鳰「腐った匂いなんてしないッスよ」 (139)

兎角「お前らからは腐った海の匂いがする」

兎角「…気持ち悪ぃんだよ」

鳰「!」

伊介「えー、なにそれひどーい♥」クスクス

兎角「フン」

伊介「行こ、にお」スタスタ

鳰「え、あ…はいッス」スタスタ




鳰(う…うち……)

鳰(腐った匂いがするんスか…!?)ガーン

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399202072

ミョウジョウ学園・金星寮
 エレベーター内


伊介「ねぇ…におのさ、この学園の制服だよね?」

鳰「………」

伊介「そんなに着込んで暑くなーいー?」

鳰「………」

伊介「……シカト?」イラッ

鳰「はっ!?え!?なんスか!?」ビクッ

伊介「人の話聞いてないとか…ムカつく♥」

鳰「すいませんっ!もう一回言って欲しいッス!」

伊介「冬服なんて着てて暑くない?って話」

鳰「んー、うちは鍛えてるから平気ッス」

伊介「でも…これからの季節、汗とかかきそう」

鳰「あ…汗臭いッスか!?」ガーン

伊介「そこまで言ってない♥」

鳰「………」クンカクンカ

鳰(だ、大丈夫ッスよね!汗の匂いなんてしないし…)

鳰(腐った匂いなんて言われたから焦った…)ホッ

鳰「…………」

鳰(でも、自分の匂いって自分じゃ分からないって言うし…)

鳰「伊介さん伊介さん」

伊介「伊介様とお呼び♥」

鳰「伊介様…うちって……」

伊介「ん?」

鳰「うちって、臭いッスかね」

伊介「胡散臭い♥」

鳰「……こりゃーまいったッス」

金星寮・C棟
 7号室


鳰「ふー」ガチャ

鳰「……1人部屋ッスね」

鳰「なんだか今日は疲れたッス、お風呂は明日の朝にして今日は休……」

兎角『お前らからは腐った海の匂いがする』

兎角『…気持ち悪ぃんだよ』

鳰「…………」

鳰「や、やっぱちゃんと入ろう!」ダッ



鳰「いやー、いい風呂だったッス」テクテク

晴「あっ、鳰だ!」

兎角「………」スタスタ

鳰「!!」ドキーン

鳰(と、兎角さん)

鳰「い…いやーどうもお二人さん、こんなところで奇遇ッス!」ドキドキ

兎角「…………」

晴「鳰はお風呂あがり?」

鳰「そうッスよ、そっちは…」

兎角「点呼だ、7号室だけ部屋にいないんで探してる」

鳰「7号室…あ、うちッスね」

兎角「……………チッ」

鳰「す、すいません…」

晴「と、兎角さん!ダメだよそんな態度…!」

鳰(なんだか嫌われちゃってるッスねぇ)

鳰(………匂いは関係ないッスよね?)

鳰「晴…ちょっといいッスか?」

晴「ん?なぁに?」

兎角「一ノ瀬、帰るぞ」

晴「ちょっと待ってください!鳰が話があるって…」

兎角「……早くしろよ」イライラ

鳰「あっ…と、えーと、えーと」

鳰「ちょーっと兎角さんには聞いて欲しくない話で…」

兎角「…………」ブチィ

兎角「帰る」スタスタ

晴「あっ…晴も話が終わったら戻りますっ!」

鳰「…………」

鳰(やややややっちまったッスーー!!)

鳰(なんて言い方してんスか!うちのバカ!)

鳰(『内緒の話』とか他に言い方があるでしょーが!バカっ!うちの大バカーー!!)

晴「それで…鳰?話って?」

鳰「ぬぐぐぐぐぐぐ……!!」プルプル

晴「?」

晴「匂い…そっか、それで兎角さんには聞かれたくないって」

鳰「そうッス…」ショボン

晴「兎角さんにおいフェチなのかな?晴も匂いがどうとかって言われたけど…」

鳰「み、みんなにも同じこと言ってるんスかね?」

晴「うぅん、晴は埃っぽい匂いみたい…」

鳰(埃…やっぱみんなに厳しく言ってるみたいッス)

鳰(うちだけ酷く言われてるみたいじゃなくてよかった…)ホッ

晴「番場さんが言うには…ひなたの匂いなんだって!」

鳰「滅茶苦茶いい匂いじゃないッスか!!!」バーン

晴「ふぇ!?」

鳰「おひさまの匂いとか超いいじゃないッスか!うちなんて腐った海ッスよ!?」

晴「に、鳰…落ち着いて」

鳰「ひどいッス…海って……腐った海って…」メソメソ

晴「よしよし…」ナデナデ

鳰「くすん」メソメソ

晴「………!」ナデナデ

晴「鳰、いい香りがする」

鳰「え…ほ、ほんとッスか!?」

晴「うん!シャンプー、それとボディソープのいい香りが…」クンクン

鳰「ふふん、気合入れてお風呂入ったッスからねぇぇ」

晴「そっか、それで点呼の時間までお風呂に…」

鳰「………結構気になったんッス」

鳰「そんな事ないって分かってても、うちから腐った匂いがするのかなって…思っちゃって…」

晴「鳰……」

晴「兎角さんも酷い事言うなぁ、腐った匂いって女の子に言うセリフじゃないよ」

晴「ねぇ鳰、兎角さんを見返してあげようよ!」

鳰「え?」

晴「いい匂いになって、兎角さんに前言撤回させるんだよ!」

晴「鳰はいい香りのする女の子だって兎角さんに分かってもらおう!!」

ミョウジョウ学園
 10年黒組教室


鳰(……と言う会話を交わして早数日)

鳰(頑張ってお風呂に入ってるのに…兎角さんの反応には変化なしッスねぇ…)

鳰(ただ清潔にしてるだけじゃダメなのか…もっと別の何かが……)

しえな「~♪」

涼「ん?なにしてるんじゃ?」

しえな「首藤か、花瓶の水を取り換えてるんだ」

涼「これは……武智の活けた花か」

涼「てっきりこの花は武智が世話をしてたものとばかり…」

しえな「いや、あいつは斬るだけ斬ってあとはノータッチだったよ」

しえな「だけどあいつがいなくなっちゃってから、なんとなく枯らせたくなくて…僕が世話してる」

しえな「なんだかイヤな奴だったけど、いなくなるとちょっとだけ寂しいから…」

涼「そうか…」

鳰「…………」

鳰(花!その手があったッスね!)ピコーン

ミョウジョウ学園
 植物園


鳰「ふふん、花のいい香りならきっと兎角さんもイチコロッス」スタスタ

鳰「それにしても武智さんはいい置き土産をしていってくれたッスねぇ、いやホントいいアイデアッスよ!」

鳰(死してなお、うちの力になってくれるなんて…武智さん、このご恩は忘れないッス…)

乙哉(死んでないから…退学になっただけだから………たぶん)

鳰(こいつ…直接心の中に…)

鳰「さーて、どっかにいい香りのする花はないッスかね」スタスタ

鳰「これだけ花があるとどれがいいのか目移りしちゃうッス」スタスタ

鳰「う~~~ん」

鳰「もうちょっと奥に行ってみるッス!!」ダッ

植物園内
 毒草園


鳰「……ここはあんまり花はないみたいッス」

鳰「仕方ない、戻って……ん?」

鳰「これは」

【ゲルセミウム・エレガンス2】

鳰「………!」

鳰「かっこいい名前ッス!!」

鳰「きっとこれはいい香りがするに違いないッスよ!」バッ

鳰「なんせ名前からしてエレガントッスからねぇぇ、さぞかし高貴な……」クンカクンカ

鳰「…………」フラフラ ドサッ

鳰「…………」Zzz


  ゲルセミウム・エレガンス2

 マチン科またはゲルセミウム科

  Gelsemium elegans2

      毒性有

    毒部位 全草

鳰「……ふわぁ~あ」

鳰「気付いたら48時間も寝てたッス…目痛っ」フラフラ

鳰「でも…ずっと植物園のド真ん中で寝てたんスからね!体はバッチリ花の香りッスよ!」

鳰「さっそく兎角さんに会いにいくッス!」ダッ



兎角「………」スタスタ

鳰「発見!おーい!!兎角さーん!」ダダダダ

兎角「……何の用だ」

鳰「つれないッスねぇぇ、久しぶりに会ったっていうのに」

兎角「知るか、お前が勝手に行方不明になったんだろ」

兎角「用がないんなら私は行くぞ」スタスタ

鳰「あぁん…待って欲しいッス」スタスタ

鳰「うち…ちょっといつもと違う香り、しません?」

兎角「………?」クンクン

兎角(この香りは……)

鳰「………」ドキドキ

兎角(この香りは…花だ、コイツ植物園にでもいたのか…?)

鳰「ど、どうッスか…?」ドキドキ

兎角(植物園……か、武智乙哉を思いだすな)

鳰「花の香り…するでしょ?兎角さん、こういうのは好きッスか?」ドキドキ

兎角(あいつ…私を地下室に閉じ込めた上に一ノ瀬を…!!)イライラ

鳰「もし兎角さんが好きなら、うち…これからはこういう香りを」

兎角「なんかイライラしてきたから向こうに行けよ」

鳰「!?」ガーン

兎角「じゃ」スタスタ

鳰「そ……そんなぁ……」

鳰「…………」ズーン

溝呂木「どうした走りー、元気ないぞー」

伊介「ねぇアレ……なに?」

春紀「さぁ…どうしたのかね」

鳰「はあぁ……」

鳰(花の香り…何がだめだったんスかねぇ)

溝呂木「うーん…ひとまず、授業を始めるぞー」

鳰「…………」

伊介「はあぁ、授業とか退屈ぅー…」

伊介「ねぇアンタ、ハンドクリーム貸してよ♥」

春紀「はいはい伊介様」ヒョイ

伊介「せっかくだし爪も塗ろうかなぁ♥」

春紀「マニキュアもあるよ」ヒョイ

溝呂木「こらこら君達、授業になにしてるのかなー?」

伊介「化粧♥」

溝呂木「そういうのは休み時間にだね…」

春紀「あはは、伊介様怒られてやんの」

伊介「うるさい♥」

鳰(なーんか騒がしいッスねぇ…)

溝呂木「大体、教室にまで化粧道具を持ってこなくてもいいんじゃないかな?」

香子「そうだ犬飼、寒河江…お前たちは学校をなんだと思って…」

春紀「おいおい私にまで説教かよ…」

純恋子「香水のキツい香りは体の弱い私には毒ですわ…番場さんも強い匂いは嫌いでしょう?」

真昼「はひっ…!?わ、わたすは…その、えっとぉ…」モジモジ

伊介「えーなに?ケンカ売ってんの?やる?」

晴「はわわ…!落ち着いて…!」

兎角「放っておけばいいだろ…」

鳰(化粧……香水…!)

鳰「それッスーーーーー!!!」ガタン!

みんな「!!?」

金星寮・C棟
 2号室


鳰「と言うわけでうちに香水を貸して欲しいんッス!!」

伊介「帰れ♥」

春紀「まぁまぁ伊介様、別にいいじゃんちょっとくらい」

伊介「やぁよ♥貸したいんだったらアンタが貸せば?」

春紀「そうだなー…鳰さんに似合いそうな香水ねぇ」ガサゴソ

伊介「……貸すんだ、へぇ」

春紀「ん?何か言った?」

伊介「なんでもないわよ♥」

春紀「はいっ、これなんでどうだ?」ヒョイ

鳰「え?えーっと…」アタフタ

鳰「こ、これは…フタはどうやって開けるんスか?」

春紀「んっ?」

伊介「はぁ?」

春紀「香水使った事ないのか」

鳰「いやぁ…実は…」

伊介「なにそれダッサーい♥」

伊介「ハンドクリームも持ってなかったし…におってちょっと女子力低くない?」

春紀「よし…じゃああたしがばっちりメイクアップしてやるよ!」

鳰「ほんとッスか!?」

春紀「任せなって、ほらここ座って」ガタン

鳰「じゃあお願いするッス」

伊介「…………」

春紀「よし、そんじゃあ…最初は」

伊介「まずはリップから♥」ニュッ

鳰「!?」ビクッ

春紀「お、おい伊介様…邪魔すんなって」

伊介「伊介は邪魔なんてしてないよ?ほらこっち顔向けて…動くな」グイッ

鳰「んぐぐ…!」プルプル

春紀「いやいやいきなりリップっておかしいだろ!どいてろって!」

伊介「うるさいわね…伊介の邪魔しないでよ……あっ、ズレた♥」

鳰「え!?」

春紀「はぁ…仕方ない、じゃあ先にマニキュアでも」

伊介「あっ、じゃあ伊介は足♥」

春紀「さっきからなんなんだ!?」

伊介「なによ、お手伝いしてあげてるのに…♥」

春紀「……じゃあ私は顔を」

伊介「あっ、リップの続きしよっと♥」

春紀「絶対邪魔してるだろ!?」

伊介「ほら動くなって言ってるでしょ…折るわよ?」ゴキィ

鳰「ぎにゃあああああああああああ!!!」

…数時間後


春紀「で……できた」ゼェゼェ

鳰「ど、どうッスか?」ペカー

春紀「うん…結構いいんじゃない?」

伊介「当たり前でしょぉ、伊介がメイクしてあげたんだから♥」

春紀「ほら鏡」ヒョイ

鳰(この子…うちッスか?)

鳰(な…なんだか、自分じゃないみたいで照れるッス…)カアァ

鳰「そうだ…うち、いい匂いするッスかね」クンカクンカ

春紀「ん?あぁ香水も、似合いそうなの見繕って付けといたぞ」

伊介「アンタさぁ、この前も匂いがどうとか言ってたよね…何なの?」

鳰「べ…別になんでもないッスよ!なんでも!」アタフタ

はるいす「?」

金星寮
 金星食堂


鳰「すっかり外は夜ッスね、晩ごはんの時間ッス」

鳰「この時間ならきっと兎角さんはここに…」キョロキョロ

兎角「カレー大盛り」

晴「またカレー…」

鳰「いたッス!!」

晴「あっ、鳰」

鳰「どうも~!兎角さん、お隣座っていいッスか?」

兎角「……他の空いてるところに行けよ」

鳰「他の席空いてないんッスよー、ごはん時ッスからねぇぇ」

晴「兎角さん、座らせてあげようよ」

兎角「………分かったよ」

鳰「失礼するッスー!!」ガタン

兎角「………」モグモグ

鳰「~♪」モグモグ

晴「鳰もまたメロンパン…二人ともほんとに好きなんだねー…」

鳰「そりゃ大好物ッスから!兎角さんもカレー大好きッスもんね!」

兎角「私は…カレーは完全食だから食べてるだけだ」

鳰「またまた~そんな事言って!うち知ってるッスよ?兎角さんが曜日ごとのローテーションで全てのカレーを食べてることを…」

兎角「おいなんで知ってる!!」ガタン!

鳰「うちの情報網舐めて貰っちゃ困るッス」

晴「ふふ…」ニコニコ

兎角「一ノ瀬、何を笑ってるんだ」

晴「だって…二人がなんだか仲良さそうだから、嬉しくて」

兎角「仲が良い…?こんなやつと…」

鳰「ひでーッス」

晴「兎角さん!クラスメイトとは仲良くしなきゃダメだよ?」

兎角「…………」

鳰「そうッスよ兎角さん!うちももっと兎角さんと仲良くなりたいッスー」

兎角「…うるさい」

鳰「まぁまぁ、うちのプチメロ一口あげるから機嫌直してください」スッ

兎角「いらん…」

鳰「その代わり兎角さんのカレー!一口貰っていいッスか?」

兎角「なにがその代わりだ!!大体私のカレーをお前なんかに……!」

兎角「……いや、やるよ」スッ

鳰「……え?いいんスか?」

兎角「あぁ…残り全部やる」

鳰(なんだか…いつもよりいい雰囲気かもしれないッス!)

鳰(これも化粧のおかげッスかね?きっとうちがいい香りだから…)

鳰(だから兎角さんも機嫌がいい!きっとそうッス!)

…数時間後
 金星寮C棟


鳰「ふぅ…」スタスタ

鳰「いやー今日はいい日だったッス!兎角さんとちょっと仲良くなれた気がするし…」

鳰「それに…兎角さんの使ったスプーンで兎角さんのカレーを……」ジュルリ

鳰「大好物を分けてくれるなんて…うちと兎角さんとの間に友情が芽生えたと捕らえていいッスよねぇぇ」

鳰「……ん?」

鳰(あそこにいるのは……晴、と兎角さん……)



晴「えへへへへ…」

兎角「さっきからニヤニヤと…気持ち悪いな」

晴「ひ、ひどいっ」

兎角「なんなんだ一体…」

晴「だって、晴は嬉しいんだよ?」

晴「さっきも言ったけど…兎角さんと鳰の仲が良かったから」

兎角「……なんでここでアイツの名前が出てくるんだ?」

晴「え?えっと…それは」

兎角「…何を期待してるのか知らないけど、私はあいつと仲がいいなんて思ってない」

晴「え……」

兎角「私はお前の守護者で、他の奴らはお前の命を狙う暗殺者」

兎角「つまり私の敵だ、あいつも…」

晴「それ、は……そうだけど……でも」

晴「晴はみんなで仲良くできたらなぁって思っただけで…」

晴「…兎角さん、鳰にカレー分けてあげてたよね?敵ならそんなこと…!」

兎角「食欲が無かっただけだ、あいつの匂いのせいで……」

晴「匂い…?」

兎角「香水の匂いだ、気付かなかったか?」

兎角「あいつの体からプンプン匂ってきてて、食事どころじゃなかった」

兎角「ひどい匂いだっただろ」

晴「と、兎角さん!!」

鳰「…………!」

兎角「な、なんだ」

晴「それ鳰の前で言っちゃダメだよ、絶対!!」

兎角「あ…あぁ」

晴「…あ」ハッ

晴「……大きい声出してごめんなさい」

兎角「いや、別に…」

兎角「…部屋に、戻ろう」

晴「うん…」スタスタ

兎角「……」スタスタ



鳰「……………」

鳰「…そうッスよね」

鳰「普通…ごはん食べてる横で香水の匂いなんてさせてたら……食欲なんて無くなっちゃうッスよねぇ」

鳰「……まーた失敗ッス」

鳰「…………」

鳰(うちは…何の為にこんな事してるんだろう…)

鳰(うちは暗殺者で兎角さんは守護者…兎角さんの言うとおり、敵同士なのに…)

鳰(なんでうちはこんなに兎角さんにこだわってるんスかね?)

鳰(なんで今……こんなに胸が痛いんスかねぇ……?)グスッ

つづく

次の日の放課後
 金星寮C棟・7号室


鳰「はぁ…」

鳰「清潔にしててもダメ、花の香りは逆効果、香水は失敗…」

鳰「兎角さんの好きな匂いってなんなんスかねぇ」

鳰「もう考えすぎで頭の中がぐるぐるッスよ…」

鳰「うぅ…ちょっと散歩でもするッス」ガチャ



鳰「………」テクテク

生徒A「でね、それでー…」スタスタ

生徒B「マジで?それって…」スタスタ ドンッ

鳰「おっと」

生徒B「あっ、ごめんなさい」

鳰「いえいえ、大丈夫ッスよ」

生徒A「それで、続きなんだけどー…」スタスタ

生徒B「へぇー…意外…」スタスタ

鳰「…………」

鳰(今の女の子…いい香りがしたッスね)

鳰(考えてみれば女子はいい香りがするものッス…)

鳰「それに引き替え…うちは…」

兎角『腐った海の匂いがする、気持ち悪ぃんだよ』

鳰「………」グスッ

香子「ん?そこにいるのは…走りか」

涼「どうしたんじゃ?こんなところに突っ立って」

鳰「あ…いえ、なんでもないッスよ!」ゴシゴシ

鳰「お二人は今お帰りッスか?」

涼「うむ!丁度今、帰ったら何の風呂に入るか話しておったんじゃ」

鳰「お風呂…ッスか?」

香子「首藤は入浴剤にこだわりがあってな…たまに物凄い物を入れるから下手をすると私が風呂に入れなくなる」

香子「だから前もって何を使うか決めておかないとでな」

涼「失礼じゃのう、物凄いって言ったって元は温泉…入れないほどじゃないじゃろ」

香子「……私はもう二度と硫黄の香りまで完全再現した入浴剤なんて使いたくない」

鳰「やりすぎッスねぇ」

涼「いや、ワシはたまにはあぁいうのもいいと思って…」

香子「使いたかったら私が入った後で使ってくれ!!今思い出しても気分が悪く……うぷっ」

涼「いやごめんごめん!おわびに今日の入浴剤は香子ちゃんに選ばせてあげるから!」

涼「これなんてどうじゃ?いちごミルクの香り」

鳰「うぉっ、そんな香りまであるんスか」

涼「まだまだあるぞ、チョコレートの香りと…バニラ、醤油、ミント、オレンジ……」

鳰(醤油…?)

鳰(それにしてもすげーレパートリーッスねぇ)

鳰「…………!」ピコーン

鳰「首藤さん、ちょっとご相談なんスけど…」ニヤリ

涼「?」

金星寮・C棟
 3号室


涼「これがご所望の入浴剤じゃ」ヒョイ

鳰「恩に着るッス!」

香子「それにしても…そんな香りの入浴剤、本当に使うのか…?」

鳰「使うッスけど?」

香子「そうか……いや、うん……まぁいいが」

涼「ほれほれ、香子ちゃんはどれにする?醤油いっとく?」

香子「普通のでいい……これで」ヒョイ

涼「道後か、なかなかいいチョイス……」ニヤリ

香子「前に使った時になかなか良いと思ってな」

涼「ワシもこの温泉好きじゃな、どう?たまには一緒に入る?」ニヤニヤ

香子「なっ…何を言って…!」ドキッ

鳰「あー、そんじゃうちはこれで失礼するッスー」シュタタタ

鳰(馬に蹴られたくないッスからね!)

金星寮・C棟
 7号室

鳰「さーて、首藤さんから貰ったこの入浴剤…」

鳰「『カレーの香りの入浴剤』!!使ってみるッス!!」ドボドボ

鳰「おぉ、お湯の色がカレー色に…!なんか本格的ッスね!」

鳰「じゃあさっそく…」ドボン

鳰「………すごいッス、すごい香りッス、カレー臭っす」

鳰「これだけすごいカレー臭なら、うちの体にも香りが移るはずッス!!」

鳰「そうすれば…兎角さんも気に入ってくれるかも…」ニヤニヤ

鳰「カレー大好き兎角さんの事だし…だ、抱き着かれちゃったりして…!」ハァハァ

鳰「いやいや!流石にそれは妄想しすぎッス!恥ずかしー!」バシャバシャ

鳰「……………」

鳰「で、でも…もし、本当に………」

鳰「兎角さんがうちのこと、好きになってくれたら…!」ドキドキ

鳰「………ふへへ」ニヤニヤ

兎角『お前、なんだかいい香りがするな』

鳰『え?そうッスかね?』

兎角『なんだか…すごく美味しそうな…』ジリジリ

鳰『と、兎角さん?なんだか距離が近……きゃっ』ドサッ

兎角『…………走り』ギシッ

鳰『重いッスよ…兎角さん、どいてください…』

兎角『嫌だ』スッ

鳰『っ!?と、兎角さん!何する気ッスか!?』ビクッ

兎角『大人しくしてろ、こんなにいい匂いさせてるお前が悪いんだ…』ハァハァ

鳰『優しく…して欲しいッス…』ポッ



鳰「なーんちて!なーんちってーー!!」バシャバシャ

しえな『うるさい!!!』ドンッ!

鳰「ひっ!?すいません!」

鳰「………お隣に壁ドンされたッス」ブクブク

鳰「おぉ…うちの体がカレーの香りに!!」ペカー

鳰「すごいッス…!流石首藤さんの入浴剤…!!」

鳰「よし!この香りが薄くならないうちに兎角さんに会いに行くッスー!!」ガチャ

晴「!?」ビクッ

兎角「ん…?」バッタリ

鳰(玄関開けたら二秒で兎角さんッス!)

鳰「ど、どうもお二人さん!こんばんわッス!」

晴「なんだ鳰かー、いきなりドアが開いたからびっくりし……ッ!?」ビクッ

晴(な…何この匂い……カレー!?)

晴(カレーの匂いだ!!鳰からすっごいカレーの匂いがする!)

晴(まさか兎角さんの気を引くためにカレーの匂いを…!?ダメだよ鳰、流石にこれは逆効果…!)

兎角「なんか…どこかから腹の減る匂いがするな……」ジュルリ

晴(効いてる!?)ビクッ

鳰(効いてるみたいッス!!)グッ

兎角「一ノ瀬、食堂に行こう」

晴「え、あ…うん」

鳰「うちも行くッス!」

兎角「ダメだ、なんでお前がついて……」

鳰「ダメッスか…」

兎角「いや……」クンクン

兎角(なんかこいつからカレーの匂いがするような…)

兎角「まぁ…いいか」

鳰(ふおぉ!?こ、これは好感触ッスよー!!)

晴(やったね鳰!兎角さんに効果抜群だよ!!)

兎角「おい、来るなら早くしろ」スタスタ

鳰「今行くッスー!!」スタスタ

つづく

金星寮
 金星食堂


兎角「………」モグモグモグモグモグ

晴「兎角さんが凄まじい勢いでカレー(特盛)を食べてる…」

兎角「なんだか無性に腹が減って」モグモグモグモグモグモグ

鳰「いい食べっぷりッスねぇ、見てて気持ちいいくらいッス」

兎角「そうか」モグモグモグモグモグモグモグモグモグ

鳰(明らかに兎角さんの反応が柔らかい…いつもならうちが喋るだけで機嫌悪そうなのに)

鳰(カレー入浴剤の力…すごいッス!!)

兎角「おかわりしてくる」スタスタ

晴「え!?」

鳰「幸せッスー…」

晴「ちょ、ちょっと鳰…」

鳰「ん?なんスか?」

晴「このカレーの香り…鳰だよね?」

鳰「ご名答ッス!カレーの香りの入浴剤を使ったんスよ、首藤さんにもらったッス」

鳰「カレーの香りのうちなら兎角さんも好きになってくれるッスよね…」

晴「う、うん…今まで見たことないくらいに兎角さんはごきげんだけど…」チラッ

生徒A「なんか向こうからカレーの香りしない?」

生徒B「いつもカレー食べてる人のかな?」

生徒C「いやそんなレベルじゃないよ…カレー鍋ブチ撒けたのかってレベルの匂いだよコレ」

真夜「すげぇカレーの匂いがする…人がダイエットしてるってのに…!」イライラ

晴(周りの人はすっごい変な目で見てるよ?)

鳰「晴…うち、決めたッスよ」

晴「何を…?」

鳰「これからはカレー入浴剤を使って生活するッス!兎角さんが求めていた匂いはこれなんスから!」

晴「えええええええええーーっ!?」

鳰「そうと決まれば首藤さんに頼んで追加の入浴剤を…」

晴「待って待って待って!ダメだよ鳰考え直してよ!!」

鳰「晴…気持ちは分かるッスよ、兎角さんをうちに取られたくないんスよね?」

晴「!?」

鳰「でも諦めて欲しいッス……恋は戦争、戦わなければ生き残れないんスよ」

鳰「大丈夫、兎角さんがうちのモノになったとしても守護者を辞めるわけじゃないッスからね」

晴「えっ…!?え、ちょっと待ってよ…!どこからツッコミいれればいいか分かんないよ…!!」

兎角「思わずカツカレー(特盛)を買ってしまった」スタスタ

晴(重ッ!!)

鳰「と・か・く・さ~ん!ちょーっといいッスか!?」バッ

兎角「何だ?」モグモグ

鳰「単刀直入に聞くッス!今のうちは…いい香りするッスよね?」

兎角「………あぁ」モグモグモグ

兎角「フルーティなフレーバーと混じりあった数種のスパイス、その黄金比が生み出す絶妙な香りがする」モグモグモグモグモグ

兎角「私の胃袋に直接突き刺さってくるような見事なカレー臭だ」モグモグモグモグモグモグモグモグモグ

鳰「……………!」キューン

鳰(あぁ…その言葉、何回夢に見たことか…!!)

鳰(認められたッス…うちの香りは腐った海の匂いなんかじゃない!兎角さんの大好きな香りだって…言って貰えたッス…!!)

兎角「……………」モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ

鳰「うぅっ…ふぐっ!涙がぁ…!!」ポロポロ

鳰「な、泣いちゃダメッスよ鳰!泣いたら香りが流れてしまう…!」

鳰「でもっ…嬉しくて、涙がでちゃうッス~!!だって女の子だもん~!!」メソメソ

兎角「あと並盛一杯くらいなら入りそうだな…」

生徒A「漂ってくるカレーの香りに塩気がプラスされたよ」

生徒B「一体向こうの席で何が起こっているの…」

晴(それは晴が聞きたいです……)



兎角「……食べ過ぎたかもしれない」フラフラ

晴「明らかに食べ過ぎだよ」

鳰「あ…じゃあうちはこっちの部屋なんで」ガチャ

晴「うん、おやすみ鳰」

鳰「おやすみッスー」

鳰「…………」

鳰「あ、あの…兎角さん」

兎角「?」

鳰「明日も、一緒の席でごはん食べていいッスか?」

兎角「…………」

鳰「………」ドキドキ

兎角「まぁ…いいぞ」

鳰「!!」キューン

鳰「ほ、ほんとッスか!」

兎角「あぁ」

鳰「う…嬉しいッス!早起きするッス!」

鳰「約束ッスよ!明日も一緒のごはんッス!」

兎角「しつこいな」

鳰「えへへ…じゃあおやすみなさい!兎角さん!」ガチャ バタン

兎角「………相変らずやかましい奴だった」

晴「………ふふっ」

晴(よかったね、鳰)

晴(でも…カレー入浴剤はもうちょっと控えめにしておいたほうがいいと思う)

金星寮・C棟
 1号室


晴「兎角さん兎角さん」

兎角「なんだ?」

晴「今日一日で随分鳰への態度が柔らかくなったね」

兎角「……まぁ否定はしない」

晴「やっぱり鳰から、大好きなカレーの香りがしたから?」

兎角「………それもあるけど、それだけじゃない」

晴「え?」

兎角「お前が言ったんだろう、みんなと仲良くしたほうがいいって」

兎角「……最近、走りが妙に私に絡んでくるから」

兎角「もしかして…あいつ、私に敵意はないんじゃないかと思って」

兎角「だから私も少しだけ、考えを改めてみようと思っただけだ」

晴「……うん!そうだよ!そのほうがいいよ!」

晴「このまま兎角さんと鳰が……うぅん、それだけじゃない」

晴「黒組のみんなとも、もっともっと仲良くなって…みんなで一緒に卒業出来たら嬉しいな」

兎角「…努力はする、かもな」

金星寮・C棟
 7号室


鳰「…………」ドキドキドキドキ

鳰「む、胸がドキドキするッス…」

鳰「それになんだか、ニヤニヤも止まらない…」ニヤニヤ

鳰「へへ、やったんスね…夢じゃないッス」

鳰「兎角さんと仲良くなれたッス…!」

鳰(あぁ、なんでだろう?たったそれだけの事なのに…)

鳰(嬉しさが溢れて、居ても立っても居られない気持ちになって、とにかく爆発しそうッス!)

鳰「はぁ~…」ゴロゴロ

鳰(…不思議ッスね、最初は腐った匂いって言われたのがショックだった、ただそれだけだったのに)

鳰(いつの間に兎角さんに好かれたいって想いがどんどん大きくなっていって)

鳰(今はそれだけ…兎角さんの事ばっかり考えてるッス)

鳰(これが恋ってやつなんスかね)

鳰「……なーに考えてちゃってんスかねうちは!はずかしー!!」ジタバタ

しえな『うるさーい!!』ドンドン

鳰「さーせんッスー」

次の日
 10年黒組教室

鳰「ふっふーん♪」

兎角「機嫌が良さそうだな」

鳰「はいっ!そりゃもう!」

鳰(なんてったって兎角さんと朝食を共にした後ッスからねぇ、この後が授業だと分かってても心が躍るッス)

鳰「よーし今日も張り切って行くッスよー!おはよざいあーッス!!」ガラッ

伊介「なぁに?朝からうるさ………っ!?」ビクッ

しえな「来たな走り!お前昨日、部屋で何をドタバタ………ふぐっ!?」ビクッ

溝呂木「おはようみんな!今日も元気に………ん!?」ビクッ

鳰「ん?どうかしたッスかー?」

香子(こ、これはっ……!!)

千足(間違いない…!!)

純恋子(インドからやってきた国民食の香り…!!)

みんな(凄まじいカレー臭がする!!!)

溝呂木「しゅ、出席を取るぞー…」

春紀「オイ、東!」ヒソヒソ

兎角「なんだ寒河江」

春紀「お前今朝何食ってきた…」

兎角「カレーだ」

春紀「やっぱりか!お前がカレー好きなのは知ってるけど、何もこんな香りさせるほど食ってくること…!」

兎角「この香りの事なら私じゃない、走りだ」

春紀「…………え?」

春紀「…………」クンカクンカ

鳰「~♪」

春紀「………マジだ」

兎角「そうだろ」

春紀「一体何をどうしたらあんなカレー臭になるんだよ…カレーの池にでも落ちたのか?」

兎角「それは知らないが……まぁ、いい香りだと思うし、いいんじゃないか」

春紀「マジで言ってんのか…」

兎角「あぁ」

一時間目
 数学の時間


鳰「~♪」

香子「…………」イライラ

伊介「…………」イライラ

晴(う~ん…なんだか空気がピリピリしてるなぁ、いやスパイス的な意味じゃなくて)

晴(鳰、やっぱりカレー臭凄すぎだよ…みんな気になって授業に集中できてないみたいだし…)

晴(あ、でもカレー大好き兎角さんなら逆に集中してたりして)チラッ

兎角「…………」モグモグモグ

晴(カレー食べてる!?)

春紀「せんせー、東さんが授業中にカレーメシ食ってまーす!」

溝呂木「何っ!?」

兎角「寒河江…!貴様!!」ハッ

晴(兎角さん何やってるのー…)

溝呂木「東ー、早弁はダメだろー」

兎角「くっ…カレーの香りに食欲が抑えきれなくて…つい…!」

伊介「なにアレださーい♥」クスクス

溝呂木「まぁ確かに…今日はなんだかどこからともなくカレーの香りがするけど…な?」

香子「どこからともなく!?正気ですか溝呂木先生!!」ガタン!

香子「原因は分かりきってます!!カレーの香りの元は走りです!!」ビシィ!!

鳰「!?」

溝呂木「いや…うん、まぁ先生もそうだろうと思ってたけど」

鳰(カレーの香りが問題になっちまったッスか!?ピンチッス!!)

鳰「い、いやー…確かに香りの元はうちッス、すいません」

香子「お前は一体なんなんだ!!カレーか!?カレー屋さんか!?」

しえな「委員長が爆発している…」

涼「キレてる香子ちゃん、かっこいいのう」

鳰「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ!そんなに怒らなくてもいいじゃないッスか!!」

香子「怒るわ!!」

溝呂木「落ち着け神長!!!」

香子「カレーの香りのせいでクラス全員の勉学の妨げになってるんだぞ!特に東!」

兎角「………」モグモグ

鳰「うぐっ…!」

香子「しかも何人かは香りによるダメージも受けている!!周りを見てみろ!!」

純恋子「か、香りで胃が…もたれて……ぐふぅっ」ガクッ

真昼「は、英さんが……!」

柩「ちょっと体調が…悪いです…」プルプル

千足「桐ケ谷!!」

溝呂木「ちょ、ちょーっとこれは問題だな…」

鳰「あわわ……」

香子「今すぐ風呂に入ってそのふざけた香りを落としてこーーーいっ!!」

鳰「えええええええーーーっ!!!」ガーン

つづく

金星寮C棟
 大浴場


鳰「はぁ…めっちゃ怒られたッス、委員長は怒らせちゃダメッスね」カポーン

鳰「カレー入浴剤も取り上げられちゃったし、これからどうすれば…」

鳰(カレーの香りのしないうちでも兎角さんは傍にいていいって言ってくれるッスかねぇ…)

鳰(もし…ダメって言われたら…!)ゾクッ



兎角『なんだ…カレーの香りしないのか、もう私に近づくなよ』

鳰『そんなぁ!いきなりひどいッス!』

兎角『カレーの香りのしないお前なんて何の価値も無いんだよ』

兎角『じゃあな、私はカレー食べるので忙しいから』

鳰『うちも行くッス!一緒にいたいッス!!』

兎角『ダメだよ、お前腐った海の匂いするから』

鳰『しないッスーー!お願いだから行かないで欲しいッスーーー!!』

兎角『フン』スタスタ

鳰『うわああああああああああん!!!』

鳰「うわあああああああああああああーーーー!!」バッシャー

鳰「お…恐ろしい妄想をしてしまったッス…!!」ハァハァ

鳰「あぁ…心臓に悪い、胸がよくない意味でドキドキするッス…」ドキドキ

鳰「…………」

鳰「…大丈夫ッスよね、兎角さん」



鳰「ふぅ、綺麗さっぱりッス」ホカホカ

鳰「…………」クンカクンカ

鳰(カレーの香り……しない)

鳰(なんだか、このまま兎角さんの前に出るの怖いッス……)

兎角『カレーの香りのしないお前なんて何の価値も無いんだよ』

鳰「………っ!」ブルッ

鳰(違う!兎角さんはそんな事言わない…あんなのただの妄想ッス)

金星寮C棟
 廊下


鳰「おや?あそこにいるのは…」スタスタ

千足「大丈夫か?桐ケ谷…」

柩「もうちょっとだけ、このままで…」ゴロン

鳰「生田目さんと桐ケ谷さん…なんでこんなところで膝枕してるッスか」

千足「ん?走りか…桐ケ谷の体調が良くないからな、風通しのいいところで寝かせている」

鳰「………もーしわけないッス」

柩「あはは…ぼくは大丈夫ですよ、それより走りさんは平気ですか?」

鳰「うちが…?」

柩「いや…あんなに強烈なカレー臭を漂わせていたから…」

千足「カレー鍋に頭から突っ込みでもしたんじゃないかと思っていたんだ」

鳰「あながち間違ってないッスね…でも大丈夫ッス!」

鳰「しかしうちのカレー臭が桐ケ谷さんの体調を崩すほどだったなんて…いやマジさーせんッス」

柩「大丈夫です、ここでこうしてたらだいぶ体調も良くなったし…」

千足「そうなのか」

柩「そうなんです」

柩「でも……ぼく、もう少しだけここでこうしていたいな」

千足「桐ケ谷…?」

柩「こうやって千足さんの膝の上にいると、とっても幸せで…」

柩「それに千足さん、とってもいい香りがするし」ニコニコ

千足「か…からかわないでくれ」カアァ

柩「からかってなんてないです、ぼく…千足さんの香り好きだな」

柩「なんだか安心できる香りがします」クンクン

柩「ねぇ千足さん…もう少しだけここにいてもいいですよね?」

千足「…仕方ないな、午後からはちゃんと授業に出るんだぞ」ナデナデ

柩「はい…」

鳰(あっれーこの二人、うちがここにいるって忘れてないッスかねー)

鳰(でもちょっとうらやましいッスねぇ…)

鳰(安心できる香り……か)

鳰(うちも兎角さんにとって安心できる香りでいられたら…)

鳰(……探すしかないッス、カレー以外に兎角さんが気にいってくれる香りを!)

鳰「そんじゃーうちは教室に戻るッスー!ごゆっくりー」シュタタタ

柩「くんかくんか」

千足「ちょ…待っ、桐ケ谷」



鳰「放課後ッスね」

鳰(結局桐ケ谷さんと生田目さんは帰ってこなかったッス)

鳰「一回風呂に入ったから眠いッスねぇ~…」ムニャムニャ

鳰「今日は早めに寮に帰るッス」

金星寮・C棟
 7号室


鳰「ふー……」ゴロゴロ

鳰(眠い……)

鳰(最近ちょっとドタバタしてたッスからねぇ、たまにはゆっくり休憩するッス)

鳰「………」

鳰(……ほんとにドタバタしてたッス)

鳰(カレーの香りの入浴剤で兎角さんに一歩近づけたり)

鳰(伊介さんと春紀さんにお化粧して貰ったり)

鳰(うっかり植物園で2日くらい居眠りしちゃったり)

鳰(晴に相談に乗って貰ったり)

鳰「………そういえば、晴って」

晴『晴は埃っぽい匂い、ひなたの匂いなんだって!』

鳰「ひなたの…匂い」

鳰「兎角さんって、ひょっとして…!!」ハッ

金星寮・C棟
 1号室


晴「鳰ー!ようこそー!」

鳰「お邪魔するッス!」ガチャー

晴「珍しいね、鳰が晴の部屋に来てくれるなんて…」

鳰「…兎角さんはいないッスね」キョロキョロ

晴「兎角さん?兎角さんなら今…」

鳰「いやいやいいッス、今日は晴に用があってきたんスから」

晴「え?晴に?」

鳰「………晴、うちは分かってしまったんス」

鳰「何故、兎角さんが黒組全員を敵に回してまで晴の守護者になったか…その理由を」

晴「え……?」

鳰「晴、前に言ったッスよね、兎角さんに埃……ひなたの匂いがするって言われたって」

晴「う、うん」

鳰「それが理由ッス!!」

鳰「兎角さんが安心できる、好きな香り……それはひなたの香りに違いないッス!」

晴「と、兎角さんが…晴の香りを…!?」

鳰「そうとしか考えられないッスよ!きっと晴のひなたの香りに一目惚れしちまったんス!」

晴「ひ…一目惚れ!?ええぇ…!?」カアァ

晴「そんな事、いきなり言われても…!!」ドキドキ

鳰「いいッスねぇ、羨ましいッス」

鳰「…………うちも晴みたいになりたかった」

晴「……え?」

鳰「うちは晴の香りが、ひなたの香りが欲しいんス」ジリジリ

晴「に、鳰?ちょっと近くないかな…?」

鳰「うちがひなたの匂いになればきっと兎角さんも、もっとうちと仲良くなってくれる」

鳰「なにより、うちからもっと兎角さんに近づく勇気が持てる…そんな気がするんス」

晴「…………?」

鳰「晴」

晴「なに…?」

鳰「その香り、貰っちゃうッスよ」バッ!

晴「ひっ…!!」

金星寮C棟・1号室
 風呂


兎角「……………」カポーン

兎角(走りの奴、夜は食堂にこなかったな)

兎角(まぁいいか、あいつもきっと忙しい時くらい……)

晴『きゃーーーーーっ!!!!』

兎角「!?」ザバッ

兎角(一ノ瀬の声!?…襲撃かっ!!)

兎角「くっ!一ノ瀬!!」バッ!



兎角「一ノ瀬!大丈夫か!?」シュバッ

鳰「!!」

晴「あ…兎角さん…!」

兎角(風呂を飛び出した私の目に映ったのは、床に寝転がった一ノ瀬の身体)

兎角(そして、その上に覆いかぶさる走りの姿だった)

兎角「走り……」

鳰「い、いや…あの、これはッスね」アタフタ

晴「兎角さん…あのね、えっと……」

兎角「晴から……離れろ……」ジャキィン!

鳰「ひっ!?ナイフっ!?」ビクッ

兎角「最初からそういうつもりだったんだな…私を油断させて晴を…!!」ゴゴゴゴゴゴ

晴「ま、待って兎角さん!違うよっ!!」

兎角「かばうな!言い訳があるなら走りの口から聞いてやる」ジャキッ

鳰「えっと………」

兎角「どうした…?いつもみたいにべらべら舌を回して言い訳してみろ…」

鳰「その……」

兎角「…………部屋から出ていけ、晴には手出しさせない」

鳰「あう……」

晴「………もうっ!!兎角さんってば!!!」

兎角「!?」ビクッ

晴「晴の話、ちゃんと聞いて!!」

兎角「は、はい」

…数分前
 プレイバック


鳰「その香り、貰っちゃうッスよ」バッ!

晴「ひっ…!!」

鳰「とりゃーーーっ!!」バーン

晴「わっ!?」

鳰「おぉっ、晴ったらすべすべお肌ッスねえぇ」スリスリ

晴「ちょ、ちょっと鳰っ!くすぐったいよ…!」

鳰「ごめん、しばらく我慢して欲しいッス」スリスリ

鳰「今から晴をすりすりしまくって、ひなたの匂いをうちに移すッス!」バーン

晴「えええーっ!?」

鳰「もううちにはこの方法しか残っていないんス!!うちのためだと思って耐えて欲しいッスーー!!」スリスリ

晴「ちょ、ちょっとにお……あはははははっ!くすぐったいよっ!!」

鳰「な、なるほど…!確かにおひさまの香りッス、癒される…!」スリスリスリスリスリ

晴「あははははははは!あはは…!苦しい…!」

鳰「こっちの方もなかなか…うちほどじゃないけど程よい大きさで癒し効果抜群ッスね!」モミュモミュ

晴「へっ!?ちょ、ちょっとやだっ、どこ触って…!!きゃーーーーーっ!!!!」

晴「……と言う事なのです!」

兎角「…………」

晴「鳰は晴を襲ったりなんてしてない、ただひなたの匂いが欲しかっただけなんだよ!」

兎角「何をやってるんだ…お前ら……」ハァ

鳰「さーせんッス!お騒がせしたッス!」ペコペコ

兎角「……でも一ノ瀬の香りに惹かれるのは、少し…分かるな」

晴「えっ!?」ドキッ

兎角「埃っぽいと言うか、くしゃみが出そうな…どこか懐かしい香り」

兎角「ずっと近くに、傍らに寄り添っていたくなる…そんな香りだ」

晴「と、兎角さん…」ドキドキ

鳰「…………」

鳰(違うんスよ、兎角さん)

鳰(うちは晴の香りに惹かれたんじゃない……本当に惹かれてるのは、本当に欲しいのは……)

鳰(本当に欲しいのは、貴女なんッスよ)

鳰(……でも、言えないッス)

鳰(うちは、ひなたの匂いじゃないから)

鳰「……あはは、誤解も解けたところでうちは帰るッス」クルッ

晴「……鳰?」

鳰(今、はっきり分かった…いや、気付かないフリをしていたことに気づいた)

鳰(うちが、自分で言ったんじゃないッスか…兎角さんが好きなのは…)

鳰(兎角さんがそばにいたいと思うのは、ひなたの匂いの女の子)

鳰(どんなに頑張っても、最初から…うちじゃダメだったって事ッスね)

鳰「それじゃ、二人とも…おやすみなさいッスー」ガチャ

晴「待って!」ガシィッ

鳰「!?」

晴「鳰……逃げちゃダメだよ、ちゃんと言わないと」

晴「晴は知ってるよ!鳰の気持ちも、兎角さんの気持ちも!!」

晴「だから!ちゃんと言って!!」

鳰「え…で、でも」

兎角「?」

鳰「ちょ、ちょっとぉ!?いきなりすぎじゃないッスか!?」

晴「だって鳰言ったよね!?もうこの方法しか残ってないって!」

鳰「う……」

晴「それって、打つ手がないって事だよね」

晴「だから、もうやるしかないよ!勇気だして!」

兎角「ちょっと待て、さっきから何の話を」

晴「ファイッ!!」カーン

鳰「えっ!えっ…えぇえぇえぇえ…!?」アタフタ

兎角「…なんなんだ?」

鳰(ほんとになんなんスかこの状況ーーーーー!!!)

つづく

兎角「………?」

鳰「う……」

鳰(いきなりこんなの…!小衣…じゃなかった、心の準備が全然出来てないッスよ!)

鳰(しかも晴もいるし!!なんスかこれ罰ゲームなんスか、校舎裏に二人っきり…と見せかけてみんな隠れてるパターンッスか)

鳰(もう当たるまでもなく砕けてるうちが、これ以上どうしろって…)チラッ

晴「?」

晴(そっか、晴がここにいたら邪魔だよね)

晴「じゃあ晴はちょっと外に出てるから!」ガチャ

兎角「おい待て一ノ瀬、どこかに行くなら私も一緒に」

晴「それは絶対にダメっ!!」ブー

兎角「何でだ」

晴「ダメったらダメ!兎角さん空気読んで!!」

晴「予告票も来てないし、晴は大丈夫だから鳰の話を聞いてあげて!」

兎角「走りの話…?」

鳰「………」ドキドキ

晴「それではっ」ガチャ バタン

兎角「あぁ…あんまり遠くに行くなよ…」

鳰「…………」

兎角「………」

鳰「へ、へへ…二人っきりッスねぇ」

兎角「あぁ、そうだな」

鳰「………」ドキドキ

兎角「…何か私に言いたい事があるのか?」

鳰「!!」ドキーン

鳰「あああああある、いえ、あのえっとあああああああなんていうかその」ドキマギ

兎角「…落ち着けよ」ポン

兎角「別に逃げたりしないし」

鳰「ちょ、ちょっと深呼吸するッス!」ドキドキ

鳰「すー…はー…」

鳰(よし…行くッス)

鳰(うちも、逃げない!!)

鳰「あ、あのっ…!うち…!兎角さんにお願いしたい事があって…!!」

兎角「あぁ」

鳰「う……うちの……!」

鳰「うちの匂いを嗅いで欲しいんッス!!」バーン

兎角「………」

鳰「…………!」

兎角「に、匂い」

鳰「そうッス…」

鳰「………兎角さん、初めて会った日のこと覚えてるッスか?」

鳰「兎角さん、うちと伊介さんのこと…腐った海の匂いがするって言ったッスよね」

兎角「…あぁ、言った」

鳰「恥ずかしい話ッスけど、うちはそれをずっと気にしてたんッス」

鳰「本当にそんな匂いがするのか…ずっとずっと気になって」

鳰「色んな香りをつけて兎角さんに、前言撤回してもらおうとしたッス」

鳰「うちのこと、いい匂いだって…腐った匂いなんてしないって言ってもらいたいって思って、それから」

鳰「………兎角さんにうちのこと、好きになってもらいたいって思うようになってたんッス」

鳰「だから、兎角さん…うちの匂いを嗅いで欲しいッス」

鳰「それで…正直に、どう思ったか教えてください」

鳰「……お願いしますっ」

兎角「…………」

兎角「………悪かった」

鳰「え?」

兎角「その、腐った海の匂いだとか言った事……」

兎角「走りがそんなに気にしてたなんて私、知らなかったんだ」

兎角「そうか…お前、それで私に絡んできてたんだな」

鳰「はい…」

兎角「腐った海の匂いってのは、そのままの意味じゃ…お前からそういう匂いがするって意味じゃない」

兎角「私と同じで…暗殺者の気配がする奴って、意味で…」

鳰「………」

兎角「それで…今のお前からは、そんな匂いはしない」

鳰「え?」

兎角「なんだろう…ちょっと前から思ってたんだ」

兎角「お前から腐った匂いを感じなくなって、代わりに別の匂いがするようになったな…って」

兎角「たぶん、お前が暗殺者として私に接触しなくなったからだと思う」

鳰「………そ、そうッス」ドキドキ

鳰「最近のうちは、ずっと…兎角さんの事、暗殺者としてじゃなくて…!」ドキドキ

鳰「………す、好きな人として見てたッスから……!!」

兎角「…………」

鳰「……な、なんか言って欲しいッス!」

兎角「……いや、なんて言ったらいいのか」

兎角「……そんな事言われたの、初めてだから……分からなくて」ドキドキ

鳰「う、うちだって初めてッスよぉ…!こんなの…!」ドキドキ

兎角「……走り」ガシッ

鳰「兎角さん…?」

兎角「お前の匂いを嗅がせてくれ」

兎角「こういう時、なんて言ったらいいのか…それで分かる気がするんだ」

鳰「ん……お願いするッス」

兎角「そこ、座ってくれ…」

鳰「し、失礼するッス…」ギシッ

鳰「あ、あの…恥ずかしいから、目瞑ってていいッスか…?」

兎角「…そうしてくれると私もやりやすい、かもしれない」

鳰「………」パチッ

兎角「…………」

鳰(う、うわ…うち、胸がすっごいドキドキしてる…!)ドクンドクン

鳰(恥ずかしいッス…!兎角さんに聞こえてたりしてないッスよね…!?)

兎角「じゃ、じゃあ…行くぞ…」ガシッ

鳰「はい…」

兎角「…………」ギュッ

鳰(っ!?だ、抱きしめられてる?うち、今兎角さんに抱きしめられてるッスか!?)

鳰(はわわわ…!ヤバいッス!あったかくて、くすぐったくてぇ、なんかとにかくヤバいッスうぅぅう!!)

兎角「ん……」スー

鳰「ふわっ…!」ビクンッ

兎角「…………」クンカクンカ

鳰(ひゃ…!嗅がれてるっ、兎角さんに嗅がれちゃってる…!)

鳰(息とかちょっと当たってこしょばゆい…ヘンな声でちゃうッス…)

兎角「……」クンカクンカ

鳰「あっ…!ん…」ピクッ

兎角「わ、悪い…!大丈夫か…!」バッ

鳰「へ…平気ッス、続けてください…」

兎角「あ…あぁ」クンカクンカ

鳰「ふぅ……んっ、あんっ…!兎角さん…!」ビクンッ

兎角「走り……」クンカクンカ

鳰「ど、どうッスか、うちの匂い……腐った匂いなんてしないッスよね…?」ハァハァ

兎角「しない……なんか、すごくいい匂いだ」

鳰「……!う、嬉しいッス、兎角さんにそう言って貰えて…」

鳰「花でも、香水でも、カレーでも、晴の匂いでもない……」

鳰「うち自身が……いい匂いってことッスよね?」

兎角「あぁ、そうだ…走りは、いい匂いがする」

兎角「私はこの匂い、好きだぞ」

鳰「………ありがとうございます、兎角さん」

兎角「走り……」ナデナデ

鳰「兎角さん、うちもう一つお願いしたい事があるッス」

兎角「なんだ?」

鳰「…もう一回、うちの事ぎゅってしてください」

兎角「…さ、流石にちょっと恥ずかしい……かもしれない」

鳰「………」ジーッ

兎角「う…わ、分かったよ…これでいいんだろ…」ギュッ

鳰「えへへ……」スリスリ

鳰「………」クンカクンカ

兎角「ッ!?」ビクッ

鳰「兎角さんも、いい匂いッス」

兎角「………そうか」

次の日
 10年黒組・教室


鳰「おはざいあーッス!!」ガラッ

伊介「うるさぁい♥」

純恋子「朝から元気が良いですわね…私はまだちょっと後遺症を引きずってますわ」フラフラ

真昼「は、英さん…大丈夫ですか…」オロオロ

鳰「あはははは、いやマジでさーせんした」

涼「ふふふ、昨日は災難じゃったのう走り」

香子「災難だったのは走りじゃなくてこっちだ…」ププンスカ

鳰「あ、おはざーッスお二人さん」

涼「カレー入浴剤の代わり…と言ってはなんじゃが、こういうものを用意してみたぞ」ヒョイ

鳰「これは?」

涼「ターメリック入浴剤じゃ、カレーによく似た…というかカレーの材料の香りが」

鳰「あー、もうこういうのいいッス」ポーイ

涼「なん…だと…?」

春紀「おー、鳰さんは朝っぱらから元気だなぁ」

鳰「春紀さん、ざいあーッス」

春紀「……あれからメイクしてないみたいだな」ジロジロ

鳰「?」

春紀「いやさ、もし化粧とか興味出たんなら鳰に似合いそうな香水がいくつか…」

鳰「もう興味ないッスー」スルー

春紀「なん…だと…?」

晴「おはようござ……あれ、春紀さんが燃え尽きてる」ガラッ

兎角「邪魔だな」スタスタ

鳰「あっ、晴!兎角さーん!おっはよーう!!」

晴「おはよう鳰!」

兎角「……おはよう、走り」フッ

鳰「うっす!おはようッス!」

柩「……なんだかあの二人、いい感じですね」

千足「私もそう見える」

しえな「何の話だ?」

柩「東さんと走りさん、急に仲良くなってる気がして…」

香子「言われてみれば…何かあったのか?」

春紀「…あぁ、なるほどねー鳰、そういう……」ピコーン

伊介「なんか気持ちわるーい♥」

涼「まぁ、仲良きことは美しき哉…と言うではないか」

香子「私はカレーの匂いがしなければどうでもいい」



晴「今日のお昼は何にしようかなぁ」

兎角「ふふっ…カレーなんてどうだ?」

鳰「うちも一緒に行くッスーーーー!!」



おしまい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月11日 (日) 12:57:09   ID: cf1crzB_

どうせなら乙哉も出してほしかったけど、乙女な鳰が新鮮で面白かった!

2 :  SS好きの774さん   2014年11月19日 (水) 23:12:15   ID: f0pxf1m7

平和でいいね

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom