
潜水艦娘はその特性として、息を止めていられる時間が異常に長い。それに加えて、勘の異様に鋭いイクならば、鬼が接近する前に必ず気付けるという寸法だ。
(絶対に勝ってみせるのね!)
意気込みは十分。準備も万端。
――但し、それは敵にも同じことが言えた。
(――な、何なのっ!?)
大きく、海面と海中に揺らぎが発生する。見上げるイクの頭上には、大鯨を心配して鎮守府近海を回遊している鯨の姿があった。
(何か嫌な予感が――)
イクの勘は正しく働く。背筋に感じた嫌な感覚に従い、後ろを確認した彼女が見たものは、優しく笑う鬼の手を広げた姿。
(この人に、どうやったら勝てるのね……)
四人目の犠牲者は、柔らかな彼女の胸の中で敗北感にうちひしがれながら、勝負から脱落した。
――――海上。
ハチは、本を読む為に海上に居た。小さなボートの中にすっぽりと身を収め、下手な小細工をせず、波に身を任せて漂うという逃げ方だ。
(どうせ五十鈴さんには考え読まれてるし、無駄な労力をはっちゃんは使いたくないし……)
なるようにしかならないという考えの元、彼女はのんびりとただただ海を漂う。確かにこの方法ならば、五十鈴の裏を掻ける可能性があった。
「――逃げなくていいの?」
「近付かれた時点で、はっちゃんの負けだもの」
「そう……じゃあ」
――つ・か・ま・え・た。
――――海上。
「うふふ、ほら、早く逃げないと捕まるわよ?」
「ひいぃぃぃぃっ!?」
鬼ごっことは本来こういうものだ。鬼から逃げるという行為無くして、鬼ごっこは成立し得ない。
――しかし、追われる方が本当に怯えている場合、鬼の姿がずっと後ろに見えているというのは、相当な恐怖を伴う。
「後はまるゆだけよ、必死に逃げなさい」
「も、もう、無理……」
「あら、だらしないわねぇ」
余裕を見せる五十鈴とは違い、ただ泳ぐだけというのが苦手なまるゆは、既に満身創痍だ。泳ぐのをやめて動きを止めた獲物へと、鬼はゆっくりと近付く。
「勝負に負けたらどうなるか、分かってるわよね?」
「うぅ……はい……」
「じゃあ改めて――つ・か・ま・え・た」
所要時間、二時間四十七分。五十鈴の圧勝により、鬼ごっこ終了。
――――鎮守府内、長良型私室。
「――五十鈴、何してるの?」
「抱き枕を抱いているだけよ?」
「あの、それ……」
「名取、触れない方がいい」
「五十鈴姉ちゃん、マジパナイ」
「私は何も見てない私は何も見てない……」
――――今日から六日間は良い夢が見られそうね。
――――五十鈴さん、胸に顔が埋もれてちょっと苦しいわ……。
若干タイトル変更
・羽黒改二『司令官さん、あの、私、改二になってみました』、投下します
夕張と明石は久々の仕事で張り切りました
――――提督執務室。
「あ、あの……」
「ん? どうした羽黒、早く入れ」
「司令官さん、私……改二に、なりました」
「――は?」
部屋へと恐る恐る入る羽黒。改二になったことを簡単に証明する手段として、彼女は艤装を装備してきている。それは見る者に若干威圧感を与える程、以前より兵器感を醸し出していた。
「何で今、改二になったんだよ」
「あの、もっと自信を付けたいって思って、神通さんに相談したんです」
(そこに行ったか……)
普段は自分同様に大人しい雰囲気の神通。しかし、戦闘では鬼神とでも呼ぶべき迫力を見せていた彼女に、羽黒は密かに憧れていたのだ。
そう言う彼女自身も決戦では獅子奮迅の大活躍を見せていたのだが、自信を持っているかどうかという点では、確かに劣っていた。
「それで、彼女に話を伺ったら、改二になった時に気持ちが更に引き締まったと聞いたので」
「で、改二になったと」
「はい、か、勝手な事してごめんなさい……」
「いや、別に怒ってはないさ。それでお前は自信を持てたんだろ?」
「は、はい! 以前よりも少し背筋が伸びた気がします!」
艤装の重さを支えるのに猫背だとしんどいからではないか、そう思いつつも、提督は黙って頷いて返した。
「あの、司令官さん。まだまだ臆病な私ですが、ずっとお側に置いて下さいますか……?」
「あぁ、当たり前だ」
「――今日は、勇気を出してみますね」
羽黒は提督の元へと歩み寄り、抱き締めようと腕を伸ばす。目を合わせる事すら出来なかった頃と比べると、考えられない程の進歩だ。
それに応える為に、提督は椅子から立ち上がった。
「司令官さん、好きです」
「引っ込み思案はコレで卒業だな……好きだぞ、羽黒」
二人は抱き合い、そのまま良い雰囲気になる――はずだった。
「は、ぐろ……くるし、しぬ……」
「えっ!? あ、あの、ごめんなさい! まだ改二になったばかりで力加減が分からなくって……」
「な、慣れていけば大丈夫だ、気にするな……」
「うぅ……司令官さんともっと仲良く出来るはずだったのに……」
落ち込む羽黒を見ながら、やはりどこか放っておけないという保護欲のようなものを掻き立てられ、提督は優しく頭を撫でるのだった。
――――羽黒、とりあえず艤装外して来ないか?
――――はい、実はコレ少し重くって……。
・まるゆ『白いスク水が一番落ち着きますよ?』、投下します
――――鎮守府内、プール。
「ふむ、悪くないのぅ」
「サイズが少し小さいですね」
「私もちょっと、胸が……」
「あの、私は潜水母艦ですよお?」
「何で俺まで……」
同じ水着を着用した五人。彼女達にそれを手渡した者もまた、同じ水着を着用している。
「お似合いですよ、皆さん」
この鎮守府内で唯一、陸軍指定の白スク水を着ていたまるゆ。彼女は前々から一人だけ違う水着であることに、少し寂しさを感じていた。
そこで今回、各サイズを何枚か支給してもらい、白スク水の布教へと乗り出したのだ。
「妾は黒より白を好んで着ておる。コレは肌触りも良い、気に入ったのじゃ」
「そうですね、白は着ていて気持ちが良いです」
「こっちの方が目立たない……かも?」
「黒も白も鯨さんの色なので、私は好きですよお」
「まぁ、白もありだな」
「そうですよね、白もいいですよねっ!」
予想以上の好感触であった事に喜び、まるゆはキラキラとした笑顔を五人に向ける。
初春と浜風は元々白という色を好んでおり、潮は以前に漣から黒い下着を“何かエロい”と言われたことで、黒を敬遠中。大鯨は黒も白も好きで、木曾は自分を慕うまるゆとお揃いで満更でもないといった感じだ。
「他の皆さんも着てみてくれるといいんだけど……」
他にも着てくれそうな艦娘が居ないか、まるゆは次のターゲットを頭に思い浮かべる。
常にサラシの褐色艦娘、僕っ娘ドイツ艦娘、睦月型の美容担当艦娘、改二で白服に変わった艦娘、良いところを広めてくれそうな重巡艦娘、肌を露出した姿を見た事が無い最強空母艦娘。
(皆が白スク水を着たら、今よりもっと私に親近感が湧いて、もっと仲良くなれるはず!)
微かな期待に胸を膨らませつつ、まるゆは様々なサイズの白スク水を手に、鎮守府内を走り回るのだった。
~続く?~
それでは11時20分まで、リクエストを受け付けます
締め切ります
・愛宕『提督、しっかり見て選んで下さいね?』
・高雄『コレは提督の執務の範疇です』
・加賀『たまには甘えてみようと思います』
・ながもん『何!? 敵が現れただと!?』
・那智『貴様も酒ぐらい飲めるようになれ』
・榛名『改二改造可能者への通達……?』
・加賀&第六駆逐隊『やるからには本気でいきます』
・加賀『先を越された……? そんな、馬鹿な……』
・龍驤改二『何でや! 改二って希望に溢れてたんちゃうんか!?』
の九本でお送りします
何だこの驚異の加賀さん率は……
次の更新は多分夜ぐらいになります
後、駆乳艦がセリフ書いてる最中+物欲センサー切れた瞬間に着任しました、850周しかしなかったから運が良いんですねきっと
胸ネタ……?いえ、知らないネタですね……
・愛宕『提督、しっかり見て選んで下さいね?』、投下します
――――女性用水着売り場。
(居心地悪いなやっぱり)
「提督、コレなんてどうかしらー?」
「淡い水色か……うん、いいんじゃないか?」
「じゃあ試着するからちょっと待ってて下さる?」
「まぁそうなるよな……分かった、なるべく早く頼む」
「はーい」
――三分後。
「ぱんぱかぱーん!」
「お前わざとだろ、絶対にそれサイズ小さいぞ」
「提督が揉むからまた大きくなったのかしら」
「口を閉じてサイズを変えてちゃんと選べ」
「こんな場所で口を塞げですってー? もうっ、提督ってば大胆ねー」
「そっち方向に無理矢理結び付けんな。いいからさっさと選べ」
「はーい」
――更に十分後。
「ぱんぱかぱーん」
「お前ちょっとは真面目に選べ! 帰るぞ!」
「だって小さいのはダメって言ったじゃない」
「だからって手でずっと押さえてなきゃいけないようなのを選ぶ奴があるか!」
「提督、ここで触りたいって気持ちは抑えて下さいね?」
「その上手くもない返しには触れないでおいてやるから、さっさと次を選んでこい」
「はーい」
――五分後。
「今度はライムグリーンか、サイズも今回は大丈夫そうだし、爽やかな感じがしていいと思うぞ」
「うふふ、見てると興奮します?」
「残念ながら俺は足派だ」
「じゃあこの密かに持ってきてたロングパレオをこうして――はい、コレでどうかしら?」
「さぁ買って帰るぞ、用事は済んだな」
「あら、感想をまだ聞いてないわ」
「ちょっと待て、試着室からそのまま出てくるな、っていうか抱き着くな!」
「ちゃんと感想を聞かせて下さるなら、離れてあげるわよ?」
「……グッと魅力が増した、コレでいいか?」
「……うふふっ」
「おいコラ愛宕、離すって約束を――」
「あー足がもつれたわー」
(わざとらしいセリフで試着室に引きずり込む気かっ!?)
――――タンクが大きいと紐がほどけやすいのよねぇ……もう一度結んで下さる?
――――その前に退け、タンクに埋もれて前が見えん。
次は深夜に受け付けるよう調整しようかと考えてます
なるべく朝・昼・夜全部でやろうかと
・高雄『コレは提督の執務の範疇です』、投下します
――――提督執務室。
「提督、どうでしょうか?」
「いや、どうと言われても困るんだが……」
高雄の差し出してきた書類に目を通した後、提督はそれをどう処理しようかと思案に耽る。 今、彼が読んでいたのは艦娘からの嘆願書であり、鎮守府の活動を円滑に維持していく為の貴重な糧だ。観光に訪れる客のマナーから、日常生活の中の些細な問題まで、様々な内容のものが毎日執務室へと寄せられている。
「――なぁ、一つ聞きたいんだが、コレ書いたのお前か?」
「いえ、そのような内容のものを書いた覚えは無いわ」
(視線がさ迷ってる時点でバレバレだろ……)
「“提督は秘書艦娘に対してですら、スキンシップは必要最低限に抑えようとしておられるように見受けられます。早急に改善されますようお願い申し上げます”……俺に四六時中仕事もせず、秘書艦娘にベタベタしろってことか?」
「えぇ、その通り――いえ、私には何とも」
(黒確定)
「でも、提督があまり自分から触れて下さらないのは事実だわ」
「そうか?」
「秘書艦娘ともっと親交を深めるというのも、提督の大事な執務の一つではありませんか?」
そんな執務あるか、等と言うだけ無駄な事は提督も分かっている。下手に何か言えば即夜戦に突入しかねないことも、身に沁みて理解していた。
(妥協点を探ってなんとか切り抜けるしかないか……)
「具体的にはどうすればいいんだ?」
「肌と肌を重ね合いましょう」
「お前と摩耶を足して2で割りたくなってきた」
手が触れ合うだけで顔を真っ赤にして罵倒してくる摩耶と、真顔でド直球な要求をしてくる高雄。どちらもどう扱うべきか悩むという点においては、提督の中では大差なかった。
「それがダメでしたら……書類を書きながらキスなどもいい感じね」
「集中出来んわ!」
「では、書きながら身体に触れて頂くだけでも構いません」
「まぁ、それぐらいなら……」
「では、こちらの書類をお願い致します」
「――なぁ高雄」
「はい」
「何で服を脱いでいってるんだ?」
「?」
「首傾げてんじゃねぇよ、別に脱ぐ必要は無いだろうが」
「……一生の不覚ね、今まで気がつかなかったわ。まさか、提督が服を脱がせたい派だったなんて」
「夜にならなくても扱いに困るとか勘弁してくれよ……」
――――分かったわ。提督は着衣の方がお好きなのですね?
――――違う!
・加賀『たまには甘えてみようと思います』、投下します
――――提督執務室。
「――ほら、お茶」
「ありがとうございます」
いつもならば自分の仕事だと頑なにさせようとはしないのだが、この日は珍しく提督が茶を淹れていた。それというのも、部屋に入ってきて早々“疲れました、労って下さい”と彼女が要求した為だ。
「ここに座って下さい」
「労えって奴の上に乗っていいのか?」
「早急にお願いします」
膝を叩いて早くしろと訴える加賀に苦笑しながら、提督は彼女の上に腰を下ろす。それを待ちわびていたかのように、すぐに後ろから手が回され、彼は強く抱き締められた。
「加賀が甘えてくるなんて珍しいな」
「……何か問題?」
「いや、ちょっと可愛いと思った」
「……」
背中に頭がグリグリと擦りつけられ、提督は今の彼女の顔が赤いであろうことを想像して笑みを浮かべた。
「甘えるぐらいで疲れが取れるなら、いくらでも甘えてくれて構わないからな?」
「……はい」
更に強く抱き締められたことにより、心臓の鼓動が提督へと伝わるようになる。そのリズムは、少し速い。
「一つ、聞いていいか?」
「えぇ」
「俺からのスキンシップを増やしたら、お前は嬉し――」
「限り無く気分が高揚して疲れなど消え失せます」
「そ、そうか……」
一応念のために確認してみただけだったのだが、加賀の反応は予想を上回っていた。無言のプレッシャーを背中に感じつつ、提督は手を後ろへと伸ばす。。
「いつもありがとな、加賀」
「……頭を撫でられるというのも、悪くないものですね」
「撫でといてなんだが、子供扱いするなとか、髪が乱れるとか言わないのか?」
「この心地好い感覚の為なら、誇りや羞恥心など捨てます」
「おい、捨ててどうする」
「ふふっ、冗談です。貴方の前以外で、このような姿は見せません」
「そうだな、締まりの無い顔してるし」
「そんな顔はしていませんが?」
「じゃあ見せ――」
「お断りします」
「そうか、キスしてやろうかと思ったんだが、顔が見れなきゃ無理か」
「……そういうことでしたら、どうぞ」
(――赤面してる加賀、いいな)
「あまり、ジッと見ないで頂けますか……?」
「断る」
「……仕方の無い人ですね、貴方は」
「今更だろ?――ん」
――――夕飯は肉じゃがを作って下さい。
――――(昼から搾られた俺に夕飯作れとか鬼か……)
・ながもん『何!? 敵が現れただと!?』 、投下します
※戦闘は雰囲気ですので深く気にしないで下さい
――――鎮守府内、某所。
「最近はすっかり大人しくなったけど、私は以前に追いかけ回された事を忘れちゃいないわ」
「あの痛み、悪くはなかった。だが、度が過ぎてはいた」
「この谷風さんを気絶する程抱き締めるなんざぁ、許しちゃおけねーってもんだ!」
「あたしに気安く触れていいのは提督だけだ」
「捕ってきた蟹、全部ぐちゃぐちゃに潰された……」
「アタシが炬燵で気持ち良く寝てたの、無理矢理引き摺り出しやがった」
「じゃあ皆“対長門報復作戦”、開始するわよ!」
――――鎮守府近海。
(何故今になって近海の警備を私が……いや、提督が何の意味もなく私に命令を出すはずもないか。深く考えるのは止しておくとしよう)
『長門ー聞こえるかー?』
「提督か、何だ? 相変わらず海は穏やかそのものだぞ」
『近海に偵察機を飛ばしていた瑞鶴からの通信の内容を伝える。“深海棲艦らしき存在を確認、至急現場へ向かわれたし”』
「深海棲艦だと!? 分かった、最大戦速でその場所へ向かう! 提督、発見したポイントは何処だ!?」
『二時の方角、距離は約10000だ』
「了解!」
――――謎の深海棲艦確認地点。
(――アレか!)
「今までどうやって生き延びていたのかは知らんが、このビッグセブンである長門が居る限り、鎮守府には近付けさせんぞ!」
――(来たわね、皆、作戦通りに行くわよ!)
――(((((了解!)))))
(……? 見た目も珍妙だが、動きもただの駆逐艦の群れにしては奇妙だな……)
「それに――思わず抱き締めたくなる衝動に、胸が熱くなる」
――(動きが止まったわ、今よ!)
――(魚雷、発射!)
「あの動き、統率の取り方……そうか、非常時に私がしっかりと自分達を守ってくれるのかを確かめたかったのだな……いいだろう! 日々の鍛練の成果をとくと見るがいい!」
――(魚雷が迫る中を真っ正面から突っ込んできたですって!?)
――(しかも前よりめっちゃ速いよ!?)
「一番手前に居るのは誰だ? 光を反射するという事は眼鏡をかけているな?――望月か。そっちは長波だな」
――(……バレてね?)
――(文月と電と雷と若葉を後ろ姿だけで見分けるぐらいだからな……このぐらいの変装じゃ、すぐに見破られてもおかしくないか)
「バレたって何だっていいわ、砲撃よ、砲撃!」
「波による誤差修整よし、回避行動パターンBと認識、対象の膝に照準固定――発射」
「ぬぅっ!? この精密な射撃、若葉もそこに居るな?」
「装甲が厚い、一撃では無理か……」
「私達の砲撃じゃ数十発必要、多分」
「動きが止まりゃいいの! 魚雷次弾装填、全艦発射するわよ!」
「がってん!」
「いっくよー!」
「陽炎型の一番艦というだけはあるな、統率力と指揮の的確さは見事なものだ。――だが、このビッグセブンを侮ってもらっては困るな!」
「ちょっと、魚雷無視して撃つ気!?」
「回避間に合わない、絶対」
「帰りは全員背負ってやるから安心していいぞ。――全主砲斉射、てーいっ!」
「こんのバカ長門ぉぉぉぉっ!」
――――発射直後の魚雷が数発、主砲の着弾の衝撃で爆発。残りは全て至近弾を狙っていたこともあり、駆逐艦娘六名は中破状態で気絶。
帰投時には全員を背負っていたこともあり、長門はキラキラしていたという……。
――――次こそは絶対に懲らしめてやるんだから!
――――(入渠までさせたってのに、陽炎がキラキラしてるのは何でだ……?)
申し訳ないのですが、明日は更新出来ないと思います
那智から先は明後日までお待ちください
・那智『貴様も酒ぐらい飲めるようになれ』、投下します
――――提督私室。
「飲め」
「いや、だから俺は酒に弱いと言ってるだろ」
目の前に突き出された盃を押し返すと、それがまた押し返される。このやり取りが先程から既に十数回、テーブルを挟んで繰り返されていた。
「コレはそこまで度数が強くはないし飲みやすい、飲め」
「度数が弱いにしても、なみなみと注がなくてもいいだろう」
「ちびちびと飲めばいい」
「……はぁ、分かったよ」
強引に押し切られ、提督はとうとう盃を手にした。そして、躊躇いがちに口を付ける。
「――美味いな、コレ」
「千歳と色々な酒を飲み歩いて、ようやく見付けたんだ。貴様と二人で飲めそうな、この酒をな」
「……悪い、手間かけさせた」
「そう思うならしっかりと今日は付き合ってくれ。貴様とこうして飲める日を、私は楽しみにしていたんだからな」
盃を傾けながら、那智は目を細める。その言葉の全てが彼女の包み隠さぬ本心だと、優しげな横顔が語っていた。
「飲み過ぎて酔ったら、ちゃんと介抱してくれよ?」
「安心しろ、酔わなくなるまで鍛えてやる」
「安心出来んぞ、それ……」
ゆっくりと、ゆったりと、提督のペースに合わせて、那智は盃を傾けていく。今彼女が楽しんでいるのは、酒の味というよりはこの一時だ。
一言二言、言葉を交わし、また口を付ける。まるで飲みきるのを惜しむかの如く、盃を傾ける速度は一向に変わらない。
「司令官」
「何だ?」
「酒を、少しは好きになれたか?」
「……あぁ」
「そうか」
「那智」
「何だ?」
「今度、鳳翔のところに二人で飲みに行かないか?」
「喜んで付き合おう」
そこで一度、会話が途切れる。ちょうど二人の盃に注がれた酒は、無くなっていた。
「――司令官、もう少し飲まないか?」
「……さっきの半分ぐらいにしてくれ」
――――頭が痛ぇ……。
――――私を放置して寝た報いだ。
・榛名『改二改造可能者への通達……?』、投下します
若干メタなので今回はキャラが一部言動おかしいです
――――提督執務室。
「――って訳で、有事の際に改造してたんじゃ遅いから、月末に一斉に改二になれる者は改造しろって上からのお達しだ。何か問題はあるか?」
「いえ、榛名は特に問題ありません」
「そうか、ならもう下がって――」
「Hey、榛名ー! 改二決定おめでとデース!」
「私も自分の事の様に嬉しいです!」
「おめでとう榛名、改二になったらまたデータを取らせてね」
「ドアを壊すなよお前等……」
「お姉様方も、霧島も、ありがとうございます。これからも、榛名は頑張ります」
「コレで金剛型sister'sは皆改二って事デース」
「榛名はどんな風になるんでしょうね?」
「主砲を全て取り払って対空砲火特化型とかどうかしら?」
「それならいっそ装甲も薄くして超軽量型戦艦を目指してみるネー」
「あの、金剛姉様も霧島も、榛名の改二改造後の艤装を予想して遊ばないで下さい……」
「主砲から牛乳が出るとかどうですか?」
「艤装から凄い臭いするぞ、それ」
「出すならやっぱり紅茶がいいデース」
「拡声器になってて声で攻撃とか、面白いんじゃないかしら」
「……」
「カレーが出るっていうのもいいかもしれませんね」
「海汚れるからその系統から離れろよ」
「じゃあいっそ霧島と合体出来るようになるとかどうネー?」
「それは素敵ね、とても良いと思いますよお姉様。榛名もそう思わない?……榛名?」
「――勝手な! 妄想は! 許しませんっ!」
「っ!? 榛名、ちょっと落ち着くデース!」
「ヒェーッ!?」
「改二にならなくともこの戦闘力……月末が楽しみね」
「誰かさっさと止めろ! 部屋が壊れる!」
「榛名は……榛名はそんな変な改造、絶対に許しません!」
――――榛名さんの改造、どうします?
――――色々試してみたいわね。ちょうど対空ミサイルもあるし、積んじゃいましょう。
・加賀&第六駆逐隊『やるからには本気でいきます』、投下します
――――演習場。
「本当にやるのね?」
「暁達だって一人前の艦娘よ。ちゃんと加賀さん相手でも戦えるんだから!」
「本気でいくよ、手加減は無用だ」
「この雷様の力を見せてあげるわ!」
「加賀さんに勝ってみせるのです!」
「……分かりました」
――――挑んで来たからには、全力で相手をしてあげます。
四対一、数の上では第六駆逐隊が有利。しかし、武蔵に一度着任時に黒星を付けられて以降、全勝無敗の加賀に挑むのは、かなり厳しいものがある。
だが、彼女達も無策で挑んだ訳ではない。
(雷とヴェールヌイは対空砲、電はあの消音砲、暁は――バルジ?)
既に涙目の暁を先頭に、雷とヴェールヌイがその後ろに続き、電が最後尾。単縦陣の短期決戦狙いで、多少の被弾は覚悟しての初霜愛用小型バルジを使用、そう加賀は推測する。
「では、大和の合図に合わせて開始します」
「一人前のレディーである暁は、いつでも準備出来てるわ」
「暁、足がガクガク震えてるよ」
「もう、だらしないわねぇ。そんなんじゃ勝てないわよ?」
「こ、コレは武者震いなんだから!」
「皆で頑張るのです!」
審判役である大和の合図を、五人は待つ。短期決戦を目的としている場合、開始直後にどれだけ素早く動けるかが重要となる。
――そして、空へと向けて轟音と共に、開始の合図が発射された。
「突撃ー!」
「Ура!」
「一気に決めちゃうわ!」
「近付く手間が省けて助かります」
「ひっ!?」
「雷!」
「言われなくても分かってるわ、撃てー!」
開始早々、加賀へと突撃する暁達。だが、加賀もまた暁達の元へと最大戦速で向かっていた。
「いいいい一人前のレディーは怯えたりなんかしないんだから!」
「まさか艦載機を発艦させずに突撃してくるとは思わなかったよ」
「とにかく撃つわ!」
ヴェールヌイと雷は、連装砲を暁の後方から撃ち続ける。
それを意にも介さず、加賀は速度を落とすこと無く距離を詰めていく。二人からの砲撃は激しく、徐々に両者が距離を詰めるごとに、彼女も回避行動を取らざるを得なくなっていった。
そうまでして、最大戦速で敵に突っ込むという空母らしからぬ行動をした彼女の目的は――。
「――捕まえました」
「だ、だずげでぇ……」
――暁、加賀により捕獲。
「ちょっと、捕まえるなんて反則じゃないの!」
「ルールにそんなことは書いてありませんが?」
「確かに、書いてはいないな」
「そうでもしないと――」
「きゃんっ!?」
「っ……暁、ごめんなさいなのです」
「あの子は一筋縄ではいきそうにありませんので」
背後から音もなく迫った砲撃を、加賀は暁のバルジで受け止める。奇襲が失敗に終わり、電はまた移動を開始した。
「躊躇わずに姉を撃つ芯の強さ、やはり侮れません」
「撃たせたのは加賀じゃないか」
「手近に居たもので、つい」
「これぐらい……へっちゃ……ら……」
「暁!?」
「気絶してしまったわね……仕方ありません。このまま担いで続けます」
中断して暁を大和に預けるという選択肢もあるが、加賀はそのまま暁を背負って演習続行を決意する。そして同時に、空母としての行動も開始した。
「全機発艦、速やかに殲滅します」
「艦載機を狙う? それとも加賀さん?」
「暁みたいに捕まるのは避けたいな。距離を取りつつ、艦載機を狙うよ」
連装砲ではなく広角砲に攻撃手段を切り替え、後退しながら二人は艦載機を狙う。加賀の航行速度よりも早く、当たれば一撃で大破する攻撃の雨を降らせるそれらの方が危険だからだ。
艦載機の操作に集中出来ないよう、電が断続的に加賀を狙い撃っている事もあり、二人は無事に加賀から距離を取ることに成功する。
――だが、武蔵に化物とまで言わしめた彼女の本領が発揮されるのは、ここからだった。
「――お疲れ様、雷、ヴェールヌイ。次に期待しています」
「っ!? いったぁーい! 今のどこから!?」
「雷!? くっ……」
二人が後退した方向から、加賀の艦載機が姿を現す。気付かれぬ様に細心の注意を払いながら、十機程回り込ませていたのだ。
反応に遅れた雷は轟沈判定、ヴェールヌイは直前に気付き、被害を中破に留める。
「二人とも、大丈――はにゃあ!?」
「優しい貴女なら、この瞬間に足を止めると思っていたわ。電、次は一対一でやりましょう」
姉二人を気にかけた瞬間を狙われ、電も轟沈判定を受ける。コレで、残ったのは中破のヴェールヌイだけだ。
「不死鳥の通り名は流石ね。でも、コレで終わりです」
「最後に一矢ぐらいは報いさせてもらうよ」
「そう……なら、最後まで全力で相手をしてあげるわ」
残る艦載機を全てヴェールヌイへと向けて飛ばし、加賀は勝負を終わらせようとする。
――しかし、最後の最後で一つの誤算が生じた。
「今よ! 響!」
(気絶していたはずではなかったの……?)
ずっと肩に担がれていた暁。彼女は今、加賀にしがみつきながら両手で目隠しをして、艦載機の操作を妨害するという荒業に打って出ていた。
すぐに目隠しを振りほどく事は出来たものの、その一瞬で、ヴェールヌイは連装砲を加賀へと向けて放っていた。
(回避は……間に合いませんね)
被弾を覚悟し、彼女は艦載機の操作を優先する。
結果、連装砲が加賀へ着弾した直後、流星改の雷撃がヴェールヌイを捉えるのだった。
――加賀、小破。第六駆逐隊、全員轟沈判定。よって、此度の演習は加賀の勝利とする。
「あの時既に気絶判定を受けていたので、最後の妨害は反則です。少し、暁にはお仕置きが必要なようね」
「お、お仕置きなんて別に暁は怖くないわ」
「お尻を提督が見ている前で百回叩きます」
「そ……そんな一人前のレディーとして恥ずかしいお仕置きは嫌ー!」
・加賀『先を越された……? そんな、馬鹿な……』、投下します
――――提督執務室。
「結婚して下さい」
「……は?」
「ウェディングドレスか白無垢、提督が好きな方を着ます。ですから、結婚しましょう」
熱でもあるのかと言いたくなるような発言を朝から繰り返す加賀に、提督は頭を抱える。原因は間違いなく、北上と大井の件だ。
「あのな加賀、アレはごっこ遊び――」
全てを言い切る前に、提督の頭の横で破砕音が響く。彼はブリキのオモチャにでもなったかのように、ゆっくりと顔を横に向けた。
(拒否したら、次は俺がこうなるってか……?)
椅子の背もたれに開いた穴。それは、綺麗に加賀の拳の形になっていた。
「ウェディングドレスと白無垢、どちらがよろしいですか?」
「……ウェディングドレスで頼む」
――――結婚式場、控え室。
スタッフの人間に白い目で見られながら、提督は再びタキシードへと袖を通していた。
(そりゃあ違う女を取っ替え引っ替え連れてくるわ、参列客も居ないわ、神父や神主すら不要なんて客はこういう目で見られるよな……)
「提督、料理が見当たらないのですが……」
「あるかそんなもん。っていうか何しに来た赤城」
「加賀の準備が出来ましたので、呼びに来ました。料理が無いのでしたら、私はコレで」
「お前、加賀のウェディングドレスが見たかっただけなんだろ?」
「……とても綺麗でしたよ。チャペルで待ってますから、行ってあげて下さい」
「あぁ、待たせたら怖いしすぐ行く。じゃあまたな」
「――加賀がウェディングドレスなら、私は白無垢でしょうか?」
――――チャペル。
扉を開き、提督は中へと入る。早足に来たので、少し息は上がっていた。
「悪い、待たせた」
「いえ、思いの外ウェディングドレスで歩くのに手間取ったので、私も今来たところです」
「そうか」
会話だけを聞けば、いつもと変わらない雰囲気が二人の間に流れているかのように思える。だが、お互いがお互いの姿をしっかりと見ようとしていない時点で、ぎこちないことこの上なかった。
「えっとな、加賀」
「はい」
「その、何だ。一緒に居た時間が無駄に長いと、こういう時に気恥ずかしさが増すな」
「わざわざそういう事を口にしないで下さい」
「――なぁ、ずっと聞きたかったこと、聞いていいか?」
提督の声音が、急に真剣なものへと変わる。加賀もそれに倣い、黙って頷いた。
「お前は、何で秘書艦日制を受け入れたんだ?」
「……貴方が、提督だからです」
「俺が、提督だから?」
「提督として生きる貴方を、私は愛しています。提督という肩書きの無い貴方のことも、愛しています。――そして、あの鎮守府で皆に囲まれて幸せそうにしている貴方を支えることが、私の生き甲斐であり、幸せです」
一人の男と一人の女としてずっと過ごすよりも、今のこの関係の方が幸せだと、加賀は口にする。
誰かが欠ければずっと翳りを残していたであろう幸せならば、これからも全員で今まで通り共に居ることが、最良の選択である。そう、彼女は考えたのだ。
「ですから、今回の件も先をこされたからといって、彼女達を恨んだりはしていません。むしろ、提督を喜ばせてくれた事に感謝しています」
「昔は張り詰めた弓みたいな顔ばっかしてたのに、本当に優しく笑うようになったよな」
「今でも感情表現は苦手です。ですが、思わず笑みを浮かべてしまうような小さな幸せを、たくさん見付けるようになりました」
「今の加賀は、綺麗より可愛いと思う機会が増えた」
「可愛いはやめてください」
「――ウェディングドレス姿は、綺麗だぞ」
「タキシードが可哀想ですね」
「照れ隠しに俺を攻撃するのやめろ」
「……あの」
「何だ?」
「指輪を、お願いします」
「……あぁ」
――――私は、生涯貴方と共に居ることを誓います。
――――俺も、生涯お前達と共に居ることを誓う。
――――愛しています、提督。
――――愛してるぞ、加賀。
――――翌週。
「赤城さんが白無垢を着て待っています」
「ちょっとは期間を置けぇぇぇ!」
龍驤改二だけはまた夜まで待ってつかぁさい……急ピッチで書いたけど書ききれなかった……
事前告知をしてみるっぽい?
今日の23時から23時半までの間で、リクエスト10個まで受け付けるっぽい
今後時間をランダムにするかは、それで決めるっぽい!
龍驤は半分ほど書けました、投下はもう暫くお待ちください
・龍驤改二『何でや! 改二って希望に溢れてたんちゃうんか!?』、投下します
提督がもう色々ありすぎて遠慮なくなり始めてます
――――工廠。
「何でなん!? 何でこうなるん!?」
「私に言われても……ほら、結構いいんじゃない?」
「私も良いと思いますよ」
「違う……うちの求めてたんはこんなん違う!」
「あっ龍驤!」
「行ってしまいましたね……」
「まぁ、提督が慰めてくれるわ、きっと」
「そうですね、お任せしちゃいましょう」
――――提督執務室。
「キミ、ちょっと話聞いてよー」
「誰だお前」
「うちに決まってるやんか!」
「冗談だ冗談。しっかしお前もかよ、改二になるなら事前に言っとけ。羽黒の時も司令部に対して事情でっち上げるの大変だったんだからな……」
「そんなことより、今のうち見てキミはどう思うん?」
「今の龍驤か? そうだな……前より幼い印象が強くなった気がする。まぁ、可愛いぞ」
「そう、そうなんよ。何で改二で綺麗系にシフトチェンジしてくれんかったんや……」
「おい人が可愛いって言ってやってんのにスルーか」
「まぁ、まな板言われんのはもうしゃーないって諦めもついたんよ? せやから、改二で貧乳綺麗系知的美人キャラ目指そ思てたっちゅうのに……何なんこの童顔、完全に逆方向やないか!」
「お前は改造を何だと思ってんだ」
「美容整形とかオシャレの一種やろ?」
「確かに艤装にも変化があるし、迷彩施したり目の色変わった奴も居たが、断じて違う!」
「そんな目くじら立てて怒鳴らんでもえぇやないの。ちょっとした冗談や冗談。あんまり怒ると老けるで?」
「それはここで提督してる限り老けるって言いたいんだな?」
「キミ、老けた方が渋なってえぇかもしれんよ」
「そりゃどうも……。なぁ龍驤、ちょっとこっち来い」
「何?」
「あら、よっと」
「ちょっ、何すんの!」
「前々から一度こうしてみたかったんだ。うん、中々抱き心地いいぞ」
「なぁ、流石にこの扱いはなんぼなんでも怒るよ?」
「もっと秘書艦娘へのスキンシップを増やせっていう嘆願書があってな、お前は必要無いってんなら離れてくれて構わない」
「い、嫌っちゅう訳やないんやけどね……ちょっちコレは恥ずかしいわ」
「頭もついでに撫でるか」
「キミ、今のうちの話聞いとった?」
「ん? 嫌なら退いていいぞ?」
「――うち、やっぱ女の魅力無い?」
「何言ってんだ。胸は二の次だし、足は健康的だし、髪もサラサラだし、抱き心地もいいし、場を盛り上げる陽気さと皆への気遣いが出来る優しさを持ってる。お前のことを俺は、魅力的な女性だってちゃんと認識してる」
「ちょっちその評価、キミの趣味に偏りすぎてるんやない?……まぁでも、ちゃんとうちのこと見ててくれて、ありがとぅ」
――――髪、ほどいていいか?
――――キミ、髪も好きやったんやね。
では、予告通り23時からリクエスト受け付けます
締め切ります
・朝潮『待てと言われましたから』
・那智『司令官、頼む』
・電『こ、混浴、ですか……?』
・青葉『司令官、取材旅行手伝って下さい!』
・曙『クソ提督と観覧車』
・翔鶴『二人寄り添いながら』
・綾波『天然さんってよく言われますねー』
・電『二人で散歩なのです』
・あきつ丸『提督殿、儚いでありますな』
・衣笠『提督、私って遅れてる……?』
以上10本でいきます
ら、ランダムにしようかなやっぱり……
多摩鎮守府との交流はあちらの方で
コンマ06は誤差の範疇ということで
その分、青葉とのイタリア旅行をイチャイチャ成分多めで書くつもりです
>>665ですが了解 その分長くなるのかな
・朝潮『待てと言われましたから』、投下します
ずっと街で待たせるパターンも考えましたが、今回はこちらのパターンで……
――――提督執務室。
「朝潮、待て」
「それは御命令ですか?」
「あぁ」
「はい、了解しました」
提督からの命令に従い、朝潮は手に持ったスプーンをテーブルに置いて待つ。意図はどうあれ、命令に彼女が背くはずもない。
だが、それ故に少し心配もされていた。
(多少は気を抜くようになったが、やっぱりどっか固いな……)
戦いも終わり、今まで以上に砕けた態度を取る艦娘も増えてきている中、朝潮は未だに“御命令ですか?”という返しを多用する傾向にある。それが例え命令であってもそうでなくても、断る気が無いにも関わらず、だ。
そして、今のように間宮アイスが溶けていくのを見つめながらも、彼女は決して何も言わない。
(こっちとしては、ちょっとぐらいワガママ言ったりしてくれる方が嬉しいんだがなぁ……)
「……」
(……流石に見てて胸が痛くなってきた。もう溶けてるし、アレは俺が食べて新しいの用意してやるか)
「朝潮」
「はい、何でしょうか」
「意地悪言って悪かったな。間宮には俺から言っとくから、新しいの貰って来て食べていいぞ」
「意地悪、だったのですか……?」
そんなこととは露程も思っていなかった朝潮は、心底意外そうな声を出す。提督の行動には全て意味があると思っている彼女からすれば、今回のコレが意地悪だという発想そのものが無かったのだ。
「アイス食うの待てなんて、普通言わないだろ」
「溶けたアイスがどんな味なのかを、私に教えて下さろうとしているものだとばかり思っていました」
「お前は少しでも俺を疑ったり、ワガママを言おうという気は無いのか?」
「ありません」
(根が真面目で良い子なんだがな、本当に……)
キッパリと言い切られ、提督はどうしたものかと頭を掻く。それを見て、朝潮は頬を染めながら躊躇いがちに口を開いた。
「あの、司令官……」
「何だ?」
「アイスを貰って来ますので、執務机で一緒に食べて頂いてもよろしいでしょうか?」
「――あぁ、いいぞ」
――――(甘えはしてくれるってことか)
――――(司令官の膝の上で間宮さんのアイス……幸せです)
>>666
その予定です
・那智『司令官、頼む』、投下します
――――妙高型私室。
「どうだ、何とかなりそうか?」
「分からん。そもそも何で雨漏りの補修を明石じゃなくて俺に頼むんだよ」
「他にも色々作業が立て込んでいて、こちらへの対応は時間がかかると言われてしまった」
(そういえば、夕張も一緒に点検して回ってるって言ってたな……。俺もこれぐらいの補修は何とかやってみるか)
「司令官、ここもだいぶ老朽化してきた。コレを期に全面改築も視野に入れておいた方がよいのではないか?」
「そうだな……いくら台風が直撃したとはいえ、雨漏りまでするとなると安全面が心配だ。ちょっと後で加賀や明石と相談してみる」
「――すまない」
「何で謝るんだよ、雨漏りしたのはお前のせいじゃないだろ」
「今回の台風の一件の対応に追われて、あまり貴様が休めていないと聞いている。本来ならば秘書艦として、今は休ませてやるべきなのだが……」
「そんなことなら気にしなくても大丈夫だ。たまには頼りになるところを見せんと、お前達に愛想を尽かされるかもしれんしな」
「……女の評価を気にするような軟派な男の方が、私は嫌いかもしれんぞ?」
「慣れないことした上に嫌われるとか踏んだり蹴ったりだな、おい……とりあえず、屋上行くとするか」
「私も行こう、任せっきりは性に合わん」
――屋上。
「うげっ……かなりデカイな、このヒビ」
「位置的に私達の部屋の真上だな。雨漏りが酷かったのも頷ける」
「こりゃ補修しても一時しのぎにしかならんなぁ……やっぱりいっそ建て替えるか」
「建て替えの間、私達の住む場所はどうするつもりだ?」
「空母寮と駆逐寮に割り振る。元々広めに作ってあるから何とかなるだろ。新しい寮が出来たら、残りの古い寮も同じ様に建て替えていけばいい」
「そうか、なら私は千歳のところにでも世話になるとしよう」
「じゃあ話も決まったところで、一時しのぎの突貫工事やるとするか」
「あぁ、手早く済ませてしまおう」
――――どうだ、少しは疲れが取れそうか?
――――(風呂で疲れは取れるが、横に那智が裸で居る時点で気持ちは休まらん……)
>>675
コレ、何の画像だったんでしょうか……?
割り振るとき阿賀野は能代とセットにしてほしいってことでは・・・酒匂は矢矧とかな
間違えて青葉を先に書いちゃいました……電の話は夜には書き上げて来ますので、申し訳無いのですがもう暫くお待ちください
・青葉『司令官、取材旅行手伝って下さい!』、投下します
――――提督執務室。
「司令官司令官、ちょーっと青葉の取材に付き合ってもらえますか?」
「それは構わないんだが……そのスーツケース、何だ?」
「嫌ですねぇ司令官。女の子の荷物をチェックしたいなんて、青葉困っちゃいます」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……」
「大丈夫です、問題なんて一つも無いです。加賀さんと明日と明後日と明明後日の秘書艦娘の子達には土下座して許可得ちゃいましたから」
「おいコラ聞き捨てならない問題と事態が増えてるぞ」
「細かいことは後でちゃんと説明しますから、今はタクシーにレッツゴーです。このままだと飛行機に乗り遅れちゃいますから」
「飛行機!?」
「いやーやっと海外での取材許可が下りたんですよ。青葉、感激です」
「待て待て待て待て! 海外に行くのは流石にマズイだろ!?」
「――司令官、こういう時に相応しい言葉を、青葉は初雪から借りたゲームで教えてもらいました」
――――大丈夫だ、問題ない。
――――いや、それダメフラグだからな?
――――イタリア。
「着きました!」
「着いちまった……」
「司令官、取材するなら何処が良いと思いますか?」
「行くなら定番の観光名所でいいだろ。俺もお前もイタリア観光なんか初めてなんだし」
「そうですね、じゃあ早速出発しちゃいます!」
「はぁ……ってコラおい青葉! スーツケースを置いて行くんじゃねぇ!」
――――ローマ。
「それで、取材ってどんな記事書くんだ?」
「“カップルで行くイタリア旅行! 青葉、体験して来ちゃいました!”ってタイトルですよ?」
「……俺を連れてきたのはそういうこ嫌な奴とイタリアまで来て腕組んで歩きたいんだな?」
「何でそう一々回りくどい言い方をするんですか、もう! ストレートに言ってくれてもいいじゃないですか!」
「つまらん事を聞くからだ」
「うー……」
「唸るな。ほら、ジェラートでも食いに行くぞ」
「司令官の注文するの一口下さいね?」
「そっちのもくれるならな」
――――広場。
「有名映画のあそこでは飲食禁止されてるし、この辺で落ち着いて食うか」
「ほうへふね」
「……美味いか? ブラッドベリージェラート」
「はい、とっても」
「一口で半分ほど食べられてるのは気のせいだよな? なぁ、青葉」
「し、司令官? もしかして結構ジェラート楽しみにしてました?」
「そんなことはないぞ? だから、そっちのを一口寄越せ。一口で口に含める限界まで食ってやる」
「確実に半分以上青葉のストロベリージェラート食べる気じゃないですか!?」
「取材に付き合ってやってんだ、それぐらいは――ってコラ、急いで自分のを食うな!」
「ほへは青葉のれふ」
「ほー、そうかそうか……じゃあ青葉が食べたジェラートの味は、青葉から直接教えて貰うとするか」
「っ!?」
――ちゅる、ちゅぱ、じゅる。
「――ぷはっ! な、ななな何するんですかいきなり!?」
「ん、甘くて美味いなストロベリーも」
「甘くて美味いな、じゃありませんよ! 青葉に取材する時はせめて事前にアポを取って番号をお確かめの上、改めてご連絡下さいっていつも言ってるじゃないですか!」
「動揺し過ぎて言ってる事が滅茶苦茶になってるぞ。それに、カップル用の記事書くならこういうのもありだろ」
「そ、それは、そうでしょうけど……」
「――四日間、きっちり取材に協力してやるからな?」
「程々でいいです。というか、程々にして貰わないと青葉が持ちません」
コピペ失敗、修正しました
>>680
――――イタリア。
「着きました!」
「着いちまった……」
「司令官、取材するなら何処が良いと思いますか?」
「行くなら定番の観光名所でいいだろ。俺もお前もイタリア観光なんか初めてなんだし」
「そうですね、じゃあ早速出発しちゃいます!」
「はぁ……ってコラおい青葉! スーツケースを置いて行くんじゃねぇ!」
――――ローマ。
「それで、取材ってどんな記事書くんだ?」
「“カップルで行くイタリア旅行! 青葉、体験して来ちゃいました!”ってタイトルですよ?」
「……俺を連れてきたのはそういうことか」
「そういう理由で連れて来ちゃいました。それとも、他の男の人を連れて来た方が良かったですか?」
「即却下」
「なら、ちゃんと取材に協力して下さいね」
「……腕でも、組むか」
「組みます! 組んじゃいます!」
「そんなに引っ張ってお前は俺を投げ飛ばしたいのか? はしゃぎすぎて取材忘れないように気を付けろよ」
「大丈夫です。青葉はコレでも一応プロの記者ですから」
「取材にかこつけて俺と海外旅行を満喫しようって奴が何言ってやがる」
「むぅ……青葉と旅行、司令官は嫌なんですか?」
「お前は嫌な奴とイタリアまで来て腕組んで歩きたいんだな?」
「何でそう一々回りくどい言い方をするんですか、もう! ストレートに言ってくれてもいいじゃないですか!」
「つまらん事を聞くからだ」
「うー……」
「唸るな。ほら、ジェラートでも食いに行くぞ」
「司令官の注文するの一口下さいね?」
「そっちのもくれるならな」
――――真実の口。
「あ、青葉の腕がー!」
「帰ったら明石に言えば治る」
「ちょっとはノって下さいよ……」
「傷口を縛って焼けばいいのか?」
「さぁ次に行きましょー」
――――コロッセオ。
「絶対に戦ったら生き残れませんよね」
「武器と盾がまず持てるかどうかだな」
「でも、司令官は青葉が守っちゃいますから大丈夫です」
「頼むぞ、ソロモンの狼」
「ワレアオバ、ワレアオバ」
「おいやめろ。……まぁ、何があっても生き延びてやるさ」
「じゃあ司令官の取材ノートを後三百冊書くまで死なないで下さいよ?」
「流石に寿命の場合は勘弁してくれないか?」
――――トレヴィの泉。
「司令官、青葉の目にはコインが三枚見えちゃってますよ? 気付いてないとでも思ってました?」
「じょ、冗談だから腕を捻り上げるな! ちゃんと二枚投げる、投げるって!」
「冗談でもやって良いことと悪いことがありますよぉ……」
「ほら、拗ねてないで投げるぞ」
「えいっ」
「そんなヤケクソに……」
――誰かの投げたコインが突き刺さったぞー!
――み、水が漏れてきてないか!?
「撤収」
「皆はまだこちらに気付いてないみたいですね」
「気付かれてたまるかっ!」
――――ホテル。
「流石に動き回ったから疲れたな……」
「青葉もクタクタです……」
「――なぁ青葉、足マッサージしてやろうか?」
「遠慮します拒否します全力でお断りします」
「おいそこまで嫌がられると流石に傷付くぞこっちも」
「だって司令官、足触る時の手付きがいやらしいんですよ」
「そんなことは多分ない」
「……じゃあ、明日お願いします」
「ん、了解」
――――ピサの斜塔。
「傾いてますねぇ」
「こっちが傾いてる感覚に陥るな」
「何か見てると段々首が痛くなってきちゃいました」
「そりゃずっと首を傾けてるからだろ」
「後、青葉はお昼にピザが食べたいです」
「……奇遇だな、俺も食いたい」
――――ベネツィア。
「日本の船渡しとかとはまた違った風情があるな」
「何かこうしてると不思議な気分になりますね。青葉達は自分で水の上を移動するのが当たり前になっちゃってますから」
「そのうち慣れるさ」
「――司令官」
「何だ?」
「酔っちゃいました、肩貸して下さい」
「艦娘がこんなので船酔いってあり得んだろ……」
「いいから貸して下さいよ」
「十分一万」
「青葉の温もりプライスレスです」
「無料ならじっくりと味わうとするか」
「そういう意味で言ったんじゃありませんよっ!」
「街並み、綺麗だな」
「司令官の横に可愛い女の子も居ますねぇ」
「そっちは後でいくらでも見れるから今はいい」
「……それはそれで困っちゃいます」
――――日本。
「青葉、着いたぞ」
「……」
「何だ、どうした?」
「……腰、痛いんですよ」
「知らん、俺のせいじゃない。さっさと鎮守府に帰って土産配るぞ」
「司令官の鬼! 悪魔! あることないこと鎮守府新聞に書いちゃいますからね!」
「いいから早く来い、やっぱり何日も鎮守府から離れてると落ち着かん」
「……もう、次があっても付き合ってくれませんか?」
「――ドイツなら考えてやる」
「言いましたね? 言っちゃいましたね? 青葉、ちゃんと聞きましたよ? 是が非でも次はドイツ取材にします!」
(また来年もか……まぁ、悪くなかったしたまにはいいか)
――――あっ……ツーショットばっかり撮ってて記事に使えそうな写真が……。
――――やっぱり取材忘れてたんじゃねぇか!
>>677
教えてくださりありがとうございます
私の携帯からだと直接見れなかったもので……
・電『こ、混浴、ですか……?』、投下します
――――温泉宿。
「司令官さん、どうしてここを選んだのですか?」
「露天で混浴って探して適当に」
「こん、よく?」
「一緒に入るってことだ」
「こん浴……混浴……っ!?」
意味から混浴という字に行き着く。納得して頷く。硬直。赤面。こういう反応は純粋に可愛いなと、提督もそれを見ながら頷いた。
「こっ、混浴なのです!?」
「言ってなかったか?」
「電は何も聞いてないのです。そういうことは先に言って欲しかったのです」
「別に問題はないだろ」
「女の子には色々準備というものがあるのです!」
「はいはい、次からは気を付けるから背中を叩くな。ほら、温泉行くからついてこい」
「き、緊張しちゃいます……」
「少し歩くし、今から緊張してたら着く前に疲れるぞ? 転ばないように手繋ぐか?」
「手……繋ぎたいのです」
――――沢沿いの露天風呂。
(出てこないな、電……)
「――お待たせしちゃいましたか?」
「女の子には色々準備があるんだろ? 男は基本早いから仕方無いさ」
「コレならあんまり恥ずかしくないのです」
「変な奴が居たら困るし、その辺はちゃんとチェックしてるに決まってるだろ」
脱衣場で湯着を着用し、二人は合流する。提督も電の性格を考慮して、なるべく露出はしなくて済む混浴を選んでいたのだ。
「とりあえず入るか」
「はいなのです」
周囲の景色を楽しみながら、二人は露天風呂へと身体をゆっくりと浸からせる。
「――ふぅ、良い感じだな」
「とっても温かくて気持ち良いのです」
「他に客も居ないし、寛げていい」
「司令官さんと二人っきり、嬉しいのです」
「こっち、来るか?」
「あの……その……はいなのです」
一人分程空けていた距離を詰め、電は提督の横にピッタリとくっついた。鳥の囀りや木々の揺れる音を聞きながら、二人は暫しそのまま無言で過ごす。
「――電」
「何ですか、司令官さん」
「人、来たっぽい」
(胸の大きいお姉さんが二人なのです……)
「男じゃなくて良かったな」
「……あまり、良くはないですね」
「?」
「何でも無いのです!」
――わーあの子凄い可愛い!
――兄妹かな?
(やっぱり、電は妹に見えちゃうのですね……)
「――電、今はコレで我慢しろ」
「はにゃっ!? し、司令官さん!?」
――えっ?……今、頬にキスしてなかった……?
――見間違いじゃないの?
(司令官さんに、司令官さんに頬にキスされたのです……はぅっ)
「端から見たら犯罪者になんのか俺はやっぱり……ん?」
「はにゃー……」
「逆上せてる!? おい、しっかりしろ電! 電ー!」
――――司令官さん……大好き……なのです……。
――――(また来ような、次はお前が大きくなった時に)
>>676
誤爆したんです、すみません
ニコニコ静画にあった画像のようです
>>693
わざわざ言いに来てくださってありがとうございます
誤爆はよく見かけますしお気になさらず
・曙『クソ提督と観覧車』、投下します
高校一年生程度の曙をご想像下さい
後、鈴谷は善意で教えただけです
――――提督執務室。
「クソ提督!」
「曙、ノックはしなくていいがドアはゆっくり開けろ。誰かにぶつかったらどうする」
「あっ、うん、ごめん」
「よし。で、何だ?」
「行きたいところあるから連れてって」
「行きたいところ?」
「――大阪、行きたい」
――――大阪。
「何で大阪に来たかったんだ?」
「鈴谷さんにオススメの場所聞いたのよ」
「鈴谷に? 何のオススメだよ」
「べ、別に何だっていいじゃない」
(デートスポットに決まってんでしょこのクソ提督!)
「まぁ、行きたい場所があるならとりあえずそこに行くか。方向はどっちだ?」
「えっと、多分こっち」
「多分ってお前なぁ……。とにかく行くぞ」
「あっ……うん」
(手、今日はちゃんと何も言わずに繋いでくれた。えへへっ)
――――梅田、某観覧車。
「ここに、来たかったのか……?」
「クソ提督、ここ知ってるの?」
「まぁ、一応な」
(鈴谷、お前バレたら漣達にシメられるぞ絶対に……)
「早く乗るわよ、ほら」
「あっちょっと待て曙、今券買うから!」
――――観覧車内。
「へー結構眺めいいじゃない」
「かなりの範囲見渡せるからな」
「クソ提督は、前にも誰かと乗ったことあるの?」
「家族と昔乗ったには乗ったが、もう十年以上前の話だ」
「ふーん……そっか」
「それがどうかしたのか?」
「ううん、別に。――そろそろ、一番上ね」
「そうだな」
「あの、ね? クソ提督……その……」
(……定番っちゃ定番だし、曙がそれを望んでるなら、いいか)
「曙、こっち向け。そんなに時間無いぞ」
「えっ――んっ!?」
――ちゅっ、ちゅぱ。
「っ……んぅ……っはぁ、はぁ……ふぅ」
「おっと、大丈夫か?」
「大丈夫じゃ、ないわよぉ……頭、ボーっとするし……このっ、クソ提督ぅ……」
「そんだけ勢いの無いクソ提督は初めて聞いたな」
「……て」
「ん? どうした?」
「――もっと、して?」
――――写真も撮ってもらえるけど、いるか?
――――いるに決まってんじゃない! そんなの聞くんじゃないわよ、このクソ提督!
翔鶴は明日になります
後、曙のを補足しておくと、乗ったら別れるというジンクスのある観覧車です
鈴谷はそういうの気にしないで、単純にオススメとして曙に伝えたという話でした
・翔鶴『二人寄り添いながら』、投下します
――――トロッコ列車。
「紅葉が綺麗ですね、提督」
「あぁ、綺麗だ」
少し煤の臭いを感じながら、二人は窓の外の景色を眺める。赤と黄色の織り成す自然の芸術が、まるで絵画のように枠の向こうに広がっていた。
「私は昔から海とドックの内装ばかり見ていましたから、こういう景色がとても新鮮で、外出がいつも楽しみなんです。提督、色々な場所へと連れてきて下さって、本当に感謝しています」
「そう言ってもらえて何よりだ」
「今度、瑞鶴とも来てみたいわ」
そう口にした彼女の横顔に、以前のような危うさは何処にも見受けられない。シスコンな部分は残っているものの、病的という程のものでは無くなっていた。
「――提督?」
「ん? 何だ?」
「この方が写真を撮って下さるそうですよ」
――撮った写真は後で販売も致しますので、良ければ是非。
「じゃあ旅の思い出にもなるし、撮ってもらうか」
「では、折角ですしこうしましょう」
翔鶴は提督の腕に自分の腕を絡め、肩へともたれかかる。写真は口実であり、単純に彼女がそうしたかっただけというのは、その素早い動作から明白だ。
――撮りまーす……はい、ありがとうございましたー。
「――撮り終わったぞ」
「出来れば、このままずっと……いけませんか?」
「いけない理由が見当たらないな」
「ふふっ、“ここは譲れません”」
「加賀のマネか?」
「はい、瑞鶴もよくマネしていますよ。加賀さんに知られたら怒られそうですけど」
「口では怒ってても、多分内心喜んでると思うぞ。後、アイツが増えたみたいに感じるからやめてくれ」
「帰ったら、そうお伝えしておきますね」
「よし、願いを一つ叶えてやる。だからそれだけは絶対にやめろ」
「――何でも、いいの?」
提督の腕にかかっている力が、急に強まる。彼女の胸の感触がより鮮明に感じられようになったが、今はそれどころではない。
「何でもは無理だ、叶えられる範囲でな」
「……でしたら、今日1日は私だけを見て下さい」
「……あぁ、元からそのつもりだ」
窓から見える景色の様に赤く染まった翔鶴の顔を見ながら、提督は駅に着くまでの残りの時間を楽しむのだった。
――――提督、今、他の女性を見ていませんでしか?
――――翔鶴、痛い、血が止まる、見てない、見てないって!
・綾波『天然さんってよく言われますねー』、投下します
――――隣町。
「――? ここはどこでしょー?」
ずっと雲を見ながら小一時間程歩いていた綾波。人にはぶつからず、障害物も全て避け、辿り着いたのは隣町。
周囲に駅やバス停も見当たらず、とりあえずは来た道を戻ろうと振り返る。
「……綾波、どっちから来たんでしょうか」
目の前には十字路。無意識に歩いていた為、来た方向など彼女は全く覚えていない。
「ちょっと困りましたねー」
さして困ったようにも聞こえない声を出しながら、まずは真っ直ぐ行ってみようと綾波は歩き出す。
(あっそうだ。何方かに道を聞いて教えて頂きましょう)
最初に見かけた人物に声をかけようと決め、ちょうど曲がり角を曲がってきた男性へと、彼女は少し早足で近付いた。
「あの、少々お尋ねしたいことがあるのですがー」
――何? どうしたの?
――――鎮守府。
「――また綾波が消えた?」
「うん、雑誌読んでる一瞬の間に」
「まぁ何時もの事だし、アイツなら心配いらないだろ」
「そりゃそうだけど、最近はちょっと違う問題があってさー……」
「失礼します。敷波、綾波が戻ってきたわ」
「そうか。良かったな、敷波――敷波?」
(これだけ帰りが早いってことは、またっぽいな……)
――――鎮守府入口。
「皆さん、ありがとうございましたー」
――いいよいいよ、気にしないで。
――また何かあったら駆け付けるから。
――困った時はそこにかけて、次に迷った時はすぐに車で迎えに行くよ。
「ありがとうございます。でも、知らない人の車には乗らないように言われていますから」
「そもそも知らない奴について行くんじゃないわよ。まーたこんなに男引き連れて帰って来て」
「あっ敷波、ただいまー」
「ただいまーじゃない! 毎回毎回勝手にどっか消えて、ちょっとは探すあたしの身にもなりなさいよね。っていうか携帯どうしたのよ」
「充電、切れちゃってました」
「はぁ……まぁ、いいや。そこの人達、この子ちゃんと保護者兼彼氏居るから、大人しく諦めて」
――綾波ちゃん彼氏居たの!?
――とてもそんな風には……。
――でも、食事に誘ったらいいって言ったよね?
「そういえばそうでした。敷波、この方が美味しいお店を教えて下さるそうなんです。司令官をお誘いして今度一緒に行きませんかー?」
「綾波、アンタねぇ……」
――――コレ持って出歩け、明石に作らせた発信器だ。俺か敷波がすぐに迎えに行く。
――――司令官は心配性なんですねぇ。
・電『二人で散歩なのです』、投下します
――――並木道。
「司令官さん、銀杏(いちょう)が綺麗ですね」
「銀杏(ぎんなん)食いたい」
「帰ったら茶碗蒸しをお作りしますから、今は花を見てくれませんか?」
「花を見ても腹は膨れん」
「身も蓋も無いことを言わないで欲しいのです……」
少しからかいすぎたと、提督は電の頭を二、三度軽くポンと叩く。そして、ある事に気が付く。
「電、また背伸びたな」
「最近、暁が頭を頻繁に押さえに来るのです」
「とうとう三人に抜かれたからな、アイツ……」
「――ようやく、司令官さんの胸の辺りですね」
電は前へと回り込み、自分の頭の上に置いた手を水平に提督の身体へと持っていく。以前にこうした時は鳩尾辺りだったので、約五センチ以上は伸びている計算になる。
「女の子は電ぐらいの時期が一番伸びやすいし、この調子なら俺の肩までぐらいはすぐに伸びると思うぞ」
「よく食べて、よく動いて、よく寝るのです」
「頼むから抜かさないでくれよ? 何人か俺より高い奴いるし、これ以上増えられると流石に悲しくなる」
「大丈夫なのです。電は司令官さんに抱き締められたらすっぽり埋まる程度の身長を目指しているのです」
それは狙ってどうにかなるものなのかと心の中でツッコミを入れながら、提督は電とズレかけた歩調を合わせる。後ろ向きに歩くのを注意しようかと考えるも、銀杏の花が舞う中で満面の笑みを自分に向ける少女を見ていると無粋に思えてきて、彼は口を噤(つぐ)んだ。
「少しずつ、少しずつ、司令官さんと目線の高さが合ってくるのが、電はとても嬉しいのです」
「……そうか」
「はいなのです」
真っ直ぐに向けられる好意。それは重くはなく、ただ優しく、暖かい。
――ふと、視界の端に良さそうな屋台を見付け、提督はその存在に気付いていないであろう少女に伝えようと口を開く。
「――なぁ、あそこにクレープの屋台があるけど、食べるか?」
「クレープ! 食べたいので――はにゃっ!?」
「電!?」
方向転換をしようとして失敗し、足をもつれさせた電。それを助けようと、提督は必死に手を伸ばして支えようとするのだった。
――――司令官さん? 大丈夫ですか?
――――(コイツの身体能力忘れてた……俺が滑って転ぶとか情けねぇ……)
乙
銀杏の花→銀杏の葉でよろしいか?
>>716
その通りです、葉です
ちょっとボケてましたすいません
今日はちょっと更新出来そうにありません
明日残り二つ書きます
・あきつ丸『提督殿、儚いでありますな』、投下します
――――海辺。
「提督殿、どっちが長く線香花火を落とさずいられるか勝負であります」
「何か賭けるのか?」
「勝ったら抱き締めるであります。負けたら抱き締めていいであります」
「それじゃ賭けになってないだろ……」
「不満でありますか?」
「別に賭けなくても後でしてやるから、今は普通に楽しめ」
「了解であります」
同時に火を着け、線香花火の放つ小さな音と光を、暫し無言で二人は楽しむ。
「――――あっ」
「お前のが先に落ちたな」
「……提督殿」
「何だ?」
「儚いでありますな、線香花火というのは」
あきつ丸は下を向いており、提督からは帽子に隠れたその表情を窺い知る事が出来ない。しかし、その声音から何を考えているか推察することは可能だった。
「――火を着けなきゃ、湿気ってそのまま捨てられる。自分の役目を全う出来るっていうのは、儚いか?」
「それは、名誉なことだと思うであります」
「風ですぐに落ちたり、上手く燃えなかったりもするが、それも役目を果たそうとした結果だ。俺は、線香花火を儚いとは思わない」
「……提督殿は、やはり変わっているでありますな」
「俺は至ってまとも――いや、まともじゃないな」
鎮守府の現状を鑑みると、どう考えても提督はまともとは言い難い。その事実を改めて意識し、眉間に皺を寄せる彼を見て、あきつ丸は少し苦笑しながら口を開く。
「憲兵のバイトをしていると、記録として“轟沈”や“死亡”という単語を目にする機会が多くなったであります。彼女達の中には、命の灯火を踏みにじるように消された者や、名誉を汚された挙げ句、役目とは無関係な死を与えられた者も居たであります」
「……だろうな」
「自分は……自分は今、幸せであります。しかし、彼女達の事を考える度、どうしようもなく胸が痛む……」
「――だから、お前は憲兵を続けているんだろ? なら、それ以上気に病むな。必死に悲しみを減らそうと努力してるお前が笑えないんじゃ、意味がない」
「提督殿……」
「ほら、まだまだ花火はあるんだからやるぞ。湿っぽいのはコレで終わりだ」
「――了解であります」
――――負けたので抱き締めていいであります。
――――もう既に抱き着いてんじゃねえか……。
・衣笠『提督、私って遅れてる……?』、投下します
――――提督執務室。
「衣笠、悩みってのは何だ?」
「青葉にね、“衣笠のセンスや使う言葉は一昔前のでちょっと古いんですよねぇ”って言われたの。ねぇ、提督もそう思う?」
「あぁ、古い」
「即答!?」
「アフターファイブなんて言葉、俺の世代ですら基本的に知らんぞ。そもそもお前、どっからそんな言葉知ったんだよ」
「艦娘になった時から何故か知識として頭の中にあったんだけど……」
(そもそも艦娘自体が謎だから良く分からんが、コイツだけ時間軸間違えて情報を与えられたのか?)
「チョベリバとかナウいも死語?」
「使うな、絶対に使うな」
「……提督、こんな子は嫌い?」
「そんなことで嫌う訳無いだろ。まぁ、記事書く時に使わないように気を付ければ、特に問題はないんじゃないか?」
「そうよね、死語っぽいのを使わなければいいだけの話よね。ありがと、提督」
「話がそれで終わりなら、そろそろ昼飯作ってくれ」
「はーい」
――――同日、夕方。
「――ふぅ、ご馳走さん」
「どう? 美味しかった?」
「あぁ、美味かった。うちは料理できる艦娘が多くて助かる」
「提督が喜んで食べてくれるからだよ。あなたに“美味しい”って言ってもらう為なら、皆張り切っちゃうもん」
「そんなに舌が肥えてる訳でもないし、大抵美味いって言うぞ?」
「もっともーっと喜んでもらいたいの。皆飽きられないようにレシピ改良したり、メニュー自分で考えたりしてるんだからね」
「……衣笠、試作した料理って自分で普通食べるよな」
「うん、それがどうかしたの?」
「腹、少し出てきてないか?」
「ちょっ、あの、触るのはいいけど、お腹はつままないでくれます……? 提督こそデスクワークばっかりだから、ちょっとお腹が出て――ない」
「結構運動してるからな、むしろ前より痩せた」
「へー、そうなんだ。っていうか提督、そろそろお腹つまむのやめてよね」
「あぁ、すまんすまん」
「最近ずっと記事書くのに部屋に籠ってたし、コレはきっとそのせいなんだからね!」
「別に悪いとは言ってないだろ、その程度なら普通だ」
「――提督。運動、付き合ってくれる?」
(……痩せる一方だな、こりゃ)
――――どう? ボン、キュッ、ボンのナイスバディーでしょ?
――――それも死語だ。
では、リクエストを12時10分まで受け付けます
締め切ります
・駆逐艦s『あえて長門に自分から抱き着いてみる』
・ビスマルク『いいから誉めなさい!』
・那智&足柄『どういう方向性になるか』
・夕立改二『今度は大鳳さんと提督さんも連れて、ぽいもの探すっぽい!』
・那珂『生ライブ? テレビ放送?』
・飛鷹『短冊にかける願い』
・メカ夕張『私が秘書艦?』
・青葉『青葉のカモフラージュは完璧です!』
・第六駆逐隊『流れるプール』
以上の九本でお送りします
・駆逐艦s『あえて長門に自分から抱き着いてみる』、投下します
どっかの猫と鼠の関係っぽく……
――――鎮守府内、某所。
「今度こそ、今度こそ長門を……!」
「アンタもよぅやるなぁ、そんなに構ってもらえんくなったんが不満なん?」
「素直じゃないわねー陽炎ってば」
「黒潮も村雨もちょっと黙ってて」
「あの、私は別に仕返しとかはしたくないので、もう部屋に戻ってもいいでしょうか……?」
「私も、部屋でゲームしたい……」
「ダメよ、アンタ達にも協力してもらうわ」
「具体的にはどうするん?」
「作戦はこうよ、まずは完全に油断させる為に――」
――――鎮守府内、廊下。
(毎日見回りだけというのも、案外疲れるものだな……)
「――あの、長門さん」
「む? 磯波が私に話しかけてくるなど珍しいな。まさか、駆逐艦娘を狙う不審者が現れたのか!?」
「いえ、あの、その……えいっ」
(――何、だと……?)
「ひ、日頃の感謝の気持ちです」
「あ、いや、私は当然の事をしているに過ぎない」
(磯波は自分から抱き着いてくるような、積極的な子では無かったはず……ようやく、ようやくこの長門の思いが通じたのか)
「私も、えいっ」
「む? 初雪もか?」
「うん」
(二人も私に自分から……胸が熱いな)
「長門はん、うちも感謝してるんよ」
「はいはーい、村雨も感謝してるわ」
「お前達……」
「長門さん、大好きです」
「長門さん、好きです」
「長門はん、好きやで」
「長門さん、好・き・よ」
「――この長門、今改めてこの場で誓おう。生涯お前達は私が守る!」
(私達が成長しても、この調子なんでしょうか……?)
(ちょっと、怖い)
(陽炎はこんなんのどこがえぇんやろなぁ)
(そろそろかしら? こっちはスタンバイOKよ!)
「よし、今日はお前達を何処かに食事に連れていって――」
「長門! 覚悟ぉぉぉぉぉっ!」
「ふんっ!」
「……アレ?」
「陽炎、感謝の意を素直に表せない故の後頭部へのジャンピングニー、しかと受け止めたぞ」
「えっ、いや、そんなつもりじゃ……」
「思えば、お前とは何度も楽しい追いかけっこをしたものだ。今、お前から感謝されるというのは、とても胸が熱くなる」
「私は楽しくなんて無かったわよ! 大体何よ、最近は文月ばっかり構ってて、全然私達を追いかけなくなったじゃない!」
「陽炎、本音出とるでー」
「そうか……寂しい思いをさせて済まなかったな、今度は陽炎も一緒に出掛けようじゃないか。無論、追いかけっこもまたやろう」
「べ、別に私は寂しくなんて無いわよ。……ただ、ちょっと最近つまんなかったってだけ」
(私、何のために付き合わされたんでしょうか……)
(部屋、戻ろ)
(青葉さんに教えに行っちゃおっかな)
(何や面白い事になったなぁ、暫くは面白くなりそうや)
――――ちょっとアンタ仕事はどうしたのよ!?
――――武蔵に代理を頼んだ! 今日はお前達と追いかけっこだ!
――――真面目に働けバカ長門! こっち来んなぁぁぁぁ!
・ビスマルク『いいから誉めなさい!』、投下します
――――提督執務室。
「提督、また売り上げが伸びたわ」
「そうか、頑張ってるなビスマルク」
「――それだけなの?」
物凄く不満気なビスマルク。出撃や演習、遠征も無くなった今、彼女が提督に求めているモノを得る為には、店を繁盛させて利益を上げるのが一番だ。
その努力の成果報告をさらりと流されたとあっては、黙って話を終わらせられるはずもない。
「この私が毎日朝から晩までパンを焼いて、新しいメニューを試行錯誤しながら寝る間も惜しんで頑張ったのよ?」
「ちゃんと寝ろ、身体壊したらどうする」
「ごめんなさい、毎日八時間は睡眠を取るようにするわ」
「ん、ならいい」
(ちゃんと今でも、体調の心配はキッチリしてくれるのね……)
過去に張り切り過ぎて体調を崩した時の事を思い出し、ビスマルクは目の前の想い人を見つめながら笑みを浮かべる。
「――ってそうじゃないわ。それだけ頑張ったのよ? もっと他に何か無いの?」
「何かって、何だ?」
「誉めなさい」
「頑張ったな」
「足りないわ」
「偉いぞ」
「言葉だけで済ませる気?」
「なら、具体的にどうして欲しいか言え」
提督もバカではない。最初からビスマルクが何を求めているのかは分かっている。
それでもこうやってわざと分からないフリをしているのは、仕事が無くて単純に手持ちぶさたなのと、彼女の反応を楽しんでいるからだ。
「そうね、誉める時は頭を撫でるのがドイツ軍では一般的だったわ」
(真顔でとんでもない嘘吐くなコイツ……)
「どうしたの? 早く誉めなさい」
「犬を飼うってのは、こんな気分なのかもしれんな」
「犬の話なんか今はどうでもいいわ」
「分かってるからちょっと待て――ほら、コレでいいのか?」
「……Sehr gut.」
「そうか、そりゃ良かった」
とても幸せそうに目を瞑りながら、ビスマルクは明日からまた働く為の活力を補給する。その姿を見て、提督もまた頑張ろうという活力をもらう。
お互いに幸せな時間は、そのまま一時間程続くのだった。
――――それじゃあ次はご飯を食べさせてね?
――――(やっぱり犬っぽいな……)
・那智&足柄『どういう方向性になるか』、投下します
――――居酒屋鳳翔。
「妙高姉さん、改二になって前より綺麗になってたわね」
「そうだな、羽黒も改二になって更に可愛らしくなった」
「……私達も改二に、いつかはなれるはずよね?」
「……そう願いたいものだ」
「那智姉さんは改二でどうなりたい?」
「私か? 特にコレといってないが……強いて挙げるとすれば、火力を重視した改造だと有難い」
「それは何でなの?」
「自分が一番姉妹艦の中で火力が高い事を、羽黒が気にしていてるというのを耳にしたのでな」
(あの子ってば、そんなこと気にする必要無いのに……)
「足柄、お前はどうなんだ?」
「私? 狼っぽくなれたらいいわね」
「四足で航行するのか?」
「流石にそれはちょっと嫌だわ……」
「――お前には、装甲重視の改造が最適だな」
「どうして?」
「もし仮にまた戦いが始まったら、お前は必ず突撃する。……私も妙高姉さん程ではないが、心配性になってしまったようだ」
「那智姉さんも前から心配性よ」
「ふっ……そうかもしれんな」
「――もう一杯、どうですか?」
「頂こう」
「私も頂くわ」
――――二人とも改二になったら、次は四人で飲もう。
――――いいわね、今から楽しみだわ。
・夕立改二『今度は大鳳さんと提督さんも連れて、ぽいもの探すっぽい!』、投下します
――――提督執務室。
「提督さん提督さん、一緒にぽいもの探すっぽい!」
「……どういうことだ?」
「言葉通り、そのままの意味です」
説明を求める提督の視線に、大鳳は説明など不要だと返す。事実、わざわざ説明するまでもないことだ。
「そうか。後、何で大鳳が一緒なのかも気になったんだが、それも説明はしてもらえないのか?」
「前に探すのに付き合ったから、今回も一緒に回ろうと誘われたんです。夕立の秘書艦日だから遠慮しようかとも思ったのだけど……」
「大鳳さんも一緒の方が楽しいっぽい!」
二人の腕を引っ張り楽しそうにしている夕立。その笑顔を見て、大鳳が断れるはずもない。
「まぁ当の本人が良いって言ってるんだし、三人で行くか」
「三人寄ればもんじゃ焼きっぽい?」
「使う場面を間違えているし、それを言うなら文殊の知恵よ?」
――――鎮守府内、廊下。
「男の子っぽい」
「僕は女の子だよ」
「そうだぞ夕立、レーベはウィッグを付けてメイド服を着たら間違えようが無いぐらい可愛い――」
「わー! わー! その話はやめてよ! 絶対に内緒にしてってあんなにお願いしたのに酷いよ!」
「隠す必要も無いだろ」
「レーベ、顔真っ赤っぽい」
(写真は無いのかしら……)
――――工厰。
「ガラクタ置き場っぽい」
「ガラクタって言わないでよ。廃棄に困った危険物を置いてるだけなんだから」
「なおさら悪いわ!」
「夕張、いい加減処分したら?」
「運ぼうとすると、五月雨ちゃんが何故か必ず遊びに来ちゃうのよ……」
「五月雨はドジっ娘」
(夕立が言い切ったですって!?)
――――空母寮。
「まない――むぐっ?」
「傷を抉るのはやめてやれ。お前も十分大きい部類に入る」
(AはセーフAはセーフAはセーフ……)
「……キミ等、考えてる事丸分かりやで?」
――――???
「……何かのコレクション部屋っぽい?」
「ここはダメだ。他の場所に行こう」
「えぇ、その方が良さそうだわ」
「――見たのね?」
「っ!? 大鳳、後は任せた。夕立、来い!」
「逃げるっぽーい!」
「二人とも待って! 私を置いていかないで!」
「別に逃げなくても何もしないわ。ただ、少し中で話をするだけよ」
「だ、誰か助けてぇぇぇ……」
――――提督執務室。
「はぁ、はぁ……ふぅー……夕立、良い子だからあの部屋で見たモノは忘れろ。アレは加賀の数少ない趣味だから」
「分かったっぽい」
(大鳳、すまん。今度埋め合わせはするから許せ……)
「んーと、んーと……」
「ん? どうした夕立、何を悩んでるんだ?」
「――提督さんは、お日様っぽい」
夕立は提督の服を掴みながら、顔を見上げる。いつもの無邪気さは成りを潜めており、少し大人びた顔をしていた。
「何で俺がお日様っぽいんだ?」
「一緒に居るとね、胸の奥の方が暖かいの。それにね、提督さんが居ると皆笑顔になるの」
「……そっか、ありがとな、夕立」
「? 提督さんがお礼を夕立に言うのはおかしいっぽい?」
「いいんだよ、言いたいんだから」
「変な提督さん」
「変とか言うとギュッとしてやらんぞ?」
「それはひどいっぽい! おーぼーっぽい!」
(頬を膨らませて怒るとか、まだまだ子供っぽいな)
まだまだ幼く、少女と呼ぶのが相応しい夕立。しかし、その無邪気さ故に、提督が彼女をよりいとおしく感じているのも確かだ。
「撫でたりギュッてして欲しいっぽいー!」
「ちょっ、待て、本気で叩くな! どっちもしてやるから!」
「ホント? えへへ、提督さん大好き」
(太陽か……それなら俺より、夕立の方が似合うと思うんだがな)
胸に頭を擦り付けている夕立の頭を撫でながら、提督はそんなことを考えるのだった。
――――二人とも、私を置いて逃げるなんて酷いわ!
――――夕立は提督さんに従っただけっぽい?
――――(意外に元気そうだな)
今日機種変更する為、ちょっと更新出来ないかもしれません
出来そうならします
操作に慣れるまで更新が少し遅くなるかもしれません
パソコンで更新出来そうな時はそちらで更新します
・那珂『生ライブ? テレビ放送?』、投下します
遅くなった上にライブ要素少なくてすいません……
――――提督執務室。
「提督! ビッグニュースビッグニュース!」
「お前ちょっとは自分の声量考えろ。耳がキンキンする……」
「そんなことより凄いんだよ! 那珂ちゃんのライブが生中継されるんだよ!」
「もう知ってる。ここの最高責任者である俺が知らないとでも思ったか?」
「あっ、加賀さんが基本的に取り仕切ってるから忘れてた」
「人をお飾りみたいに言うな。で、それだけ言いに来たなら帰れ」
「もう、分かってるク・セ・に。今日は那珂ちゃんが提督だけのアイドルになる日だよ、きゃはっ」
「……疲れるから今日はアイドル引退してみないか?」
「そんなことしたら那珂ちゃんのアイデンティティーが崩壊しちゃうよ!?」
――――ライブステージ。
「皆ー! 今日も来てくれてありがとー!」
――今日も可愛いよー!
――神通ちゃんはー?
――川内ちゃんは今日出るのー?
「二人は今日ちょっと色々忙しいから難しいかなー?」
――那珂ちゃんだけとか失望しました、那珂ちゃんのファン辞めます!
「那珂ちゃんのライブなのに!?」
――嘘だよー! 那珂ちゃん最高ー!
「ありがとー! でねでね、今日は何とねーテレビ中継が来てるんだよー!」
――ホントだ、撮影機材あるじゃん。
――那珂ちゃん生ライブ中継おめでとー!
「これも皆の応援のお陰だよ、ありがとー! それと、今日はまだ後もう一つ知って欲しい事があるの」
一般観客席とは少し離れた位置にあるVIP席。そこに座る人物が那珂の合図と共に、巨大なスクリーンへと映し出された。
「ライブを見てくれてる皆ー! この人が那珂ちゃんの提督だよー!」
(こんな演出あるなんて俺は聞いてないぞ!?)
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で、スクリーンに映る提督。かなり間抜けだ。
「提督に酷いことする人はー那珂ちゃん許さないぞー?」
(そんな大々的にアピールされたら街中で刺されそうで怖いんだがなぁ……)
――羨ましいぞこの野郎ー!
――爆発しなくていいから那珂ちゃん大事にしろー!
多少の妬みはあるものの、提督への声援が飛び交う。最初から理解してこの場にいる者しか居らず、彼に何かすれば那珂が悲しむと正常に判断できているからだ。
「じゃあ那珂ちゃんのファン第一号の紹介も終わったところで、一曲目いっくよー! 『艦娘だって恋がしたい!』」
(ファン第一号とかやめろぉぉぉぉっ!?)
――――ライブ中。
(俺、提督だったはずだよなぁ……)
「皆ー! まだまだ行くよー!」
「おー!」
――おー!
「次の曲は『シスターズ』だよ! お姉ちゃん達ステージに来てー!」
最初に出ないようなトークがあったが、テレビ局からの要望で急遽出るハメになり、二人がステージに上がる。
(会場の熱気が更に増したな、アイツ等もやっぱり人気あるのか……)
「夜戦忍者参上ー!」
「よろしくお願いします」
挨拶もそこそこに、曲が流れ始める。
三人同時にステージに上がるのはこの曲だけであり、会場も大いに盛り上がる。
(流石だ、息ピッタリだな)
「川内お姉ちゃん、神通お姉ちゃん!」
「任せて!」
「行きます!」
照明の落ちた暗いステージ上。
唯一の光源である神通の探照灯の光の中で、川内と那珂がダンスを披露する。
(……ライブステージの拡張、考えんといかんな)
新しい生き方をしっかりと見付けた三人。その輝く笑顔を見ながら、提督は明石へ頼む拡張工事の計画書を頭の中で組み立てるのだった。
――――次は二千人入るからな。
――――ホントに!? 提督ありがとー!
――――だから声のデカさを考えろ!
飛鷹『短冊にかける願い』、投下します
――――鎮守府中庭。
「短冊か……何を書いていいものやら」
「別に悩まなくても、提督の願いをそのまま書けばいいじゃない」
「そういう飛鷹はどうなんだよ、書くこと決まってんのか?」
「私はとっくに決まってるわ」
「教えろ」
「自己紹介の時に出雲丸って二度と言い間違えませんように」
「それ、短冊に書く願い事か……?」
「何を書こうと私の勝手でしょ、文句ある?」
「もっと美味い酒が飲みたいとか、もっと宴会したいとか、色々あるだろ」
「隼鷹も私も、そんなこと短冊に願ったりしないわよ」
「さっきのも大概だとは思うがな」
「私のを気にする暇があったら、提督は自分の短冊に何を書くか早く考えたらどう?」
「……実は決めてるんだが、あまりお前等に見られたくない」
「へぇー、書いたら見せて」
「お前人の話聞いてたか?」
「聞いてたわよ? でも、どうせ皆提督のはチェックするし、隠しても意味ないって」
「はぁ……分かったよ。その代わり、俺もお前等の見ていいってことだよな?」
「乙女の秘密覗き見るとか最低ね」
「提督だからいいんだよ」
「それ、どんな理屈よ……」
「――よし、書けた」
「スケベな事とか書いてないわよね?」
「そんなもん短冊に飾れるかアホ! 見たきゃ勝手に見ろ」
(‘全員が幸せでいられますように’、か……。提督らしいわね)
「見たら返せ、飾るついでに全員のを見てくる」
「はいはい、行ってらっしゃい」
(私のは後から飾るし、これなら見られなくて済むわね)
――――‘提督の願いが叶いますように’。
メカ夕張は今日の夜中か、明日の朝になると思います
ここの鎮守府みんな「それ」を書いてそうでいいよなww
・メカ夕張『私が秘書艦?』、投下します
――――提督執務室。
「おはよう夕張」
「おはようございます、提督」
「――また実験か?」
眉間に皺を寄せ、提督は目の前に居る相手からドアへと視線を移す。しかし、一向にそれが開かれる気配はない。
「メカ夕張、夕張はどうした?」
「マスターは連日の徹夜で体調を崩し、今は自室で寝ておられます」
「……お前がここに居るのは、心配をかけさせない為か?」
「いえ、ついでだから提督と一日過ごして、データを収集してこいと仰せつかりました」
その返答を聞き、提督は執務机に顔を埋めそうな程ガックリと項垂れ、深く溜め息を吐いた。
「そんな事を頼む余裕があるなら、本当にただの寝不足なんだろうな」
「はい、明石様もそう仰っていました」
「次の秘書艦日は説教してやらんといかんな。一応秘書艦も立派な仕事だってこと、アイツ忘れてんだろ……」
提督と一日一緒に過ごすだけが、秘書艦日ではない。ちゃんと業務補佐という役割もあるのだ。
「提督は、私が仕事を補佐するのではご不満でしょうか?」
「いや、不満とかそういう訳じゃない。ただ、ちょっと段取りが狂ったからムカついただけだ」
「マスターに、ですか?」
「あぁ、せっかく人が買って来たってのに、渡すタイミング逃したんでな……」
提督の手には、綺麗に包装された箱が握られていた。中には、緑のリボンが入っている。
「――メカ夕張、そのリボンって夕張のを貰ったのか?」
「はい、マスターの物です」
「そうか、じゃあコレはお前にやる」
「よいのですか? コレはマスターへ贈る予定の物では……」
「来ない奴に渡すぐらいなら、来てる奴にやる。命令だ、受け取れ」
「――はい、了解しました」
――――翌日、工厰。
「どうだった?」
「提督の事はよく分かりませんでした……。ただ、不明なバグのようなものが、胸の機関部に発生しています」
「へー……じゃあ、徹夜でメンテナンスした甲斐はあったわね」
「このバグは、メンテナンスに何処か不備があったからなのでは?」
「ううん、そうじゃないわ。むしろ成功の証だわ」
「よく分かりませんが、おめでとうございます、マスター」
――――乙女回路なんて、本当に出来ちゃうものなのね。
某大戦艦「乙女プラグインなんか実装してんじゃねーぞコラァ」
間違えてタブ消して文章全部消えた……
すいません、青葉は明日の朝になると思います……
・青葉『青葉のカモフラージュは完璧です!』、投下します
――――深夜、街中。
(これで準備はバッチリですね)
歩道と車道を隔てる生け垣の中で、青葉は張り込みの準備を終える。
夜明けにもまだ少し早く、辺りは静寂に包まれていた。
(こうしてると、昔の作戦を思い出しちゃいます)
服と肌が露出している部分を全て迷彩模様に塗り、更にその上から枝や葉で装飾。
パッと見ただけでは、そこに青葉が居ることなど分かろうはずもない。
(ではでは少し仮眠を取って、来るべき時に備えましょう)
体育座りのような体勢で、彼女は浅い眠りについた。目的の人物が現れるであろう時間は昼だ。
――――昼、同場所。
(事前リサーチが確かならば、今日現れるはずなんですが……)
ジッと息を潜め、自分が生け垣に居ると悟られないよう、細心の注意を払う。
待っているのは警戒心の塊のような人物の為、他の誰かにバレた時点で作戦は失敗となる。
(あの噂が本当だとすると、取材のしがいがありそうですねぇ)
青葉がこれだけの事をする値打ちのあるスクープの対象というと、自然と候補が絞られてくる。
(――来た来た、来ましたよ!)
「……」
普段と変わらぬ表情で、周囲を注意深く観察しながら歩く、私服姿の最強の正規空母。
髪を下し多少印象は変わっているが、それは間違いなく彼女の待っていた目的の人物だ。
(……)
距離はおよそ二十メートル、気付かれればお仕置きコースは避けられない。
青葉は額から頬へと嫌な汗が伝うのを感じ、生唾を飲み込む。そして、その緊張から解放される瞬間が遂に訪れた。
(――よし、店に入りました!)
写真にその様子を収め、突入するタイミングを見計らう。
加賀が店に入って三分後、意を決して彼女はその店の中へと飛び込んでいくのだった。
「ども、恐縮です、青葉です。加賀さんの御趣味についての取材申請に来ました!」
「……貴女の事ですから、ここで口を封じても既に写真のデータなどはどこかへ送ってあるのでしょうね」
「ご理解がお早くて助かります。でも、青葉は皆さんに加賀さんの可愛い一面を知ってもらいたいだけで、脅す気はこれっぽっちもありませんよ?」
「――そう、ならそこまで完璧にカモフラージュした努力に免じて、取材に協力してあげるわ」
「ありがとうございます!」
――――ぷちねんどろいど、お好きなんですねー。
――――集めて並べていると、気分が高揚します。
・第六駆逐隊『流れるプール』、投下します
暁は黒のセパレート
響は白のモノキニにパレオ
雷はトップがビキニタイプで下はホットパンツ
電はビキニにシャツ
――――プール。
「いーい? 三人とも、ちゃんと暁からはぐれないようにするのよ?」
「了解。飛び込み台へ行ってくる」
「ちょっと泳いできまーす」
「ウォータースライダーに行ってくるのです」
「ちょっと! いきなりバラバラに行動しないでよ!」
「冗談だよ」
「暁を置いて行くわけないじゃない」
「一緒に回るのです」
「べ、別に一人だと寂しいとか思ってないんだから……」
(自分から暴露してるね)
(暁には私がついていてあげないとダメね)
(四人でプール、いっぱい遊ぶのです!)
――――飛び込み台。
(ここここ怖くなんてななななないんだから!)
――暁、怖かったら降りてきてもいいよ。
――そうよ、失敗したらケガしちゃうわ!
――意地を張っちゃダメですよ?
「ひ、響が飛び込めたんだから暁だって!」
五分後、降りれなくなり係員に下まで連れてきてもらいました。
――――ウォータースライダー。
「電、二人でアレに乗って滑ろう」
「はいなのです」
「暁は私と乗りましょ」
「一人前のレディーは一人でも大丈夫だけど、雷がそう言うならそうするわ」
――――滑降中。
(いい感じだな、嫌いじゃない)
(とっても楽しいのです!)
(後ろから悲鳴が聞こえたけど、大丈夫なのかしら……)
(早く下に着いてー!)
――――流れるプール。
「少しここでゆっくりしよう」
「プカプカ浮いているだけでも楽しいのです」
「――アレ? 暁は?」
「……流されているうちに、どうやらはぐれたみたいだ」
「三人ともどこよぉ……暁を一人にしないでよぉ……」
十二時から五つだけリクエスト受け付けます
更新速度がかなり遅くなってしまっていますが、続けてはいきます
・一航戦『流しそうめんとは流さなければいけないのですね』
・提督『鎮守府が全壊の危機』
・瑞鶴『提督さんとまったり』
・電『猫ちゃんを飼うのです』
・提督『研修って……何の研修だよ』
以上、5本でお送りします
最終決戦はデータ移動やら何やらで文章がバラバラになってて整理中です
書いてはいますが、投下はもう少しかかりそうです
・一航戦『流しそうめんとは流さなければいけないのですね』、投下します
メカ夕張のは乙女回路と乙女プラグイン両方頭に思い浮かべてました
――――鎮守府、食堂裏手。
「流しそうめんは位置取りが重要と聞きました」
「では、私は提督の隣に」
「よし、他の奴等はあっちの自動流しそうめん装置で食え。ここはもうダメだ」
上流に陣取った赤城を見て、提督は早々に他の集まっているメンバーを別の所に避難させた。
それを見て彼女はすぐに場所を移動し、加賀と彼を挟むように陣取る。
「お前なぁ……」
「何か問題がありますか?」
「俺にも食えるようにしろ」
「失礼ですね、私だってちゃんとマナーは守ります」
「マナーもですが、飲食の上限料金も守って下さい」
「次七桁食ったらグラビア写真な」
「グラビア……? キャビアとは違うのですか?」
食の為なら本気で脱ぐかもしれないと思い、提督はそれ以上口にするのを止める。
ふと視線を移せば、間宮がそうめんを大鯨とポリバケツで運んで来るのが見え、改めて一食の量の多さを彼は痛感した。
「あのまま食べたいですね」
「ポリバケツからは流石にやめてください、せめてタライで」
「タライなら守れるのか、お前等の誇りは……」
「流しますよー!」
「一航戦赤城、食べ尽くします!」
「一航戦加賀、食べさせます」
「どっちも待て、二重の意味でゆっくり食わせろ」
開始の合図と共に聞こえた、不吉な二つの言葉。
提督の心からの願いは無視される定めらしく、二人の視線は既に流れてくるそうめんにロックオンされている。
(彩雲で上空から偵察し、最適な箸の角度を計算――ここだわ!)
「水飛沫を上げながらすくうなアホ! お前は鮭捕るクマか!」
「提督、口を開けて下さい」
「加賀は俺の箸を妨害してすくうのをやめろ」
「間宮さん、早く次をお願いします」
「口を開けないと無理矢理ねじ込みますよ? あーんして下さい」
「コレ、流しそうめんの意味あんのか?」
「楽しいですよ。はい、私も提督に食べさせてあげますね」
「お前は頼むから自分で食べてくれ。何か毛糸の玉みたいになってるけど、それどうやってすくったんだよ……」
「――頭にきました」
「痛っ!? 足を踏むな、足を!」
「食べてくれないと足を踏むクセがあるの、ごめんなさいね」
「もぐもぐ、次をすくったのでこちらをどうぞ」
「俺にも流しそうめん気分を体感させろー!」
――――教訓、そうめんで人は殺せる……。
――――喉に詰まらせるなんて、咀嚼力の鍛え方が足りませんよ提督。
――――(たくさんあーん出来たので満足です)
次スレのネタ告知
とある条件下で一週間チビになります
>>819
提督は?
>>820
提督は条件的に無理です
鎮守府崩壊危機は明日になります
すいません、予想以上に長くなってしまってもう少しかかりそうです…
明日には必ず…
提督『鎮守府が全壊の危機』、投下します
もっと泥酔成分多くした方が良かったかも…
――――提督執務室。
(あのメンバーで宴会をさせたの、やっぱり失敗だったかもしれんな……)
珍しく執務室に一人の提督。秘書艦である電が今、その宴会の様子を見に行っている為だ。
「待機組と戦艦と大鳳……そもそも大鳳が居る時点で不安だ……」
ノンアルコール以外は飲むなと厳命した為、彼女が自分から飲むことはまず無いが、飲まされる可能性はある。
女同士で積もる話もあるからと押し切られ許可したものの、今になって提督の胸に不安が込み上げて来ていた。
「――提督!」
「どうした大鯨、宴会の給仕やってたんじゃないのか?」
慌てた様子で執務室に飛び込んできた大鯨。今日の宴会で食事や酒を用意しているのは彼女だ。
「そ、それが――」
「“艦娘殺し”を皆さんが飲んじゃったんです!」
“艦娘殺し”、明石と間宮が共同で醸造した酒。それを飲んだ艦娘は必ず、気分が高揚しながら酔っ払ってしまう。
――――宴会場、跡地。
「何だ、こりゃ……」
百人は優に入る宴会場があった場所。今は、爆弾で木っ端微塵に吹き飛ばされたかの如く、跡形も残っていない。
「あの、すいませんすいません! わたしが間違えてお酒出しちゃっせいでこんなことに……」
「いや、お前のせいじゃないから気にするな。許可した俺の責任だ……」
「皆さん、何処に行ってしまったんでしょうか?」
「さぁな――大鯨、もしもの場合を考えて、お前に頼みたいことがある」
「は、はい。何でしょうかあ?」
――――半壊した駆逐艦寮。
「全員無事か!?」
「あぁ提督さんか。姉さんがまた暴走しとったけど、ほれ、この通りじゃ」
「ふへへー……うりゃかじぇー……」
「……まぁ、何も言うまい」
浦風の膝に頭を乗せ、幸せそうに眠る大鳳。
流石に起こす気にはなれず、提督は踵を返し、違う場所へと向かおうとする。
その背を追い、一人の駆逐艦娘が走りよった。
「司令官」
「ヴェールヌイか、どうした?」
「さっき電らしき人影が工厰に向かうのを見かけたよ。司令官と一緒に居ないということは、見間違いじゃなさそうだ」
「工厰……? 分かった、すぐに行ってみる」
「私も協力するよ。大鳳以外は一筋縄じゃいかないメンバーみたいだしね」
「頼む」
「了解」
――――工厰。
「夕張、メカ夕張! どこだ!」
「――司令官、あそこだ」
工厰の隅の方で、メカ夕張にもたれて目を閉じている夕張。二人がやってきたのに気付き、メカ夕張が軽く頭を下げる。
「夕張は大丈夫なのか? 一体何があった」
「マスターは気絶しているだけです。それよりも、早く皆さんを止めて下さい」
「どういうことだい?」
「全員艤装を持ち出して、鎮守府最強決定バトルロワイアルをしようと仰っていました」
「模擬弾でか?」
「いえ、皆さん出撃用の実弾フル装備です」
(明日この鎮守府、更地になってたりしないだろうな……)
「メカ夕張は夕張を頼む。ヴェールヌイは鎮圧出来そうな素面のを探して来てくれ」
「分かった、なるべく早く集めて合流する」
――――鎮守府、某所。
「Burning love!」
「司令も、金剛お姉様も、わらしのなんらからー!」
「駆逐艦娘こそ世界の宝だ!」
「あら、あらあら、今日は何だかまた爆発しちゃいそうだわ」
「お前等ー! 止まれー!」
最初に見付けたのは四人。全員顔が赤く、誰の目にも酔っている事は明白だ。
既に戦闘は始まっていた事を示すように、周囲の施設の壁は抉れ、地面も陥没しているところが多々見受けられる。
「テートクゥ、ワタシのloveを受け止めてplease!」
「気合い! 入れれ!……うっ、気持ち悪い……」
「駆逐艦娘だけでなく提督も私の胸に飛び込んで来るのか……胸が熱いな!」
「一緒に私と爆発しましょ?」
(……酔っても変わらん奴等は裏表が無いと喜べばいいのか?)
「とにかく正気に戻れ!」
効果があるかは分からないが、提督は明石のところから持ってきた高速修復材を、近寄ってきた四人にぶちまける。
ダメで元々というヤツだ。
「――こういうplayをテートクは望んでるネー?」
「ひぇーベタベタで気持ち悪い……脱ぎます!」
「万全のコンディションで抱擁をしてくれという事だな、このビッグセブン長門に任せろ!」
「こんなんじゃ私の第三砲塔の疼きは止められないわよ?」
(やっぱりダメか……)
全く効果無し。それどころか、さっき戦闘で負ったダメージを回復して更に元気になり、提督へと千鳥足で迫る。
「バトルロワイアルしてんなら俺を狙うな!」
「その通りにゃのれす」
「Shit!」
「ひぇー!」
「くっ……」
「きゃっ!」
四人は続けざまに膝に被弾してフラつく足元が余計にフラつき、膝をついて足を止めた。
そして、その弾を撃った艦娘が物陰から現れる。
「――電?」
「司令官しゃん、電は電なのれす」
(やっぱり電も飲まされるか何かしたみたいだな……)
「司令官しゃんはいにゃずまがまもりゅのれす」
「大丈夫か? 目が据わってるし呂律が回ってないぞ?」
「らいじょーぶ……なの……れす」
「電!?」
糸が切れたように崩れ落ち、地面に座り込んだ電。
慌てて駆け寄った提督に聞こえてきたのは、規則正しい寝息だった。
(他の奴等も電みたいにすぐ寝てくれるといいんだが……)
ゾンビのように匍匐(ほふく)前進してくる四人に若干恐怖を覚えながら、彼は電を背負ってその場から離脱した。
金剛・比叡・長門・陸奥、途中で力尽きて地面で朝を迎える。
電、提督に送り届けられ、自室で翌朝目覚める。
この場での被害、施設が二つ中破、地面に陥没が十数箇所。
――――鎮守府外、公道。
「あははははは! 私はっやーい!」
「しぃぃぃぃまぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぜぇぇぇぇっ!」
「っ!? 天津風!?」
「今すぐ止まって戻らないと一週間かけっこ禁止!」
「それだけはやだよぉ……戻るからかけっこ許してよぉ……」
「ほら、明日朝辛くなるから帰るわよ」
「……急に止まったら気持ち悪くなってきた……」
「もう、しょうがない子ねぇ……」
島風、天津風により保護される。
被害、特に無し。
――――鎮守府内、某所。
「ビスマルク、寝てるね」
「何で裸なのかしら……まぁ、いいけど」
「まだ……まだやれるわ……」
(……胸、大きいなぁ)
(顔に当たって邪魔ね)
ビスマルク、レーベとマックスにより保護される。
被害、特に無し。
――――鎮守府内、広場。
「ふふふ……うふふふふ……」
「扶桑姉様が二人見える……あぁ、三人に増えたわ」
「日向ー私達って八十八機も積めたっけ?」
「何を言っている、時代は航空戦艦なのだから当たり前だ」
「そっか、そうだよね」
試製晴嵐が無秩序に空を舞い、クレーターを広場に大量に作成していく。
酔っ払って目視が定まっておらず、四人に被弾が無いことを幸いと言ってよいのかは、難しいところだ。
「時雨、広場が穴ぼこだらけっぽい」
「四人とも既に制御出来てないみたいだし、寝かせて連れて帰ろう」
「一番先に、誰から運ぶ?」
「艤装があって四人とも運びにくいわね」
「てやんでぃ! このぐらい一人で――ぐえっ!?」
「涼風! 今助け――きゃあっ!?」
航空戦艦四名、白露型により保護される。
被害状況、広場に無数のクレーター、五月雨と涼風が扶桑と山城の下敷きになり大破。
――――鎮守府、裏山。
「二人とも、そのぐらいにしなよ」
「提督も心配なさっています」
「那珂ちゃん抜きで目立つなんて、皆ズルいなぁ」
「榛名には負けたくないわ!」
「榛名も霧島には負けません!」
互いに拳を振り抜いた方向にある木々を叩き折りながら、霧島と榛名は姉妹喧嘩のような戦いを繰り広げる。
砲を使わない辺りまだマシなのだが、戦艦の本気の殴り合いに割って入るのが難しいことに変わりはない。
「コレで、終わりよ!」
「勝つのは、榛名です!」
「見事なクロスカウンターだったね」
「明日、木を植えないと……」
(ライブでバトル要素取り入れたら盛り上がるかな……)
榛名・霧島、川内型により保護。
被害状況、裏山が一部滅茶苦茶。
――――鎮守府内、演習場だった場所。
「……やっぱりコイツ等が最後か」
「どうするんだい、司令官」
「とりあえず、気絶させるしか無いんじゃない?」
「利根姉さんが本気なら、私にはちょっと手に負えません……」
「加賀さん居る時点で厳しいって、私達空母の中で唯一張り合えそうな赤城さんはまた居ないし……」
「木曾も珍しくはしゃいでるねぇ」
「ふふ、明日はお仕置きね」
跡形もない演習場。まだこの場で戦おうとしているだけ救いはあるのかもしれないが、流れ弾で施設が既に三つ全壊している時点で、あまり意味がない。
「全員腕を上げましたね」
「加賀、少し足元がフラついているのではないか?」
「それは武蔵もです。何だか小刻みに揺れていますし」
「大和よ、お主も酔っれおるからそう見えるのじゃ。吾輩はじぇーんじぇん酔っ払ってなどおらぬじょ!」
「あはははは! 大井姉の気持ちが今は分かる! 魚雷はいいな!」
五人が酔っているのは紛れもなく確かだ。
それにもかかわらず、砲撃や雷撃、艦載機の制御、回避といった行動は全員まともだから質が悪い。
「とりあえず、やれるだけやってみてくれ。アイツ等もそんなに無茶はしないはずだ」
『了解!』
――五分後。
(本当にコイツ等酔ってんのか……?)
集まったメンバーは全員大破し、明石のところに一時撤退。更に施設が二つ半壊、一つ全壊という大惨事を目の当たりにして、提督は頭を抱える。
酔い潰れるのが先か、鎮守府が全壊するのが先か、そんな考えも頭を過り始めた時、自分の後ろから歩み寄る者が居ることに彼は気付いた。
「――提督、お呼びになられましたか?」
「すまん、店を優先させてやりたかったんだが、ご覧の有り様でな……」
「いえ、頼って頂けるのでしたら嬉しいです」
「とりあえず、加賀だけでも止めてくれ」
「了解しました」
いつもの和服姿のまま艤装も付けず、鳳翔はゆっくりと地雷源のような戦場へと、足を踏み入れる。
「こんなに壊してしまって、明日から明石さんが大変そうね……」
特に避ける素振りも見せず、一直線に加賀の元へと彼女は向かう。そして、声が届く範囲へと到達した。
「――加賀」
「っ!? 鳳翔、さん……?」
「何を、しているのかしら?」
「いえ、これは、その……」
一気に酔いも覚め、加賀は赤かった顔を青くする。以前に暴走した時、こってり絞られたのを思い出したのだ。
他の四人も攻撃の手を止め、二人のやり取りをぼんやりと眺めていた。
「別に戦うのは止めません。でもね、鎮守府を壊すのはダメ。そこの四人も、ね?」
「むっ……すまん」
「申し訳ありません……」
「すまぬ……」
「悪かった……」
加賀の姿を見て冷静さを取り戻し、四人も素直に謝罪する。
「じゃあ今日は解散にしましょう。提督、それでいいですか?」
「あぁ、修理は朝からやらせる方向でいいだろ。どうせこの状況じゃ明日は一般解放は無理だ」
「明日は二日酔いの人も多そうですし、間宮さんと大鯨とあっさりした朝食を作りますね」
「何から何まで悪いな」
「いえ、それでは私はコレで――加賀、貴女は後始末だけはしておくのよ?」
「……はい」
――最終報告。
“艦娘殺し”を飲んだ者は全員、翌日割れるような頭痛に見舞われながら、電以外は破壊した施設等の復旧や再建に従事。
涼風、五月雨、ヴェールヌイ、五十鈴、瑞鶴、筑摩、北上、大井は高速修復材で即全快しており、翌日には加害者へと嫌みを言ってからかっている姿が見受けられた。
最終被害は、施設六ヶ所全壊、八ヶ所半壊、壁などにヒビが二十七箇所、地面の陥没三十八箇所。
明石の試算によると、“三日徹夜でどうにかなる”被害である。
――――鳳翔が居てくれて助かったよ。
――――私は少しお説教をしただけですから。
鎮守府修理(再建?)の様子も見てみたい。
鎮守府修理(再建?)の様子も見てみたい。
・瑞鶴『提督さんとまったり』、投下します
――――提督執務室。
「提督さん、お茶、好き?」
「何が特別好きとかはないが、瑞鶴の入れた茶は好きだな」
「動物とかだと何が好き?」
「猫と犬と熊とハムスターと兎」
「……動物?」
「深く詮索するな」
「じゃあ、加賀さんは好き?」
「お前と同程度以上には」
「ふーん、一日一回以上会わないと気が済まないんだ」
「加賀は薬物か何かか?」
「だって最近お茶淹れたら必ず笑うから、毎日楽しみなんだもん」
(加賀と翔鶴で取り合いが発生してなくて助かったな……)
「最近は金剛ともよく一緒にお茶するんだー」
「アイツ、紅茶から鞍替えしたのか? この間は普通にティータイムはやっぱり大事ネーって言いながら紅茶飲みまくってたが」
「私がお茶淹れる時は、抹茶ロール頬張りながら緑茶をティーカップで飲んでたよ?」
「何ともアンバランスだな、そりゃ」
「“ティーには変わり無いデース”だって」
「まぁ、本人がそれでいいならいいんだろうな……」
「そういえば提督さん、さっきの続きなんだけど――ツインテール、好きなの?」
「何でそんなこと聞くんだ?」
「さっきからずっと私の髪で遊んでるから、好きなんじゃないかなーって思って」
「……引っ張っていいか?」
「流石に提督さんでも引っ張ったら爆撃するから」
「冗談だ」
「それで、ツインテールは?」
「ツインテールに限らず、髪は見るのも触るのも基本的に好きだ」
「……変態さん?」
「変態はやめろ、別に変な趣味はない。たまに洗いたくなるが」
「――それぐらいなら、いいよ?」
――――提督さん、満足してくれた?
――――目隠しがなけりゃ最高だったんだがな……。
・電『猫ちゃんを飼うのです』、投下します
イアイアハスター、黄金の蜂蜜酒を飲む球磨
――――提督執務室。
――にゃー。
(……何で猫が執務机に座ってるんだ?)
「お前、どっから入って来たんだ?……って聞いても分かるわけないよな」
「司令官さん、大変なのです!」
「どうした電、そんなに慌てて。何かあったのか?」
「“提督”が居ないのです!」
「お前、熱でもあるのか? 俺ならちゃんと――ん? 今、提督って言わなかったか……?」
――にゃーお。
「あっ提督、ここに居たのですね。コラ提督、部屋から勝手に出てっちゃめっなのです!」
「あー、念のために確認しておくが、コイツの名前は?」
「提督ですよ?」
「何で、提督なんだ?」
「“司令官”って名前にしたら、ややこしくなってしまうのです」
(いや、そういう意味で聞いたんじゃないんだが……)
――んにゃー。
「っとと、書きかけの書類で遊ぶのは止めろ、こっちの書き損じやるから。世話はどうしてるんだ?」
「部屋で皆で世話してるのです。たまに文月や三日月なんかも遊びに来て、面倒を見てくれてます」
「まぁ、ちゃんと世話出来てるならいい」
「提督、今日は電は司令官さんとお仕事なのです。部屋で暁に遊んでもらうのです」
――ふしゃー!
「痛っ!? 何で引っ掻かれたんだよ、今……」
「多分、司令官さんに電が取られると思っているのです……」
(猫のヤキモチか、可愛いもんだが痛いもんは痛いな……)
――ふー!
「とりあえず、先に部屋に連れていってくれ。このままだと生傷が絶えそうにない」
「はいなのです。提督、部屋に一緒に戻るのです」
――にゃーん。
「――ふぅ、猫は一匹居れば十分だ」
――猫じゃないにゃ。
「っ!?」
――――はわわ、司令官さん傷だらけなのです!
――――心配するな、飼い猫にやられただけだ……。
・提督『研修って……何の研修だよ』、投下します
――――提督執務室。
「今日はあの子達をよろしくお願いします」
「それぞれの要望に合わせて研修させてるから、俺は特に何もしないし、君もゆっくりしてってくれ」
「あの、良ければ色々と話を聞かせてもらえませんか? 特に艦娘の子達と円滑にやっていく為の秘訣とか、上手な逃げ方とか……」
「逃げ方?……苦労してるようだな、そっちも」
「好かれているのはとても嬉しいんですけど、女性とお付き合いした経験が一度も無い僕には、ちょっと刺激が強過ぎる事がチラホラと……」
「慣れろ、そのうち着替えを見ながら仕事が出来るようになる」
「えぇー……」
(試してみようかしら)
(司令官の前で着替えて気付かれなかったら悲しくなるし、私はやめとこ。司令官にまで影が薄いって言われたら立ち直れないし……)
――――畑。
「――そうね、連作障害なんかもあるにはあるけど、聞いた感じだと大丈夫そうよ?」
「アイツもそう言ってたにゃ。他に何か気を付けることってあるにゃ?」
「気を付けること……潮風は害になりやすいから、ちょっとその辺は気を付けた方がいいかもしれないわね」
「位置によっては確かに潮風が直接吹き抜けてるかもしれないにゃ。帰ったら対策考えてみるにゃ」
「お役に立てた様で良かったわ。あっそうだ、みかん食べる?」
「大好物にゃ、頂くにゃ。ありがとうにゃ」
(うちの多摩は柑橘類ダメだったけど、この子は好きなのね……)
「コレ、すっごく美味しいにゃ」
「良かったら苗とかと一緒に箱で送りましょうか?」
「是非お願いするにゃ!」
(ふふ、畑仲間が出来てちょっと私も嬉しいかも)
――――食堂。
「――茄子ならごま油でさっと炒めるだけでも美味しいですし、肉のはさみ揚げにウスターソースをかけるのもいいですね」
「変わったメニューやレシピは考えねぇんですか?」
「どちらかというと馴染みの味を求められる事が多いので、今作れるものをより美味しくする方向で考えてます」
(飽きられないように変えるんじゃなく、とことん改良……私もちょっとその方向で暫くやってみるとしましょうかねー)
「まぁ例え変わったメニューを作っても、必ず感想と改良点を聞かせてくれる方が居るので、問題は無いんですけど」
「……なんとなく誰だか見当がついちまいますね」
「食べる量に目が行きがちですが、舌も確かなんですよ?」
「うちの三人は美味しいって言うだけで、特に感想はくれないんで結構悩んじまいます」
「美味しいも立派な感想ですし、愛情込めて作ればきっと大丈夫です」
「……そうですね、このまま胃袋ガッチリ掴んどきます」
「頑張ってね、応援してるわ」
――――休憩スペース。
「リリアン編みも結構楽しいクマ」
「うん、編んでると落ち着くし」
「球磨、ゲームしよ」
「さ、最新ゲーム機だクマ! やるクマやるクマー。名取、今度来たらまた一緒に編物するクマ」
「いいよ、じゃあまた遊びに来た時に一緒にね」
「分かったクマー」
「球磨、何したい? 色んなのあるよ?」
「初雪のオススメは何だクマ?」
「P4U」
「じゃあそれやるクマ。……コントローラーのボタン配置が良く分からないクマ」
「やってれば、慣れる」
「分かったクマ、じゃあこのクマ使うクマ」
――――鎮守府、入口。
「今日はありがとうございました」
「またいつでも来てくれ」
「鳳翔さん、また来るにゃ」
「えぇ、またね」
「次はお互いに一品作って披露しませんか?」
「いいわね、新料理を何か考えておくわ」
「名取も初雪もまた来るクマー」
「次は一緒に帽子作ろうね」
「良い勝負だった、またやりたい」
「……球磨君のは、研修なの?」
「細かいことはいいんだクマ」
「いいからさっさと帰るにゃ」
「晩御飯は間宮さん直伝の料理にしますねー」
――――アイツ等変わってるけど、仲良くていい関係築けてるな。
――――……私達も大概だと思いますよ?
今回も五つまでリクエスト受け付けます
・蒼龍『飛龍には負けてられない』
・天津風『旦那様へ愛を込めて』
・鳥海『図書館ではお静かに』
・日向『君、まだ居たんだ』
・島風&天津風『連装砲くんと連装砲ちゃん』
以上五本でお送りします
・蒼龍『飛龍には負けてられない』、投下します
――――提督執務室。
「改二になっちゃいました」
「なっちゃいました、じゃないだろ。飛龍は聞いてたが蒼龍の改造は聞いてないぞ?」
「だって、飛龍だけ改二ってズルいじゃない!」
「ズルいってなぁ……」
「何か鉢巻きしてカッコ良くなってるし、艦載機は強化されてるし、運も良いし、真面目に料理したら私より上手いし、まともに選べば服のセンスもいいし……」
「ストップ、後半はもう色々関係無いぞ」
「とにかく、二航戦は一緒じゃないとダメなんです!」
「分かったからちょっと落ち着け。――飛龍、そろそろ出てきたらどうだ?」
「そうですね」
「飛龍!? 何でここに!?」
「改二のお披露目は蒼龍と一緒にしますって、前もって提督に言ってあったからだけど?」
「“蒼龍なら勝手に改二になって提督に会いに来るから、その時に一緒に”って言われてな。本当に勝手に改二になるとは思ってなかったが……」
「何もわざわざ待たなくても良かったじゃない」
「“二航戦は一緒じゃないとダメ”だから、ね」
「うっ……そ、それは優劣が付くのが嫌って意味だってば!」
「じゃあ何で蒼龍も鉢巻きしてるの?」
「うぐっ……これは、その、私も頭部を守る為に……」
「ふーん……なら、私は外そうかな」
「何で外しちゃうのよ!?」
「私は蒼龍より運が良いもの」
「運が良くても当たる時は当たるじゃない」
「いい加減、正直にお揃いが良いって言えば?」
「べ、別にそんなこと思ってないわよ」
「私はお揃いにしたいけど」
「ひ、飛龍がそう言うなら――きゃっ!?」
「この胸の大きさとか」
「ちょっと飛龍、揉まないでよ!」
「どうせ提督が夜に揉むなら、今私が揉んでもいいじゃない」
「あー、そういうのは自室でやれ。後、絶対に夜戦するって決めつけるのはやめろ」
「ヤダ、ヤダヤダ! 私そういう趣味はないってば!」
「私もそんな趣味無いわよ」
「飛龍、あんまりからかいすぎるな。後でお前に対する愚痴だか自慢だかを聞く時間が増える」
「自慢なんてしてたの?」
「してない! 絶っっっ対にしてない!」
「何時も背中預けると安心――」
「アレは酒の勢いだから忘れてって言ったじゃないの!」
「無理だな」
(そろそろお暇しようかな、これ以上邪魔したら悪いし)
――――蒼龍、何で袖掴んでるの?
――――今日は三人で飲むから。
――――頼むからおとなしく飲んでくれ、お前等若干酒癖悪いから。
・天津風『旦那様へ愛を込めて』、投下します
――――提督執務室。
「今日は――天津風が秘書艦か、アイツならゆっくり出来そうだな」
天津風は駆逐艦娘の中では比較的大人しめで、尽くすタイプに分類される。
仕事を手伝い、休憩すればお茶を淹れ、会話も疲れない程度のペースを保つ。
島風の保護者的存在だけあって、提督にもその母性的な面を見せており、優しく支えてくれる存在だ。
――だが、提督は肝心な事を忘れていた。
「あなた、島風を泣かせてたみたいだけど、覚悟はいい?」
(ヤバい、島風の一件忘れてた……)
――二時間後。
「じゃあ、もう島風を泣かせないでね?」
「分かった、二度と泣かせないと約束する……」
二時間に及ぶ説教を乗り越え、提督は机に突っ伏す。
島風の事となると例え彼相手でも、彼女は容赦がない。
「あら、もうこんな時間。あなた、お昼ご飯にしましょうか」
「あぁ、頼む……」
「少し待っていて」
――十分後。
「ちょっとさっきはキツく言い過ぎたから、その……張り切ってみたわ」
「なぁ天津風、十分でどうやってこれだけの量作ったんだ?」
「島風程じゃないけど、私も速いもの」
「いや、速力は調理には関係無いと思うんだが……」
間宮も常軌を逸した調理の速さだが、天津風もまた速かった。
天津飯、麻婆茄子、青椒肉絲、小籠包、生春巻き、ゴマ団子、杏仁豆腐。
先に下準備を済ませていたとしても、この量を短時間で作るのは至難の技だ。
「愛情を込めれば、料理も早く仕上がるのよ。ほら、冷める前に食べて」
「そうだな、冷めちゃ勿体無い。いただきます」
「じゃあ私も、いただきます」
「――うん、今日のもやっぱり美味いな」
「当たり前じゃない、あなたに不味い物を食べさせられないわ」
「毎日こう美味いものばかり食ってると、食い過ぎて太りそうだ」
「その時は島風とかけっこでもして痩せてね」
「全身筋肉痛で仕事にならなくなるから、それは勘弁しろ」
「マッサージしてあげるから大丈夫よ」
「そもそも太らなければいい話だがな」
「――お代わり、よそいましょうか?」
「……太らせたいのか?」
「食後に私達と少し運動すれば問題ないわ」
「運動って何を――今、私“達”って言わなかったか?」
「執務室に籠りっぱなしだと身体に悪いし、食べたら私と島風を含む駆逐艦娘達と、鬼ごっこしてもらうから」
「いや、朝出来なかった書類仕事があってだな」
「夕方から着手しても問題ない書類でしょ?」
「どうしてもやらなきゃいかんか?」
「島風が、鬼ごっこ楽しみにしてるわ」
「……はぁ、了解だ。お代わり」
“抵抗は無意味だ、諦めろ”、という意味の言葉を聞き、提督は観念して目の前の食事を平らげていく。
島風という理由を付けてはいるものの、単純にデスクワークが続いていることを考慮しての申し出なのは、彼にも分かっていた。
(――ありがとな、天津風)
心の中で感謝しながら、提督は完食するのだった。
――――じゃあ早速家族サービスしてね?
――――島風は俺とお前の子供になるのか?
――――近いものじゃないかしら。
――――……否定しないと俺が危ない人間になるから、否定しとく。
・鳥海『図書館ではお静かに』、投下します
――――図書館。
秘書艦日でもなく、姉のダイエットに付き合う予定もなく、一日オフな鳥海は図書館へと来ていた。
(今日は何を読みましょう)
恋愛小説や戦術書、テーブルゲームの必勝法、ダイエット本、栄養学の本に、男性を落とす百の方法。
実に様々な本を手に取り、読んでいる彼女。今日も何か良い本はないものかと本棚を眺める。
(コレは前に読みましたし、こっちのシリーズはあまり趣味じゃありませんでしたし――あっ、今日はこれにしましょう)
手にしたのは、とある鎮守府の提督が書いた『彼女達との七日間』という本だ。
艦娘に人気の小説で、新米提督と艦娘が打ち解けるまでの七日間の騒動が描かれている。
(席は、あそこがいいですね)
席へと座り、早速読み始める鳥海。平日の昼間ということもあって、館内は人気も疎らで静寂に包まれていた。
(――私も着任したての頃は、司令官さんと少し言い争ったこともありましたね)
鳥海は、問題を起こして他の鎮守府から送られてきた訳ではなく、提督に建造された艦娘だ。
その着任は、高雄型の中では一番早かった。
(この提督みたいに無愛想では無かったけれど、いまいち信用出来なかったんですよね……)
本の中では常にしかめっ面の提督が、駆逐艦娘から怯えられていた。
一方、鳥海の記憶の中にある着任当初の提督の印象は、“頼り無さそう”だった。
(作戦は定石から外れてましたし、勘で回避行動をとりますし、ずっと寝てましたし……)
型破りと言えば聞こえはいいが、艦娘からしてみれば命を預けるのに信用できない言動や行動は、不安の種でしかない。
(――でも、誰よりも艦娘を大事に考えていてくれたんですよね)
本の中の艦娘は六日目にして気付く。生活環境や食事、疲労のチェックに余念が無く、しかめっ面なのは常に考え事をしていたからなのだと。
七日目には細やかなパーティーをして、初めて提督が笑みを見せて艦娘達と打ち解け合い、話は終わりを迎える。
「一気に読んでしまいましたね。まだ時間はありますし、次は何を――?」
――たまには本を読め、読書の秋だ。
――アタシは本なんか読まないっつってんだろ!
(はぁ……摩耶姉さんってば)
聞こえてきた姉の怒声に大きく溜め息を吐き、鳥海はそちらへと歩み寄っていくのだった。
――――摩耶姉さん、図書館では静かにして下さい。司令官さんも、デートなら姉さんが好きそうな場所を選んで下さいね。
――――はっ!? で、デートじゃねぇし!
――――図書館でぐらい静かなコイツを見れると思ったんだがなぁ……。
・日向『キミ、まだ居たんだ』、投下します
――――明け方、提督執務室。
「あっ……キミ、まだ居たんだ」
「お前こそ、こんな時間に何のようだ。まだマルゴーサンマルだぞ」
「私の事は気にしなくていい。それより、何でこんな時間に執務室で仕事をしているんだ?」
「重要書類を一つ書くの忘れてたのに寝る直前に気付いて、戻って来て今まで書いてたんだよ」
「昨日の秘書艦はどうした」
「今頃俺の部屋で爆睡してるよ、昨日大はしゃぎで遊びまくってたからな」
そう答えると、提督は大きく欠伸をしかけ、日向の目を気にして噛み殺す。
「一睡もしていないのか?」
「まぁな」
(だから、コレ書いたら寝るつもりだったんだが……)
既に執務室に来ている今日の秘書艦を前に、寝たいとは言い出せるはずもない。
「悪いが日向、コーヒー淹れてくれ」
「断る」
「――何?」
「断る、と言った」
「そうか、お茶汲みなんぞ頼んですまなかった。自分で淹れ――うおっ!?」
断られたことに若干驚きつつも、自分で淹れようと提督は立ち上がろうとした。
だが、立ち上がるより前に身体が浮き上がり、彼は狼狽(うろた)える。
「……何してんだよ、日向」
「ふーん、軽いな」
戦艦である日向が提督を抱き上げるのは、至極簡単だ。
だからといって、この状況が恥ずかしいことに変わりはない。
「降ろせ、流石に怒るぞ」
「分かった」
「――いや、コレはコレで何でだよ」
「膝枕を知らないのか?」
降ろされたのは日向の膝の上。提督を見下ろす顔は、加賀よりも無表情だ。
「今この体勢はヤバイから起き――ぐおっ!?」
「まぁ、起きようとしたらそうなるな」
「なるんじゃなくて、してんだろうが……」
起きようとした提督の額を、肘が捉える。手加減はしていても、その一撃はかなり痛い。
「で、本当に何やってんだよ」
「寝不足は良くないぞ」
「一日ぐらい寝なくても大丈――ぐえっ!?」
「寝不足は、良くないぞ」
「物理的に寝かせるのは、やめろ……」
「なら、このまま大人しく寝るといい」
「……分かったよ、二時間ぐらいしたら起こしてくれ」
抵抗を諦め、提督は目を瞑る。
予想以上に疲れが溜まっていたのか、彼が寝息を立て始めるのに、そう時間はかからなかった。
(――良く寝ているな。全く、先に仕事を片付けて、二人でゆっくり過ごそうと思っていたのに、キミという男はいつもいつも……)
朝から日向が来ていたのは、二人の時間を多めに作ろうという意図があってのことだった。
徹夜で寝不足状態の提督と一日過ごすなど、彼女にとっては不本意極まりない。
(まぁ、こうして膝枕も出来たし、よしとしようか)
少しだけ笑みを浮かべ、日向は書類を書きながら提督の頭を撫でるのだった。
――――おい日向! もう昼じゃねぇか!
――――良い天気だし、外に行かないか?
――――あのなぁ、書類が……終わってる?
――――ロクマルを積む事は出来ないが、ラジコンで飛ばして見せてやるぞ。
・島風&天津風『連装砲くんと連装砲ちゃん』 、投下します
――――島風&天津風、私室。
「天津風、連装砲くんピカピカだね」
「連装砲ちゃんも綺麗になったじゃない」
「喜んでくれてるかな?」
「えぇ、きっと喜んでくれてるわ」
「連装砲ちゃんは、私の最初のお友達。ずーっと一緒に居たお友達」
「連装砲くんは、私の大切なパートナーだった」
「お話しは出来なかったけど、いつも一緒に遊んでくれた」
「島風と喧嘩して落ち込んでたら、励ましてくれた」
「連装砲ちゃんは、幸せだったのかな?」
「幸せだったに決まってるじゃない」
「……そうだね」
「さぁ、行きましょうか。今日もかけっこのコーチするんでしょ?」
「最近は教える子が増えて大変だよ……」
「全国大会に出た子が恩師に島風の名前を出しちゃったんだもの、それも仕方無いわ」
「私は誰かに教えるより自分が走りたいよー天津風ー」
「はいはい、また長良さんと私が付き合ってあげるから」
「やったー! 天津風大好きー!」
「全く……こんなに大きくなっても島風は子供ね。連装砲ちゃんに笑われるわよ?」
「天津風より胸大きいもん」
「しぃまぁかぁぜぇ?」
「あはははは」
「コラ、待ちなさーい!」
――終戦から十数年。世界は未だに平和を保てていた。
――艦娘達の兵装は使われることもなく、一部を残して廃棄、もしくは博物館に飾られることとなった。
――そして、連装砲ちゃんと連装砲くんもまた、役目はもう終わったと告げるように、ある日突然動くことを止めた。
――彼等は今、子供達が元気に走り回る鎮守府の遊技場を見守るように、並んでひっそりと佇んでいる。
――――連装砲ちゃん、今日も世界は平和だよ。
――――明日も、明後日も、きっと平和。
――――だから、ゆっくり休んでね。
――――お休み、連装砲ちゃん、連装砲くん。
ではまた五本までリクエスト受け付けます
すいません、いちゃラブコメにまとめて長めにします
・赤城『提督と鎮守府脱走』
・提督『大鯨が発注量間違えた』
・天龍田『些細で大きなすれ違い』
・暁『レディー修行から帰ってきたわ!』
・由良『暑い……』
以上五本でお送りします
食べなきゃ戦えないから食べるのはいいことなんです
(安価下1・3・5で赤城以外の艦娘を指定してください)
ご協力に感謝します
・赤城『提督と鎮守府脱走』、投下します
――――提督執務室。
「提督、今日は――?」
秘書艦日を心待ちにしていた加賀。彼女が執務室に入ると、何時もは必ず出迎えてくれる提督の姿がない。
(まだ部屋で寝ている……? いえ、そんなはずはないわ)
前日の秘書艦である大鳳と、加賀は廊下ですれ違っている。つまり、提督も起きているということだ。
(御手洗いかしら……ん?)
執務机の上に置かれた手紙らしき紙に気付き、彼女はそれを手に取る。
「“加賀、提督を今日は借りますね。返して欲しかったら私のクレジットカードを返して下さい”……ふふ、犯人は赤城さんですか」
『全艦娘に通達。提督を赤城さんが拉致しました。捕らえた者には幼少時代の提督のアルバムの閲覧を許可します。必ず私の前に彼女を連れてきなさい、以上』
――――街。
「赤城、今すぐ戻れ」
「嫌です。コレは加賀が私のクレジットカードを没収したお返しなんですから」
「個人的な恨みなら俺を巻き込むのはやめろ、後で俺まで何されるか分かったもんじゃない……」
提督と腕を組みながら、引っ張るように歩く赤城。
加賀のお仕置きを平然と耐えられる彼女と違い、別の意味で後が怖い彼は、気が気ではない。
「大体、毎度毎度鎮守府を抜け出しては食べまくって帰ってくるお前が悪いんだろ」
「食べねば戦えませんよ?」
「何と戦ってるんだお前は……」
「それは秘密です」
笑って誤魔化す赤城。加賀が無表情ならば、赤城は感情表現が豊か故に真意を掴ませないタイプだ。
「お前と加賀って、色合い逆だよな」
「色合いですか?」
「赤城は理性的で、加賀は感情的だろ。赤と青のイメージからしたら逆だ」
「食欲に忠実だとは良く言われますが、理性的と言われたことはありませんね」
「お前が本気で怒ったところを、俺は見たことないぞ」
「提督の前では怒らないだけです。怒ると赤城さんは怖いです、と加賀に昔言われましたので」
(加賀が怖いと感じるって、何やったんだ……?)
鳳翔以外で加賀に怖いと言わせるものがあったことに、提督は驚く。
彼女がそう言うということはつまり、赤城を怒らせてはいけないということだ。
「そんなことより、せっかく街に出たんですからデートしましょうか」
「そろそろ鎮守府に――」
「最近良く出歩くので、提督に予備の靴を見繕って欲しいです」
「おい、ちょっとは人の話を聞け」
「――私とデートは、嫌ですか?」
「……俺は拉致されただけだからな、加賀にはちゃんとそう言え」
「提督が無理矢理私の事を連れ出して……」
「リアルに死ぬからやめろ」
「冗談です。提督はちゃんと私が守りますから」
「最初から連れ出されなければ、至極安全だったと思うんだが」
「じゃあ――」
――ちゅっ。
「今日一日付き合って頂くお礼です。足りないでしょうか?」
「……靴でいいんだな?」
「はい、後出来れば洋服も」
「食べ物は今日は良いのか?」
「今日は食べ歩きがしたいわけではないので」
「明日は槍でも降るかもしれんな」
「そういうことを言うとグラビアに出ますよ?」
「俺が許可する訳無いだろ」
「独占欲ですか?」
「黙れ食欲魔神」
――――靴屋。
「草履か?」
「普通に運動靴です」
「まぁ草履はこんなところには売ってないだろうしな」
「いざというときに動きやすい靴はどれでしょうか?」
「履いてみて馴染むのが一番だろ、幅や奥行きってのはサイズだけじゃ分からん」
「そうですね、試し履きを――という時間は無さそうです」
「どういう……摩耶っ!?」
提督と赤城の視線の先には、ガラス越しに店内を覗き込んでいる摩耶。その視線が、バッチリと交差する。
――見付けたぜ、大人しくアタシに捕まりな!
「さて、逃げましょうか」
「いや、大人しく捕ま――んぅ!?」
――なっ!? おいコラ! 人が見てる前で何てことしてやがんだ!
摩耶が見ているにも関わらず、赤城は提督へとキスをする。それも、かなり濃厚なものだ。
「――コレで、共犯ですね」
「このアホ! 余計に帰りにくくなっただろ!」
「そんなことより、逃げなくてもいいんですか?」
「とりあえず、心の準備が出来るまでは逃げる。だから今は摩耶を何とかしろ」
「了解しました、提督」
言うや否や、赤城は店から飛び出していく。
――摩耶、少し寝ていて下さいね。
――そう簡単にやられるかってんだ!
――買ってきた高級プリンを愛宕に食べられて、暫く拗ねていたそうですね?
――な、何でそれを!?
――動揺しすぎです。
――あぐっ!?……クソ、が……。
(摩耶、プリン好きだったのか。今度買ってやるとしよう)
「提督、今のうちに行きましょう」
「コレ、帰ってから余計に拗れたりしないよな?」
「次は服がいいですね」
「だから無視して引っ張るのはやめろ、今更だが腕に胸が当たってるぞ」
「? 胸なんてただの脂肪ですよ?」
「アイツが聞いたら泣いて荒れるぞ、それ」
「――それは、うちのことを言ってるん?」
「貴女も来たんですね」
「赤城、加賀がカンカンに怒っとるよ。はよ帰らんと知らんで?」
「報酬は何です?」
「鋭いなぁ、ホンマ。――“提督の幼少時代の写真”や」
「ちょっと待て、何でそんなものをアイツが持ってやがんだ?」
「ご実家に挨拶に伺ったと加賀から聞いていましたが、知らなかったんですか?」
「聞いてねぇよ。何を勝手に挨拶なんぞしてやがんだ……」
「とにかく、キミのちっこい頃の写真はうちが貰うで! 赤城、大人しく捕まりや!」
「仕方ありません――まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板」
「そ……そないに連呼せんでもえぇやないかぁぁぁぁぁ! 赤城のアホぉぉぉぉっ!」
「……今のは流石に胸が痛んだぞ」
「龍驤は胸ばかり気にしすぎなんです。女性の価値は胸ではありませんよ」
「そう言いながら押し付けるのはやめろ」
「加賀の胸と私の胸、どちらがお好きですか?」
「俺は足と髪の方が好きだ」
「それなら、足と髪で考えて下さいね」
「……次に行くか」
「無視はいけないんじゃなかったですか?」
「命の危険がある質問に答えられるわけないだろ!」
――――服屋。
「提督、選んで下さいますか?」
「そっちのサマーセーターにロングスカート」
「少し、派手ではないでしょうか」
「コレで派手ってどういうことだよ」
「あまり目立たないようにしたいので」
「お前ならどこに居ても目立つだろ。黒髪長髪で何かを食べてなきゃ清楚な美人、食べてたら……まぁ、人によっては可愛く見える」
「そう言われると、流石に気分が高揚します」
「何で加賀の真似してんだよ」
「……可愛いと言われたのは、初めてなんです」
「照れてるお前を見るのは、俺も初めてだな」
「コレからも提督の前ではたくさん食べますね」
「程々に頼む」
「――もうそろそろいいだろうか?」
「律儀に待っていてくれた事には感謝しますが、私は帰りませんよ」
「那智まで来たのか、あんな写真目当てに……」
「私は貴様の写真の為に来たんじゃない。赤城を連れ戻せと命令を受けたから来たまでだ」
「真面目ですね」
「最近の赤城は不真面目が過ぎるのではないか?」
「真面目なだけでは出来ないこともありますよ」
「ここで問答をしていても仕方無い。帰らないと言うなら無理矢理連れて帰るまでだ」
「――なぁ赤城、いい加減帰らないか?」
「……そうですね、これ以上は鎮守府の皆に迷惑がかかりそうですし、今日はこのぐらいで帰ることにします」
「そうして貰えると私も助かる」
「写真は那智の物です、良かったですね」
「あぁ――いや、別に写真はどうでもよくてだな……」
(はぁ……ようやく帰れる。加賀の怒りはどの程度なのやら)
提督、一ヶ月のお小遣いカット。赤城、一ヶ月の外出禁止が言い渡される。
なお、帰るまでに机が四つ大破した模様。
――――赤城さん、外出禁止と言ったはずですが?
――――やることがありますので、今回は二、三日ですぐに戻りますよ。
――――たまには鎮守府に居て下さい。
――――私は私の為すべきことをします。では、行ってきます。
――――……全く、困った人ですね、赤城さんは。
・提督『大鯨が発注量間違えた』、投下します
――――食堂。
「――で、大食い対決って訳か」
「加賀は巻き込まれたって顔してるわね」
「大和と武蔵は呼ばれた理由が分かってないな」
「鳳翔は……何だか楽しそうだわ」
「赤城と間宮は当然乗り気か」
提督とこの日が秘書艦日だった大鳳は、大鯨からの連絡を受け食堂へと来ていた。
発注量を間違えてしまったから、処理する為の大食い対決を開催する。
そのような発想をする辺り、間宮もこういう催しをするのが嫌いではないということだ。
「赤城だけで良かったんじゃないか?」
「面白そうだから対決にしましょうって、鳳翔さんが言い出したみたいです」
(加賀が拒否出来なかったのはそれが理由か……)
「さぁさぁ賭けるならまだ間に合うで! 赤城と加賀が勝つか、大和と武蔵が勝つか、一口1間宮アイスや!」
「見物客は大半が駆逐艦と……長門か」
「浦風保護してきます」
「大丈夫だろ、文月と陽炎が相手してるし」
――料理対決、コレより開始します。
「豚カツですか……」
「下処理がしっかりとされていて、油もしつこくないですね――お代わり」
「武蔵、どうしたんですか?」
「……揚げ立て、か」
加賀は普通のペースで、赤城はいつものペースで、大和は一口一口ゆっくりと、武蔵は少し冷ましながら食べ進めていく。
大鯨が間違えたのは肉の発注。豚カツはまだまだ最初の小手調べに過ぎない。
三皿分を早々に完食した赤城の前には、別のメニューが運ばれてきた。
「チキン南蛮丼です」
「鶏の下拵えは間宮さんで、タルタルソースは私が作りました」
「良い匂いですね、では早速いただきます」
(赤城さん一人でやはり良かったのでは……)
「加賀、しっかり食べて下さいね?」
「……はい」
加賀も三皿目に手をつけ始め、黙々と食べ進めていく。赤城が速すぎるだけで、彼女も十分に速い。
「美味しいですね」
「味は当然申し分ない。しかし、熱いな……」
「武蔵が猫舌だったなんて、今まで知らなかったです」
「誰しも苦手なものの一つや二つあるものだ」
大和と武蔵は、ようやく二皿目に手をつけ始める。
ゆっくりと食べる大和と、冷ましながら食べている武蔵では、速度的な面において一航戦の二人に勝ち目は無い。
「こりゃ勝負にならないんじゃないか?」
「早食い対決ではないですし、最後に多く食べていれば――」
「お代わりお願いします」
「……一対三にした方が良かったんじゃないかしら」
「あぁ、俺もそう思う」
――現戦果。
加賀、豚カツ三皿完食。赤城、豚カツ三皿とチキン南蛮丼三杯完食。
大和、豚カツ二皿完食。武蔵、同じく二皿完食。
――開始から一時間。
「流石にそろそろ限界なのですが……」
「まだまだ作ってますから頑張って下さいね」
「あの、ですから限界と――」
「すき焼き、食べないんですか?」
「……はい、いただきます」
(胃薬を後で貰いに行かないと……)
「このステーキ、胡椒が効いていて美味しいです。噛んだら口の中に肉の旨味がジワッと広がって、箸が進んでしまいます」
「すき焼き……」
「玉子で少し熱さが和らぐな」
「まだ武蔵は食べられそうですか?」
「加賀に勝つまでは手を動かす、赤城は知らん。あんな食欲の権化と張り合ってなどいられるか」
――現戦果。
加賀、豚カツ&チキン南蛮丼三杯完食、すき焼き一杯目に挑戦中。赤城、すき焼き三杯を平らげサーロインステーキ五百グラムへ挑戦中。
大和・武蔵、共にすき焼き一杯目に挑戦中。
――開始から一時間半経過。
(これ以上は……て、提督の前で醜態を晒すわけには……)
「豚しゃぶもタレによって味わいが違っていいですね」
「自慢のタレです、何にでも応用が利くんですよ」
「私のお店にも少し分けてもらっているんです」
「鳳翔さんのお店……焼き鳥ですね?」
「ふふ、正解です。また食べに来て下さいね」
「では今日の夜にでも」
苦しそうにしている加賀の横で、談笑しながら食べ続ける赤城。そのペースは全く衰えてはいない。
「武蔵……大和は……もう……」
「意地を見せるのだ大和……この鍋を空にすれば、加賀には勝てる……」
「ごめんなさい……先に、いき……」
「くっ……私だけでも、加賀に……」
――更に三十分後。
「手羽先もカラッと揚がっていてジューシーです。幾らでも食べられますね」
「まだまだありますからどうぞ」
「味噌カツも食べますか?」
加賀は既にリタイアしており、食べているのは赤城だけだ。その箸は、一向に止まる気配を見せない。
「加賀に……勝った……か……」
一方の武蔵は、食べていたすき焼き鍋を完食し、先にリタイアした大和の横に倒れ伏す。
これで勝負は決着したのだが、まだまだ赤城の挑戦は続く。その箸が止まったのは、更に一時間後の事だった。
――最終戦果。
加賀、豚カツ三皿、チキン南蛮丼三杯、すき焼き一杯半。
大和、豚カツ三皿、チキン南蛮丼三杯、すき焼き一杯半。
武蔵、豚カツ三皿、チキン南蛮丼三杯、すき焼き二杯。
赤城、豚カツ三皿、チキン南蛮丼三杯、すき焼き三杯、サーロインステーキ千五百グラム、豚しゃぶ三皿、手羽先三皿、味噌カツ三皿、牛角煮三皿、しょうが焼き三皿。
――――流石に一日動けません……。
――――鳳翔さんのところに行ってきますね。
――――武蔵、体重が……。
――――明日道場で……うっ……加賀、私にも胃薬をくれ。
・天龍田『些細で大きなすれ違い』、投下します
――――天龍&龍田私室。
「ねぇ天龍ちゃん、ここに置いてあったシュークリーム知らないかなぁ?」
「シュークリーム? あぁ、美味かったぜ」
「――二つとも、食べちゃったの?」
「甘いものがちょうど欲しくってなぁ、代わりに冷蔵庫にエクレア買ってきといたからよ」
「……天龍ちゃんのバカ」
「勝手に食って悪かったって、でもちゃんと代わり買って来ただろ?」
「どうして一言聞いてくれなかったのー?」
「俺と龍田のだと思ったから一つだけ食うつもりだったんだよ。でも食べたら美味くってさぁ、つい二つとも食っちまったぜ」
「……だって、美味しく作ったもの」
「アレ、龍田が作ったのか? そういやぁお菓子はまだ作ったことねぇな、今度教えて――」
「勝手に食べちゃうような天龍ちゃんには教えたくないかなぁ」
「だから悪かったって言ってんだろうがよ」
「私忙しいからもう行くねーエクレアはいらないから二つとも天龍ちゃん食べておいて」
「あっ、おい龍田! チッ、何だってんだよ龍田の奴、たかだかシュークリームぐらいであんなに怒りやがって……ん?」
(待てよ、今日って確か――)
「龍田の秘書艦日か……?」
――――提督執務室。
(何だこの重苦しい雰囲気は……)
提督の横で仕事を黙って処理している龍田。その顔はいつも通り微笑みを携えているのだが、肌に突き刺すような刺々しい空気を放っていた。
「龍田、何かあったのか?」
「どうしてそんなことを聞くのー?」
「どうしてっていつもと様子が違うぞ」
「気のせいじゃなーい?」
「……そうか」
(天龍と喧嘩でもしたのか? このままだと息が詰まるな)
「龍田、甘いものでも――っ!?」
「甘いものが、どうしたのー?」
「いや、何でもない……」
甘いもの、と口にした瞬間、龍田からどす黒いモノを感じて、提督はその先を続けるのをやめた。
(地雷は甘味系か……)
「お昼は何がいいかなぁ?」
「龍田に任せる」
「はーい」
障らぬ神に祟り無し、提督は今回の件に関しては直接関与することを諦めるのだった。
――――翌日、天龍&龍田、私室。
「……」
「……」
無言の空間。龍田は部屋の掃除をしており、天龍はベッドに転がっていた。
普段ならば昨日は提督と何をしたとか、夕飯は何がいいとか、そういった会話を楽しんでいる時間だ。
(切っ掛けが無いと言い出しづれぇなぁ……)
天龍は、前日に龍田が出ていった直後に、自分のしてしまった過(あやま)ちに気付いていた。
二つあったシュークリームのうち、一つは確かに天龍のものだったのだが、一つは提督にあげる為のものだったのだ。
(――よし!)
「龍田!」
「なぁに?」
「き、昨日はよ、その、何だ、俺が悪かった」
「何の事ー?」
「シュークリーム二つとも食っちまった事だよ。アレ、提督に食わせるつもりだったんだよな?」
「……テーブルにメモも無しに置いといた私も悪かったの、昨日はつい怒っちゃってごめんねー?」
謝るタイミングを失っていたのは龍田も同じで、天龍の謝罪を聞いて彼女も同様に謝る。
「じゃあお互いコレでも食って水に流そうじゃねぇか」
「――シュークリーム?」
「間宮に教えてもらったんだよ、上手く焼けなくて苦労したぜ」
「天龍ちゃん……」
「ほら、食えよ」
「うん、いただきまーす」
――――天龍ちゃん、ケーキ一緒に作らない?
――――いいぜ、生クリームはこの前作ったら任せろよな。
・暁『レディー修行から帰ってきたわ!』 、投下します
――――提督執務室。
「司令官、レディーとして成長してきたわ!」
「そうか、そりゃ良かったなー」
「もうっ! ちゃんと聞いてったら!」
「じゃあ具体的にどう成長したんだ?」
「お昼にお子様ランチじゃないハンバーグを食べさせてくれたら、見せてあげるわ」
「ハンバーグ……じゃあ大鯨に頼んで作っといてもらうとするか」
「ソースはデミウルゴスにしてちょうだい」
(デミグラスって言いたかったんだろうが、凄い間違いしやがったな……)
――――昼食。
「ほら、ハンバーグだ」
「見てなさい、暁だって何時までも子供じゃないんだから」
持ち方は上出来、ナプキンも首につけ、暁はハンバーグへと挑む。フォークを軽く刺し、ナイフでゆっくりと切っていく。。
そして、小さく切り分けたハンバーグを口へと運んだ。
「――どう? どう? 一人前のレディーに見えた?」
「練習したのは良く分かった。音もあまり立てなかったし、ハンバーグ食べるだけならレストランでも恥ずかしくは無いと思う」
「ふふーん、暁はもう一人前のレディーなんだから当然よね」
「――だがな、口元にソースをベッタリ付けてるのはどう見てもレディーじゃないぞ」
「こ、コレはちょっと失敗しただけなんだから!」
暁は即座に口の周りを拭くが、綺麗に拭けずに余計にソースが広がっていく。
「ほら、じっとしてろ、拭いてやるから」
「うぅー……せっかく練習したのに……」
「慣れてないんだから仕方無いだろ。そのうち綺麗に食えるようになるさ」
「ホント……?」
「あぁ」
「――司令官、テーブルマナーがちゃんと出来る様になったら、お洒落なレストランに連れて行ってくれる?」
「テーブルマナーなんぞ知らんから断る」
「そこは連れていってくれるって言ってくれてもいいじゃないのよ!」
「ファミレスでいいだろ」
「もう知らない! 司令官のバカー!」
「行っちまったか――テーブルマナーに詳しい奴って誰か居たっけなぁ……」
――――お茶を習ってみたわ。
――――(ダマだらけだな……)
・由良『暑い……』、投下します
――――長良型、私室。
「暑い……」
「暑いって言うと余計暑くなるからやめなさい」
「由良、アイス食べる?」
「食べる、ありがと」
「でも、確かにコレは中々キツいわね」
「壁に穴開けたら、涼しくなるかな?」
「蚊とか虫が入るからやめなさい」
「そういう問題じゃないと思うんだけど……はい、由良」
「ありがと、名取」
「それにしても――由良、貴女いくら暑いからって下着姿は感心しないわ」
「着たら、暑い」
「お腹出して寝たら、風邪引いちゃうよ」
「あっちの三人は、いいの?」
「長良と鬼怒は引きそうにないし、阿武隈は二人に挟まれて暖かそうだから大丈夫よ」
「私も、大丈夫」
「タンクトップでもいいから着ようね、ほら」
「――やっぱり、暑い」
「我慢しなさい」
「アイス、もう一つ食べたい」
「ダメだよ由良、お腹冷えちゃうから」
「じゃあ、少しだけクーラーかけて、ね、ね?」
「仕方無いわねぇ、由良が寝入るまでだけよ?」
「うん」
「このクーラー、早く明石さん直してくれるといいんだけど……」
「強しか出来ないなんて、本当に不便よね」
「――クーラー、涼しい」
「そう、なら早く寝ちゃいなさい」
「うん、お休みなさい。わがまま言って、ごめんね?」
「暑いのが苦手なのは仕方無いよ、気にしないで」
「妹のお願いも聞いてあげられないほど、狭い心は持ってないわ」
「……寝る」
「お休みなさい」
「お休み、由良」
――――太陽って、単装砲で撃ち抜けたりしない?
――――ちょ、ちょっと無理かな……。
――――出来たとしても人類が絶滅するわよ?
次の更新は新スレにします
最初のネタは決めてるので、4つまでリクエスト受け付けます
では、新スレ立ててきます
新スレです→【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406746107/l20)
こっちは適当に埋めていただけると幸いです、要望などがあればどうぞ
ナプキンについてご指摘がありましたが、マナーとしては膝の上が正しいです
首につけるのが正しいという風に書いてしまっていてすみませんでした
前掛けタイプと混同してました
後、提督のマナーについてはそういう場に行かないから忘れたということで…
リクエストはもうして頂いてokです
リクエストの書き込みは次スレの方にお願いいたします
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません