父クリボー「それじゃ、行ってくる」 子クリボー「父ちゃん…」 (12)

その日、おいらの家に赤紙が届いた

その手紙を見た途端に母ちゃんは泣き崩れた
父ちゃんはそんな母ちゃんを抱き寄せると、寂しげな表情を浮かべていた

おいらは普段と違う両親の姿に戸惑い、ただただ呆然と立ち尽くしていた

その日の夜、おいらは父ちゃんといっぱいお話をした

「父ちゃん、赤紙ってなんだ?」
「父ちゃん、お国の為に戦ってくるんだ。」
「だからもうすぐ行かなくちゃならない」

「いつ、帰ってくるんだ?」
「父ちゃんにもわからん」
「だから父ちゃんが帰ってくるまでは、母ちゃんの事、お前が守ってやるんだぞ」

「父ちゃん」
「どうした?」

「なんでもない…」
「もう寝なさい。明日は早いぞ」

次の日


「おいおい、坊主はまだ寝てるのか。しょうがない奴だ」
「仕方ないわ。昨日あなたとずっとお喋りしてたんですもの」

「お前、昨日寝ていないだろう。酷い顔だ」
「考え事をしていたら眠れなくて…」

「…お前には随分と迷惑をかけたな」
「迷惑だなんて、思っていませんよ」

「……」

「それじゃ、行ってくる」

そして僕が起きると父さんはいなくなっていた
父さんがいない事以外は、いつもと変わらない朝だ

「学校、遅れるわよー」
「うん、ごはんいらない。いってきまーす」

いつもと変わらない母さんの笑顔が、僕を見届けた

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