生徒「失礼します」ガラガラッ(39)
先生「おーいらっしゃーい。こっちどうぞー」
生徒「あ、すみません」
先生「お茶かコーヒーどっちがいい?」
生徒「や、そんな、お構いなく」
先生「いいんだよ、俺も飲むから」
生徒「あーそれでは……先生はどっちを?」
先生「んー……俺の質問が先だ」
生徒「……コーヒーでお願いします」
先生「砂糖とミルクは?」
生徒「あ、お願いします」
先生「はいはい」
パンツ脱いだ
生徒「……進路指導室って、入ったことなかったんですけど」
先生「案外きれいだろ? これでも、俺が来た当初はめちゃくちゃ汚なかったんだぜ。君らのおかげでだいぶ綺麗になったよ」
生徒「僕ら、ですか?」
先生「いや、君ら生徒、だな。もうあん時の奴らは卒業しちまった」
生徒「ああ、そうですか」
先生「もうあれからだいぶ経つからなぁ。といっても数年か? ほらよ、熱いから気をつけてな」
生徒「あ、どうも、すみません」
先生「悪いがお茶菓子なんてお上品なものはないんだ。コーヒーだけで我慢してくれ」
生徒「いえいえ、そんな」
先生「持ってこりゃいいんだけどなー。しがない非常勤にはそんな金はないのだよ」
生徒「はあ……」
先生「まあ、俺の話はいいか……」
生徒「……」ズズズ
先生「……」ズズズ
>>2
悪いが、こいつら男なんだ……
先生「もう、骨折は大丈夫か?」
生徒「ええ。といっても、この通りギブス付きですけど」
先生「また……親指だけなのにデカイな……そのギブス」
生徒「なぜか、僕の場合歩いてるだけでどこかしらにぶつけて取れるんですよね」
先生「ギブスが?」
生徒「ええ。ギブスが」
先生「いや、取れないだろ。どんな歩き方してんだ。酔っ払いか?」
生徒「僕、未成年です」
先生「んなもんわかっとるわ」
生徒「けど、助かりますよ、こんだけ大きいと。衝撃はあまり伝わってこないので、痛くないですし」
先生「まあ、そうだろうな」
生徒「昨日退院したばかりなんですけど、やたら後輩ちゃんに親指狙われちゃって、今日だけで何回も踏まれかけましたし」
先生「……なんか恨みでもかってるのか?」
生徒「いえ……女の子はよく分からないです」
先生「先生も……そう思うよ……」
生徒「先生、女性とのお付き合い苦手なんですか?」
先生「女子生徒がたまに嫌になるときが、しばしば……あ、これオフレコな」
生徒「あ、はい……」
生徒「今年は女難の相でも出てるのかもしれません」
先生「というと?」
生徒「この怪我も、通学中の電車でやったんですよ」
先生「そういや、本当に良かったよな、保険がおりて」
生徒「僕もそう思います」
先生「保険は大事ってのを学べて本当に良かったな」
生徒「学べた代償はとても痛かったですけど」
先生「ハハハハハッ」
生徒「……あの日のテストは、マジで地獄でした」
先生「職員室でも話題になったよ。あれは傑作だった」
生徒「というか、テスト監督なら痛みに耐えながらテスト受けてる生徒の顔色ぐらいみてるもんじゃないですか?」
先生「いやーやけに顔色悪い奴がいるなーって思ってたけど、思っただけだったなーハハハ」
生徒「そ、それでも教師ですか!?」
先生「まあまあ」
生徒「本当に痛かったんですからね」
先生「ちゃんとテスト終わってから声かけて病院まで送ってったろ?」
生徒「ええ……まあ……」
先生「というか、俺もそこまでしか知らないんだよな」
生徒「あれ? 僕話しませんでしたっけ」
先生「車の中で聞いたけど、お前痛みをこらえるのに必死で、話しかけたけど無視してたろ」
生徒「あー……あのときはすみませんでした」
先生「まあ、仕方ない。痛かったんだから」
生徒「……ありがとうございます」
先生「んで、一体なにがあったんだ?」
生徒「えーと、あの時雨降ってたの先生覚えてますか?」
先生「おお、朝からそこそこ降ってたよな、そういえば」
生徒「それで、僕、電車通学なんですけど、朝雨降ってたせいでやたら混んでて」
先生「まあ、そんなもんだわな」
生徒「ちょうどその日はテスト最終日だったんで、片手でつり革に捕まってもう片手で傘持ってテキスト見ながら乗ってたんですね」
先生「おお、電車通学は大変だよなー」
生徒「……本当に、他人事って感じですね」
先生「まあ俺は車でここまで来てるしな」
生徒「あーそーですねーいいですねーはやくーめんきょーほしいなー」
先生「そう絡むなよ。悪かった悪かった」
生徒「……はあ。それで、僕の隣にハイヒールを履いたお姉さんがいたんですけど、お姉さんも両手が塞がってるみたいな感じで」
先生「おお、そんなもんだよな」
生徒「それで、お姉さんが読んでた本をしまおうとして、つり革を離したときに電車が揺れて」
先生「ラッキースケベが起きたと」
生徒「茶化さないでください。こっちに寄りかかって倒れそうなお姉さんの肩を掴んで支えただけですよ。そのときに足をかかとで踏まれたせいで親指が折れたと思うんですけど」
先生「うわ、ハイヒールだろ? めっちゃ痛そうじゃん」
生徒「……お姉さんもすごい申し訳なさそうにしてるし、実際結構痛かったですけど、そこは我慢してお姉さんには気づかれないようにして……」
先生「おお……よく我慢したなぁ。お前すげえな」
生徒「ありがとうございます。それで、そのまま我慢し続けたんですけど、痛すぎるともう目の前が朦朧してくるんですね。活字読んでも頭に入らないんで、必死にテストの範囲を思い出してました」
先生「そのあとは、テストを我慢しながら受けて、テスト終了と共に病院へ行き、そのまま手術で入院、かぁ」
生徒「本当、なんであんなに必死にテスト受けようとしたんですかね……」
先生「ちび○子ちゃんの丸尾くんみたいだな。ガリ勉の鏡」
生徒「あんな丸眼鏡持ってないですけどね」
先生「どこで売ってるんだろうなあれ」
生徒「AMAZ○Nで売ってますかね?」
先生「眼○市場か○札堂じゃね?」
先生「あ、テストの結果あるけどいる?」
生徒「そういえばもらってなかったですね」
先生「ハイ、これ。入院中にも渡せたんだけど、まあ、進路相談のときでもいいかと思ってな」
生徒「ありがとうございます……上がってますね」
先生「ちょっと気になって成績調べたけど、それ過去最高じゃないか?」
生徒「あーそうかもしれませんね」
先生「骨折すげえな」
生徒「めちゃくちゃ我慢したんですけど、そのおかげですかね」
先生「頑張ったな。おめでとう」
生徒「なんか複雑ですね。喜んでいいのかな」
先生「今回は全体的にクラス平均も高かったけど、それでもその点数ならそこそこいい順位だったろ。上位一割なら文句無しだな」
生徒「……そう、ですね」
先生「で、入院して、みんなより遅めの進路相談ってとこなんだが」
生徒「ええ、はい」
先生「現状、進学か就職、どうしたいと思ってる」
生徒「……就職、しようと思ってます」
先生「……ふむ。んじゃ、どこに就職するつもりだ?」
生徒「来年の公務員試験を受けて、公務員として働こうと思ってます」
先生「理由は?」
生徒「……元々、僕、トラブルに巻き込まれることが多くて昔から親に迷惑ばっかかけてて。だから傷害保険とかにも入ってるんですけど、そういうののせいで進学したとしても学費を払えないというか……」
先生「そんなにトラブルに巻き込まれるのか? 確かに今回のことはわからなくもないけど。でも保険だってあるだろうし……」
生徒「……普通の人って入院って人生でそう多くはないですよね?」
先生「まあ、そうだな」
生徒「先生はちなみに今まで?」
先生「子供の頃は、熱を出してよく入院とかあったらしいが、記憶にある中じゃ確かにないな」
生徒「……今年に入って、僕あの病院にもうすでに二回入院してるんですよ」
先生「お、おう」
生徒「正月に初詣行った帰りに、おみくじひいたら大凶が出て、なんか幸先悪いなと思った矢先に酔っ払いにビール瓶で殴られ、後頭部を縫うっていう」
先生「年明け早々……」
生徒「それから抜糸まで年明けの間ずっと病院で過ごしてましたね。病院のおせちは割と美味しかったですよ……ハハハ」
先生「……」
生徒「そして去年は、事故って骨折が1回、失神が2回、食中毒になりかけて入院が一回。年でばらつきはあるものの、通算したら通院だけでもうすぐ3桁行くんじゃないですかね」
先生「……よく真面目にここまできたなぁ」
生徒「親のおかげですよ」
先生「いやいや、大変だったろうに……同情するわ」
生徒「……なんか湿っぽい話しちゃってすみません」
先生「いや、振ったのは俺だから……」
生徒「そういうわけで、進学するにしても、ちょっと親の負担考えると、ちょっとって思って……」
先生「……進学後の学費が払えないから、ねえ」
生徒「そういうことになりますね」
先生「ちなみに進学するとしたら、どこにする?」
生徒「就職しか考えてないので……行けたとしても国公立ですね」
先生「国公立、ね、ハイハイ」
先生「親御さんとは、そういう相談はしたのか?」
生徒「親とは、よくそういう話をするんですけど、僕が就職することには反対みたいで……」
先生「親御さんが就職に反対、ね」
先生「さて、現段階で就職を希望している、でいいんだな?」
生徒「はい、そうです」
先生「わかった」
生徒「それじゃ、これで……」ガタッ
先生「まあ、そう急ぐな。一応、学校もなーキャリア指導とかあって、うるせー世の中なんだよ」
生徒「は、はあ……」
先生「一応、これでも進路指導担当だからなー。もうちょっと話していこうや」ズズズ
生徒「いや、でも、親が迎えに」
先生「親御さんには話は通してある。あと1時間しないと迎えにきてくれないよ」
生徒「……やけに手厚いサポートですね」
先生「生徒の人生を決める進路だからなー。俺ら教師にとってもそれは同じように大事さ」
生徒「……先生」
先生「……ごめん、今の自分でもくさいと思ってる。やめて、そんな目で見ないで。いや、見ちゃらめえー」モジモジ
生徒「……わかりました。わかりましたよ……さっさと終わらせて帰らせてください」ハアー
先生「あーくそ恥ずかしかった」
生徒「やめましょうよ、いい歳してかっこつけるの」
先生「こう、言葉を選んで言ったつもりなんだけど、思い返すと恥ずかしくなるやつな」
生徒「先生でもあるんですね、そういうの」
先生「俺だって人間だからな。ぶっちゃければ、歳は違えど、昔はお前らと同じ高校生だったし、同じように悩んでたよ」
生徒「……先生は……なんで、先生になったんですか」
先生「いやー、こう明確に先生になりたいってわけじゃなくてなー」
先生「というか、そもそもお前らと同じころ、自分がなにやりたいかわかんなかったし」
生徒「……」
先生「かといって、働きたいわけじゃなかった。遊ぶにしても近所でいけるとこは行きつくして遊び方も変わらなくて、いろいろと飽きてた頃でさ。お前らがそうなのかわかんねーけどさ」
生徒「……確かに、そう……かもしれませんね」
先生「あ、ひでえ」
生徒「いや、僕もやりたいことが見つからないし、働くにしても何が向いているのか……とか」
先生「んじゃ、さっき言った公務員ってのは?」
生徒「とりあえず……その、事務職とか職種はともかく安定してお金がもらえればと思って」
先生「そんなこったろうと思ったよ」
生徒「……はい」
先生「まあ、いいさ。自分なりに悩んで出した答えだったんだろ? 説教したくて引き留めたわけじゃねえからな」
生徒「……はあ」
先生「俺だって、そうやって悩んで、大学に行ったらなにか見つかるかもしんないって思って、大学進学決めたし」
生徒「……先生らしいですね」
先生「ほんとなー。お前と同じようにお金がなくて大学いかなかった奴も居たし、今思えばただ就職を先延ばしにしただけなのによ」
生徒「……ちなみに大学を決めた理由は?」
先生「いろいろと天秤にかけて、かな」
生徒「天秤、ですか」
先生「漠然とどれがいいかって考えるとわかんねえからよ、まずは二択にしぼるんだ。県内か、県外か、理系か、文系か、とかな」
生徒「まあ、ありがちですね」
先生「それで、別に一人暮らししたいわけじゃねえし、かといってなんの役に立つのかわかんない文系はいやだった。あとは、自分のスペックと学科を照らし合わせて、天秤かけて選んだかな」
生徒「上を目指そうとは思わなかったんですか?」
先生「んー……偏差値もそこそこだったからな。学歴が大事なのはわかってたけど、そこに魅力を感じなかったし」
生徒「そんなカッコつけないで、単純に安全圏で行きたかったんでしょ、先生のことだから」
先生「おお、よくわかってんじゃん」
生徒「……はあ」
先生「んで、大学いってレポートだーテストだーコンパだー学祭だーエトセトラに追われて、3年間はあっというまだったな」
生徒「途中から遊んでばっかじゃないですか」
先生「良くも悪くも自分のために自由にできる時間と立場を買えるからな。そしたらそれを使わない手はないだろ」
生徒「やっぱ大学生になったら遊んでばっかなんですね」
先生「んーどうだろうな。まじめにやってた知り合いは、専門知識めっちゃつけてたなー。4年生で学会発表してたし」
生徒「先生は?」
先生「さっさと卒論書いて、バイトしてたよ。赴任先が遠かったから一人暮らししなくちゃいけなかったし」
生徒「……先生になろうと思ったのは?」
先生「3年の始め……だったかなー……いや、結局やりたいことも向いてることもわかんなくてよ」
生徒「……」
先生「ただ先延ばしにしてたのに気付いたのもそのころで、それでそっから、いろいろと調べてインターン行ったりして結局教師だったかな」
生徒「……何を基準に選んだんですか?」
先生「どういう自分になりたいかなーって」
生徒「……」
先生「生きてりゃ幸せになりたいじゃん?」
生徒「そう、ですね」
先生「生きるためには、食べたり飲んだりするためのお金が必要で、快適な睡眠を得るためには居心地のいい家が必要で、そのためにもお金が必要で」
生徒「衣食住ですか」
先生「よく知ってんな。ああいうの、ほんとそのままなんだよな。別段趣味もなかったし、働きたくなかったけどそれを満たすためには働くしかないんだよ」
生徒「そうですか……」
先生「働き方は人それぞれだけどな。世の中にゃいろんな職業に人がいるよ」
先生「けど、あとは、あれだ、お前らと話すの嫌いじゃないしな。むしろうら若き女子高生と一日ずっとお話しできるとか夢の職業だろこれ」
生徒「現実は?」
先生「JKコワイ……オソロシイ……」ブルブル
生徒「演技はいいですから、本音で話してくださいよ」
先生「やだよ恥ずかしい」
生徒「いいじゃないですか。ちょっとくさくなるだけですよ」
先生「これ以上株下げたくない」
生徒「もう十分さがってますって」
先生「えー……もー……やだー」
生徒「女子ですか」
先生「いやーあれだよ、ちょうど企業でのインターン終わって、どうしようか迷ってた時によ」
生徒「あ……はい」
先生「……高校の時の担任……恩師っていうのか、そういうの。その人と会って、飲みに行ったんだ」
生徒「あ、なんかいいですねーそれ」
先生「面白かったよ。あと、不思議だった。高校の時、教壇に立ってた先生が俺の目の前で管巻いてるんだからな」
生徒「……面白いですね」
先生「だろ。んで、思い切っていろいろと相談したんだよ」
生徒「はい」
先生「教師って酒のんでても教師なんだよな。さっきまでどこにでもいるおっさんだったのに、高校の時みたいにただの先生と生徒になっててさ」
生徒「……それはどういう」
先生「なんていうのかな、かっこいいんだよ。お前にとって俺はダメ人間というかダメ教師に見えるだろうけど、俺んときの先生ってなんかかっこよかったんだよ」
生徒「はあ……」
先生「お前、こう、自分がわかんない問題をスパッと目の前で解かれたら、ムカつくけどかっこいいとか思わないか?」
生徒「まあ、そりゃ……それはそうですね、知らないことを教えていただいてるときは特に」
先生「教師ってのは、聞いてるやつにわかった気にさせる職業でもあるからなー。そのためには教材も準備するし、演説もうまくないとなぁ」
生徒「なるほど」
先生「ただなぁ、教師ってのはそういうのを感じさせないんだよ」
生徒「え?」
先生「いや、実際、教師の努力で生徒の理解が進むわけじゃねえし、まー粋な職業だわな」
生徒「……でも、それって」
先生「でも、大概の職業ってそうなんだよな。粋でかっこいい職業に限って、そういう努力は必ず裏にあるもんだ」
生徒「……」
先生「んで、ああ、こんな大人になるのもアリだなあって思ったら、そのまま教職取りにいったな。あとは死ぬ気で公務員試験受けて教師になって、今に至るってわけだ」
生徒「教職って?」
先生「大学の講義によっては、学校の先生になるための区分の講義がいくつかあって、その区分を教職っていうんだよ」
生徒「へえー」
生徒「先生は、今幸せなんですか?」
先生「んー……まあ、幸せっちゃ幸せか。あのときの恩師みたいになれてんのかわかんない、というか、こんなダメ教師な時点でアレだけどな」
生徒「まったくですね」
先生「フォローしろよ。堪えるだろうが」
生徒「あ、すみません」
先生「冗談だよ」
先生「話がだいぶ逸れたな」
生徒「ええ……それにだいぶ日が落ちてきましたね」ズズッ
先生「……コーヒーお替わりいるか?」
生徒「ええ、お願いします」
先生「ハイハイ、よいしょっと」ガタッ
生徒「……どうなんでしょうね。一体どんな選択をしたらいいんでしょうね、僕は」
先生「んー……それは俺にもわかんねえや」
生徒「……」
先生「たとえお前が公務員になっても、そのトラブル体質が治らず、休職がたたって窓際族、安定はあっても単調な毎日にうんざりする、とも限らんし」
生徒「……そうですね」
先生「ここで、進学したとしても何回も入院して必修の単位落として、留年して、大学中退とかもあり得るだろうし」
生徒「……」
先生「ほら、お替わりどうぞ」
生徒「あ、どうも」
先生「逆に、トラブル体質が治って楽しく働けるかもしれない。よいしょっと」ガタッ
生徒「……」
先生「人生なにがあるかわかんないけど、お前は――」ズズズ
生徒「……」ズズズ
先生「……ふう。トラブルに巻き込まれてもまじめにやってきたんだろ?」
生徒「……はい」
先生「なら、どんな選択をしても、なんとかなるさ」
生徒「や、そんな」
先生「こればっかりは俺も答えがわかんねえよ」
生徒「……」
先生「どんな選択をしたらいいとか、俺もわかんねえし」
生徒「……」
先生「だから、この進路がいいとか言えねえかな。公務員もいいと思うし、世界中を旅するでもいいと思うよ。それはそれで楽しそうだ」
生徒「未成年が世界一周って……」
先生「むしろ、言葉の通じない国でトラブルってのも度胸がついて面白いんじゃないか」
生徒「さっきから無責任発言しかしてないですよ」
先生「HAHAHA……まあ、いい機会だ。いろいろ調べて、どれがいいか天秤にかけて、できるだけ後悔しないようにしたらいいんじゃないか?」
生徒「そんな抽象的な」
先生「これから、オープンキャンパスやインターンがたくさんあるし、説明会なら今でもやってるだろうしさ、そういうのに行ってみたりすりゃいいんじゃないの?」
生徒「ま、まあ、そうですね」
先生「どういう自分になりたくて、そのためにはどうやっていけばいいのか、ゆっくり考えりゃいいさ。そのための時間でもあるわけだしな」
生徒「……」
先生「お金のないやつのために、奨学金貸してくれるとこもあるし。まあ、卒業して10年先まで返さなきゃいけなくなる場合もあるから、金額も考えてな」
生徒「10年先って30過ぎまで……長いですね」
先生「あくまで借金だからな。そうじゃない奨学金もあるし、それを狙うのもアリだ」
生徒「けど、それも条件があるんですよね」
先生「大概、品行方正とか学歴優秀とかな。まじめにやっていい成績とってりゃ大丈夫だよ」
生徒「また、そうやっていう……」
先生「あーコーヒーうめえ」ズズズ
生徒「はあ……」ズズズ
先生「さて、ある程度話し終えたかな」
生徒「後半ほとんど先生の自分語りでしたが」
先生「……やっぱやめときゃよかったかな」ポリポリ
生徒「面白かったですよ……僕も親の話とか聞いてみたくなりました」
先生「そうか。まあ、いいきっかけになればいいんだがな」
生徒「はい……答えらしい答えはまだわかんないですけど」
先生「ま、そんなもん、そんなもん」
生徒「遅くまでありがとうございました。とりあえずは公務員志望ですけど、もうちょっと進学も視野に入れて調べてみようと思います」
先生「ハイハイ。あ、親御さん迎えに来たみたいよ」
生徒「んじゃ、このまま帰りますね。コーヒー美味しかったです。ごちそうさまでした」
先生「あいよ。んじゃ、気をつけてな」
生徒「それじゃ、失礼しました」ガラガラ
先生「はーい、また明日」
山梨おちなし。
以上で終わりです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
なんか質問あれば、適当に答える。
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この子どうなったんだろう