妹「こういう兄妹がいてもいいんじゃない?」(413)

===兄、誕生
―――家

父「ママ、出産してやっと退院できたね、お疲れ様」

母「私もなんだかホッとしたわ。でもこれからが大変なんでしょうけど」

父「ほら、ここがおうちだよーって、寝てるか」

兄「」スゥスゥ…

父「あちこちから出産祝いが来てるよ」

母「あら本当。頂いた方にはお礼をしなくちゃね」


兄「すんっ…すんっ…おぎゃああぁ」

母「あら、おっぱい飲ませないと」

母「お―よしよし」

父「よし、俺が夕食作るよ。だからおっぱい飲ませてなよ」

母「ごめんねパパ」

そこから始まるのか…

===妹、誕生・兄3歳

母「兄、ほら、妹だよ」

兄「いもーとぉ?」

妹「」ふにゃ

母(あら、兄を見て微笑んだわ)

母「兄はお兄ちゃんになったのよ」

兄「おにーたん?」

母「そう。だから遊べるようになったら仲良く一緒に遊んでね」

兄「うん!」

兄=俺
もう少しで妹が生まれる♪

はっ・・・もう生まれてた

>>3
序盤はトントン拍子(死語?)で行きます

父「兄は妹に興味津々だな」

母「あ、おかえりなさいあなた」

父「ただいま」

兄「パパ、ぶーぶーで遊ぼうよぉ」

父「お、いいよ、遊ぼう」

===兄8歳・妹5歳

妹「妹、大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになるー」

母「あら、いいわねー。じゃ兄はお婿さんね」

兄「お婿さん?」

母「そうよ」

兄「僕は妹のお婿さんだよ」

妹「えへへ」

父「結婚式の時はパパもママも呼んでくれよ」

父「本当に結婚しちゃったりしてな」

母「何言ってるの」

父「でも2人が結婚すれば嫁姑問題が起きないから楽だと思うぞ」

母「兄妹は結婚できないでしょ。そんなこと言ってないで夕食作るの手伝ってよ」

父「へいへい」

>>5>>6
俺が投下するタイミングが早かったですね

===兄11歳・妹8歳

兄「遊びに行ってきまーす」

母「待って。どこへ行くの?」

兄「電車の写真撮りに行くんだけど?」

母「だったら妹も連れてってあげて」

兄「えぇ? 妹も?」

母「あの子クラスに馴染めなくて最近学校を休みがちでしょ、家にずーっといるのもよくないから外に連れてってよ」

兄「うーん…、友達も一緒に行くからなぁ」

母「恥ずかしいのは分かるけど、妹を助けると思ってさ」

兄「妹は電車に興味ないから一緒に行ってもつまらないんじゃないの?」

母「臨時のお小遣いあげるから行った先で妹の好きなお菓子買ってあげてよ。もちろん兄とお友達がお菓子買う分もあげるから」

兄「うーん、分かったよ」

―――駅改札口

兄友「おせーよ」

兄「ごめんごめん」

妹「…」

兄友「妹も一緒なのか?」

兄「ああ、ウンタラカンタラと言う訳でさ。いいか一緒でも?」

兄友「全然いいよ(いつ見ても可愛いなぁ)」

兄「ほら、妹、僕の後ろに隠れてないで挨拶しなよ」

妹「…」ギュ

兄「…まったく」

兄友「まぁいいじゃないか。妹ちゃん、よろしくな」

妹「…」

兄友「さ、行こうぜ」

兄「妹、行くぞ」

妹「」タタタッ

―――帰り道

兄「あんまり面白くなかっただろ?」

妹「ううん、途中でお菓子も食べられたから」

兄「また一緒に行くか?」

妹「うん。でも今度はお兄ちゃんと2人だけで行きたいな」

兄「2人だけで? それじゃデートみたいだな」

妹「いいでしょ?」

兄(妹とデートかよ)

兄「また今度な」

===兄16歳・妹13歳
―――妹の部屋

母「38度7分…、結構熱あるわね。今日は学校はお休みね」

妹「ゴホッ…、ゴホッ」

兄「昨日風呂から出た後にずっと薄着で居るからだよ」

妹「ごめんね」

兄「じゃ、僕は学校に行くよ」

母・妹「いってらっしゃい」

母「お母さんもね、これから町内会の婦人部の集まりがあるのよ」

妹「えぇ? ゴホッ、私1人になっちゃうの?」

母「ごめんね。本当は休みたいんだけど、極力出るようにって言われているのよ。なるべく早く帰ってくるから」

妹「早く帰って来てね」

母「分かってるわ。じゃ、ちょっと行ってくるわね。このお粥食べて薬飲んじゃいなさいよ」

妹「うん、いってらっしゃい」

妹(何よ、39度近い熱を出してる病人を一人ぼっちにするなんて)

妹「…」

―――15分後

妹(心細いなぁ…)

妹(お父さんでもお母さんでもお兄ちゃんでもいいから、誰か帰ってこないかなぁ)

妹(なんて、誰も帰ってこないよね)

兄『妹ー、大丈夫かー? 入るよー』

妹(え? お兄ちゃん?)

カチャ

兄「妹、大丈夫か?」

妹「お兄ちゃん、学校は?」

兄「それがさ、事故で電車が止まっちゃっててさ、復旧の見込みが立たないらしいから戻って来たんだよ」

妹「今日テストでしょ? いいの?」

兄「ああ、駅で待っててもやることが無いからね」

兄「それより大丈夫か? 何か持ってこようか?」

妹「喉渇いたから水持って来てくれる? ゴホッ」

兄「いいよ。でも風邪ひいた時はスポーツ系飲料を飲むといいぞ。ポカリとかアクエリアスとかね。今買ってくるから待ってて」

妹「ありがとうお兄ちゃん」

妹(ここから駅まで片道10分かかるのに何で15分位で戻って来たんだろ?)

妹(途中でスマホ見て電車が事故で止まってるのを知ったのかな)

妹(そうだ、鉄道会社のサイト見てみよう)

カチ、カチ…

(○○線は全線通常通り運転しています)

妹「…」

妹(私の事が心配で引き返して来てくれたんだね。ありがとうお兄ちゃん。でもいいのかなぁ、今日テストなのに)

兄「買ってきたよ」

妹「あ、ありがとう」

妹「ゴホッ、駅へ戻るの?」

兄「いや、まだ復旧してないみたいだから今日はもうズル休みする」

妹「え? でもさっき…」

兄「何?」

妹「あ、ううん、何でもない。でも今日テストじゃないの?(私は嬉しいけど)」

兄「気にするな。学校はテストが全てじゃないだろ? 今はテストより妹の体調が大事だよ」

妹「ごめんねお兄ちゃん、大事な時に…」

兄「いいっていいって、テストの結果で成績が落ちても後からいくらでも挽回できるじゃないか」

兄「だけどね、人間の健康は回復できない事もある。例えば妹がこの風邪をこじらせて大きな病気になって後遺症が残ったら大変だ」

兄「命と健康は、どんな事に対しても最優先にしなくちゃね」

兄「今日はずっとここに居るから」

妹「ありがとう。本当はね、ゴホッ、心細かったんだお兄ちゃんが帰ってくるまで。私1人だったし」

兄「もう1人じゃないよ。だけど母さんもタイミング悪いよな。2,3カ月に一度の婦人部の集まりとぶつかっちゃうなんて」

妹「私が気を付けるのが一番いいんだよね」

兄「まぁそうだけどしょうがないよ」

妹(優しいなぁお兄ちゃん。お兄ちゃんがいれば、私彼氏なんかいらないよ)

続きます。
明日早いので寝ます。

===兄18歳・妹15歳
―――食卓

兄「皆聞いてほしいんだ」

父「ん?」
母「何?」
妹「?」

兄「実は高校を卒業したら、東京の会社に就職しようと思っているんだ」

母「ここから会社に通うの?」

兄「ううん、ここからだと電車で2時間かかるから、東京で1人暮らしをしようと思っているんだよ」

妹「え?」

兄「いいかな?」

母「大丈夫なの? 1人暮らしをするという事は自分の身の回りの事は全部自分でするという事なのよ?」

父「そうだぞ。自分の行動の責任は全部自分で負うんだぞ?」

兄「分かってるって。僕だって気まぐれで言ったんじゃないんだから。高校に入学したころから考えていた事なんだよ」

兄「それに自分の事は自分で出来るよ、もう子供じゃないんだから」

父「まぁお前がそう言うなら反対はしないが」

母「そうね。でも時々は帰ってきなさいよ」

兄「うん、分かってるよ」

妹「…」


―――兄の部屋

妹「お兄ちゃん」

兄「何だい?」

妹「1人暮らしするの?」

兄「ああ。東京に憧れてたしね」

妹「…行かないでよ、東京に」

兄「え?」

妹「行っちゃやだ…」ジワッ

兄「泣かないでよ。新幹線なら1時間で行けるんだから、会おうと思えばいつでも会えるじゃないか」

妹「ここから会社に通ってよ。私がバイトして定期代出すし、夜はマッサージしてあげる。他にも出来る限りのサポートはするから」

兄「そこまで妹に負担かけられないよ」

妹「私は全然負担じゃないよ?」

兄「妹にとっては負担じゃなくても、やっぱり申し訳ないよ」

兄「それにさ、そろそろ妹のブラコンも直さなきゃ。妹の歳なら『うざい』とか『クソ兄貴』とか言ってもいい頃だよ」

妹「だってお兄ちゃん優しいし全然うざいって思わないもん」

兄「僕がいなくて寂しいなら彼氏作りなよ。妹は本当に可愛いからすぐ彼氏が出来るよ」

妹「彼氏なんかいらない…」

兄「そう言わないでさ」

妹「私も一緒に東京に行く」

兄「だめだよ、妹は中学生で今度高校生になるんじゃないか。月に1度は必ず帰るから、ね」

妹「やだ、2回にして」

兄「分かったよ。月に2度必ず帰るから。約束する」

妹「本当に月に2度帰って来てね。約束だよ」

兄「ああ。約束するよ」

===兄19歳・妹16歳
―――玄関先

兄「じゃみんな、そろそろ時間だから行くよ」

父「戸締りはしっかりな。それと火の元に気を付けてな。それとこれ、後で読んでくれ」

兄「何?」

父「人生の教訓みたいなものを書いといた。口で言うとお説教みたいになっちゃうと思うから手紙にしたんだよ」

兄「電車の中で見るよ」

母「健康に気を使ってね。コンビニ弁当やカップラーメンばかり食べたりしちゃダメよ」

兄「うん、気を付けるよ」

妹「時々はLINEしようね」

兄「みんな寂しそうな顔するなよ。新幹線なら1時間で行けるから会おうと思えばいつでも会えるじゃないか」

母「何言ってるの。自分の子が遠くへ行くのに寂しい顔をしない親なんていないわよ」

父「そうだぞ」

兄「じゃ、行くね」

父「時間があったら帰ってこいよ」

母「時々食料とか送るからね」

妹「気を付けてねお兄ちゃん」ジワッ

兄「ああ」




父「やれやれ、行っちゃったな」

母「行っちゃいましたね」

妹(私も18歳になったら東京でお兄ちゃんと暮らすんだ)ポロッ

―――電車内

兄(父さんからもらった手紙を読んでみようかな)


兄(『人に迷惑をかけないように』『若いうちは何でも経験しなさい』『挨拶は人づき合いの基本だからしっかりな』(以下ry)か)

兄(最後の『お金は額に汗して稼ごう』はいつも言ってたなぁ)

兄(ありがとう父さん、しっかり胸に刻んでおくから)

―――半年後、兄の家

ピリリリリリ…

兄「(妹か)はい」

妹『元気?』

兄「ああ、元気だよ。妹も元気そうだな」

妹『1人暮らしには慣れた?』

兄「もうとっくに慣れたよ」

妹『お兄ちゃん。私ね、高校を辞める事にしたの』

兄「え? 何でまた? 入学してまだ半年じゃないか」

妹『なんか学校に馴染めなくて』

兄「中学生の時は友達もいて何の問題も無く学校に行ってたじゃないか」

妹『今は高校よ。中学生の時の友達がみんな別の高校に進学しちゃったの。なかなか新しい友達を作れなくて』

兄「まぁ苦痛なら無理して行くことも無いと思うけどな。お父さんとお母さんは何て言ってるの?」

妹『お父さんは『お前がそう決めたんならそうしなさい。ただバイトでもいいから仕事をしろ』って言ってたわ』

妹『お母さんは『せめて高校くらいは出ときなさいよ』って言ってるけど半分諦めてるみたい』

兄「そうか。親に心配させたりしないためにもバイトはした方がいいと思うぞ」

妹『だよね。明日から早速探してみる』

兄「ああ、それがいいよ」

妹『お兄ちゃんは仕事はうまくいってるの?』

兄「もちろんだよ。安月給だけどな」

妹『前にこっちに帰って来てから半月経つよ。そろそろこっちに帰って来てよ』

兄「うん、今週末帰るよ」

妹『本当? 待ってるから』

兄「ああ」

妹『じゃまたね』

兄「またな」

兄(妹の人見知りは治ったと思ってたんだけどなぁ。再発したか)

続きます。

===兄21歳・妹18歳
―――実家

父「なぁ、兄」

兄「ん?」

父「ここ最近毎週のように帰って来るじゃないか。俺も母さんも寂しくなくていいんだけど、電車賃大丈夫なのか?」

兄「大丈夫だよ。心配するなって」

兄「それとさ父さん母さん、競馬で大穴当てたんだよ。だから少しおすそわけ」

父「いいのか?」

母「まあ、月末だから助かるわ」

父・母「!?」

父「兄! いいのかこんなに!?」

母「だめよ。こんなに貰えないわ」

兄「いいっていいって」

父「3連単でも当てたのか?」

兄「まぁそんなところだよ」

母「へぇ、凄いわね」

父「こりゃ兄の方へ足を向けて寝られないな」

兄「また大げささよ」

父「でもありがとうな。大切に使わせてもうらうよ」

母「ありがとう兄」

兄「妹にもあげたいんだけど居るかな?」

母「庭に居ると思うけど」

―――庭

兄「妹ー、!」

兄「」スッ

男「…!、…」

妹「…? …」

兄(妹に彼氏ができたのか、中々のイケメンだな。妹にも春が来たか)

兄(僕が1人暮らしを始めるって言った時はうっすら涙を浮かべてたのに。人は変わるものだな)

兄(妹のブラコンも無事に矯正されたか。今は中々いい雰囲気だし、夜に渡そう)

―――夜、妹の部屋

兄「妹、ちょっといいか?」

妹「何?」

兄「競馬で大穴当ててさ。だからおすそわけだよ」

妹「え、本当に? うれしいなー」

妹「!?」

妹「お、お兄ちゃんいいの? こんなに貰って?」

兄「いいよ」

妹「ありがとう。何買おうかなー」

兄「彼氏にも何か買ってあげたら?」

妹「え? 私彼氏いないよ?」

兄「隠さなくても分かってるぞ」

妹「隠してないってば。本当にいないよ」

兄「じゃ、今だけそう言う事にしておこう」

妹「だから本当にいないってば」

兄「まぁいいよ。ところで今バイトはやってるの?」

妹「先週から仕出し弁当屋さんで働いてるんだけどきつくて」

兄「あんまり無理するなよ」

===兄22歳・妹19歳
―――家

父「ちょっと母さんとな、買い物に行ってくるよ」

母「留守番頼むわね。すぐ帰ってくるから」

妹「いいよ別に急がなくても」

父「そうはいかん。年頃の娘を1人きりにしとくのは何かと心配だからな」

妹「大丈夫よ。車で行くんでしょ? 安全運転で行ってよ」

父「わかっとる」

母「じゃ、行ってくるわね」

妹「行ってらっしゃい」

―――3時間後

妹(遅いなぁ。すぐ帰ってくるとか言ってもう3時間経つじゃない)

妹(携帯に電話しても繋がらないし、どうしちゃったんだろう?)

プルルルルルル…

妹(電話だ。はいはいっと)

妹「もしもし、はい、はいそうです」

妹「は? 救急病院? はい…」


妹「ええええっ!?」

―――兄の家

兄「ふぃー…」

兄「3連敗か、初めてだな3連敗なんて」

兄「こりゃ戦略を見直ないといけないかな」

兄「…」

兄(いい加減この事も家族にカミングアウトしなくちゃな)

ピリリリリリ…

兄(電話だ。妹か)

兄「よっ、元気か?」

妹『お兄ちゃん大変! お父さんとお母さんが!!』

兄「えええっ!?」ガタッ

実はこのSSは、半年ほど前に2ちゃんねるのVIPに投下した
“兄「妹が泣く夜は」”というSSを書き直したものなんです。
前作をご覧になった方はこの先既読感がある場面が続きますが、
新キャラの登場や新しい展開がありますので
引き続きお読みいただければ幸いです。

期待

期待

これから「妹が泣く夜は」をご覧になる方へ
効果音や♪の多さ、雑過ぎるエロ描写、兄と妹が途中から別人のようになってしまうなど
相当痛い内容になっていますので途中で読む気が失せてしまうかもしれません。
その点ご了承の上お読みください

>>58
>>59
ありがとうございます

―――実家近くの病院

伯母「あ! 兄君!」

兄「伯母さん! 母さんと父さんは!?」

伯母「…」

伯母「こっちへ来て」

期待してるぞ!

―――霊安室

兄「!!」

兄「…」

妹「ぐずっ…、ぐずっ…、ひっ…」

兄「一体…、どうして…」

伯母「お父さんとお母さんが車で買い物をに行った帰りにね、居眠り運転の大型ダンプと正面衝突しちゃって…」

兄(何てことだ…)

兄「妹…」

妹「あ、お、お兄ちゃああああんっ!!」

―――翌日、実家

兄「伯母さん、今時間ありますか?」

伯母「うん、あるけど?」

兄「僕の家から当面必要な物を持ってきたいんですけど、帰ってくるまでここに居てもらっていいですか?」

伯母「あ、いいわよ、行ってらっしゃい。妹ちゃんとここに居るから」

兄「すみません、助かります」

伯母「いいのよ。他にやる事はないし」

兄「早速行ってきます」

>>63
がんばります

兄「あ、妹、東京の家に行って荷物とか取りに行ってくるよ。7時位には戻れると思う」

妹「うん、気をつけてね。今お兄ちゃんに何かあったら…」

兄「心配しないで。超がつく程安全運転で行くから」

妹「本当に気を付けてね」

兄「ああ、気を付けるよ。じゃ、伯母さんが一緒にいてくれるから留守番頼むね」

妹「うん、行ってらっしゃい」

伯母「気を付けてね」

―――兄の家

兄「よしっと、これだけ持って行けばいいかな」

兄「あとは、お前か」

兄「ごめんね、寂しかったろ?」

兄「実家に行ったら皆を癒してやってくれよな。特に妹には重点的に頼むよ」

文鳥「ピッ、ピピッ、ピッ」

―――夜、実家

兄「ただいまー」

伯父「おかえり、兄君」

兄「あ、伯父さん。すみません仕事の帰りなのに」

伯父「なんてことないよ。それより色々大変だったな」

伯母「おかえりなさい。お父さんとお母さんが帰って来たわよ」

兄「帰ってきましたか…」

伯父「さっき葬儀社の人が運んで来てくれたんだよ」

兄「妹は?」

伯母「居間に居るわ。行ってあげて」

兄「はい」

―――居間、両親の亡骸の前

妹「ひっ…、ひっ…、ぐずっ」

兄「…」

妹「お父さん、お母さん…、起きてよぉ…」

兄「妹…」

妹「…」

兄「お父さん、お母さん、何で死んじゃったの?」ジワュ

妹「ぅわあああああん! お父さぁん! お母さぁああん!!」

伯父「…」ジワッ
伯母「ぐずっ」



兄「妹、大丈夫かい?」

妹「うん、もう大丈夫」

兄「じゃあさ、僕が飼っている文鳥と遊んでやってよ」

妹「文鳥?」

兄「ほら、かごから出ておいでー」

文鳥「ピッ、ピピピピッ」パタパタ

兄「手乗り文鳥だから、手や肩に乗るよ。ほら」

妹「わぁー、可愛いぃ!」パァァ

兄(お、早速の笑顔。ホッとしたな)

文鳥「ピピッ、ピッ、ピピピッ」

妹「手乗り文鳥と普通の文鳥は違うの?」

兄「同じだよ。ただ、手乗り文鳥は雛のうちから人間が餌を食べさせたり、時々一緒に遊んだりして育てていくんだ」

兄「そうすると大きくなっても人間を怖がらなくなるんだよ」

妹「へぇ」

伯母「優しいのねぇ兄君」

文鳥「ピッ、ピッ」



伯母「あ、兄君、ちょっといい?」

兄「はい」

伯母「しばらくは、なるべく妹ちゃんの傍にいてあげて」

兄「はい、そのつもりでいます」

伯母「あと、妹ちゃん彼氏がいないみたいなの」

兄「え? そうなんですか?」

伯母「だからお葬式が終わって落ち着いたら、彼氏の代わりになってあちこち連れてってあげた方がいいと思うわ」

伯母「その方が気分転換にもなるしね」

兄「そうですね。分かりました」

兄(あの男といい雰囲気だったのになぁ。別れちゃったのか)

―――伯父、伯母帰宅後

兄「妹」

妹「何?」

兄「今夜と明日は4人一緒に寝よう。明後日のお昼には父さんも母さんも火葬されちゃうからさ」

妹「うん、そうね。そうする」

兄「じゃ、あとで布団出すの手伝ってね」

続きます。

おつおつ
>>60ってこのスレの事ではなく「妹が泣く夜は」って過去スレのことだよね?

>>77
そうです。

―――就寝前

チーン

兄「父さん、母さん、おやすみなさい」

妹「お父さん…、お母さぁん…、ぐずっ」

兄「…」スッ

妹「…」

兄「僕が傍に居るから…」

妹「…」

兄「さ、寝よう…」

妹「うん…」



兄「4人一緒に寝るなんて何年振りだろう?」

妹「お兄ちゃんが中学校を卒業する時に行った家族旅行の時以来じゃないの?」

兄「そうだな。もうそんなに前か」

妹「2人が生きている間に、もう一度4人で一緒に寝たかったな…」

兄「…」

妹「お兄ちゃん、仕事はうまく行ってるの?」

兄「仕事!? ああ、仕事か。う、うん、うまくいってるよ」

妹「仕事はいつ頃まで休めるの?」

兄「休職届を出してあるから当分の間休めるよ」

妹「ふーん」

妹(仕事の事訊いたら何であんなにうろたえたんだろう?)

兄(妹を心配させないように咄嗟にああいうふうに言っちゃったけど、落ち着いたら色々話すか)



兄「…」

妹「…」

兄「妹、起きてる?」

妹「うん、起きてる」

兄「僕の布団に入らないか?」

妹「あ、うん」

妹「」モソモソ

妹(優しいなぁ、お兄ちゃん)

妹(お兄ちゃんが傍にいてくれれば、どんなに辛い事があっても乗り越えられるような気がする)

妹(逆にお兄ちゃんがいなかったり、お兄ちゃんも死んじゃったら…、私は今頃どうなっていただろう?)

妹「…」

妹「お兄ちゃんは…、死なないでね」

兄「心配しないで。僕は死なないよ」

―――葬儀から2週間後、実家

兄「明日、一緒にどこかへ出かけないか? 家に閉じこもってばかりってのもよくないし、気分転換にもなるからさ」

妹「そうだね、行こうよ」

兄「どこへ行きたい?」

妹「うーん、どこか遠くのショッピングモールがいいな」

兄「遠くの?」

妹「お父さんやお母さんと行った事がある所は、いろいろ思い出しちゃいそうで」

兄「そうだね…。よし、明日は隣の県のショッピングモールに行こう」

妹「うん」

兄「何ならさ、妹の友達とかも誘ったら?」

妹「ううん、平日の昼間だし、多分誰も来れないと思う」

兄「そうか。それとさ、そろそろ別々に寝る?」

妹「…もう暫く一緒がいい」

兄「わかったよ。一緒に寝よう」

―――翌日、隣の県のショッピングモール

兄「今日は僕が何でも買ってあげるから」

妹「え? いいの?」

兄「ああもちろん。洋服からアクセサリーから何でも来い、だよ」

妹「それは嬉しいけど、お金大丈夫なの?」

兄「心配するなって」

妹「じゃお言葉に甘えて洋服から買おうかな」



妹「はー、色々買ったなぁ。こんなに買ってくれてありがとうお兄ちゃん」

兄「いや、何てことないよ」

妹「そこのベンチで休もうよ」

兄「あ、じゃ飲み物とか買ってくるよ」

妹「私が買ってくる。何買ってこようか?」

兄「そうだな、たこ焼きとお茶買ってきて」

妹「了解」

兄(妹のあんなに嬉しそうな顔を見たの、久しぶりだな)

兄(父さんと母さんが同時に死んだショックもさほど引きずってないみたいだし、これからも週1くらいであちこち連れて行くか)

兄(将来は結婚して僕の元を去っていくわけだから、それまではキッチリ面倒見なくちゃな)

妹「はーい、お待たせ―」

兄「お、うまそうだなー」



妹「お兄ちゃん…」

兄「ん?」

妹「私達、これからどうなるの?」

兄「当面は2人で暮らそう」

兄「妹が結婚するまで僕が責任持って面倒見るから心配するな」ポンッ

妹「ありがとうお兄ちゃん」

兄「何言ってる。家族なんだからそう言う事でお礼を言うのは無し、ね」

妹(『私が結婚するまで』かぁ。ずっと私の面倒見てよ、なーんてね…)

―――帰りの自動車内

妹「さっき『私が結婚するまで面倒みる』って言っていたけど、もしも私がずっと結婚しなかったらどうなるの?」

兄「結婚できるよ。こんなに可愛くてナイスバディな女を世の男が放っておくわけ無いだろ?」

妹「そんなの分からないじゃん」

兄「うーん…、そうなったらずっと2人暮らしってことになるのかなぁ」

妹(私、その方がいいよ)

妹「お兄ちゃんは将来どうするつもりなの?」

兄「さあねぇ、どうしようかな。とりあえず父さんと母さんの事が落ち着いたら考えるよ」

妹「ふーん…」

兄「妹にいいお相手が見つかるように僕も協力するから」

妹(余計なことしないでよ)

―――四十九日法要後

兄「あれ!? 父さん母さん…?」

父「お、兄、元気だったか?」

母「私達の遺品を整理しに来たのよ」

母「だけど兄と妹で協力して遺品を整理してくれたのね。助かったわ。ありがとう」

父「これなら安心して天国へ行けるよ」

兄「そんな、2人共天国なんか行かないでまた4人で暮らそうよ!」

父「そうもいかんのだよ」

母「大丈夫よ。あなた達ならちゃんとやっていけるから」

兄「待って! 父さん母さん!」

兄「」ガバッ

妹「Zzz…」

兄「夢か…」

兄「」ジワッ

兄(父さん母さん、本当に死んじゃったんだね…)ポロッ

兄「…」

兄(喉が渇いたな)

妹「ん…」

妹「お兄ちゃんどこ行くの!?」

兄「ちょっと喉が渇いてさ、一緒に水飲むか?」

妹「あ、うん」

―――ダイニング

兄「さっき父さんと母さんが僕の夢に出て来たよ」

妹「え? どんな夢だったの?」

兄「遺品の整理をするために天国から戻って来るんだけど、なぜか僕と妹が遺品の整理をした後でさ。父さんと母さんは安心しちゃって天国に戻ろうとするんだよ」

兄「僕は留めるんだけどね。あいにくそこで目が覚めちゃったけど」

妹「お父さんとお母さんの部屋はずっとそのままにしてあるのにね」

兄「本当に不思議な夢だったな」

妹「だけどさお兄ちゃん…」

兄「ん?」

妹「どうしてお父さんと、お母さん死んじゃったの?」ジワッ

兄(それはこっちが訊きたいよ…)

妹「何で? どうして…? ひっ…」ポロッ

兄「神様は意地悪だよな。せめてどっちかだけでも生かしておいてくれたっていいと思わない?」

妹「ぐずっ」コク

―――四十九日法要から2週間後、実家

妹「さー、文鳥ちゃん鳥かごから出ておいでー」

文鳥「ピッ、ピピピピピッ、ピッ」パタパタ

妹「えへへ。あ、そうだ、このパン食べる?」

文鳥「ピッ、ピピッ」

妹「あはっ、そんなに慌てて食べなくてもまたたくさんあるよ」

文鳥「ピッ」パクパク

妹「…」

妹「ねぇ文鳥ちゃん、実の兄を好きになっちゃうなんて、変だよね…?」

妹「はぁー…」

妹「…」


文鳥「私ハ有リダト思ウヨ、子供ヲ作ラナケレバネ。オ兄サンハ1人ノ男ダシ、ソレニ恋愛ナンテ、人ソレゾレデショ?」


妹「え!?」

妹「文鳥ちゃん!?」ガバッ

兄「文鳥ちゃんなら鳥かごの中に入れたけど?」

妹「あれ? お兄ちゃんいつ帰って来てたの?」

兄「10分くらい前かな」

妹「…やだ、いつの間に寝ちゃったんだろう?」

兄「僕が帰ってきたらよく寝てたよ」

妹「え? そうだった?」

兄「ああ。それとさ、昼寝する時は文鳥ちゃんを鳥かごに入れてから寝てね」

妹「あ、ごめんね」

兄「まぁいいけど、次から気を付けてね」

妹「うん」

妹(『恋愛なんて人それぞれ』か)

妹(世の中には何組もの兄妹がいるんだから、1組くらい実の兄に恋しちゃう妹がいてもいいのかな)

妹(それにしても、さっき私の夢の中に出て来たの本当に文鳥ちゃんだったの?)

文鳥「ピッ、ピピッ、ピッ」

―――両親の葬儀から4カ月後

兄「妹、僕たちの今後の事なんだけどさ」

妹「うん」

兄「僕は、妹と東京で暮らしたいと思ってるんだ」

兄「この家は父さんと母さんが建てた家で、父さんや母さんとの思い出がいっぱいあるけど、それがいつまでも悲しみを引きずっちゃうような気がして」

妹「うん。私も同じことを考えていたの。この家にいると何だか悲しみに押し潰されそうになるっていうか、決してこの家が嫌いなわけじゃないんだけどね」

兄「だよな。父さんと母さんには申し訳ないけど、前向きに生きるためにはしょうがないよな」

妹「そうよね。東京で暮らそうよ」

兄「ああ、そうしよう」

兄「ところでさ、実は引っ越したんだよね。最初に住んでたアパートからマンションに」

妹「え? そうなの?」

兄「話そうと思ったら急に父さんと母さんが死んじゃったから、落ち着いたら妹に話そうと思って」

兄「明日僕のマンションに行かないか? 時間があったらディズニーランドに行こう」

妹「うん、いいけど」

―――翌日、兄の家

妹「」

妹(何この素敵なマンション…)

兄「どうしたの? つっ立ってないで入ったら?」

妹「お兄ちゃん! 本当にここお兄ちゃんの家なの!?」

兄「そうだよ? 何なら賃貸契約書見せようか?」

妹「あ、いや、別に」

兄「疲れただろ? 休憩しよう」

妹「え? うん」



兄「リビングにダイニングにキッチンと…、ここが風呂とトイレね」

兄「妹はこの部屋を使ってくれ」カチャ

妹「お兄ちゃんの部屋は?」

兄「隣だよ」

妹「ねぇ、ひとつ聞いていい?」

兄「いいけど」

妹「お兄ちゃんは『僕が行ってる会社は安月給だ』ってよく嘆いてたじゃない? しかもずっと休職してて。なのに何でこんなマンションに住んでるの?」

兄「実は、その会社辞めちゃったんだよ」

妹「え? どういう事!?」

兄「詳しくはウェブ、じゃなくてリビングで」

―――リビング

兄「ま、座ってよ」

妹「うん」

兄「妹、FX取引って聞いたことある?」

妹「さぁ? 初めて聞くわ」

兄「ネットを使って、専用の口座にある自分の資金を外国のお金に換えたり」

兄「それをまた日本のお金に換えたりしてお金を増やしていく、いわゆる資産運用のツールのひとつなんだ」

妹「うん」

兄「それを二十歳になってやり始めたら、どういう訳か運用に成功し続けて、まぁ時には損をすることもあるけど、自分の資金が増えていったんだ」

妹「へぇ…」

兄「それで今では、FX取引の儲けだけで生活してるんだよ」

妹「本当に!? あ、そう言えばいつだったか『競馬で大穴当てた』って言って皆にお金くれた事があったね? それってもしかして」

兄「ああ、本当はFX取引で大儲けしたからなんだよ」

妹「そうだったんだ。私にも10万もくれたからびっくりしたよあの時は」

兄「それで、お金にも余裕ができたからこのマンションに引っ越したってわけさ」

妹「ふーん。でもお兄ちゃん、何でこの事を私たちに黙っていたの?」

兄「ずっと黙っているつもりは無かったんだけどね」

兄「父さんが僕たちによく『お金は額に汗して稼ぐものだ』って言ってただろ?」

妹「うん、言ってたね」

兄「だけどFX取引は椅子に座っパソコンの前でマウスを動かすだけなんだ」

兄「だからお父さんの言いつけに背いている罪悪感があって、中々言い出せなかったんだよ」

兄「だけどさすがに、そろそろカミングアウトしようと思っていた矢先に死んじゃって……」ジワッ

兄「稼いだお金で親孝行をしようと思っていた矢先にさ……ぐずっ」

妹「」スッ

兄「こんなことなら、もっと早くカミングアウトすればよかったよ…、ひっ…、ひっ」

妹「お兄ちゃん…」ジワッ

兄「ぐずっ」



兄「父さんと母さんが死んだ時、3回連続で損失を出したんだ。3回連続は初めてだったんだよ」

妹「うん」

兄「今にして思えば、虫の知らせだったのかもしれないね」

兄「妹」

妹「ん? 何?」

兄「僕は今FX取引の稼ぎで十分暮らしていけるから働いてないんだ。だから平日の昼間も家にいるからウザいって感じるかもしれない」

妹「ううん全然! 全然ウザくないよ」

兄「彼氏や恋人だったらよかったね」

妹「そんなことない、そんなことないってば」

妹「お兄ちゃんがいつも傍に居るから、寂しい思いをしなくて済むって思うと嬉しいけど」

兄「そうかな」

妹(お兄ちゃんは家で稼いで私は家事をやって、いつもお兄ちゃんが傍に居る。ここで2人でずっと暮らせたらいいな)

兄「遅くなっちゃったけどディズニーランドに行くか?」

妹「ううん、ここに引っ越して落ち着いてからでいいよ」

―――1か月後、伯父・伯母の家

伯父「で、話ってなんだい兄君?」

兄「実は僕たち東京で暮らす事にしたんです」

伯母「2人で大丈夫なの?」

兄「はい、ご心配なく」

伯父「兄君達の家はどうするの? 2人が出て行ったら空き家になっちゃうだろ?」

兄「しばらくそのままにして、ゆくゆくは売っちゃおうと思っているんですよ」

伯母「え? 思い出の場所なのに?」

妹「その思い出の場所が、私達にとっては辛い場所でもあるんです。いつまでも悲しみを引きずっちゃう様な気がして」

伯母「あ、そうよね」

兄「僕達が東京へ引っ越してから売るまでの間、伯父さんと伯母さんに家の管理をお願いできたらと思いまして」

伯父「管理ねぇ。あ、そうだ。もし2人が良ければだけど、俺の息子夫婦に譲ってくれないかな? 今丁度手頃な一戸建てを探しているところなんだよ」

伯母「あ、そうだったわ。どう? 兄君、妹ちゃん?」

兄「あ、いいですよ、いいか妹?」

妹「もちろんよ」

兄「じゃ、そうしましょう」

===兄23歳・妹20歳
―――兄妹は東京で2人暮らしを始めます

妹「私達の実家、無事に売れてよかったね」

兄「探し求めていた理想の一戸建だって息子夫婦さん達喜んでたね」

妹「時々は遊びに来てって言ってたけど、行かないでしょ?」

兄「今はね。行く気になったら行こうよ」

兄「たまには外で食事しようか」

妹「うん、いいよ」

兄「少し歩いた所にカフェがあってね、以前グルメ雑誌に紹介されていたんだけど、兄妹で切り盛りしているんだって」

妹「へぇ、いいね。行こうよ」

―――路地

兄友「あっ、兄じゃないか」
(兄が11歳の時に出て来た兄友とは別人です)

兄「お、元気か? なんか久しぶりだね」

兄友「両親の事は大変だったなぁ。だけどあの頃は随分落ち込んでいたのに今は表情も明るくなってるぞ」

兄「そうかな。でもまだまだ寂しいよ」

兄友「時間が解決してくれるさ。隣に居るのは?」

兄「妹だよ。色々あったから東京で一緒に暮らす事にしたんだよ」

妹「初めまして」

兄友「あ、いえ、こちらこそ」

兄友(可愛いなぁ、A○Bの人気メンバーと遜色無いじゃないか。それにスタイルも抜群だし。こんな女性と一緒に暮らせるなんて羨ましい)

兄「そうだ、僕たちこれから食事に行くんだけど一緒に行かないか?」

妹「」ツネリッ

兄「?」

兄友「一緒に食べたいんだけど俺これから姉貴とカラオケなんだよ。バカ姉貴に一緒にカラオケ行く約束させられちゃってさ」

兄友姉「だーれがバカ姉貴だって?」

兄友「い、いや、最近姉貴はバカに綺麗になったなって話をしてたんだよ」

兄友姉「ちゃんと聞こえたから。悪かったねバカで」

兄友「紹介するよ。俺の姉だ」

兄友姉「聞いてないし」

兄友「初めまして。うちのアホ弟がお世話になってます」

兄友「姉貴、俺の友達の兄と兄の妹さんだよ」

兄「初めまして。こちらこそ兄友君には何かとお世話になってるんですよ」

妹「初めまして」

兄友姉「初めまして」

兄友姉「弟、そろそろ行かないと予約した時間に間に合わないよ」

兄友「あ、そうだな。行くか」

兄友「引き留めといて悪いけど、カラオケボックスを予約しててさ。今度皆で食事しようぜ」

兄「ああ、またな」

兄友姉「じゃね妹ちゃん」

妹「失礼します」


兄(そうだ、妹の彼氏に兄友はどうかな)

―――カフェ

マスター「いらっしゃい」
マスター妹「いらっしゃいませー」

妹「なかなかいい雰囲気ね」

兄「そうだな。何となくレトロな雰囲気がいいね」


マスター妹「いらっしゃいませ。ご注文お決まりになりましたらお声をおかけください」

兄「あ、はい」

妹「お兄ちゃんもこの店初めてなの?」

兄「初めてだよ」

兄「なぁ妹、さっきお尻をつねったのは?」

妹「ううん、何でもないの(2人だけで食事がしたかったから)」



マスター妹「お待たせしました。ミックスサンドと、ナポリタンと、オレンジジュースになります」

兄「あ、どうも」

妹「わぁ、おいしそう」

マスター妹「あのー、失礼ですが、お二人は御兄妹でいらっしゃいますか?」

兄「はい、そうですけど?」

マスター妹「やっぱりそうだったんですね」

マスター妹「どことなくお顔も似てらっしゃいますし、さっき『お兄ちゃんもこの店初めて』とか妹さんが仰ってましたので、もしかしたらと思って」

妹「兄に『近くに兄妹でやっているカフェがあるから行ってみよう』って言われて来てみたんですよ」

マスター妹「まぁ、そうでしたか」

兄「以前は一人暮らしだったんですけど、事情があって妹と暮らす事になりまして」

マスター妹「あら、私達と似てますね。実は私も一人暮らしの兄の所へ転がり込んで今に至っているんですよ」

妹「本当だ。似てますね」

マスター「出前頼むー」

マスター妹「あ、はーい」

マスター妹「ちょっとごめんなさいね。ごゆっくりどうぞ」

妹「はい」

兄「僕たちといろいろ似てるね本当に」

妹「ねぇ、これからも時々来ようよこのお店」

兄「そうだね。時々来てみるか」

―――帰り道

兄、妹「ごちそうさまでしたー」

マスター「ありがとうございまーす」
マスター妹「ありがとうございましたー。またよろしくお願いしますー」


兄「ちょっと遠回りになるけどさ、運河沿いに遊歩道があってね、そこ歩いて行こう。なかなか夜景がきれいなんだ」

妹「いいよ」

妹「割ときれいな夜景ね。東京の運河沿いだしあまり期待していなかったんだけど」

兄「な? そうだろ?」

妹「うん」

妹(綺麗な夜景が見える所をお兄ちゃんと2人きりで歩いて、何だかいい雰囲気…)

妹(お兄ちゃん、私の彼氏にくれないかなぁ…)

兄「妹」

妹「ひゃい!?」

妹「///」

兄「兄友とお付き合いしてみないか?」

>>122の訂正です
5行目 私の彼氏にくれないかなぁ→私の彼氏になってくれないかなぁ

妹「え、うーん、タイプじゃないなぁ」

兄「そうか? イケメンだしお似合いだと思うけど」

妹「確かにイケメンだけど、なんか違うのよねぇ」

兄「いい人だよ。向上心があってスポーツ万能で」

妹「でも今回はパス。兄友さんには申し訳ないけど」

兄「まぁ妹がそう言うなら無理に勧めないけど」

妹(一番のタイプはお兄ちゃんだよ…)

続きます

―――翌日、妹の部屋

妹(お兄ちゃんに対するこの気持ち、もうどうにもならないよ。昨日の遊歩道のいい雰囲気が会心の一撃だったなぁ)

妹(でも実の兄を好きになっちゃうなんて異常なことだし、皆からも気持ち悪がられるだろうなぁ)

妹(私はどうすればいいんだろう…。誰か助けてぇ!)


妹(お兄ちゃん…)

妹「はぁー…」

妹(トイレに行って来よう)

―――リビング

文鳥「ピピッ、ピッ」

妹「…」

妹「ねぇ文鳥ちゃん、お兄ちゃんに対するこの気持ち、どうしたらいいと思う?」

文鳥「ピッ」

妹「はぁー…」

妹(ソファーに座ってテレビでも見よう…)

「カキーン…ウッター! オオキイゾ ハイルカ? ハイッター! ホームラ」フッ

妹(つまんないの…)

妹「…」

文鳥「『世間ノ目ヤ常識』ト『オ兄サントノ恋愛』、両方手ニ入レヨウトスルカラ迷ウンダヨ。 ドッチカヲ捨テタラ?」


妹「ん!?」ガバッ

妹「文鳥ちゃん!?」

兄「文鳥がどうかしたか?」

妹「あ、別に」

兄「それより、ソファーで寝るならタオルケットとかかけないと風邪ひくよ。ほら」

妹「あ、もう起きるから」

妹(…やだ、またいつのまにか寝ちゃった)

妹(『どっちかを捨てたら』か。確かに2つ共取ろうとするから迷うのよね)

妹(だとしたら捨てるほうは決まっている…)

妹(ありがとう文鳥ちゃん。また私の夢に出てきてアドバイスくれて。もう迷わないから)

文鳥「ピッ、ピッ、ピッ」

―――仏壇の前

妹(お父さん、お母さん、私はこれから、お兄ちゃんに私の想いを伝えます)

妹(本来なら私が他の男性と結婚して、子供ができれば一番喜んでくれるんでしょうけど)

妹(でも私がお兄ちゃん以外の男性を好きになるなんて絶対ないと思う。そしてもう、この想いを押さえるのは限界)

妹(実の兄を愛してしまうのは世間からは白い目で見られてしまうけど、それでも私は構わない)

妹(お父さん、お母さん、親不孝者になっちゃってごめんなさい)

妹(『いいのよ、あなた達に散々辛い思いさせちゃったんだから、好きになさい』とか、言ってもらえたらいいな…)


兄(妹、さっきからずっと仏壇の前に居るけど、どうしたんだ?)

妹(お兄ちゃんは優しいから、受け入れてくれるかな。でもこんな事、前代未聞だし)

妹(もし、私が告ってお兄ちゃんに酷い振られ方をしたり、態度が豹変してもうどうしようも無くなったら、お父さんとお母さんの元へ行かせください)ジワッ

妹(お兄ちゃんへ想いを伝えて、受け入れてもらえれば天国、突っぱねられたら地獄)

妹(一世一代の大博打ね。でももう、後戻りはしない)

妹「」スック

妹「よぉし、やったるわい!」
兄「!?」ガタッ

妹「あ」

妹「ねぇ、昨日歩いた遊歩道に散歩に行こうよ」

兄「ん? いいよ」

ピリリリリ…

兄「あ、電話だ。ちょっと待ってね」

兄「はい」

兄友『あ、俺だけど』

兄「よっ、どうした?」

兄友『実は兄に頼みがあってな』

兄「ん、何だ?」

兄友『その…、妹さん紹介してくれないか?』

兄「え? うーん…(参ったな、昨日『タイプじゃない』って言ってたよな)」

兄友『頼むよ、もう一目惚れでさ。妹さんのこと思うと何も手につかないんだよ』

兄「ちょっと待っててくれないか? 切らずにそのままな」

兄「今兄友から電話でさ、妹を紹介してくれって言われちゃったんだよ。だから付き合ってみないか?」

妹「え」

兄「誠実なところもあるし、いい人だよ」

兄「タイプじゃないって言ってたけど、試しに兄友と2人で食事してみたら?」

兄「それでダメだなって思ったらすぐ振っちゃえばいいじゃん」

妹「昨日言ったじゃない。兄友さんはパスって」

妹「ちょっとスマホ貸して」

兄「あ、ああ」

妹「電話代わりました。妹です。昨日はどうも」

兄友『あ、ど、どうも』

妹「兄から話は聞きました。申し訳ないんですけど、私、他に好きな人がいるんです」

兄(そうだったのか。どうりでパスするわけだ)

兄友『そうなんですか…』ガックリ

妹「ごめんなさい、兄友さんの想いに応えられなくて」

兄友『いえ…、どうかその人とお幸せに』

妹「はい。ありがとうございます。兄と代わりますか?」

兄友『いえ、大丈夫です。機会があったらお会いしましょう』

妹「そうですね。では」

兄「…」

妹「…」

妹「ごめんね。お兄ちゃんの友達なのに」

兄「気にするなって。はっきり言った方がよかったさ。曖昧な返事をしてあいつの気持ちを中途半端にしておくよりはいいと思うよ」

妹「この事でお兄ちゃんと兄友さんとの仲がギクシャクしなければいいけど」

兄「大丈夫だよ。心配するな。さ、散歩に行こう」

―――遊歩道

妹「…」

兄(今日はいつもと様子が違うな。黙ったままだし。兄友を振った罪悪感からかな。それとも仏壇の前にずっと座っていた事と関係があるのかな)

兄(あと、妹が好きな人って誰だろう? その人と両想いになってうまくいけばいいなぁ)

妹(私の想い受けとめてくれればいいけど)

妹「お兄ちゃん」

兄「ん?(やっと喋った)」

妹「そこで少し休もうよ」

兄「ああ」

兄「夕焼けがきれいだね」

妹(どういう風に言えばいいんだろう? 自分の気持ちをそのまま伝えればいいのかな)

兄「好きな人、いたんだね」

妹「う、うん。その人にこれから気持ちをを伝えるの」

兄「今から?」

妹「ねぇ、お兄ちゃん」ピトッ

兄「?」

妹「このまま、ずっと2人で暮らそうよ」

兄「え?」

妹「私今、とっても幸せよ。今までにない位。そりゃ、お父さんとお母さんが死んだのは凄く悲しくて辛かったけど」

妹「お兄ちゃんと2人で暮らせて、お兄ちゃんと一日中一緒だし、この幸せがずっと続けばいいなって思っているの」

妹「だから、ずっとお兄ちゃんの傍に居させてよ」

兄「…」

兄「それって、兄妹として一緒に暮らすって言う事なのかな? 例えばお互いに彼氏彼女ができても」

妹「ううん、そうじゃないの。お兄ちゃんに彼女ができたら、私は耐えられないよ」

妹「だからなんていうのかな、お兄ちゃんとその…、こっ、恋人になれたらいいなっていうか…///」

兄「妹…///」

妹「…」

兄「…」

妹「だめ?」

兄「まいったな、妹が好きな人って僕だったんだね。こりゃ想定外だったな(兄友に申し訳ないな)」

妹「私が兄友さんとお付き合いするのを断ったのはね、タイプじゃないのもあるんだけど」

妹「一番大きな理由は、男性とお付き合いした履歴もこの体も純潔のままお兄ちゃんの元へ行きかったからなんだ」

兄「」

妹「…」

兄「…」

兄「僕なんかでいいのか? 実の兄だよ?」

妹「もちろんよ。むしろお兄ちゃんじゃなきゃやだ」

兄「人に知られたら白い目で見られるよ?」

妹「私は、世間の目や常識よりお兄ちゃんの方がずっと大切だから」

兄「そう…、か」

妹「覚悟は、出来てるもん」

兄「まぁ、それでも妹が幸せなら、それをわざわざ壊す事もないよな」

兄「僕でよければ。よろしく頼むよ」ニコ

妹「いいに決まっているでしょ!」

兄「…」

妹「…」

兄「恋人になったのなら、最初にする事ってなんだろう?」

妹「うーんとね、多分、『好きだよ』って言うのと、その、き、キスをするんじゃないのかなぁ///」

兄「だよな///」

妹「うん」

兄「…」

妹「…」

兄「その、何だ、好きだよ、妹///」

妹「私も、お兄ちゃんが…、好き///」


チュッ

通行人(おーおー、見せつけてくれちゃって)

兄「ふふっ///」
妹「えへへ///」

兄「何だか変な感じだね。兄妹なのに『好き』って言ったり、キスしちゃうなんて」

妹「これからは時々するんだから慣れないと」

兄「そうだね」

兄「こんなに綺麗な女性の彼氏になれて幸せだよ」

妹「私もこんなに優しい男性の彼女になれて幸せ」ジワッ

兄「ん? 泣いてるのか?」

妹「だって、もし振られても振られた相手と一緒に暮らさなくちゃいけないんだよ」

妹「こんなに辛いことはないよ。だから内心ビクビクだったんだ。だから安心したら涙が出ちゃって」

兄「妹、ずっと一緒にいようね」

妹「うん、ずっと一緒だよ」



妹(ありがとう、文鳥ちゃん)



妹「ねぇ、とても訊きづらいこと訊くけど」

兄「別にいいよ。遠慮しないで何でも訊いて」

妹「あの、さ…、お兄ちゃんの女性のお付き合い履歴教えてよ」

兄「えーっとねぇ、何人いたかなぁ。ちょっと数えてみるね」

妹(えっ!? 私が知らない間にそんなにたくさん!?)

兄「1、…妹は1人目だな。さっきのキスも初めてだったしね」
妹「」ズッコケ

兄「びっくりした?」

妹「もうっ」

妹「でも本当なの?」

兄「本当だよ。僕みたいな冴えない男に早々彼女ができるわけ無いだろ?」

妹「そんなことない。お兄ちゃんは冴えない男じゃないよ。だけど本当? 信じるよ?」

兄「だから信じてよ。って言っても証明できないけどさ。妹が初めての彼女だよ」

兄「まぁぶっちゃけ恋人未満みたいな微妙な関係の女はいたけどね。1人だけ」

兄「同じ会社に勤めていた人でね。その人が転勤になっちゃって自然消滅しちゃったけど。もちろんその女とはキスはした事ないよ」

妹「ふーん、そうなんだ」

兄「さっき『男性とお付き合いした履歴は純潔』って言っていたけど、僕が実家に帰省していた時に来てたあの男は?」

妹「あの人はガーデニングの事を教わるのに時々来てもらっていただけよ。それにあの人、ゲイだし」

兄「ゲイ…」

妹「うん」

兄「それにしても、こんなに可愛いのに彼氏が今までいないなんてなぁ」

妹「ね、何でだろ?(お兄ちゃんがずっと心の彼氏だったからなんだよ)」



兄「そろそろ帰ろうか?」

妹「あ、待って。もう一回」

兄「いいよ」

チュッ

兄「」ニコッ
妹「えへへ」

兄「さ、行こうか」

妹「うん」

兄「手繋いで帰ろうよ」

妹「あ、そうだね」

兄「散歩に行く前にずっと仏壇の前にいたけど、どうかしたのか?」

妹「お父さんとお母さんに謝ってたの。これからお兄ちゃんに想いを伝えて、受け入れられたら恋愛しちゃうけどごめんなさいってね」

兄「あ、そうか。僕も父さんと母さんに謝らないとな」

妹「私ももう一回謝るから、一緒に謝ろうよ」

兄「一緒にね」

妹「帰る前にスーパーに買い物に行きたいんだけどいいかな?」

兄「いいよ。行こう」

―――スーパーマーケット

店員「若奥さん、今日は魚が安いよー」

妹「若奥さんだって、やっぱり私達夫婦に見えるのかな?」

兄「そりゃ2人で買い物カート押してれば見えるよ」

妹「ふふっ、魚買っちゃおっと」

兄(煽てに乗っちゃって)

兄「悪いけどちょっとトイレに行ってくるね」

妹「この辺でうろうろしてるから」

―――トイレ前

兄「あ」

女「あら」

兄「…何というか、奇遇だね」

女「だね。近くに住んでるの?」

兄「まぁ近いっていえば近いかな」

女「元気だった? 会社辞めちゃったのね」

兄「まあね。こっちの営業所に戻ってたんだね」

女「戻してもらったっていうのが正しいかな。人事の人にお願いしたの」

兄「そうなんだ。受け入れてもらってよかったね」

妹(お兄ちゃん遅いなぁ。いつもならすぐ戻るのに。ちょっと行ってみよう)

妹(あれ? あの女の人誰? なんだか知り合いのように話してるけど)

妹(嫌よ、やめて! 私のお兄ちゃんを横取りしないで! 恋人になったばかりなんだから!)タタタタッ

女「ねぇ、今暇だったら私t」
妹「お兄ちゃん! この女の人誰?」

兄「ん? ああ、さっき遊歩道でちょっと話にでた女さんだよ」

妹(え? この人が?)

女「この人は? 妹さん?」

兄「う、いや、一緒に暮らしてる彼女だよ。幼馴染でもあるけど。2人で買い物に来てたんだ」

女「え? そうなの…」

妹(お兄ちゃんナイス!)

兄「じゃ、僕たち買い物の途中でさ、悪いけどちょっと急いでるから」

女「あ、ごめんね引き止めちゃって」

女(はぁ…)

妹「『一緒に暮らしてる彼女だ』って紹介してくれんだね。嬉しかったよ」

兄「だって本当の事じゃないか。だけど最後はちょっと冷たかったかな」

妹「そんなことないよ」

妹「夕食のおかずは焼き魚と冷奴でいい?」

兄「いいよ、楽しみだな」

―――帰宅後、仏壇の前

チーン

兄「父さん、母さん、僕と妹は許されない恋愛をします。2人の希望には答えられなかったけど」

兄「その代りに2人で仲良く真面目に精一杯生きていくから、どうか許してください」

妹「お父さん、お母さん、私達を許してくださいね」

―――翌日、兄の部屋

妹「儲かってる?」

兄「トントンだよ。今日は相場が動かないからダメだな。一旦終わりにしよう」

兄「妹、家事はだいたい終わった?」

妹「うん、終わったよ」

兄「ちょっと座って」

兄「あの…、何で僕の膝の上に対面座位で座るの?」

妹「いいでしょ? 恋人同士になったんだから///」

兄(まぁいいか)

妹「座ったけどどうするの?」

兄「こんなこと訊かなくてもいい事なんだけど、なんか気になっちゃってね」

兄「答えが分からなかったり答えたくなければ答えなくていいからね。妹にとって嫌な質問だったら思いっきりぶん殴ってもいいから」

妹(どんな事訊くんだろう?)

兄「昨日、妹が僕とずっと一緒に居たいって言ったのは、父さんと母さんが亡くなって寂しいからなの? それとも恋愛感情から?」

妹「うーん…、多分両方だと思う。私は小さいころからずっとお兄ちゃんを慕ってきたでしょ?」

妹「お父さんとお母さんを突然失って物凄く悲しい時にね、小さいころからずっと慕ってる人がずっと傍にいてくれて」

妹「もう十分よって言うくらい優しくされれば血の繋がった相手でも心が奪われると思うよ」

妹「心を奪われた相手なら、ずっと傍に居たいって思うのは当然の事でしょ?」

妹「でもね、本当言うと昨日告った時は自信が無かったんだ」

妹「恋愛感情なんか無くてただ寂しいだけでお兄ちゃんとずっと一緒に居たいって思ってるんじゃないかって」

妹「だけど、昨日お兄ちゃんと女さんが話してるのを見た時、お兄ちゃんが私から離れて行っちゃうって思って凄く焦ったの」

兄「そうだったんだ」

妹「普通の兄妹なら、こんなに焦ることなんかないと思うのよね。だから確信したわ。私は本当にお兄ちゃんが1人の男性として好きなんだなって」

兄「人は寂しさがあってからこそ恋愛ができるのかもね」

妹「お兄ちゃんが私の気持ちを受け入れてくれたのは?」

兄「妹と同じだよ、悲しかった時に妹は傍に居てくれたからね。ただ一つ違うのは妹の幸せを願ったってのもあるんだ」

兄「妹が『僕とずっと一緒に居るの幸せだから』って言ってたからね。妹が幸せなら僕も幸せだよ」

兄「両親を失って実の兄妹で愛し合っちゃって、他人から見れば不幸の塊のように思えるだろうけどね」

妹「面白いね。他の人は不幸だって思っても当の本人は幸せだなんて」

兄「恋愛は2人が幸せならそれでいいのさ、って僕は思うよ」

前作同様、兄妹は男女の仲になります。苦手な方は
この先閲覧をお控えください
この先小エロネタありますがエロシーンそのものは有りません

―――夕食後

兄(恋人になったんだし最後までいっていいのかな? いいんだよね)

兄(最初妹から告られたんだから今度は僕から誘うべきだよな)

兄「妹」

妹「ん?」

兄「僕たち恋人同士になったでしょ?」

妹「うん」

兄「だからどうだろう? この後、さ///」

妹「///」

兄「…」

妹「うん、いいよ」

兄「…」

妹「…」

兄「誘った僕が言うのもなんだけど、戻れなくなるよ?」

妹「うん、解ってる。もうとっくに戻れない所まで来てると思うけど?」

兄「まぁ、そうだな」

妹「お兄ちゃん」

兄「何だい?」

妹「その…、一緒に入らない? お風呂///」

兄「そうだね、久しぶりに一緒に入るか///」

―――風呂場

兄(ふぅ…)

兄(いつもは一番リラックスできる場所なのに、やっぱり今日は落ち着かないなぁ)

兄「…」

カチャ

兄「ぶっ!」

妹「どうしたの?///」

兄「いやー、体にタオル巻いてくるかと思っていたから///」

兄(胸もお尻もあんなに大きかったのか? それなのにウエストが細いな)

妹「あんまり見ないでよ…///」

兄「綺麗な体だね///」



兄「すっかりおとなの体になっちゃって」

妹「もぅ」パシッ
兄「いてっ」

妹「そう言うお兄ちゃんもね」

兄「まぁね」

兄「一緒に入るなんて何年振りだろう?」

妹「確か私が小学校4,5年の頃だったかな、一緒に入らなくなったの。だから10年位前よ」

兄「そんなになるか」

兄「…」

妹「…」

妹「お兄ちゃん」

兄「ん?」

妹「ブラとパンティで覆っている部分はね、中学生になってからは男の人には誰にも見られた事も触られたこともないの」

妹「女性にもなるべく見られたり触られないようにして来たのよ」

兄「そうなんだ」

妹「だから、私の心も身体も全部、お兄ちゃんの色に染めていってね」

兄「僕の色か。どんなふうに染めようか迷うなぁ」

妹「私が清楚な女になるのも、お兄ちゃん限定のビッチになるのもお兄ちゃん次第だから」

兄「僕限定のビッチ? なんじゃそれ?」

妹「いいの。細かい事は気にしない」

兄「でもありがとう妹。そのお礼に必ず幸せにするから」

妹「期待してる」

兄「僕たち小さいころから殆ど喧嘩しないで仲良くやって来たけど、まさか男女の仲になるなんてなぁ」

妹「こういう兄妹がいてもいいんじゃない? 『世界一仲がいい兄妹』でギネスブックに申請してみる?」

兄「認定員に夜の行為を見せるの? 恥ずかしいよ」

妹「そんなの見せなくてもいいじゃない。イチャイチャしているところを見せれば」

兄「それより妹を『世界一可愛い女性』でギネスに申請していいかな? 認められると思うんだけど」

妹「」

妹「もうっ、脳が溶けちゃう様な事言わないでよぉ。ただでさえ一緒にお風呂に入ってのぼせ気味なのにぃ///」ポカポカ

兄「いてて、痛い、痛いよ。とりあえず顔が赤く染まったね」



この後2人は兄の部屋で、兄は妹で童貞を捨て、妹は兄で処女を捨てました。

続きます。

―――2週間後、ダイニング

妹「お兄ちゃん、お願いって言うか相談があるんだけど」

兄「新しい彼氏でも出来たのか?」

妹「違うっ!!」
兄「!?」ビクッ

妹「」イラッ

兄「あ、ごめん(しまった、怒らせちゃったな)」

妹「私は、そんなに軽い女じゃありません」

兄(敬語になってる、こりゃガチで怒ってるぞ)

兄「うんそうだよ、その通りだよ、妹は一途な女だよな」

妹「お兄ちゃんの事が大好きなのに、他に彼氏ができる訳無いでしょう?」

兄(口元が震えてる、怖いよ…)

兄「分かるよ、分かる。妹の彼氏は僕だけだよ」

兄「頭の中が一瞬『恋人』から『兄』に戻っちゃってさ。ごめんね」

妹「それともうひとつ。遠回りに『彼氏を作って出ていけ』とも言ってるように聞こえたんだけど?」

兄「そんなこと無いよ。妹に他に彼氏ができて、ここから出ていっちゃったら僕は発狂すると思う」

妹「じゃ何であんな事を言ったの?」

兄「ほんの軽い冗談だったんだ。妹がボケツッコミで『実は下の階の男の人と、ってそうじゃないの』とか、そんなふうに返ってくるって勝手に思ってたんだよ」

兄「でも冗談にしては本当に悪い冗談だったね。ごめんね本当に」

妹「言っていい冗談と悪い冗談があるんだからね」ジワッ

兄「うん、ごめんね。お詫びにどんな事でもするから」

妹「どんな事でも?」

兄「あくまで常識的に僕が出来る範囲でね。電車1台盗んで来てとか言われても出来ないけど」

妹「じゃあね…、今夜はカフェで食事してその後どこかへ連れてってくれる?」

兄「それだけでいいの?」

妹「ううん、まだあるのよ。でも今はそれだけよ」

―――夕方

兄「妹ー、そろそろカフェに…っ!!」

妹「うん、行こうよ」

兄「そんな恰好で行くのかい!?」

兄(胸元が開いたキャミソールと股下が殆ど無いタイトミニスカートかよ)

妹「そうよ」

兄「もう少し何とかならないか?」

妹「ならないよ。これはお兄ちゃんへの罰ゲームなんだから」

兄「これも罰ゲームなのか。いつそんな服買ったの?」

妹「通販でね。お兄ちゃんをびっくりさせようと思って」

兄「十分びっくりしたよ」

妹「えへへ、行こ」

―――遊歩道

兄(こんな服着てるからかなぁ、それとも家の外だからか、妹の胸元と生脚が随分艶めかしく見えるよ)

妹(ふふっ、お兄ちゃんさっきからチラチラ私の胸元と脚見てる)

妹「心配しないで。ちゃんと大きめのニプレス貼ってあるから」

兄「ん、ああ」

兄(これじゃどっちが罰ゲームしてるのか分からんな)

兄「そういえば、僕に『相談がある』って言っていたけど、どんな事?」

妹「あ、うん、あのね、最近時々切ない気分になったり寂しい気分になったりすることがあるんだ」

兄「どんな時に?」

妹「お兄ちゃんが1人でパソコンに向かっている時とか、夕方家にいる時とか、1人でマッタリしている時とか」

妹「だけど、お兄ちゃんと体をくっつけていると寂しくなくなるの」

兄「うん」

妹「だからね、寂しい気分になった時にお兄ちゃんに抱き付かせてほしいなぁって思ってたの」

兄「そうだったのか。家の中でお客さんが来ていない時ならいつでも抱き付いていいからね」

妹「外にいる時は?」

兄「人目が少ないところで後ろから抱きつくならいいよ」

妹「本当? 何回抱き付いてもいい?」

兄「もちろんさ。それで寂しくなくなるならね。寂しい時は僕に甘えたいだけ甘えていいよ」

妹「うん、ありがとうお兄ちゃん」

兄(まだ父さんと母さんを失った悲しみを引きずっているのかな)

―――カフェ

マスター「いらっしゃい…、!」
マスター妹「いらっしゃいませー、あら」

妹「いらっしゃいましたー」
兄「こんばんは」

マスター妹「どうしたの今日は? 随分色っぽい格好しちゃって?」

妹「ちょっと冒険してみようと思って」

マスター妹「まぁ、そんな恰好でお兄さんと出かけるなんて、恋人同士みたいね。いつものでいい?」

妹「うん。お兄ちゃんもいつものでいいでしょ?」

兄「うん、いつもので」

マスター妹「兄さん、私も妹ちゃんみたいな恰好しようか?」

マスター「いいよ別に。何が悲しくておまえの身体見ながらコーヒーを淹れなくちゃならんのだ」

マスター妹「まあ、失礼ね」

妹「プライベートで着ればいいじゃない」

兄「妹みたいな格好で仕事したら店の趣向が変わっちいますよ」

マスター妹「それもそうね。じゃ兄さん、今度の休み期待してね」

マスター「そんなもん期待しないよ」


妹「マスターね、多分照れてるんだと思うよ」ヒソヒソ

マスター妹「だよね、きっと」ヒソヒソ



―――カフェの外

兄・妹「ごちそうさまでしたー」

マスター「毎度どうもー」
マスター妹「ありがとうございましたー、またねー」


兄「で? どこへ連れて行けばいいの?」

妹「どこか大きな街がいいな。六本木とか渋谷とか新宿とか、お兄ちゃんに任せるから」

兄(そんな街にこんな恰好をした妹を連れて行くのかぁ…。こりゃ大冒険だな)

―――大きな街

妹「この時間でも人通りが多いねー。さすが東京」

兄「『眠らない街』とか言うからね」

妹「こうして腕組んで歩いてると、普通のカップルにしか見えないよね?」

兄「まぁね、兄妹だって思う人はいないと思うよ」

兄(やっぱり妹の恰好はインパクトあるよなぁ。視線がハンパない)

妹「お兄ちゃん」

兄「ん?」

妹「抱きしめてキスして」

兄「ここで!? 今?」

妹「罰ゲームよ」

兄「無理だよこんなに人がいる所で」

妹「お兄ちゃん…」

兄「分かった分かったよ」

兄(恥ずかしいから速攻で終わらせよう)

兄「」ギュ
妹「あ…」

チュッ

通行人「若いっていいなぁ」

妹「もう、出来るじゃないの///」

兄「顔から火が噴き出るかと思ったよ///」

妹「本当だ、真赤だよ///」

兄「その言葉そっくり返すよ///」



兄(妹の恰好、完全にフラグだよなあ。変な奴に絡まれなければいいけど)

DQN1「随分目を楽しませてくれるねぇお嬢さん」

兄(考えていたそばから…)

DQN2「どうだいかわい娘ちゃん、こんなのと遊ばないで俺たちと遊ばない?」

妹「ちょっと待ちなさいよ! 私のお兄ちゃんを『こんなの』呼ばわr」
兄「よしな」

兄「何ですか君たちは?」

DQN1「お前に用はねぇんだよ、引っ込んでろ。あ?」

兄(困ったな、どう考えても勝てる相手じゃないよな)

兄(よし、一か八か…)

兄「あ! お巡りさん助けて!」
DQN1・DQN2「!?」クルッ
兄「」ギュ タタタタッ
妹「きゃ…」タタタタッ

DQN1「おい、お巡りなんかいねえ…、あ、あの野郎!」

DQN2「逃げられた、あいつら足早えな」

DQN1「畜生、めちゃくちゃいい女だったのに。しょうがねぇな、他の女探そうぜ」

兄「はぁ…、はぁ…、ここまで来れば大丈夫かな」

妹「はぁ…、大丈夫だと思う」

兄「ごめんね急に腕を引っ張っちゃって、怪我は無い?」

妹「うん、何ともないよ」

兄「どう考えても勝てそうにないから逃げちゃったけど」

妹「ううん、惚れ直しちゃった」ダキ

兄「また人が歩いてるところで…」

妹「気にしないの」

妹「でもお兄ちゃん、あいつらに仕返ししない?」スッ

兄「よせよせっかく逃げて来たのに」

妹「だって、お兄ちゃんをこんなのって呼ぶなんて、許せない!」

兄「気持ちは解らんでもないけどな、ああいうのとは関わらないのが一番なんだよ」

妹「ううーっ、さっきの奴らなんかクソ喰らえだ」

兄「そうそう、本人がいない所ならいくら悪口言ってもいいからね」

兄「ただ、こんなに可愛い女性が『クソ喰らえ』って言うのは止めた方がいいな。似合わないよ」

妹「じゃ何て言えばいいのよ?」

兄「そうだな…、『うんこ召し上がれ』とか」

妹「え?」

兄「いや、何でもない」

妹「?」

兄「そうだ、口直しに行こう」

妹「口直し?」

兄「あ、妹、さっき走ったせいかな。スカートがたくし上がってお尻が少し出ちゃってるよ」

妹「え///」

―――東京駅、新幹線プラットホーム

妹「こんな時間に新幹線に乗って今日中に帰ってこれるの?」

兄「新幹線には乗らないよ。しばらくしたら帰るよ」

妹「それにしても、抱き合ったり背中から抱き付いてるカップルが何組かいるけど?」

兄「抱き合ったりしてるのは遠距離恋愛のカップルなんだ」

妹「遠距離恋愛…」

兄「そう。週末を2人で過ごして、どっちかが日曜の夜に最後の新幹線に乗って帰るんだよ」

兄「2人で抱き合って、新幹線が発車するまで離れ離れになるのを惜しんでいるのさ」

妹「へぇ」

兄「僕たちも今だけ遠距離恋愛カップルになってみようよ」ダキ

妹「あ、うん」ギュ

妹(遠距離恋愛かぁ。私には絶対無理だな。でも私たちは至近距離恋愛で、これからお兄ちゃんと一緒に家へ帰ってずっと一緒に過ごせるんだもんね)

妹「…」

妹(何だろう? この優越感…)

プルルルルルルル………

兄「あ、今日最後の新大阪行きが出発するよ」

妹(もう出発しちゃうの? ずっとこうしていたいな)

妹「お兄ちゃん。キスして」

兄「ん、ああ」

チュッ

妹「ふふっ。私達、もう完全にバカップルだね」

兄「だな」

兄「そろそろ帰ろうか」

妹「あ、うん」スッ

妹「あ、お兄ちゃん見て。あの新幹線私達みたい」

兄「本当だね」

ttp://livedoor.blogimg.jp/yukawanet/imgs/a/0/a053bb5a.jpg

妹「ちょっとトイレに行ってくるね」

兄「この辺で待ってるから」

―――トイレ、洗面台

中年女「あなた凄い恰好してるわね。派手というか色っぽいと言うか…」

妹「ええ、まあ」

中年女「同性として心配だから訊くんだけど、恥ずかしくない?」

妹「恥ずかしいですよ、凄く。今すぐにでも薄手のジャケットとか羽織りたいですよ」

中年女「じゃどうして?」

妹「そうですねぇ…、私の誠実さを証明するため、でしょうか」

中年女「は?」

妹「」ニコ

―――マンションの通路

兄「妹、罰ゲームは家に帰ったら終わりでいいかな?」

妹「うん、終わり」

兄(ホッ)

>>207の訂正です

6行目 中年女「じゃどうして?」→中年女「じゃどうしてそんな恰好してるの?」

隣人男「こんばんはー」

妹「あ、こんばんはー」
兄「こんばんは」

ガチャ    パタン

兄「さっきの男の人といい雰囲気だったね?」

妹「うん、実はね、今あの人と不倫関係…、ってそうじゃないの」パシッ

兄「ふふっ」
妹「えへへ」

妹「…」

妹「お兄ちゃん…」

兄「ん?」

妹「私はお兄ちゃんが言う事なら、何だって出来るよ」

妹「お兄ちゃんに言われれば、こんな恰好をして大きな街へ行ったり、メイド服を着て秋葉原の街を歩いたり」

妹「セーラー服を着て近所へ買い物だって行けるんだから」

兄「そう言う服着て外へ行k」
妹「聞いて」

兄「はい」

妹「今日こんな恰好をして大きな街へ行ったのは、お兄ちゃんが言う事なら何だって出来るって証明したかったからなの」

妹「お兄ちゃんに言われれば人通りが多いところでキスだってできるし、電車の中で対面座位で膝の上に座ってあげる。公園で青姦だってしてあげるよ」

妹「何時間だってディープキスしてあげるし、何回でもエッチしてあげる。お兄ちゃんが望むならね」

妹「お兄ちゃんが言う事ならどんな事でも聞こうって決めてるの」

妹「それだけお兄ちゃんが大好きなんだから…、私のお兄ちゃんへの愛情は誰にも負けないんだから」

妹「だから私に新しい彼氏なんか出来る訳ないでしょ? 私はお兄ちゃんだけなんだから…」

兄「ごめん、ごめんよ。軽はずみとは言えあんなこと言っちゃって」ダキ

妹「何気ない一言が相手を深く傷つける事もあるんだからね」ジワッ

兄「ごめんね。気を付けるから」

***

続きます

―――1か月後、妹の部屋

妹(こうしてネットで検索すると、私達以外にも兄妹で愛し合うカップルって結構いるよねぇ)

妹(あ、兄妹が愛し合うウェブ小説ある。ちょっと読んでみよっと)

妹(…)

妹(…)



妹「」ジワッ

兄『入るよー』

妹「あ、うん」

カチャ

兄「宅配便が来…、どうしたの? 泣いてたのか?」

妹「このウェブ小説読んでたら泣けてきちゃって」

兄「どんなウェブ小説なの? 悲しい小説なのか?」

妹「あのね、とある兄妹が私達と同じで愛し合いながら2人で暮らしているんだけど、愛し合ってる事を誰にも言えなくて2人の生活が段々行き詰っていくの」

兄「うん」

妹「それでね、ある日突然兄が家から出て行っちゃって、お互い1人暮らしを始めるんだけど、最初のうちは2人共毎晩泣くのよ」

妹「残された妹は実家へ戻って2人共時間とともに立ち直って、普通の兄妹に戻るんだけどね」

兄「まぁそれが、本来兄妹が歩むべき道ではあるよな」

妹「嫌よ私はそんなの!」

兄「まぁ落ち着いて」

妹「ねぇお兄ちゃん、私達も将来は別々に暮らす事になっちゃうの? そんなの絶対嫌!」ジワッ

兄「心配するなって。僕たちはこれからもずっと一緒だよ。人生色々、兄妹も色々さ」

兄「そのウェブ小説に出てくる兄妹は、愛し合っている事を隠すために嘘で嘘を塗り固めてしまって、身動きが取れなくなっちゃったんだよね?」

妹「うん」

兄「だったら僕たちはカミングアウトしちゃおうよ」

妹「え?」

兄「『両親を同時に失ったショックで頭がぶっ飛んで愛し合うようになっちゃったんだ』ってね」

妹「そんな事…」

兄「嘘をつかなくて済むから随分楽だと思うぞ?」

兄「でもだからって自分から進んで話さなくていいからね」

兄「話の流れで、今話さないとこの後ずっと嘘を言わなくちゃいけないっていうタイミングで話せばいいよ」

兄「大抵の人はドン引きしたり、僕達を変人扱いしたり、最悪絶縁状態になってしまうかもしれないけど」

兄「そういう人は放っておけばいいのさ。放っておく人の目を気にしたってしょうがないだろ?」

妹「そうかもしれないけど」

兄「逆に理解してくれる人は大切にするのさ。僕たちの場合は事情が事情だから、少しは理解してくれる人もいるかもしれないよ」

兄「それに、妹が僕に告った後に言ってたじゃん。『世間の目や常識より兄さんの方がずっと大切』って」

兄「だから、世間の目や常識に凝り固まった人の態度なんか気にしないで、普通に暮らしていけばいいのさ」

妹「そうよね、そう言う人と無理にお付き合いすることも無いもんね」

兄「幸か不幸か都会は近所付き合いが希薄だからね。僕たちが愛し合っているなんてあまり気づかれないかもよ」

兄「だから僕たちには行き詰まる事は無いよ。ずっとずっと一緒にいられるから」ナデナデ

兄「おじさんやおばさんになっても、お爺さんやお婆さんになってもね」

兄「全世界の人からドン引きされても、絶縁されても、妹がいれば僕は平気だよ」

妹「私もこの世にお兄ちゃんだけがいればいい。他は何もいらない」

妹「だけどお兄ちゃん、突然家を出て行くのだけは本当にやめてね。お兄ちゃんがいなくなったら私…、ぐずっ」ジワッ

兄「そんなことしないよ。本当にずっと妹と一緒に居るから安心して」

妹「うん、信じてるから」



妹「ところでお兄ちゃん、この宅配便の箱の中身って何だと思う?」

兄「さあ、なんだろう? 大きさの割には軽かったけど」

妹「セーラー服とメイド服よ」ニコ

兄「…着るのは家の中だけにしてね」

***

―――2か月後、妹の部屋

マスター妹「ごめんね急にお邪魔しちゃって」

妹「いいのよ。暇だし」

マスター妹「実は相談に乗ってもらいたい事があって来たの」

妹「え? どんな事?」

マスター妹「妹ちゃんとお兄さんはとても仲がいいじゃない?」

妹「うん。否定はしないけど」

マスター妹「その、どうしたら兄妹でとても仲が良くなれるの?」

妹「どうしたらって…、マスターとマスター妹さんは今でも十分仲がいいと思うけど?」

マスター妹「うん、そうなんだけど、なんていうのかなぁ、もっとその…」

妹「ひょっとして?」

マスター妹「うん。私ね、自分の兄さんを1人の男として好きになっちゃったみたいで」

妹「え、そうなんだ」

マスター妹「ごめん。気持ち悪い話だよね」

妹「確かに世間的には気持ち悪い話よ」

マスター妹「だよね」

妹「でもね、上には上がいるのよ」

マスター妹「え?」

妹「ここだけの話だけど、私ね、お兄ちゃんと最後までいっちゃったの」

マスター妹「うそ!?」

マスター妹「え? え? ってことは2人は今…、その、えーっと、肉体関係があるの?」

妹「そうよ。こっちこそごめん、ドン引きしてるよね」

マスター妹「あ、いや、全然。ちょっとびっくりしただけよ。仲がいいとは思っていたけど、まさかここまでとは思っていなかったから」

妹「私達、事故で両親を同時に亡くしてるのよ。そのショックというか寂しさから男女の仲になっちゃったんだ」

マスター妹「そうだったんだ。深い訳があったのね」

兄『入るよー』

妹「いいよー」

兄「いらっしゃい。お茶とお菓子持ってきたよ」

妹「あ、ありがとう」

マスター妹「まぁすみません」

兄「これ、妹の手作りのクッキーなんですよ、中々美味しいですよ」

マスター妹「へぇそうなんだ。美味しそう」

妹「レシピ本見ながら悪戦苦闘の末に作ったのよ」

兄「それじゃ、ごゆっくりどうぞ」

マスター妹「あ、はい」

マスター妹「本当に仲がいいよねぇ。今の会話なんかまるっきり夫婦じゃない」

妹「夫婦と殆ど変らない生活してるからね」

マスター妹「私も自分の兄さんとずっと一緒に居たいんだけど、どうしたらいいと思う?」

妹「うーん…、そうねぇ、私たちの場合は両親が同時に亡くなるっていうとんでもない出来事があって」

妹「それがきっかけで愛し合うようになっちゃったんだけど、そんな出来事は起きないほうがいいもんね」

マスター妹「できればね」

妹「コツコツやっていくのはどう?」

マスター妹「どんな風に?」

妹「なるべくマスターの傍に居るのよ。それこそ『私がお嫁さんなんだよ』って誇示するみたいにね」

妹「マスターに寄り添って、マスターが落ち込んだ時は優しく励ましてあげたりして精神的な支えになってさ」

妹「マスターにとって無くてはならない存在になるのよ」

妹「時々お色気で誘惑するのもいいかもしれないね」

マスター妹「ふーん」

妹「後は『機は熟した』って思ったらいい雰囲気の時にさりげなく告ってみなよ」

マスター妹「さりげなくね」

妹「だけど後悔しない? 戻れなくなるよ?」

マスター妹「しないわ。私なりによく考えた末に出た結論だから」

妹「ならいいけど」

マスター妹「妹ちゃんはお兄さんにどう告ったの?」

妹「そんなこと訊いてどうするのよ///」

マスター妹「参考にしようと思って」

妹「夕方に近くの遊歩道に行ったのよ。そこでピッタリ横に座って『今とっても幸せだからこのままお兄ちゃんの傍に居させて』って言ったの」

マスター妹「ロマンチックねぇ」

妹「最初は戸惑ってたけど、割とすんなり受け入れてくれたわ。私の気持ち」

マスター妹「いいなぁ」

妹「マスター妹さんもうまくいくよきっと」

妹「とにかくなるべくマスターの傍に居て、落ち込んでたら励ましてあげて、十分に下ごしらえができたらいい雰囲気の時に告るのよ」

マスター妹「うん、やってみる」

妹「うまくいくといいね。応援してるから」

マスター妹「ありがとう。これからはなるべく傍に居る事にするわ」

妹「マスター優しそうだからきっとうまく行くよ」

マスター妹「だといいけどね」

***

―――夜、リビング

「ウラメシヤー。 キャーコワイコワイ!!」

妹「」ジー

兄「テレビ見てて怖くないの?」

妹「怖くないよ。だってお兄ちゃんの膝の上に対面座位で座りながら見てるんだから。この状態なら何見ても平気」

兄「そりゃそうか」

妹「お兄ちゃん、私が一番恐れているものってなんだと思う?」

兄「さあ、何だろう?」

妹「この恋愛が終わる事」

妹「お兄ちゃんに他に好きな女性が出来たり、私への愛情が冷めちゃう事が…」ジワッ

兄「僕の妹への愛は永遠だよ」ナデナデ

妹「私だってそうよ、お兄ちゃんへの愛は永遠。だけど、時々は飽きがくると思うの」

妹「その時になし崩し的に私達の恋愛が冷めちゃうのがすごく怖くて」

妹「こんな話はしたく無いけど、私達の恋愛はどっちかが『こんな関係止めよう』って言えばそれで終わる」

妹「どっちかが浮気するのだって一般的には正常な事でしょ? 私達の恋愛は終わればそれが正常な事なんだから」

兄「そんなに悲観的になるなよ」

妹「ごめんね、でも誤解しないでね。この恋愛を終わらせたいんじゃないのよ」

妹「お兄ちゃんの事は大好きだし、これからもずっと一緒に居たい」

兄「確かに僕たちの恋愛は妹が言ったように危うい部分はあるよ。『兄弟は他人の始まり』っていう言葉もあるくらいだからね」

兄「でもね、危ういからこそ気を付けるってことも出来るじゃないか」

この兄妹もマスター兄妹も千葉県出身なのか?

兄「話の次元はまるっきり違うけど、関西に阪神電鉄っていう私鉄があって、春日野道って言う駅があるんだけどね」

妹「うん」

兄「その駅はその昔、日本で1番危ない駅って言われていたんだ」

妹「え、何で?」

兄「プラットホームの幅がね、電車の幅よりも狭かったんだよ。しかもホームの両側を電車が止まったり通過したりするんだ」

兄「その上地下にある駅でホームの真ん中に太い柱があったりしてね。もちろんホームドアなんか無かったんだよ」

妹「何それ怖い」

>>238
兄妹の出身地は群馬県高崎市、現在の住所は東京23区の
脳内設定で書いています。
マスター兄妹は特に出身地の設定はしていません。

兄「だけどね、色々な安全対策をしたり、その駅を利用する人もホームが狭いからって気を付けていたから」

兄「開業してからそのプラットホームが使われなくなるまで、およそ70年間1度も転落事故とか接触事故が起きなかったんだって」

妹「へぇ」

兄「今は改良されて普通の安全なプラットホームなんだけどね」

兄「僕たちの恋愛もさ、僕も妹も気を付けながらお互いに協力していけば、永遠に続くと思うよ」

妹「本当に続けばいいけど…」

兄「続くよ。僕達の絆はそう簡単には壊れないよ」

妹「そうよね。ポジティブに考えよう。だけどお兄ちゃん、話の次元違いすぎじゃない?」

兄「物の例えだよ」

兄「それに、僕だって気持は同じなんだよ。妹に振られたり浮気されるのは何よりも怖いよ。妹は可愛いからね」

妹「私はそんなことしないよ?」

兄「分かってるよ。僕と妹は同じ気持ちだってことさ」

兄「妹は先の事を色々考え過ぎだよ。先はどうなるか誰にも分からないんだから」

兄「先の事を考え過ぎて今を犠牲にし過ぎるのもよくないよ」

妹「ごめんね」

兄「いつも僕がついているから、もっとドッシリと構えてごらん」

妹「何だかお相撲さんみたい」

妹「夜食にそば食べない? 私達がずっと長く傍に居られるように」

兄「お、いいね」

妹「何蕎麦がいい?」

兄「駅のそばとか」

妹「…それは、駅の近くがいいって事? それとも駅の立ち食いそばを食べるって事?」

兄「どっちでもいいよ。てか、突っ込んでくれないかな」

妹「突っ込むのはお兄ちゃんの夜の役目でしょ///」

兄(そっち方面へ行くんかい)

***

続きます

===兄24歳・妹21歳
―――夕方、キッチン

妹「♪~」←鼻歌

兄「何か手伝おうか?」
妹「きゃああっ!」

妹「もうっ! びっくりさせないでよぉ」

兄「あ、ごめん、驚かすつもりじゃ無かったんだけど」

妹「本当にびっくりしたんだから」

兄「ごめん。夕食作るの何か手伝おうか?」

妹「FX取引は? もういいの?」

兄「今日は十分儲けたからね」

妹「じゃ、スーパー行ってうす口醤油買って来てくれる?」

兄「いいよ」

―――商店街

ピロリーン

兄(お、LINEだ。誰からだ? 元同僚か)

(元気か? お前といい雰囲気だった女さんが結婚するんだと。あまり気を落とすなよ)

兄(そうか。女さんおめでとう)

―――スーパーマーケット

兄(えーっと…、うす口醤油うす口醤油っと…)

女「あら、兄君」

兄「あ、女さん」

女「ねぇ、ちょっと話がしたんだけどいいかな?」

兄「ごめん、ちょっと急いでるから」

女「待って、5分位で終わるからいいでしょ?」

兄「まぁ5分位なら」

―――公園

兄「で? 話って何?」

女「兄君と同棲してる彼女、可愛いのね。A○Bの人かと思っちゃったわ」

兄「どうなんだろ」

兄「そう言えば、結婚するんだって?」

女「え? 知ってたの?」

兄「ああ、元同僚からLINEが来てさ」

女(元同僚の奴、余計な事を…)

兄「結婚おめでとう」

女「ありがとう。兄君は彼女とは結婚しないの?」

兄「うん、まぁね」

女(結婚する気無いのかな。だったら)

女「ねぇ、私が結婚しても時々会ってくれる?」

兄「は? どうして?」

女「硬く考えなくていいのよ。今みたいにこうして2人で、公園で話しをするだけでもいいじゃない?」

兄「結婚を控えてる人が言う事とは思えないな」

女「そうかしら?」

兄(女さんの知られざる一面を見せられた気分だな。じゃ僕も知られざる一面を見せよう)

兄「さっき、『彼女と結婚しない』って言ったよね? 何でだと思う?」

女「さあ?」

兄「本当は『しない』んじゃなくて『出来ない』んだよね」

女「どうして?」

兄「実は彼女は、僕の実の妹なんだよ」

女「え!?」

兄「僕は実の妹に手を出した最低の男なんだ」

女「…本当、最低ね」

兄「その最低の男をキープしようとする女さんも物好きだよね」

女「ふん!」

兄(さよならー)

兄(あれじゃ旦那が可哀想だな)

兄(『結婚』か…)

ピロリーン

兄(LINEか。誰だろ? 妹か)

(お兄ちゃんどこに居るの? 早く帰って来て)

兄(しまった、ちょっと道草食っちゃったからな。早く帰ろう)

―――家、玄関

兄「ただいまー、遅くなってごめん」

妹「あ、お兄ちゃん、よかったぁ」タタタタッ

兄「どうしたの?」

妹「あのね、お兄ちゃんが買い物に行ってる時に何だか物凄く寂しい気分になったの」ダキ

兄(さっきの公園はここから見えないはずだし、何か第六感みたいのが働いたのかな)

妹「買い物の途中にどこかの女性に連れ去られて、もうここに帰って来なくなっちゃうような感じがして」

兄「そんなこと無いよ。こうやってちゃんと帰って来たじゃないか」ギュ

妹「うん、安心したよ」

兄「僕は妹を残してどこにも行かないよ」

妹「うん、どこにも行かないでね。だけど何でこんなに寂しい気分になったんだろう?」

妹「いつもはお兄ちゃんが1人で出掛けてもこんなに寂しい気分にならないのに」

兄「うーん…、何でだろうね?」

妹「ねぇ、これからはお兄ちゃんが出かける時はいつも一緒に行っていい?」

兄「いいよ。妹に寂しい思いをさせたくないからね。夕食の支度は出来たの?」

妹「あ、まだ途中なの」

兄「じゃ僕も手伝うから一緒に支度しよう」

妹「うん、ありがとう」

―――ダイニング、夕食

妹「」モグモグ

兄(『結婚』、か)

兄(僕と妹は夫婦と全く変わらない生活をしているけど、やっぱり何かケジメをつけたほうがいいのかなぁ)

兄(妹のウェディングドレス姿も見てみたいしね)

妹「お兄ちゃん食べないの?」

兄「あ、ちょっと考え事してて」

妹「どんなこと考えてたの?」

兄「内緒」

妹「もう、気になるなぁ」

―――夜、事後

妹「ねぇ、夕食の時に考えていた事って何? 気になるの」

兄「…」

妹「お兄ちゃん?」

兄「Zzz…」

妹「もう寝ちゃってる…」

妹(明日教えてね)

―――真夜中

妹「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!」

兄「」パチ

妹「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!」

兄「何だ?」

妹「う゛う゛う゛う゛う゛!」

兄「(うなされてるのか?) 妹…、!! …凄い寝汗」

妹「お゛兄じゃーん゛!」

兄「妹! 妹!」

妹「う゛っ、ん…、あ」

兄「大丈夫か? 凄くうなされていたけど?」

妹「あ、え? え?」

妹「お兄ちゃん! 戻って来てくれたの!?」

兄「え? ずっとここに居たよ」

妹「…夢か」

兄「どんな夢見たんだ? 怖い夢だったのか?」

妹「怖い夢じゃなくて、なんか凄く嫌な夢見ちゃって…」

兄「どんな夢だったの?」

妹「私が買い物から帰ってきたら、リビングにお兄ちゃんと女さんがいたの」

兄「うん」

妹「お兄ちゃんと女さんはこれから結婚して2人で暮らすからって、私を置いてここから出て行っちゃうの」

妹「私は必死でお兄ちゃんを追いかけるんだけど、お兄ちゃんと女さんはどんどん遠くへ行っちゃうのよ」

兄「夢に出てきた僕は酷い事をしちゃったね。ごめんね」

妹「ううん、お兄ちゃんが悪いんじゃないもん。だけど、もうこんな夢見たくない」ジワッ

兄「心配しないで、正夢になる事はないからね」ナデナデ

兄「パジャマ着替えてきなよ。風邪ひいちゃうよ」

妹「うん、着替えてくるね」

―――妹の部屋

兄「着替え終わった? あれだけ汗かいたから喉が渇いたでしょ? 水持って来たよ」

妹「あ、ありがとう」

ゴクゴク…

妹「あーもう気分最悪…、夕方は凄く寂しい気分になるし、夜は嫌な夢でうなされるし、どうしちゃったんだろう今日は」

兄「たまにはこんな日もあるよ」

妹「もう最後にして欲しいわ」

兄「…」

兄「妹、夕食の時に内緒って言った『考え事』を教えようか」

妹「あ、教えて、気になってたの」

兄「それで気分が少しでも良くなればいいけど」

妹「え?」

兄「妹、その…、僕と結婚してくれないか?」

妹「…」

妹「…え?」

兄「僕と結婚してくれないかな?」

妹「結婚してくれないかってって言ったって、兄妹だよ私達」

>>266の訂正です
最終行  妹「結婚してくれないかってって言ったって、兄妹だよ私達」 →妹「結婚してくれないかって言ったって、兄妹だよ私達」

兄「兄妹だよ。僕とじゃ嫌か?」

妹「ううん、そうじゃなくて、嫌とかどうとか言う以前に、血の繋がった兄妹は結婚できないでしょ?」

兄「出来るよ」

妹「え?」

兄「『兄妹は結婚できない』って言うのはさ、それはつまり」

兄「僕と妹が婚姻届の用紙に書き込んで区役所に持って行っても、受理してもらえないってことなんだよ」

兄「それで法律の上では婚姻は成立しないわけで、『血の繋がった兄妹は結婚できない』っていうことなのさ」

妹「うん」

兄「でも考え方によってはさ、僕たちが書いた婚姻届を区役所が受理しない。たったそれだけの事なんだよ」

兄「それ以外の事は出来ない訳じゃないんだ」

妹「『それ以外の事』って?」

兄「例えば血の繋がった兄妹が結婚指輪を買ったりだとか、結婚式を挙げたりとか」

兄「新婚旅行に行くとか、妊娠出産は出来なくないんだよ」

兄「とは言っても妊娠出産はいろいろ問題があるから出来ればしたくないけど」

兄「だからさ、どこか小さな結婚式場で、妹はウェディングドレス着て、僕はウェディングスーツ着て」

兄「2人だけで結婚式を挙げようよ。そこで僕たちの永遠の愛を誓うのさ」

妹「」ジワッ

兄「でも考え方によってはさ、僕たちが書いた婚姻届を区役所が受理しない。たったそれだけの事なんだよ」

兄「それ以外の事は出来ない訳じゃないんだ」

妹「『それ以外の事』って?」

兄「例えば血の繋がった兄妹が結婚指輪を買ったりだとか、結婚式を挙げたりとか」

兄「新婚旅行に行くとか、妊娠出産は出来なくないんだよ」

兄「とは言っても妊娠出産はいろいろ問題があるから出来ればしたくないけど」

兄「だからさ、どこか小さな結婚式場で、妹はウェディングドレス着て、僕はウェディングスーツ着て」

兄「2人だけで結婚式を挙げようよ。そこで僕たちの永遠の愛を誓うのさ」

妹「」ジワッ

投してしまいました。
>>270は取り消しです

兄「式場によっては、『結婚証明書』を発行している所があるみたいだよ」

兄「その後に記念写真撮ってさ。あと新婚旅行にも行こう」

兄「僕が妹を今よりもっと幸せにするよ、だから、僕と結婚してくれないか?」

妹「はい…、こんな私でよければ」ポロッ

兄「妹、おいで」

妹「」ダキ

兄「」ギュ

兄「妹は最高の女だよ」

妹「最高のお兄ちゃんに最高の女って言われるなんて幸せね私は」

兄「照れるなぁそう言われると」

妹「お兄ちゃんと結婚するなんて夢のまた夢だって思っていたけど、なんだか簡単に実現しちゃった」

兄「妹が幼稚園児の頃だったかな。『大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる』って言ったの覚えてる?」

妹「うん、覚えてるよ」

兄「僕はその時に『妹のお婿さんだ』って言ったけど、まさかその通りになるなんてなぁ」

妹「こんな事までしちゃう実の兄妹も珍しいよね」



兄「僕たちみたいにね、婚姻届を出さずに夫婦同然の暮らしをしているのを『事実婚』って言うんだって」

妹「事実婚かぁ、初めて聞いたわ」

兄「新婚旅行はどこに行きたい?」

妹「そうねぇ…、国内がいいかな」

兄「国内のどの辺り?」

妹「うーん、お兄ちゃんはどこに行きたいの?」

兄「そうだなー。北海道かな」

妹「北海道かぁ、いいね。北海道にしようよ」

兄「じゃ北海道で。北海道は広いから2週間位かけてゆっくり回ろうか」

妹「あ、いいね。北海道は1回どう?」

兄「…もう遅いし、寝ようよ」

妹「そんなにつまらなかった今のダジャレ?」



妹「はぁー…」

兄「どうした?」

妹「何だか頭が冴えちゃって眠れなくて」

兄「じゃ子守唄を歌ってあげるよ」

妹「お兄ちゃんが?」

兄「ああ。シューベルトの子守唄の替え歌なんだけどね。余計に目が覚めちゃったらごめんね」

妹「笑っちゃうような替え歌はやめてよ」

兄「そんなんじゃないよ」

妹「じゃ歌って」

兄「うん」

兄「」ゴホッ

兄「♪ね-むれ-…、ね-むれ-…、あ-に-の-む-ね-に-…」

妹「」ウルッ

兄「♪ね-むれ-…、ね-むれ-…、あ-に-の-て-に-…」

妹「」ピトッ

兄「♪こ-こ-ろ-よ-き--…、う-た-ご-え-に-…」

妹「…」

兄「♪む-す-ば-ず-や-…、た-の-し-ゆ-め-…」

妹「…」

兄「どうだ? 眠れそうか?」

妹「Zzz…」

兄「もう寝ちゃったのか」

兄「おやすみ。僕のお嫁さん」

チュッ

***

続きます

明日は昼前後に投下します

―――数日後、玄関

兄「妹ー、ちょっと出かけてくるよ」

妹「え? どこに行くの?」

兄「マスターと会ってくるよ。相談に乗ってほしい事があるんだってさ」

妹「私も行っていい?」

兄「え、男同士の話だからなぁ」

妹「前に出掛ける時はいつも一緒だって言ったじゃない…」

兄「すぐに戻るから待ってなよ」

妹「」ジワッ

兄「分かった分かったよ。じゃさ、変装しておいで。そしてマスターがいる所では他人を装って離れたところに居てね」

妹「うん、ちょっと待っててね」

―――歩道

兄「リクルートスーツなんていつ買ったの?」

妹「お母さんに生前に買ってもらったの。『いつかは着る時があるだろうから』ってね」

妹「これ着て髪を束ねて眼鏡かけてマスクすれば分からないでしょ?」

兄「多分わからないよ。でもそのスーツ、ちょっと小さいんじゃないか? 胸とお尻のあたりがはちきれそうだよ」

妹「胸もお尻も大きくなっちゃったからね。お兄ちゃんが毎晩揉むから…」

兄「止めた方がいいかな?」

妹「ううんううん」ブンブン

兄「いやそんなに首振らなくても…」

兄「あのファミレスで待ち合わせなんだよ。中に入ったら他人同士だからね。離れた席に座って」

妹「了解」

―――ファミレス

兄「ごめんなさい遅くなっちゃって」

マスター「いやいや、こっちこそ悪いね呼び出したりして」

兄「いえ。で、さっそくですけど相談に乗ってほしい事とは?」

マスター「うん、実はだね…。あ、ホットコーヒーお願いします」

兄「僕はアイスレモンティーで」

ウェイター「はい」

マスター「兄君は妹ちゃんと仲が良さそうだから相談するんだけどね…」

兄「はい」

マスター「実は昨日、自分の妹に言い寄られちまったんだな」

兄「え? そうなんですか?」

マスター「…あまり驚かないんだな」

兄「だって妹さんと仲いいじゃないですか」

マスター「ああまぁね。それでどうしたらいいと思う?」

兄「どうしたらいいと言われましても…。マスター妹さんにはどう答えたんですか?」

マスター「『考えさせてくれ』と言ってある」

兄「マスターはどうしたいんですか?」

マスター「自分でも分からんのだよ。なんせ実の妹からの告白だからな」

兄「僕がこういうのもなんですけど、常識的には『断りなさい』としか言えませんよ」

兄「ですが恋愛の形は自由だと思うんですよね僕は。マスターがまんざらでもなければ付き合うのもいいのではないでしょうか」

兄「御両親は健在で?」

マスター「父親は他界した。母親は俺の兄と兄の嫁とで海外で暮らしているんだ」

兄「うーん、だとしたらマスターの気持ち次第ではないでしょうか?」

マスター「気持ち次第ねぇ。実の妹だからなぁ」

兄「迷うのは解りますよ。ですがマスター妹さんも覚悟して告ったのでしょうから、よく考えて白黒はっきりした答えを出して返事をすべきではないでしょうか」

兄「兄妹でもつきあえるのなら妹さんにはっきり伝えて、兄妹である事を忘れて1人の女性として愛してあげるのが良いでしょう」

マスター「うん」

兄「逆に付き合えないのなら、そのことをはっきり伝えて一般的な普通の兄妹として一線を引いて接していくんです」

兄「ただそうなるとマスター妹さんはマスターの元から去ってしまうかもしれませんが」

兄「いずれにしてもマスター妹さんもマスターの事が好きで、覚悟して告白したのでしょうから、どっちつかずの曖昧な返事や接し方はしない方が良いですね」

マスター「そうだよな」

兄「後はマスターの返事次第ですよ。イエスかノーかの」

ウェイター「お待たせしました。ホットコーヒーとアイスレモンティーです」

―――妹の席

妹(お兄ちゃんとどんな相談してるんだろう。気になるなぁ)

妹(あ、ひょっとしてマスター妹さん、告ったのかな。それでお兄ちゃんに相談してるんだわ)

妹(お兄ちゃんお願いだから、マスターに受け入れてあげるように言ってね)

―――兄とマスターの席

マスター「兄君はどういう理由で妹ちゃんからの告白を受け入れたの?」

妹「妹が幸せになる事を願ったからですよ。僕と一緒に居るのが幸せだって言うのでね。僕もまんざらでもなかったんで受け入れたんです」

マスター「確かに妹ちゃんは幸せそうだよなぁ」

マスター「俺はあいつに世話になりっぱなしだからな。だから恩返しの意味でも妹の気持ちを受け入れようと思ったよ。兄君の話を聞いてね」

マスター「ただな、やはり世間の目がどうしても気になっちまうんだ。商売もしてるしな」

千葉に引っ越せば良いじゃない!

兄「兄妹で付き合うのならそれは仕方ないですよ。自分に対する世間の目を自分で変えるのは大変ですからね」

兄「世間の評価など気にしないのが一番です。カフェもやれるところまでやってみてはいかがですか?」

兄「あとはこれから兄妹である事を隠して夫婦を装って暮らすのか、兄妹である事を隠さずに付き合っている事をうやむやにして暮らすのか」

兄「その辺りを妹さんと相談して決めた方が良いですね」

マスター「俺達の場合は兄妹でカフェをやっているってグルメ雑誌で紹介されちまったからなぁ。付き合ってる事をうやむやにしてやっていくしかないな」

兄「まぁそうなるでしょうね」

マスター「ありがとう兄君、何だかふんぎりがついたよ。帰ったら早速妹に返事をするよ」

兄「マスター妹さん、多分ハラハラしながら待っていると思いますよ」

マスター「だよな、早く帰ってホッとさせるか」

>>296
千葉ネタやっと理解しました

―――妹の席

妹(え? 2人共立ちあがった。もう終わり?)

妹(飲み物だけ注文すればよかったな。早くこのサンドイッチ食べないと)

―――別の席

兄友(ん? あの娘は…? ひょっとして妹ちゃんじゃ? そうだ、なんか変装してるみたいだけど間違い無いよ)

兄友(1人なのかな。そうだ、今彼氏もいないみたいだし寝取っちゃおうかなぁ)

兄友(前に考えていたあの作戦を実行する時が来たみたいだね)ニヤリ

―――妹の席

兄友「こんにちは、ひょっとして妹ちゃんじゃない?」

妹「え、あ、こんにちは」

兄友「ちょっといいかな座って」

妹「でも私そろそろ行かないと(色々と気まずいし)」

兄友「ちょっとだけだから」

妹「はあ」

兄友「どうしたの今日は? 変装しちゃって」

妹「ちょっと事情があって」

兄友「そうなんだ」

会社でトラブルがあって呼び出しが掛ってしまいました
戻り次第再開しますので、しばらくお待ちください
久々の平日の休みだったのですが・・・

兄友「実は俺ね、芸能プロダクションに勤めててさ、アイドルの卵になる女性を探しているんだよ」

兄友「それでどうだろう? 妹さんを是非アイドルにって思っているんだけど」

妹「私をですか?」

兄友「妹さんは可愛いから、芸能界で十分通用すると思うんだ(これはガチだよな)」

妹「いやでも、芸能界に興味は無いので…」

兄友(う、喰い付いてくると思っていたのに…)

兄友「そんなこと言わないでさ、有名になれるしお金持ちにもなれるよ。事務所に行くだけ行ってみない?」

妹「本当に興味は無いんです。もう行かないと」

兄友「あ、待って」

―――ファミレスの外

兄友「待って妹ちゃん」

兄友「実はノルマがあってね、あと1人アイドルになるような人を事務所へ連れて行けば俺のノルマは達成されるんだよ」

妹「そう言われても」

兄友「ノルマを達成していないのは俺だけで、事務所の先輩に怒られっぱなしなんだよ」

兄友「俺を助けると思ってさ。頼むよ。そんなに時間取らせないから」

妹(しつこいなぁ)

妹「この話はしたくなかったんですけどね」

妹「以前電話で、私には好きな人がいるって言いましたよね? その人とは順調に交際を続けてます。男女の仲にもなりました」

兄友「そうなんだ…」

妹「でもそのお相手は、私の実の兄なんです」

兄友「え!?」

妹「実の兄と毎晩エッチしているとんでもない爆弾を抱えた女性を、芸能界へデビューさせる覚悟は出来るのですか?」

兄友「いや何と言うか、その…」

妹「失礼します(これで兄友さんに変人扱いされる…)」

兄友「」

兄友(実の兄妹なのに男女の仲なんて、都市伝説じゃなかったのかよ)

兄友姉「また振られちゃったね」

兄友「あ、姉貴」

兄友姉「私がトイレに行ってる間に出て行っちゃうなんて、冷たいのね」

兄友「ごめん」

兄友姉「芸能プロダクションに勤めてるとか言っちゃって、プロダクションが入居している雑居ビルの掃除のアルバイトしてるだけでしょ?」

兄友「聞いてたのかよ。でもプロダクションの人にアイドルになりそうな可愛い人がいたら教えてくれって言われてるのは本当なんだぜ」

兄友姉「どうだか。それで、あの娘に何をしようとしたの?」

兄友「姉貴には関係ないだろ?」

兄友姉「大方うまい事言いくるめてホテルにでも連れ込もうとしたんじゃないの?」

兄友(大方当たってる)

兄友姉「もうあの娘はあきらめなよ。私があの娘の事を忘れさせてあげる」ダキ

兄友「姉貴…」

兄友姉「私と付き合わない? 私達血の繋がりは無いから世間からそんなに白い目で見られないと思うけど?」

兄友「やだって言ったら?」

兄友姉「いいよって言うまでずっとこのまま」

兄友「姉貴には敵わないなぁ。いいよ」

兄友姉「じゃ恋人になったから、ずっとこのまま」

兄友「どっちみちこのままかい」



妹「ごめんね、サンドイッチ食べてたら遅くなっちゃって」

兄「食べた後なのに小走りに走って大丈夫か?」

妹「大丈夫。それでね、お兄ちゃんにもうひとつ謝らなくちゃいけない事があるの」

兄「どんな事?」

妹「マスターとお兄ちゃんがファミレスから出てった後、兄友さんに話しかけられたの」

兄「え? 兄友居たんだ。気が付かなかったな」

妹「それでね、カクカクシカジカってことがあって…」

兄「話したの? 僕たちが愛し合ってる事」

妹「仕方が無かったのよ。兄友さんにしつこく誘われてつい…」

妹「ごめんねお兄ちゃん、取り返しのつかない事しちゃって」ジワッ

妹「どんな罰も受けるから、私の事を嫌いにならないで…」ポロッ

兄「ま、また罰とか嫌いにならないとか大げさだな。僕は何があっても妹を嫌いになる事は無いよ」

妹「だって、お兄ちゃんが兄友さんに変人扱いされちゃうし、この事を兄友さんにツイッターとかで晒されたら…」

兄「兄友はそんなことする人じゃないよ。もし晒されたり変人扱いされたらそれはそれでいいじゃん」

兄「僕たちが愛し合ってる事は、いつかは兄友に知られると思っていたからね。それがほんのちょっと早くなっただけの事さ」

兄「例え兄友にツイッターで晒されても変人扱いされても、妹がいれば平気だよ」ダキ

兄「だから、今回の事はすっかり忘れて、ね」ナデナデ

妹「頭だけじゃなくてお尻も撫でて…」ギュ

兄「ん」ナデナデ

妹「もっと…」

兄「またお尻が大きくなっちゃうんじゃないか?」ナデナデ

妹「いいの」

妹「忘れるためにも今夜はいっぱい愛しくれる?」

兄「ああ、何回でも抱いてあげるから。さ、帰ろう」スッ

妹「うん…」

―――数日後、遊歩道

兄・妹(あ、兄友と兄友姉さん…)

兄友・兄友姉(あ、兄と妹ちゃん)

兄「元気か?」

兄友「あ、ああ」

兄「兄友、今ちょっと話せないか?」

兄友「いいけど」

兄「妹、悪いけど飲み物買って来てくれないかな?」

妹「あ、うん」

兄友「姉貴も何か飲み物買ってきてよ」

兄友姉「いいわよ。妹ちゃん、一緒に行こう」

妹「はい」

兄「…」

兄友「…」

兄「妹から聞いたよね? 僕達の事」

兄友「まぁな」

兄「正直どう思った?」

兄友「青天の霹靂だったよ。俺が好きになった女性が俺の友達でもある実の兄と男女の関係だなんて」

兄「なんかすまんな」

兄友「気にするな。俺も妹ちゃんをしつこく誘ったのは申し訳なく思ってる。まぁ因果応報だよな」

兄友「今にして思えばだけど、兄と妹ちゃんは兄妹って言うより恋人同士って雰囲気だったよな」

兄友「2人で歩いている時はいつも腕組んだり腰に手をまわしててさ、兄妹にしては仲が良すぎるって思ってたんだよ」

兄友「妹ちゃんに初めて会った時だったかな、兄が俺に『一緒に食事に行かないか』って言った時に妹ちゃんが兄のケツのあたりをつねっていたのを見たんだよ」

兄「あ、そんなことがあったね」

兄友「忘れてたんかい」

兄友「あの時は特に気にもしなかったんだけど、あれは『2人きりの食事なんだから余計な事をしないで』っていう意思表示じゃなかったのかな」

兄「だったのかもな」



兄友姉「待って妹ちゃん、私達も2人でお話ししましょうよ」

妹「え、でも、飲み物買わなくていいんですか?」

兄友姉「あの2人が私達に『飲み物買って来て』って言ったのは『ちょっと外してくれ』って言う意味よ」

妹「あ、そうですね」

兄友姉「さ、座って」

兄友姉「ごめんね。うちのバカ弟が嫌な思いさせちゃって」

妹「いえ…」

兄友姉「もう二度とあんな事させないようにするから」


兄友姉「妹ちゃんは特別な人とお付き合いしてるんでしょ?」

妹「特別というよりは特殊な人と言いますか特異な人と言いますか」

兄友姉「私はね、一番の幸せは好きな人と一緒に居る事だと思ってるわ。その相手が血の繋がりがあるかないかは関係ないと思うよ」

兄友姉「世間からの風当たりは強いと思うけど、そんなの気にしないで堂々と生きていきなさい」

妹「は、はい」

兄友姉「だけど妹ちゃんも罪な人よね。イケメンの弟を2回も振るなんて」

妹「好きな人がいるので」

兄友姉「分かってるわよ。妹ちゃんが捨てたから私が拾っちゃったけど」

妹「は?」

兄友姉「えへへ」



兄「今まで通り友達でいてくれるかな?」

兄友「当たり前だろ。俺も似たようなもんだからさ」

兄「え?」

兄友「実は俺も今姉貴と付き合ってるんだ」

兄「そうなのか?」

兄友「ああ、つまり兄とは似た者同士ってことだな。ただ俺達は血の繋がりは無いけどね」

兄「え? 義理の姉弟だったの?」

兄友「そうなんだよ。だって俺ら似てないだろ?」

兄「そう言えば確かに…」

兄友「今日は話せてよかったよ。兄といつまでも気まずいままでいるのは嫌だったからな」

兄「僕もだよ」

兄「兄友は今芸能プロダクションに勤めてるんだって?」

兄友「ん? ああ。勤めているって言っても雑用係だよ(本当は入居する雑居ビルの掃除のバイトだけど)」

兄「大変だな」

兄友「まぁな」

兄「そろそろ2人に戻ってもらうか」

兄友「だな」

兄友「」フルフル



兄友姉「弟とは血の繋がりは無いのよ。親が再婚して4年前に姉弟になったんだけどね」

妹「え、知らなかった」

兄友姉「弟はイケメンでしょ? 一目惚れしちゃったの。だけどアプローチしたけど中々振り向いてくれなくて」

兄友姉「血の繋がりが無いとはいえ姉弟だからね。微妙に避けられたわ。姉弟で愛し合うなんてあり得ないって思ってたみたいなの」

兄友姉「だけど兄君と妹ちゃんの関係を知って考えが変わったみたい」

兄友姉「愛し合う兄妹が実際にいるのを知って、『だったら自分もいいかな』って思ったらしいのね」

兄友姉「私が貰っちゃった後は妹ちゃんが想像してるとおりよ」

妹「男女の仲になったんですか?」

兄友姉「そう言う事。あ、向こうの2人が笑顔で手を振ってるわ、行きましょう」

妹「あ、はい」

兄友姉「丸く収まったみたいね」

兄友「喧嘩別れしたら笑顔で手振るかよ」

兄友姉「あい変わらす憎たらしい口きくんだから」

兄「まぁまぁ」

妹「私もホッとしたよ」

兄「心配掛けたね」

兄友「妹ちゃん」

妹「はい」

兄友「その…、あの時はごめんね。もう二度としないから」

妹「いえ、もう何とも思ってませんから(お兄ちゃんに忘れさせてもらったからね)」

兄友「じゃ、俺これからバイトだから」

兄「ああ、今度4人で食事しよう」

兄友「お互い伴侶は大切にしようぜ。またな」

妹「兄友姉さん、またお会いしましょう」

兄友姉「ええ、いつでもね」

***

続きます

―――結婚式前日、リビング

兄「いよいよ明日だね」

妹「何だか夢みたい」

兄「」ツネリッ
妹「痛いよ」

兄「ごめん、でも夢じゃないでしょ?」

妹「うん、夢じゃないね」

兄「散歩に行かないか?」

妹「いいよ」

―――遊歩道

妹「そこに座ろうよ。私達が恋人になった場所よ」

兄「あ、そうだったね」

「ママー、マッテヨー」
「ホラ、ハヤクイラッシャイ」

妹「」ジー

兄「…」

兄「やっぱり欲しいか? 子供」

妹「うーん、とっても複雑なんだ」

兄「複雑?」

妹「お兄ちゃんとの間に生まれる子供だから欲しいけど、私達の間に生まれるなんて子供がかわいそうでしょ?」

兄「それはあるよね」

妹「それにさ、もし赤ちゃんが生まれたらお兄ちゃんからの愛情が半分になっちゃう…」

兄「そんなこと無いよ。まぁ確かにもし赤ちゃんが生まれれば僕だって赤ちゃんの面倒をみるわけだから」

兄「妹と接する時間は今までと同じって言う訳にはいかないけど。妹に対する愛情は変わらないよ。

兄「接する時間は100を2で割れば50になっちゃうけど、愛情は100を2で割っても100のままだよ」

妹「だったらいいけど。でもさ、赤ちゃんが女の子で大きくなって、とても綺麗な女性になったりして、お兄ちゃんを取られちゃったらやだな」

兄「そんなこと無いってば。親子だよ?」

妹「一番身近な男性を愛しちゃった母親から生まれるんだから、その遺伝子も受け継いじゃうと思うけどな」

兄「心配しないで、僕は妹が一番だよ。たとえ女の子が生まれてどんなに綺麗な女性になっても僕は妹を一番愛し続けるよ」

兄(とはいっても、妹と娘が僕を取り合うのを見てみたい気がしないでもないが)

妹「今なんか変なこと考えてなかった? 一瞬顔がにやけたよ?」

兄「」ギク

兄「そ、そんなこと無いよ」

妹「」ジトー…

兄「本当だってば(本当は考えてたけど)」

妹「じゃ言葉で証明して」

兄「あ、ああ…」

兄「愛してるよ。僕は妹だけだから。今でも、これからも」

妹「私も愛してる」

チュッ

兄「ふふっ」
妹「」ニコ


妹「でも、子供は作らない方がいいよね」

兄「そうだね。さっき妹も言ってたけど、僕たちはよくても子供が可哀想だよ」

妹「私もどうしても欲しいわけじゃないから」



妹「もし生まれ変わったら今度もお嫁さんにしてくれる?」

兄「もちろんだよ。でも今度は妹と双子で生まれたいな」

妹「…血の繋がった兄妹がいいの?」

兄「お母さんのお腹の中から一緒に居られるんだよ?」

兄「そしてさ、血の繋がった兄妹でも自由に恋愛や結婚や出産ができるような、そう言った世界で生まれたいね」

妹「あ、そうか。そうだね」

妹「…」

妹「お父さんとお母さんは今頃どう思っているかなぁ…」

兄「普通に考えれば2人そろって勘当ものだよね」

妹「家に帰ったらお父さんとお母さんに謝ろうよ」

兄「うん、一緒に謝ろう」



妹「お兄ちゃん、ひとつわがまま言っていいかな」

兄「ん?」

妹「明日の結婚式なんだけど、文鳥ちゃんを参列させたいの」

妹「2人だけの結婚式で参列する人はいないから、やっぱり何となく寂しいじゃない。だから参列者の代わりにどうかなって思うんだけど」

兄「一生に一度だから心残りの無い結婚式にしたいよな。ペット同伴が可能かどうか式場に訊いてみるよ」

兄「あ、はい、分かりました。では明日よろしくお願いします」

妹「何だって?」

兄「OKだよ。だけど鳥かごから出さないようにしてくれって」

妹「よかった」

妹(文鳥ちゃんが私の夢の中に出てきてアドバイスくれたからここまで来られたんだもんね、恩人なんだから参列してもらわなくちゃ)

兄「さ、帰ろうよ」

妹「遊歩道沿いの紫陽花も今が見頃よね」

兄「ちょうど満開だね」

妹「見事よね。綺麗に咲いてて」

兄「妹、こういう時は『私とどっちが綺麗?』って訊くんだよ」

妹「あ、じゃ、私とどっちが綺麗?」

兄「もちろん妹だよ」

妹「えへへ」

―――帰宅後、仏壇の前

チーン

兄「父さん母さん、僕と妹は形式的にですけど結婚することになりました」

兄「今頃父さんと母さんは怒り心頭だと思いますけど、それでも僕たちは一緒になります」

兄「ごめんなさい父さん母さん」ジワッ

妹「ごめんなさい」ジワッ

兄「この事を許してもらおうとは思っていません。だけど僕たちはこうすることが一番幸せなんです」

―――翌日、結婚式場控室

兄「妹、とても綺麗だよ。よく似合ってる。妹はウェディングドレスを着るために生れて来たのかな」

妹「お兄ちゃんもかっこいい、白い馬に乗ったら白馬に乗った王子様だわ」

兄「いつかは妹のウェディングドレス姿を見るだろうと思ってたけど、まさかお相手が僕になるとは思ってもみなかったけどね」

妹「私は以前はお兄ちゃんのウェディングスーツ姿は見たくないって思ってたの」

兄「何で?」

妹「他の女性と結婚するってことだからよ。だからお兄ちゃんのウェディングスーツ姿は想像するだけでも嫌だったな」

妹「お兄ちゃんにプロポーズされて事実婚の事を知る前の話だけどね」

妹「逆に今は毎日でも見たいって思うけど」

兄「毎日ウェディングスーツ着るなんて肩が凝りそうだな」

コンコン

係員「失礼します。祝電が届いておりますのでお持ちしました」

兄「祝電?」
妹「え」

係員「はい。こちらになります」

兄(おかしいな。今日の結婚式の事は誰にも話してないのに)

係員「あと15分程で神父様がチャペルに入られますのでお支度をしてお待ちください。失礼しました」

兄「あ、お世話様です」

妹「誰から?」

兄「えーっとね…、マスターとマスター妹さんとね、伯父さんと伯母さんからだよ」

妹「何で今日の事知ってるんだろう? 誰にも話してないんだけどねぇ。お兄ちゃんも話してないでしょ?」

兄「話してないよ」

兄「まぁ伯母さんは1聞いて10どころか100位知っちゃう人だからねぇ。だけどマスターとマスター妹さんは何で知ってるんだろうな」

妹「ね」

兄「今度カフェに行ったら訊いてみよう」

兄「ちょっとトイレに行ってくるね。妹も行っといたら?」

妹「うん、先に行ってて」

妹「文鳥ちゃん、今日こうして結婚式を迎えられたのは文鳥ちゃんのおかげよ。ありがとうね」

文鳥「ピッ、ピピッ(妹チャン、ヨカッタネ)」



コンコン

係員「失礼します。お時間になりましたのでチャペルへお越しください。鳥かごは私がお持ちします」

兄「はい」

妹「よろしくお願いします」

係員「チャペルへ入られましたらお2人揃って神父様の前までお進みください」

係員「鳥かごは一番前の参列者席横のテーブルへ置かせていただきます」

―――チャペル

兄(あれ!? マスター?)

妹(え!? どうしてマスターが神父さんなの?)

神父(マスター)ニコ



神父「本日はおめでとうございます」

兄・妹「ありがとうございます」

神父「お2人共もう少し前へ」

兄・妹「はい」

神父「私達は、喜びのうちに今日の日を迎え、兄さんと妹さんを囲んで神の前に集まっています」

神父「お二人は今、私達の父である神の前で、将来を共にする絆を結ぶことを望んでおられます」

神父「この厳粛な時に当たり、共に祈りを捧げ、今日神が語られる言葉をお2人とともに聞きましょう」

神父「そして、父である神がお二人を祝福し、いつまでも一つにしてくださるよう、私達の主を通して願いましょう」

神父「汝、兄は、この女、妹を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も共に歩み」

神父「他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

兄「はい、誓います」

神父「汝、妹は、この男、兄を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み」

神父「他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

妹「はい、誓います」

神父「お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれた このお二人を神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう祈りましょう」

神父「宇宙万物の造り主である父よ、あなたはご自分にかたどって人を造り、夫婦の愛を祝福してくださいました」

神父「今日結婚の誓いをかわした二人の上に、満ちあふれる祝福を注いでください。二人が愛に生き、健全な家庭を造りますように」

神父「喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、あなたに支えられて仕事に励み、困難にあっては慰めを見いだすことができますように」

神父「また多くの友に恵まれ、結婚がもたらす恵みによって成長し、実り豊かな生活を送ることができますように」

神父「わたしたちの主によって」

神父・兄・妹・係員「「「アーメン」」」

神父「2人共おめでとう!」

係員「おめでとうございます」

兄夫「」ニコ
妹妻「」ジワッ

文鳥(オ兄サン、妹チャン、オメデトウ)

―――記念撮影後、控室

兄夫「まさかマスターが神父さんだったとはねぇ。驚き桃の木山椒の木、ブリキにタヌキに洗濯機だな」

妹妻「キャハハ…、何よそれ」

兄夫「それだけ驚いたってことだよ」

妹妻「でもマスターが神父さんだったからあんまり緊張しなかったね」

兄夫「だね。僕もマスターが神父さんだって分かったら緊張感が無くなっちゃったよ」

妹妻「…」

兄夫「…」

妹妻「お兄ちゃん…、不束者だけど末永くよろしくね」ダキ

兄夫「こっちこそよろしくね。絶対に守ってみせるから」ギュ

妹妻「これからは『あなた』って呼んでいい?」

兄夫「なんか照れ臭いな。でもまぁいいけど」

妹妻「じゃ、あなた、今夜は朝まで寝かさないから///」

兄夫「う、お手柔らかにね」

コンコン

兄夫・妹妻「」スッ

係員「失礼します。本日はおめでとうございます。結婚証明書をお持ちしました」

兄夫「あ、ありがとうございます」

係員「それとですね、神父様がお二人にお話があるとのことなのですが、お通ししてよろしいですか?」

兄夫「はい、いいですよ」

係員「では少々お待ちください」

コンコン

マスター(神父)「おめでとう、2人共」

兄夫「ありがとうございます。いやー、まさかマスターが神父さんだったなんて。びっくりしましたよ」

妹妻「そうですよ。なぜ今まで黙ってたんです?」

マスター「話そうと思っていたんだけどなかなか話すタイミングが無くてな」

マスター「新婚旅行には行くのかい?」

兄夫「はい。北海道を2週間位かけて周ろうと思っているんですよ」

マスター「お、いいねぇ。今頃北海道はいい季節だよ」

マスター「あ、そうだ、2人が新婚旅行に行ってる間、文鳥を預かってあげるよ」

妹妻「え? いいんですか?」

マスター「以前セキセイインコを飼っていた事があってな、飼育方法はそんなに変わらないだろ?」

兄夫「はい、だいたい同じです」

妹妻「ではお言葉に甘えて。お願いしますね」

マスター「任せといて」



マスター「実は俺な、神父としての活動はもう控えようと思ってるんだ」

兄夫「え? どうしてですか?」

妹妻「勿体ないですよ」

マスター「最近カフェに来るお客さんが増えてね、忙しくなってきたから本業に専念しようと思って」

マスター「それに2人共知っているとは思うが、自分の妹に告白されてな。兄夫君の意見を参考に考えた末に付き合う事にしたんだよ」

妹妻(よかったねマスター妹さん)

マスター「神に仕える自分が神の教えに背くような事をするのもどうかと思ってな」

妹妻「あ、今日私達を祝福してくださったのは神の教えに背くのでは?」

マスター「気にするな。今回が最後の神父としての活動だから」

兄夫「何だかすみませんマスター」

マスター「いいっていいって。俺はもしかしたらカムバックできるかもしれないって思っているんだよ」

兄夫「どうしてですか?」

マスター「少しずつだけど同性愛が受け入れられるようになって来てるから」

マスター「ひょっとするとこの先兄妹の恋愛も受け入れられるようになるかもしれないからね」

兄夫「そうですね。未来はどうなるか分かりませんから。そうなったら是非カムバックしてくださいね」

妹妻「あなた、兄妹の恋愛が受け入れられるように何か活動する?」

兄夫「え、大変そうだな」

マスター「お、もう『あなた』って呼んでるのかい? アツアツだねぇ」

妹妻「///」

―――翌朝早朝、事後

兄夫「はぁ…、まさか本当に朝まで寝かせてくれないなんて」

妹妻「だから言ったでしょう?」

兄夫「どこにそんな体力があるの?」

妹妻「あなたからの愛を体の中で体力に変換するのよ」

兄夫「まいったな」

妹妻「でも不思議ね。結婚式をして神様の前で宣誓すると、何だかあなたへの想いが一段と深くなったような気がするの」

兄夫「同感だよ。僕も結婚前よりずっと妹妻が愛おしく思えるよ」

妹妻「でも神様は私達の宣誓を受け入れてくれるかな?

兄夫「どうだろうね」

妹妻「もう絶対にあなたから離れないから…。何があってもね」ダキ

兄夫「僕も妹妻を絶対に離さないよ。何があっても」ギュ

妹妻「何だかまたムラムラしてきちゃった。もう一回いい?」

兄夫「いやもう無理」

***

続きます
次の投下で完結します

次の投下は、日曜日の夕方前後か月曜日の昼前後になりそうです

===兄32歳・妹29歳
―――リビング

妹妻「文鳥ちゃん、入れ物に入った水を取り換えるねー」

妹妻「あら? 文鳥ちゃん?」

文鳥「」

妹妻「あなたぁ!」

兄夫「ん!? どうした?」

妹妻「文鳥ちゃんが…」ジワッ

文鳥「」

兄夫「文鳥ちゃん…」

妹妻「昨日あたりから元気がなかったから動物病院に連れて行こうと思ってたんだけど…」ポロッ

兄夫「文鳥の寿命は7~8年って言われているのに11年生きたからな。よく生きたよ。ペット霊園で手厚く葬ってあげよう」ジワッ

兄夫「今夜の兄友達との飲み会、延期してもらう?」

妹妻「うん、文鳥ちゃんを葬った日の夜にしてもらえるかな」

兄夫「じゃ、兄友に連絡しとくよ」

―――翌日、文鳥の葬儀後、居酒屋
兄友と兄友姉は結婚しました(2人に血の繋がりは有りません)。

兄夫・妹妻・兄友・兄友嫁「「「「かんぱーい」」」」


兄友嫁「ぷはぁ…」

兄夫「相変わらず兄友嫁さんは飲みっぷりがいいですねぇ」

兄友「兄友嫁にとってビールは水みたいなもんだよ」

兄友嫁「そう言う事」

兄夫「妹妻はそんなに飲んで大丈夫か? 酒飲めないのに」

妹妻「今日は何だか飲みたい気分だから」

兄友「何かあったのか?」

兄夫「ああ、うちで長年飼ってた文鳥が死んじゃってさ。妹妻が可愛がってたからね」

兄友嫁「あら、妹妻ちゃんも文鳥も可哀想に」

妹妻「でももう大丈夫ですから」

兄夫「だけど妹妻、酒は程々にしときなよ」

妹妻「分かってるわ」



兄友嫁「妹妻ちゃん、あんたもう美魔女よね。一回美魔女コンテストとかに出てみたら?」

兄友「俺もそう思うよ」

妹妻「いや私はいいですよ」

兄夫「僕も一度勧めたんだけど、怖い顔して嫌がられて」

妹妻(私はあなた(兄夫)だけの女でいたいから)

兄友嫁「でも本当に綺麗よねぇ。私が百合に走っちゃったら責任とってね」

妹妻「やめてくださいよぉ」

兄友嫁「まぁそれは冗談だけど」

兄夫「兄友嫁さんも兄友と付き合い始めてから一段と綺麗になりましたよね」

兄友嫁「あら、そんな事言われたら兄夫君にキスしちゃうぞ」

妹妻「だめ!!」

兄夫「いやだから妹妻…」

妹妻「あ、いえ、あの、ごめんなさい…」

兄友姉「もう、兄夫君の事になると本気になっちゃって。本当に可愛いんだから妹妻ちゃん」

兄友「そりゃ大事な旦那様だもの」

兄友姉「でも妹妻ちゃん、綺麗になる秘訣ってあるの?」

妹妻「えーっと…、それは」

兄友「兄夫を愛することだよね」

妹妻「うーん、どうなんでしょう…///」

兄友嫁「でもそれが正解だと思うわ」

兄友「女は恋をすると綺麗になるって言うのは強ち嘘でもないよな」

兄夫「それは言えてる。兄友嫁さんもそうだからね」



兄友嫁「旦那様~、愛してる~ぅ」チュチュチュ

兄友「わ、わかったよ兄友嫁。わかったから」

妹妻「Zzz…」

兄夫「そろそろお開きにするか?」

兄友「そうだな。兄友嫁がキス魔になったってことは相当酔ってるってことだからな」

兄夫「妹妻、帰るよー。おーい」

妹妻「う…、うーん…」

兄夫「しょうがないなぁ、肩貸してやるか」

―――居酒屋の外

アリガトウゴザイマシター

兄友「今日は楽しかったよ、また飲もうぜ」

兄夫「ああ、また飲もう」

兄友「妹妻ちゃん酔い潰れてるけど大丈夫か? 家まで送るの手伝おうか?」

兄夫「いや、近いし大丈夫だよ」

兄友「何かあったら呼べよ」

兄夫「ああ、その時は頼む」

兄友「じゃ、またな」

兄友嫁「じゃあね~、兄夫君、妹妻ちゃん」

兄夫「またねー」

妹妻「…」

―――帰り道

妹妻「ふうぅ…」ヨロヨロ

兄夫「ほら、ヨロヨロ歩かないで。酒飲めないのに飲むからだよ」

妹妻「しょうがないっしょ~、酒だけじゃなくてヒックお兄ちゃんにも酔っちゃうんだからぁ~」

兄夫(相変わらず酔うと『お兄ちゃん』に戻っちゃうんだな。ってことは次は…)

妹妻「お兄ちゃん抱っこぉ~」ダキ

兄夫(やっぱり…)

妹妻「…」

妹妻「お兄ちゃん、テレサ・テンじゃないけど別れの無い国ってどこにあるんだろうね」

兄夫「別れのない国か、本当にあるといいね」

***

===兄34歳・妹31歳
―――両親の墓前

僧侶「それでは、私はこれで失礼いたします」

兄夫「あ、どうもありがとうございました」

妹妻、伯父、伯母「ありがとうございました」


兄夫「僕たちも行きましょうか」

伯父「ああ、行こう」

兄夫「父さん母さん、また来るね」

妹妻「また来るわね」

伯父「兄夫君、次の法事は何回忌になるんだ?」

伯母「やぁね、目上のあんたがそう言う事知らないなんて」

伯父「すまん、冠婚葬祭の事は本当に疎くてな」

兄夫「今回が十三回忌なんで、次は十七回忌ですね」

伯父「分かった。勉強になったよ」

伯父「ところで、俺の息子夫婦が家の中をリフォームしたいって言ってるんだけど、構わないか? 孫も大きくなったことだしね」

兄夫「全然構いませんよ。な?」

妹妻「そうですよ。もうとっくに私達のものではないですし、息子夫婦さん達の好きにしてもってください」

伯父「2人の元実家だし、2人の思い出が詰まった家だから、一応了解を得ておこうと思ってね」

兄夫「そこまで気を遣ってもらわなくてもいいですよ」

妹妻「伯父さん伯母さん、今まで訊こうと思って訊かなかったんですけど、私達の結婚式の事はどうやって知ったんですか?」

伯母「あ、あれはね、東京の2人の家にお邪魔した時に、テーブルの上に置いてあった結婚式場の申込用紙を見ちゃったからなのよ」

伯母「ごめんなさいね。盗み見るつもりは無かったんだけど」

妹妻「あ、いえ、長年の私達の謎が解けましたよ」

兄夫「1を聞いて100位知っちゃう伯母さんだから、祝電を受け取った時は妙に納得しましたけど」

伯父「俺は止めとけって言ったんだけどね。2人だけの結婚式で2人から話も聞いてないから」

伯母「だけどどうしてもお祝いしてあげたくて」

妹妻「でも嬉しかったですよ、2人だけの結婚式で誰にも祝ってもらえないと思ってたからちょっと寂しかったんですよ」

伯母「ほらごらんなさい」

伯父「う、まぁ結果オーライだよな」

兄夫「伯父さん、伯母さん、僕たちはここで失礼します」

伯父「あ、駅まで俺の車で送ってくよ」

兄夫「いえ、伯父さんの家とは逆方向だし、陽気がいいから歩いていきますよ」

伯父「そうか。2人共元気でな」

兄夫「伯父さん達もどうかお元気で」

伯母「近くに来た時はいつでも私達の家に寄ってね」

妹妻「はい、是非」

兄夫「失礼します」

妹妻「伯母さん、またね」

伯母「またね妹妻ちゃん」

伯父「腕なんか組んだりして、夫婦そのものだな」

伯母「2人共幸せそうね」

伯父「2人が男女の仲になってるって聞いた時はどうなるのかって心配したけど、杞憂だったな」

伯母「だから言ったでしょう? あの2人なら心配無いって」

伯父「ああ。心配して損したよ。さ、行こうか」

―――墓地の最寄駅

兄夫「えーっと、あわせて88歳だから…、3つ違いだと…」

妹妻「あなた、なにブツブツ言ってるの?」

兄夫「ん? このポスターに書いてある切符が何年後に使えるのか計算していたんだ」

(フルムーン夫婦グリーンパス)
(ふたりあわせて88歳以上から、JR全線グリーン車(新幹線「のぞみ号」など、一部の列車・設備を除きます)がご利用になれます)

妹妻「へぇ、こんな切符があるのね」

兄夫「夫婦を証明する書類は要らないみたいだから、僕たちでも使えるよ」

妹妻「そうなんだ。でも私達が使えるのはまだまだ先でしょ?」

兄夫「12年後だよ」

妹妻「12年後かぁ。でもこの切符使って新婚旅行で行った北海道とか行こうよ」

兄夫「そうだな。またぐるっと回ってみるか」

「マモナク、1バンセンニ…」

妹妻「あ、電車が来るから行こうよ」

―――帰りの電車内

妹妻「Zzz…」

兄夫(そろそろ起こさないとな)

兄夫「妹妻、もうすぐ降りる駅だよ」

妹妻「ん、んん…、あ…、ふぁ~あ…。あなた、お目覚めのキス」

兄夫「何言ってる。電車の中だよここは」

妹妻「いいじゃないの」

兄夫「だめだよ。2、3人だけど他のお客さんも乗ってるし」

妹妻「…ケチ」

兄夫「じゃあさ…」

妹妻「?」

兄夫「」ナデナデ

妹妻「えへへ、あなたに頭撫でてもらうなんて何年振りだろうね?」

兄夫「覚えてないなぁ」

妹妻「これからも時々撫でてくれる?」

兄夫「家に居る時にね」

妹妻「私達の仲、冷める事も無くてずっとアツアツだね。寝る時もお風呂も出かける時もいつも一緒で」

兄夫「こういう兄妹…、じゃないや夫婦がいてもいいんじゃない?」

妹妻「これからもよろしくね」

兄夫「こちらこそ」

妹妻「…今夜も寝かさないから」ボソ

兄夫「え? 何?」

妹妻「ううん、何でもない」

***

その後も、兄夫と妹妻は2人の愛情が冷めることなく幸せに暮らします。

月日は流れに流れ、兄夫78歳、妹妻75歳の時に、
2人の元実家で暮らす伯父伯母の孫夫婦の元で一緒に暮らし始めますが、
兄夫が95歳、妹妻92歳の時に、2人は老衰でほぼ同時に天に召されました。


孫「お爺ちゃん…、お婆ちゃん…」ジワッ

孫嫁「2人共天寿を全うしたわよね、お疲れ様…」ポロッ

―――天国

兄「ん…、あ、ふぁ~あ…」

妹「んん、あ…、ふぁ~」

兄「ん? どこだここは?」

妹「あ、お兄ちゃんおはよう…、ここどこ?」

兄「あ、おはよう」

「2人ともお目覚めですか?」

妹「あなたは?」

文鳥「お2人が飼っていた文鳥ですよ。神様の気まぐれで擬人化した姿になってしまいましたが」

兄「え? 文鳥ちゃんなの?」

文鳥「はい」

妹「驚いたわ。コスプレかと思っちゃった」

文鳥「まぁそう思われても仕方ありません」

兄「それよりここはどこ?」

文鳥「天国ですよ」

妹「え? じゃ死んだの私達?」

文鳥「はい、下界ではね」

兄「そうだ、確か老衰で…」

妹「でもお兄ちゃん、私達死んだときの姿のままかと思ったけど違うね」

文鳥「2人共体は2人が結ばれた頃の年齢のものです。もちろん運動能力や頭脳も年相応のものですよ」

兄「へぇ、何だか嬉しいな」

妹「文鳥ちゃん、下界ではありがとうね。おかげでお兄ちゃんと幸せな生活が出来たわ」

文鳥「いえ、お役に立てて嬉しいです」

兄「どんなことしたの?」

文鳥「お兄さんの事で悩んでいる時に、妹ちゃんが居眠りしてる時に2回程アドバイスをしたんですよ」

兄「僕の事でねぇ」

妹「下界で私が幸せになったのは、文鳥ちゃんのアドバイスのおかげでもあるのよ」

兄「そうなんだ。ありがとう文鳥ちゃん」

文鳥「どういたいまして」

文鳥「あちらへ行きませんか? お父さんとお母さんがお待ちかねですよ」

兄・妹「え!? お父さんとお母さんがいるの!?」

文鳥「はい、あちらに」

兄・妹「」タタタッ


兄・妹「!!」


兄・妹「お父さん! お母さあああん!」タタタタッ

父「兄! 妹!」

母「2人とも会いたかったわ!」

父「ごめんな、ごめんな。突然2人の前からいなくなっちゃって」ジワッ

母「よかった、再会できてよかった! 本当にごめんね2人共」ポロッ

文鳥「」ウルッ

兄「嬉しいよ、まさか父さんと母さんと再会できるなんて」ポロッ

妹「突然いなくなっちゃうなんて酷いよ2人共…」ポロッ

母「ごめんね妹」

父「本当に再会できてうれしいよ」

兄「父さんと母さんはいなくなった頃の体なんだね」

父「そうなんだよ、その頃の体か一番しっくりくるんだよ」

母「兄も妹も下界では仏壇の前で宣言した通り、2人で仲良く真面目に精一杯生きてたわね、母さん嬉しいわ」

兄「あ、でも…、僕達男女の仲になっちゃって」

妹「ごめんなさいお父さんお母さん」

父「なぁに、そんな事は気にしないよ。2人には辛い思いさせたしここは天国だから世間体なんか関係ないからな」

母「そうよ、2人が元気ならばそれでいいのよ」

母「でもまさかお父さんが予言したとおり本当に結婚しちゃうとは思わなかったけど」

母「2人で喧嘩もせずにずっと仲良く暮らしていたものね」

妹「私達の事、天国からちゃんと見ててくれてたんだね」

父「親だからな。当然と言えば当然さ」

兄「みんな揃うなんて何年振りだろうね」

妹「75年ぶり位じゃないかな」

父「天国は別れが無いからな、これからは永遠にみんな一緒だ」

妹「じゃもうあんなに悲しい思いをする事は無いのね」

兄「ここではずっと皆一緒だね」

父「これからみんなで語り明かそう。天国の食べ物を食べながら」

母「積もる話がたくさんあるわよ。さ、文鳥ちゃんも一緒に食べましょう」

文鳥「はい、いただきます」

―――完

終わりです。
最後まで長々とお付き合いくださいましてありがとうございました。

投下の合間にレスをくださった方へ
励みになりました。ありがとうございます。

乙!最初の方からずっと見てた!>>1にはまたなにか違うの描いてほしい

事後報告になりますが、幼少期から始まって年齢を具体的に示すアイデアは
”兄「妹が兄依存症になるまで愛でる」”
というSSから借用させていただきました。
素晴らしいSSだと思います。

>>402
ありがとうございます。
あいにく今のところ全く別のSSを書く予定はありませんが、このSSの
”新婚旅行編”
”兄のクラス会編”
を構想中です。
ある程度買いためましたら投下します。

>>404
訂正です
ある程度買いためましたら投下します。→ある程度書き溜めましたら投下します。

おつでした
次も期待しますよ

最後の最後で書き間違えるとは・・・orz

>>406
ありがとうございます。
期待に添えられるかどうかわかりませんが、まったく別のSSも構想が
固まってある程度書き溜めたら投下します。
それではノシ

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