見張り兵「ふー…」アニ(in the結晶)「……」(35)


見張り兵「はー…いやあ、楽チンで助かるわーこの仕事。基本この部屋の中で結晶見張ってるだけだし。」

見張り兵「何にもおこんねーし上官もこねーし?」

見張り兵「アニちゃん様様だぜ!」ヒャハハハハ!!!



アニ(in the結晶)「………」

.


見張り兵「さてさて…上官の食糧庫からパクッてきた肉にポテチに酒に~っと!」ゴソゴソ

アニ(in結晶)「………」





アニ「…」つ肉ヒョイ


.


見張り兵「……へっへっ…さていただきま…あ?」


見張り兵「……?」キョロキョロ


見張り兵「あっれー…?肉がねーぞ?」キョロキョロ



アニ(結晶)「……」モッシャモッシャ

.


見張り兵「……?あれ?マジで肉ねーぞ…?」

見張り兵「くそっ、どこに」クルッ


アニ(結晶)「……」モッシャモッシャモッシャ。


見張り兵「」

.


アニ(結晶)「……」モキュモキュモキュモキュ…


見張り兵「」


アニ(結晶)「ゲプッ。」プヒー



見張り兵「」

.


見張り兵「」

アニ(結晶)「……」

見張り兵「オイ、今お前」

アニ(結晶)「……」

見張り兵「……はは、ナイナイ…ナイナイナイナイナイナイ。」

見張り兵「いや仮に百歩譲って俺が持ってきたはずの肉をなくしたまではいいけど結晶の中でコイツがフツーにもっさもっさ肉食ってるとかないわー幻覚だわー」


アニ(結晶)「……」

見張り兵「はは…ナイナイ…」


.


見張り兵「き、気を取り直して!違うやつ飲み食いしよう!そーだ酒だ酒!」ゴソゴソ


アニ「……」つポテチ ヒョイ


見張り兵「ふー…さて、つまみにはポテチを……あ?ない?」キョロキョロ


見張り兵「? っかしーな…またか?いやナイナイ。ナイけどな」ゴソゴソ

バリッ。

見張り兵「? 今ポテチの袋を開ける音が」クルッ

アニ(結晶)「……」ゴソゴソ…

アニ(結晶)「……」シャクッ。

アニ(結晶)「……」ボリボリボリボリ…


見張り兵「」


.


見張り兵「」

アニ(結晶)「……」ゴソゴソ…

アニ(結晶)「……」シャクッ。

アニ(結晶)「……」ボリボリボリボリボリボリ…


見張り兵「」


.


見張り兵「いやいやいやいや……ナイナイナイナイナイナイナイナイ。ナイって!これはナイよ!」

見張り兵「っべー昨日マジ酒飲みすぎたわーこれ酒残っちゃってるわー」

見張り兵「だからちょっとありえない幻覚見ちゃってる系だわーこれ。いやーヤベェわー俺の勤務姿勢と同じくらいヤベェわーありえねー幻覚見えちゃってるわーこれ」チラッ


アニ(結晶)「……」シャクッシャクッ。ボリボリ。


見張り兵「いや今二枚重ねて食べたように見えたけどこれは間違いなく幻覚だわこれ幻覚幻覚!幻覚だわ~」


アニ(結晶)「……ッハ」シャクッシャクッシャクッ。


見張り兵「今スゲー腹立つ顔でこれ見よがしにポテチ3枚重ねで食いやがったけど幻覚。幻覚……」



アニ(結晶)「でも私のりしおよりコンソメ派なんだよ」ボリボリボリボリ


見張り兵「っべー幻聴まで聞こえだしちゃったよーありえねーよだって人からパクッた上に文句つけてくるとかテラありえねーも~ん」


.


見張り兵「……」

アニ「……」つ全部 ヒョイ


アニ(結晶)「……」ゴソゴソ

見張り兵「テんメェぇえええぇえええ?!!」


アニ(結晶)「何?私だって夜中に小腹くらい空くよ」モグモグ

見張り兵「いやテメェの空腹事情なんてこれっぽっちも知らねェよ?」

アニ(結晶)「…うわ、安酒だね。アンタせめてもう少し品質にこだわりなよ」ゴク

見張り兵「っせーよ俺はそれが好きなんだよ返せ酒返せ飯返せ」

.


アニ(結晶)「ッフー…小うるさい。アンタも盗んできたクセによく言うよ」ッハ

見張り兵「腹立つわーコイツ。この結晶なかったらおもっくそぶん殴ってやるのに」

アニ「へえ?」パッ


見張り兵「オルァ!!」バキャ!

アニ(結晶)「…」ゴキン!

見張り兵「~~~~ったー…!」


アニ(結晶)「ッハ」


.


見張り兵「クソが…!この事は上に報告するからな!?」

アニ(結晶)「へー?アンタがサボってた事もバレるのに?」

見張り兵「」ドキッ

アニ(結晶)「アンタが上官の食糧庫からパクッてきた事もバレるのに?」

見張り兵「」グサ

アニ(結晶)「私がそれを他の奴にバラすかも知れないのに?」

見張り兵「」ゴフッ

アニ(結晶)「そもそも信じてもらえるかも怪しいのにね」ッハ

見張り兵「」

アニ(結晶)「……ま。私の『厚意』で黙ってあげててもいいけど?」

見張り兵「…」


.


~次の日~


見張り兵「……」

アニ(結晶)「ふーん。今日はいいのを持ってきたんだ」

見張り兵「…」ッチ

アニ(結晶)「巨人化しちゃおっかな」

見張り兵「アニさんに喜んで頂きたくて!!」


.


見張り兵(くっくっく…貴様は食糧を結晶内に入れる時に結晶を解除する!そこを狙えば…!)

アニ(結晶)「あ。美味しい。」モキュモキュ

見張り兵「」

見張り兵(くっ?!いつの間に?だがまあいい!それには下剤入りだ!糞まみれになるがいいさ!ヒャーハッハッ!)

アニ(結晶)「アンタも食べなよ」つ コト

見張り兵「え?」

見張り兵(バカな…?何とも、ない…だと……?)

アニ(結晶)「巨人っていうのは不思議なんだよ」

見張り兵「すみません心読まないでいただけませんか」


見張り兵「ぐおおお…」←食わなきゃバラすと脅された


アニ(結晶)「はー…暇。アンタなんかやりなよ」

見張り兵「あ゙あ゙?!」

アニ(結晶)「アンタの今までの事、次の上官の見回りの時にバラしてもいいんだよ」

見回り兵「1番俺!鼻でピーナッツ飛ばします!!!」


.


~翌週~


アニ(結晶)「……」

カチャ。

見張り兵「っへーい。今日は魚ですよっと」

アニ(結晶)「遅かったね。また上官に?」

見張り兵「まーな。アイツらロクに仕事しねーくせによー」


.


~翌々週~

ガチャ

見張り兵「おら、テメェが欲しがってたクッキーだ。お望み通り持ってきてやったぜ」

アニ(結晶)「へえ?まさかホントに?!」

見張り兵「おうよ!」


.


~翌々(ry~


見張り兵「……」

アニ(結晶)「…何?今日は暗いね」

見張り兵「…ちょっとな」

アニ(結晶)「……」

見張り兵「………」

アニ(結晶)「……何があったかはしらないけど」

アニ(結晶)「一生ここから出られない私よりはマシじゃない?」

見張り兵「………」




見張り兵「……『軍』からクビ切られた」


.


アニ(結晶)「…ふーん。言っとくけど私は何もバラしてないよ」

見張り兵「…ああ。違う理由でだからな」

アニ(結晶)「へえ?何やったの」


見張り兵「いや…」


.



見張り兵「定年退職だ」


アニ(結晶)「……ああ。そりゃそうか。」


アニ(結晶)「いやでも結構頑張った方じゃない?この御時世にその年まで生き残れるとか奇跡でしょ。」




アニ(結晶)「元3兵団トップ、ダリスザックレー総統殿。」


ザックレー「………」


.


ザックレー「…私は……まだ、働ける」

アニ(結晶)「そう言ってサボってたのに?」

ザックレー「違う。この地下に来はじめたのは…実験だった。お前に何らかの行動を起こさせる事ができるか否かを」

アニ(結晶)「……」

ザックレー「まさか引っ掛かるとは思わなかったが。」

ザックレー「……巨人の秘密…それらも今や殆ど解明された。」

ザックレー「……私ではどれだけやってもできなかった事を、この数年で…だ…」

アニ(結晶)「…まあでもよかったんじゃないの?壁はもういらない世界になりつつあるんでしょ?」

アニ(結晶)「アンタがずっと…アルミンが総統になってからもずっと…頑張ってきたからでしょ。」

ザックレー「……代が換わってからはひたすら要らないジジイ扱いされ続けてもか」

アニ(結晶)「当たり前。アンタが今まで踏ん張って、気張って来たから『今』があるんでしょ」

アニ(結晶)「アンタは……もう少し自分の偉業を誇るべきだよ」


ザックレー「……」


.


アニ(結晶)「……それで?アンタはこれからどうするの」

ザックレー「最後の仕事が残っている」


アニ(結晶)「………」


ザックレー「アニ・レオンハート。お前の処刑だ」


.


アニ(結晶)「…ふーん。」

ザックレー「だが私は…迷っている。」

ザックレー「この期に及んで。お前を処刑する事をだ」

ザックレー「私はここでお前と接する内に情が湧いたらしい。」

ザックレー「会話を交わす度に、食事を共にとる度に、顔を合わす度に。」

ザックレー「憎い敵に。裏切り者に。絶たねばならない巨人に。」

アニ(結晶)「………」

ザックレー「せめて私以外に、とも思ったが…」

ザックレー「その方が辛いと気づいた。」


ザックレー「『何とか延命を』と考え、アルレルト総統と話し…『彼女が僕らの味方になるならば』という事にはできた。」

ザックレー「だが…君は断るだろう?」

アニ(結晶)「…まあ。」

アニ(結晶)「ライナーもベルトルトもあんな最後を迎えたのに。」

アニ(結晶)「"戦士"にも"兵士"にもなり損ねた私が生き残るのもね」

ザックレー「"兵士"になる、ではいかんのかね」

アニ(結晶)「ダメだよ。私はケジメをつけなきゃいけないしね」

ザックレー「………残念だよ。アニ」

アニ(結晶)「そうだね。私も残念だよ。アンタとは結構仲良くやれそうだったんだけどね」



ザックレー「あんなに年寄りをからかっていたのにか?」ニヤリ

アニ(結晶)「アンタはからかうと面白いんだよ」クス


.


ザックレー「巨人を殺すのがこんなに辛いのは生まれて初めてだよ」

アニ「…それは違うよ。"人間を殺すから"だ」


アニ「私と話したから。私と人間関係を構築してしまったから。
   アンタの中では私は巨人じゃなくて人間になったからでしょ」

ザックレー「ああ…そうだな。そうだ…」



ザックレー「…私は今までの長い人生を化け物と戦っているのだと思っていたが」

ザックレー「こういう"人間"と戦争していたのだったのだなあ…」

アニ(結晶)「私達も…アンタらは"悪魔"って教えられたから…そういう化け物と戦っているつもりだったんだけどね」

アニ(結晶)「"人間"と戦っていたんだ」

アニ(結晶)「……結晶になった前より。もっと、あの日ウォール・マリアを破る前に気づけていたのなら…」


アニ(結晶)「いや、私が言うのはおかしいね。聞かなかった事にして。」

ザックレー「………」

.



アニ「あんまり…痛くしないで」

ザックレー「……ああ。善処しよう。」













ザシュ。


.


ガチャ…

アルミン「……今までご苦労、ザックレー殿。」スッ

ザックレー「……」スッ


アルミン「今後の予定はおありで?」

ザックレー「…ベッドで少々。泣きはらす予定です」

アルミン「…そうですか。ごゆっくり」


ザックレー「……」



元3兵団トップ、ダリス・ザックレー総統は後にインタビューを受けた時にこんな言葉を残した。



『私の今までの仕事に意味があったのだとしたら、それは一人の友人を獲得するためだったのだろう』


…この言葉を聞いて、その真の意味を理解できる者は一人もいなかった。


.

終わり。

ちょっと自分でもよくわからなくなったから反省とともに精進しようと思う。

もし最後まで読んでくれた人間がいたら、感謝の念を。

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