サシャ「二人だけの、秘密の味です」(62)

・前々作『サシャ「キスの味、私に教えてください」』
 前作『サシャ「この味は、ウソをついてる味ですね」』の続編です

・ネタバレなし

・今更ですが部屋割りは
 【エレン・アルミン・ライナー・ベルトルト】
 【ジャン・マルコ・コニー】
 【ミカサ・アニ・ミーナ】
 【サシャ・クリスタ・ユミル】   でやっています

――夜、女子寮

サシャ「♪~」パタパタ

クリスタ「サシャ、ベッドの上で足をバタバタしちゃダメだよ、お行儀悪いよー?」

ユミル「シャツ1パン1の時点でお行儀なんてどこにもねえだろ。ほっとけほっとけ、どうせもう寝るんだし」アクビ

クリスタ「ダメだよ、こういう普段の振る舞いがいざっていう時に出るんだからね」

ユミル「はいはい、天使クリスタ様は普段からきちんとしててとっても偉いですねー」ナデナデ

クリスタ「もう、真面目に言ってるのにぃ……」むぅ

サシャ「♪~」ゴロゴロ

クリスタ「……サシャ、ご機嫌だね? 何かいいことあった?」

サシャ「はい、ありましたありました。明日のお昼、街にハンバーグ食べに行くんですよ」ムフフ

クリスタ「へえー、おいしいの? そこ」

サシャ「おいしいですよ~、なんたって私の行きつけのお店ですからね!」エッヘン

ユミル「……ライナーと行くのか?」

サシャ「? そうですけど……よくわかりましたね、ユミル」

ユミル(これでわからないほうがおかしい)

サシャ「あ、そうだ。クリスタ、雑誌返しますね」ゴソゴソ

クリスタ「? 雑誌? 何のこと?」キョトン

サシャ「この前、シーツを洗濯する時に落ちてきたんですよ……はい、これです」



   つ   『恋する乙女の恋愛マガジン5月号』



ユミル「!!」

クリスタ「え? 私こんな雑誌知らないよ?」

サシャ「あれ? そうなんですか? じゃあこれは――」

ユミル「クリスタに不健康な雑誌見せんなぁっ!」ガバッ

サシャ「あーっ! ユミル、返してくださいよ!」

ユミル「うるさい! こんな本なんかこうしてやる!!」ビリビリビリビリ

サシャ「ああーっ!! なんで破っちゃうんですかぁっ!」

ユミル「うるさいうるさい! いいから寝ろ! とっとと寝ろ!!!」フッ

サシャ「ちょっ……いきなり灯り消さないでくださいよ! 何も見えない!」

クリスタ(……なるほどね、ユミルの本だったんだ)クスッ

――夜、男子寮

ライナー「……」ジーッ...

アルミン「……」ペラッ...

ベルトルト「……」ボンヤリ

エレン「……なあライナー。何見てるんだ? エロ本?」ゴロゴロ

ライナー「違う。街の地図だ」ペラッ...

エレン「地図ぅ? なんでそんなモン見てんだ?」

ライナー「明日街にハンバーグを食べに行くんでな。近くに他に店がないか調べてる。後は迷わないように道順を確認してるだけだ」

エレン「……おいライナー、今なんて言った」ユラリ

ライナー「だから、道順を確認している」

エレン「違ぇよ。その前だ」

ライナー「ハンバーグを食べに行くと言ったんだが……」

エレン「ライナー……チーハンか? チーハンを食べに行くのか?」ギリッ....

ライナー「いや、チーハンと決まったわけじゃ」

エレン「この裏切りモンがあああああああああああああああ!!」クワッ!!

ライナー「!?」ギョッ

エレン「駆逐してやる……! 俺からチーハンを奪う奴は全て!」ギロッ

ベルトルト「ちょっ……エレン!? エレン落ち着いて!」ハガイジメ

ライナー「こら、暴れるんじゃない! 教官が来るだろ! ていうかお前ミカサと同じ目になってるぞ!」

エレン「一人でチーハン食べに行くなんて絶対許さねえぞライナー! 俺も連れて行け!!」クワッ!

ライナー「はぁ!?」

ベルトルト「アルミン、本読んでないでエレンを止めてよ!」

アルミン「エレンはチーハンを食べないと身体が腐る呪いにかかってるだけだよ」ペラッ

ベルトルト「適当なこと言わないでよ!」

アルミン「……ねえ、僕本読んでるから静かにしてくれる?」

ライナー「明日はサシャと行くからダメだ! エレン、お前は置いていく!」

アルミン「僕本読んでるから静かにしてくれる?」

ベルトルト「えっライナー、明日サシャと行くの!? 初耳なんだけど!」

アルミン「僕本読んでるから静かにしてくれる?」

エレン「俺も一緒に行く!」ジタバタ

アルミン「僕本読んでるから静かにしてくれる?」

ライナー「子どもかお前は! 我慢しろチーハンくら……い……」

アルミン「僕本読んでるから静かにしてくれる?」

ベルトルト「痛っ、エレン蹴らないで……ってば……」

アルミン「僕本読んでるから静かにしてくれる?」







アルミン「 僕 本 読 ん で る か ら 静 か に し て く れ る ? 」

ライナー「ああ……その、悪い」

ベルトルト「ごめん、アルミン……」

エレン「だってよアルミン、チーハンだぞチーハン! チーハン!」

アルミン「静かにしてくれる?」

エレン「チーハンが俺を待ってるんだぞ! 黙ってなんか……」

アルミン「静かにしてくれる?」

エレン「………………その」

アルミン「静かにしてくれる?」

エレン「………………………………ごめんなさい」シュン

アルミン「……」ペラッ





ライナー・ベルトルト(アルミン怖っ……)ゾクッ

――翌日 昼前 女子寮 ミカサたちの部屋

サシャ「♪~」クルッ

サシャ「わーい」クルクルッ

ミーナ「ふふっ、サシャったらはしゃいじゃってぇー」ウェヒヒ

クリスタ「仕方ないよ。サシャは普段あまりかわいい服着ないもの。浮かれたくもなるよね」

アニ「……服より先に食費に消えるんでしょ」

クリスタ「? なんで知ってるの?」

アニ「見てればわかるよ」

ミーナ(サシャかわいいなぁ……全然興味ないフリしてるのに部屋から出ようとしないでチラ見しているアニもかわいいなぁ……)ムフフ

アニ「ところでユミルは? 来なかったの?」

クリスタ「あはは、ちょっと色々あってね……フテ寝してるよ」

ミーナ(ユミルきゃわたん)ハァハァ

サシャ「ミカサ! ミカサ! 服貸してくださってありがとうございます!」クルクルクルクル

ミカサ「構わない。報酬はきっちりもらうつもりだから。ちなみに汚しても気にしなくてもいい」

サシャ「じゃあ遠慮なく着させてもらいますけど……お古なんですか?」キョトン

ミカサ「いいえ。この前買ったばかり」

サシャ「えっ……着れませんよそんないい服! 脱ぎます!」ヌギッ

ミカサ「いい。着ていって。デートとは、勝負のようなもの。他人から借りたお古で勝負しても勝てない」モドシッ

サシャ「そ、そうなんですか?」

ミカサ「そう。――いい? サシャ。あなたはもう次の段階に進むべき」

サシャ「次の段階……」ゴクッ

アニ(……もう段階としてはいろいろすっ飛ばしてる気がするけど、黙っておこう)

クリスタ(最初がキスで、次がアレだから、今回は……えっと……?///)カアアア

ミーナ(かわいいなぁサシャ)ムフフ

ミカサ「今日はそう……手を繋ぐの。難しいことは何も考えなくていい」

サシャ「はあ。手ですか」

ミカサ「そう。この手」キュッ

サシャ「わっ……ミカサ、改めて握手なんかしたら恥ずかしいですよ……///」

ミカサ「恥ずかしがってはダメ。この手は剣を握らなければいけない手だけれど、かといって大切な人の手を求めていけないわけではない」

ミカサ「あなたはかわいい。きっと大丈夫」ニコッ

サシャ「み、ミカサのほうがかわいいですよ……///」テレッ

クリスタ(サシャもかわいいよ……! 絶対大丈夫だよ!)グッ

ミーナ(ていうかどっちもかわいいよ! 私が保証する!)グッ

ミカサ「今日、もし手を繋げたなら――今度の休みはぜひ、私たちとダブルデートをしよう」キリッ

アニ(それが目的か)

サシャ「……ありがとうございます!」ニコッ

クリスタ「そういえばサシャ、今日は香水つけていかないの?」

サシャ「ご飯はできるだけ真っさらな状態で味わうものですよ、クリスタ」フフン

ミカサ「香水の匂いが肉の匂いと混じってしまったら悲惨なことになる。サシャの判断は正解」

ミカサ「……頑張って。きっとうまくいく。今日は掃除当番だから見守ってあげられないけど、私はいつでもあなたたちを陰ながら応援している」

ミーナ「そうだよ、がんばってねサシャ! 報告待ってるから!」

アニ「……ちゃんと財布持っていくんだよ」

サシャ「はい、みなさん……じゃあ行ってきますねー!」フリフリ

――昼間 街中

ライナー「……」ボーッ

ライナー(何も街で待ち合わせしなくても、兵舎から直接一緒に来ればよかったんじゃないか……?)

ライナー(腹減ったな……)  グー

ライナー(……よくよく考えたら、女と二人きりででかけるのははじめてだな)

ライナー(だが……)



サシャ「ライナー! 来ましたよー!」ピョンピョン



ライナー(……これはデートじゃなくて子守りだな。うん)

サシャ「お待たせしてすみません、一応早足で来たんですけど」

ライナー「いや、そんなに待ってないが……」ジーッ

サシャ「? どうかしました?」

ライナー「……スカート姿は新鮮だな」ジーッ

サシャ「そうですよね、兵舎じゃ訓練服姿が多いですしねー」クルクル

サシャ「これ、ミカサに貸してもらったんですよ! 似合います?」クルクルクルクル

ライナー「転ぶから回るな。行くぞ」

サシャ「はーい、案内しますね!」

――昼間 移動中

サシャ(よーっし、ミカサに言われたことしっかりやり遂げますよ!)フンス

サシャ(手を繋ぐなんて楽勝ですよね! 全くミカサは大袈裟なんですから……)チラッ

サシャ(!?)ギョッ



ライナー「それにしても、今日は晴れてよかったな」シミジミ



サシャ(ポケットに手を……イン……してますよ……!?)

サシャ(しかも両手……ですって……!?)ガーン

サシャ(こ、こういう時は引っ張り出せばいいんでしょうか……?)

サシャ(いや、ミカサの言っていたことを思いだして……!)エーット

ミカサ『今日はそう……手を繋ぐの。難しいことは何も考えなくていい』

ミカサ『恥ずかしがってはダメ。この手は剣を握らなければいけない手だけれど、かといって大切な人の手を求めていけないわけではない』

ミカサ『あなたはかわいい。きっと大丈夫』





サシャ(よくよく考えたらフワッとしたアドバイスしかもらってません……!!)ガーン

サシャ(いえ……きっと難しいことは考えないほうがいいんです……!)

サシャ(やりますよ……私は……!)グッ

サシャ「あの、ライナー……」

ライナー「どうした? 道を間違えたか?」

サシャ「間違えてませんよ! あのですね…………て、……て……っ!」

ライナー「て?」

サシャ「て、天気が……っ! いいですね……っ!」ギリッ

ライナー「? そうだな」

ライナー(何故悔しそうに……?)

――昼間 とある大衆食堂



   \イラッシャイマセー/   \オーダーハイリマース/    \チーハン/



ライナー「おお……こんなところがあったのか」キョロキョロ

サシャ「通りから外れたところにありますからね。ちょっとした穴場なんですよ、ここ」

サシャ(ミカサ、すみません……! 繋げませんでした……っ!)ギリギリ

ライナー(何故歯ぎしりを……そんなに腹が減っていたのか……?)

ライナー「……で、ここはハンバーグがうまいんだったか?」

サシャ「! そうなんですよ!」パァッ

サシャ「特にここのチーズハンバーグは絶品なんです!」

ライナー「」ゾクッ

サシャ「……? どうかしましたか?」キョトン

ライナー(……帰ったらアルミンにもう一度謝っておこう)

女店員「注文お決まりですかー?」

サシャ「私チーハンにします!」ハイッ

ライナー「あー……この、おろしハンバーグ? っていうので」

女店員「はーい、少々お待ちくださーい」



   \イラッシャイマセー/   \チーハン/    \オマタセシマシター/



ライナー「……混んできたな。ゆっくり食べられるといいんだが」

サシャ「あ、その心配はいりませんよ! ここ、結構混むんですけどいっぱいにはならないんです」

ライナー「へえ……不思議なこともあるもんだな」

サシャ「すぐ食べてさっさと出ちゃう人が多いんですよね。私は長めに居座りますけど」

女店員「お待たせしましたー。こちらチーズハンバーグとおろしハンバーグです」コトッ

女店員「どうぞごゆっくりー」



ライナー「おおー……膨らんでるな、真ん中」

サシャ「これが正しいハンバーグの姿ですよ! このはち切れるかはち切れないかってところが絶妙なんです!」フフン

サシャ「というわけで……いただきます!!」クワッ!

ライナー「いただきます。……こぼすなよ? 借り物の服なんだから」

サシャ「こぼすなんてもったいないことするわけないじゃないですか! 肉汁の一滴一滴全て味わいますよ私は!」エッヘン

ライナー「最後の一滴って……皿を舐めるのか?」

サシャ「……私を何だと思ってるんですかライナーは。そんなことしませんよ」むぅ

サシャ「あぁーおいひい……しあわせですぅ……///」トローン

ライナー「おお、うまいな」モグモグ

サシャ「でしょう? この味を知らないなんてもったいないですよね!」モグモグ

ライナー「こんなにうまいなら、俺もチーズハンバーグにしておけばよかったな」モグモグ

サシャ「? 食べたいんですか?」

ライナー「目の前でうまそうに食ってる奴がいるからな。気になってきた」

サシャ「じゃあ私のちょこっとあげますよ。その代わり、そっちのおろしハンバーグちょっとください」

ライナー「!?」

ライナー(あのサシャが……交換とはいえ他人にメシを分けているだと……!?)ガーン

ライナー「サシャ、お前熱でもあるんじゃないか!?」ガタッ

サシャ「違いますよ! いつもチーハンしか食べないので、違う味が食べてみたくなっただけです!」ムー...

ライナー「本当にそれだけか? 何か途中悪い物でも拾い食いでもしたんじゃ……!」

サシャ「どうしてハンバーグ食べに来るのに拾い食いなんかするんですか! ……というかライナー、食事中に立つのはマナー違反ですよ。ちゃんと座ってください」ギロッ

ライナー「す、すまん」スワリナオシ

ライナー(まさかサシャに注意されるとは……)ハァ

サシャ「えーっと、これぐらいでいいですかね」キリワケ

サシャ「どうです? もう少しいります?」

ライナー「いや、それくらいで充分だ」

サシャ「そうですね、それじゃあ……」











サシャ「……はいライナー、あーん」フォーク ズイッ

ライナー「」

ライナー「…………」

サシャ「? どうしたんですか? 早く食べてくれないとチーズが落ちちゃいますよ?」キョトン

ライナー「…………」スッ

サシャ「……? ああ、皿の上に乗せてくれってことですね。じゃあ乗せますねー」ヒョイッ

ライナー「…………どうも」

サシャ「? どうしたんですか? 早く食べないと冷めますよ?」キョトン

ライナー「…………そうだな」

サシャ「そうだ、私にも一口くださいよ! 冷めちゃったらおいしくないですし」

ライナー「…………」ヒョイッ

サシャ「おおー……これがおろしハンバーグですか……! いただきます!」パクッ

ライナー「…………いただきます」モグモグ....

サシャ「さっぱりしていていいですねぇ、おろしハンバーグ。これからの季節にはいいかもしれません」ホンワカ

ライナー「…………うまいな。チーハン」モグモグ

サシャ「おいしいですよねぇ」ホンワカ

女店員「お待たせしましたー」コトッ

サシャ「? ……あの、他に頼んでないはずですけど」

女店員「いえ、こちらは私からのサービスです。あなたたち、二人だけに」ニッコリ

サシャ「いいんですか? やったー!」バンザイ

ライナー「すみません、ありがとうございます」

女店員「いえいえー。お客さん、いつもおいしそうに食べてくれるんで」スマイル

女店員「この夏から出そうと思ってる氷菓子の試作なんですよー。後で感想聞かせてくださいねー」

サシャ「はいっ! いただきまーすっ♪」

ライナー「じゃあ、いただきます」



女店員「……あの」コソッ

サシャ「? なんですか?」

女店員「……向かいの彼、彼氏さんですか? うまくいくといいですね!」ボソッ

サシャ「」

ライナー「……おお、冷たくてうまいな」シャリシャリ

サシャ「そ、そうですね……」シャリッ

ライナー「確かに夏場に食べるにはいいな、これ」シャリシャリ

サシャ「そ、そうですね……」シャリッ

サシャ「…………」シャリッ

サシャ「甘いですね……このお菓子」



サシャ(…………)

サシャ(恋人同士に……見えるんですかね……?)

サシャ(でも、ライナーは……私のこと、特に何とも思っていない気がするんですが……)

サシャ「えっと……ごちそうさまでした」

ライナー「ごちそうさまでした。――よし、出るか」スッ

サシャ「そうですね。いくらでしたっけ?」ゴソゴソ

ライナー「いや、ここは俺が全部出す」

サシャ「え? 私も出しますよ?」キョトン

ライナー「うまい食堂を教えてもらった礼だ」

サシャ「お礼なんてそんな……ここに誘ったのは私ですし」

ライナー「こういう時は男に奢らせるもんだ。先に出てろ」

サシャ「……えっと、じゃあ、お願いします」

――昼 大衆食堂前

サシャ「……」ボンヤリ

サシャ(待ってるのって暇ですねー……)ボンヤリ

サシャ「……」ボンヤリ

サシャ(お菓子、おいしかったなぁ……)ボンヤリ

モブ男「なあ、ねーちゃん一人?」ポンポン

サシャ「」ビクッ

サシャ「……一人じゃありません」ボソッ

モブ男「なあ、そこにオススメの店があんだけど一緒に来ない?」

サシャ「……」ジッ...

モブ男「あー警戒してるの? 大丈夫だって、怖くないよー?」

モブ男「あのさ、そっちの食堂よりももっとメシがうまい店なんだけど――」

サシャ「おいしいパァンですか? 行きますっ!」ハイッ

――昼 大衆食堂

女店員「ありがとうございましたー、また来てくださいね」スマイル

ライナー「ありがとうございました。おいしかったです」

女店員「いえいえ、あの子いつも来てくれるんで。もう常連になっちゃってるんですよねー」スマイル

ライナー「そんなしょっちゅう来てるんですか?」

女店員「女の子はこの辺り一人で来ませんからね、目立ちますよやっぱり」

ライナー「目立つ……?」

女店員「この辺結構治安悪いんですよー。通り過ぎる分には問題ないんですけどね」

女店員「女の子一人だとちょっと危ないっていうか……ってあれ? そういえば一緒じゃないんですか? あの子」

ライナー「……ありがとうございました、また来ますから」ダッ

――昼 とある本屋前

ジャン(金髪貧乳と黒髪巨乳か……悩むな……)グヌヌ

ジャン(二冊も買ったらかさ張るからな……寮に持ち込むにはリスクが高い)

ジャン(この本屋、人目につかないから便利なんだが……正直ラインナップがイマイチなんだよなー……)

ジャン(そろそろ店を変えるか……? でも他の奴らに見つかるのは……)ウーン

ライナー「ジャン!」

ジャン「おわぁっ!! ……な、なんだライナーか。驚かせやがって」ドキドキ

ライナー「サシャを見なかったか?」

ジャン「はぁ? 芋女ぁ? あいつも街に来てるのか?」

ライナー「見ていないならいいんだ、邪魔したな。――あとその左手の本はベルトルトが持ってたぞ」ダッ

ジャン「マジで!?」

――昼 とある路地

サシャ「それで、お店はどこにあるんですか? もうちょっと奥ですか?」

モブ男「あれ? まだ信じてたんだ? そんなもんないよ」グイッ

サシャ「痛っ……ちょっ、腕離してください!」ジタバタ

モブ男「ていうかさぁ、知っててついてきたんじゃないのー?」ニヤニヤ

サシャ(一人くらいなら、なんとか私でも……!)ギロッ

モブ男「わー怖い。怖いから友だち呼んじゃおうかなー」ゾロッ

サシャ「え……!?」

サシャ(ご、五人に増えた……!? 多くないですか……?)

モブ男2「へー、結構かわいいじゃん」グイッ

サシャ「」ビクッ

モブ男3「おー怯えてる怯えてる」

サシャ「け、蹴りますよ!」

モブ男4「いいよー? スカートで蹴り技するとこみたいなー」ニヤニヤ

サシャ「う……ひ、人を、呼びますよ……!」

モブ男5「呼べばいいじゃん? 誰か来るわけ?」ニヤニヤ

サシャ「ううっ……」

サシャ(こんなことになるなら、対人格闘訓練真面目にやっておけばよかったです……!)ギュッ









「……そこで何してる」

サシャ「ら、ライナー……!」パァッ...

モブ男2「ああ? なんでもいいだろ? ――ぐあっ!」ドカッ

モブ男3「見世物じゃねえぞー。とっととどっかに――ぐえっ!」バキッ

モブ男4「てめえ、いきなり――ぎゃっ!」バシッ

モブ男5「この野郎――がぁっ!」ガツッ





ライナー「……これで全部か?」

サシャ「えっと、あそこにもう一人……」ユビサシ

モブ男「」ビクッ

モブ男「ど、どーもぉ……、お連れさん……でしたか……?」

ライナー「ああ、そうだ」

モブ男「それはその……失礼しました。それじゃ、俺はこれで……」

ライナー「……おいおい、そりゃあちょっとないんじゃあないか?」ドカッ

モブ男「ひっ……」



ライナー「……人の女に手を出して、五体満足で帰れると思ってるのか?」ギロッ...



モブ男「」ブクブクブクブク....

サシャ(……)ポカーン...

サシャ(さ、さすが成績第二位ですね……一気に五人も……ってそうじゃなくて!)

サシャ「あのっ、ライナー、もういいです! いいですから! それ以上やったら傷害罪で捕まっちゃいますよ!」アタフタ

ライナー「……それはまずいな」ポイッ

モブ男「」シロメ

ライナー「気絶したフリをしている奴が何人かいるな」ジッ...


                                 \ビクッ/


ライナー「……次に見かけたら憲兵団に突きだしてやる。覚悟しておけ」ギロッ



ライナー「……サシャ、帰るぞ」

サシャ「あ、はい……」トテトテ...

――夕方 街中

ライナー「よーっくわかった。お前から目を離したらろくなことにならん!」ガミガミ

サシャ「はい……返す言葉もないです……」シュン

ライナー「そもそもメシを食ったばかりでメシ屋に行こうとする奴があるか!」ガミガミ

サシャ「はい……おっしゃる通りでございます……」シューン...

サシャ(怒らせちゃいました……私が全面的に悪いんですけど……)ズーン....

ライナー「……よく見たら服も結構汚れてるな。それに、ところどころほつれてる」

サシャ「え? あ……っ! どうしましょう、ミカサからの借り物なのに……!」アタフタ

ライナー「後で俺からも謝っておこう。それで、他には何もされてないんだな?」ジッ

サシャ「いえ、されてないですよ……連れ込まれただけです」

ライナー「本当に?」

サシャ「こんなこと、ウソついてどうするんですか」むぅ

サシャ「でも、よく私がいるところがわかりましたね?」

ライナー「ああ、昨日街の地図を頭に叩き込んでおいたからな。おかげでなんとかなった」

サシャ「ライナーはすごいですねぇ……地図だけで辿り着いちゃうなんて」

ライナー「いくつか書いていない路地があって大変だったがな。早めに見つかってよかった。……怖くなかったか?」

サシャ「そりゃあ、少しは怖かったですけど……ライナーが来てくれましたから」

サシャ「私のこと、一生懸命探してくれたんですよね? ……ありがとうございます」ニコッ

ライナー「……」

サシャ「?」

ライナー「全く……ほら、帰るぞ」スッ

サシャ「……? 手?」キョトン

ライナー「お前、どこに行くかわかったもんじゃないからな。しっかり掴んで帰る」

ライナー「――もうはぐれるなよ」

サシャ「……」



サシャ「……はいっ♪」ギュッ

ジャン「……で、どうしたかって言えば恋人繋ぎだぞ? 知ってる? 恋人繋ぎ」ブツブツ

マルコ「ジャン、落ち着いて」

ジャン「そんでさ、芋女がさ、一生懸命小指絡めようとしてんのに、ライナーの指が太すぎて届かないでやんの。で、どうしたと思う?」ブツブツブツブツ

マルコ「うん。ジャン、君はよく頑張ったよ。もういいから」

ジャン「あのさぁ……ライナーのさぁ……指にさぁ……一生懸命絡めようとしてんの……」ブツブツブツブツブツブツ

マルコ「食堂でぶちまけないだけ偉いよ君は。立派だよ、ジャン」

ジャン「だってさ、あんな聞き方されたら気になるジャン? 俺たち仲間ジャン? そんで追いかけたジャン? ライナー一人で倒しちゃってたジャン? 俺出るタイミングないジャン?」ブツブツブツブツブツブツ

マルコ「うん、ライナーだからね。仕方がないね」

ジャン「なんなの? なあ俺らは何? 酵母? いやでも酵母の方が幸せな生活送ってるよな、だってあいつら保存する相手がいるもん」ブツブツブツブツブツブツ

マルコ「うん、君は酵母じゃないよ、ちゃんと人間だよ、大丈夫だよ」

ジャン「でも俺にはいないジャン? 相手がいないジャン? どういうこと?」ブツブツブツブツブツブツ

マルコ「ジャン」

ジャン「……」

マルコ「……」

ジャン「……」

マルコ「ジャン」





ジャン「あああああああああああ俺も彼女ほしいいいいいいいいいいい!!!!!」ゴロゴロゴロゴロゴロ

マルコ「ジャン、落ち着いて。わかったから」

ジャン「だってさぁ……! だってさぁ……! ああああああああああ!!!」バリバリバリバリ

マルコ「だからって布団を掻き毟ってどうするんだよ! やめるんだ!」

コニー「たっだいまー……あれ? お前らまだ寝てなかったのか?」ガチャッ

マルコ「あー……ちょっとライナーとサシャのことでね。うん」

コニー「サシャかー。俺は最近パンが取られなくなったから嬉しいぜ!」

ジャン「俺は悲しいいいいいいいいいいいいい」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

コニー「最近は毎日ちゃんと食えるようになったし、身長伸びっかなー?」

マルコ「なるなる。今にベルトルトくらいになるさ」

コニー「そこまではいらねえかなぁ」

ジャン「ライナーのくせにいいいいいいいいいいい羨ましいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」ゴロゴロゴロゴロゴロ

マルコ(これは今晩は収まりそうにないな……)

マルコ(アルミン……代わってくれないかなぁ)

アルミン(やだよ)

マルコ(!? 直接頭の中に!?)


アルミン「……」...ペラッ

エレン「? ……アルミン、今何か言ったか?」

アルミン「……」

エレン「……」

アルミン「……」ペラッ



エレン「……」




エレン「……」






エレン「……」...シュン

――夜 女子寮 ミカサたちの部屋

サシャ「新品なのに汚してしまってすみませんでしたぁー!!」ドゲザ

ミカサ「大丈夫。服は縫えばいいんだから。それよりも、サシャに怪我がなくてよかった」

アニ「……そもそも、そういう変態がいる店の近くに行くんじゃないよ」

サシャ「はい、返す言葉もありません……」ズーン

ミカサ「……服のお礼は、チーハンの店を教えてくれたらそれで充分」

サシャ「? でもあの辺りは危ないですよ?」

ミカサ「そのうち平和になる。そういう奴らを見かけたら、私が片っ端から関節を破壊しておくから」バキッ

アニ「……いいね、その時は私もつきあうから呼んでよ。最近身体鈍ってたからちょうどいい」ゴキッ

サシャ「ミカサやアニは頼りになりますねえ……」

ミカサ「それで、そこはチーハン以外にもおいしいものはある?」

サシャ「チーハン以外で、ですか? ……そういえば、今日出してもらった氷菓子がとてもおいしかったです!」

ミカサ「氷菓子……!? エレンが好きそう……!!」パァッ...!

ミカサ「そ、それで……どういう味だったの? ぜひ聞かせてほしい」キラキラ

サシャ「えっとですね……」

サシャ「……」

サシャ「……やっぱり教えません」

ミカサ「さ、サシャ……いじわるしないで教えてほしい、気になる……」オロオロ

サシャ「いえ、あの氷菓子の味だけは、いくらミカサでも教えられてあげられません」

サシャ「あの味は――」



サシャ「――二人だけの、秘密の味ですからね♪」



おわり

終わりです。読んでくださった方、レスしてくださった方ありがとうございました!
モブが便利すぎて助かるけど地の文のないssで格闘シーンは無茶だった

それと、いつも乙くださるかたありがとうございます!
書き終わった後はいつも今回のジャンのようになっていますがなんとかモチベーションが続いてます

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