伊織「……はぁ?」
春香「好きなんだよね?」
伊織「春香……あんた、転びすぎて頭でも打ったの?」
春香「その言い方はひどいなぁ」
伊織「私があいつを好きだなんて、そんなことあるわけないじゃない」
春香「そう?」
伊織「そうよ。……まあ、あいつはバカだけど無能ではないし」
春香「うんうん」
伊織「仕事のパートナーとしては認めてあげなくもないわね!」
春香「そっかぁ」
伊織「でも、恋愛対象として見るかどうかは別問題よ」
春香「なるほどね」
伊織「ふふん」
春香「じゃあ、なんでプロデューサーさんの上着を着てるの?」
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伊織「着てないわよ」
春香「着てるよ」
伊織「よく見なさいよ、ほら」
春香「?」
伊織「袖を通してないでしょ?」
春香「あっ、本当だ」
伊織「だからこれは着てるんじゃないわ、ただ包まってるだけよ」
春香「そっかぁ」
伊織「そうよ」
春香「……うん、じゃあなんでプロデューサーさんの上着に包まってるの?」
伊織「は?なんでって……なんで?」
春香「え?なんで?」
伊織「……いやいや、ちょっと想像してみなさいよ」
春香「あ、うん」
伊織「春香が、レッスン後に事務所に来たとするでしょ?」
春香「うんうん」
伊織「で、あいつの椅子を見たら、背もたれに上着がかけてあるの」
春香「うん」
伊織「あいつが、朝からずっと着ていた上着よ」
春香「そうなるよね」
伊織「さあ、春香はその上着をどうするの?」
春香「えっと、別に何もしないけど」
伊織「なんで何もしないのよ!?」
春香「えっ、なんで驚かれるのかわからない」
伊織「あいつの上着よ?」
春香「うん」
伊織「それが、すぐそこにあるのよ?」
春香「うん」
伊織「何もしないの?」
春香「何もしないけど」
伊織「……は、春香」
春香「うん?」
伊織「だ、大丈夫?本当に頭を打ったんじゃないの?」 オロオロ
春香「伊織が心配してくれるのは嬉しいけど、むしろ私の方が心配だよ」
伊織「だって、あいつの上着を目の前にしたら!」
春香「したら?」
伊織「こう、色々としたくなるのが普通じゃない!」
春香「ごめん、そんな普通は聞いたことがないよ」
伊織「……まさかこの事務所に、何もしない子がいるなんて驚きだわ」
春香「何もしないのが普通だと思うけどなぁ」
伊織「何かするのが普通でしょ!」
春香「えっと……その自信はどこから来るの?」
伊織「それはもちろん、今までの経験よ」
春香「経験?」
伊織「もしあいつの上着を、私と千早が同時に見つけたら」
春香「…………」
伊織「その場でジャンケンが始まるわよ?」
春香「そういう特殊な例に私を当てはめないでほしいかな」
伊織「雪歩なんてこの間、あいつのマグカッ……」
春香「えっ」
伊織「……あ、今のは無し」
春香「無しって何が!?」
伊織「これは誰にも言わないって約束だったのよ」
春香「そこまで言っちゃったら最後まで言おうよ!」
伊織「ダメよ!私は約束は守るわ!」
春香「もう半分以上言っちゃってるようなものだよ!」
伊織「とにかく、この話はもうお終いよ。はいはいやめやめ」
春香「深く追求すべきなのかどうか判断に迷うところだよ……」
伊織「…………」 スリスリ
春香(伊織が、プロデューサーさんの上着に包まって)
伊織「…………」 モフモフ
春香(プロデューサーさんの椅子の上で丸くなってる)
伊織「…………」 クンカクンカ
春香「ねえ、伊織」
伊織「何よ?」
春香「プロデューサーさんの上着に包まって、何してるの?」
伊織「何って……決まってるじゃない」
春香「?」
伊織「あいつの匂いを嗅いでるのよ」
春香「……そんな当たり前のことみたいな表情で言われると、ちょっと私の中の常識がぐらつくんだけど」
伊織「……あいつ、またコロンつけてきたのね」 スンスン
春香「…………」
伊織「そんなものいらないのに……そのままの匂いが一番なんだから」 クンカクンカ
春香「ね、ねえ、伊織?」
伊織「?」
春香「ごめんね、堪能してる最中なのに」
伊織「いいわよ、匂いを嗅ぎながらでも会話はできるわ」
春香(あっ、嗅ぐのはやめないんだ……)
伊織「で、話って何よ?」
春香「うん……伊織ってさ」
伊織「私?」
春香「やっぱりプロデューサーさんのこと、好きでしょ?」
伊織「またその話に戻るわけ?」 スーハー
春香「だって、そうとしか思えないんだもん」
伊織「それは、まあ……一人の人間として、それなりの好意はあるわよ?」
春香「あるんだ、やっぱり」
伊織「でも、恋愛感情とはまた別でしょ?ラブかライクか、ってことね」
春香「ラブじゃないんだ?」
伊織「当然でしょ、さっきからそう言ってるじゃない」
春香「じゃあ伊織、もしもの話だけど」
伊織「?」
春香「もしプロデューサーさんに告白されたらどうする?」
伊織「告白って?」
春香「プロデューサーさんが、伊織!お前のことが好きだ!って言ったら、どうするの?」
伊織「どうするって、決まってるじゃない」
春香「…………」
伊織「正座させて、みっちりお説教よ」
春香「お説教するの?」
伊織「そもそもあいつの年齢で、私くらいの子にそんなことを言う時点でダメでしょ?」
春香「確かに年齢差はあるけど……」
伊織「犯罪よ、犯罪」
春香(女子高生でも……ダメかなぁ、やっぱり)
伊織「まあ、年の差は……付き合い方によっては、許されるかもしれないけど」
春香「うんうんそうだよね、ちょっとくらいの差は大丈夫だよね!」
伊織「なんで春香が安心してるのよ」
春香「いえいえ何でもないですよ?」
伊織「まあいいけど……一番重要なことは別にあるじゃない」
春香「別にって?」
伊織「私はアイドル。あいつはプロデューサー」
春香「ああ、それはまあ……ね」
伊織「同業者ってだけでも問題なのに」
春香「うん」
伊織「プロデューサーが、自分が担当してるアイドルに告白だなんて」
春香「うんうん」
伊織「問題よ、もう大問題よ」
春香「そっか、そうだよね」
伊織「だからあいつに、プロデューサーとしての立場をきっちり自覚させるの」
春香「なるほど」
伊織「自分だけじゃなくて、事務所や他のアイドルのことも考えなきゃダメよってね」
春香(よかった、一応そのあたりの常識はあるんだね)
伊織「だからその辺のことを、みっちりお説教するのよ」
春香「そっかぁ」
伊織「新婚旅行の行き先を決めるのはそれからね」
春香(あれっ、いつの間にか告白が成功してた)
伊織「まあ仕方ないわよね、私は別に何とも思ってないけど」
春香「はぁ」
伊織「あいつったら、この伊織ちゃんのことが好きで好きでたまらないのよ」
春香「そ、そうなのかなぁ」
伊織「だからきっと私に振られたら、ショックで廃人になっちゃうと思うわ」
春香「そ、そうなんだー……」
伊織「だからホラ、仕方なくよ!なんて慈悲深くって心が広いのかしら、私って!」
春香(…………)
伊織「まるで聖母みたいよね!」
春香「うーん、でもプロデューサーさんって」
伊織「?」
春香「結婚するなら年上の人がいいって言ってたような」
伊織「…………」
春香(なんてね、冗談ですよ冗談)
伊織「う……嘘よ、そんなの嘘」
春香「うーん、確かそう言ってた気がするんだけど」
伊織「あ、あいつは変態なの!一回り年下の子にしか興味が無いんだから!」
春香(酷い言われ様)
伊織「だ、だって……この事務所で年上って言ったら、一人しか」
春香「えっ?」
伊織「あいつより年上の女の人なんて、ここには一人しかいないじゃない!」
春香「えっ、あの、伊織落ち着いt
ガチャッ
小鳥「ふぅ、ただいま戻りましたー」
伊織「ちょっと小鳥!!」 ガタッ
小鳥「え?ど、どうしたの、伊織ちゃん」
伊織「何であんたは独身なの!?早くどこかの誰かと結婚しなさいよ!!」
小鳥「!?」 ガーン
春香「伊織!伊織落ち着いて!さすがに小鳥さんが可哀想!」
・
・
・
小鳥「ひっぐ、ぐすっ……うっ、ふぇええええ」
春香「こ、小鳥さん落ち着いてください、ね?」 ナデナデ
伊織「わ、私が悪かったわよ……」 ナデナデ
小鳥「わだっ、私だってぇ……好きで独身でいるわけじゃないのにぃ……ぐすっ」
春香(本気で泣いてる……)
伊織(本気で泣いてるわ……)
小鳥「お母さんには何度も言われたけど、まさか一回り年下の子に言われるなんて……」 ボロボロ
春香「い、伊織も、別に本気で言ったわけじゃ……ねっ?」
伊織「そ、そうよ、ちょっと取り乱しただけよ」
小鳥「慰められてる!私の方が大人なのに!いい年した大人なのに!」
春香「ま、まあまあ」 ナデナデ
伊織「落ち着きなさいよ」 ナデナデ
小鳥「…………」 グスン
・
・
・
小鳥「なるほど、そういうことだったのね」
伊織「……そうよ」
小鳥「もう伊織ちゃんったら、そんなことで取り乱しちゃうなんて!可愛い!」
伊織「う、うるさいわね!」
春香(っていうか小鳥さん、立ち直るの早いなぁ)
小鳥「大丈夫よ、伊織ちゃんはとっても可愛いもの!」
伊織「そ、そう?」
小鳥「そうよ!可愛ければどうということはない!」
伊織「……ま、まあそうよね!当然よね!」
小鳥「うふふっ」
伊織「あんな変態を受け入れてあげるような器量良しなんて、きっと私くらいのものよ!」
春香(……まだプロデューサーさんの上着をスーハースーハーしてる伊織も、どっちかと言うと……)
ガチャッ
P「ただいま戻りましたー」
春香「!?」
小鳥「あっプロデューサーさん、お帰りなさい」
春香(い、伊織!早くその上着を元の場所に……)
伊織「何よ、どこに行ってたのよ」 クンカクンカ
春香「」
P「ああ、ちょっと外回りにな」
伊織「ふーん、そう」
P「その上着、後で戻しておいてくれよ?」
伊織「わかってるわよ」 モフモフ
春香「」
伊織「そんなことより、ほら」
P「?」
伊織「ん!」
P「ああ、はいはい」 ナデナデ
伊織「まったくもう、言われるまでやらないなんて本当にダメなんだから!」
P「ははは、ごめんな」
春香「……あれ?あれれ?あれ?」
P「ところで伊織、そろそろレッスンに行かなきゃまずいんじゃないか?真たちと合流するんだろ?」
伊織「言われなくてもわかってるわよ、ふんっ」
P「そうか、ごめんごめん」
伊織「手!止まってるでしょ!」
P「はいはい」 ナデナデ
春香「…………」
P「春香?どうかしたのか?」
春香「いえ、もしかして本当に頭を打っちゃったのかと思いまして」
P「誰が?」
春香「私が」
P「まったく春香は面白いことを言うなぁ」
伊織「んー……じゃ、そろそろ行くわ」
P「おう、頑張ってこいよ」
伊織「これ、持って行っちゃダメ?」
P「レッスンに必要無いだろ、置いていきなさい」
伊織「わかったわよ、もう……」
P「うん、伊織は素直で良い子だなぁ」
伊織「私が良い子なのは当然じゃない?にひひっ!」
P「じゃ、後で様子を見に行くから」
伊織「絶対よ!来なかったら百叩きの刑なんだから!」
P「怪我だけはしないようになー」
バタン
春香「あの、プロデューサーさん」
P「うん?」
春香「本当に変態になっちゃったんですか」
P「えっ」
春香「だ、だって伊織、プロデューサーさんの上着を着てましたよね?」
P「あれは着てないらしいぞ」
春香「うん、まあ、そうなんですけど」
P「何が良いのかはよくわからないけど、別に何か困ることがあるわけじゃないし」
春香「は、はい」
P「わざわざやめるように言うほどのことじゃないだろ?」
春香「え?いや、うーん……そうなのかなぁ」
P「あの意地っ張りだった伊織が、素直に甘えてくれるようになったわけだし」
春香(匂いを嗅ぐのと甘えるのは次元が違う気がしますけど)
P「あれはあれで良い傾向なんだよ、きっと」
春香「はぁ……」
P「さすがに千早と取り合いをしてた時は止めたけどな、二人とも」
春香「ですよねぇ」
P「伊織も、まだまだ幼いところもあるし……誰かに甘えたい時もあるんだろう」
春香(むしろアブノーマルな方向に成長している気が)
P「だから、しばらくは見守ってやるさ」
春香「……プロデューサーさんって」
P「うん?」
春香「器が広いですよね」
P「なんだ急に」
春香「いやー、改めて実感しましたよ」
P「そ、そうか」
春香「はい」
P「……さて、後であいつらに差し入れでも持って行ってやるかな」
春香「いいなぁ」
P「この間は春香たちにもスポーツドリンクを持って行っただろ?」
春香「はい、美味しくいただきました!」
P「そうだ、その時の領収書を上着に入れっぱなしだったな」
春香「経費で落ちるものなんですか?」
P「落ちるかどうかじゃない、落とすのさ。えーっと、上着上着っと」
千早「…………」 モフモフ
P「…………」
千早「…………」 クンカクンカ
P「千早、戻ってたのか」
千早「はい、つい先ほど」 スリスリ
P「そうか」
千早「…………」 スーハー
P「気が済んだら戻しておいてくれな」
千早「わかりました」
春香(……プロデューサーさんは器が大きいって言うより)
春香(ただ鈍感なだけなのかも……)
・
・
・
伊織「じゃあ今度は、最初から通してやってみるわよ!」
真美「えぇー、ちょっとは休もうよいおりーん」
伊織「体がリズムを覚えているうちにおさらいした方がいいでしょ!」
亜美「なんだか最近のいおりん、元気ありまくりって感じだよね」
真「うん、何だか前よりずっとタフになった感じだよ」
伊織「そう?……まあ、そうかもね」
真「何かトレーニングでも始めたの?」
伊織「うーん、トレーニングってわけじゃないけど」
真「教えてよ、ボクも参考にしたいな!」
伊織「うーん……まあ、強いて言うなら」
伊織「最高の栄養源を見つけたってところかしらね?にひひっ!」
それ以降、スタミナをつけるためという大義名分で
Pの匂いを嗅ごうとするアイドルが続出したとかしないとか
終わり
速報でSS書いたのは初めてなんだけど
HTML化?の申請って、書き終わったらすぐ出すのが普通なんだろか
もうこれ以上書かないなら一両日くらいには出すのがベター
がりの人
他にもあるんかしら?
春香「プロデューサーさんにストーカーが……?」
千早「大好きはーにぃ……♪」
千早「最近のみんなはプロデューサーに依存しすぎよ」
千早「そういえば、もうすぐバレンタインね」
春香「千早ちゃんが指輪をつけて事務所に来た」
小鳥「貴音ちゃんは、いくつまでサンタを信じてた?」
響「枕営業、って……」
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