鳰「ナナミス……?」 (61)
※ごく少量の南波と海鈴成分、百合っぽい描写を含む※
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆理事長室◇
鳰「お呼びですかー、理事長」
一「待っていたわよ、鳰さん」
「今日はちょっとお願いがあってね」
鳰「お願いっスか?」
一「そう、とても簡単なことよ」スッ
鳰「……カプセル?」
「なんスか? これ」
一「“NA73SU”……通称ナナミスよ」
鳰「……ナナ、ミス?」
一「面白いお薬なの」
「身体にちょっとした変化をもたらすものよ」
一「ある研究機関が秘密裏に開発を進めていてね」
「それはそのサンプル」
鳰「へぇ、秘密裏に……」
「ちなみにちょっとした変化っていうのは?」
一「教えられません。というより」
「実際に自分で見た方が早いと思うわ」
鳰「そっスか……」
「……で。このナナミスを」
一「黒組の皆さんに飲ませてもらえるかしら」
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鳰「なるほど」
「それがウチの今回のミッションっスね?」
一「ええ、出来ますか?」
鳰「勿論っス」ビシッ
「この薬……何か、狙いでもあるんスか?」
一「ありません」
鳰「え?」
一「しいて言うなら……面白そう、ってだけね」
鳰「はあ……」
一「では任せましたよ」
鳰「任されましたっス!」
鳰(たまに理事長って何考えてるか分かんないなァ)
(ま、ウチは裁定者として、与えられた役割を全うするだけっスね)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◇黒組教室◆
鳰(とはいうものの)
鳰(このカプセルをどうやって皆さんにお渡ししましょうかねぇ~)ウムム
鳰(たぶんウチは信用されてませんよね……たぶんってか絶対)
(カプセル飲んでくださいなんて言ったところで、断られるのは目に見えている)
鳰「んー……さてさて」
晴「におー、難しい顔してどうしたの?」ヒョコ
鳰「あっ、晴。ども~」
(そうだ!)
鳰(まずは晴ちゃんにこの薬を飲んでもらいますかね)
(サプリとか言っておけば、警戒感のない晴ちゃんなら疑わずに飲んでくれるハズ)
鳰(まあ兎角サンが来たとしても、ちょっと押せば……イケるっしょ)
鳰「いやー、ウチ、このサプリメント飲んでるんスけど」
「ほんとに効くのかなーって今になって気になっちゃって」
晴「におってサプリ飲んでたんだ」
「なんかちょっと意外」
鳰「えっ、それどういう意味っスか」
晴「あ、いやいっつもプチメロ食べてるし……健康とかあんまり気にしないのかと思ってた」
鳰「プチメロ食べてるからこそっスよ」
「そこでなんだけど、晴もこのサプリ飲んでみてくれないっスか?」
晴「えー、晴は栄養ちゃんと摂ってるからサプリなんて必要ないよ?」
鳰「まぁまぁ、一粒! 一粒でいいっスから~」
晴「一粒じゃ何の効果も表れないと思うけど……」
「まあ、そんなににおが言うなら……」
鳰(キター!)
兎角「おい、一ノ瀬! 何してるんだ!」
鳰(キター……)
晴「兎角さん」
兎角「なんだそのカプセルは」
晴「あ、うん、サプリメントだよ」
「におが効果を確かめたいから飲んでみてほしい、って」
兎角「……」ギロッ
鳰「あ、アハハ……」
兎角「……一ノ瀬、もしこの薬が毒だったらどうするんだ」
晴「え、でも、におはサプリメントだって」
兎角「嘘かもしれないだろう! 特に走りは胡散臭い選手権黒組代表なのに」
鳰「ひどいっスよ、兎角さ~ん」
晴(選手権……?)
兎角「うるさい」
「とにかくダメだ、飲むな一ノ瀬」
晴「……う」シュン
柩「(毒と聞いて)どうしましたか?」
千足「(桐ケ谷が来たので)やあ」
晴「柩ちゃん! 千足さん!」
「におがね、サプリメントって言ってこのカプセルをくれたんだけど」
晴「兎角さんが毒だから飲むなって言うの」
鳰「ひどいっスよね~」
兎角「ひどくない」
柩「へぇ……」
「一粒ぼくに貸してもらえますか?」
鳰「あ、いいっスよー、ほい」
千足「桐ケ谷? まさか、飲むわけじゃないだろうな」
柩「飲みませんよ、千足さん」
「カプセルですから、こう、開けて」カパ
柩「中の粉末を、ちょっと味見するだけです」
千足「いや、やめておいた方がいい」
柩「大丈夫ですよ、ぼくだって一応は暗殺者です」
「毒に対する耐性くらいありますから」ペロッ
千足「お、おい」
柩「……」モムモム
「別に毒じゃないみたいですね」
千足「……ほっ」
鳰「ほーら言ったじゃないっスか、毒じゃないっスって」
晴「もー、兎角さんは心配しすぎなんだよ」
兎角「一ノ瀬の危機感が無さすぎるんだ」
柩「!」ドクンッ
「う……!」
千足「!? ど、どうした桐ケ谷! 大丈夫か!」
柩「だ、大丈夫です、ちょっと……めまいが――」フラッ
千足「おい……桐ケ谷、桐ケ谷っ!」
「走り、貴様!」
兎角「やっぱり毒か……!」
鳰「え、ち、違うっスよ! たぶん!」
千足「たぶんだと……!?」
「まさか、自分でもよくわからないような薬を桐ケ谷に渡したのかっ……!」
鳰「ち、違……うとは一概には言えないっスけど」
「でも、毒じゃない! ……はずっス」
千足「一ノ瀬、桐ケ谷を少しの間、頼む」
晴「え、千足さん」
千足「わたしはこいつを……切らなくてはならないようだ」カチャリ
鳰「ちょ!」
千足「走り……桐ケ谷をよくもッ!」
鳰「まままま待ってくださいよォォ! ウチは無罪っスよ!」
「しいて言うならウチも騙され――
柩「――う、うぅん」
千足「っ!」
晴「柩ちゃん、大丈夫!?」
柩「う……頭がちょっとくらくらしますけど……大丈夫です」
「毒じゃないはずなんですけど……一体何が……」ピョコン
晴「……」
晴「ん?」
千足「なっ!?」
鳰「これは……!」
柩「? どうかしましたか?」
「ぼくの顔に何かついてますか?」ピコピコ
晴「……え、えっと」
「顔というよりは」
千足「……頭だ、桐ケ谷」
柩「頭? 頭に何が……」サワッ
猫耳「」ニャーン
柩「」
柩「……!?」
におはるちた(((柩ちゃん(桐ケ谷)の頭に)))
におはるちた(((猫耳がついてる――!)))
兎角「……デカい寝癖だな」
晴「兎角さん!?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
千足「つまり」
「走りは理事長に頼まれて、わたしたちに飲ませるために、持ってきたというわけだな」
千足「この、猫耳が生える薬を」
柩「あと尻尾も生えました」シュルン
鳰「……はい、まぁ、そうっス」
「でも、効果とかはわからなかったんスよ!? あと、飲ませる目的も……」
鳰「身体にちょっとした変化があるって聞かされてただけで……効果は見た方が早いって言われたし」
(……あれ、ウチ理事長との話をペラペラしゃべっちゃってるんですけど大丈夫なんスかね)
兎角「なんにせよ、お前は一ノ瀬を騙そうとしていたということだな」
鳰「それはゴメンナサイ……」
「皆に飲んでもらう方法が思いつかなかったもんで……」
鳰「晴ちゃんならセキュリティ弱そうだし、ひょいっと飲んでくれるかなーって」
兎角「……」
鳰「あはは……ほんとスイマセン」
「申し訳ないと思ってますから……今ウチの首筋に当ててるナイフをしまってくださいっス」
晴「あ、ちなみにその薬って何て言う――」
純恋子「NA73SU……ナナミス、ですわね? 走りさん」
晴「英さん、知ってるの?」
純恋子「知りませんでしたわ」
「ですが、大変興味が湧きましたので……」チラッ
真昼「……!?」ゾクッ
純恋子「たった今調べ(させ)ましたの」
鳰「あれー、理事長の話では極秘裏っていう話だったはずだったんスけどねー」
純恋子「英コンツェルンの情報網をなめてもらってはこまりますわ♪」フフン
鳰「恐れいりました」アハハ
純恋子「ナナミスは、一条製薬が極秘裏で開発を進めていた薬品ですわ」
「効果は桐ケ谷さんを見て分かる通り、“猫っぽくする”というもの」
純恋子「つい最近、臨床試験に成功したそうですわね」
「そこにあるカプセルはサンプルって所かしら」
鳰「ご名答っス。っていうかウチも知らなかった情報がたくさんありますよ」
「ちなみにこの薬を開発した理由とかってのはあるんスか?」
純恋子「単なる趣味のようですわね」
鳰「なんじゃそりゃー」
晴「猫耳といえば頭の頭のてっぺんあたりに生えるものだと思ってたけど」
「頭のわきに猫耳が生えるんだね」
純恋子「それは、発案者の知人の猫耳がそういう風だったから、それに準拠させたみたいですわよ?」
晴「そうなんだ……ん?」
鳰「知人の猫耳って! 元から猫耳生えてる人間なんているわけないじゃないっスか!」
「ファンタジーやメルヘンの世界じゃあないんスよ?」
千足「こうやって現に薬が存在しているというのに」
「ファンタジーもメルヘンもないと思うが……」
晴「……柩ちゃん、猫耳と、尻尾の他に変わったことはある?」
柩「んー、ありませんね」
「耳と尻尾がある分、違和感はありますけど……それだけです」ピコピコ
晴「そっか、よかったー」
「それにしてもすごいね、どこからどう見ても本物!」
兎角「……確かに」
「耳としての機能もちゃんとあるのか?」
柩「そういえば……心なしかいつもより物音がよく聞こえる気がしますね」
兎角(一ノ瀬を守るのに多少役立つかもしれないな……)
(この姿は恥ずかしいが)チラッ
晴「……ん? どうかした? 兎角さん」
兎角「いや、なんでもない」フイ
(耳や尻尾は一ノ瀬の方が似合いそうだ……猫じゃなくて犬の方だけど)
兎角(まあ、やはりわたしには必要ないな……とりあえずあんな姿にはなりたくない)
千足「……」チラ
柩「……?」ニコ
千足「! ……」ドキッ
(可愛い)
柩「……」ピコピコ
千足「……」
柩「……にゃー」スリスリ
千足「!?」
柩「なんちゃって……えへへ」
千足「き、桐ケ谷……」カァー
鳰「なんスかこれ」
晴「相変わらず二人とも仲良いね~……」イイナァ
鳰「仲良いとかそういうレベルじゃない気がするんスけど」
「甘々なのは食堂のイチゴパフェだけで十分っスよ」
晴「あはは……」
鳰「まぁでも、千足さんのレイピアで刺されなくて済みそうなんで、それはよかったっス」
「他に使ってみたい人いますかねー? まだまだカプセルあるっスよ~」
兎角「お前も懲りないな」
鳰「まあ、一応ウチの任務っスからね」
兎角「黒組の生徒に飲ませるのがか」
鳰「はい!」
兎角「じゃあお前も任務のターゲットっていうことだな」
鳰「まぁそうなりますね」
「……え?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
鳰「ひ、酷いっスよォ~……兎角さん」ピョコピョコ
兎角「一ノ瀬を騙そうとした罰だ」
「それくらいで済んでよかったと思うんだな」
晴「で、でも、すごく似合ってるよ! にお!」
鳰「そうっスかねー」テレテレ
「って、いやいや、そういう問題じゃ」
ワイノワイノ
鳰「……おや」
春紀「でもさぁ、それっておかしくねー?」
伊介「おかしくないわよ、黒組でも同じ事言えるに決まってるじゃない♪」
鳰「伊介サンと春紀サンじゃないっスかぁ」
「最近二人一緒に教室に来ることが多いっスね」
鳰「二人の間に何かあったんでしょうかねぇ~……」
「鳰ちゃんはなーんにも知りませんけど」
晴「晴は仲良いことはいいことだと思うな」
鳰「あはは、晴ちゃんは純粋っスね」
兎角「友達ごっこか……気持ち悪いな」
鳰「そういうことでもない気がするっス」
「ども! お二人さん」
伊介「……ン」チラッ
春紀「あ……?」チラッ
伊介「……」
春紀「……」
はるいす「「……!?」」
鳰「テンプレ反応ありがとうございますっス」
伊介「やだー♪ なにその耳」
「におキモいんだけど」
鳰「」
「伊介サン……今朝のウチに対する第一声がそれっスか……」シュン
晴「い、伊介さん!」
「流石にそれはにおがかわいそうだよ……」
鳰「うわーん、晴ちゃんだけっスよ~、ウチの味方ぁ」
兎角「おい、一ノ瀬に寄るな! 腐り!」
鳰「走りっス」
春紀「お前なんで猫耳なんて生やしてんだ?」
鳰「いや~それが兎角さんに無理やり飲まされたんスよ」
「この、ナナミスっていう薬を」
春紀「兎角さんってそういう趣味あんの?」
伊介「えー、意外♪」
兎角「無い!」
晴「におが理事長に頼まれて持ってきたんだよ」
「……におに飲ませたのは兎角さんだけど」
伊介「やっぱりそういう趣味あるんじゃない♪」
兎角「違う!! 一ノ瀬も誤解を生むような言い方はやめろ……」
春紀「理事長には本当そういう趣味があるかもしれないな」
鳰「にゃははは……それはどうなんでしょうねぇ」
「……あ、お二人さんはどうっスか? ナナミス」
伊介「伊介いらなーい♪」
鳰「即答っスね」
春紀「あたしもいらねーなぁ」
「猫耳尻尾生えても邪魔くさそうだし」
鳰「なれれば意外と邪魔にはなんないっスよ」
「早くも猫耳と尻尾が身体になじんてきたみたいっス」ピコピコッ
晴「あはは、自由自在だね」
鳰「晴ちゃんニャーッ!」ガバッ
晴「きゃー♪」
兎角「チッ……! 一ノ瀬にさ、わ、る、な!」
鳰「嫉妬っスか?」
兎角「」
鳰「冗談っス。 あ、痛い、ナイフの先っちょが刺さっちゃってますって、ホント」
「あ、そこ頸動脈、ヤバイヤバイ」
春紀「……」
春紀(あたしは飲まなくても良いけど)
(伊介様に飲ませてみたいな)
春紀(……猫耳の伊介様か)
伊介『にゃーん♪』
春紀「!!」キューン
(な、なんだこれ……)ドキドキ
伊介(伊介はいらないけど)
(春紀に飲ませたら面白そぉね♪)
伊介(猫耳が生えたら春紀は……)
春紀『……あんま見んなよ……』ピョコン
伊介「!!」キューン
(……やば――い♪)
はるいす((後でこっそり貰いに行こう)っと♪)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今日はここまでにしときます
『南波と海鈴』は全3巻です
南方純先生の作品です
ゆるめのケモ耳百合です
悪魔のリドルのようなサツバツさはないので
優しさに飢えている方には買うことをお勧めします
流血描写は結構あります
もう一つ書きためがあり
同時進行しようと思いましたがスレ立ちませんでした
さよならー
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
純恋子「……真昼さん」スス...
真昼「!!」
(ま、また、わたしに話し、かけて、へ、返事……しないと……!)
純恋子「紅茶」
真昼「は、はひっ!」
純恋子「お入れしたのですけれども、一杯いかがですか?」コトッ
真昼「ひッ……!?」
鳰(うわっ、カプセルがティーカップからあふれるくらいに入れてある)
(どんだけ飲ませたいんスかね……あの人)
真昼「こ、これっ……」
純恋子「?」キョトン
真昼「これ……の、飲めない……で、です……すいませ」
「ごめ……なさい」
純恋子「……」
「なんて、流石にこれは冗談ですわ、いやですわ」オホホ
真昼(冗談に聞こえないです……)
純恋子「あんな得体の知れないもの、真昼さんに飲ませるわけにはいきませんものね」
真昼「……ごべんなさい……!」
純恋子「本当はこちらですわ」コトン
「お飲みになって?」
真昼(普通の紅茶……)
「で、でも、真夜が……デブは食べたり、飲んだり……控えろって」
純恋子「紅茶に含まれる紅茶カテキンやカフェインはダイエットに最適ですわ」
「ですから、砂糖を入れなければ何も問題はありませんのよ」
真昼「う……じゃ、じゃあ……ごめんなさい」
「い、いただき、ます……」
真昼「……」ズズ
純恋子「」ニヤリ
真昼「んッ!? ……んふっ、んッ!」
「えほッ……! あ……うぅー……頭熱い……!」
純恋子「まあ! それは たいへん ですわ」
「いったい なにが どうなって しまったんですの !?」
鳰(白々しィ~……)
真昼「……」ピョコン
(猫耳……生えました……)
純恋子「まあ! まあ、まあ、まあ!」
「素敵ですわ、真昼さん!」ハァハァ
真昼「うう……」
晴「わぁ、番場さんもお薬飲んだの? 可愛い!」
真昼「い、いや……わたすがのんだ、わけでは、ない、ます……)ゴニョゴニョ
純恋子「まあ、真昼さんですもの、可愛いのは当り前ですわ……」ウットリ
「はぁ……」ナデナデ
真昼「ひィ~~……」カァ
しえな「おい、いじめか?」ヌ
晴「わっ、びっくりした」
純恋子「あら、剣持さん」
「いじめているわけではありませんわ、愛でているんですのよ」
しえな「……本当に?」
純恋子「ええ、本当」ナデナデナデナデ
真昼「……ぅぅぅ」ドキドキ
しえな「そうか、ならいいんだ」
「それにしてもこれが走りの持ってきたナナミスとかいう薬の効果か」
純恋子「ええ、そうですわよ」ナデナデナデナデナデ
真昼「ま、まさつで、あつい……です……ごめん、なさいぃぃ!」
しえな「……すごいな、見れば見るほど本物の耳のようだ」
乙哉「ね、つい切り落としたくなっちゃう♪」ギュ
しえな「ひっ!」ビクッ
「武智っ、後ろから抱き着くな!」
乙哉「えー、しえなちゃん冷たい」
「はさみでグサっといかない分良心的だと思うけど」
しえな「良心的とかそういう問題じゃないよそれは」
乙哉「ねー、しえなちゃんも飲んでみてよ」
「きっと面白いよ!」
しえな「い、嫌だよ……」
乙哉「えーなんで! 絶対切り落としたくなる耳になると思うのにな」
しえな「だからボクは嫌なんだよ!」
「……っておい! 武智! そ、その耳!」
乙哉「え? あ、コレ?」ピョコ
「猫耳と尻尾生えたらどうなるのかなって思ってー、鳰から貰った」
乙哉「結構面白いよ」
「ぴくぴく動くし、超ちょん切りたくなる、自分のなのに」ハァハァ
しえな「もうだめだこいつ」
乙哉「だ・か・らぁ~、しえなちゃんも飲ーんで♪」
しえな「嫌だってば」
乙哉「お願い……」ピョコンッ
しえな「う゛……!」
(なんだこの上目使い……!)
しえな(猫耳と尻尾が相まって、めっちゃあざとい……じゃない!)
しえな「だからボクは――」
乙哉「はい、スキあり♪」
しえな「んぐっ!」
「――っ!」
しえな「うわっ!」ピョコンッ
乙哉「きゃ~~♪ 生えた♪」
しえな「た、武智ぃ~~!」
「嫌がってただろ……! ボクは!」
しえな「人が嫌がっていることを無理やりさせる……!」
「そういうのはイジメだ!」
乙哉「そんな可愛い姿で怒っても何も怖くないよ」
しえな「可愛……っ!」
「……」
しえな「そういうのも、イジメだ……」カァ
乙哉「!?」キュンッ
乙哉(あれ……なんだろ今の)
(切り刻みたいとかそういう気持ちじゃないのが……)
しえな「……ぅ」ピコピコ
乙哉(あ、でもやっぱり切りたい)ハァハァ
涼「……ふふ」
「何かとても愉快なことになっておるな、香子ちゃんよ」
香子「そうだな」
涼「……」ピョン
香子「首藤は」
「……もう飲んだんだな」
涼「うむ……昔から縁側の猫の気持ちになってみたいと思っておったからの」
「意外と悪くないよ、耳と尻尾があるというのも」
香子「そうか」
涼「……」
「香子ちゃんは飲まんのか」
香子「わたしはいい」
「縁側の猫というものに縁がなかった人間だからな」
涼「そっかー……」
涼「……」
「猫耳似合うと思ったんだがのー」
香子「……」
涼「……絶対可愛いのに」
香子「……」
「……かっ……考えておく」カァ
涼「うむ」ニコ
ガラガラッ
溝呂木「おーす! みんなおはよう!」
晴「あ、先生おはようございます!」
溝呂木「おお、一ノ瀬、相変わらず元気」
におひつまひおとしえすず「」ニャーン
溝呂木「だ……な」
溝呂木「……なんだ、みんな今日は寝癖がひどいな!」
「あわてて学校に来たのか~?」
鳰「えっ、マジすか」
伊介「やっだー♪ センセーってバカでしょ」
「そこまでニブいとヒいちゃう♪」
溝呂木「えっ」
鳰「まあ、そこが溝呂木先生のいいところなんじゃないっスか?」
溝呂木「……」
溝呂木「なぁ、一ノ瀬」
「なんで先生は朝から罵られたり褒められたりしてるんだろう」
晴「あはは……晴は……よくわかんないです」
溝呂木「だよなぁ……」
鳰「あ、ちなみにウチ褒めてはいないっスよ」
溝呂木「先生みんなに何かしたか……?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
鳰「ってなわけでお昼っスよ~」
「……うお!?」
柩「やっぱり千足さんは猫耳も似合いますね♪」
千足「そうか……わたしはものすごく恥ずかしいんだが」カァ
柩「……やっぱり千足さんは女の子ですね」
千足「うぅ……」ピコピコ
柩「ふふふ」ナデ
香子「……ハァ」ニャーン
涼「うむ、ワシの見立て通り……よく似合っておるよ香子ちゃん」
香子「滑稽だ……なぜあそこでわたしは断らなかったのか……」カァー
涼「まぁまぁ、賢明な判断だと思うよ」ナデナデ
香子「撫でるのをやめてくれ首藤……」
涼「おお、すまんつい」
乙哉「ねぇねぇ先っちょだけ! 先っちょだけだから!」ハァハァ
しえな「無理だって!」ハァハァ
乙哉「そんな(耳)動かされたらたまんないよぉ!!」←←←
しえな「ぐぐぐ……! この変態ッ……!」→→→
乙哉「じゃあ尻尾」
しえな「あっ」
純恋子「うふふふふふ」ナデナデナデナデ
真昼「は、はげ……ます……!」
純恋子「大丈夫ですわ」
「その時はちゃんと育毛でも植毛でもいたしますので」
真昼「う~……真夜あ……」
純恋子「代わりに私の猫耳をなででくださっても良いのですよ」ピョコーン
真昼「む、無理です」ゴメンナサイ
純恋子「ならやむを得ませんわね」ナデナデナデナデナデナデ
「私はとても心苦しいですわ……」ナデナデナデナデナデナデナデ
鳰「……うわぁなんだこの猫耳率」
「さすがにちょっとキモいっスね」
晴「にお、お昼食べに行こ?」
鳰「あ、行きましょっかぁ~」
兎角「一ノ瀬そいつは呼ぶな!」
晴「意地悪言わないの、兎角さん」
「にお早くー!」
鳰「はぁい!」
(ま、でも……)
鳰(猫耳が生えてないのは残り4人)
(春紀さんと伊介さんは薬は要らないと言っていたくせに、あの後こっそり取りに来た……ので問題はないとして)
鳰(……残る2人が難しいところっスかね)
(自分から絶対に飲まないであろう兎角さん、飲みそうだったのに未だに飲んでない晴ちゃん)
◆食堂◇
鳰(晴ちゃんが兎角さんに頼めば飲んでくれそうな気もするっスけどね~……さてどうしましょう)
晴「兎角さんまたカレー……?」
兎角「カレーは完全食だって言ってるだろう」
「それに今日はベジカレーだから野菜は問題ない」
晴「えー、そういう問題じゃ……」
鳰(……ふふん、なるほど)
(そういえばそういう手段がありましたね……ニヒヒ)
鳰「兎角さん兎角さん」
兎角「……」ギロ
鳰「もう、そんな睨まないで下さいよ」
「ほら、あそこ……あそこで剣持さんが何やら怪しい動きをしてますよ」チョイチョイ
晴「え?」
兎角「……!」バッ
鳰(はい後ろ向いたー! 今のうちにカプセルの中身をカレーに)ササー
晴「あ!」
兎角「オイ」
鳰「ひッ!」ビクッ
兎角「今、わたしのカレーに、何か入れたな?」
鳰「なははっ、な、なんのことでしょ」
兎角「……そんなことだろうと思ったんだ……」
「もうわたしも容赦はできないぞ」ギリッ
晴「ま、待って、兎角さん落ち着いて……」
鳰「やや、待ってください! ここは食堂ですよ!」
「ルール2を忘れたんスかぁ? ここ暴れたら他人も巻き込んじゃいますよ」
兎角「……ぐ」
「後で覚えてろ……走り」カタン
鳰「はいはい、まぁ水でも飲んで落ち着いてくださいよ」
兎角「くそ……」クイッ
晴「あ、兎角さん、そのお水!」
兎角「ん?」ゴクン
鳰「フッ、まんまと引っかかりましたね」ニヤァ
兎角「――ッ!」ドクン
「まさか……走り……貴様!」
鳰「そう! 本命はカレーではなくそのお水!」
「カレーはフェイクっス!」
鳰「ウチがカレーにわざとらしくカプセルの中身を振り掛ける、それを見た兎角さんの目はカレーに向く!」
「さらぁに! 度重なる鳰ちゃんの行動によってイライラが募った兎角さんは、正常な判断ができない状態!」
晴「あ……」
鳰「……これまでのウチの行動は、この時のためのものだったんスよぉぉぉ!」ドヤァァ
(ま、嘘っスけど……英さんのやり口を真似しただけっスけどね)
晴「兎角さんっ! ちょっと……!」
「にお、にお!」
鳰「いやー、どうっスか? ウチもなかなか賢いっスよね~」
晴「におってば……!」
鳰「いや~賢くて可愛いってそれ……ん? なんスか晴ちゃん」
晴「にお、謝った方がいいよ! すぐ! 今すぐ!」
鳰「え? ……あ、兎角さん!」
「さっきとは比べ物にならないくらい顔こわいんスけど~アハハ」
鳰「あ、猫耳生えたんスね! とってもキュートっスよ! 流石っスぅ!」
「ありえないものとありえないもののコラボレーションは最こ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆教室◇
溝呂木「じゃあ午後の授業始めるぞ!」
「……って」
鳰「」チーン
溝呂木「走りは……一体どうしたんだ?」
「だいぶぐったりしているが……」
晴「聞いてあげないでください……先生」
兎角「……」
春紀「なあ、兎角さん」
「頭なんて押さえてどうしたんだよ、頭痛?」
兎角「……ありえない」ブツブツ
春紀「兎角さん?」
香子「今は放っておいてやれ、寒河江」
春紀「はぁ……なんで?」
香子「なんでもだ」
春紀「……?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆放課後◇
純恋子「真昼さん」
真昼「ひ! ……ま、また……撫でに……!?」
純恋子「いいえ、違いますわ」
「今日、帰りに近くにあるケーキの美味しいお店に行きませんこと?」
純恋子「今日のお詫びもかねて……いかがでしょうか……?」
真昼「あ、ううう……」
「い、今……16円しか持ってない……ます」
純恋子「……あらそれは……」
純恋子「……」スッ、スイスイ
純恋子「もしもし、純恋子ですわ」
「ええ、ええ……学校の近くの、ええ……そこですわ」
純恋子「そこのメニューをすべて16円均一にしていただけるかしら」
真昼「!?」
純恋子「ええ、よろしくお願いいたしますわ」
純恋子「……」ス...
純恋子「それでは行きましょう」
真昼「……真夜あ……」
晴「兎角さん」
兎角「……」
晴「……帰ろ?」
兎角「ああ……」ピタッ
晴「……まだ、恥ずかしいの?」
兎角「当たり前だ……」
晴「晴は可愛いと思うよ……?」
兎角「なおさら恥ずかしくなるからやめてくれ……」
晴「……ごめん」
兎角「くそ、あれは一生の不覚だ……」
「あんな罠にかかったわたしが……一ノ瀬を守れるというのか」
晴「それはあんまり関係ないことだと思うけどな……」
晴「……」
◆寮1号室◇
兎角「……く」
兎角(いつになったら取れるんだこれは……)
(思っていた以上に……恥ずかしい)
兎角(一ノ瀬を守るときには気にもしていられないが……)
兎角(普段の生活において注意力が散漫になりかねない……!)
(くそ……! 走りっ……!)
晴「兎角さん」
兎角「……どうした」チラ
「……!」
兎角「一ノ瀬……お前!」
晴「えへへ……晴も飲んじゃった」ピョコン
「思ってたよりも、結構恥ずかしいね、これ」カァ
兎角「なんで飲んだんだ……こんなもの、飲む必要もなかっただろう」
晴「晴もね、最初は飲まないでもいいかなって……思ってたんだけど」
「兎角さんが飲んだから……」
兎角「わたしが飲んだからって……」
晴「それにね、兎角さん……落ち込んでたんだもん」
兎角「え?」
晴「におにうまく乗せられて、薬を飲まされちゃった後」
晴「兎角さんは晴のこと、守れるかどうかっていう心配をしてくれたよね」
晴「それがなんだか嬉しくてさ」
晴「晴も、兎角さんのために何かしてあげたいなって思ったの」
晴「でね、兎角さんの気持ちとかを、晴も知ることが出来たら」
晴「辛い気持ちとか……悔しい気持ちとかを、半分こできるんじゃないかなって……」
兎角「……一ノ瀬」
晴「だから、この猫耳と、尻尾は晴と兎角さんの半分この象徴なの」
晴「苦しいことも、辛いことも半分こ」
晴「……これからは、嬉しいこと、幸せなことも……兎角さんと半分こしていけたらいいなって」
晴「そういう思いも込めて……ナナミスを飲んだんだよ」
晴「えへへ、どうかな」
「兎角さん、ちょっとは恥ずかしいこともなくなった?」
兎角「……」
「ああ」
晴「わ」
兎角「……ありがとう……一ノ瀬」ギュ
晴「……えへへ」
「どういたしまして」
兎角(すごいな……一ノ瀬は)
(半分こどころじゃない……恥じらいも、悔いも……何もかもすっと無くなった)
兎角(……わたしも、もっと様々な考え方ができるように、ならないとな……)
晴「あと……」
「におのこと、許してあげてね」
兎角「それは嫌だ」
晴「兎角さぁん!」
兎角(……)
兎角(半分この象徴か)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
晴(次の日、兎角さんはにおから大量のナナミスを貰っていました)
晴(もう猫耳尻尾はこりごりという感じになるのかなって思っていたけど)
晴(……なんでだろう? 心境の変化ってやつかな)
晴(まあ、におとは仲直り……? したみたいなので、良かったです)
晴(そういえば、伊介さんと春紀さんも猫耳を生やしていました)
晴(お互いに微妙に距離をとってたし、口数が少なかった気がします)
晴(最近は仲がいい様子だったから……ちょっと不安です)
晴(喧嘩とかしてないと良いな)
晴(あ、また兎角さんナナミス飲んでる)
兎角(半分この象徴だ)ゴックン
晴(……)
晴(なんだか、ナナミスのおかげか分からないけど)
晴(黒組の雰囲気がよくなったと思います)
晴(これなら、みんな一緒に卒業できるかも!)
(なんて、期待を抱いちゃったりして……)
カサッ
晴「あ……なんだろうこの手紙」
『晴ちゃん江、次は晴ちゃんのお耳をちょうだいします by武智乙哉』
晴「……」
晴「え~……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆理事長室◇
鳰「理事長、走り鳰、任務完了した旨をお伝えに参ったっスよ!」
一「ええ、鳰さん。お疲れ様」
「まさか1日のうちに全員に薬を飲ませるなんて」
一「本当に鳰さんは期待以上の働きをしてくれるわね」
鳰「いやあ、お褒めにあずかり、光栄っス」
「まあ、寿命は数年単位で縮まったっスけどね……」アハハ
鳰「ま、とりあえずウチの仕事は終わったんで」
「これで失礼しますよ!」
一「ええ、また何かあれば連絡するわ」
鳰「了解っスよ! では!」
一?「……」
一?「フフ」
コツ...コツ...コツ
一「ご満足いただけましたか」
一「……一条、りなさん」
一?「」バリバリバリッ
りな「……」コクリ
「……満足した」
一「そうですか……それは良かった」
「こちらも、鳰を走らせたかいがありましたわ」
一「して……約束は守っていただけますか」
りな「……勿論」
「“南波と海鈴”掲載分の百合姫、百合姫S、百合姫collection初版は用意済み」
一「ありがとうございます」
「……ちなみに、ナナミスを使った本当の理由は……?」
りな「……」スクッ
「……面白そうだったから」
一(本当にそれが理由だったのね……)
りな「今後とも、よろしく……」
一「こちらこそ……」
「何かあったときにはいつでも……申し付けください」
りな「……」コクリ
りな「……」
りな「……」ニヤッ
◆おしまい◆
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◇おまけ◇
海鈴「そういえば最近、一条先輩見ないわね」
海鈴「もしかしてまたやぜでもひいてるんじゃ……」
南波「やぜはそんなにしょっちゅうひくものじゃないよ」
海鈴「あ、そう……」
南波「あ、見て見て! 海鈴ちゃん!」
「あそこに美味しそうなケーキ屋さんがある!」
海鈴「あ、南波はまたそうやって!」
「もうお小遣いが無いってさっき嘆いていたばっk」
海鈴「ってもういない!」
「もー、待ちなさい! 南波!」
カランカラ-ン
海鈴「もう……食べ物のことになるといっつもこうなんだから……」ゼーハー
「お金は貸せないわよ」
南波「大丈夫だよ! だってここのお店全品16円だもん」
海鈴「え!? ……本当だ」
(手は回してないはずなんだけど……こういうことって結構頻繁に行われてたりするのかしら)
海鈴「……あら?」
純恋子「ささ、お食べになって」
真昼「こ、こんなに……たべられな、ないです……!」ピコピコ
純恋子「16円ですから遠慮することはありませんわ」ピョコーン
海鈴「……南波」
海鈴「耳が生えてる親戚っていたりする……?」
南波「へ?」
◇おしまい◇
お疲れ様でした
暇つぶしくらいになれば嬉しいです
千足「美しき世界」
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