まどか「壁山が一位・・・?」 (23)

「いよいよ今日からイナイレ人気投票だね」
 まどかは自分の表情が弛緩してしまっている事に気けず、思わずうぇひひと妙な笑い声をあげる
「女キャラは邪魔だから伸びていないで欲しいな……、
特に菜花黄名子は私に声が似てて気持ち悪いし」椅子に座るとギシっと音が鳴った。
思えばもう随分長いこと使い古した椅子だ。だが、今のまどかにはそんな事はどうだっていい。
イナイレの人気投票の結果。それがまどかの気になるところ。使い古した椅子に迫る寿命なんて事は、心底どうでもいいものなのだ。
「さて、今の順位は…」カチカチっと耳障りのいいクリック音が部屋に小さく響いて、イナイレの投票結果ページを現す。
「え…」まどかは目を疑った。疑う余地なんかはどこにもないのだが、それでも…、

 ――よりによってあの壁山が一位…? こんなの絶対おかしいよ

 まどかはそう思った。

「そうだ、仲間の反応は……」急いで同じ魔法少女である仲間たちが書き込んでいる掲示板を開く。

秋子 二○一二年/十一月/XX
またVIPが余計なことを…

彩名 二○一二年/十一月/XX
また? 一昨年から組織票してたよね

 やはりそうか、これらは組織票。
壁山が一位になるなど、タイム誌の"パーソン・オブ・ザ・イヤー"で田代まさしが一位になる事と同じ程にあり得ない。起こりえない。
しかしそれはどちらも起こった。事実としてこの目で今たしかに見ている。
まどかは掲示板の書き込みを視界に入れたのとほぼ同時に、そう思った。
 ――前からVIPPERって人たちが邪魔…してたんだね……。
 まどかがうつむいた視線の先はキーボード。見飽きたぼろぼろのキーボード。
垂れ下がった髪が邪魔するせいで、視界はひどく狭まっている。

 ――っ…わたしも負けられない!
 ばっと音を立てるようにしてうつむいた顔を上げ、視線を液晶画面へと移す。
そのせいで髪は大きく乱れたが今のまどかにはそんな事はどうだっていい。使い古した椅子に迫る寿命程にどうでもいいのだ。

 ――奇跡も……ツールもあるんだよ!
 しかしまどかはマクロツールを使わない。カチカチと乾いたクリック音を並べ、ひたすらに手動。
 投票とはそうすることに意味があるのだ。マクロなんて使ってしまっては、奴らと同じに成り下がってしまう。まどかはそう思った。

 校内はがやがやと賑わっていた。遠い廊下から鳴るくぐもった反響音がそういった擬音を生んでいる。
しかし悪いものじゃない。会話をするのに差し障りの無い程度のうるささ。
むしろこれならば孤独感をちょうど良く消してくれる良いものだ。
「あれ? 眠そうだね」
 まどかと同じ魔法少女であるさやかは、俯きながら席に座ったまどかの顔を覗き混むようにして言った。
「…ちょっとね」
 まどかは「今朝まで、ずっと投票してたから」そう言いそうになったのを堪えた。

「そういえばイナズマイレブンって知ってる?」とさやかは聞く。
「えっ? あ、うんちょっとだけ…」今朝までそのアニメの人気投票のためだけに、人差し指を動かし続けていたなどとは言えるはずもなかった。
「そのイナズマイレブンで今、人気投票が行われてて面白いことになってるんだよね」
さやかは人差し指を立てて誇らしげに「何と! とある掲示板で腐女子を泣かすために、不人気なキャラに投票してるんだって」と、そう言った。
「え?」まどかはうつ向いた顔を上げて視線をさやかへと移す。その時のまどかの表情は鬼気迫るものだったが、さやかはそれに気づかない。
「あたしは参加してないんだけどさ、見てるだけでも楽しいんだよね」

「そうなんだ」そう言ったまどかの微笑みは怡然とした綺麗な表情だったが、その目の奥には明らかな私怨をさやかに向けていた。

「そういえば今日マミさん休みだって」とさやか。
「風邪でもひいたのかな?」とまどか。
 "マミさん"とは彼女らの学園の先輩であり、そして同じ魔法少女の先輩でもある。
綺麗なたんぽぽ色の髪は一本一本調べてみても乱れはない。すらりと伸びる足に、露出された肌はどこも玉肌である。
そして豊かな胸が彼女の事をなによりも印象付ける。

「…覚悟しなさい腐女子共」
マミさんは風邪などではなかった。彼女こそがVIPPERである。そして人気投票の組織票を組もうと発案した張本人。
つまりまどかの憎むべき一番の存在。もちろんまどかはそんな事を知るよしもないが。

「ねえ、私も混ぜてもらえないかしら? その話」
 長いだけの黒髪を音を立てるようになびかせて二人に近づいてきたのは、転校してきたばかりの少女"ほむら"である。
そして彼女もまた、まどからと同じく魔法少女だ。
「あ、転校生もイナズマイレブン知ってんの?」とさやかは聞く。
「当然よ、毎日黄名子で"抜いてる"わ。もちろん今日の投票も黄名子にたくさん票を入れてあげたわ」
 彼女の"抜いている"の違和感は果てしなく強いものであったが、まどかはそれに気づかない。
そんなことよりも"黄名子に票を入れた"という事実が、まどかにとっては耐え難いものであったから。
「ま、転校生はVIPEER側みたいで安心したよ。まどかも暇があったら壁山か女キャラに投票してね」とさやか。

「……うん」

「よう、さやか」赤い髪を揺らした京子は、下校中のさやかの肩へと手を掛け、歩みを止めさせた。「イナズマイレブン人気投票って知ってるか?」
「知ってるけど」とさやか。
「VIPPERも腐女子も許せねーよな。つまらない争いを繰り広げてさ」京子はそう言う。
「え?」まさかこんな意見があろうものとは、とさやかは耳を疑い聞き返す。
「本当のファンだっていちいち人気投票なんてしないだろ?
自分の好きなキャラの順位を上げるファンなんてほんと一部だけだってのに…よくやるもんだよ」
 さやかはそのVIPPERである。それを同じ魔法少女である親友に馬鹿にされたことが悔しかった。
京子はさやかがVIPPERだとは知らない。それでも、何気なく言い放った京子のこの言葉は、さやかの胸をきつく締め付けた。

 それぞれの魔法少女達は、様々な想いを抱いて過ごす。
そんな想いは時には一致したり、すれ違ったり。
兎にも角にもついに最終発表の日はやってきたのだ。

「壁山ハーレムは絶対にっ…やめて……」まどかは思う。

「壁山ハーレム…来い」さやかは思う。

「絶対に私達の勝ちね」マミは思う。

「黄名子ちゃん……」ほむらは思う。

 そんなたくさんの想いが渦巻くなか、京子だけは録画したイナズマイレブンを自室にこもって鑑賞していた。
「やっぱイナクロは何度みても面白いなー」読了感にも似たようなものを感じ、余韻にふける。
 ――そういえば今日、人気投票の結果発表だっけ…。



 ――ま、いいか。


「――こんなの、絶対おかしいよ……」
 暗い部屋。液晶からスポットライトのようにまどかへ浴びせられる光は、その絶望感しか汲み取れない表情をただひたすらに浮かび上げる。


「壁山…黄名子、アミ、ジェシカ、アスカの順…か」
さやかは、デスクトップの液晶画面に写されたイナイレ人気投票発表の特設ページに書かれた順位を、順に読み上げる。
そして青い髪を揺らしたあと、頬杖をついた。

――次の日

「よっまどか! 人気投票の結果見た?」
「…うるさい」
「うおっ! どうしたの?」



「さやかちゃんには分かんないよ――」

 ――分かるはずなんて、ないよ。



 ――わたしの気持ちなんてさやかちゃんにとっては、

 ――使い古した椅子に迫る寿命程にどうでもいい事なんだろうから。

いやはや疲れました。これで締括です。
実のところを言いますと、自分の文章力の上がらなさにやきもきとしていたところ、この話を見たのが始まりでした。
私よりも下がいるぞ、と左
そんな私の失いかけた自信を取り戻すために、こういったネタで挑んでみた次第です。
以下、まどか達から皆様へのメッセージをどうぞ。

まどか「みんな、読んでくれてありがとう。
少しだけ腹黒なところも見えちゃったけど…気にしないでほしいな」

さやか「いやー、ありがと! 私の可愛さは十二分に伝わったかな?」

マミ「読んでくれたのは嬉しいのだけれど…ちょっと恥ずかしいわね」

京子「ここまで読んでくれてありがとな! 正直、元ネタでいってた私のセリフを解析するのに十分費やしたよ!」

ほむら「…ありがとう」

では、

まどかとさやか。そしてマミ、京子、ほむら。そして私からも一言、
「皆さんありがとうございました」


そして再三とありがとうございました。
これで本当の終わりです。

壁山「へへ、マネージャー」
マネージャー「なあに?壁山くん」
壁山「THEマウンテン!」
マネージャー「イヤアアア!」

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