壁殴り代行は笑わない (14)
東京都文京区西片一丁目。
壁殴り代行は、そこで一生を過ごす。
白山通りに面した木造平屋。
築100年を越えるこの建物の中にあるのは、ただ一つだけ。
壁。
壁殴り代行が殴る、ただそのためだけに作られた、特殊素材の壁である。
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生物としての最低限の活動さえ、自分一人では行うことができない。
数十年前までは付き人がいたのだが、それは過去の話。
今は食事や排泄は機械化され、ただ一つの行動に集中する。
ごん。ごん。ごん。
壁を殴る音だけが、建物に響く。
これが、壁殴り代行に許された、唯一の活動。
生物が持つ憎悪の感情は、強大なエネルギーを伴う。
それは、都庁クラスの高層ビルを、一撃で破壊するに十分な強さ。
世界中の憎悪が爆発すれば、あらゆる建物が破壊され、地形が破壊され、生物が破壊され、
地球は壊滅状態に至るだろう。
なぜそうならないのかと言えば、それはこの生物が存在するからである。
世界中の憎悪の感情を一手に引き受ける、壁殴り代行。
彼は生まれたときから、ただ一つの使命を帯びている。
それは、あらゆるの生物が持つ憎悪の感情を、発散すること。
そのための唯一の手段が、壁を殴ることである。
食欲、性欲、睡眠欲。
あらゆる欲望を放棄し、ただひたすらに壁を殴り続ける。
そうしなければ、世界が滅んでしまうから。
今日も彼は、壁を殴り続ける。
世界から憎悪が消える、その日まで。
完
5レスって言うたやん
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