卯月「島村卯月、頑張ります!」 (53)

島村卯月が普通であるという事実は、果たしてガリレオが天動説を唱えた頃から、世界の常識として語られてきたことは、諸君もご存知の通りだろう。


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普通であるということはつまり、人類を代表する個体でもあると、ウサミン星のミミントス書記長がくしゃみをして地球が誕生した当時から、ベストセラー小説『宇宙の全て』の第二章にも記載されていた。

だが、地球が一匹のうさぎのくしゃみから誕生したという事実は、ウサミン星の長年の戒厳令により知る者は少ない。

地球では安部菜々という生命体がウサミン星の出身であると、そんな真っ赤なデマが広まっている。

しかしそのような事実は、宇宙史生物記念名簿には存在しない。

そう、我々の知る島村卯月こそが、ウサミン星のミミントス書記長……地球の生みの親であり、宗教的な解釈で語るのならば、『神』と呼ばれる存在なのである。


デカルトは「神は死んだ」などと口にしたが、島村卯月は今も絶好調だった。

ウサミン星で「頑張ります!」は、大気エネルギーを吸収するための措置、地球の生命体にとっての呼吸を意味する。

頑張ります!をやめた瞬間、島村卯月は機能を停止するのだ。

これはミミントス書記長がアラスカに不時着したときに実際に体験したことで、彼女は頑張り忘れたことにより、あと少しで命を落とすところであった。

事実、ミミントス書記長は、そこでの機能停止によって記憶障害に陥った。

ミミントス書記長を日本語に変換したとき、それは当然島村卯月と発音するわけだが、彼女の記憶障害は言語機能中枢にまで及び、常に世界の言語が日本語吹き替え版として処理されるようになってしまったのは言うまでもない。

親友の愛犬ハナコが「ワン」と吠えれば、「あーだりぃ」と変換され、島村卯月はそれ以降コメントは控えている。

神が誕生してからというもの、宇宙はウサミン星に一目置くようになっていた。

現に、火星第三層居住区で、作家を営むマルコムスタックマイヤーが、睡眠時巨人化症候群を抑える薬を飲んだ際に無意識で書いたという、『宇宙が先か、くしゃみが先か』は5000億部の宇宙セールスを記録した。

宇宙を作ったのは、島村卯月のくしゃみだったという可能性も、今では否定できないからだ。


ミミントス書記長は世界を作った存在か?

ウサミン星では、報道番組でも度々議論されてきた。

事実ならば、世界を導く指導者として宇宙大統領にすべきだと、各惑星も挙って叫んだ。

同じ頃、地球では、島村卯月が「頑張ります!」と笑顔で歌っていた。

島村卯月と並ぶ二人の少女、渋谷凛と本田未央。

本田未央が、あの『ちゃんみお星』の王女ミョーラであることは、全惑星が周知していることなのでここでは割愛しよう。

彼女は偉大なる祖父チャンチャンの派遣で、地球視察に訪れている。

すっかり地球には馴染んだようで、島村卯月の監視も忘れてはいない。

彼女のくしゃみが、世界の構造をねじ曲げる危険性を孕むかどうか。

その見極めは彼女に掛かっている。

本田未央のファンは大抵が異星人だ。

それも当然、彼らにとって彼女は王女なのだから。

渋谷凛については、こちらとしても情報が不足している。

惑星連合機関に所属しない地球は、宇宙にとっても未知の星。

渋谷凛は純粋に地球の生物であり、今も『プロデューサー』という生命体に熱い視線を送っていた。

そんな渋谷凛を微笑ましく見ている島村卯月。

ミョーラ王女は、渋谷凛に何らかのアプローチを取るためか、『プロデューサー』と頻繁に接触し、渋谷凛を困らせている。

地球日本区でそういった行動を『シット誘発』と言うそうだ。

地球のそういった不思議な言動は、改めて歴史的教材に追記載するべきであると、ミョーラ王女はレポートに記していたことをチャンチャンは真面目に受け取らなかった。

しかし、ミョーラ王女の母、ミタゴラス女王の不意打ち視察で、地球の奇想天外な風習が公となり、今や空前の地球ブームが宇宙を包んでいた。

田舎惑星地球の資源を狙う侵略者たちも、7000兆本売れたIDOLM@STERをプレイし、すぐさま引き返したという出来事も一度や二度ではない。

コンスタルチヌス社が開発した『シンデレラガールズ』は、地球版とは比較にならない4D技術が使われている。

ミミントス書記長とミョーラ王女の親友、地球生命体コード渋谷凛を育成するリアルタイムシミュレーション。

『アイマスは世界か?』

『宇宙はアイマスから始まった』

など、数々の関連本が爆発的ヒットを記録している。

惑星連合機関の発表によると、世界で最もアイマスが売れていないのは『地球』であるとされ、宇宙全域で嘲笑の的とされているのは、最早言うまでもないことだろう――

ミス
×天動説→○地動説

地球レポート

ちひろ「明日から珍しく連休ですね。Pさんは休み自体久しぶりじゃないですか?」

モバP「まあ、そうですね。数ヶ月は働き詰めだった気がします」

ちひろ「……そういう発言外じゃNGですからね?まるでうちの事務所がブラックと誤解されてしまいますから」

モバP「わかってますよ」

ちひろ「ところで、休みの予定とかあります?」

モバP「たまにはプライベートの友人にでも会おうかと」

ちひろ「あ、いいですね!ゆっくり骨休めしてきてください。連休明けたら馬車馬も失踪するくらい働いてもらいますんで」

モバP「はは……」

卯月「お疲れ様です」

モバP「おっ、帰ってきたか」

卯月「無事撮影も終わりました!」ニコッ

モバP「ご苦労さま」ナデナデ

ちひろ「それセクハラですよぉ」ニヤニヤ

モバP「そうなのか?悪かったな、卯月」

卯月「えっ?いやいや、いいんです!セクハラじゃないです!全然気にしていませんから!///……頑張ります!」

ちひろ「かーわぃぃ」

卯月「もう!ちひろさんのいじわる」♪~

ちひろ「Pさんの電話鳴ってますよ」

モバP「ああ、友人からみたいです」

ちひろ「プライベートの電話ですか」

モバP「まったく、困った奴だな」

ちひろ「今は誰も気にしませんし、出ても大丈夫ですよ」

モバP「じゃあ、ちょっと事務所の外で話してきます」

ちひろ「いってらっしゃい♪」

卯月「珍しいですね」

ちひろ「明日から久々の連休なのよ、Pさん。あれでも結構浮かれているみたいね」

卯月「プロデューサーさんお休みなんだ」

ちひろ「おっ、気になる?」

卯月「はい!」

ちひろ「素直ねー」


モバP「合コン?いいね。うちって女性が多いけど恋愛御法度な職場だからさ~、出会いとか逆にないんだよなー」ウンウン

モバP「4人かぁ。OL?あー受嬢ね。うん、いいんじゃないか?」ハハハ

モバP「そりゃ途中でお持ち帰り……うわあああああ」

凛「…………」

モバP「りりりり……凛!?えっと……いつからそこに?」ァ.ナンデモナイ。コッチノハナシ……ボソボソ

凛「「合コン?いいね」辺りからだけど」

モバP「うっ……む、無言で背後に立つのやめてくれるかな?」

凛「プロデューサーの邪魔したら悪いと思って」

モバP「あはは……悪い!ちょっと今電話どころじゃないから切るわ……」ボソボソ

凛「電話続けてもいいのに」ムスー

モバP「いやぁ、それはちょっと……」

凛「別に私はプロデューサーの彼女じゃないんだからさ。合コンしたくらいなら何も言えないし。誰と何しようが……プライベートなんだから、プロデューサーの勝手だよね?」

モバP「まあ、そうだけどさ……」

凛「私もう行くから」

モバP「あっ、待て!」ガシッ

凛「……手放して」

モバP「もしもし?悪い!明日俺行けなくなったわ、合コン。大事な用事ができちゃってさ。うん、うん、今度埋め合わせすっから絶対!わかってるって……デートだよデート!うるせぇよ!おう、お前も頑張れよ!はは、じゃ今度、うん、またな」

凛「……」

モバP「気が変わった。凛、明日付き合ってくれないか?」

凛「え……?いいけど……いいの?」

モバP「凛とデートしたい気分なんだ」

凛「ふぅん……別にいいけどさ」

凛(プロデューサーとデート!プロデューサーとデート!プロデューサーとデート!ヤバイ!今日服買いに行こうかな)

モバP「明日は奮発するから楽しみにしとけ」

凛「……うん」


卯月「Pさんを好きになってしまいました」(観察対象として)

ちひろ「それは見ていれば分かるわ。Pさんも気づいてるわよ、きっと」

卯月「ええー?」

ちひろ「こういう仕事してるとね、相手の気持ちを汲むって言うのかな?察するのが上手くないとやっていけないの」

ちひろ「Pさんは優秀なプロデューサーだもの。鈍感なわけないじゃない。あれは意図的に気付かない振りをしてるのよ(たぶん)」

卯月「……やっぱり迷惑ですか?」

ちひろ「アイドルと恋愛はしないと思うわ。そういう線引きはきっちりする人だから」

卯月「失恋です……」(まあいいか)

ちひろ「でも、チャンスがないわけじゃない。Pさんだって人間だもの。間違いくらい犯すでしょう」

卯月「つ……つまり?」ゴクリ

ちひろ「もっともっと女らしさを磨いて、卯月ちゃんの魅力でPさんをメロメロにするのよ」

麻理菜「メロメロて……古臭い言い方だね」

ちひろ「あら、雑誌のインタビューもう終わったのね」

麻理菜「まーね。明日から少し早いサーフィンといきますよ」

ちひろ「え……。ちょっとまだ海開きには早いんじゃ……」

麻理菜「沖縄旅行にでも行こうかと」

卯月「いいですね!」

麻理菜「卯月も一緒に行く?」

卯月「私は、……Pさんをデ……デートに誘っちゃいます!頑張っちゃいます!」

麻理菜「凄いじゃん!へー、あの卯月がねー。なら、ちひろさんは?」

ちひろ「私も雑務があるので遠慮しときます」

卯月「お仕事なんですか?」

ちひろ「ええ。普段プロデューサーを酷使してますからね。少しでも負担を軽くできたらと」

麻理菜「ただの鬼!悪魔!ちひろ!じゃなかったんだね」

ちひろ「失敬な。私は「やはり!ちひろさんは!天使!」ですよ?」

卯月「そうですよ!ちひろさんは鬼でも悪魔でもありません!私にとってはお母さんみたいな人です!」

ちひろ「いや……それはどうだろう?」

麻理菜「卯月エグいね」

卯月「?」ニコニコ

ちひろ「……スタドリ百本後払いでPさんにツケておきます」

麻理菜「とばっちり!?」

モバP「あーあ、今年も独り身確定かな」

凛「大丈夫。プロデューサーが独身を貫くなら、私も生涯独身だから」

モバP「いい話っぽく聞こえるけどそれ半ばストーカーだからな?」

凛「失礼だね、プロデューサー」

卯月「そういえば凛ちゃん、ツガイのオス……恋人とかいないよね」

モバP「おっ、卯月いたのか」

卯月「ずっといましたよ」ニコニコ

凛「卯月さ、アイドルは恋愛禁止じゃん」

卯月「じゃあアイドルになる前は彼氏とかいたの?」

凛「え?いないけど?」

卯月「私と一緒だね」

凛「いや、卯月に彼氏がいないことは知ってるし」

卯月「なんで!?」

モバP「なんかわかるわ」

凛「で?」

卯月「え?」(やっぱり、この星の生命体はよくわからない)

凛「いや、卯月が男の話するなんて珍しいからさ」

卯月「ちょっと気になっただけだよ?」

凛「ふぅん」

モバP「ちひろさんはずっと独り身ですよね」

ちひろ「失礼ね!私はモテるわよ?過去の男なら三桁四桁いたわ」

卯月「それただのビッチじゃないですか……」

凛「卯月はそういうこと言わない」

P「逞しく成長しているんだなぁ」

ちひろ「……悪い?」

凛「ん?」

ちひろ「この歳でずっと独り身なんて滑稽だって言いたいんでしょう?」

モバP「えっ、俺!?」

ちひろ「あなたが話を振ったんでしょ」

凛「確かにね」

モバP「ちょ、凛……」

卯月「プロデューサーさん!ファイトです!」

モバP「いやいやいや」

ちひろ「まあ正直気にしてませんけどね。男運はありませんが、お金はありますから」ニヤニヤ

凛「……嫌な現実だね」

卯月「汚れた大人です」

ちひろ「ちなみに、プロデューサーさんも結構お金持ってますよ」

モバP「」

ちひろ「事務所も忙しくなりましたしね?お一人で大勢のアイドルをプロデュースしているんですから……そりゃお給料もね?」

卯月「私、気になります!」

モバP「さあ、いつまでも無駄話してないで行こうか二人とも」

凛「プロデューサーは少し黙ってて」

モバP「」

ちひろ「プロデューサーさんの月収は……なんと諭吉300人!」

卯月「きゃー」パチパチ

凛「……へぇ」

モバP「なんなのこれ」

凛「プロデューサーってそんなに儲けてたんだ」

モバP「ま……まあな」

凛「ちゃんと貯金してる?無駄遣いとかしちゃ駄目だよ?」

ちひろ「オカンか!」

モバP「大丈夫だよ。なんせ使う暇ないからな。なんならお前たちに好きなもの買ってやるぜ?」

卯月「ほんとですか!?」

凛「無理しなくていいよ」

ちひろ「物で釣って女子高生を手玉に……悪い大人の見本ね」

モバP「人聞き悪いなぁ」

ちひろ「そんなに稼いでるならもっとスタドリ買ってくださいよ」

モバP「そんなにたくさん飲めませんて……」

そんな会話を偶然キャッチしたのは、太陽系から外れた第四世界ゴルメスチンの大艦隊だ。

彼らはアイマスを愛するあまり、地球を破壊してアイマス権を手中に納めようとしていた。

この生命体、今をトキメク渋谷凛ちゃんにナレナレしぃな

シャーロットは、そんな彼らを宥める国際機関である。

地球でいうところの警察だ。

ゴルメスチンの艦隊が意気揚々と地球にミサイルを向けた頃

ミョーラ王女は、地球の危機をいち早く報され迷っていた。

もう、地球は終わりかもしれない。

事の発端は、今や宇宙のヒロインとなった渋谷凛と『プロデューサー』なる生命体の仲にある。

恋を知らない異星人にも、一目でわかるほど最近ではイチャイチャイチャイチャとする二人に嫌気が差していたのだ。

大天使島村卯月も、最近ではそんな二人を見て「ビッチ」など口走ってしまう始末。

『プロデューサー』の存在は教育に悪い。

教育機関UFMJは、『プロデューサー』排除のサインをし、惑星連合機関はそれを承認してしまった。

これにより、『プロデューサー』殲滅作戦が開始され、地球へと通告がなされた。

しかし、地球からの反応はない。

派遣大使である前川みくが、既にアイドルとなっていたからだ。

前川みくはミャオン星の大使だ。

彼女たちは比較的温厚な種族で、歴史を振り返ってみても、怒りの感情を露にしたのは、古代アルマイ人が魚を生で出したときだけだ。

『プロデューサー』とはなにか?

彼女は『プロデューサー』を調査し、本当に排除すべきかレポートに纏めることにしたのだ。

地球言語は今でも苦手だが、幸いにも猫なるものによって救われることとなった。

地球は今、様々な勢力によって狙われている。

その引き金となった『プロデューサー』に最大の危機が訪れようとしていた……

本日のレポート終了

地球の言語はまだ慣れない。読み辛くて申し訳ない。

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