藤田靖子「アナルと雪の女王」 (56)

『三毛猫ホームズの推理』くらいの本格ミステリ

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京太郎「咲が死んだ!」

まこ「なんてことじゃ」

久「ち~ん(笑)」

和「NWK(何笑ってんだ[ピーーー]ぞ)」

久「あ、はい」

優希「ディジェ」



久「死因は窒息死? らしいわね」

まこ「なぜじゃ、何故咲が……!」

京太郎「咲は清澄に進学したとはいえ併願で不動高校を志望してましたからね……」

久「それで死亡してちゃ世話ないわ」

まこ「胸に脂肪が無いから即死だったんじゃな」

京太郎「窒息死にバストサイズは関係無いんじゃないですか?」

和「この畜生共まとめて地獄に落ちませんかね」

京太郎「(和の凶器的なおっぱいに顔をうずめて窒息死したい)」

優希「ジェガン」

京太郎「この事件は俺が解決してみせる……ウィザードの助手みたいなやつと言われた、じっちゃんの名にかけて!」

久「聖戦の系譜のアーダン? FF12の主人公?」

まこ「サマルトリアの王子? ワルイージ?」

和「言葉を濁さず『微妙にいらない奴』って言えばいいじゃないですか」

優希「なんJ」




和「肉は腐りかけが一番美味いと聞きますが咲さんはどうなんでしょうか?」

まこ「おうこの犯罪者はよ通報せえ」

京太郎「IPS(淫乱ピンク氏ね)」

久「死体を食べて証拠隠滅というはミステリの王道だけど……」

京太郎「んな密室殺人で実はオランウータンが犯人でした、と変わらんトンデモな王道があってたまるもんですか」

優希「ジェノアス」

京太郎「さて、どうしようか」

京太郎「皆放課後のバトルフィールドに帰っちまったし。そりゃ手伝う義理も義務もねーけどさー」

京太郎「どっかにアコトキシン飲んで子供になっちゃった探偵とか居ないかなー居ねーよなー」



「手こずってるようやな、手を貸そう」



京太郎「あ、あんたは! 探偵物に必須の関西弁かませ探偵要員!」

洋榎「何やて工藤!」

京太郎「いや俺工藤じゃねーから!」

洋榎「せやかて工藤!」

京太郎「工藤じゃねーつってんだろ!」

洋榎「せやな工藤」

京太郎「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」



京太郎「ダメだ、思わず俺がまとも枠に組み込まれかねないイロモノ……!」

京太郎「イロモノ! イロモノは要らん! 贅沢は言わない、せめて赤川次郎の大貫警部レベルでも良いから……!」

洋榎「せやろか工藤?」

京太郎「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ッ」

藤田「私はついて行けるんだろうか、この超展開のスピードに」

京太郎「良かった、一人は捕まった。マジで幸運だった」

洋榎「せやいうても工藤」

京太郎「分かってますとも。さあ現場に行きましょう」

藤田「まあ私にとっても得あるから付き合うけども」




警察槓「現場に入りたい? ダメダメ、特にアンタは―――」

京太郎「当て身」ザクッ

警察槓「ブッピガンッ」

洋榎「やるな工藤」

京太郎「ここが咲のハウスだな」

藤田「自殺? 他殺?」

京太郎「いやさっぱり聞いてません」

藤田「エクストリーム自殺というものを知っているか?」

洋榎「なんやそれ工藤」

藤田「私も工藤なのか……(驚愕) まあそれはさておき」

藤田「殺人じゃないか? と疑わしい事件でも、自殺と判別される事はままある」

京太郎「え、そうなんですか?」

藤田「理由はいくつかあるな。予算、人手、大人の都合等がそれに挙げられる」

藤田「不審遺体を全てMRI&CTスキャンしろ、と言われても金が無い」

藤田「自殺より他殺の方が必要な人員が多いのは当然だ。よって人件費も必要な人員も増えてしまう」

藤田「で、最後に検挙率だ。殺人を自殺扱いにすれば当然検挙率は上がるな」

藤田「つまり『上からの圧力』というわけだ。その他にも諸々」

京太郎「……なんかズルいというか、汚いというか」

洋榎「せやかて工藤」

京太郎「ああ、分かってますよ。そりゃ金も人員も限りあるってのは分かりますけどね……」



藤田「保険金目的で殺人に見せかけた自殺をする人間が増えたからというのもある」

藤田「……流石に顎や心臓を含めた三箇所を自分で刃物で突き刺した後、
    車を運転して川に突っ込んで自殺しましたという主張をした事件はどうなんだとは思うが」

京太郎「ガバガバじゃねーか!?」

洋榎「せやな工藤」



京太郎「要するに、警察が自殺と判定していても他殺の可能性は十分にあると?」

藤田「せやで工藤」

京太郎「悪ノリすると咲のいる場所に送りますよ」

藤田「(目がマジだ)」

洋榎「せやせや工藤」

京太郎「うーん、手がかりになりそうなもんは何もねえや」

藤田「死因は窒息死、だったか」

京太郎「ですね」

藤田「窒息死というのは案外幅広い。例えばビニール袋に管を付けて気道の中で膨らませる殺害方法などな」

藤田「ビニール等どこにでもあって燃やしてしまえば証拠がほとんど残らない物は計画殺人に多用される」

藤田「それから、厳密に言えば毒死というのも窒息死が多い」

洋榎「そうなんか工藤?」

藤田「例えば青酸カリは胃液と反応してガスを発生させて窒息させる。神経毒は気管を麻痺させて窒息させる」

藤田「無論毒を使えば痕跡が残るし、首を絞めれば凶器も特定される……まあ上手くやれば痕跡は残らんがな」

京太郎「こわっ」

藤田「やろうと思えば私が今吸ってるタバコでも窒息死はイケるぞ? やってみるか?」

京太郎「オッスオラ京太郎。いっちょ殺ってみっかなんて言うと思ったか」

洋榎「せやで工藤」

 



【ミステリのプロならここまでの情報で犯人は分かります】



 

藤田「後はフーダニット(誰が殺したか)、ハウダニット(どうやって殺したか)、ホワイダニット(何故殺したか)だな」

藤田「ミステリ的にはホワイダニットは物語のスパイス以上の価値は無いんだが、容疑者も固まってない現状は違う」

藤田「動機から容疑者を絞るのは基本中の基本だ」

藤田「もっとぶっちゃけて言えば最初の二つは証拠証言最強の現代では犯人特定には要らん」

藤田「が、証拠も証言も集めるのパンピーには難しいので警察に任せて私達は我が道を行こう」


京太郎「えーっと、自殺の可能性は置いといて、犯人が誰か、殺害方法は何か、動機は何か?」

洋榎「せやで工藤」

藤田「どう窒息させたのか、『特定の誰かにしか使えない殺し方』なのか」

藤田「何が殺した理由なのか、『その動機が生まれたきっかけ』は何か」

京太郎「そこから導き出せる『誰が殺したのか』?」

藤田「Q.E.D……ってね」

京太郎「なるほど、分かりやすい」

洋榎「せやいうても工藤」

京太郎「ああ、分かってるよ。手がかりが全く無いんだよなあ……」



「HAHAHA、困っているようデースね!」



京太郎「む、何奴!」

ダヴァン「私デース!」

藤田「お前だったのか」

京太郎「げえっ、第二犠牲者以降担当の面白黒人枠!」

洋榎「なんやて工藤!?」

ダヴァン「HAHAHA、私はあの日事件の現場を目撃してまーした!」

京太郎「なん……だと……!? 目撃者だと!?」

洋榎「なんやて工藤!」

ダヴァン「私は事件をばっちり目撃して犯人も覚えてま……ハッ」

京太郎「ハッ?」

ダヴァン「こんな殺人犯の居る所に居られまセーン! 私はホテルの部屋に帰らせていただきマース!」

京太郎「何 故 フ ラ グ を 重 ね る」

ダヴァン「安全な部屋に帰ったら事件の事を種に真犯人を脅しマース! 金ガッポガッポ!」

京太郎「何 故 フ ラ グ を 重 ね る」

ダヴァン「明日夜10時にホテルの私の部屋に来て下サーイ。君だけに犯人を教えまス」

京太郎「何 故 フ ラ グ を 重 ね る」

洋榎「なんやねん工藤」

ダヴァン「アデュー」




藤田「それが須賀京太郎の見た、彼女の最後の姿だった……」

京太郎「縁起でもねえこと言わんで下さい」

 



翌日。



TV【ホテルの一室で死体が発見され……】



京太郎「マジで死にやがった……」



 

警察槓「現場に入りたい? ダメダメ、特にアンタは―――」

京太郎「当て身」ギュゥオウィン

警察槓「ニャンチュウッ」

洋榎「やるな工藤」

京太郎「ここがホテルのダヴァンの部屋だな」

藤田「ふむ、一見普通の部屋に見えるが」



藤田「死因は心臓麻痺……ね」

京太郎「何か?」

藤田「心臓は脆い、意外とな。薬でも、酒でも、物理的衝撃でも、電気でも、冷水でも止まる」

藤田「そのくせ心不全なんていう『よく分からないけど心臓止まりました』みたいな、死因に数えられない区分まである」

藤田「熱い風呂に沈めて出してから冷水かけるだけで、止まる人は止まるもんだ」

京太郎「へー」

洋榎「そうなんか工藤」

藤田「その点『死因を書かなければ心臓麻痺』というのは洒落てると思わないか?」

京太郎「申し訳ないがであすのてはNG」

京太郎「あー、こうなると証拠とか証言とか無しに調べる探偵は無理ゲーだってよく分かるな」

藤田「警察が情報提供しなければ何も分からないのが普通というものだ。普通は一般人に協力とかそういうのはない」

京太郎「実は俺今まで隠してたんですけど、兄が刑事局長なんですよ」

洋榎「なんやて工藤!」

藤田「浅見光彦乙」

京太郎「藤田さんとタバコ好き仲間で高所恐怖症の警部さんとか居ませんか?」

藤田「十津川なんて苗字の知り合いは居ないな。第一あの人関西人苦手じゃなかったか」

洋榎「なんやて工藤!?」



藤田「それにしても、こちらもやはり他殺か」

京太郎「分かるんですか? 変な線や番号札とかしか残ってませんけど」

藤田「こういうのはまず通報の内容に応じて近場の交番から警官が来るんだ」

藤田「そして警官が悪戯でない事を確認。現場を保存するためにその場に残って交番の同僚に連絡」

藤田「連絡を受けた交番から所轄に応援要請。所轄が現場への立入禁止と鑑識を始める」

藤田「そして最後に県警あたりから検視官が来て死因を確定させる、という流れだ」

京太郎「へー」

洋榎「せやいうても工藤」

京太郎「警察が正しいとは限らないって? まあぶっちゃけミステリほどリアルの警察ってミスらないし……」

藤田「現場の保存形式はそこで判明した死因によって多少変わる」

藤田「殺人ならば県警等本部が関わってくる。それ以外の自殺等の死因なら所轄と交番だけで処理となる」

京太郎「なるほど、これは他殺のそれだと」

藤田「ちなみに昨日の宮永の家の現場も他殺だったぞ」

京太郎「いや昨日言えよ」

京太郎「タイミング良すぎますし動機はやはり口封じでしょうか」

藤田「ああ。犯人は同一人物で間違いない」

洋榎「せやな工藤」

京太郎「あんなにフラグ立てるから……あれで『まさかあいつが五年前の復讐を』とか言い出してたら役満だった」



京太郎「第一の事件を解決する前に第二の事件……なんと面倒な」

藤田「いや、事件の犯人が同一なら事件が繰り返される度に絞り込みは容易になる」

藤田「『アリバイ』なんかはその最たるものだし、殺害方法が誰にでも出来ないものなら倍満だ」

京太郎「そうか! 二つの事件の発生時のアリバイを調べれば!」

洋榎「せやかて工藤!」

藤田「アリバイを誰に聞く? この地域の人間全てに聞く気か?」

京太郎「……あ、容疑者の絞り込み……」

藤田「容疑者の心当たりすらないだろう、お前」

京太郎「一度でいいから言ってみたい、『犯人はこの中に居る』! ただし誰も居ませんよ、みたいな」

藤田「探偵が担当する事件は通り魔や無差別殺人犯はほぼ出てこない上にクローズド・サークルも多くて非情に楽そうだな」

洋榎「そなんか工藤」

京太郎「とりあえず今日は解散して明日また集合しましょう」

洋榎「せやいうても工藤」

京太郎「今日はもうやることないですし、もう夕方ですから」

藤田「そうだな、私もやりたい事ができた」

京太郎「それで事件は進展しそうですか?」

藤田「ハッキリとは言えないが……手がかりは増えるかもな」

京太郎「なるほど、ではまた明日」







京太郎「あの二人どこに泊まってんだろうか」

京太郎「まあいいや、帰ろう……このホテルも災難だったなあ、外国人が突然死んで」

京太郎「……ん? 外国人……異人……ホテル……」

京太郎「ハハ、まさかな」

TV【被害者は大阪在住、愛宕洋榎さんと―――】



京太郎「殺人事件発生中に『まさかな』とか言うんじゃなかった……!」



TV【連続殺人と見て調査を―――】







藤田「嫌な、事件だったね……」

京太郎「嫌な予感はしてたんだ、咲(さき)がポックリ逝って何も起こらなかったから油断してた」




絹恵「お姉ちゃんが昨日電話で『任せたで工藤』って……自分に何かあったら後は任せる的なニュアンスで……!」



京太郎「佐木二号はやるなっつってんだろおおおおおおがああああああああああッ!!」

京太郎「なんでもかんでもロックオン・ストラトスの代替わりみたいに行くわけねえんだよ!」

京太郎「双子姉妹交換云々は被害者と犯人以外に許されてねーから!!」

絹恵「せやな工藤」

京太郎「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ」

京太郎「解決パートだ、解決パートに入ろう、もうこれ以上は色々ともたない……」

京太郎「藤田さん! 昨日言ってた通り事件は進展するんでしょうね!」

藤田「ん? ああ、なら巻きで行くか」



藤田「犯人は原村和だったんだよ!」

京太郎「な、なんだってー!?」

絹恵「なんやてー!?」

藤田「動機は痴情のもつれで宮永咲殺害は胸の脂肪を使って窒息させた!」

藤田「口周りを拭けば皮脂等の痕跡も残らず凶器も残らない!」

京太郎「ハッ、>>2の俺の凶器発言ですでに伏線は蒔かれていたのか!」



藤田「第二の事件は隣の部屋から『浸透勁』で壁越しに衝撃を徹したんだ」

藤田「あの面白黒人が壁に寄っかかっているのを気配で確認、壁を殴打して衝撃を壁越しに貫通」

藤田「その衝撃で心臓を止めた……ハートブレイクショット、というわけだ」

京太郎「ブロークンフィスト乙……って、え? マジで?」

藤田「隣の部屋に当日原村和の名前で予約が取られていたことと、部屋の壁に叩かれたような跡があった」

絹恵「決まりやん!」



藤田「そして第三の事件でダイイングメッセージが残されていた!」

京太郎「な、なんだってー!?」

藤田「残されていたダイイングメッセージはお約束のように分かりづらい文字列、『富士鷹ジュビロ』」

藤田「これを解読すると『藤田和日郎』となり、私とお前の名前を混ぜ犯人の名前を示す暗号だったという事が分かる!」

京太郎「わかりづらっ!」

絹恵「お姉ちゃん、だから愛宕のおもろい方とか言われるんや……!」

京太郎「よし、締めに入った! 後は追い詰めるだけだ!」

藤田「しかし今日は土曜だぞ? お前平日以外に原村に会えるのか?」

藤田「電話番号も住所も知らないだろうに、第一そこまで親しくないだろう。同じ部活なだけだ」

京太郎「ぐはっ!」

絹恵「右京太郎さんが血を吐いた! せや、あかんかったんや! 一人だけ回想ハブされた事指摘したらアカンかったんや!」

絹恵「謝れ藤田靖子! 京太郎さんに謝れ!」

藤田「あ、ああ。すまなかった」

京太郎「いえ、いいんですよ……事実ですし……」




京太郎「もしもしタコス? 今和どこに居るか知ってるか?」

『じぇじぇじぇ』

京太郎「県外に? で、場所は……ふむふむ……なるほど、サンキュー」



藤田「どうだった?」

京太郎「やはり県外でしたね。長野には海がありませんから」

絹恵「『追い詰められた殺人犯は高確率で海近くの崖に向かう』……古事記にもそう書いとるな」

藤田「よし、向かうぞ! 出来れば投身自殺まで行ってくれて細かい所は有耶無耶にしてくれるくらいが楽なんだが!」

京太郎「この畜生探偵役」

和「ふ……ようやく私に辿り着いたようですね。そうです、私があれをやったんですよ」



京太郎「和! 馬鹿な真似はよせ! いやもうバカな真似したから俺ら今ここに居るんだけどさ」

藤田「構わん、やれ」

京太郎「は?」

藤田「突き落とせ。もう私も色々やるの面倒になってきた」

絹恵「押せっ……! 押せっ……!」



京太郎「だぁってろお前ら。……和、本当にお前が咲を殺したのか?」

和「えっ?」

京太郎「えっ?」

和「いえ、私はてっきり死体安置所と咲さんの部屋からの窃盗を咎められるものかと……」

京太郎「その件はその件で通報するからな。え、ダヴァンも? 面白い方の愛宕も?」

和「何の事をおっしゃってるかさっぱりというか……」

絹恵「あら、どういうことや?」

藤田「悪足掻きじゃないのか? 証拠はもう揃ってるんだぞ」

和「え? え?」



京太郎「(……どういうことだ?)」

京太郎「(とぼけてる? ここに来てどんでん返し? うーん)」

京太郎「(大雑把とはいえ推理してきたんだし……あれ、いや違うよな)」

京太郎「(推理の材料も……推理自体も……)」

京太郎「(……まさか……)」

京太郎「(考えてみよう。推理の材料は、もう十分に集まってるはずだ)」

―――まあ私にとっても得あるから付き合うけども

得?


―――現場に入りたい? ダメダメ、特にアンタは

アンタって、一体誰の事だ? それは捜査している警察が顔を知っている、つまりマークしているという事で


―――こんな殺人犯の居る所に居られまセーン! 私はホテルの部屋に帰らせていただきマース!

あれが言葉通りの意味なら? あの場に殺人犯が居たとも考えられるんじゃないのか?


―――ああ。犯人は同一人物で間違いない

おそらく同一犯だろうな、とかじゃなくて?


―――そうだな、私もやりたい事ができた
―――ハッキリとは言えないが……手がかりは増えるかもな

翌日面白黒人が殺されて、手がかりは増えた


―――『富士鷹ジュビロ』

あれはもっとシンプルに分かりやすく、一人の人物を示していたのでは?


セオリーの一角、『犯人は犯行現場に舞い戻る』。

自分達と一緒に現場を全て回れたという事は……現場でこっそり証拠品を処分する機会もあったのでは?




この推理が正しければ、和に辿り着いたここまでの推理は全てデマカセだったと断じてもいい。

いやきっと、この推理の方が正しい。

何故なら彼女は全ての死因を知っていて、それら全てを自分達に隠蔽出来る立場にあって、何より。



これに気付けば、誰もが即座に犯人だと分かる何よりも明確な証拠を明示していた。



名前が、藤田靖子(ふじた『やす』こ)。

 



京太郎「 『犯人はヤス』―――!! 」



 

和「な、なんだってー!?」
絹恵「な、なんやてー!?」



藤田「ふっ……ようやく気付いたか」

京太郎「何故だ、何故こんな事を……」

藤田「一つ、良い事を教えてやろう」

京太郎「……?」

藤田「『なんとなく』で通り魔的に行われた殺人の犯人を探偵が推理で特定するのは不可能だ」

藤田「誰でも良かったという精神にノコギリが加わればAKBだって獲れる」

京太郎「身も蓋もねえ! つか誰でも良かった、だと……!? 誰でも良かったとか最後にバラすオチとしては最悪だろ!」

藤田「そう、誰でも良かった。いやあの面白黒人は口封じだが」

藤田「……そしてお前達も今からこのノコギリでAKBと同じ場所に送ってやる。口封じだ」

京太郎「!」

絹恵「知られたら口封じするしかない事実を積極的に話していくスタイル」



藤田「命乞いはするか?」

和「どうしましょう……こんなことなら遠慮せずモツも持ってくればよかった……」

京太郎「お前は後で本気で通報するからな」

藤田「ほう? 後があると思ってるのか」

絹恵「イッツァピーンチからイッツァパーンチの流れ来るか!?」

京太郎「いや来ねえよ。ただ、俺は万全の準備をしてここに来たってだけだ」

藤田「それは、携帯電話……? 通話中……どこに繋がっている!?」




京太郎「教えてやる。俺はSSの中だけでは、ありとあらゆる女性との面識設定が許されてるって事をな!」

百鬼藍子 16歳 春


空手と麻雀の板挟みに悩みに悩み抜いた結果、彼女がたどり着いた先は『謝罪』であった

自分自身を育ててくれたかつての空手への限りなく大きな恩

自分なりに少しでも返そうと思い立ったのが、一日一万回 謝罪の辻蹴り!


道行く他人の首に目をつけ 見定め 狙いを付け 蹴り 謝る!

一連の動作を一回こなし許されるまでに当初は一~二分

一万回蹴り終えるまでに当初は18時間以上の時間と数十回の通報を繰り返した


蹴り終えれば登校し、蹴り終えれば帰宅し、寝て起きてはまた蹴り謝るを繰り返す日々


1年が過ぎた頃、異変に気付く 一万回蹴り終えても 日が暮れていない

謝罪と辻蹴り 1時間を切る!

代わりに時間短縮のため意識を刈り取った人達へ祈る時間が増えた



電話で連絡を受け 藤田の背後から首筋に放たれた彼女の蹴りは 音を置き去りにした

京太郎「藍(らん)姉ちゃんマジでデウスエクスマキナ」

絹恵「ヒューッ!」
和「ヒューッ!」

藍子「これで私の出番とか登場率とかも改善されますかね?」

京太郎「そりゃもうバリバリですよ」



和「一件落着、ですね」

絹恵「せやな」

和「帰りましょう、私達の愛する平和な世界へ……」

京太郎「おう、そうだな」

和「……須賀くん? 携帯いじりながら生返事は失礼ですよ?」

京太郎「んー、もうちょっと待ってくれ。たぶん後10分くらいだろうから」

絹恵「何がや?」

和「何がですか?」
















 __[警] 和

  (  ) ('A`)
  (  )Vノ )
   | |  | |

   \
:::::  \            和の両腕に冷たい鉄の輪がはめられた
\:::::  \

 \::::: _ヽ __   _     外界との連絡を断ち切る契約の印だ。
  ヽ/,  /_ ヽ/、 ヽ_
   // /<  __) l -,|__) > 「刑事さん・・・、私、どうして・・・
   || | <  __)_ゝJ_)_>    こんなことになっちゃったんでしょうか・・・?」
\ ||.| <  ___)_(_)_ >
  \| |  <____ノ_(_)_ )   とめどなく大粒の涙がこぼれ落ち
   ヾヽニニ/ー--'/        震える彼女の掌を濡らした。

    |_|_t_|_♀__|
      9   ∂        「その答えを見つけるのは、お前自身だ。」
       6  ∂
       (9_∂          和は声をあげて泣いた。

 


数年後京太郎は沢村智紀と結婚し沢村京太郎となり、その翌日白築慕はハンガーを投げつけられ、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った。


カーンカーンカーン


 

別にラストは西田京太郎でも良かった

SS書いてる場合じゃないくらい忙しいけどつい書いちゃうよね

本格ミステリなら麻耶雄嵩の『翼ある闇』がオススメですよ(棒)


まあ冗談抜きだと『七回死んだ男』とか『人格転移の殺人』とか好きです

このスレをきっかけに咲でミステリもの書く人増えないかなー(チラッ


長編はもう書けないんか…

>>46
リアルちょっと瀕死

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