杏「銀猫街1丁目」 (34)


杏「プロデューサー、まだ?」

P「まだだ」

杏「早くしてよー、杏は家でダラダラしたいのに」

P「自分で帰れっての」

杏「せっかく家隣同士なんだし、送ってもらわないと損でしょ?」

P「なんでお前となんかと家が隣同士になったんだろうな……」

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杏「お前となんかってどういうことさ」

P「そのままの意味だ……真面目な話、今日は仕事遅くなりそうだから、送るのは多分無理」

P「……あ、待て、それ以前に今日俺、車で来てないわ」

杏「え」

P「お前午前中仕事OFFだからどうせ寝てただろ? 実は朝に結構な雨が降っててな」

P「今日は車が混みそうかなと思って電車にしたんだった」

杏「……えー」

P「悪いな、ということで一人で先帰ってろ」


杏「……」

杏「一人で帰るの……なんかやだ」

P「我儘言うな」

杏「我儘じゃない杏なんて杏じゃないよっ
!」

P「ドヤ顔で何言ってんだお前は……ほら、さっさと帰る」

杏「……ぶー」

P「さて、じゃあ俺は仕事仕事……」

杏「……」



…………



P「……よしっ、今日の仕事終わりっ!」

P「今は……げっ、もう十一時か」

P「……ん?」

P「おにぎりと……手紙?」


「プロデューサーさんへ」

「お仕事お疲れ様です、私も手伝いたいのですが、今日は少し用事があるので……お先に失礼します、ごめんなさい」

「簡単ですが、間食を作っておいたので食べて下さい」


P「うわぁ、気付かなかった……ちひろさん、優しいなぁ」

P「……あれ、まだ続きあるのか」


「追伸」

「ソファーの上で妖精さんが寝てました、ちゃんと連れて帰ってあげてくださいね」


P「……」

P「……」チラッ

杏「……zzZ」

P「……」


P(はぁ……ちひろさん、だいたいいつも俺が杏送り届けてるから今日もそうだと思ったのかな……)

P「……」

P「おい、杏」

杏「うぅ……きらり、それはプロデューサーだから食べちゃだめ……」

P「おいってば!」

杏「……んが、ん?」

杏「あれ、プロデューサー……なんで下半身あるの?」

P「お前の夢の中で俺はきらりに下半身食われたのか……」


P「まぁいい、早く起きろ、家帰るぞ」

杏「え……今何時?」

P「十一時だ、終電なくなるから急げ」

杏「嘘、もうそんな時間なの?」

P「何時間寝てたんだバカ、帰れっつったのに」

杏「プロデューサーが連れて帰ってくんないから……」

P「俺のせいじゃ絶対にない……無駄口叩いてないで早く荷物準備しろ」

杏「へいへーい」



…………



P「……」

杏「……」

P「事務所の時計が、おかしかったのか?」

杏「……杏の携帯は今二時くらいなんだけど」

P「……」

杏「終電、なくなっちゃったね」

P「……ああ」


杏「あれ、今さっきの台詞、結構色っぽいんじゃない?」

P「何がだ」

杏「終電、なくなっちゃったってやつ」

P「……杏だし微妙かな」

杏「杏だしってなんだ」

P「はぁ……アホなこと言ってないでどうにか帰らないと……タクシーあるかなぁ」

P「だいたい、杏みたいな子供をこんな夜中に連れ歩くとかまずいだろ俺……今日は失敗ばっかだ……」

杏「む、子供って何さ」

P「幼女の間違いだった、ゴメン」

杏「幼女って何さ!」


杏「杏だってもう大人なんだからな……今、プロデューサーは大人の女と夜の街に二人っきりでいるんだよ?」

P「どの口が言うんだ」

杏「ふんだ、悪態ばかりついて……そんなこと言うからもてないんだよ」

P「余計なお世話だっての」

P「だいたい夜の街で女の人と二人っきりって……言葉はオシャレだが、実際の状況としては微妙だな」

P「まさかこんな夜遅くにデートはないだろ」

杏「……いやらしー」

P「ふ、深読みするな、そういう意味じゃないっ!」


杏「でも、夜の街のデートって……面倒くさそうだけど、素敵だとは思うよ」

P「素敵、だと……まさかお前からそんな言葉が出るとは……」

杏「なんだかんだ杏も花の女子高生だかんねー、こういうこと言っとけば女子高生っぽいでしょ?」

P「……台無しだなぁ」

P「……」

P「でも、そうか……」

P「じゃあ今から俺とデートしてみるか?」

杏「へ?」

P「なんてな、冗談だ」


杏「……んー、プロデューサーとデート、か」

P「杏?」

杏「えいっ」

P「おわっ、腕を絡めてくるなっ」

杏「……くふふ、プロデューサー」

杏「それならさ、次の駅まで……デート、してみようよ」

P「冗談だって言ったろ?」

杏「いいじゃんか、せっかくなんだし」

P「……」



…………



杏「……」テクテク

P「……」テクテク

P「……なぁ」

杏「なに?」

P「その姿勢、辛くないか? 腕を組むのは身長差ありすぎだろ」

杏「正直辛い、プロデューサー縮んでくれない?」

P「縮めるわけないだろ……ったく、こうするか」

杏「わっ、急に手、握らないでよ」

P「こっちの方が楽だろ?」

杏「……ん、まぁそうだけど」

P「杏の手は小せえな」

杏「プロデューサーが大きすぎるんだってば」


P「……しかしこう、杏と二人で手を繋いで歩くのは……なんというか、デートというよりは兄妹っぽい」

杏「……じゃあ恋人っぽくする、えい」

P「お、おい」

杏「ほら、これならどーよ、恋人繋ぎってやつ」

P「……おませさんだな」

杏「……ちょっとくらいドキッとしてくれてもいいんじゃない?」



…………



杏「……あ、歩道橋だ」

P「おう」

杏「……」

P「どうした?」

杏「いや……車ないし、面倒だからあれ使わずに渡らない?」

P「俺もそうしようと思ってたけど……なんかお前にそう言われると嫌だな、ちゃんと使うぞ」

杏「な、なんだそれ、ひ、引っ張らないで!」


杏「……」テクテク

P「……」テクテク

杏「……なんかあれだね、夜だとすっごく歩道橋の足音響くね」

P「そうだな」

杏「……」

P「……」

杏(プロデューサーと杏の鳴らした靴音だけが響いていって)

杏(まるで、世界中で二人っきりみたい)

杏(……)

杏「何恥ずかしいこと考えてんだろ……中2病とかそういうやつだよ……」

P「?」


杏(……でも)

杏(なんとなく、なんとなく……プロデューサーに言ってみても……)

杏「……」

杏「……ね、ねぇプロデューサー」

P「どうした?」

杏「こう、なんだかね」

杏「まるで……今、杏とプロデューサー……」

ニャー

杏「」ビクッ

P「お、猫だ……こんなとこに、危ねえなぁ」

杏「……」

杏(世界で二人っきり……)


杏「……」

杏「ま、そんなわけないよね」

P「っと、すまんすまん……なんだったんだ?」

杏「いいよもう、ほら……さっさと歩こ」

P「……お、おい、急に早くなるなよ」



…………



P「しっかし、市街灯があるからか、夜なのにそんなに暗く思えないな」

杏「そう? 十分暗くない?」

P「俺の実家の近くなんて夜凄いぞ? 歩けるもんじゃなくてな……」

杏「あ、アイスの自販みっけ」

P「聞けよ」

杏「まぁまぁいいじゃん、アイスだよアイス、食べようよプロデューサー」

P「結構寒くないか、こんな時にアイスなんか食いたくねえ」

杏「分かってないなぁ……寒い時にこそアイス食べなきゃ」


ゴトン


P「……っと、ほら」

杏「おー、くるしゅうない」

P「……せっかくだから俺も食うか」

杏「さっきは食べたくないって言ったくせに」

P「気分屋だからな」ピッ


ゴトン


P「……」モグモグ

杏「……」ペロペロ

P「……んー、寒い時にこそアイスか……なんか確かに美味く感じる気もする」

杏「うぅ……冷たい……寒い……買わなきゃよかった」

P「おい」

杏「その場のテンションに身を任せるといけないね……ところでプロデューサーは何味買ったの?」

P「チーズケーキ」

杏「へぇ……あ、なんか変な生き物が下にいる、なんだろこれ……ちょっとしゃがんで見て見てよ」

P「ん……どれどれ……」

杏「隙あり、はぐ」

P「あ、てめ……」

杏「……んー、あんま美味しくない」


P「勝手に食うなっつの……おら、お前のもよこせ」

杏「やだ」

P「お、あんなとこにきらりがいる」

杏「えっ……な、なんできらりが……」

杏(こ、こんなとこ見られるのってなんだか……ヤバイ気が……って)

杏「……どこ?」

P「むしゃり」

杏「え、あ……あー!」

P「もぐもぐ……あんま美味しくねえな」

杏「かえせーっ! 杏はそんなに食べなかったぞ!」

P「お、もうそろそろ駅に着くぞ杏」



…………



P「よいしょ……終点、デートも終わりだな」

杏「足疲れた……」

P「お前が歩こうって言ったんだろ?」

杏「そうだけどさ」

P「……ま、でも悪くなかったな」

P「デート、かどうかは置いといて……お前となんとなくブラブラ散歩するのも楽しいもんだ」

杏「……また次の駅までは歩く、ってのはないからね」

P「そんなこと言わねえよ……さ、タクシー呼んで帰るか」


杏「……」

杏「……そっか、帰るんだっけ」

P「……えーと、番号は確か……」

杏「……」

杏「あ、空見てよプロデューサー」

P「ん?」

杏「今日、満月だったんだね」

P「お、本当だ、気づかなかった……綺麗な満月だな」

杏「……」



…………



P「夜遅くにありがとうございました」

「いえいえ、またのご利用をお待ちしております」

バタン

ブオオオオオ

P「……」

杏「……」

P「やっと家に着いたな」

杏「……うん」


P「じゃあ今日はお疲れ様、また明日……今日は遅くなったし、明日はゆっくりでいいから」

杏「あ、待って」

P「なんだ?」

杏「……杏、今日は帰らない」

P「は?」

P「いや、でもお前の家目の前だし……」

杏「……なんか、帰りたくない」

P「……」

杏「……」



ニャー


P「……」

杏「……」

P「……また猫か、今日二回目だな」

杏「……そうだね」

杏「……」

P「お前は床で寝ろよ、ベッドは俺が使う」

杏「!」

P「あと、俺は明日早いからすぐに寝るぞ、それでいいなら……今日は俺の家泊まれ」

杏「……」

杏「ね、プロデューサー」

杏「ベッド一つしかないならさ、今日は杏と一緒にベッドで寝てもいいんだよ?」

P「……アホ」






おわり


最近杏SSが増えてる気がしてうれしいです


杏「12月の」もよろしくお願いします


おまけ



P「ぐかー」

杏「……」

杏(結局、自分が布団で寝るんじゃんか……もう)

杏(というかなんか眠れない……実家だと布団だからかな)

杏(……それに、このベッド……プロデューサーの匂いするし)

杏(……)

P「ぐかー」

杏「……っ!」


杏(……あ、あとあれだ、うん、プロデューサーがいびきうるさいんだ)

P「んごご……杏ぅ、働け……」

杏(えー……夢の中でも働かせようとしてくるって……)

P「……やれば……出来るんだから……」

杏「……」

P「ぐかー」

杏(……部屋の中にプロデューサーのいびきだけ響いてて)

杏「……」

杏(世界中で、じゃないけど……)

杏(この部屋の中でなら……)

P「ぐかー」


自販のやつはチョコのやつが割と好き
でも、杏はもっと好きです

見てくれてありがとうございました
駄文失礼しましたー

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