真美「目指せ、オーバーランク!」 (90)


『ever lose again 決めた自分の意思を貫いて~♪』

真美「すごいよねぇ、オーバーランクって」

P「な」

真美「な、じゃないよ兄ちゃん! 真美のこともオーバーランクのアイドルにしてくれるんだよね!?」

P「まあまあ、見てろって」


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真美「安心できないよー……”玲音”みたいにカッコ良い曲、歌ってみたいなぁ」

P「亜美みたいにユニット組んでみるか?」

真美「えー、ユニットだとちょっと」

P「なんかご不満?」

真美「……真美、竜宮小町と並びたいんだ。だから、同じ売れ方じゃ……」


P「……珍しく元気ないな」

小鳥「お茶入りましたよー、真美ちゃんお疲れ様」

真美「あっ、ありがとピヨちゃん! ねえねえ、ピヨちゃんは兄ちゃんのこの感じ、どう思う?」

小鳥「感じ、って?」

真美「見た感じ! ネクタイはユルユルだし、シャツもヨレヨレだし、おまけにプロデュースしてくんないし!」


小鳥「プロデュースはしてもらってるんじゃないかしら?」

P「そうだそうだ」

真美「兄ちゃんからのアドバイスって『頑張れ!』とか『気を抜くな!』ぐらいじゃんさ!」

小鳥「……そうなんですか?」

P「まあ、真美は頑張り屋さんですから」


真美「そういうことじゃないっしょー! 真美はいっつも不安なのっ」

P「でも、ダンスとかボーカル、ビジュアルはトレーナーの先生に聞けばいいだろ?」

真美「まあ、そうだね」ズズッ

P「俺がやることって仕事持ってきたり、オーディション受けさせたりとか、そんぐらいだろ」

小鳥「いや、アイドルのリフレッシュとか……レッスンのアドバイスも立派なお仕事なんじゃないですか?」


P「まあまあ」

小鳥「プロデューサーさん……不安になってきました、私」

真美「ねー。あーあ、真美もこんな感じになりたいよ」チラッ

『ありがとう! 今日も最高のパフォーマンスが出来たよ!』

小鳥「玲音ちゃん?」


真美「そうそう。事務所のテレビでこうやって見てる人のさ、いつか真横に立てたらいいなぁ」

P「その場所を勝ち取るのは真美だからな、俺じゃない」

真美「わかってるけどさー、アシストぐらいちゃんとしてくれないと」

P「俺がどんなアシストしたって、最終的に真美が動くんだぞ?」

真美「むぅ」


P「そういえば、玲音が来週のフェスにゲストで参加するんだっけか」ズズッ

真美「っ! ……もういいYO!」

P「へぁっ!?」

真美「真美、ひとりでオーバーランク目指すから! 特訓だよ特訓!」

P「目指すってお前、どうやって」


真美「玲音にフェスで勝てば、きっとオーバーランクになれるよ!」

P「そんなの、どうやって特訓するんだ!」

真美「は、はるるんとかに聞くし!」

小鳥「春香ちゃん……っていうか、うちの事務所にオーバーランクは居ないわよ?」

真美「み、みんなの力をひとつにすれば!」タタッ

P「お、おい真美!」


真美「兄ちゃんのバーカ!」

バタン

小鳥「……怒らせちゃってるじゃないですか」

P「あはは……面目ない」

小鳥「全く……たまには格好良くプロデューサーやってるところ、見せてあげたらどうですか?」


 ――ラウンド1――

真美「料理が出来ればオーバーランクにも近づくよね! ってことで、はるるん!」

春香「私でいいのかな、これ……」

真美「大丈夫! はるるんせんせー、よろしくお願いしまっす!」

春香「よ、よし! 頑張ろう! 今日作るのは簡単、バタークッキーでーす!」


春香「こうやって、白くなるまでかき混ぜるの」

真美「……」カタカタ

春香「丁度良くなったら言ってね」

真美「うおりゃー!」ガッシュガッシュ

春香「は、早い!? 真美! 人の動きじゃないよ!」


真美「はるるん、次はっ」

春香「えっと、卵を」

真美「入れるんだね!」パキッ

春香「それで黄色くなるまで混ぜ……だから早いよ! 手が見えないよ!」


春香「これで、冷やしまーす」

真美「はぁ、っはぁ……ちかれた」

春香「真美、大丈夫? あ、小鳥さん、奥のソファー借りますねー」

真美「ごめんね、はるるん」

春香「私は別に良いけど……」


ポフッ

春香「本当は30分ぐらいかかるんだよ、混ぜる作業」

真美「へへっ、10分で終わったね……」

春香「うん、早すぎるよ! 何か、焦ってるんでしょう?」

真美「……オーバーランクになりたいんだ」

春香「オーバーランクって、Sランクの上、ってやつだよね」


真美「そうそう」

春香「それ、すぐにはたどり着けない、すごく遠い場所にあるんじゃないかな、って思うんだ」

真美「うん。真美もそう思ってる」

春香「だったら、どうしてそんなに急いでるの?」

真美「真美は早くトップアイドルになりたいの」


春香「そんなに早く、ならなきゃいけないの? もっと実力を積んで」

真美「それもそうだけど……亜美の背中が、もっと遠くなっちゃうし」

春香「亜美、かぁ……」

真美「真美、自分のジツリョクで売れたいの! 竜宮小町みたいにセットじゃなくて、真美ひとりで!」

春香「真美っ、言っていいことと悪いことが有るよ! セットだなんて……」


真美「っ……ごめん」

春香「ね、ゆっくり駆け上がっていこうよ、オーバーランクなんてすぐに目指さなくても」ピピピピッ

真美「あっ、そろそろじゃない? 真美、冷蔵庫開けてくるねー!」

春香「こらっ! 話を…………はぁ、私ってお説教とか出来ないなぁ」

 ――

 ――――


真美「かんせーい!」

春香「やったね、真美」

真美「ありがとうはるるん! 美味しそうっ」

春香「食べてみる?」

真美「モチ!」


春香「……うん、おいしいっ! 初めてでこんなに上手に焼けるなんて、すごいよ!」

真美「美味しいね! これ、持って行って良い?」

春香「もちろん、真美が作ったんだから」

真美「ありがとうね、はるるんっ」

春香「いえいえっ。それじゃあ、包装しようか」


 ――ラウンド2――

真美「良いパフォーマンスのためには体力! ってことで!」

真「ボクで良いの?」

やよい「真さん直々のトレーニング、やってみたいです!」

真美「ねっ、やよいっち!」

やよい「うん!」


真「トレーニング、って言っても……サイクリングだよ?」

真美「だいじょび!」

やよい「自転車をこぐのは慣れてますっ、スーパーに行くので!」

真「そっか、じゃあ平気だね。いざ! 大阪っ」

真美やよい「「おおさか!?」」


真「って、冗談だよ、冗談! ここからちょっと走って、オダイバに行ってみようか」

真美「お、オダイバってメッチャ遠いんだよね→……」

やよい「おしゃれなお店がいっぱいある所ですか?」

真「そうだね。まあ、大丈夫! 事務所から15キロぐらいだからさ」

真美「それ、遠くない……?」


真「うおりゃー!」シャコシャコ

やよい「真さん、早いですねっ」キーコキーコ

真「やよいだって! やっぱり毎日スーパーに行ってると、体力もついてるね」

やよい「えへへ」

真「おーい、真美ぃー! 大丈夫ー?」


真美「ぜぇ、ぜぇ……」

真「真美、息切れがすごいよ。ほら、カポリ」

真美「あ、あんがと……ふたりとも、早すぎるよう……」ゴクゴク

やよい「ごめんね、真美。いつもセールの時間に間に合うようにしてるから、つい」


真美「……よーし、回復した!」

真「オッケー、それじゃあゆっくり目指そうか」

やよい「ですね、景色を楽しみながら行きましょうか」

真美「ごめんね、まこちん、やよいっち! 真美、さっきのペースでも平気だよ!」

やよい「えっ、ダメだよ真美! 疲れちゃうよ!」


真美「だって、体力をつけるためのトレーニングだから……ジョートーだよ!」

真「真美、やよい。ボクのスピードについてこれる?」

やよい「は、はいっ」

真美「モチのロン!」

真「分かった。それじゃあ、さっきと同じペースで! 行くよっ!」


 ――
 ――――

真美「ついたぁー!」

真「ついたね!」

やよい「風が気持ちいいです!」

真美「ふえー、くたびれた……」ポスッ


真「ふたりとも、お疲れ様。体力はついた?」

やよい「今までより早くスーパーに行けそうです! ありがとうございます!」

真美「真美も、これなら玲音に勝てる気がする!」

真「玲音? ああ、オーバーランクの」

真美「ありがとね、まこちん! やよいっちも!」


やよい「私も体力しっかりついたし、良かったかなーって!」

真「それなら、ボクもここまで走った甲斐があったね。でも」

真美「え?」

真「自転車で来た以上、自転車で帰らなきゃ行けないんだよ? ふたりともっ」ニヤァ

真美「も、もう体力残ってないよぉー!」


 ――ラウンド3――

真美「体力をつけたあとはフィジカル! ってことでひびきん!」

響「そのふたつ、割と似た意味だと思うけど……ま、自分をコーチにした真美はセンスあるな!」

真美「へっへ、卓球なら真美だってそこそこ強いんだよ?」

響「ふふん、自分は沖縄だったら敵なしだぞ!」


美希「審判ってどうやるんだっけ?」

響「簡単にスコアだけカウントしてくれたら大丈夫だぞ」

美希「りょーかいなの。頑張ってねっ、真美も響も!」

真美「頑張るよ! いざ勝負!」

響「サーブは真美? いいよ!」


真美(サーブは垂直に、こうっ)パンッ

響「よしっ」パシッ

真美「いけーっ!」パンッ!

響「そんなに強く当てたら、卓球台にバウンドしないぞ!」

真美「ああっ、そのまま向こうに行っちゃった」


美希「1対0なの!」

響「よーし、来い!」

真美「とりゃっ!」パンッ

響「さぁっ!」パシンッ

美希「響、アイちゃんみたいで格好良いね」


響「そ、そう? 照れるぞ」

真美「隙ありひびきんっ!」ビュンッ

響「ひゃあ!」

真美「んっふっふ~、勝負の途中によそ見ですかい?」

美希「1対1、同点なの!」


響「むぅーっ、やったな!」

真美「さぁ、サーブはひびきんだよ! 沖縄一のジツリョク、見せてくれるんだよね!」

響「大口叩いてられるのも今のうちだっ、そりゃ!」コツンッ

真美「えいっ」パンッ

響「とりゃ!」パシンッ


 ――
 ――――

美希「11対8! 響の勝ちなの!」

真美「うあうあ→! 負けちゃったぁ!」

響「真美、自分と対戦してここまで出来るなんてすごいぞ!」

真美「そ、そう?」


響「こんなに相手とのスコアが近かったの、久しぶりかもしれないな」

美希「だね。ミキ、前に番組で響と対戦した時は11対3ぐらいだったの」

真美「や、やった……」

響「でも、結構息切れしてる? 自転車で鍛えたんじゃないのか?」


真美「うーん、神経も使ったっていうか……キンチョーして疲れた、かなぁ」

響「緊張かぁ。卓球は案外繊細なスポーツだからな」

美希「響も全力でぶつかったから、真美も精一杯出来たの」

響「うんうん。やっぱり自分」

美希「名コーチなの!」


響「あー、そうじゃなくて、カン」ニヤッ

真美「ありがとね、ひびきん! やっぱりひびきんは名コーチだよ!」

響「ありがとな、でも名コーチよりカン」

美希「はいはい。それじゃあ響、ミキと対戦してくれる?」

響「うがーっ! 流すなっ! ……自分が勝ったら、カンペキって言わせてよねっ」


 ――ラウンド4――

真美「プロの世界に必要なのは礼儀作法! ゆきぴょん、お姫ちん!」

雪歩「よろしくお願いしますぅ」

貴音「お願いします」

雪歩「あ、あの……私なんかより、四条さんの方が礼儀作法はちゃんとしてるんじゃ」


貴音「いえ……わたくしは、現世の礼儀作法にはまだまだ疎いのです」

雪歩「そ、そうなんですか?」

真美「ゆきぴょん、よろしくね!」

雪歩「う、うん! それじゃあ、給湯室に行こっか」


貴音「この急須は洋風な色をしていますね」

雪歩「はい。この間、お茶の番組に出演した時に、作ってもらったんです」

真美「綺麗な白だね」

雪歩「えへへ、イメージカラーの白にしてもらったの。でもね、セットの茶托は」

コトッ


貴音「黒、ですか?」

真美「分かった、まこちんのイメージカラー!」

雪歩「うん。習った方法で、いずれは真ちゃんにお茶を淹れたいな、って思ったから」

貴音「ふふっ。雪歩は真のことを本当に信頼しているのですね」

雪歩「はいっ。……それじゃあ、教えていきます」


雪歩「熱いから、お湯がハネないように気をつけてね」

真美「らじゃ!」

雪歩「こうやって、お茶っ葉の風味を消さないように……」

貴音「このぐらいが適温なのですね」

雪歩「高いお茶っ葉は、もうちょっと低い温度の方が美味しくなるんです」


雪歩「こうして、茶托を拭いておいて」

貴音「予め、ですか」

雪歩「はい。こうしないと、湯のみを持ち上げた時に茶托まで持ってきてしまうので」

真美「な、なるほど……」

雪歩「それで、急須の上の部分に軽く手を添えて」


雪歩「6分目ぐらいかな。あんまり量が多いと、飲みにくくなっちゃうから」

真美「ゆきぴょん、止める場所が分かるの?」

雪歩「うん。何度も淹れているとね」

貴音「まさしく『何度も淹れるよ』ですね」

真美「くくっ……」


貴音「失礼致しました。雪歩、続きを教えて下さいますか」

雪歩「わ、わかりました。こうやって、湯のみをお盆に配置していきます」

真美「置き方も決まってるの?」

雪歩「ううん、特に決まってるってわけじゃないけど、こうすると」ヒョイッ

貴音「これは!」


雪歩「片手でお盆を持った時、安定するんですぅ」

真美「おぉー!」パチパチ

貴音「雪歩は凄いですね……まるであの飲食店で出会った店員のようです」

真美「インショクテン?」

貴音「響と入った飲食店の店員は、軽々しく皿を持って片付けていきました……」


雪歩「レストランの人みたいに、うまく持てないですけどね。えへへ」

真美「すごいよゆきぴょん!」

雪歩「そうかな、照れちゃうね……って、こんなので良かったのかな」

真美「うんっ! これでオーバーランクに近づいたよ!」

雪歩「オーバーランク……?」


 ――ラウンド5――

真美「料理で女の子っぽさ、自転車と卓球で体力、俊敏性」

小鳥「ええ」

真美「そしてお茶の淹れ方で礼儀作法を学んだのです」

小鳥「たくさん勉強したのね」


真美「そして! ここで満を持して! 千早お姉ちゃんっ」パッ

千早「えっ、私?」

真美「歌を教えて!」

千早「歌、といってもかなり幅広いと思うけれど……歴史?」


真美「ううん、楽しい歌の歌い方!」

千早「楽しい、歌の歌い方……」

小鳥「千早ちゃん、いつも楽しそうに歌っているものね」カタカタ

真美「と、いうわけで! カラオケ行こう!」

千早「カラオケに?」


 ――
 ――――

小鳥「な、なんで私までカラオケに……」

真美「千早お姉ちゃん。真美、歌ってみるから変なトコあったら教えてね」

千早「ええ」


真美「ていっ」ピピッ

小鳥「いえーい!」シャンシャン

真美「おっ、ピヨちゃん準備良いねぇ」

小鳥「私はカラオケだともっぱら盛り上げ役だから、タンバリンならお手の物よ!」シャンシャン


千早「真美はいったいどの曲、を……?」

『アクセルレーション』

小鳥「あれ、玲音ちゃんの曲よね?」

千早「この曲、楽しく歌うタイプの曲ではないような……」

真美「I don't wanna~♪」


千早「真美、もっと伸びやかに歌うといいわよ」

真美「こ、こう?」

千早「ええ、楽しく歌うなら、表情も大切だけれど、声を出すことが一番だから」

小鳥「千早ちゃんがトレーナーさんのような教え方を……!」シャンシャン

真美「止まりそうな時動かして~♪」


千早「ここの声はもうちょっと抑えて。表情を変えるのも良いわね」

真美「もっと早く~」

千早「少しフラット気味よ、音程は調整して」

真美「わかったっ」

千早「ええ!」


真美「……」

千早「……!」

小鳥「きゅ、95点!」

千早「す、すごいわ、真美! ビジュアルをアピールしてここまで点が出せるなんて!」ダキッ

真美「やった! やったよ千早お姉ちゃん!」


小鳥「本当に頑張ってるわね、真美ちゃん。これなら、玲音ちゃんに勝つのも、もしかしたら」

千早「れ、玲音さんに勝つって、どういうことですか」

真美「真美ね、玲音と勝負したいって思ってるんだ」

千早「勝負……!?」

真美「うんっ。そのために、みんなからいろんなことを学んできたの」


千早「どうして、そんなことを?」

真美「真美、オーバーランクになりたくて」

千早「……だから、オーバーランクってしきりに言っていたのね」

真美「竜宮小町の亜美ぐらいに凄いアイドルになりたい、って」


小鳥「真美ちゃん……」

千早「玲音さんと勝負をするというのは、具体的にはどういうことなの?」

真美「今度、玲音がゲストでアイドルフェスに来るの。だから、なんとかして対決しないと」

千早「そ、そんな対決だなんて……」

小鳥「あのね、真美ちゃん」


真美「な、なに?」

小鳥「プロデューサーさんがね、なんとか調整して、玲音ちゃんと対決出来るように舞台を整えてくれたの」

真美「えっ!?」

小鳥「……ほら、やるときはやるでしょう、あの人?」

真美「うん……何もしてくれないんだと思ってた」


小鳥「真美ちゃんの気持ちを汲み取って、玲音ちゃんを説得してくれたの」

真美「兄ちゃん……」

小鳥「だから、今度の土曜日、本気でぶつかってみて。オーバーランクと戦えるアイドルなんて、滅多に居ない」

千早「そういうことなら……真美、全力で行くのよ」

真美「分かった! 真美、頑張るよ!」


 ――フェス当日――

P「真美。準備は良いか」

真美「モチのロン! みんなに教えてもらったこと、いっぱいあるし!」

P「なら良し。頑張れ!」

真美「もう、やっぱ兄ちゃんってそればっかりだよね」


P「そりゃあな。本当はもうちょっと真美を特訓したかったし」

真美「えっ?」

P「ま、真美が自分で選んだ道だ。悔いのないように全力で戦ってこいよ!」

真美「……うん、頑張る」


スタッフ「準備お願いしまーす!」

ワアアアアアア!!

玲音「今日はよろしく」

真美「は、はいっ」

玲音「あはは、緊張しないで良いよ。勝負は二の次だし楽しもう」


真美「……真美は」

玲音「え?」

真美「真美は、オーバーランクになりたい!」

玲音「オーバーランクに?」

真美「亜美の竜宮小町ぐらい、カッチョイイアイドルになりたいんだ!」


玲音「……うん、感じる」

真美「え……?」

玲音「キミの瞳から、強い意志が伝わってくるよ」

真美「意思……」

玲音「勝負がしたい、そういうことでしょ?」


真美「っ、うんっ!」

玲音「そういうことなら、アタシも全力で勝負しなきゃいけない!」

真美「絶対、真美が勝つよ!」

玲音「キミが勝てば、オーバーランク。でもランクを超えるアイドルは何人もいらないよ!」

 ――――
 ――


真美「ちぇー」

P「惜しかったな」

真美「惜しくないよ、向こうの圧勝じゃん」

P「まぁ、相手は玲音だからな。今の真美には手の届かない相手だった、ってことか」

真美「勝てば、オーバーランクだったんだけどね……」


ガチャッ

玲音「やぁ。楽屋にいたの」

真美「あっ!」

玲音「今日の対決、すごく楽しかった! キミは?」

真美「……真美も、負けちゃったけど……楽しかった」


玲音「久しぶりにアタシに全力で立ち向かってくるアイドルに出会えたんだ」

真美「他の人は?」

玲音「みんな最初から、勝ち目がないって勝負を避けたがる」

P「それはオーバーランクの宿命、なのかな」

玲音「っ! 765プロの……キミが彼女を育ててるの?」


P「ああ。プロデューサーだよ」

真美「でも兄ちゃん、ゼンゼン仕事しなくてへっぽこで」

玲音「ふぅん? 見たところ、あんまり信頼されてないようだけど」

P「うっ……俺は頼りないからな」

玲音「頼りない、か……あっ、ねえねえ」


真美「ん、真美?」

玲音「うん。彼はきっと、キミがアタシに届かなかった原因、分かると思うよ」

真美「え?」

玲音「それを研究して、修正して……そうしたら、またアタシとやろう」

真美「……もう一回、挑戦させてくれるの?」


玲音「もちろん。こんなにハラハラする相手、そうは居ないから」

真美「分かった……それじゃあ、もっと頑張る!」

玲音「お互いに努力して、高めあおう。それじゃあ」

ギィ…


真美「ねえ、兄ちゃん」

P「うん?」

真美「兄ちゃん、真美がどうして勝てなかったか分かる?」

P「ああ。ダンスのしなやかさ、ビジュアルアピール、曲のテンポが早くなる時にずれるボーカル」

真美「け、結構いっぱいあるね……」


P「一応、これでもプロデューサーだからな。ずっと真美のことを見てきた」

真美「うん」

P「だから真美が不得意とするところだって理解出来てるつもりだ」

真美「……うん、頼もしい」

P「そんで真美は、キビキビ縛り付けるより、自由にやらせたほうが良いって思ってたんだ」


真美「ジユーに?」

P「そうそう。だから放任主義だったんだけど……真美はどっちが良い?」

真美「……そんなの、決まってるよ」

P「ん」

真美「せっかくプロデューサーの兄ちゃんが居るんだもん。もっと見て教えて欲しい」


P「……分かった。それじゃ、これからは玲音を倒すための猛特訓だ!」

真美「やった! あっ、後ね? 兄ちゃん」

P「ん、どうした?」

真美「真美、オーバーランクになりたいのは理由があって」

P「理由か?」


真美「亜美、竜宮小町で今チョー売れっ子っしょ? いまの真美じゃ、一緒にお仕事出来ないよね」

P「まあ、確かにな」

真美「だから真美もメッチャ有名なアイドルになって、亜美と一緒に歌いたいんだよ」

P「それだから、オーバーランクを目指してるのか?」

真美「そう! オーバーランクになれば、お仕事も選べるくらいに来るって聞いたから、亜美と……」


P「でも、そうなったらいろんな仕事に邪魔されて、亜美と会えなくなるかもしれないぞ」

真美「……それは、考えてなかった」

P「だからさ、ゆっくり実力をつけていってトップアイドルを目指そう。
 みんなにいろんな特訓をしてもらったんだろ?」

真美「してもらった!」


P「ウチの事務所には、困ったときに話を聞いて助けてくれたり、他人のために優しくなれる娘がたくさんいる」

真美「うん、ジッカンしたよ」

P「焦ることはないさ。亜美と同じ実力を真美は持ってる」

真美「……発揮、できるかな」

P「出来るさ。俺はアシストしか出来ないけど、真美が精一杯努力すれば」


真美「……うん!」

P「だから俺も、生活リズム直して、ネクタイもちゃんと締めるよ」

真美「えへへ。兄ちゃんもシンキゼンテン?」

P「心機一転な。真美のためなら、ダンスやビジュアルのことも指示できるようにする」

真美「ありがと、兄ちゃん!」



真美「真美のこと、トップアイドルにするお手伝い、よろしくね!」



 おしまい。OFA買ってないので玲音の曲しか知らないです。お疲れ様でした。

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